特許異議申立
2023-700248
ポリエステルフィルム
- 審判番号
- 2023-700248
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-241314
- 登録番号
- 7130951
- 請求日
- 2023年03月06日
- 審決日
- 2023年06月12日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東レ株式会社
- 【異議申立人】平居 博美
- 審判長/審判官
- 審判長 磯貝 香苗
- 審判官 平塚 政宏
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.121-Y (C08J) / P1651.536-Y (C08J) / P1651.537-Y (C08J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第2条第3項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7130951号発明「ポリエステルフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7130951号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7130951号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成29年12月18日の出願であって、令和4年8月29日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年9月6日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年3月6日に特許異議申立人 平居 博美(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:請求項1ないし3)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などという場合があり、また、これらをまとめて「本件特許発明」という場合がある。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート樹脂を主成分とする下記(1)~(6)を満たす単層構成からなるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム。
(1)170℃3時間加熱した前後のフィルムのヘイズ値の変化量ΔHz値が0.5%以下であること。
(2)ポリエチレンテレフタレート樹脂を主成分とする単層構成からなるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムのジエチレングリコール(DEG)量が、ポリエチレンテレフタレート樹脂に対し、0.9重量%以上3.0重量%以下であること。
(3)フィルムの長手方向、幅方向の厚みむらがいずれも5.0%以下であること。
(4)170℃3時間加熱した後のフィルムのヘイズ値が2.0%以下であること。
(5)20cm四方に切り出したフィルムを、パンチングメタルAの上に置いた状態、及びパンチングメタルBの上に置いた状態で、温度を150℃に設定したオーブン中に無緊張状態で10分間保持した後、フィルムサンプルを室温で10分間冷却し、蛍光灯の反射光により、フィルムの表面に映し出された蛍光灯の反射像の状態を観察したときに、前記パンチングメタルAおよび前記パンチングメタルBのいずれの場合においても、蛍光灯の反射像に歪みは見られないこと。但し、前記パンチングメタルA、前記パンチングメタルBは下記のパンチングメタルとする。
パンチングメタルA:奥谷金網製作所製パンチングメタル SUS304 エンボス加工 1.5t×D4.5×P7.5 60°チドリ。
パンチングメタルB:奥谷金網製作所製パンチングメタル SUS304 エンボス加工 2t×D7/H1.3×P10 60°チドリ。
(6)フィルムの固有粘度(IV)が0.60dl/g以上0.70dl/g以下であること。
【請求項2】
ポリエチレンテレフタレート樹脂を主成分とする単層構成からなるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの少なくとも片側に塗布層を有する下記(1)~(6)を満たすポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム。
(1)170℃3時間加熱した前後のフィルムのヘイズ値の変化量ΔHz値が0.5%以下であること。
(2)ポリエチレンテレフタレート樹脂を主成分とする単層構成からなるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムのジエチレングリコール(DEG)量が、ポリエチレンテレフタレート樹脂に対し、0.9重量%以上3.0重量%以下であること。
(3)フィルムの長手方向、幅方向の厚みむらがいずれも5.0%以下であること。
(4)170℃3時間加熱した後のフィルムのヘイズ値が2.0%以下であること。
(5)20cm四方に切り出したフィルムを、パンチングメタルAの上に置いた状態、及びパンチングメタルBの上に置いた状態で、温度を150℃に設定したオーブン中に無緊張状態で10分間保持した後、フィルムサンプルを室温で10分間冷却し、蛍光灯の反射光により、フィルムの表面に映し出された蛍光灯の反射像の状態を観察したときに、前記パンチングメタルAおよび前記パンチングメタルBのいずれの場合においても、蛍光灯の反射像に歪みは見られないこと。但し、前記パンチングメタルA、前記パンチングメタルBは下記のパンチングメタルとする。
パンチングメタルA:奥谷金網製作所製パンチングメタル SUS304 エンボス加工 1.5t×D4.5×P7.5 60°チドリ。
パンチングメタルB:奥谷金網製作所製パンチングメタル SUS304 エンボス加工 2t×D7/H1.3×P10 60°チドリ。
(6)フィルムの固有粘度(IV)が0.60dl/g以上0.70dl/g以下であること。
【請求項3】
光学用途に使用される請求項1または2に記載のポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム。」
第3 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人が申し立てた請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由2の具体的理由の概要は次のとおりである。
本件特許の明細書には要件(5)の蛍光灯の反射像の歪みを測定できるように記載されていない。
3 申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由3の具体的理由の概要は次のとおりである。
(1) 申立理由3-1
本件特許発明1の「単層構成からなるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム」について、粒子を含有しない構成についてサポートされていない。
請求項1の記載を引用して特定する本件特許発明3についても同様である。
(2) 申立理由3-2
本件特許発明1及び2のポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムは固相重合が必須であり、固相重合を行わないポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムについてサポートされていない。
請求項1又は2の記載を引用して特定する本件特許発明3についても同様である。
(3) 申立理由3-3
本件特許発明1及び2は環状三量体含有量が所定範囲であることが必須であり、環状三量体含有量が所定範囲外のポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムについてサポートされていない。
請求項1又は2の記載を引用して特定する本件特許発明3についても同様である
4 申立理由4(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由4の具体的理由の概要は次のとおりである。
要件(5)の蛍光灯の反射像の歪みを一義的に評価できるように記載されておらず、不明確である。
5 証拠方法
・甲第1号証:特許第5130620号公報
・甲第2号証:特許第3687784号公報
・甲第3号証:特開2007-231200号公報
第4 当審の判断
以下のとおり、当審は、何れの特許異議申立理由も、その理由がないものと判断する。
1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)について
(1) 甲第1号証の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「ディスプレイ用ポリエステルフィルム」に関し、次の記載がある。
「【請求項1】
少なくとも片面に積層膜を有するポリエステルフィルムであって、ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルに、チタン元素がポリエステルに対してチタン元素重量として0.5~50ppm含まれ、該フィルムの固有粘度が0.55~0.7であり、該フィルム全体の末端カルボキシル基濃度が30当量/106gを越え、100当量/106g以下であり、該フィルムの透過法による色調b値が-0.5~1.0であり、ヘイズが1%以下であり、該フィルムでの環状三量体の含有量が0.8重量%以下であり、かつ長径が50μm以上の内部異物が100cm2あたり20個以下であり、ポリエステル中のアルカリ金属元素の含有量をMa(モル/g)、アルカリ土類金属元素の含有量をMd(モル/g)、リン元素の含有量をMp(モル/g)としたとき、Ma、MdおよびMpが次式を満たしていることを特徴とするディスプレイ用ポリエステルフィルム。
Ma+2×Md≧3×Mp
・・・
【請求項6】
150℃で60分間加熱した後のヘイズが1%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のディスプレイ用ポリエステルフィルム。」
「【技術分野】
【0001】
本発明はディスプレイ用ポリエステルフィルムに関し、詳しくは加熱時のオリゴマー析出抑制力に優れた高透明でディスプレイ用途に好適に使用できるポリエステルフィルムに関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、加熱時のオリゴマーの表面析出によるヘイズ上昇とフィルム内部の輝点欠点の両方を抑制する事のできるディスプレイ用ポリエステルフィルムを提供することにある。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のディスプレイ用ポリエステルフィルムは機械的強度や寸法安定性、経済性の観点から二軸延伸されていることが好ましい。二軸延伸とは溶融したポリエステルをシート状に押し出した未延伸状態のポリエステルシートまたはフィルムを長手方向および幅方向に各々2.5~5倍程度延伸されたものであり、その後、熱処理が施されて、結晶配向が完了され、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0011】
本発明のディスプレイ用ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルは、ジカルボン酸類とグリコール類を重合して得られる熱可塑性の樹脂である。
【0012】
ポリエステルに用いられるジカルボン酸類としては、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホンジカルボン酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸や、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などが使用できる。また、フィルムのポリエステル樹脂に用いられるグリコール類としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコールや、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコールなどが使用できる。機械的強度、耐候性や耐化学薬品性、透明性、寸法安定性、経済性などを考慮すると、前者にテレフタル酸を、後者にエチレングリコールを用いることが好ましい。
【0013】
また本発明のディスプレイ用ポリエステルフィルムにおいて環状三量体の含有量が0.8重量%以下、好ましくは0.6重量%以下であることがフィルム表面へのオリゴマー析出による外観不良を生じさせないために必要である。ポリエステル、特にテレフタル酸またはその誘導体とエチレングリコールを縮重合して得られるポリエチレンテレフタレートは、重合の際に副生物として、必ずオリゴマーが含まれておりその存在比率は全体の2~3%程度であることが知られており、ポリエステルフィルムとした後にフィルムに熱が加わると該オリゴマーが表面に析出し外観不良を引き起こしているが、析出するオリゴマーを分析すると環状三量体が主成分であることという知見が得られた。該環状三量体はポリエステルが溶融状態であればポリエステル中に環状三量体が平衡状態で安定して存在しているが、フィルム状にした後の種々の熱がかかることによって、ポリエステルが結晶化する過程で結晶部分から排除された環状三量体が非晶部に高濃度に存在することとなり平衡状態が崩れ、過剰に存在する環状三量体がフィルム表面に析出することを知見した。そこで結晶部分から排除された環状三量体を非晶部に安定状態に保ち、フィルム表面に析出させないことについて鋭意検討した結果、予めポリエステル中に含まれる環状三量体の含有量を低減させておき、フィルムが結晶化した後に非晶部に存在する環状三量体の含有量を減らしておけば表面に析出しなくなることを知見した。ポリエチレンテレフタレートの場合、到達結晶化度は、最大でも50%程度であることからフィルムが結晶化した後でも非晶部に安定して化1の環状三量体が存在し、表面に析出させないためにはオリゴマーの存在比率を通常の半分程度にしておけばよいことになる。ポリエチレンテレフタレートの場合、オリゴマーの中で環状三量体の比率が50%程度なのでフィルム中の含有量を0.8重量%にしておけば、表面に析出しないのである。このような状態とするためにポリエステル中の環状三量体を予め減じておくことが経済性の観点で好ましく採用される。
【0014】
【化1】
[図:0001399408000001.jpg]
【0015】
ポリエステル中の環状三量体を予め減じておく手法として、本発明のディスプレイ用ポリエステルフィルムの原料として用いるポリエステル樹脂の好ましい固有粘度とする前の工程において、減圧下および/または不活性ガス流通下に、前記ポリエステル樹脂の融点ないしその融点より80℃低い範囲の温度で加熱することによりポリエステル中に含まれる環状三量体の含有量を0.5重量%以下にし、固有粘度を0.55~0.75dl/gとしたポリエステルを用いることが好ましい。
【0016】
使用するポリエステルの固有粘度が0.75dl/gを超えると粘度が高いため成型時に押し出し不良の問題や発熱してポリマーを劣化させ、着色や不均一なポリマーを生じさせてしまうことがある。また、溶融成形性を高めるために成形樹脂温度を高く設定する必要があり、その結果として製品中の環状化合物が生成しやすくなる。さらにフィルムに成型後の寸法安定性が後述する熱処理による緊張緩和の遅延により不安定になる場合もある。また、固有粘度が0.55dl/gより低い場合には、溶融したポリエステルをシート状に押し出し成型する際の脈動で均一なシートが得られなかったり、結晶化が進行することで製膜時の膜破れの問題を生じやすくなる場合がある。特に固有粘度が0.58dl/g以上、0.70dl/g以下のものを用いるのが好ましい。」
「【0035】
本発明のディスプレイ用ポリエステルフィルムは画像の鮮明性や光量が著しく低下させないためにヘイズを1%以下とすることが必要であり、好ましくは0.8%以下である。なお、ヘイズはJIS K 7105(1981/03/01制定)に従って測定した値である。ヘイズが1%以下とするために使用するポリエステル樹脂中には光を散乱させるような粒子や各種添加剤、粗大重合触媒残査物などの混入には注意が必要である。更にポリエステル樹脂を溶融押し出ししてシート状にする際の結晶化を急冷により抑えて、後工程の延伸の際の結晶部と非晶部の境界でのクラック発生を防止することもヘイズの値を下げるために有効である。」
「【0049】
本発明のディスプレイ用ポリエステルフィルムを150℃で60分間加熱した後のフィルム表面に観察される粒子状物の平均サイズが面積換算で10μm2以下であることが好ましく、さらには8μm2以下であることが好ましく、また個数が100μm×100μmの視野内で100個以下であることが好ましく、さらには80個以下であることが好ましい。熱加工後に観察される粒子状物にはポリエステル起因の環状三量体や積層膜からの析出物、付着異物などが想定されるがこれらはディスプレイに用いられると輝点欠点と呼ばれる外観不良とヘイズ上昇を招く場合があり、ミクロな視野で上記の範囲とすることで両方を抑制が可能となる。このような範囲とするためには、ポリエステル中の環状三量体の含有量を0.8重量%以下とし、積層膜から析出物が出ないよう樹脂選定(例えば、アクリル樹脂などのポリエステルの成分と樹脂の基本骨格や官能基が異なることで積層膜中での環状三量体の拡散を阻害するものやガラス転移温度が高くすることで樹脂の分子運動を抑制して環状三量体の拡散を阻害させるような樹脂を選定)することが好ましい。
【0050】
さらには、マクロな視野でフィルムの加熱前後でのヘイズ変化として、150℃で60分間加熱した後のヘイズが1%以下であることが好ましく、さらには0.8%以下であることが好ましい。」
「【実施例】
【0061】
以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
・・・
【0087】
(実施例1)
実質的に粒子を含有しないポリエステル(A)を十分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、フィルターを介してT字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。
【0088】
この未延伸フィルムを80℃に加熱した同速で駆動する金属メッキロール10本にて順次加熱し、さらに赤外線ヒーターにて加熱しながらフィルム温度100℃にて長手方向に3.2倍延伸し、30℃に調整した冷却ロールで冷却することで一軸延伸フィルムとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルム表面の濡れ張力を50mN/mとし、その処理面に下記の積層膜形成塗液を片面に塗布した。塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、100℃で乾燥後、引き続き連続的に110℃の加熱ゾーンで幅方向に3.7倍延伸し、更に225℃の加熱ゾーンで熱処理を施した後、長手方向に2%、幅方向に5%弛緩処理し、結晶配向の完了したポリエステルフィルムを得た。このとき、ポリエステルフィルムの厚みは188μm、積層膜の厚みが0.08μmであり、得られた特性について表1にまとめたが、ディスプレイ用ポリエステルフィルムとして良好な結果であった。
【0089】
「積層膜形成塗液」
ポリエステル樹脂: 下記組成で共重合したポリエステル共重合体のエマルジョン
・酸成分
テレフタル酸 90モル%
5-ナトリウムスルホイソフタル酸 10モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 96モル%
ネオペンチルグリコール 3モル%
ジエチレングリコール 1モル%
メラミン系架橋剤: イミノ基型メチル化メラミンを、イソプロピルアルコールと水との混合溶媒(10/90(重量比))で希釈した液、
上記したポリエステル樹脂100重量部に対し、メラミン系架橋剤を5重量部、平均粒径が0.1μmのコロイダルシリカ粒子を1重量部添加したものを積層膜形成塗液とした。
【0090】
(比較例1)
ポリエステル(A)をポリエステル(B)に変更した以外は、実施例1と同様にして188μmのポリエステルフィルムを得た。得られた特性について表1にまとめたが、内部異物が多くディスプレイ用ポリエステルフィルムとして使用に耐えないものであった。
【0091】
(比較例2)
ポリエステル(A)をポリエステル(C)に変更した以外は、実施例1と同様にして188μmのポリエステルフィルムを得た。得られた特性について表1にまとめたが、加熱後に粒子状物が多数発生しディスプレイ用ポリエステルフィルムとして使用に耐えないものであった。
【0092】
(実施例2)
ポリエステル(A)をポリエステル(D)に変更した以外は、実施例1と同様にして188μmのポリエステルフィルムを得たが、押し出し時にトルクが上がったため押し出し量を2割落ち、フィルム表面に微細なキズが目視で多発していた。得られた特性について表1にまとめたが、歩留まりも若干低下した。
【0093】
(実施例3)
積層膜を両面で実施した以外は実施例1と同様にして188μmのポリエステルフィルムを得た。得られた特性について表1にまとめたが、ディスプレイ用ポリエステルフィルムとして良好な結果であった。
【0094】
(実施例4)
ポリエステル(A)に実施例1のフィルムを粉砕したフィルムを10重量%添加した以外は、実施例1と同様にして188μmのポリエステルフィルムを得た。得られた特性について表1にまとめたが、歩留まりが若干低下した。
【0095】
【表1】
[図:0001399408000002.jpg]
」
イ 甲第1号証に記載された発明
上記アの記載、特に請求項1及び請求項6の記載を中心に整理すると、甲第1号証には次の発明が記載されていると認める。
「少なくとも片面に積層膜を有するポリエステルフィルムであって、ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルに、チタン元素がポリエステルに対してチタン元素重量として0.5~50ppm含まれ、該フィルムの固有粘度が0.55~0.7であり、該フィルム全体の末端カルボキシル基濃度が30当量/106gを越え、100当量/106g以下であり、該フィルムの透過法による色調b値が-0.5~1.0であり、ヘイズが1%以下であり、該フィルムでの環状三量体の含有量が0.8重量%以下であり、かつ長径が50μm以上の内部異物が100cm2あたり20個以下であり、ポリエステル中のアルカリ金属元素の含有量をMa(モル/g)、アルカリ土類金属元素の含有量をMd(モル/g)、リン元素の含有量をMp(モル/g)としたとき、Ma、MdおよびMpが次式、
Ma+2×Md≧3×Mp
を満たしており、150℃で60分間加熱した後のヘイズが1%以下であるディスプレイ用ポリエステルフィルム。」(以下、「甲1発明」という。)
なお、特許異議申立人が異議申立書の第14頁ないし第15頁において主張する「甲1発明」は、甲第1号証の特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び実施例の記載から、恣意的に選択し組み合わせたものといえるので、そのような「甲1発明」は、認定することができない。
(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ポリエステルフィルム」は、本件特許発明1の「ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム」のうち「樹脂フィルム」の限りにおいて一致する。
してみると、両者は、
「樹脂フィルム。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点1-1
樹脂フィルムについて、本件特許発明1は「ポリエチレンテレフタレート樹脂を主成分とする・・・ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム」と特定されるのに対して、甲1発明は「ポリエステルフィルム」である点。
・相違点1-2
樹脂フィルムについて、本件特許発明1は「単層構成」と特定されるのに対して、甲1発明は「少なくとも片面に積層膜を有する」ものである点。
・相違点1-3
樹脂フィルムについて、本件特許発明1は、「下記の(1)~(6)を満たす」ことが特定されるのに対して、甲1発明にはそのような特定がない点。
なお、(1)~(6)は次のとおりである。
「(1)170℃3時間加熱した前後のフィルムのヘイズ値の変化量ΔHz値が0.5%以下であること。
(2)ポリエチレンテレフタレート樹脂を主成分とする単層構成からなるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムのジエチレングリコール(DEG)量が、ポリエチレンテレフタレート樹脂に対し、0.9重量%以上3.0重量%以下であること。
(3)フィルムの長手方向、幅方向の厚みむらがいずれも5.0%以下であること。
(4)170℃3時間加熱した後のフィルムのヘイズ値が2.0%以下であること。
(5)20cm四方に切り出したフィルムを、パンチングメタルAの上に置いた状態、及びパンチングメタルBの上に置いた状態で、温度を150℃に設定したオーブン中に無緊張状態で10分間保持した後、フィルムサンプルを室温で10分間冷却し、蛍光灯の反射光により、フィルムの表面に映し出された蛍光灯の反射像の状態を観察したときに、前記パンチングメタルAおよび前記パンチングメタルBのいずれの場合においても、蛍光灯の反射像に歪みは見られないこと。但し、前記パンチングメタルA、前記パンチングメタルBは下記のパンチングメタルとする。
パンチングメタルA:奥谷金網製作所製パンチングメタル SUS304 エンボス加工 1.5t×D4.5×P7.5 60°チドリ。
パンチングメタルB:奥谷金網製作所製パンチングメタル SUS304 エンボス加工 2t×D7/H1.3×P10 60°チドリ。
(6)フィルムの固有粘度(IV)が0.60dl/g以上0.70dl/g以下であること。」
(以後、(1)~(6)の当該記載は省略する。)
事案に鑑み、まず相違点1-3について検討する。
甲1発明並びに甲第1号証及び他の全ての証拠をみても、甲1発明において、(1)~(6)のそれぞれの要件について満たすものであると推認する理由はなく、また、各要件を調整する動機付けがあるともいえない。
そして、本件特許発明1は、相違点1-3に係る本件特許発明1の特定事項を満たすことにより、「フィルムの厚みむら、高温での加熱処理に使用されても透明性に優れ、熱変形し難く、製膜安定性に優れたポリエステルフィルムを提供することができる」(【0014】)との格別の効果を奏するものである。
この点について、特許異議申立人は特許異議申立書において、概ね、甲1発明と本件特許発明1は、フィルムの製法、各パラメータの調整法、用途が同じであるから、上記(1)~(6)の各要件は、甲1発明において満たす蓋然性が高いものであるか、そうではないとしても、当業者が適宜調整しうるものである旨主張する。
しかしながら、甲第1号証に記載されたフィルムの製造方法は、その材料、製造条件も含め同じであるとはいえないから、得られた樹脂フィルム、すなわち、甲1発明の樹脂フィルムが上記(1)~(6)の各要件を満たすものと推認することはできないし、また、(1)~(6)の各要件において「特定されている条件を満たすもの」とする動機付けもないから、特許異議申立人の当該主張は採用できない。
してみると、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、おおむね、上記アと同様の相当関係がとれる(積層構造を有する点は次のとおり一致点となる)から、両者は、
「樹脂を主成分とする単層構成からなる樹脂フィルムの少なくとも片側に塗布層を有する樹脂フィルム。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点2-1
樹脂フィルムについて、本件特許発明2は「ポリエチレンテレフタレート樹脂を主成分とする・・・ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム」と特定されるのに対して、甲1発明は「ポリエステルフィルム」である点。
・相違点2-2
樹脂フィルムについて、本件特許発明2は、「下記の(1)~(6)を満たす」ことが特定されるのに対して、甲1発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、まず、相違点2-2について検討するに、相違点2-2は、相違点1-3と同旨であり、上記アと同様に判断される。
してみると、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1または本件特許発明2の全ての特定事項を含み、さらに限定するものである。
そして、本件特許発明1及び本件特許発明2はいずれも、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明3もまた、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 申立理由1についてのまとめ
上記(2)のとおりであるから、申立理由1は、その理由がない。
2 申立理由2(実施可能要件)について
(1) 実施可能要件の判断基準
本件特許発明1ないし3は、上記第2のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、例えば、明細書等にその物を生産することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
(2) 実施可能要件についての判断
本件特許発明1ないし3は、上記第2のとおりである。
そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、フィルムを構成する成分について(【0015】)、加熱前のフィルムのヘイズ値及び170℃3時間加熱後のフィルムのヘイズ値(要件(4))について(【0016】)、フィルムの加熱前後のヘイズ値の変化量(要件(1))及びその調整方法について(【0017】ないし【0018】及び【0020】)、フィルムの固有粘度(要件(6))について(【0021】)、フィルムの厚みむら(要件(3))について(【0022】)、フィルムに含まれるジエチレングリコールの割合(要件(2))について(【0024】)、加熱後の平面性評価(要件(5))について(【0042】ないし【0044】)、フィルムの製造方法及び用途について(【0029】ないし【0037】)の記載があり、具体的な実施例の記載もある。
これらの記載によれば、本件特許発明1ないし3に関し、明細書の発明の詳細な説明には過度の試行錯誤を要することなく当業者が実施できる程度に記載されているものといえる。
よって、本件特許発明1ないし3に関する明細書の発明の詳細な説明における記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合する。
(3) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、要件(5)の蛍光灯の反射像の歪みを測定できるように記載されていない旨主張するが、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0042】ないし【0044】には、
「(4)加熱後の平面性評価(耐熱変形性)
20cm四方に切り出したフィルムをパンチングメタルの上に置いた状態で、温度を150℃に設定したオーブン中に無緊張状態で10分間保持した後、フィルムサンプルを室温で10分間冷却し、蛍光灯の反射光により、フィルムの表面に映し出された蛍光灯の反射像の状態を観察した。パンチングメタルは下記の2種を用いて評価を行ない、下記の判定基準により耐熱変形性を評価した。
・パンチングメタルA:奥谷金網製作所製パンチングメタル SUS304 エンボス加工 1.5t×D4.5×P7.5 60°チドリ
・パンチングメタルB:奥谷金網製作所製パンチングメタル SUS304 エンボス加工 2t×D7/H1.3×P10 60°チドリ
〔耐熱変形性の評価基準〕
○:パンチングメタルAおよびパンチングメタルBのいずれの場合においても、蛍光灯の反射像に歪みは見られなかった。
△:パンチングメタルAおよびパンチングメタルBのいずれの場合においても、フィルム表面の一部に、パンチングメタルのエンボス加工ピッチで、蛍光灯の反射像に歪みがあった。
×:パンチングメタルAおよびパンチングメタルBのいずれの場合においても、フィルム表面の全面に、パンチングメタルのエンボス加工ピッチで、蛍光灯の反射像に歪みがあった。」
と記載されていることからみて、当業者であれば、「蛍光灯の反射像」の歪みを視認し把握できるものといえる。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「フィルムの表面に映し出される反射像の位置、形状は、使用する蛍光灯の形状、照射角度、フィルムと蛍光灯との距離、観察者のフィルム目視角度、及び観察者とフィルムとの距離などによって異なる」(第26頁)旨主張するが、当業者であれば、通常適切な条件を設定し行いうるものといえるから、当該主張を考慮しても、上記判断に影響しない。
(4) 申立理由2についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由2は、その理由がない。
3 申立理由3(サポート要件)について
(1) サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2) サポート要件についての判断
本件特許の発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「高温での加熱処理に使用されても透明性に優れ、熱変形し難く、製膜安定性に優れるポリエステルフィルムを提供すること」(【0011】)である。
そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った」(【0012】)ものであって、「上記目的を達成する本発明は以下により得られる。
(あ)ポリエステルを主成分とする下記(1)~(4)を満たす単層構成からなるポリエステルフィルム。
(1)170℃3時間加熱した前後のフィルムのヘイズ値の変化量ΔHz値が0.5%以下であること。
(2)ジエチレングリコール(DEG)量が0.9重量%以上3.0重量%以下であること。
(3)フィルムの長手方向、幅方向の厚みむらがいずれも5.0%以下であること。
(4)170℃3時間加熱した後のフィルムのヘイズ値が2.0%以下であること。
(い)ポリエステルを主成分とする単層構成からなるポリエステルフィルムの少なくとも片側に塗布層を有する下記(1)~(4)を満たすポリエステルフィルム。
(1)170℃3時間加熱した前後のフィルムのヘイズ値の変化量ΔHz値が0.5%以下であること。
(2)ポリエステルを主成分とする単層構成からなるポリエステルフィルムのジエチレングリコール(DEG)量が0.9重量%以上3.0重量%以下であること。
(3)フィルムの長手方向、幅方向の厚みむらがいずれも5.0%以下であること。
(4)170℃3時間加熱した後のフィルムのヘイズ値が2.0%以下であること。
(う)光学用途に使用される(あ)または(い)に記載のポリエステルフィルム。」(【0013】)こと、「本発明によれば、フィルムの厚みむら、高温での加熱処理に使用されても透明性に優れ、熱変形し難く、製膜安定性に優れたポリエステルフィルムを提供することができる」(【0014】)こと、「本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルを主成分とするポリエステル樹脂を単層構成とするフィルムである」(【0015】)こと、「本発明のポリエステルフィルムは、170℃3時間加熱後のフィルムのヘイズ値が2.0%以下である」(【0016】)こと、「170℃3時間加熱した前後のフィルムのヘイズ値の変化量ΔHz値(以下、単にΔHz値という場合がある)が0.5%以下であることが重要である」(【0017】)こと、「ポリエステルフィルムの厚みむらは、フィルムの長手方向(フィルムの製膜方向)、幅方向(フィルムの製膜方向とは垂直な方向)ともに5.0%以下であることが重要である」(【0022】)こと、「ポリエステルフィルムは、ジエチレングリコール(DEG)量が0.9重量%以上3.0重量%以下であることが重要である」(【0024】)ことが記載され、これらの要件を検討した具体的な実施例の記載もある。
してみると、当業者であれば、「ポリエステルフィルム」であって、次の要件(1)ないし(4)の特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できるものと認識できる。
(1)170℃3時間加熱した前後のフィルムのヘイズ値の変化量ΔHz値が0.5%以下であること。
(2)ポリエステルを主成分とする単層構成からなるポリエステルフィルムのジエチレングリコール(DEG)量が0.9重量%以上3.0重量%以下であること。
(3)フィルムの長手方向、幅方向の厚みむらがいずれも5.0%以下であること。
(4)170℃3時間加熱した後のフィルムのヘイズ値が2.0%以下であること。
そして、本件特許発明1ないし3はいずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項を全て有し、さらに限定するものであるから、当然、発明の課題を解決できると認識できる。
よって、本件特許発明1ないし3はいずれも、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。
(3) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、本件特許発明1の「単層構成からなるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム」について、粒子を含有しない構成についてサポートされていないこと、本件特許発明1及び2のポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムは固相重合が必須であり、固相重合を行わないポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムについてサポートされていないこと、本件特許発明1及び2は環状三量体含有量が所定範囲であることが必須であり、環状三量体含有量が所定範囲外のポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムについてサポートされていないことなどをあげ、本件特許発明1ないし3は、サポート要件を満たしていない旨主張する。
しかしながら、上記(2)のとおり、ポリエステルフィルムにおいて、上記の要件(1)ないし(4)を満たすことにより、本件特許の発明の課題を解決できると当業者が認識できるものである。
特許異議申立人が主張する、ポリステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム)に粒子を含有するか否か、重合法が固相重合であるか否か、環状三量体含有量が所定範囲内であるか否かは、いずれも、上記要件(1)ないし(4)を達成するために調整すべき観点の一つにすぎず、また、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には他の調整すべき観点についての記載もあること(上記2(2)を参照のこと)からみても、特許異議申立人が主張する点が特定されないことを根拠として、発明の課題が解決できないとはいえない。
(4) 申立理由3についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由3は、その理由がない。
4 申立理由4(明確性要件)について
(1) 明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(2) 明確性要件についての判断
本件特許発明1ないし3は、上記第2のとおりであって、要件(1)ないし(6)の各記載も含め明確であって、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
したがって、本件特許発明1ないし3に関する請求項1ないし3の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合する。
(3) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、要件(5)の蛍光灯の反射像の歪みを一義的に評価できるように記載されておらず、不明確である旨主張するが、上記2(3)で検討したとおり、要件(5)の評価について、当業者であれば、通常適切な条件を設定し行いうるものといえるから、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(4) 申立理由4についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由4は、その理由がない。
第5 結語
以上のとおりであるから、特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700248