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特許異議申立

2022-700651

建物の壁構造およびその構築方法

審判番号
2022-700651
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-054237
登録番号
7007094
請求日
2022年07月14日
審決日
2024年02月29日
公報発行日
2024年06月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】大和ハウス工業株式会社
  • 【権利者代理人】神保 泰三
  • 【異議申立人】大石 友子
審判長/審判官
  • 審判長 住田 秀弘
  • 審判官 居島 一仁
  • 審判官 佐藤 史彬
分類
P1651.113-YAA(E04B) / P1651.121-YAA(E04B) / P1651.537-YAA(E04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7007094号発明「建物の壁構造およびその構築方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7007094号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第7007094号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7007094号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成29年3月21日にされた特許出願であって、本件特許について、令和4年1月11日にその特許権の設定登録がされ、同月24日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後の特許異議の申立ての経緯は以下のとおりである。 令和4年 7月14日 :特許異議申立人 大石 友子(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て 同年 9月30日付け:取消理由通知書 同年12月 2日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年12月22日付け;手続補正指令 令和5年 1月12日 :訂正請求書の手続補正書の提出 同年 2月28日 :申立人による意見書の提出 同年 6月 2日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年 8月 7日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年10月11日 :申立人による意見書の提出 同年12月15日付け:訂正拒絶理由通知書 令和6年 1月19日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の手続補 正書の提出 なお、特許権者が令和5年8月7日に提出した訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされたことにより、令和4年12月2日に提出した訂正請求書による訂正の請求は取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。 第2 訂正の適否 1 訂正拒絶理由の概要 令和5年8月7日付け訂正請求書に対し、同年12月15日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は次のとおり。 訂正事項1及び2は、以下(1)及び(2)のとおり適法でない。 したがって、訂正事項1及び2に係る本件訂正は認められない。 (1) 訂正事項1 前記訂正事項1は、請求項1に「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して壁に固定される締結部材自体によって」とあるのを、「吸音性を有する吸音パネル自体が、2枚重ね貼りされるとともに、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材を貫通し、上記壁下地材に接触しないように固定される締結部材自体によって、」と訂正するものであるが、「吸音性を有する吸音パネル自体」を「吸音性を有する吸音パネル自体が、2枚重ね貼りされる」(以下「構成要件A」という。)とする訂正事項について、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0019】及び【0022】には、構成要件Aは記載されておらず、また、本件明細書等の他の箇所にも構成要件Aは記載されておらず、示唆する記載も見当たらず、自明ともいえないことから、構成要件Aを追加する訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正ではないものと認める。 よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものではないから、訂正事項1は認めることができない。 (2) 訂正事項2 前記訂正事項2は、請求項3に「請求項1または請求項2に記載の建物の壁構造において、」とあるのを、「吸音性を有する吸音パネル自体が、2枚重ね貼りされるとともに、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材に、当該壁面材を貫通しないことで上記壁下地材と接触しないように固定される締結部材自体によって、上記壁の下の床面から浮いた状態で当該壁に固定され、上記吸音パネルの重量が壁に付与される構造を有しており、」と訂正するものを含むものであるが、「吸音性を有する吸音パネル自体」を「吸音性を有する吸音パネル自体が、2枚重ね貼りされる」(以下「構成要件B」という。)とする訂正事項について検討するに、本件訂正請求書に、上記構成要件Bとする訂正の根拠について、本件明細書の段落【0019】及び【0022】としているが、前記(1)に示したとおり、これらに構成要件Bは記載されておらず、また、本件明細書等の他の箇所にも構成要件Bは記載されておらず、示唆する記載も見当たらず、自明ともいえないことから、構成要件Bを追加する訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正ではないものと認める。 よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものではないから、訂正事項2は認めることができない。 2 本件補正の適否 (1)本件補正の内容 令和6年1月19日付けの訂正請求書に係る手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)の7(2)訂正事項の記載から、訂正事項1及び訂正事項2について、下記のとおりの内容で補正するものである。 ア 訂正事項1に係る補正の内容 訂正事項1に「請求項1に「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して壁に固定される締結部材自体によって」とあるのを、「吸音性を有する吸音パネル自体が、2枚重ね貼りされるとともに、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材を貫通し、上記壁下地材に接触しないように固定される締結部材自体によって、」とします。」とあるのを、 「請求項1に「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して壁に固定される締結部材自体によって」とあるのを、「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材を貫通し、上記壁下地材に接触しないように固定される締結部材自体によって、」とします。」と補正する。 イ 訂正事項2に係る補正の内容 訂正事項2に「請求項3に「請求項1または請求項2に記載の建物の壁構造において、」とあるのを、「吸音性を有する吸音パネル自体が、2枚重ね貼りされるとともに、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材に、当該壁面材を貫通しないことで上記壁下地材と接触しないように固定される締結部材自体によって、上記壁の下の床面から浮いた状態で当該壁に固定され、上記吸音パネルの重量が壁に付与される構造を有しており、」とし、」とあるのを、 「請求項3に「請求項1または請求項2に記載の建物の壁構造において、」とあるのを、「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材に、当該壁面材を貫通しないことで上記壁下地材と接触しないように固定される締結部材自体によって、上記壁の下の床面から浮いた状態で当該壁に固定され、上記吸音パネルの重量が壁に付与される構造を有しており、」とし、」と補正する。 (2)本件補正の適否 訂正事項1に係る補正は、「吸音性を有する吸音パネル自体」について「2枚重ね貼りされる」とした訂正事項を削除するものであるから、訂正請求書の請求の趣旨の要旨を変更するものではない。 そして、訂正事項2に係る補正は、「吸音性を有する吸音パネル自体」について「2枚重ね貼りされる」とした訂正事項を削除するものであるから、訂正請求書の請求の趣旨の要旨を変更するものではない。 よって、本件補正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第131条の2第1項の規定に違反するものではないので、これを認める。 3 訂正の適否 前記2に示したとおり本件補正は認められるから、本件補正後の本件訂正の内容は、以下のとおりである。 (1) 本件補正後の訂正の内容 ア 訂正事項1 請求項1に「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して壁に固定される締結部材自体によって」とあるのを、「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材を貫通し、上記壁下地材に接触しないように固定される締結部材自体によって、」と訂正する。 請求項2及び4についても同様に訂正する。 イ 訂正事項2 訂正事項2は、次の訂正事項を含むものである。なお、請求項4についても同様に訂正する。 (ア) 訂正事項2-1 請求項3に「請求項1または請求項2に記載の建物の壁構造において、」とあるのを、「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材に、当該壁面材を貫通しないことで上記壁下地材と接触しないように固定される締結部材自体によって、上記壁の下の床面から浮いた状態で当該壁に固定され、上記吸音パネルの重量が壁に付与される構造を有しており、」と訂正する。 (イ) 訂正事項2-2 請求項3に「上記吸音パネルは断熱性と耐火性の少なくとも一方の特性を兼ねる」とあるのを、「上記吸音パネルは断熱性と耐火性の少なくとも一方の特性を兼ねており、且つ上記吸音パネルの面密度が9kg/m2以上である」と訂正する。 (2) 訂正の目的の適否について ア 訂正事項1 訂正事項1における「当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材を貫通し、上記壁下地材に接触しないように固定される締結部材」との訂正は、訂正前の請求項1の「壁」の構成及び「締結部材」による「吸音パネル」の「壁」への固定構造を具体的に特定し、さらに限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項2 (ア) 訂正事項2-1 訂正事項2-1における「請求項1または請求項2に記載の建物の壁構造において、」を「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材に、当該壁面材を貫通しないことで上記壁下地材と接触しないように固定される締結部材自体によって、上記壁の下の床面から浮いた状態で当該壁に固定され、上記吸音パネルの重量が壁に付与される構造を有しており、」とする訂正は、請求項2との引用関係の解消を行い、請求項1のみを引用するものに減縮するとともに、訂正前の請求項3の「壁」の構成及び「締結部材」による「吸音パネル」の「壁」への固定構造を具体的に特定し、さらに限定するものである。 (イ) 訂正事項2-2 訂正事項2-2における「上記吸音パネルは断熱性と耐火性の少なくとも一方の特性を兼ねる」とあるのを、「上記吸音パネルは断熱性と耐火性の少なくとも一方の特性を兼ねており、且つ上記吸音パネルの面密度が9kg/m2以上である」との訂正は、請求項3の「吸音パネル」の構成を具体的に特定し、さらに限定するものである。 (ウ) 訂正事項2の訂正の目的の適否についてのまとめ したがって、訂正事項2は、特許法120条の5第2項ただし書1及び4号のそれぞれに規定する特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 (3) 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について ア 訂正事項1 本件特許に係る願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」といい、特許請求の範囲及び図面とあわせて「本件特許明細書等」という。)の段落【0019】に「・・・そして、この実施形態においては、釘やビス等の締結部材3が、上記吸音材1を貫通して上記壁2に打ち込まれており、これによって、上記吸音材1が上記締結部材3を介して上記壁2に支持される。上記壁2は、例えば、壁下地桟2aと壁面材2bとからなり、図示しないビス等によって上記壁面材2bが上記壁下地桟2aに固定される。また、上記締結部材3は上記壁面材2bを貫通してもよいが、上記壁下地桟2aに干渉しないのが望ましい。」との記載がある。 一般的に「桟」の意味は、「1.板または蓋のそるのを防ぐため打ちつける横木、2.戸・障子の骨、3.戸じまりのために、戸にぬきさしできるようにとりつけた木のせん、4.床下などにわたす横木。ねだ」(出典:広辞苑 第6版)であり、「横木」や「骨」材のように離散的に配置されるものであるところ、「壁下地桟2a」も「壁面材2b」に対し離散的に配置されているものであるといえるから、「上記締結部材3は上記壁面材2bを貫通してもよいが、上記壁下地桟2aに干渉しないのが望ましい。」との記載は、「上記締結部材3」は「壁下地桟2a」が存在しない場所に「上記壁面材2bを貫通」するものであると解することができ、訂正事項1にある「当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材を貫通し、上記壁下地材に接触しないように固定される締結部材」に対応するものである。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 イ 訂正事項2 (ア) 訂正事項2-1 本件特許明細書の段落【0019】に「・・・そして、この実施形態においては、釘やビス等の締結部材3が、上記吸音材1を貫通して上記壁2に打ち込まれており、これによって、上記吸音材1が上記締結部材3を介して上記壁2に支持される。上記壁2は、例えば、壁下地桟2aと壁面材2bとからなり、図示しないビス等によって上記壁面材2bが上記壁下地桟2aに固定される。また、上記締結部材3は上記壁面材2bを貫通してもよいが、上記壁下地桟2aに干渉しないのが望ましい。」との記載があり、「上記締結部材3は上記壁面材2bを貫通してもよい」とは、「上記締結部材3」が「上記壁面材2bを貫通」しないものも含むものであり、本件特許明細書の他の記載において、「上記締結部材3」が「上記壁面材2bを貫通」しないものを排除する記載もなく、示唆するものもない。 (イ) 訂正事項2-2 本件特許明細書の段落【0022】に「・・・この場合の吸音材1の面密度は、11.7kg/m2であった(面密度は、9kg/m2以上、望ましくは10kg/m2以上であるのが望ましい。)。」との記載がある。 (ウ) 訂正事項2のまとめ したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 (4) 一群の請求項について 訂正前の請求項1~4は、請求項2~4が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項1~4である。 (5) 小括 前記のとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1及び4号に掲げる事項を目的とするものでありかつ、それぞれの訂正事項は、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 第3 本件特許について 前記のとおり、本件訂正請求による訂正は全て認められたので、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、各々を「本件発明1」等といい、請求項1ないし4に係る発明をまとめて「本件発明」という。)は、令和6年1月19日付け手続補正書に添付された訂正特許請求の範囲の、請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材を貫通し、上記壁下地材に接触しないように固定される締結部材自体によって、上記壁の下の床面から浮いた状態で当該壁に固定され、上記吸音パネルの重量が壁に付与されることを特徴とする建物の壁構造。 【請求項2】 請求項1に記載の建物の壁構造において、上記吸音パネルの表側と上記締結部材の頭部との間に上記頭部よりも大径の座金が介在されていることを特徴とする建物の壁構造。 【請求項3】 吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材に、当該壁面材を貫通しないことで上記壁下地材と接触しないように固定される締結部材自体によって、上記壁の下の床面から浮いた状態で当該壁に固定され、上記吸音パネルの重量が壁に付与される構造を有しており、上記吸音パネルは断熱性と耐火性の少なくとも一方の特性を兼ねており、且つ上記吸音パネルの面密度が9kg/m2以上であることを有することを特徴とする建物の壁構造。 【請求項4】 請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の建物の壁構造を構築する方法であって、上記壁の下の床面上にスペーサを配置する工程と、上記スペーサ上に上記吸音パネルを積み上げて当該吸音パネルを締結部材によって上記壁に固定する工程と、上記スペーサを取り外す工程とを含むことを特徴とする建物の壁構造の構築方法。」 第4 取消理由(決定の予告)の概要 訂正前の請求項1~4に係る特許に対して、当審が令和5年6月2日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 1 取消理由1(明確性) 次の2点において、請求項1及び3に係る発明、及び各請求項の記載を引用する請求項2及び4に記載された発明は、明確でない。 (1) 請求項1に「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材を貫通し、上記壁下地材に干渉しないように固定される締結部材」と記載されているが、「吸音パネルを貫通し」、さらに「壁面材」を貫通した「締結部材」が「壁下地材」とどのような配置等の状態により「干渉しない」、即ち少なくとも一部が重複する配置とならないかが、本件明細書の段落【0019】及び他の記載を参酌しても不明であるため、「締結部材」と「壁下地材」との配置関係が不明である。 (2) 請求項3に「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材に、上記壁下地材と干渉しないように固定される締結部材」と記載されているが、「吸音パネルを貫通し」た「締結部材」が「壁下地材」とどのような配置等の状態により「干渉しない」、即ち少なくとも一部が重複する配置とならないかが、本件明細書の段落【0019】及び他の記載を参酌しても不明であるため、「締結部材」と「壁下地材」との配置関係が不明である。 2 取消理由2(進歩性) 請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 3 証拠 (1) 申立人により、申立書とともに提出された証拠 甲第1号証 登録実用新案第3208847号公報 甲第2号証 特開2000-204695号公報 甲第3号証 実公平2-31602号公報 甲第4号証 特開2013-213362号公報 甲第5号証 特許第6068848号公報 甲第6号証 特開2017-53709号公報 甲第7号証 特開2013-11161号公報 甲第8号証 特開2001-115575号公報 (以下「甲第1号証」等を「甲1」等という場合がある。) (2) 当審において引用した文献 引用文献1:登録実用新案第3122395号公報 第5 取消理由(決定の予告)についての当審の判断 1 取消理由1(明確性)について (1) 請求項1について 本件補正により、請求項1は「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材を貫通し、上記壁下地材に接触しないように固定される締結部材」と記載されたものに訂正され、「壁面材」を貫通した「締結部材」が「壁下地材に接触しないように固定される」という「締結部材」と「壁下地材」との配置関係が明確になった。 (2) 請求項3について 本件補正により、請求項3は「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材に、当該壁面材を貫通しないことで上記壁下地材と接触しないように固定される締結部材」と記載されたものに訂正され、「吸音パネルを貫通し」た「締結部材」が「壁面材を貫通しない」ものであって「壁下地材と接触しない」配置関係であることが明確になった。 (3) 明確性についての小括 したがって、請求項1及び3に係る発明、及び各請求項の記載を引用する請求項2及び4に記載された発明は明確である。 2 取消理由2(進歩性)について (1) 各甲号証の記載 ア 甲1 (ア) 甲1の記載 甲1には以下の記載がある(下線は、当審で付加した。以下、同様。)。 a 段落【0008】~【0010】 「【0008】 ただし、ここでいう「高圧縮フェルト」は、「高密度フェルト」とも呼ばれるものであり、具体的には例えば、ポリエステル等の繊維を高圧縮加工することによって、高密度(具体的には、密度が140kg/m3~280kg/m3)としたフェルトである。 また、ここでいう「基準撓み量」とは、図19(a)に示されるように、長辺が800mm、短辺が600mmの長方形の板材の一方の長辺を水平に保持した際の、これと対向する他方の長辺の撓み量(一方の長辺に対する他方の長辺の垂下量)hにより定義される値である。なお、該撓み量hは、水平に保持される側の辺(ここでは長辺)の寸法にはほとんど依存しない。つまり、上記の例において、長辺が800mmより短い(あるいは、長い)場合であっても、該撓み量hはほとんど変化しない。 【0009】 高圧縮フェルトは、これに4mm以上の厚みを持たせることで、優れた吸音性を有するものとなる。したがって、上記考案に係る板材を、例えば、壁等に配設しておけば(すなわち、壁に取り付けたり、床や天井に敷いたり、天井から吊り下げたりしておけば)、該板材によって室内の音が吸収され、外部に音が漏れにくくなる。すなわち、該板材を吸音材として用いることができる。また、該板材によって音が吸収されることで、壁等による音の反響が低減され、室内の音響環境を良好なものとすることもできる。 また、4mm以上の厚みを有する高圧縮フェルトは、吸音性だけでなく、クッション性や断熱性にも優れている。したがって、上記考案に係る板材を壁等に配設すると、該板材によって室内の衝撃が吸収されて外部に振動が伝わりにくくなるとともに、室内の安全性や保温性も高まる。すなわち、該板材をクッション材、あるいは、保温材として用いることもできる。 【0010】 また、高圧縮フェルトは皮膚に直接触れても安全であるので、該板材を壁等に配設して例えば吸音材(あるいは、クッション材、保温材)として用いるにあたって、該板材を別部材で覆う必要がなく、吸音材等の重量が重くなることがない。したがって、その使用場所が限定されにくい。」 b 段落【0031】 「【0031】 上述したとおり、板材1は、厚みdが4mm以上の高圧縮フェルトにより形成されるところ、高圧縮フェルトは、これに4mm以上の厚みdを持たせることで、優れた吸音性を有するものとなる。したがって、板材1を、例えば、壁6等に配設しておけば(すなわち、壁6に取り付けたり、床7や天井に敷いたりしておけば)、板材1によって室内の音が吸収され、外部に音が漏れにくくなる。すなわち、板材1を吸音材として用いることができる。また、板材1によって音が吸収されることで、壁6等による音の反響が低減され、室内の音響環境を良好なものとすることもできる。したがって、板材1は、例えばテレビやステレオ等の音響設備や楽器等が置かれた部屋の壁6(特に、音響設備等の背面側の壁6)等に配設して用いるのに好適である。 さらに、4mm以上の厚みdを有する高圧縮フェルトは、吸音性だけでなく、クッション性や断熱性にも優れている。したがって、板材1を壁6等に配設すると、板材1によって室内の衝撃が吸収されて外部に振動が伝わりにくくなるとともに、室内の安全性や保温性も高まる。すなわち、板材1をクッション材、あるいは、保温材として用いることもできる。したがって、板材1は、例えば子供部屋の壁6等(特に、床7)に配設して用いるのに好適である。」 c 段落【0046】 「【0046】 付加加工3:原板の一方の主面(一方の主面に凹凸により模様11が形成されている場合は、それとは逆の主面)に、スペーサー部材12を配設する(スペーサー配設加工)。 図7(a)には、スペーサー部材12が配設された板材1(1c)が例示されている。ここに示されるように、この板材1(1c)は、その一方の主面の四隅付近に、スペーサー部材12が配設されている。スペーサー部材12としては、所定の厚みを有するものであればどのようなものであってもよい。例えば、フェルト等を50mm角以下のブロック状に形成したものをスペーサー部材12として用いてもよいし、原板を該ブロック状に型抜きした型抜きパーツをスペーサー部材12として用いてもよい。このようなスペーサー部材12を、例えばグルーガン等を用いて、原板の一方の主面に樹脂で粘着すればよい。 図7(b)には、板材1(1c)がピン2を用いて壁6に取り付けられた状態が示されている。ここに示されるように、板材1(1c)が壁6に取り付けられたときに、板材1(1c)と壁6(より具体的には、板材1(1c)におけるスペーサー部材12が設けられている側の主面と、該板材1(1c)が配設される壁面)が僅かに(すなわち、スペーサー部材12の厚み分だけ)離間した状態となる。したがって、板材1(1c)から壁6に音や衝撃等が伝わりにくい、ひいては、外部に音や振動等が特に伝わりにくい。」 d 段落【0061】及び【0062】 「【0061】 また、上記の実施形態に係る板材1において、図16に示されるように、一方の主面(一方の主面に凹凸により模様11が形成されている場合は、それとは逆の主面)の例えば四隅付近に、板状の磁石13を配設しておき、その磁力を利用して板材1を金属の壁6等に取り付けるようにしてもよい。この場合、磁石13は、板材1の主面に対して接着剤等を用いて貼付固定してもよいし、板材1の主面に対して埋設固定しても良い。前者の場合、板材1が該壁6に取り付けられたときに、板材1と壁6が僅かに(すなわち、磁石13の厚み分だけ)離間した状態となるので、板材1から壁6に音や衝撃等が伝わりにくい、ひいては、外部に音や振動等が特に伝わりにくい。すなわち、磁石13がスペーサー部材としても機能する。磁石13を用いて板材1を壁6等に取り付ける構成によると、板材1の壁6等に対する取り付けおよび取り外しを容易に行うことができる。また、配設位置の変更も容易に行うことができる。 【0062】 また、板材1を壁6等に取り付けるにあたって、凹型の磁石(雌磁石)とこれとはまり合う凸型の磁石(雄磁石)からなる一対の磁石(所謂、マグネットホック)を用いてもよい。この場合、例えば、雄磁石および雌磁石のうちの一方を板材1に、他方を壁6に、それぞれ配設しておき、それらの磁力を利用して板材1を壁6等に取り付けるようにすればよい。マグネットホックを用いて板材1を壁6等に取り付ける構成によると、金属に限らずどのような材質の壁6等にも板材1を取り付けることができる。また、板材1の取り付けおよび取り外しを容易に行うことができる。さらに、板材1が壁6等に対して位置ずれを起こすことも防止できる。」 e 図2及び図7 「【図2】 [図:0001411236000001.jpg] 【図7】 [図:0001411236000002.jpg] 」 上記cの記載を踏まえると、図2及び図7からは、以下の点を看取することができる。 「板材1は、板材1を貫通して、壁6に固定されるピン2によって、壁6の下の床面から浮いた状態で当該壁6に固定されている点。」 (イ) 甲1発明及び甲1方法発明 上記(ア)より、甲1には、次の2つの発明(以下、それぞれを「甲1発明」、「甲1方法発明」という。)が記載されている。 (甲1発明) 「4mm以上の厚みを有する高圧縮フェルトは、吸音性だけでなく、断熱性にも優れていて、板材1は、厚みdが4mm以上であって密度が140kg/m3~280kg/m3の高圧縮フェルトにより形成され、板材1を、壁6に配設して、板材1によって室内の音が吸収され、板材1を吸音材として用いることができ、板材1は、板材1を貫通して、壁6に固定されるピン2によって、壁6の下の床面から浮いた状態で当該壁6に固定されている構造。」 (甲1方法発明) 「甲1発明の構造を構築する方法。」 イ 甲2 (ア) 甲2の記載 甲2には以下の記載がある。 a 段落【0002】 「【0002】 【従来の技術】建物の地階の機械室の壁面には、図6に示すように、グラスウールなどの吸音材19が貼り付けられて、消音機能を果たしている。この吸音材19の取り付けは躯体型枠の脱型後にピン20などによって取り付けるため以下の問題がある。」 b 【図6】 「 [図:0001411236000003.jpg] 」 上記(ア)の記載を踏まえると、図6からは、以下の点を看取することができる。 「吸音材19は、吸音材19を貫通して、壁面に固定されるピン20によって、壁面の下の床面から浮いた状態で当該壁面に固定されていること。」 イ 甲2発明及び甲2方法発明 前記アより、甲2には、次の2つの発明(以下、それぞれを「甲2発明」、「甲2方法発明」という。)が記載されている。 (甲2発明) 「建物の地階の機械室の壁面に、グラスウールの吸音材19が貼り付けられ、吸音材19は、吸音材19を貫通して、壁面に固定されるピン20によって、壁面の下の床面から浮いた状態で当該壁面に固定されている、建物の地階の機械室の壁面の構造。」 (甲2方法発明) 「甲2発明の構造を構築する方法。」 ウ 甲3 (ア) 甲3の記載 甲3には以下の記載がある。 a 5欄8行-20行 「先ず、第1図は、本考案の一実施例であるインシユレーシヨンアンカー10によつて、発泡ポリスチレン、発泡ウレタン、グラスウール、ロツクウール等の所定厚さの断熱材12を、取付面であるコンクリート壁14の表面16に固定した状態を示す断面図である。このインシユレーシヨンアンカー10は、第2図の分解図から明らかなように、アンカー本体18とデイスク部材20とから成り、断熱材12を貫通してコンクリート壁14に穿設された取付孔22にアンカー本体18が固定されることにより、デイスク部材20によつて断熱材12がコンクリート壁14の表面16に押し付けられるようになつている。」 b 8欄41行-9欄1行 「さらにまた、前記実施例では、インシユレーシヨンアンカー10が断熱材12を固定する場合について説明したが、このインシユレーシヨンアンカー10は、防音材や断熱防音材を固定する際にも同様に使用し得ることは勿論である。」 c 第2図 「 [図:0001411236000004.jpg] 」 上記aの記載を踏まえると、第2図からは、以下の点を看取することができる。 「断熱材12の表側とアンカー本体18の頭部の間に、頭部よりも大径のデイスク部材20が介在されている点。」 (イ) 甲3記載技術 上記(ア)より、甲3には、次の技術(以下「甲3記載技術」という。)が記載されている。 (甲3記載技術) 「インシユレーシヨンアンカー10によつて、断熱材12を、取付面であるコンクリート壁14の表面16に固定する構造において、インシユレーシヨンアンカー10は、アンカー本体18とデイスク部材20とから成り、断熱材12の表側とアンカー本体18の頭部の間に、頭部よりも大径のデイスク部材20が介在されていて、インシユレーシヨンアンカー10は、防音材や断熱防音材を固定する際にも同様に使用し得る点。」 エ 甲4 (ア) 甲4の記載 甲4には以下の記載がある。 a 段落【0014】 「【0014】 吸音材10としては、外部からの音を吸収するために、吸音性能を有する材料で構成すればよいが、本実施形態の吸音パネル1を、吸音性能に加えて、断熱性能をも有するものとすることができるという観点より、多孔質材料から構成することが好ましい。また、このような多孔質材料としては、たとえば、グラスウールやロックウール等の無機繊維系多孔質材料、ポリエステルウール(PETウール)やセルロースマットなどの有機繊維系多孔質材、羊毛等の天然繊維系多孔質材などが挙げられ、材料コストや難燃性等の点から、特に無機繊維系多孔質材料が好ましく使用できる。」 b 段落【0026】 「【0026】 加えて、本実施形態の吸音パネル1によれば、それ自体が優れた吸音性能を有するため、別途、吸音板を設ける必要がなく、そのため、製造工程やコストの削減が可能となる。特に、本実施形態の吸音パネル1を構成する吸音材10として、多孔質材などの吸音性能に加えて、断熱性能を有する材料を用いることにより、吸音パネル1を吸音性能および断熱性能を有するものとすることができ、これにより、別途、吸音板を設けることなく、吸音性および断熱性に優れ、各種建築構造物に好適な外壁材を提供することができる。」 (イ) 甲4記載技術 上記(ア)より、甲4には、次の技術(以下「甲4記載技術」という。)が記載されている。 (甲4記載技術) 「吸音パネル1を構成する吸音材10として、多孔質材などの吸音性能に加えて、断熱性能を有する材料を用いることにより、吸音パネル1を吸音性能および断熱性能を有するものとすることができ、多孔質材料としては、難燃性等の点から、特に無機繊維系多孔質材料が好ましい点。」 オ 甲5 (ア) 甲5の記載 甲5には以下の記載がある。 a 段落【0001】~【0003】 「【0001】 本発明は、軽量であると共に防音機能及び換気性に優れている遮音パネル及びこれを備えた防音構造並びに防音室に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、軽量化や剛性を高める素材として、いわゆるハニカムコアと呼ばれる複数の中空筒状構造体がパネル内部の充填材として広く利用されている(特許文献1及び特許文献2参照)。このハニカムコアは、パネルの構造強度(特に圧縮強度)の強化と軽量化とに寄与する構造体として広く知られている。 しかしながら、このハニカムコアを用いたハニカムパネルは、ハニカム構造自体が音の橋(サウンドブリッジ)となって振動を伝達するので、遮音効果を発揮し難いと考えられている。このため、従来の遮音パネルでは、板状材料やシート状材料を積層して重量を付加したり、パネル内部にグラスウールやロックウールなどの吸音材を充填し、遮音性能を高めている。 【0003】 また、一重板(単板又は積層板)のパネルの場合では、重量を2倍にすると遮音性能がおよそ5dB上昇するという質量則に規制されるので、遮音性能を高めるためには板を重くせざるを得ない。例えば、30dB(at500Hz)の遮音性を有するパネルの重量が20kg/m2とすれば、このパネルの遮音性能を40dB(at500Hz)にするためには、パネルの重量を80kg/m2にする必要がある。」 (イ) 甲5記載事項 上記(ア)より、甲5(特に段落【0003】を参照。)には、次の技術(以下「甲5記載技術」という。)が記載されている。 (甲5記載技術) 「一重板(単板又は積層板)のパネルの場合では、重量を2倍にすると遮音性能がおよそ5dB上昇するという質量則に規制され、例えば、30dB(at500Hz)の遮音性を有するパネルの重量が20kg/m2とすれば、このパネルの遮音性能を40dB(at500Hz)にするためには、パネルの重量を80kg/m2にする必要がある点。」 カ 甲7 (ア) 甲7の記載 甲7には以下の記載がある。 a 段落【0032】 「【0032】 以上いずれの実施形態においても、第1層の樹脂製化粧フィルム1の下に第2層として金属製薄板3が配置されるため、十分な表面強度が得られ、また、硬質不燃性ボード5が配備されることで、壁面としての強度が確保され、全体的に不燃性、準不燃性又は難燃性資材で構成されているために、十分な耐火性能を有する吸音パネルとなる。また、硬質不燃性ボード5のすべての又は一部の大径孔6内に環状の耐火性熱膨張材11が装填されることで、十分な防火性能を備えたものとなる。」 (イ) 甲7記載技術 上記(ア)より、甲7には、次の技術(以下「甲7記載技術」という。)が記載されている。 (甲7記載技術) 「吸音パネルにおいて、全体的に不燃性、準不燃性又は難燃性資材で構成されていることによって、十分な耐火性能を有する吸音パネルとなる点。」 キ 引用文献1 (ア) 本件特許の出願前に発行された登録実用新案第3122395号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。 a 段落【0002】~【0004】 「【0002】 従来は、石膏ボード等の壁に重量物を取り付ける場合は、図7の様に木造の場合は石膏ボード等の裏側にある木材等のネジの効く下地を探しネジを使い固定していた。この方法は下地を探すのに専門的な知識が必要で取り付けたい場所に下地がない場合もあり、さらに取り外した場合のネジ穴も大きく残った。そして木構造意外の構造では更に困難であった。また石膏ボード等の壁に物を取り付ける方法としては図8の様なフック付き斜めピンにより、小さい飾り棚や絵などを吊り下げる方法で取り付けしている。この方法では荷重が大きいとピンに回転力が働き、重量のある棚や大きい荷重を支える手摺の取り付けは不可能であった。 【考案の開示】 【考案が解決しようとする課題】 【0003】 しかしながら、以上の従来の技術では、取り外し後のネジ穴の補修の問題もあり、下地を探す専門的な技術の問題もあり、手摺下地等を石膏ボード等の壁に取り付けることは難しかった。そこでこの考案は石膏ボード等の壁の裏側にある下地に関係なく、ハンマーとドライバーで取り付けられる手摺下地等の石膏ボード壁への取り付け工法を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0004】 以上の課題を解決するために、請求項1の考案は、手摺下地をピンを通す下穴を開けた鉄板等を使って補強して、複数の鋼鉄等の充分に強度があるピンを、上部板に斜め40度から60度下向きに打つ事により石膏ボード等の壁に取り付け、手摺取り付け部分と上部の鋼鉄等のピンとの距離を離すことにより、荷重に耐えられることを特徴とする。さらに請求項2の考案は複数のピンを上枠板上面に打ち込み棚本体及積載物の重量を支えるが,更に横からの力に対抗して棚の下部枠板、及び左右枠板を石膏ボード等に固定する為に、下部には斜め45度程度上向きに、複数のネジ付きピンを鉄板等で補強された下部枠板に取り付け、左右部分も同様に内向きに複数のネジ付きピンを鉄板等で補強された部分に取り付け、手摺下地等を石膏ボードに固定するが、このネジ付きピンは先端部分がピンでありハンマーで打ち込み、頭部はネジをドライバーでねじ込む為、振動等で抜ける事はなく、手摺下地に下から持ち上げる力や、左右に振る力、壁に直角に働く力等が働いた時に、このピンで対抗できることを特徴とする請求項1の手摺下地等の石膏ボード壁への取り付け工法。」 b 段落【0007】 「【0007】 この考案は手摺下地等の石膏ボード壁等への取り付け構造であるが、部材の形態を変えると靴棚や他の収納棚にも応用して使える。また請求項2のネジ付きピンは、上向きにも下向きにも横向きにも使えるので、ベニヤ板や木板等を石膏ボード等に強固に固定する為に使えるので下地木材等のない石膏ボードの壁に薄型テレビ等の取り付け用としても使用可能である。 そしてこの実施例の手摺下地の材料は木と鉄であるが、強度を保つ事が出来れば木の部分は強化プラスチックやグラスファイバー等、鉄の部分はステンレススチール等の他の材料でも製作可能である。」 (イ) 引用文献1記載技術 上記(ア)より、引用文献1には、次の技術(以下「引用文献1記載技術」という。)が記載されている。 (引用文献1記載技術) 「石膏ボード等の裏側にある木材等のネジの効く下地からなる壁構造に重量物を取り付ける際に、手摺下地をピンを通す下穴を開けた鉄板等を使って補強して、複数の鋼鉄等の充分に強度があるピンを、上部板に斜め40度から60度下向きに打つ事により石膏ボード等の壁に取り付けること。」 ク 周知技術 (ア) 周知技術1 引用文献1に記載されているように、次の技術は、本件特許出願前に周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。 「石膏ボード等の裏側にある木材等の下地からなる壁構造に、ピンを打つ事により石膏ボード等の壁に重量物を取り付けること。」 (イ) 周知技術2 甲4記載技術及び甲7記載技術のように、次の技術は、本件特許出願前に周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。 「吸音パネルを難燃性の材料によって形成し、耐火性の特性を備えたものとすること。」 (ウ) 周知技術3 甲5記載技術のように、次の技術は、本件特許出願前に周知の技術(以下「周知技術3」という。)である。 「一重板(単板又は積層板)のパネルの場合では、重量を2倍にすると遮音性能がおよそ5dB上昇するという質量則がある点。」 (2) 甲1を主引例とする進歩性について ア 本件発明1 (ア) 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 a 甲1発明の「吸音性だけでなく、断熱性にも優れてい」る、「厚みdが4mm以上であって密度が140kg/m3~280kg/m3である高圧縮フェルトにより形成され」る「板材1」は、本件発明1の「吸音性を有する吸音パネル」に相当する。 b 本件発明1の「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材を貫通し、上記壁下地材に接触しないように固定される締結部材自体によって、上記壁の下の床面から浮いた状態で当該壁に固定され」ることと、甲1発明の「板材1は、板材1を貫通して、壁6に固定されるピン2によって、壁6の下の床面から浮いた状態で当該壁6に固定されている」ことは、「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して壁に固定される締結部材自体によって上記壁の下の床面から浮いた状態で当該壁に固定され」る点で共通する。 c 甲1発明の「板材1は、」「壁6の下の床面から浮いた状態で当該壁6に固定されている」ものであり、「板材1」の重量は「壁6」に付与されていると認められるため、甲1発明は、本件発明1の「吸音パネルの重量が壁に付与される」ことに相当する構成を備えている。 d 甲1発明の「板材1」は、「壁6に配設」され、「室内の音が吸収され、」「吸音材として用いることができ」るものであるから、「板材1」が「壁6に固定されている構造」は、本件発明1の「建物の壁構造」に相当する。 e そうすると、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点1で一致し、相違点1で相違する。 (一致点1) 「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して壁に固定される締結部材自体によって、上記壁の下の床面から浮いた状態で当該壁に固定され、上記吸音パネルの重量が壁に付与されることを特徴とする建物の壁構造。」 (相違点1) 本件発明1は、「壁面材と壁下地材とを備える壁」であって、「締結部材」が「壁面材を貫通し、上記壁下地材に接触しないように固定される」のに対し、甲1発明の「壁6」及び「ピン2」は、そのような事項が特定されていない点。 (イ) 検討・判断 「石膏ボード等の裏側にある木材等の下地からなる壁構造」は引用文献1に記載されるように周知の技術である。 また、甲1には「壁6」の具体的な構造について特段の記載がないものの甲1の全体の記載からみて、各種の構造の「壁」とすることに阻害要因があるとはいえない。 そして、「石膏ボード等の裏側にある木材等の下地からなる壁構造に、ピンを打つ事により石膏ボード等の壁に重量物を取り付けること」は周知技術(上記(1)キ(ア)の「周知技術1」を参照。)である。 しかしながら、周知技術1には「石膏ボード等の裏側にある木材等の下地からなる壁構造に、ピンを打つ」際に、「石膏ボード等」の「壁面材を貫通し」、「その裏側にある木材等の下地」である「壁下地材に接触しないように固定される」ような技術まで開示されておらず、自明ともいえない。また、そのような技術が申立人が提出したその余の証拠及び引用文献1に記載も示唆もされていない。 したがって、甲1発明に、周知技術1、申立人が提出したその余の証拠及び引用文献1に記載された技術事項を適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成とすることはできない。 (ウ) 小括 よって、本件発明1は、甲1発明、周知技術1、申立人が提出したその余の証拠及び引用文献1に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2 本件発明2は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記アで検討した理由と同じ理由により、本件発明2は、甲1発明、周知技術1、申立人が提出したその余の証拠及び引用文献1に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明3 (ア) 対比 a 上記ア(ア)を踏まえ、本件発明3と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「板材1」を形成する「4mm以上の厚みを有する高圧縮フェルトは、吸音性だけでなく、断熱性にも優れてい」ることは、本件発明3の「上記吸音パネルは断熱性」「の特性を兼ねることを有すること」に相当する。 b そうすると、本件発明3と甲1発明とは、上記一致点1で一致し、次の相違点2~4で相違する。 (相違点2) 本件発明3は、「壁面材と壁下地材とを備える壁」であって、「締結部材」が「当該壁面材を貫通しないことで上記壁下地材と接触しないように固定される」のに対し、甲1発明の「壁6」及び「ピン2」は、そのような事項が特定されていない点。 (相違点3) 本件発明3は、「上記吸音パネルは断熱性と耐火性の少なくとも一方の特性を兼ねて」いるのに対し、甲1発明はそのような事項が特定されていない点。 (相違点4) 本件発明3は、「上記吸音パネルの面密度が9kg/m2以上であることを有する」のに対し、甲1発明はそのような事項が特定されていない点。 (イ) 検討・判断 a 相違点2について 「石膏ボード等の裏側にある木材等の下地からなる壁構造」は引用文献1に記載されるように周知の技術である。 また、甲1には「壁6」の具体的な構造について特段の記載がないものの甲1の全体の記載からみて、各種の構造の「壁」とすることに阻害要因があるとはいえない。 そして、「石膏ボード等の裏側にある木材等の下地からなる壁構造に、ピンを打つ事により石膏ボード等の壁に重量物を取り付けること」は周知技術(上記(1)キ(ア)の「周知技術1」を参照。)である。 しかしながら、周知技術1に「石膏ボード等の裏側にある木材等の下地からなる壁構造に、ピンを打つ」際に、「石膏ボード等」の「当該壁面材を貫通しないことで」、「その裏側にある木材等の下地」である「壁下地材と接触しないように固定される」ような技術まで開示されておらず、自明ともいえない。また、そのような技術が申立人が提出したその余の証拠及び引用文献1に記載も示唆もされていない。 したがって、甲1発明に、周知技術1、申立人が提出したその余の証拠及び引用文献1に記載された技術事項を適用しても、相違点2に係る本件発明3の構成とすることはできない。 (ウ) 小括 よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明、周知技術1、申立人が提出したその余の証拠及び引用文献1に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件発明4 (ア) 対比 本件発明4と甲1方法発明とを対比する。 a 甲1方法発明の「壁6に配設して」「室内の音が吸収され、」「吸音材として用いることができ」る、「板材1」を、「板材1を貫通して、壁6に固定されるピン2によって、壁6の下の床面から浮いた状態で当該壁6に固定」することは、本件発明4の「建物の壁構造の構築方法」に相当する。 b そうすると、本件発明4と甲1方法発明とは、少なくとも、上記相違点1又は相違点2~4の点で相違している。 (イ) 検討・判断 相違点1、2について前記ア及びウに示したのと同様に、甲1方法発明に、甲1発明、周知技術1、申立人が提出したその余の証拠及び引用文献1に記載された技術事項を適用しても、相違点1及び2に係る本件発明4の構成とすることはできない。 (ウ) 小括 よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明4は、甲1方法発明、甲1発明、周知技術1、申立人が提出したその余の証拠及び引用文献1に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 1 29条1項3号違反(新規性) (1) 申立人の主張 申立人は、本件発明1が、甲1又は甲2に記載された発明である旨主張している(申立書22頁24行~24頁12行)。 (2) 当審合議体の判断 ア 甲1を主引用例とする場合について 前記第5の2(2)アに示した相違点1は実質的な相違点であることから、本件発明1は、甲1発明ではない。そして、前記第5の2(2)ウに示した相違点2~4は実質的な相違点である。 イ 甲2を主引用例とする場合について 本願発明1と甲2発明を対比すると、少なくとも次の点で相違する。 (相違点5) 本件発明1は、「壁面材と壁下地材とを備える壁」であって、「締結部材」が「壁面材を貫通し、上記壁下地材に接触しないように固定される」のに対し、甲2発明の「壁面」及び「ピン20」は、そのような事項が特定されていない点。 相違点5は実質的な相違点であることから、本件発明1は、甲1発明ではない。 また、本願発明3と甲2発明を対比すると、少なくとも次の点で相違する。 (相違点6) 本件発明3は、「壁面材と壁下地材とを備える壁」であって、「締結部材」が「当該壁面材を貫通しないことで上記壁下地材と接触しないように固定される」のに対し、甲2発明の「壁面」及び「ピン20」は、そのような事項が特定されていない点。 ウ 新規性についての小括 前記ア及びイのとおりであるから、申立人が主張する29条1項3号違反に係る取消理由は、採用すべき理由がない。 2 29条2項違反(進歩性) (1) 申立人の主張 ア 申立人は、甲2に記載された発明に、甲3~7に記載された事項を適用すれば、本件発明1~4に容易に相当する旨主張している(申立書24頁14行~30頁8行)。 (2) 当審合議体の判断 ア 本件発明1及び2について 本件発明1と甲2発明との相違点5は、前記第5の2(2)ア(イ)に示したのと同様に、「石膏ボード等の裏側にある木材等の下地からなる壁構造に、ピンを打つ」際に、「石膏ボード等」の「壁面材を貫通し」、「その裏側にある木材等の下地」である「壁下地材に接触しないように固定される」ような技術は、申立人が提出したその余の証拠及び引用文献1に記載も示唆もされておらず、自明ともいえない。 また、本件発明2は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を加えた発明である。 よって、本件発明1及び2は、甲2発明、周知技術1、申立人が提出したその余の証拠及び引用文献1に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明3について 本件発明3と甲2発明との相違点6は、前記第5の2(2)ウ(イ)に示したのと同様に、周知技術1に「石膏ボード等の裏側にある木材等の下地からなる壁構造に、ピンを打つ」際に、「石膏ボード等」の「当該壁面材を貫通しないことで」、「その裏側にある木材等の下地」である「壁下地材と接触しないように固定される」ような技術は、申立人が提出したその余の証拠及び引用文献1に記載も示唆もされておらず、自明ともいえない。 よって、本件発明3は、甲2発明、周知技術1、申立人が提出したその余の証拠及び引用文献1に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明4について 本件発明4と甲2方法発明とは、少なくとも、本件発明4と甲1方法発明とは、少なくとも、上記相違点5又は相違点6の点で相違している。 よって、本件発明3は、甲2方法発明、周知技術1、申立人が提出したその余の証拠及び引用文献1に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 進歩性についての小括 前記ア~ウのとおりであるから、申立人が主張する29条2項違反に係る取消理由は、採用すべき理由がない。 3 36条6項2号違反(明確性) (1) 申立人の主張 申立人は、本件特許発明1で規定する「壁」は不明確であり、壁構造を理解することができず、また、「吸音パネルを貫通して壁に固定される締結部材」が、如何なる状態で壁に打ち込まれているか明確でなく、吸音パネルの重量が付与されるとしている対象が不明である旨主張し、また、請求項1に係る発明は、本件特許発明の課題が解決できる要件を明確に記載したものではないと主張している。(申立書34頁19行~38頁16行) (2) 判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の本件出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断するのが相当である。 (3) 当審合議体の判断 前記(2)の観点から、本件特許発明が明確であるか否かについて検討する。 請求項1には「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材を貫通し、上記壁下地材に接触しないように固定される締結部材自体によって、上記壁の下の床面から浮いた状態で当該壁に固定される」ものが記載され、「壁」を構成する「壁面材と壁下地材」に対して固定される「締結部材」の関係を理解することができ、当業者の本件出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 また、請求項3に「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材に、当該壁面材を貫通しないことで上記壁下地材と接触しないように固定される締結部材自体によって、上記壁の下の床面から浮いた状態で当該壁に固定され」るものが記載され、前記と同様に、「壁」を構成する「壁面材と壁下地材」に対して固定される「締結部材」の関係を理解することができ、当業者の本件出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 よって、申立人が主張する36条6項2号違反に係る取消理由は、採用すべき理由がない。 4 36条6項1号違反(サポート要件) (1) 申立人の主張 申立人は、本件特許明細書の記載は、請求項1に記載された構成を満たすだけで、吸音パネルを固定する壁の構成、併用する吸音パネルの、吸音材の種類や材料形状や使用量などの構成によらず、あらゆる壁構造についてまで発明の課題が解決できることを記載したものとは到底認められないし、請求項1に記載された構成による効果も判然としない旨主張している。 (申立書38頁18行~39頁6行) (2) 判断基準 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に記載する要件(サポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認定できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (3) 当審合議体の判断 本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0004】~【0007】から、本件発明1~4は、「壁に、接着剤、釘、ビスなどの締結材によって、多孔質材料などで構成された吸音パネル(自立型の吸音材)を固定することにおいては、防音性の向上と施工性の向上とが求められ、グラスウールやロックウールなどの多孔質材料で構成された非自立型の吸音材を用いる場合においては、単に壁の前に吸音材を積み上げて設置するのでは、良好な防音性を得られたとしても大量の吸音材が必要になり、施工コストが割高になる」ことを課題として、「吸音材を用いて吸音性を高めるとともに壁の重量による遮音性を高めることによって低周波数域での防音性を向上できる建物の壁構造およびその構築方法を提供する」ために「吸音性を有する吸音材を、当該吸音材の重量が壁に付与されるように当該壁に取り付けたこと」により前記課題を解決するものと解することができる。 本件発明1は「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材を貫通し、上記壁下地材に接触しないように固定される締結部材自体によって、上記壁の下の床面から浮いた状態で当該壁に固定され」るものであり、本件発明3は「吸音性を有する吸音パネル自体が、当該吸音パネルを貫通して、壁面材と壁下地材とを備える壁の上記壁面材に、当該壁面材を貫通しないことで上記壁下地材と接触しないように固定される締結部材自体によって、上記壁の下の床面から浮いた状態で当該壁に固定され」るものであり、それぞれの発明は、「締結部材」によって、「吸音パネル」が「上記壁の下の床面から浮いた状態で当該壁に固定され」たものであり、前記課題を解決することができることを理解することができる。 また、「吸音パネル」が「上記壁の下の床面から浮いた状態で当該壁に固定さ」ることにより得られる効果等についても、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例から予測される範囲で解することができ、必ずしも「音パネルを固定する壁の構成、併用する吸音パネルの、吸音材の種類や材料形状や使用量などの構成によらず、あらゆる壁構造について」記載する必要があるとは認められない。 よって、申立人が主張する36条6項1号違反に係る取消理由は、採用すべき理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

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2022-700651

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