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特許異議申立

2024-700056

開口を有する床スラブ付き鉄骨梁およびその補強方法

審判番号
2024-700056
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-212845
登録番号
7314030
請求日
2024年01月25日
審決日
2024年05月14日
公報発行日
2024年06月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】JFEスチール株式会社
  • 【権利者代理人】石川 壽彦
  • 【権利者】清水建設株式会社
  • 【異議申立人】齋藤 聡子
審判長/審判官
  • 審判長 有家 秀郎
  • 審判官 澤田 真治
  • 審判官 蔵野 いづみ
分類
P1651.121-Y (E04B) / P1651.537-Y (E04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7314030号発明「開口を有する床スラブ付き鉄骨梁およびその補強方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7314030号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7314030号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和元年11月26日の出願であって、令和5年7月14日に特許権の設定登録がされ、同月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~4に係る特許に対し、令和6年1月25日に特許異議申立人齋藤聡子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~4の特許に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 両端部が柱に剛接合されると共に下フランジの構面外変形が補剛されていない鉄骨梁と、該鉄骨梁の上フランジ上面に梁全長にわたって接合された頭付きスタッドを介して前記鉄骨梁に接合されたコンクリート床スラブとを有する床スラブ付き鉄骨梁において、 前記鉄骨梁の側面から梁材軸直交方向に梁長さの0.1倍の範囲において、前記鉄骨梁の材軸方向の開口幅が900mm以上、かつ梁長さの0.2倍以下の四角形もしくは円形の開口が前記コンクリート床スラブに設けられ、前記開口の梁材軸方向開口幅の端部付近に、下式を満たし、かつ前記コンクリート床スラブと頭付きスタッドを介して接合されている補強部材が設けられ、前記鉄骨梁と前記補強部材が、前記鉄骨梁の側面に接合された鋼板と前記補強部材のウェブ部分との高力ボルト接合部でのみ接合されていることを特徴とする開口を有する床スラブ付き鉄骨梁。 F≧1.15×Ms・D/(a×p) ・・・・ (1) ただし、Ms=As×Ft×B/2 ここで、F :補強部材の軸耐力 Ms :頭付きスタッド接合部の一か所あたりの梁材軸周りの曲げ耐力 D:開口の梁材軸方向開口幅 a:鉄骨梁の上面から補強部材の中立軸位置までの距離 p:鉄骨梁の上面の頭付きスタッドの梁材軸方向ピッチ As:頭付きスタッド接合部一か所あたりの引抜に対する投影面積 Ft:コンクリートの引張強度 B:鉄骨梁の幅 【請求項2】 前記補強部材がH形断面部材であり、前記補強部材に設けられた頭付きスタッドの材軸方向ピッチが前記鉄骨梁に設けられた頭付きスタッドの材軸方向ピッチより大きく、かつ前記補強部材に設けられた頭付きスタッドの前記補強部材軸方向耐力の合計が(1)式の補強部材の軸耐力Fと同様に(1)式の右辺以上であることを特徴とする請求項1記載の開口を有する床スラブ付き鉄骨梁。 【請求項3】 前記補強部材の設置位置が、前記開口の材軸方向開口幅端部から前記鉄骨梁の幅の0.5倍以下の距離にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の開口を有する床スラブ付き鉄骨梁。 【請求項4】 両端部が柱に剛接合されると共に下フランジの構面外変形が補剛されていない鉄骨梁と、該鉄骨梁の上フランジ上面に梁全長にわたって接合された頭付きスタッドを介して前記鉄骨梁に接合された床スラブとを有し、前記鉄骨梁の側面から梁材軸直交方向に梁長さの0.1倍の範囲において、前記鉄骨梁の材軸方向の開口幅が900mm以上、かつ梁長さの0.2倍以下の四角形もしくは円形の開口が前記床スラブに設けられた開口を有する床スラブ付き鉄骨梁の補強方法であって、 前記開口の梁材軸方向開口幅端部付近に、下式を満たし、かつ前記床スラブと頭付きスタッドを介して接合されている補強部材を設け、前記鉄骨梁と前記補強部材を、前記鉄骨梁の側面に接合された鋼板と前記補強部材のウェブ部分との高力ボルト接合部でのみ接合することを特徴とする開口を有する床スラブ付き鉄骨梁の補強方法。 F≧1.15×Ms・D/(a×p) ・・・・ (1) ただし、Ms=As×Ft×B/2 ここで、F :補強部材の軸耐力 Ms :頭付きスタッド接合部の一か所あたりの梁材軸周りの曲げ耐力 D:開口の梁材軸方向開口幅 a:鉄骨梁の上面から補強部材の中立軸位置までの距離 p:鉄骨梁の上面の頭付きスタッドの梁材軸方向ピッチ As:頭付きスタッド接合部一か所あたりの引抜に対する投影面積 Ft:コンクリートの引張強度 B:鉄骨梁の幅」 第3 特許異議申立理由及び証拠方法 1 特許異議申立理由の概要 申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立て理由を主張するとともに、証拠方法として以下に示す各甲号証を提出している。 (1)申立理由1(進歩性) 本件発明1~本件発明4は、甲第1号証、甲第3号証及び公知技術に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(サポート要件) 本件発明1~本件発明4は、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らして、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件発明1~本件発明4は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(明確性) 本件発明1~本件発明4は、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されているとはいえず、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件発明1~本件発明4に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 証拠方法 (1)甲第1号証:特開2018-172875号公報(以下「甲1」という。) (2)甲第2号証:特願2017-70136号に係る令和2年8月28日付け拒絶理由通知書(以下「甲2」という。) (3)甲第3号証:特開2017-115458号公報(以下「甲3」という。) (4)甲第4号証:社団法人日本建築学会「鋼構造限界状態設計指針・同解説」第3版第2刷、2011年4月25日、社団法人日本建築学会、p.126~p.131、p.234~p.237(以下「甲4」という。) (5)甲第5号証:特開2015-68001号公報(以下「甲5」という。) (6)甲第6号証:特開2017-53102号公報(以下「甲6」という。) (7)甲第7号証:特開2019-190137号公報(以下「甲7」という。) 3 証拠に記載された事項 (1)甲1について ア 甲1の記載(下線は当審判合議体で付した。以下同じ。) 「【背景技術】 【0002】 特許文献1には、スタッドが設けられたフランジの上部および材軸方向に直交する水平方向の一方側に連続して床スラブが配置される鉄骨梁において、スタッドの周辺における床スラブのコンクリートのコーン状破壊を抑制、またはコーン状破壊が発生しても急激な荷重低下を伴わない構造の鉄骨梁が開示されている。具体的には、両端部が柱に剛接合されるとともに、上フランジの上部に材軸方向に沿って複数のスタッドが配列して接合され、上フランジの上部および材軸方向に直交する水平方向の一方側に連続して床スラブが配置された鉄骨梁において、床スラブのコンクリートと定着する補強部材が、上フランジに接合されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開2016-23440号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 ところで、上記従来の床構造では、上記コンクリートの床スラブが上記上フランジを拘束するので、上記梁に対する横補剛材を不要にすることができる。一方、このように、上記床スラブで上記上フランジを拘束するため、この拘束を解くことになる配管用等の開口として大きな開口は極力形成しないようにしていた。 【0005】 この発明は、上記の事情に鑑み、梁の上フランジの上面にコンクリートの床スラブが設けられており、このコンクリートの床スラブで上記上フランジを拘束する床構造において、上記拘束を解くことになる開口として比較的大きな開口を形成することができる床構造を提供することを目的とする。」 「【発明を実施するための形態】 【0017】 以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。この実施形態の建物の床構造は、図1(A)および図1(B)に示すように、柱3に接続された大梁となるH形鋼梁1の上フランジ11の上面にコンクリートの床スラブ2が設けられており、このコンクリートの床スラブ2で上記上フランジ11を拘束して上記H形鋼梁1に対する横補剛を不要にする床構造である。例えば、上記上フランジ11の上面には、スタッド4が固定されている。 【0018】 そして、上記床スラブ2には上記H形鋼梁1の材軸方向上の幅がlbである開口10Aが上記H形鋼梁1の縁側に形成されている。この開口10Aは方形状を有しており、上記材軸方向に直交する2本の互いに平行な辺および上記材軸方向に平行な辺を有している。 【0019】 上記開口10Aが形成される箇所では、上記床スラブ2による上記上フランジ11の拘束が解かれる。上記開口10Aは、上記床スラブ2の作製時に形成することもあり、上記床スラブ2の作製後に形成することもある。 【0020】 上記開口10Aが形成された箇所には、上記H形鋼梁1の上フランジ11の移動を拘束するべく、2本の上フランジ拘束材5Aが、上記開口10Aの互いに平行な上記2本の辺に沿って設けられる。上記上フランジ拘束材5Aは、上記H形鋼梁1の下フランジ12には接合されずに上記上フランジ11に接合される。また、上記開口10Aにおける上記H形鋼梁1の材軸方向に平行な上記辺に沿って配置された連結部材6によって、上記2本の上フランジ拘束材5Aが互いに連結されている。 【0021】 また、図1(B)に示した例では、上記上フランジ拘束材5Aの本体部51は、溝形鋼や山形鋼等からなる。また、上フランジ拘束材5Aを上記H形鋼梁1に接合する部位には、主面が上記H形鋼梁1の材軸方向に直交するシャープレート52が設けられている。このシャープレート52の基端部は、例えば、上記上フランジ11の下面(下面には限らない)とウェブ13に溶接固定されている。そして、上記本体部51は、締結部材であるボルト・ナット53によって上記シャープレート52に固定されている。図示はしていないが、上記上フランジ拘束材5Aの反対側の端部も上記シャープレート52などを用いて上記H形鋼梁1と平行に配置される他の大梁或いは小梁に接合されている。 【0022】 上記の構成であれば、H形鋼梁1の上フランジ11の上面にコンクリートの床スラブ2が設けられており、このコンクリートの床スラブ2で上記上フランジ11を拘束する床構造において、上記開口10Aの形成で無くされる上記床スラブ2に代わって上記H形鋼梁1の上記上フランジ11の移動を拘束する上フランジ拘束材5Aを備えるので、上記拘束を解くことになる開口10Aとして比較的大きな開口を形成することができる。また、上フランジ拘束材5Aが上記H形鋼梁1の下フランジ12には接合されないので、当該上フランジ拘束材5Aを上記H形鋼梁1に接合する部位の材料を節約して低コスト化も図れる。また、上記上フランジ拘束材5Aが上記開口10Aの縁(辺)に沿って設けられていると、この開口10Aを有効に利用できるとともに、開口縁の欠け等の防止も図りやすくなる。 【0023】 次に、他の実施形態について説明していく。図2に示す床構造例では、上記上フランジ拘束材5Aの本体部51は例えば棒状部材(鉄筋等)から成る。そして、この本体部51は、溶接部54によって上記上フランジ11の下面に固定されている。固定箇所は下面に限らず、上フランジ11の上面或いは縁面としてもよい。」 「【0027】 これらの床構造においては、上フランジ拘束材5A、5Bの耐力RPtが数1で示される条件を備えるのが望ましい。この条件は、補剛材の必要補剛力についての規定に沿うものである。また、数1の角度θは、図1(A)に示した方形状の開口10Aであれば、90度となり、図4に示した直角二等辺三角形状の開口10Bであれば、45度となる。安全率βは、例えば、3.0とすることができる。 【数1】 [図:0001411355000001.jpg] 【0028】 なお、上フランジ拘束材5A、5Bを設けない場合においては、1つの開口における開口幅lbを区間とする横座屈細長比oλbは、数2で示される式を満足するものとする。 【数2】 [図:0001411355000002.jpg] 【0029】 ここで、床スラブ2の有効幅の内側に開口を設ける場合において、開口幅内では床スラブ2による上フランジ11の移動拘束が無いものと考え、この領域で部分的な横座屈による早期の耐力低下や開口周囲の床スラブ2の損傷を防止するために、上記開口の上限を規定することができる。上記開口を無補剛区間とした場合の弾性座屈解析等により、上フランジ11の圧縮降伏が上フランジ11の弾性横座屈よりも先行する条件について、H形鋼梁1の材軸方向の複数の開口幅lbの合計に制限を設けることができる。そして、各箇所の開口幅lbを横座屈区間とするH形鋼梁1の弾性横座屈モーメントoMe(数3の式参照)を、日本建築学会「鋼構造限界状態設計指針・同解説」に従って算定する。 【0030】 【数3】 [図:0001411355000003.jpg] 【0031】 ここで、床スラブ2による上フランジ11の横移動拘束のないH形鋼梁1の塑性限界細長比pλbは、数4の式で表される。なお、この数4の式では、図5に示すように、H形鋼梁1の端部側(M1、M2)の曲げモーメント分布は台形状になるが、安全側の式となるように、M2/M1=-1の一様の分布として算出している。ここで、両端の曲げモーメントは複曲率曲げのときを正としており、一様曲げモーメント分布の場合は負となる。 【0032】 【数4】 [図:0001411355000004.jpg] 【0033】 H形鋼梁1の塑性変形倍率が2以上となる条件を塑性限界細長比pλb以下と考えれば、開口幅lbを横座屈区間とするH形鋼梁1の横座屈細長比oλbは、数5で示される式を満足する必要がある。 【0034】 【数5】 [図:0001411355000005.jpg] 」 「 [図:0001411355000006.jpg] 」 イ 甲1の記載から認定される事項 (ア)認定事項1 上記アの【背景技術】としての【0002】には「両端部が柱に剛接合されるとともに、・・・床スラブが配置された鉄骨梁において、床スラブのコンクリートと定着する補強部材が、上フランジに接合されている」と記載され、【0004】には「上記従来の床構造では、・・・大きな開口は極力形成しないようにしていた。」と記載されている。そして、【0005】には「この発明は、上記の事情に鑑み、梁の上フランジの上面にコンクリートの床スラブが設けられており、このコンクリートの床スラブで上記上フランジを拘束する床構造において、上記拘束を解くことになる開口として比較的大きな開口を形成することができる床構造を提供することを目的とする。」と記載され、【発明を実施するための形態】として【0017】には「柱3に接続された大梁となるH形鋼梁1の上フランジ11の上面にコンクリートの床スラブ2が設けられており・・・」と記載されている。 そうすると、発明を実施するための形態としての「大梁となるH形鋼梁1」は、背景技術としての「両端部が柱に剛接合される」ことを前提とした「床スラブが配置された鉄骨梁」であると認められる。 よって、「大梁となるH形鋼梁1は両端部が柱3に剛接合されていること」(以下「認定事項1」という。)が認定できる。 (イ)認定事項2 上記アの図1(B)から、「スタッド4は頭付きスタッドである」(以下「認定事項2」という。)ことが看取できる。 (ウ)認定事項3 上記認定事項1を踏まえると、上記アの図1(A)から、「コンクリートの床スラブ2は両端部が柱3に剛接合された大梁となるH形鋼梁1の全長に設けられていること」(以下「認定事項3」という。)が看取できる。 (エ)認定事項4 上記アの図1(B)から、「上フランジ拘束材5Aの上面はコンクリートの床スラブ2の下面に接している」(以下「認定事項4」という。)ことが看取できる。 ウ 甲1発明 上記ア及びイから、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。なお、引用箇所の段落番号等を併記した。以下同様。 「大梁となるH形鋼梁1は両端部が柱3に剛接合され(認定事項1)、H形鋼梁1の上フランジ11の上面の全長にコンクリートの床スラブ2が設けられ、コンクリートの床スラブ2で上記上フランジ11を拘束して上記H形鋼梁1に対する横補剛を不要にする床構造であって、上記上フランジ11の上面には、頭付きスタッドであるスタッド4が固定されており(【0017】、認定事項2、認定事項3)、 上記床スラブ2には上記H形鋼梁1の材軸方向上の幅がlbである開口10Aが上記H形鋼梁1の縁側に形成され、開口10Aは方形状を有しており、上記材軸方向に直交する2本の互いに平行な辺および上記材軸方向に平行な辺を有し(【0018】)、 上記開口10Aが形成された箇所には、上記H形鋼梁1の上フランジ11の移動を拘束するべく、2本の上フランジ拘束材5Aが、上記開口10Aの互いに平行な上記2本の辺に沿って設けられ、上記上フランジ拘束材5Aは、上記H形鋼梁1の下フランジ12には接合されずに上記上フランジ11に接合され、上記開口10Aにおける上記H形鋼梁1の材軸方向に平行な上記辺に沿って配置された連結部材6によって、上記2本の上フランジ拘束材5Aが互いに連結されており(【0020】)、 上記上フランジ拘束材5Aの本体部51は、溝形鋼や山形鋼等からなり、上フランジ拘束材5Aを上記H形鋼梁1に接合する部位には、主面が上記H形鋼梁1の材軸方向に直交するシャープレート52が設けられており、シャープレート52の基端部は、上記上フランジ11の下面とウェブ13に溶接固定され、上記本体部51は、締結部材であるボルト・ナット53によって上記シャープレート52に固定され、上記上フランジ拘束材5Aの反対側の端部も上記シャープレート52などを用いて上記H形鋼梁1と平行に配置される他の大梁或いは小梁に接合され(【0021】)、上フランジ拘束材5Aが上記H形鋼梁1の下フランジ12には接合されず、上記上フランジ拘束材5Aが上記上記開口10Aの縁(辺)に沿って設けられ(【0022】)、上フランジ拘束材5Aの上面はコンクリートの床スラブ2の下面に接しており(認定事項4)、 上フランジ拘束材5Aの耐力RPtが補剛材の必要補剛力についての規定に沿う数1で示される条件を備える 【数1】 [図:0001411355000007.jpg] (【0027】) コンクリートの床スラブ2で上記上フランジ11を拘束して上記H形鋼梁1に対する横補剛を不要にする床構造(【0017】)。」(以下「甲1発明」という。) (2)甲2について 甲2の記載 「(請求項8) 上フランジ拘束材の耐力を、所定値以上に設定することは、当業者が当然検討し得ることであり、 請求項8に係る発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。」(「●理由2(進歩性)について」の項目) 「●理由3(明確性)について ・請求項8 請求項8に、「上記上フランジ拘束材の耐力RPtが数1で示される条件を備える」との記載があるが、当該記載は、床構造の設計方法を述べたものであり、当該記載により、請求項に係る発明(物の発明)である「床構造」自体のどのような形状や構造が特定されるのかが不明確である。」(「●理由3(明確性)について」の項目) (3)甲3について ア 甲3の記載 「【0010】 第1発明に係る鉄骨梁の補剛構造は、建造物に設けられる鉄骨梁の補剛構造であって、柱部材に連結されて梁部材となる主鉄骨梁と、前記主鉄骨梁に取り付けられる引張抵抗部材と、前記主鉄骨梁に取り付けられるコンクリートの床スラブとを備え、前記主鉄骨梁は、断面方向の上部に上フランジが形成されるとともに、前記上フランジにスタッドが設けられて、前記床スラブのコンクリートに前記スタッドを埋め込んだ状態で、前記床スラブの面内方向の側端部が前記上フランジに取り付けられて、前記引張抵抗部材は、前記上フランジが構面外に変形しようとするときの引張力に抵抗するものとして、前記主鉄骨梁の上部から前記床スラブの面内方向に延びて設けられることを特徴とする。」 「【0015】 第6発明に係る鉄骨梁の補剛構造は、第1発明~第3発明の何れかにおいて、前記引張抵抗部材は、前記主鉄骨梁の上部から、前記床スラブの面内方向の中間部まで延びて設けられるとともに、前記床スラブのコンクリートに埋め込まれる引張抵抗用スタッドが設けられることを特徴とする。」 「【発明を実施するための形態】 【0024】 以下、本発明を適用した鉄骨梁の補剛構造1を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。」 「【0027】 本発明を適用した鉄骨梁の補剛構造1は、梁部材2となる鉄骨梁の横座屈を防止するために設けられる。本発明を適用した鉄骨梁の補剛構造1は、図2に示すように、柱部材7に連結されて梁部材2となる主鉄骨梁3と、主鉄骨梁3に取り付けられる引張抵抗部材4と、主鉄骨梁3に取り付けられるコンクリートの床スラブ6とを備える。 【0028】 主鉄骨梁3は、断面略H形状に形成されたH形鋼等が用いられる。主鉄骨梁3は、断面方向の上部に上フランジ31が形成されて、下部に下フランジ32が形成されるとともに、上フランジ31と下フランジ32とを連結するウェブ33が形成される。 【0029】 主鉄骨梁3は、断面略矩形状に形成された角形鋼管等の柱部材7に、材長方向の両端部が接合されることで、柱部材7に連結されるものとなる。主鉄骨梁3は、例えば、上フランジ31、下フランジ32及びウェブ33の各々を、柱部材7の外面7a及び通しダイアフラム70に溶接接合又はボルト接合等することで、柱部材7に剛接合で連結される。 【0030】 主鉄骨梁3は、図3に示すように、上フランジ31の上面31aに、頭付スタッド等の複数のスタッド30が設けられる。主鉄骨梁3に設けられるスタッド30は、主鉄骨梁3の上フランジ31の上面31aに溶接等により打設されて、主鉄骨梁3の上フランジ31の上面31aから上方に向けて突出して設けられる。」 「【0034】 引張抵抗部材4は、圧縮抵抗を期待しないことから細長比を問わないため、例えば座屈軸における有効座屈長さの断面二次半径に対する比である有効細長比λbが250以上の略平板状に形成された平鋼を用いてよい。引張抵抗部材4は、これに限らず、引張抵抗のみ期待できる鋼製ワイヤー又は棒鋼等が用いられてもよく、また、必要に応じて、溝形鋼又はH形鋼等が用いられてもよい。 【0035】 引張抵抗部材4は、主鉄骨梁3の上部の上フランジ31に平鋼等が溶接等で接合されることで、主鉄骨梁3に取り付けられるものとなる。引張抵抗部材4は、これに限らず、主鉄骨梁3の上部に取り付けられた取付用鋼片等を介して取り付けられてもよい。」 「【0037】 引張抵抗部材4は、第1実施例において、頭付スタッド等の複数の引張抵抗用スタッド40が平鋼等の上面4aに設けられる。このとき、引張抵抗部材4に設けられる引張抵抗用スタッド40は、平鋼等の上面4aに溶接等により打設されて、平鋼等の上面4aから上方に向けて突出して設けられることで、床スラブ6のコンクリートに埋め込まれる。」 「【0041】 引張抵抗部材4は、図2に示すように、引張抵抗部材4となる平鋼等の上面4aに引張抵抗用スタッド40が設けられるもののほか、第2実施例において、図6に示すように、平鋼等の上面4aに引張抵抗用スタッド40が設けられなくてもよい。このとき、引張抵抗部材4は、図7に示すように、平鋼の代わりにワイヤー41が設けられてもよい。」 「【0043】 引張抵抗部材4は、図9に示すように、主鉄骨梁3の上部の上フランジ31から床スラブ6の面内方向αの中間部6bまで延びて設けられる場合に、特に、複数の引張抵抗用スタッド40が平鋼等の上面4aに設けられる。このとき、引張抵抗部材4に設けられる引張抵抗用スタッド40は、平鋼等の上面4aに溶接等により打設されて、平鋼等の上面4aから上方に向けて突出して設けられることで、床スラブ6のコンクリートに埋め込まれる。」 「【0049】 また、引張抵抗部材4は、第3実施例において、材長方向の他端が拘束されないものの、床スラブ6の中間部6bまで延びて設けられて、床スラブ6のコンクリートに引張抵抗用スタッド40が埋め込まれる。このとき、引張抵抗部材4は、引張抵抗用スタッド40による床スラブ6との拘束力Bを発揮することで、主鉄骨梁3の上フランジ31が構面外に変形しようとするときの引張力Tに抵抗Rするものとなる。 【0050】 なお、引張抵抗部材4は、第1実施例において、主鉄骨梁3の上フランジ31から直交梁20の上フランジ20a等まで架設されるとともに、床スラブ6のコンクリートに引張抵抗用スタッド40が埋め込まれるものとなる。このとき、引張抵抗部材4は、材長方向の両端が拘束されるとともに、引張抵抗用スタッド40による拘束力Bを発揮することで、引張力Tに抵抗Rする効果を向上させたものとなる。」 「【0057】 本発明を適用した鉄骨梁の補剛構造1は、特に、第3実施例において、引張抵抗部材4が床スラブ6の中間部6bまで延びて設けられるとともに、床スラブ6のコンクリートに引張抵抗用スタッド40が埋め込まれる。このとき、本発明を適用した鉄骨梁の補剛構造1は、引張抵抗部材4が負担する引張力Tを、安定的に耐力の発揮が見込める床スラブ6の中間部6bに伝達させて、主鉄骨梁3のスタッド30が負担する引張力Tが低減する。」 「 [図:0001411355000008.jpg] 」 「 [図:0001411355000009.jpg] 」 イ 甲3に記載された技術事項 上記アから、甲3には、以下の技術事項が記載されていると認められる。 「建造物に設けられる鉄骨梁の補剛構造1において(【0010】、【0024】)、柱部材7に連結されて梁部材2となる主鉄骨梁3と、主鉄骨梁3に取り付けられる引張抵抗部材4と、主鉄骨梁3に取り付けられるコンクリートの床スラブ6とを備え(【0027】)、主鉄骨梁3は、断面方向の上部に上フランジ31が形成されて、下部に下フランジ32が形成されるとともに、上フランジ31と下フランジ32とを連結するウェブ33が形成され(【0028】)、主鉄骨梁3は、上フランジ31の上面31aに、頭付スタッド等の複数のスタッド30が設けられ(【0030】)、引張抵抗部材4は、主鉄骨梁3の上部の上フランジ31に平鋼等が溶接等で接合されることで、主鉄骨梁3に取り付けられ(【0035】)、引張抵抗部材4は、頭付スタッド等の複数の引張抵抗用スタッド40が平鋼等の上面4aに設けられ床スラブ6のコンクリートに埋め込まれる(【0037】)こと。」(以下「甲3記載の技術事項」という。) (4)甲4について 甲4の記載 「 [図:0001411355000010.jpg] 」(126頁) 「 [図:0001411355000011.jpg] 」(235頁) 「 [図:0001411355000012.jpg] 」(236頁) (5)甲5について ア 甲5の記載 「【0021】 本発明の鉄骨梁の仕口構造は、鉄骨造りの建築物の床部分や天井部分等において、大梁を挟んで2本の小梁を突き合わせ状態で接合する際に適用することができる。図1には、本発明の一実施の形態である鉄骨梁の仕口構造1を、多層階倉庫の床部分(床組構造)2における仕口部に適用した場合を示す。 【0022】 図1に示すように、多層階倉庫の床部分2は柱(不図示)の間に掛け渡される複数の大梁3を有して構成されている。これらの大梁3は互いに平行に配置され、その間には小梁4が掛け渡されている。なお、図1においては、多層階倉庫の床部分2を構成する多数の大梁3と小梁4のうちの一部のみを示す。小梁4は大梁3を挟んで一直線状に並べて配置されており、大梁3を挟んだ2本の小梁4は、本発明の鉄骨梁の仕口構造1(以下、仕口構造1とする)により、大梁3の長手方向の中間部分に大梁3に対して直交する方向から突き合わせ状態で接合されている。」 「【0025】 大梁3を挟んだ一方側の小梁のウェブ4aは、その先端部分が大梁3の仕口部材5に板厚方向から重ねられ、当該重複部分には上下方向に並べて複数のボルト7が挿通されている。そして、これらのボルト7にナット(不図示)が締結されることで、小梁4のウェブ4aは大梁3の仕口部材5に接合されている。同様に、大梁3を挟んだ他方側の小梁4のウェブ4aも、その先端部分が大梁3の仕口部材5に板厚方向から重ねられ、当該重複部分には上下方向に並べて複数のボルト7が挿通されている。そして、これらのボルト7にナット(不図示)が締結されることで、小梁4のウェブ4aは大梁3の仕口部材5に接合されている。なお、これらのボルト7としては、例えば、高力ボルトを用いることができる。」 「【0030】 大梁3の上フランジ3bの上面には多数の頭付スタッド(スタッドジベル)11が溶接等の手段により固定されている。これらの頭付スタッド11は長手方向に所定の間隔を空けるとともに2列に並べて配置され、上フランジ3bの上面から上方に向けて突出している。同様に、小梁4の上フランジ4bの上面には、それぞれ多数の頭付スタッド(スタッドジベル)11が溶接等の手段により固定されている。これらの頭付スタッド11は長手方向に所定の間隔を空けて1列に並べて配置され、上フランジ4bの上面から上方に向けて突出している。なお、大梁3と小梁4に設けられる頭付スタッド11の上フランジ3b,4bの上面における配置は、上記した2列、1列の配置に限らず、必要に応じて設計により任意の配置で任意の個数設けることができる。」 「 [図:0001411355000013.jpg] 」(【図5】) イ 甲5に記載された技術事項 上記アから、甲5には、以下の技術事項が記載されていると認められる。 「鉄骨梁の仕口構造(【0021】)において、柱の間に掛け渡される複数の大梁3を有して構成され、大梁3は互いに平行に配置され、その間には小梁4が掛け渡されており(【0022】)、大梁3を挟んだ小梁のウェブ4aは、その先端部分が大梁3の仕口部材5に板厚方向から重ねられ、当該重複部分には上下方向に並べて複数のボルト7が挿通され、ボルト7にナットが締結されることで、小梁4のウェブ4aは大梁3の仕口部材5に接合されており、ボルト7としては、高力ボルトを用いており(【0025】)、 大梁3の上フランジ3bの上面には多数の頭付スタッド11が溶接等の手段により固定されており、同様に、小梁4の上フランジ4bの上面には、それぞれ多数の頭付スタッド(スタッドジベル)11が溶接等の手段により固定されている(【0030】)こと。」(以下「甲5記載の技術事項」という。) (6)甲6について ア 甲6の記載 「【0015】 図1及び図2は、それぞれ、本実施形態の梁の接合構造10の正面図及び斜視図である。 図1に示すように、大梁11(H鋼)の延在方向(図1の紙面に直交する方向)に対して、直交する方向(図1の左右方向)に延在する小梁15(H鋼)が配置されている。本実施形態では、大梁11を挟んで両側に対向するように2つの小梁15が配置されている。更に、本実施形態では、大梁11の上フランジと小梁15の上フランジとが面一となる高さで配置されている。 【0016】 大梁11には、板形状のガセットプレート12が溶接されている。ガセットプレート12は、大梁11の延在方向に対して直交する方向(小梁15の延在方向)で、かつ鉛直方向に延在するように配置されている。このガセットプレート12は、大梁11のウェブ、上フランジ及び下フランジと溶接されている。更に、ガセットプレート12は、中央上部が小梁15側に突出した取付部12aを備える。 【0017】 図2に示すように、ガセットプレート12の取付部12aは、小梁15のウェブの一面に高力ボルト13によって取り付けられている。更に、各小梁15の各下フランジには、矩形状のスプライスプレート16が取り付けられている。スプライスプレート16の一端部は、小梁15の下フランジに、高力ボルト17により接合されている。更に、スプライスプレート16の大梁11側の端部は、大梁11のウェブに突合せ溶接されている。 【0018】 図1に示すように、大梁11の上フランジと小梁15の上フランジの上方には、床スラブ20が設けられている。この床スラブ20は、大梁11及び小梁15に載置されたデッキプレート21を下面に備えている。床スラブ20は、デッキプレート21の上方にコンクリート22が打設されている。この床スラブ20のコンクリート22内には、上下2段の格子状に配置された鉄筋23と、立設された複数の頭付スタッドボルト25とが埋設されている。頭付スタッドボルト25の先端部は、小梁15の上フランジの上面に溶接されて固定されている。」 「 [図:0001411355000014.jpg] 」 イ 甲6に記載された技術事項 上記アから、甲6には、以下の技術事項が記載されていると認められる。 「大梁11(H鋼)の延在方向に対して、直交する方向に延在する小梁15(H鋼)が配置され、大梁11の上フランジと小梁15の上フランジとが面一となる高さで配置されている梁の接合構造10(【0015】)において、大梁11には、板形状のガセットプレート12が溶接され(【0016】)、ガセットプレート12の取付部12aは、小梁15のウェブの一面に高力ボルト13によって取り付けられており(【0017】)、大梁11の上フランジと小梁15の上フランジの上方には、床スラブ20が設けられ、床スラブ20のコンクリート22内には、上下2段の格子状に配置された鉄筋23と、立設された複数の頭付スタッドボルト25とが埋設され、頭付スタッドボルト25の先端部は、小梁15の上フランジの上面に溶接されて固定されている(【0018】)こと。」(以下「甲6記載の技術事項」という。) (7)甲7について ア 甲7の記載 「【0012】 (第1の実施形態) 図1~図3は、本発明の第1の実施形態に係る小梁端接合構造の施工工程を示す図である。まず、図1に示すように、H形鋼で構成される大梁1のウェブ11およびフランジ12,13に溶接されたシアプレート2と、H形鋼で構成され大梁1に交差する方向に延びる小梁3のウェブ31の端部とを、高力ボルト41を用いてボルト接合する。これによって、シアプレート2は、大梁1と小梁3とを相互に連結する。小梁3のウェブ31には、高力ボルト41を用いたシアプレート2とのボルト接合のためのボルト孔311と、後述する補強プレートのボルト接合のためのボルト孔312とが形成されている。 なお、大梁1および小梁3は、H形断面を有するものであればH形鋼には限られず、例えばH形断面を有する溶接部材で構成されてもよい。 【0013】 次に、図2に示すように、大梁1および小梁3の上にコンクリート床スラブ5を形成する。本実施形態において、コンクリート床スラブはデッキ合成スラブであり、コンクリート51と、鉄筋52と、デッキプレート53と、スタッド54とを含む。具体的には、大梁1および小梁3の上にデッキプレート53を載置し、デッキプレート53を貫通してスタッド54を立設した上で、鉄筋52を配置し、コンクリート51を打設する。これによって、コンクリート床スラブ5の自重が小梁3にかかる一方で、コンクリート51が硬化した後はスタッド54を介して小梁3がコンクリート床スラブ5に接合されるため、コンクリート床スラブ5にも小梁3の端部に生じる曲げモーメントが伝達される。 【0014】 次に、図3に示すように、小梁3のウェブ31に、高力ボルト42を用いて補強プレート6をボルト接合する。本実施形態においては、補強プレート6は、正面視において略矩形状(図3に示すものの場合は略正方形状)の板体状に形成されていて、この補強プレートの周端面をなす4面の端面が小梁3のウェブ31の略上下方向および略材軸方向にそれぞれ向いた状態で、複数の高力ボルト42によって小梁3のウェブ31のウェブ面に位置不動に接合される。」 「 [図:0001411355000015.jpg] 」(【図2】) イ 甲7に記載された技術事項 上記アから、甲7には、以下の技術事項が記載されていると認められる。 「H形鋼で構成される大梁1のウェブ11およびフランジ12,13に溶接されたシアプレート2と、H形鋼で構成され大梁1に交差する方向に延びる小梁3のウェブ31の端部とを、高力ボルト41を用いてボルト接合する小梁端接合構造の施工工程(【0012】)において、大梁1および小梁3の上にコンクリート床スラブ5を形成し、大梁1および小梁3の上にデッキプレート53を載置し、デッキプレート53を貫通してスタッド54を立設した上で、鉄筋52を配置し、コンクリート51を打設する(【0013】)こと。」 第4 当審の判断 1 申立理由1(進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「両端部が柱3に剛接合され」ること、「大梁となるH形鋼梁1」、「H形鋼梁1の上フランジ11の上面」、「頭付きスタッドであるスタッド4」、「コンクリートの床スラブ2」、「コンクリートの床スラブ2で上記上フランジ11を拘束して上記H形鋼梁1に対する横補剛を不要にする床構造」は、それぞれ本件発明1の「両端部が柱に剛接合される」こと、「鉄骨梁」、「該鉄骨梁の上フランジ上面」、「頭付きスタッド」、「コンクリート床スラブ」、「床スラブ付き鉄骨梁」に相当する。 また、甲1発明は「H形鋼梁1の上フランジ11の上面の全長にコンクリートの床スラブ2が設けられ」「、上記上フランジ11の上面には、頭付きスタッドであるスタッド4が固定されて」いることから、甲1発明では、「H形鋼梁1の上フランジ11の上面の全長に」「頭付きスタッドであるスタッド4が固定されて」おり、「頭付きスタッドであるスタッド4」により「H形鋼梁1」に「コンクリートの床スラブ2が設けられ」ているといえる。 そうすると、甲1発明は本件発明1の「該鉄骨梁の上フランジ上面に梁全長にわたって接合された頭付きスタッドを介して前記鉄骨梁に接合されたコンクリート床スラブとを有する」ことに相当する構成を有する。 (イ)甲1発明は「コンクリートの床スラブ2で上記上フランジ11を拘束して上記H形鋼梁1に対する横補剛を不要にする床構造であ」って「H形鋼梁1」の「上フランジ11」の「移動を拘束」する「上フランジ拘束材5A」が「下フランジ12には接合されずに上記上フランジ11に接合され」ているから、甲1発明は本件発明1の「下フランジの構面外変形が補剛されていない」ことに相当する構成を有する。 (ウ)甲1発明の「床スラブ2」に設けられる「開口10A」は、本件発明1の「コンクリート床スラブ」に設けられる「開口」に相当する。 また、甲1発明の「開口10A」が「方形状」であることは、本件発明1の「開口」が「四角形」であることに相当する。 また、甲1発明の「開口10A」について「H形鋼梁1の材軸方向上の幅がlbである」ことと、本件発明1の「開口」について「鉄骨梁の材軸方向の開口幅が900mm以上、かつ梁長さの0.2倍以下」であることとは、「開口」について「鉄骨梁の材軸方向の開口幅」を有する点で共通する。 また、甲1発明の「開口10A」について「H形鋼梁1の縁側に形成され」ることと、本件発明1の「開口」について「鉄骨梁の側面から梁材軸直交方向に梁長さの0.1倍の範囲において」「設けられ」ることとは、「開口」について「鉄骨梁の側面の近傍に設けられ」る点で共通する。 そうすると、本件発明1の「前記鉄骨梁の側面から梁材軸直交方向に梁長さの0.1倍の範囲において、前記鉄骨梁の材軸方向の開口幅が900mm以上、かつ梁長さの0.2倍以下の四角形もしくは円形の開口が前記コンクリート床スラブに設けられ」る点について、本件発明1と甲1発明とは「前記鉄骨梁の側面の近傍に、前記鉄骨梁の材軸方向の開口幅を有する四角形の開口が前記コンクリート床スラブに設けられ」る点で共通する。 (エ)甲1発明は「上記床スラブ2には上記H形鋼梁1の材軸方向上の幅がlbである開口10Aが上記H形鋼梁1の縁側に形成され」ており、「開口10Aは方形状」で「材軸方向に直交する2本の互いに平行な辺」を有し、「上記開口10Aが形成された箇所には、」「2本の上フランジ拘束材5Aが、上記開口10Aの互いに平行な上記2本の辺に沿って設けられ」「上記上フランジ11に接合され」ていることから、「2本の上フランジ拘束材5A」は、「H形鋼梁1」の「上記上フランジ11に接合され」、「開口10A」の「材軸方向に直交する2本の互いに平行な辺」「に沿って設けられ」ている。 そうすると甲1発明の「2本の上フランジ拘束材5A」は「開口10A」の「材軸方向上の幅」の端部付近に設けれているといえる。 ここで、甲1発明の「開口10A」の「材軸方向上の幅」、「上フランジ拘束材5A」は、それぞれ本件発明1の「前記開口の梁材軸方向開口幅」、「補強部材」に相当する。 また、甲1発明は「上記開口10Aが形成された箇所には、上記H形鋼梁1の上フランジ11の移動を拘束するべく、2本の上フランジ拘束材5Aが、上記開口10Aの互いに平行な上記2本の辺に沿って設けられ、上記上フランジ拘束材5Aは、上記H形鋼梁1の下フランジ12には接合されずに上記上フランジ11に接合され、上記開口10Aにおける上記H形鋼梁1の材軸方向に平行な上記辺に沿って配置された連結部材6によって、上記2本の上フランジ拘束材5Aが互いに連結されて」、「上記上フランジ拘束材5Aが上記開口10Aの縁(辺)に沿って設けられ」、「上フランジ拘束材5Aの耐力RPtが補剛材の必要補剛力についての規定に沿う下記数1で示される条件を備え」ていることから、甲1発明の「耐力RPtが補剛材の必要補剛力についての規定に沿う下記数1で示される条件を備え」ている「上フランジ拘束材5A」と、 【数1】 [図:0001411355000016.jpg] 本件発明1の下式(1)を満たす「補強部材」とは、 F≧1.15×Ms・D/(a×p) ・・・・ (1) (軸耐力について)「所定の式を満た」す「補強部材」である点で共通する。 また、甲1発明の「上フランジ拘束材5A」は「コンクリートの床スラブ2」に「形成され」た「開口10Aの縁(辺)に沿って設けられ、上フランジ拘束材5Aの上面はコンクリートの床スラブ2の下面に接している」ことから、甲1発明の「上フランジ拘束材5A」と本件発明1の「補強部材」とは、「コンクリート床スラブと接している」点で共通する。 よって、本件発明1の「前記開口の梁材軸方向開口幅の端部付近に、所定の式を満たし、かつ前記コンクリート床スラブと頭付きスタッドを介して接合されている補強部材が設けられ」る点について、本件発明1と甲1発明とは「前記開口の梁材軸方向開口幅の端部付近に、所定の式を満たし、かつ前記コンクリート床スラブと接している補強部材が設けられ」る点で共通する。 (オ)甲1発明の「上フランジ拘束材5Aを上記H形鋼梁1に接合する部位に」「設けられ」「基端部」が「上記上フランジ11の下面とウェブ13に溶接固定され」た「H形鋼梁1の材軸方向に直交するシャープレート52」は、本件発明1の「前記鉄骨梁の側面に接合された鋼板」に相当する。 また、甲1発明は「上記上フランジ拘束材5Aの本体部51は、溝形鋼や山形鋼等からな」っており、「溝形鋼」は、断面がコ字の形状であることは技術常識であって、上フランジと下フランジと両者に挟まれる部分とからなっている。 そうすると、「溝形鋼」からなる「上フランジ拘束材5Aの本体部51」であって「締結部材であるボルト・ナット53によって上記シャープレート52に固定され」る部分は、溝形鋼の上フランジと下フランジに挟まれる部分であるから、甲1発明の「本体部51」は、本件発明1の「前記補強部材のウェブ部分」に相当する。 また、甲1発明は「上記上フランジ拘束材の」「上記本体部51は、締結部材であるボルト・ナット53によって上記シャープレート52に固定され」ていることから、本件発明1の「前記鉄骨梁と前記補強部材が、前記鉄骨梁の側面に接合された鋼板と前記補強部材のウェブ部分との高力ボルト接合部でのみ接合されている」点について、本件発明1と甲1発明は「前記鉄骨梁と前記補強部材が、前記鉄骨梁の側面に接合された鋼板と前記補強部材のウェブ部分とのボルト接合部で接合されている」点で共通する。 上記(ア)~(オ)をふまえると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「両端部が柱に剛接合されると共に下フランジの構面外変形が補剛されていない鉄骨梁と、該鉄骨梁の上フランジ上面に梁全長にわたって接合された頭付きスタッドを介して前記鉄骨梁に接合されたコンクリート床スラブとを有する床スラブ付き鉄骨梁において、 前記鉄骨梁の側面の近傍に、前記鉄骨梁の材軸方向の開口幅を有する四角形の開口が前記コンクリート床スラブに設けられ、前記開口の梁材軸方向開口幅の端部付近に、所定の式を満たし、かつ前記コンクリート床スラブと接している補強部材が設けられ、前記鉄骨梁と前記補強部材が、前記鉄骨梁の側面に接合された鋼板と前記補強部材のウェブ部分とのボルト接合部で接合されている開口を有する床スラブ付き鉄骨梁。」 <相違点1> 「開口」に関して、 本件発明1では、「前記鉄骨梁の側面から梁材軸直交方向に梁長さの0.1倍の範囲において、前記鉄骨梁の材軸方向の開口幅が900mm以上、かつ梁長さの0.2倍以下」であるのに対して、 甲1発明では、そのように特定されていない点。 <相違点2> 「補強部材」に関して、 本件発明1では「前記コンクリート床スラブと頭付きスタッドを介して接合されて」おり、「鉄骨梁」に対しては「前記鉄骨梁の側面に接合された鋼板と前記補強部材のウェブ部分との高力ボルト接合部でのみ接合されている」「補強部材」が、 「F≧1.15×Ms・D/(a×p) ・・・・ (1) ただし、Ms=As×Ft×B/2 ここで、F :補強部材の軸耐力 Ms :頭付きスタッド接合部の一か所あたりの梁材軸周りの曲げ耐力 D:開口の梁材軸方向開口幅 a:鉄骨梁の上面から補強部材の中立軸位置までの距離 p:鉄骨梁の上面の頭付きスタッドの梁材軸方向ピッチ As:頭付きスタッド接合部一か所あたりの引抜に対する投影面積 Ft:コンクリートの引張強度 B:鉄骨梁の幅」を満たすことが特定されているのに対して、 甲1発明では、「上フランジ拘束材5A」が、「コンクリートの床スラブ2」と「頭付きスタッド」を介して接合されておらず、「H形鋼梁1」の「上フランジ11の下面とウェブ13に溶接固定」された「シャープレート52」に対して「上フランジ拘束材5A」の「本体部分51」と「高力ボルト接合部でのみ接合」されているか不明であり、「上フランジ拘束材5A」が満たす条件が 「【数1】 [図:0001411355000017.jpg] 」である点。 イ 判断 相違点1及び2は、密接に関連するため併せて検討することとする。 甲1発明では、「開口10A」(開口)を設ける範囲や大きさについて何ら特定されておらず、また、「上フランジ拘束材5A」(補強部材)は、「コンクリートの床スラブ2」(コンクリート床スラブ)に頭付きスタッドを介して接合されておらず、「H形鋼梁1」に「溶接固定」された「シャープレート52」に対して「本体部分51と高力ボルト接合部でのみ接合」されているか不明である。 そして、「コンクリートの床スラブ2」に対して接合されておらず、「H形鋼梁1」に溶接された「シャープレート52」に対して「ウェブ部分との高力ボルト接合部でのみ接合」されたものではない、甲1発明における「上フランジ拘束材5A」と、「コンクリート床スラブに頭付きスタッドを介して接合」されており、かつ、「鉄骨梁の側面に接合された鋼板」に対しては「ウェブ部分との高力ボルト接合部でのみ接合」された本件発明1の「補強部材」とでは、コンクリート床スラブ及び鉄骨梁との接合構造が異なるから、補強部材として受ける力がそもそも異なっている。 さらに、本件発明1では、開口を設ける範囲や大きさも特定したうえで、「補強部材」が満たす式を具体的に特定しているところ、コンクリート床スラブ及び鉄骨梁に対する接合構造が異なる甲1発明において、接合構造を変更し、かつ、開口の範囲を本件発明1のとおり設定し、「補強部材」が満たす式についても本件発明1の式とすることは、動機付けがなく示唆もない。 また、申立人が提出した甲3や甲5~7に、高力ボルト接合自体が記載されていても、甲1発明において、「上フランジ拘束材5A」の接合構造自体を、コンクリートの床スラブ2へ頭付きスタッドでの接合とし、端部はウェブ部分での高力ボルト接合のみとする構成へと変更をすることが、記載あるいは示唆されるものではない。 ウ 申立人の主張について (ア)申立人の具体的主張 申立人は上記相違点1及び2(当審合議体注:申立書では「相違点1~3」に対応している。)について、次の主張をしている。 「(イ)相違点1について ・・・ 即ち、本件特許発明においては、開口幅の下限の900mmにしても、上限の鉄骨梁の梁長さの 0.2倍以下にしても、定性的な説明のみで数値自体の定量的な設定根拠は何ら開示されていない。 ・・・ 甲1号証のこの説明は、上フランジ拘束材5A、5Bを設けない場合であるが(【0028】)、開口幅内では床スラブによる上フランジの移動拘束が無いとする考え方は安全サイドに立つものである。この考え方踏襲して、開口幅は、開口を無補剛区間として弾性座屈解析等により設定するものであり、それは日本建築学会「鋼構造限界状態設計指針・同解説」に従って算定できるものである。 そもそも開口幅は、設計諸元(階段やエレベーター等の開口を要するモノの寸法)によって決まるものであり、その開口幅が横座屈制御などの観点から問題無いかを公知の方法で算定して決めるものである。 即ち、開口幅は、設計者が適宜設定する事項である上、当業者であれば甲1号証に記載されているように日本建築学会「鋼構造限界状態設計指針・同解説」などの公知の方法により算定できるものであるから、本件特許発明の開口幅の上限値、下限値の数値自体、即ち相違点1は当業者が適宜設定できる程度の事項である。 (ウ)相違点2について 補強部材の軸耐力を所定値以上に設定することは、当業者が当然検討し得ることであり、当業者が適宜なし得る設計事項であることは明白である。 さらに、本件特許の請求項1に「下式(F(補強部材に軸耐力)に係る不等式)を満たし、かつ前記床スラブと頭付きスタッドを介して接合されている補強部材を設け』との記載は、床スラブ付鉄骨梁の設計方法を述べたものであり、この記載により請求項1に係る発明(物の発明である「床スラブ付鉄骨梁」自体を特定したものではないことは明白である。 この判断について特許庁の審査における判断例がある。例えば、甲1号証の請求項8には、本件特許請求項1と同様に、上フランジ拘束材(補強部材)の耐力が備える条件式(上記[甲1-1]の【数1】のRPtの式)が記載されているが、この請求項8に対し、甲1号証に係る第1回目の拒絶理由通知書(甲2号証)において審査官は以下のように断じている。 『●理由2(進歩性)について ・・・ (請求項8) 上フランジ拘束材の耐力を、所定値以上に設定することは、当業者が当然検討し得ることであり、請求項8に係る発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。 ●理由3(明確性)について ・請求項8 請求項8に、「上記上フランジ拘束材の耐力RPtが数1で示される条件を備える」との記載があるが、当該記載は、床構造の設計方法を述べたものであり、当該記載により、請求項に係る発明(物の発明)である「床構造」自体のどのような形状や構造が特定されるのかが不明確である。』 即ち、特許庁審査官は、上フランジ拘束材の耐力を所定値以上に設定することは、当業者が当然検討することであって、その条件式を満足する構成とすることは当業者が適宜なし得る設計的事項であると、断じている。さらに特許庁審査官は、そもそも、上フランジ拘束材(補強部材)の耐力を規定する式は床構造の設計方法を述べたものであり、請求項に係る床構造の発明(物の発明)の形状や構造が特定されるものではないと断じている。 以上のことから、補強部材の軸耐力を所定値以上に設定すること、即ち相違点2は、当業者が当然検討し得ることであり、当業者が適宜なし得る設計事項であることは明白である。さらに相違点2に係るF(補強部材に軸耐力)の不等式は、床スラブ付鉄骨梁の設計方法を述べたものであり、この記載により請求項1に係る発明(物の発明)である「床スラブ付鉄骨梁」自体を特定したものではないことは明白である。 なお、本件特許請求項1のFの不等式(式1)は甲1号証で備えてもよいとされる式(上記[甲1-1]の【数1】のRPtの式)と実質的に同じものである。このFの不等式自体が上記したように鉄骨梁の設計方法を述べたものにすぎないので、その点については請求項4(方法の発明)において説明する。」(申立書18頁12行~20頁25行) (イ)上記主張に対する判断 しかしながら、上記イで説示したとおり、甲1発明では、「開口10A」(開口)を設ける範囲や大きさについて何ら特定されておらず、また、「上フランジ拘束材5A」(補強部材)は、「コンクリートの床スラブ2」(コンクリート床スラブ)に頭付きスタッドを介して接合されておらず、「H形鋼梁1」に「溶接固定」された「シャープレート52」に対して「本体部分51と高力ボルト接合部でのみ接合」されているか不明であって、「コンクリートの床スラブ2」(コンクリート床スラブ)に設ける開口の範囲や大きさが異なること、及び、頭付きスタッドを介した接合か否かにより、鉄骨梁の上フランジ拘束効果の度合いも異なり、「上フランジ拘束材5A」(補強部材)に求められる軸耐力が異なることは明らかであって、甲1発明において、「開口10A」(開口)の範囲を、材軸方向に直交する方向(梁材軸直交方向)に0.1倍の範囲とし、材軸方向上の幅で900mm以上、かつH形鋼梁1の梁長さの0.2倍以下とする動機はなく、また、そうすることが適宜なし得ることであるといえる事情もない。 よって、甲1発明の数1の式については検討するまでもなく、本件発明1の相違点1及び2に係る構成は、甲1発明から当業者が容易に想到し得るものではなく、申立人の主張には理由がない。 エ 小括 したがって、本件発明1は、甲1発明、甲3記載の技術事項及び甲5~7記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(1)と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明4について 本件発明4は、「床スラブ付き鉄骨梁の補強方法」の発明であるが、本件発明1の「床スラブ付き鉄骨梁」を補強方法の発明として特定したものであり、本件発明1とカテゴリーが相違するのみで、実質的な発明特定事項は本件発明1と同じである。 したがって、上記(1)と同様の理由により、本件発明4は甲1発明、甲3記載の技術事項及び甲5~7記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)申立理由1(進歩性)についての結論 以上のとおりであるから、申立理由1はその理由がない。 2 申立理由2(サポート要件)について (1)判断基準 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)判断 本件発明1~4についての記載は上記第2のとおりである。 また、本件特許の発明の詳細な説明の【0008】によると、本件発明1~4の解決しようとする課題(以下「発明の課題」という。)は「鉄骨梁付近の床スラブに開口が設けられている場合においても十分な変形能力を発揮することができる、開口を有する床スラブ付き鉄骨梁およびその補強方法を得ること」である。 そして、発明の詳細な説明の【0013】には、「本発明によれば、鉄骨梁付近に大きな開口を有するコンクリート床スラブと頭付きスタッドを介して接合されている鉄骨梁においても、横座屈防止用の小梁、孫梁、アングルを省略しても、地震時に十分な変形能力を発揮することができる。」と記載され、【0015】には、「・・・そして、コンクリート床スラブ13における鉄骨梁5の近傍には、四角形の開口15が設けられ、開口15の梁材軸方向端部付近に、コンクリート床スラブ13と頭付きスタッド11を介して接合されている補強部材17が設けられている。」と記載され、【0016】には、柱に関する事項が記載され、【0017】~【0020】には、鉄骨梁に関する事項が記載されている。そのうえで、【0021】~【0022】には、コンクリート床スラブに関する事項、及び対象とする開口の寸法についての説明が記載され、【0023】~【0027】には、補強部材に関する事項が本件発明1に特定される数式の説明とともに記載され、【0028】には、「上記のように規定された補強部材17を設けることによって、開口15付近の鉄骨梁5上の頭付きスタッド11の負担する梁材軸周りの曲げモーメントの軽減と、開口15から少し離れた位置の頭付きスタッド接合部への荷重負担の集中の防止が可能となり、横座屈補剛部材としての小梁43、アングル45等(図5、図6参照)がなく、かつ開口15が存在する場合でも、地震時に鉄骨梁5の変形能力を確保できる。」と記載され、【0029】~【0030】には、対象とする開口の寸法との関係が説明されている。 また、【0034】~【0042】では、本件発明1における数式中の定数「1.15」が「1.11」である場合に、開口のないモデルと同様の変形能力が発揮された解析ケースが示されたうえで(【表1】中の「発明例2」及び【0040】)、定数が1.15倍以上であれば十分な変形能力が期待できることが示されている(【0042】)。 そうすると、少なくとも、 「前記鉄骨梁の側面から梁材軸直交方向に梁長さの0.1倍の範囲において、前記鉄骨梁の材軸方向の開口幅が900mm以上、かつ梁長さの0.2倍以下の四角形もしくは円形の開口が前記コンクリート床スラブに設けられ、前記開口の梁材軸方向開口幅の端部付近に、下式を満たし、かつ前記コンクリート床スラブと頭付きスタッドを介して接合されている補強部材が設けられ、前記鉄骨梁と前記補強部材が、前記鉄骨梁の側面に接合された鋼板と前記補強部材のウェブ部分との高力ボルト接合部でのみ接合されていることを特徴とする開口を有する床スラブ付き鉄骨梁。 F≧1.15×Ms・D/(a×p) ・・・・ (1) ただし、Ms=As×Ft×B/2 ここで、F :補強部材の軸耐力 Ms :頭付きスタッド接合部の一か所あたりの梁材軸周りの曲げ耐力 D:開口の梁材軸方向開口幅 a:鉄骨梁の上面から補強部材の中立軸位置までの距離 p:鉄骨梁の上面の頭付きスタッドの梁材軸方向ピッチ As:頭付きスタッド接合部一か所あたりの引抜に対する投影面積 Ft:コンクリートの引張強度 B:鉄骨梁の幅」 として構成された開口を有する床スラブ付き鉄骨梁であれば、鉄骨梁付近の床スラブに開口が設けられている場合においても十分な変形能力を発揮することができる、開口を有する床スラブ付き鉄骨梁およびその補強方法を得る、という課題を解決できると、認識できるといえる。。 したがって、本件発明1~4は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 よって、本件発明1~4に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 (3)申立人の主張について ア 申立人の具体的主張 申立人は、次の主張をしている。 「(6-1)請求項1~4について 本件特許発明の課題は、『本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、頭付きスタッドを介して鉄筋コンクリート床スラブと接合され、かつ横座屈防止用の小梁、孫梁、アングルが設けられていない鉄骨梁において、鉄骨梁付近の床スラブに開口が設けられている場合においても十分な変形能力を発揮することができる、開口を有する床スラブ付き鉄骨梁およびその補強方法を得ることを目的としている』([0008])ことである。 この課題を解決するため、請求項1および4において以下の式(1)を満足することが規定されている。 F≧1.15×Ms・D/(a×p) ・・・・(1) ここで、式(1)の右辺の式中の定数1.15について考察する。式(1)中の定数を1.15とした根拠は、本件特許の実施例で記載されたただ一つのモデルからFEM解析で求められたものであって、開口がない場合と同等以上の塑性変形倍率が得られる場合の係数が1.15以上であったということだけである([0042]、図4)。この関係が図4で説明されており、図4には表1の発明例1~3と思われる点(黒丸)が示されている。明細書中には説明はないが、表1の「軸耐力×上フランジ上面からの距離/開口部分のスタッド曲げ耐力」の値と図4の横軸との数値が同程度であることから、図4の点(黒丸)は発明例1~3と思われる。 即ち、本件特許請求項1および請求項4に記載の式(1)は、[0038]および表1に記載されたただ一つのモデルからFEM解析で求められたものであるのだから、これ以外の形態(モデル)の場合に、本発明の記載の条件(特に式(1))を満足したとしても、鉄骨梁付近の床スラブに開口が設けられて鉄骨梁が十分な変形能力を発揮できるかどうかは不明である。例えば、大梁の形状が異なる場合、例えば梁せいが1000mm以上の場合や、フランジ厚さが薄くなった場合、さらには梁長さ(梁スパン)が長くなりそれに応じて開口の梁軸方向長さが長くなった場合などで、開口部近傍の鉄骨梁の変形能力に影響を及ぼす因子は多い。これらの全ての場合において本件特許発明が課題を解決できるものがどうか、本件特許には何も示されていないし、ただ一つのモデルでの解析結果しか示されていないのでその示唆すらもない。」(申立書31頁28行~32頁25行) イ 上記主張に対する判断 しかしながら、本件発明1は、上記(2)で述べたとおり、「開口15の梁材軸方向端部付近に、コンクリート床スラブ13と頭付きスタッド11を介して接合されている補強部材17が設け」られたうえで、請求項1の要件である「F≧1.15×Ms・D/(a×p)」についてみると、【0034】~【0042】では、本件発明1における数式中の定数「1.15」が「1.11」である場合に、開口のないモデルと同様の変形能力が発揮された解析ケースが示されたうえで(【表1】中の「発明例2」及び【0040】)、定数が1.15倍以上であれば十分な変形能力が期待できることが示されている(【0042】)から、発明の課題を解決することができることは十分に理解できる。 また、本件明細書に記載された実施例は、基本とする梁の形状が1種類であったとしても特段、特殊な条件下で求められたものとも認められず、請求項1の上記の要件を導き出すにあたって、少なくとも1つの発明例(発明例3)を根拠とするものであるから、上記の要件を満たすことにより、発明の課題を解決するものと理解できる。 以上のとおりであるから、申立人の主張は採用できない。 3 申立理由3(明確性)について (1)判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (2)本件発明1~4について 本件発明1~4についての記載は上記第2のとおりであって、それ自体に不明確な記載は見当たらないし、申立人の具体的主張については、下記(3)に判断するとおり、採用することができない。 そして、本件発明1~4を特定する請求項1~4の記載が、本件明細書の記載や図面とも整合することを踏まえると、請求項1~4の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 (3)申立人の主張について ア 主張1について (ア)申立人の具体的主張 申立人は次の主張をしている。 「(7-1)請求項1~3について 上記(5-1-2)(エ)においても述べたように、本件特許の請求項1に「下式(F(補強部材に軸耐力)に係る不等式)を満たし、かつ前記床スラブと頭付きスタッドを介して接合されている補強部材を設け』との記載は、床スラブ付鉄骨梁の設計方法を述べたものであり、この記載により請求項1に係る発明(物の発明)である「床スラブ付鉄骨梁」自体を特定したものではないことは明白である。 この判断について特許庁の審査における判断例がある。例えば、甲1号証の請求項8には、本件特許請求項1と同様に、上フランジ拘束材(補強部材)の耐力が備える条件式(上記[甲1-1] の【数1】のRPtの式であり、前述したように本件特許請求項1の式(1)と実質同じ式)が記載されているが、この請求項8に対し、甲1号証に係る第1回目の拒絶理由通知書(甲2号証)において、審査官は以下のように断じている。 『●理由3(明確性)について ・請求項8 請求項8に、「上記上フランジ拘束材の耐力RPtが数1で示される条件を備える」との記載があるが、当該記載は、床構造の設計方法を述べたものであり、当該記載により、請求項に係る発明(物の発明)である「床構造」自体のどのような形状や構造が特定されるのかが不明確である。』 即ち、特許庁審査官も断じているように、本件特許の請求項1に記載の式(1)は補強部材の耐力を規定する式は床構造の設計方法を述べたものであり、請求項に係るスラブ床付き鉄骨梁の発明(物の発明)の形状や構造が特定されるものではない。請求項1に従属する請求項2および3も同様であるから、本件特許請求項1~3は、当業者は具体的な物(床スラブ付き鉄骨梁)が本件特許の請求項に記載の発明の範囲に入るか否かを理解できるようには記載されていないことは明白である。」(申立書33頁10行~同頁32行) (イ)上記主張に対する判断 しかしながら、請求項1における 「・・・下式を満たし、かつ前記コンクリート床スラブと頭付きスタッドを介して接合されている補強部材・・・ F≧1.15×Ms・D/(a×p) ・・・・ (1) ただし、Ms=As×Ft×B/2 ここで、F :補強部材の軸耐力 Ms :頭付きスタッド接合部の一か所あたりの梁材軸周りの曲げ耐力 D:開口の梁材軸方向開口幅 a:鉄骨梁の上面から補強部材の中立軸位置までの距離 p:鉄骨梁の上面の頭付きスタッドの梁材軸方向ピッチ As:頭付きスタッド接合部一か所あたりの引抜に対する投影面積 Ft:コンクリートの引張強度 B:鉄骨梁の幅」 との記載は、補強部材の軸耐力の数値範囲を特定していることが明確であるから、「床スラブ付き鉄骨梁」という物の発明を特定するうえで、請求項1の上記記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 よって、申立人の主張は採用できない。 イ 主張2について (ア)申立人の具体的主張 申立人は次の主張をしている。 「(7-2)請求項1~4について 本件特許明細書の[0035][表1]に本件特許発明の実施例で解析した5ケース(比較例1~2、発明例1~3)が記載されている。表1には各発明例の「軸耐力×上フランジ上面からの距離/開口部分のスタッド曲げ耐力」の値が記載されている。この「軸耐力×上フランジ上面からの距離/開口部分のスタッド曲げ耐力」の値は、本件特許請求項1および4に記載の式(1)(Fの不等式)の右辺の式中の定数1.15に相当するものである。即ち、本件特許発明は式(1)(Fの不等式)からも分かるように、「軸耐力×上フランジ上面からの距離/開口部分のスタッド曲げ耐力」の値が1.15以上のものが本発明例となる。 しかしながら、表1に記載の発明例1と発明例2は式(1)の定数に相当するものが1.15未満であり式(1)を満足しない。つまり、発明例1および発明例2は本件特許発明の発明例ではないことになる。 従って、本件特許発明に接した当業者は、何が本件特許発明の発明例で、何が発明例でないのか理解できないことは明白である。」(申立書34頁1行~同頁14行) (イ)上記主張に対する判断 しかしながら、表1に記載の発明例2は、「軸耐力×上フランジ上面からの距離/開口部分のスタッド曲げ耐力」の値が「1.11」である場合に、開口のないモデルと同等の変形能力が発揮されたことを示す解析ケースである(【0034】及び【0040】)。 そのうえで、【0041】~【0042】の記載を踏まえると、本件発明1~4においては、「軸耐力×上フランジ上面からの距離/開口部分のスタッド曲げ耐力」の値を「1.15」以上として十分な変形能力が期待できるものについて、式(1)を満足するものとして特定していることが明らかである。したがって、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (4)小括 以上のとおりであるから、申立理由3はその理由がない。 第5 むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700056

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  • 2024-700332異議申立 / 2025-03-17 / 訂正認容板状建築資材、積層板、および板状建築資材の製造方法
    共通の審決分類: 121・E04B、537・E04B
  • 2024-701072異議申立 / 2025-03-14 / 維持建築物用構造体
    共通の審決分類: 121・E04B、537・E04B
  • 2024-700186異議申立 / 2025-03-06 / 訂正認容段差を有する床スラブ付き鉄骨梁
    共通の審決分類: 121・E04B、537・E04B
  • 2023-701235異議申立 / 2025-02-07 / 訂正認容笠木用換気装置
    共通の審決分類: 121・E04B、537・E04B

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