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特許異議申立

2024-700403

3次元成型品加飾用積層フィルム

審判番号
2024-700403
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-139591
登録番号
7369559
請求日
2024年04月26日
審決日
2025年09月18日
公報発行日
2025年12月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】トヨタ自動車株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人タス・マイスター
  • 【権利者】トヨタ車体株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人タス・マイスター
  • 【権利者】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人タス・マイスター
  • 【異議申立人】佐藤 惠一
審判長/審判官
  • 審判長 岩谷 一臣
  • 審判官 武市 匡紘
  • 審判官 金丸 治之
分類
P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7369559号発明「3次元成型品加飾用積層フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7369559号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 特許第7369559号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7369559号の請求項1~5に係る特許についての出願(特願2019-139591号)は、令和元年7月30日の出願であって、令和5年10月18日にその特許権の設定登録がされ、令和5年10月26日に特許掲載公報が発行された。 本件の特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。 令和6年 4月26日 :特許異議申立人佐藤惠一(以下「申立人」という。)による請求項1~5に係る特許に対する本件特許異議の申立て 令和6年 7月 9日 :令和6年4月26日に提出した特許異議申立書に対する手続補正書(方式)の提出 令和6年 9月10日付け:取消理由通知書 令和6年11月12日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和6年11月18日 :令和6年11月12日に提出した訂正請求書に対する手続補正書の提出 令和6年12月26日 :申立人による意見書の提出 令和7年 2月25日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和7年 4月30日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和7年 6月18日 :令和7年4月30日に提出した意見書及び訂正請求書に対する手続補正書(方式)の提出(以下、この手続補正書(方式)によって補正された令和7年4月30日に提出された訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。) 令和7年 7月28日 :申立人による意見書(以下「意見書」という。)の提出 令和6年11月18日に提出した手続補正書により補正された、令和6年11月12日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正の内容 本件訂正請求の趣旨は、「特許第7369559号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。 (1)訂正事項1 本件訂正前の請求項1に記載された 「イソシアネート化合物(C1)を0.05~4.0重量%を含む熱硬化樹脂組成物を塗布・乾燥後、熱硬化させることにより形成された層であり、」を、 「イソシアネート化合物(C1)を0.05~4.0重量%を含み、水酸基価が1~100mgKOHである、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1の水酸基含有樹脂を含む溶剤系熱硬化樹脂組成物を塗布・乾燥後、熱硬化させることにより形成された層であり、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 本件訂正前の請求項1に記載された 「イソシアネート化合物(C1)を0.05~4.0重量%を含む熱硬化樹脂組成物を塗布・乾燥後、熱硬化させることにより形成された層であり、」の後に、 「前記イソシアネート化合物(C1)は、ヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体であり、」を挿入する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 本件訂正前の請求項1に記載された 「前記意匠層(C)はさらに、扁平顔料を含有する」を、 「前記意匠層(C)はさらに、扁平顔料を含有し、 接着層(D)は、接着剤を塗布・乾燥することによって形成したものである」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する)。 2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~5は、請求項2~5が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~5〕について請求されたものである。 3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の熱硬化樹脂組成物について、「水酸基価が1~100mgKOHであ」り、「アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1の水酸基含有樹脂を含む」ものであり、さらに「溶剤系」であることを規定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項1のうち、「水酸基価が1~100mgKOHであ」ることは、本件特許の【0030】の記載、「アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1の水酸基含有樹脂を含む」ことは、本件特許の【0029】の記載、「溶剤系」であることは、本件特許の【0107】の記載にそれぞれ基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項1のイソシアネート化合物(C1)について、「ヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体であ」ることを規定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項2は、本件特許の【0023】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項2は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項1の接着層(D)について「接着剤を塗布・乾燥することによって形成したものである」ことを規定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項3は、本件特許の【0082】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項3は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 4 小括 以上のとおりであるから、訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~5を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 【請求項1】 基材フィルム層(A)、クリヤー塗膜層(B)、意匠層(C)、接着層(D)を有する3次元成型品加飾用積層フィルムであって、前記意匠層(C)は、イソシアネート化合物(C1)を0.05~4.0重量%を含み、水酸基価が1~100mgKOHである、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1の水酸基含有樹脂を含む溶剤系熱硬化樹脂組成物を塗布・乾燥後、熱硬化させることにより形成された層であり、 前記イソシアネート化合物(C1)は、ヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体であり、 前記意匠層(C)はさらに、扁平顔料を含有し、 接着層(D)は、接着剤を塗布・乾燥することによって形成したものである ことを特徴とする3次元成型品加飾用積層フィルム。 【請求項2】 イソシアネート化合物(C1)は、ブロックイソシアネートである請求項1記載の3次元成型品加飾用積層フィルム。 【請求項3】 意匠層(C)が複数の層からなる請求項1又は2記載の3次元成型品加飾用積層フィルム。 【請求項4】 クリヤー塗膜層(B)は、ポリウレタンアクリレート(B1)、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)及び重合開始剤(B3)を含有する活性エネルギー線硬化型コーティング組成物によって形成されたものである請求項1、2又は3記載の3次元成型品加飾用積層フィルム。 【請求項5】 積層フィルムとして、温度範囲40~130℃における伸びが30~500%である請求項1、2、3又は4記載の3次元成型品加飾用積層フィルム。 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、当審合議体が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (1)取消理由1(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の請求項1~5の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 本件特許の請求項1に係る発明が解決しようとする課題は「外観及び強度に優れた3次元成型品加飾用積層フィルムを提供すること」である。ここで、意匠層(C)について、成形時の諸性質については、イソシアネート化合物(C1)がいかなるものであるのか、及び意匠層(C)に含まれる当該イソシアネート化合物(C1)以外の物質がいかなるものであるのか等と関連することは当業者にとって技術常識といえるところ、特許請求の範囲の請求項1では「イソシアネート化合物(C1)を0.05~4.0重量%を含む」という特定をするのみであり、当該特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記技術常識に照らしても発明が解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められない。 (2)取消理由4(進歩性) 本件の請求項1~5に係る発明は、以下の甲2に記載の発明並びに、甲1、3、5~9及び引用文献3~4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <引用文献等一覧> 甲2:特許第6036685号公報(申立人の提示した甲第2号証) 引用文献3:特許第6167901号公報(当審により引用した文献) 甲1:特開2012-148426号公報(申立人の提示した甲第1号証) 引用文献4:特開2006-111857号公報(当審により引用した文献) 甲3:特開2014-031003号公報(申立人の提示した甲第3号証) 甲5:特開2003-340986号公報(同甲第5号証) 甲6:特開2002-187238号公報(同甲第6号証) 甲7:特開2001-145981号公報(同甲第7号証) 甲8:特開2017-007109号公報(同甲第8号証) 甲9:特開2018-083950号公報(同甲第9号証) 2 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての当審の判断 当審合議体は、上記取消理由1及び4によっては、本件発明1~5に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。 (1)引用文献の記載、引用発明及び周知技術について ア 甲2 (ア)甲2の記載 甲2には、以下の記載がある。下線は当審で付した。「・・・」は省略を示す。以下同様。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、建材や携帯電話、電機製品、遊技機部品、自動車部品などで使用される被装飾体に対して、フィルム装飾を施す際に用いる装飾成形用フィルムに関し、深絞りなどの複雑な形状の被装飾体に対しても形状の追従性が良好で、かつ高延伸倍率箇所においても表面凹凸発生が少ない、装飾成形用フィルムおよびそれを用いた装飾成形体の製造方法に関するものである。」 「【0014】 (i)着色層と保護層と基材フィルムとがこの順で配された、または、(ii)着色層と保護層との層間に基材フィルムが配された、積層構造を有する本発明の装飾成形用フィルムは、以下に示すように、着色層を被装飾体の表面に当たるように積層して熱成形にて被装飾体に貼り付けることにより、被装飾体に装飾を施すことができる。(被装飾体は、本発明の装飾成形用フィルムには含まれないが、本発明の装飾成形用フィルムの適用態様を明確に示すために、括弧内に記している) (i) 基材フィルム/保護層/着色層(/被装飾体) (ii) 保護層/基材フィルム/着色層(/被装飾体)。」 「【0021】 [着色層] 本発明における着色層は、少なくともバインダー樹脂および光輝材を含む層である。 【0022】 本発明におけるバインダー樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂のいずれを用いてもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチロール樹脂などを用いることができる。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリカーボネート樹脂などを用いることができる。光硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂としては、例えばウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂などのうちから選択された1種以上と、必要な場合に、その光開始剤などを混合したものを用いてもよい。これらの樹脂には必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、粘結剤、表面調整剤、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを混合してもよい。また、これらの樹脂は、共重合体であってもよく、または異種の樹脂の混合体であってもよい。 【0023】 [光輝材] 本発明において、光輝材は、アルミニウムフレーク、マイカ、ガラスフレークなどのうちから選択された1種以上を用いることができる。また、必要に応じて、樹脂コーティングや着色加工を施されたものであってもよい。」 「【0031】 着色層用塗料の粘度には、良好な外観を得るために好ましい範囲がある。着色層用塗料の粘度の下限は500mPa・s以上が好ましく、1000mPa・s以上がより好ましい。着色層用塗料の粘度が500mPa・s未満であると、着色層用塗料の溶剤が揮発するときの対流で光輝材が動き、配向度が大きくなり、光輝感のある外観を得ることができなくなる場合がある。これは、塗工後の乾燥工程において、着色層用塗料に含まれる溶剤が揮発するときに発生する対流によって、光輝材が動かされて、配向度が大きくなりすぎることがあるためである。そして、配向度が大きくなりすぎると、光輝感のある外観を得ることができなくなる場合がある。」 「【0038】 本発明における着色層の120℃での100%伸長時の応力を4MPa以下にするための方法としては特に限定されないが、ガラス転移温度が110℃以下の着色層となるよう、例えば、硬化剤としてイソシアネート架橋剤を使用する場合、該架橋剤の添加量を増加させることでガラス転移温度を高温化(添加量を減らすことで低温下)する方法や、また、前記バインダー樹脂から任意に複数の樹脂を選択してガラス転移温度を調整する方法などが挙げられる。・・・」 「【0043】 [接着層] 前記、装飾成形用フィルムは、着色層上にさらに接着層を備えていてもよい。接着層を有することにより、成形時に装飾成形用フィルムを延伸させると同時に被装飾体への貼り付けがより強固となる。・・・ 【0044】 [装飾成形体の製造方法] 本発明の装飾成形用フィルムを用いた装飾成形体の製造方法としては、真空成形法や圧空成形法など3次元形状の成形体に装飾できる既知の熱成形方法を特に限定せず適用することができる。装飾成形用フィルムの成形性や被装飾体との密着性の点から、真空条件下において、装飾成形用フィルムを基材フィルムの軟化点以上の温度に加熱し、フィルムの着色層または接着層を被装飾体の表面に接するようにして熱成形にて被装飾体に貼り付けることにより、被装飾体の表面に保護層、着色層からなる複合層が形成された装飾成形体を製造する方法が好ましい。この装飾方法は、多段階の工程が必要である塗装による装飾方法と比べて、装飾層を形成する工程数を減らすことができ、装飾層を有する装飾成形体の生産効率を大幅に向上できる。」 「【0057】 (塗料組成物) 着色層を形成するために、以下の塗料組成物A~Hを用意した。 <塗料組成物A> 以下の配合比で混合したものを塗料組成物Aとした。 バインダー樹脂の溶液:R2325クリアー(日本ビー・ケミカル社製、固形成分:36質量%) 100質量部 光輝材の分散液:アルミニウムフレーク(平均長径10.9μm、平均短径 0.2μm、固形成分:71質量%、溶媒成分(ミネラルスピリット):29質量%)3.5質量部 ・・・ 【0059】 (実施例1) 厚さ100μmの離型フィルム(東レフィルム加工(株)製、“セラピール”MD)の離型層側に、前述した塗料組成物Aからなる着色層用塗料を乾燥後の厚さが40μmとなるようアプリケーターを用いて、5m/minの速度で塗布し、90℃で10分間乾燥して着色層を形成した。形成した着色層を、離型フィルムから剥離して長さ100mm×幅10mmの短冊形に切り出し、着色層のみの評価用サンプルを作成した。得られた評価用サンプルの、100%伸長時の応力と破断伸度および配向度を表1-2に示す。延伸応力は低く、破断伸度も良好な成形性を有するに充分なものであった。 【0060】 また、基材フィルムに、熱硬化型の保護層用塗料(三洋化成工業社製、UY30)を、乾燥後の厚さが20μmとなるようアプリケーターを用いてにより塗布し、90℃で10分間乾燥して保護層を形成した。次いで、着色層用塗料として前述した塗料組成物Aを、保護層の上に乾燥後の厚さが40μmとなるよう、アプリケーターを用いて、5m/minの速度で塗布し、90℃で10分間乾燥、硬化させて着色層を形成した。このようにして装飾成形用フィルムを得た。・・・」 (イ)甲2発明 上記(ア)に示した【0044】の「本発明の装飾成形用フィルムを用いた装飾成形体の製造方法としては、真空成形法や圧空成形法など3次元形状の成形体に装飾できる既知の熱成形方法を特に限定せず適用することができる。」という記載より、被装飾体は3次元形状であることが明らかであるから、装飾成型用フィルムは、3次元装飾成型用フィルムであることが明らかである。 また、【0031】の「着色層用塗料の粘度が500mPa・s未満であると、着色層用塗料の溶剤が揮発するときの対流で光輝材が動き、」及び「着色層用塗料に含まれる溶剤が揮発するときに発生する対流によって、」という記載より、【0057】の「塗料組成物A」は、溶剤系であることは明らかである。 よって、上記(ア)より、特に【0057】~【0060】の実施例1に着目すると、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 「基材フィルム、保護層、着色層を有する3次元装飾成型用フィルムであって、前記着色層は、バインダー樹脂の溶液(R2325クリアー(日本ビー・ケミカル社製、固形成分:36質量%))を含む溶剤系の塗料組成物Aを90℃で10分間乾燥、硬化させて形成された層であり、前記着色層はさらに、アルミニウムフレーク(平均長径10.9μm、平均短径 0.2μm、固形成分:71質量%、溶媒成分(ミネラルスピリット):29質量%)を含有する3次元装飾成型用フィルム。」 イ 引用文献3 (ア)引用文献3の記載 引用文献3には、以下の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、自動車部品や電化製品、携帯端末などで使用される被装飾体に対して、フィルム装飾を施す際に用いる装飾成形用フィルムに関し、高温雰囲気下においても高成形倍率部分で保護層の割れや縮みが発生しにくく、かつ表面外観が良好な装飾成形用フィルムおよびそれを用いた装飾成形体の製造方法に関するものである。」 「【0030】 [着色層] 本発明の装飾成形用フィルムに用いられる着色層は、目的とする色や風合を装飾する被装飾体に与える機能を有する層である、また、装飾成形体に成形したときに隠蔽性を有する層である。着色層としては例えば、バインダー樹脂と顔料を混合した着色樹脂、インク、金属薄膜などで構成される層が挙げられる。装飾成形用フィルムの成形性を損なわないことや本発明における貯蔵弾性率の調整がし易い点からバインダー樹脂と顔料を混合した着色樹脂で構成される層(以降、着色樹脂層と略記することもある)が最も好ましい。 【0031】 本発明において、着色層のE’b(100)は12MPa以下であることが好ましい。E’b(100)が12MPaより大きいと延伸時の成形応力が高くなり、着色層に含まれる顔料の配向が乱れ、外観が悪化する原因となる場合がある。また、装飾体を高温雰囲気下に放置したときに着色層が軟化し、保護層の熱収縮に耐えられずシワやひび割れが発生してしまう場合があるため、E’b(100)が5MPa以上であることが好ましい。また、着色層の100℃における100%延伸時応力は0.2MPa以下であることが好ましい。100℃における100%延伸時応力が0.2MPaより大きくなるとE’b(100)が12MPaより大きくなった場合と同様、着色層に含まれる顔料の配向が乱れ、外観が悪化する原因となる場合がある。」 「【0035】 着色層として着色樹脂層を用いる場合、混合されるバインダー樹脂としては熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂(UV硬化性樹脂含む)のいずれを用いてもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。」 「【0037】 これらの樹脂に顔料を添加することで任意の色に調整することや装飾成形用フィルムの着色層を形成する際の塗工性の観点から、前記の樹脂を溶剤溶液または水分散体とすることが好ましい。溶剤溶液または水分散体を作製する方法としては、既知の手法を用いることができる。 【0038】 また、これらの樹脂には、その必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、粘結剤、表面調整剤、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを混合してもよい。 【0039】 また、前記樹脂は、共重合体であってもよく、または異種の樹脂の混合体であってもよい。本発明では、取り扱いが容易で、かつ安価であるため、熱硬化性樹脂を好ましく用いることができる。 【0040】 前記顔料としては、例えばアルミニウム粉体、カーボンブラック、二酸化チタン、マイカ、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレットなど、無機顔料、有機顔料のいずれを用いてもよく、また、該顔料は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。該顔料濃度は、前記バインダー樹脂の破断伸度を阻害しない範囲で調整することができる。」 「【0043】 [装飾成形体の製造方法] 本発明にかかる装飾成形体の製造方法としては、前述の装飾成形用フィルムを、被装飾体に貼り付けた後、基材フィルムを剥離することにより作製する装飾成形体の製造方法が挙げられる。装飾成形用フィルムを、被装飾体に貼り付ける際に減圧成形法(真空成形法と言う場合もある)や圧空成形法など3次元形状の被装飾体に装飾成形用フィルムを貼り付け可能な、既知の熱成形方法を適用することが好ましい。中でも、本発明の装飾成形用フィルムの成形性や被装飾体との接着性の点から、減圧条件下において、本発明の装飾成形用フィルムを軟化点以上の温度に加熱し、該フィルムの接着層を被装飾体の表面に接触せしめて熱成形にて被装飾体に貼り付ける成形方法を採ることが、従来多段階の工程が必要であったスプレー塗装による装飾方法と比べて、被装飾体に装飾する工程数を減らすことが可能となり、装飾成形体の生産効率が向上することから好ましい。」 「【0058】 (実施例1) 基材フィルムとして、厚さ100μmの未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(FL10、東レ社製)と厚さ40μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(SC、東セロ社製)とをウレタン系接着剤でドライラミネートしたものを用いた。基材フィルムのポリプロピレンフィルム側に、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂エマルション塗料(“パーマリン”(登録商標)UA-310、三洋化成工業社製)100質量部に対してカルボジイミド系硬化剤(“カルボジライト”(登録商標) V-02、日清紡ケミカルズ社製)を1質量部添加・混合したものを、乾燥後の厚さが40μmとなるようアプリケーター法により塗布した後、80℃で30分間乾燥し、保護層を形成した。 【0059】 次いで、保護層上に着色層を形成するための塗料(R2325、日本ビー・ケミカル社製)100質量部に対して、イソシアネート塗料(“タケネート”(登録商標)500、三井化学社製)1質量部を添加・混合したものを、乾燥後の厚さが40μmとなるようアプリケーター法により塗布した後、80℃で30分間乾燥し、着色層を形成した。 【0060】 次いで、形成した着色層上に、接着層を形成するための塗料(M-28、東洋紡社製)を乾燥後の厚さが20μmとなるよう、アプリケーター法により塗布した後、80℃で30分間乾燥して接着層を形成して装飾成形用フィルムを得た。」 (イ)引用文献3記載事項 上記(ア)に示した【0043】の「装飾成形用フィルムを、被装飾体に貼り付ける際に減圧成形法(真空成形法と言う場合もある)や圧空成形法など3次元形状の被装飾体に装飾成形用フィルムを貼り付け可能な、既知の熱成形方法を適用することが好ましい。」という記載より、被装飾体は3次元形状であることが明らかであるから、装飾成型用フィルムは、3次元装飾成型用フィルムであることが明らかである。 よって、上記(ア)より、特に【0058】~【0060】の実施例1に着目すると、引用文献3には以下の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されているといえる。 「基材フィルム、保護層、着色層、接着層を有する3次元装飾成形用フィルムであって、前記着色層は、塗料(R2325、日本ビー・ケミカル社製)100質量部及びイソシアネート塗料(“タケネート”(登録商標)500、三井化学社製)1質量部を添加・混合したものを塗布した後、80℃で30分間乾燥し形成された層である3次元装飾成形用フィルム。」 ウ 甲1 (ア)甲1の記載 甲1には、以下の記載がある。 「【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、接着層と、熱可塑性フィルム層と、ベース塗料から形成された加飾層とを含む加飾フィルムであって、・・・」 「【0048】 また、上記ベース塗料は、コアシェル型エマルション(A)の他に、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の改質用樹脂、及びそれらの組み合わせ、並びにポリイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びそれらの組み合わせの硬化剤を含むことができる。 ・・・ 【0049】 上記ポリエステル樹脂は、水酸基及びカルボキシル基の両方を含むことが好ましく、好ましくは約10~約300mgKOH/g、より好ましくは約50~約250mgKOH/g、そしてさらに好ましくは約80~約180mgKOH/gの範囲の水酸基価と、好ましくは約1~約200mgKOH/g、より好ましくは約15~約100mgKOH/g、そしてさらに好ましくは約25~約60mgKOH/gの範囲の酸価とを有する。」 「【0054】 上記アクリル樹脂のカルボキシル基は、上述の塩基性物質を用いて中和されうる。また、上記アクリル樹脂は、好ましくは約1~約200mgKOH/g、より好ましくは約2~約100mgKOH/g、そしてさらに好ましくは約3~約60mgKOH/gの範囲の水酸基価と、好ましくは約1~約200mgKOH/g、より好ましくは約2~約150mgKOH/g、そしてさらに好ましくは約5~約100mgKOH/gの範囲の酸価とを有する。」 「【0066】 上記ベース塗料において、上記硬化剤としてのポリイソシアネート化合物の量は、加飾層の延伸成形性、耐水性等の観点から、水酸基価に対して約0.01~約1当量、特に約0.05~約0.8当量の範囲となるような量に調整されることが好ましい。 ・・・」 「【0069】 ・・・ 上記ベース塗料は、所望により、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等、並びにそれらの組み合わせの、ベース塗料用添加剤をさらに含むことができる。」 (イ)甲1記載事項 上記(ア)により甲1には以下の事項(以下「甲1記載事項」という。)が記載されている。 「加飾フィルムを構成する、ベース塗料から形成された加飾層において、着色顔料や光輝性顔料を含むことができるベース塗料組成物が、水酸基価が約10~約300mgKOH/gであるポリエステル樹脂及び水酸基価が約1~約200mgKOH/gであるアクリル樹脂が例示される改質用樹脂や、ポリイソシアネート化合物の硬化剤を含むことができること。」 エ 引用文献4 (ア)引用文献4の記載 引用文献4には、以下の記載がある。 「【0001】 本発明は、クリヤー塗料組成物、複層塗膜の形成方法及び加飾成形品に関する。」 「【0009】 本発明は、プラスチック基材上に、ベース塗膜層、銀メッキ層、クリヤー塗膜層を順次層形成させてなる銀メッキ層を含む複層塗膜の形成において使用するクリヤー塗料組成物であって、アクリル系ポリオールを含有する主剤及びポリイソシアネート化合物を含有する硬化剤からなる2液型ポリウレタン塗料であり、上記アクリル系ポリオール中のOH基と上記ポリイソシアネート化合物中のNCO基との当量比(NCO/OH)は、0.8/1~1.2/1であり、防錆剤をアクリル系ポリオール及び防錆剤の合計100質量部に対する含有量1.0~13.0部(固形分質量換算)の割合で含むことを特徴とするクリヤー塗料組成物である。 また、上記主剤は、アクリル系ポリオール、非水分散樹脂及び下記一般式(1);」 「【0043】 上記ベース塗膜層は、ベース塗料組成物を使用して形成されるものである。上記ベース塗料組成物としては特に限定されず、例えば、ポリウレタン樹脂系塗料、アクリル樹脂系塗料、シリコーン樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、アルキド樹脂系塗料、アミノアルキド樹脂系塗料等を挙げることができる。なかでも、耐水二次密着性、耐食性、加飾成形品の外観等から2液硬化型ポリウレタン樹脂系塗料を使用することが好ましい。 【0044】 上記ベース塗料組成物として使用する2液硬化型ポリウレタン樹脂系塗料は、本発明のクリヤー塗料組成物と同様、アクリル系ポリオールを含有してなる主剤及びポリイソシアネート化合物を含有してなる硬化剤からなるものである。ベース塗料組成物の主剤には、アクリル系ポリオールの他、有機変性ポリジメチルシロキサンやエポキシシラン化合物を含んでもよい。 【0045】 上記ベース用主剤に含まれるアクリル系ポリオールとしては、水酸基を含有するアクリル樹脂であれば特に限定されず、また、変性したものであってもよい。 上記ベース主剤に含まれるアクリル系ポリオールの水酸基価は、60~140mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは70~100mgKOH/gである。60mgKOH/g未満であると、ポリイソシアネート硬化剤との架橋反応点が不足し、塗膜物性が不充分となる場合があり、140mgKOH/gを超えると、架橋反応点が多すぎ、塗膜が硬くもろくなったり、また、過剰の水酸基が原因となり塗膜の耐湿性、耐水性が低下し好ましくない場合がある。」 「【0058】 上記ベース用主剤は、上記各成分を公知の手段で混合、攪拌することによって得ることができる。また、必要に応じて、更に、着色顔料、体質顔料、光輝材等の顔料;酢酸ブチルエステル、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン等の溶剤;紫外線吸収剤、酸化防止剤、硬化触媒、沈降防止剤等の添加剤等の成分を添加してもよい。」 (イ)引用文献4記載事項 上記(ア)の【0044】の「アクリル系ポリオール」は樹脂組成物であることにほかならないから、上記(ア)により引用文献4には以下の事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。 「加飾成型品を作成するためのクリヤー塗料組成物において、着色顔料や光輝材を添加してもよいベース塗膜層のベース塗料組成物が、水酸基価が60~140mgKOH/gである樹脂組成物からなる主剤と、ポリイソシアネート化合物を含有してなる硬化剤からなること。」 オ 甲3 (ア)甲3の記載 甲3には、以下の記載がある。 「【請求項1】 接着層(A)および接着層(A)に積層される層(B)を含む少なくとも2層以上からなる加飾成型用フィルムであって、接着層(A)はオレフィン系樹脂およびNCO含有率が0.01~1.6質量部であるイソシアネート基を含んでなり、かつ、層(B)に含まれる樹脂がヒドロキシ基を有することを特徴とする加飾成型用フィルム。」 「【0035】 本発明において接着層(A)には顔料および/または金属薄膜細片を混合してもよい。これにより、被加飾体との密着性を付与すると共に、目的とする色や風合を被加飾体に与えることができる。加えて、加飾成型用フィルムの着色層と接着層の2層を、顔料および/または金属薄膜細片を含む1層に統合することができる。つまり、塗工コストや原料コストのコストダウンが可能となる。 【0036】 この場合、接着層(A)に含まれるイソシアネート基はブロックイソシアネートが好ましい。通常のイソシアネート基を用いた場合、塗工・乾燥工程の中で、イソシアネート基が顔料および/または金属薄膜細片に存在するヒドロキシ基と反応してしまい、バインダー樹脂と顔料および/または金属薄膜細片が固着し、結果的に接着層(A)の成型性が悪くなり、高延伸倍率に成型したときに外観が悪くなってしまう。」 (イ)甲3記載事項 上記(ア)より、甲3には以下の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認める。 「接着層(A)および接着層(A)に積層される層(B)を含む少なくとも2層以上からなる加飾成型用フィルムであって、接着層(A)に含まれるイソシアネート基としてブロックイソシアネートを用いる点。」 カ 周知技術 (ア)甲5 甲5には、以下の記載がある。 「【請求項1】 アクリル樹脂フィルム(I)と、加飾層(II)と、熱可塑性樹脂フィルム又はシート(III)とを有する塗装代替用積層フィルム又はシートの製造方法であって、 ・・・ を特徴とする塗装代替用積層フィルム又はシートの製造方法。」 「【0100】また、塗装代替用積層フィルム又はシートとしては、図2に示すように、加飾層(II)の上に着色層(IV)を形成してから、アクリル樹脂フィルム(I)を積層したものであってもよい。特に加飾層(II)として金属調の印刷層や金属層を用いた場合、着色層(IV)を設けることにより、シルバーメタリック、ゴールドメタリック、ブルーメタリック等の種々の色相を有するメタリック外観とすることができるので好ましい。なお、図示は略すが、最終的に得られる塗装代替用積層フィルム又はシートの加飾性の観点から、加飾層(II)と熱可塑性樹脂フィルム又はシート(III)との間に着色層(IV)を形成することもできる。着色層(IV)の膜厚は必要に応じて適宜決めればよいが、通常1~100μm程度とする。」 (イ)甲6 甲6には、以下の記載がある。 「【請求項1】 透明又は半透明である第一のフィルム層(A)上に、光輝性成分を樹脂ワニス中に分散したインキを用いて印刷された光輝性印刷層(B)を設けた光輝性成型用積層シートであって、該光輝性印刷層が2層以上の印刷層から成り、該フィルム層を表面層とすることを特徴とする光輝性成型用積層シート。」 「【0024】本発明の光輝性成型用積層シートは高輝性印刷層の上、すなわち、光輝性印刷層(B)と第二のフィルム層(C)の間に、更に、着色剤含有インキの印刷層を積層することもできる。着色剤含有インキの印刷層を設けることにより、光輝性の意匠感と色彩による意匠感が組み合わされた優れた意匠性を実現することができる。着色剤含有量を変化させ且つ印刷層の膜厚を好ましくは0.05~50μmの範囲で変化させることにより、色彩の濃淡と深み感の変化を加味した優れた意匠感が得られる。 【0025】さらに、本発明の光輝性成型用積層シートは高輝性印刷層の下、すなわち、第1のフィルム層(A)と光輝性印刷層(B)の間に着色剤含有インキの印刷層を積層することもできる。着色剤含有インキの印刷層を設けることにより、光輝性の意匠感と色彩による意匠感が組み合わされた見る角度によって金属感と色調が変化する特徴のある意匠性を実現することができる。着色剤含有量を変化させ且つ印刷層の膜厚を好ましくは0.05~50μmの範囲で変化させることにより、色彩の濃淡と深み感の変化を加味した優れた意匠感が得られる。」 (ウ)甲7 甲7には、以下の記載がある。 「【請求項1】 (a)未硬化の紫外線もしくは電子線硬化型ハードコート層、(b)熱可塑性透明樹脂層及び(c)熱可塑性着色層を順次積層してなることを特徴とする成形用加飾フィルム。 ・・・ 【請求項3】 熱可塑性着色層(c)が光輝性材料を含有する請求項1又は2の加飾フィルム。 【請求項4】 熱可塑性着色層(c)が2層以上の多層からなる請求項1乃至3の加飾フィルム。」 「【0013】本発明における熱可塑性着色層(c)は、(b)層で使用したものと同様の透明樹脂層形成材料に、顔料、金属粉、マイカ粉、更にこれらの粉末の表面に金属や金属酸化物の薄膜を蒸着などの方法により形成させたもの等の着色材を分散したものからなる。屋外用途では(a)層を硬化させた後に(a)層表面より照射した波長190nm~400nmの光の透過率が10%以下、好ましくは5%以下となるように(c)層の着色材の種類や量または紫外線吸収剤等の配合量を調整することが好ましい。光線透過率を制御することによって耐光性が低い材料を(d)層や成形樹脂基材として用いても優れた屋外耐候性を有する成型品を得ることができる。また(c)層は多層であってもよく、それぞれの層に異なった着色材を含んだものを積層したものであっても、また(b)層に接する層に模様などを印刷した非連続的なパターンを含んだものであってもよい。」 (エ)甲8 甲8には、以下の記載がある。 「【請求項1】 接着層(A)、基材フィルム層(B)及びクリヤー塗膜層(C)を有する真空成形用3次元成型品加飾用積層フィルムであって、 更に、意匠層(D)を備えるものであるか、接着層(A)が意匠層としての機能を兼ね備えた接着層(A-d)であり、 接着層(A)は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、塩ビ・酢ビ樹脂、エポキシ樹脂及びブチラール樹脂からなる群から選択され、軟化温度が20~100℃である少なくとも1の接着樹脂を含有し、 前記接着樹脂が非晶性高分子である場合、重量平均分子量Mwが5000~150000であり、 クリヤー塗膜層(C)は、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物によって形成された層である ことを特徴とする真空成形用3次元成型品加飾用積層フィルム。」 「【0049】 このような観点から、上記クリヤー塗膜層(C)は、ポリウレタンアクリレート(C1)、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(C2)及び重合開始剤(C3)を含有する活性エネルギー線硬化型コーティング組成物によって形成されたものであることが好ましい。これによって、使用時の延伸が容易になされ、真空成形にも容易に対応できるため、3次元形状への追随が良好となる。また、ブロッキングを生じにくいものとすることができるという利点も有する。」 (オ)甲9 甲9には、以下の記載がある。 「【請求項1】 ポリウレタンアクリレート(B1)と、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)と、重合開始剤(B3)とを含有する塗料組成物であって、 上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、 2重結合当量:130~600g/eq 分子量Mw:4000~200000 ウレタン濃度:300~2000g/eq、 である3次元成型品加飾用積層フィルムのクリヤー塗膜層形成用塗料組成物。」 「【0023】 (クリヤー塗膜層(B)) 本発明で使用するクリヤー塗膜層(B)は、ポリウレタンアクリレート(B1)、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)及び重合開始剤(B3)を含有する活性エネルギー線硬化型コーティング組成物によって形成されたものである。これによって、使用時の延伸が容易になされ、深絞りにも容易に対応できるため、3次元形状への追随が良好となる。また、ブロッキングを生じにくいものとすることができるという利点も有する。」 (カ)周知技術について a 甲5~甲7の記載より以下の事項は周知技術(以下「周知技術1」という。)であると認める。 「加飾用積層フィルムにおいて、加飾するための層である意匠層を、複数の層から構成すること。」 b 甲8~甲9の記載より以下の事項は周知技術(以下「周知技術2」という。)であると認める。 「3次元成型品加飾用積層フィルムのクリヤー塗膜層を、ポリウレタンアクリレート、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー及び重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型コーティング組成物によって形成すること。」 (2)取消理由1(サポート要件) 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下検討する。 ア 発明の課題 本件特許の【0006】の記載から明らかなとおり、本件特許の請求項1に係る発明が解決しようとする課題は「外観及び強度に優れた3次元成型品加飾用積層フィルムを提供すること」である。 イ 発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か 本件特許の【0021】には、「上記イソシアネート化合物(C1)が0.05重量%より少ない場合は、加飾成形品の性能が満足されず、4.0重量%より多い場合は、成型時の応力による顔料の配向乱れが起こるため好ましくない。」と記載されている。当該記載では「イソシアネート化合物(C1)を0.05~4.0重量%を含む」という特定により、上記アで示した課題を解決し得ると説明するものである。そして、成形時の諸性質については、イソシアネート化合物(C1)がいかなるものであるのか、及び意匠層(C)に含まれる当該イソシアネート化合物(C1)以外の物質がいかなるものであるのか等と関連することは当業者にとって技術常識といえるところ、本件訂正により、意匠層(C)は、イソシアネート化合物(C1)が「ヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体」と、当該イソシアネート化合物(C1)以外の物質が、「水酸基価が1~100mgKOHである、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1の水酸基含有樹脂を含む溶剤系熱硬化樹脂組成物」と特定され、これにより特定された意匠層(C)を含む3次元成型品加飾用積層フィルムについて、本件特許の【0115】~【0135】の実施例の記載より、外観及び強度に優れたものであると判断できる。 以上により、本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 ウ 申立人の主張について 申立人は意見書にて、 (ア)「「R-271硬化剤(NPAU)」及び「スミジュールN-3400」なる物質が如何なるものであるかを、本件特許の明細書等および出願時の技術常識から理解できないゆえに、当然、それらの記載に基づいて、それらがHDIの単量体又は多量体に該当する化合物であることを導くことはできません。」(意見書第15頁第1行~同第5行) (イ)「仮に「R-271硬化剤(NPAU)」及び「スミジュールN-3400」がどのような物質か特定でき、仮に本件明細書の実施例が本件発明の課題を解決できるとしても、訂正後の請求項は明らかに課題を解決しない過大な範囲をもその権利範囲に含むものであり、サポート要件違反の取消事由が解消していないことは言うまでもありません。」(意見書第15頁第16行~同第20行) と主張する。 しかしながら、(ア)については、「R-271硬化剤(NPAU)」及び「スミジュールN-3400」は、いずれもヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体であることは明らかである(「R-271硬化剤(NPAU)」は特開平7-196829号公報の【0013】、「スミジュールN-3400」は特開平9-48964号公報の【0006】を参照。)。 また、(イ)については、本件特許の【0115】~【0135】の実施例の記載より、イソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体である「R-271硬化剤(NPAU)」及び「スミジュールN-3400」を含有することにより、外観及び強度に優れた3次元成型品加飾用積層フィルムが得られることが示されているものである。そして、本件発明においては、本件特許の【0021】に示されるとおり、「イソシアネート化合物(C1)を0.05~4.0重量%を含む」という特定により、上記アで示した課題を解決し得ると説明するものであり、ヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体として採用し得るすべての既製の製品について検証し列挙することまでは要しないものである。 以上、申立人の上記主張はいずれも採用することはできない。 エ 小括 したがって、請求項1及びこれを引用する請求項2~5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。 (3)取消理由4(進歩性) ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明の「基材フィルム」は層を形成することは明らかであるから、本件発明1の「基材フィルム層(A)」に相当する。 甲2発明の「保護層」及び「着色層」は、それぞれ本件発明1の「クリヤー塗膜層(B)」及び「意匠層(C)」に相当する。 甲2発明の「3次元装飾成型用フィルム」は、「基材フィルム、保護層、着色層を有する」ものであるから、本件発明1の「基材フィルム層(A)、クリヤー塗膜層(B)、意匠層(C)、接着層(D)を有する3次元成型品加飾用積層フィルム」と、「基材フィルム層(A)、クリヤー塗膜層(B)、意匠層(C)を有する3次元成型品加飾用積層フィルム」に限り一致する。 甲2発明の「バインダー樹脂の溶液(R2325クリアー(日本ビー・ケミカル社製、固形成分:36質量%))を含む溶剤系の塗料組成物A」は、樹脂組成物であることは明らかであり、同「90℃で10分間乾燥、硬化させて形成され」は、塗布・乾燥して硬化させることにより形成されたものにほかならない。そうすると、甲2発明の「バインダー樹脂の溶液(R2325クリアー(日本ビー・ケミカル社製、固形成分:36質量%))を含む溶剤系の塗料組成物Aを90℃で10分間乾燥、硬化させて形成した層」は、本件発明1の「イソシアネート化合物(C1)を0.05~4.0重量%を含み、水酸基価が1~100mgKOHである、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1の水酸基含有樹脂を含む溶剤系熱硬化樹脂組成物を塗布・乾燥後、熱硬化させることにより形成された層であ」ることと、「溶剤系樹脂組成物を塗布・乾燥して硬化させることにより形成された層であ」る限りにおいて一致する。 甲2発明の「着色層はさらに、アルミニウムフレーク(平均長径10.9μm、平均短径 0.2μm、固形成分:71質量%、溶媒成分(ミネラルスピリット):29質量%)を含有する」ことは、本件発明1の「意匠層(C)はさらに、扁平顔料を含有する」ことに相当する。 以上より、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「基材フィルム層(A)、クリヤー塗膜層(B)、意匠層(C)、を有する3次元成型品加飾用積層フィルムであって、前記意匠層(C)は、溶剤系樹脂組成物を塗布・乾燥して硬化させることにより形成された層であり、 前記意匠層(C)はさらに、扁平顔料を含有する3次元成型品加飾用積層フィルム。」 <相違点1> 「3次元成型品加飾用積層フィルム」について、本件発明1は「基材フィルム層(A)、クリヤー塗膜層(B)、意匠層(C)、接着層(D)を有する3次元成型品加飾用積層フィルム」であり、「接着層(D)は、接着剤を塗布・乾燥することによって形成したものである」のに対し、甲2発明の「基材フィルム、保護層、着色層を有する3次元装飾成型用フィルム」は、接着層を有しているか不明である点。 <相違点2> 「意匠層(C)」について、本件発明1が「イソシアネート化合物(C1)を0.05~4.0重量%を含み、水酸基価が1~100mgKOHである、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1の水酸基含有樹脂を含む溶剤系熱硬化樹脂組成物を塗布・乾燥後、熱硬化させることにより形成された層であり、前記イソシアネート化合物(C1)は、ヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体であ」るのに対して、甲2発明では、樹脂組成物の成分として「バインダー樹脂の溶液(R2325クリアー(日本ビー・ケミカル社製、固形成分:36質量%))」を含むものの、これがいかなるものであるか不明である点。 (イ)判断 事案に鑑み相違点2から検討する。 <相違点2>について 「バインダー樹脂の溶液(R2325クリアー(日本ビー・ケミカル社製、固形成分:36質量%))」を含む樹脂成分において、「ヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体であ」る「イソシアネート化合物(C1)」を含むことは、当業者が容易に想到し得たことではない。 ここで、引用文献3記載事項は、甲2発明と同様に「基材フィルム、保護層、着色層を有する3次元装飾成形用フィルム」であるところ、その「着色層」には、「塗料(R2325、日本ビー・ケミカル社製)」を含んでおり、これは甲2発明の「着色層」が含んでいる「バインダー樹脂の溶液(R2325クリアー(日本ビー・ケミカル社製、固形成分:36質量%))」と、その製品名の表記より同一のものと判断できるものである。そして、甲2発明に引用文献3記載事項を適用し、「着色層」を、「塗料(R2325、日本ビー・ケミカル社製)100質量部及びイソシアネート塗料(“タケネート”(登録商標)500、三井化学社製)1質量部を添加・混合したもの」からなることとすることまでは当業者であれば容易に想到し得たことである。 しかしながら、引用文献3記載事項において、ヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体は含有しておらず、甲2発明に引用文献3記載事項を適用したとしても、当該相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は得られない。また、ヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体を含有させる動機付けもない。 よって、甲2発明及び引用文献3記載事項に基いて、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。そして、このことは甲1記載事項及び引用文献4記載事項を参酌しても同様である。 (ウ)申立人の主張について 申立人は意見書にて 「しかしながら、下記(4-2)で述べる、甲2発明への甲3記載事項の適用を検討するまでもなく、以下、本件訂正発明1が甲2発明に対して進歩性を欠くことを詳述します。 この点、着色層におけるイソシアネート化合物に関し、そもそも甲第2号証の段落【0038】に、明細書の一般的記載として、「本発明における着色層の120℃での100%伸長時の応力を4MPa以下にするための方法としては特に限定されないが、ガラス転移温度が110℃以下の着色層となるよう、例えば、硬化剤としてイソシアネート架橋剤を使用する場合、該架橋剤の添加量を増加させることでガラス転移温度を高温化(添加量を減らすことで低温下)する方法や、また、前記バインダー樹脂から任意に複数の樹脂を選択してガラス転移温度を調整する方法などが挙げられる」(下線、太字は申立人による)と明確に記載されています。・・・従いまして、相違点2は甲第2号証の記載自体から示唆される事項に過ぎず、その効果も予測可能なものに過ぎません。」(意見書第22頁第32行~同第26頁第8行) と主張する。 しかしながら、申立人が主張するように、「着色層」にイソシアネート化合物を含むことについて、甲2の記載自体から容易に想到し得たとしても、当該イソシアネート化合物として「ヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体」とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 以上、申立人の上記主張は採用することはできない。 (エ)小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、引用文献3記載事項並びに甲1記載事項及び引用文献4記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。 したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2~5は、甲2発明、引用文献3記載事項並びに甲1記載事項及び引用文献4記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)まとめ 以上により、特許請求の範囲の請求項1~5の記載に、取消理由通知(決定の予告)で指摘した不備はなく、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 また、本件の請求項1~5に係る発明は、取消理由通知(決定の予告)で示した、本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由について 1 取消理由通知で採用しなかった申立理由の概要について 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由1(明確性要件) 本件特許は、特許請求の範囲の請求項1~5の記載が以下の点で不備のため、当該請求項に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 本件訂正前の請求項1の「前記意匠層(C)は、イソシアネート化合物(C1)を0.05~4.0重量%を含む、熱硬化樹脂組成物」という記載について、「0.05~4.0重量%」が意匠層全体に対する重量比率であるのか、熱硬化性樹脂組成物全体に対する重量比率であるのか不明確である。 本件訂正前の請求項1の「熱硬化樹脂組成物」という記載について、「熱で硬化する性質を持つ樹脂(一般的意味における熱硬化性樹脂)」であるのか、「熱で(主にイソシアネートによって)硬化した樹脂」であるのか不明確である。 (2)申立理由2(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の請求項1~5の記載が以下の点で不備のため、当該請求項に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 イソシアネート化合物の含有量がイソシアネート当量で記述されておらず、本件発明の課題を解決できるものとして把握することができない。 基材フィルム層(A)、クリヤー塗膜層(B)、意匠層(C)、接着層(D)の各層の順序が特定されておらず、本件発明の課題を解決できるものとして把握できる以外のものを含む。 「外観」に対応する評価項目が「(200℃延伸部)外観」のみであるところ、評価・測定方法が不明であり、当該評価項目で評価された実施例が、本件発明の課題を解決しているものとして把握することができない。 (3)申立理由3(実施可能要件) 本件特許は、明細書の記載が以下の点で不備のため、請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 イソシアネート化合物の「0.05~4.0重量%」が意匠層全体に対する重量比率であるのか、熱硬化性樹脂組成物全体に対する重量比率であるのか不明確であり、実施できない。 「熱硬化樹脂組成物」は「熱で硬化する性質を持つ樹脂(一般的意味における熱硬化性樹脂)」であるのか、「熱で(主にイソシアネートによって)硬化した樹脂」であるのか特定できず、実施できない。 イソシアネート化合物の含有量がイソシアネート当量で記述されておらず、基材フィルム層(A)、クリヤー塗膜層(B)、意匠層(C)及び接着層(D)の各層の順序が特定されておらず、さらに「(200℃延伸部)外観」の評価・測定方法が不明でありから、実施できない。 (4)申立理由4-1(甲1を引用例とする新規性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は甲1に記載の発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (5)申立理由4-2(甲1を主引用例とする進歩性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~15に記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (6)申立理由5(甲2を引用例とする新規性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は甲2に記載の発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (7)申立理由6-1(甲3を引用例とする新規性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は甲3に記載の発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (8)申立理由6-2(甲3を主引用例とする進歩性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲3に記載された発明及び甲1~2、甲4~15に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <引用文献等一覧> 甲1:特開2012-148426号公報(上記甲1) 甲2:特許第6036685号公報(同甲2) 甲3:特開2014-031003号公報(同甲3) 甲4:「旭化成アルミペーストの種類」、旭化成のウエブページ、旭化成株式会社、 [online]、検索日令和6年4月25日、インターネット<URL:https://www.asahi-kasei.co.jp/alumipaste/kind/index.html>(申立人の提示した甲第4号証) 甲4の2:「デザイングレードマップ」、旭化成のウエブページ、旭化成株式会社、 [online]、検索日令和6年6月21日、インターネット<URL:https://www.asahi-kasei.co.jp/alumipaste/kind/grademap.html>(同甲第4号証の2) 甲5:特開2003-340986号公報(上記甲5) 甲6:特開2002-187238号公報(同甲6) 甲7:特開2001-145981号公報(同甲7) 甲8:特開2017-007109号公報(同甲8) 甲9:特開2018-083950号公報(同甲9) 甲10:特開2019-65193号公報(申立人の提示した甲第10号証) 甲11:特開2012-072327号公報(同甲第11号証) 甲12:橋詰良樹、「アルミニウム顔料の最近の開発動向」、J.Jpn.Soc.Colour Mater.、83[4]、2010年、p.164-170(同甲第12号証) 甲13:「パウダー・ペースト製品、リーフィング型 アルミペースト○R(当審注:「○R」はRを丸で囲い、上付きとしたもの。)」、東洋アルミのウエブページ、東洋アルミニウム株式会社、 [online]、検索日令和6年4月25日、インターネット<URL:https://www.toyal.co.jp/products/pw_pt/product/leafing.html>(同甲第13号証) 甲14:「【熱硬化性樹脂とは?】用途、種類、構造、特徴、製造法、メーカーについて解説」、CrowdChemDataPlatform、株式会社CrowdChem、 [online]、検索日令和5年10月12日、インターネット<URL:https://crowdchem.net/column/679/>(同甲第14号証) 甲15:友井正男、「熱硬化性樹脂の基礎」、エレクトロニクス実装学会誌、Vol.4、No.6、2001年、p.537-542(同甲第15号証) 2 取消理由通知で採用しなかった申立理由についての当審における判断 (1)引用文献の記載及び引用発明について ア 甲1 (ア) 甲1の記載 甲1には、以下の記載がある。(下線は当審で付した。「・・・」は摘記の省略を示す。以下同様。) 「【請求項1】 接着層と、熱可塑性フィルム層と、ベース塗料から形成された加飾層とを含む加飾フィルムであって、 ・・・ ことを特徴とする、前記加飾フィルム。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 しかし、特許文献1に記載の着色被覆組成物によって形成されるフィルムにおいて、加飾層は数百%の延伸性には耐えうるが、下層又は上層との付着性に問題がある。また、特許文献2に記載のインサート成形品製造用積層フィルムでは、立体成形品の隙間部、袋部等に追従するために、数百%の延伸性が求められるが、特許文献2に記載のインサート成形品製造用積層フィルムでは、このような条件下で、ワレ、破れ等の不具合を生じることがあった。 従って、本発明は、外観、付着性、耐水性及び耐候性に優れた加飾フィルム、及び上記加飾フィルムが接着された加飾物品、並びに加飾フィルムの製法を提供することを課題とする。」 「【0029】 また、コポリマー(II)のシェル部分を形成する、複数の重合性不飽和モノマー(a3)は、得られるエマルション樹脂の水性媒体中における安定性を確保できるという観点から、その成分の少なくとも一部として、上記水酸基含有モノマーを含有することが、エマルション樹脂の水性媒体中における安定性向上のために好適である。」 「【0111】 [製造例3]アルミニウム顔料ペーストの製造 攪拌混合容器内において、アルミニウム顔料ペースト「GX-180A」(旭化成メタルズ社製、商品名、金属含有量74%)19部、2-エチル-1-ヘキサノール35部、リン酸基含有樹脂溶液(注1)8部、及び2-(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、アルミニウム顔料ペーストを得た。」 「【0114】 [製造例4]ベース塗料No.1の製造 容器に、製造例3で得られたアルミニウム顔料ペースト86.1部(アルミニウム顔料25PHR)及び顔料分散樹脂溶液(注3)40部(固形分20部)を加えて、1時間分散処理をし、アクリル系コアシェル型エマルション(A-1)157部(固形分55部)、及びウレタン樹脂エマルション(注4)89部(固形分25部)、UH-420(ADEKA社製、ウレタン会合型増粘剤)2部を添加し、1時間攪拌し、次いで、ジメチルエタノールアミンでpH8.0に調整し、そして固形分20%となるように脱イオン水を添加することにより、ベース塗料No.1を得た。」 「【0119】 [製造例6]ベース塗料No.3の製造 製造例4で得られたベース塗料No.1 100部(固形分20部)に、レタンWBエコベース硬化剤(関西ペイント製、商品名、イソシアネート系硬化剤)を0.64部(固形分0.36部)添加することにより、ベース塗料No.3を製造した。」 「【0129】 (注6)伸び率 加飾フィルム(ABS製成形基材板に成形圧着する前のフィルム)を、幅10mm×長さ10mmにカットし、オートグラフ(島津製作所製)で、温度80℃、引張り速度200mm/分の条件で塗膜の伸び率を測定した。 なお、伸び率は、塗膜が切れた際の、伸び長さの、元の長さに対する比率(%)を意味する。本発明の加飾フィルムが、活性エネルギー線照射する前に、300%以上の伸び率を有することが好ましい。」 「【0139】 [実施例5] 厚さ250μmのノバクリアSG-10(三菱化学製、商品名、無延伸PETフィルム)上に、ナイフコーターを用いて、製造例4で得られたベース塗料No.1を、乾燥膜厚が30μmとなるよう塗装し、80℃で30分間乾燥することにより、加飾層を形成した。上記加飾層の上に、ナイフコーターを用いて、製造例13で得られた活性エネルギー線硬化組成物No.1を、乾燥膜厚が40μmとなるように塗装し、80℃で30分間乾燥することにより、クリヤ層を形成した。次に、ノバクリアSG-10の、加飾層と反対側の面にEXT-57(東洋インキ製、接着層、アクリル系)をラミネート(温度:40℃,圧力:0.1MPa,速度:1m/min)し、加飾フィルムNo.8を得た。 【0140】 真空成形機(NGF、布施真空製)を用いて真空度10kPaまで減圧し、近赤外線ランプを用いて加飾フィルムNo.8を80℃まで加熱し、ABS製成形基材板に伸び率(面積比)400%となるように成形圧着し、次いで、メタルハライドランプ灯を用いて、加飾フィルム面に、1000mJ/cm2の照射量で活性エネルギー線を照射して、加飾物品No.8を得た。 【0141】 [実施例6~8、及び比較例4~6] 表2に示されるベース塗料を用いた以外は実施例5と同様にして、加飾物品No.9~No.14を形成した。加飾フィルムNo.8~No.14、及び加飾物品No.8~No.14を、上述の試験方法に従って評価した。結果を表2に示す。」 「【0142】 【表2】 「 [図:0001429982000001.jpg] 」 (イ) 甲1に記載されていると認められる事項 上記(ア)により、以下の事項は甲1に記載されていると認められる。 a 実施例7の「加飾フィルムNo.10」は、甲1で特許を受けようとする発明の実施例として記載されたものであり、【0008】で示された【発明が解決しようとする課題】として「立体成形品の隙間部、袋部等に追従するために、数百%の延伸性が求められるが、特許文献2に記載のインサート成形品製造用積層フィルムでは、このような条件下で、ワレ、破れ等の不具合を生じる」ことを解決しようとしているものであるから、実施例7の「加飾フィルムNo.10」は立体成形品に対して加飾するものであることは明らかである。 b 【0139】の「厚さ250μmのノバクリアSG-10(三菱化学製、商品名、無延伸PETフィルム)」の「ノバクリアSG-10(三菱化学製、商品名、無延伸PETフィルム)」は厚さ250μmを有するものであるから加飾フィルムNo.10が有する層を形成していることは明らかである。また、「EXT-57(東洋インキ製、接着層、アクリル系)」はラミネートされているものであるから、これも加飾フィルムNo.10が有する層を形成していることは明らかである。 c 【0142】の【表2】より、実施例7では、加飾フィルムNo.10及びベース塗料No.3が用いられているものであり、【0139】及び【0141】の記載より、実施例7では、厚さ250μmのノバクリアSG-10(三菱化学製、商品名、無延伸PETフィルム)上に、製造例6で得られたベース塗料No.3(【0119】)を塗装し加飾層を形成し、80℃で30分間乾燥する(【0139】)ことにより加飾フィルムNo.10を得たことは明らかである。 d 【0111】、【0114】及び【0119】の記載より、ベース塗料No.3にアルミニウム顔料ペースト「GX-180A」(旭化成メタルズ社製、商品名、金属含有量74%)が混合されていることは明らかである。 (ウ) 甲1発明 上記(ア)及び(イ)より、甲1には、特に【0139】~【0142】に記載の実施例7に着目すると、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「厚さ250μmのノバクリアSG-10(三菱化学製、商品名、無延伸PETフィルム)の層、クリヤ層、加飾層、EXT-57(東洋インキ製、接着層、アクリル系)の層を有する立体成形品に対する加飾フィルムNo.10であって、 前記加飾層は、レタンWBエコベース硬化剤(関西ペイント製、商品名、イソシアネート系硬化剤)を、アクリル系コアシェル型エマルション(A-1)157部(固形分55部)を含み脱イオン水を添加することにより得たベース塗料No.1(100部)に対して0.64部添加したベース塗料No.3により塗装し80℃で30分間乾燥することにより形成された層であり、 前記加飾層はさらに、アルミニウム顔料ペースト「GX-180A」(旭化成メタルズ社製、商品名、金属含有量74%)を含有し、 EXT-57(東洋インキ製、接着層、アクリル系)の層は、EXT-57をラミネート(温度:40℃,圧力:0.1MPa,速度:1m/min)したものである、立体成形品に対する加飾フィルムNo.10。」 イ 甲3 (ア) 甲3の記載 甲3には、以下の記載がある。 「【0001】 本発明は、自動車部品や電化製品、携帯端末などで使用される被加飾体に対して、フィルム加飾を施す際に用いる加飾成型用フィルムに関し、接着層と接着層に積層される層との密着性が良好で、かつ、成型性が良好である加飾成型用フィルムおよびそれを用いた加飾成型体の製造方法に関するものである。」 「【0007】 また、従来技術にあるような加飾成型用フィルムでは、接着層としてイソシアネート基と反応する樹脂を選択する必要があり、ポリオレフィン樹脂等のイソシアネート基と反応しない樹脂を使用する場合は、樹脂を特別に変性させる必要があった。さらに、接着層に使用する樹脂とイソシアネート基を完全に反応させる処方は低倍率における成型が想定されており、大型のものや凹凸のある複雑な形状の被加飾体に対しては成型性が悪く、適応が難しい。特に顔料が含まれている場合においては、成型性が悪いと高成型倍率部分で外観不良が発生するといった課題があった。」 「【0010】 本発明によれば、加飾成型用フィルムを構成する接着層(A)がポリオレフィン樹脂およびイソシアネート基を一定量含み、かつ接着層(A)と層(B)に含まれる樹脂がヒドロキシ基を有するときに接着層(A)と層(B)の密着性が良好である加飾成型用フィルムが得られることを見出した。従来の技術と異なり、接着層(A)を構成する樹脂がイソシアネート基と反応する樹脂である必要はなく、接着層(A)が一定量以上のイソシアネート基を含み、かつ層(B)に含まれる樹脂がヒドロキシ基を有する場合、(A)の樹脂に含まれるイソシアネート基と層(B)のヒドロキシ基が反応し、接着層(A)と層(B)の密着性が発現するものである。さらに、イソシアネート基として、ブロック変性体でブロック化されたブロックイソシアネートを使用することで密着性と成型性を両立することができる。この場合、接着層(A)を塗工・乾燥により形成するときの温度をブロックイソシアネートのブロック体が脱離するよりも低い温度で乾燥し、成型のときの温度をブロックイソシアネートのブロック変性体が脱離するよりも高い温度で成型することで、成型前はイソシアネート基が反応していないので、成型性が良好であり、成型の際にイソシアネート基が反応し接着層(A)と層(B)の密着性が良好な加飾成型体を得ることができる。」 「【0042】 本発明にかかる加飾成型体の製造方法としては、加飾成型用フィルムを、被加飾体に貼り付ける際に真空成型法や圧空成型法など3次元形状の被加飾体に加飾成型用フィルムを貼り付け可能な、既知の熱成型方法を適用することが好ましい。接着層(A)に含まれるイソシアネート基がブロック化されていないものであれば、加熱成型の温度として、それぞれの膜が十分に成型できる温度まで加熱し、成型することが好ましい。イソシアネート基がブロックイソシアネートである場合は、加熱成型するときにはブロック体が脱離する温度で行うことが好ましい。例えば、活性メチレンブロック、オキシムブロック、カプロラクタムブロックを用いた場合は、それぞれ110℃以上、140℃以上、180℃以上で加熱成型することが好ましい。」 「【0053】 (実施例3) 成型用フィルム1として、厚さ100μmの未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、FL10)と厚さ40μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、SC)とをウレタン系接着剤を用いてドライラミネートしたものを用いた。基材フィルムのポリプロピレンフィルム側に、ポリウレタン樹脂溶液U1を乾燥後の厚さが40μmとなるようアプリケーター法により塗布した後、80℃で10分間乾燥し、保護層を形成した。次いで、保護層上に着色層を形成するためバインダー塗料(R2325、日本ビー・ケミカル社製)100質量部にアルミペースト(0300M、東洋アルミ社製)をバインダー塗料の固形分に対する顔料濃度が15質量部となるように添加・混合したものを、乾燥後の厚さが40μmとなるようアプリケーター法により塗布した後、80℃で10分間乾燥し、着色層を形成した。次いで、着色層上に、ポリオレフィン塗料(DX-526、東洋紡社製)100質量部に対してイソシアネート塗料(TPA-100、旭化成ケミカルズ社製)0.5質量部を添加・混合したものを、乾燥後の厚さが20μmとなるようアプリケーター法により塗布した後、80℃で10分間乾燥し、接着層を形成した。得られた加飾成型用フィルムを110℃に加熱した状態で被加飾体に貼り付けて加飾成型をした。加飾成型体を真空成型機から取りだし、基材フィルムを剥離して加飾成型体を作製した。得られた加飾成型体の評価結果を表1に示す。」 (イ)甲3発明 上記(ア)に示した【0042】の「本発明にかかる加飾成型体の製造方法としては、加飾成型用フィルムを、被加飾体に貼り付ける際に真空成型法や圧空成型法など3次元形状の被加飾体に加飾成型用フィルムを貼り付け可能な、既知の熱成型方法を適用することが好ましい。」という記載より、被加飾体は3次元形状であることが明らかであるから、加飾成型用フィルムは、3次元加飾成型用フィルムであることが明らかである。 よって、上記(ア)より、特に【0053】の実施例3に着目すると、甲3には以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。 「基材フィルム、保護層、着色層、接着層を有する3次元加飾成型用フィルムであって、前記着色層は、バインダー塗料(R2325、日本ビー・ケミカル社製)100重量部にアルミペースト(0300M、東洋アルミ社製)を添加・混合したものを、80℃で10分間乾燥し形成したものであり、 接着層は、ポリオレフィン塗料(DX-526、東洋紡社製)100質量部に対してイソシアネート塗料(TPA-100、旭化成ケミカルズ社製)0.5質量部を添加・混合したものを塗布・乾燥することによって形成したものである 3次元加飾成型用フィルム。」 ウ 甲4 甲4には、以下の記載がある。 「 [図:0001429982000002.jpg] 」 エ 甲4-2の記載 甲4-2には、以下の記載がある。 「 [図:0001429982000003.jpg] 」 オ 甲10 甲10には、以下の記載がある。 「【請求項1】 ポリウレタンアクリレートを含む硬化性樹脂組成物であって)、 (1)側鎖にラジカル重合性基を有するポリウレタンアクリレートA、 (2)ラジカル重合性基を有するアクリル系ポリマーB1、及び (3)ラジカル重合性基を有し、かつ、前記アクリル系ポリマーB1のラジカル重合性基当量よりも300g/mol以上大きいラジカル重合性基当量を有するアクリル系ポリマーB2 を含むことを特徴とするウレタンアクリレート系硬化性樹脂組成物。」 「【請求項6】 活性エネルギー線硬化性である、請求項1~5のいずれかに記載のウレタンアクリレート系硬化性樹脂組成物。 【請求項7】 さらに有機溶剤を含み、性状が液状である、請求項1~6のいずれかに記載のウレタンアクリレート系硬化性樹脂組成物。」 「【0049】 上記原料中には、必要に応じて重合開始剤(光重合開始剤)、重合調整剤等の公知の添加剤を配合することもできる。」 カ 甲11 甲11には、以下の記載がある。 「【請求項1】 少なくとも(A)1分子中に2個の水酸基と1個のラジカル重合性基を有する化合物と、(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物が連結された分子構造を有するラジカル重合性基含有ウレタンプレポリマーであって、(A)成分由来の側鎖ラジカル重合性基当量が1500g/mol以下であるラジカル重合性基含有ウレタンプレポリマー。」 「【0006】 一部のウレタンアクリレート樹脂などの常温で粘着性のない硬化型樹脂を用いれば、巻き取りまたは積み重ね時にブロッキング等の不都合は起こらない。さらに成形時には架橋をしていないためクラックなどの外観不良も起こさない。しかしながら、この方法を用いた場合では硬化後の表面硬度を十分に高めることはできず、耐擦傷性に劣る場合があった。理由は以下のとおりである。一般にウレタンアクリレート樹脂は水酸基以外に官能基を持たないポリオールとイソシアネート基以外に官能基を持たないポリイソシアネートの反応で得たウレタンプレポリマーの両末端にアクリレート基含有の化合物を反応させて得られるのでラジカル重合性基が導入できるのは末端に限られ、1分子あたりのラジカル重合性官能基数には限界がある。一方、未硬化でタックフリーにする場合は必然的に分子量を高める必要があるためラジカル重合性官能基密度が低下する。このため未硬化で十分にタックフリーでかつ、硬化後に十分高硬度のウレタンアクリレートは得ることは困難であるし、硬化後も未硬化の熱可塑性重合体の存在のため硬度を十分高くすることは著しく困難であった。」 「【0011】 本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、前記問題点(1)~(3)の全てを解決できるハードコート剤に好適に用いることが出来るウレタンプレポリマー、ウレタン(メタ)アクリレートおよびこれを用いた光硬化性樹脂組成物、及びこれを用いたハードコートフィルムや成形品を提供することを目的とする。」 キ 甲12 甲12には、以下の記載がある。 「 [図:0001429982000004.jpg] 」(第165ページ右欄下から18行~末行) 「 [図:0001429982000005.jpg] 」 (第166ページ左上欄) ク 甲13 甲13には、以下の記載がある。 「 [図:0001429982000006.jpg] 」 「 [図:0001429982000007.jpg] 」 ケ 甲14 甲14には、以下の記載がある。 「 [図:0001429982000008.jpg] 」 「 [図:0001429982000009.jpg] 」 コ 甲15 甲15には、以下の記載がある。 「 [図:0001429982000010.jpg] 」 (第537ページ左欄第2~第7行) (2)申立理由1(明確性要件)について 請求項に係る発明が明確に把握されるためには、請求項に係る発明の範囲が明確であること、すなわち、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていることが必要である。 ここで、本件特許の請求項1の、 「基材フィルム層(A)、クリヤー塗膜層(B)、意匠層(C)、接着層(D)を有する3次元成型品加飾用積層フィルムであって、前記意匠層(C)は、イソシアネート化合物(C1)を0.05~4.0重量%を含み、水酸基価が1~100mgKOHである、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1の水酸基含有樹脂を含む溶剤系熱硬化樹脂組成物を塗布・乾燥後、熱硬化させることにより形成された層であり、 前記イソシアネート化合物(C1)は、ヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体であり、 前記意匠層(C)はさらに、扁平顔料を含有し、 接着層(D)は、接着剤を塗布・乾燥することによって形成したものである ことを特徴とする3次元成型品加飾用積層フィルム。」という記載は、3次元成型品加飾用積層フィルムの構成を規定するものとして明確であり、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるものである。 申立人は、本件訂正前の請求項1の「前記意匠層(C)は、イソシアネート化合物(C1)を0.05~4.0重量%を含む、熱硬化樹脂組成物」という記載について、「0.05~4.0重量%」が意匠層全体に対する重量比率であるのか、熱硬化性樹脂組成物全体に対する重量比率であるのか不明確と主張するが、請求項1の記載より溶剤系熱硬化樹脂組成物全体に対する重量比率であることは明らかである。これは【0020】の「本発明の意匠層(C)はイソシアネート化合物(C1)を意匠層全体の重量に対して0.05重量%~4.0重量%含有する熱硬化性樹脂組成物によって形成されたものである。」という記載、及び【0134】の【表1】の記載にも符合する。 また申立人は、本件訂正前の請求項1の「熱硬化樹脂組成物」という記載について、「熱で硬化する性質を持つ樹脂(一般的意味における熱硬化性樹脂)」であるのか、「熱で(主にイソシアネートによって)硬化した樹脂」であるのか不明確であると主張するが、請求項1の記載より「熱で硬化する性質を持つ樹脂(一般的意味における熱硬化性樹脂)」であることは明らかである。請求項1の記載より、「水酸基含有樹脂」は必須の構成であり、当該「水酸基含有樹脂」が熱硬化するものである。これは、【0026】及び【0029】の記載に対し矛盾を有するものではない。 よって、申立理由1は理由がない。 (3)申立理由2(サポート要件)について 上記第4の2(2)に説示したとおり、本件特許は、特許請求の範囲の記載に不備はないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 申立人は、イソシアネート化合物の含有量がイソシアネート当量で記述されておらず、本件発明の課題を解決できるものとして把握することができないと主張するが、本件訂正により、「水酸基価が1~100mgKOHである、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1の水酸基含有樹脂」と限定された。イソシアネート化合物と結合する水酸基含有樹脂の水酸基価を特定することにより、本件発明の課題を解決できるものとして把握することができるものである。 また申立人は基材フィルム層(A)、クリヤー塗膜層(B)、意匠層(C)、接着層(D)の各層の順序が特定されておらず、本件発明の課題を解決できるものとして把握できる以外のものを含むと主張するが、【0014】~【0019】の記載より、特定の積層順のもののみについて記載されているわけではないことは明らかであり、積層の順序が特定されていなくても、本件発明の課題を解決できるものとして把握することができるものである。 さらに申立人は、「外観」に対応する評価項目が「(200℃延伸部)外観」のみであるところ、評価・測定方法が不明であり、当該評価項目で評価された実施例が、本件発明の課題を解決しているものとして把握することができないと主張するが、「(200℃延伸部)外観」が、「外観」に対応する評価項目であることは明らかであり、当該「(200℃延伸部)外観」で評価された実施例は、本件発明の課題を解決しているものとして把握することができる。 よって、申立理由2は理由がない。 (4)申立理由3(実施可能要件)について 物の発明について実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用をすることができる程度のものでなければならない。以下検討する。 本件発明が、本件特許の請求項1に記載のとおりのものであるところ、【0115】~【0135】には、実施例が示され、本件発明の発明特定事項を有する実施例1~7が【0006】の記載から把握できる、「外観及び強度に優れた3次元成型品加飾用積層フィルムを提供すること」という、本件特許に係る発明が解決しようとする課題を解決するものとして記載されている。 これらの記載を参照することにより、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施できるものである。 申立人は、イソシアネート化合物の「0.05~4.0重量%」が意匠層全体に対する重量比率であるのか、熱硬化性樹脂組成物全体に対する重量比率であるのか不明確であり、また、「熱硬化樹脂組成物」は「熱で硬化する性質を持つ樹脂(一般的意味における熱硬化性樹脂)」であるのか、「熱で(主にイソシアネートによって)硬化した樹脂」であるのか特定できず、実施できないと主張するが、上記(2)で説示したとおり、申立人の主張する事項はいずれも明確に把握でき、当業者であれば、請求項に係る発明を実施することができるものである。 さらに、申立人は、イソシアネート化合物の含有量がイソシアネート当量で記述されておらず、基材フィルム層(A)、クリヤー塗膜層(B)、意匠層(C)及び接着層(D)の各層の順序が特定されておらず、さらに「(200℃延伸部)外観」の評価・測定方法が不明であるから、実施できないと主張するが、上記(3)で説示したとおり、申立人の主張する事項にはいずれも不備は存在せず、当業者であれば、請求項に係る発明を実施することができるものである。 よって、申立理由3は理由がない。 (5)申立理由4-1、4-2(甲1を引用例とする新規性、甲1を主引用例とする進歩性)について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「厚さ250μmのノバクリアSG-10(三菱化学製、商品名、無延伸PETフィルム)の層」は、甲1の【0139】より、積層フィルムの製造時に、各層を形成するための基材として使用されているものであることは明らかであるから、本件発明1の「基材フィルム層(A)」に相当する。 甲1発明の「クリヤ層」、「加飾層」、「EXT-57(東洋インキ製、接着層、アクリル系)の層」及び「立体成形品に対する加飾フィルムNo.10」は、それぞれ本件発明1の「クリヤー塗膜層(B)」、「意匠層(C)」、「接着層(D)」及び「3次元成型品加飾用積層フィルム」に相当する。 甲1発明の「レタンWBエコベース硬化剤(関西ペイント製、商品名、イソシアネート系硬化剤)」及び「塗装し80℃で30分間乾燥することにより形成」することは、本件発明1の「イソシアネート化合物(C1)」及び「塗布・乾燥後、熱硬化させることにより形成」することに相当し、甲1発明の「ベース塗料No.3」は、「塗装し80℃で30分間乾燥することにより」「加飾層」を形成することから熱硬化性であることが明らかであるから、本件発明1の「熱硬化樹脂組成物」に相当する。そうすると、甲1発明の「前記加飾層は、レタンWBエコベース硬化剤(関西ペイント製、商品名、イソシアネート系硬化剤)を、アクリル系コアシェル型エマルション(A-1)157部(固形分55部)を含み脱イオン水を添加することにより得たベース塗料No.1(100部)に対して0.64部添加したベース塗料No.3により塗装し80℃で30分間乾燥することにより形成された層であ」ることは、本件発明1の「前記意匠層(C)は、イソシアネート化合物(C1)を0.05~4.0重量%を含み、水酸基価が1~100mgKOHである、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1の水酸基含有樹脂を含む溶剤系熱硬化樹脂組成物を塗布・乾燥後、熱硬化させることにより形成された層であ」ることと、「前記意匠層(C)は、イソシアネート化合物(C1)を含む熱硬化樹脂組成物を塗布・乾燥後、熱硬化させることにより形成された層であ」る限りにおいて一致する。 そして甲1発明の「前記加飾層はさらに、アルミニウム顔料ペースト「GX-180A」(旭化成メタルズ社製、商品名、金属含有量74%)を含有する」ことは、「アルミニウム顔料ペースト「GX-180A」(旭化成メタルズ社製、商品名、金属含有量74%)」が顔料であることから、本件発明1の「前記意匠層(C)はさらに、扁平顔料を含有する」ことと、「前記意匠層(C)はさらに、顔料を含有する」限りにおいて一致する。 さらに甲1発明の「EXT-57(東洋インキ製、接着層、アクリル系)の層は、EXT-57をラミネート(温度:40℃,圧力:0.1MPa,速度:1m/min)したものである」ことは、本件発明1の「接着層(D)は、接着剤を塗布・乾燥することによって形成したものである」ことに相当する。 以上より、本件発明1と甲1発明とは以下の一致点2で一致し、少なくとも相違点3で相違する。 <一致点2> 「基材フィルム層(A)、クリヤー塗膜層(B)、意匠層(C)、接着層(D)を有する3次元成型品加飾用積層フィルムであって、前記意匠層(C)は、イソシアネート化合物(C1)を含む熱硬化樹脂組成物を塗布・乾燥後、熱硬化させることにより形成された層であり、 前記意匠層(C)はさらに、顔料を含有し、 接着層(D)は、接着剤を塗布・乾燥することによって形成したものである3次元成型品加飾用積層フィルム。」 <相違点3> 「意匠層(C)」を形成する「熱硬化樹脂組成物」が、本件発明1が「イソシアネート化合物(C1)を0.05~4.0重量%を含み、水酸基価が1~100mgKOHである、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1の水酸基含有樹脂を含む溶剤系熱硬化樹脂組成物」であるのに対し、甲1発明では、「レタンWBエコベース硬化剤(関西ペイント製、商品名、イソシアネート系硬化剤)を、アクリル系コアシェル型エマルション(A-1)157部(固形分55部)を含み脱イオン水を添加することにより得たベース塗料No.1(100部)に対して0.64部添加したベース塗料No.3」である点。 (イ)判断 <相違点3>について 相違点3は実質的な相違点である。 そして、甲1発明の「加飾層」は「アクリル系コアシェル型エマルション(A-1)157部(固形分55部)を含み脱イオン水を添加することにより得たベース塗料No.1(100部)」を含むものであるが、甲1の【0029】には、「また、コポリマー(II)のシェル部分を形成する、複数の重合性不飽和モノマー(a3)は、得られるエマルション樹脂の水性媒体中における安定性を確保できるという観点から、その成分の少なくとも一部として、上記水酸基含有モノマーを含有することが、エマルション樹脂の水性媒体中における安定性向上のために好適である。」と記載されている。ここで、甲1発明の「加飾層」に含まれる「アクリル系コアシェル型エマルション(A-1)」をコアシェル型エマルションとして安定して存在させること、及び【0029】の記載をふまえると、甲1発明の「ベース塗料No.3」は溶剤系の熱硬化樹脂組成物ではなく、さらに熱硬化樹脂組成物とすることは、当業者が容易に想到し得たことでもない。そして、このことは甲2~甲15の記載を参酌しても同様である。 (ウ)小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではない。 また、本件発明1は、甲1発明及び甲2~15に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~5について 本件発明2~5は、直接的又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。 したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2~5は、甲1発明ではなく、甲1発明及び甲2~15に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)申立理由5(甲2を引用例とする新規性)について ア 本件発明1について 本件発明1と甲2発明を対比すると、上記第4の2(2)ア(ア)で示したとおり、<一致点1>で相違し、<相違点1>及び<相違点2>で相違する。 そして、上記第4の2(2)ア(イ)で検討したとおり、<相違点2>は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は甲2発明ではない。 イ 本件発明2~5について 本件発明2~5は、直接的又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。 したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2~5は、甲2発明ではない。 (6)申立理由6-1、6-2(甲3を引用例とする新規性、甲3を主引用例とする進歩性)について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲3発明を対比する。 甲3発明の「基材フィルム」は層を形成することは明らかであるから、本件発明1の「基材フィルム層(A)」に相当する。 甲3発明の「保護層」、「着色層」、「接着層」及び「3次元加飾成型用フィルム」は、それぞれ本件発明1の「クリヤー塗膜層(B)」、「意匠層(C)」、「接着層(D)」及び「3次元成型品加飾用積層フィルム」に相当する。 甲3発明の「バインダー塗料(R2325、日本ビー・ケミカル社製)100重量部にアルミペースト(0300M、東洋アルミ社製)を添加・混合したもの」は、樹脂組成物であることは明らかであり、同「80℃で10分間乾燥し形成した」ものは、塗布・乾燥して硬化させることにより形成されたものにほかならない。そうすると、甲3発明の「着色層は、バインダー塗料(R2325、日本ビー・ケミカル社製)100重量部にアルミペースト(0300M、東洋アルミ社製)を添加・混合したものを、80℃で10分間乾燥し形成したものであ」ることは、本件発明1の「イソシアネート化合物(C1)を0.05~4.0重量%を含み、水酸基価が1~100mgKOHである、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1の水酸基含有樹脂を含む溶剤系熱硬化樹脂組成物を塗布・乾燥後、熱硬化させることにより形成された層であ」ることと、「樹脂組成物を塗布・乾燥して硬化させることにより形成された層であ」る限りにおいて一致する。 甲3発明の「アルミペースト(0300M、東洋アルミ社製)を添加・混合」することは、本件発明1の「顔料を含有する」ことに相当する。 甲3発明の「接着層は、ポリオレフィン塗料(DX-526、東洋紡社製)100質量部に対してイソシアネート塗料(TPA-100、旭化成ケミカルズ社製)0.5質量部を添加・混合したものを塗布・乾燥することによって形成したものである」ことは、本件発明1の「接着層(D)は、接着剤を塗布・乾燥することによって形成したものである」ことに相当する。 以上より、本件発明1と甲3発明とは以下の一致点3で一致し、少なくとも相違点4で相違する。 <一致点3> 「基材フィルム層(A)、クリヤー塗膜層(B)、意匠層(C)、接着層(D)を有する3次元成型品加飾用積層フィルムであって、前記意匠層(C)は、樹脂組成物を塗布・乾燥して硬化させることにより形成された層であり、 前記意匠層(C)はさらに、顔料を含有し、 接着層(D)は、接着剤を塗布・乾燥することによって形成したものである 3次元成型品加飾用積層フィルム。」 <相違点4> 「意匠層(C)」について、本件発明1が「イソシアネート化合物(C1)を0.05~4.0重量%を含み、水酸基価が1~100mgKOHである、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1の水酸基含有樹脂を含む溶剤系熱硬化樹脂組成物を塗布・乾燥後、熱硬化させることにより形成された層であり、前記イソシアネート化合物(C1)は、ヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体であ」るのに対して、甲3発明では、樹脂組成物の成分として「バインダー樹脂の溶液(R2325クリアー(日本ビー・ケミカル社製、固形成分:36質量%))」を含むものの、これがいかなるものであるか不明である点。 (イ)判断 <相違点4>について 「バインダー樹脂の溶液(R2325クリアー(日本ビー・ケミカル社製、固形成分:36質量%))」を含む樹脂成分において、「ヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体であ」る「イソシアネート化合物(C1)」を含むことは、当業者が容易に想到し得たことではない。 ここで、引用文献3記載事項は、甲3発明と同様に「3次元装飾成形用フィルム」であり、甲3発明と同様に「基材フィルム、保護層、着色層を有する」ものであり、そして、「着色層」には、「塗料(R2325、日本ビー・ケミカル社製)」を含んでおり、これは甲3発明の「着色層」が含んでいる「バインダー樹脂の溶液(R2325クリアー(日本ビー・ケミカル社製、固形成分:36質量%))」と、その製品名の表記より同一のものと判断できるものであるから、甲3発明に引用文献3記載事項を適用し、「着色層」を、「塗料(R2325、日本ビー・ケミカル社製)100質量部及びイソシアネート塗料(“タケネート”(登録商標)500、三井化学社製)1質量部を添加・混合したもの」からなることとすることまでは当業者であれば容易に想到し得たことである。 しかしながら、引用文献3記載事項において、ヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体は含有しておらず、甲3発明に引用文献3記載事項を適用したとしても、当該相違点4に係る本件発明1の発明特定事項は得られない。また、ヘキサメチレンジイソシアネートの単量体又はその多量体を含有させる動機付けもない。 よって、甲3発明に基いて、相違点4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。そして、このことは甲1~2、甲4~甲15の記載を参酌しても同様である。 (ウ)小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明でない。 また、本件発明1は、甲3発明及び甲1~2、甲4~15に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~5について 本件発明2~5は、直接的又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。 したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2~5は、甲3発明ではなく、甲3発明及び甲1~2、甲4~15に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (9)まとめ 以上により、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5の記載に、申立人が主張する不備はなく、本件特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。そして、本件特許の発明の詳細な説明の記載に、申立人が主張する不備はなく、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 また、本件の請求項1~5に係る発明は、申立人が提示した、本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、当該請求項に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。 さらに、本件の請求項1~5に係る発明は、申立人が提示した、本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、当該請求項に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第6 むすび 以上のとおり、請求項1~5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700403

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