特許異議申立
2023-701253
タブリード及びリチウムイオン電池
- 審判番号
- 2023-701253
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-227298
- 登録番号
- 7282663
- 請求日
- 2023年11月29日
- 審決日
- 2024年01月23日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】双葉電子工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
- 【権利者代理人】岩田 雅信
- 【権利者代理人】中川 裕人
- 【異議申立人】松山 徳子
- 審判長/審判官
- 審判長 篠原 功一
- 審判官 山田 正文
- 審判官 須原 宏光
- 分類
- P1651.121-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7282663号発明「タブリード及びリチウムイオン電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7282663号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7282663号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、令和1年12月17日に出願され、令和5年5月19日にその特許権が設定登録され、令和5年5月29日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年11月29日に特許異議申立人松山徳子(以下、「申立人」という。)により、請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7282663号の請求項1ないし7の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明7」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ラミネート材の内部に少なくとも電解液又は固体電解質が封入されたラミネート型のリチウムイオン電池に用いられるタブリードであって、
金属材料によって形成されたリード端子と、
内部に少なくとも乾燥剤が分散され前記リード端子に両側から密着され前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する一対のフィルム部とを備え、
前記フィルム部が三層から五層の何れかに積層された樹脂フィルムから成り、
前記ラミネート材に密着される前記樹脂フィルムと前記リード端子に密着される前記樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されず、
前記ラミネート材に密着される前記樹脂フィルムと前記リード端子に密着される前記樹脂フィルムとを除く少なくとも一つの前記樹脂フィルムに前記乾燥剤が分散され 、
前記乾燥剤として酸化カルシウム、酸化ストロンチウム又は酸化バリウムが用いられた
タブリード。
【請求項2】
前記樹脂フィルムのうち少なくとも一つの前記樹脂フィルムに分散された前記乾燥剤の量が他の前記樹脂フィルムに分散された前記乾燥剤の量と異なる
請求項1に記載のタブリード。
【請求項3】
前記フィルム部がポリオレフィン系の樹脂によって形成された
請求項1又は請求項2に記載のタブリード。
【請求項4】
前記フィルム部の厚さが50μm以上150μm以下にされた
請求項1、請求項2又は請求項3に記載のタブリード。
【請求項5】
前記乾燥剤の粒径が30μm以下にされた
請求項1から請求項4のいずれかに記載のタブリード。
【請求項6】
前記乾燥剤の重量が前記フィルム部の重量に対して30%以下にされた
請求項1から請求項5のいずれかに記載のタブリード。
【請求項7】
ラミネート材の内部に少なくとも電解液又は固体電解質が封入されタブリードが設けられたラミネート型のリチウムイオン電池であって、
前記タブリードが、
金属材料によって形成されたリード端子と、
内部に少なくとも乾燥剤が分散され前記リード端子に両側から密着され前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する一対のフィルム部とを備え、
前記フィルム部が三層から五層の何れかに積層された樹脂フィルムから成り、
前記ラミネート材に密着される前記樹脂フィルムと前記リード端子に密着される前記樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されず、
前記ラミネート材に密着される前記樹脂フィルムと前記リード端子に密着される前記樹脂フィルムとを除く少なくとも一つの前記樹脂フィルムに前記乾燥剤が分散され 、
前記乾燥剤として酸化カルシウム、酸化ストロンチウム又は酸化バリウムが用いられた
リチウムイオン電池。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人の特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
本件の請求項1ないし7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と甲第2ないし7号証に記載された発明とに基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
よって、請求項1ないし7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
[証拠]
甲第1号証:特開2008-235256号公報
甲第2号証:特開2005-116322号公報
甲第3号証:特開2000-243357号公報
甲第4号証:特表2016-522304号公報
甲第5号証:特開2016-89097号公報
甲第6号証:特開2005-56672号公報
甲第7号証:特開2003-187762号公報
第4 甲第1号証の記載
1 記載事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「【0001】
本発明は、電子機器の電源、電気自動車に搭載される電源、燃料電池または太陽電池などにより発電された電気を蓄電する用途に使用されるリチウム二次電池に関する。より詳細には、ラミネート外装材を用いた、耐久性、安全性および生産性に優れたリチウム二次電池に関する。」
「【0013】
以下、本発明にかかるリチウム二次電池を図面に基づいて詳細に説明する。本発明にかかるリチウム二次電池は、外装体が、金属層と合成樹脂層からなるラミネート外装材で構成され、該外装体に発電要素が封入されたものである。本発明にかかるリチウム二次電池の平面図の一例を図3および4に示す。図3および4において、9はラミネート外装材であり、その周囲の封口部10で融着されて外装体を形成している。ラミネート外装材9は金属層と合成樹脂層からなり、例えば、ナイロンフイルム、アルミニウム箔およびポリオレフィンフイルムをこの順に貼り合わせた構成を有し得、ポリオレフィンフイルムが外装体の内側になるように融着されまたは接着剤によりシールされて外装体が形成される。ポリオレフィンフイルムとしては、例えば、ポリプロピレンフイルム、ポリエチレンフイルム、変性ポリエチレンフイルムなどが使用可能である。
【0014】
12および13はそれぞれ、正極端子および負極端子であり、外装体の内部から外部に向かい導出されている。正極端子および負極端子は各々、例えば、アルミニウム、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されており、それぞれ薄板状または網目状であり得る。
【0015】
ラミネート外装材と正極端子および負極端子との間には、外気の侵入を防止するための密着フイルム11が挿入され得る。密着フイルムは、正極端子および負極端子に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成される。」
「【0017】
本発明における発電要素は、リチウム二次電池において通常使用されるものであり、正極材層、負極材層およびリチウム塩電解質を有する層を含む。正極材層および負極材層は、例えば図1に示されるように、それぞれ集電体3および4の上に形成されて、それぞれ正極板5および負極板6を構成する。正極板5および負極板6は、例えば図2に示されるように、リチウム塩電解質を含む層7を介して積層されて発電要素8を構成する。」
「【0021】
発電要素は、正極板と負極板とが、直接に接触しないように、電解質を含む層7を介して捲回または積層されている。電解質を含む層7としては通常、多孔性樹脂膜からなるセパレーターに、液状またはゲル状のリチウム塩電解質を含浸させたものが使用される。セパレーターとしては、例えば、多孔質でリチウムイオン透過性のあるポリエチレン製セパレーターや多孔質ポリプロピレンと多孔質ポリエチレンを積層した積層構造セパレーターが用いられる。セパレーターは、電極材や電極板が高温になった場合に、軟化して多孔性を失い、その結果、リチウムイオンの移動、すなわち電池反応、を抑制することができるという安全機構を兼ねている。」
「【0026】
本発明のリチウム二次電池は、外装体に発電要素とともに吸収シートが封入されている。上記吸収シートは、吸収層およびその両面に積層された、無機粒子を含まない樹脂層を有する。吸収層は、酸の吸収機能を持った無機粒子および水の吸収機能を持った無機粒子を含む1以上の樹脂層で構成されている。吸収層は、酸の吸収機能を持つ無機粒子および水の吸収機能を持つ無機粒子を含む単一の樹脂層で構成されていてもよく、または酸の吸収機能を持つ無機粒子を含む樹脂層と水の吸収機能を持つ無機粒子を含む樹脂層との積層体で構成されていてもよい。
・・・中略・・・
【0028】
水の吸収機能を持つ無機粒子としては吸湿特性のある材料であればいかなるものでも使用可能であるが、吸湿による体積変化、状態変化などの少ないものが好ましく、例えば、金属酸化物、ゼオライト、焼成ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト酸化物、硫酸マグネシウム(0~3水和物)、五酸化リン、塩化カルシウムなどが挙げられる。
・・・中略・・・
【0032】
上記吸収シートは、吸収層の両面に、無機粒子を含まない樹脂層を有する。その結果、吸収層中の酸の吸収機能を持つ無機粒子および水の吸収機能を持つ無機粒子の脱離によるリチウム二次電池内部の汚染や発電要素の破損を抑制することができる。また、酸および水の吸収速度が抑えられるため、吸収シートの製造時およびリチウム二次電池の製造時における吸収シートの取り扱いが容易である。吸収シートは、例えば、図5に示されるように、吸収層16の両面に、無機粒子を含まない樹脂層15が積層された構成を有する。あるいは、図6に示されるように、吸収層16全体を、無機粒子を含まない樹脂層15で被覆していてもよい。被覆することにより、上記リチウム二次電池内の汚染をさらに抑制することができ、また、吸収シートの取り扱いがより容易になる。」
「【0037】
本発明のリチウム二次電池における吸収シートの配置場所は、外装体の内部であれば特に制限されない。例えば、図7に示すように、吸収シート14が発電要素8を挟むように2枚配置されることが好ましいが、どちらか片方のみに1枚配置してもよい。
・・・中略・・・
【0038】
吸収シート14は、外装体の内部に配置されると共に、好ましくは、ラミネート外装体の封口部10にも配置される。この場合、吸収シートは、封口部の少なくとも一部、より好ましくは、封口部の全部分に配置される。その例を図12および13に示す。図12に示すように、1つの封口部に1枚の吸収-シートを使用してもよく、図13に示すように、1つの封口部に2枚の吸収シートを使用してもよい。外装体の封口部にも吸収シートを配置することで、封口部から浸入する水分量を効率よく低減することが可能であり、フッ化水素の発電要素への影響、封口部における密着性の低下を長期間にわたって回避できる。」
「【図3】
[図:0001406759000001.jpg]
」
「【図13】
[図:0001406759000002.jpg]
」
2 記載された技術事項
上記摘記事項の記載より、甲第1号証には次の技術的事項が記載されているといえる。
(1)段落【0001】の記載によれば、甲第1号証には、ラミネート外装材を用いたリチウム二次電池が記載されている。
(2)段落【0013】の記載によれば、リチウム二次電池は、外装体が、金属層と合成樹脂層からなるラミネート外装材9をその周囲の封口部10で融着されて形成され、該外装体に発電要素が封入されたものである。
(3)段落【0014】の記載によれば、金属材料により構成される正極端子12および負極端子13は外装体の内部から外部に向かい導出されている。
(4)段落【0015】の記載によれば、ラミネート外装材9と正極端子12および負極端子13との間には、外気の侵入を防止するための、ポリオレフィン樹脂により構成される密着フィルム11が挿入される。
(5)段落【0017】の記載によれば、発電要素は、正極材層、負極材層およびリチウム塩電解質を有する層を含む。段落【0021】の記載によれば、電解質を含む層としては、セパレーターに、液状またはゲル状のリチウム塩電解質を含浸させたものが使用され、セパレーターとしては、多孔質でリチウムイオン透過性のあるポリエチレン製セパレーターが用いられる。
(6)段落【0026】、【0032】の記載によれば、リチウム二次電池は、外装体に発電要素とともに吸収シートが封入され、吸収シートは、吸収層16およびその両面に積層された、無機粒子を含まない樹脂層15を有し、吸収層16は、水の吸収機能を持った無機粒子を含む1以上の樹脂層で構成されている。
(7)段落【0028】の記載によれば、水の吸収機能を持つ無機粒子としては金属酸化物が挙げられる。
(8)段落【0038】には「吸収シート14は、外装体の内部に配置されると共に、好ましくは、ラミネート外装体の封口部10にも配置される。・・・図13に示すように、1つの封口部に2枚の吸収シートを使用してもよい。外装体の封口部にも吸収シートを配置することで、封口部から浸入する水分量を効率よく低減することが可能」と記載され、図13より密着フィルム11は正極端子12および負極端子13それぞれの両面に配置され、吸収シート14はラミネート外装材9と密着フィルム11との間に配置されることが見てとれる。
してみると、図13に示されたリチウム二次電池の例では、密着フィルム11は正極端子12および負極端子13それぞれの両面に配置され、吸収シート14は外装体の内部に配置されると共に、2つの吸収シート14がそれぞれ、ラミネート外装材9と密着フィルム11との間に配置され、封口部から浸入する水分量を効率よく低減するといえる。
3 記載された発明
上記2(1)ないし(8)の技術的事項を総合勘案すると、甲第1号証には、図13に示されたリチウム二次電池として次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「外装体が、金属層と合成樹脂層からなるラミネート外装材9をその周囲の封口部で融着されて形成され、該外装体に発電要素が封入されたリチウム二次電池において、
金属材料により構成される正極端子および負極端子は外装体の内部から外部に向かい導出されており、
ラミネート外装材と正極端子および負極端子との間には、外気の侵入を防止するための、ポリオレフィン樹脂により構成される密着フィルムが挿入され、
発電要素は、正極材層、負極材層およびリチウム塩電解質を有する層を含み、電解質を含む層としては、セパレーターに、液状またはゲル状のリチウム塩電解質を含浸させたものが使用され、セパレーターとしては、多孔質でリチウムイオン透過性のあるポリエチレン製セパレーターが用いられ、
外装体に発電要素とともに吸収シートが封入され、吸収シートは、吸収層およびその両面に積層された、無機粒子を含まない樹脂層を有し、吸収層は、水の吸収機能を持った無機粒子を含む1以上の樹脂層で構成され、
水の吸収機能を持つ無機粒子としては金属酸化物が挙げられ、
密着フィルムは正極端子および負極端子それぞれの両面に配置され、吸収シートは外装体の内部に配置されると共に、2つの吸収シートがそれぞれ、ラミネート外装材と密着フィルムとの間に配置され、封口部から浸入する水分量を効率よく低減する
ラミネート外装材を用いたリチウム二次電池。」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明における「ラミネート外装材を用いたリチウム二次電池」は、外装体が、金属層と合成樹脂層からなるラミネート外装材9をその周囲の封口部で融着されて形成され、該外装体に発電要素が封入されたものである。また、甲1発明の「発電要素」は、リチウム塩電解質を有する層を含み、電解質を含む層としては、セパレーターに、液状またはゲル状のリチウム塩電解質を含浸させたものが使用され、セパレーターとしては、多孔質でリチウムイオン透過性のあるポリエチレン製セパレーターが用いられるものである。
してみると、甲1発明の「ラミネート外装材を用いたリチウム二次電池」は、ラミネート外装材から形成された外装体の内部にリチウムイオン透過性のあるセパレーターに液体またはゲル状のリチウム塩電解質を含浸させた層を含む発電要素が封入されたものであり、本件発明1の「ラミネート材の内部に少なくとも電解液又は固体電解質が封入されたラミネート型のリチウムイオン電池」に相当する。
b 本件明細書段落【0003】に「タブリードには、電力を取り出すための端子部材として機能する金属製のリード端子と、リード端子とラミネート材の間に両者の隙間を封止すると共に両者を絶縁するためのフィルム部とが設けられている」と記載されているように、甲1発明の金属材料により構成される「正極端子および負極端子」と、外気の侵入を防止するためにラミネート外装材と正極端子および負極端子との間に挿入される「密着フィルム」とからなる構成は、タブリードである。
してみると、上記aの対比を考慮すれば、甲1発明の「正極端子および負極端子」と「密着フィルム」とからなる構成は、本件発明1の「ラミネート材の内部に少なくとも電解液又は固体電解質が封入されたラミネート型のリチウムイオン電池に用いられるタブリード」に相当する。
c 甲1発明の「金属材料により構成される正極端子および負極端子」は、本件発明1の「タブリード」が備える「金属材料によって形成されたリード端子」に相当する。
d 甲1発明の「密着フィルム」は、外気の侵入を防止するためにラミネート外装材と正極端子および負極端子との間に挿入され、正極端子および負極端子それぞれの両面に配置されるものであるから、正極端子および負極端子それぞれに両面から密着された一対のフィルムであることは明らかである。
してみると、甲1発明の「密着フィルム」は、本件発明1の「タブリード」が備える「フィルム部」と「前記リード端子に両面から密着され」た「一対のフィルム部」である点で一致する。
ただし、フィルム部が、本件発明1は「内部に少なくとも乾燥剤が分散され」「前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する」ものであり、「三層から五層の何れかに積層された樹脂フィルムから成り、前記ラミネート材に密着される前記樹脂フィルムと前記リード端子に密着される前記樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されず、前記ラミネート材に密着される前記樹脂フィルムと前記リード端子に密着される前記樹脂フィルムとを除く少なくとも一つの前記樹脂フィルムに前記乾燥剤が分散され 、前記乾燥剤として酸化カルシウム、酸化ストロンチウム又は酸化バリウムが用いられた」ものであるのに対して、甲1発明の「密着フィルム」はそのような構成を有さない点で相違する。
e 上記aないしdより、本件発明1と甲1発明とは、
「ラミネート材の内部に少なくとも電解液又は固体電解質が封入されたラミネート型のリチウムイオン電池に用いられるタブリードであって、
金属材料によって形成されたリード端子と、
前記リード端子に両側から密着された一対のフィルム部とを備えた
タブリード。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉
フィルム部が、本件発明1は「内部に少なくとも乾燥剤が分散され」「前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する」ものであり、「三層から五層の何れかに積層された樹脂フィルムから成り、前記ラミネート材に密着される前記樹脂フィルムと前記リード端子に密着される前記樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されず、前記ラミネート材に密着される前記樹脂フィルムと前記リード端子に密着される前記樹脂フィルムとを除く少なくとも一つの前記樹脂フィルムに前記乾燥剤が分散され 、前記乾燥剤として酸化カルシウム、酸化ストロンチウム又は酸化バリウムが用いられた」ものであるのに対して、甲1発明の「密着フィルム」はそのような構成を有さない点。
(2)判断
上記相違点1について検討する。
甲1発明は、吸収層およびその両面に積層された、無機粒子を含まない樹脂層を有し、吸収層は、水の吸収機能を持った無機粒子を含む1以上の樹脂層で構成された「吸収シート」が設けられ、「吸収シート」はラミネート外装材と密着フィルムとの間に配置される構成を有する。
しかしながら、甲第1号証の段落【0037】に「本発明のリチウム二次電池における吸収シートの配置場所は、外装体の内部であれば特に制限されない。例えば、図7に示すように、吸収シート14が発電要素8を挟むように2枚配置されることが好ましいが、どちらか片方のみに1枚配置してもよい。」、段落【0038】に「吸収シート14は、外装体の内部に配置されると共に、好ましくは、ラミネート外装体の封口部10にも配置される。」と記載されるように、吸収シートをラミネート外装体の封口部に配置しない例があることを考慮すれば、甲1発明のラミネート外装材と密着フィルムとの間に配置される「吸収シート」はいわゆるタブフィルムの構成とは認められず、本件発明1の「タブリード」が備える「フィルム部」の一部に相当するものとはいえない。
そして、甲1発明は、水の吸収機能を持った無機粒子を含む吸収シートが「ラミネート外装材と密着フィルムとの間に配置され、封口部から浸入する水分量を効率よく低減する」ものであるから、水の吸収機能を持った無機粒子(乾燥剤)を「密着フィルム」に含有させる動機があるものとは認められない。
また、甲第2ないし7号証には、乾燥剤として酸化カルシウム等を用いることが記載されているものの、甲第2ないし7号証のいずれにも、「タブリード」が備える「フィルム部」に乾燥剤を含有させることは、記載も示唆もされていない。
したがって、相違点1に係る構成を得ることは、甲1発明及び甲第2ないし7号証の記載に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
2 本件発明2ないし6について
請求項2ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2ないし3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし6は甲第1号証に記載された発明に甲第2ないし7号証に記載された発明を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明7について
(1)対比
本件発明7と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明における「ラミネート外装材を用いたリチウム二次電池」は、外装体が、金属層と合成樹脂層からなるラミネート外装材9をその周囲の封口部で融着されて形成され、該外装体に発電要素が封入されたものである。また、甲1発明の「発電要素」は、リチウム塩電解質を有する層を含み、電解質を含む層としては、セパレーターに、液状またはゲル状のリチウム塩電解質を含浸させたものが使用され、セパレーターとしては、多孔質でリチウムイオン透過性のあるポリエチレン製セパレーターが用いられるものである。
してみると、甲1発明の「ラミネート外装材を用いたリチウム二次電池」は、ラミネート外装材から形成された外装体の内部にリチウムイオン透過性のあるセパレーターに液体またはゲル状のリチウム塩電解質を含浸させた層を含む発電要素が封入されたものであり、本件発明7の「ラミネート材の内部に少なくとも電解液又は固体電解質が封入され」「たラミネート型のリチウムイオン電池」に相当する。
b 本件明細書段落【0003】に「タブリードには、電力を取り出すための端子部材として機能する金属製のリード端子と、リード端子とラミネート材の間に両者の隙間を封止すると共に両者を絶縁するためのフィルム部とが設けられている」と記載されているように、甲1発明の金属材料により構成される「正極端子および負極端子」と、外気の侵入を防止するためにラミネート外装材と正極端子および負極端子との間に挿入される「密着フィルム」とからなる構成は、タブリードである。
してみると、上記aの対比を考慮すれば、甲1発明の「ラミネート外装材を用いたリチウム二次電池」は、本件発明7の「ラミネート材の内部に少なくとも電解液又は固体電解質が封入されタブリードが設けられたラミネート型のリチウムイオン電池」に相当する。
c 甲1発明の「金属材料により構成される正極端子および負極端子」は、本件発明7の「タブリード」が備える「金属材料によって形成されたリード端子」に相当する。
d 甲1発明の「密着フィルム」は、外気の侵入を防止するためにラミネート外装材と正極端子および負極端子との間に挿入され、正極端子および負極端子それぞれの両面に配置されるものであるから、正極端子および負極端子それぞれに両面から密着された一対のフィルムであることは明らかである。
してみると、甲1発明の「密着フィルム」は、本件発明7の「タブリード」が備える「フィルム部」と「前記リード端子に両面から密着され」た「一対のフィルム部」である点で一致する。
ただし、フィルム部が、本件発明7は「内部に少なくとも乾燥剤が分散され」「前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する」ものであり、「三層から五層の何れかに積層された樹脂フィルムから成り、前記ラミネート材に密着される前記樹脂フィルムと前記リード端子に密着される前記樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されず、前記ラミネート材に密着される前記樹脂フィルムと前記リード端子に密着される前記樹脂フィルムとを除く少なくとも一つの前記樹脂フィルムに前記乾燥剤が分散され、前記乾燥剤として酸化カルシウム、酸化ストロンチウム又は酸化バリウムが用いられた」ものであるのに対して、甲1発明の「密着フィルム」はそのような構成を有さない点で相違する。
e 上記aないしdより、本件発明7と甲1発明とは、
「ラミネート材の内部に少なくとも電解液又は固体電解質が封入されタブリードが設けられたラミネート型のリチウムイオン電池であって、
前記タブリードが、
金属材料によって形成されたリード端子と、
前記リード端子に両側から密着された一対のフィルム部とを備えた
リチウムイオン電池。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点2〉
フィルム部が、本件発明7は「内部に少なくとも乾燥剤が分散され」「前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する」ものであり、「三層から五層の何れかに積層された樹脂フィルムから成り、前記ラミネート材に密着される前記樹脂フィルムと前記リード端子に密着される前記樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されず、前記ラミネート材に密着される前記樹脂フィルムと前記リード端子に密着される前記樹脂フィルムとを除く少なくとも一つの前記樹脂フィルムに前記乾燥剤が分散され、前記乾燥剤として酸化カルシウム、酸化ストロンチウム又は酸化バリウムが用いられた」ものであるのに対して、甲1発明の「密着フィルム」はそのような構成を有さない点。
(2)判断
本件発明7の相違点2に係る構成は本件発明1の相違点1に係る構成と同一であるから、上記1(2)で検討したのと同様の理由により、相違点2に係る構成を得ることは、甲1発明及び甲第2ないし7号証の記載に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
4 小括
したがって、本件請求項1ないし7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第2ないし7号証に記載された発明を適用することで、当業者が容易に発明することができたものではなく、請求項1ないし7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701253