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特許異議申立

2024-700390

小麦粉食品用の品質改良剤

審判番号
2024-700390
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-126026
登録番号
7370181
請求日
2024年04月23日
審決日
2024年08月19日
公報発行日
2024年09月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】グリコ栄養食品株式会社
  • 【権利者代理人】田中 順也
  • 【権利者代理人】水谷 馨也
  • 【異議申立人】石川 琢也
審判長/審判官
  • 審判長 植前 充司
  • 審判官 天野 宏樹
  • 審判官 淺野 美奈
分類
P1651.113-Y (A21D) / P1651.121-Y (A21D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7370181号発明「小麦粉食品用の品質改良剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7370181号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7370181号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、令和元年7月5日の出願であって、令和5年10月19日にその特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、令和6年4月23日に特許異議申立人石川琢也(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~12)がなされたものである。 第2 本件発明について 本件特許の請求項1~12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明12」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。 「[請求項1] 後記する伸展性試験においてドウにした際の最大伸長距離が44mm以上になる粉末状小麦タンパク質A、及び後記する伸展性試験においてドウにした際の最大伸長距離が39mm以下になる粉末状小麦タンパク質Bを、粉末状小麦タンパク質A:粉末状小麦タンパク質Bが15:85~85:15の重量比で含む、小麦粉食品(但し、イースト発酵食品を除く)用の品質改良剤。 <伸展性試験> 先ず、測定対象となる粉末状小麦タンパク質100gに対して、質量比で0.01倍の塩化ナトリウム及び1.5倍のイオン交換水を加え、10分間ミキサーにて混練し、ドウを形成する。次いで、得られたドウから長さ53mm、高さ5mm、幅5mmの試験片を作成し、25℃にて30分間静置する。その後、テクスチャーアナライザーを用いて、25℃で引張速度3.30mm/秒、つかみ具間距離180mm、トリガー荷重5.0gの条件にて引張試験を行い、試験片が破断した際のつかみ具の移動距離を最大伸長距離として求める。 [請求項2] 粉末状小麦タンパク質Aにおける前記最大伸長距離が44~150mmである、請求項1に記載の品質改良剤。 [請求項3] 粉末状小麦タンパク質Bにおける前記最大伸長距離が10mm~39mmである、請求項1又は2に記載の品質改良剤。 [請求項4] 低糖質小麦粉食品(但し、イースト発酵食品を除く)に対して使用される、請求項1~3のいずれかに記載の品質改良剤。 [請求項5] 低糖質小麦粉食品(但し、イースト発酵食品を除く)が、難消化性素材を含む、請求項4に記載の品質改良剤。 [請求項6] 難消化性素材が、レジスタントスターチ、難消化性デキストリン、イヌリン、小麦ふすま粉、イヌリン、全粒粉、大豆粉、オーツ麦粉、及びこんにゃく粉よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の品質改良剤。 [請求項7] 小麦粉食品(但し、イースト発酵食品を除く)が、麺類又は焼き菓子類である、請求項1~6のいずれかに記載の品質改良剤。 [請求項8] 請求項1~7のいずれかに記載の品質改良剤、及び小麦粉を含む、小麦粉食品(但し、イースト発酵食品を除く)用のミックス粉。 [請求項9] 更に難消化性素材を含む、請求項8に記載の小麦粉食品(但しイースト発酵食品を除く)用のミックス粉。 [請求項10] 請求項1~7のいずれかに記載の品質改良剤、及び小麦粉を含む、小麦粉食品(但し、イースト発酵食品を除く)用の生地。 [請求項11] 更に難消化性素材を含む、請求項10に記載の小麦粉食品(但し、イースト発酵食品を除く)用の生地。 [請求項12] 請求項10又は11に記載の小麦粉食品(但し、イースト発酵食品を除く)用の生地により調製される、小麦粉食品(但し、イースト発酵食品を除く)。」 第3 特許異議申立理由の概要 申立人は、証拠方法として下記2.に示す甲第1号証~甲第7号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲7」のようにいう。)を提出し、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。なお、特許異議申立理由の番号は当審が仮に付与した。 1.特許異議申立理由 (1)理由1-1(甲1に基づく新規性欠如) 本件発明1~7、10~12は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)理由1-2(甲4に基づく新規性欠如) 本件発明1~3、7、8、10、12は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如) 本件発明1~12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (4)理由2-2(甲4に基づく進歩性欠如) 本件発明1~12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲4に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2.証拠方法 甲1:特開2019-110864号公報 甲2:石川琢也,実験成績証明書,2024年4月4日 甲3:国際公開第2011/152382号 甲4:特開2002-354998号公報 甲5:株式会社小川製粉パンフレット,"Yamato 小麦でん粉&小麦たん白O-グル",発行日不明,株式会社小川製粉 甲6:木下製粉株式会社HP,"#644 製粉工場見学@小川製粉",[online],2018年11月28日,木下製粉株式会社,[2024年4月1日検索],インターネット<URL:https://www.flour.co.jp/news/article/644/> 甲7:株式会社きらやか銀行,"株式会社小川製粉の私募債の受託について",[online],平成26年9月26日,株式会社きらやか銀行,[2024年4月1日検索],インターネット<URL:https://www.kirayaka.co.jp/cms/view.php?no=20150926000002> なお、証拠の表示は概ね申立人に従った。 第4 当審の判断 当審は、申立人が申し立てたいずれの特許異議申立理由によっても、本件発明1~12についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおりである。 1.理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)及び理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如)について (1)甲1に記載された事項 甲1には以下の事項が記載されている。 (1-1)「[請求項1] 低糖質生麺類であって、 30質量%から90質量%の穀粉、および10質量%から70質量%の難消化性デンプン類からなる原料粉と、 該原料粉100質量部に対して0.5質量部から10質量部の膨脹剤と、 該原料粉100質量部に対して5質量部から30質量部の活性グルテンと を含有する、低糖質生麺類。」 (1-2)「[0017] 本明細書中に用いられる用語「低糖質生麺類」は、難消化性デンプン類および/または活性グルテンが添加された生麺類であって、それにより生麺類全体に含まれる糖質の含量が未添加の場合と比較して低減された生麺類を包含して言う。」 (1-3)「[0033] 本発明における活性グルテンは、本発明の低糖質生麺類における「つなぎ」として効果的に作用し得る。活性グルテンは、生グルテンを乾燥させて得られたものであり、好ましくは粉末または顆粒状に加工されたグルテンである。また、活性グルテンは、このような生グルテンに所定の改質処理を施して乾燥させた改質グルテンを含有していてもよい。」 (1-4)「[0041] 本発明において、活性グルテンはまた、上記原料粉に含まれる難消化性デンプン類に対して所定の割合で含有されていることが好ましい。本発明の低糖質生麺類に含有される活性グルテンの量は、上記難消化性デンプン類の質量に対して、好ましくは0.071倍~3倍、より好ましくは0.144倍~1.5倍である。難消化性デンプン類に対して、活性グルテンがこのような範囲内で含有されていることにより、本発明の低糖質生麺類では、活性グルテンが上記原料粉と難消化性デンプン類との「つなぎ」の1種として効果的に機能し得る。そして、このような低糖質生麺類を調理後喫食した際には、不快な食感から開放されるだけでなく、むしろ歩留まりが向上し、かつモチモチとした弾力ある食感を得ることができる。」 (1-5)「[0049] 原料混合物は、上記穀粉および難消化性デンプン類からなる原料粉、膨脹剤、および活性グルテンと、必要に応じて添加される他の成分とを予め混合したものである。原料混合物は、例えば、穀粉と難消化性デンプン類との略均一になるまで混合して原料粉を調製し、このようにして得られた原料粉を、膨脹剤、活性グルテン、他の成分等をさらに略均一になるまで混合したものであってもよく、あるいは穀粉、難消化性デンプン類、膨脹剤、活性グルテン、他の成分等を一緒に合わせ、これらが略均一になるまで混合したものであってもよい。」 (1-6)「[0099] (実施例12:低糖質生中華麺の製造(E12)) 表5に示す原料粉、膨脹剤、活性グルテン、他の成分、および水を略均一になるまで混練して混合体を得、これを製麺機(切り刃:20番角)に通し、1.5mmの麺厚を有する、低糖質生中華麺を作製した。このようにして得られた低糖質生中華麺を、作製後24時間10℃で冷蔵保管した。 [0100] [表5] [図:0001414216000001.jpg] 」 (2)甲1に記載された発明 甲1の請求項1(摘記1-1)には、「低糖質生麺類であって、30質量%から90質量%の穀粉、および10質量%から70質量%の難消化性デンプン類からなる原料粉と、該原料粉100質量部に対して0.5質量部から10質量部の膨脹剤と、該原料粉100質量部に対して5質量部から30質量部の活性グルテンとを含有する、低糖質生麺類。」が記載されており、[0099]~[0100](摘記1-6)には、その具体例として「実施例12:低糖質生中華麺の製造」の例が記載され、活性グルテン成分としては「奥野製薬工業(株)製多糖類改質グルテン「プロフェクトP」」8質量部と、「グリコ栄養食品(株)製「A-グル」2質量部が配合されたことが記載されている。 また、[0017](摘記1-2)には、「低糖質生麺類」は「難消化性デンプン類および/または活性グルテンが添加された生麺類」であることが記載され、[0033](摘記1-3)及び[0041](摘記1-4)には、活性グルテンは「生グルテンに所定の改質処理を施して乾燥させた改質グルテンを含有していてもよい」こと、及び「原料粉と難消化性デンプン類との「つなぎ」の1種として効果的に機能し得る」ものであり、「低糖質生麺類を調理後喫食した際には、不快な食感から開放されるだけでなく、むしろ歩留まりが向上し、かつモチモチとした弾力ある食感を得ることができる」という効果をもたらすものであることが記載されているから、改質グルテンを含有する活性グルテンを、生麺類の食感を改良する添加剤として把握することができる。さらに、[0049](摘記1-5)には、原料粉の製造方法に関し、「穀粉と難消化性デンプン類との略均一になるまで混合して原料粉を調製し、このようにして得られた原料粉を、膨脹剤、活性グルテン、他の成分等をさらに略均一になるまで混合したものであってもよく」と記載されているから、原料粉の製造に際し、改質グルテンを含有する活性グルテンをひとつの添加剤として扱うことが記載されているといえる。 そうすると、甲1には実施例12等に基づいて、以下の発明が記載されている。 「奥野製薬工業(株)製多糖類改質グルテン「プロフェクトP」8質量部と、グリコ栄養食品(株)製「A-グル」2質量部とからなる低糖質生中華麺用添加剤。」(以下、「甲1発明」という。) (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「奥野製薬工業(株)製多糖類改質グルテン「プロフェクトP」」及び「グリコ栄養食品(株)製「A-グル」」は、いずれも本件発明1における「粉末状小麦タンパク質A」又は「粉末状小麦タンパク質B」と、「粉末状小麦タンパク質」である限りにおいて一致する。また、甲1発明における「低糖質生中華麺」は、本件発明1における「小麦粉食品」に相当するとともに、「イースト発酵食品」ではないことも明らかであるから、本件発明1における「(但し、イースト発酵食品を除く)」を満たしている。さらに、甲1発明における「添加剤。」は、本件発明1における「品質改良剤。」と、添加剤である限りにおいて一致する。 そうすると、両者は、 「粉末状小麦タンパク質を含む、小麦粉食品(但し、イースト発酵食品を除く)用の添加剤。」 の点で一致し、 相違点1:本件発明1は「後記する伸展性試験においてドウにした際の最大伸長距離が44mm以上になる粉末状小麦タンパク質A、及び後記する伸展性試験においてドウにした際の最大伸長距離が39mm以下になる粉末状小麦タンパク質Bを、粉末状小麦タンパク質A:粉末状小麦タンパク質Bが15:85~85:15の重量比で含」み、「<伸展性試験> 先ず、測定対象となる粉末状小麦タンパク質100gに対して、質量比で0.01倍の塩化ナトリウム及び1.5倍のイオン交換水を加え、10分間ミキサーにて混練し、ドウを形成する。次いで、得られたドウから長さ53mm、高さ5mm、幅5mmの試験片を作成し、25℃にて30分間静置する。その後、テクスチャーアナライザーを用いて、25℃で引張速度3.30mm/秒、つかみ具間距離180mm、トリガー荷重5.0gの条件にて引張試験を行い、試験片が破断した際のつかみ具の移動距離を最大伸長距離として求める。」と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点 相違点2:本件発明1は「品質改良剤」と特定するのに対し、甲1発明は「添加剤」である点 で相違する。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点1について 甲1には、「奥野製薬工業(株)製多糖類改質グルテン「プロフェクトP」」及び「グリコ栄養食品(株)製「A-グル」」のそれぞれにおける「伸展性試験においてドウにした際の最大伸長距離」は記載されておらず、また、「伸展性試験においてドウにした際の最大伸長距離」をうかがわせる記載もない。 この点に関する申立人の主張について、以下、検討する。 (ア)「プロフェクトP」について 申立人は、特許異議申立書の21~22頁において「甲第2号証によれば、奥野製薬工業(株)多糖類改質グルテン「プロフェクトP」と、本件特許明細書に記載の「A-グルSS」(「粉末状小麦タンパク質A」に属するものとして記載)との伸展性試験(ただしA5要件の伸展性試験と完全に同一ではない)において、「A-グルSS」と「プロフェクトP」との最大伸長距離(新最大伸長距離)は略同等となっていた。このため、「A-グルSS」と略同等の伸展性を有する「プロフェクトP」はA1の「粉末状小麦タンパク質A」に相当するか、またはそれに相当する蓋然性が著しく高いと言うことができる。」と主張する。 しかし、甲2の実験成績証明書には、実験を行った者の属性、実験が行われた日時及び場所等が記載されておらず、「A-グルSS」及び「プロフェクトP」を実際に入手し測定に供したことを裏付ける証拠も示されていないから、実験結果の信憑性については疑義があるといわざるを得ない。 また、「A-グルSS」及び「プロフェクトP」について測定が行われたのであるとしても、申立人自ら認めるように、甲2における「新伸展性試験」の条件は本件発明1における「伸展性試験」の条件と異なっており、具体的には、試験片の長さ、つかみ具間距離、トリガー荷重が異なっているため、試験片の伸長の挙動は本件発明1における「伸長性試験」の場合とは異なると考えられるところ、申立人は試験の同等性を裏付ける具体的な説明及び証拠を示していないから、甲2に記載された「新最大伸長距離」が本件発明1における「伸展性試験においてドウにした際の最大伸長距離」と同じ性質を再現する試験であるとは認められない。 さらに、甲2の2頁の表1には、「A-グルSS」の測定結果の備考として「この製品の最小値(87mm)以上の新最大伸長距離を有するものが「粉末状小麦タンパク質A」に相当する。」と記載されているが、甲2の表1には、「A-グルSS」の新伸展性試験による「新最大伸長距離(mm)」の最小値が87mmであったことに加え、最大値が120mmであったことも記載されているから、「粉末状小麦タンパク質A」に相当するか否かは最大値(120mm)以上であるか否かによって判断することもできると考えられるところ、申立人は最小値(87mm)を判断基準とすることの妥当性を裏付ける具体的な説明及び証拠を示していない。そして、甲2の表1には、「プロフェクトP」の新最大伸長距離の最小値が92mm、最大値が103mmであったことが記載されており、いずれも「A-グルSS」の新最大伸長距離の最大値120mmを下回っているから、甲2の表1に記載された新最大伸長距離の試験結果を「プロフェクトP」が本件発明1における「粉末状小麦タンパク質A」に相当することの根拠とすることは妥当ではない。 加えて、申立人が提出した他の証拠を参照しても、甲1発明における「プロフェクトP」が本件発明1における「粉末状小麦タンパク質A」に相当すると認めるに足る記載は見いだせない。 以上のことから、甲1発明における「奥野製薬工業(株)多糖類改質グルテン「プロフェクトP」」は、本件発明1における「粉末状小麦タンパク質A」に相当するものとは認められない。 (イ)「A-グル」について 申立人は、特許異議申立書の22~23頁において、甲1の[0033](摘記1-3)を引用した上で、「上記「A-グル」は活性グルテン(生グルテンを乾燥させて得られたもの)と想定することができ、A2要件の「粉末状小麦タンパク質B」に相当する蓋然性が高い。あるいは、上記「A-グル」が活性グルテンの1種であるグリコ栄養食品(株)製「A-グルG」であった場合、甲第2号証より当該「A-グルG」は「粉末状小麦タンパク質B」に相当するか、またはそれに相当する蓋然性が著しく高い。」と主張する。 しかし、甲1には、「グリコ栄養食品(株)製「A-グル」」を、本件発明1における「伸展性試験においてドウにした際の最大伸長距離」は記載されていないから、「A-グル」が「活性グルテン(生グルテンを乾燥させて得られたもの)と想定することができ」ることをもって、当該「A-グル」が本件発明1における「粉末状小麦タンパク質B」に相当するとはいえない。 また、申立人は、甲1発明における「グリコ栄養食品(株)製「A-グル」」が、「活性グルテンの1種であるグリコ栄養食品(株)製「A-グルG」であった」との仮定のもとで、甲2の実験成績証明書を引用しているが、甲1には「A-グルG」という商品名は記載されておらず、甲1発明における「A-グル」が「A-グルG」であることを裏付ける具体的な理由及び証拠も示されていないから、甲2に記載された「A-グルG」の測定結果に基づいて、甲1発明における「A-グル」が本件発明1における「粉末状小麦タンパク質B」に相当するか否かを判断することはできない。なお、甲2の実験結果は信憑性について疑義があり、かつ、本件発明1における伸展性試験を再現したものとは認められないことは、上記(ア)に記載したとおりである。 さらに、申立人が提出した他の証拠を参照しても、甲1発明における「A-グル」が本件発明1における「粉末状小麦タンパク質B」に相当すると認めるに足る記載は見いだせない。 以上のことから、甲1発明における「グリコ栄養食品(株)製「A-グル」」は、本件発明1における「粉末状小麦タンパク質B」に相当するものとは認められない。 (ウ)進歩性について 甲1の[0033](摘記1-3)等には、活性グルテンについて「生グルテンを乾燥させて得られたもの」であること、及び「生グルテンに所定の改質処理を施して乾燥させた改質グルテンを含有していてもよい」ことが記載されているが、本件発明1における「伸展性試験においてドウにした際の最大伸長距離が44mm以上になる粉末状小麦タンパク質A」と「伸展性試験においてドウにした際の最大伸長距離が39mm以下になる粉末状小麦タンパク質B」とを組み合わせて用いるという技術的思想は記載も示唆もされていない。 申立人は、特許異議申立書の39~40頁において、甲3の[0012]を引用した上で、「甲第3号証は、同段落において、生地用原料に用いるグルテンには様々な市販製品が存在し、適宜置換可能であることを示唆している。さらに、甲第3号証の同段落に記載の「AグルG」は、甲第2号証に記載の通り、本件特許発明1のA2要件の「粉末状小麦グルテンB」に相当するか、またはそれに相当する蓋然性が著しく高いものである。そうすると、甲第1号証の段落[0099]~[0101](実施例12、表5)に記載の低糖質中華麺を作製するにあたり、活性グルテンとしてグリコ栄養食品(株)製「A-グル」の代わりに同社製「A-グルG」を使用することに格別の困難性はない。」と主張しているが、甲3は「惣菜用揚げ衣食品の製造法」(発明の名称)について記載された文献であり、その課題は「揚げ衣のサクサク感や、噛み切り易さ等の食感の経時的な低下が抑制された惣菜用揚げ衣食品、並びに未油ちょうの該惣菜用揚げ衣食品の製造法を提供すること」([0006])にあるから、甲3は甲1発明の「低糖質生中華麺」とは異なる食品を対象とし、甲1発明では求められない課題を解決しようとするものである。そうすると、当業者が、甲3に記載された事項を甲1に組み合わせることを動機付けられる理由はなく、甲1発明における「グリコ栄養食品(株)製「A-グル」」を同社製「A-グルG」に置き換えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 また、申立人が提出した他の証拠を参照しても、甲1発明における「プロフェクトP」ないし「A-グル」に代えて、本件発明1における「粉末状小麦タンパク質A」及び「粉末状小麦タンパク質B」に相当する小麦タンパク質の組み合わせを採用することの動機付けとなる記載は見いだせない。 そして、本件発明1により得られる「小麦粉食品の生地の結着性が改善され、混練後の生地のまとまり、生地の強度、及び生地の伸展性が良好になるので、小麦粉食品の製造において優れた製造適性を備えさせることができる。」及び「小麦粉食品に適度な硬さ、粘り、なめらかさ、口どけ等を付与でき、優れた食感を備えさせることもできる。」という効果は、甲1及び申立人が提出した他のいずれの証拠からも予測することができない顕著な効果である。 よって、甲1発明において相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (エ)相違点1についてのまとめ 以上まとめると、相違点1は実質的な相違点であり、かつ、甲1発明及びいずれの証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。 ウ 本件発明1についてのまとめ 以上のことから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明ではなく、かつ、甲1発明及び甲1~甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~12について 本件発明2~12は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。 そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~7及び10~12は、いずれも甲1発明ではなく、かつ、本件発明2~12は、いずれも甲1発明及び甲1~甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)及び理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~7、10~12は、いずれも甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~12は、いずれも甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)及び理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如)により本件発明1~12についての特許を取り消すことはできない。 2.理由1-2(甲4に基づく新規性欠如)及び理由2-2(甲4に基づく進歩性欠如)について (1)甲4に記載された事項 甲4には以下の事項が記載されている。 (4-1)「[請求項1] 麺類中に、澱粉、植物蛋白物質、増粘剤およびエチルアルコールを配合することを特徴とする、茹伸び耐性を有する麺類。」 (4-2)「[0008]また植物蛋白物質としては小麦蛋白質、大豆蛋白質等が挙げられる。小麦蛋白質としては、生グルテン、冷凍グルテン、活性グルテン、グルテンを加水分解した加水分解蛋白質等が挙げられ、大豆蛋白質としては大豆粉、脱脂大豆粉等が挙げられるが、特にグリアジンを含む小麦蛋白質が好ましい。」 (4-3)「[0012]本発明の澱粉、植物蛋白物質、増粘剤およびエチルアルコール等の添加剤は予め穀粉中に配合させるかあるいは製麺時に穀粉に配合するか、加水液に溶解して使用することができる。」 (4-4)「[0017]実施例3 小麦粉(「特ナンバーワン」日清製粉株式会社製商品名)80重量部、架橋エーテル化馬鈴薯澱粉20重量部、粉末グルテン(「グリアA」アサマ化成株式会社製商品名)3重量部、粉末グルテン(「FDグルテン」小川製粉株式会社製商品名)3重量部、卵白粉1重量部およびキサンタンガム0.5重量部を混合する。次いでこれに95%エチルアルコール3重量部、かん粉1.5重量部、クチナシ色素0.15重量部を水40容量部に溶解したものを加えて試験用真空ミキサー(90回転/分)にて常圧で2分間混捏した後減圧下(-600mmHg)で8分間混捏した。得られた麺生地を常法通り複合、圧延して麺帯厚み8mmとした後1時間熟成させた。さらにこの麺帯を圧延し最終麺帯厚みを1.5mmとした後切刃♯20角で切り出し生ラーメンを得た。この生ラーメンを茹上げた後水洗い冷却を行い歩留232%の茹ラーメンを得た。これを180gずつトレイに入れて-45℃の冷凍庫にて冷凍し2週間保存した。」 (2)甲4に記載された発明 甲4の請求項1(摘記4-1)には、「麺類中に、澱粉、植物蛋白物質、増粘剤およびエチルアルコールを配合することを特徴とする、茹伸び耐性を有する麺類。」が記載されており、[0008](摘記4-2)には、「植物蛋白物質としては小麦蛋白質、大豆蛋白質等が挙げられる。小麦蛋白質としては、生グルテン、冷凍グルテン、活性グルテン、グルテンを加水分解した加水分解蛋白質等が挙げられ」ることが記載されている。また、[0017](摘記4-4)には「実施例3」として生ラーメン、それを茹でた茹でラーメン、及びそれを冷凍した冷凍麺の製造例が記載され、植物蛋白物質としては粉末グルテン(「グリアA」アサマ化成株式会社製商品名)3重量部及び粉末グルテン(「FDグルテン」小川製粉株式会社製商品名)3重量部が混合されたことが記載されている。 ここで、[0012](摘記4-3)には、「植物蛋白物質」は「添加剤」のひとつであり「予め穀粉中に配合させるかあるいは製麺時に穀粉に配合するか、加水液に溶解して使用することができる」ものとして記載されており、その添加により、請求項1(摘記4-1)に記載されるように、麺類に「茹伸び耐性」をもたらすものと解されるから、「植物蛋白物質」を麺類の性質を改良する添加剤として把握することができる。 そうすると、甲4には実施例3等に基づいて、以下の発明が記載されている。 「粉末グルテン(「グリアA」アサマ化成株式会社製商品名)3重量部及び粉末グルテン(「FDグルテン」小川製粉株式会社製商品名)3重量部からなるラーメン用添加剤。」(以下、「甲4発明」という。) (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲4発明との対比 本件発明1と甲4発明とを対比すると、甲4発明における「粉末グルテン(「グリアA」アサマ化成株式会社製商品名)」及び「粉末グルテン(「FDグルテン」小川製粉株式会社製商品名)」は、いずれも本件発明1における「粉末状小麦タンパク質A」又は「粉末状小麦タンパク質B」と、「粉末状小麦タンパク質」である限りにおいて一致する。また、甲4発明における「ラーメン」は、本件発明1における「小麦粉食品」に相当するとともに、「イースト発酵食品」ではないことも明らかであるから、本件発明1における「(但し、イースト発酵食品を除く)」を満たしている。さらに、甲4発明における「添加剤。」は、本件発明1における「品質改良剤。」と、添加剤である限りにおいて一致する。 そうすると、両者は、 「粉末状小麦タンパク質を含む、小麦粉食品(但し、イースト発酵食品を除く)用の添加剤。」 の点で一致し、 相違点1’:本件発明1は「後記する伸展性試験においてドウにした際の最大伸長距離が44mm以上になる粉末状小麦タンパク質A、及び後記する伸展性試験においてドウにした際の最大伸長距離が39mm以下になる粉末状小麦タンパク質Bを、粉末状小麦タンパク質A:粉末状小麦タンパク質Bが15:85~85:15の重量比で含」み、「<伸展性試験> 先ず、測定対象となる粉末状小麦タンパク質100gに対して、質量比で0.01倍の塩化ナトリウム及び1.5倍のイオン交換水を加え、10分間ミキサーにて混練し、ドウを形成する。次いで、得られたドウから長さ53mm、高さ5mm、幅5mmの試験片を作成し、25℃にて30分間静置する。その後、テクスチャーアナライザーを用いて、25℃で引張速度3.30mm/秒、つかみ具間距離180mm、トリガー荷重5.0gの条件にて引張試験を行い、試験片が破断した際のつかみ具の移動距離を最大伸長距離として求める。」と特定するのに対し、甲4発明はそのように特定されていない点 相違点2’:本件発明1は「品質改良剤」と特定するのに対し、甲4発明は「添加剤」である点 で相違する。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点1’について 甲4には、「粉末グルテン(「グリアA」アサマ化成株式会社製商品名)」及び「粉末グルテン(「FDグルテン」小川製粉株式会社製商品名)」のそれぞれにおける「伸展性試験においてドウにした際の最大伸長距離」は記載されておらず、また、「伸展性試験においてドウにした際の最大伸長距離」をうかがわせる記載もない。 この点に関する申立人の主張について、以下、検討する。 (ア)「FDグルテン」について 申立人は、特許異議申立書の24~25頁において「甲第5号証によれば、株式会社小川製粉の小麦でん粉「O-グル」は、天然グルテンをそのまま真空凍結乾燥(フリーズドライ;FD)したものであり、小麦粉加工品として生ラーメン等に使用されるものである。また、甲第6号証および甲第7号証によれば、株式会社小川製粉はこのようなフリーズドライしたグルテン製品を本願出願日(すなわち、令和1年7月5日)以前から販売していることがわかる。これらを考慮すると、甲第4号証の出願人(日清製粉株式会社)は、この株式会社小川製粉製「O-グル」を「FDグルテン」と表現しているに過ぎない。」及び「甲第2号証によれば、例えば株式会社小川製粉の「O-グルH-10」と、本件特許明細書に記載の「A-グルSS」(「粉末状小麦タンパク質A」に属するものとして記載)との伸展性試験(ただしA5要件の伸展性試験と完全に同一ではない)において、「O-グルH-10」の最大伸長距離(新最大伸長距離)の最小値及び最大値が「A-グルSS」の最大値よりも高くなっており、株式会社小川製粉のグルテン製品「O-グル」はA1の「粉末状小麦タンパク質A」に相当するか、またはそれに相当する蓋然性が著しく高いものであったことがわかる。」と主張する。 しかし、甲4には「粉末グルテン(「FDグルテン」小川製粉株式会社製商品名)」と記載されているから、甲4発明における「FDグルテン」は、フリーズドライしたグルテン製品の一般名称ではなく、「FDグルテン」という商品名で販売された特定のグルテン製品の名称と解されるところ、甲5には「FDグルテン」という商品名のグルテン製品は記載されておらず、甲6及び甲7を合わせて参照しても、甲4発明における「粉末グルテン(「FDグルテン」小川製粉株式会社製商品名)」が、甲5に記載された「O-グル」に相当することは読み取れない。また、甲5の3~4頁には、「H-10」、「特H-10」、「H-30」、「特H-30」、「HS-10」及び「S-10」という6種類の商品名が記載されており、それぞれ製品規格や原料が異なることが記載されているところ、甲4発明における「粉末グルテン(「FDグルテン」小川製粉株式会社製商品名)」が、それらのうち甲2の実験成績証明書に記載された「O-グルH-10」という特定の商品であることを裏付ける具体的な理由及び証拠は示されていない。 さらに、甲2の実験結果は信憑性について疑義があり、かつ、本件発明1における伸展性試験を再現したものとは認められないことは、上記1.(3)イ(ア)に記載したとおりである。 加えて、申立人が提出した他の証拠を参照しても、甲4発明における「FDグルテン」が本件発明1における「粉末状小麦タンパク質A」に相当すると認めるに足る記載は見いだせない。 以上のことから、甲4発明における「粉末グルテン(「FDグルテン」小川製粉株式会社製商品名)」は、本件発明1における「粉末状小麦タンパク質A」に相当するものとは認められない。 (イ)「グリアA」について 申立人は、特許異議申立書の25~26頁において、「甲第2号証によれば、アサマ化成株式会社「グリアA」と、本件特許明細書に記載の「A-グルCV」(「粉末状小麦タンパク質B」に属するものとして記載)との最大伸長距離(ただしA5の伸展性試験と完全に同一ではない)は「A-グルCV」と「グリアA」とが略同等の長さとなっていた。このため、「A-グルCV」と略同等の伸展性を有する「グリアA」はA2の「粉末状小麦タンパク質B」に相当するか、またはそれに相当する蓋然性が著しく高いことがわかる。」と主張する。 しかし、甲2の実験結果は信憑性について疑義があり、かつ、本件発明1における伸展性試験を再現したものとは認められないことは、上記1.(3)イ(ア)に記載したとおりである。また、甲2の2頁の表1には、「A-グルCV」の測定結果の備考として「この製品の最大値(73mm)以下の新最大伸長距離を有するものが「粉末状小麦タンパク質B」に相当する。」と記載されているが、甲2の表1には、「A-グルCV」の新伸展性試験による「新最大伸長距離(mm)」の最大値が73mmであったことに加え、最小値が20mmであったことも記載されているから、「粉末状小麦タンパク質B」に相当するか否かは最小値(20mm)以下であるか否かによって判断することもできると考えられるところ、申立人は最大値(73mm)を判断基準とすることの妥当性を裏付ける具体的な説明及び証拠を示していない。そして、甲2の表1には、「グリアA」の新最大伸長距離の最小値が20mm、最大値が53mmであったことが記載されており、最大値は「A-グルCV」の新最大伸長距離の最小値20mmを上回っているから、甲2の表1に記載された新最大伸長距離の試験結果を「グリアA」が本件発明1における「粉末状小麦タンパク質B」に相当することの根拠とすることは妥当ではない。 加えて、申立人が提出した他の証拠を参照しても、甲4発明における「グリアA」が本件発明1における「粉末状小麦タンパク質B」に相当すると認めるに足る記載は見いだせない。 以上のことから、甲4発明における「粉末グルテン(「グリアA」アサマ化成株式会社製商品名)」は、本件発明1における「粉末状小麦タンパク質B」に相当するものとは認められない。 (ウ)進歩性について 甲4の[0008](摘記4-2)等には、小麦蛋白物質について「生グルテン、冷凍グルテン、活性グルテン、グルテンを加水分解した加水分解蛋白質等が挙げられ」ることが記載されているが、本件発明1における「伸展性試験においてドウにした際の最大伸長距離が44mm以上になる粉末状小麦タンパク質A」と「伸展性試験においてドウにした際の最大伸長距離が39mm以下になる粉末状小麦タンパク質B」とを組み合わせて用いるという技術的思想は記載も示唆もされていない。 申立人は、特許異議申立書の40~41頁において、甲3の[0012]を引用した上で、「甲第3号証は、同段落において、生地用原料に用いるグルテンには様々な市販製品が存在し、適宜置換可能であることを示唆している。さらに、甲第3号証の同段落に記載の「A-グルSS」は、本件特許明細書の段落0039および0042(表1)の記載から明らかな通り、本件特許発明1のA1要件の「粉末状小麦グルテンA」に相当するものである。そうすると、甲第4号証の段落[0017](実施例3)に記載の生ラーメンを作製するにあたり、粉末グルテンとして小川製粉株式会社製「FDグルテン」の代わりにグリコ栄養食品株式会社製「A-グルSS」を使用することに格別の困難性はない。」と主張しているが、甲3は「惣菜用揚げ衣食品の製造法」(発明の名称)について記載された文献であり、その課題は「揚げ衣のサクサク感や、噛み切り易さ等の食感の経時的な低下が抑制された惣菜用揚げ衣食品、並びに未油ちょうの該惣菜用揚げ衣食品の製造法を提供すること」([0006])にあるから、甲3は甲4発明の「ラーメン」とは異なる食品を対象とし、甲4発明では求められない課題を解決しようとするものである。そうすると、当業者が、甲3に記載された事項を甲4に組み合わせることを動機付けられる理由はなく、甲4発明における「粉末グルテン(「FDグルテン」小川製粉株式会社製商品名)」をグリコ栄養食品株式会社製「A-グルSS」に置き換えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 また、申立人が提出した他の証拠を参照しても、甲4発明における「粉末グルテン(「グリアA」アサマ化成株式会社製商品名)」ないし「粉末グルテン(「FDグルテン」小川製粉株式会社製商品名)」に代えて、本件発明1における「粉末状小麦タンパク質A」及び「粉末状小麦タンパク質B」に相当する小麦タンパク質の組み合わせを採用することの動機付けとなる記載は見いだせない。 そして、本件発明1により得られる「小麦粉食品の生地の結着性が改善され、混練後の生地のまとまり、生地の強度、及び生地の伸展性が良好になるので、小麦粉食品の製造において優れた製造適性を備えさせることができる。」及び「小麦粉食品に適度な硬さ、粘り、なめらかさ、口どけ等を付与でき、優れた食感を備えさせることもできる。」という効果は、甲4及び申立人が提出した他のいずれの証拠からも予測することができない顕著な効果である。 よって、甲4発明において相違点1’に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (エ)相違点1’についてのまとめ 以上まとめると、相違点1’は実質的な相違点であり、かつ、甲4発明及びいずれの証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。 ウ 本件発明1についてのまとめ 以上のことから、相違点2’について検討するまでもなく、本件発明1は甲4発明ではなく、かつ、甲4発明及び甲1~甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~12について 本件発明2~12は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。 そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明2、3、7、8、10及び12は、いずれも甲4発明ではなく、かつ、本件発明2~12は、いずれも甲4発明及び甲1~甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)理由1-2(甲4に基づく新規性欠如)及び理由2-2(甲4に基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~3、7、8、10及び12は、いずれも甲4に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~12は、いずれも甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由1-2(甲4に基づく新規性欠如)及び理由2-2(甲4に基づく進歩性欠如)により本件発明1~12についての特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおり、本件発明1~12についての特許は、上記のいずれの特許異議申立理由によっても取り消すことはできない。 また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700390

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