特許異議申立
2023-700144
ガラス板用合紙及びガラス板用合紙からの紙粉発生抑制方法
- 審判番号
- 2023-700144
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-055202
- 登録番号
- 7118200
- 請求日
- 2023年02月09日
- 審決日
- 2024年01月19日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】特種東海製紙株式会社
- 【権利者代理人】実広 信哉
- 【異議申立人】浅利 陽子
- 【異議申立人】西村 裕之
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 井上 茂夫
- 審判官 金丸 治之
- 分類
- P1651.113-YAA(D21H) / P1651.121-YAA(D21H) / P1651.14 -YAA(D21H) / P1651.537-YAA(D21H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7118200号発明「ガラス板用合紙及びガラス板用合紙からの紙粉発生抑制方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7118200号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、〔9~15〕について訂正することを認める。
特許第7118200号の請求項1~15に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7118200号(以下「本件特許」という。)の請求項1~15に係る特許についての出願は、令和3年3月29日の出願であって、令和4年8月4日にその特許権の設定登録(特許掲載公報令和4年8月15日発行)がされ、その後、その特許について、令和5年2月9日に特許異議申立人浅利陽子(以下「申立人1」という。)により、同じく2月14日に特許異議申立人西村裕之(以下「申立人2」という。)により、特許異議の申立てがされ、令和5年8月2日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和5年10月2日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、この本件訂正請求について、令和5年11月6日に申立人1より、同じく11月14日に申立人2より、意見書が提出されたものである。
第2 訂正の請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~15について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は、訂正箇所を示したものである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「JIS P8112で規定される比破裂強さが1.4kPa・m2/g以上である、ガラス板用合紙。」を、「JIS P8112で規定される比破裂強さが1.4~3.91kPa・m2/gである、ガラス板用合紙。」に訂正する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9の「ガラス板用合紙のJIS P8112で規定される比破裂強さを1.4kPa・m2/g以上とする、ガラス板用合紙からの紙粉発生抑制方法。」を、「ガラス板用合紙のJIS P8112で規定される比破裂強さを1.4~3.91kPa・m2/gとする、ガラス板用合紙からの紙粉発生抑制方法。」に訂正する。
(3)一群の請求項について
訂正前の請求項2~8は請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、訂正前の請求項10~15は請求項9の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものである。
2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、比破裂強さの範囲を「1.4kPa・m2/g以上」と上限が特定されていなかったものを、「1.4~3.91kPa・m2/g」と、上限を特定して範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上限の「3.91kPa・m2/g」は本件特許の明細書の実施例4に記載されているから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてするものであり、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2も、訂正事項1と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、その訂正は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3.訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、本件訂正後の請求項〔1~8〕、〔9~15〕について訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1~15に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、それらをまとめて「本件発明」ということがある。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
JIS P8112で規定される比破裂強さが1.4~3.91kPa・m2/gである、ガラス板用合紙。
【請求項2】
木材パルプを原料とする、請求項1記載のガラス板用合紙。
【請求項3】
前記木材パルプが古紙パルプを含まない、請求項2記載のガラス板用合紙。
【請求項4】
単層である、請求項1乃至3のいずれかに記載のガラス板用合紙。
【請求項5】
前記ガラス板がディスプレイ用である、請求項1乃至4のいずれかに記載のガラス板用合紙。
【請求項6】
前記ディスプレイがTFT液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイである、請求項5記載のガラス板用合紙。
【請求項7】
前記ガラス板の表面にカラーフィルターが形成される、請求項6記載のガラス板用合紙。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のガラス板用合紙及びガラス板からなる積層体。
【請求項9】
ガラス板用合紙のJIS P8112で規定される比破裂強さを1.4~3.91kPa・m2/gとする、ガラス板用合紙からの紙粉発生抑制方法。
【請求項10】
前記ガラス板用合紙が木材パルプを原料とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記木材パルプが古紙パルプを含まない、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ガラス板用合紙が単層である、請求項9乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ガラス板がディスプレイ用である、請求項9乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ディスプレイがTFT液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイである請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記ガラス板の表面にカラーフィルターが形成される、請求項14記載の方法。」
第4 取消理由についての判断
1.特許権者に通知した取消理由
特許権者に令和5年8月2日付けで通知した取消理由は以下のとおりである。
理由1)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
《証拠方法》
申立人1が提出した甲第1号証~甲第19号証を「甲1-1」~「甲1-19」と、申立人2が提出した甲第1号証~甲第4号証を「甲2-1」~「甲2-4」という。
甲2-1:中国特許出願公開第103603232号明細書
甲2-2:中華人民共和国国家質量監督検験検疫総局、「中華人民共和国国家標準 GB/T454-2002 紙の破裂強さの測定」、2002年7月22日公表
甲2-3:「JISハンドブック32 紙・パルプ」、一般財団法人日本規格協会、2018年1月31日第1版第1刷発行、235~242頁、707~712頁
甲1-8:国際公開第2019/188927号
甲1-9:特開2017-218718号公報
●請求項1~4、9~12
・取消理由:理由1(新規性)、理由2(進歩性)
・引用文献等:甲2-1
●請求項5~8、13~15
・取消理由:理由2(進歩性)
・引用文献等:甲2-1、甲1-8、甲1-9
2.甲2-1に記載された発明
甲2-1(特に、[0001]~[0003]、[0006]、[0011]、[0013]、[0014])には、ガラス間紙に係る、次の「引用発明1」が記載されていると認められる。
「低塵埃で低灰分の漂白針葉樹パルプ及び漂白広葉樹パルプを、7:3の配合比率で混合したパルプより生産され、GB/T454で規定される比破裂強さが、5.56kPa・m2/gである、ガラス間紙。」
また、甲2-1の[0003]に、「紙の表面の強度が良く、平滑できめ細かく、塵や不純物がなく、毛や粉が落ちることがなく、・・・フラットパネルディスプレイの輸送過程で、保護及び隔離の作用を果たす」と記載されていることから、甲2-1には、ガラス間紙を用いた、次の「引用発明2」も記載されていると認められる。
「低塵埃で低灰分の漂白針葉樹パルプ及び漂白広葉樹パルプを、7:3の配合比率で混合したパルプより生産され、GB/T454で規定される比破裂強さが、5.56kPa・m2/gであるガラス間紙を用いて、塵や不純物がなく、毛や粉が落ちることがなく、保護及び隔離の作用を果たす輸送方法。」
3.本件発明1~8について
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と引用発明1を対比する。
引用発明1の「ガラス間紙」は、甲2-1の記載によると、「各種液晶スクリーン間のセパレータ紙として」、「フラットパネルディスプレイの専用包装用紙」(【0003】)とされることから、「フラットパネル・ディスプレイ用のガラス板を複数枚積層して保管、運搬する過程において、ガラス板を包装する紙、及び、ガラス板の間に挟み込む紙」(本件特許明細書等の【0001】)である、本件発明1の「ガラス板用合紙」に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明1は、「ガラス板用合紙」であることで一致し、次の相違点1で相違する。
《相違点1》
本件発明1が、「JIS P8112で規定される比破裂強さが1.4~3.91kPa・m2/gである」のに対し、引用発明1は、GB/T454で規定される比破裂強さが、5.56kPa・m2/gである点。
イ 上記相違点1について検討する。
甲2-2によれば、「GB/T454-2002」は、2002年7月22日に公表され、2003年2月1日に実施された、紙の破裂強さの測定に係る中華人民共和国国家標準であり、ISO2758:2001「紙-破裂強さの測定」を採用することと同等であるとされる(序文)。また、比破裂強さは、「紙の破裂強さをその坪量で除したものであり、キロパスカル単位で表す。」(「3.2 比破裂強さ」)と定義され、破裂強さは、「液圧系により圧力を加えて、弾性ゴム隔膜が試料の円形面積を突き破った時の最大圧力。」(「3.1 破裂強さ」)と定義されている。
引用発明1の「GB/T454で規定される比破裂強さ」は、甲2-1の出願日(2013年11月14日)が、紙の破裂強さの測定に係る中華人民共和国国家標準である「GB/T454-2002」の2003年2月1日の実施後であることから、甲2-2の「GB/T454-2002」で規定される「比破裂強さ」を意味するといえる。
ウ 他方、「JIS P8112:2008」は、甲2-3によれば、「2001年に第3版として発行されたISO2758を基に、対応する部分については対応国際規格を翻訳し、技術的内容を変更することなく作成した日本工業規格」(序文)であり、比破裂強さは、「キロパスカル(kPa)単位で表した紙の破裂強さをJIS P8124に規定する方法によって測定した坪量で除した値。」(「3.2 比破裂強さ」)と定義され、破裂強さは、「試験片の円形領域に、液体加圧装置を用いて、この規格に規定する方法によって弾性をもつゴム隔膜に圧力を加えたときの最大圧力。」(「3.1 破裂強さ」)と定義される。
本件発明1の「JIS P8112で規定される比破裂強さ」は、本件特許の出願日(2021年3月29日)が、「JIS P8112:2008」が掲載された甲2-3の発行日(2018年1月31日)後であることから、上記「JIS P8112:2008」で規定される「比破裂強さ」を意味すると理解される。
エ そうすると、本件発明1の「JIS P8112で規定される比破裂強さ」と、引用発明1の「GB/T454で規定される比破裂強さ」は、ともに2001年に発行されたISO2758に規定される方法により測定されたものであるから、引用発明1の「GB/T454で規定される比破裂強さが、5.56kPa・m2/gである」ガラス間紙は、本件発明1の「JIS P8112」で規定される方法」で比破裂強さを測定した場合、同様に5.56kPa・m2/g程度となるはずであり、この値は本件発明1の「1.4~3.91kPa・m2/g」の範囲外である。
よって、上記相違点1は実質的なものであり、本件発明1は引用発明1ではない。
オ また、甲2-1には、GB/T454で規定される比破裂強さが5.56kPa・m2/gである実施例が記載されるが、その値を「1.4~3.91kPa・m2/g」とする記載はなく、そのように変更しようとする動機付けもないから、相違点1に係る本件発明1の構成は当業者が容易に想到し得たものではなく、本件発明1は、引用発明1に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~8について
本件発明2~8は、いずれも本件発明1の発明特定事項を全て含むものである。
本件発明1は、上記(1)エで述べたように、引用発明1ではなく、また、上記(1)オで述べたように、引用発明1に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2~8も、引用発明1ではなく、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4.本件発明9~15について
(1)本件発明9について
ア 本件発明9と引用発明2を対比する。
引用発明2の「ガラス間紙を用いて、塵や不純物がなく、毛や粉が落ちることがなく、保護及び隔離の作用を果たす輸送方法」は、本件発明9の「ガラス板用合紙からの紙粉発生抑制方法」に相当する。
そうすると、本件発明9と引用発明2は、「ガラス板用合紙からの紙粉発生抑制方法」であることで一致し、次の相違点2で相違する。
《相違点2》
本件発明9が、「JIS P8112で規定される比破裂強さが1.4~3.91kPa・m2/gとする」のに対し、引用発明2は、GB/T454で規定される比破裂強さが、5.56kPa・m2/gである点。
イ 上記相違点2について検討する。
上記3.(1)エで述べたように、本件発明9の「JIS P8112で規定される比破裂強さ」と、引用発明2の「GB/T454で規定される比破裂強さ」は、ともに2001年に発行されたISO2758に規定される方法により測定されたものであり、引用発明2の「GB/T454で規定される比破裂強さが、5.56kPa・m2/gである」ガラス間紙は、本件発明9の「JIS P8112で規定される方法」で比破裂強さを測定した場合、同様に5.56kPa・m2/g程度となるはずであり、この値は本件発明9の「1.4~3.91kPa・m2/g」の範囲外である。
よって、上記相違点2は実質的なものであり、本件発明9は引用発明2ではない。
ウ また、上記3.(1)オで述べたように、甲2-1には、GB/T454で規定される比破裂強さを「1.4~3.91kPa・m2/g」とする記載はなく、そのように変更しようとする動機付けもないから、相違点2に係る本件発明9の構成は当業者が容易に想到し得たものではなく、本件発明9は、引用発明2に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明10~15について
本件発明10~15は、いずれも本件発明9の発明特定事項を全て含むものである。
本件発明9は、上記(1)イで述べたように、引用発明2ではなく、また、上記(1)ウで述べたように、引用発明2に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明10~15は、引用発明2ではなく、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1.申立理由
(1)申立人1、申立人2が提出した証拠
申立人1、申立人2は、取消理由で引用した証拠の他、次の証拠を提出している。
《申立人1が提出した証拠》
甲1-1:特開2007-70752号公報
甲1-2:「紙パルプ製造技術シリーズ○6(当審注:○の中に数字の6) 紙の抄造」、紙パルプ技術協会、1998年12月14日初版発行、242~243頁
甲1-3:特許権者が提出した令和4年5月25日の意見書
甲1-4:伊藤真純、「新設抄紙機の操業経験」、紙パ技協誌、紙パルプ技術協会、1980年1月、第34巻、第1号、91~94頁
甲1-5:桜井義昭、「川内工場6号抄紙機の操業経験」、紙パ技協誌、紙パルプ技術協会、1989年1月、第43巻、第1号、37~42頁
甲1-6:目黒敬人、「新潟工場第6号抄紙機の操業経験」、紙パ技協誌、紙パルプ技術協会、1989年1月、第43巻、第1号、43~48頁
甲1-7:川口容、「♯4M/Cの操業経験」、紙パ技協誌、紙パルプ技術協会、1994年1月、第48巻、第1号、36~41頁
甲1-10:国際公開第2019/188974号公報
甲1-11:国際公開第2018/181658号公報
甲1-12:特開2019-19421号公報
甲1-13:特公昭46-24723号公報
甲1-14:特開2020-56127号公報
甲1-15:特開2019-163082号公報
《申立人2が提出した証拠》
甲2-4:特開2009-184704号公報
(2)申立人1の申立理由
ア 新規性、進歩性に係る理由
(ア)甲1-1を主引用例とする新規性、進歩性
(イ)甲1-4を主引用例とする新規性、進歩性
(ウ)甲1-5を主引用例とする新規性、進歩性
(エ)甲1-6を主引用例とする新規性、進歩性
(オ)甲1-7を主引用例とする新規性、進歩性
イ 特許法第29条第1項柱書違反に係る理由
本件発明9~15は、JIS P8112で規定される比破裂強さが1.4kPa・m2/g以上とするために実施する内容が記載されておらず、特許法第29条第1項柱書の規定に違反するものである。
ウ 明確性要件に係る理由
本件発明9~15は、方法の発明であるにもかかわらず、ガラス板用合紙の物の発明で代用されており、発明の範囲が不明確である。
(3)申立人2の申立理由
甲2-4を主引用例とする新規性、進歩性
2.上記申立理由についての判断
(1)申立人1の新規性、進歩性に係る理由
ア 甲1-1には「ロールプレスの圧縮脱水処理を、プレス圧を段階的に高めるように多段で行うことにより得られるガラス合紙」の発明が、
甲1-4には「抄紙におけるプレスパートのプレス圧を第1プレス70kg/cm、第2プレス80kg/cm、第3プレス100kg/cmとして、プレス圧を段階的に高める抄紙機により得られる用紙」の発明が、
甲1-5には「抄紙におけるプレスパートのプレス圧を第1プレス80kg/cm、第2プレス90kg/cm、第3プレス100kg/cm、第4プレス110kg/cmとして、プレス圧を段階的に高める抄紙機により得られる用紙」の発明が、
甲1-6には「抄紙におけるプレスパートのプレス圧を第1プレス70kg/cm、第2プレス80kg/cm、第3プレス90kg/cm、第4プレス100kg/cmとして、プレス圧を段階的に高める抄紙機により得られる用紙」の発明が、
甲1-7には「抄紙におけるプレスパートのプレス圧を第1プレス85kg/cm、第2プレス105kg/cm、第3プレス125kg/cm、第4プレス135kg/cmとして、プレス圧を段階的に高める抄紙機により得られる用紙」の発明が、それぞれ記載されている。
イ しかし、いずれも、ガラス板用合紙の「JIS P8112で規定される比破裂強さが1.4~3.91kPa・m2/gである」とするものではなく、また、各発明から技術常識を踏まえても、ガラス板用合紙の「JIS P8112で規定される比破裂強さが1.4~3.91kPa・m2/gである」ことがいえるものでもないから、本件発明1は、甲1-1、甲1-4~甲1-7の各発明ではない。
ウ また、本件特許明細書等に「スラリーを調製する際に、木材パルプの叩解を進めると、セルロース繊維同士の絡み合いが増大し、紙層間強度が増す効果が期待できる。しかしながら、叩解を進めることによって、合紙として使用中に紙粉が発生する恐れがあるので、必要以上に叩解度を進めることは好ましくない。よって、好ましい叩解度は100~600mlcsfであり、200~600mlcsfがより好ましく、300超~600mlcsfが更により好ましく、300超~450mlcsfが更により好ましい。」(【0043】)と記載されるところ、甲1-8~甲1-11には、同様に「好ましい叩解度は300~650mlc.s.f.である」と記載されている。
さらに、甲1-12に「当該白板紙の比破裂強度としては、1.80kPa・m2/g以上2.40kPa・m2/g以下であることが好ましい。当該比破裂強度を上記範囲とすることで、当該白板紙を流通で用いる搬送用の容器として利用することができる。」(【0054】)と、
甲1-13に、JIS・P・8112で規定される比破裂強さが1.70kg/cm2と2.22kg/cm2である多孔通気性パーチメント紙(表中、資料1及び資料2)が、
甲1-14に「当該傷防止用紙の破裂強さの下限としては、1.8kPa・m2/gが好ましく、4kPa・m2/gがより好ましい。破裂強さが上記下限以上であることで、包装材や緩衝材として十分な強度を発揮することができる。」(【0056】)と、
甲1-15に、比破裂強さが2.35kPa・m2/g以上2.6kPa・m2/g以下である紙包装容器用原紙(【0091】表4の実施例1~31)が、それぞれ記載されている。
しかし、甲1-12~甲1-15は、いずれもガラス板用合紙に係るものではなく、ガラス板用合紙の「JIS P8112で規定される比破裂強さが1.4~3.91kPa・m2/g」とすることで、「ガラス板用合紙からの紙粉の発生を良好に抑制することができる。」(本件特許明細書等の【0017】)ことにについて示唆するものではない。そのため、本件特許明細書等と同様の叩解度が甲1-8~甲1-11に記載されているとしても、甲1-1、甲1-4~甲1-7の各発明のガラス板用合紙の比破裂強さを、「1.4~3.91kPa・m2/g」の範囲になるように叩解度を調整する動機付けがない。
よって、本件発明1は、甲1-1、甲1-4~甲1-7の各発明から容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明2~15も同様であり、申立人1の新規性、進歩性に係る主張は採用できない。
(2)申立人1の特許法第29条第1項柱書違反に係る理由
本件発明9~15は、「ガラス板用合紙の比破裂強さを1.4~3.91kPa・m2/g」とすることでガラス板用合紙の紙粉の発生を抑制できるという、ガラス板用合紙の比破裂強さと紙粉の発生との関係に基づく自然法則を利用したものである。また、ガラス板用合紙の比破裂強さを「1.4~3.91kPa・m2/g」とすることで実施でき、産業上利用することができるものである。
よって、特許法第29条第1項柱書の規定に違反するものではなく、申立人1の特許法第29条第1項柱書違反に係る主張は採用できない。
(3)申立人1の明確性要件に係る理由
本件発明9~15は、「ガラス板用合紙のJIS P8112で規定される比破裂強さを1.4~3.91kPa・m2/g」に設定するという方法で、ガラス板用合紙の紙粉の発生を抑制できるようにしたもので、本件発明9~15の範囲に入るか否かを当業者が理解でき、明確であるから、申立人1の明確性要件に係る主張は採用できない。
(4)申立人2の新規性、進歩性に係る理由
甲2-4には、従来、「ガラスどうしの擦れによる傷入り防止を主な目的として、長網抄紙機で抄造したクラフト紙や更紙等がガラス間に挿入され使用されていた。」(【0002】)ことが記載されるが、ガラス板用合紙の「JIS P8112で規定される比破裂強さが1.4~3.91kPa・m2/gである」とするものではなく、本件発明1は、甲2-4に記載された発明ではない。
また、甲2-4は、「JIS P8112で規定される比破裂強さを1.4~3.91kPa・m2/g」とすることで、ガラス板用合紙の紙粉の発生を抑制できることを示唆するものではないから、甲2-4のクラフト紙を、ガラス板用合紙として「JIS P8112で規定される比破裂強さが1.4~3.91kPa・m2/gである」ものとすることが容易であったとはいえない。
よって、申立人2の新規性、進歩性に係る主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1~15に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件発明1~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700144