特許異議申立
2022-701091
木質ボード
- 審判番号
- 2022-701091
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-182466
- 登録番号
- 7064552
- 請求日
- 2022年11月10日
- 審決日
- 2024年05月02日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】大建工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人前田特許事務所
- 【異議申立人】脇谷 治義
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 西田 秀彦
- 審判官 土屋 真理子
- 分類
- P1651.121-ZAA(B27N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法113条2項特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7064552号発明「木質ボード」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7064552号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第7064552号の請求項1、2及び4に係る特許を取り消す。
特許第7064552号の請求項3に係る特許についての特許異議申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7064552号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和2年10月30日に出願され、令和4年4月26日にその特許権の設定登録がされ、同年5月10日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後の特許異議の申立ての経緯は以下のとおりである。
令和4年11月10日 特許異議申立人脇谷 治義(以下「申立人」 という。)による請求項1~4に係る発明の 特許に対する特許異議の申立て
令和5年 1月23日付け 取消理由通知
同年 3月27日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 6月15日 申立人による意見書の提出
同年 8月21日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年10月23日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年12月21日 申立人による意見書の提出
なお、令和5年10月23日に訂正の請求がされたので、同年3月27日にされた先の訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年10月23日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)の内容(以下「本件訂正」という。)は以下のとおりである。(下線は、訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「 繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなる木質ボードであって、
上記木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.05mm以上0.35mm以下、上記繊維方向に沿った長さが10mm以上40mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が0.5mm以上15mm以下である」と記載されているのを、
「 繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなる木質ボードであって、
上記木質ボードの密度が500kg/m3以上800kg/m3以下であり、
上記木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.05mm以上0.35mm以下、上記繊維方向に沿った長さが10mm以上35mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が0.5mm以上15mm以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がなく、且つ上記繊維方向がランダムに配向されている」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2及び4についても同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4において、
「請求項1~3のいずれか1つの木質ボードにおいて」と記載されているのを、
「請求項1又は2の木質ボードにおいて」に訂正する。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
上記訂正事項1のうち、
(ア)訂正前の請求項1に「上記木質ボードの密度が500kg/m3以上800kg/m3以下であり、」との記載を付加する訂正は、「木質ボード」について、密度を特定していないものから、密度が「500kg/m3以上800kg/m3以下」のものに限定したものであり、
(イ)訂正前の請求項1の「木質小薄片」について「上記表裏面間の厚さが0.05mm以上0.35mm以下、上記繊維方向に沿った長さが10mm以上40mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が0.5mm以上15mm以下である」を「上記表裏面間の厚さが0.05mm以上0.35mm以下、上記繊維方向に沿った長さが10mm以上35mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が0.5mm以上15mm以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がなく、且つ上記繊維方向がランダムに配向されている」とする訂正は、「木質小薄片」の「繊維方向に沿った長さ」について「10mm以上40mm以下」から、「10mm以上35mm以下」にその範囲を限定するとともに、「木質小薄片」について、「細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がな」いとの発明特定事項を直列的に付加し、さらに木質ボード内における木質小薄片の配向について「上記繊維方向がランダムに配向されている」と特定して限定したものである。
(ウ)よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1に係る訂正は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
ウ 新規事項の有無
本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面を「本件明細書等」という。)の段落【0028】、【0034】、【0038】~【0041】及び【0046】の記載からみて、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(2)訂正事項2
訂正事項2に係る訂正は、請求項の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられた事項である特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれか1つを引用する記載であったのを、請求項1又は2を引用する記載にする訂正であって、引用する請求項の数を減少する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられた事項である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、訂正事項3に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
ウ 新規事項の有無
上記アのとおり、訂正事項3に係る訂正は、引用する請求項の数を減少する訂正であるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(4)一群の請求項
訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、直接または間接的に請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正事項1~3に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法120条の5第9項により準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、請求項番号に対応して「本件発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなる木質ボードであって、
上記木質ボードの密度が500kg/m3以上800kg/m3以下であり、
上記木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.05mm以上0.35mm以下、上記繊維方向に沿った長さが10mm以上35mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が0.5mm以上15mm以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がなく、且つ上記繊維方向がランダムに配向されていることを特徴とする木質ボード。
【請求項2】
請求項1の木質ボードにおいて、
木質ボードの木質小薄片は、厚さが0.15~0.25mm、長さが20mm以下、幅が5mm以下の細長形状であることを特徴とする木質ボード。
【請求項3】
削除
【請求項4】
請求項1又は2の木質ボードにおいて、
表面における二乗平均平方根高さSqが0.005~0.015μm又は表面における算術平均高さSaが0.002~0.007μmであることを特徴とする木質ボード。」
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~4に係る特許に対して、当審が令和5年8月21日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。
1 通知した取消理由
(1)請求項1に係る発明は、甲1発明、又は甲2発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものである。
(2)請求項2に係る発明は、甲1発明、又は、甲1発明及び甲3技術事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものである。
(3)請求項3に係る発明は、甲1発明、又は甲2発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものである。
(4)請求項4に係る発明は、甲1発明、又は甲2発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものである。
2 引用した証拠
引用した証拠は以下のとおり。
(1)甲第1号証:特開平11-58332号公報
(2)甲第2号証:特開平10-249817号公報
(3)甲第3号証:特開2003-94411号公報
以下、甲第1号証を「甲1」等ということがある。
第5 証拠の記載
1 甲1
(1)甲1の記載
甲1には以下の記載がある(下線は、当審で付加した。以下、同様。)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 厚さの絶対値が0.05~0.50mmの木材薄片がバインダー樹脂により接着一体化されてなることを特徴とする木質板。
【請求項2】 前記木材薄片の幅の絶対値が1.00~50.00mmであることを特徴とする請求項1記載の木質板。
【請求項3】 前記バインダー樹脂が発泡性樹脂からなるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の木質板。
【請求項4】 前記バインダー樹脂がポリメチレン・ジフェニル・ジイソシアネートであることを特徴とする請求項3記載の木質板。
【請求項5】 前記木材薄片は予めアセチル化されたものであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の木質板。」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は木材薄片をバインダー樹脂を用いて接着一体化してなる木質板に関し、特に、厚さの絶対値が0.05~0.50mmの木材薄片を用いることによって、表面と木口面の平滑度を向上させ、しかも芯部の強度及び剛性を向上させたものである。
【0002】
【従来の技術】近年、木材資源の不足や、森林の保護が問題となってきており、森林伐採は今後益々困難になることは明らかである。従って、原料木材を大量に使用して製造される合板等の板材は、その供給が不安定あるいは供給不足となり、価格も高騰することが予想される。よって、従来廃材とされていた木材薄片や、木材片の木質繊維等を有効に利用して得られる木質板が注目され、その本質板の種々の用途への応用が強く望まれている。
【0003】木材薄片や木質繊維等を利用した木質板は、一般に、木材薄片や木質繊維等の構成要素をバインダーで接着し、成形一体化して形成される。その際、構成要素の寸法が小さくなるに従い、得られる木質板は均質になり、表面も平滑になるが、強度、剛性は低下し、密度は増加する傾向がある。逆に構成要素の寸法を大きくすると、木材本来が持っている強度、密度に近づいて行くが、そのような木質板は不均質で、表面の凹凸も大きくなる傾向がある。」
ウ 「【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の木質板の一実施形態について説明する。本発明の木質板は、木材薄片がバインダー樹脂により接着一体化された木材薄片集成板からなるものである。本発明で用いられる木材薄片としては、アカマツ、カラマツ、エゾマツ、トドマツ、アスペン、ロッジポールパイン、ラジアータパイン等の薄片が好適に用いられるが、樹種は特に限られるものではない。
【0011】上記木材薄片は、厚さの絶対値が0.05~0.50mm、厚さの平均値が0.10~0.45mmのものが用いられる。ここで、木材薄片の厚さの絶対値とは、用いる木材薄片を無作為に200個以上抽出したときの最小と最大の厚さを意味し、厚さの平均値とは上記抽出したサンプル(木材薄片)の厚さを平均した値を意味するものとする。木材薄片の厚さの絶対値が0.05mm未満であると、得られる木質板の強度及び剛性が低下し、プレス前のフォーミング時の嵩が増加し、生産性が不利になるとともに成形後の密度も増加してしまう。また、厚さの絶対値が0.50mmを超えると表面の平滑性が低下してしまう。
【0012】また、上記木材薄片の長さは、絶対値が20.0~150.0mm、平均値が40.0~115.0mmの範囲内であることが好ましい。ここで、木材薄片の長さの絶対値とは、用いる木材薄片を無作為に50個以上抽出したときの最小と最大の長さを意味し、長さの平均値とは上記抽出したサンプル(木材薄片)の長さを平均した値を意味するものとする。また、上記木材薄片の幅は、絶対値が1.00~50.00mm、平均値が10.00~35.00mmの範囲内であることが好ましい。ここで、木材薄片の幅の絶対値とは、用いる木材薄片を無作為に50個以上抽出したときの最小と最大の幅を意味し、幅の平均値とは上記抽出したサンプル(木材薄片)の幅を平均した値を意味するものとする。木材薄片の幅の絶対値が1.00mm未満であると、幅方向の接着不良となり、強度低下を引き起こしてしまう。また、幅の絶対値が50.00mmを超えると木材薄片がカールしたり、折れ曲がり易く、バインダーとの混合時に折れ曲がった内側までバインダーが付着し難く、また、成形時に空気の抜けが悪く、ボイド(泡)が発生し易くなり、これらに起因して木材薄片が剥離したり、さらには得られる木質板の表面の平滑度が低下してしまう。
【0013】また、木材薄片集成板をなす木材薄片の配列は、特に制限されるものではないが、木目方向をほぼ一方向に揃えて配列されたものであってもよく、あるいは木質板を三層構造にし、隣接する層をなす木材薄片の木目方向が互いに直交するように配列させてもよく、例えば、上層の木目方向を平行方向、中間層の木目方向を直交方向、下層の木目方向を平行方向としてもよい。さらに、目的とする木質板の強度や剛性に応じて同一方向に配列する木材薄片の割合を変更できる。また、木材薄片の木目方向はランダムにしてもよい。
エ 「【0017】本発明の木質板を製造するには、上記木材薄片にバインダー樹脂を塗布したものを乾式フォーミングし、それを熱圧成形するのが好ましく、具体的には、まず、バインダー樹脂を塗布した木材薄片を熱圧板上に散布して積層体を作製し、次に、熱圧成形機中でこの積層体に熱圧を加えて熱圧成形する。その熱圧条件は、圧力が1~2MPa、温度が140~190℃、時間が目的とする厚み(mm)×8~15秒とすることが好ましい。このようにして得られる木質板は、密度が0.40~0.65g/cm3程度、曲げ強さが300~700kg/cm2程度、曲げヤング係数が30~70t/cm2程度とすることが好ましい。」
オ 「【0025】
【発明の効果】以上説明したように請求項1の木質板にあっては、厚さの絶対値が0.05~0.50mmの木材薄片をバインダー樹脂により接着一体化されたことにより、用いる木材薄片が1種類で済むので、木質板を製造するための装置数を減らすことができるうえ製造工程の簡略化が可能で、これによって木質板の製造効率を向上させることができる。さらに、請求項1の木質板においては、芯層と表面層に用いる木材薄片の厚さの範囲が同じでものであるので、芯層と表面層が均一であり、しかも木材薄片の厚みの絶対値が0.05~0.50mmと狭い範囲であるのでバラツキが小さく、従って表面及び木口面の平滑性が優れており、木質板の角部を削って孔が生じることを低減できるので木口面上に化粧板を貼着し易く、しかも化粧板に凹部が現出するのを低減できる。」
(2)甲1発明
上記(1)より、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「木材薄片がバインダー樹脂により接着一体化された木材薄片集成板からなる木質板であって、
木材薄片は、厚さの絶対値が0.05~0.50mm、厚さの平均値が0.10~0.45mmのものが用いられ、
木材薄片の長さは、絶対値が20.0~150.0mm、平均値が40.0~115.0mmの範囲内であることが好ましく、
木材薄片の幅は、絶対値が1.00~50.00mm、平均値が10.00~35.00mmの範囲内であることが好ましく、
木材薄片集成板をなす木材薄片の配列は、木目方向をほぼ一方向に揃えて配列されたものであってもよく、木材薄片の木目方向はランダムにしてもよく、
密度が0.40~0.65g/cm3であり、
木材薄片の厚みの絶対値が0.05~0.50mmと狭い範囲であるのでバラツキが小さく、従って表面及び木口面の平滑性が優れており、木質板の角部を削って孔が生じることを低減できるので木口面上に化粧板を貼着し易く、しかも化粧板に凹部が現出するのを低減できる、
木質板。」
2 甲3
(1)甲3の記載
甲3には以下の記載がある。
ア 「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、木片Fを熱可塑性樹脂によって結着した芯層(3) と、木質分を熱硬化性樹脂によって結着した表層(2)および/または裏層(4) とからなる木質板(1) を提供するものである。該表裏層(2,4) の木質分は26メッシ全通の木粉および/または厚さ0.1~2mm、長さ1~30mm、幅0.1~5mmの木片Fであり、該芯層(3) の木片Fは厚さ0.1~5mm、長さ1~50mm、幅0.5~20mmであることが好ましく、更に該熱可塑性樹脂は再生樹脂であり、そして該表裏層(2,4)の木質分および/または該芯層(3) の木片Fは再生品であることが好ましい。更に本発明では、基板(6) 上に木質分と熱硬化性樹脂とを含有する表層用原料混合物M1を散布して表層マット(2A)をフォーミングし、該表層マット(2A)上に熱可塑性樹脂溶融物Rと木片Fとの芯層用原料混合物M2を供給堆積して芯層マット(3A)をフォーミングし、その上に木質分と熱硬化性樹脂とを含有する裏層用原料混合物M1を散布して裏層マット(4A)をフォーミングし、該三層マットをプレス成形することによって表裏層(2,4) と芯層(3) とを一体化する木質板(1) の製造方法が提供される。」
イ 「【0008】〔表裏層〕本発明の表裏層は木質分を熱硬化性樹脂によって結着したものである。上記木質分としては通常木粉および/または木片が使用され、該木粉は26メッシュ全通の粒径を有することが好ましく、また該木片は上記芯層に用いる木片よりも小サイズで、例えば厚さ0.1~2mm、長さ1~30mm、幅0.1~5mm、好ましくは厚さ0.2~0.5mm、長さ6~12mm、幅0.5~2.5mmのものが使用される。上記木質分もまた芯層用木片と同様に再生品を使用することが好ましい。上記木質分を結着する熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、レゾルシノール樹脂等が使用される。」
(2)甲3記載技術
上記(1)より、甲3には、次の技術的事項(以下、「甲3記載技術」という。)が記載されている。
(甲3記載技術)
「芯層(3) と、木質分を熱硬化性樹脂によって結着した表層(2)および/または裏層(4) とからなる木質板(1)において、
木質分として木片が使用され、
該木片は、厚さ0.2~0.5mm、長さ6~12mm、幅0.5~2.5mmのものが使用されること。」
3 甲4
(1)甲4の記載
申立人が、意見書とともに提出した甲4(特開平11-58330号公報)には以下の記載がある。
ア「【0003】近年、良質な大径木の供給が少なくなりつつあり、原木よりの製材品に代わって、木材小片を木目方向に略配向させて積層・接着した配向ストランドボード(OSB)や、長尺木細片を配向させて積層・接着したOSL(Oriented StrandLumber)、PSL(Parallel Strand Lumber)等の木質系再構成材を木質系構造用材として活用することが多くなりつつある。これらの細片化木材を用いた再構成材は、原木を細片化してこれを再構成するために、原木から切り出した製材品のように節等による欠陥が存在せず、性能が安定してより均質な強度が得られるという有用な特徴を持つ。」
(2)甲4記載技術
上記(1)より、甲4には、次の技術的事項(以下、「甲4記載技術」という。)が記載されている。
(甲4記載技術)
近年、良質な大径木の供給が少なくなりつつあり、原木よりの製材品に代わって、木材小片を木目方向に略配向させて積層・接着した配向ストランドボード(OSB)や、長尺木細片を配向させて積層・接着したOSL(Oriented StrandLumber)、PSL(Parallel Strand Lumber)等の木質系再構成材を木質系構造用材として活用することが多くなりつつあり、細片化木材を用いた再構成材は、原木を細片化してこれを再構成するために、原木から切り出した製材品のように節等による欠陥が存在しないこと。
第6 当審の判断
1 甲第1号証を主引用例として
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「木材薄片」は、「木材薄片集成板をなす」際に、「木目方向をほぼ一方向に揃えて配列された」り、「木目方向はランダムに」配列されるものであり、その「長さ」は、「幅」に比べて長いことから、本件発明1の「繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の」「木質小薄片」に相当する。
(イ)甲1発明の「木材薄片がバインダー樹脂により接着一体化された木材薄片集成板からなる木質板」は、本件発明1の「多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなる木質ボード」に相当する。
(ウ)甲1発明の「木材薄片は、厚さの平均値が0.10~0.45mmのものが用いられ」ることのうち、「厚さの平均値が0.10~0.35mmのものが用いられ」ることは、本件発明1の「上記木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.05 mm以上0.35mm以下」であることに相当する。
(エ)甲1の段落[0012]における「幅」の絶対値が50.00mmを超えると木材薄片がカールしたり、折れ曲がり易くなるとの記載をふまえると、甲1における「幅」は、木目と直交する方向に沿った幅であり、「長さ」は、木目方向に沿った長さであることは明らかであるため、甲1発明の「木材薄片の長さ」は、本件発明1の「上記繊維方向に沿った長さ」に相当する。
(オ)上記(エ)をふまえると、甲1発明の「木材薄片の幅は、平均値が10.00~35.00mmの範囲内であ」ることのうち、「幅は、平均値が10.00~15.00mmの範囲であ」ることは、本件発明1の「上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が0.5mm以上15mm以下であること」に相当する。
(カ)甲1発明の「木質板」の「密度が0.40~0.65g/cm3である」ことのうち、「密度が0.50~0.65g/cm3である」ことは、単位をkg/m3に換算すると、本件発明1の「木質ボード」の「密度が500kg/m3以上800kg/m3以下であ」ることに相当する。
(キ)甲1発明の「木質板」を構成している「木材薄片集成板」を、さらに構成する「木材薄片の配列」につき、「木目方向」が「ランダム」であることは、本件発明1の「木質ボード」を構成している「木質小薄片」の「繊維方向がランダムに配向されていること」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなる木質ボードであって、
上記木質ボードの密度が500kg/m3以上800kg/m3以下であり、
上記木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.05mm以上0.35mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が0.5mm以上15mm以下の細長形状であり、繊維方向がランダムに配向されている木質ボード。」
(相違点1)
「木質小薄片」の「繊維方向に沿った長さ」について、本件発明1では、「10mm以上35mm以下」であるのに対して、甲1発明では、「40.0~115.0mmの範囲内」である点。
(相違点2)
「木質小薄片」について、本件発明1では、「細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がな」いのに対して、甲1発明では、そのような特定がされていない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
事案に鑑み、まず、相違点2から検討する。
(ア)相違点2について
a 相違点2に係る本件発明1の構成のうち、「木質小薄片」が「細長形状に大きさと形状が均質に揃っている」ことの技術的意味について
本件特許の明細書の段落【0013】には「目的」につき「1種類の大きさの木質薄片のみを用いて、高強度で寸法安定性や表面性に優れ、製造の容易な木質ボードが得られるようにすることにある。」との記載があり、また、段落【0056】には、「すなわち、単層の木質ボードAは、1種類の木質小薄片1,1,…のみで構成され、その木質小薄片1,1,…の厚さtが極めて薄く、0.05~0.35mmという狭い範囲内に収まっているので、多数の木質小薄片1,1,…は厚さtのばらつきが小さくて均一な厚さtに揃ったものになる。また、木質小薄片1,1,…の繊維方向寸法d1(長さ)及び繊維直交方向寸法d2(幅)も一定範囲内にあるので、木質ボードAは大きさが一定範囲内に揃った木質小薄片1,1,…が集合して均質なものとなる。そのため、木質ボードAの強度が高くなるだけでなく、吸放湿による反りが発生し難く、南洋材合板と同程度の良好な寸法安定性が得られる。また、多数の木質小薄片1,1,…が均一な大きさに揃っているので、通常のOSBのように木質ボードの表面に大きな凹凸が生じることはなく、木質ボードAは表面性に優れたものとなる。また、均一な大きさの多数の木質小薄片1,1,…を集合させて積層するので、その製造も容易となる。」との記載がある。(下線は、当審合議体が付与。)
上記記載から、「木質小薄片」が「細長形状に大きさと形状が均質に揃っている」こととは、「厚さt」、「繊維方向寸法d1(長さ)」及び「繊維直交方向寸法d2(幅)」が、「狭い範囲内に収まってい」ることや、「ばらつきが小さ」いことなど、「一定範囲内にある」ことをいうものと理解することができる。
なお、上記段落には、「1種類の大きさの・・・」との記載があるが、上記理解をふまえれば、特定の(1種類の)数値の寸法を指すものではなく、「一定範囲内」と同様の意味と理解するのが妥当といえる。
そして、「木質小薄片」が上記に示した意味での「細長形状に大きさと形状が均質に揃っている」ことにより、高強度で寸法安定性や表面性に優れた木質ボードを得ることができることを示しているといえる。
b 相違点2の判断
(a)甲1発明の木質小薄片(木材薄片)は、
厚さの絶対値が0.05~0.50mmであり、
長さの絶対値が20.0~150.0mmであり、
幅の絶対値が1.00~50.00mmであるものが用いられることから、その木質小薄片(木材薄片)の「厚さ」、「長さ」及び「幅」の「平均値」が、上記aに示した意味での「一定の範囲内」に収まっていることは明らかである。
そうすると、甲1発明の木質小薄片(木質薄片)が、「厚さの絶対値が0.05~0.50mmであり、長さの絶対値が20.0~150.0mmであり、幅の絶対値が1.00~50.00mmである」ことは、本件発明1の「木質小薄片」が、「細長形状に大きさと形状が均質に揃っている」ことに相当する。
(b)甲4記載技術のとおり、細片化木材を用いた再構成材(OSB、OSL、PSL等)は、原木を細片化してこれを再構成するために、原木から切り出した製材品のように節等による欠陥が存在しないことが技術常識であるところ、甲1発明の「木材薄片」は、「厚さの絶対値が0.05~0.50mm、厚さの平均値が0.10~0.45mm」のものが用いられ、「長さは、絶対値が20.0~150.0mm、平均値が40.0~115.0mmの範囲内であ」り、「幅は、絶対値が1.00~50.00mm、平均値が10.00~35.00mmの範囲内であ」って、このような木質薄片を用いた木質板であれば、甲4記載技術で示された細片化木材を用いた再構成材と同様に、節等による欠陥が存在していないといえる。
よって、甲1発明において、実質的に節部分はないものといえる。
(c)まとめ
上記(a)及び(b)をふまえれば、相違点2は、実質的な相違点ではない。
(イ)相違点1について
本件発明1に記載された厚さ、長さ及び幅に係る数値範囲は、本件明細書の段落【0017】に「木質小薄片の厚さ、長さ及び幅はいずれも平均値である。」と記載されているように、「多数の木質小薄片」について厚さ、長さ及び幅についての「平均値」の範囲を示すものである。よって、相違点1に係る本件発明1の「10mm~35mm以下」との点は、「木質小薄片」の「繊維方向に沿った長さ」の平均値の範囲である。
一般に、数値範囲を最適化又は好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮である。そして、甲1発明は表面の平滑性の向上を課題の一部としているところ、木材薄片を利用した木質板は、構成要素の寸法が小さくなるに従い、得られる木質板の表面が平滑になるものであるから、平滑性等、所望の特性を得るよう、「繊維方向に沿った長さ」の数値範囲を好適化して、すなわち、「木質小薄片」の「平均値」を小さくして、「10mm~35mm以下」と特定することは、当業者が通常の創作能力を発揮してなし得た程度のことである。
以下、数値範囲を「10mm~35mm以下」とすることについて詳述するに、まず、甲1発明と比較した有利な効果について検討し、次に、甲1発明において長さの数値範囲を変更することの阻害要因について検討する。
a 本件発明の効果について
本件明細書において、【発明の効果】として示された段落【0022】には、長さを「10mm以上35mm以下」にしたことにより奏される作用効果の記載はなく、また、実施例に係る段落【0056】等の記載をみても、「木質ボードAの強度が高くなるだけでなく、吸放湿による反りが発生し難く、南洋材合板と同程度の良好な寸法安定性が得られる。」と記載されていて、木質ボードAの強度が高くなるだけでなく、吸放湿による反りが発生し難く、南洋材合板と同程度の良好な寸法安定性が得られるとの効果が示されているものの、当該効果は、本件発明1における長さを「10mm以上35mm以下」と限定したことにより奏される作用効果とはいえない。
加えて、本件明細書の上記段落以外、及び、本件特許の図面をみても、長さを「10mm以上35mm以下」に限定したことにより奏される作用効果に関する記載はなく、奏される作用効果の程度を、前記範囲以外のものと対比して推認することもできない。
以上のとおり、本件発明1において、長さを「10mm~35mm以下」と限定したことによる特段の効果が認められないから、本件発明1が、長さを「10mm~35mm以下」とした点で、甲1発明と比較して、進歩性を推認できる顕著な効果を持つとはいえない。
b 甲1における長さの数値範囲を変更することの阻害要因について
甲1において、【請求項1】には、「厚さの絶対値が0.05~0.50mm」と記載され、【請求項2】には、「幅の絶対値が1.00~50.00mm」と記載されているものの、木質薄片の長さの寸法(平均値)について特定する記載はない。また、【発明の実施の形態】において、木材薄片の長さの好ましい絶対値や平均値について一定の範囲が示されているものの、その一定の範囲以外の数値範囲を採用することを阻害する特段の記載や示唆はない。
c 甲1の記載及び甲1発明における木材薄片の寸法について
甲1の【0003】には、「木材薄片や木質繊維等を利用した木質板は、一般に、木材薄片や木質繊維等の構成要素をバインダーで接着し、成形一体化して形成される。その際、構成要素の寸法が小さくなるに従い、得られる木質板は均質になり、表面も平滑になる」との記載もあるから、甲1には、木質板の製造にあたって、構成要素の寸法を小さくすることによる利点があることが示唆されている。
そうすると、甲1発明において、木質薄片の長さの寸法(平均値)を、幅に見合う程度に小さく設計し、「10mm~35mm以下」との数値範囲を選択することは、当業者が適宜設計し得る最適化の範疇に過ぎないものである。
d まとめ
上記a~cを総合すると、相違点1に係る本件発明1の構成による作用効果は、格別顕著なものとはいえず、甲1発明において、長さを変更することを阻害する要因があるともいえないから、甲1発明において、木質小薄片の長さのバラツキを小さくするにあたって、相違点1の本件発明1の数値範囲とした点は、適宜なし得る設計事項程度のものである。
ウ 特許権者の意見書における主張について
特許権者は、令和5年10月23日に提出した意見書において、
・本件発明1と甲1発明との間の相違点を認定するに当たっては、発明の技術的課題の観点から、相違点をことさらに細かく分けて認定し、各相違点の容易想到性を個々に判断することは適切ではなく、本件発明1において、「木質小薄片」の構成全体をひとまとまりの相違点として判断するのが相当であると主張し、本件発明1の「木質小薄片」と甲1発明の「木質薄片」とは、「長さ」と「幅」の乗算に相当する2次元の大きさ(面積)で対比することを示すとともに、「繊維方向に沿った長さ」及び「繊維方向と直交する方向に沿った幅」の2つの寸法の構成をひとまとまりの相違点(相違点A1)とした場合に、相違点A1は実質的な相違点である以上、これらの構成に加えて、「木質小薄片」の「上記表裏面間の厚さが0.05mm以上0.35mm以下、上記繊維方向に沿った長さが10mm以上35mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が0.5mm以上15mm以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がなく、且つ上記繊維方向がランダムに配向されている」構成全体をひとまとまりの相違点(相違点Aα)を判断する場合、当該相違点Aαは実質的な差異であるといえる旨主張し、
・甲1発明の「木質薄片」において、「長さ」と「幅」の数値範囲を好適化して、それぞれ「10mm~35mm以下」及び「0.5mm以上15mm以下」と特定することは、当業者が通常の創作能力を発揮してなし得た程度のことではなく、また、甲1発明の「木質薄片」において、甲3技術事項を適用して「長さ」や「幅」等の各相違点の容易想到性を個々に判断することはできないばかりか、(相違点A1)及び(相違点Aα)に至る「動機付けの存在」が認定できず、甲1発明、又は甲1発明及び甲3技術事項に基づいて、本件発明1に想到することは、当業者といえども困難である旨主張する。
(特許権者の意見書5頁13-23行、6頁3-8行、7頁14行-8頁8行)
(ア)主張の検討
a 本件明細書等の記載
(a)「発明が解決しようとする課題」及び「課題を解決するための手段」について
「【0013】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもので、その目的は、多数の木質薄片を積層する構造の木質ボードに改良技術を施すことにより、1種類の大きさの木質薄片のみを用いて、高強度で寸法安定性や表面性に優れ、製造の容易な木質ボードが得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、この発明では、OSBの構成材料として通常使用される切削片に対して、厚さを含む大きさを微小な範囲に限定した木質薄片を用い、この木質薄片の大きさをさらに微小な範囲に限定した木質小薄片を構成材料とし、その多数の木質小薄片を集合状態で積層して木質ボードとするようにした。
・・・
【0016】
具体的には、第1の発明は、繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなる木質ボードが対象である。この木質ボードを構成する木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.05mm以上0.35mm以下、上記繊維方向に沿った長さが10mm以上40mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が0.5mm以上15mm以下であることを特徴としている。
【0017】
この第1の発明では、木質ボードは、厚さ0.05~0.35mm、繊維方向に沿った繊維方向寸法40mm以下、繊維方向と直交する方向に沿った繊維直交方向寸法40mm以下の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化により構成されている。木質小薄片の厚さ、長さ及び幅はいずれも平均値である。」
(b)「発明の効果」について
「【0022】
以上説明したように、本発明によると、木質ボードを、繊維方向に沿った表裏面を有する多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなるものとし、木質小薄片の厚さを0.05~0.35mm、繊維方向寸法及び繊維直交方向寸法を40mm以下としたことにより、多数の木質小薄片はばらつきの小さい均一な大きさに揃ったものになり、木質ボードの強度を高くすることができるとともに、南洋材合板と同程度の良好な寸法安定性及び表面性が得られ、木質ボードを容易に製造することができる。」
(c)「発明を実施するための形態」について
「【0027】
木質小薄片1について説明すると、図3に拡大して示すように、木質小薄片1の厚さtは0.05~0.35mm(0.05mm以上かつ0.35mm以下)であり、好ましくは0.10~0.30mm(0.10mm以上かつ0.30mm以下)、より好ましくは0.15~0.25mm(0.15mm以上かつ0.25mm以下)、さらに好ましくは0.15~0.20mm(0.15mm以上かつ0.20mm以下)である。この薄い厚さtの薄片1,1,…により木質ボードAの特性が決定づけられている。上記木質小薄片1の厚さtは平均値である。換言すれば、本発明に係る木質小薄片1は、通常一般のOSBのエレメント(構成材料)として使用されるストランド(本発明では切削片ともいう)が一般的には厚さが0.6~1.5mm程度であるのに対し、それよりも厚さの薄い薄片である。
【0028】
また、木質小薄片1は、導管や仮導管等による繊維1a,1a,…を有し、その繊維1aに沿った方向の繊維方向寸法d1が、繊維方向と直交する方向に沿った繊維直交方向寸法d2よりも長い細長形状(短冊形状)である。繊維方向寸法d1を長さとし、繊維直交方向寸法d2を幅とすると、長さd1は40mm以下、好ましくは35mm以下、より好ましくは30mm以下、より一層好ましくは25mm以下、さらに好ましくは10~20mm(10mm以上かつ20mm以下)である。また、幅d2は40mm以下、好ましくは15mm以下、より好ましくは0.5~5mm(0.5mm以上かつ5mm以下)である。木質小薄片1の長さd1及び幅d2はいずれも平均値とする。換言すれば、本発明に係る木質小薄片1,1,…は、通常一般のOSBの構成材料として使用される切削片が一般的には長さが110mm(長いものでは150~250mm程度)、幅が15~25mm(長いものでは長さの1/3程度)であるのに対し、それよりも大きさの小さい薄片である。しかも、本実施形態に係る木質小薄片1は、後述するように、図示しないが、原木から切削されたままの木質薄片(切削後木質薄片ともいう)が破砕されてそれよりも小さくなったものであり、その切削後の木質薄片とは異なるものを定義する意味で、その切削後の木質薄片に対して「木質小薄片」という。
・・・
【0034】
上記木質ボードA内において、多数の木質小薄片1,1,…は、その繊維1a,1a,…に沿った方向である繊維方向(長さ方向)が基準方向に配向されていてもよいが、この繊維方向の配向性は必須ではなく、繊維方向がランダムに配向されていてもよい。尚、繊維方向(長さ方向)が基準方向に配向されているとは、木質ボードA内において、全ての木質小薄片1,1,…の繊維1a,1a,…が正確に同一方向を向いていること、換言すると、配向された木質小薄片1,1,…の繊維方向が互いに平行になっていることを限定しない。一部の木質小薄片1,1,…として、繊維方向が基準方向に対してある程度(例えば20°程度)傾いている木質小薄片1,1,…が含まれていてもよい。
・・・
【0046】
また、木質小薄片1,1,…は、節部分が除去されており、ばらつきがなくて細かい範囲内の大きさのものに保たれているので、マットA1全体で均質になり、このことによって木質ボードAの強度のばらつきがなくなる。つまり、大きなストランド(切削片)を用いるストランドボードでは、例えば節部分を含む不均一なマットにより部分的(スポット的)に薄くて低強度部分が生じ、強度のばらつきがでるが、それがなくなる。しかも、木質小薄片1,1,…も薄い方がマットA1の均質性が高くなり、木質ボードAの強度が出易くなる。一般に大きなストランド(切削片)を用いるストランドボードは強度を大きくできるのに対し、本発明では切削片よりも薄くて小さい木質薄片(切削後木質薄片)を粉砕によりさらに小さくした木質小薄片1によって木質ボードAの均質性と強度とを兼ねている。
・・・
【0056】
すなわち、単層の木質ボードAは、1種類の木質小薄片1,1,…のみで構成され、その木質小薄片1,1,…の厚さtが極めて薄く、0.05~0.35mmという狭い範囲内に収まっているので、多数の木質小薄片1,1,…は厚さtのばらつきが小さくて均一な厚さtに揃ったものになる。また、木質小薄片1,1,…の繊維方向寸法d1(長さ)及び繊維直交方向寸法d2(幅)も一定範囲内にあるので、木質ボードAは大きさが一定範囲内に揃った木質小薄片1,1,…が集合して均質なものとなる。そのため、木質ボードAの強度が高くなるだけでなく、吸放湿による反りが発生し難く、南洋材合板と同程度の良好な寸法安定性が得られる。また、多数の木質小薄片1,1,…が均一な大きさに揃っているので、通常のOSBのように木質ボードの表面に大きな凹凸が生じることはなく、木質ボードAは表面性に優れたものとなる。また、均一な大きさの多数の木質小薄片1,1,…を集合させて積層するので、その製造も容易となる。」
b 本件発明1の「木質小薄片」に係る発明特定事項について
本件発明1の「木質小薄片」については、「表裏面間の厚さが0.05mm以上0.35mm以下、上記繊維方向に沿った長さが10mm以上35mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が0.5mm以上15mm以下」であること、「細長形状に大きさと形状が均質に揃」っていること、「節部分がな」いこと、「繊維方向がランダムに配向されている」ことが、特定されている。
c 本件発明の技術的課題及び課題を解決するための手段について
本件発明の技術的課題は、本件明細書の段落【0013】に記載されているとおり、「多数の木質薄片を積層する構造の木質ボードに改良技術を施すことにより、1種類の大きさの木質薄片のみを用いて、高強度で寸法安定性や表面性に優れ、製造の容易な木質ボードが得られるようにすること」であり、課題を解決すべき手段は、段落【0014】の「厚さを含む大きさを微小な範囲に限定した木質薄片を用い、この木質薄片の大きさをさらに微小な範囲に限定した木質小薄片を構成材料とし、その多数の木質小薄片を集合状態で積層して木質ボードとする」との記載からみて、木質ボードの構成材料を「厚さを含む大きさを微小な範囲に限定した木質薄片を用い、この木質薄片の大きさをさらに微小な範囲に限定した木質小薄片」とすることと理解できる。しかしながら、課題を解決すべき手段として、同段落には、前記「木質小薄片」とすること以外に、「細長形状に大きさと形状が均質に揃」っていること、「節部分がな」いこと、「繊維方向がランダムに配向されている」ことなどは、何ら示されておらず、本件明細書において、これらのことと課題を解決すべき手段との直接の関係を示す記載も示唆もない。
d 本件発明1の「木質小薄片」の各発明特定事項の効果について
(a)本件明細書の段落【0022】(【発明の効果】)には「多数の木質小薄片はばらつきの小さい均一な大きさに揃ったものになり、木質ボードの強度を高くすることができるとともに、南洋材合板と同程度の良好な寸法安定性及び表面性が得られ、木質ボードを容易に製造することができる」との効果についての記載があるものの、当該効果は、「木質小薄片の厚さを0.05~0.35mm、繊維方向寸法及び繊維直交方向寸法を40mm以下としたことにより」奏される効果である。
一方、本件発明1の「木質小薄片」に係る「表裏面間の厚さが0.05mm以上0.35mm以下、上記繊維方向に沿った長さが10mm以上35mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が0.5mm以上15mm以下」との寸法としたことによる効果については、本件明細書には記載されていない。
(b)本件発明1の「木質小薄片」の「細長形状に大きさと形状が均質に揃」っていることの効果について
本件発明1の「細長形状に大きさと形状が均質に揃」うこととは、上記イ(ア)aで示したとおり、「木質小薄片」が「一定範囲内にある」ことを示す程度のものであって、当該特定事項により、高強度で寸法安定性や表面性に優れた木質ボードを得るとの効果を奏するものと理解できる。
(c)本件発明1の「木質小薄片」に「節部分がな」いことの効果について
本件明細書の段落【0046】には、「節部分を含む不均一なマットにより部分的(スポット的)に薄くて低強度部分が生じ、強度のばらつきがでるが、それがなくなる。」との記載があることから、「木質小薄片」に「節部分がな」いことにより、強度のばらつきがなくなるとの効果を奏するものと理解できる。
(d)本件発明1の「木質小薄片」が「繊維方向がランダムに配向されている」ことの効果について
本件明細書の段落【0034】には、「木質ボードA内において、多数の木質小薄片1,1,…は、その繊維1a,1a,…に沿った方向である繊維方向(長さ方向)が基準方向に配向されていてもよいが、この繊維方向の配向性は必須ではなく、繊維方向がランダムに配向されていてもよい。」との記載があるものの、「木質小薄片」が「繊維方向がランダムに配向されて」いることの効果は記載も示唆もされていない。
e 相違点の認定について
(a)上記cのとおり、本件発明の技術的課題を解決する手段は、木質ボードの構成材料を「厚さを含む大きさを微小な範囲に限定した木質薄片を用い、この木質薄片の大きさをさらに微小な範囲に限定した木質小薄片」とすることではあるものの、さらにこれに「細長形状に大きさと形状が均質に揃」っていること、「節部分がな」いこと、「繊維方向がランダムに配向されている」ことを加えたひとまとまりの手段と、本件発明の技術的課題の解決手段との直接の関係は示されていない。
また、本件発明1の各発明特定事項の効果については、上記dで説明したとおり各発明特定事項による個別の効果を奏する程度のものに過ぎず、本件明細書等の記載からみても、各発明特定事項が互いに関連し、ひとまとまりの手段として機能し、相乗効果を奏しているものとは認められない。
よって、本件発明1と甲1発明との相違点を、特許権者が主張するように各発明特定事項をひとまとまりとして相違点Aαと認定しなければならないものではない。
(b)また、本件発明1において、「木質小薄片」の「厚さ」、「長さ」及び「幅」(いずれも「平均値」としての範囲)については、請求項1の記載からみて、各々、特定されている範囲の中から選択する(数値が小さいもの同士など、連動するような選択の仕方は何ら特定されていない)ものと理解でき、特に「長さ」と「幅」についてみると、「繊維方向に沿った長さ」及び「繊維方向と直交する方向に沿った幅」(の範囲)を特定しているだけであって、特有な原理等に基づき、「長さ」と「幅」に基いて定まる二次元の大きさ(面積)が特定されているものではない。
よって、本件発明1と甲1発明との相違点を、特許権者が主張するように「繊維方向に沿った長さ」及び「繊維方向と直交する方向に沿った幅」の2つの寸法の構成をひとまとまりとして相違点A1と認定することは、本件特許の請求項1の記載に基づくものではない。
なお、「相違点1」は、「木質小薄片」の「厚さ」、「長さ」及び「幅」について、本件発明1と甲1発明とを対比すると、「厚さ」として選択できる範囲、及び、「幅」として選択できる範囲については、上記「ア 対比」で説明したとおり、両者は共通する数値範囲を有していることを確認する一方で、「長さ」として選択できる範囲については異なることを踏まえて認定したものであって、本件発明1の構成をことさら細かく分けて認定することを趣旨としたものではない。
(c)上記(a)及び(b)のとおりであるから、特許権者が主張する、本件発明1と甲1発明との相違点を(相違点A1)及び(相違点Aα)とする主張を採用することができない。
(d)特許権者が主張する相違点Aα及びその判断について
仮に、本件発明1と甲1発明とが、上記相違点Aα、すなわち、本件発明1が、「木質小薄片」の「上記表裏面間の厚さが0.05mm以上0.35mm以下、上記繊維方向に沿った長さが10mm以上35mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が0.5mm以上15mm以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がなく、且つ上記繊維方向がランダムに配向されている」点で、甲1発明とは相違するとしても、上記ア(キ)のとおり、甲1発明の「木材薄片の配列」につき、「木目方向」が「ランダム」であることが、本件発明1の「繊維方向がランダムに配向されている」に相当しており、また、「木質小薄片」の「厚さ」及び「幅」については、上記ア(ウ)~(オ)に示したとおりである。
そして、相違点Aαに係る本件発明1の構成による効果について、上記eに示したとおり、上記dに示した個別の効果を奏する程度のものに過ぎず、格別なものではない。
そうすると、本件発明1と甲1発明との相違点は、「木質小薄片」の「繊維方向に沿った長さ」について、本件発明1では、「10mm以上35mm以下」であるのに対して、甲1発明では、「40.0~115.0mmの範囲内」であること、及び、「木質小薄片」について、本件発明1では、「細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がな」いのに対して、甲1発明では、そのような特定がされていないことに整理され、相違点Aαは、上記アにおいて示した相違点1及び2の内容と、実質的に異なるものではなく、その判断についても、上記イで示したことと同様であって、結論が異なるものではない。
また、特許権者は、相違点Aαの構成に至る「動機付けの存在」が認定できないことを主張しているが、実質的な相違点が、相違点1であることを踏まえれば、本件発明1の構成に至る「動機付けの存在」については、上記イ(イ)で示したとおりである。
よって、仮に、相違点Aαが存在するとしても、結論に変わりはない。
f なお、特許権者は、甲1発明及び甲3技術事項に基づいて、本件発明1に想到することは、当業者といえども困難である旨主張するが、取消理由通知<決定の予告>では、甲1発明及び甲3技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができるとしたのは、本件発明2であって、本件発明1ではなく、本件発明2についての判断等は、後記(2)イ(イ)に示すとおりである。
以上のとおりであるから、特許権者の主張を採用することはできない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明2
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「木材薄片は、厚さの平均値が0.10~0.45mmのものが用いられ」ることのうち、「厚さの平均値が0.15~0.25mmのものが用いられ」ることは、本件発明1の「上記木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.15 mm以上0.25mm以下」であることに相当する。
そうすると、本件発明2と甲1発明とは、上記相違点2に加えて下記の相違点1’で相違し、その余の点で一致する。
(相違点1’)
「木質ボードの木質小薄片」について、本件発明2は、「長さが10mm以上20mm以下」、「幅が0.5mm以上5mm以下」であることを特定しているのに対し、甲1発明は、「木材薄片の長さ」の「平均値」が「40.0~115.0mmの範囲内」であり、「木質薄片の幅」の「平均値」が「10.00~35.00mmの範囲内」である点。
イ 判断
上記相違点2については、上記(1)イ(ア)で検討したとおりである。
相違点1’について検討する。
(ア)本件発明2と甲1発明との「木質小薄片」の「長さ」及び「幅」について、上記のとおり違いがあるものの、本件明細書及び本件特許の図面をみても、本件発明2において「長さが10mm以上20mm以下」、「幅が0.5mm以上5mm以下」としたことにより奏される作用効果に関する記載は見あたらず、奏される作用効果の程度を、前記範囲以外のものと対比して推認することできない。
よって、本件発明2の作用効果は、格別顕著なものとはいえないから、上記(1)イ(イ)で示したのと同様に、相違点1’に係る本件発明2の構成は、適宜なし得る設計事項程度のものである。
(イ)副引用例として甲3を用いる。
甲3記載技術の「芯層(3) と、木質分を熱硬化性樹脂によって結着した表層(2)および/または裏層(4) とからなる木質板(1)において、木質分として木片が使用され、該木片は、厚さ0.2~0.5mm」のものが使用されることのうち、「厚さ0.2~0.25mm」のものが使用されることは、本件発明2の「木質ボードの木質小薄片は、厚さが0.15~0.25mm」であることに相当し、甲3記載技術の「芯層(3) と、木質分を熱硬化性樹脂によって結着した表層(2)および/または裏層(4) とからなる木質板(1)において、木質分として木片が使用され、該木片は、」「長さ6~12mm」のものが使用されることのうち、「長さ10~12mm」のものが使用されることは、本件発明2の「木質ボードの木質小薄片は、」「長さが20mm以下」であることに相当し、
甲3記載技術の「芯層(3) と、木質分を熱硬化性樹脂によって結着した表層(2)および/または裏層(4) とからなる木質板(1)において、木質分として木片が使用され、該木片は、」「幅0.5~2.5mm」のものが使用されることは、本件発明2の「木質ボードの木質小薄片は、」「幅が5mm以下」であることに相当する。
甲3記載技術の「木片」の「長さ」が「幅」に比べて長いことは、本件発明2の「細長形状である」ことに相当する。
甲1発明と甲3記載技術とは、いずれも多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなる木質ボードに関するものであり、属する技術分野が共通する。そして、甲1の段落[0003]において、木材薄片や木質繊維等の構成要素をバインダーで接着し、成形一体化して形成される木質板において、構成要素の寸法が小さくなるに従い、得られる木質板は均質になり、表面も平滑になる傾向があることが示されていることをふまえると、表面の平滑性を高めることを目的とした甲1発明の木質板において、表面の平滑性を高めるために、寸法が小さい甲3記載技術の木片を適用し、上記相違点1’に係る本件発明2の構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。
また、本件発明2が奏する作用効果は、甲1発明及び甲3技術事項から予測しうる範囲内のものである。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明2は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、甲1発明及び甲3技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明4
ア 対比・判断
本件発明4と甲1発明とを対比する。
本件特許の明細書の段落【0051】及び【0052】に、木質小薄片1,1,…の厚さtが0.35mm以下であれば、木質ボードAの表面における二乗平均平方根高さSqは0.005μm以上かつ0.015μm以下程度となり、木質ボードAの表面における算術平均高さSaは0.002μm以上かつ0.007μm以下程度となることが示されていることをふまえると、甲1発明の「木材薄片は、厚さが0.10~0.45mmのものが用いられ」た「木質板」のうち「厚さが0.10~0.35mmのものが用いられ」た「木質板」の「表面における二乗平均平方根高さSq」及び「表面における算術平均高さSa」は、本件発明4の「表面における二乗平均平方根高さSqが0.005~0.015μm又は表面における算術平均高さSaが0.002~0.007μmである」数値範囲を満たしているといえる。
そうすると、本件発明4と甲1発明とは、相違点1及び2で相違し、その余の点で一致する。
相違点1及び2については、上記(1)イで検討したとおりである。
イ 小括
したがって、本件発明4は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明に基づいて、本件発明2は、甲1発明、又は甲1発明及び甲3技術事項に基づいて、本件発明4は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、2及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項3は、本件訂正請求による訂正で削除された。これにより、請求項3に対する本件特許異議の申立ては、申立の対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701091