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特許異議申立

2024-700456

カーボンナノチューブを含む複合2次粒子及びその製造方法

審判番号
2024-700456
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-566478
登録番号
7381498
請求日
2024年05月15日
審決日
2025年04月30日
公報発行日
2025年08月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ダイキンファインテック株式会社
  • 【権利者代理人】山尾 憲人
  • 【権利者代理人】森住 憲一
  • 【権利者代理人】岩木 郁子
  • 【異議申立人】安藤 宏
審判長/審判官
  • 審判長 ▲吉▼澤 英一
  • 審判官 近野 光知
  • 審判官 岡谷 祐哉
分類
P1651.121-YAA(C08L) / P1651.4 -YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条の2、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7381498号発明「カーボンナノチューブを含む複合2次粒子及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7381498号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項11について訂正することを認める。 特許第7381498号の請求項1-13に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7381498号(以下、「本件特許」という。)は、令和2年1月16日(優先権主張 平成31年1月18日)を国際出願日とする特許出願(特願2020-566478号)に係るものであって、令和5年11月7日にその特許権の設定登録(請求項の数13)がされ、同年同月15日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年5月15日に特許異議申立人 安藤 宏(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。その後の主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和6年 9月 9日付け 取消理由通知 同年11月 8日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) なお、申立人に対して、令和7年1月21日付け通知書により、訂正請求があった旨の通知をしたが、何らの応答もなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和6年11月8日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項11に、「複合2次粒子の製造方法」とあるのを、「請求項1~4のいずれか1項に記載の複合2次粒子の製造方法」と訂正する。 2 一群の請求項について 訂正前の請求項1~13について、請求項11は独立項であり、請求項12~13は請求項11を直接または間接的に引用するものではないから、訂正事項によって記載が訂正される請求項11に連動して訂正される請求項は存在しない。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1による訂正について 訂正事項1による請求項11についての訂正は、「複合2次粒子の製造方法」を、「請求項1~4のいずれか1項に記載の複合2次粒子の製造方法」に狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しない。 そして、当該訂正事項は、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0012】に記載されているから、訂正事項1による請求項11についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。 4 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項11について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められることから、本件特許の請求項1~13に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 フッ素樹脂の1次粒子と、カーボンナノチューブとを含む複合2次粒子であって、 フッ素樹脂の1次粒子が集合し、フッ素樹脂の1次粒子の間にカーボンナノチューブが存在して構成された複合2次粒子であり、 カーボンナノチューブの平均長さは、50~1000μmであり、 フッ素樹脂の1次粒子の平均粒子径は、1~300μmであり、 複合2次粒子の平均粒子径は、150μm以上であり、 1次粒子の平均粒子径より、複合2次粒子の平均粒子径の方が大きく、 複合2次粒子は、カーボンナノチューブを0.01~2.0質量%含み、 複合2次粒子の嵩密度は、0.45g/cm3以上である、複合2次粒子。 【請求項2】 複合2次粒子の平均粒子径は、500μmより大きい、請求項1に記載の複合2次粒子。 【請求項3】 複合2次粒子の比表面積は、0.5~9.0m2/gである、請求項1又は2に記載の複合2次粒子。 【請求項4】 フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリフッ化ビニル(PVF)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合2次粒子。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか1項に記載の複合2次粒子を含む、成形体。 【請求項6】 体積抵抗率が、1×10-1~1×106Ω・cmである、請求項5に記載の成形体。 【請求項7】 弾性率が、100~3000MPaである、請求項5又は6に記載の成形体。 【請求項8】 強度が、10~100MPaである、請求項5~7のいずれか1項に記載の成形体。 【請求項9】 伸びが、2~1000%である、請求項5~8のいずれか1項に記載の成形体。 【請求項10】 (i)フッ素樹脂の1次粒子にカーボンナノチューブが分散したフッ素樹脂組成物を準備すること;及び (ii)そのフッ素樹脂組成物に造粒操作を施して、複合2次粒子を製造すること、 を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合2次粒子の製造方法。 【請求項11】 平均粒子径が1~300μmである粒子状のフッ素樹脂と、平均長さが50~1000μmであるカーボンナノチューブを準備すること; 粒子状のフッ素樹脂に、カーボンナノチューブを、0.01~2.0質量%の割合で加えて、複合樹脂組成物を準備すること; 複合樹脂組成物に造粒操作を施して、カーボンナノチューブとフッ素樹脂の1次粒子を含み、150μm以上の平均粒子径及び0.45g/cm3以上の嵩密度を有する複合2次粒子を製造すること を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合2次粒子の製造方法。 【請求項12】 請求項1~4のいずれか1項に記載の複合2次粒子を成形することを含む、成形体の製造方法。 【請求項13】 成形は、ラム押出、圧縮成形、自動圧縮成形、アイソスタティック成形、押出成形、射出成形、トランスファー成形から選択される成形方法で行われることを含む、請求項12に記載の成形体の製造方法。」 (以下、本件特許の請求項1~13に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明13」のようにいい、それらをまとめて「本件発明」という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。) 第4 特許異議申立理由の概要、取消理由の概要及び証拠方法 1 申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 申立理由1(サポート要件) 本件発明1~13に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・具体的な理由の概要 (1)本件発明1、11は、複合2次粒子の平均粒子径、嵩密度について、下限値を満たす限り特に限定されておらず、本件明細書の実施例には、特定の範囲の例が記載されているにすぎない。また、本件明細書の他の段落にも数値範囲の例示があるにすぎない。技術常識的に、複合粒子の平均粒子径、嵩密度は複合粒子の成形性に影響する因子であるから、本件発明1、11は本件発明の課題を解決することが当業者に認識できるように記載されていない。 (2)本件発明11は、「平均長さが50~1000μmであるカーボンナノチューブを準備すること」と規定されている。本件明細書【0022】の記載から、本件明細書の課題を解決するためには、複合2次粒子に含有されるCNTの平均長さが50μm以上である必要があるといえる。しかしながら、造粒操作によってCNTの長さは異なるものとなり得るから、本件発明11は本件発明の課題を解決することが当業者に認識できるように記載されていない。 (3)本件発明11は、「平均粒子径が1~300μmである粒子状のフッ素樹脂」と「150μm以上の平均粒子径を有する複合2次粒子を製造する」という条件では、「粒子状のフッ素樹脂」と「2次粒子」とが同程度のサイズである場合を含むばかりでなく、「粒子状のフッ素樹脂」よりも「2次粒子」の方が小さいようなものも含み得るから、本件発明11は本件発明の課題を解決することが当業者に認識できるように記載されていない。 (4)本件発明1には、2次粒子に含まれるCNTの平均長さについて規定されており、本件明細書【0023】には、CNTの平均長さをSEMで撮影して画像処理して計算することが記載されているが、実施例においては、準備したCNTについて、(B1)平均繊維長=約150μm、(B2)平均繊維長=約600μmの商品名が記載されるのみである。造粒操作によってCNTの長さは異なるものとなり得る。2次粒子のCNT長さについては不明であるから、本件発明1は本件発明の課題を解決することが当業者に認識できるように記載されていない。 申立理由2(明確性) 本件特許の請求項1~13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・具体的な理由の概要 本件発明1、11には、2次粒子の粒子径について「150μm以上」、嵩密度について「0.45g・cm3以上」と規定されるのみで、上限が規定されておらず、発明の範囲が不明確である。 本件発明1、11を引用する本件発明2~10、12、13についても同様である。 申立理由3(実施可能要件) 本件発明1~10、12、13に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・具体的な理由の概要 本件明細書には、CNTの平均長さの測定方法が記載されている(【0023】)が、実施例において、該手法による測定結果は記載されておらず、使用する市販のCNTの長さが記載されるのみである(【0043】)。造粒操作によってCNTの長さは異なるものとなり得る。具体的にどのような制御をすることで、本件発明1の複合2次粒子を得ることができるのか説明されていない。 本件発明1を引用する本件発明2~10、12、13についても同様である。 申立理由4(拡大先願) 本件発明1、2、4~6、10~13は、甲第1号証に係る出願(以下「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「先願明細書等」という。)に記載された発明であって、本件特許に係る発明者と先願に係る発明者とは同一ではなく、また、本件特許に係る出願の出願人と先願に係る出願人も同一でなく、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1、2、4~6、10~13に係る発明についての特許は、特許法第29条の2に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 申立理由5(進歩性) 本件発明1~13は、下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願の技術の分野に属する通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~13についての特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 証拠方法 特許異議申立書に添付した証拠方法 甲第1号証 特願2018-145019号(特開2020-19894号公報) 甲第2号証 国際公開第2018/066706号 甲第3号証 特開2017-122232号公報 甲第4号証 特開2018-196999号公報 甲第5号証 特表2018-529808号公報 甲第6号証 特開2018-70709号公報 (以下、甲第1~6号証をそれぞれ、「甲1」~「甲6」のようにいう。) 3 取消理由通知に記載した取消理由の概要 当審において令和6年9月9日付けで通知した取消理由通知の概要は以下のとおりである。 取消理由1(サポート要件) 本件特許の請求項11に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的な理由の概要は、申立理由1の(3)と同様である。 第5 当審の判断 本件発明1~13に係る特許は、当審において通知した取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された申立理由によっては、取り消すことはできないと判断する。 その理由は以下のとおりであるが、申立理由1は取消理由1と同旨であるから、申立理由1は、取消理由1とまとめて検討する。 1 取消理由1(サポート要件)、申立理由1(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁、平成17年(行ケ)10042号判決参照)。 (2)本件発明が解決しようとする課題 本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書の【0008】の記載からみて、「耐薬品性、耐熱性、導電性、クリーン性に優れ、かつ、欠陥の少ない、好ましくは欠陥のない、より大きな成形体を提供し、それを容易に得るための、製造中間物(より具体的には、2次粒子)及びそれらの製造方法を提供すること」であると認められる。 (3)サポート要件の検討 本件訂正で請求項11が請求項1を引用したことにより、1次粒子の平均粒子径より複合2次粒子の平均粒子径が大きいことが特定された。 本件明細書には、本件明細書の【0012】において「本発明の実施形態の複合2次粒子は、 フッ素樹脂の1次粒子と、カーボンナノチューブとを含み、 フッ素樹脂の1次粒子が集合し、フッ素樹脂の1次粒子同士の間にカーボンナノチューブが存在して構成された複合2次粒子であり、 カーボンナノチューブの平均長さは、50~1000μmであり、 フッ素樹脂の1次粒子の平均粒子径は、1~300μmであり、 複合2次粒子の平均粒子径は、150μmを超え、 1次粒子の平均粒子径より、複合2次粒子の平均粒子径の方が大きく、 複合2次粒子は、カーボンナノチューブを0.01~2.0質量%含む。」と規定される複合2次粒子が、課題を解決することが記載されている(【0013】)。 ここで、本件明細書の【0012】の規定のそれぞれの要素について、本件明細書には下記のとおり記載されている。 本件明細書には「フッ素樹脂の1次粒子とは、フッ素樹脂でできている粒子状物質であり、その平均粒子径は、1~300μmであって、カーボンナノチューブと複合2次粒子を形成することができ、その複合2次粒子を成形することで、本発明が目的とするより大きな成形体を得られる限り、特に制限されることはない。」(【0017】)と記載され、すなわち、課題解決のために、本件発明1の複合2次粒子が得られる限り、フッ素樹脂の1次粒子の平均粒子径は、1~300μmであることの他に制限されることはないことが記載されている。 本件明細書には「本発明の実施形態の複合2次粒子において、カーボンナノチューブは、例えば、50~1000μmの平均長さを有し、50~800μmの平均長さを有することが好ましく、70~650μmの平均長さを有することがより好ましく、100~500μmの平均長さを有することが更により好ましく、150~400μmの平均長さを有することが特に好ましく。 CNTは、50μm以上の平均長さを有する場合、導電パスが繋がりやすいので、導電性がより向上し、好ましい。」(【0022】)と記載され、すなわち、課題解決のために、CNTは、50~1000μmの平均長さを有することが好ましいことが記載されている。 本件明細書には「本発明の実施形態において、複合2次粒子は、カーボンナノチューブを、0.01~2.0重量%含み、0.04~1.5重量%含むことが好ましく、0.05~1.0重量%含むことがより好ましく、0.05~0.5重量%含むことが特に好ましい。 複合2次粒子が、カーボンナノチューブを、0.01~2.0重量%含む場合、導電パスを形成するために好ましい。複合2次粒子が、カーボンナノチューブを、0.05~1.0重量%含む場合、導電パスを形成するためにより十分な量なので、導電性がより向上し、より好ましい。」(【0024】)と記載され、すなわち、課題解決のために、複合2次粒子が、カーボンナノチューブを、0.01~2.0重量%含むことが好ましいことが記載されている。 本件明細書には「本発明の実施形態の複合2次粒子は、フッ素樹脂の1次粒子が集合し、フッ素樹脂の1次粒子同士の間にカーボンナノチューブが存在して構成されているので、複合2次粒子の平均粒子径は、フッ素樹脂の1次粒子の平均粒子径より大きく、複合2次粒子の平均粒子径は、150μmを超える。 複合2次粒子の平均粒子径は、実施例で示すように、レーザー回折散乱式粒度分布装置(日機装製「MT3300II」)を用いて測定することができる。平均粒子径は、測定で得た粒度分布における、積算値50%での粒子径(D50)である。 複合2次粒子の平均粒子径は、例えば、150μm以上であり、300μm以上であってよく、300~5000μmであることが好ましく、400~3000μmであることがより好ましく、500~2000μmであることが特に好ましい。」(【0025】)と記載され、すなわち、課題解決のために、フッ素樹脂の1次粒子が集合し、フッ素樹脂の1次粒子同士の間にカーボンナノチューブが存在して構成されているので、複合2次粒子の平均粒子径は、フッ素樹脂の1次粒子の平均粒子径より大きく、複合2次粒子の平均粒子径は、150μmを超えることが記載されている。 そして、本件明細書には、カーボンナノチューブを含まない比較例1、複合2次粒子を形成しない比較例2、フッ素樹脂の1次粒子が集合し、フッ素樹脂の1次粒子の間にカーボンナノチューブが存在して構成された複合2次粒子ではない比較例3が記載されており(【0053】~【0055】)、これらは、成形体の体積抵抗率、大型成形に関して課題を解決できないことが記載されている(【0064】、【0066】)。 一方、本件明細書には、上記【0017】、【0022】、【0024】、【0025】に記載の規定を満たす複合2次粒子である実施例1~6が記載されており(【0041】~【0052】)、これらが課題を解決できることが記載されており【0064】、【0065】)、上記【0012】に規定される複合2次粒子が本件発明の課題を解決することが、当業者であれば確認でき、本件発明1は、上記複合2次粒子の規定を、嵩密度について更に限定したものである。 そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、本件発明1が本件発明の課題が解決できることを当業者は認識できるといえる。 そして、本件発明2~13は、サポート要件違反の理由のない本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、サポート要件違反の理由を有しない。 2 申立人の主張について 申立理由1の(1)について検討する。 申立人は次の主張をする。 本件発明1、11は、複合2次粒子の平均粒子径、嵩密度について、下限値を満たす限り特に限定されておらず、本件明細書の実施例には、特定の範囲の例が記載されているにすぎない。また、本件明細書の他の段落にも数値範囲の例示があるにすぎない。技術常識的に、複合粒子の平均粒子径、嵩密度は複合粒子の成形性に影響する因子であるから、本件発明1、11は本件発明の課題を解決することが当業者に認識できるように記載されていない。 上記主張について検討する。 上記1で示したとおり、嵩密度は、課題解決に影響する物性であるとはいえない。 また、平均粒子径については、下限を満たすことで課題を解決できることが本件明細書において示されている。 そして、複合粒子の平均粒子径、嵩密度は複合粒子の成形性に影響する因子であることについて、何ら具体的な根拠が示されていない。 したがって、上記主張については採用できない。 申立理由1の(2)について検討する。 申立人は次の主張をする。 本件発明11は、「平均長さが50~1000μmであるカーボンナノチューブを準備すること」と規定されている。本件明細書【0022】の記載から、本件明細書の課題を解決するためには、複合2次粒子に含有されるCNTの平均長さが50μm以上である必要があるといえる。しかしながら、造粒操作によってCNTの長さは異なるものとなり得るから、本件発明11は本件発明の課題を解決することが当業者に認識できるように記載されていない。 上記主張について検討する。 本件発明11が、訂正事項1による訂正により、本件発明1を引用するものとなったことから、当該理由については理由がない。 申立理由1の(3)について検討する。 申立人は次の主張をする。 本件発明11は、「平均粒子径が1~300μmである粒子状のフッ素樹脂」と「150μm以上の平均粒子径を有する複合2次粒子を製造する」という条件では、「粒子状のフッ素樹脂」と「2次粒子」とが同程度のサイズである場合を含むばかりでなく、「粒子状のフッ素樹脂」よりも「2次粒子」の方が小さいようなものも含み得るから、本件発明11は本件発明の課題を解決することが当業者に認識できるように記載されていない。 上記主張について検討する。 本件発明11が、訂正事項1による訂正により、本件発明1を引用するものとなったことから、当該理由については理由がない。 申立理由1の(4)について検討する。 申立人は次の主張をする。 本件発明1には、2次粒子に含まれるCNTの平均長さについて規定されており、本件明細書【0023】には、CNTの平均長さをSEMで撮影して画像処理して計算することが記載されているが、実施例においては、準備したCNTについて、(B1)平均繊維長=約150μm、(B2)平均繊維長=約600μmの商品名が記載されるのみである。造粒操作によってCNTの長さは異なるものとなり得る。2次粒子のCNT長さについては不明であるから、本件発明1は本件発明の課題を解決することが当業者に認識できるように記載されていない。 上記主張について検討する。 申立人は、造粒操作によってCNTの長さは異なるものとなり得ること、及び、それにより上記課題を解決しないことについて具体的な根拠等を示していないから、上記主張については採用できない。 3 申立理由2(明確性) について 申立人は次の主張をする。 本件発明1、11には、2次粒子の粒子径について「150μm以上」、嵩密度について「0.45g・cm3以上」と規定されるのみで、上限が規定されておらず、発明の範囲が不明確であり、本件発明1、11を引用する本件発明2~10、12、13についても同様である。 上記主張について検討する。 本件明細書には下記のとおり記載されている。 「【0056】 <平均粒子径> フッ素樹脂の粒子及び複合2次粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布装置(日機装製「MT3300II」)を用いて測定した。平均粒子径は、測定で得た粒度分布における、積算値50%での粒子径(D50)である。」 「【0058】 <嵩密度> フッ素樹脂の粒子及び複合2次粒子の嵩密度は、JIS K6891に準拠して、測定した。容積100mLのステンレス製の容器に、上部に設置された漏斗より試料を落として、容器から盛り上がった試料を平板で擦切ったあっと容器に残った試料の重さを容器の容積で割ったものを嵩密度とした。」 上記のとおり、本件明細書には、複合2次粒子の平均粒子径、複合2次粒子の嵩密度について測定方法が示されており、また、本件発明1において、これらの下限について数値をもって示されており、明確である。 そうすると、数値範囲の上限が規定されていないことのみをもって直ちに不明確であるとはいえず、上記主張については採用できない。 4 申立理由3(実施可能要件)について (1)申立人の主張 申立人は、本件明細書には、CNTの平均長さの測定方法が記載されている(【0023】)が、実施例において、該手法による測定結果は記載されておらず、使用する市販のCNTの長さが記載されるのみである(【0043】)。造粒操作によってCNTの長さは異なるものとなり得る。具体的にどのような制御をすることで、本件発明1の複合2次粒子を得ることができるのか説明されておらず、本件発明1を引用する本件発明2~10、12、13についても同様である旨主張する。 (2)実施可能要件の判断基準 本件発明1は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を満たすためには、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載がない場合には、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。 (3)検討 以下、上記(2)の観点から検討する。 本件明細書には下記のとおり記載されている。 「【0032】 (ii)フッ素樹脂組成物に造粒操作を施して、複合2次粒子を製造する方法は、本発明が目的とする複合2次粒子を得られる限り、造粒操作、造粒条件等に特に制限されることはない。造粒操作(方法)は、湿式造粒でも乾式造粒でもよい。」 「【0065】 実施例1~6の複合2次粒子は、フッ素樹脂の1次粒子とカーボンナノチューブを含み、フッ素樹脂の1次粒子の間にカーボンナノチューブが存在して構成されており、1次粒子の平均粒子径より、大きい特定の平均粒子径を有し、特定の平均長さのカーボンナノチューブを特定量含む。そして、それらを圧縮成形して得られる成形体は、耐薬品性、耐熱性、導電性、クリーン性(溶剤に浸しても金属、有機物などが溶け出さない)に優れる、欠陥(クラック)の少ない、好ましくは欠陥の比較的少ない、大きな成形体を容易に得ることができる。」 例えば、造粒操作によってCNTが破断し、長さが変化するとしても、本件明細書【0032】の記載等に基づいて、当業者が造粒操作、造粒条件を適宜調整するものである。 そして、実施例では本件明細書【0065】の記載から、本件発明1に記載の複合2次粒子が得られたと解される。 また、申立人は、造粒操作によってCNTの長さは異なるものとなり得るとする具体的な根拠等を示していない。 したがって、準備段階での適切な長さのものを選択すること、また、破断しにくいような造粒操作を選択する(例えば、混錬の速さを調整する)ことに、当業者にとって過度の試行錯誤が必要とまではいえない。 したがって、上記主張については採用できない。 5 申立理由4(拡大先願)について (1)先願発明 先願明細書等の実施例1に着目すると、先願には下記の発明が記載されている。 「PTFEファインパウダーグレードF-104(平均粒子径:約500μm、ダイキン工業株式会社製、以下「PTFEファインパウダー」と記載する。):5gとメチルエチルケトン:20gをビーカーに入れ、PTFEファインパウダーをメチルエチルケトンの存在下で解砕し、次いで、カーボンナノチューブ(平均長さ:100~400μm)とメチルエチルケトンとを含むCNT分散液(カーボンナノチューブ含有量0.2質量%):7.5gをビーカーに入れて攪拌し、解砕されたPTFEファインパウダーとカーボンナノチューブとをメチルエチルケトンに分散させ、撹拌した複合樹脂粒子の分散液を、複合樹脂粒子の質量が1gとなるように乾燥容器に貯留し、自然乾燥させて製造した、かさ密度が400~600g/Lの複合樹脂粒子の粉末。」(以下「先願発明」という。) (2)対比 本件発明1と先願発明を対比する。 先願発明の「複合樹脂粒子」は、その製法からみて、複数のPTFE粒子とCCNTとが凝集したものであると解されるから、本件発明1の「フッ素樹脂の1次粒子と、カーボンナノチューブとを含む複合2次粒子」に相当する。 先願発明の「カーボンナノチューブ」は、「平均長さ:100~400μm」であるので、本件発明1の「カーボンナノチューブの平均長さ:50~1000μm」の事項を満たすものである。 先願発明の「PTFEファインパウダー」は、本件明細書の【0017】には「フッ素の1次粒子とは、フッ素樹脂でできている粒子状物質であり」と、本件発明1の「1次粒子」について定義されており、先願発明の解砕後の「PTFEファインパウダー」も「フッ素樹脂でできている粒子状物質」であるので、本件発明1の「1次粒子」に相当する。 そして、先願明細書等の【0017】には「フッ素樹脂を第1の分散媒の存在下で解砕する際には、フッ素樹脂の平均粒子径を5~50μm以下に解砕することが好ましい。」と記載されており、「PTFEファインパウダーグレードF-104(平均粒子径:約500μm、ダイキン工業株式会社製、以下「PTFEファインパウダー」と記載する。):5gをメチルエチルケトンの存在下で解砕し」たものの平均粒子径は「5~50μm」であると推認されるので、先願発明の「PTFEファインパウダー」は、本件発明1の「フッ素樹脂の1次粒子の平均粒子径は、1~300μm」の事項を満たすものである。 してみると、本件発明1と先願発明は下記の点で一致する。 「フッ素樹脂の1次粒子と、カーボンナノチューブとを含む複合2次粒子であって、 カーボンナノチューブの平均長さは、50~1000μmであり、 フッ素樹脂の1次粒子の平均粒子径は、1~300μmである、 複合2次粒子。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1-1> 本件発明1は「フッ素樹脂の1次粒子が集合し、フッ素樹脂の1次粒子の間にカーボンナノチューブが存在して構成された複合2次粒子」であるのに対し、先願発明は当該事項が特定されていない点 <相違点1-2> 本件発明1は「1次粒子の平均粒子径より、複合2次粒子の平均粒子径の方が大き」いのに対し、先願発明は当該事項が特定されていない点 <相違点1-3> 複合2次粒子に含まれるカーボンナノチューブの含有量に関して、本件発明1は「0.01~2.0質量%」であるのに対し、先願発明は当該事項が特定されていない点 <相違点1-4> 本件発明1は「複合2次粒子の嵩密度は、0.45g/cm3以上」であるのに対し、先願発明は「400~600g/L」である点 (3)検討 まず、相違点1-1について検討する。 先願明細書等には「カーボンナノ材料がフッ素樹脂に均一に付着した複合樹脂粒子を製造しやすくなる。」(【0021】)、「分散後の複合樹脂粒子においては、フッ素樹脂の表面の少なくとも一部にカーボンナノ材料が分散した状態で付着して固定されている。」(【0022】)と記載されており、先願発明は、フッ素樹脂の表面にカーボンナノ材料が付着する形状の粒子が形成される構成を有するもので、本件発明1のように「フッ素樹脂の1次粒子が集合し、フッ素樹脂の1次粒子の間にカーボンナノチューブが存在して構成された複合2次粒子であ」る構成を有するものとは認められない。 また、先願発明において、「フッ素樹脂の1次粒子が集合し、フッ素樹脂の1次粒子の間にカーボンナノチューブが存在して構成された複合2次粒子であ」る構成が、課題解決のための具体化手段における微差ともいえない。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は先願発明と同一のものではないし、先願発明と実質的に同一のものでもない。 (3)申立人の主張 相違点1-1について、申立人は特許異議申立書(特に、24頁)において、下記のように主張する。 「上記の通り、先願明細書には、フッ素樹脂の表面にCNTが吸着されていることが開示されている。さらに、段落[0017]の記載から、解砕フッ素樹脂粒子の粒径範囲5~50μmであることがわかる。そして、段落[0045]の説明、及び[0049]の表1の実施例1の飾通過率の値50%の値から、複合樹脂粒子を目開き1.7mmの飾にかけた場合の飾通過率が50%であるということは、かかる複合樹脂粒子の平均粒子径が、少なくとも50μmよりは十分に大きい値をとる蓋然性が高いことがわかる。そうすると、複合樹脂粒子は、解砕フッ素樹脂粒子が複数集まって集合体を形成した状態であると推察される。よって、先願明細書に開示された複合樹脂粒子は「フッ素樹脂の1次粒子が集合し、フッ素樹脂の1次粒子の間にカーボンナノチューブが存在して構成(される)」という構成要件を満たす。」 上記主張について検討する。 篩を通過する程度は、粒子径のみでなく、粒子表面の摩擦等にも依存し、特に、先願発明の粒子は、表面にCNTが付着した粒子であるから、粒子同士のひっかかり等による流動のしにくさも影響するから、篩通過率の値のみをもって、「フッ素樹脂の1次粒子が集合し、フッ素樹脂の1次粒子の間にカーボンナノチューブが存在して構成された複合2次粒子であ」るという事項を満たすとはいえない。 (4)小括 そうすると、本件発明1は先願発明と同一のものではないし、先願発明と実質的に同一のものでもない。 6 申立理由5(進歩性)について (1)甲2に記載された発明 甲2の実施例3について、[0079]に記載の平均粒子径D50が10.3μmのPCTFE粒子2を用い、CNTの量を、得られる複合樹脂材料に基づいて0.1質量%とした以外は[0080](実施例1)に記載の方法と同様の方法で製造したことが記載されており([0082](実施例3))、これに着目すると、甲2の実施例3には下記の発明が記載されている。 「水を溶媒としたカーボンナノチューブ分散液にエタノールを加えて希釈し、さらに、PCTFE粒子2(平均粒子径D50が10.3μm)を添加して混合スラリーを作製し、作製した混合スラリーを耐圧容器に供給し、耐圧容器内の混合スラリーに含まれる分散剤1mgに対して0.03g/分の供給速度で液化二酸化炭素を供給し、耐圧容器内の圧力を20MPa、温度を50℃となるまで昇圧・昇温させ、上記圧力および温度を3時間保持しながら二酸化炭素を、二酸化炭素中に溶け込んだ溶媒(水、エタノール)および分散剤と共に耐圧容器から排出させた後、耐圧容器内の圧力、温度を大気圧、常温まで下げることにより耐圧容器内の二酸化炭素を除去して得られた、CNT0.1質量%のCNT複合樹脂材料(平均粒子径D50が11.5μm)。」(以下「甲2発明3」という。) 同様に、甲2の実施例6には下記の発明が記載されている。 「水を溶媒としたカーボンナノチューブ分散液にエタノールを加えて希釈し、さらに、PCTFE粒子3(平均粒子径D50が286.6μm)を添加して混合スラリーを作製し、作製した混合スラリーを耐圧容器に供給し、耐圧容器内の混合スラリーに含まれる分散剤1mgに対して0.03g/分の供給速度で液化二酸化炭素を供給し、耐圧容器内の圧力を20MPa、温度を50℃となるまで昇圧・昇温させ、上記圧力および温度を3時間保持しながら二酸化炭素を、二酸化炭素中に溶け込んだ溶媒(水、エタノール)および分散剤と共に耐圧容器から排出させた後、耐圧容器内の圧力、温度を大気圧、常温まで下げることにより耐圧容器内の二酸化炭素を除去して得られた、CNT0.1質量%のCNT複合樹脂材料(平均粒子径D50が266.6μm)。」(以下「甲2発明6」という。) (2)甲2発明3について 本件発明1と甲2発明3を対比する。 甲2発明3の「PCTFE粒子2」は、本件発明1の「フッ素樹脂の1次粒子」に相当する。 甲2発明3の「カーボンナノチューブ」は、本件発明1の「カーボンナノチューブ」に相当する。 甲2発明3の「CNT複合樹脂材料」は、本件発明1の「複合2次粒子」に相当する。 甲2の[0042]には「本発明の複合樹脂材料に使用するカーボンナノチューブは、好ましくは50~600μm・・・の平均長さを有する。」と記載されており、甲2発明3のカーボンナノチューブは「50~600μm・・・の平均長さを有する」ものと推認されるので、本件発明1の「カーボンナノチューブの平均長さ:50~1000μm」の事項を満たすものである。 甲2発明3の「PCTFE粒子2」の「平均粒子径D50」は「10.3μm」であるから、本件発明1の「1~300μm」の範囲を満たすものである。 甲2発明3の「PCTFE粒子2」の「平均粒子径D50」は「10.3μm」であり、 「CNT複合樹脂材料」の「平均粒子径D50」は「11.5μm」であるから、本件発明1の「1次粒子の平均粒子径より、複合2次粒子の平均粒子径の方が大きく」の事項を満たすものである。 甲2発明3の「CNTの量」は「0.1質量%」であるので、本件発明1の「0.01~2.0質量%」の範囲を満たすものである。 してみると、本件発明1と甲2発明3は下記の点で一致する。 「フッ素樹脂の1次粒子と、カーボンナノチューブとを含む複合2次粒子であって、 カーボンナノチューブの平均長さは、50~1000μmであり、 フッ素樹脂の1次粒子の平均粒子径は、1~300μmであり、 1次粒子の平均粒子径より、複合2次粒子の平均粒子径の方が大きく、 複合2次粒子は、カーボンナノチューブを0.01~2.0質量%含む、 複合2次粒子。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点2-1> 本件発明1は「フッ素樹脂の1次粒子が集合し、フッ素樹脂の1次粒子の間にカーボンナノチューブが存在して構成された複合2次粒子」であるのに対し、甲2発明3は当該事項が特定されていない点 <相違点2-2> 本件発明1は「複合2次粒子の嵩密度は、0.45g/cm3以上」であるのに対し、甲2発明3は嵩密度について特定されていない点 <相違点2-3> 本件発明1は「「複合2次粒子の平均粒子径は、150μm以上」であるのに対し、甲2発明3は、「CNT複合樹脂材料」の「平均粒子径D50」は「11.5μm」である点 まず、相違点2-1について検討する。 甲2には「本発明の複合樹脂材料は、ポリクロロトリフルオロエチレンとカーボンナノチューブを複合化させた材料であり、ポリクロロトリエチレンの粒子の少なくとも表面および/または表層にカーボンナノチューブが存在する。」([0012])と記載されており、甲2発明3は、ポリクロロトリエチレンの粒子の表面にカーボンナノチューブが付着する形状の粒子が形成される構成を有するもので、本件発明1のように「フッ素樹脂の1次粒子が集合し、フッ素樹脂の1次粒子の間にカーボンナノチューブが存在して構成された複合2次粒子であ」る構成を有するものとは認められない。 また、甲2発明3の「PCTFE粒子2」の「平均粒子径D50」は「10.3μm」であり、「CNT複合樹脂材料」の「平均粒子径D50」は「11.5μm」であることからも、「PCTFE粒子2」同士は集合しておらず、表面にカーボンナノチューブが付着するものと認められる。 さらに、甲2発明3において、あえて「フッ素樹脂の1次粒子が集合し、フッ素樹脂の1次粒子の間にカーボンナノチューブが存在して構成された複合2次粒子」である構成とする動機付けもない。 ここで、甲6には、フッ素樹脂と、繊維状炭素ナノ構造体とを含む複合樹脂材料の形成に際して、平均粒子径が50μmのフッ素樹脂粒子とCNTとを溶媒中で攪拌して得たスラリーを乾燥造粒して複合体(薄片状の複合樹脂材料)を得た場合に、かかる複合体が、平均厚みが112μm、主面の平均最大長が1.4mm、主面の平均最小長が1mmであったことが記載されている(【請求項1】、【0068】、【表1】実施例1)。 しかしながら、甲2発明3において、甲6のように、フッ素樹脂粒子同士が集合した2次粒子を形成する動機がなく、甲2発明3において、甲6の技術を採用し得るものとは認められない。 そして、本件明細書には、相違点2-1に係る特定事項を有する実施例1~6が、相違点2-1に係る特定事項を有しない比較例2、3と比較して優れた性質を示すことが記載されている。 したがって、相違点2-1に係る特定事項を有することにより、「耐薬品性、耐熱性、導電性、クリーン性に優れ、かつ、欠陥の少ない、好ましくは欠陥のない、より大きな成形体を提供し、それを容易に得るための、製造中間物(より具体的には、2次粒子)及びそれらの製造方法を提供すること」【0008】)という効果を奏するといえる。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2発明3に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 (3)甲2発明6について 本件発明1と甲2発明6を対比する。 甲2発明6の「PCTFE粒子3」は、本件発明1の「フッ素樹脂の1次粒子」に相当する。 甲2発明6の「カーボンナノチューブ」は、本件発明1の「カーボンナノチューブ」に相当する。 甲2発明6の「CNT複合樹脂材料」は、本件発明1の「複合2次粒子」に相当する。 甲2の[0042]には「本発明の複合樹脂材料に使用するカーボンナノチューブは、好ましくは50~600μm・・・の平均長さを有する。」と記載されており、甲2発明3のカーボンナノチューブは「50~600μm・・・の平均長さを有する」ものと推認されるので、本件発明1の「カーボンナノチューブの平均長さ:50~1000μm」の事項を満たすものである。 甲2発明6の「PCTFE粒子3」の「平均粒子径D50」は「286.6μm」であるから、本件発明1の「1~300μm」の範囲を満たすものである。 甲2発明6の「CNT複合樹脂材料」の「平均粒子径D50」は「266.6μm」であるから、本件発明1の「複合2次粒子の平均粒子径は、150μm以上」の事項を満たすものである。 甲2発明6の「CNTの量」は「0.1質量%」であるので、本件発明1の「0.01~2.0質量%」の範囲を満たすものである。 してみると、本件発明1と甲2発明6は下記の点で一致する。 「フッ素樹脂の1次粒子と、カーボンナノチューブとを含む複合2次粒子であって、 カーボンナノチューブの平均長さは、50~1000μmであり、 フッ素樹脂の1次粒子の平均粒子径は、1~300μmであり、 複合2次粒子の平均粒子径は、150μm以上であり、 複合2次粒子は、カーボンナノチューブを0.01~2.0質量%含む、 複合2次粒子。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点3-1> 本件発明1は「フッ素樹脂の1次粒子が集合し、フッ素樹脂の1次粒子の間にカーボンナノチューブが存在して構成された複合2次粒子」であるのに対し、甲2発明6は当該事項が特定されていない点 <相違点3-2> 本件発明1は「1次粒子の平均粒子径より、複合2次粒子の平均粒子径の方が大き」いのに対し、甲2発明6は、1次粒子の平均粒子径より、複合2次粒子の平均粒子径の方が小さい点 <相違点3-3> 本件発明1は「複合2次粒子の嵩密度は、0.45g/cm3以上」であるのに対し、甲2発明6は嵩密度について特定されていない点 まず、相違点3-1について検討する。 相違点3-1は上記(2)の相違点2-1と同じであるから、相違点2-1についてと同様の理由で、本件発明1は甲2発明6に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2発明6に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 (4)申立人の主張 相違点1について、申立人は特許異議申立書(特に、41頁)において、下記のように主張する。 「<相違点1 :特徴Bについて> ここで、相違点である本件特許発明1の特徴Bについて検討するに、甲2発明には、複合樹脂材料の製造工程において「混合スラリー中に分散していたカーボンナノチューブがPCTFE粒子に付着する」という点の言及があり(甲第2号証の段落[0055])、PCTFE粒子を用いた造粒に際して、複数のPCTFE粒子が相互に凝集しうることは技術常識であり、表面にCNTが付着したPCTFE粒子が複数凝集した場合に、得られる複合樹脂材料)において、「PCTFE粒子の間にCNTが存在した」構成をとり得ることは当業者には明らかである。よって上記特徴Bは相違点ではない。仮に、上記特徴Bが相違点であったとしても、甲第6号証には、フッ素樹脂と、繊維状炭素ナノ構造体とを含む複合樹脂材料の形成に際して、平均粒子径が50μmのフッ素樹脂粒子とCNTとを溶媒中で攪拌して得たスラリーを乾燥造粒して複合体(薄片状の複合樹脂材料)を得た場合に、かかる複合体が、平均厚みが112μm、主面の平均最大長が1.4mm、主面の平均最小長が1mmであったことが記載されている(甲第2号証の[請求項2]、段落[0068]、段落[0071]の[表1])。ここで、用いたフッ素樹脂粒子と比較して複合樹脂材料のサイズが最大で28倍(1400/50)であることから、複合樹脂材料が複数のフッ素樹脂粒子の集合体である可能性が高い。このように、CNTとフッ素樹脂粒子との複合材料の形成にあたり、特徴Bのような構成とすることは従来周知の技術である。」 上記主張について検討する。 上記(2)及び(3)で検討したとおり、甲2発明3、甲2発明6ともに、「フッ素樹脂の1次粒子が集合し、フッ素樹脂の1次粒子の間にカーボンナノチューブが存在して構成された複合2次粒子」の構成を有するものとは認められない。 そして、甲2発明3、甲2発明6ともに、甲6に記載の技術を採用する動機づけがない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (5)小括 そうすると、本件発明1は甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 第6 むすび 上記第5のとおり、本件特許の請求項1~13に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700456

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