特許異議申立
2024-700483
タブリード及び非水電解質デバイス
- 審判番号
- 2024-700483
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-169167
- 登録番号
- 7385543
- 請求日
- 2024年05月22日
- 審決日
- 2024年08月20日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】双葉電子工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
- 【権利者代理人】岩田 雅信
- 【権利者代理人】中川 裕人
- 【異議申立人】松山 徳子
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 衣鳩 文彦
- 審判官 寺谷 大亮
- 分類
- P1651.121-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7385543号発明「タブリード及び非水電解質デバイス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7385543号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7385543号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和2年10月6日に出願され、令和5年11月14日にその特許権の設定登録がされ、同年11月22日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~7に係る特許に対し、令和6年5月22日に特許異議申立人 松山 徳子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、請求項1及び請求項7における符号1A~1I、7A~7Jは、発明特定事項の分説のために当審で付したものであり、以下、分説した発明特定事項を、それぞれ「特定事項1A」~「特定事項1I」、「特定事項7A」~「特定事項7J」のように参照する。
「【請求項1】
1A ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート型の非水電解質デバイスに用いられるタブリードであって、
1B 金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される外部端子部として設けられたリード端子と、
1C 前記リード端子に両側から密着され前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する一対のフィルム部とを備え、
1D 前記フィルム部は厚み方向において第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムと第3の樹脂フィルムの三層にされると共に前記第1の樹脂フィルムが熱圧着により前記リード端子に密着され前記第3の樹脂フィルムが熱圧着により前記ラミネート材に密着され、
1E 前記第2の樹脂フィルムは内部に分散された乾燥剤を有すると共に前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムより耐熱性が高くされ、
1F 前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されず、
1G 前記第1の樹脂フィルム又は前記第3の樹脂フィルムの少なくとも一方に前記第2の樹脂フィルムにおける前記電極接続部側の端面と前記外部端子部側の端面とを覆う被覆部が設けられ、
1H 前記被覆部が前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムの各一部によって設けられた
1I タブリード。
【請求項2】
前記被覆部は前記フィルム部の熱圧着時に前記第1の樹脂フィルム又は前記第3の樹脂フィルムの少なくとも一方が熱によって変形されることにより形成される
請求項1に記載のタブリード。
【請求項3】
前記第2の樹脂フィルムの二つの前記端面を結ぶ方向を被覆方向とし前記被覆部の前記被覆方向における厚さを被覆厚さとしたとき、
前記被覆厚さが0.1mm以上にされた
請求項1又は請求項2に記載のタブリード。
【請求項4】
前記第2の樹脂フィルムにおける前記乾燥剤の含有率が重量比で5%以上にされた
請求項3に記載のタブリード。
【請求項5】
前記第2の樹脂フィルムの厚みが20μm以上にされた
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載のタブリード。
【請求項6】
前記第2の樹脂フィルムが架橋された
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5に記載のタブリード。
【請求項7】
7A ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されタブリードが設けられたラミネート型の非水電解質デバイスであって、
7B 前記タブリードは、
7C 金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される外部端子部として設けられたリード端子と、
7D 前記リード端子に両側から密着され前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する一対のフィルム部とを備え、
7E 前記フィルム部は厚み方向において第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムと第3の樹脂フィルムの三層にされると共に前記第1の樹脂フィルムが熱圧着により前記リード端子に密着され前記第3の樹脂フィルムが熱圧着により前記ラミネート材に密着され、
7F 前記第2の樹脂フィルムは内部に分散された乾燥剤を有すると共に前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムより耐熱性が高くされ、
7G 前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されず、
7H 前記第1の樹脂フィルム又は前記第3の樹脂フィルムの少なくとも一方に前記第2の樹脂フィルムにおける前記電極接続部側の端面と前記外部端子部側の端面とを覆う被覆部が設けられ、
7I 前記被覆部が前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムの各一部によって設けられた
7J 非水電解質デバイス。」
第3 申立ての理由の概要
令和6年5月22日に申立人が提出した特許異議申立書(以下「異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要、及び証拠方法は次のとおりである。
1 申立ての理由
(1)申立理由1(進歩性)
ア 請求項1~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(特許法113条2号)
イ 請求項1~5、7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(特許法113条2号)
2 証拠方法
甲第1号証 特開2016-91939号公報
甲第2号証 特開2008-16337号公報
甲第3号証 国際公開第2014/200087号
甲第4号証 特開2014-229505号公報
以下、「甲第1号証」~「甲第4号証」を、それぞれ「甲1」~「甲4」という。
第4 甲号証の記載
1 甲1に記載された事項及び甲1発明
(1)甲1には、次の事項が記載されている。(下線は、強調のため当審で付したものである。以下同様。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、端子用樹脂フィルム、それを用いたタブ及び蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器の小型化や自然発電エネルギーの有効活用の要求が増しており、より高い電圧が得られ、エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池(蓄電デバイスの一種)の研究開発が行われている。
【0003】
上記リチウムイオン二次電池に用いられる包装材として、従来は金属製の缶が多く用いられてきたが、適用する製品の薄型化や多様化等の要求に対し、製造コストが低いという理由から、金属層(例えば、アルミニウム箔)と樹脂フィルムとを積層した積層体を袋状にした包装材が多く用いられるようになってきている。
【0004】
上記包装材の内部に電池本体を収容して密封したラミネート型リチウムイオン二次電池には、タブと呼ばれる電流取り出し端子が備えられている。タブは、電池本体の負極または正極に接続され、包装材の外側に延在する金属端子(「タブリード」と呼ばれることもある)と、金属端子の一部の外周面をそれぞれ覆う端子用樹脂フィルム(「タブシーラント」と呼ばれることもある)と、を有する(例えば、特許文献1~3参照)。通常、端子用樹脂フィルムは金属端子に融着されている。
【0005】
端子用樹脂フィルムには近年、車載用などの用途において絶縁性の要求が高まっており、多層構造のものが使用され始めている。また、金属端子に端子用樹脂フィルムを融着してタブを作製する際に、金属端子の面上からはみ出した端子用樹脂フィルムのみで構成されるはみ出し部が形成される。このはみ出し部は、タブと包装材との密着性を高める役割を果たす。また、例えば特許文献3には、絶縁樹脂層(タブシーラント)にエラストマーを加えて引張弾性率を低下させることで、シール部分の柔軟性を上げ、リード線をシール部分で折り曲げる時に必要な力を減らすことが記載されている。」
「【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、端子用樹脂フィルムを金属端子に融着後、冷却するまでの間に、端子用樹脂フィルムのはみ出し部が変形することを抑制することができるとともに、巻き取り性も良好である端子用樹脂フィルム、それを用いたタブ及び蓄電デバイスを提供することを目的とする。」
「【0027】
図1に示した蓄電デバイス10は、リチウムイオン二次電池であり、蓄電デバイス本体11と、包装材13と、一対の金属端子14(タブリード)と、端子用樹脂フィルム16(タブシーラント)と、を有する。
【0028】
蓄電デバイス本体11は、充放電を行う電池本体である。包装材13は、蓄電デバイス本体11の表面を覆うと共に、端子用樹脂フィルム16の一部と接触するように配置されている。」
「【図1】
[図:0001414227000001.jpg]
」
「【0030】
ここで、図2を参照して、包装材13の構成の一例について説明する。包装材13は、蓄電デバイス本体11に接触する内側から、内層21と、内層側接着剤層22と、腐食防止処理層23-1と、金属層であるバリア層24と、腐食防止処理層23-2と、外層側接着剤層25と、外層26と、が順次積層された7層構造とされている。」
「【0040】
図1及び図3に示すように、一対(図1の場合、2つ)の金属端子14は、金属端子本体14-1と、腐食防止層14-2と、を有する。一対の金属端子本体14-1のうち、一方の金属端子本体14-1は、蓄電デバイス本体11の正極と電気的に接続されており、他方の金属端子本体14-1は、蓄電デバイス本体11の負極と電気的に接続されている。一対の金属端子本体14-1は、蓄電デバイス本体11から離間する方向に延在しており、その一部が包装材13から露出されている。一対の金属端子本体14-1の形状は、例えば、平板形状とすることができる。」
「【0044】
腐食防止層14-2は、金属端子本体14-1の表面を覆うように配置されている。リチウムイオン二次電池の場合、電解液にLiPF6等の腐食成分が含まれる。腐食防止層14-2は、電解液に含まれるLiPF6等の腐食成分から金属端子本体14-1が腐食されることを抑制するための層である。
【0045】
図3に示すように、端子用樹脂フィルム16は、金属端子14の一部の外周面を覆うように配置されている。本実施形態において、端子用樹脂フィルム16は、金属端子14の外周側面と接触する第1の最外層31と、包装材13と接触する第2の最外層32と、第1の最外層31と第2の最外層32との間に配置された中間層33と、が積層された構成とされている。なお、端子用樹脂フィルム16は、1層又は2層で構成されていてもよく、4層以上で構成されていてもよい。
【0046】
第1の最外層31は、金属端子14の外周面を覆うように配置されることで、金属端子14の周方向を封止すると共に、端子用樹脂フィルム16と金属端子14とを密着させる機能を有する。
【0047】
第1の最外層31の構成材料としては特に限定されないが、例えば、接着性に優れた樹脂を用いることが好ましい。第1の最外層31を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、又は、ポリオレフィン樹脂に無水マレイン酸等をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン樹脂等を用いることができる。
【0048】
ここで、ポリオレフィン樹脂は、接着性の観点から、ポリオレフィンランダムコポリマーであることが好ましい。ポリオレフィンランダムコポリマーは、2種類以上のオレフィンモノマーがランダムに共重合したものである。オレフィンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等が挙げられる。」
「【0051】
ポリオレフィンランダムコポリマー及びその酸変性物の融点は、120~145℃であることが好ましく、125~140℃であることがより好ましい。融点が120℃以上であると、端子用樹脂フィルムの引張貯蔵弾性率を10MPa~1000MPaの範囲内に制御しやすくなるとともに、蓄電デバイスを高温環境下で長期間保持した場合の液漏れ防止性が向上する傾向がある。融点が145℃以下であると、端子用樹脂フィルムを金属端子に低温融着した場合の密着性が向上する傾向がある。なお、本明細書において、融点は、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。」
「【0056】
第2の最外層32は、包装材13と融着されることで、包装材13内部を密封する機能を有する。第2の最外層32は、包装材13との密着性の観点から、上述した第1の最外層31と同様の構成とすることが好ましい。」
「【0065】
中間層33は、2種類以上のブロックポリプロピレン及び2種類以上のホモポリプロピレンを含んでいてもよく、他のポリオレフィンを含んでいてもよく、ポリオレフィン以外の成分を含んでいてもよい。他のポリオレフィンとしては、ブロックポリプロピレン以外のポリオレフィンブロックコポリマー、ホモポリプロピレン以外のポリオレフィンホモポリマー、ポリオレフィンランダムコポリマーが挙げられる。また、中間層33の絶縁性を向上させたい場合には、ポリオレフィン以外の成分として、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステルや耐熱性樹脂(例えば、ポリカーボネート等)を用いてもよい。また、他のポリオレフィンを用いる場合、中間層33に含有されるポリオレフィンのうち、ブロックポリプロピレン及びホモポリプロピレンの合計の含有量は、端子用樹脂フィルム16の120℃での引張貯蔵弾性率を高める観点から、25質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0066】
また、中間層33は上記以外の構成を有する層であってもよい。中間層33は、端子用樹脂フィルム16の120℃での引張貯蔵弾性率を高める観点から、融点が200℃以上の樹脂を含む層(耐熱層)、架橋構造を有する樹脂を含む層(架橋層)、フィラー及び繊維からなる群より選択される少なくとも一種を含む層(強化層)、のうちのいずれか1つ又は2つ以上の要件を満たす層であってもよい。また、これらの耐熱層、架橋層及び強化層は更に、ブロックポリプロピレン及びホモポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。」
「【0069】
強化層において、フィラーとしては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、硫酸バリウム粒子、炭酸カルシウム粒子等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。端子用樹脂フィルム16の120℃での引張貯蔵弾性率をより高める観点から、フィラーの平均粒径は0.1~10μmであることが好ましく、フィラーの含有量は強化層(中間層33)全量を基準として0.5~20質量%であることが好ましい。」
「【0098】
ここで、図3を参照して、本実施の形態の端子用樹脂フィルム16と金属端子14とを溶融接着する融着処理について説明する。融着処理では、加熱による第1の最外層31の溶融と、加圧による第1の最外層31と金属端子14との密着とを同時に行いながら、端子用樹脂フィルム16と金属端子14とを熱融着させる。」
「【図3】
[図:0001414227000002.jpg]
」
「【0109】
(実施例1)
<タブの作製>
図3を参照して、実施例1のタブ(言い換えれば、金属端子14(タブリード)及び一対の端子用樹脂フィルム16(タブシーラント)よりなる構造体)の作製方法について説明する。」
「【0111】
次に、端子用樹脂フィルム16を以下の通り作製した。端子用樹脂フィルム16の作製に当たり、第1の最外層に融点140℃のランダム系酸変性ポリプロピレン(エチレン含有量:4質量%、重量平均分子量(Mw):16万、MFR:7g/10min、無水マレイン酸をグラフト変性)を用い、中間層に融点162℃のブロック系ポリプロピレン(ホモPP中にEPR及びPEが島状に分散したもの、PE含有量:1質量%、重量平均分子量:22万、MFR:1g/10min)を用い、第2の最外層に第1の最外層と同一の融点140℃のランダム系酸変性ポリプロピレンを用いた。
【0112】
次いで、住友重機モダン社製のインフレーション式フィルム押出製造装置(Co-OI型)に、第1の最外層の母材、中間層の母材、及び第2の最外層の母材をセットし、該フィルム押出製造装置により、上記3つの母材を押し出すことで積層フィルム(端子用樹脂フィルム16の母材となるフィルム)を作製した。このとき、上記積層フィルムは、第1の最外層の厚さが33μm、中間層の厚さが34μm、第2の最外層の厚さが33μmとなるように形成した。また、第1の最外層の母材、中間層の母材、及び第2の最外層の母材の溶融温度は210℃とし、ブロー比を2.2とした。」
「【0114】
その後、2枚の端子用樹脂フィルム16間に、金属端子14を挟み込み、2枚の端子用樹脂フィルム16を200℃、0.3MPaで5秒間加熱加圧し、金属端子14と2枚の端子用樹脂フィルム16とを熱融着させることで、金属端子14及び2枚の端子用樹脂フィルム16よりなるタブ(端子用樹脂フィルム16のはみ出し部の幅L:3mm)を作製した。このとき、端子用樹脂フィルム16は、第1の最外層が金属端子14側となるように配置した。」
(2)甲1から理解できる事項
ア 甲1の「蓄電デバイス10」は、「リチウムイオン二次電池であり、蓄電デバイス本体11と、包装材13と、一対の金属端子14(タブリード)と、端子用樹脂フィルム16(タブシーラント)と、を有する。」(前記(1)【0027】)ものである。
そして、「包装材の内部に電池本体を収容して密封したラミネート型リチウムイオン二次電池には、タブと呼ばれる電流取り出し端子が備えられている。タブは、電池本体の負極または正極に接続され、包装材の外側に延在する金属端子(「タブリード」と呼ばれることもある)と、金属端子の一部の外周面をそれぞれ覆う端子用樹脂フィルム(「タブシーラント」と呼ばれることもある)と、を有する」(前記(1)【0004】)との記載を踏まえれば、上記「蓄電デバイス10」は、包装材13の内部に蓄電デバイス本体11を収容して密閉したラミネート型」リチウムイオン二次電池であると理解できる。
イ 甲1の「タブ」は、「金属端子14」及び「一対の端子用樹脂フィルム16よりなる構造体」(【0109】)である。
ウ 「リチウムイオン二次電池の場合、電解液にLiPF6等の腐食成分が含まれる。」(【0044】)から、甲1の「蓄電デバイス本体11」は、「LiPF6等の腐食成分を含む電解液」を含んでいることは明らかである。
(3)甲1発明
前記(1)及び(2)より、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、甲1発明を1a~1mに分説し、「構成1a」などのようにして、以下参照する。
「1a 蓄電デバイス本体11と、包装材13と、一対の金属端子14と、端子用樹脂フィルム16と、を有する蓄電デバイス10であって、(【0027】)
1b 蓄電デバイス本体11は、LiPF6等の腐食成分を含む電解液を含み、(前記(2)ウ)
1c タブは、金属端子14及び一対の端子用樹脂フィルム16よりなり、(前記(2)イ)
1d 金属端子14は、蓄電デバイス本体11の正極、又は負極と電気的に接続され、蓄電デバイス本体11から離間する方向に延在しており、その一部が包装材13から露出されており、(【0040】)
1e 端子用樹脂フィルム16は、金属端子14の一部の外周面を覆うように配置され、金属端子14の外周側面と接触する第1の最外層31と、包装材13と接触する第2の最外層32と、第1の最外層31と第2の最外層32との間に配置された中間層33と、が積層された構成とされ、(【0045】)
1f 第1の最外層31を構成する樹脂材料としては、ポリオレフィン樹脂、又は、ポリオレフィン樹脂に無水マレイン酸等をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン樹脂等を用いることができ、ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィンランダムコポリマーであることが好ましく、ポリオレフィンランダムコポリマー及びその酸変性物の融点は、120~145℃であることが好ましく、(【0047】、【0048】、【0051】)
1g 第2の最外層32は、第1の最外層31と同様の構成とすることが好ましく、(【0056】)
1h 中間層33は、融点が200℃以上の樹脂を含む層(耐熱層)、架橋構造を有する樹脂を含む層(架橋層)、フィラー及び繊維からなる群より選択される少なくとも一種を含む層(強化層)、のうちのいずれか1つ又は2つ以上の要件を満たす層であってもよく、(【0066】)
1i 強化層において、フィラーとしては、シリカ粒子、アルミナ粒子、硫酸バリウム粒子、炭酸カルシウム粒子等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、(【0069】)
1j 加熱による第1の最外層31の溶融と、加圧による第1の最外層31と金属端子14との密着とを同時に行いながら、端子用樹脂フィルム16と金属端子14とを熱融着させ、(【0098】)
1k 第2の最外層32は、包装材13と融着されることで、包装材13内部を密封する機能を有し、(【0056】)
1l 包装材13の内部に蓄電デバイス本体11を収容して密閉したラミネート型リチウムイオン二次電池である、(前記(2)ア)
1m 蓄電デバイス10」
2 甲2に記載された事項
(1)甲2には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
電池の発電要素密封容器が、金属層および熱可塑性合成樹脂層を含む一対の容器半体を熱可塑性合成樹脂層どうし内側にし、その周縁部において熱融着せしめられてなるものであり、容器内部の正極および負極にそれぞれ接続せられかつ両容器半体周縁部の合わせ目から容器外部に端部が取り出されるリード線の少なくとも合わせ目相当部分に局部的に熱融着被覆せられ、両容器半体周縁部に熱融着するためのフィルム材であって、フィルム材が少なくとも3層の熱可塑性合成樹脂層からなり、そのうち中間層全体に絶縁性微粒子が散在含有せしめられていることを特徴とする電池用リード線被覆フィルム材。
【請求項2】
中間層の熱可塑性合成樹脂に対する絶縁性微粒子の含有割合が、1~30重量%であることを特徴とする請求項1記載の電池用リード線被覆フィルム材。
【請求項3】
請求項1または2記載の電池用リード線被覆フィルム材より得た一対の対向状フィルムで1本のリード線の長さのうち所定箇所が挟まれ、両フィルムがリード線に熱融着せられるとともに、リード線の両側方に突出した両フィルムの縁部どうしが熱融着せられてリード線がフィルムにより局部的に被覆されていることを特徴とする電池用フィルム被覆リード線。
【請求項4】
請求項1または2記載の電池用リード線被覆フィルム材より得た一対の対向状フィルムで所定間隔をおいた2本のリード線の長さのうち両容器半体周縁部の合わせ目に相当する部分を含む所定箇所が挟まれ、両フィルムがリード線に熱融着せられるとともに、2本のリード線の間および両側方に突出した両フィルムの縁部どうしが熱融着せられて2本のリード線がフィルムにより局部的に被覆されていることを特徴とする電池用フィルム被覆リード線。」
「【0001】
本発明は、電池用リード線被覆フィルム材および電池用フィルム被覆リード線に関する。
【0002】
なお、この明細書において、発電要素とは、密封容器内に収納せられている正極、負極、隔膜および電解液等をいう。また、密封容器には、一対のフランジ付トレイ状成形容器半体を合着してなる容器の外に一対のフィルムの周縁部を接合してなる袋も含まれる。」
「【0008】
本発明の目的は、発電要素密封容器の気密性を低下させることなく、リード線と容器半体中の金属層とが短絡するおそれのない電池用リード線を提供するにある。」
「【0011】
上記リード線は、通常電極と同材質のものが使用されるが、異なる材質のものであってもよい。一般的には、正極材にアルミニウムが、負極材にニッケルや銅が使用されるので、正極に接続せられるリード線にはアルミニウムが、負極に接続せられるリード線にはニッケルや銅が使用される。
【0012】
上記絶縁性微粒子の素材の具体例としては、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ポリエチレンテレフタレート、ポリアマイド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これら絶縁性微粒子の粒径は5~100μmが好ましい。粒径が5μm未満であると、リード線と容器半体中の金属層とが短絡するおそれがあり、100μmを超えると、絶縁性微粒子含有熱可塑性合成樹脂層の厚さを不必要に大きくしなければならない。」
「【0021】
図1に示す薄型ポリマー電池の発電要素密封容器(1)は、図2および図3に示すように、外側から順に表面保護層となる熱可塑性合成樹脂層(4)、バリア層となるアルミニウム箔層(5)および融着層となる熱可塑性合成樹脂層(6)よりなる一対のフランジ付トレイ状成形容器半体(7)(8)の内面熱可塑性合成樹脂層(6)どうしを内側にし、フランジ部分であるその周縁部(9)(10)において熱融着せられてなるものであり、電池用フィルム被覆リード線(2)(3)は、容器(1)内部の正極および負極(図示略)にそれぞれ接続せられかつ両容器半体(7)(8)周縁部の合わせ目から容器(1)外部に端部が取り出されている。各リード線(タブリード:金属とフィルム)(2)(3)は、図5に示すように、予め周縁部(9)(10)の幅を含みその外側まで突出しかつその両側面を覆いうる大きさの1対のフィルム(11)(12)で挾まれて局部的に熱融着被覆せられている。フィルム(11)(12)は、外層(13)、中間層(14)および内層(15)の3層の部可塑性合成樹脂からなり、そのうち中間層(14)に絶縁性微粒子(16)が散在含有せしめられている図4の電池用リード線被覆フィルム材(F)から前記大きさに裁断して得られたものである。」
「【0023】
一対のフィルム(11)(12)の素材である電池用リード線被覆フィルム材(F)の厚さは、150μmであり、外層(13)の厚さは25μmで、熱可塑性合成樹脂としてランダムポリプロピレンが用いられており、中間層(14)の厚さは100μmで、熱可塑性合成樹脂としてブロックポリプロピレンが用いられ、これに絶縁性微粒子(16)として平均粒径30μmの酸化マグネシウムがブロックポリプロピレンに対し10重量%含有せしめられて散在せしめられており、内層(15)の厚さは25μmで、熱可塑性合成樹脂として酸変性ポリプロピレンが用いられている。」
「【0025】
各リード線(2)(3)をそれぞれ上記大きさの1対のフィルム(11)(12)の間に介在させ、250°Cで10秒間、0.2Mpaの加圧条件で局部的に熱融着被覆し、電池用フィルム被覆リード線となした。」
「【図1】
[図:0001414227000003.jpg]
」
「【図2】
[図:0001414227000004.jpg]
」
(2)甲2発明
よって、前記(1)の記載において、「電池用フィルム被覆リード線」(【請求項3】、【0021】)についてまとめると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。なお、甲2発明を2a~2hに分説し、「構成2a」などのようにして、以下参照する。
「2a 電池用リード線被覆フィルム材より得た一対の対向状フィルムで1本のリード線の長さのうち所定箇所が挟まれ、両フィルムがリード線に熱融着せられるとともに、リード線の両側方に突出した両フィルムの縁部どうしが熱融着せられてリード線がフィルムにより局部的に被覆されていることを特徴とする電池用フィルム被覆リード線であって、(【請求項3】)
2b 電池の発電要素密封容器が、金属層および熱可塑性合成樹脂層を含む一対の容器半体を熱可塑性合成樹脂層どうし内側にし、その周縁部において熱融着せしめられてなるものであり、容器内部の正極および負極にそれぞれ接続せられかつ両容器半体周縁部の合わせ目から容器外部に端部が取り出されるリード線の少なくとも合わせ目相当部分に局部的に熱融着被覆せられ、両容器半体周縁部に熱融着するためのフィルム材であり、フィルム材が少なくとも3層の熱可塑性合成樹脂層からなり、中間層全体に絶縁性微粒子が散在含有せしめられている電池用リード線被覆フィルム材であり、(【請求項1】)
2c 発電要素とは、密封容器内に収納せられている正極、負極、隔膜および電解液等であり、(【0002】)
2d 正極に接続せられるリード線にはアルミニウムが、負極に接続せられるリード線にはニッケルや銅が使用され、(【0011】)
2e 絶縁性微粒子の素材は、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ポリエチレンテレフタレート、ポリアマイド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、(【0012】)
2f 0.2Mpaの加圧条件で局部的に熱融着被覆し、電池用フィルム被覆リード線となし、(【0025】)
2g 薄型ポリマー電池の発電要素密封容器は、一対のフランジ付トレイ状成形容器半体の内面熱可塑性合成樹脂層どうしを内側にし、フランジ部分であるその周縁部において熱融着せられてなるものであり、電池用フィルム被覆リード線は、容器内部の正極および負極にそれぞれ接続せられかつ両容器半体周縁部の合わせ目から容器外部に端部が取り出されている、(【0021】)
2h 電池用フィルム被覆リード線」
3 甲3に記載された事項
(1)甲3には、次の事項が記載されている。
「[請求項2] ポリオレフィン系樹脂から形成されるシーラント層を有する二次電池用包装材における前記シーラント層と電池内部の正極及び負極に各々接続されるリードとの間に配置させる樹脂フィルムであって、
前記リードに近い位置に配置された第一層と、
前記シーラント層に近い位置に配置された第二層と、
前記第一層と前記第二層との間に配置される中間層と、
を有し、
JIS K 7122により測定した前記第二層の融解熱量が、JIS K 7122により測定した前記第一層の融解熱量以上であり、
JIS K 7122により測定した前記中間層の融解熱量が、JIS K 7122により測定した前記第二層の融解熱量以上である
樹脂フィルム。」
「[請求項8] 請求項2、3、および7のいずれか一項に記載の樹脂フィルムであって、前記中間層の融点および前記第二層の融点が以下の条件、
(第二層の融点+15℃)<(中間層の融点)<(第二層の融点+25℃)
を満たす樹脂フィルム。
[請求項9] 請求項1から8のいずれか一項に記載の樹脂フィルムであって、前記第一層の融点および前記第二層の融点が以下の条件、
(第一層の融点)<(第二層の融点)<(第一層の融点+10℃)
を満たす樹脂フィルム。」
「[0092]
[表5]
[図:0001414227000005.jpg]
」
「[0101] 上記の結果より、(最内層融点)<(最外層融点)<(最内層融点+10℃)の条件を満たすことが好ましいことが分かった。
(最内層融点)<(最外層融点)の条件を満たす場合、タブシーラントとリードとの熱融着時に、最内層のみが融解し、最外層は融解しない。
(最外層融点)<(最内層融点+10℃)の条件を満たさない場合には、高い熱溶着温度と長い熱溶着時間の条件で、タブと包装材とを熱融着する必要がある。
また、(最外層融点)<(最内層融点+10℃)の条件を満たさない場合には、タブシーラント全体で融点の差が大きくなり、成型(押出成型、インフレーション成型)できなくなる。
[0102] さらに、上記の結果より、タブシーラントに用いる樹脂フィルムは、(最外層融点+15℃)<(中間層融点)<(最外層融点+25℃)の条件を満たすことが好ましいことが分かった。
(最外層融点+15℃)<(中間層融点)の条件を満たさない場合、熱融着時に中間層が融解する恐れがあり、絶縁性を確保できない。
(中間層融点)<(最外層融点+25℃)の条件を満たさない場合、タブシーラント全体で融点の差が大きくなり、成型(押出成型、インフレーション成型)できなくなる。」
(2)甲3記載事項
前記(1)より、甲3には、次の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「シーラント層を有する二次電池用包装材における前記シーラント層と電池内部の正極及び負極に各々接続されるリードとの間に配置させる樹脂フィルムであって、
前記リードに近い位置に配置された第一層と、前記シーラント層に近い位置に配置された第二層と、前記第一層と前記第二層との間に配置される中間層と、を有し、([請求項2])
(第二層の融点+15℃)<(中間層の融点)<(第二層の融点+25℃)であり、([請求項8])
(第一層の融点)<(第二層の融点)<(第一層の融点+10℃)である、([請求項9])
樹脂フィルム」
4 甲4に記載された事項
(1)甲4には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
金属箔を芯材とするラミネートフィルムからなる外装材で発電要素を密封するとともに少なくとも一方の電極のリード部の一方の端部を上記外装材の封止部分より外部に取り出す薄型電池におけるリード部と外装材との間に配置する封止材であって、前記封止材は3層の樹脂層で構成され、かつ上記3層の樹脂層中の中間層を構成する樹脂が他の層を構成する樹脂よりも融点の高いポリプロピレンで構成され、他の層が酸変性ポリプロピレンであることを特徴とする薄型電池用封止材。」
「【0010】
本発明によれば、接着剤が不要で信頼性の高い封止性と耐短絡性、耐漏液性を併有し、低コストな薄型電池用封止材を提供することができる。」
「【0024】
(実施例1)
厚さ15μmの酸変性ポリプロピレン(融点:約130℃)と厚さ70μmのポリプロピレン(融点:約165℃)と厚さ15μmの酸変性ポリプロピレン(融点:約130℃)とを積層して総厚が100μmの3層構造の封止材を作製した。」
(2)甲4記載事項
前記(1)より、甲4には、次の事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「金属箔を芯材とするラミネートフィルムからなる外装材で発電要素を密封するとともに少なくとも一方の電極のリード部の一方の端部を上記外装材の封止部分より外部に取り出す薄型電池におけるリード部と外装材との間に配置する封止材であって、前記封止材は3層の樹脂層で構成され、かつ上記3層の樹脂層中の中間層を構成する樹脂が他の層を構成する樹脂よりも融点の高いポリプロピレンで構成される薄型電池用封止材(【請求項1】)」
5 公知技術
前記3(2)、前記4(2)より、次の技術が本件特許出願前に公知であったと認められる。
「第1の樹脂フィルム、第2の樹脂フィルム、第3の樹脂フィルムからなる電池に用いられる3層の樹脂フィルムにおいて、中間層である第2の樹脂フィルムの融点を、第1の樹脂フィルム、第3の樹脂フィルムの融点より高くすること」(以下「公知技術」という。)
第5 申立理由1(進歩性)についての当審の判断
1 甲1を主とする進歩性について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)「ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート型の非水電解質デバイスに用いられるタブリードであって、」(特定事項1A、1I)について
A 甲1発明の「蓄電デバイス10」は、「包装材13の内部に蓄電デバイス本体11を収容して密閉したラミネート型リチウムイオン二次電池」(構成1l)であり、「蓄電デバイス本体11」は、「LiPF6等の腐食成分を含む電解液を含」(構成1b)む。
また、甲1発明において、「金属端子14」は「蓄電デバイス本体11の正極、又は負極と電気的に接続され」(構成1d)ることから、「蓄電デバイス本体11」は、「正極」、「負極」を有しているといえ、「正極」、「負極」は、「電極」と称することができる。
そして、「リチウムイオン二次電池」は「非水電解質デバイス」に含まれることは、技術常識である。
B 甲1発明の「包装材13」は、「内部に蓄電デバイス本体11を収容して密閉」するから、本件発明1の「ラミネート材」に相当する。
C 甲1発明の「蓄電デバイス10」は、「蓄電デバイス本体11と、包装材13と、一対の金属端子14と、端子用樹脂フィルム16と、を有」(構成1a)し、「金属端子14及び一対の端子用樹脂フィルム16よりな」るものは、「タブ」(構成1c)であるから、甲1発明の「蓄電デバイス10」は、「蓄電デバイス本体11と、包装材13と」、「タブ」を有するものといえる。
そして、甲1発明の「タブ」を、「タブリード」と称することは任意である。
D 前記A~Cより、本件発明1と甲1発明とは、「ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート型の非水電解質デバイスに用いられるタブリード」である点で一致する。
(イ)「金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される外部端子部として設けられたリード端子と、前記リード端子に両側から密着され前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する一対のフィルム部とを備え、」(特定事項1B、1C)について
A 甲1発明において、「タブ」は、「金属端子14及び一対の端子用樹脂フィルム16よりな」(構成1c)るものである。
B 甲1発明において、「金属端子14」は、「蓄電デバイス本体11の正極、又は負極と電気的に接続され」(構成1d)るものであり、前記(ア)Aを踏まえれば、「蓄電デバイス本体11の正極、又は負極と電気的に接続され」る部分は「電極接続部」と称することができる。
C 甲1発明の「蓄電デバイス」は「リチウムイオン二次電池である」(構成1l)から、外部機器に接続して使用されることは技術常識である。
そして、「金属端子14」は、「蓄電デバイス本体11から離間する方向に延在しており、その一部が包装材13から露出」(構成1d)するものであるから、当該技術常識を踏まえれば、「包装材13から露出され」た部分により、外部機器と接続されることは明らかであり、当該「部分」は「外部端子部」と称することができる。
よって、甲1発明の「包装材13から露出され」た部分は、本件発明1の「外部機器に接続される外部端子部」に相当する。
D 前記B、Cより、甲1発明の「金属端子14」は、本件発明1の「金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される外部端子部として設けられたリード端子」に相当する。
E 甲1発明の「端子用樹脂フィルム16」は、「金属端子14の一部の外周面を覆うように配置され、金属端子14の外周側面と接触する第1の最外層31と、包装材13と接触する第2の最外層32と、第1の最外層31と第2の最外層32との間に配置された中間層33と、が積層され」(構成1e)たものである。
そして、甲1発明は、「加熱による第1の最外層31の溶融と、加圧による第1の最外層31と金属端子14との密着とを同時に行いながら、端子用樹脂フィルム16と金属端子14とを熱融着させ」(構成1j)るものであり、「第2の最外層32」は、「包装材13と融着されることで、包装材13内部を密封する機能を有」(構成1k)する。
F 甲1発明の「タブ」は、「一対の端子用樹脂フィルム16」(前記A)からなり、「第1の最外層31」が「金属端14の外周側面と接触する」(前記E)から、「一対の端子用樹脂フィルム16」が、金属端子14に両側から密着されているといえる。
G 前記(ア)Bを踏まえれば、前記E、及びFより、甲1発明の「端子用樹脂フィルム16」は、本件発明1の「前記リード端子に両側から密着され前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する一対のフィルム部」に相当する。
H 前記A、D、Gより、本件発明1と甲1発明とは、「金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される外部端子部として設けられたリード端子と、前記リード端子に両側から密着され前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する一対のフィルム部とを備え、」る点で一致する。
(ウ)「前記フィルム部は厚み方向において第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムと第3の樹脂フィルムの三層にされると共に前記第1の樹脂フィルムが熱圧着により前記リード端子に密着され前記第3の樹脂フィルムが熱圧着により前記ラミネート材に密着され、」(特定事項1D)について
甲1発明の「端子用樹脂フィルム16」は、「金属端子14の一部の外周面を覆うように配置され、金属端子14の外周側面と接触する第1の最外層31と、包装材13と接触する第2の最外層32と、第1の最外層31と第2の最外層32との間に配置された中間層33と、が積層され」(構成1e)たものである。
そして、甲1発明は、「加熱による第1の最外層31の溶融と、加圧による第1の最外層31と金属端子14との密着とを同時に行いながら、端子用樹脂フィルム16と金属端子14とを熱融着させ」(構成1j)るものであり、「第2の最外層32」は、「包装材13と融着されることで、包装材13内部を密封する機能を有」(構成1k)する。
そうすると、甲1発明の「第1の最外層31」は「金属端子14」と「熱融着」されるものであり、「第2の最外層32」は「包装材13」と「融着される」ものである。
そして、「第1最外層31」、「第2の最外層32」、「中間層」を、それぞれ「第1の樹脂フィルム」、「第3の樹脂フィルム」、「第2の樹脂フィルム」と称することは任意である。
よって、前記(ア)Bを踏まえれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記フィルム部は厚み方向において第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムと第3の樹脂フィルムの三層にされると共に前記第1の樹脂フィルムが熱圧着により前記リード端子に密着され前記第3の樹脂フィルムが熱圧着により前記ラミネート材に密着され、」る点で一致する。
(エ)「前記第2の樹脂フィルムは内部に分散された乾燥剤を有すると共に前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムより耐熱性が高くされ、」(特定事項1E)について
A 甲1発明は、「中間層33は、融点が200℃以上の樹脂を含む層(耐熱層)、架橋構造を有する樹脂を含む層(架橋層)、フィラー及び繊維からなる群より選択される少なくとも一種を含む層(強化層)、のうちのいずれか1つ又は2つ以上の要件を満たす層であってもよ」い(構成1h)から、甲1発明の「中間層33」は、「フィラー及び繊維からなる群より選択される少なくとも一種を含む層(強化層)」及び「融点が200℃以上の樹脂を含む層(耐熱層)」の要件を満たすものである。
そして、「強化層において、フィラーとしては、シリカ粒子、アルミナ粒子、硫酸バリウム粒子、炭酸カルシウム粒子等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ」(構成1i)るものであるところ、「フィラー」を「乾燥剤」として用いていることは特定されていない。
B 甲1発明において「第1の最外層31」は、「120~145℃である」樹脂材料で構成(構成1f)されるものであり、「第2の最外層32」は、「第1の最外層31と同等の構成」(構成1g)であるから、前記Aを踏まえれば、「中間層33」の融点は、「第1の最外層31」、「第2の最外層32」の融点よりも高くされている。
C 融点が高いことは、耐熱性が高いということができるから、本件発明1と甲1発明とは、「前記第2の樹脂フィルムは前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムより耐熱性が高くされ、」である点で一致する。
(オ)「前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されず、」(特定事項1F)について
甲1発明において、「第1の最外層31」及び「第2の最外層32」は、「樹脂材料」が特定されるもので、乾燥剤を分散していることについては、特定されていない。
そうすると、前記(ウ)を踏まえれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されず、」である点で一致する。
(カ)「前記第1の樹脂フィルム又は前記第3の樹脂フィルムの少なくとも一方に前記第2の樹脂フィルムにおける前記電極接続部側の端面と前記外部端子部側の端面とを覆う被覆部が設けられ、前記被覆部が前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムの各一部によって設けられた」(特定事項1G、1H)について
甲1発明では、当該事項は特定されていない。
(キ)前記(ア)~(カ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート型の非水電解質デバイスに用いられるタブリードであって、
金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される外部端子部として設けられたリード端子と、
前記リード端子に両側から密着され前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する一対のフィルム部とを備え、
前記フィルム部は厚み方向において第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムと第3の樹脂フィルムの三層にされると共に前記第1の樹脂フィルムが熱圧着により前記リード端子に密着され前記第3の樹脂フィルムが熱圧着により前記ラミネート材に密着され、
前記第2の樹脂フィルムは前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムより耐熱性が高くされ、
前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されない、
タブリード」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:「第2の樹脂フィルム」について、本件発明1は、「内部に分散された乾燥剤を有する」ことを特定しているのに対して、甲1発明は、「シリカ粒子、アルミナ粒子、硫酸バリウム粒子、炭酸カルシウム粒子等が挙げられ」る「フィラー」を含む点
相違点2:本件発明1は、「前記第1の樹脂フィルム又は前記第3の樹脂フィルムの少なくとも一方に前記第2の樹脂フィルムにおける前記電極接続部側の端面と前記外部端子部側の端面とを覆う被覆部が設けられ、前記被覆部が前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムの各一部によって設けられ」ていることを特定しているのに対して、甲1発明は、当該事項を特定していない点
イ 判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
相違点2に係る本件発明1の構成は、他の証拠方法をみても、記載または示唆されておらず、当業者に自明な事項であるとも、本件特許出願時に、周知であったとも認められない。
そして、甲1発明が、「第1の最外層31」を、「加熱によ」り「溶融」させ、「加圧」することで「金属端子14とを熱融着させ」(構成1j)、「第2の最外層32は、包装材13と融着さ」せ(構成1k)ているとしても、「金属端子14と」の「熱融着」、及び「包装材13と」の「融着」により、「中間層33」に「電極接続部側の端面」と「外部端子部側の端面とを覆う被覆部が設けられ」ることが、技術常識であるとも認められない。
したがって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ 小括
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
エ 異議申立書の主張について
申立人は、本件発明1と甲1発明との上記相違点2に係る構成について、以下のとおり主張する。
「甲第1号証に記載の端子用樹脂フィルム16は、中間層の融点が第1の最外層及び第2の最外層の融点よりも高い構成であり、2枚の端子用樹脂フィルム16の間に金属端子14を挟みこんで加熱加圧しているため、第1の最外層及び第2の最外層の少なくとも一方が溶融し、その結果、第1の最外層及び第2の最外層に少なくとも一方に、中間層の端面を覆う被覆部が形成されている蓋然性が高い。」(異議申立書25頁)
上記主張について検討する。
甲1発明は、「第1の最外層31」を、「加熱によ」り「溶融」させ、「加圧」することで「金属端子14とを熱融着させ」(構成1j)、「第2の最外層32は、包装材13と融着さ」せ(構成1k)るものである。
しかしながら、「第1の最外層31」、「第2の最外層32」、「中間層33」からなるフィルムにおいて、「第1の最外層31」、「第2の最外層32」の少なくとも一方が溶融することによって、中間層の端面を覆う被覆部が形成されているとの証拠はなく、そのような技術常識も存在しない。
そうすると、甲1発明において、2枚の端子用樹脂フィルム16の間に金属端子14を挟みこんで加熱加圧することにより、第1の最外層及び第2の最外層の少なくとも一方が溶融するとしても、「前記第2の樹脂フィルムにおける前記電極接続部側の端面と前記外部端子部側の端面とを覆う被覆部が設けられ」ているとは直ちにいえるものではない。
よって、甲1発明において、中間層の端面を覆う被覆部が形成されている蓋然性が高いとはいえないから、申立人の上記主張は採用できない。
(2)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものである。
そうすると、本件発明2~6と甲1発明とは、少なくとも、前記(1)ア(キ)に示した相違点1、2において相違するものであり、相違点2は、前記(1)イと同様の理由により、当業者が容易になし得たものではない。
(3)本件発明7について
本件発明7は、「非水電解質デバイス」に係る発明であるところ、「タブリード」を特定する特定事項7B~7Iは、それぞれ、本件発明1の特定事項1I、1B~1Hと同一である。
そうすると、本件発明7と甲1発明とは、少なくとも、前記(1)ア(キ)に示した前記相違点1、2において相違するものであり、相違点2は、前記(1)イと同様の理由により、当業者が容易になし得たものではない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、甲1発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
2 甲2を主とする進歩性について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)「ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート型の非水電解質デバイスに用いられるタブリードであって、」(特定事項1A、1I)について
A 甲2発明の「電池」は、「薄型ポリマー電池」(構成2g)であり、「発電要素密封容器が、金属層および熱可塑性合成樹脂層を含む一対の容器半体を熱可塑性合成樹脂層どうし内側にし、その周縁部において熱融着せしめられてなるもの」(構成2b)であるから、「ラミネート型」の「電池」ということができ、また、「発電要素密封容器」は、「正極、負極、隔膜および電解液等」を「収納」(構成2c)しているから、本件発明1の「内部に少なくとも電極と電解液と」を「封入」する「ラミネート材」に相当する。
B 甲2発明の「電池用フィルム被覆リード線」は、電池に用いられるものであるから、本件発明1の「タブリード」に対応する。
C 甲2発明の「薄型ポリマー電池」と本件発明1の「非水電解質デバイス」とは、「電解質デバイス」である点で一致する。
D 前記A~Cより、本件発明1と甲2発明とは、「ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート型の電解質デバイスに用いられるタブリード」である点で一致する。
(イ)「金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される外部端子部として設けられたリード端子と、前記リード端子に両側から密着され前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する一対のフィルム部とを備え、」(特定事項1B、1C)について
A 甲2発明において、「リード線」は、「正極に接続」または「負極に接続」(構成2b、2d)されるものであり、リード線の正極または負極に接続される部分を「電極接続部」と称することは任意である。
また、「リード線」は、「容器外部に端部が取り出され」(構成2b)、端部は外部機器と接続されることは明らかであるから、該「端部」は「外部端子部」と称することができ、「容器外部に」「取り出され」た「端部」は、本件発明1の「外部機器に接続される外部端子部」に相当する。
B さらに、甲2発明の「リード線」は、「アルミニウム」、「ニッケルや銅が使用され」(構成2d)ることから、「金属材料」を使用するものである。
C 前記A、Bより、甲2発明の「リード線」は、本件発明1の「金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される外部端子部として設けられたリード端子」に相当する。
D 甲2発明の「電池用フィルム被覆リード線」は、「電池用リード線被覆フィルム材より得た一対の対向状フィルムで1本のリード線の長さのうち所定箇所が挟まれ、両フィルムがリード線に熱融着せられ」(構成2a)たものであり、「熱融着」することにより「密着」されることは明らかである。
よって、甲2発明の「一対の対向状フィルム」は、リード線に両側から密着されているといえる。
E 甲2発明の「電池用リード線被覆フィルム材」は、「両容器半体周縁部の合わせ目から容器外部に端部が取り出されるリード線の少なくとも合わせ目相当部分に局部的に熱融着被覆せられ、両容器半体周縁部に熱融着するためのフィルム材」(構成2b)である。
そして、「発電要素密封容器」は「一対の容器半体」を「熱融着せしめ」(構成2b)たものであり、「発電要素密封容器」は、当然密封されていると解される。
そうすると、「電池用リード線被覆フィルム材」により、「リード線」と「発電要素密封容器」との隙間は封止されているといえる。
F 甲2発明の「一対の対向状フィルム」は、「電池用リード線被覆フィルム材より得」(構成2a)たものであるから、前記(ア)Aを踏まえれば、前記D、及びEより、甲2発明の「一対の対向状フィルム」は、本件発明1の「前記リード端子に両側から密着され前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する一対のフィルム部」に相当する。
G 前記C、Fより、本件発明1と甲2発明とは、「金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される外部端子部として設けられたリード端子と、前記リード端子に両側から密着され前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する一対のフィルム部とを備え、」る点で一致する。
(ウ)「前記フィルム部は厚み方向において第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムと第3の樹脂フィルムの三層にされると共に前記第1の樹脂フィルムが熱圧着により前記リード端子に密着され前記第3の樹脂フィルムが熱圧着により前記ラミネート材に密着され、」(特定事項1D)について
甲2発明の「電池用リード線被覆フィルム材」は、「少なくとも3層の熱可塑性合成樹脂層からなり、中間層全体に絶縁性微粒子が散在含有せしめられている」(構成2b)ものである。
そして、「電池用リード線被覆フィルム材」は、「リード線の少なくとも合わせ目相当部分に局部的に熱融着被覆せられ、両容器半体周縁部に熱融着するためのフィルム材」(構成2b)であるから、「リード線」と「熱融着被覆せられ」る「熱可塑性合成樹脂層」と、「両容器半体周縁部に熱融着する」「熱可塑性合成樹脂層」と、「中間層」からなるものといえる。
ここで、「リード線」と「熱融着被覆せられ」る「熱可塑性合成樹脂層」を「第1の樹脂フィルム」と称すること、「両容器半体周縁部に熱融着する」「熱可塑性合成樹脂層」を「第3の樹脂フィルム」と称すること、「中間層」を「第2の樹脂フィルム」と称することは、いずれも任意である。
また、甲2発明は、「熱融着」において、「加圧」(構成2f)するものである。
よって、前記(ア)A、(イ)Cを踏まえれば、本件発明1と甲2発明とは、「前記フィルム部は厚み方向において第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムと第3の樹脂フィルムの三層にされると共に前記第1の樹脂フィルムが熱圧着により前記リード端子に密着され前記第3の樹脂フィルムが熱圧着により前記ラミネート材に密着され、」る点で一致する。
(エ)「前記第2の樹脂フィルムは内部に分散された乾燥剤を有すると共に前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムより耐熱性が高くされ、」(特定事項1E)について
甲2発明は、「中間層全体に絶縁性微粒子が散在含有せしめられ」(構成2b)、「絶縁性微粒子の素材は、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ポリエチレンテレフタレート、ポリアマイド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ」(構成2e)るものであるところ、「絶縁性微粒子」を「乾燥剤」として用いるものではない。
また、甲2発明において、「リード線」と「熱融着被覆せられ」る「熱可塑性合成樹脂層」、「両容器半体周縁部に熱融着する」「熱可塑性合成樹脂層」、及び「中間層」の「耐熱性」の関係については、特定されていない。
(オ)「前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されず、」(特定事項1F)について
甲2発明において、「リード線」と「熱融着被覆せられ」る「熱可塑性合成樹脂層」、及び「両容器半体周縁部に熱融着する」「熱可塑性合成樹脂層」は、乾燥剤を分散していることについては、特定されていない。
そうすると、前記(ウ)を踏まえれば、本件発明1と甲2発明とは、「前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されず、」である点で一致する。
(カ)「前記第1の樹脂フィルム又は前記第3の樹脂フィルムの少なくとも一方に前記第2の樹脂フィルムにおける前記電極接続部側の端面と前記外部端子部側の端面とを覆う被覆部が設けられ、前記被覆部が前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムの各一部によって設けられた」(特定事項1G、1H)について
甲2発明では、当該事項は特定されていない。
(キ)前記(ア)~(カ)によれば、本件発明1と甲2発明とは、
「ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート型の電解質デバイスに用いられるタブリードであって、
金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される外部端子部として設けられたリード端子と、
前記リード端子に両側から密着され前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する一対のフィルム部とを備え、
前記フィルム部は厚み方向において第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムと第3の樹脂フィルムの三層にされると共に前記第1の樹脂フィルムが熱圧着により前記リード端子に密着され前記第3の樹脂フィルムが熱圧着により前記ラミネート材に密着され、
前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されない、
タブリード」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:「電解質デバイス」について、本件発明1は、「非水」電解質デバイスであることを特定しているのに対して、甲2発明は、「ポリマー電池」であり、「非水」電解質であると特定されていない点
相違点2:「第2の樹脂フィルム」について、本件発明1は、「内部に分散された乾燥剤を有すると共に前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムより耐熱性が高くされ」ていることを特定しているのに対して、甲2発明は、当該特定がされていない点
相違点3:本件発明1は、「前記第1の樹脂フィルム又は前記第3の樹脂フィルムの少なくとも一方に前記第2の樹脂フィルムにおける前記電極接続部側の端面と前記外部端子部側の端面とを覆う被覆部が設けられ、前記被覆部が前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムの各一部によって設けられ」ていることを特定しているのに対して、甲2発明は、当該事項を特定していない点
イ 判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
相違点3に係る本件発明1の構成は、提出されたいずれの証拠方法をみても、記載または示唆されておらず、当業者に自明な事項であるとも、本件特許出願時に、周知であったとも認められない。
また、甲2発明の「電池用リード線被覆フィルム材」は、「リード線」と「熱融着被覆せられ」る「熱可塑性合成樹脂層」、「中間層」、「両容器半体周縁部に熱融着する」「熱可塑性合成樹脂層」の3層の熱可塑性合成樹脂層からなる(前記ア(ウ))ものである。
そして、甲2発明に前記公知技術(前記第4の5)を適用して、甲2発明の「中間層」の融点を、「リード線」と「熱融着被覆せられ」る「熱可塑性合成樹脂層」、「両容器半体周縁部に熱融着する」「熱可塑性合成樹脂層」の融点より高くしたものにおいて、「熱融着」させるとしても、「中間層」に「電極接続部側の端面」と「外部端子部側の端面とを覆う被覆部が設けられ」ることが、技術常識であるとは認められない。
したがって、甲2発明において、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ 小括
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、並びに甲3及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
エ 異議申立書の主張について
申立人は、本件発明1と甲2発明との上記相違点3に係る構成について、前記1(1)エと同様の主張をするものと認められる。(異議申立書25頁)
当該主張について検討する。
甲2発明に前記公知技術(甲3、甲4)を適用して、甲2発明の「中間層」の融点を、「リード線」と「熱融着被覆せられ」る「熱可塑性合成樹脂層」、「両容器半体周縁部に熱融着する」「熱可塑性合成樹脂層」の融点より高くしたものにおいて、「熱融着」させるとしても、「リード線」と「熱融着被覆せられ」る「熱可塑性合成樹脂層」、「両容器半体周縁部に熱融着する」「熱可塑性合成樹脂層」の少なくとも一方が溶融することによって、中間層の端面を覆う被覆部が形成されているとの証拠はなく、そのような技術常識も存在しない。
そうすると、甲2発明に前記公知技術を適用して、「熱融着」させるとしても、「前記第2の樹脂フィルムにおける前記電極接続部側の端面と前記外部端子部側の端面とを覆う被覆部が設けられ」ているとは直ちにいえるものではない。
よって、甲2発明に前記公知技術を適用したものにおいて、中間層の端面を覆う被覆部が形成されている蓋然性が高いとはいえないから、申立人の上記主張は採用できない。
(2)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものである。
そうすると、本件発明2~5と甲2発明とは、少なくとも、前記(1)ア(キ)に示した相違点1~3において相違するものであり、相違点3は、前記(1)イと同様の理由により、当業者が容易になし得たものではない。
(3)本件発明7について
本件発明7は、「非水電解質デバイス」に係る発明であるところ、タブリードの構成である特定事項7B~7Iは、本件発明1の特定事項1I、1B~1Hと同一である。
そうすると、本件発明7と甲2発明とは、少なくとも、前記(1)ア(キ)に示した前記相違点1~3において相違するものであり、相違点3は、前記(1)イと同様の理由により、当業者が容易になし得たものではない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、甲2発明、及び甲3、甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
3 申立理由1のまとめ
よって、申立理由1は理由がない。
第6 まとめ
前記第5によれば、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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