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特許異議申立

2022-701025

プレキャスト合成床版の継手構造

審判番号
2022-701025
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-094773
登録番号
7082522
請求日
2022年10月17日
審決日
2023年11月30日
公報発行日
2024年03月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】清水建設株式会社
  • 【権利者代理人】松沼 泰史
  • 【権利者代理人】川渕 健一
  • 【権利者代理人】西澤 和純
  • 【権利者】日本ファブテック株式会社
  • 【権利者代理人】松沼 泰史
  • 【権利者代理人】川渕 健一
  • 【権利者代理人】西澤 和純
  • 【異議申立人】合同会社 アルトフィーライン
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 西田 秀彦
  • 審判官 佐藤 史彬
分類
P1651.121-YAA(E01D) / P1651.113-YAA(E01D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7082522号発明「プレキャスト合成床版の継手構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7082522号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第7082522号の請求項1-5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7082522号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成30年5月16日に出願され、令和4年5月31日にその特許権の設定登録がされ、同年6月8日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。 令和4年10月17日 :特許異議申立人合同会社アルトフィーラ イン(以下「申立人」という。)による 特許異議の申立て 令和5年 2月 9日付け:取消理由通知書 令和5年 3月29日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出 令和5年 6月 9日付け:訂正拒絶理由通知書 令和5年 7月 7日 :特許権者による意見書の提出 令和5年 8月30日 :申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和5年3月29日にされた訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を、 「底鋼板の上方にコンクリートを打設し、前記底鋼板と前記コンクリートを一体成形してなるプレキャスト合成床版同士を接合するための継手構造であって、 先端部に拡幅部を備え、合成床版の接合端面から先端部側を突出して配設される機械式定着部を有する鉄筋と、 隣り合うプレキャスト合成床版の底鋼板の端部側同士に重ねて配設される添接板と、 前記添接板を前記隣り合うプレキャスト合成床版の両底鋼板に接続するための高力ボルト及びナットと、 前記機械式定着部を有する鉄筋を埋設するように前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間に充填される間詰めコンクリートと、 複数の補強プレート又は複数の補強鉄筋と、を備えて構成され、 一方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋の前記拡幅部は、前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における他方のプレキャスト合成床版側に配置されるとともに、前記他方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋の前記拡幅部は、前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における前記一方のプレキャスト合成床版側に配置され、 前記一方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋と、前記他方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋と、は平面視で互いにずれた位置に配置され、 複数の補強プレートのそれぞれは、前記一方及び前記他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の前記鉄筋の拡幅部の何れかに接するように配置されている、 又は、複数の補強鉄筋のそれぞれは、前記一方及び前記他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の前記鉄筋の拡幅部の何れかにそれぞれ接するように配置されていることを特徴とするプレキャスト合成床版の継手構造。」 に訂正する。 (請求項1の記載を引用する、請求項2~5も同様に訂正する。) 2 訂正の目的、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的 訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に記載の「プレキャスト合成床版の継手構造」について、「複数の補強プレート又は複数の補強鉄筋と」を備えること、また、「複数の補強プレートのそれぞれは、前記一方及び前記他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の前記鉄筋の拡幅部の何れかに接するように配置されている、又は、複数の補強鉄筋のそれぞれは、前記一方及び前記他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の前記鉄筋の拡幅部の何れかにそれぞれ接するように配置されていること」を限定して特定する訂正であるから、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アのとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無 訂正事項1で限定した特定事項について、本件特許明細書の段落【0037】には、「図11から図13に示すように、隣り合う合成床版A1、A2の接合端面3からそれぞれに突出して主筋の延設方向に所定の間隔をあけて並設される複数の機械式定着部を有する鉄筋10に上方から係合させて、これら複数の機械式定着部を有する鉄筋10を繋ぐ補強プレート13を設け、複数の機械式定着部を有する鉄筋10と補強プレート13を間詰めコンクリート8で埋設するように構成してもよい。さらに、補強プレート13に替えて、あるいは補強プレート13とともに、図14、図15に示すように、複数の機械式定着部を有する鉄筋10を繋ぐように追加の主筋(補強鉄筋)14を設けて構成してもよい。」との記載がある。 また、図11、12、14、15については、以下のとおりである。 (ア)【図11】 「 [図:0001407805000001.jpg] 」 (イ)【図12】 「 [図:0001407805000002.jpg] 」 上記【図11】及び【図12】には、継手構造Bにおいて、複数の補強プレート13が記載されており、「複数の補強プレート13」のそれぞれが、一方及び他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の鉄筋10の拡幅部10aの両方に接するように配置されていない、すなわち、それぞれは、一方及び他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の鉄筋10の拡幅部10aの何れかに接するように配置されている点が記載されている。 (ウ)【図14】 「 [図:0001407805000003.jpg] 」 (エ)【図15】 「 [図:0001407805000004.jpg] 」 上記【図14】及び【図15】には、継手構造Bにおいて、複数の補強鉄筋14が記載されており、「複数の補強鉄筋14」のそれぞれが、一方及び他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の鉄筋10の拡幅部10aの両方に接するように配置されていない、すなわち、それぞれは、一方及び他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の鉄筋10の拡幅部10aの何れかに接するように配置されている点が記載されている。 上記記載をふまえると、訂正事項1で追加された特定事項は、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載されているといえる。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 なお、申立人は、令和5年8月30日付けの意見書において、訂正事項1に係る訂正について、何ら意見を述べていない。 3 訂正の単位について 訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は、請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正され、請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 4 訂正の適否のまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 令和5年3月29日にした本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」等といい、本件発明1ないし5をまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 底鋼板の上方にコンクリートを打設し、前記底鋼板と前記コンクリートを一体成形してなるプレキャスト合成床版同士を接合するための継手構造であって、 先端部に拡幅部を備え、合成床版の接合端面から先端部側を突出して配設される機械式定着部を有する鉄筋と、 隣り合うプレキャスト合成床版の底鋼板の端部側同士に重ねて配設される添接板と、 前記添接板を前記隣り合うプレキャスト合成床版の両底鋼板に接続するための高力ボルト及びナットと、 前記機械式定着部を有する鉄筋を埋設するように前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間に充填される間詰めコンクリートと、 複数の補強プレート又は複数の補強鉄筋と、を備えて構成され 、 一方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋の前記拡幅部は、前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における他方のプレキャスト合成床版側に配置されるとともに、前記他方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋の前記拡幅部は、前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における前記一方のプレキャスト合成床版側に配置され、 前記一方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋と、前記他方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋と、は平面視で互いにずれた位置に配置され、 複数の補強プレートのそれぞれは、前記一方及び前記他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の前記鉄筋の拡幅部の何れかに接するように配置されている、 又は、複数の補強鉄筋のそれぞれは、前記一方及び前記他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の前記鉄筋の拡幅部の何れかにそれぞれ接するように配置されていることを特徴とするプレキャスト合成床版の継手構造。 【請求項2】 請求項1記載のプレキャスト合成床版の継手構造において、 予め前記高力ボルトが前記底鋼板に固定して取り付けられていることを特徴とするプレキャスト合成床版の継手構造。 【請求項3】 請求項1記載のプレキャスト合成床版の継手構造において、 予め前記ナットが前記底鋼板に固定して取り付けられていることを特徴とするプレキャスト合成床版の継手構造。 【請求項4】 請求項1から請求項3のいずれか一項記載のプレキャスト合成床版の継手構造において、 前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面からそれぞれに突出して並設される複数の機械式定着部を有する鉄筋に上方から係合され、前記複数の機械式定着部を有する鉄筋を繋ぐ補強プレートを備えることを特徴とするプレキャスト合成床版の継手構造。 【請求項5】 請求項1から請求項4のいずれか一項記載のプレキャスト合成床版の継手構造において、 前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面からそれぞれに突出して並設される複数の機械式定着部を有する鉄筋を繋ぐ補強鉄筋を備えることを特徴とするプレキャスト合成床版の継手構造。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要、及び証拠等の記載 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、当審が令和5年2月9日付けで通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)甲第1号証を主引用例とした新規性欠如、進歩性欠如 請求項1~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲1第1発明又は甲1第2発明、及び、周知技術1~3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第1項、又は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)甲第2号証を主引用例とした新規性欠如、進歩性欠如 請求項1~5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるか、甲2第1発明又は甲2第2発明、甲第1号証に記載された技術事項、及び、周知技術1~3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第1項、又は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 <証拠> 甲第1号証:特開2011-21362号公報 甲第2号証:水野浩,外4名,「床版取替用プレキャスト合成床版の合理 化継手の疲労耐久性評価」,公益社団法人土木学会,構造工 学論文集Vol.58A,2012年3月 甲第3号証:特開2017-179926号公報 甲第4号証:角彰,外3名,「圧接コブ重ね継手を有するPCa梁の構造 性能に関する研究」,公益社団法人日本コンクリート工学会 、年次論文報告集Vol.20 No.3,1998年 甲第5号証:塩屋俊幸 外4名,「Tヘッドバーを用いた重ね継手実験」 ,公益社団法人土木学会,第56回年次学術講習会、平成1 3年10月 甲第6号証:特開2006-207116号公報 甲第7号証:特開2009-150488号公報 甲第8号証:特開2009-191968号公報 甲第9号証:特開2011-144513号公報 なお、申立人は、令和5年8月30日付け意見書において、周知技術を裏付ける例として、特開2012-62664号公報、特開2015-1045号公報及び特開2017-36554号公報(以下、それぞれを「参考例1」~「参考例3」という。)を示している。 2 各甲号証等の記載 (1)甲第1号証 ア 甲第1号証の記載 (ア)「【0001】 本発明は、プレキャスト合成床版の継手構造に関し、特にその継手構造の連結強度を高め且つ継手構造のコスト低減を図ったものに関する。」 (イ)「【0024】 プレキャスト合成床版の継手構造について説明する前に、プレキャスト合成床版について簡単に説明する。図1~図3に示すように、プレキャスト合成床版1は、橋梁や高架橋の路面構造を構成するものである。プレキャスト合成床版1は、底鋼板2と、メッシュ状に配置される複数の鉄筋3を含んで底鋼板2上に形成される鉄筋コンクリート版4とを有し、工場において矩形の板板ブロックの形態に製作され、トレーラにて架設現場に搬送されて、現場の橋軸方向に配設された複数条の主桁上に構築される。その構築時に、プレキャスト合成床版1の端部同士を連結するプレキャスト合成床版の継手構造10が製作される。 【0025】 図1において、プレキャスト合成床版1は、道路の幅員方向に細長く形成され、橋軸方向(A方向)の寸法は例えば約2.0~2.5 mであり、道路の幅員方向(B方向)寸法は幅員全幅の場合例えば10.0~11.0mである。尚、図1において、 左側の第1プレキャスト合成床版1Aはコンクリート層を透視した状態で図示してある。 図1~図3に示すように、底鋼板2は、鉄筋コンクリート版4の橋軸と直交する端面から所定長さ突出しており、複数の鉄筋端部5も鉄筋コンクリート版4の橋軸と直交する端面から底鋼板2よりも長く突出している。それら突出した鉄筋端部5の先端部にはナットを螺合する為の雄ネジ部5c(図3参照)が所定長さだけ形成されている。 【0026】 次に、プレキャスト合成床版1の端部同士を連結するプレキャスト合成床版の継手構造100について説明する。 図1~図3に示すように、このプレキャスト合成床版の継手構造100は、第1,第2プレキャスト合成床版1a,1bを両者の底鋼板2a,2bの端縁同士が当接又は接近対向し且つ第1,第2プレキャスト合成床版1a,1bの鉄筋コンクリート版4a,4bの端面4A,4B同士が間詰めコンクリート打設隙間6を隔てて対向する状態に配置し、第1プレキャスト合成床版1aの複数の第1鉄筋端部5aと第2プレキャスト合成床版1bの複数の第2鉄筋端部5bとを間詰めコンクリート打設隙間6内で交互に位置させた第1の構造を有する。 【0027】 第1,第2プレキャスト合成床版1a,1bを工場において製作してから、帯状補強板7が第1プレキャスト合成床版1aに、幅方向を鉛直方向に向けて仮装着される。このとき、帯状補強板7の複数の第1貫通孔7aに複数の第1鉄筋端部5aが挿通され、帯状補強板7が第1鉄筋コンクリート版4aの端面4Aの近くに位置させて針金等で仮固定して現地へ搬送してもよい。 【0028】 第1工程において、現地において、第1,第2プレキャスト合成床版1a,1bを橋軸方向に隣接状に並べて架設場所の複数条の主桁上に組み付ける。このとき、第1,第2プレキャスト合成床版1a,1bを両者の底鋼板2a,2bの端縁同士を当接又は接近対向させ、第1,第2プレキャスト合成床版1a,1bの鉄筋コンクリート版4a,4bの端面4A,4B同士が間詰めコンクリート打設隙間6を隔てて対向する状態に配置し、第1プレキャスト合成床版1aの複数の第1鉄筋端部5aと第2プレキャスト合成床版1bの複数の第2鉄筋端部5bとを間詰めコンクリート打設隙間6内で交互に等間隔に位置させる。こうして、上記の第1の構造が実現される。 【0029】 このプレキャスト合成床版の継手構造100は、さらに、幅方向を底鋼板2a,2bと直交方向(鉛直方向)に向けた鋼製の帯状補強板7に形成した複数の第1,第2貫通孔7a,7b又は切欠部に複数の第1,第2鉄筋端部5a,5bを夫々挿通させた第2の構造を有する。 【0030】 図4、図5に示すように、帯状補強板7には、予め、第1プレキャスト合成床版1aの複数の第1鉄筋端部5aを貫通させるほぼ正三角形状の複数の第1貫通孔7aと、第2プレキャスト合成床版1bの複数の第2鉄筋端部5bを貫通させる複数の第2貫通孔7bであって、第1貫通孔7aを上下逆にした形状(ほぼ逆正三角形状)の複数の第2貫通孔7bとが交互に形成されている。 【0031】 次に、第2工程において、前記のように第1,第2プレキャスト合成床版1a,1bを現地の架設場所の複数条の主桁上に組み付けた状態において、前記の帯状補強板7は、第1プレキャスト合成床版1aの複数の第1鉄筋端部5aに仮装着されている。そこで、帯状補強板7の仮固定を解いてから帯状補強板7を僅かに持ち上げた状態で、第2プレキャスト合成床版1bの方へ所定距離移動させることにより、複数の第1鉄筋端部5aを複数の第1貫通孔7aに貫通させたまま、複数の第2鉄筋端部5bを複数の第2貫通孔7bに貫通させた状態にしてから、帯状補強板7を下げて複数の第1,第2鉄筋端部5a,5bに支持させる。こうして、上記の第2の構造が実現される。 【0032】 このプレキャスト合成床版の継手構造100は、さらに、複数の第1鉄筋端部5aに夫々螺合した座金とナット部材8aを帯状補強板7における第2プレキャスト合成床版1b側の第1面7cに係止させ且つ複数の第2鉄筋端部5bに夫々螺合した座金とナット部材8bを帯状補強板7における第1プレキャスト合成床版1a側の第2面7dに係止させた第3の構造を有する。 【0033】 次に、第3工程において、上記の第2の構造を実現してから、複数の第1鉄筋端部5aに夫々座金とナット部材8aを螺合して、帯状補強板7における第2プレキャスト合成床版1b側の第1面7cに締結・係止させる。同様に、複数の第2鉄筋端部5bに夫々座金とナット部材8bを螺合して、帯状補強板7における第1プレキャスト合成床版1a側の第2面7dに締結・係止させる。こうして、第3の構造を実現する。 【0034】 前記第1工程の後且つ第2工程の前に、第1,第2プレキャスト合成床版1a,1bの底鋼板2a,2bの端部同士を連結する為に、それら底鋼板2a,2bの下面に鋼製の添接板9を添接し、間詰めコンクリート打設隙間6の下側において添接板9を底鋼板2a,2bの端部に複数の第1,第2高力ボルト・ナット10a,10bにより夫々締結する。添接板9の橋軸方向幅は間詰めコンクリート打設隙間6の橋軸方向幅よりも小さく形成されている。第1,第2高力ボルト・ナット10a,10bのボルトを間詰めコンクリート打設隙間6内から底鋼板2a,2bと添接板9のボルト穴に挿入し、添接板9の下方において高力ボルト締付け機械によりナットを締結する。 【0035】 最後に、第4工程において、間詰めコンクリート打設隙間6において、複数の第1鉄筋端部5aの上面に鉄筋部材11aを組み付けると共に、複数の第2鉄筋端部5bの上面に鉄筋部材11bを組み付けてから、間詰めコンクリート打設隙間6に間詰めコンクリートを打設すると、このプレキャスト合成床版の継手構造100が完成する。但し、鉄筋部材11a,11bは必須のものではない。 【0036】 次に、上記のプレキャスト合成床版の継手構造100の作用、効果について説明する。 前記の第2の構造により、鋼製の帯状補強板7をその幅方向を底鋼板2a,2bと直交方向に向けたため、帯状補強板7をその幅方向を底鋼板2a,2bと平行に配置する場合と比較して、間詰めコンクリート打設隙間6を狭くすることができる。 【0037】 前記の第2,第3の構造により、複数の第1,第2鉄筋端部5a,5bを複数のナット部材8a,8bと帯状補強板7を介して張力伝達可能に連結することができるうえ、複数の第1,第2鉄筋端部5a,5bから、帯状補強板7を介して間詰めコンクリートに圧縮荷重を伝達する伝達性能を高めて、継手構造100の継手強度を格段に高めることができる。このように、帯状補強板7と複数のナット部材8a,8bを有効活用した簡単な構造であり、間詰めコンクリート打設隙間6を約160mm程度まで狭くすることができるため、間詰めコンクリートの使用量を著しく低減でき、継手構造100の製作コストを著しく低減することができる。」 (ウ)「【0049】 前記継手構造100,200において、前記帯状補強板7の代わりに、図12、図13に図示のような帯状補強板7A,7Bを採用してもよい。但し、その他の構造は変更なし。図12に示す帯状補強板7Aにおいては、複数の鉄筋端部5a,5bに対応する位置に、鉄筋端部5a,5bの直径の2.0 ~3.0 倍の直径の円形穴7mが形成され、1つおきの複数の円形穴7mに第1鉄筋端部5aが挿入され、それら第1鉄筋端部5aに螺合されたナット部材が帯状補強板7Aの第2プレキャスト合成床版1b側の側面に締結・係止される。同様に、残りの1つおきの複数の円形穴7mに第2鉄筋端部5bが挿入され、それら第2鉄筋端部5bに螺合されたナット部材が帯状補強板7Aの第1プレキャスト合成床版1a側の側面に締結・係止される。帯状補強板7Aの構造が簡単化する。 【0050】 図13に示す帯状補強板7Bにおいては、複数の鉄筋端部5a,5bに対応する位置に、複数の逆V形の切欠き部7nが形成され、1つおきの複数の切欠き部7nに第1鉄筋端部5aが挿入され、それら第1鉄筋端部5aに螺合されたナット部材が帯状補強板7Bの第2プレキャスト合成床版1b側の側面に締結・係止される。同様に、残りの1つおきの複数の切欠き部7nに第2鉄筋端部5bが挿入され、それら第2鉄筋端部5bに螺合されたナット部材が帯状補強板7Bの第1プレキャスト合成床版1a側の側面に締結・係止される。帯状補強板7Bの構造が簡単化する。 【0051】 切欠き部7nは、頂部が鉄筋端部5a,5bが遊嵌可能で且つ下端の幅が鉄筋端部5a,5bの直径の2.0~3.0 倍の大きさに形成されている。 【0052】 この帯状補強板7Bは、工場において予め第1プレキャスト合成床版1aに仮固定して現地に搬送してもよいが、必ずしもその必要はなく、現地において第1,第2プレキャスト合成床版1a,1bを隣接状に搭載して前記第1の構造を構成してから、帯状補強板7Bを複数の第1,第2鉄筋端部5a,5bに上方から組み付けることができる。 但し、第1,第2鉄筋端部5a,5bが切欠き部7nの頂部に嵌め込まれるとは限らず、第1,第2プレキャスト合成床版1a,1bの幅員方向の位置決め誤差が発生した場合には、第1,第2鉄筋端部5a,5bが切欠き部7nの高さ方向途中部に嵌め込まれる。 【実施例4】 【0053】 実施例4に係るプレキャスト合成床版の継手構造300について、図14~図16に基づいて説明する。このプレキャスト合成床版の継手構造300は、前記継手構造100の帯状補強板7の代わりに、鉄筋部材7Cを採用した点で継手構造100と異なるのみであるので、主として異なる構成についてのみ説明し、前記実施例1と同様の構成部材(構成要素)に同様の符号を付して説明を省略する。 【0054】 このプレキャスト合成床版の継手構造300は、第1,第2プレキャスト合成床版1a,1bを両者の底鋼板2a,2bの端縁同士が当接又は接近対向し且つ両者の鉄筋コンクリート版4a,4bの端面同士が間詰めコンクリート打設隙間6を隔てて対向する状態に配置し、第1プレキャスト合成床版1aの複数の第1鉄筋端部5aと第2プレキャスト合成床版1bの複数の第2鉄筋端部5bとを間詰めコンクリート打設隙間6内で交互に位置させた第4の構造を有する。この第4の構造は継手構造100の第1の構造と同様のものである。 【0055】 継手構造300は、さらに、数の第1鉄筋端部5aと複数の第2鉄筋端部5bの上面に鉄筋部材7Cを載置した第5の構造を有する。この第5の構造は継手コンクリート100の第2の構造に対応するものである。鉄筋部材7Cは、第1,第2プレキャスト合成床版1a,1bに用いる鉄筋3と同径ないしは、鉄筋3よりも大径の鉄筋部材を用いてもよい。尚、第1,第2鉄筋端部5a,5bの下面側にも、第1,第2鉄筋端部5a,5bに対して鉄筋部材7Cと対称に鉄筋部材 (図示略)を設ければ、継手構造300の性能・強度を高める上で有利である。 【0056】 継手構造300は、さらに、複数の第1鉄筋端部5aに夫々螺合したナット部材8aを鉄筋部材7Cにおける第2プレキャスト合成床版側1bの側面7eに係止させ且つ複数の第2鉄筋端部5bに夫々螺合したナット部材11bを鉄筋部材7Cにおける第1プレキャスト合成床版側1aの側面7fに係止させた第6の構造を有する。この第6の構造は、継手構造100における第3の構造に対応するものである。」 (エ)【図2】 「 [図:0001407805000005.jpg] 」 上記(イ)をふまえると図2から、ナット8aは、一方の鉄筋コンクリート版4aから突出した鉄筋端部に螺合されて、隣り合う鉄筋コンクリート版の接合端面同士の間における他方の鉄筋コンクリート版側に配置され、ナット8bは、他方の鉄筋コンクリート版4bから突出した鉄筋端部に螺合されて隣り合う鉄筋コンクリート版の接合端面同士の間における一方の鉄筋コンクリート版側に配置されている点が看取できる。 (オ)【図6】 「 [図:0001407805000006.jpg] 」 (カ)【図13】 「 [図:0001407805000007.jpg] 」 (キ)【図16】 「 [図:0001407805000008.jpg] 」 イ 甲第1号証に記載された発明 上記アより、甲第1号証には、次の発明(以下、それぞれ「甲1第1発明」、「甲1第2発明」という。)が記載されていると認められる。なお、上記ア(ウ)の段落【0056】に記載の「第2鉄筋端部5bに夫々螺合したナット部材11b」は、上記ア(オ)の図6等からみて、「第2鉄筋端部5bに夫々螺合したナット部材8b」の誤記と認める。 <甲1第1発明> 「底鋼板2と、メッシュ状に配置される複数の鉄筋3を含んで底鋼板2上に形成される鉄筋コンクリート版4とを有するプレキャスト合成床版1の端部同士を連結するプレキャスト合成床版の継手構造100であって、 第1,第2プレキャスト合成床版1a,1bを両者の底鋼板2a,2bの端縁同士が当接又は接近対向し且つ第1,第2プレキャスト合成床版1a,1bの鉄筋コンクリート版4a,4bの端面4A,4B同士が間詰めコンクリート打設隙間6を隔てて対向する状態に配置し、第1プレキャスト合成床版1aの複数の第1鉄筋端部5aと第2プレキャスト合成床版1bの複数の第2鉄筋端部5bとを間詰めコンクリート打設隙間6内で交互に位置させた第1の構造を有し、 幅方向を底鋼板2a,2bと直交方向(鉛直方向)に向けた鋼製の帯状補強板7に形成した複数の切欠部に複数の第1,第2鉄筋端部5a,5bを夫々挿通させた第2の構造を有し、 複数の第1鉄筋端部5aに夫々螺合した座金とナット部材8aを帯状補強板7における第2プレキャスト合成床版1b側の第1面7cに係止させ且つ複数の第2鉄筋端部5bに夫々螺合した座金とナット部材8bを帯状補強板7における第1プレキャスト合成床版1a側の第2面7dに係止させた第3の構造を有し、 第1,第2プレキャスト合成床版1a,1bの底鋼板2a,2bの端部同士を連結する為に、それら底鋼板2a,2bの下面に鋼製の添接板9を添接し、間詰めコンクリート打設隙間6の下側において添接板9を底鋼板2a,2bの端部に複数の第1,第2高力ボルト・ナット10a,10bにより夫々締結し、 間詰めコンクリート打設隙間6に間詰めコンクリートを打設し完成させたものであり、 ナット8aは、一方の鉄筋コンクリート版4aから突出した鉄筋端部に螺合されて、隣り合う鉄筋コンクリート版の接合端面同士の間における他方の鉄筋コンクリート版側に配置され、ナット8bは、他方の鉄筋コンクリート版4bから突出した鉄筋端部に螺合されて、隣り合う鉄筋コンクリート版の接合端面同士の間における一方の鉄筋コンクリート版側に配置され、 前記継手構造100において、前記帯状補強板7の代わりに、複数の鉄筋端部5a,5bに対応する位置に、複数の逆V形の切欠き部7nが形成された帯状補強板7Bを採用し、帯状補強板7Bを複数の第1,第2鉄筋端部5a,5bに上方から組み付けることができる、 プレキャスト合成床版の継手構造100。」 <甲1第2発明> 「甲1第1発明の継手構造100において、帯状補強板7Bの代わりに、鉄筋部材7Cを採用したものであって、 複数の第1鉄筋端部5aに夫々螺合したナット部材8aを鉄筋部材7Cにおける第2プレキャスト合成床版側1bの側面7eに係止させ且つ複数の第2鉄筋端部5bに夫々螺合したナット部材11bを鉄筋部材7Cにおける第1プレキャスト合成床版側1aの側面7fに係止させた第6の構造を有する、 プレキャスト合成床版の継手構造300。」 (2)甲第2号証 ア 甲第2号証の記載 (ア)1113頁左欄9-38行 「そこで,筆者らはプレキャスト合成床版の合理化を図るために,間詰め幅を大幅に縮小可能な床版継手(以降,合理化継手と称する)の開発を行っている.この合理化継手は,写真-1に示すように,先端をねじ切りし,ナットを設置した配力鉄筋を交互に配置し,間詰め部のコンクリートおよび鉄筋やアンカープレートによるせん断抵抗によって応力伝達を図り,間詰め幅を200mmとしたものである. ・・・ 本研究では,合理化継手を実橋に適用するため,負曲げ試験を行った継手構造の中でも結果が両行であった2種類の継手(鉄筋補強タイプとアンカープレートタイプ,両者とも間詰め幅は200mm)に絞って,輪荷重走行試験を実施して 交通荷重の走行に対する疲労耐久性の確認を行い,その適用性について考察を加えることを目的とする.」 (イ)1113頁右欄1-13行 「(1)試験体 載荷試験方法を図-3に,試験体の概要を図-4,-5に示す.試験体の寸法は長さ3300mm×幅2350mm×厚さ160mm(底鋼板t=8mm含む)であり,橋軸(長手)方向中央に幅200mmの継手部を有するロビンソン型の合成床版である. 継手部には,負曲げ試験結果から間詰め幅200mmの鉄筋補強タイプをモデル1とし,アンカーPLタイプをモデル2とした.継手部の概要を表-1に示す.配力鉄筋にはD19の異形鉄筋を用い,コンクリート断面との比率は負曲げ試験と同等の1.35%とした.また鋼板の接合には六角高力ボルトを用いている.」 (ウ)1112頁の「写真-1」 「 [図:0001407805000009.jpg] 」 (エ)1114頁の図面 a 図-4 「 [図:0001407805000010.jpg] 」 (a)上記図-4の「モデル1(鉄筋補強タイプ)」の「継手部断面」から、左右方向に3本配置された補強鉄筋のうちの中央の補強鉄筋について、一方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設置したナットを補強鉄筋における他方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させ且つ他方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設けられたナットを補強鉄筋における一方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させた構造を有する点が看取できる。 (b)上記図-4の「モデル2(アンカーPLタイプ)」の「継手部断面」から、一方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設置したナットをアンカープレートにおける他方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させ且つ他方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設けられたナットをアンカープレートにおける一方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させた構造を有する点が看取できる。 b 図-5 「 [図:0001407805000011.jpg] 」 上記(ア)~(エ)及び上記bの図-5中の記載をふまえると、図-4から、以下の合理化継手が看取できる。 a モデル1(鉄筋補強タイプ)について 左右の配筋されたコンクリートと底鋼板とからなるプレキャスト合成床版の継手構造において、 左右のプレキャスト合成床版から間詰め部側に交互に突出し、端部にナットを設置した配力鉄筋と、底鋼板の端部同士に重ねて配置されている添接板と、前記添接板と左右の底鋼板とをそれぞれ連結する高力六角ボルト及びナット、とを有し、 一方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設置したナットは、隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における他方のプレキャスト合成床版側に配置され、他方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設けられたナットは、隣り合うプレキャスト部の接合端面同士の間における一方のプレキャスト合成床版側に配置されていて、 配力鉄筋が左右方向で重なっている部分に補強鉄筋が配置され、 左右方向に3本配置された補強鉄筋のうちの中央の補強鉄筋について、一方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設置したナットを補強鉄筋における他方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させ且つ他方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設けられたナットを補強鉄筋における一方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させた構造を有する、 プレキャスト合成床版の合理化継手。 b モデル2(アンカーPLタイプ)について 上記aのプレキャスト合成床版の合理化継手において、中央の補強鉄筋に代えてアンカープレートが配置され、 一方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設置したナットをアンカープレートにおける他方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させ且つ他方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設けられたナットをアンカープレートにおける一方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させた構造を有する、 プレキャスト合成床版の合理化継手。 (オ)輪荷重走行試験で使用された試験体 輪荷重走行試験で使用された試験体は、上記(エ)のa及びbの合理化継手の間詰め部にコンクリートが打設されたものであることから、甲第2号証には、上記(エ)のa及びbの合理化継手の間詰め部にコンクリートが充填された継手構造が記載されているといえる。 イ 甲第2号証に記載された発明 上記アから、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2第1発明」、「甲2第2発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲2第1発明> 「左右の配筋されたコンクリートと底鋼板とからなるプレキャスト合成床版の継手構造において、 左右のプレキャスト合成床版から間詰め部側に交互に突出し、端部にナットを設置した配力鉄筋と、底鋼板の端部同士に重ねて配置されている添接板と、前記添接板と左右の底鋼板とをそれぞれ連結する高力六角ボルト及びナット、とを有し、 一方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設置したナットは、隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における他方のプレキャスト合成床版側に配置され、他方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設けられたナットは、隣り合うプレキャスト部の接合端面同士の間における一方のプレキャスト合成床版側に配置されていて、 配力鉄筋が左右方向で重なっている部分に補強鉄筋が配置され、 左右方向に3本配置された補強鉄筋のうちの中央の補強鉄筋について、一方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設置したナットを補強鉄筋における他方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させ且つ他方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設けられたナットを補強鉄筋における一方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させた構造を有し、 プレキャスト合成床版の合理化継手の間詰め部にコンクリートが充填された、 プレキャスト合成床版の継手構造。」 <甲2第2発明> 「甲2第1発明の継手構造において、中央の補強鉄筋に代えてアンカープレートが配置され、 一方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設置したナットをアンカープレートにおける他方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させ且つ他方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設けられたナットをアンカープレートにおける一方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させた構造を有する、 プレキャスト合成床版の継手構造。」 (3)甲第3号証 ア 甲第3号証の記載 (ア)「【0001】 本発明は、互いに隣接して配置される1対のPCa床版(プレキャストコンクリート床版)を現場打ちのコンクリートからなる継手構造により接合してなる床版の構築方法、及びPCa床版の継手構造に関する。」 (イ)「【0026】 PCa床版8は、第1接合端面12Aから延出するように床版本体部11に一体に設けられた複数の第1上継手鉄筋21U及び複数の第1下継手鉄筋21Lと、第2接合端面12Bから延出するように床版本体部11に一体に設けられた複数の第2上継手鉄筋22U及び複数の第2下継手鉄筋22Lとを備えている。以下、第1上継手鉄筋21Uと第1下継手鉄筋21Lとを合わせて第1継手鉄筋21と称し、第2上継手鉄筋22Uと第2下継手鉄筋22Lとを合わせて第2継手鉄筋22と称し、第1継手鉄筋21と第2継手鉄筋22とを合わせて継手鉄筋21、22と称する。継手鉄筋21、22は、橋軸方向に延在している。全ての継手鉄筋21、22には、先端から径方向に張り出す定着部23が一体に設けられている。定着部23の詳細については後述する。 ・・・ 【0029】 図2及び図3に示されるように、第1上継手鉄筋21U及び第2上継手鉄筋22Uの下方には、橋軸方向に所定の間隔を空けて配置されて橋軸直角方向に延在する複数の上補強鉄筋25(上端主筋)が配置されている。上補強鉄筋25は、全ての第1上継手鉄筋21U及び第2上継手鉄筋22Uに亘る長さを有する通し筋であり、床版本体部11の内部及び継手コンクリート13の内部の両方に配置される。なお、床版本体部11の内部には図示しないPC鋼線が橋軸直角方向に沿って配置されるため、床版本体部11内の上補強鉄筋25は継手コンクリート13内の上補強鉄筋25よりも細くなっている。本実施形態では、継手コンクリート13の内部に5本の上補強鉄筋25が配置されている。中央の3本の上補強鉄筋25は、第1上継手鉄筋21Uと第2上継手鉄筋22Uとの重なり部に配置され、両端の2本の上補強鉄筋25は、第1上継手鉄筋21Uと第2上継手鉄筋22Uとの重なり部の外に配置されている。 【0030】 図2及び図4に示されるように、第1下継手鉄筋21L及び第2下継手鉄筋22Lの上方には、橋軸方向に所定の間隔を空けて配置されて橋軸直角方向に延在する複数の下補強鉄筋26(下端主筋)が配置されている。下補強鉄筋26は、全ての第1下継手鉄筋21L及び第2下継手鉄筋22Lに亘る長さを有する通し筋であり、床版本体部11の内部及び継手コンクリート13の内部の両方に配置される。下補強鉄筋26においても、床版本体部11内のみにPC鋼線が配置されていることにより、床版本体部11内で継手コンクリート13内よりも径が細くなっている。本実施形態では、継手コンクリート13の内部に3本の下補強鉄筋26が配置されている。3本の下補強鉄筋26は、第1下継手鉄筋21Lと第2下継手鉄筋22Lとの重なり部に配置されている。」 (ウ)「【0031】 図5に示されるように、定着部23は、継手鉄筋21、22に対して左右に水平方向に張り出し、上下方向には張り出さない扁平形状とされている。定着部23の高さ(厚さ)は継手鉄筋21、22の径と同一とされ、上面23U及び下面23Lが継手鉄筋21、22の上端及び下端に揃っている。定着部23の継手鉄筋21、22側の後面23Bは、鉛直に延在する長方形の平面とされ、その中央から継手鉄筋21、22が垂直に延出している。定着部23の突出端側の前面23Fは後面23Bと平行に延在しており、前面23Fの周囲には面取りによって形成された4つの傾斜面23Sが配置されている。前面23Fは、後面23Bの各辺の長さを3分の1程度に縮小した後面23Bと概ね合同な長方形となっており、4つの傾斜面23Sは後縁を揃えるように形成されている。従って、上下の傾斜面23Sの中央部に対する傾斜角は、左右の傾斜面23Sの中央部に対する傾斜角よりも大きな値(45度程度)になっている。 【0032】 定着部23は、継手鉄筋21、22の製造後に継手鉄筋21、22の先端を加熱して熱間鍛造により上記形状に成形される。或いは、定着部23は、継手鉄筋21、22の製造時に上記形状に成形されてもよく、別部材として形成され、継手鉄筋21、22の製造後に継手鉄筋21、22の先端に接合されてもよい。定着部23は、継手鉄筋21、22に対して径方向に張り出していることにより、継手鉄筋21、22に橋軸方向の圧縮力又は引張力が加わった時に支圧力を継手コンクリート13に伝達し、継手鉄筋21、22の継手コンクリート13に対する定着力を向上させる。」 (エ)図2 「 [図:0001407805000012.jpg] 」 (オ)図3 「 [図:0001407805000013.jpg] 」 (カ)図5 「 [図:0001407805000014.jpg] 」 イ 甲第3号証に記載された技術事項 上記アより、甲第3号証には次の技術事項(以下、「甲3技術事項」という。)が記載されていると認められる。 (甲3技術事項) 「PCa床版の継手構造において、全ての継手鉄筋21、22には、先端から径方向に張り出す定着部23が一体に設けられ、第1上継手鉄筋21U及び第2上継手鉄筋22Uの下方には、複数の上補強鉄筋25(上端主筋)が配置され、第1下継手鉄筋21L及び第2下継手鉄筋22Lの上方には、複数の下補強鉄筋26(下端主筋)が配置されており、継手鉄筋21、22の継手コンクリート13に対する定着力を向上させること。」 (4)甲第4号証 ア 甲第4号証の記載 (ア)223頁左欄1-8行 「1.目的 鉄筋コンクリート造のプレキャスト化技術は地球環境保護,施工の合理化を目指して益々その必要性が叫ばれている。プレキャストを進めていく上では,PCa部材の接合法の改良は重要な技術テーマの一つである。」 (イ)223頁左欄13-16行 「本継手は鉄筋端部に圧接コブを設け、支圧効果により,継手長さを半分程度に短くし,簡便で着実な鉄筋継手を目標としたものである。」 (ウ)223頁右欄中段の図 「 [図:0001407805000015.jpg] 」 上記図から、圧接コブに接するように棒状部材が配置されている点が看取できる。 イ 甲第4号証に記載された技術事項 上記アより、甲第4号証には、次の技術事項(以下、「甲4技術事項」という。)が記載されていると認められる。 (甲4技術事項) 「PCa部材の接合法における本継手は、鉄筋端部に設けられた圧接コブに接するように棒状部材が配置されていること。」 (5)甲第5号証 ア 甲第5号証の記載 (ア)914頁1-4行 「1.はじめに 過密配筋の施工性を改善し、工期短縮とコストダウンに直結する工法として、Tヘッドバー工法を開発した1)2)。Tヘッドバーとは鉄筋端部を高周波誘導加熱し、鉄筋端部を成形したものである。本論文では開発に伴って行ったプレキャスト部材の重ね継ぎ手実験について述べる。」 (イ)図-1 「 [図:0001407805000016.jpg] 」 上記図-1から、Tヘッドバーのヘッド部分に接するようにフープ筋を配置した点が看取できる。 イ 甲第5号証に記載された技術事項 上記アより、甲第5号証には、次の技術事項(以下、「甲5技術事項」という。)が記載されていると認められる。 (甲5技術事項) 「プレキャスト部材の重ね継手において、鉄筋端部を高周波誘導加熱し、鉄筋端部を成形したものであるTヘッドバーを採用し、当該Tヘッドバーのヘッド部分に接するようにフープ筋を配置すること。」 (6)甲第6号証 ア 甲第6号証の記載 (ア)「【0001】 本発明は、道路や橋等を構築する際に用いられる鋼-コンクリート合成床版および合成床版橋における底鋼板の接合方法及び接合構造に関する。」 (イ)「【0017】 本実施の形態に係る底鋼板の接合方法は、高力ボルト15を鋼板パネル4における底鋼板1のボルト孔17に下面側から挿入して一次ナット19によって高力ボルト15を固定する工程(高力ボルト固定工程)と、高力ボルト15が固定された底鋼板1の下面側に塗装を行う工程(塗装工程)と、高力ボルト15が固定された鋼板パネル4を架設する工程(鋼板パネル架設工程)と、底鋼板1上にフィラープレート21を設置する工程(フィラープレート設置工程)と、隣接する底鋼板間に亘って添接板23を配置する工程(添接板配置工程)と、添接板23の上面側から二次ナット25によって締め付ける工程(二次ナット締付け工程)と、を備えている。 以下、各工程を詳細に説明する。 【0018】 (1)高力ボルト固定工程(図3(a)参照) 底鋼板1が地上にある段階で、高力ボルト15を挿通するためのボルト孔17を設けた各底鋼板1に、高力ボルト15を挿通して、この高力ボルト15における底鋼板1の上面側(本明細書においては底鋼板1を架設したときに上となる面を上面という。)に一次ナット19を締め付けることによって高力ボルト15を底鋼板1に固定する。」 (7)甲第7号証 ア 甲第7号証の記載 (ア)「【0001】 本発明は、鋼板同士の重ね合せ部を締結するために用いるボルトを所要の鋼板のボルト孔に予め仮固定するために用いるボルト仮固定ナット、及び、該ボルト仮固定ナットを用いたボルトの仮固定方法に関するものである。 【背景技術】 【0002】 近年、橋梁を構成するための床版としては、床版のコンクリート層の下面を形成する型枠をパネル状の底鋼板として、該底鋼板の内側にコンクリートを直接打設することで、上記底鋼板とコンクリート層とを一体に結合させるようにした形式の合成床版が用いられるようになってきている。 【0003】 この種の合成床版を架設するには、先ず、主桁上に底鋼板を径間方向に並べて配設した後、隣接する底鋼板同士の連結作業が必要となる。」 (イ)「【請求項9】 複数の鋼板の重ね合わせ部に挿通させて該複数の鋼板を接合するためのトルシア形高力ボルトを、所定の鋼板のボルト孔に一側面側より挿通させた後、上記ボルトのねじ部の先端部に、上記所定の鋼板のボルト孔よりも大径となる円筒部の軸心方向一端側に上記所定の鋼板のボルト孔よりも小さい径となる軸心方向一端部へ向けて外径が徐々に小さくなるテーパ部を設け且つ内周面に雌ねじ部を設けてなる構成を有するボルト仮固定ナットを、該ボルト仮固定ナットの軸心方向一端側のテーパ部側より螺着させ、次いで、ボルト仮固定ナットのテーパ部を上記所定の鋼板のボルト孔に他側面側より押し付けた状態で、上記ボルトのピンテールをボルト締め込み方向へ回転させて、該ボルトを上記ボルト仮固定ナットに締め付けて仮固定するようにすることを特徴とするボルトの仮固定方法。」 (8)甲第8号証 ア 甲第8号証の記載 (ア)「【0001】 本発明は、鋼板同士の重ね合せ部を締結するために用いるボルトを所要の鋼板のボルト孔に予め仮固定するために用いるボルト仮固定ナットに関するものである。 【背景技術】 【0002】 近年、橋梁を構成するための床版としては、床版のコンクリート層の下面を形成する型枠をパネル状の底鋼板として、該底鋼板の内側にコンクリートを直接打設することで、上記底鋼板とコンクリート層とを一体に結合させるようにした形式の合成床版が用いられるようになってきている。 【0003】 この種の合成床版を架設するには、先ず、主桁上に底鋼板を径間方向に並べて配設した後、隣接する底鋼板同士の連結作業が必要となる。」 (イ)「【0029】 以上の構成としてあるボルト仮固定ナット9を用いて底鋼板1と添接板2との接合に使用するボルト5を上記底鋼板1のボルト孔3に仮固定する場合は、先ず、工場等にて、図1(イ)に示す如く、底鋼板1のボルト孔3にボルト5としての高力ボルト5をワッシャ7を介して下面側より挿通させて保持した状態にて、上記底鋼板1の上側に突出する該高力ボルト5のねじ部5aに、上記ボルト仮固定ナット9を、低剛性部11となるリング状突起13が設けてある軸心方向一端側より螺着させてねじ込むことで、該ボルト仮固定ナット9の上記リング状突起13の突出端部が、上記底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に接するようにする。 【0030】 次いで、上記ボルト仮固定ナット9を、上記高力ボルト5のねじ部5aに対し更に締め付けることにより、図1(ロ)に示す如く、該ボルト仮固定ナット9の上記高力ボルト5に対する締付け軸力によって、ボルト仮固定ナット9の軸心方向一端部に設けてある低剛性部11としての上記リング状突起13を、上記底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に強く押し付けて、軸心方向に押し潰すように変形させるようにする。 【0031】 なお、この際、上記ボルト仮固定ナット9のリング状突起13の突出端部が上記底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に接触して該接触部に生じる摩擦力によって該ボルト仮固定ナット9を回転させ難くなる場合は、その後、上記高力ボルト5が六角ボルトの場合は、上記底鋼板1の下側からボルト5の頭部5bを締め込み方向へ回転させて、該高力ボルト5を上記ボルト仮固定ナット9に対して締め付けるようにしてもよい。又、図示してないが、高力ボルト5としてトルシア形の高力ボルト5を用いている場合は、上記底鋼板1の上側からトルシア形高力ボルト5のピンテールを、汎用のボックスレンチ等を使用して、該高力ボルト5の締め込み方向へ回転させることで、該高力ボルト5を上記ボルト仮固定ナット9に対して締め付けるようにしてもよい。 【0032】 これにより、上記ボルト仮固定ナット9では、上記軸心方向に押し潰されるように弾性変形させられたリング状突起13の復元力によって、該リング状突起13の突出端部が、上記底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に強く押し付けられるようになることから、該ボルト仮固定ナット9と上記底鋼板1の上面との密着度が高められ、この密着した部分に生じる大きな摩擦力によって該ボルト仮固定ナット9の高力ボルト5との共回りが阻止されるようになる。 【0033】 したがって、上記高力ボルト5は、上記ボルト仮固定ナット9に対する締付け軸力により、上記底鋼板1のボルト孔3に、回転が防止された状態で仮固定されるようになる。・・・」 (9)甲第9号証 ア 甲第9号証の記載 (ア)「【0001】 本発明は、橋梁に設置する主桁に直交して配置・固定した各プレキャスト床版を連結固定するために使用する橋梁に於けるプレキャスト床版の継手に関する。」 (イ)「【0019】 そして該略コ字状継手15を前記溝部13に図2に示すように挿置する。この場合、該略コ字状継手15の水平部15AはPC床版12に形成された横溝部13Aの底面、つまり該PC床版12の横溝部分の上面12eに接触することなく挿置する。そこで該略コ字状継手15の水平部15Aの下方に空間長D3を形成し、この空間D3にも充填材20すなわち無収縮モルタルや樹脂系充填材料が這込むように構成する。この充填材20はセメントモルタル、エポキシ樹脂等の各種充填材も適用できる。このことから略コ字状継手15の下面と充填材20とが充分に接合し該略コ字状継手15を強固に固定することができる。ここで空間長D3は該略コ字状継手15の水平部15A下面と該PC床版12の横溝部分の上面12eとの空間距離である。空間長D3の長さは2~3(cm)程度に設定する。17は添接板であって、前記下鋼板16の下面に固定するものであって特に目地部14部分に於ける下鋼板16の下面に例えば図3に示す高力ボルト用ナット19A及び径長4~6(cm)程度の高力ボルト19で固定する。この高力ボルト用ナット19Aは目地部14を介在して左・右に及びPC床版12の縦長L方向に所定間隔に多数個を工場等で予めPC床版12に設けてあり、図1の破線で示すように固定される。」 (10)参考例1 ア「【0016】 所定の長さ寸法の鉄筋の両端部に鋼製筒状体3が嵌合されると共に、鉄筋に押し潰し変形されて圧着固定された圧着グリップ(エンドバンド)10が形成され、圧着グリップ付き継手鉄筋(エンドバンド付き継ぎ手鉄筋)からなる上部継ぎ手鉄筋5a及び下部継ぎ手鉄筋5bが構成されている。」 イ「【0020】 前記のように、補強鉄筋9が仮保持された状態で、プレキャスト鉄筋コンクリート製床版2が、適宜搬送されて、桁間に渡って配置されると共に、橋軸方向に直列に設置され、橋軸方向に隣り合うプレキャスト床版2の端部に所定の間詰め部14の間隙を保って、設置される。 その後、橋軸方向に隣り合うプレキャスト床版2間に渡って、型枠(図示を省略)を配設して、前記仮保持具16を撤去すると共に、図5(b)及び図6に示すように、橋軸方向一方及び他方の各補強鉄筋9を、上部継ぎ手鉄筋5aの下側又は下部継ぎ手鉄筋5bの上側にそれぞれ配置して、補強鉄筋9と上部継ぎ手鉄筋5a又は下部継ぎ手鉄筋5bに、番線等により固定する。 【0021】 そして、図7に示すように、間詰め部14に、コンクリート(又は無収縮モルタル等の硬化性材料4を充填すると共に、適宜、桁1に固定されたスタッドジベルを埋め込むように各プレキャスト床版2の凹部に硬化性材料が充填されることで、橋軸方向に隣り合うプレキャスト床版2相互の一体化、及び桁1との一体化が行われる。」 ウ 図5(b) 「 [図:0001407805000017.jpg] 」 エ 図7 「 [図:0001407805000018.jpg] 」 上記ア及びイをふまえると、ウ(図5(b))及びエ(図7)から、以下の点が看取できる。 ・プレキャスト床版2同士の間において、3本の補強鉄筋のうち左右の補強鉄筋9が、一方及び前記他方のプレキャスト床版2から突出した複数の継ぎ手鉄筋5a及び5bの端部において形成されている圧着グリップ10の何れかにそれぞれ接するように配置されている点。 ・中央の補強鉄筋9が、一方及び前記他方のプレキャスト床版2から突出した複数の継ぎ手鉄筋5a及び5bの端部において形成されている圧着グリップ10の何れにも接することなく配置されている点。 ・圧着グリップ10は、継ぎ手鉄筋5a及び5bよりも拡幅した部位である点。 (11)参考例2 ア「【0024】 次にこの発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。図1はプレキャスト床版の接続構造を示す断面図である。プレキャスト床版1は、図示しない主桁に対し、これと直角方向にプレキャスト床版本体2を複数枚整列載置しており、各プレキャスト床版本体2の橋軸方向の端面3同士の間隙には間詰めコンクリート部4を有し、この部分には双方の端面3から上側継手鉄筋5と、下側継手鉄筋6が突設している。 【0025】 夫々の継手鉄筋5,6の先端部にはネジ切りしてナット7を取り付け、床版本体2の端面3には、全幅に亘り一条の溝形8を形成する。この溝形8は上側継手鉄筋5の下部を開口の上端とし、下側継手鉄筋6の上部を開口の下端とするものであって、開口の端部からは勾配を設けて溝形8が形成されている。この溝形8に間詰めコンクリート部4が密着してせん断キー部9を形成している。 ・・・ 【0028】 間詰めコンクリート部4の機能としては、車輪荷重によるせん断力を間詰め部からプレキャスト床版本体2に伝達することであり、継手鉄筋5,6の先端部にネジ切りしてナット7を取り付ける。なお、継手鉄筋5,6の先端部にはナット7の代わりに圧着グリップを固着してもよい。このようにナット7を取り付けたり、圧着グリップを固着することで大きな引張力を受けてもアンカーとして機能するものである。」 イ 図1 「 [図:0001407805000019.jpg] 」 上記図1から、以下の点が看取できる。 ・プレキャスト床版本体2同士の間において、一方及び前記他方のプレキャスト床版本体2から突出した複数の継手鉄筋5,6の先端部にナット7を取り付けた点。 ・ナット7を取り付けたところは、継手鉄筋5,6よりも拡幅している点。 ウ 参考例2に記載された技術 上記ア及びイをふまえると、次の技術(以下「参考例2記載の技術」という。)点が記載されていると認められる。 (参考例2記載の技術) 「プレキャスト床版本体2同士の間において、一方及び前記他方のプレキャスト床版本体2から突出した複数の継手鉄筋5,6の先端部にネジ切りしてナット7を取り付けることであって、ナット7を取り付けたところは、継手鉄筋5,6よりも拡幅した部位であること。」 (12)参考例3 ア「【0022】 図1及び図2は、本発明の第一実施例を示しており、継手を構成する場所打ちコンクリート打設前の継手部分を示している。互いに連結しようとするプレキャスト床版20,20は、それらの互いに継手側面20a,20bを所定の継手用間隔Lが形成されるように例えば橋軸方向に間隔を隔てて設置されている。 【0023】 両プレキャスト床版20,20の継手側面20a,20bには、それぞれ厚さ方向高さ位置の上側から突出させた上側継手鉄筋21Aと同下側から突出させた下側継手鉄筋21Bが互いに対をなし、これらが水平方向に所定の間隔を隔てて多数突出されている。 【0024】 上下側継手鉄筋21A,21Bは、プレキャスト床版20,20の互いに対向する継手側面20a,20bにおいて、半ピッチずつ水平方向に位置をずらせて突設され、両プレキャスト床版20,20を所定位置に設置した際に、一方の継手側面20aの継手鉄筋21A,21Bが、他方の継手側面20bの継手鉄筋21A,21B間の中央位置に挿入されるようになっており、これによって継手用間隔L内において両継手側面20a,20bからの継手鉄筋が所定の長さだけ継手用間隔L方向に直交する方向にオーバーラップさせた状態となっている。 【0025】 各継手鉄筋21A,21Bの先端には、それぞれ鉄筋本体部分の直径より大きい径の定着用頭部22が一体に設けられている。この定着用頭部22は、継手鉄筋21A,21Bが継手用間隔L内で、場所打ちコンクリート23内に埋め込まれた際に、そのコンクリート23に対して定着するためのものであり、継手鉄筋に対して引っ張り力が作用した際に、定着用頭部22によって鉄筋の軸方向の荷重をコンクリートに伝達することによって滑りを生じさせないための定着体である。 ・・・ 【0028】 両プレキャスト床版20,20の上側継手鉄筋21Aの下側、及び同下側継手鉄筋21Bの上側に、これらに跨って直交する配置、即ち継手用間隔L方向と直交する向きの補強鉄筋31を結束して配置し、両プレキャスト床版20,20の上側継手鉄筋21A,21A......間及び下側継手鉄筋21B,21B......間を一体化させて連結している。 【0029】 この補強鉄筋31の挿入は、予め上下側の継手鉄筋21A,21Bの間において、継手側面20a,20b側に片寄せた状態であらかじめ設置しておき、この状態で両プレキャスト床版20,20を所定配置に設置した後、各補強鉄筋31を所定の固定位置に移動させて結束する。この他、プレキャスト床版20の敷設位置の側部に十分なスペースがある場合には両プレキャスト床版20,20を所定位置に設置した後、上下側の継手鉄筋21A,21B間に補強鉄筋31を挿入してもよい。」 イ 図1 「 [図:0001407805000020.jpg] 」 ウ 図2 「 [図:0001407805000021.jpg] 」 上記ア及びイをふまえると、ウ(図2)から、以下の点が看取できる。 ・プレキャスト床版20同士の間において、上段に配置された3つの補強鉄筋31のうち、左右の補強鉄筋31が、一方及び前記他方のプレキャスト床版20から突出した複数の継手鉄筋21A,21Bの先端に設けられている定着用頭部22の何れかにそれぞれ接するように配置されている点。 ・中央の補強鉄筋31が、一方及び前記他方のプレキャスト床版20から突出した複数の継手鉄筋21A,21Bの先端に設けられている定着用頭部22の何れにも接することなく配置されている点。 ・定着用頭部22は、継手鉄筋21A、21Bよりも拡幅した部位である点。 (13)周知技術について ア 甲第3号証~甲第5号証から、次の技術(以下「周知技術1」という。)が周知であると認められる。 (周知技術1) 「プレキャストコンクリート床版の間詰め部に突出する鉄筋の端部において、拡幅部を一体的に形成すること。」 イ 甲第6号証~甲第8号証から、次の技術(以下「周知技術2」という。)が周知であると認められる。 (周知技術2) 「鋼-コンクリート合成床版の底鋼板を固定するための高力ボルトを前記底鋼板に予め固定すること。」 ウ 甲第9号証等から、次の技術(以下「周知技術3」という。)が周知であると認められる。 (周知技術3) 「プレキャスト床版の底鋼板を固定するための高力ボルト用ナットを前記底鋼板に予め固定すること。」 エ 参考例1及び3から、次の技術(以下「周知技術4」という。)が周知であると認められる。 (周知技術4) 「プレキャスト床版同士の間において、複数の補強鉄筋が、一方及び前記他方のプレキャスト床版から突出した複数の継手鉄筋の端部の拡幅部のいずれかにそれぞれ接するように配置されていること。」 第5 当審の判断 1 甲1第1発明を主引用発明として (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1第1発明とを対比する。 (ア)甲1第1発明の「底鋼板2」、「コンクリート版4」、「プレキャスト合成床版1」、「添接板9」、「高力ボルト」、「ナット」及び「プレキャスト合成床版の継手構造100」は、本件発明1の「底鋼板」、「コンクリート」、「プレキャスト合成床版」、「添接板」、「高力ボルト」、「ナット」及び「継手構造」に、それぞれ相当する。 (イ)甲1第1発明の「一方の鉄筋コンクリート版4aから突出した鉄筋端部に螺合され」た「ナット8a」は、「鉄筋端部」において幅の拡大した部位を形成しているといえる。また、拡幅した部位を有していることから、間詰めコンクリートに対して定着機能を有していることは明らかである。 そうすると、甲1第1発明の「鉄筋端部」に「ナット8a」又は「ナット8b」が螺合され、「一方の鉄筋コンクリート版4aから突出した鉄筋」はいずれも、本件発明1の「先端部に拡幅部を備え、合成床版の接合端面から先端部側を突出して配設される機械式定着部を有する鉄筋」に相当する。 (ウ)甲1第1発明の「底鋼板2a,2bの下面」に「添接」される「添接板9」は、本件発明1の「隣り合うプレキャスト合成床版の底鋼板の端部側同士に重ねて配設される添接板」に相当する。 (エ)甲1第1発明の「添接板9を底鋼板2a,2bの端部」に「夫々締結」する「複数の第1,第2高力ボルト・ナット10a,10b」は、本件発明1の「前記添接板を前記隣り合うプレキャスト合成床版の両底鋼板に接続するための高力ボルト及びナット」に相当する。 (オ)甲1第1発明の「間詰めコンクリート打設隙間6」に「打設」される「間詰めコンクリート」は、本件発明1の「前記機械式定着部を有する鉄筋を埋設するように前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間に充填される間詰めコンクリート」に相当する。 (カ)甲1第1発明の「一方の鉄筋コンクリート版4aから突出した鉄筋端部に螺合され」た「ナット8a」が、「隣り合う鉄筋コンクリート版の接合端面同士の間における他方の鉄筋コンクリート版側に配置され」、「他方の鉄筋コンクリート版4bから突出した鉄筋端部に螺合され」た「ナット8b」が、「隣り合う鉄筋コンクリート版の接合端面同士の間における一方の鉄筋コンクリート版側に配置されて」いることは、本件発明1の「一方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋の前記拡幅部は、前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における他方のプレキャスト合成床版側に配置されるとともに、前記他方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋の前記拡幅部は、前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における前記一方のプレキャスト合成床版側に配置され」ることに相当する。 (キ)甲1第1発明の「第1プレキャスト合成床版1aの複数の第1鉄筋端部5aと第2プレキャスト合成床版1bの複数の第2鉄筋端部5bとを間詰めコンクリート打設隙間6内で交互に位置させた第1の構造を有し」ていることは、本件発明1の「前記一方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋と、前記他方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋と、は平面視で互いにずれた位置に配置されていること」に相当する。 (ク)甲1第1発明の「帯状補強板7B」は、本件発明1の「補強プレート」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1第1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「底鋼板の上方にコンクリートを打設し、前記底鋼板と前記コンクリートを一体成形してなるプレキャスト合成床版同士を接合するための継手構造であって、 先端部に拡幅部を備え、合成床版の接合端面から先端部側を突出して配設される機械式定着部を有する鉄筋と、 隣り合うプレキャスト合成床版の底鋼板の端部側同士に重ねて配設される添接板と、 前記添接板を前記隣り合うプレキャスト合成床版の両底鋼板に接続するための高力ボルト及びナットと、 前記機械式定着部を有する鉄筋を埋設するように前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間に充填される間詰めコンクリートと、 補強プレートと、を備えて構成され、 一方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋の前記拡幅部は、前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における他方のプレキャスト合成床版側に配置されるとともに、前記他方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋の前記拡幅部は、前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における前記一方のプレキャスト合成床版側に配置され、 前記一方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋と、前記他方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋と、は平面視で互いにずれた位置に配置されているプレキャスト合成床版の継手構造。」 <相違点1> 「補強プレート」について、本件発明1では、「複数の補強プレートのそれぞれは、前記一方及び前記他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の前記鉄筋の拡幅部の何れかに接するように配置されている」のに対して、甲1第1発明では、「複数の第1鉄筋端部5aに夫々螺合した座金とナット部材8a」を「帯状補強板7B」における「第2プレキャスト合成床版1b側の第1面7cに係止させ且つ複数の第2鉄筋端部5bに夫々螺合した座金とナット部材8bを帯状補強板7Bにおける第1プレキャスト合成床版1a側の第2面7dに係止させ」ている、すなわち、「帯状補強板7B」の「第2プレキャスト合成床版1b側の第1面7c」及び「第1プレキャスト合成床版1a側の第2面7d」の両面において係止させている点。 イ 判断 上記相違点1は、実質的な相違点である。 よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。 上記相違点1について検討する。 申立人が提出した甲第2号証には、「一方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設置したナットをアンカープレートにおける他方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させ且つ他方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設けられたナットをアンカープレートにおける一方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させた構造」、すなわち、「アンカープレート」(補強プレート)が、一方及び他方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設けられたナットの両者に係止した構造が記載されている。 しかしながら、前記構造は、相違点1に係る本件発明1の「複数の補強プレートのそれぞれは、前記一方及び前記他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の前記鉄筋の拡幅部の何れかに接するように配置されている」ものとは相違しており、前記構造を基に、当業者が適宜設計し得るものともいえない。 また、申立人が提出した甲第4号証及び甲第5号証に記載されている甲4技術事項及び甲5技術事項(上記第4参照。)の「棒状部材」及び「フープ筋」は、いずれも「補強プレート」ではない。 さらに、甲第3号証、甲第6号証~甲第9号証、及び、参考例1~3のいずれにも、相違点1に係る本件発明1の上記構成は記載も示唆もされていない。 よって、甲1第1発明に、甲第2号証~甲第9号証、及び参考例1~3に記載された事項を適用し、相違点1に係る本件発明1に係る構成とすることはできない。 ウ 申立人の主張 申立人は、訂正後の本件発明1における「複数の補強プレートのそれぞれは、前記一方及び前記他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の前記鉄筋の拡幅部の何れかに接するように配置されている」構成については、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載されている旨主張する。(意見書3頁4~18行) しかしながら、上記構成は、甲第1号証には記載も示唆もされておらず、本件発明1が、甲1第1発明と相違していることは、上記アに示したとおりであり、また、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に上記構成が記載されていないことは、上記イで述べたとおりである。 したがって、申立人の主張を採用することはできない。 エ 小括 したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲1第1発明、甲第2号証~甲第9号証、及び参考例1~3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記(1)で検討した理由と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲1第1発明、甲第2号証~甲第9号証、及び参考例1~3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 甲1第2発明を主引用発明として (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1第2発明とを対比する。 上記1(1)アのうち(ア)~(キ)については同様である。 また、甲1第2発明の「鉄筋部材7C」は、本件発明1の「補強鉄筋」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1第2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「底鋼板の上方にコンクリートを打設し、前記底鋼板と前記コンクリートを一体成形してなるプレキャスト合成床版同士を接合するための継手構造であって、 先端部に拡幅部を備え、合成床版の接合端面から先端部側を突出して配設される機械式定着部を有する鉄筋と、 隣り合うプレキャスト合成床版の底鋼板の端部側同士に重ねて配設される添接板と、 前記添接板を前記隣り合うプレキャスト合成床版の両底鋼板に接続するための高力ボルト及びナットと、 前記機械式定着部を有する鉄筋を埋設するように前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間に充填される間詰めコンクリートと、 補強鉄筋と、を備えて構成され、 一方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋の前記拡幅部は、前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における他方のプレキャスト合成床版側に配置されるとともに、前記他方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋の前記拡幅部は、前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における前記一方のプレキャスト合成床版側に配置され、 前記一方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋と、前記他方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋と、は平面視で互いにずれた位置に配置されているプレキャスト合成床版の継手構造。」 <相違点1A> 「補強鉄筋」について、本件発明1では、「複数の補強鉄筋のそれぞれは、前記一方及び前記他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の前記鉄筋の拡幅部の何れかにそれぞれ接するように配置されている」のに対して、甲1第2発明では、「複数の第1鉄筋端部5aに夫々螺合した座金とナット部材8aを鉄筋部材7Cにおける第2プレキャスト合成床版1b側の第1面7eに係止させ且つ複数の第2鉄筋端部5bに夫々螺合した座金とナット部材8bを鉄筋部材7Cにおける第1プレキャスト合成床版1a側の第2面7fに係止させ」ている、すなわち「鉄筋部材7C」の「第2プレキャスト合成床版1b側の第1面7e」及び「第1プレキャスト合成床版1a側の第2面7f」の両面において係止させている点。 イ 判断 上記相違点1Aは、実質的な相違点である。 よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。 上記相違点1Aについて検討する。 申立人が提出した甲第2号証には、「一方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設置したナットを補強鉄筋における他方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させ且つ他方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設けられたナットを補強鉄筋における一方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させた構造」、すなわち、「補強鉄筋」が、一方及び他方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設けられたナットの両者に係止した構成が記載されている。 しかしながら、前記構成は、相違点1Aに係る本件発明1の「複数の補強鉄筋のそれぞれは、前記一方及び前記他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の前記鉄筋の拡幅部の何れかにそれぞれ接するように配置されている」ものとは相違しており、前記構成を基に、当業者が容易に設計し得るものともいえない。 また、申立人が提出した参考例1及び3に示されるとおり、プレキャスト床版同士の間において、複数の補強鉄筋が、一方及び前記他方のプレキャスト床版から突出した複数の継手鉄筋の端部の拡幅部のいずれかにそれぞれ接するように配置されていることは、周知技術(上記第4の2(13)エの周知技術4参照)であるが、甲1第2発明と前記周知技術とは、異なる補強構造であることから、甲1第2発明に、前記周知技術を適用する動機付けはない。なお、参考例2記載の技術として、継手鉄筋の端部の拡幅部に接する部材を「補強鉄筋」であると認定していないが、仮に当該部材が「補強鉄筋」であるとしてもその甲1第2発明への適用する動機付けがないことは、上記参考例1及び参考例3と同様である。 また、申立人が提出した甲第4号証及び甲第5号証に記載されている甲4技術事項及び甲5技術事項(第4の2(4)イ及び(5)イ)の「複数の棒状部材」及び「複数のフープ筋」は、いずれも本件発明1の「複数の補強鉄筋」に相当する。しかしながら、甲1第2発明と甲4技術事項及び甲5技術事項とは、異なる補強構造であることから、甲1第2発明に、前記甲4技術事項及び甲5技術事項を適用する動機付けはない。 また、申立人が提出した甲第3号証、甲第6号証~甲第9号証のいずれにも、相違点1Aに係る本件発明1の上記構成は記載も示唆もされていない。 よって、甲1第2発明に、甲第2号証~甲第9号証、周知技術4、及び、参考例2に記載された事項を適用し、相違点1Aに係る本件発明1に係る構成とすることはできない。 ウ 申立人の主張 申立人は、訂正後の本件発明1における「複数の補強鉄筋のそれぞれは、前記一方及び前記他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の前記鉄筋の拡幅部の何れかにそれぞれ接するように配置されている」構成については、甲第1号証、甲第2号証に記載されており、また、参考例1~3に記載されているように周知技術である旨主張する。(意見書3頁19~4頁3行) しかしながら、上記構成は、甲第1号証には記載も示唆もされておらず、本件発明1が、甲1第2発明と相違していることは、上記アで述べたとおりであり、また、甲第2号証に上記構成が記載されていないことは、上記イで述べたとおりである。さらに、参考例1~3に示されるとおり、プレキャスト床版同士の間において、複数の補強鉄筋が、一方及び前記他方のプレキャスト床版から突出した複数の継手鉄筋の端部の拡幅部に接するように配置されていることは周知技術ではあるとしても、当該周知技術を甲1第2発明に適用する動機付けがなく、甲1第2発明に、周知技術4をを適用し、相違点1Aに係る本件発明1に係る構成とすることはできないことは、同じく上記イで述べたとおりである。 したがって、申立人の主張を採用することはできない。 エ 小括 したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲1第2発明、甲第2号証~甲第9号証、周知技術4、及び、参考例2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記(1)で検討した理由と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲1第2発明、甲第2号証~甲第9号証、周知技術4、及び、参考例2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 甲2第1発明を主引用発明として (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2第1発明とを対比する。 (ア)甲2第1発明の「底鋼板」、「コンクリート」、「プレキャスト合成床版」、「添接板」、「高力六角ボルト」、「ナット」及び「プレキャスト合成床版の継手構造」は、本件発明1の「底鋼板」「コンクリート」、「プレキャスト合 成床版」、「添接板」、「高力ボルト」、「ナット」及び「プレキャスト合成床版の継手構造」に、それぞれ相当する。 (イ)甲2第1発明の「端部にナットを設置した配力鉄筋」は、「配力鉄筋」の「端部」において幅の拡大した部位を形成しているといえる。また、拡幅しているといえることから、間詰め部に充填するコンクリートに対して定着機能を有していることは明らかである。 そうすると、甲2第1発明の「配力鉄筋」の「端部」に「ナット」が配置され、「プレキャスト合成床版」から「間詰め部側」に「突出し」た「配力鉄筋」は、本件発明1の「先端部に拡幅部を備え、合成床版の接合端面から先端部側を突出して配設される機械式定着部を有する鉄筋」に相当する。 (ウ)甲2第1発明の「底鋼板」に「添接」される「添接板」は、本件発明1の「隣り合うプレキャスト合成床版の底鋼板の端部側同士に重ねて配設される添接板」に相当する。 (エ)甲2第1発明の「前記添接板と左右の底鋼板とをそれぞれ連結する高力六角ボルト及びナット」は、本件発明1の「前記添接板を前記隣り合うプレキャスト合成床版の両底鋼板に接続するための高力ボルト及びナット」に相当する。 (オ)甲2第1発明の「プレキャスト合成床版の合理化継手の間詰め部」に「充填され」る「コンクリート」は、本件発明1の「前記機械式定着部を有する鉄筋を埋設するように前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間に充填される間詰めコンクリート」に相当する。 (カ)甲2第1発明の「一方のプレキャスト部から突出した配力鉄筋に設置したナットは、隣り合うプレキャスト部の接合端面同士の間における他方のプレキャスト部側に配置され、他方のプレキャスト部から突出した配力鉄筋に設けられたナットは、隣り合うプレキャスト部の接合端面同士の間における一方のプレキャスト部側に配置されて」いることは、本件発明1の「一方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋の前記拡幅部は、前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における他方のプレキャスト合成床版側に配置されるとともに、前記他方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋の前記拡幅部は、前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における前記一方のプレキャスト合成床版側に配置され」ていることに相当する。 (キ)甲2第1発明の「配力鉄筋」が「左右のプレキャスト合成床版から間詰め部側に交互に突出し」ていることは、本件発明1の「前記一方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋と、前記他方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋と、は平面視で互いにずれた位置に配置されていること」に相当する。 (ク)甲2第1発明の「補強鉄筋」は、本件発明1の「補強鉄筋」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲2第1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「底鋼板の上方にコンクリートを打設し、前記底鋼板と前記コンクリートを一体成形してなるプレキャスト合成床版同士を接合するための継手構造であって、 先端部に拡幅部を備え、合成床版の接合端面から先端部側を突出して配設される機械式定着部を有する鉄筋と、 隣り合うプレキャスト合成床版の底鋼板の端部側同士に重ねて配設される添接板と、 前記添接板を前記隣り合うプレキャスト合成床版の両底鋼板に接続するための高力ボルト及びナットと、 前記機械式定着部を有する鉄筋を埋設するように前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間に充填される間詰めコンクリートと、 補強鉄筋と、を備えて構成され、 一方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋の前記拡幅部は、前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における他方のプレキャスト合成床版側に配置されるとともに、前記他方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋の前記拡幅部は、前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における前記一方のプレキャスト合成床版側に配置され、 前記一方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋と、前記他方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋と、は平面視で互いにずれた位置に配置されていることを特徴とするプレキャスト合成床版の継手構造。」 <相違点2A> 「補強鉄筋」について、本件発明1では、「複数の補強鉄筋のそれぞれは、前記一方及び前記他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の前記鉄筋の拡幅部の何れかにそれぞれ接するように配置されている」のに対して、甲2第1発明では、「左右方向に3本配置された補強鉄筋のうちの中央の補強鉄筋について、一方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設置したナットを補強鉄筋における他方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させ且つ他方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設けられたナットを補強鉄筋における一方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させ」ている、すなわち、前記「補強鉄筋」が、一方及び他方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設けられたナットの両者に係止した点。 イ 判断 上記相違点2Aは、実質的な相違点である。 よって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明ではない。 上記相違点2Aについて検討する。 申立人が提出した甲第1号証には、「複数の第1鉄筋端部5aに夫々螺合した座金とナット部材8aを鉄筋部材7Cにおける第2プレキャスト合成床版1b側の第1面7eに係止させ且つ複数の第2鉄筋端部5bに夫々螺合した座金とナット部材8bを鉄筋部材7Cにおける第1プレキャスト合成床版1a側の第2面7fに係止させ」ている、すなわち「鉄筋部材7C」の「第2プレキャスト合成床版1b側の第1面7e」及び「第1プレキャスト合成床版1a側の第2面7f」の両面において係止させている構成が記載されている。 しかしながら、前記構成は、相違点2Aに係る本件発明1の「複数の補強鉄筋のそれぞれは、前記一方及び前記他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の前記鉄筋の拡幅部の何れかにそれぞれ接するように配置されている」ものとは相違している。 また、申立人が提出した参考例1~3、甲第3号証~甲第9号証については、上記2(1)イで説明したとおりであり、適用する動機付けがない点についても同様である。 よって、甲2第1発明に、甲第2号証~甲第9号証、周知技術4、及び、参考例2に記載された事項を適用し、相違点2Aに係る本件発明1に係る構成とすることはできない。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、甲2号証に記載された発明ではなく、また、甲2第1発明、甲第2号証~甲第9号証、周知技術4、及び、参考例2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記(1)で検討した理由と同じ理由により、甲第2号証に記載された発明ではなく、また、甲2第1発明、甲第2号証~甲第9号証、周知技術4、及び、参考例2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 甲2第2発明を主引用発明として (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2第2発明とを対比する。 上記3(1)アのうち(ア)~(キ)については同様である。 また、甲2第2発明の「アンカープレート」は、本件発明1の「補強プレート」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲2第2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「底鋼板の上方にコンクリートを打設し、前記底鋼板と前記コンクリートを一体成形してなるプレキャスト合成床版同士を接合するための継手構造であって、 先端部に拡幅部を備え、合成床版の接合端面から先端部側を突出して配設される機械式定着部を有する鉄筋と、 隣り合うプレキャスト合成床版の底鋼板の端部側同士に重ねて配設される添接板と、 前記添接板を前記隣り合うプレキャスト合成床版の両底鋼板に接続するための高力ボルト及びナットと、 前記機械式定着部を有する鉄筋を埋設するように前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間に充填される間詰めコンクリートと、 補強プレートと、を備えて構成され、 一方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋の前記拡幅部は、前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における他方のプレキャスト合成床版側に配置されるとともに、前記他方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋の前記拡幅部は、前記隣り合うプレキャスト合成床版の接合端面同士の間における前記一方のプレキャスト合成床版側に配置され、 前記一方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋と、前記他方のプレキャスト合成床版から突出した前記鉄筋と、は平面視で互いにずれた位置に配置されているプレキャスト合成床版の継手構造。」 <相違点2> 「補強プレート」について、本件発明1では、「複数の補強プレートのそれぞれは、前記一方及び前記他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の前記鉄筋の拡幅部の何れかに接するように配置されている」のに対して、甲2第2発明では、「一方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設置したナットをアンカープレートにおける他方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させ且つ他方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設けられたナットをアンカープレートにおける一方のプレキャスト合成床版側の側面に係止させ」ている、すなわち、「アンカープレート」が、一方及び他方のプレキャスト合成床版から突出した配力鉄筋に設けられたナットの両者に係止した点。 イ 判断 上記相違点2は、実質的な相違点である。 よって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明ではない。 上記相違点2について検討する。 申立人が提出した甲第1号証には、「複数の第1鉄筋端部5aに夫々螺合した座金とナット部材8aを帯状補強板7Bにおける第2プレキャスト合成床版1b側の第1面7cに係止させ且つ複数の第2鉄筋端部5bに夫々螺合した座金とナット部材8bを帯状補強板7Bにおける第1プレキャスト合成床版1a側の第2面7dに係止させ」ている、すなわち「帯状補強板7B」の「第2プレキャスト合成床版1b側の第1面7c」及び「第1プレキャスト合成床版1a側の第2面7d」の両面において係止させている構成が記載されている。 しかしながら、前記構成は、相違点2に係る本件発明1の「複数の補強鉄筋のそれぞれは、前記一方及び前記他方のプレキャスト合成床版から突出した複数の前記鉄筋の拡幅部の何れかにそれぞれ接するように配置されている」ものとは相違している。 また、申立人が提出した甲第3号証~甲第9号証、及び参考例1~3については、上記1(1)イで説明したとおりである。 よって、甲2第2発明に、甲第1号証、甲第3号証~甲第9号証、及び参考例1~3に記載された事項を適用し、相違点2に係る本件発明1に係る構成とすることはできない。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明ではなく、また、甲2第2発明、甲第1号証、甲第3号証~甲第9号証、及び参考例1~3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記(1)で検討した理由と同じ理由により、甲第2号証に記載された発明ではなく、また、甲2第2発明、甲第1号証、甲第3号証~甲第9号証、及び参考例1~3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701025

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    共通の審決分類: 113・E01D、121・E01D
  • 2024-011731拒絶査定不服審判 / 2026-03-02 / 原査定取消(特許/登録すべき)橋梁の路面凍結抑制設備および路面凍結抑制方法
    共通の審決分類: 113・E01D、121・E01D

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