特許異議申立
2024-700387
外用組成物
- 審判番号
- 2024-700387
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-172074
- 登録番号
- 7366515
- 請求日
- 2024年04月23日
- 審決日
- 2025年02月07日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大正製薬株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人 井手・小野国際特許事務所
- 【異議申立人】浅利 陽子
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 小石 真弓
- 審判官 冨永 保
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7366515号発明「外用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7366515号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
特許第7366515号の請求項1及び2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7366515号(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成29年9月7日(優先権主張 平成28年9月15日)に出願され、令和5年10月13日に特許権の設定登録がされ、同年同月23日に特許掲載公報が発行され、その請求項1及び2に係る発明の特許に対し、令和6年4月23日付けで浅利 陽子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は次のとおりである。
令和6年 7月 1日付け 取消理由通知書
同年 8月21日 上申書の提出(特許権者)
同年10月 1日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)
同年 同月29日付け 訂正請求があった旨の通知
同年12月 2日 意見書の提出(申立人)
第2 訂正請求について
1 訂正の趣旨
令和6年10月1日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は、
「特許第7366515号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求める。」
というものである。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正請求書の記載及び訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の記載からみて、次の訂正事項1~4からなるものであると認められる。下線は、訂正による記載の変更箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「a)2w/w%以上のミノキシジル」
との記載を
「a)5w/w%以上のミノキシジル」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の
「d)酸」
との記載を
「d)リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸及びグルコン酸よりなる群から選択される1種または2種以上の酸」
との記載に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1の
「を含有することを特徴とする外用組成物。」
との記載を
「を含有し、
ミノキシジル5gに対してパントテニールエチルエーテルの配合量が1gであり、pH5.0~7.0であることを特徴とする外用組成物。」
との記載に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2の
「ミノキシジルの濃度が5w/w%以上である請求項1に記載の外用組成物。」
との記載を
「a)5w/w%以上のミノキシジル、
b)パントテニールエチルエーテル、
c)プロピレングリコール、及び
d)リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸及びグルコン酸よりなる群から選択される1種または2種以上の酸
を含有し、
ミノキシジル5gに対してパントテニールエチルエーテルの配合量が1gであり、pH5.0~7.0であることを特徴とする外用組成物(但し、グリセリン、ポリエチレングリコール及びジプロピレングリコールよりなる群から選ばれる1種以上を含有するものを除く)。」
との記載に訂正する。
3 本件訂正による訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「ミノキシジル」の含有量について「2w/w%以上」から「5w/w%以上」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「特許明細書等」という。)の【0010】の「ミノキシジルの含有量は・・・さらにより好ましくは5w/w%以上である。」というに記載に基づくものであり、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1における「酸」について「リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸及びグルコン酸よりなる群から選択される1種または2種以上の酸」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項2は、特許明細書等の【0012】の「本発明の外用組成物において用いる酸としては、・・・具体的にはリン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸、グルコン酸であり、好ましくはリン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸である。これら酸を1種又は2種以上組み合わせてもよい。」という記載に基づくものであり、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項1において、ミノキシジルに対するパントテニールエチルエーテルの配合量及びpHの範囲は特定されていなかったところ、ミノキシジル5gに対してパントテニールエチルエーテルの配合量が1gであり、pHが5.0~7.0であるものに限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項3における「pHが5.0~7.0」との記載は、特許明細書等の【0013】の「本発明の外用組成物は、・・・そのpHを4.0~9.5の範囲に調整することが好ましく、5.0~7.0の範囲がさらに好ましい。」という記載に基づくものであり、同「ミノキシジル5gに対してパントテニールエチルエーテルの配合量が1gであり」との記載は、同実施例3(特許権者は、訂正請求書において実施例4を根拠としているが、実施例3の誤記であると解される。)の記載に基づくものであり、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4について
ア 訂正事項4は、下記の訂正事項4-1~4-4からなる。
訂正事項4-1
請求項1の記載を引用する請求項2を独立請求項とする訂正。
訂正事項4-2
訂正前の請求項1に記載されていた
「d)酸」
との記載を
「d)リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸及びグルコン酸よりなる群から選択される1種または2種以上の酸」
として請求項2に記載する訂正。
訂正事項4-3
訂正前の請求項2に記載されていた
「請求項1の組成物。」との記載を
「ミノキシジル5gに対してパントテニールエチルエーテルの配合量が1gであり、pH5.0~7.0であることを特徴とする外用組成物。」とする訂正。
訂正事項4-4
訂正前の請求項2について、
「(但し、グリセリン、ポリエチレングリコール及びジプロピレングリコールよりなる群から選ばれる1種以上を含有するものを除く)」
との記載を追加する訂正。
イ 訂正事項4-1について
訂正事項4-1は、請求項1の記載を引用する請求項2の記載を、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式の記載に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
また、訂正事項4-1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
ウ 訂正事項4-2について
訂正事項4-2は訂正事項2と同様の訂正であるから、上記(2)で述べた理由と同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、そして、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
エ 訂正事項4-3について
訂正事項4-3は訂正事項3と同様の訂正であるから、上記(3)で述べた理由と同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、そして、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
オ 訂正事項4-4について
訂正事項4-4は、「組成物」の範囲から、「グリセリン、ポリエチレングリコール及びジプロピレングリコールよりなる群から選ばれる1種以上を含有するものを除く」ものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、「グリセリン、ポリエチレングリコール及びジプロピレングリコールよりなる群から選ばれる1種以上を含有するものを除く」点は、特許明細書等の【0011】の「グリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールは配合しない方が本発明の効果の点から好ましく」との記載に基づくものであると解される。
よって、訂正事項4-4は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
カ したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5)独立特許要件について
本件特許異議申立においては、訂正前の全ての請求項である請求項1及び2に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1及び2に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
(6)一群の請求項について
本件訂正に係る訂正前の請求項1及び2について、その請求項2は請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1及び2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。
4 まとめ
以上のとおり、訂正事項1~4による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1」及び「本件発明2」といい、併せて「本件発明」ともいうことがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
a)5w/w%以上のミノキシジル、
b)パントテニールエチルエーテル、
c)プロピレングリコール、及び
d)リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸及びグルコン酸よりなる群から選択される1種または2種以上の酸
を含有し、
ミノキシジル5gに対してパントテニールエチルエーテルの配合量が1gであり、pH5.0~7.0であることを特徴とする外用組成物。
【請求項2】
a)5w/w%以上のミノキシジル、
b)パントテニールエチルエーテル、
c)プロピレングリコール、及び
d)リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸及びグルコン酸よりなる群から選択される1種または2種以上の酸
を含有し、
ミノキシジル5gに対してパントテニールエチルエーテルの配合量が1gであり、pH5.0~7.0であることを特徴とする外用組成物(但し、グリセリン、ポリエチレングリコール及びジプロピレングリコールよりなる群から選ばれる1種以上を含有するものを除く)。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付して下記(6)に示す甲第1号証~甲第8-2号証を提出し、本件訂正前の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由として、下記(1)~(5)に示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張している。申立理由の概要は、申立書の記載全体からみて、以下のとおりと認められる。
(1)申立理由1(甲第1号証を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(甲第2号証を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(甲第3号証を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(甲第4号証を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立理由5(サポート要件違反)
本件特許明細書において、本件特許の請求項1及び2に係る発明の課題が認識できず、仮に認識できたとしても当該発明全体において課題を解決するものではないので、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(6)異議申立書に添付された証拠
提出された証拠は次のとおりである。
甲第1号証:特開2014-214098号公報
甲第2号証:特開2014-214097号公報
甲第3号証:国際公開第01/76540号
甲第4号証:特開2002-326913号公報
甲第5号証:特開2001-288090号公報
甲第6号証:特開2002-128641号公報
甲第7号証:特開2010-18555号公報
甲第8-1号証:「ミノキシジルに頭皮環境を活性化する成分をプラス配合「リアッププラス」新発売」と題するウェブページ(2007年)のWayBackMachineによるアーカイブ(アーカイプされた日 2008年1月20日)<URL:https://web.archive.org/web/20080120083102/http://www.taisho.co.jp:80/company/release/2007/2007121901.html>
甲第8-2号証:リアッププラスの説明書、大正製薬株式会社、発行日は不明
以下では、甲第1号証~甲第8-1号証を、それぞれ「甲1」~「甲8」ということがある。
2 当審合議体が通知した取消理由の概要
本件訂正前の請求項1及び2に係る特許について、当審合議体が令和6年7月1日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
[取消理由1](新規性)
本件請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記文献Aに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
[取消理由2](進歩性)
本件請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記文献A、甲1及び甲2に記載された発明並びに周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1及び2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
[取消理由3](サポート要件)
本件請求項1及び3に係る発明の組成物は、プロピレングリコール以外の多価アルコールを含み、当該発明の課題を解決できないと解されるから、本件請求項1及び2に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
上記「取消理由2」における甲1及び2に記載された発明に基づく取消理由は、上記1(1)及び(2)の「申立理由1」及び「申立理由2」を採用したものであり、また、取消理由3は、上記1(5)の「申立理由5」を採用したものである。
そして、取消理由1及び取消理由2について、提示した証拠は次のとおりである。
文献A:特開2009-91325号公報
(当審合議体が職権で引用した文献)
甲1:特開2014-214098号公報
甲2:特開2014-214097号公報
甲3:国際公開第01/76540号
甲4:特開2002-326913号公報
甲6:特開2002-128641号公報
甲8:「ミノキシジルに頭皮環境を活性化する成分をプラス配合「リアッププラス」新発売」,2007年,[2024年4月19日検索」インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20080120083102/http://www.taisho.co.jp:80/company/release/2007/2007121901.html>
第5 当審合議体の判断
当審合議体は、本件請求項1及び2に係る特許は、取消理由通知で通知した取消理由及び申立人が申し立てた申立理由によっては、取り消すことはできないものと判断する。その理由は以下のとおりである。
また、判断に際しては、特許権者が令和6年10月1日提出の意見書に添付して提出した下記の乙第1号証及び乙第2号証(以下、「乙1」及び「乙2」という。)も参照した。
乙1:特開2016-138094号公報
乙2:実験成績証明書(作成者:大正製薬株式会社 竹内 伸之)
なお、以下の記載事項の摘記において、下線は特に注釈がない限り当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。
1 文献A、甲1~甲4、甲6~甲8、乙1及び乙2の記載事項
(1)文献A
文献Aには、次の記載がある。
摘記Aa:
「【請求項1】
以下の成分:
(A)ミノキシジル、及び
(B)ダイズタンパク質のサーモリシン分解物又はダイズタンパク質のサーモリシン様プロテアーゼ分解物であって、サーモリシン分解物と同等の育毛活性を有する産物
を含有する育毛剤。」
摘記Ab:
「【0037】
本発明の育毛剤は、有効成分としてミノキシジルとダイズタンパク質のサーモリシン分解物のみを含むものであってもよいが、必要に応じてさらなる種々の他の有効成分を含んでいてもよい。このような他の有効成分としては、例えば、細胞賦活剤、血行促進剤、抗男性ホルモン剤、皮脂分泌抑制剤、免疫抑制剤、抗ヒスタミン剤、殺菌消毒剤、局所刺激剤、角質軟化剤、消炎剤、抗アポトーシス剤等が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には・・・、塩酸ピリドキシン、・・・、セファランチン等から選択される、1種または2種以上を組合せて用いることができる。」
摘記Ac:
「【0057】
組成物実施例6(外用育毛剤)
下記の各成分を秤量し、精製水にて100mLに調製した。
ミノキシジル 2.0g
ダイズタンパク質のサーモリシン分解物(ピーク平均分子量約2000)2.0g
塩酸ピリドキシン 5.0mg
パントテニルエチルエーテル 0.1g
プロピレングリコール 10.0g
95%エタノール 60.0g
精製水にて全量 100 mL」
(2)甲1
甲1には、次の記載がある。
摘記1a:
「【請求項1】
ミノキシジルを3~10重量%含み、プロピレングリコールに対するブチレングリコールの重量比(プロピレングリコール:ブチレングリコール)が1:3.5~3.5:1となるようにプロピレングリコール及びブチレングリコールを含む外用組成物。
・・・
【請求項8】
育毛、養毛、又は発毛用である請求項1~7の何れかに記載の外用組成物。」
摘記1b:
「【0002】
ミノキシジル(6-(1-ピペリジニル)2,4-ピリミジン-3-オキサイド)は、外用により優れた育毛、養毛効果が得られるため、脱毛症の改善薬として広く使われている。
ところが、ミノキシジルは、水やエタノールへの溶解性が悪く、特に、低温で保存すると結晶が析出し易い。また、ミノキシジルを含む液剤は、経時的に着色して、商品価値が低下する。
・・・
【0006】
本発明は、ミノキシジルを配合した外用組成物であって、ミノキシジルの結晶析出、及び経時的な着色が抑制されており、しかも使用感に優れた組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために研究を重ね、ミノキシジルを3~10重量%含有する外用組成物に、プロピレングリコール:ブチレングリコールの重量比が1:3.5~3.5:1となるようにプロピレングリコール及びブチレングリコールを配合することにより、ミノキシジルの結晶析出が抑制されており、熱や光に曝されても着色し難く、さらにベタツキやきしみ等の使用時の違和感が抑制された組成物になることを見出した。」
摘記1c:
「【0022】
薬理活性成分・生理活性成分(当審注:下線は原文に付されていたものである)
本発明の外用組成物は、ミノキシジル以外の、医薬外用剤、医薬部外品、化粧品用の薬理活性成分又は生理活性成分を含むことができる。このような成分としては、血行促進成分、血管新生促進因子、保湿成分、抗炎症成分、抗菌成分、ビタミン類、ペプチド又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、細胞賦活化成分、老化防止成分、角質軟化若しくは角質溶解成分、美白成分、収斂成分、血管拡張成分、抗ヒスタミン成分、抗酸化成分、代謝賦活剤、清涼化剤等が挙げられる。また、例えば、スピラノラクトン、センブリエキス、カプサイシノイド、角質増殖因子(KGF;FGF-7)、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸、人参エキス等のミノキシジル以外の育毛成分を含むこともできる。
薬理活性成分又は生理活性成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。」
摘記1d:
「【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
結晶析出・着色・使用感の評価(当審注:下線は原文に付されていたものである)
後掲の表1~3に示す組成に従い、各成分を混合溶解し、50ml容量の容器に充填した。容器材質は、原則、ガラスとし、容器材質の影響を検討する場合は、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンテレフタレート製の容器を用いた。なお、表1~3に示す実施例及び比較例のpHは全て6.8である。
【0031】
低温安定性の評価は、各組成物を4℃の恒温器で約1か月静置した後、目視で結晶析出を観察することにより行った。結晶の析出が認められなかった場合を〇、認められた場合を×とした。
【0032】
熱安定性の評価は、各組成物を40℃の恒温器で約2か月静置した後、目視で黄色の着色の程度を観察することにより行った。着色が認められない場合を-、僅かな着色が認められた場合を+、着色がより強く認められるごとに、+の数を増やして表示した。
【0033】
光安定性の評価は、SUNTESTER XLS+(東洋精機社)を用いて、30℃以下で、350W/m2を72時間照射し、目視で黄色の着色の程度を観察することにより行った。着色が認められない場合を-、僅かな着色が認められた場合を+、着色がより強く認められるごとに、+の数を増やして表示した。
・・・
【0035】
【表1】
[図:0001424576000001.jpg]
【0036】
【表2】
[図:0001424576000002.jpg]
表1が示すように、多価アルコールとして、プロピレングリコールとブチレングリコールとを組み合わせて含む場合、低温での結晶析出及び経時的な着色の両方が抑制され、しかも良好な使用感が得られた。これに対して、一方の多価アルコールがグリセリン又はジプロピレングリコールである場合、ベタツキやきしみを感じる使用感の悪い製剤となり、また熱により着色が認められた。
【0037】
【表3】
[図:0001424576000003.jpg]
」
(3)甲2
甲2には、次の記載がある。
摘記2a:
「【請求項1】
ミノキシジルを3~10重量%含み、ミノキシジル:プロピレングリコールの重量比が1:3~1:9となるようにプロピレングリコールを含み、かつ組成物のpHが6.5~7.5である外用組成物。
・・・
【請求項6】
育毛、養毛、又は発毛用である請求項1~5の何れかに記載の外用組成物。」
摘記2b:
「【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために研究を重ね、ミノキシジルを3~10重量%含有する外用組成物に、ミノキシジル:プロピレングリコールの重量比が1:3~1:9となるようにプロピレングリコールを配合し、かつ組成物のpHを6.5~7.5とすることにより、ミノキシジルの結晶析出が抑制されており、熱や光に曝されても着色し難く、さらにベタツキが抑制された組成物になることを見出した。」
摘記2c:
「【0019】
薬理活性成分・生理活性成分(当審注:下線は原文に付されていたものである)
本発明の外用組成物は、ミノキシジル以外の、医薬外用剤、医薬部外品、化粧品用の薬理活性成分又は生理活性成分を含むことができる。このような成分としては、血行促進成分、血管新生促進因子、保湿成分、抗炎症成分、抗菌成分、ビタミン類、ペプチド又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、細胞賦活化成分、老化防止成分、角質軟化若しくは角質溶解成分、美白成分、収斂成分、血管拡張成分、抗ヒスタミン成分、抗酸化成分、代謝賦活剤、清涼化剤等が挙げられる。また、例えば、スピラノラクトン、センブリエキス、カプサイシノイド、角質増殖因子(KGF;FGF-7)、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸、人参エキス等のミノキシジル以外の育毛成分を含むこともできる。」
摘記2d:
「【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
結晶析出・着色・使用感の評価(当審注:下線は原文に付されていたものである)
後掲の表1~5に示す組成に従い、各成分を混合溶解し、50ml容量の容器に充填した。容器材質は、原則、ガラスとし、容器材質の影響を検討する場合は、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンテレフタレート製の容器を用いた。
【0028】
低温安定性の評価は、各組成物を4℃の恒温器で約2か月静置した後、目視で結晶析出を観察することにより行った。結晶の析出が認められなかった場合を〇、認められた場合を×とした。
【0029】
熱安定性の評価は、各組成物を40℃の恒温器で約2か月静置した後、目視で黄色の着色の程度を観察することにより行った。着色が認められない場合を-、僅かな着色が認められた場合を+、着色がより強く認められるごとに、+の数を増やして表示した。
【0030】
光安定性の評価は、SUNTESTER XLS+(東洋精機社)を用いて、30℃以下で、350W/m2を72時間照射し、目視で黄色の着色の程度を観察することにより行った。着色が認められない場合を-、僅かな着色が認められた場合を+、着色がより強く認められるごとに、+の数を増やして表示した。
・・・
【0032】
【表1】
[図:0001424576000004.jpg]
表1が示すように、ミノキシジル1重量部に対して、プロピレングリコールの含有量が3重量部未満の場合、組成物のpHにかかわらず、結晶析出又は経時的な着色が認められた。
【0033】
【表2】
[図:0001424576000005.jpg]
【0034】
【表3】
[図:0001424576000006.jpg]
表3が示すように、ミノキシジル1重量部に対して、プロピレングリコールの含有量が3~9重量部の場合、結晶析出及び経時的な着色の両方が抑制され、使用感も良好であった。これに対して、プロピレングリコールの含有量が3重量部未満の場合は結晶析出が認められ、プロピレングリコールの含有量が9重量部を超える場合は使用感が悪かった。
【0035】
【表4】
[図:0001424576000007.jpg]
表4が示すように、プロピレングリコールに代えて、1,3-ブチレングリコールを用いることにより、結晶析出が認められるようになった。
【0036】
【表5】
[図:0001424576000008.jpg]
」
(4)甲3
甲3には、次の記載がある。
摘記3a:
「請 求 の 範 囲
1. 1~6質量%のミノキシジル、多価アルコール、エタノール及び水を含み、さらにメントール、ビタミンEアセテート、パン卜テニルエチルエーテル、ヒノキチオール、グリチルレチン酸および塩酸ジフェンヒドラミンから成る群より選ばれる成分の1種又は2種以上を含有してなる育毛組成物。」
摘記3b:第1頁23行~第2頁2行
「 本発明者らは、上記課題を解決すべく、ミノキシジル組成物の溶剤組成や添加配合物について、鋭意研究を行った結果、溶剤として、多価アルコール/エタノール/水の三成分系を選択し、これに特定の化合物を選択、添加することにより、高い濃度でミノキシジルを配合した場合においても、安定で、しかも優れた使用感が得られることを見出し、本発明を完成した。」
摘記3c:第3頁13行~19行
「 一方、本発明の育毛組成物に添加、配合される成分としては、メン卜ール、ビタミンEアセテート、パン卜テニルエチルエーテル、ヒノキチオール、グリチルレチン酸および塩酸ジフェンヒドラミンから成る群よリ選ばれた成分(以下、「選択成分」という)が挙げられる。この選択成分のうち、特に有効性が高いものとしては、メントール、ビタミンEアセテート及びパン卜テニルエチルエーテルが挙げられ、これらを必須成分として加えておくことがより好ましい。」
摘記3d:第5頁9行~13頁
「実施例
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら制約されるものではない。
・・・
(組成)
[図:0001424576000009.jpg]
・・・
実施例3
[図:0001424576000010.jpg]
[図:0001424576000011.jpg]
[図:0001424576000012.jpg]
[図:0001424576000013.jpg]
[図:0001424576000014.jpg]
[図:0001424576000015.jpg]
」
(5)甲4
甲4には、次の記載がある。
摘記4a:
「【請求項1】1~6質量%のミノキシジル、多価アルコール、エタノール、塩酸ピリドキシン及び水を含有してなる育毛組成物。
【請求項2】さらにメントール、ビタミンEアセテート、パントテニルエチルエーテル、ヒノキチオール、グリチルレチン酸および塩酸ジフェンヒドラミンから成る群より選ばれる成分の1種以上を含有してなる請求項1記載の育毛組成物。」
摘記4b:
「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく、ミノキシジル組成物の溶剤組成や添加配含物について、鋭意研究を行った結呆、溶剤として、多価アルコール/エタノール/水の三成分系を選択し、特定の化合物を選択、添加することにより、高い濃度でミノキシジルを配合した場合においても、安定で、しかも優れた使用感が得られることを見出し、本発明を完成した。」
摘記4c:
「【0015】一方、本発明の育毛組成物に添加、配合される成分としては、塩酸ピリドキシンの他、メントール、ビタミンEアセテート、パントテニルエチルエーテル、ヒノキチオール、グリチルレチン酸および塩酸ジフェンヒドラミンから成る群より選ばれた成分(以下、「選択成分」という)が挙げられる。この選択成分のうち、特に有効性が高いものとしては、メントールが挙げられ、このメントールを必須成分として加えておくことがより好ましい。」
摘記4d:
「【0022】実施例1
ミノキシジル1.0g、L-メントール0.17g、ビタミンEアセテート0.02g、パントテニルエチルエーテル0.44g、パンテノール0.44g、塩酸ピリドキシン0.02g、ヒノキチオール0.02g、グルチルレチン酸0.02g、塩酸ジフェンヒドラミン0.01g、マクロゴール300 10.0gおよぴエタノール60.0gを混合、撹枠して溶解し、リン酸を適量添加しpHを6.0に調整した後、精製水を加えて100mLとし、ローション剤(本発明品1)を得た。
【0023】実施例2
実施例1と同様にして、表1に示す本発明品2~30のロ一ション剤を調製した。本発明品は、ふけやかゆみの発生、頭皮のうるおい感、髪の手触りの良さ、頭皮、髪の清潔感、櫛通りの良さ等をパネラーにより試験したところ、優れていた使用感が認められた。
(組成)
【0024】
【表1】
[図:0001424576000016.jpg]
【0025】
【表2】
[図:0001424576000017.jpg]
【0026】
【表3】
[図:0001424576000018.jpg]
【0027】
【表4】
[図:0001424576000019.jpg]
・・・
【0029】
【表5】
[図:0001424576000020.jpg]
」
(6)甲6
甲6には、次の記載がある。
摘記6a:
「【0011】次に、感光素301号、パントテニルエチルエーテル及びニンジンエキスの組合せを有効成分として、水溶性高分子によって得られた粘性のある基剤に配合する育毛手段について説明する。・・・パントテニルエチルエーテルは、ビタミンB複合体の一因子であるパントテン酸誘導体であり、ローヤルゼリーなどに多く含まれ、細胞賦活作用があり、毛母細胞活性化作用、抜け毛予防、発毛促進作用を有する。」
(7)甲7
甲7には、次の記載がある。
摘記7a:
「【実施例】
【0023】
実施例1
ミノキシジル5g、塩化カルプロニウム2g、1,3-ブチレングリコール10g、ジブチルヒドロキシトルエン0.2g及びエタノール60gを混合し、リン酸を適量添加しpHを6に調整した後、精製水を加えて100mLとし、液剤を得た。
【0024】
比較例1
ミノキシジル5g、塩化カルプロニウム2g、1,3-ブチレングリコール10g及びエタノール60gを混合し、リン酸を適量添加しpHを6に調整した後、精製水を加えて100mLとし、液剤を得た。
【0025】
比較例2
ミノキシジル5g、塩化カルプロニウム2g、1,3-ブチレングリコール10g、ジブチルヒドロキシトルエン0.2g及びエタノール60gを混合し、塩酸を適量添加しpHを6に調整した後、精製水を加えて100mLとし、液剤を得た。
【0026】
試験例1
実施例1、比較例1~2の液剤を使用し、これをプラスチック製容器に充填してサンプルとした。このサンプルを50℃にて2箇月間静置後、外観の確認及び波長420nmにてその吸光度を測定した。結果を表1に示した。
【0027】
試験例2
実施例1、比較例2の液剤を使用し、これをプラスチック製容器に充填してサンプルとした。このサンプルを5℃にて5日間静置後、結晶析出性を観察した。結果を表2に示した。
【0028】
【表1】
[図:0001424576000021.jpg]
【0029】
【表2】
[図:0001424576000022.jpg]
【0030】
表2から明らかなように、液剤に対して5w/v%以上のミノキシジルと塩化カルプロニウム、及びジブチルヒドロキシトルエンを配合した処方に対して、塩酸を配合した処方では結晶の析出が見られるが、リン酸を使用することで結晶の析出を防止することができた。また表1から明らかなように、ジブチルヒドロキシトルエンを配合しないと液剤が経時的に着色してしまうが、ジブチルヒドロキシトルエンの配合量を一定にした場合には、塩酸を配合するより、リン酸を配合する方が、液剤の経時的着色を抑える効果が大きいことがわかった。」
(8)甲8
甲8には、次の記載がある。
摘記8a:
「「リアッププラス」は、発毛成分「ミノキシジル」に加え、壮年性脱毛症の病理にもとづいた頭皮環境を活性化する3種類の成分を新配合した男性用の発毛剤です。「ミノキシジル」が、毛包※1に直接作用して、細胞の増殖やタンパク質の合成を促進することによって発毛効果を発揮します。その他、パントテニールエチルエーテルが毛細胞に栄養を補給し、酢酸トコフェロールが皮脂の酸化を防いで頭皮を保護し、l-メントールが頭皮に清涼感を与えます。
・・・
製品名 リアッププラス
・・・
成分 100mL中 ミノキシジル
パントテニールエチルエーテル
酢酸トコフェロール
l-メントール
効能 壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防。」
(9)乙1
乙1には、次の記載がある。
摘記乙1a:
「【0002】
ミノキシジルは、外用塗布により優れた育毛・発毛効果を発揮する薬剤であり、ローション又はエアゾールタイプのミノキシジル含有外用剤が国内外で市販されている。
【0003】
ステロイド系抗炎症薬は炎症を抑制する薬剤であり、ローション又は半固形製剤のステロイド系抗炎症薬含有外用剤が国内外で市販されている。また、ミノキシジルと酢酸ヒドロコルチゾンを配合した養育毛ヘアリキッドが提供されている(特許文献1参照)。
・・・
【0005】
しかしながら、ミノキシジル及びステロイド系抗炎症薬を含有する溶液は、保存すると経時的な着色が相乗的に進行し、商品価値の低下を招くおそれがあることがわかった。
【0006】
本発明は、ステロイド系抗炎症薬及びミノキシジルを含有する組成物の経時的な着色を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的に着色しやすい成分を液剤に配合するには、L-アルギニンやピロ亜硫酸ナトリウム及びエデト酸ナトリウム等の安定化剤を配合して改善することが考えられるが、ステロイド系抗炎症薬及びミノキシジルを含有する組成物にあっては,これらの安定化剤を配合しても着色抑制に寄与しない、あるいはむしろ着色を増強する場合があることを本発明者らは発見した。
【0008】
そこで、この問題を解決すべく鋭意検討した結果、脂溶性抗酸化剤を配合したステロイド系抗炎症薬及びミノキシジル含有組成物は、上記のような不利益がなく液剤着色防止効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。」
(10)乙2
乙2には、次の記載がある。
摘記乙2a:
「5.実験内容
下記表1及び2の処方のミノキシジル含有外用組成物を調製し、特許第7366515号明細書の熱安定試験-2([0030])と同様に、65℃(相対湿度成り行き)で5日間保管後、製剤を目視で観察し、色調を確認した。
6.実験結果
[表1]
[図:0001424576000023.jpg]
表1より、甲1の実施例2に記載のミノキシジル含有組成物において、薬理活性成分・生理活性成分として、クロルフェニラミンマレイン酸塩、センブリエキス及びアスコルビン酸を配合した場合着色が生じた(追加比較例1~3)。これに対し、パントテニールエチルエーテルを配合した追加比較例1では着色が認められなかった。
また甲1において、多価アルコールとしてプロピレングリコールとジプロピレングリコールを併用した比較例1では着色が生じるのに対し、これにパントテニールエチルエーテルを配合した追加実施例2では着色は認められなかった。
[表2]
[図:0001424576000024.jpg]
表2に示すとおり、プロピレングリコールとともに、グリセリン又はジプロピレングリコールを併用しても、着色は生じなかった。」
2 取消理由通知で通知された取消理由について
(1)文献Aを主引例とする取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)について
ア 文献Aに記載された発明
文献Aには、請求項1及び【0057】の記載(摘記Aa及びAc)からみて、
「下記の各成分を秤量し、精製水にて100mLに調製した外用育毛剤。
ミノキシジル 2.0g
ダイズタンパク質のサーモリシン分解物(ピーク平均分子量約2000)2.0g
塩酸ピリドキシン 5.0mg
パントテニルエチルエーテル 0.1g
プロピレングリコール 10.0g
95%エタノール 60.0g
精製水にて全量 100 mL」 の発明(以下「文献A発明」という。)が、記載されているといえる。
イ 本件発明1について
(ア)対比
文献A発明の「ミノキシジル」、「パントテニルエチルエーテル」及び「プロピレングリコール」は、それぞれ、本件発明1の「ミノキシジル」、「パントテニールエチルエーテル」及び「プロピレングリコール」に相当する。
文献A発明の「外用育毛剤」は組成物であるから、本件発明1の「外用組成物」に相当する。
文献A発明は、「ダイズタンパク質のサーモリシン分解物」、「塩酸ピリドキシン」、「95%エタノール」及び「精製水」を含んでいるが、本件特許明細書【0016】には「本発明の外用組成物には、更に必要により低級アルコールや水を配合することができる。」と記載され、また、同【0019】には、「本発明の外用組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲で、一般の外用剤に用いられる種々の活性成分や補助成分を配合することができる。」と記載されており、文献A発明がこれらの成分を含むことは、本件発明1との対比において相違点とはならない。
してみると、本件発明1と文献A発明とは、
「ミノキシジル、パントテニールエチルエーテル、及びプロピレングリコールを含有する外用組成物。」という点において一致し、以下の点で相違する。
相違点A1:
本件発明1は、「ミノキシジル」の濃度が「5w/w%以上」であるのに対し、文献A発明においては、全量100mLに対して2.0gである点。
相違点A2:
本件発明1は、「リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸及びグルコン酸よりなる群から選択される1種または2種以上の酸」を含有するのに対し、文献A発明は、「塩酸ピリドキシン」を含有している点。
相違点A3:
本件発明1は、ミノキシジルとパントテニールエチルエーテルの量比が、「ミノキシジル5gに対してパントテニールエチルエーテルの配合量が1g」であるのに対し、文献A発明は、「ミノキシジル2.0g」に対して「パントテニールエチルエーテル」の配合量が「0.1g」である点。
相違点A4:
本件発明1は、組成物のpHが「5.0~7.0」であるのに対し、文献A発明は、不明である点。
(イ)判断
事案に鑑み、まず、上記相違点A2について検討する。
文献A発明の「塩酸ピリドキシン」は、「リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸及びグルコン酸よりなる群から選択される1種または2種以上の酸」ではない。また、文献A発明の外用育毛剤には、ほかに上記「酸」に相当する成分は含まれてない。
よって、上記相違点A2は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、文献Aに記載された発明であるとはいえない。
また、文献A発明の「塩酸ピリドキシン」は、摘記Abの記載からみて、育毛剤の有効成分として添加されているものであると認められるので、これを「リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸、グルコン酸」とする動機付けはない。
(ウ)小括
よって、相違点A1、A3及びA4について検討するまでもなく、本件発明1は、文献Aに記載された発明であるとはいえず、また、当該発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の外用組成物について、「(但し、グリセリン、ポリエチレングリコール及びジプロピレングリコールよりなる群から選ばれる1種以上を含有するものを除く)」とした発明である。
そして、上述のとおり、本件発明1は、文献Aに記載された発明であるとはいえず、また、文献Aに記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえないから、本件発明1がより限定された本件発明2も、文献Aに記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(2)甲1を主引例とする取消理由2(進歩性欠如)について
ア 甲1に記載された発明
甲1には、請求項1及び実施例1の記載(摘記1a及び1d)からみて、
「5重量%のミノキシジル、プロピレングリコール、ブチレングリコール、酒石酸、エタノール及び精製水を含有する、pH6.8である外用組成物。」
の発明(以下「甲1発明」という。)が、記載されているといえる。
イ 本件発明1について
(ア)対比
甲1発明の「5重量%のミノキシジル」、「プロピレングリコール」及び「外用組成物」は、本件発明1の「5w/w%以上のミノキシジル」、「プロピレングリコール」及び「外用組成物」に相当する。
甲1発明の「酒石酸」は、本件発明1の「リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸及びグルコン酸よりなる群から選択される1種または2種以上の酸」に相当する。
甲1発明の「pH6.8」は、本件発明1の「pH5.0~7.0」に相当する。
甲1発明は、「ブチレングリコール」、「エタノール」及び「精製水」を含んでいるが、本件特許明細書【0011】には「本発明の外用組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲でプロピレングリコール以外の多価アルコールを含んでもよい」と記載され、また、同【0016】には「本発明の外用組成物には、更に必要により低級アルコールや水を配合することができる。」と記載されており、甲1発明がこれらの成分を含むことは、本件発明1との対比において相違点とはならない。
してみると、本件発明1と甲1発明は、
「a)5w/w%以上のミノキシジル、
c)プロピレングリコール、及び
d)リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸及びグルコン酸よりなる群から選択される1種または2種以上の酸
を含有し、
pH5.0~7.0である外用組成物。」
という点において一致し、以下の点で相違する。
相違点1:
本件発明1は、「ミノキシジル5gに対してパントテニールエチルエーテルの配合量が1g」となる量の「パントテニールエチルエーテル」を含有するのに対し、甲1発明においては「パントテニールエチルエーテル」を含有していない点。
(イ)判断
上記相違点1について検討する。
a パントテニールエチルエーテルを配合する動機付けについて
甲1発明の外用組成物は、甲1の【請求項8】(摘記1a)及び【0002】(摘記1b)の記載より、「育毛、養毛、又は発毛用」の外用組成物であるといえるところ、甲1の【0022】(摘記1c)には、添加成分として「細胞賦活化成分」等の「薬理活性成分・生理活性成分」(以下「薬理成分」ということがある。)を添加し得る旨の記載がある。
一方、パントテニールエチルエーテルは、毛母細胞活性化作用を有する成分であること(甲6の摘記6a)及び毛細胞に栄養を補給する成分であること(甲8の摘記8a)が知られており、また、甲3、4及び8(摘記3a~3c、摘記4a~4c及び摘記8a)に示されるとおり、ミノキシジルを含む育毛剤に配合される成分としてよく知られた成分であり、甲8に記載のように(摘記8a)、発毛成分であるミノキシジルに加え、毛細胞に栄養を補給する成分であるパントテニールエチルエーテルを併用した発毛剤製品が知られている。
そうしてみれば、「育毛、養毛、又は発毛用」の外用組成物である甲1発明に、「細胞賦活化成分」としてパントテニールエチルエーテルを添加する一応の動機付けがあるといえる。
b 本件発明1の効果について
(a)本件発明1は、本件特許明細書【0004】、【0008】等の記載からみて、ミノキシジルと酸を含有する組成物に、パントテニールエチルエーテルを配合したミノキシジル含有外用組成物において、着色が増悪するという課題を、プロピレングリコールを配合することにより解決したものであり、経時的な着色を抑制するとの効果を奏するものであると認められる。
実際に、本件特許明細書の実施例には、ミノキシジル、グリセリン、酸(リン酸)、エタノール及び水を含む組成物(参考例1)は、経時的な着色が生じなかった(無色のままであった)のに対し、参考例1とはパントテニールエチルエーテルを含む点のみが異なる組成物(比較例6)は、経時的な着色が進行した(微黄色に変化した)ことが示されており(【表1】及び【表5】)、上記課題を認識することができる。また、同じく実施例において、ミノキシジル、酸(リン酸)及びパントテニールエチルエーテルを含む組成物に、プロピレングリコールを配合したもの(実施例3及び4)は、着色が経時的に進行しなかったのに対し、プロピレングリコール以外の多価アルコール(グリセリン、ポリエチレングリコール)を配合したもの(比較例6~8)は、着色が経時的に進行したことが示されており(【表1】及び【表5】)、プロピレングリコールを配合することにより上記課題を解決することができ、本件発明1は、経時的な着色を抑制するとの効果を奏するものであることが理解できる。
(b)一方、甲1には、ミノキシジルを含む組成物において、プロピレングリコールとブチレングリコールを所定の配合比で配合することにより、ミノキシジルに起因する経時的な着色を抑制したことが記載されているものの、当該組成物に、パントテニールエチルエーテルなどの薬理成分を配合することにより、組成物の着色がどのようになるかについて何ら記載はない。
また、本件特許の優先日に公知の文献である乙1には、ミノキシジルを含む組成物において、追加の薬理成分を添加した際に、着色が生じることが示されており(摘記乙1a)、本件特許の優先日時において、ミノキシジルを含む組成物に薬理成分を配合しても、組成物の着色に影響を及ぼさないとの技術常識があったとはいえず、むしろ、薬理成分を配合することによって、ミノキシジルを含む組成物が着色することもあるということが知られていたといえる(このことは、特許権者が提出した実験成績証明書(乙2)において、ミノキシジル及び酸(酒石酸)を含む組成物に、パントテニールエチルエーテル以外の薬理成分(クロルフェニラミンマレイン酸、センブリエキス、アスコルビン酸)を配合したミノキシジル製剤の着色が経時的に進行するとの結果(摘記乙2aの追加比較例1~3)と整合する。)。
さらに、上述のとおり、本件特許明細書の実施例において、多価アルコールの中でも、プロピレングリコールを配合したもの(実施例3及び4)が上記課題を解決できることが示されていることに加え、上記実験成績証明書の乙2には、パントテニールエチルエーテル以外の薬理成分(クロルフェニラミンマレイン酸、センブリエキス、アスコルビン酸)を配合したミノキシジル製剤の着色の増悪は、プロピレングリコールを配合しても抑制されないという結果(摘記乙2aの追加比較例1~3)が示されている。
(c)これらのことを勘案すると、甲1に、甲1発明がミノキシジルに起因する経時的な着色を抑制したことが記載されているからといって、当業者は、甲1発明にパントテニールエチルエーテルを配合したミノキシジル含有外用組成物において、着色が経時的に増悪するかどうかを予測できないし、パントテニールエチルエーテルによる着色の増悪が、甲1発明に含まれるプロピレングリコールにより抑制されることまで予測し得ない。
c そうしてみれば、パントテニールエチルエーテルが育毛剤等に用いられるミノキシジル含有外用組成物に配合される成分としてよく知られていたとしても、経時的な着色を抑制することを期待して、甲1発明にパントテニールエチルエーテルを配合することは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。また、ミノキシジルと酸を含む外用組成物において、パントテニールエチルエーテルを添加した際に、プロピレングリコールによってその着色を抑制できる効果は、当業者の予測を超える顕著なものといえる。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
また、甲1に記載された発明を、実施例2~8(摘記1d)に基づいて認定しても、本件発明1は、実施例1に基づいて認定した甲1発明と同様の相違点を有し、その判断は上述したものと同様である。
ウ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の外用組成物について、「(但し、グリセリン、ポリエチレングリコール及びジプロピレングリコールよりなる群から選ばれる1種以上を含有するものを除く)」とした発明である。
上述のとおり、本件発明1が甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえないから、本件発明1がより限定された本件発明2も、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(3)甲2を主引例とする取消理由2(進歩性欠如)について
ア 甲2に記載された発明
甲2には、請求項1及び実施例1の記載(摘記2a及び2d)からみて、
「5重量%のミノキシジル、プロピレングリコール、酒石酸、水、及びエタノールを含有する、pH6.8である外用組成物。」
の発明(以下「甲2発明」という。)が、記載されているといえる。
イ 本件発明1について
(ア)対比
甲2発明の「5重量%のミノキシジル」、「プロピレングリコール」及び「外用組成物」は、本件発明1の「5w/w%以上のミノキシジル」、「プロピレングリコール」及び「外用組成物」に相当する。
甲2発明の「酒石酸」は、本件発明1の「リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸及びグルコン酸よりなる群から選択される1種または2種以上の酸」に相当する。
甲2発明の「pH6.8」は、本件発明1の「pH5.0~7.0」に相当する。
甲2発明は、「エタノール」及び「精製水」を含んでいるが、上記(2)イ(ア)で述べた理由と同様の理由により、甲2発明がこれらの成分を含むことは、本件発明1との対比において相違点とはならない。
してみると、本件発明1と甲2発明は、
「a)5w/w%以上のミノキシジル、
c)プロピレングリコール、及び
d)リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸及びグルコン酸よりなる群から選択される1種または2種以上の酸
を含有し、
pH5.0~7.0である外用組成物。」
という点において一致し、以下の点で相違する。
相違点2:
本件発明1は、「ミノキシジル5gに対してパントテニールエチルエーテルの配合量が1g」となる量の「パントテニールエチルエーテル」を含有するのに対し、甲2発明においては「パントテニールエチルエーテル」を含有していない点。
(イ)判断
上記相違点2について検討する。
a 甲2の【0019】(摘記2c)には、添加成分として「細胞賦活化成分」等の「薬理活性成分・生理活性成分」を添加し得る旨の記載がある。
そして、上記(2)イ(イ)aで述べた理由と同様の理由により、甲2発明において、薬理成分としてパントテニールエチルエーテルを添加することは一応の動機付けがあるといえる。
b 一方、甲2には、ミノキシジルを含む組成物において、ミノキシジルとプロピレングリコールを所定の配合比で配合し、pHを6.5~7.5とすることにより、ミノキシジルに起因する経時的な着色を抑制したことが記載されているものの、ミノキシジルを含む組成物に、パントテニールエチルエーテルなどの薬理成分を配合することにより、組成物の着色がどのようになるかについての記載はないし、その着色がプロピレングリコールを選択して配合することにより、経時的な進行が抑えられることについても何ら記載されていない。
それゆえ、上記(2)イ(イ)bで述べた理由と同様に、甲2に、甲2発明がミノキシジルに起因する経時的な着色を抑制したことが記載されているからといって、当業者は、甲2発明にパントテニールエチルエーテルを配合したミノキシジル外用組成物において、着色が経時的に増悪するかどうかを予測できないし、パントテニールエチルエーテルによる着色の増悪が、甲2発明に含まれるプロピレングリコールにより抑制されることまで予測し得ない。
c そうしてみれば、パントテニールエチルエーテルが育毛剤等に用いられるミノキシジル含有外用組成物に配合される成分としてよく知られていたとしても、経時的な着色を抑制することを期待して、甲2発明にパントテニールエチルエーテルを配合することは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。また、ミノキシジルと酸を含む外用組成物において、パントテニールエチルエーテルを添加した際に、プロピレングリコールによってその着色を抑制できる効果は、当業者の予測を超える顕著なものといえる。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
また、甲2に記載された発明を、実施例2~6(摘記2d)に基づいて認定しても、本件発明1は、実施例1に基づいて認定した甲2発明と同様の相違点を有し、その判断は上述したものと同様である。
ウ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の外用組成物について、「(但し、グリセリン、ポリエチレングリコール及びジプロピレングリコールよりなる群から選ばれる1種以上を含有するものを除く)」とした発明である。
上述のとおり、本件発明1が甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえないから、本件発明1がより限定された本件発明2も、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(4)申立人の主張について
ア 申立人は、甲1及び甲2に基づく進歩性について、申立書及び令和6年12月2日提出の意見書において下記の(ア)~(エ)の主張を、また、同意見書において、主に特許権者の意見書における主張に対し下記の(オ)~(ケ)の主張をしている。
(ア)本件発明の効果が当然に予測し得るもので、格別顕著なものではないこと(申立書(A2-2))
甲1及び甲2では、ミノキシジルを含有する外用組成物において、熱や光に曝されても着色し難い組成物が提供されているところ、甲3及び甲4では、ミノキシジル製剤に、安定(経時的な着色の抑制)で、優れた使用感を付与する目的で、パントテニルエチルエーテル(パントテニールエチルエーテル)を使用でき、使用感やミノキシジルの安定性あるいは溶剤系組成等を考慮しながらパントテニールエチルエーテルを最終組成物中で5~1.5%配合できることが記載されている。
つまり、これらの文献に接した当業者であれば、甲1及び甲2で提供された組成物の安定性(着色)や使用感を損なうことなく、少なくとも最終組成物中で0.5~1.5%のパントテニールエチルエーテルを配合でき、これにより製剤の経時的な着色を抑制したミノキシジル含有外用組成物が得られることは当然に予測し得るものであり、格別顕著なものではない。
(イ)パントテニールエチルエーテルにより、安定性が低下(製剤の着色が増悪)するという課題が存在しないか、仮に存在したとしても参考例1に対応する特定の組成物における課題に過ぎないこと(申立書(A2-2)(イ))
下記のa及びbの理由により、本件特許明細書の参考例1と比較例6の製剤における着色の程度のごくわずかな差(「無色」と「微黄色」)は、単に、「リン酸の量」の相違による着色が確認されたに過ぎないので、本件発明におけるパントテニールエチルエーテルにより、着色が増悪するという課題が存在することは認識できない。
また、仮に着色が増悪されることが事実であるとしても、参考例1の製剤において確認したに過ぎず、グリセリン以外の他の多価アルコールを使用した場合や、リン酸以外の酸を使用した場合において着色が増悪するという課題が生じるものとは認められない。
a 本件特許明細書の参考例1と比較例6の製剤は、pHに影響を与えるパントテニールエチルエーテルを配合していて同じpH6.1であるから、リン酸の量が異なるものと推認される。
b 酸の中でも、特に「リン酸」が、ミノキシジル含有製剤における着色を抑えることも知られている(甲7の実施例)ことからも、参考例1と比較例6の製剤における着色の程度の差は、リン酸の量の相違において確認されたに過ぎないと推認される。
(ウ)パントテニールエチルエーテル以外の要因が安定性(製剤の着色)に影響を与えること(申立書(A2-2)(ロ))
下記aのとおり、パントテニールエチルエーテル以外の要因が安定性(製剤の着色)に影響を与えるから、本件発明の効果は、パントテニールエチルエーテルの配合によるものではない。
また、下記bのとおり、プロピレングリコールが着色を抑制する効果は周知であるから、本件発明の効果は、本件発明の進歩性を肯定するものではない。
a 甲1の実施例と比較例(摘記1d)を比較すると、パントテニールエチルエーテルを含まなくても、プロピレングリコールでない多価アルコール(グリセリン、ジプロピレングリコール)の配合により、着色が生じる(着色の程度に差が生じる)結果となっている。
よって、本件発明の着色は、パントテニールエチルエーテルの配合とは関係なく上記多価アルコールにより生じるものであるから、本件発明の効果は、パントテニールエチルエーテルの配合に係る相違点に係る効果ではない。
b 仮にプロピレングリコールに着色を抑制する効果があるのであるとしても、甲1や甲2に記載されるとおり、プロピレングリコールが着色抑制に有効であることは周知であり、進歩性を肯定する効果ではない。
(エ)本件発明全体において存在する課題(奏される効果)でないこと(申立書(A2-2)(ハ))
甲1及び甲2を参酌すると、下記a及びbのとおり、プロピレングリコール以外の多価アルコール、プロピレングリコールの量、pH、リン酸の有無が着色に影響するので、それらの条件を考慮しない本件発明は、本件発明全体において、その効果が奏されるものではない。
a 甲1の比較例1及び3(摘記1d)に示されるとおり、プロピレングリコール以外の多価アルコールを含む外用組成物は、着色の傾向が異なるので、パントテニールエチルエーテルを配合したからといって着色が抑えられるものではない。
b 甲2の比較例1、2及び6(摘記2d)に示されるとおり、ミノキシジルとプロピレングリコールの重量比、pHの違い、酸の種類(酒石酸かリン酸か)によって着色の傾向が異なることが看取できる。
(オ)本件出願時においてパントテニールエチルエーテルによる着色の可能性を認識できないこと(意見書(A2-2)(ニ)(ニ-1))
特許権者は乙1を提出することにより、パントテニールエチルエーテルにより経時的な着色が生じる可能性を否定できないと主張するが、乙1は、ステロイド系抗炎症薬による着色に関するものであって、パントテニールエチルエーテルによる着色を予測する理由にはならない。
(カ)論点(効果・課題)のすり替えについて(意見書(A2-2)(ニ)(ニ-2))
特許権者は、ミノキシジル、プロピレングリコール、ブチレングリコール及び酒石酸を含む製剤に、パントテニールエチルエーテルを配合しても着色しないのに対し、パントテニールエチルエーテル以外の「クロルフェニラミンマレイン酸塩」「センブリエキス」「アスコルビン酸」を配合すると着色したとする実験結果(乙2の追加実施例1~3及び追加比較例1~3)を提出している。
一方、本件特許明細書には、パントテニールエチルエーテルの配合対象によって、着色の態様・挙動が異なることのみが確認されており、パントテニールエチルエーテル以外の薬理成分の配合によって、着色する配合対象が存在することについては一切認識されていない。
乙2の実験結果は、着色の態様・挙動は、配合成分(薬理成分)によっても決まることを主張したいがためになされたものであり、これは、本件特許明細書に記載された効果・課題のすり替えである。
(キ)乙2の実験結果は格別顕著な効果を示すものではないこと(意見書(A2-2)(ニ)(ニ-3))
特許権者が乙2で示した実験結果は、下記a及びbのとおり、本件発明の効果が格別顕著なものであることを示すものではない。
a 甲1の実施例2と追加実施例1の実験結果は保存期間が異なるので、単純比較できない。
b 仮に、同じ保存条件下であったとしても、甲1の実施例2のように既に着色が抑制されている配合対象に、パントテニールエチルエーテルを配合しても着色の態様が変わらないことは、当然に予測できることであり、格別顕著な効果とはいえない。
また、追加比較例1~3では、「クロルフェニラミンマレイン酸塩」「センブリエキス」「アスコルビン酸」を配合した製剤が着色したことが記載されているが、これらの成分とパントテニールエチルエーテルとは化学種等において異なるので、この結果があっても、既に着色が抑制されている配合対象に、パントテニールエチルエーテルを配合しても着色の態様が変わらないことは予想できるものである。
(ク)実験結果は前記(イ)~(エ)を説明できるものではないこと(意見書(A2-2)(ニ)(ニ-4))
上記乙2の実験結果を参酌できたとしても、上記(イ)~(エ)について説明できるものではなく、上記結論に変わりはない。
(ケ)申立人においても本件発明の構成要件を充足しても着色が抑制されないことを確認していること(意見書(A2-2)(ニ)(ニ-5))
申立人は、下記の表に示す製剤を調製し試験した結果を示し、下記a~cの説明をするとともに、本件発明全体について、プロピレングリコールの配合により着色を抑制することができない旨主張している。
[図:0001424576000025.jpg]
a 実験Aと実験Bの結果を比較すると、酸が「クエン酸」の場合に「無色」であるが、パントテニールエチルエーテルの配合により「微黄色」となり、着色の「増悪」を示した。
b 実験Cと実験Dの結果を比較すると、酸が「乳酸」の場合には、パントテニールエチルエーテルの有無にかかわらず「微黄色」であり着色の「抑制」はない。
c 実験Eと実験Fの結果を比較すると、水の量を20gに変更するだけで、パントテニールエチルエーテルを配合しない状態で、着色は「抑制」されないことがわかる。
イ しかしながら、下記のとおり申立人の主張は採用できない。
(ア)について
上記(2)イ(イ)b及び(3)イ(イ)bで述べたとおり、甲1及び甲2は、あくまでもパントテニールエチルエーテル等の薬理成分を配合することを特定していない組成物における経時的な着色の抑制について示されているのみであり、当該効果がパントテニールエチルエーテル等の薬理成分を添加した際にも同様に奏されるという技術常識もないので、甲1又は甲2に記載された事項に基づいて、パントテニールエチルエーテルを添加した際にも添加前と同様に着色の抑制が維持されることを当業者が予測できるとはいえない。
また、甲3及び甲4には、組成物全体としての安定性についての言及はあるが、パントテニールエチルエーテルによる着色性についての言及がないので、甲3及び甲4の記載からも本件発明の効果を当業者が予測できるとはいえない。
(イ)について
申立人の主張は、パントテニールエチルエーテルが「pHに影響を与える」と述べているだけであり、比較例6でパントテニールエチルエーテルを配合することにより、リン酸の量が参考例1に比べ、増加しているのか、減少しているのか明らかでない(パントテニールエチルエーテルが塩基性であることを考えれば、リン酸の量は増加していると考えられる。申立人の主張に従えば、リン酸の量が増加していれば、着色が抑制されるはずであるが、比較例6は、着色が増悪しており、申立人の主張は、矛盾したものといえる。)。
仮にリン酸の量が減少しているとしても、甲7には、ミノキシジルと塩化カルプロニウム及びジブチルヒドロキシトルエンを含む液剤におけるリン酸の経時的着色への影響が記載されているだけであるから(甲7の実施例(摘記7a))、リン酸の量の減少が、成分組成の異なる比較例6が経時的に着色したことの理由にはならない。
また、上記(2)イ(イ)bで述べたとおり、本件特許明細書から、ミノキシジルと酸を含有する組成物に、パントテニールエチルエーテルを配合したミノキシジル含有外用組成物において、着色が増悪するという課題は認識できる。本件特許明細書の比較例には、多価アルコールとして、ポリエチレングリコール400を配合した外用組成物(比較例7及び8)の着色が増悪することが示されており(【表1】及び【表5】)、実験成績証明書である乙2には、酸として酒石酸を用いたものが追加比較例として示されているから、グリセリン以外の多価アルコールを使用した場合や、リン酸以外の酸を使用した場合においても、着色が増悪するという課題があるといえる。
(ウ)について
aについて
上記(2)イ(イ)bで述べたとおり、パントテニールエチルエーテルを配合しないグリセリンを含むミノキシジル製剤(参考例1)は経時的な着色が抑制されるのに対し、パントテニールエチルエーテルを配合したグリセリンを含むミノキシジル製剤(比較例6)は経時的な着色が抑制されていないことから、ミノキシジルと酸を含有する組成物に、パントテニールエチルエーテルを配合したミノキシジル含有組成物において、着色が増悪するという課題は存在するといえる。
一方、甲1の実施例と比較例との結果の違いは、ミノキシジルに起因する経時的な着色を、プロピレングリコールとブチレングリコールを特定の比率で配合することにより抑制できることを示すものであり、比較例でプロピレングリコール以外の多価アルコールの存在により着色が生じるからといって、本件発明の上記課題の存在を否定するものとはいえない。そして、本件特許明細書の実施例3と比較例6との比較から、ミノキシジルと酸を含有する組成物に、パントテニールエチルエーテルを配合したミノキシジル含有組成物に、プロピレングリコールを配合することにより、上記課題を解決できたと理解できるから、本件発明の効果は、プロピレングリコールを配合したことによる効果といえる。
bについて
上記「(ア)について」で述べたとおり、甲1や甲2に記載の着色が抑制される効果はパントテニールエチルエーテル等の薬理成分を配合することを特定しない組成物に関してであり、それを根拠に、パントテニールエチルエーテルを添加した際にも着色が抑制されたままであることを当業者が予測できるとはいえない。
(エ)について
上記(2)イ(イ)bで述べたとおり、本件特許明細書において、ミノキシジル、酸、パントテニールエチルエーテルを含む組成物におけるプロピレングリコールによる着色の抑制効果は示されているといえる。
そして、甲1や甲2を参酌すると、その着色の抑制の度合いについて、プロピレングリコールの量、pH及び酸の種類は影響を及ぼす可能性はあるといえるが、本件発明全体において、当該効果が奏されないといえるまでの根拠とはならない。
(オ)について
乙1は、ミノキシジルを含む組成物における薬理成分の添加に起因して着色が生じ得る(着色が生じないとは予測できない)ことが公知であったことを示すために提出されたものであり(特許権者が提出した意見書の2(2)イ(エ)を参照。)、パントテニールエチルエーテルによる着色が公知であることの直接的な根拠にはならないとしても、当業者が、パントテニールエチルエーテル添加により着色が生じ得ることを予測する根拠となるものである。
(カ)について
特許権者の提出した意見書の2(2)イ(エ)の記載によれば、乙2は、甲1発明又は甲2発明に該当する組成物に対し、パントテニールエチルエーテル以外の薬理成分を添加した場合、プロピレングリコールによる着色抑制の効果が奏されないことがあるという結果(追加比較例1~3)をもって、甲1又は甲2に記載された事項からは、本件発明の効果は予測できないことを立証するために提出されたものである。それゆえ、本件特許明細書に記載の課題や効果についての論点のすり替えがあるとは解されない。
そして、乙2の実験結果は、ミノキシジルと酸を含有する組成物に、パントテニールエチルエーテルを配合したミノキシジル含有外用組成物において、着色が増悪するという課題を、プロピレングリコールを配合することにより解決できるということを示すものであり、本件特許明細書に記載の範囲でなされたものであるから、参酌することは許されるものである。
(キ)について
上記「(カ)について」で述べたように、乙2の実験結果は、本件発明の効果が当業者の予測を超えることの根拠となり得る。
また、a及びbについては下記のとおりであると解されるので、特許権者の提出した実験結果は、本件発明の効果を裏付けるものであると認められる。
aについて
本件発明の実施例は、65℃における5日間の試験でなされたものであり、乙2で示された追加試験において保存期間が異なることが、本件発明の効果を参酌できないことの理由とはならない。
bについて
上記「(ア)について」で述べたとおり、甲1や甲2に記載の着色が抑制される効果はパントテニールエチルエーテル等の薬理成分を配合することを特定しない組成物に関してであり、それを根拠に、パントテニールエチルエーテルを添加した際にも着色が抑制されたままであることを当業者が予測できるとはいえない。
(ク)について
上記「(イ)について」~「(エ)について」において述べたとおり、申立人の主張する理由は採用できず、乙1及び乙2も、その理由を補強する証拠であるといえる。
(ケ)について
申立人が意見書において提示した実験B、D及びFにおける組成は、確かにその外観において着色したことが示されている。
しかしながら、本件発明の効果である「着色の抑制」とは、着色を完全に抑制する(無色のままとする)ことを意味するのではなく、ミノキシジルと酸を含有する組成物に、パントテニールエチルエーテルを配合した組成物に生じる着色の増悪を、(プロピレングリコールの配合によって)抑えることを意味するところ、上記実験は、いずれもプロピレングリコールを含む組成物に対して、パントテニールエチルエーテルを配合するかどうかによる着色の違いを比較したものであり、プロピレングリコールを含まない組成物と比較して着色の抑制の有無を確認したものではない。それゆえ、当該実験結果をもって、プロピレングリコールによる着色抑制が生じていないとはいえず、本件発明が本件発明全体において本件発明の効果を奏するものでないとする根拠とはなり得ない。
(5)取消理由3(サポート要件違反)について
ア サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 本件発明の課題
本件発明の解決しようとする課題は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明(特に【0004】)の記載からみて、ミノキシジルと酸を含有する組成物に、パントテニールエチルエーテルを配合したミノキシジル含有外用組成物において、製剤の着色を抑制したミノキシジル含有外用組成物を提供することであると認められる。
ウ 判断
(ア)本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0006】には、
「本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、・・・パントテニールエチルエーテル・・・を配合したミノキシジル含有外用組成物を製造する場合は、特定の多価アルコールを選択することにより、経時的な製剤の着色を抑制したミノキシジル含有外用組成物が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。」
と記載され、また同【0011】には、
「本発明の外用組成物において用いる多価アルコールは、本発明の効果である、製剤の経時的な着色を抑制する点からプロピレングリコールである。プロピレングリコールの配合量は、全組成物中好ましくは2~55w/w%であり、より好ましくは2~35w/w%であり、さらに好ましくは2~15w/w%である。本発明の外用組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲でプロピレングリコール以外の多価アルコールを含んでもよいが、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールは配合しない方が本発明の効果の点から好ましく、プロピレングリコールのみを配合することが本発明の効果の点から最も好ましい。」
と記載されている。
また、本件特許明細書の実施例では、ミノキシジル5w/w%に対し、グリセリンを含む試験液(参考例1)、プロピレングリコール及びパントテニールエチルエーテルを含む試験液(実施例3)、プロピレングリコール以外の多価アルコール(グリセリン又はポリエチレングリコール400)及びパントテニールエチルエーテルを含む試験液(比較例6~8)について、65℃(相対湿度成り行き)で5日間保管後の色調を確認した結果が示され、パントテニールエチルエーテルを含まない参考例1は無色のままであるところ、パントテニールエチルエーテルを配合した比較例6~8が微黄色又は黄色に着色する一方で、実施例3及び4は無色のままであることが示されている。
これらの記載からみて、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、パントテニールエチルエーテルを配合したミノキシジル含有外用組成物において、プロピレングリコールを添加することにより、上記課題を解決できることが記載されているといえる。
(イ)ここで、本件発明1は、多価アルコールとして、プロピレングリコールのみが含まれるものに限定されておらず、上記【0011】に
「本発明の外用組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲でプロピレングリコール以外の多価アルコールを含んでもよい」
と記載されるように、プロピレングリコール以外に、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールを含む外用組成物も包含する。一方、同じく【0011】には、
「多価アルコールを含んでもよいが、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールは配合しない方が本発明の効果の点から好ましく、プロピレングリコールのみを配合することが本発明の効果の点から最も好ましい。」
とも記載され、プロピレングリコール以外の多価アルコール(グリセリン又はポリエチレングリコール400)及びパントテニールエチルエーテルを含む試験液(比較例6~8)について、パントテニールエチルエーテルを配合した比較例6~8が微黄色又は黄色に着色することが示されていることから、プロピレングリコールを用いた場合においても、プロピレングリコール以外のほかの多価アルコールを配合した際には経時的な着色が生じるという疑義があり、取消理由3として通知された。
しかしながら、特許権者は、乙2の実験成績証明書を提出し、上記【0011】に記載の
「本発明の外用組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲でプロピレングリコール以外の多価アルコールを含んでもよい」
ことを確認した実験結果を示している(乙2aの表2)。この実験結果によれば、ミノキシジル、パントテニールエチルエーテル、酸、及びプロピレングリコールを含む組成物において、1,3-ブチレングリコ-ル、ジプロピレングリコール、及びグリセリンを配合した際にも経時的な着色が抑制されたことが示されているので、プロピレングリコールに加えて、ほかの多価アルコールを配合することによって、本件発明の課題が解決できないとはいえない。
よって、本件発明1は、発明の詳細な説明から、上記課題を解決できることを当業者が認識できる範囲のものであると認められる。
また、本件発明2は、効果の点から好ましくない多価アルコールであるグリセリン、ポリエチレングリコール又はジプロピレングリコールを含有するものを除くことを特定したものであるから、本件発明1と同様に、発明の詳細な説明から、上記課題を解決できることを当業者が認識できる範囲のものであると認められる。
エ 申立人の主張について
(ア)申立人は、取消理由3に関連して、申立書及び意見書において、概ね下記のa及びbの主張を、また意見書においてcの主張をしていると認められる。
a 製剤の着色抑制の課題を認識できないこと(申立書(2A))
(a)本件特許明細書には、本件発明に対応するものとして、実施例3及び4の製剤の結果が示されているものの、上記(4)ア(イ)の内容と同様の理由により、製剤の着色抑制の課題を認識できないし、着色が「抑制」されたことを認識できない。
(b)実施例3及び4において、パントテニールエチルエーテルを含まない製剤の着色の程度が、実施例3及び4の製剤に比べて強いことが確認できなければ、「抑制」することを認識できない。
(c)甲1、甲2及び甲7の記載によれば、実施例3及び4においてパントテニールエチルエーテルを含まない製剤であれば、「無色」ひいては、パントテニールエチルエーテルを配合しても着色が抑制されないことが強く推認される。
b 本件発明の全体において課題を解決できることを認識できないこと(申立書(2A))
本件特許明細書の実施例3及び4においてパントテニールエチルエーテルを含まない製剤においてたまたま「無色」であったとしても、当該製剤とは異なるものの本件発明で規定する構成要件を充足するか又は充足してもその一部である製剤において、全く異なる着色の傾向を示すものと認められるケースは、下記のとおり(上記2(4)ア(エ)の「(エ)本件発明全体において存在する課題(奏される効果)でないこと(申立書(A2-2)(ハ))」を参照のこと)種々存在するのであり、このようなケースについてまで、パントテニールエチルエーテルを配合したからといって、着色を「抑制」ないし「維持」できるものとは到底認識できない。
(a)プロピレングリコールに加えて他の多価アルコールを含むケース(甲1の比較例1、3)や、ミノキシジルとプロピレングリコールの比率が1:3~1:9を充足しないケース(甲2の比較例等)
(b)組成物におけるプロピレングリコールの量が十分でないケース(甲2の【0012】、甲1の【0013】等)
(c)pHが「6.5未満」や「7.5超であるケース(甲2(比較例・実施例等))
(d)酸がリン酸以外のもの(酒石酸、塩酸等)であるケース(甲2の比較例)
c 特許権者の意見書での主張が失当であること
特許権者は、本件発明が本件発明の課題を解決することについて乙2等を提出して主張しているが、申立人においても、上記2(4)ア(ケ)において述べたとおり、本件発明の構成要件を充足しても着色が抑制されないとする具体的な実験結果を提示しており、多価アルコールの態様に限っても、本件発明の課題を解決できるものとは認められない。
(イ)しかしながら、下記のとおり申立人の主張は採用できない。
aについて
上記(4)イ「(イ)について」で述べたように、(4)ア(イ)の理由によって、本件発明の課題が存在しないとはいえない。また、上記(2)イ(イ)bで述べたように、実施例3及び4において、パントテニールエチルエーテルを含まない製剤の着色の程度を確認する記載がなくても、比較例6と参考例1との比較及び各実施例の記載から、プロピレングリコールによる着色抑制の効果を把握することができる。
さらに、甲1、甲2及び甲7の記載については、上記(4)イ「(ア)について」及び「(イ)について」で述べたとおりであり、これらの記載を参酌しても、本件発明の課題が存在し、その課題がプロピレングリコールを配合することによって解決できることを否定できないことは、既に述べたとおりである。
bについて
上記(2)イbで述べたとおり、本件特許明細書において、ミノキシジル、酸、パントテニールエチルエーテルを含む組成物におけるプロピレングリコールによる着色の抑制効果は示されているといえる。
そして、甲1や甲2を参酌すると、その着色の抑制の度合いについて、プロピレングリコールの量、pHや酸の種類は影響を及ぼす可能性はあるが、本件発明全体において、プロピレングリコールが着色を抑制せず、本件発明の課題が解決できないといえるまでの根拠とはならない。
cについて
上記(4)イ「(ケ)について」において述べたとおり、申立人の提出した実験B、D及びFにおける組成は、確かにその外観において着色をしているが、上記実験は、いずれもプロピレングリコールを含む組成物に対して実施されたものであり、プロピレングリコールを等の薬理成分を配合することを特定していない組成物に対して比較されたものではない。
したがって、当該実験結果をもって、プロピレングリコールによる着色抑制が生じておらず、したがって、本件発明が本件発明全体において本件発明の課題が解決できないとする根拠とはなり得ない。
オ まとめ
よって、本件発明1及び2は、本件特許明細書の発明の詳細な発明に記載されたものであるといえるので、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
(6)取消理由のまとめ
以上のとおりであるから、取消理由1~3は理由がない。
3 取消理由で採用しなかった申立理由について
(1)申立理由3について
ア 甲3に記載された発明
甲3には、請求項1及び「本発明品37」の記載(摘記3a及び3d)からみて、
「5.0gのミノキシジル、1.0gのパントテニールエチルエーテル、リン酸、L-メントール、ビタミンEアセテート、1,3-ブチレングリコール、エタノール及び精製水を含有する、pH6.5で全量が100mLである外用組成物。」
の発明(以下「甲3発明」という。)が、記載されているといえる。
イ 本件発明1について
(ア)対比
甲3発明の「ミノキシジル」は、本件発明1の「ミノキシジル」に相当する。
甲3発明の「ミノキシジル」を「5.0g」含むことは、全量が100mLであり、水とエタノールの比重(水の密度は1g/cm3、エタノールの密度は0.7935g/cm3(一般社団法人アルコール協会HP「エタノール水溶液の容量%と比重及び重量%等との関係」の表を参照。https://www.alcohol.jp/expert/expert_table/09%20youryou%20jyuuryou.pdf))を考慮すると、本件発明1の「5w/w%以上」に相当する。
甲3発明の「パントテニールエチルエーテル」及び「外用組成物」は、本件発明1の「パントテニールエチルエーテル」及び「外用組成物」に相当する。
甲3発明の「リン酸」は、本件発明1の「リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸及びグルコン酸よりなる群から選択される1種または2種以上の酸」に相当する。
甲3発明において「5.0gのミノキシジル、1.0gのパントテニールエチルエーテル」を含むことは、本件発明1の「ミノキシジル5gに対してパントテニールエチルエーテルの配合量が1g」であることに相当する。
甲3発明の「pH6.5」は、本件発明1の「pH5.0~7.0」に相当する。
甲3発明は、「L-メントール」、「ビタミンEアセテート」、「1,3-ブチレングリコール」、「エタノール」及び「精製水」を含んでいるが、上記2(1)イ(ア)及び2(2)イ(ア)で述べた理由と同様の理由により、甲3発明がこれらの成分を含むことは、本件発明1との対比において相違点とはならない。
してみると、本件発明1と甲3発明は、
「a)5w/w%以上のミノキシジル、
b)パントテニールエチルエーテル、及び
d)リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸及びグルコン酸よりなる群から選択される1種または2種以上の酸
を含有し、
ミノキシジル5gに対してパントテニールエチルエーテルの配合量が1gであり、pH5.0~7.0である外用組成物。」
という点において一致し、以下の点で相違する。
相違点3:
本件発明1は、「プロピレングリコール」を含有するのに対し、甲3発明においては含有していない点。
(イ)判断
上記相違点3について検討する。
甲3(摘記3b)には、「溶剤として、多価アルコール/エタノール/水の三成分系を選択し、これに特定の化合物を選択、添加することにより、高い濃度でミノキシジルを配合した場合においても、安定で、しかも優れた使用感が得られることを見出し、本発明を完成した。」と、記載されており、また、甲1及び甲2には、ミノキシジルを含む安定性の優れた組成物において、多価アルコールとしてプロピレングリコールを配合することも記載されており、多価アルコールとして、プロピレングリコールを添加する一応の動機付けがあるといえる。
しかしながら、本件発明1の効果は、2(2)イ(イ)bで述べたとおり、ミノキシジル、パントテニールエチルエーテル及び酸を含む組成物において、製剤の経時的な着色を抑制したことであると認められるところ、甲3には、パントテニールエチルエーテルによる着色について記載されておらず、当該着色がプロピレングリコールにより抑制されることについても記載されていない。
また、甲1や甲2にも、ミノキシジル、パントテニールエチルエーテル及び酸を含む組成物における、プロピレングリコールによる着色を抑制する効果については記載されてない。
そうしてみると、甲3発明における多価アルコールとして、プロピレングリコールを配合した組成物が、経時的な着色が抑制されることは、当業者の予測の範囲を超えるものといえる。
したがって、経時的な着色を抑制することを期待して、甲3発明にプロピレングリコールを配合することは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。また、その効果は、当業者の予測を超える顕著なものといえる。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲3に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、甲3に記載された発明を、本発明品26、28、32、34、38、39、40、43、44、45及び46に基づく発明(摘記3d)に基づいて認定しても、本件発明1は、本発明品37に基づいて認定した甲3発明と同様の相違点を有し、その判断は上述したものと同様である。
ウ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の外用組成物について、「(但し、グリセリン、ポリエチレングリコール及びジプロピレングリコールよりなる群から選ばれる1種以上を含有するものを除く)」とした発明である。
そして、上述のとおり、本件発明1が甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえないから、本件発明1がより限定された本件発明2も、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(2)申立理由4について
ア 甲4に記載された発明
甲4には、請求項1及び「本件発明品11」の記載(摘記4a及び4d)からみて、
「5.0gのミノキシジル、1.0gのパントテニールエチルエーテル、乳酸、L-メントール、ビタミンEアセテート、パンテノール、塩酸ピリドキシン、ヒノキチオール、グリチルレチン酸、塩酸ジフェンヒドラミン、マクロゴール300、エタノール及び精製水を含有する、pH6.5で全量が100mLである外用組成物。」
の発明(以下「甲4発明」という。)が、記載されているといえる。
イ 本件発明1について
(ア)対比
甲4発明の「ミノキシジル」は、本件発明1の「ミノキシジル」に相当する。
甲4発明の「ミノキシジル」を「5.0g」含むことは、全量が100mLであり、水とエタノールの比重(水は1g/cm3、エタノールは0.7935g/cm3)を考慮すると、本件発明1の「5w/w%以上」に相当する。
甲4発明の「パントテニールエチルエーテル」及び「外用組成物」は、本件発明1の「パントテニールエチルエーテル」及び「外用組成物」に相当する。
甲4発明の「クエン酸」は、本件発明1の「リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸及びグルコン酸よりなる群から選択される1種または2種以上の酸」に相当する。
甲4発明において「5.0gのミノキシジル、1.0gのパントテニールエチルエーテル」を含むことは、本件発明1の「ミノキシジル5gに対してパントテニールエチルエーテルの配合量が1g」であることに相当する。
甲4発明の「pH6.5」は、本件発明1の「pH5.0~7.0」に相当する。
甲4発明は、「L-メントール」、「ビタミンEアセテート」、「パンテノール」、「塩酸ピリドキシン」、「ヒノキチオール」、「グリチルレチン酸」、「塩酸ジフェンヒドラミン」、「マクロゴール300」、「エタノール」及び「精製水」を含んでいるが、上記2(1)イ(ア)及び2(2)イ(ア)で述べた理由と同様の理由により、甲4発明がこれらの成分を含むことは、本件発明1との対比において相違点とはならない。
してみると、本件発明1と甲4発明は、
「a)5w/w%以上のミノキシジル、
b)パントテニールエチルエーテル、及び
d)リン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸及びグルコン酸よりなる群から選択される1種または2種以上の酸
を含有し、
ミノキシジル5gに対してパントテニールエチルエーテルの配合量が1gであり、pH5.0~7.0である外用組成物。」
という点において一致し、以下の点で相違する。
相違点4:
本件発明1は、「プロピレングリコール」を含有するのに対し、甲4発明においては含有していない点。
(イ)判断
上記相違点4について検討する。
甲4(摘記4b)には、「多価アルコール/エタノール/水の三成分系を選択し、特定の化合物を選択、添加することにより、高い濃度でミノキシジルを配合した場合においても、安定で、しかも優れた使用感が得られることを見出し、本発明を完成した。」と、記載されており、多価アルコールとしてプロピレングリコールを添加する動機付けは一応あるといえる。
しかしながら、上記(1)イ(イ)と同様の理由により、本件発明1の効果は、甲1、甲2及び甲4に記載されていたとは認められず、また、それらの文献の記載から当業者が予測できたものとはいえない。
したがって、経時的な着色を抑制することを期待して、甲4発明にプロピレングリコールを配合することは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。また、その効果は、当業者の予測を超える顕著なものといえる。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲4に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、甲4に記載された発明を、本発明品2、4、10、12、14、16、17、18、24、26及び27に基づく発明(摘記4d)に基づいて認定しても、本件発明1は、本発明品11に基づいて認定した甲4発明と同様の相違点を有し、その判断は上述したものと同様である。
ウ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の外用組成物について、「(但し、グリセリン、ポリエチレングリコール及びジプロピレングリコールよりなる群から選ばれる1種以上を含有するものを除く)」とした発明である。
そして、上述のとおり、本件発明1が甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえないから、本件発明1がより限定された本件発明2も、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、甲3及び甲4に基づく進歩性について、申立書及び意見書において下記の(ア)及び(イ)の主張をしている。
(ア)本件発明の効果が当然に予測し得るもので、格別顕著なものでないこと(申立書(C2-2)、(D2-2))
上記2(4)ア(ア)と同様の理由により、甲1及び甲2に示されるように、プロプレングリコールや、プロピレングリコールとプロピレングリコールの混合溶媒がミノキシジルを含有する外用組成物の着色の抑制に有効であることが公知であるから、本件発明の効果は当業者が予測できるものである。
(イ)本件発明の課題は存在せず、本件発明全体において奏される効果ではないこと(申立書(C2-2)、(D2-2))
上記2(4)ア(イ)と同様の理由により、本件発明のパントテニールエチルエーテルによる着色の増悪という課題は認識できないので、甲3発明あるいは甲4発明に対する格別な効果は認識できない。
また、上記2(4)ア(ウ)及び(エ)で述べたものと同様の理由により、ミノキシジルとプロピレングリコールが特定の量比であること、プロピレングリコールの割合が所定量であること、pHが特定の範囲であり、及びリン酸を含むことが特定されていない場合においてまで、着色を抑制できるとは認められない。
イ しかしながら、以下のとおり申立人の主張は採用できない。
(ア)について
上記2(4)イ「(ア)について」において述べたとおり、甲1及び甲2には、ミノキシジルを含むがパントテニールエチルエーテルを含まない組成物における経時的な着色抑制について示されているのみであり、当該文献から、ミノキシジルとパントテニールエチルエーテルを含む組成物における経時的着色のプロピレングリコールによる抑制効果について、当業者が予測できるとはいえない。
(イ)について
上記2(4)イ「(イ)について」~「(エ)について」において述べたとおり、本件発明の課題は存在するし、本件特許明細書には、プロピレングリコールによる着色の抑制についても記載されている。
そして、諸条件によってその着色抑制に影響はある可能性はあるが、プロピレングリコールによる着色の抑制を阻害するとまではいえない。
(4)まとめ
以上のとおりであるから、申立理由3及び4には理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできず、ほかに請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700387