特許異議申立
2025-700059
電力通信管
- 審判番号
- 2025-700059
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-056385
- 登録番号
- 7514642
- 請求日
- 2025年01月10日
- 審決日
- 2025年10月23日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】西澤 和純
- 【権利者代理人】川越 雄一郎
- 【権利者代理人】大槻 真紀子
- 【権利者代理人】山口 洋
- 【異議申立人】奥村 一正
- 審判長/審判官
- 審判長 林 毅
- 審判官 吉田 美彦
- 審判官 松崎 孝大
- 分類
- P1651.536-Z (H02G) / P1651.537-Z (H02G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7514642号発明「電力通信管」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7514642号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7514642号の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和2年3月26日(優先権主張 平成31年3月29日)に出願され、令和6年7月3日にその特許権の設定登録がされ、同年7月11日に特許掲載公報が発行され、その後、令和7年1月10日に特許異議申立人奥村一正(以下、「申立人」という。)による請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立てがされ、同年5月8日付け取消理由通知書が通知されたが、これに対し、特許権者からの応答はなかった。
第2 本件特許発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」といい、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。
1 本件特許発明1
地中に埋設される電力通信管であって、
塩化ビニル系樹脂と顔料とを含む灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された管体を備えた直管部を備え、
前記顔料が、非カーボン系無機顔料及び有機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記直管部の内周面の波長800~1100nmにおける赤外線反射率の平均値が30%以上であることを特徴とする電力通信管。
2 本件特許発明2
前記直管部の端部に受口部を備える、請求項1に記載の電力通信管。
3 本件特許発明3
地中に埋設される電力通信管であって、
塩化ビニル系樹脂と顔料とを含む灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された管体を備えた直管部を備え、
前記顔料が、非カーボン系無機顔料及び有機顔料の混合物からなり、
前記有機顔料が青色有機顔料であり、
前記直管部の内周面の波長800~1100nmにおける赤外線反射率の平均値が20%以上であることを特徴とする電力通信管。
4 本件特許発明4
地中に埋設される電力通信管であって、
塩化ビニル系樹脂と顔料とを含む灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された管体を備えた直管部を備え、
前記顔料が、非カーボン系無機顔料のみからなり、
前記非カーボン系無機顔料が、有色を呈する非カーボン系無機顔料と白色を呈する非カーボン系無機顔料との混合物からなり、
前記有色を呈する非カーボン系無機顔料が、酸化クロムと酸化鉄との複合酸化物と、青色無機顔料との混合物からなり、
前記直管部の内周面の波長800~1100nmにおける赤外線反射率の平均値が20%以上であることを特徴とする電力通信管。
5 本件特許発明5
地中に埋設される電力通信管であって、
塩化ビニル系樹脂と顔料とを含む灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された管体と、前記管体の内周面上に位置する塗膜とを備えた直管部を備え、
前記塗膜が、非カーボン系無機顔料及び有機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記直管部の内周面の赤外線反射率が20%以上であることを特徴とする電力通信管。
6 本件特許発明6
前記塗膜がカーボンブラックを実質的に含まない、請求項5に記載の電力通信管。
第3 特許異議の申立ての理由の概要及び証拠方法
1 特許異議の申立ての理由の概要
特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由の概要は次のとおりのものと認められる。
(1)申立理由1(委任省令要件違反)
本件特許の明細書は、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでなく、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(実施可能要件違反)
本件特許の明細書は、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(サポート要件違反)
本件特許発明1ないし6は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(新規性欠如)
本件特許発明1及び2は、甲第6号証に記載された発明であり、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(5)申立理由5(進歩性欠如)
本件特許発明1ないし6は、甲第6号証に記載の発明及び周知技術(甲第7号証ないし甲第17号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 証拠方法
申立人は、証拠として、以下の文献を提出している。以下、各甲号証の番号に応じて、甲第1号証ないし甲第17号証をそれぞれ、「甲1」ないし「甲17」という場合がある。
甲1:圧縮強度及び耐衝撃試験結果の報告書
甲2:赤外線反射率測定結果の報告書
甲3:微量カーボン検出試験結果の報告書
甲4:電力用管路材の規格
甲5:昇温試験結果の報告書
甲6:積水化学工業株式会社のカタログ
甲7:特許第5108224号公報
甲8:特開2001-114971号公報
甲9:特開2006-103017号公報
甲10:特開2017-2944号公報
甲11:特開平10-296821号公報
甲12:特開2006-250215号公報
甲13:特開2017-78100号公報
甲14:JIS K 6741 硬質ポリ塩化ビニル管
甲15:JIS C 8430 硬質ビニル電線管
甲16:特開2013-159774号公報
甲17:CCVP管の規格
第4 甲号証の記載
申立理由4及び5において引用されている甲6~甲17には、次のとおりの記載がある。(なお、下線は、強調のため当審が付与した。以降においても同様。)
1 甲第6号証について
(1)甲第6号証の記載事項
ア
[図:0001431138000001.jpg]
イ
[図:0001431138000002.jpg]
ウ
[図:0001431138000003.jpg]
エ
[図:0001431138000004.jpg]
(2)甲6発明
上記(1)ウの記載によれば、甲6に記載の「電力ケーブル保護管ECVP」は、「直管」を備えており、当該「直管」は「灰色」であると認められる。また、上記(1)エの記載によれば、当該「電力ケーブル保護管ECVP」は「地中に埋設される」ものであると認められる。
なお、甲6には、「新性能基準」における「圧縮強度」の項目において「塩ビ:変更なし」、「PE:JIS C3653を満足すること(60℃)」という記載はあるものの、「ECVP」が「PE」ではなく「塩ビ」で構成されたものであるとまではいえない。
以上のことから、上記(1)より、甲第6号証には、次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
「地中に埋設される電力ケーブル保護管ECVPであって、
灰色の直管を備えた電力ケーブル保護管ECVP。」
2 甲第7号証について
(1)甲第7号証の記載事項
甲第7号証には、次の事項が記載されている。
「【0047】
上記有機系の濃色系顔料及び酸化チタン以外の顔料としては特に限定されず、酸化チタン以外の酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系、カーボンブラック等の無機顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。」
3 甲第8号証について
(1)甲第8号証の記載事項
甲第8号証には、次の事項が記載されている。
「【0027】着色剤の内の顔料成分は、従来から熱可塑性樹脂に使用されている公知の顔料が使用でき、所望の色に応じて添加すればよい。例えば、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、ジアリライド系、キナクリドン系、イソインドリノン系、バット系、フタロシアニン系、ジオキサン系などの有機顔料;酸化チタン、カーボンブラック、群青、コバルトブルー、弁柄、チタンイエロー、黄鉛などの無機顔料である。」
4 甲第9号証について
(1)甲第9号証の記載事項
甲第9号証には、次の事項が記載されている。
「【0038】
接着性付与剤としては、例えば、シランカップリング剤などのカップリング剤が挙げられる。着色剤としては、例えば、酸化鉄、酸化クロム、酸化チタンなどの無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどの有機顔料が挙げられる。揺変付与剤としては、例えば、(充填剤としても挙げた)脂肪酸処理炭酸カルシウム、水添ひまし油、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、コロイダルシリカが挙げられる。前記各添加剤成分はそれぞれ1種又は2種以上を混合して使用することができる。」
5 甲第10号証について
(1)甲第10号証の記載事項
甲第10号証には、次の事項が記載されている。
「【0003】
下記の特許文献1には、親水化材料を樹脂管の内表面に塗布するか、又は、樹脂管を多層構造として、内層の内表面に親水性の材料を使用する等して、樹脂管の内面に親水性の膜又は層を形成させる方法が開示されている。」
「【0079】
上記顔料としては特に限定されず、有機顔料及び無機顔料が挙げられる。上記有機顔料としては、アゾ系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、スレン系有機顔料、及び染料レーキ系有機顔料等が挙げられる。上記無機顔料としては、酸化物系無機顔料、クロム酸モリブデン系無機顔料、硫化物・セレン化物系無機顔料、及びフェロシアニン化物系無機顔料等が挙げられる。」
「【0096】
(実施例3)
塩化ビニル系共重合体に用いる親水性モノマーをN-ビニル-2-ピロリドンに変更し、得られた塩化ビニル系共重合体をテトラヒドロフランに膨潤させ、塩化ビニル系共重合体が10重量%含有される溶液を調製した。その溶液を塩化ビニル樹脂管(積水化学工業社製「VP50」)の内面に塗装した。」
6 甲第11号証について
(1)甲第11号証の記載事項
甲第11号証には、次の事項が記載されている。
「【0020】上記充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等が挙げられる。上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系等の有機顔料;酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系統の無機顔料等が挙げられる。」
7 甲第12号証について
(1)甲第12号証の記載事項
甲第12号証には、次の事項が記載されている。
「【0014】
滑剤としては、例えばポリエチレン系やパラフィン系のワックス類、各種エステルワックス類、ステアリン酸やリシノール酸等の有機酸類、ステアリルアルコール等の有機アルコール類、ジメチルビスアミド等のアミド系滑剤の単独または二種以上を使用できる。
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘブチルフタレート(DHP)、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジウンデシルフタレート(DUP)、ジブチルペンシルフタレート(BBP)等のフタル酸エステル、ジ-2-エチルヘキシルアジベート(DOA)、ジイソノニルアジベート(DINA)、ジイソデシルアジベート(DIDA)等のアジピン酸エステル等を使用できる。可塑剤の添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し10重量部以下が好ましい。
顔料としては、例えば酸化チタン、カーボンブラックの他、アゾ系、ベンダイミダゾロン系、ジアリライド系、キナクリンドン系、イソインドリノン系、バット系、フタロシアニン系、ジオキサン系等の有機顔料、群青、コバルトブルー、べんがら、チタンイエロー、黄鉛等の無機顔料を挙げることができる。」
8 甲第13号証について
(1)甲第13号証の記載事項
甲第13号証には、次の事項が記載されている。
「【0085】
顔料としては、無機含量(酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、硫化カドミウム等)、有機顔料(アゾレーキ系、チオインジゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系)が挙げられる。染料としてはアゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系等が挙げられる。これら顔料および染料の添加量は、特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、合計で、通常5質量部以下、好ましくは0.1~3質量部である。」
9 甲第14号証について
(1)甲第14号証の記載事項
ア 第8頁
[図:0001431138000005.jpg]
10 甲第15号証について
(1)甲第15号証の記載事項
ア 第2頁
[図:0001431138000006.jpg]
11 甲第16号証について
(1)甲第16号証の記載事項
甲第16号証には、次の事項が記載されている。
「【0006】
有機系顔料としては、キノン系顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料等が挙げられる。また、これらを更に具体的に例示すれば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、インダンスレンブルー、ハンザイエロー、インダンスレンイエロー、インダンスレンレッド、ポリアゾレッド、イソインドリノンイエロー、キナクリドン等が挙げられる。」
「【0024】
上記の無機系顔料としては特に限定されず、Fe-Co-Cr系、Cu-Cr系、Fe-Cr系、Fe-Mn系、Cu-Mn系、Cu-Mg系、Cu-Bi系、Mn-Bi系、Y-Mn系、Fe-Co-Al-Mg系等の複合酸化物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。」
「【0046】
上記の各種添加剤を、上記の塩化ビニル系樹脂に混合する方法としては、特に限定されず、例えば、ホットブレンドによる方法、コールドブレンドによる方法等が挙げられる。
【0047】
この発明の硬質塩化ビニル系樹脂管の成形方法は、従来公知の方法でよく、例えば押出成形方法が好適に用いられる。
以下に、具体的な実施例について説明する。
【0048】
(実施例1)
[塩化ビニル系樹脂組成物の作製]
塩化ビニル系単独重合体(商品名「S1001ST」、株式会社カネカ製)、鉛系安定剤、滑剤及び炭酸カルシウムを含んだ組成物に、塩化ビニル系単独重合体100質量部に対し、Fe-Mn系複合酸化物無機系顔料0.1質量部をスーパーミキサーにて攪拌混合して、塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0049】
[硬質塩化ビニル系樹脂管の成形]
得られた塩化ビニル系樹脂組成物を2軸異方向回転押出機に供給し、外径114mm、肉厚3.5mm、長さ4mの硬質塩化ビニル系樹脂管を得た。
【0050】
(実施例2)
実施例1のFe-Mn系複合酸化物無機系顔料0.1質量部の代わりに、Fe-Cr系複合酸化物無機系顔料0.1質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして硬質塩化ビニル系樹脂管を得た。
【0051】
(比較例1)
実施例1のFe-Mn系複合酸化物無機系顔料0.1質量部の代わりに、カーボンブラック0.01質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして硬質塩化ビニル系樹脂管を得た。
【0052】
(比較例2)
実施例1のFe-Mn系複合酸化物無機系顔料0.1質量部の代わりに、有機系顔料(青色、赤色、黄色顔料)0.05質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして硬質塩化ビニル系樹脂管を得た。
【0053】
[硬質塩化ビニル系樹脂管の物性評価]
実施例1、2及び比較例1、2で得られた硬質塩化ビニル系樹脂管について、管温度及びΔb*を以下の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0054】
(管温度)
室温22℃±2°の雰囲気下において、得られた硬質塩化ビニル系樹脂管に赤外線ランプ(IR100/110V250WRH、岩崎電気社製)を40cmの距離より2時間照射し、管頂の管内面側に熱電対を貼り、管温度を測定した。
【0055】
(色度測定)
得られた硬質塩化ビニル系樹脂管の管頂の色度b*を色彩色差計(CR-600、コニカミノルタ社製)にて測定し、その値をb0とした。その後、硬質塩化ビニル系樹脂管を太陽光下に静置し、積算日射量が2000MJ/m2に達した後、管頂のb*を同様に色彩色差計にて測定し、その値をb1とし、Δb*(=b1-b0)を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
[図:0001431138000007.jpg]
【0057】
表1の結果より、実施例1、2は管温度が60℃以下となり、赤外線による管の温度上昇を抑制することができた。
さらに、実施例1、2は色調Δb*が0以上となり管の色調が青変することを抑制することができた。
【0058】
また、比較例1は管温度が60℃をこえてしまい、比較例2は色調Δb*が0より小さくなり管表面の色調が青色変色する結果となった。」
12 甲第17号証について
(1)甲第17号証の記載事項
ア 第1頁
[図:0001431138000008.jpg]
第5 令和7年5月8日付けの取消理由通知書に記載した取消理由について
当審が令和7年5月8日付けで特許権者に通知した取消理由(以下「取 消理由」という。)は、次のとおりである。
「1.(実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2.(サポート要件)本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
●理由1(実施可能要件)について
・請求項 1ないし6
請求項1に係る発明は、「地中に埋設される電力通信管」であって、「塩化ビニル系樹脂と顔料とを含む灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された管体を備えた直管部」を備え、「前記顔料が、非カーボン系無機顔料及び有機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種」を含み、「前記直管部の内周面の波長800~1100nmにおける赤外線反射率の平均値が30%以上である」という構成を有するものである。
そして、明細書の【0007】ないし【0010】の記載によれば、当該構成を有する電力通信管は、高温下でも変形しにくいという特性を備えるものであると解される。
ここで、請求項1に係る発明の実施例として、明細書には、次のように記載されている。(下線は当審で付与した。以下同様である。)
・・・(中略)・・・
以上によれば、請求項1に係る発明の実施例として、明細書には、請求項1に係る発明に対応する電力通信管(実施例1ないし4)を作製する方法(【0062】ないし【0064】、【0068】、【表1】)、電力通信管の内周面の赤外線反射率を測定する方法(【0065】)、電力通信管の圧縮強度を試験する方法(【0066】)、電力通信管の耐衝撃性を試験する方法(【0067】)、電力通信管(実施例及び比較例)の赤外線反射率、圧縮強度、耐衝撃性の結果(【表1】)がそれぞれ記載されているといえる。
ここで、【0066】に記載された圧縮強度試験では、電力通信管から長さ50mmを切り取って作製した管状の試験体に対して赤外線を照射しているところ、照射完了直後に圧縮強度試験を行うことにより、「高温下でも変形しにくいという特性」を評価しているものと認められる。
しかしながら、【0066】の記載を参酌しても、試験体に対して赤外線を照射する方法が不明である。すなわち、試験体が管状(長さ50mm)であるところ、【0066】における「赤外線ランプ」の「照射部」を「試験体の内表面から40cm離間して対向するよう設置」するという記載からは、長さが50mmである内表面のどこを起点として40cm離間しているのか、起点とした内表面からどのような角度に配置しているのかを把握することができない。また、「試験体を回転させながら」と記載されているが、どこを回転軸としているのか、どのような回転数であるのかを把握することができない。なお、「試験体の内周面に赤外線が均一に照射されるよう」と記載されているところ、【0064】の記載によれば、電力通信管の外径は114mmであるから、「赤外線ランプ」の「照射部」は管の内部ではなく外部に配置されることは明らかであるが、「赤外線ランプ」の「照射部」を管の外部のどこに配置して試験体をどのように回転すれば「試験体の内周面に赤外線が均一に照射」できるのか、本願優先日前の技術常識を参酌しても不明である。
したがって、明細書には、圧縮強度試験において、どのように試験体に対して赤外線を照射しているのかについて、明確かつ十分に記載されているとはいえず、「高温下でも変形しにくいという特性」を評価するための圧縮強度試験を当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施することができるものとはいえない。
また、【0067】に記載された耐衝撃性試験も、同様の理由により、当業者が耐衝撃性試験を過度の試行錯誤を要することなく実施することができるものとはいえない。(なお、【0067】に記載された耐衝撃性試験においては、試験体を回転させずに赤外線を照射しており、異なる手法による圧縮強度試験により同じ特性を評価できるとはいえないことは明らかである。)
以上のとおりであるから、発明の詳細な説明は、当業者が、その記載及び本願優先日前における技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、請求項1に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
請求項3に係る発明は実施例2及び3の電力通信管に対応し、請求項4に係る発明は実施例1の電力通信管に対応し、請求項5に係る発明は請求項1に係る発明の顔料と同等の構成である塗膜を備えるものであるところ、同様の理由により、発明の詳細な説明は、当業者が請求項3ないし5に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
請求項1を引用する請求項2、請求項5を引用する請求項6についても同様である。
なお、特許異議申立人が、令和7年1月10日に提出された特許異議申立書の第21頁において、「本件特許の明細書の記載からは、赤外線ランプを内周面に対してどのような角度で照射するのか、どのような試験体をどのような回転数で回転させるのか、対向させるのは赤外線ランプ同士であるのか、又は赤外線ランプと試験体の内表面であるのか全く不明である。」と主張している点も併せて参照のこと。
・請求項 4
請求項4には「前記顔料が、非カーボン系無機顔料のみからなり、前記非カーボン系無機顔料が、有色を呈する非カーボン系無機顔料と白色を呈する非カーボン系無機顔料との混合物からなり、前記有色を呈する非カーボン系無機顔料が、酸化クロムと酸化鉄との複合酸化物と、青色無機顔料との混合物からな」ることが記載されているところ、明細書の【0062】、【0063】、【表1】には、請求項4に係る発明に対応する実施例として、白色無機顔料である酸化チタン(0.05質量部)、黒色無機顔料であるクロム化合物(0.02質量部)、青色無機顔料であるコバルトブルー(0.001質量部)を配合した顔料を含む電力通信管(実施例1)が記載されているのみであり、赤外線反射率、圧縮強度、耐衝撃性に関して、請求項4に係る顔料の配合のうち実施例1以外の配合においても、実施例1と同等の結果が得られることについて、明細書には記載も示唆もされていない。また、実施例1と同等の結果が得られる顔料の配合が本願優先日前における技術常識であるとはいえない。
以上のとおりであるから、発明の詳細な説明は、当業者が、その記載及び本願優先日前における技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、請求項4に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者が請求項4に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
・請求項 5、6
請求項5には「塩化ビニル系樹脂と顔料とを含む灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された管体と、前記管体の内周面上に位置する塗膜とを備えた直管部を備え」ること、及び「前記塗膜が、非カーボン系無機顔料及び有機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含」むことが記載されている。
ここで、管体の内周面上に位置する塗膜について、明細書には、次の記載がある。
・・・(中略)・・・
しかしながら、【0059】に記載の顔料(I)を含む塗膜を管体の内周面上に備えることによって、顔料(I)を含む硬質塩化ビニル系樹脂組成物で管体を構成することと同等の作用効果が得られることについて、明細書にはその根拠が具体的に示されておらず、また、本願優先日前における技術常識を参酌しても不明である。したがって、顔料(I)を含む硬質塩化ビニル系樹脂組成物で管体を構成することと同等の作用効果が得られるように、顔料(I)を含む塗膜を管体の内周面上に備えることを、当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施できるとはいえない。
以上のとおりであるから、発明の詳細な説明は、当業者が、その記載及び本願優先日前における技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、請求項5に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者が請求項5に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
請求項5を引用する請求項6についても同様である。
●理由2(サポート要件)について
・請求項 1、2
請求項1には「前記顔料が、非カーボン系無機顔料及び有機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含」むこと、及び「前記直管部の内周面の波長800~1100nmにおける赤外線反射率の平均値が30%以上である」ことが記載されている。
一方、明細書の【0062】、【0063】、【表1】には、請求項1に係る発明に対応する実施例1ないし4の赤外線反射率の平均値の下限が31%であることは記載されているが、赤外線反射率の平均値が30%である実施例については、記載も示唆もされておらず、また、赤外線反射率の平均値が30%となる請求項1に記載の顔料の配合が本願優先日前における技術常識であるとはいえない。
したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
請求項1を引用する請求項2についても同様である。
・請求項 3
請求項3には「前記顔料が、非カーボン系無機顔料及び有機顔料の混合物からなり、前記有機顔料が青色有機顔料であ」ること、及び「前記直管部の内周面の波長800~1100nmにおける赤外線反射率の平均値が20%以上である」ことが記載されている。
一方、明細書の【0062】、【0063】、【表1】には、請求項3に係る発明に対応する実施例2、3の赤外線反射率の平均値の下限が31%であることは記載されているが、赤外線反射率の平均値が20~30%である実施例については、記載も示唆もされておらず、また、赤外線反射率の平均値が20~30%となる請求項3に記載の顔料の配合が本願優先日前における技術常識であるとはいえない。
したがって、請求項3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
・請求項 4
請求項4には「前記顔料が、非カーボン系無機顔料のみからなり、前記非カーボン系無機顔料が、有色を呈する非カーボン系無機顔料と白色を呈する非カーボン系無機顔料との混合物からなり、前記有色を呈する非カーボン系無機顔料が、酸化クロムと酸化鉄との複合酸化物と、青色無機顔料との混合物からな」ること、及び「前記直管部の内周面の波長800~1100nmにおける赤外線反射率の平均値が20%以上である」ことが記載されている。
一方、明細書の【0062】、【0063】、【表1】には、請求項4に係る発明に対応する実施例1の赤外線反射率の平均値が32%であることは記載されているが、赤外線反射率の平均値が32%以外である実施例については、記載も示唆もされておらず、また、赤外線反射率の平均値が32%以外となる請求項4に記載の顔料の配合が本願優先日前における技術常識であるとはいえない。
したがって、請求項4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
・請求項 5、6
請求項5には「塩化ビニル系樹脂と顔料とを含む灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された管体と、前記管体の内周面上に位置する塗膜とを備えた直管部を備え」こと、「前記塗膜が、非カーボン系無機顔料及び有機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含」むこと、及び「前記直管部の内周面の赤外線反射率が20%以上である」ことが記載されている。
一方、明細書には「管体の内周面上に塗膜を備える場合、直管部の内周面は塗膜の表面である。したがって、電力通信管が電力管である場合、塗膜の表面の赤外線反射率は20%以上である。」(【0057】)と記載されているのみであり、請求項5に係る発明に対応する実施例については記載も示唆もされておらず、また、赤外線反射率の平均値が20%以上となる請求項5に記載の塗膜を備えた直管部が本願優先日前における技術常識であるとはいえない。
したがって、請求項5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
請求項5を引用する請求項6についても同様である。」
第6 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)
上記取消理由に対し、特許権者からの応答はなかった。そして、上記取消理由は妥当なものと認められるから、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)
上記取消理由に対し、特許権者からの応答はなかった。そして、上記取消理由は妥当なものと認められるから、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
2 取消理由通知書で採用しなかった申立理由について
(1)申立理由1(委任省令要件違反)
本件特許の明細書の【0003】ないし【0008】の記載によれば、本件特許が解決しようとする課題は、灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された、高温下となる電線共同溝内で変形しにくい電力通信管を提供することであると認められ、【0009】には、「電力通信管」が備える「塩化ビニル系樹脂と顔料とを含む灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された管体を備えた直管部」について、当該「顔料」を所定の組成とし、当該「直管部」の内周面の「赤外線反射率」を所定の値以上とすることが、上記課題を解決する構成であることが記載されているところ、本件特許の明細書には、本件特許の請求項1に記載された構成の技術上の意義について、形式上、記載されているものといえるから、本件特許の明細書は、経済産業省令で定めるところにより記載されたものであるといえる。本件特許の請求項2ないし6についても同様である。よって、申立人が主張する申立理由1(委任省令要件違反)は理由がない。
(2)申立理由2(実施可能要件違反)、申立理由3(サポート要件違反)
申立人は、特許異議申立書において、「甲第1号証は、・・・(中略)・・・本件特許の明細書の実施例のとおり圧縮強度試験及び耐衝撃性試験を行ったときの内周面の温度測定結果を示す。」(第16頁)、「甲第1号証に示すとおり、・・・(中略)・・・本件特許の明細書の実施例のとおり・・・(中略)・・・試験体の内周面の温度測定をおこなった」(第19頁)と説明している。しかしながら、上記取消理由の「理由1(実施可能要件)について」で指摘したとおり、本件特許の明細書には、圧縮強度試験及び耐衝撃性試験において、どのように試験体に対して赤外線を照射しているのかについて、明確かつ十分に記載されていないから、甲第1号証が「本件特許の明細書の実施例のとおり圧縮強度試験及び耐衝撃性試験を行った」ものであるのか否かが不明である。
また、申立人は、特許異議申立書において、「甲第5号証は、本件特許の明細書の実施例とは異なった方法により、試験体の内周面に赤外線を30分間照射したときの昇温測定効果を示す。」(第21頁)と説明している。
そうすると、「本件特許の明細書の実施例のとおり圧縮強度試験及び耐衝撃性試験を行った」ものであるのか否かが不明である甲第1号証、及び、「本件特許の明細書の実施例とは異なった方法」である甲第5号証は、本件特許の明細書についての実施可能要件違反、及び、本件特許発明についてのサポート要件違反の理由の証拠として、採用することはできない。
よって、申立人が主張する申立理由2(実施可能要件)及び申立理由3(サポート要件)は理由がない。
(3)申立理由4(新規性欠如)
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲6発明とを対比する。
a 本件特許の明細書の【0012】には「本発明において「電力通信管」は、電力管及び通信管の総称である。「電力管」は、地中に埋設される電力ケーブルを収容する。「通信管」は、電力ケーブルとともに地中に埋設される通信ケーブルを収容する。」と記載されているところ、本件特許発明1における「電力通信管」は「電力ケーブルを収容する」「電力管」を含むものと解される
したがって、甲6発明の「地中に埋設される電力ケーブル保護管ECVP」は、後述する相違点を除いて、本件特許発明1の「地中に埋設される電力通信管」に相当する。
b 甲6発明の「灰色の直管」と本件特許発明1の「塩化ビニル系樹脂と顔料とを含む灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された管体を備えた直管部」とは、以下の点(相違点1)で相違するものの、「灰色の管体を備えた直管部」である点で共通する。
(イ)一致点・相違点
以上のことから、本件特許発明1と甲6発明とは、以下の点において一致ないし相違する。
[一致点]
「地中に埋設される電力通信管であって、
灰色の管体を備えた直管部を備えることを特徴とする電力通信管。」
[相違点]
(相違点1)本件特許発明1の「管体」は「塩化ビニル系樹脂」を含む「硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された」ものであるのに対し、甲6発明の「電力ケーブル保護管ECVP」の「直管」が「塩化ビニル系樹脂」を含む「硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された」ものであることが特定されていない点。
(相違点2)本件特許発明1の「管体」は「顔料」を含み、当該「顔料」が「非カーボン系無機顔料及び有機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含」むのに対し、甲6発明の「電力ケーブル保護管ECVP」の「直管」は、「非カーボン系無機顔料及び有機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含」む「顔料」を含むことを具体的に特定していない点。
(相違点3)本件特許発明1の「電力通信管」は「前記直管部の内周面の波長800~1100nmにおける赤外線反射率の平均値が30%以上である」のに対し、甲6発明の「電力ケーブル保護管ECVP」は、当該構成について具体的に特定していない点。
したがって、本件特許発明1と甲6発明は、上記相違点1ないし3において実質的に相違するから、同一とはいえない。
なお、申立人は特許異議申立書(第25~26頁)において、甲6における圧縮強度及び耐衝撃強度が、本件特許の明細書の実施例における圧縮強度試験及び耐衝撃性試験の要求性能と同一であり、甲6発明と本件特許発明1は、作用効果において差は見られないから、甲6発明は「前記直管部の内周面の波長800~1100nmにおける赤外線反射率の平均値が30%以上であること」を充足する蓋然性が極めて高い旨を主張している。
しかしながら、甲6には「直管部の内周面」の「赤外線反射率」については何ら記載も示唆もされていない。また、甲6には、圧縮強度と耐衝撃強度のそれぞれの試験の新基準、及び、ECVPが当該新基準に「合格」したことが記載されているに過ぎず、甲6発明と本件特許発明1の作用効果において差が見られないとまではいえない。さらに、電力ケーブル保護管の直管の圧縮強度及び耐衝撃強度がその内面の「赤外線反射率」と一意の関係にないことが本件優先日前における技術常識であることを踏まえると、仮に、甲6発明と本件特許発明1の圧縮強度及び耐衝撃強度において差が見られないとしても、甲6発明が本件特許発明1と同様に「前記直管部の内周面の波長800~1100nmにおける赤外線反射率の平均値が30%以上である」ことを一意に特定することはできない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1を構成として含むものである。したがって、上記アで示した理由と同じく、本件特許発明2と甲6発明は相違するから、同一とはいえない。
ウ 小括
したがって、本件特許発明1及び2は、甲6発明と同一とはいえず、申立人が主張する申立理由1(新規性欠如)は理由がない。
(4)申立理由5(進歩性欠如)
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
上記(3)アで示したとおり、本件特許発明1と甲6発明とは、上記相違点1ないし3において相違する。
(イ)判断
事案に鑑みて、相違点3について先に検討する。
申立人は特許異議申立書(第27頁)において、甲6発明と本件特許発明1は、作用効果についての差は見られないから、甲6発明において「前記直管部の内周面の波長800~1100nmにおける赤外線反射率の平均値が30%以上である」とすることは、単なる設計事項に過ぎない旨を主張している。
しかしながら、上記(3)アで示したとおり、甲6には「直管部の内周面」の「赤外線反射率」については何ら記載も示唆もされていないから、甲6発明において「前記直管部の内周面の波長800~1100nmにおける赤外線反射率の平均値が30%以上である」とすることを、単なる設計事項であるということはできない。
また、甲第7号証ないし甲第17号証のいずれにも、「前記直管部の内周面の波長800~1100nmにおける赤外線反射率の平均値が30%以上である」ことは何ら記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許発明1は、甲6発明及び周知技術(甲第7号証ないし甲第17号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1を構成として含むものである。したがって、上記アで示した理由と同じく、本件特許発明2は、甲6発明及び周知技術(甲第7号証ないし甲第17号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は「前記直管部の内周面の波長800~1100nmにおける赤外線反射率の平均値が20%以上である」という構成を含むものであるところ、上記アで示した理由と同様に、本件特許発明3は、甲6発明及び周知技術(甲第7号証ないし甲第17号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件特許発明4について
本件特許発明4は「前記直管部の内周面の波長800~1100nmにおける赤外線反射率の平均値が20%以上である」という構成を含むものであるところ、上記アで示した理由と同様に、本件特許発明4は、甲6発明及び周知技術(甲第7号証ないし甲第17号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件特許発明5について
本件特許発明5は「前記直管部の内周面の赤外線反射率が20%以上である」という構成を含むものであるところ、上記アで示した理由と同様に、本件特許発明5は、甲6発明及び周知技術(甲第7号証ないし甲第17号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 本件特許発明6について
本件特許発明6は、本件特許発明5を構成として含むものである。したがって、上記オで示した理由と同じく、本件特許発明6は、甲6発明及び周知技術(甲第7号証ないし甲第17号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
キ 小括
したがって、本件特許発明1ないし6は、甲6発明及び周知技術(甲第7号証ないし甲第17号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、申立人が主張する申立理由2(進歩性欠如)は理由がない。
第7 むすび
上記第6のとおり、本件請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700059