特許異議申立
2024-700259
ポリプロピレンフィルム、積層体、包装材、梱包体、およびその製造方法
- 審判番号
- 2024-700259
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-509674
- 登録番号
- 7355268
- 請求日
- 2024年03月21日
- 審決日
- 2024年12月26日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東レ株式会社
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 【異議申立人】平居 博美
- 審判長/審判官
- 審判長 淺野 美奈
- 審判官 天野 宏樹
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.4 -Y (C08J) / P1651.121-Y (C08J) / P1651.536-Y (C08J) / P1651.537-Y (C08J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第39条第2項、特許法第2条第3項第1号、特許法第2条第3項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7355268号発明「ポリプロピレンフィルム、積層体、包装材、梱包体、およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7355268号の請求項1ないし16に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7355268号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2023年(令和5年)2月3日(優先権主張 2022年(令和4年)2月14日)を国際出願日とする出願であって、令和5年9月25日にその特許権の設定登録(請求項の数16)がされ、同年10月3日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和6年3月21日に特許異議申立人 藤江 桂子(以下、「特許異議申立人A」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:全請求項)がされ、同年4月3日に特許異議申立人 平居 博美(以下、「特許異議申立人B」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:全請求項)がされ、同年7月22日付けで取消理由が通知され、同年9月19日に特許権者 東レ株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出され、同年10月7日付けで特許異議申立人A及び特許異議申立人Bに対して審尋を行ったところ、同年同月28日に特許異議申立人Bより回答書が提出されたものの、特許異議申立人Aからは何ら応答がなかったものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし16に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などという場合がある。また、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明16」を総称し、「本件特許発明」という場合がある。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
粒子を含むポリプロピレンフィルムであって、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であり、前記粒子が、金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方であることを特徴とする、ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
前記X1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、前記粒子のアスペクト比が2以上である、請求項1に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
前記X1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、前記粒子の短辺の長さが100nm未満である、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
前記無機化合物粒子が無機酸化物粒子であり、アルミナ、シリカ、アルミニウムとケイ素の酸化物のうち少なくとも一つを含む、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
三次元非接触表面形状計測により測定した少なくとも一方の表面の平均粗さ(Sa)が30nm以下、かつ二乗平均平方根高さ(Sq)が50nm以下である、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
全光線透過率が70%を超えて100%未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項7】
フィルムを示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで20℃/minで昇温した際に得られるフィルムの融解ピーク温度(Tm)が160℃以上である、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項8】
分光色差計で測定したb値*が-2.00以上2.00以下である、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項9】
請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(D層)を有することを特徴とする、積層体。
【請求項10】
全光線透過率が70%を超え100%未満である、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX2方向、前記X2方向に0.1%収縮する際の温度をX2Tsとしたときに、前記X2Tsが100℃以上160℃以下である、請求項9に記載の積層体。
【請求項12】
包装材に用いられる、請求項9に記載の積層体。
【請求項13】
請求項9に記載の積層体を有する、包装材。
【請求項14】
請求項13に記載の包装材により内容物が梱包されている、梱包体。
【請求項15】
請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルムの製造方法であって、
ポリプロピレン層と、金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(D層)を有する積層体を溶融する溶融工程、
前記溶融工程で得られた溶融物を1質量%以上99質量%以下含む混合樹脂を溶融して口金からシート状に吐出し、支持体上で冷却固化してポリプロピレンシートを得るキャスト工程、
前記ポリプロピレンシートを直交する二方向に延伸する延伸工程、
及び、前記延伸工程で得られたフィルムに熱処理および弛緩処理を施す熱処理工程をこの順に有することを特徴とする、ポリプロピレンフィルムの製造方法。
【請求項16】
ポリプロピレンフィルムの少なくとも片方の表面に窒素と炭酸ガスの混合物雰囲気ガス中で表面処理を行う、請求項15に記載のポリプロピレンフィルムの製造方法。」
第3 特許異議申立理由の要旨
特許異議申立人A及びBが申し立てた請求項1ないし16に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次の1及び2のとおりである。
1 特許異議申立人Aが申し立てた特許異議申立理由の要旨
(1) 申立理由A1(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由A1の具体的理由は概ね次のとおりである。
ア 申立理由A1-1(熱機械分析の測定条件について)
本件特許発明の「ポリプロピレンフィルム」は、「熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であり」という構成を具備する。
しかしながら、特許請求の範囲には、熱機械分析の測定条件が一切記載されていない。
この点について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0066】には、「試長を一定に保持したフィルムにおける熱収縮曲線を求めた」と記載されているが、試長を一定保持したにも関わらず、ポリプロピレンフィルムの収縮の度合いを測定できる理由が全く理解できない。
そうしてみると、本件特許発明は、「熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であり」という構成の前提となる分析条件が不明というより他ない。
したがって、本件特許発明は、明確であるということができない。
イ 申立理由A1-2(断面の向きについて)
本件特許発明2は、「前記X1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面」という構成を具備するが、この断面の向きが明確であるということができない。
本件特許発明3ないし16についても同様である。
(2) 申立理由A2(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由A2の具体的理由は概ね次のとおりである。
ア 申立理由A2-1(熱機械分析の測定条件について)
上記(1)アで述べたとおりであるから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明について明確に説明されているものとはいえない。その結果、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明1~本件特許発明14の物を作れるように記載されているとはいえず、また、本件特許発明15及び本件特許発明16の製造方法により本件特許発明1~本件特許発明14の物を生産できるともいえない。
イ 申立理由A2-2(断面の向きについて)
本件特許発明2は、「前記X1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、前記粒子のアスペクト比が2以上である」という構成を具備するが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0027】及び【0028】に記載された機序と整合的に理解すると、当業者が、この構成を具備するポリプロピレンフィルムを作製することができない。
本件特許発明3ないし16についても同様である。
(3) 申立理由A3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由A3の具体的理由は概ね次のとおりである。
ア 申立理由A3-1(熱機械分析の測定条件について)
上記(1)アで述べたとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明の「熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であり」という構成と整合的に理解可能な分析条件が、そもそも記載されていない。
そうしてみると、「熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であり」という構成を具備する本特許件発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるということができない。
イ 申立理由A3-2(断面の向きについて)
本件特許発明2は、「前記X1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、前記粒子のアスペクト比が2以上である」という構成を具備するが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0027】及び【0028】に記載された機序と整合的に理解すると、「前記X1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、前記粒子のアスペクト比が2以上である」というポリプロピレンフィルムは、実質的に、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているということができない。
本件特許発明3ないし16についても同様である。
(4) 申立理由A4(甲第A1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし16に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(5) 証拠方法
・甲第A1号証:特開2021-28394号公報
・甲第A2号証:国際公開第2021/125100号
・甲第A3号証:特開2006-263986号公報
・甲第A4号証:特開平6-342738号公報
・甲第A5号証:特開平3-286859号公報
なお、証拠の表記については、概ね特許異議申立書の記載にしたがった。
2 特許異議申立人Bが申し立てた特許異議申立理由の要旨
(1) 申立理由B1(同日出願発明)
本件特許の請求項1ないし16に係る発明は、本件特許と同日の出願である下記の甲第B1号証の請求項1及び3ないし17に係る発明と同一であり、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2) 申立理由B2(甲第B2号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし16に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B2号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3) 申立理由B3(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由B3の具体的理由は概ね次のとおりである。
本件特許発明1は、粒子を含むポリプロピレンフィルムであり、粒子が、金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方であることを規定している。
本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例によれば、ポリプロピレンフィルムは、再生ペレットを用いた積層体(積層体2ともいう)として製造され、この積層体2は、A層(A1(ホモプロピレン系樹脂 融点162℃)/AM1(A190重量部+ポリメチルペンテン系樹脂1 10質量部+酸化防止剤0.1質量部)=60/40)/B層(B1(ホモポリプロピレン系樹脂 融点167℃)/BM1(B1 70質量部+石油樹脂1 30質量部+酸化防止剤0.1質量部)/BR1(積層体1の粉砕品を混練押出したもの)=55/25/20)/C層(C1(エチレン-プロピレンランダム共重合体(融点135℃))/CM1(C1 90質量部+ポリメチルペンテン系樹脂1 10質量部+酸化防止剤0.1質量部)=60/40)/D層(Al又はAlOx蒸着層)から構成されている。
積層体2のポリプロピレンフィルムに含まれる粒子は、D層のAlOxを有する積層体1(フィルム構成はBR1をB1とすること以外は積層体2と同様)を粉砕・混練押出した再生ペレットに由来すること、AlOx又はAlであることが表1より認められる。
本件特許明細書によれば、粒子は、再生ペレットをクラッシャーで粉砕・圧縮したことにより生成していると解されるが、その具体的な条件は記載されておらず、どの程度の量の粒子が再生ペレット中に形成されたのか明らかとなっておらず、しかも本件特許明細書には粒子量が何ら記載されていない。
この様に、再生ペレットに含まれる粒子量は不明となっている以上、ポリプロピレンフィルム中に含まれる粒子量も当然の如く不明であると言わざるを得ない。
以上より、当業者は、ポリプロピレンフィルム中の粒子量が記載されておらず、ポリプロピレンフィルムと粒子の相互関係が不明瞭である本件特許明細書を参照しても当業者はプロピレンフィルムと粒子の相互関係を理解できないため、本件特許発明1を実施することができない。
本件特許発明2~16も同様に、実施可能要件違反に該当する。
(4) 申立理由B4(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由B4の具体的理由は概ね次のとおりである。
ア 申立理由B4-1(粒子について)
本件特許発明1は、粒子が金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方であると規定しているところ、本件特許発明明細書の実施例では、AlOx、Alに由来する粒子のみが表1の実施例1~8に示されている。
そうすると、AlOx、Alに由来する粒子は、アルミニウムの酸化物及び金属に過ぎず、アルミニウム以外の金属粒子及び無機化合物粒子まで含む他の態様まで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないため、本件特許発明1はサポート要件を満たさない。
本件特許発明2ないし16も同様にサポート要件を満たしていない。
イ 申立理由B4-2(ポリプロピレンについて)
本件特許発明1は、ポリプロピレンについて特段規定していないところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例では、各層で所定のポリプロピレン樹脂が使用されている。
そうすると、実施例で使用されるポリプロピレン以外を含む他の態様まで、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、本件特許発明1はサポート要件を満たさない。
本件特許発明2ないし16も同様にサポート要件を満たしていない。
(5) 証拠方法
・甲第B1号証:特開2023-118131号公報
・甲第B2号証:特許第6992929号公報
・甲第B3号証:特開2019-44171号公報
・甲第B4号証:特開2006-52292号公報
・甲第B5号証:特開2019-172972号公報
・甲第B6号証:特開2013-35272号公報
なお、証拠の表記については、概ね特許異議申立書の記載にしたがった。
第4 令和6年7月22日付けで特許権者に通知した取消理由について
令和6年7月22日付けで特許権者に通知した取消理由は、次のとおりである。
なお、取消理由には、上記第3の特許異議申立理由のうち、申立理由A1-1、申立理由A2-1、申立理由B1が包含される。
1 取消理由1(同日出願発明)
本件特許の請求項1ないし16に係る発明は、本件特許と同日の出願である甲第B1号証の請求項1及び3ないし17に係る発明と同一であり、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 取消理由2(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、取消理由2の具体的理由は次のとおりである。
本件特許発明1には、「熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であり、」と特定する。
この点に関し、本件特許明細書の【0019】には、
「X1Tsは公知の熱機械分析装置(例えば、TMA/SS6000(セイコーインスツルメント(株)製)等)を用いて測定することができ、当該装置を用いた場合の詳細な手順及び温度条件、荷重条件、試長等の各条件は実施例にて後述する。なお、後述するX2Tsの測定も同様である。」
と記載され、【0066】には、
「(2)X1方向の定め方、X1方向に1%収縮する際の温度X1Ts
<熱機械分析(TMA)による熱収縮率の測定>
ポリプロピレンフィルムを準備し、任意の方向を上に向けて、長辺として幅4mm、長さ50mmの矩形に切り出しサンプル<1>とした。この際、矩形のサンプル<1>の長辺方向を0°と定義した。次に、長辺方向が0°方向から右に15°回転した方向となるように、同サイズのサンプル<2>を採取した。以下同様に、矩形のサンプルの長辺方向を15°ずつ回転させ、同様にサンプル<3>~<12>を採取した。次に、各矩形のサンプルを試長20mmとなるよう金属製チャックに挟み込んだ。その後に下記の熱機械分析装置にセットし、下記温度条件、荷重条件にて試長を一定保持したフィルムにおける熱収縮曲線を求めた。各サンプルについて同様の測定を1回ずつ行って140℃における収縮率が最大であったサンプルの長辺方向をポリプロピレンフィルムのX1方向とした。またX1方向におけるTMAの熱収縮曲線から1%収縮した際の温度を読み取り、前記X1方向に1%収縮する際の温度X1Tsを求めた。なお、X2方向の定め方、X2方向に1%収縮する際の温度X2Tsについても、測定対象を積層体とする以外は同様とした。
(装置)
・装置 :TMA/SS6000(セイコーインスツルメント(株)製)
(温度条件)
・初期温度 :25℃、最大温度:180℃、レート:10℃/分
・保持 :10分
・サンプリング時間:10S/回
・窒素冷却 :なし
(荷重条件)
・制御モード :F
・待機中上限荷重 :19.6mN
・スタート荷重 :19.6mN
・荷重レート :0.1mN/分
・保持 :600分。」
と記載されている。
一般に、熱収縮率はサンプルを加熱した際の収縮する(変化する)度合いを測定するものであるところ、【0066】の記載によると、「熱機械分析装置にセットし、下記温度条件、荷重条件にて試長を一定保持したフィルムにおける熱収縮曲線を求めた」(下線は合議体が付した。)と、サンプルの試長が一定となるように保持して熱収縮曲線を求めた旨記載されており、「試長を一定に保持」した状態でどのように熱収縮曲線を求めることができるのか、当業者であっても理解することができない。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明1の発明特定事項に関し、当業者が実施し得ない測定方法が記載されているといわざるを得ないから、本件特許発明1に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が実施できる程度に記載されているものということができない。
同様の発明特定事項を含むものである本件特許発明2ないし16についても同様に判断される。
3 取消理由3(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、取消理由3の具体的理由は次のとおりである。
上記2のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載からは、熱収縮率をどのように測定するのか、当業者が理解し実施し得る程度に記載されているとはいえない。
してみると、本件特許発明1における「熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であり、」との特定事項は、いかなる意味を有するものであるのか理解できないものといわざるを得ない。
したがって、本件特許発明1は明確であるとはいえない。
同様の発明特定事項を含むものである本件特許発明2ないし16についても同様に判断される。
第5 当審の判断
以下のとおり、当審は、取消理由及び申立理由は何れもその理由がないものと判断する。
1 令和6年7月22日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由についての判断
(1) 取消理由1について
ア 本件特許の特許請求の範囲の記載
上記第2のとおりである。
イ 甲第B1号証における特許請求の範囲の記載
甲第B1号証の特許請求の範囲は、令和6年9月19日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載されたとおりの次のものである。
「【請求項1】
粒子を含むポリプロピレンフィルムであって、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向にフィルム面内で直交する方向をY1方向としたときに、前記Y1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、前記粒子のアスペクト比が2以上であり、前記粒子が、金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方であることを特徴とする、ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向としたときに、前記X1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、前記粒子の短辺の長さが100nm未満である、請求項1に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
前記無機化合物粒子が無機酸化物粒子であり、アルミナ、シリカ、アルミニウムとケイ素の酸化物のうち少なくとも一つを含む、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
三次元非接触表面形状計測により測定した少なくとも一方の表面の平均粗さ(Sa)が30nm以下、かつ二乗平均平方根高さ(Sq)が50nm以下である、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
全光線透過率が70%を超えて100%未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
フィルムを示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで20℃/minで昇温した際に得られるフィルムの融解ピーク温度(Tm)が160℃以上である、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項7】
分光色差計で測定したb値*が-2.00以上2.00以下である、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項8】
請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(D層)を有することを特徴とする、積層体。
【請求項9】
全光線透過率が70%を超え100%未満である、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX2方向、前記X2方向に0.1%収縮する際の温度をX2Tsとしたときに、前記X2Tsが100℃以上160℃以下である、請求項8に記載の積層体。
【請求項11】
包装材に用いられる、請求項8に記載の積層体。
【請求項12】
請求項8に記載の積層体を有する、包装材。
【請求項13】
請求項12に記載の包装材により内容物が梱包されている、梱包体。
【請求項14】
請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルムの製造方法であって、
ポリプロピレン層と、金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(D層)を有する積層体を溶融する溶融工程、
前記溶融工程で得られた溶融物を1質量%以上99質量%以下含む混合樹脂を溶融して口金からシート状に吐出し、支持体上で冷却固化してポリプロピレンシートを得るキャスト工程、
前記ポリプロピレンシートを直交する二方向に延伸する延伸工程、
及び、前記延伸工程で得られたフィルムに熱処理および弛緩処理を施す熱処理工程をこの順に有することを特徴とする、ポリプロピレンフィルムの製造方法。
【請求項15】
ポリプロピレンフィルムの少なくとも片方の表面に窒素と炭酸ガスの混合物雰囲気ガス中で表面処理を行う、請求項14に記載のポリプロピレンフィルムの製造方法。」
ウ 判断
甲第B1号証に係る出願の特許請求の範囲の記載は、上記イのとおりに補正された。これにより、本件特許発明1ないし16と甲第B1号証に係る出願の特許請求の範囲の請求項1ないし15との間で同一の請求項はないものとなった。
エ 取消理由1についてのまとめ
上記ウのとおりであるから、取消理由1の理由では、本件特許発明1ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
(2) 取消理由2(実施可能要件)について
ア 実施可能要件の判断基準
本件特許発明1ないし14は、上記第2のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、例えば、明細書等にその物を生産し、かつ、その物を使用することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産し、かつ、その物を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすと言うことができる。
また、本件特許発明15及び16は、上記第2のとおり、「物を生産する方法」の発明であるところ、物を生産する方法の発明における実施とは、そのものを生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第3号)、例えば、明細書等にその物を生産する方法を使用することができること、及び、その方法により生産した物の使用等をすることができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができ、かつ、その方法により生産した物の使用等をすることができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
イ 実施可能要件についての判断
本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明は、特に包装用途に適して用いられるポリプロピレンフィルム、積層体、包装材、梱包体、及びその製造方法に関する」(【0001】)ものであって、「本発明は、蒸着フィルムを再利用していながら、優れた熱寸法安定性、および高い酸素バリア性と水蒸気バリア性を有するポリプロピレンフィルムを提供することを課題とする」(【0008】)との記載がある。
そして、「本発明の第1のポリプロピレンフィルムは、粒子を含むポリプロピレンフィルムであって、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であり、前記粒子が、金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方であることを特徴とする、ポリプロピレンフィルムである」(【0009】)との記載、「本発明の第2のポリプロピレンフィルムは、粒子を含むポリプロピレンフィルムであって、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向にフィルム面内で直交する方向をY1方向としたときに、前記Y1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、前記粒子のアスペクト比が2以上であり、前記粒子が、金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方であることを特徴とする、ポリプロピレンフィルムである」(【0010】)との記載、「本発明により、蒸着フィルムを再利用していながら、優れた熱寸法安定性、および高い酸素バリア性と水蒸気バリア性を有するポリプロピレンフィルムを提供することができる」(【0011】)との記載、「本発明の第1のポリプロピレンフィルムは、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であることが重要である。ポリプロピレンフィルムのX1Tsが100℃以上であることは、ポリプロピレンフィルムが高温での熱寸法安定性に優れることを意味する。そのため、ポリプロピレンフィルムのX1Tsが100℃以上であることにより、例えば後述のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(以下、D層)を蒸着によって積層する際に、蒸着時の熱によるポリプロピレンフィルムの収縮に起因してD層に発生するピンホールやクラック等の欠陥を抑制し、D層を積層した積層体の水蒸気バリア性や酸素バリア性を良好なものとすることができる。また、製袋加工後に行う加熱殺菌処理などの高温処理によるポリプロピレンフィルムの収縮も抑えられるため、このような処理に伴う水蒸気バリア性や酸素バリア性の低下も軽減できる。他方、ポリプロピレンフィルムのX1Tsが160℃を超えるようにするには、結晶性が高い原料を使用することや、製膜時に高面積倍率での二軸延伸を施すことが必要であり、製膜時に破膜するなど生産性が劣る観点から、X1Tsの上限は160℃とする」(【0016】)との記載、「ポリプロピレンフィルムのX1Tsを100℃以上160℃以下にする方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレンフィルムの製膜時に幅方向の予熱温度と延伸温度、熱処理工程での弛緩処理率を調整する方法が挙げられる。より具体的には、幅方向の延伸前予熱温度を幅方向延伸温度の+1℃以上、より好ましくは+2℃以上、さらに好ましくは+3℃以上、最も好ましくは+4℃以上とすることや、熱処理工程の弛緩処理率を5%以上、より好ましくは8%以上、さらに好ましくは11%以上とすることが挙げられる」(【0018】)との記載、粒子を含むことの技術的意味及び用いられる粒子の種類について(【0020】ないし【0022】)の記載、「本発明の第2のポリプロピレンフィルムは、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向にフィルム面内で直交する方向をY1方向としたときに、前記Y1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、前記粒子のアスペクト比が2以上であることが重要である。以下、「Y1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、粒子のアスペクト比」を単に「Y1断面のアスペクト比」ということがある。ここでいうY1断面のアスペクト比が2以上である粒子は通常、高扁平な粒子であり、ポリプロピレンフィルムのバリア性は、高扁平な粒子を層状に分散させることで高めることができる。また、バリア性は、粒子の長軸方向をフィルム面と平行に近づけることで、より高めることができる。ここで長軸とは、粒子を面積が最小となる長方形で囲んだときの長辺の方向をいう」(【0023】)との記載、「粒子が高扁平かつ層状分散になるほど高いバリア性を発現できるため、より好ましいY1断面のアスペクト比は5以上、さらに好ましくは10以上、よりさらに好ましくは30以上、特に好ましくは50以上である。アスペクト比の上限は特に限定しないが500とするものである。ポリプロピレンフィルム中の粒子のY1断面のアスペクト比を2以上にする方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、後述するポリプロピレン層と、金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(D層)を有する積層体を溶融させて再ペレット化した原料を用いてポリプロピレンフィルムを製膜する方法が挙げられ、このとき積層体はD層の薄いものであることが好ましい。また、粒子を層状に分散させ、長軸方向をフィルム面と平行に近づけるには、延伸が効果的である」(【0024】)との記載、「ポリプロピレンフィルム中の粒子のX1断面のアスペクト比を2以上にする方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、アスペクト比が2以上の粒子を予めポリプロピレン樹脂中に分散させておき製膜時に添加する方法や、後述するポリプロピレン層と、金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(D層)を有する積層体を溶融させて再ペレット化した原料を用いてポリプロピレンフィルムを製膜する方法が挙げられ、このとき積層体はD層の薄いものであることが好ましい。また、粒子を層状に分散させ、長軸方向をフィルム面と平行に近づけるには、延伸が効果的である」(【0027】)との記載、三次元非接触表面形状計測により測定した少なくとも一方の表面の平均粗さ(Sa)及び三次元非接触表面形状計測により測定した表面の二乗平均平方根高さ(Sq)に関する記載(【0033】ないし【0036】)、全光線透過率に関する記載(【0030】、【0031】及び【0047】)、DSC及び分光色差計で測定したb*に関する記載(【0037】ないし【0039】)、積層体に関する記載(【0040】ないし【0042】)、包装袋、梱包体に関する記載(【0050】及び【0051】)、製造方法に関する記載(【0053】ないし【0062】)があり、具体的な実施例の記載もある。
してみれば、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1ないし14に関し、その物を生産し、かつ、その物を使用することができる程度に具体的に記載されており、また、本件特許発明15及び16に関し、その物を生産する方法を使用することができること、及び、その方法により生産した物の使用等をすることができる程度に具体的に記載されているものといえる。
よって、本件特許発明1ないし16に関して、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件に適合する。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人Bは、令和6年10月28日に提出した回答書(以下、単に「回答書」という。)において、要するに、発明の詳細な説明には「試長を一定に保持」(【0066】)したことが記載されているから、試長を一定に保持した状態でどのように熱収縮曲線を求めたのか当業者は理解することができず、実施可能であるとはいえない(回答書第4頁ないし第7頁)旨主張する。
確かに、特許明細書の当該記載はいささか正確さを欠くものではあるものの、当該技術分野の通常の知識を有する者であれば、測定開始時の試長を一定にしたものであることは、出願時の技術常識を踏まえれば当然理解できるものであるといえる。
してみると、上記主張は、上記イにおける実施可能要件についての判断に何ら影響するものではない。
エ 取消理由2についてのまとめ
上記イ及びウのとおりであるから、取消理由2の理由では、本件特許発明1ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
(3) 取消理由3(明確性要件)について
ア 明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
イ 明確性要件についての判断
特許請求の範囲の記載は、上記第2のとおりであって、請求項1ないし16それぞれにおいて、その記載はいずれも明確であるし、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として請求項1ないし16それぞれの記載を見ても、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるという点はない。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人Bは、回答書において、要するに、発明の詳細な説明には「試長を一定に保持」(【0066】)したことが記載されているから、熱収縮率をどのように測定するのか理解できないため、熱収縮率を特定するものである本件特許発明1ないし16は、明確であるとはいえない(回答書第7頁)旨主張する。
しかしながら、当該主張については、上記(2)ウで検討したとおり、出願時の技術常識を踏まえれば当業者であれば、測定開始時の試長を一定にしたものであることは、十分理解できるのであるから、上記主張は採用できない。
エ 取消理由3についてのまとめ
上記イ及びウのとおりであるから、取消理由3の理由では、本件特許発明1ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
2 令和6年7月22日付け取消理由通知で採用しなかった異議申立理由について
(1) 申立理由A1-2(明確性要件)について
ア 明確性要件の判断基準
上記1(3)アのとおりである。
イ 特許請求の範囲の記載
上記第2のとおりである。
ウ 明確性要件についての判断
上記1(3)イのとおりである。
エ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人Aは、本件特許発明2ないし16における「前記X1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面」の向きが明確であるということができない旨主張するが、フィルムにおいて、X1方向が決まれば、上記断面の向きは自ずと決まることになるのであって、この点が明確ではないとはいえない。
オ 申立理由A1-2についてのまとめ
上記ウ及びエのとおりであるから、申立理由A1-2の理由では、本件特許発明2ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
(2) 申立理由A2-2及び申立理由B3(実施可能要件)について
ア 実施可能要件の判断基準
上記1(2)アのとおりである。
イ 実施可能要件についての判断
上記1(2)イのとおりである。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人Aは上記第3 1(2)イの断面の向きについての主張、特許異議申立人Bは上記第3 2(3)の粒子量についての主張をするが、実施可能要件については上記1(2)イのとおり判断されるものであって、いずれの主張も上記判断に何ら影響しない。
エ 申立理由A2-2及び申立理由B3についてのまとめ
上記イ及びウのとおりであるから、申立理由A2-2及び申立理由B3の理由では、本件特許発明1ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
(3) 申立理由A3及び申立理由B4(サポート要件)について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 特許請求の範囲の記載
上記第2のとおりである。
ウ サポート要件についての判断
本件特許発明1ないし16の発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「蒸着フィルムを再利用していながら、優れた熱寸法安定性、および高い酸素バリア性と水蒸気バリア性を有するポリプロピレンフィルムを提供すること」(【0008】)である。
そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明の第1のポリプロピレンフィルムは、粒子を含むポリプロピレンフィルムであって、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であり、前記粒子が、金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方であることを特徴とする」(【0009】、【0013】)と記載され、「本発明の第1のポリプロピレンフィルムは、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であることが重要である。ポリプロピレンフィルムのX1Tsが100℃以上であることは、ポリプロピレンフィルムが高温での熱寸法安定性に優れることを意味する。そのため、ポリプロピレンフィルムのX1Tsが100℃以上であることにより、例えば後述のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(以下、D層)を蒸着によって積層する際に、蒸着時の熱によるポリプロピレンフィルムの収縮に起因してD層に発生するピンホールやクラック等の欠陥を抑制し、D層を積層した積層体の水蒸気バリア性や酸素バリア性を良好なものとすることができる。また、製袋加工後に行う加熱殺菌処理などの高温処理によるポリプロピレンフィルムの収縮も抑えられるため、このような処理に伴う水蒸気バリア性や酸素バリア性の低下も軽減できる。他方、ポリプロピレンフィルムのX1Tsが160℃を超えるようにするには、結晶性が高い原料を使用することや、製膜時に高面積倍率での二軸延伸を施すことが必要であり、製膜時に破膜するなど生産性が劣る観点から、X1Tsの上限は160℃とする」(【0016】)との記載、「ポリプロピレンフィルムのX1Tsを100℃以上160℃以下にする方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレンフィルムの製膜時に幅方向の予熱温度と延伸温度、熱処理工程での弛緩処理率を調整する方法が挙げられる」(【0018】)との記載、「本発明のポリプロピレンフィルムは、粒子を含むことが重要である。ここで粒子とは金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方である。粒子がポリプロピレンフィルム中に分散することにより、高いバリア性やフィルム表面の易滑性を実現できる」(【0020】)との記載、積層体に関する記載(【0040】ないし【0049】)、包装材、梱包体に関する記載(【0050】ないし【0051】)、製造方法に関する記載(【0052】ないし【0062】)がそれぞれあり、さらに、具体的な実施例等を通じてその効果が得られることを検証している。
これらの記載に接した当業者であれば、「粒子を含み」、「粒子が、金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方」であって、「熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下である」「ポリプロピレンフィルム」との特定事項を有することにより、発明の課題を解決できると認識する。
そして、本件特許発明1ないし14及び15ないし16はいずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項の全てを有し、さらに限定するものであるから、当然、発明の課題を解決できると認識できる。
よって、本件特許発明1ないし16に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。
エ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人Aは、熱機械分析の測定条件や断面の向きの点を挙げ、本件特許発明1ないし16は本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない旨主張する。
また、特許異議申立人Bは、本件特許の明細書の実施例で用いている粒子がアルミニウムの酸化物及び金属にすぎず、他の金属粒子や無機化合物粒子を用いたものまで拡張ないし一般化できないこと、ポリプロピレン以外の樹脂を含む態様まで拡張ないし一般化できないことなどを挙げ、本件特許発明1ないし16は本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない旨主張する。
しかしながら、サポート要件については上記アの判断基準に従って、上記ウのとおりに判断されるものであり、いずれの主張についても、具体的に発明の課題を解決できないとする証拠を提示するものでもない。
よって、特許異議申立人A及びBのいずれの主張についても、採用することができない。
オ 申立理由A3及び申立理由B4についてのまとめ
上記ウ及びエのとおりであるから、申立理由A3及び申立理由B4の理由では、本件特許発明1ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
(4) 申立理由A4(甲第A1号証を主たる証拠とする進歩性)について
ア 甲第A1号証の記載事項等
(ア) 甲第A1号証の記載事項
甲第A1号証には、「ポリプロピレンフィルム、および離型フィルム」に関し、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は表面柔軟性を改善し、かつ表面平滑性、透明性、離型性に優れた離型フィルムとして好適に用いることのできるポリプロピレンフィルムに関する。」
「【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンフィルムは、透明性、機械特性、電気特性等に優れるため、包装用途、離型用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気用途等の様々な用途に用いられている。特に、表面の離型性や機械特性に優れることから、プラスチック製品や建材や光学部材など、様々な部材の離型フィルムや工程フィルムとして好適に用いられる。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2に記載の方法は、表面柔軟性が乏しく改善余地があった。また特許文献3に記載の方法は、剛性が高くなるため表面の柔軟性が不十分であった。さらに特許文献4に記載の方法は、反対面が粗面化し透明性、表面柔軟性が不十分であった。さらに特許文献5および6に記載の方法は、最表層はポリプロピレン樹脂からなるフィルムのため、表面柔軟性が十分とは言えないものであった。
そこで本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、表面柔軟性を改善し、表面平滑性、透明性、離型性に優れたポリプロピレンフィルムを提供することにある。」
「【発明の効果】
【0008】
本発明のポリプロピレンフィルムは、表面柔軟性を改善し、かつ表面平滑性、透明性、離型性に優れることから、離型フィルムとして好適に使用することができる。」
「【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリプロピレンフィルムは、少なくとも一方の表面のナノインデンテーション法で測定した弾性率が2.5GPa以下であり、示差走査熱量計DSCで25℃から250℃まで20℃/minで昇温し、ついで250℃から25℃まで20℃/minで降温したときの、結晶化ピーク温度(Tc)が110℃以上のフィルムである。以下、この態様の本発明のポリプロピレンフィルムを、本発明1、又は、本発明1のポリプロピレンフィルム、という。
【0010】
また本発明の他の態様に係るポリプロピレンフィルムは、少なくとも3層以上の積層フィルムであって、内層(B層)は、分岐鎖状ポリプロピレン樹脂を含有し、表層(A層)は、融点が50℃以上135℃以下の低融点ポリプロピレン樹脂を含有するフィルムである。以下、この態様の本発明のポリプロピレンフィルムを、本発明2、又は、本発明2のポリプロピレンフィルム、という。
【0011】
さらに本発明の他の態様に係るポリプロピレンフィルムは、示差走査熱量計DSCで25℃から250℃まで20℃/minで昇温し、ついで250℃から25℃まで20℃/minで降温したときの、結晶化ピーク温度(Tc)が110℃以上であり、表面突起最大高さStが小さい表面Xの表面突起最大高さStxが150nm以下であり、表面突起最大高さStが大きい表面Yの表面突起最大高さStyが、表面Xの表面突起最大高さStxの1.3倍以上であり、少なくとも一方の表面の光沢度が144%以上である、ポリプロピレンフィルムである。以下、この態様の本発明のポリプロピレンフィルムを、本発明3、又は、本発明3のポリプロピレンフィルム、という。そして、単に本発明と記した場合、それは本発明1と本発明2と本発明3のいずれも含む意味で記す。」
「【0012】
本発明においてポリプロピレンフィルムとは、フィルムの全質量100質量%に対して、ポリプロピレン樹脂を80質量%以上100質量%以下含むフィルムを意味する。ポリプロピレンフィルム中のポリプロピレン樹脂は、90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましい。なお、本発明のポリプロピレンフィルムは、微多孔フィルムではなく、多数の空孔を有していないフィルムを意味し、具体的には空孔率が0%以上20%未満のポリプロピレンフィルムを意味する。ポリプロピレンフィルムの空孔率は、0%以上10%未満がより好ましく、0%以上5%未満であることがさらに好ましい。ポリプロピレンフィルムの空孔率は、フィルムの比重(ρ)とフィルムを280℃、5MPaで熱プレス後、25℃の水で急冷したシートの比重(d)より下記式より求めることができる。
空孔率(%)=〔(d-ρ)/d〕×100」
「【0027】
本発明1~3のポリプロピレンフィルムを積層フィルムとする方法としては、ラミネートによるフィルム同士を貼り合わせる方法、共押出によるフィードブロック方式やマルチマニホールド方式、コーティングによる方法などがあげられるが、生産効率およびコストの観点から溶融共押出による積層方法、コーティングによる積層方法が好ましい。また積層は、フィルム厚さ方向に3層以上積層されてなる構成が好ましく、具体的には両表層をA層とし、内層として少なくともB層を有する3層以上の構成であり、たとえばA層/B層/A層の3層構成およびA層/B層/C層/B層/A層など5層以上の構成である。ここで表層となるA層は、融点が50℃以上135℃以下の低融点ポリプロピレン樹脂を含有して構成される層と定義するものである。また内層となるB層は、分岐鎖状ポリプロピレンを含有して構成される層と定義するものである。なおC層はポリプロピレン樹脂であればよく、特に限定されない。
【0028】
本発明1~3のポリプロピレンフィルムは、フィルム全体の厚みに対する表層(A層)の厚み割合が1~20%であることが好ましい。より好ましくは1~18%、更に好ましくは1~15%である。表層(A層)の割合が20%を超えると、表面が平滑になりすぎ、離型性を損なう場合がある。1%未満では、内層(B層)が表面にまで影響し透明性が損なわれる場合ある。表層(A層)の厚みは他の物性を悪化させない範囲内で、押出機のスクリュウ回転数、未延伸シートの幅、製膜速度、延伸倍率などにより調整可能である。
ここで表層(A層)と内層(B層)は、例えば、フィルム断面を作成し走査型電子顕微鏡SEMなどを用いた断面観察を行うことで、低融点ポリプロピレン樹脂を含有するA層と分岐鎖状ポリプロピレン樹脂の含有するB層との樹脂界面を判定することも可能である。
【0029】
本発明1または2のポリプロピレンフィルムは、適度な表面平滑性、透明性、離型性を得る観点から、表面突起最大高さStが小さい表面Xの表面Xにおける表面突起最大高さStxが100nm以下であり、表面突起最大高さStが大きい表面Yの表面突起最大高さStyが、表面Xの表面突起最大高さStxの1.5倍以上であることが好ましい。表面Xにおける表面突起最大高さStxは95nm以下がより好ましく、85nm以下がさらに好ましい。他方、表面Xの反対面となる表面Yの表面突起最大高さStyが、表面Xの表面突起最大高さStxの1.6倍以上がより好ましく、1.7倍以上がさらに好ましい。表面Xはその反対面の表面Yよりも表面突起最大高さStxを小さくすることで、表面平滑性と透明性を発現でき、反対面の表面Yは表面突起最大高さStyを大きくすることで離型性を発現でき、すなわち表面Xの表面突起最大高さStxと表面Yとの表面突起最大高さStyに1.5倍以上の表裏格差を有することが効果的である。
【0030】
また本発明1または2のポリプロピレンフィルムは、表面Xの表面突起最大高さStxを100nm以下に制御することで、粘着性を有する樹脂層の表面保護用の離型フィルムとして用いる場合、保護面にカバーフィルムの表面凹凸の転写痕を生じにくくできるため好ましい。他方の表面Yの上限は特に限定されないが、透明性、平滑性を損なわない観点から、表面Xの表面突起最大高さStxの5倍を上限とするものである。本発明1および2のポリプロピレンフィルムの表面Xにおける表面突起最大高さStxを100nm以下として、他方の表面Yの表面突起最大高さStyを表面Xの表面突起最大高さStxの1.5倍以上とするには、後述するように3層以上の積層フィルム構成とし、各層の原料組成、キャスティングドラム温度、縦延伸と横延伸の各延伸温度の関係を縦延伸温度が高くなるよう調整することで達成可能である。特に表層(A層)に添加する低融点ポリプロピレン樹脂、内層(B層)に添加する分岐鎖状ポリプロピレン樹脂を好ましい範囲に調整することが効果的である。ここで一般的には表面Xはキャストドラム設置面とするものである。
【0031】
本発明1~3のポリプロピレンフィルムは、表面平滑性を得る観点から、少なくとも一方の表面の算術平均高さSaが20nm以下であることが好ましく、より好ましくは16nm以下、さらに好ましくは12nm以下、最も好ましくは10nm以下である。フィルムの両面の算術平均高さSaが20nmを超えると、表面凸形状の高さが全体的に高いフィルムとなるため、粘着性を有する樹脂層の表面保護用の離型フィルムとして用いる場合、保護面にカバーフィルムの表面凹凸の転写痕を生じる場合がある。表面の算術平均高さSaの下限は特に限定されず小さいほど好ましいが、現実的には1nm程度である。本発明のポリプロピレンフィルム1~3の少なくとも一方の表面における算術平均高さSaを20nm以下とするには、後述するように積層フィルムとし、特に表層(A層)には低融点ポリプロピレン樹脂を含有し、製膜時におけるキャスティングドラム温度、縦延伸と横延伸の各延伸温度の関係を縦延伸温度が高くなるよう調整することで達成できる。
【0032】
本発明1~3のポリプロピレンフィルムは、少なくとも一方の表面のヘイズが2%以下であることが好ましい。より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1%以下である。フィルムの両面のヘイズが2%を超えると、フィルムの透明性が低いため、感光性樹脂と貼り合わせた後、欠点観察などの工程検査を行う際に妨げとなる場合がある。ヘイズの下限は、特に限定されないが、実質的には0.1%程度が下限である。少なくとも一方の表面のヘイズを2%以下とするには、3層以上の積層フィルム構成とし、各層の原料組成、縦延伸と横延伸の各延伸温度の関係を縦延伸温度が高くなるよう調整することで達成可能である。特に表層(A層)に添加する低融点ポリプロピレン樹脂、内層(B層)に添加する分岐鎖状ポリプロピレン樹脂を好ましい範囲に調整することが効果的である。」
「【0037】
ここで本発明1~3のポリプロピレンフィルムにおいて、「長手方向」とは、フィルム製造工程における流れ方向に対応する方向(以降、「MD」という場合がある)であり、「幅方向」とは、前記のフィルム製造工程における流れ方向と直交する方向(以降、「TD」という場合がある)である。フィルムサンプルがリール、ロール等の形状の場合はフィルム巻き取り方向が長手方向といえる。一方、フィルムの外観からは何れの方向がフィルム製造工程における流れ方向に対応する方向であるかが不明なフィルムの場合は、例えば、フィルム平面上の任意の直線を基準に15°刻みで線を引き、その各線に平行にスリット状のフィルム片をサンプリングして引張試験器にて破断強度を求め、最大の破断強度を与える方向を、そのフィルム幅方向とみなし、そのフィルム幅方向に直交する方向を長手方向とみなす。詳細は後述するが、サンプルの幅が150mm未満で引張試験器では破断強度を求めることができない場合は、広角X線によるポリプロピレンフィルムのα晶(110)面の結晶配向を次のように測定し、下記の判断基準に基づいてフィルム長手および幅方向とする。すなわち、フィルム表面に対して垂直方向にX線を入射し、2θ=約14°(α晶(110)面)における結晶ピークを円周方向にスキャンし、得られた回折強度分布の回折強度が高い方向をフィルム幅方向とし、それと直交する方向を長手方向とする。
【0038】
本発明1~3のポリプロピレンフィルムは、フィルム長手方向の熱収縮力が20mN以上となる温度は116℃以上が好ましく、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは124℃以上、最も好ましくは128℃以上である。フィルム長手方向において、熱収縮力が20mN以上となる際の温度が116℃未満である場合、離型フィルムとして、被着体に貼り合わせた後で、加熱ロールやオーブンなどの高温工程を通過する場合において、収縮により被着体から剥がれたり、カールが生じたりする場合がある。熱収縮力が20mN以上となる温度の上限は、特に限定されないが、実質的には160℃程度が上限である。熱収縮力が20mN以上となる際の温度の値を上記範囲とするには、3層以上の積層フィルム構成とし、各層の原料組成、キャスティングドラム温度、縦延伸と横延伸の各延伸温度の関係を縦延伸温度が高くなるよう調整することで達成可能である。」
「【0042】
次に本発明のポリプロピレンフィルムの製造方法について説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
まず、表層(A)、及び内層(B層)の各原料を各単軸押出機に供給し、200~260℃にて溶融押出を行う。そして、ポリマー管の途中に設置したフィルターにて異物や変性ポリマーなどを除去した後、マルチマニホールド型のA層/B層/A層の複合Tダイにて例えば1/15/1の積層厚み比になるように積層し、キャストドラム上に吐出し、A層/B層/A層の層構成を有する積層未延伸シートを得る。この際、キャストドラムは表面温度が15~50℃であることがフィルム表面の平滑性、透明性を得る観点から好ましい。キャスティングドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、平面性の観点からエアナイフ法が好ましい。エアナイフのエアー温度は、20~50℃で、吹き出しエアー速度は130~150m/sが好ましく、幅方向均一性を向上させるために2重管構造となっていることが好ましい。また、フィルムの振動を生じさせないために製膜下流側にエアーが流れるようにエアナイフの位置を適宜調整することが好ましい。ここで溶融積層ポリマーはキャスティングドラム面に接触している側の表面が平滑表面になるため表面X、その反対面を表面Yとする。
【0043】
得られた未延伸シートは、空気中で放冷された後、縦延伸工程に導入される。縦延伸工程ではまず複数の110℃以上160℃以下に保たれた金属ロールに未延伸シートを接触させて延伸温度まで予熱され、長手方向に3~8倍に延伸した後、室温まで冷却する。延伸温度が160℃以上の場合、延伸ムラが生じたり、フィルムが破断したりする場合がある。また延伸倍率が3倍未満であると、延伸ムラが生じたり、フィルムの配向が弱くなり、機械特性が低下する場合がある。
次いで縦一軸延伸フィルムをテンターに導いてフィルムの端部をクリップで把持し、横延伸を100~160℃未満で幅方向に7~13倍に延伸する。延伸温度が縦延伸温度より高いと、表層(A層)に含有する低融点ポリプロピレン樹脂が一部溶融しフィルムが破膜したり、破膜しなくても二軸延伸後のフィルム表面が大きく粗面化する場合がある。ただし、延伸温度が高すぎると、フィルムの剛性が低下する場合がある。
【0044】
本発明のポリプロピレンフィルムは、表層(A層)に低融点ポリプロピレン樹脂を含有している場合には、横延伸温度は縦延伸温度より低い温度で延伸することが適度な表面平滑性、透明性、離型性を得る効果を得られやすい。横延伸温度は、100℃以上縦延伸温度未満とすることが好ましい。
続く熱処理および弛緩処理工程ではクリップで幅方向を緊張把持したまま幅方向に2~20%の弛緩率で弛緩を与えつつ、100℃以上160℃度未満の温度で熱固定し、続いて80~100℃での冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、ワインダ工程にてフィルムエッジ部をスリットし、フィルム製品ロールを巻き取る。熱処理および弛緩工程の条件制御は、熱収縮率を調整する上で非常に重要である。弛緩率は、より好ましくは5~18%、さらに好ましくは8~15%である。また、熱固定温度は、表層(A層)に低融点ポリプロピレン樹脂を含有している場合は、100℃以上横延伸温度以下がより好ましく、120℃以上横延伸温度以下がさらに好ましい。」
「【0045】
以上のようにして得られた本発明の積層ポリプロピレンフィルムは、包装用フィルム、離型フィルム、工程フィルム、衛生用品、農業用品、建築用品、医療用品など様々な用途で用いることができるが、特に離型性に優れることから、離型フィルム、工程フィルムとして好ましく用いることができる。特に、透明平滑性に優れることから、粘着性樹脂層のカバーフィルムなどの離型フィルムとして好ましく用いられる。」
「【実施例】
【0046】
本発明における特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次のとおりである。
(1)フィルム厚み
ポリプロピレンフィルムの任意の10箇所の厚みを、23℃65%RHの雰囲気下で接触式のアンリツ(株)製電子マイクロメータ(K-312A型)を用いて測定した。その10箇所の厚みの平均値をポリプロピレンフィルムのフィルム厚みとした。
【0047】
(2)フィルム表面をナノインデンテーション法で測定した弾性率(表面弾性率)
測定には(株)エリオニクス製のナノインデンター「ENT-2100」を用いた。ポリプロピレンフィルムに、東亞合成(株)製「“アロンアルファ”(登録商標)プロ用耐衝撃」を1滴塗布し、瞬間接着剤を介してポリプロピレンフィルムを専用のサンプル固定台に固定して、表面層側を測定面として測定を行った。測定には稜間角115°の三角錐ダイヤモンド圧子(Berkovich圧子)を用いた。測定データは「ENT-2100」の専用解析ソフト(version 6.18)により処理され、押込み弾性率EIT(GPa)を測定した。測定は、フィルムの両面について、それぞれn=10で行い、その平均値を求め、表には両面の測定値の平均値の内、小さい方の値を記載した。
測定モード:負荷-除荷試験
最大荷重:0.5mN
最大荷重に達した時の保持時間:1秒
荷重速度、除荷速度:0.05mN/sec
【0048】
(3)結晶化ピーク温度(Tc)
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気中で3mgのポリプロピレンフィルムを25℃から250℃まで20℃/minで昇温し、5分間保持した。ついで250℃から25℃まで20℃/minで降温する。この降温時に得られる発熱カーブのピーク温度を、ポリプロピレンフィルムの結晶化温度(Tc)とした。なお複数のピーク温度が観測できる場合には80℃から130℃の領域で最も高温の温度をポリプロピレンフィルムの結晶化温度(Tc)とした。
【0049】
(4)表面突起最大高さ(St)、算術平均高さ(Sa)
測定は(株)菱化システムのVertScan2.0 R5300GL-Lite-ACを使用して行い、付属の解析ソフトにより撮影画面を多項式4次近似面補正にてうねり成分を除去し、次いで補間処理(高さデータの取得ができなかった画素に対し周囲の画素より算出した高さデータで補う処理)を行った。
Stは両面で測定を行い、小さい値の表面を表面Xとして求めた。またSaは両面で測定を行い、小さな値が得られた表面の値を表に記した。
測定条件は下記のとおり。
製造元:(株)菱化システム
装置名:VertScan2.0 R5300GL-Lite-AC
測定条件:CCDカメラ SONY HR-57 1/2インチ(1.27センチ)
対物レンズ 10x
中間レンズ 0.5x
波長フィルタ 520nm white
測定モード:Phase
測定ソフトウェア:VS-Measure Version5.5.1
解析ソフトフェア:VS-Viewer Version5.5.1
測定面積:1.252×0.939mm2
【0050】
(5)ヘイズ
一辺が5cmの正方形状のフィルムサンプルを3点(3個)準備する。次にサンプルを常態(23℃、相対湿度50%)において、40時間放置する。それぞれのサンプルを日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて、JIS「透明材料のヘイズの求め方」(K7136 2000年版)に準ずる方式で実施する。フィルムサンプル3点(3個)それぞれのヘイズを平均して、フィルムのヘイズとした。なお測定はフィルムの両面について行い、小さな値が得られた表面の値を表に記した。
【0051】
(6)静摩擦係数μs
東洋テスター工業製摩擦測定器を用い、ASTM D1894-95(JIS K 7312-1996)に準じて、フィルム平面上の任意の直線を基準に45°刻みでスリット状のフィルム片をサンプリング(幅80mm、長さ200mmの長方形)し、その同一角度のフィルムの一方の面と他方の面とが接触するように重ねて摩擦させた時の初期の立ち上がり抵抗最大値を静摩擦係数μsとした。測定は5回行い、その平均値を求めた。ポリプロピレンフィルムの静摩擦係数μsは45°刻みで測定した中で最も小さい静摩擦係数μsを用いた。
【0052】
(7)光沢度
JIS K-7105(1981)に準じ、スガ試験機(株)製 デジタル変角光沢計UGV-5Dを用いて入射角60°受光角60°の条件でフィルム表面について測定した5点のデータの平均値を光沢度(%)とした。測定は、フィルムの両面について行い、高い光沢度が得られた表面の値を表に記した。
【0053】
(8)フィルム長手方向および幅方向の破断伸度の和、ヤング率の和
フィルムを試験方向長さ150mm×幅方向長さ10mmの矩形に切り出しサンプルとした。引張試験機((株)オリエンテック製テンシロンAMF/RTA-100)を用いて、JIS K7161(1994)に規定された方法に準じて、25℃、65%RH雰囲気で5回測定を行い、平均値を求めた。ただし、初期チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分として、試験を開始してから荷重が1Nを通過した点を伸びの原点とした。また破断伸度はフィルムが破断した時点の伸長(%)の5回測定時の平均値を求めた。
なお、ヤング率の算出のために用いるフィルム厚みは上記(1)で測定した値を用いた。
【0054】
(9)離型性
ポリプロピレンフィルムの、「(7)光沢度」の項で得られた高い光沢度を有する側の表面に、日東電工(株)製ポリエステル粘着テープNO.31Bをローラーで貼付し、それを19mm幅にカットしてサンプルを作製した。そのサンプルを、引張試験機を用いて500mm/minの速度で剥離し、以下の基準で評価した。AとBが合格、Cが不合格とした。
A:フィルム表面と粘着テープとが一定速度で剥離が可能
B:フィルム表面と粘着テープとの剥離時に速度が上下する
C:フィルム表面と粘着テープとの剥離時に速度が上下し、表面Xに剥離痕が残る
【0055】
(10)凹凸転写抑止性
ポリプロピレンフィルムおよび厚み40μmの日本ゼオン(株)製“ゼオノアフィルム”(登録商標)を、幅100mm、長さ100mmの正方形にサンプリングし、ポリプロピレンフィルムの、「(7)光沢度」の項で得られた表面の光沢度が低い側の面に“ゼオノアフィルム”が接触するように重ねて、それを2枚のアクリル板(幅100mm、長さ100mm)に挟んで、2.5kgの荷重をかけ、23℃の雰囲気下で36時間静置した。36時間後に、“ゼオノアフィルム”の表面(ポリプロピレンフィルムが接していた面)を目視で観察し、以下の基準で評価した。AとBが合格、Cが不合格とした。
A:きれいであり、荷重をかける前と同等
B:弱い凹凸が確認される
C:強い凹凸が確認される
【0056】
(11)ポリプロピレン樹脂の融点(Tm)
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気中で3mgのポリプロピレン樹脂チップを25℃から250℃まで20℃/minで昇温し、5分間保持した。ついで250℃から25℃まで20℃/minで25℃まで降温、再度、25℃から250℃まで20℃/minで昇温し、5分間保持した。この再昇温時に得られる吸熱カーブのピーク温度をポリプロピレン樹脂の融点(Tm)とした。
【0057】
(12)熱収縮力が20mN以上となる温度
TMA(SII・ナノテクノロジー(株)社製/型式TMA/SS6100)を用いて、以下の条件でフィルム長手方向の熱収縮力曲線を測定した。
(a)サンプル:幅4mm×長さ20mm
(b)温度プログラム:30℃から加熱レート10℃/minにて昇温
<熱収縮開始温度>
上記熱収縮力曲線において、昇温過程で熱収縮力が20mNとなる温度を読み取った。測定は3回行い、平均を求めた。
【0058】
(実施例1)
表層(A層)用のポリプロピレン樹脂全体を100質量%として(株)プライムポリマー製のポリプロピレン樹脂(MFR3g/10分、融点164℃)を70質量%と、低融点ポリプロピレン樹脂として出光興産(株)製、“エルモーデュ”(登録商標)S901、(融点80℃)30質量%とをブレンドしたものをA層用の単軸の溶融押出機に供給し、内層(B層)用のポリプロピレン樹脂全体を100質量%として、(株)プライムポリマー製のポリプロピレン樹脂(MFR3g/10分、融点164℃)を98質量%と、Basell社製分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(Profax PF-814)を2質量%とをブレンドしたものをB層用の単軸の溶融押出機に供給し、260℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロック型のA層/B層/A層から成る3層構成の複合Tダイにて、1/13/1の厚み比(全体厚みに対して両面A層の比率=13%)で積層し、22℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出しエアナイフによりキャスティングドラムに密着させた。その後、キャスティングドラム上のシートの非冷却ドラム面に、温度25℃、圧力0.3MPaの圧空エアーを噴射させて冷却し、未延伸シートを得た。続いて、該シートをセラミックロールを用いて148℃に予熱し、周速差を設けた148℃のロール間でフィルムの長手方向に4.5倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、168℃で3秒間予熱後、140℃で幅方向に8.0倍に延伸し、幅方向に12%の弛緩を与えながら120℃で熱処理をおこない、その後100℃の冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、厚み12μmのポリプロピレンフィルムを得た。得られたポリプロピレンフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0059】
(実施例2)
内層(B層)に含まれる分岐鎖状ポリプロピレン樹脂を表1に示した含有量に変更した以外は実施例1と同様にして、厚み11μmのポリプロピレンフィルムを得た。得られたポリプロピレンフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0060】
(実施例3および4)
表層(A層)に含まれる低融点ポリプロピレン樹脂を表1に示した含有量に変更した以外は実施例1と同様にして、厚み12μmのポリプロピレンフィルムを得た。得られたポリプロピレンフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0061】
(実施例5)
表層(A層)に含まれる低融点ポリプロピレン樹脂および内層(B層)に含まれる分岐鎖状ポリプロピレン樹脂をそれぞれ表1に示した含有量に変更した以外は実施例1と同様にして、厚み15μmのポリプロピレンフィルムを得た。得られたポリプロピレンフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0062】
(実施例6)
実施例1と同様にして、A層/B層/A層を1/10/1の厚み比(全体厚みに対して両面A層の比率=17%)で積層した未延伸シートを得た後、該シートをセラミックロールを用いて148℃に予熱し、周速差を設けた148℃のロール間でフィルムの長手方向に4.5倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、168℃で3秒間予熱後、縦延伸と同じ温度である148℃で幅方向に8.0倍に延伸し、幅方向に12%の弛緩を与えながら140℃で熱処理をおこない、その後100℃の冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、厚み12μmのポリプロピレンフィルムを得た。得られたポリプロピレンフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0063】
(実施例7)
表層(A層)に含まれる低融点ポリプロピレン樹脂として日本ポリプロ(株)製“WINTEC”(登録商標)WFX4M(融点125℃)を30質量%用いる変更をした以外は実施例1と同様にして、厚み12μmのポリプロピレンフィルムを得た。得られたポリプロピレンフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0064】
(実施例8)
内層(B層)に含まれる分岐鎖状ポリプロピレン樹脂として日本ポリプロ(株)製“WAYMAX”(登録商標)MFX6を2質量%用いる変更をした以外は実施例1と同様にして、厚み12μmのポリプロピレンフィルムを得た。得られたポリプロピレンフィルムの物性および評価結果を表1に示す。」
「【0069】
・・・(略)・・・
[図:0001420320000001.jpg]
」
(イ) 甲第A1号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に実施例1の記載に着目し整理すると、甲第A1号証には次の発明が記載されていると認める。
「表層(A層)用のポリプロピレン樹脂全体を100質量%として(株)プライムポリマー製のポリプロピレン樹脂(MFR3g/10分、融点164℃)を70質量%と、低融点ポリプロピレン樹脂として出光興産(株)製、“エルモーデュ”(登録商標)S901、(融点80℃)30質量%とをブレンドしたものをA層用の単軸の溶融押出機に供給し、内層(B層)用のポリプロピレン樹脂全体を100質量%として、(株)プライムポリマー製のポリプロピレン樹脂(MFR3g/10分、融点164℃)を98質量%と、Basell社製分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(Profax PF-814)を2質量%とをブレンドしたものをB層用の単軸の溶融押出機に供給し、260℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロック型のA層/B層/A層から成る3層構成の複合Tダイにて、1/13/1の厚み比(全体厚みに対して両面A層の比率=13%)で積層し、22℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出しエアナイフによりキャスティングドラムに密着させ、その後、キャスティングドラム上のシートの非冷却ドラム面に、温度25℃、圧力0.3MPaの圧空エアーを噴射させて冷却し、未延伸シートを得、続いて、該シートをセラミックロールを用いて148℃に予熱し、周速差を設けた148℃のロール間でフィルムの長手方向に4.5倍延伸を行い、次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、168℃で3秒間予熱後、140℃で幅方向に8.0倍に延伸し、幅方向に12%の弛緩を与えながら120℃で熱処理をおこない、その後100℃の冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、得られた、結晶化ピーク温度(Tc)が116℃、フィルム表面の算術平均高さSaが9nm、表面Xの表面突起最大高さStが84nm、ヘイズが0.6%、光沢度が149%、熱収縮率が20mN以上となる際の温度が129℃、凹凸転写抑止性がA評価である、厚み12μmのポリプロピレンフィルム。」(以下、「甲A1フィルム発明」という。)
「表層(A層)用のポリプロピレン樹脂全体を100質量%として(株)プライムポリマー製のポリプロピレン樹脂(MFR3g/10分、融点164℃)を70質量%と、低融点ポリプロピレン樹脂として出光興産(株)製、“エルモーデュ”(登録商標)S901、(融点80℃)30質量%とをブレンドしたものをA層用の単軸の溶融押出機に供給し、内層(B層)用のポリプロピレン樹脂全体を100質量%として、(株)プライムポリマー製のポリプロピレン樹脂(MFR3g/10分、融点164℃)を98質量%と、Basell社製分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(Profax PF-814)を2質量%とをブレンドしたものをB層用の単軸の溶融押出機に供給し、260℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロック型のA層/B層/A層から成る3層構成の複合Tダイにて、1/13/1の厚み比(全体厚みに対して両面A層の比率=13%)で積層し、22℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出しエアナイフによりキャスティングドラムに密着させ、その後、キャスティングドラム上のシートの非冷却ドラム面に、温度25℃、圧力0.3MPaの圧空エアーを噴射させて冷却し、未延伸シートを得、続いて、該シートをセラミックロールを用いて148℃に予熱し、周速差を設けた148℃のロール間でフィルムの長手方向に4.5倍延伸を行い、次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、168℃で3秒間予熱後、140℃で幅方向に8.0倍に延伸し、幅方向に12%の弛緩を与えながら120℃で熱処理をおこない、その後100℃の冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、フィルムを得るものである、結晶化ピーク温度(Tc)が116℃、フィルム表面の算術平均高さSaが9nm、表面Xの表面突起最大高さStが84nm、ヘイズが0.6%、光沢度が149%、熱収縮率が20mN以上となる際の温度が129℃、凹凸転写抑止性がA評価である、厚み12μmのポリプロピレンフィルムの製造方法。」(以下、「甲A1製法発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲A1フィルム発明とを対比すると、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「ポリプロピレンフィルム。」
(相違点)
・相違点A1-1
ポリプロピレンフィルムに関し、本件特許発明1は「粒子を含む」ものであって、「前記粒子が、金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方であること」を特定するのに対し、甲A1フィルム発明にはそのような特定がない点。
・相違点A1-2
ポリプロピレンフィルムに関し、本件特許発明1は「熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であり」と特定するのに対し、甲A1フィルム発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、上記相違点A1-2について検討する。
甲A1フィルム発明のポリプロピレンフィルムは、シートをセラミックロールを用いて148℃に予熱し、周速差を設けた148℃のロール間でフィルムの長手方向に4.5倍延伸を行い、次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、168℃で3秒間予熱後、140℃で幅方向に8.0倍に延伸し、幅方向に12%の弛緩を与えながら120℃で熱処理をおこない、その後100℃の冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、フィルムを得たものであって、熱収縮率が20mN以上となる際の温度が129℃であるものの、甲A1フィルム発明の当該特定事項、甲第A1号証の全ての記載及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲A1フィルム発明のポリプロピレンフィルムにおける「熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向」がどの方向であるか不明であり、ましてや、「前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下」であるかも不明である。
また、全ての証拠の記載を見ても、甲A1フィルム発明において、「熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向」に着目し、その熱収縮率を調整する動機付けもない。
すると、甲A1フィルム発明において、相違点A1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A1フィルム発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
なお、この点について特許異議申立人Aは、甲A1フィルム発明のポリプロピレンフィルムは、「幅方向に12%の弛緩を与えながら120℃で熱処理をおこない」、「熱収縮率が20mN以上となる際の温度が129℃」であることから見て、相違点A1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものである旨主張する(特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書第36頁ないし第37頁)。
しかしながら、上記検討のとおり、甲A1フィルム発明のポリプロピレンフィルムにおいて、そもそも、「熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向」がどの方向であるか不明であるため、熱収縮率について対比することはできないといわざるを得ず、故に、特許異議申立人Aの上記主張は採用することができない。
(イ) 本件特許発明2ないし14について
本件特許発明2ないし14は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに限定するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1は、甲A1フィルム発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2ないし14もまた、甲A1フィルム発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件特許発明15及び16について
本件特許発明15と甲A1製法発明とを対比すると、本件特許発明15は本件特許発明1又は2のポリプロピレンフィルムの製造方法に関するものであるから、両者は少なくとも相違点A1-1及び相違点A1-2の点で相違するものである。
そして、相違点A1-2については、上記(ア)のとおり判断されるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明15は、甲A1製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件特許発明15の発明特定事項の全てを有しさらに限定するものである本件特許発明16についても、同様に判断されるから、本件特許発明16は、甲A1製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立理由A4についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由A4の理由では、本件特許発明1ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
(5) 申立理由B2(甲第B2号証を主たる証拠とする進歩性)について
ア 甲第B2号証の記載事項等
(ア) 甲第B2号証の記載事項
甲第B2号証には、「ポリプロピレンフィルム、それを用いた金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサ」に関し、次の記載がある。
「【請求項1】
熱機械分析(TMA)の昇温過程において、長手方向に0.1%収縮する際の温度(Ts)(℃)と、長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる温度(Tf)(℃)が以下の関係を満たし、かつフィルムの少なくとも一方の表面における突起形状の偏り度を意味するスキューネス(Ssk)が-30を超えて5未満であるポリプロピレンフィルム。
(Ts-Tf)≦40℃
【請求項2】
熱機械分析(TMA)の昇温過程において、長手方向の応力が0.01MPaとなる際の温度(Tf)(℃)が100℃以上である、請求項1に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
125℃で15分間熱処理後の、幅方向の熱収縮率が1.0%以下である、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
フィルムを示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで20℃/minで昇温して得られるフィルムの融解ピーク温度(Tm)(℃)と、昇温後260℃から30℃まで20℃/minで降温した際に得られる結晶化ピーク温度(Tc)(℃)が以下の関係を満たす、請求項1~3のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
(Tm-Tc)≦65℃
【請求項5】
フィルムを示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで20℃/minで昇温した際に得られる融解ピーク温度(Tm)(℃)が170℃以上である請求項1~4のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
一方の表面を表面A、もう一方の表面を表面Bとした際に、表面Aの突出山部高さ(SpkA)(nm)と表面Bの突出山部高さ(SpkB)(nm)が以下の関係を満たす、請求項1~5のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
SpkA<SpkB
20nm≦SpkA≦100nm
80nm≦SpkB≦150nm
【請求項7】
少なくとも一方の表面において、0.561×0.561mm2の領域における深さ20nm以上の谷の体積を合計した総谷側体積が50~5,000μm3である、請求項1~6のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に、金属膜を有する金属膜積層フィルム。
【請求項9】
請求項8に記載の金属膜積層フィルムを用いてなるフィルムコンデンサ。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、特にコンデンサ用途に適して用いられるポリプロピレンフィルムに関する。」
「【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンフィルムは、透明性、機械特性、電気特性等に優れるため、包装用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気用途等の様々な用途に用いられている。」
「【0011】
そこで、本発明は、高温環境での耐電圧特性・信頼性に優れ、高温度・高電圧下で用いられるコンデンサ用途等に好適な、熱に対する安定性に優れた構造を有し、さらに蒸着工程を含む搬送工程においてシワの発生が少ない、加工性に優れたポリプロピレンフィルムを提供することを目的とし、また、それを用いた金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサを提供することを目的とする。」
「【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ね、以下の本発明に至った。本発明は、熱機械分析(TMA)の昇温過程において、長手方向に0.1%収縮する際の温度(Ts)(℃)と、長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる温度(Tf)(℃)が以下の関係を満たし、かつフィルムの少なくとも一方の表面における突起形状の偏り度を意味するスキューネス(Ssk)が-30を超えて5未満であるポリプロピレンフィルムである。
(Ts-Tf)≦40℃。」
「【発明の効果】
【0013】
本発明により、高温環境での耐電圧特性・信頼性に優れ、高温度・高電圧下で用いられるコンデンサ用途等に好適な、熱に対して構造安定性に優れ、蒸着工程を含む搬送工程においてシワの発生が少ないポリプロピレンフィルムが提供される。また、それを用いた金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサが提供される。」
「【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、前述の課題を解決するため鋭意検討を重ね、上記特許文献1~5に記載のポリプロピレンフィルムが高温環境下において絶縁破壊電圧、並びにコンデンサとしたときの高温環境での耐電圧特性・信頼性・加工性が十分でない理由について、以下のように考えた。
【0015】
すなわち、特許文献1および特許文献2記載のポリプロピレンフィルムは、コンデンサとして105℃環境での耐電圧性および信頼性については十分ともいえるが、更に高温環境での耐電圧性を想定してみると、フィルム製膜における延伸倍率と熱処理、分子鎖の配向と構造の固定が必ずしも十分ではなく、より高い温度でフィルムの非晶鎖が配向緩和し耐電圧が低下することに問題があると考えた。特許文献3についても高温環境での耐電圧性を想定してみると、フィルム製膜における横延伸時の予熱と熱処理が必ずしも十分ではなく、横延伸後の熱処理温度で徐冷処理が施されていないことからフィルムに可動非晶成分が多く存在するため高温での絶縁破壊電圧が低くなることがあると考え、特許文献4に記載のポリプロピレンフィルム表面が平滑であるため十分な易滑性が得られない場合があり、低MFRのポリプロピレン原料をブレンドする事によりゲルが発生して耐電圧の低下を招く場合や、ゲルが起点となって製膜中にフィルムが破れる場合があることが問題であると考えた。特許文献5のポリプロピレンフィルムは、一定の範囲内の歪み硬化性をもつポリプロピレン原料を含有したものであるが、製膜時の延伸条件を適正化することでフィルムの構造を制御する思想がないため分子鎖の配向と構造の固定が必ずしも十分でなく、高温環境下で非晶鎖が配向緩和し耐電圧が低下する場合があることが問題であると考えた。
【0016】
以上の考察を踏まえて、本発明者らはさらに検討を重ね、熱機械分析(TMA)において長手方向に0.1%収縮する際の温度(Ts)(℃)と、長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる温度(Tf)(℃)の差が一定の値以下であり、かつフィルムの少なくとも一方の表面における突起形状の偏り度が一定の範囲内であるフィルムとすることにより上記課題を解決できることを見出した。
【0017】
つまり本発明は、熱機械分析(TMA)の昇温過程において、長手方向に0.1%収縮する際の温度(Ts)(℃)と、長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる温度(Tf)(℃)が、(Ts-Tf)≦40℃を満たし、かつフィルムの少なくとも一方の表面における突起形状の偏り度を意味するスキューネス(Ssk)が-30を超えて5未満であるポリプロピレンフィルム、である。」
「【0080】
本発明のポリプロピレンフィルムに用いられるポリプロピレン樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば有機粒子、無機粒子、結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、塩素捕捉剤、すべり剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤を含有してもよい。」
「【0086】
ポリプロピレンフィルムは通常、表面エネルギーが低く、金属蒸着を安定的に施すことが困難であるために、金属膜との接着性を改善する目的で、蒸着前に表面処理を行うことが好ましい。表面処理とは具体的にコロナ放電処理、プラズマ処理、グロー処理、火炎処理等が例示される。通常ポリプロピレンフィルムの表面濡れ張力は30mN/m程度であるが、これらの表面処理によって、濡れ張力を好ましくは37~75mN/m、より好ましくは39~65mN/m、最も好ましくは41~55mN/m程度とすることが、金属膜との接着性に優れ、保安性も良好となるので好ましい。」
「【0088】
次に本発明のポリプロピレンフィルムの製造方法を例に挙げて説明する。まず、ポリプロピレン樹脂を支持体上に溶融押出して未延伸ポリプロピレンフィルムとする。この未延伸ポリプロピレンフィルムを長手方向に延伸し、次いで幅方向に延伸して、逐次二軸延伸せしめる。その後、熱処理および弛緩処理を施して二軸配向ポリプロピレンフィルムを製造する。以下、より具体的に説明するが、本発明は必ずしもこれに限定して解釈されるものではない。
【0089】
まず、ポリプロピレン原料(A)を好ましくは押出温度220~280℃、より好ましくは230~270℃に設定した単軸押出機から溶融押出し濾過フィルタを通した後、好ましくは200~260℃、より好ましくは210~240℃の温度でスリット状口金から押し出す。スリット状口金から押し出された溶融シートは、10~110℃の温度に制御されたキャスティングドラム(冷却ドラム)上で固化させ、未延伸ポリプロピレンフィルムを得る。溶融シートのキャスティングドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法、エアーチャンバー法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、平面性が良好でかつ表面粗さの制御が可能なエアーナイフ法が好ましい。また、フィルムの振動を生じさせないために製膜下流側にエアーが流れるようにエアーナイフの位置を適宜調整することが好ましい。キャスティングドラムの温度は、表面の凹みが少なく、適度な易滑性を持つことで素子加工性の向上と耐電圧性の向上をはかる観点から、好ましくは60~110℃、より好ましくは80~110℃である。
【0090】
次に、未延伸ポリプロピレンフィルムを二軸延伸し、二軸配向せしめる。特に本発明においては縦延伸工程において予備延伸と本延伸の多段延伸を施すことが好ましい。未延伸ポリプロピレンフィルムを好ましくは70~150℃、より好ましくは80~145℃に保たれたロール間に通して予熱し、長手方向に1.01~1.10倍の予備延伸を行う。これにより未延伸シートの球晶破壊が適度に進み分子鎖が予備配向することで、続く本延伸後に得られる延伸フィルムの結晶配向および非晶鎖の拘束をより高め、フィルムの耐電圧を向上し、フィルムの(Tf)(℃)および(Ts)(℃)を高めることができる。
【0091】
引き続き長手方向に予備延伸されたポリプロピレンフィルムを好ましくは70℃~150℃、より好ましくは80~145℃の温度に保ち、長手方向に好ましくは2.0~15倍、より好ましくは4.5~12倍、さらに好ましくは5.5~10倍に本延伸した後、室温まで冷却する。
【0092】
次いで長手方向に一軸延伸せしめたフィルムの端部をクリップで把持したまま、テンターに導く。ここで本発明においては幅方向へ延伸する直前の予熱工程の温度を好ましくは幅方向の延伸温度+5~+15℃、より好ましくは+5~+12℃、さらに好ましくは+5~+10℃とすることが一軸延伸で長手方向に高配向したフィブリル構造をさらに強化でき、フィルム加熱前後での絶縁破壊電圧の変化を抑制できる。また一軸延伸後、配向が不十分な分子鎖を高温予熱で安定化させることで熱寸法安定性が向上できる観点で好ましい。予熱温度が延伸温度+5℃未満の場合はフィルム加熱前後での絶縁破壊電圧の変化を抑制できず、熱寸法安定性の向上が得られなかったりする場合があり、一方で予熱温度が延伸温度+15℃より高い場合には延伸工程でフィルムが破れたりする場合がある。
【0093】
次いでフィルムの端部をクリップで把持したまま幅方向へ延伸する温度(幅方向の延伸温度)は好ましくは150~170℃、より好ましくは155~165℃である。
【0094】
フィルム加熱前後での絶縁破壊電圧の変化を抑制する観点から、幅方向の延伸倍率は好ましくは11.0~20.0倍、より好ましくは11.5~19.0倍、最も好ましくは12.0~18.0倍である。幅方向の延伸倍率が11.0倍未満では、一軸延伸で長手方向に高配向したフィブリル構造の配向寄与が大きく残存するため、フィルム加熱前後での絶縁破壊電圧の変化を抑制できないフィルムとなる場合がある。幅方向の延伸倍率を高めることは長手方向の高い配向状態を保ったまま幅方向の配向が付与されるため、面内の分子鎖緊張が高まり、さらに熱に対する構造安定性を向上できるためトレードオフとなる熱収縮特性を改善できる効果を得られると考察でき好ましい。他方、幅方向の延伸倍率が20.0倍を超えると、製膜時フィルム破れが生じ易く生産性が劣ったものとなる場合がある。
【0095】
ここで、面積延伸倍率は65倍以上であることがフィルム加熱前後での絶縁破壊電圧の変化を抑制し、コンデンサとしたとき高温環境で長時間の使用信頼性に優れたものとなる観点で好ましい。本発明において、面積延伸倍率とは、長手方向の延伸倍率に幅方向の延伸倍率を乗じたものである。面積延伸倍率は、より好ましくは66倍以上、さらに好ましくは68倍以上、最も好ましくは72倍以上である。面積延伸倍率の上限は特に限定されないが、実現可能性の観点から90倍である。
【0096】
本発明のポリプロピレンフィルムの製造においては、続く熱処理および弛緩処理工程ではクリップで幅方向を緊張把持したまま幅方向に2~20%の弛緩を与えつつ、145℃以上165℃以下、かつ幅方向の延伸温度未満の温度(1段目熱処理温度)で熱固定(1段目熱処理)した後に、再度クリップで幅方向を緊張把持したまま135℃以上、前記の熱固定温度(1段目熱処理温度)未満の条件で熱処理を施し(2段目熱処理)、さらに緊張把持したまま80℃以上、前記の熱固定温度(2段目熱処理温度)未満の条件で熱固定(3段目熱処理)を施す多段方式の熱処理を行うことが、フィルム加熱前後での絶縁破壊電圧の変化を抑えられ、熱に対する構造安定性を向上させ、コンデンサとしたときの耐電圧性、信頼性を得る観点から好ましい。
【0097】
弛緩処理においては、熱に対する構造安定性を高める観点から、弛緩率は2~20%が好ましく、5~18%がより好ましく、8~15%がさらに好ましい。20%を超える場合はテンター内部でフィルムが弛みすぎ製品にシワが入り蒸着時にムラを発生させる場合があったり、機械特性の低下が生じたり、他方、弛緩率が2%より小さい場合は十分な熱に対する構造安定性が得られず、コンデンサとしたときの高温環境下で容量低下やショート破壊を引き起こす場合がある。
【0098】
多段式に低温化する熱処理を経た後はテンターの外側へ導き、室温雰囲気にてフィルム端部のクリップを解放し、ワインダ工程にてフィルムエッジ部をスリットし、フィルム厚み0.5μm以上10μm未満のフィルム製品ロールを巻き取る。ここでフィルムを巻取る前に蒸着を施す面に蒸着金属の接着性を良くするために、空気中、窒素中、炭酸ガス中あるいはこれらの混合気体中でコロナ放電処理を行うことが好ましい。」
「【0105】
例えば、上記した本発明の金属膜積層フィルムを、種々の方法で積層もしくは捲回すことにより本発明のフィルムコンデンサを得ることができる。捲回型フィルムコンデンサの好ましい製造方法を例示すると、次のとおりである。
【0106】
ポリプロピレンフィルムの片面にアルミニウムを減圧状態で蒸着する。その際、長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着する。次に、表面の各蒸着部の中央と各マージン部の中央に刃を入れてスリットし、表面の一方にマージンを有した、テープ状の巻取リールを作成する。左もしくは右にマージンを有するテープ状の巻取リールを左マージンおよび右マージンのもの各1本ずつを、幅方向に蒸着部分がマージン部よりはみ出すように2枚重ね合わせて捲回し、捲回体を得る。
【0107】
両面に蒸着を行う場合は、一方の面の長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着し、もう一方の面には長手方向のマージン部が裏面側蒸着部の中央に位置するようにストライプ状に蒸着する。次に表裏それぞれのマージン部中央に刃を入れてスリットし、両面ともそれぞれ片側にマージン(例えば表面右側にマージンがあれば裏面には左側にマージン)を有するテープ状の巻取リールを作製する。得られたリールと未蒸着の合わせフィルム各1本ずつを、幅方向に金属化フィルムが合わせフィルムよりはみ出すように2枚重ね合わせて捲回し、捲回体を得る。
【0108】
以上のようにして作成した捲回体から芯材を抜いてプレスし、両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接して捲回型フィルムコンデンサを得ることができる。フィルムコンデンサの用途は、鉄道車輌用、自動車用(ハイブリットカー、電気自動車)、太陽光発電・風力発電用および一般家電用等、多岐に亘っており、本発明のフィルムコンデンサもこれら用途に好適に用いることができる。その他、包装用フィルム、離型用フィルム、工程フィルム、衛生用品、農業用品、建築用品、医療用品など様々な用途でも用いることができ、特にフィルム加工において加熱工程を含む用途に好ましく用いることができる。」
「【0137】
(実施例1)
本実施例に使用した原料および製膜の条件は表1、2に示した通りである。まずポリプロピレン原料(A1)を92質量部、ポリプロピレン原料(B1)を5質量部、ポリプロピレン原料(C1)を3質量部ドライブレンドして温度260℃の単軸の一軸押出機に供給し溶融させ、濾過フィルターを通過後の255℃に設定した配管を通過し、250℃に設定したT型スリットダイよりシート状に溶融押出し、該溶融シートを95℃に保持されたキャスティングドラム上で、エアーナイフにより密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得た。該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて段階的に142℃まで予熱し、そのまま周速差を設けたロール間に通し、130℃にて1.08倍の予備延伸を行った後、142℃にて長手方向に6.2倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、フィルム幅手の両端部をクリップで把持したまま170℃の温度(TD延伸温度+8℃)で予熱し、次いで162℃の温度で幅方向に12.5倍延伸した。さらに1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に15%の弛緩を与えながら160℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま150℃で熱処理を行った。最後に3段目の熱処理として110℃の熱処理を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/m2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み2.1μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。本実施例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表4に示す通りで、フィルムの(Ts-Tf)、および(Ssk)の関係が極めて良好であり、コンデンサとしての耐電圧・信頼性・加工性も優れたものであった。」
「【0152】
【表1】
[図:0001420320000002.jpg]
」
「【0153】
【表2】
[図:0001420320000003.jpg]
」
「【0155】
【表4】
[図:0001420320000004.jpg]
」
(イ) 甲第B2号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に実施例1の記載を中心に整理すると、甲第B2号証には次の発明が記載されていると認める。
「ポリプロピレン原料(A1)を92質量部、ポリプロピレン原料(B1)を5質量部、ポリプロピレン原料(C1)を3質量部ドライブレンドして温度260℃の単軸の一軸押出機に供給し溶融させ、濾過フィルターを通過後の255℃に設定した配管を通過し、250℃に設定したT型スリットダイよりシート状に溶融押出し、該溶融シートを95℃に保持されたキャスティングドラム上で、エアーナイフにより密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得、該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて段階的に142℃まで予熱し、そのまま周速差を設けたロール間に通し、130℃にて1.08倍の予備延伸を行った後、142℃にて長手方向に6.2倍に延伸し、引き続き該フィルムをテンターに導き、フィルム幅手の両端部をクリップで把持したまま170℃の温度(TD延伸温度+8℃)で予熱し、次いで162℃の温度で幅方向に12.5倍延伸し、さらに1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に15%の弛緩を与えながら160℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま150℃で熱処理を行い、最後に3段目の熱処理として110℃の熱処理を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/m2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い得られた、融解ピーク温度(Tm)が175℃、結晶化ピーク温度が116℃、125℃で15分間熱処理後の、幅方向の熱収縮率が0.4%である、フィルム厚み2.1μmのフィルム。」(以下、「甲B2フィルム発明」という。)
「ポリプロピレン原料(A1)を92質量部、ポリプロピレン原料(B1)を5質量部、ポリプロピレン原料(C1)を3質量部ドライブレンドして温度260℃の単軸の一軸押出機に供給し溶融させ、濾過フィルターを通過後の255℃に設定した配管を通過し、250℃に設定したT型スリットダイよりシート状に溶融押出し、該溶融シートを95℃に保持されたキャスティングドラム上で、エアーナイフにより密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得、該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて段階的に142℃まで予熱し、そのまま周速差を設けたロール間に通し、130℃にて1.08倍の予備延伸を行った後、142℃にて長手方向に6.2倍に延伸し、引き続き該フィルムをテンターに導き、フィルム幅手の両端部をクリップで把持したまま170℃の温度(TD延伸温度+8℃)で予熱し、次いで162℃の温度で幅方向に12.5倍延伸し、さらに1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に15%の弛緩を与えながら160℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま150℃で熱処理を行い、最後に3段目の熱処理として110℃の熱処理を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/m2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルムを得るものである、融解ピーク温度(Tm)が175℃、結晶化ピーク温度が116℃、125℃で15分間熱処理後の、幅方向の熱収縮率が0.4%である、フィルム厚み2.1μmのフィルムの製造方法。」(以下、「甲B2製法発明」という。)
なお、特許異議申立人Bは、特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書B」という。)の第35頁において、「甲2発明」を認定しているが、甲第B2号証の全ての記載を見ても、「熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向」がどの方向であるか明らかではないから、特許異議申立書Bの第35頁に記載するような発明を認定することができない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲B2フィルム発明とを対比する。
甲B2フィルム発明は、「ポリプロピレン原料(A1)を92質量部、ポリプロピレン原料(B1)を5質量部、ポリプロピレン原料(C1)を3質量部」用い、「フィルム」を得ているものであるから、甲B2フィルム発明の「フィルム」は、本件特許発明1の「ポリプロピレンフィルム」に相当する。
そこで、本件特許発明1と甲B2フィルム発明とを対比すると、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「ポリプロピレンフィルム。」
(相違点)
・相違点B2-1
ポリプロピレンフィルムに関し、本件特許発明1は「粒子を含む」ものであって、「前記粒子が、金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方であること」を特定するのに対し、甲B2フィルム発明にはそのような特定がない点。
・相違点B2-2
ポリプロピレンフィルムに関し、本件特許発明1は「熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であり」と特定するのに対し、甲B2フィルム発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、上記相違点B2-2について検討する。
甲B2フィルム発明のフィルムは、未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて段階的に142℃まで予熱し、そのまま周速差を設けたロール間に通し、130℃にて1.08倍の予備延伸を行った後、142℃にて長手方向に6.2倍に延伸し、引き続き該フィルムをテンターに導き、フィルム幅手の両端部をクリップで把持したまま170℃の温度(TD延伸温度+8℃)で予熱し、次いで162℃の温度で幅方向に12.5倍延伸し、さらに1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に15%の弛緩を与えながら160℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま150℃で熱処理を行い、最後に3段目の熱処理として110℃の熱処理を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/m2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルムを得たものであって、125℃で15分間熱処理後の、幅方向の熱収縮率が0.4%であるものの、甲B2フィルム発明の当該特定事項、甲第B2号証の全ての記載及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B2フィルム発明のフィルムにおける「熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向」がどの方向であるか不明であり、ましてや、「前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下」であるかも不明である。
また、全ての証拠の記載を見ても、甲B2フィルム発明において、「熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向」に着目し、その熱収縮率を調整する動機付けもない。
すると、甲B2フィルム発明において、相違点B2-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B2フィルム発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
なお、この点について特許異議申立人Bは、本件特許発明1における「(B)熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下」について、甲第B2号証は、X1Tsが100℃以上160℃以下とする本件特許明細書と同様な技術的事項を開示するため、甲第B2号証は、上記(B)を実質的に記載している旨主張する(特許異議申立書B第37頁ないし第38頁)。
しかしながら、上記検討のとおり、甲B2フィルム発明のフィルムにおいて、そもそも、「熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向」がどの方向であるか不明であるため、熱収縮率について対比することはできないといわざるを得ず、故に、特許異議申立人Bの上記主張は採用することができない。
(イ) 本件特許発明2ないし14について
本件特許発明2ないし14は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに限定するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1は、甲B2フィルム発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2ないし14もまた、甲B2フィルム発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件特許発明15及び16について
本件特許発明15と甲B2製法発明とを対比すると、本件特許発明15は本件特許発明1又は2のポリプロピレンフィルムの製造方法に関するものであるから、両者は少なくとも相違点B2-1及び相違点B2-2の点で相違するものである。
そして、相違点B2-2については、上記(ア)のとおり判断されるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明15は、甲B2製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件特許発明15の発明特定事項の全てを有しさらに限定するものである本件特許発明16についても、同様に判断されるから、本件特許発明16は、甲B2製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立理由B2についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由B2の理由では、本件特許発明1ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
第6 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700259