特許異議申立
2024-700537
積層体
- 審判番号
- 2024-700537
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-198624
- 登録番号
- 7395317
- 請求日
- 2024年06月05日
- 審決日
- 2024年11月14日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三井化学株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人エスエス国際特許事務所
- 【異議申立人】平居 博美
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 岩谷 一臣
- 分類
- P1651.121-Y (B32B) / P1651.537-Y (B32B) / P1651.113-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7395317号発明「積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7395317号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7395317号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和元年10月31日の出願であって、令和5年12月1日にその特許権の設定登録がされ、令和5年12月11日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯の概要は、次のとおりである。
令和6年 6月 5日 :特許異議申立人平居博美(以下「申立人」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 8月23日付け:取消理由通知書
令和6年10月24日 :特許権者による意見書の提出
第2 本件発明
本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、「本件発明」と総称することもある。)は、特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
下記要件(1)~(3)を満たすシーラントフィルムと、要件(4)を満たす基材フィルムとを含み、前記シーラントフィルムと基材フィルムとの質量の合計を100質量%としたときに、プロピレン(共)重合体及び/または1-ブテン(共)重合体を70質量%以上含む積層体。
(1)前記シーラントフィルムは、融点が120℃以上、170℃以下であるオレフィン系(共)重合体(a-1)、および融点が30℃以上、120℃未満であるオレフィン系(共)重合体(a-2)を含む熱融着層を少なくとも有し、前記オレフィン系(共)重合体(a-2)は、プロピレン・α-オレフィン共重合体を50~90質量%および1-ブテン・α-オレフィン共重合体を10~50質量%含有する。
(2)前記熱融着層同士を接着した場合の110℃におけるヒートシール強度が10N/15mm以上である。
(3)前記シーラントフィルムは無延伸フィルムである。
(4)前記基材フィルムは無延伸ポリプロピレンフィルムおよび二軸延伸ポリプロピレンフィルムから選ばれる少なくとも一種である。
【請求項2】
前記オレフィン系(共)重合体(a-2)は、前記プロピレン・α-オレフィン共重合体としてプロピレン・エチレン共重合体を含有し、前記1-ブテン・α-オレフィン共重合体として1-ブテン・プロピレン共重合体を含有する請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記オレフィン系(共)重合体(a-1)はプロピレン(共)重合体である請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記シーラントフィルムおよび基材フィルムから選ばれる少なくとも一つのフィルムが、印刷層、バリア層およびエンボス加工層から選ばれる少なくとも一つの層を含む請求項1~3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記シーラントフィルムおよび基材フィルムから選ばれる少なくとも一つのフィルムがバリア層を含む請求項1~4のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、前記バリア層を金属蒸着、コーティング法または共押出法によって前記シーラントフィルムまたは基材フィルム中の一層として形成する工程および前記シーラントフィルムと基材フィルムとを積層する工程を含む積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の積層体により形成された包装体。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の積層体または請求項6に記載の包装体のリサイクル品である成形体。
第3 取消理由通知に記載した取消理由の概要
1 取消理由1(進歩性)
請求項1~7に係る発明は、下記引用文献1に記載された発明、又は下記引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 取消理由2(明確性)
本件特許の請求項2~7に係る発明は、次の点で明確でないから、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合しないため、請求項2~7に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項2における「前記オレフィン系(共)重合体(a-2)は、前記プロピレン・α-オレフィン共重合体としてプロピレン・エチレン共重合体を含有し、前記1-ブテン・α-オレフィン共重合体として1-ブテン・プロピレン共重合体を含有する」の記載について、「オレフィン系(共)重合体(a-2)」がどのような組成物を含むのか不明であり、発明の範囲が不明確である。
<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2002-210898号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開2019-150994号公報(当審が発見した文献)
引用文献3:特開2019-127307号公報(当審が発見した文献)
引用文献4:特開2018-34513号公報(当審が発見した文献)
引用文献5:特開2000-225662号公報(甲第4号証)
引用文献6:特開2001-162725号公報(甲第5号証)
第4 当審の判断
1 取消理由1(進歩性)について
(1)引用文献1に記載された発明等
ア 引用文献1の記載
引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与し、「・・・」は文章の省略を表す。)。
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低温熱融着性及び易開封性に優れた包装用、中でもパン包装用に好適なポリオレフィン積層フィルム及びそれを用いた包装体に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体あるいはプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体等の熱融着層を備えた無延伸ポリプロピレンの単層若しくは多層フィルムは、透明性、光沢性、剛性等に優れ、菓子、パン、野菜等の食品、あるいはシャツ、ズボン、下着等の衣料品を始め日用品等のあらゆる分野の製品の包装材料として広く使用されている。かかる包装用フィルムに求められる性能として近年特に、実包装ラインの高速化に伴う低温でのヒートシール性、暖かい温度で溶融し易いチョコレート製品包装用に適した低温ヒートシール性あるいは高齢化社会(バリアフリー)における易開封性が要求されている。
・・・
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、包装時における低温ヒートシール性に優れ、且つヒートシール部の易開封性に優れた包装用に適したポリオレフィン積層フィルムを得ると共に、ツイスト包装の製袋品の溶断シール部並びにガゼットシール部の融着強度の低下を招かずに、低温熱融着性及び易開封性に優れた包装用ポリオレフィン積層フィルムを得ることを目的とした。
【0005】
【課題を解決するための手段】
【発明の概要】すなわち本発明は、融点が128~150℃のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)20~80重量%とプロピレン含有量が55~80重量%、DSCの熱分析に基づく結晶融解熱量が10~80Joule/gのプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)80~20重量%とから得られうる熱融着層及びプロピレン重合体(C)層から構成されることを特徴とする低温熱融着性及び易開封性に優れた包装用、中でもパン包装用に好適なポリオレフィン積層フィルム、更には基材層が積層されたポリオレフィン積層フィルム及びそれらポリオレフィン積層フィルムに被包装物が封入され、ポリオレフィン積層フィルム包装体のツイスト部の上部若しくは下部を熱融着してなる包装体に関する。
【0006】
【発明の具体的説明】プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)
本発明に係わるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)は、融点が128~150℃、好ましくは130~147℃の範囲にある。かかる範囲にあるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)は、通常プロピレン含有量が、98~86重量%、好ましくは96~88重量%の範囲にある。プロピレンと共重合されるα-オレフィンは、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等の炭素数が2~10のα-オレフィンである。中でも、エチレン含有量が0.5~8重量%、好ましくは1~6重量%、1-ブテンが0.5~10重量%、好ましくは1~8重量%のランダム共重合体が低温熱融着性、易開封性、耐ブロッキング性のバランスに優れるので好ましい。
・・・
【0008】プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)
本発明に係わるプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、プロピレン含有量が55~80重量%、好ましくは60~75重量%、DSCに基づく結晶融解熱量が10~80Joule/g、好ましくは20~70Joule/g、好ましくは融点が100~127℃、より好ましくは105~125℃のプロピレンとエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等の炭素数が2~10のα-オレフィンとのランダム共重合体、好ましくはプロピレン・1-ブテンランダム共重合体である。このプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、熱融着層として熱融着層の凝集力を低下させ、包装体を剥離する際の易剥離性を付与する効果がある。
【0009】プロピレン重合体(C)
本発明に係わるプロピレン重合体(C)は、プロピレンの単独重合体あるいは、プロピレンとエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等の炭素数2~10のα-オレフィンとのプロピレンを主成分とするランダム若しくはブロック共重合体である。共重合体の場合は、通常プロピレン含有量が50重量%以上、好ましくは60重量%以上の共重合体である。単独重合体か共重合体を用いるかは、要求される外観によって適宜選択でき、例えば、透明な積層フィルムを得るには、単独重合体あるいはランダム共重合体を選択し、不透明な積層フィルムを得るにはブロック共重合体を夫々選択すれば良い。
・・・
【0014】ポリオレフィン積層フィルム
本発明のポリオレフィン積層フィルムは、前記融点が120~150℃のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)20~80重量%、好ましくは25~70重量%とプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)80~20重量%、好ましくは75~30重量%とから得られうる熱融着層及びプロピレン重合体(C)層から構成される。又、他の態様は前記融点が120~150℃のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)20~80重量%、好ましくは25~70重量%とプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)80~20重量%、好ましくは75~30重量%とから得られうる熱融着層、プロピレン重合体(C)層及び基材層とから構成される。
【0015】熱融着層を形成する重合体成分であるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)が20重量%未満ではフィルムの成形性、得られるフィルムの剛性、滑性にに劣る虞があり、一方、80重量%を超えると、低温熱融着性に劣る虞がある。本発明のポリオレフィン積層フィルムを形成する一成分であるプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)に密度0.860~0.910g/cm3、X線法による結晶化度が30%以下のエチレン・α-オレフィンランダム共重合体、好ましくはエチレン・プロピレンランダム共重合体若しくはエチレン・1-ブテンランダム共重合体をプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)とエチレン・α-オレフィンランダム共重合体との量:100重量%に対して70重量%まで混合しておいても良い。かかるエチレン・α-オレフィンランダム共重合体を混合することにより、より低温熱融着性が改良される。しかしながら、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の全量をエチレン・α-オレフィンランダム共重合体に変えると、溶断強度が低下するので好ましくない。更に、熱融着層には密度が0.905~0.940g/cm3の範囲の直鎖状低密度ポリエチレンを添加しておいても良い。
【0016】本発明のポリオレフィン積層フィルムは、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)とプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)からなる熱融着層とプロピレン重合体(C)層とから構成されるが、プロピレン重合体(C)層を中間層と表面層(被印刷層)に分けておいても良い。この場合、中間層を形成するプロピレン重合体(C)と被印刷層を形成するプロピレン重合体(C)は用途に応じて適宜選択でき、同一重合体であっても異なる重合体であっても良い。
【0017】本発明に係わる基材層は、通常、包装材料として使用されている種々材料、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム及びポリメチルペンテンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリカーボネートフィルム等のポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム等の熱可塑性樹脂製フィルム、アルミニューム箔、紙等が挙げられる。かかる熱可塑性樹脂製フィルムからなる基材は無延伸であっても一軸あるいは二軸延伸フィルムであっても良い。勿論、基材は1層でも2層以上としても良い。・・・
【0020】本発明のポリオレフィン積層フィルムの被印刷層となるプロピレン重合体(C)層の表面には、通常、一般的な包装用グラビアインキで印刷されるが、必ずしも印刷されていなくても良い。」
「【0023】特性値は以下の方法で測定した。
(1)ヒートシール強度(N/15mm):熱融着層面を重ね合せ、表記載の温度、幅5mmのシールバーにより、0.2MPaの圧力で1秒間シールした後放冷した。これから15mm幅の試験片を切り取りクロスヘッド速度500mm/minでヒートシール部を剥離し、その強度をヒートシール強度とした。又、剥離面を観察し、界面剥離したものを○、若干伸び剥離したものあるいは凝集剥離したものを△及びエッジ切れを起こしたものを×とした。
・・・なお、本実施例及び比較例で使用した原料は次の通りである。
(1)エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(EBR)
エチレン・1-ブテンランダム共重合体、エチレン含有量:80.2重量%、密度:0.866g/cm2、融点69℃、MFR4g/10分
(2)プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(R-PP-2)
エチレン含有量:2.7重量%、ブテン-1含有量:1.5重量%、融点138℃、MFR7g/10分
(3)プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(R-PP-3)
エチレン含有量:3.1重量%、ブテン-1含有量:2.5重量%、融点131℃、MFR7g/10分
(4)プロピレン単独重合体(PP)、融点163℃、MFR7g/10分
(5)プロピレン・α-オレフィン共重合体(PBC)
プロピレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン含有量:65.0重量%、結晶融解熱量:50Joule/g、融点:110℃、MFR7.0g/10分
(6)プロピレン重合体(B-PP-1)
エチレン含有量:7.6重量%、非晶性エチレン・プロピレンランダム共重合体量:7.6重量%、MFR6.5g/10分
(7)プロピレン重合体(B-PP-2)
エチレン含有量:26.1重量%、非晶性エチレン・プロピレンランダム共重合体量:8.4重量%、MFR4.5g/10分
【0024】実施例1
R-PP-2:30重量%、PBC:35重量%及びEBR:35重量%とをドライブレンドした熱融着層を形成するポリオレフィン組成物と、B-PP-1:75重量%とR-PP-2:25重量%とドライブレンドした中間層を形成するポリオレフィン組成物及びB-PP-2:48.5重量%とB-PP-1:51.5重量%とドライブレンドした被印刷層を形成するポリオレフィン組成物とを別々の押出機に供給し、Tダイ法によって熱融着層/中間層/被印刷層からなる構成の3層共押出フイルムを得た。フィルムの総厚は30μmで、各層の厚みは熱融着層:中間層:被印刷層=4.5μm:21μm:4.5μmであった。
・・・
【0027】実施例4
実施例1で用いた中間層を形成するポリオレフィン組成物をPP:100重量%、被印刷層を形成するポリオレフィン組成物をR-PP-2:100重量%に夫々代える以外は実施例1と同様に行い、と同様に行い、3層共押出フイルムを得た。フィルムの総厚は30μmで、各層の厚みは熱融着層:中間層:被印刷層=4.5μm:21μm:4.5μmであった。」
「【表1】
[図:0001417656000001.jpg]
」
イ 引用文献1に記載された発明
上記アの記載を参酌し、特に実施例1に着目すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「熱融着層、プロピレン重合体(C)層及び基材層とから構成されるポリオレフィン積層フィルムに関し、
基材層が、無延伸であっても一軸あるいは二軸延伸フィルムであっても良い熱可塑性樹脂製フィルムであり、
熱融着層が、融点138℃のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(R-PP-2):30重量%、融点110℃のプロピレン・1-ブテンランダム共重合体(PBC):35重量%、及び融点69℃のエチレン・1-ブテンランダム共重合体(EBR):35重量%とをドライブレンドしたポリオレフィン組成物から形成され、
プロピレン重合体(C)が中間層と表面層(被印刷層)に分けられ、
中間層が、プロピレン重合体(B-PP-1):75重量%とプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(R-PP-2):25重量%とをドライブレンドしたポリオレフィン組成物から形成され、
被印刷層が、プロピレン重合体(B-PP-2):48.5重量%とプロピレン重合体(B-PP-1):51.5重量%とをドライブレンドしたポリオレフィン組成物から形成され、
熱融着層、中間層、被印刷層を別々の押出機に供給し、Tダイ法によって熱融着層/中間層/被印刷層からなる構成の無延伸3層共押出フィルムとして構成されるものであり、
熱融着層同士を接着した場合の110℃におけるヒートシール強度が10.1N/15mmであるポリオレフィン積層フィルム。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「熱融着層」、「基材層」、「積層フィルム」は、以下(イ)はさておき、本件発明1の「シーラントフィルム」、「基材フィルム」、「積層体」にひとまず相当する。
(イ)シーラントフィルムの要件について
a 本件発明1の要件(1)について
引用発明1の熱融着層を構成する「プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(R-PP-2)」は、オレフィン系(共)重合体に含まれるものであり、融点が「138℃」であるから、本件発明1のシーラントフィルムを構成する「融点が120℃以上、170℃以下であるオレフィン系(共)重合体(a-1)」に相当する。
引用発明1の熱融着層を構成する「プロピレン・1-ブテンランダム共重合体(PBC)」及び「エチレン・1-ブテンランダム共重合体(EBR)」は、いずれもオレフィン系(共)重合体に含まれるものであり、融点がそれぞれ「110℃」、「69℃」であるから、本件発明1のシーラントフィルムを構成する「融点が30℃以上、120℃未満であるオレフィン系(共)重合体(a-2)」に相当する。
b 本件発明1の要件(2)について
引用発明1の「熱融着層同士を接着した場合の110℃におけるヒートシール強度が10.1N/15mmである」ことは、本件発明1の「熱融着層同士を接着した場合の110℃におけるヒートシール強度が10N/15mm以上である」ことに相当する。
c 本件発明1の要件(3)について
引用発明1の熱融着層は、「ドライブレンドしたポリオレフィン組成物から形成され」たものであり、さらに「Tダイ法によって熱融着層/中間層/被印刷層からなる構成の無延伸3層共押出フィルムとして構成」されたものである。してみれば、引用発明1の熱融着層は、本件発明1と同様、「無延伸フィルム」である。
そうすると、本件発明1と引用発明1とは以下の一致点及び相違点を有する。
【一致点】
「下記要件(1)~(3)を満たすシーラントフィルムと、基材フィルムとを含む積層体。
(1)前記シーラントフィルムは、融点が120℃以上、170℃以下であるオレフィン系(共)重合体(a-1)、および融点が30℃以上、120℃未満であるオレフィン系(共)重合体(a-2)を含む熱融着層を少なくとも有する。
(2)前記熱融着層同士を接着した場合の110℃におけるヒートシール強度が10N/15mm以上である。
(3)前記シーラントフィルムは無延伸フィルムである。」
【相違点1】
本件発明1は、「基材フィルムは無延伸ポリプロピレンフィルムおよび二軸延伸ポリプロピレンフィルムから選ばれる少なくとも一種」であるのに対して、引用発明1の「基材層」は、「無延伸であっても一軸あるいは二軸延伸フィルムであっても良い」としているものの、その材質について「熱可塑性樹脂製フィルム」とするにとどまり、本件発明1のように「ポリプロピレンフィルム」を採用しているか不明である点。
【相違点2】
本件発明1は、「シーラントフィルムと基材フィルムとの質量の合計を100質量%としたときに、プロピレン(共)重合体及び/または1-ブテン(共)重合体を70質量%以上含む」のに対して、引用発明1は「基材層」の樹脂が特定されておらず、結果、「熱融着層と基材層」におけるプロピレン(共)重合体及び/または1-ブテン(共)重合体の割合が不明である点。
【相違点3】
融点が30度以上、120℃未満であるオレフィン系(共)重合体(a-2)中の共重合体の含有割合に関して、本件発明1は、「前記オレフィン系(共)重合体(a-2)は、プロピレン・α-オレフィン共重合体を50~90質量%および1-ブテン・α-オレフィン共重合体を10~50質量%含有する」のに対して、引用発明1は、「熱融着層」の「ポリオレフィン組成物」中、「プロピレン・1-ブテンランダム共重合体(PBC):35重量%」及び「エチレン・1-ブテンランダム共重合体(EBR):35重量%」であって、1-ブテン・α-オレフィン共重合体を10~50質量%含有していない点。
イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点3について検討する。
引用文献1には、「包装時における低温ヒートシール性に優れ、且つヒートシール部の易開封性に優れた包装用に適したポリオレフィン積層フィルムを得ると共に、ツイスト包装の製袋品の溶断シール部並びにガゼットシール部の融着強度の低下を招かずに、低温熱融着性及び易開封性に優れた包装用ポリオレフィン積層フィルムを得ることを目的」(【0004】)として、「熱融着層」を「融点が128~150℃のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)20~80重量%とプロピレン含有量が55~80重量%、DSCの熱分析に基づく結晶融解熱量が10~80Joule/gのプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)80~20重量%とから得られうる」(【0005】)ものとしたものである。すなわち、引用発明では、本件発明1における1-ブテン・α-オレフィン共重合体を採用することを想定していないし、当業者であっても、引用文献1に記載の課題から、エチレン・1-ブテンランダム共重合体(EBR)に代えて、1-ブテン・α-オレフィン共重合体を採用することは容易に想到できない。
してみれば、引用発明1において、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
ウ 本件発明1についてのまとめ
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記3と同様の理由により、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 取消理由2(明確性)について
コポリマーに関して、モノマー成分の質量分率が減少する順序で左から右へ記述されることは、プラスチックの分野における技術常識であり、また、本件明細書中で「プロピレン・α-オレフィン共重合体」と「1-ブテン・α-オレフィン共重合体」とが区別されて記載されていることから、「プロピレン・α-オレフィン共重合体」はモノマー成分の質量分率が「プロピレン」>「α-オレフィン」であり、「1-ブテン・α-オレフィン共重合体」はモノマー成分の質量分率が「1-ブテン」>「α-オレフィン」であると理解できる。
そうすると、請求項2における「前記オレフィン系(共)重合体(a-2)は、前記プロピレン・α-オレフィン共重合体としてプロピレン・エチレン共重合体を含有し、前記1-ブテン・α-オレフィン共重合体として1-ブテン・プロピレン共重合体を含有する」の記載は明確である。
よって、本件発明2~7は明確である。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由の概要
(1)申立理由1(サポート要件)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、次の点で発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しないため、請求項1~7に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア オレフィン系(共)重合体(a-2)の融点について
請求項1に係る発明には、オレフィン系(共)重合体(a-2)の融点が広範な数値範囲で規定されていることにより、110℃の温度条件ではヒートシール強度を発現できない態様も包含されているから、出願時の技術常識に照らしても、請求項1~7に係る発明の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
イ 共重合体のメルトフローレート(MFR)について
実施例で用いられている共重合体は、MFRが7~9g/10minという非常に狭い範囲内である。請求項1~7に係る発明ではMFRが特定されていないが、任意のMFRの樹脂を用いて請求項1~7に係る発明の効果を奏することは発明の詳細な説明には示されていないから、出願時の技術常識に照らしても、請求項1~7に係る発明の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(2)申立理由2(明確性)
本件特許の請求項1、3~7に係る発明は、次の点で明確でないから、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合しないため、請求項1、3~7に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1における「前記オレフィン系(共)重合体(a-2)は、プロピレン・α-オレフィン共重合体を50~90質量%および1-ブテン・α-オレフィン共重合体を10~50質量%含有する」の記載について、「1-ブテン・プロピレン共重合体」は、「プロピレン・α-オレフィン共重合体」にも、「1-ブテン・α-オレフィン共重合体」にも該当するため、上記記載は明確ではない。
(3)申立理由3(新規性)
請求項1、3、4、6に係る発明は、甲第1号証(引用文献1)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項1、3、4、6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2 当審の判断
(1)申立理由1(サポート要件)について
発明の詳細な説明の記載によると、本件発明の解決しようとする課題は「プロピレン系共重合体を主成分とし、低温ヒートシール性に優れ、さらには低温ヒートシール性および耐ブロッキング性等の物性と製造コストの低減との両立を図ることのできる材料を提供すること」(【0006】)(以下「本件課題」という。)である。
そして、本件課題に関して、発明の詳細な説明には、
「本発明は、例えば以下の[1]~[8]に関する。
[1] 下記要件(1)~(3)を満たすシーラントフィルムと、要件(4)を満たす基材フィルムとを含み、前記シーラントフィルムと基材フィルムとの質量の合計を100質量%としたときに、プロピレン(共)重合体及び/または1-ブテン(共)重合体を70質量%以上含む積層体。
(1)前記シーラントフィルムは、融点が30℃以上、120℃未満であるオレフィン系(共)重合体(a-2)を含む熱融着層を少なくとも有する。
(2)前記熱融着層同士を接着した場合の110℃におけるヒートシール強度が10N/15mm以上である。
(3)前記シーラントフィルムは無延伸フィルムである。
(4)前記基材フィルムは無延伸ポリプロピレンフィルムおよび二軸延伸ポリプロピレンフィルムから選ばれる少なくとも一種である。」(【0007】)と記載されている。
また、発明の詳細な説明には「オレフィン系(共)重合体(a-2)は、少なくとも、プロピレン・α-オレフィン共重合体および1-ブテン・α-オレフィン共重合体を含有することが好ましい。プロピレン・α-オレフィン共重合体は、一般的に、安価であるが、低温シール性および耐ブロッキング性が十分ではない。一方、1-ブテン・α-オレフィン共重合体は、一般的に、高価であるが、低温シール性および耐ブロッキング性に優れる。オレフィン系(共)重合体(a-2)が、少なくともプロピレン・α-オレフィン共重合体および1-ブテン・α-オレフィン共重合体を含有することにより、低温シール性および耐ブロッキング性に優れると共に、低温ヒートシール性および耐ブロッキング性等の物性と製造コストの低減との両立を実現することが容易になる。」(【0014】)と記載されている。
そうすると、当業者は、本件発明1における以下の(1)~(4)により、本件課題を解決することが認識できる;
(1)シーラントフィルムは、融点が30℃以上、120℃未満であるオレフィン系(共)重合体(a-2)を含む熱融着層を少なくとも有し、オレフィン系(共)重合体(a-2)は、プロピレン・α-オレフィン共重合体および1-ブテン・α-オレフィン共重合体を含有すること
(2)熱融着層同士を接着した場合の110℃におけるヒートシール強度が10N/15mm以上であること
(3)シーラントフィルムは無延伸フィルムである」こと
(4)基材フィルムは無延伸ポリプロピレンフィルムおよび二軸延伸ポリプロピレンフィルムから選ばれる少なくとも一種であり、シーラントフィルムと基材フィルムとの質量の合計を100質量%としたときに、プロピレン(共)重合体及び/または1-ブテン(共)重合体を70質量%以上含むこと
そして、本件発明1~7は、これらの事項を更に限定したものである。
したがって、本件発明1は、上記1(1)ア、イにかかわらず、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、申立人の主張は採用できない。
(2)申立理由2(明確性)について
コポリマーに関して、モノマー成分の質量分率が減少する順序で左から右へ記述されることは、プラスチックの分野における技術常識であり、また、本件明細書中で「プロピレン・α-オレフィン共重合体」と「1-ブテン・α-オレフィン共重合体」とが区別されて記載されていることから、「1-ブテン・プロピレン共重合体」は、「プロピレン・α-オレフィン共重合体」ではなく、「1-ブテン・α-オレフィン共重合体」に該当すると理解できる。
よって、申立人の主張は採用できない。
(3)申立理由3(新規性)について
上記第4の1(2)で説示したように、本件発明1と引用発明1とは上記相違点1~3で相違しており、少なくとも相違点3は実質的な相違点であるから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明ではない。
また、本件発明3、4、6は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、同様の理由により、引用文献1に記載された発明ではない。
よって、申立人の主張は採用できない。
第6 むすび
したがって、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700537