2024-700180
インクジェット印刷用インク組成物
- 審判番号
- 2024-700180
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-067340外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7334397
- 請求日
- 2024年02月27日
- 審決日
- 2025年02月19日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】サカタインクス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
- 【権利者代理人】山田 泰之
- 【権利者代理人】安藤 達也
- 【権利者代理人】飯沼 和人
- 【異議申立人】佐々木 香織
- 分類
- P1651.121-YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 29項目
第1 手続の経緯
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特許第7334397号(以下「本件特許」ともいう。)に係る出願は、令和5年4月17日に出願され、同年8月21日に特許権の設定登録がされ(請求項の数4)、同年同月29日に特許掲載公報が発行された。その後、令和6年2月27日に特許異議申立人 佐々木 香織(以下「申立人」という。)によって、請求項1~4に係る特許についての特許異議の申立てがされ、当審から同年6月25日付けで取消理由を被請求人に通知したところ、同年8月15日に特許権者から訂正の請求(以下この請求を「本件訂正請求」といい、この請求による訂正を「本件訂正」という。)がされると共に意見書が提出され、同年同月21日付けで当審から申立人に訂正請求があった旨の通知をし、同年9月18日に申立人から意見書が提出されたものである。
第2 本件訂正についての判断
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7334397号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正事項
本件訂正は次の訂正事項からなる。下線は、訂正箇所であり、合議体が付した。
特許請求の範囲の請求項1に「前記界面活性剤(D)のインク組成物に対する合計含有量は0.1質量%以上かつ2.0質量%以下であり」と記載されているのを、「前記界面活性剤(D)のインク組成物に対する合計含有量は0.5質量%以上かつ2.0質量%以下であり」に訂正する。請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する。
3 訂正要件についての判断
(1)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~4のうち、請求項2~4は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であるから、本件訂正前の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
(2)訂正の目的
上記訂正事項は、界面活性剤(D)のインク組成物に対する合計含有量を、「0.1質量%以上かつ2.0質量%以下」から「0.5質量%以上かつ2.0質量%以下」と限定することにより、その合計含有量の数値範囲を減縮したものであるから、上記訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(3)実質上の拡張・変更の有無
上記訂正事項は、上記(2)に記載のとおり、界面活性剤(D)のインク組成物に対する合計含有量の数値範囲を減縮したものであるから、特許請求の範囲を実質的に拡張・変更するものではない。
したがって、上記訂正事項は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(4)新規事項の追加の有無
上記訂正事項は、本件明細書の段落【0049】の「本発明のインク組成物に含まれる界面活性剤(D)の含有量(界面活性剤(D-1)、(D-2)及び(D-3)、並びに他の界面活性剤の合計含有量)は、0.1質量%以上であり、0.5質量%以上であることが好ましく;また、3.0質量%以下であり、2.5質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましい。」(下線は、合議体が付した。)との記載に基づいて、界面活性剤(D)のインク組成物に対する合計含有量の下限を「0.5質量%」に限定したものである。
したがって、上記訂正事項は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正に該当し、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(5)独立特許要件
本件訂正においては、訂正前の全ての請求項に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。
4 小括
上記3において検討した訂正要件についての判断をまとめると、上記訂正事項の訂正は、訂正要件を満たすものであるから、本件訂正は適法なものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 本件発明及び本件明細書の記載
1 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、請求項番号にしたがって「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】顔料(A)、水溶性有機溶媒(B)、樹脂エマルション(C)、界面活性剤(D)、および水(E)を含有する、インクジェット印刷用インク組成物であって:前記水溶性有機溶媒(B)は、その分子内に2以上の水酸基を有し、かつ12.0(cal/cm3)1/2以上の、式:「{(ΔH-RT)÷(M÷D)}1/2」(式において、ΔHは蒸発潜熱(cal/mol)、Rは気体定数(1.99(cal/K・mol))、Tは温度(K)、Mは分子量(g/mol)、Dは密度(g/cm3)を示す)で算出される25℃(298K)でのSP値を有し;前記水溶性有機溶媒(B)のインク組成物に対する含有量は15.0~50.0質量%であり;続きを表示(全18行)前記樹脂エマルション(C)のインク組成物に対する固形分含有量は0.1~10質量%であり;前記界面活性剤(D)が、アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と、シリコーン系界面活性剤(D-2)と、アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)と、を含み;前記界面活性剤(D)のインク組成物に対する合計含有量は0.5質量%以上かつ2.0質量%以下であり;前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)のインク組成物に対する含有量は、0.1~1.0質量%であり;前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記シリコーン系界面活性剤(D-2)との質量含有比率[(D-1)/(D-2)]が、1.0~10.0であり;かつ前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)との質量含有比率[(D-1)/(D-3)]が、0.1~10.0であり、かつ前記シリコーン系界面活性剤(D-2)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)との質量含有比率[(D-2)/(D-3)]が、0.1~2.0であり、1分あたり30枚以上のA4縦サイズの被印刷物を印刷可能なインク吐出周波数での印刷に用いるための、インクジェット印刷用インク組成物。【請求項2】前記シリコーン系界面活性剤(D-2)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)との含有質量比率[(D-2)/(D-3)]が、0.2~2.0である、請求項1に記載のインクジェット印刷用インク組成物。【請求項3】前記インクジェット印刷用インク組成物に溶解しているアルカリ可溶性樹脂をさらに含む、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷用インク組成物。【請求項4】前記水溶性有機溶媒(B)は、16.0(cal/cm3)1/2以下の前記SP値を有する、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷用インク組成物。」
2 本件明細書の記載
「【0007】そこで本発明は、樹脂エマルションを含有する、インクジェット印刷用の水性インク組成物であって、その吐出安定性(特に、連続印刷したときの吐出安定性)を安定化させて画質を高めつつ、好ましくは印刷物のブロッキングの発生を抑制し、更に好ましくは印刷塗膜のラミネート性の低下を抑制することを課題とする。」
「【0024】水溶性有機溶媒(B)の例には、SP値(25℃)が12.2(cal/cm3)1/2であるジエチレングリコール;12.6(cal/cm3)1/2である1,2-プロパンジオール(プロピレングリコールともいう);13.3(cal/cm3)1/2である1,3-プロパンジオール;14.9(cal/cm3)1/2であるグリセリン、等が含まれる。」
「【0032】[1-4.界面活性剤(D)]本発明のインクジェット印刷用インク組成物に含まれる界面活性剤は、3種の界面活性剤であるアセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と、シリコーン系界面活性剤(D-2)と、アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)と、を含む。」
「【0033】[1-4―1.アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)]アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)とは、アセチレンアルコール、又はアセチレン結合とグリコールユニットとを併せ持つ化合物であり、以下の構造式1で示されうる。アセチレン結合部位が疎水性部位となり、アルコール部位又はグリコール部位が親水性部位となり、界面活性機能を発現しうる。【化1】続きを表示(全21行)[図:0001423470000001.jpg]【0034】上記構造式1において、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~16のアルキル基を示し;R3は水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基を示し;Rは炭素数2~6のアルキレン基を示し;mは0~40を示し;Xは水素原子又は下記構造式2で示される基を示す。【化2】[図:0001423470000002.jpg]【0035】上記構造式2において、R4及びR5はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~16のアルキル基を示し;R6は水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基を示し;Rは炭素数2~6のアルキレン基を示し;nは0~40を示す。【0036】アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)は、好ましくは、分子構造の中央にアセチレン結合を有し、左右対称の分子構造をした界面活性剤であり、下記構造式3及び4のいずれかで示されうる。【化3】[図:0001423470000003.jpg]【0037】上記構造式3及び4において、R1~R5及びR並びにm及びnは、それぞれ上記式1及び2と同様であるが;mとnの合計は、1以上又は1超であることが好ましく;また、45以下であることが好ましく、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、より更に好ましくは20以下、より更に好ましくは15以下である。【0038】アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)の具体例には、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2,4-ジメチル-5-ヘキシン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール等のアセチレン系ジオール、及びそれらのエチレンオキシド付加物が挙げられる。【0039】アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)は、市場から入手することも可能であり、商品名:SURFYNOL 104E、SURFYNOL 104H、SURFYNOL 104A、SURFYNOL 104BC、SURFYNOL 104DPM、SURFYNOL 104PA、SURFYNOL 104PG-50、SURFYNOL 420、SURFYNOL 440、SURFYNOL 465、SURFYNOL 485、オルフィン1004、オルフィンE1004、オルフィンE1010、オルフィンE1020(日信化学工業社)等として入手可能である。例えば、サーフィノール465は、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエチレンオキサイド付加物である。」
「【0049】[1-4―5.界面活性剤の含有量]本発明のインク組成物に含まれる界面活性剤(D)の含有量(界面活性剤(D-1)、(D-2)及び(D-3)、並びに他の界面活性剤の合計含有量)は、0.1質量%以上であり、0.5質量%以上であることが好ましく;また、3.0質量%以下であり、2.5質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましい。また、界面活性剤(D-1)、(D-2)及び(D-3)の合計含有量は、インク組成物に対して、0.1質量%以上であり、0.5質量%以上であることが好ましく;また、3.0質量%以下であり、2.5質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤(D)の合計含有量が少ないと、インク組成物の表面張力が高くなるため、印刷基材(特に、濡れ性の低い印刷基材)にインク組成物が濡れ広がりにくくなり印刷物の画質が低下しやすくなる。また、インク組成物の印刷における吐出安定性も低下しやすい。一方、界面活性剤の量が多すぎると、印刷物の耐ブロッキング性が低下しやすい。【0050】続きを表示(全11行)また、界面活性剤(D-1)、(D-2)、(D-3)のそれぞれの含有量は、いずれも0.1質量%~1.0質量%であることが好ましく;アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)の含有量は、0.1質量%~1.0質量%であることが好ましく;シリコーン系界面活性剤(D-2)の含有量は、0.1質量%~1.0質量%であることが好ましく:アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)の含有量は、0.3質量%~0.7質量%であることが好ましい。その範囲で、界面活性剤(D-1)、(D-2)、(D-3)の相対含有比率を、以下の通り調整することが好ましい。【0051】アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)とシリコーン系界面活性剤(D-2)との含有質量比率[(D-1)/(D-2)]は1.0以上であり、3.0以上であることが好ましく;また、10.0以下であり、8.0以下であることが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)とシリコーン系界面活性剤(D-2)はいずれも、インク組成物の吐出安定性を高める傾向がみられるが;そのメカニズムが不明であるものの、界面活性剤(D-1)と(D-2)の比率をより的確に調整すると、連続印刷時の吐出安定性がより改善できる。また、シリコーン系界面活性剤(D-2)の含有量が多いと、保存安定性と吐出安定性に悪影響を及ぼすことがあり、また印刷物のラミネート特性が悪化する懸念があるため;含有質量比率[(D-1)/(D-2)]の調整により、ラミネート特性の悪化を防止することが好ましい。【0052】アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)とアルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)との含有質量比率[(D-1)/(D-3)]は、0.1以上であり、0.2以上であることが好ましく;また、10.0以下であり、5.0以下であることが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)は、インク組成物の吐出安定性を高める傾向がみられるが、界面活性剤(D-1)と(D-3)の比率をより的確に調整すると、連続印刷時の吐出安定性がより改善できる。また、アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)の含有量が多いと、印刷物のブロッキングが発生しやすくなることがあるため;含有質量比率[(D-1)/(D-3)]の調整により、ブロッキングを防止することが好ましい。【0053】シリコーン系界面活性剤(D-2)とアルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)との含有質量比率[(D-2)/(D-3)]は0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく;一方、2.0以下であることが好ましい。」
「【実施例】【0076】以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が実施例の内容によって限定して解釈されてはならない。表1~表4に示される各成分の処方量は、質量部である。【0077】続きを表示(全110行)<A.顔料インクベースの調製>まず、以下に示す手順にて、ホワイト顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、ブラック顔料のインクベース(顔料分散物)を調製した。アルカリ可溶性樹脂は、アクリル酸とステアリルアクリレートとスチレンとの共重合体であるが、水酸化カリウムによって中和されており、酸価180mgKOH/g、ガラス転移温度50℃、重量平均分子量Mw30000であった。【0078】<A-a.水性ブラック顔料インクベース(BASE-K)>上記アルカリ可溶性樹脂の32質量部に水48質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。このワニスに、更にカーボンブラック(ピグメントブラック7,商品名プリンテックス90、オリオン・エンジニアドカーボンズ社)の20質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、水性ブラック顔料インクベース(顔料含有率=20質量%)を調製した。・・・【0083】<B.インクジェット印刷用インク組成物の調製>上記A.で調製した各顔料インクベースと、以下に示す成分を用いて、インクジェット印刷用インク組成物を調製した。【0084】<B-a.水溶性有機溶剤>・プロピレングリコール:SP値12.6(cal/cm3)1/2・グリセリン:SP値14.9(cal/cm3)1/2・トリプロピレングリコール:SP値9.0(cal/cm3)1/2・ブチルカルビトール:SP値8.9(cal/cm3)1/2【0085】<B-b.樹脂微粒子(樹脂エマルション)>・AQUACER531(BYK社):ポリエチレン系樹脂・ヨドゾールAD173(ヘンケル社):アクリル樹脂・NeoCryl A-1092(コベストロ社):スチレン-アクリル樹脂・ビニブラン1245L(日信化学工業社):酢酸ビニル-アクリル樹脂・ビニブラン278(日信化学工業社):塩化ビニル-アクリル樹脂・ビニブランGV6181(日信化学工業社):酢酸ビニル樹脂・スーパーフレックス740(第一工業製薬社):ポリエステル系ポリウレタン樹脂・NeoRez R-966(コベストロ社):ポリエーテル系ポリウレタン樹脂・スーパーフレックス420NS(第一工業製薬社):ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂・セポルジョンES(住友精化社):ポリエステル系樹脂【0086】<B-c.界面活性剤>・SURFYNOL 465(日信化学工業社):アセチレングリコール系界面活性剤・オルフィン1004(日信化学工業社):アセチレングリコール系界面活性剤・TEGO GLIDE 450(エボニック社):シリコーン系界面活性剤・シルフェイスSAG(日信化学工業社):シリコーン系界面活性剤・エマルゲン705(花王社):アルコールエトキシレート系界面活性剤・エマルゲン 104(花王社):アルコールエトキシレート系界面活性剤・パーソフトEF(ADEKA社):アニオン性界面活性剤【0087】<B-d.インク組成物の調製手順>表1~4に示す処方組成に沿って、各実施例及び比較例のインク組成物を調製した。具体的には、A.で調製した顔料インクベースに、水溶性有機溶剤と、樹脂微粒子と、界面活性剤と、水と、を加えて攪拌混合した。表1~4に示される樹脂微粒子の含有量は、固形分含量を示す。【0088】<C.インクジェット印刷用インク組成物の評価>各実施例及び比較例で得られた実施例1~35、比較例1~14の水性インクジェット印刷用インク組成物を、以下の項目について評価した。<C-a.保存安定性>実施例1~35、比較例1~14の水性インクジェット印刷用インク組成物をガラス瓶にとり、25℃の粘度を粘度計(東機産業社製 RE100L型)で測定した。その後、密栓し60℃、1ヵ月間保存し、保存後の粘度(25℃)を粘度計により同様に測定した。経時安定性を、粘度変化率[(保存後の粘度-保存前の粘度)/保存前の粘度]で評価した。評価基準○:粘度変化率が5%未満のもの△:粘度変化率が5%以上、10%未満のもの×:粘度変化率が10%以上、30%未満のもの【0089】<C-b.吐出安定性>実施例1~35、比較例1~14の水性インクジェット印刷用インク組成物を、エプソン社製プリンターPX105のカートリッジに詰めて、写真用紙GL-101A450(キヤノン社製)または遮蔽紙(Wインクのみ)に印字を行い、吐出安定性を評価した。評価基準○:印字の乱れがなく、安定して吐出できるもの△:多少印字の乱れがあるものの、吐出できるもの×:印字の乱れがあり、安定して吐出できないもの【0090】<C-c.連続吐出安定性>実施例1~35、比較例1~14の水性インクジェット印刷用インク組成物を、エプソン社製プリンターPX105のカートリッジに詰めて、写真用紙GL-101A450(キヤノン社製)または遮蔽紙(Wインクのみ)に15cmx20cmのベタ画像を50枚連続で印刷し、連続吐出安定性を評価した。評価基準○:画質が良好で、安定して吐出できるもの△:多少スジ等画質の劣化が見られるものの、吐出できるもの×:スジ等画質の劣化が見られ、安定して吐出できないもの【0091】<C-d.耐擦過性>上記<C-c>で得た各印刷物を80℃のオーブンで3分間乾燥させたあと、綿棒で印刷面をこすって耐擦過性を評価した。評価基準○:塗膜面を綿棒で10回摩擦した後でも全くかすれなかった△:塗膜面を綿棒で10回摩擦した後、綿棒に色が移り、摩擦部分がわずかにかすれた×:塗膜面を綿棒で10回摩擦した後、摩擦部分が全て剥がれた【0092】<C-e.耐ブロッキング性>上記<C-c>で得た各印刷物の印刷面と非印刷面とを合わせて、バイスでしめこみ、40℃で1日経過後に手で剥がし、インキの剥離の程度と剥離抵抗の強度から、以下の評価基準で印刷物の耐ブロッキング性を評価した。評価基準○:印刷皮膜の剥離が全くなかった△:印刷皮膜が少し剥離し、剥離抵抗が強く感じられた×:印刷皮膜がほとんど剥離し、剥離抵抗が強く感じられた【0093】<C-f.画質(吸収メディア)>実施例1~35、比較例1~14の水性インクジェット印刷用インク組成物を、エプソン社製プリンターPX105のカートリッジに詰めて、写真用紙GL-101A450(キヤノン社製)または遮蔽紙(Wインクのみ)に15cm×20cmのベタ画像を印刷し、印刷物のベタ部の埋まり具合を目視で評価した。評価基準〇:ベタ部がきれいに埋まり、スジ感がほとんどない×:全体的にスジが目立つ【0094】<C-g.画質(難吸収メディア)>実施例1~35、比較例1~14の水性インクジェット印刷用インク組成物を、エプソン社製プリンターPX105のカートリッジに詰めて、OKトップコート+(王子製紙製)に15cm×20cmのベタ画像を印刷し、印刷物のベタ部の埋まり具合を目視で評価した。評価基準〇:ベタ部がきれいに埋まり、スジ感がほとんどない×:全体的にスジが目立つ【0095】【表1】[図:0001423470000004.jpg]【0096】【表2】[図:0001423470000005.jpg]【0097】【表3】[図:0001423470000006.jpg]【0098】【表4】[図:0001423470000007.jpg]・・・【0103】表4の比較例8及び比較例13に示されるように、界面活性剤(D-1)と(D-3)との質量含有比率[(D-1)/(D-3)]が0.1を下回ると、吐出安定性、特に連続吐出安定性が悪くなることがわかる。特に、比率[(D-1)/(D-3)]が0.02であり、かつ界面活性剤の合計含有量が比較的低い(0.52質量%)比較例8では、印刷物の画質も悪化した。・・・【0105】表4の比較例9及び12に示されるように、界面活性剤(D-1)と(D-2)との質量含有比率[(D-1)/(D-2)]が1.0を下回ると、連続吐出安定性が悪化した。比較例9では、質量含有比率[(D-1)/(D-2)]が0.03と特に低く、つまり、界面活性剤(D-2)の相対比率が高く、耐ブロッキング性も低下した。比較例12は、界面活性剤の合計含有量が少なめであることもあり、印刷物の画質が低下した。」
第4 特許異議申立ての理由等の概要及び証拠方法について
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1 申立人は、後記2の特許異議申立の理由を主張し、後記4(1)の甲1号証~甲6号証(以下番号順に「甲1」等ともいう。)を提出した。
これに対し、特許権者は、令和6年8月15日の意見書とともに、後記4(2)の乙1号証~乙3号証(以下番号順に「乙1」等ともいう。)を提出した。
2 特許異議申立て理由等の概要
(1)申立理由1の1(甲1を主たる引用例とする進歩性欠如)
本件発明1~4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び甲2~甲3に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(2)申立理由1の2(甲4を主たる引用例とする進歩性欠如)
本件発明1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明及び甲2~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(3)申立理由2(明確性要件違反)
本件発明1~4は、界面活性剤(D)のインク組成物に対する合計含有量の下限の値と、アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)のインク組成物に対する含有量の下限の値が同じであり、これらの下限値の整合性がとれていないから、本件特許に係る出願は、本件発明1~4についての特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(4)申立理由3(サポート要件違反)
本件発明1~4は、界面活性剤の含有量に関し、所望の効果が得られないものを含んでいるから、本件発明1~4についての特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
3 当審が通知した取消理由の概要
当審は、令和6年6月25日付けの取消理由通知において、前記2(2)の甲4を主たる引用例とする進歩性欠如に係る理由(取消理由1)、及び、前記2(4)のサポート要件違反に係る理由(取消理由2)を採用した。
4 証拠方法の一覧
(1)特許異議申立書に添付されたもの
(2)令和6年8月15日の特許権者の意見書に添付されたもの
第5 甲号証及び乙号証の記載
1 甲1の記載
甲1には、次の記載がある。
「【請求項1】インクジェット記録用ヘッドのノズルから白色系インク組成物の液滴を吐出させ、該白色系インク組成物の液滴を軟包装フィルムの被記録面に付着させて、白色系画像を記録する白色系画像記録工程と、前記ノズルからカラーインク組成物の液滴を吐出させ、該カラーインク組成物の液滴を前記白色系画像に付着させて、カラー画像を記録するカラー画像記録工程と、少なくとも前記白色系画像および前記カラー画像を40℃超過で加熱する第1加熱工程と、を含み、前記白色系インク組成物は、水と、白色系の色材と、ウレタン系樹脂と、を含有し、標準沸点280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含有せず、前記カラーインク組成物は、水と、カラー系の色材と、を含有する、インクジェット記録方法。」
「【0010】本発明に係る幾つかの態様は、上述の課題の少なくとも一部を解決することで、耐擦性および耐剥離性に優れた画像を記録できるインクジェット記録方法を提供することにある。」
「【0104】<界面活性剤>界面活性剤は、記録媒体(軟包装フィルム)上にインク組成物を均一に濡れ拡がらせる作用を備える。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤であることが好ましい。ノニオン系界面活性剤の中でも、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤がより好ましい。【0105】続きを表示(全26行)シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物等が好ましく用いられ、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。より詳しくは、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。【0106】シリコーン系界面活性剤を用いる場合には、その含有量は、白色系インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。【0107】アセチレングリコール系界面活性剤は、表面張力及び界面張力を適正に保つ能力に優れており、かつ起泡性がほとんどないという特性を有する。これにより、アセチレングリコール系界面活性剤を含有するインク組成物は、表面張力及びヘッドノズル面等のインク組成物と接触するプリンター部材との界面張力を適正に保つことができるため、これをインクジェット記録方式に適用した場合、吐出安定性を高めることができる。アセチレングリコール系界面活性剤として、例えばサーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、SE、SE-F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14、AE-3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。【0108】アセチレングリコール系界面活性剤を用いる場合には、その含有量は、白色系インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。【0109】ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤は、他のノニオン系界面活性剤と比較して、特に本発明のインク組成物の界面に配列する能力に優れている。従って、顔料や樹脂エマルジョン等の本発明のインク組成物に用いられている分散成分の表面に配列して液成分との界面に存在することで、分散成分の液成分への分散安定性を向上させる能力に優れている。また、インク組成物と空気との界面にも配列する能力にも優れているため、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤を含有する白色系インク組成物は、ヘッドノズル孔等のインク組成物が空気と接触する部分において、インク組成物の急激な乾燥を抑制し、ノズル詰まり等を抑える作用に優れるため、これをインクジェット記録方式に適用した場合、吐出安定性を著しく高めることができる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤としては、例えば、エマルゲン103、104P、105、106、108、109P、120、123P、130K、147、150、210P、220、306P、320P、350、404、408、409PV、420、430、705、707、709、1108、1118S-70、1135S-70、1150S-60、4085、2020G-HA、2025G(以上全て商品名、花王株式会社製)等を用いることができる。【0110】ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤を用いる場合には、その含有量は、白色系インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下であることが特に好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤の含有量が上記範囲内、とりわけ下限を下回らずにあることで、インク組成物の吐出安定性を良好なものとすることができる。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤の含有量が上記範囲内、とりわけ上限を超えずにあることで、記録される画像の耐水性の低下を抑制でき、耐水擦性が良好な画像が得られる。【0111】<アルキルポリオール類>本実施形態に係る白色系インク組成物は、標準沸点が180℃以上230℃以下のアルキルポリオール類を含有してもよい。沸点が上記範囲内にあるアルキルポリオール類を含有することで、白色系インク組成物の濡れ拡がり性、乾燥性を制御することが一層容易になる場合がある。これにより、軟包装フィルムに対して定着性や画像品質に優れた画像を記録することができると共に、ノズルの目詰まりを低減させることができるので好ましい。【0112】アルキルポリオール類は、標準沸点が180℃以上230℃以下であり、188℃以上230℃以下であることが好ましい。アルキルポリオール類の標準沸点が上記範囲内、とりわけ下限を下回らずにあることで、白色系インク組成物の保湿性が良好であり、ノズルの目詰まりの発生を抑制しやすくなるため好ましい。アルキルポリオール類の標準沸点が上記範囲内、とりわけ上限を超えずにあることで、白色系インク組成物の乾燥性を大きく低下させることなく、画像の濃淡ムラの発生や、画像の定着性の低下を抑制できるため好ましい。【0113】標準沸点が180℃以上230℃以下のアルキルポリオール類としては、例えば、プロピレングリコール[188℃]、ジプロピレングリコール[230℃]、1,2-ブタンジオール[194℃]、1,2-ペンタンジオール[210℃]、1,2-ヘキサンジオール[224℃]、1,2-ヘプタンジオール[227℃]、3-メチル-1,3-ブタンジオール[203℃]、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール[226℃]、2-メチル-1,3-プロパンジオール[214℃]、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール[230℃]、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール[210℃]、2-メチルペンタン-2,4-ジオール[197℃]等が挙げられる。なお、括弧内の数値は、標準沸点を表す。【0114】標準沸点が180以上230℃以下のアルキルポリオール類は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。【0115】前記アルキルポリオール類の含有量は、軟包装フィルムへの濡れ拡がり性を向上させて濃淡ムラを低減させる効果や、白色系インク組成物の保存安定性及び吐出信頼性を確保する観点から、白色系インク組成物の全質量に対して、8質量%以上25質量%以下の範囲で含まれることが好ましい。前記アルキルポリオール類の含有量が上記範囲内、とりわけ下限を下回らずにあることで、白色系インク組成物の保存安定性及び白色系インク組成物の保湿性が良好になって、ノズルの目詰まりの発生を低減できるため好ましい。また、前記アルキルポリオール類の含有量が上記範囲内、とりわけ上限を超えずにあることで、白色系インク組成物の乾燥性を大きく低下させることなく、濃淡ムラの発生が少なく、定着性が良好な画像が得られるため好ましい。」
「【0156】5.実験例以下、本発明の実施形態を実験例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実験例のみに限定されるものではない。【0157】続きを表示(全31行)5.1.インク組成物の調製5.1.1.顔料分散液の調製本実験例で使用する白色系インク組成物は、着色剤として水不溶性の顔料(白色系)を使用した。また、本実験例で使用するカラーインク組成物は、着色剤として水不溶性の顔料(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を使用した。顔料をインク組成物に添加する際には、あらかじめ該顔料を樹脂分散剤で分散させた樹脂分散顔料を用いた。具体的には、以下のようにして顔料分散液を調製した。【0158】<白色系顔料分散液の調製>まず、30%アンモニア水溶液(中和剤)1質量部を溶解させたイオン交換水75質量部に、樹脂分散剤としてアクリル酸-アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:180)4質量部を加えて溶解させた。そこに、白色系顔料である酸化チタン(C.I.ピグメント白色系6)を20質量部加えてジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散処理を行った。その後、遠心分離機による遠心濾過を行って粗大粒子やゴミ等の不純物を除去し、白色系顔料濃度が20質量%となるように調整した。その際の白色系顔料の粒子径は、平均粒子径で350nmであった。・・・【0163】5.1.2.白色系インク組成物およびカラーインク組成物の調製上記「顔料分散液の調製」で調製した顔料分散液を用いて、表1に示す材料組成にて白色系インク組成物W1~W8と、ブラックインク組成物1~3、シアンインク組成物1~3、マゼンタインク組成物1~3、イエローインク組成物1~3を組み合わせたカラーインク組成物セットC1~C3を得た。各インク組成物は、表1に示す材料を容器中に入れ、マグネチックスターラーにて2時間撹拌混合した後、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過してゴミや粗大粒子等の不純物を除去することにより調製した。なお、表1中の数値は、全て質量%を示し、イオン交換水はインク組成物の全質量が100質量%となるように添加した。・・・【0165】なお、表1中、化合物名以外で記載した材料は、次の通りである。【0166】・タケラックW-6061(商品名、三井化学株式会社製、ポリウレタン樹脂エマルジョン、Tg:25℃、30%分散液)・スーパーフレックス130(商品名、第一工業製薬株式会社製、ポリウレタン樹脂エマルジョン、Tg:101℃、35%分散液)・スーパーフレックス740(商品名、第一工業製薬株式会社製、ポリウレタン樹脂エマルジョン、Tg:-34℃、40%分散液)・JONCRYL 1992(商品名、BASFジャパン株式会社製、スチレン-アクリル酸共重合体エマルジョン、Tg:78℃、43%分散液)・AQUACER515(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエチレンワックスエマルジョン、融点135℃、35%分散液)・BYK-348(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、シリコーン系界面活性剤)・ノベックFC-4330(商品名、住友スリーエム株式会社製、フッ素系界面活性剤)・サーフィノール DF-110D(商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製、アセチレングリコール系界面活性剤)・エマルゲン 430(商品名、花王株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤)【0167】【表1】[図:0001423470000008.jpg]」
「【0184】5.3.白色系インク組成物の吐出安定性評価表1に記載した白色系インク組成物W1、W6~W8を、紙案内部に温度が可変できるヒーターを取り付けたインクジェットプリンタPX-G930(商品名、セイコーエプソン株式会社製、ノズル解像度:180dpi)のプリンタヘッド内に充填した。充填後、ノズルチェックパターンを印刷して充填不良・ノズル目詰まりのないことを確認した後、プリンター紙案内部のヒーター設定を変えて、一定間隔でインクを吐出させる、インクの吐出を止めることができるように印字パターンを作成し、これを用いて印字操作を行なった。その後、再度ノズルチェックパターンを印刷してインクの吐出状況を観察し、飛行曲がり・吐出抜けする間隔時間を確認することで白色系インク組成物のインクジェットヘッドの吐出安定性を評価した。印字時のプリンター紙案内部のヒーター設定は、「被記録面の温度が40℃となる設定」、「被記録面の温度が60℃となる設定」、「被記録面の温度が80℃となる設定」の3種類とした。また、吐出有無の時間間隔は、最大120秒とした。その評価基準を以下に示す。また、その評価結果を表4に示す。【0185】続きを表示(全12行)A:吐出有無の時間間隔が120秒でも飛行曲がり・吐出抜けするノズルが全く発生しないB:吐出有無の時間間隔が60秒まで、飛行曲がり・吐出抜けするノズルが全く発生しないC:吐出有無の時間間隔が30秒まで、飛行曲がり・吐出抜けするノズルが全く発生しないD:吐出有無の時間間隔が30秒未満で、飛行曲がり・吐出抜けするノズルが発生した。【0186】【表4】[図:0001423470000009.jpg]」
2 甲2の記載
甲2には、次の記載がある。
「【請求項1】カーボンブラック顔料と、フタロシアニン顔料及びキナクリドン顔料から選ばれる着色顔料の少なくとも1種と、水系媒体とを含み、平均一次粒子径が50nm以下であり、平均一次粒子径に対する平均二次粒子径の比(平均二次粒子径/平均一次粒子径)が2.0~3.0である、黒色系インクジェット記録用インク組成物。続きを表示(全11行)・・・【請求項8】請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の黒色系インクジェット記録用インク組成物を、インクジェット法で記録媒体上に付与するインク付与工程を有するインクジェット画像形成方法。【請求項9】前記記録媒体は、原紙と無機顔料を含むコート層とを有するコート紙である、請求項8に記載のインクジェット画像形成方法。【請求項10】前記黒色系インクジェット記録用インク組成物と接触することによって、前記黒色系インクジェット記録用インク組成物の成分を凝集可能な処理液を記録媒体上に付与する処理液付与工程をさらに有する、請求項8または請求項9に記載のインクジェット画像形成方法。」
「【技術分野】【0001】本発明は、黒色系インクジェット記録用インク組成物およびインクジェット画像形成方法に関する。」
「【0201】本発明においては、処理液付与工程で処理液を付与した後に画像形成工程を設けた態様が好ましい。すなわち、記録媒体上に、インク組成物を付与する前に、予めインク組成物中の色材(好ましくは顔料)を凝集させるための処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を付与して画像化する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。・・・【0219】記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられるいわゆる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢や擦過耐性など、品質上の問題を生じやすいが、本発明のインクジェット記録方法では、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐擦性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましい。より具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。本発明の画像形成方法によって記録媒体に記録された記録物は、高速記録する場合であっても、耐ブロッキング性に優れた、高精彩で耐擦性にすぐれたインクジェット記録物を得ることができる。」
「【0235】(画像形成)記録媒体としてA4サイズのOKトップコート(坪量104.7g/m2、王子製紙(株)製)を用いて、上記処理液とインク組成物とを組合せて用いて、下記画像記録条件で画像を描画記録した。【0236】続きを表示(全18行)-処理液付与工程-記録媒体へのインク組成物付与による描画の直前に前記処理液を、塗布バーを用いて1.7g/m2になる様に媒体表面に塗設した。【0237】次いで下記条件で処理液が付与された記録媒体を乾燥した。--処理液用乾燥条件(送風乾燥)--風速:15m/s温度:記録媒体の表面温度が60℃となるように記録媒体記録面背面から接触型平面ヒーターで加熱した。送風領域:450mm(乾燥時間0.7秒)【0238】-インク付与形成工程-処理液が付与された記録媒体上に下記条件で、インク組成物を付与して、ベタ画像を形成した。ヘッド :1,200dpi/20inch幅ピエゾフルラインヘッドを4色分配置した。吐出液滴量:2.4pLの記録とした。駆動周波数:30kHz(記録媒体搬送速度635mm/sec)」
3 甲3の記載
甲3には、次の記載がある。
「【請求項1】少なくとも一部が水不溶性樹脂で被覆されたカーボンブラックと、少なくとも一部が水不溶性樹脂で被覆されたシアン顔料と、少なくとも一部が水不溶性樹脂で被覆されたマゼンタ顔料と、水不溶性樹脂の粒子と、水とを含有し、前記カーボンブラックの含有比率が、組成物総量に対して1.0質量%以上2.0質量%以下であり、全顔料の合計量が、組成物総量に対して1.8質量%以上3.5質量%以下である黒色インク組成物。・・・続きを表示(全12行)【請求項9】請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の黒色インク組成物と、前記黒色インク組成物と接触することで凝集体を形成可能な凝集成分を含む処理液と、を有するインクセット。【請求項10】請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の黒色インク組成物を、記録媒体にインクジェット法で付与するインク付与工程と、前記黒色インク組成物と接触することで凝集体を形成可能な凝集成分を含む処理液を、記録媒体に付与する処理液付与工程と、を有する画像形成方法。」
「【技術分野】【0001】本発明は、カーボンブラックを含有する黒色インク組成物、並びにこれを用いたインクセット及び画像形成方法に関する。」
「【0200】<インクセット>本発明のインクセットは、既述の本発明の黒色インク組成物と、該黒色インク組成物と接触することで凝集体を形成可能な凝集成分を含む処理液と、を設けて構成されたものである。本発明のインクセットは、既述の黒色インク組成物が用いられるので、黄色味の少ない黒もしくは中間調色(例えばグレー色)の画像が得られ、形成された画像は例えばシングルパス方式で高速形成したときでも、筋状ムラや色相ムラの発生及びメンテナンスでのヘッドノズルの傷付きの発生が抑えられるので、長期に亘り色味変化の少ない無彩色の高品質画像が得られる。なお、インク組成物の詳細については、既述の通りである。【0201】本発明における処理液は、前記黒色インク組成物と接触したときに凝集体を形成できる水性組成物であり、具体的には、黒色インク組成物と混合されたときに、黒色インク組成物中の着色粒子(顔料、水不溶性樹脂の粒子等)などの分散粒子を凝集させて凝集体を形成可能な凝集成分を少なくとも含有する。また、処理液は、必要に応じて、さらに他の成分を用いて構成することができる。インク組成物と共に処理液を用いることで、インクジェット法による画像形成を高速化でき、高速で画像形成してもスジ状等のムラの発生が少なく、解像度の高い画像が得られる。」
「【0252】<画像記録及び評価>-1.画像記録-GELJET GX5000プリンターヘッド(リコー社製のフルラインヘッド)を備えた評用プリンタを用意し、これに繋がる貯留タンクを上記で得たインクA~Vにそれぞれ詰め替えた。記録媒体としては、特菱アート両面N(水吸収係数Ka=0.21mL/m2・ms1/2;三菱製紙(株)製)を準備した。【0253】そして、特菱アート両面Nを、記録時の副走査方向となる所定の直線方向に500mm/秒で移動可能なステージ上に固定し、これに上記の処理液をワイヤーバーコーターで2.0g/m2となる量にて塗布し、塗布直後に50℃で2秒間乾燥させた。その後、GELJET GX5000プリンターヘッドを、前記ステージの移動方向(副走査方向)と同一平面上で直交する方向(主走査方向)に対して、ノズルが並ぶラインヘッドの方向が75.7°傾斜するように固定配置し、記録媒体を副走査方向に定速移動させながらインク液滴量2.8pL、吐出周波数24kHz、解像度1200dpi×1200dpi、ステージの移動速度50mm/sの吐出条件にてライン方式で吐出し、ベタ画像を印字した。印字直後、60℃で3秒間乾燥させ、更に60℃に加熱された一対の定着ローラ間を通過させ、ニップ圧0.25MPa、ニップ幅4mmにて定着処理を実施し、画像サンプルを得た。続いて、ステージの移動速度を50mm/sから100mm/s、250mm/sに変更し、打滴量が上記と同じになるように吐出周波数を変更した条件にて吐出し、それぞれ画像サンプルを作成した。なお、定着ローラは、内部にハロゲンランプが内装されたSUS製の円筒体の芯金の表面がシリコーン樹脂で被覆された加熱ロールと、該加熱ローラに圧接する対向ロールとで構成されたものである。」
4 甲4の記載
甲4には、次の記載がある。
「【請求項1】顔料、アニオン性基含有樹脂、樹脂エマルジョン、界面活性剤、水溶性溶剤、及び水を含有する水性インクジェット用インク組成物であって、前記水溶性溶剤中、沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤を90質量%以上含有し、前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びシリコーン系界面活性剤を含有し、続きを表示(全12行)前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、HLB値が7以上12以下であり、アルキル基の炭素数が10~15である分岐鎖であり、かつエチレンオキシ基の平均付加モル数が3~10であり、前記シリコーン系界面活性剤は、水99.9質量部、及び前記シリコーン系界面活性剤0.1質量部からなる混合物の、25℃での波長380nmから780nmにおける透過率の最大値(特定透過率1)が30%以下であることの条件を満たし、かつ、水89.9質量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル10質量部、及び前記シリコーン系界面活性剤0.1質量部からなる混合物の、25℃での波長380nmから780nmにおける透過率の最大値(特定透過率2)が95%以上であることの条件を満たすことを特徴とする水性インクジェット用インク組成物。【請求項2】アセチレンジオール系界面活性剤、及びアルカンジオール系界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上の界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の水性インクジェット用インク組成物。【請求項3】前記沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤は、プロピレングリコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性インクジェット用インク組成物。」
「【0005】本発明は、上記の実情に鑑みてなされたのものであり、吐出安定性に優れ、非吸収性印刷媒体に印刷・記録した場合においても、ベタ部の埋まりが良好でムラがなく、さらに、紙面乾燥性に優れる、水性インクジェット用インク組成物を提供することを目的とする。・・・【発明の効果】【0012】本発明の効果の発現機構は定かではないが、以下のように推察される。本発明の水性インクジェット用インク組成物は、上記の特許文献1の配合とは異なり、界面活性剤として、特定のポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用することにより、印刷媒体上に着弾したインク液滴の表面張力を低下させ、ドットの濡れ広がりが良化する。更に、インクが乾燥する過程でインク中の水分が蒸発し、相対的にインク成分中の水溶性溶剤の割合が大きくなった状態でも表面張力を低下させる効果が維持されるため、乾燥のムラを抑制し、インクを均一に乾燥させることができる。したがって、水性インクジェット用インク組成物をコート紙やポリ塩化ビニルシート等の非吸収性印刷媒体にインクジェット印刷・記録した場合においても、インク組成物の吐出安定性に優れ、かつ印刷・記録画像の、ベタ部の埋まりが良好であり、ベタ部のムラがない。また、沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤を特定量以上含有するため、紙面乾燥性に優れる。よって、本発明の水性インクジェット用インク組成物は、これら非吸収性印刷媒体に対して塗工安定性を有し、かつ良好な印刷・記録画像を形成できる。」
「【0045】<界面活性剤>前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びシリコーン系界面活性剤を含有する。【0046】続きを表示(全27行)前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、HLB値が7以上12以下であるノニオン性界面活性剤である。前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、混和性の観点から、HLB値が7.5以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、そして、印刷・記録画像のベタ埋まりを良化させる観点から、11.5以下であることが好ましく、11以下であることがより好ましい。なお、HLB値とは、グリフィン法によって算出される界面活性剤の親水性と親油性の程度を表す指標であり、HLB値が小さいほど親油性が高く、HLB値が大きいほど親水性が高いことを示す。前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。【0047】前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、上記のHLB値を満たせば、アルキル基の炭素数及びエチレンオキシ基の平均付加モル数に制限はないが、例えば、炭素数が10~15程度であることが好ましく、エチレンオキシ基の平均付加モル数が3~10程度であることが好ましい。また、アルキル基が直鎖又は分岐鎖であってもよく、印刷・記録画像のベタ埋まりを良化させる観点から、分岐鎖であることが好ましい。【0048】前記シリコーン系界面活性剤は、ポリシロキサン骨格を有する化合物であり、水99.9質量部、及び前記シリコーン系界面活性剤0.1質量部からなる混合物の、25℃での波長380nmから780nmにおける透過率の最大値(特定透過率1)が30%以下であることの条件を満たし、かつ、水89.9質量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル10質量部、及び前記シリコーン系界面活性剤0.1質量部からなる混合物の、25℃での波長380nmから780nmにおける透過率の最大値(特定透過率2)が95%以上であることの条件を満たすものである。【0049】前記シリコーン系界面活性剤の具体例としては、例えば、特開2016-222754号公報が参考となり、ビックケミー・ジャパン社製のBYK-347、BYK-377、BYK-3455等が挙げられる。前記シリコーン系界面活性剤は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。【0050】<その他の界面活性剤>前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及び前記シリコーン系界面活性剤以外の、その他の界面活性剤として、公知のものが使用できる。とくに、水性インクジェット用インク組成物の印刷・記録画像のベタ埋まりを良好にする効果を有する観点から、アセチレンジオール系界面活性剤、アルカンジオール系界面活性剤が好ましい。【0051】前記水性インクジェット用インク組成物中のポリオキシエチレンアルキルエーテルの割合は、印刷・記録画像のベタ埋まりを良化させる観点から、0.2~2質量%であることが好ましく、0.4~1質量%であることがさらに好ましい。【0052】前記水性インクジェット用インク組成物中のシリコーン系界面活性剤の割合は、インク組成物の印刷・記録画像のベタ部のムラを抑制する効果を高める観点から、0.01~1質量%であることが好ましく、0.05~0.5質量%であることがさらに好ましい。【0053】<水溶性溶剤>前記水溶性溶剤は、沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤を90質量%以上含有する。【0054】前記沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤は、このような沸点を満たす水性インクジェット用インク組成物に使用される公知の水溶性溶剤が特に制限なく使用でき、例えば、モノアルコール類、多価アルコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、窒素含有化合物類等が挙げられる。前記沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。【0055】前記沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤としては、例えば、1-オクタノール(沸点195℃)、2-エチルヘキサノール(沸点184℃)、プロピレングリコール(沸点188℃)、1、2-ブタンジオール(沸点197℃)、エチレングリコール(沸点197℃)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(沸点174℃)、ジエチレングリコール(沸点245℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点188℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点175℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点196℃)等が挙げられる。【0056】前記水性インクジェット用インク組成物中の水溶性溶剤の割合は、インク組成物の吐出安定性、及び非吸収印刷媒体(メディア)上でのインク皮膜の形成を高める観点から、15質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。前記水性インクジェット用インク組成物中の水溶性溶剤の割合は、インク組成物の保存安定性を高める観点から、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。」
「【実施例】【0064】以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものである。・・・続きを表示(全70行)【0069】表1及び2中、BYK-347は、固形分100%、ポリエーテル変性シロキサン型界面活性剤、ビックケミー・ジャパン社製;BYK-3455は、固形分100%、ポリエーテル変性シロキサン型界面活性剤、ビックケミー・ジャパン社製;BYK-333は、固形分100%、ポリエーテル変性シロキサン型界面活性剤、ビックケミー・ジャパン社製;BYK-348は、固形分100%、ポリエーテル変性シロキサン型界面活性剤、ビックケミー・ジャパン社製を示す。【0070】<水性樹脂ワニスの製造>ガラス転移温度45℃、重量平均分子量30,000、酸価185mgKOH/gの、アクリル酸/ラウリルアクリレート/スチレン共重合体(アニオン性基含有樹脂)20質量部を水酸化カリウム2.5質量部と水77.5質量部との混合溶液に溶解させて、固形分20%の水性樹脂ワニスを得た。【0071】<ブラックインクベースの調製>上記水性樹脂ワニスの23.7質量部に水64.3質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。このワニスに、更にカーボンブラック(商品名プリンテックス90、デグサ社製)の12質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、ブラックインクベースを調製した。・・・【0075】<水性インクジェット用インク組成物の製造><実施例1>表3の質量割合になるように、上記のブラックインクベース、プロピレングリコール、界面活性剤として、Triton HW1000(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ノニオン性界面活性剤、DOW社製)とBYK-347、樹脂エマルジョンとしてNeoCryl A-1092(スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、樹脂のガラス転移温度9℃、Covestro Coating Resins社製)及び水を攪拌混合し、実施例1の水性インクジェット用インク組成物を製造した。【0076】<実施例2~14、比較例1~8>各実施例及び各比較例において、使用する原料及びその量を、表3及び4に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、各実施例及び各比較例の水性インクジェット用インク組成物を製造した。【0077】<水性インクジェット用インク組成物の評価>以下の方法により評価し、それらの結果を表3及び表4に示す。【0078】<インク組成物の吐出安定性>上記で得られた水性インクジェット用インク組成物をインクジェットプリンターPX105(エプソン社製)のカートリッジに詰めて、コート紙(OKトップコート+、王子製紙社製)に印字を行い、吐出安定性の評価を行った。合格基準は、△又は〇であればよく、〇がより好ましい。[評価基準]○:印字の乱れがほとんどなく、安定して吐出できるもの△:多少の印字の乱れがあるものの、吐出はできるもの×:吐出できないもの【0079】<紙面乾燥性>上記で得られた水性インクジェット用インク組成物をインクジェットプリンターPX105(エプソン社製)のカートリッジに詰めて、コート紙(OKトップコート+、王子製紙社製)に印字を行い、得られた印刷物を80℃×1分間放置後に、印刷部を綿棒で擦り、インクの付着具合により乾燥性を評価した。合格基準は、△又は〇であればよく、〇がより好ましい。[評価基準]○:インクが全く付着しなかった△:インクが少量付着した×:インクが多量に付着した【0080】<印刷画像のベタ埋まり>上記で得られた水性インクジェット用インク組成物をインクジェットプリンターPX105(エプソン社製)のカートリッジに詰めて、コート紙(OKトップコート+、王子製紙社製)にベタ印字を行い、ベタ印字の形成性について、スジ・白抜けがあるかどうかについて目視にて評価した。合格基準は、△又は〇であればよく、〇がより好ましい。[評価基準]○:スジ・白抜けがないもの△:スジ・白抜けが少しあるもの×:スジ・白抜けが多くあるもの【0081】<印刷画像のベタ部のムラ>上記で得られた水性インクジェット用インク組成物をインクジェットプリンターPX105(エプソン社製)のカートリッジに詰めて、コート紙(OKトップコート+、王子製紙社製)にベタ印字を行い、ベタ印字のムラについて目視にて評価した。合格基準は、△又は〇であればよく、〇がより好ましい。[評価基準]○:印字ムラがないもの△:印字ムラが一部にあるもの×:印字ムラが全体的にあるもの【0082】【表3】[図:0001423470000010.jpg]・・・【0084】表3及び4中、Triton HW1000は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB値が10.9、ノニオン性界面活性剤、DOW社製;Genapol X050は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB値が10.6、ノニオン性界面活性剤、Clariant社製;サンノニック SS-30は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB値が8.0、ノニオン性界面活性剤、三洋化成社製;ニューコール2502Aは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB値が6.3、ノニオン性界面活性剤、日本乳化剤社製;サンノニック SS-70は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB値が12.1、ノニオン性界面活性剤、三洋化成社製;エマルゲン1135S-70は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB値が17.9、ノニオン性界面活性剤、花王社製;Surfynol AD01は、アルカンジオール系界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、EVONIK社製;NeoCryl A-1092は、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、ガラス転移温度が9℃、Covestro Coating Resins社製;NeoCryl A-655は、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、ガラス転移温度が33℃、Covestro Coating Resins社製;ヨドゾールAD173は、アクリル系樹脂エマルジョン、ガラス転移温度が-25℃、ヘンケル社製;モビニール966Aは、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、ガラス転移温度が-32℃、ジャパンコーティングレジン社製;を示す。」
5 甲5の記載
甲5には、次の記載がある。
「【技術分野】【0001】本発明は、良好な発色性と基材上での白抜けの少ない鮮明な画像品質、および、優れたエタノール耐性が得られ、さらに、安定した連続吐出性能の得た水性インクジェットイエローインキ、および前記水性インクジェットイエローインキを含有する水性インクジェットインキセットに関する。」
「【0046】(界面活性剤)本発明のインクジェット記録用インキは、表面張力を調整し低吸収基材上の濡れ性を確保する目的で界面活性剤を使用することができる。界面活性剤としては、アセチレン系、シリコン系、アクリル系、フッ素系など用途に合わせて様々なものが知られているが、インキの表面張力を20mN/m以上確保し、高速印刷時に優れた連続吐出性を得るという観点からアセチレン系やアクリル系、シリコン系の界面活性剤を使用することが特に好ましい。フッ素系の界面活性剤を使用した場合は上記した測定方法で算出される表面張力が低下しやすく、高速で印刷した際に連続吐出安定性が損なう可能性がある。一方で、表面張力が35mN/mを超えると、基材への濡れ性が悪くて白スジが発生し、鮮明な画像品質が得られない。界面活性剤の含有量は、インキの全重量に対して、0.05~5重量%が好ましい。5重量%を超えるとインキの表面張力が低下し高速印刷した際の連続吐出安定性が悪化する。」
6 甲6の記載
甲6には、次の記載がある。
「【技術分野】【0001】本発明は、インクジェット印刷方法に関する。」
「【0048】本発明に係る水性インクは、吐出安定性、印刷画質を向上させる観点から、更に界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤が好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる1種以上がより好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤が更に好ましい。」
7 乙1の記載
乙1には、次の記載がある。(枠線は特許権者が付したものである。)
「[図:0001423470000011.jpg]」
8 乙2の記載
乙2には、次の記載がある。(枠線は特許権者が付したものである。)
(1)「[図:0001423470000012.jpg]」
(2)「[図:0001423470000013.jpg]」
9 乙3の記載
乙3には、次の記載がある。
(1)「[図:0001423470000014.jpg][図:0001423470000015.jpg][図:0001423470000016.jpg][図:0001423470000017.jpg]」
(2)「[図:0001423470000018.jpg]」
第6 当審の判断
1 前記第4の3の取消理由通知に記載した取消理由1(進歩性欠如)について
(1)甲4に記載された発明
甲4の段落【0064】、【0069】~【0071】、【0075】、【0076】、【0082】、【0084】の実施例についての記載及びの表3の実施例11に記載されたインクジェット用インク組成物に着目して整理すると、甲4には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものと認められる。
<甲4発明>
「インクベースとして、重量平均分子量30,000、酸価185mgKOH/gの、アクリル酸/ラウリルアクリレート/スチレン共重合体(アニオン性基含有樹脂)20質量部を水酸化カリウム2.5質量部と水77.5質量部との混合溶液に溶解させて得られた、固形分20%の水性樹脂ワニス23.7質量部に、水64.3質量部を加え混合して得られた顔料分散用樹脂ワニスに、カーボンブラック12質量部を加えて、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行って得られたブラックインクベースを33.0質量%含み、水溶性溶剤として、プロピレングリコールを30.0質量%含み、エマルジョンとして、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョンであるNeoCryl A-1092を固形分として2.4質量%含み、界面活性剤として、アルカンジオール系界面活性剤であるSurfynol AD01を0.5質量%と、ポリエーテル変性シロキサン型界面活性剤であるBYK-347を0.2質量%と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであり、ノニオン系界面活性剤であるTriton HW1000を0.5質量%とを含み、水を33.4質量%含む、水性インクジェット用インク組成物。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲4発明を対比すると、甲4発明の「カーボンブラック」、「水溶性溶剤」、「スチレン-アクリル系樹脂エマルジョンであるNeoCryl A-1092」、「界面活性剤」、「水」、「水性インクジェット用インク組成物」はそれぞれ、本件発明1の「顔料(A)」、「水溶性有機溶媒(B)」、「樹脂エマルション(C)」、「界面活性剤(D)」、「水(E)」、「インクジェット印刷用インク組成物」に相当し、甲4発明の「ポリエーテル変性シロキサン型界面活性剤であるBYK-347」、「ポリオキシエチレンアルキルエーテルであり、ノニオン系界面活性剤であるTriton HW1000」はそれぞれ、本件発明1の「シリコーン系界面活性剤(D-2)」、「アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)」に相当する。
また、甲4発明の水溶性溶剤である「プロピレングリコール」は、分子内に2つの水酸基を有するものであり、本件明細書の段落【0024】には、プロピレングリコールのSP値(25℃)は12.6(cal/cm3)1/2であることが記載されているから、甲4発明は、本件発明1の「前記水溶性有機溶媒(B)は、その分子内に2以上の水酸基を有し、かつ12.0(cal/cm3)1/2以上の、式:「{(ΔH-RT)÷(M÷D)}1/2」(式において、ΔHは蒸発潜熱(cal/mol)、Rは気体定数(1.99(cal/K・mol))、Tは温度(K)、Mは分子量(g/mol)、Dは密度(g/cm3)を示す)で算出される25℃(298K)でのSP値を有し」という発明特定事項を充足する。
さらに、甲4発明は、水溶性溶媒であるプロピレングリコールを、30.0質量%含み、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョンは固形分を2.4質量%含むから、本件発明1の「前記水溶性有機溶媒(B)のインク組成物に対する含有量は15.0~50.0質量%であり」、「前記樹脂エマルション(C)のインク組成物に対する固形分含有量は0.1~10質量%であり」という発明特定事項を充足する。
そして、甲4発明の界面活性剤(「Surfynol AD01」と「BYK-347」と「Triton HW1000」)の合計含有量は、1.2(=0.5+0.2+0.5)質量%であり、アルコールエトキシレート系界面活性剤である「Triton HW1000」の含有量は0.5質量%であり、シリコーン系界面活性剤である「BYK-347」とアルコールエトキシレート系界面活性剤である「Triton HW1000」との質量含有比率は、0.4(=0.2/0.5)であるから、本件発明1の「前記界面活性剤(D)のインク組成物に対する合計含有量は0.5質量%以上かつ2.0質量%以下であり」、「前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)のインク組成物に対する含有量は、0.1~1.0質量%であり」、「前記シリコーン系界面活性剤(D-2)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)との質量含有比率[(D-2)/(D-3)]が、0.1~2.0であり」という発明特定事項を充足する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「顔料(A)、水溶性有機溶媒(B)、樹脂エマルション(C)、界面活性剤(D)、および水(E)を含有する、インクジェット印刷用インク組成物であって:前記水溶性有機溶媒(B)は、その分子内に2以上の水酸基を有し、かつ12.0(cal/cm3)1/2以上の、式:「{(ΔH-RT)÷(M÷D)}1/2」(式において、ΔHは蒸発潜熱(cal/mol)、Rは気体定数(1.99(cal/K・mol))、Tは温度(K)、Mは分子量(g/mol)、Dは密度(g/cm3)を示す)で算出される25℃(298K)でのSP値を有し;前記水溶性有機溶媒(B)のインク組成物に対する含有量は15.0~50.0質量%であり;前記樹脂エマルション(C)のインク組成物に対する固形分含有量は0.1~10質量%であり;前記界面活性剤(D)が、シリコーン系界面活性剤(D-2)と、アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)と、を含み;前記界面活性剤(D)のインク組成物に対する合計含有量は0.5質量%以上かつ2.0質量%以下であり;前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)のインク組成物に対する含有量は、0.1~1.0質量%であり;前記シリコーン系界面活性剤(D-2)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)との質量含有比率[(D-2)/(D-3)]が、0.1~2.0である、インクジェット印刷用インク組成物。」
<相違点4-1>
本件発明1は、界面活性剤(D)が、アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)とシリコーン系界面活性剤(D-2)とアルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)とを含み、前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記シリコーン系界面活性剤(D-2)との質量含有比率[(D-1)/(D-2)]が、1.0~10.0であり、前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)との質量含有比率[(D-1)/(D-3)]が、0.1~10.0であるのに対して、甲4発明は、界面活性剤(D)が、シリコーン系界面活性剤(D-2)とアルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)に加え、アセチレングリコール系界面活性剤ではなく、アルカンジオール系界面活性剤であるSurfynol AD01を0.5質量%含み、アルカンジオール系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤(D-2)の質量含有量比率が2.5(=0.5/0.2)であり、アルカンジオール系界面活性剤とアルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)の質量含有量比率が1.0(=0.5/0.5)である点。
<相違点4-2>
本件発明1は、インクジェット印刷用インク組成物が、1分あたり30枚以上のA4縦サイズの被印刷物を印刷可能なインク吐出周波数での印刷に用いるためのものであることが特定されているのに対して、甲4発明では、そのような特定がされていない点。
(イ)判断
まず、相違点4-1について検討する。
甲4発明は、界面活性剤(D)が、シリコーン系界面活性剤(D-2)とアルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)に加え、アセチレングリコール系界面活性剤ではなく、アルカンジオール系界面活性剤であるSurfynol AD01を0.5質量%含むものである。
そして、甲4の段落【0050】には、「前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及び前記シリコーン系界面活性剤以外の、その他の界面活性剤として、公知のものが使用できる。とくに、水性インクジェット用インク組成物の印刷・記録画像のベタ埋まりを良好にする効果を有する観点から、アセチレンジオール系界面活性剤、アルカンジオール系界面活性剤が好ましい。」と記載されており、本件明細書の段落【0033】~【0036】に記載の「アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)」の定義からすると、甲4に記載された上記「アセチレンジオール系界面活性剤」は、本件発明1の「アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)」に含まれるものと認められる。
しかしながら、乙1には、本願明細書の段落【0039】や実施例において、アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)として例示される「サーフィノール465」は、水への溶解度が「可溶」であることが記載される一方で、甲4発明のアルカンジオール系界面活性剤であるSurfynol AD01(サーフィノールAD01)は、水への溶解度が「0.06%」であることが記載されている(上記第5の7を参照)。
また、乙2には、アセチレングリコール系界面活性剤である「オルフィンE1004」、「オルフィンE1006」、「オルフィンE1010」、「オルフィンE1020」、「オルフィンE1030W」の0.1%溶液は、無色透明であることが記載されており(上記第5の8(1)、(2)を参照)、これらの界面活性剤の水への溶解度は、少なくとも0.1%以上であり、アルカンジオール系界面活性剤である「Surfynol AD01」の水へ溶解度よりも大きいことが認められる。
そうすると、甲4には、アセチレンジオール系界面活性剤と、アルカンジオール系界面活性剤が並列的に記載されているものの、両者が、必ずしも、同等の物性を有するとは限らないことが理解される。
さらに、本願明細書の実施例1~16、18~35のインク組成物は、アセチレングリコール系界面活性剤を含む一方で、アルカンジオール系界面活性剤を含まないものであり、いずれも、保存安定性は、「○:粘度変化率が5%未満のもの」又は「△:粘度変化率が5%以上、10%未満のもの」であることが示されているところ、乙3には、本願明細書の実施例1のインク組成物のアセチレングリコール系界面活性剤である「サーフィノール465」を、アルカンジオール系界面活性剤である「Surfynol AD01」に置き換えた参考比較例のインク組成物は、保存安定性が劣ることが示されている(上記第5の9(1)、(2)を参照)。
また、甲2、甲3、甲5、甲6には、アセチレングリコール系界面活性剤が、インク組成物の保存安定性を高めることについては記載も示唆もされていない。
そうすると、アルカンジオール系界面活性剤とアセチレングリコール系界面活性剤は、必ずしも、同等の物性を有するものではなく、アセチレングリコール系界面活性剤を用いた場合と比較して、アルカンジオール系界面活性剤を用いた場合に、インク組成物の保存安定性が劣る場合があること、アセチレングリコール系界面活性剤がインク組成物の保存安定性を向上できるという技術常識の存在も認められないことを考慮すれば、甲4発明のアルカンジオール系界面活性剤を、アセチレングリコール系界面活性剤に置き換えたものが、甲4発明と同等の効果を奏するに過ぎないものともいえないし、良好な保存安定性が得られることが予測できたともいえない。
してみれば、本件発明1により奏される効果は、当業者が出願当時に本件発明1の構成が奏するであろうと予測できた効果と比較して、顕著で予測できないものといえる。
したがって、本件発明1は、相違点4-2について検討するまでもなく、甲4発明、及び、甲2~甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
(ウ)申立人の主張
申立人は、令和6年9月18日提出の意見書において、以下のとおり主張する。
(主張1)
甲第4号証の請求項2には、アセチレングリコール系界面活性剤とアルカンジオール系界面活性剤が択一的に記載されており、両者の水溶解度が異なろうと、甲第4号証の記載に接した当業者にとって、本件特許出願前に甲4発明のアルカンジオール系界面活性剤を、アセチレングリコール系界面活性剤に置き換えることに、当業者は容易に想到することができたものである。
(主張2)
訂正発明1のインク組成物が奏する効果は、吐出安定性が高く、かつ高品質な画質を有する印刷物を提供することであり(本件明細書段落【0010】)、保存安定性に優れることではない。
また、参考比較例のインク組成物に含まれる樹脂エマルションは「AQUACER531(BYK社:ポリエチレン樹脂)」であり、甲4発明のインク組成物が含む樹脂エマルション「NoeCryl A-1092(Covestro Coating Resin社製:スチレン-アクリル樹脂)」と比較して、極性が低いことは明らかであり、この極性が低い樹脂微粒子を含むポリエチレン樹脂のエマルションと、水溶解性が低いアルカンジオール系界面活性剤「Surfynol AD01」とを含有する参考比較例のインク組成物の保存安定性が、特許出願人が好適な組み合わせであると認識している実施例1のインク組成物の保存安定性と比較して劣るとの結果は、特許権者が意見書で主張する技術常識に基づけば当然の結果であり、本件発明1が、甲第4号証からは予測できない顕著な効果を有するとは、到底考えられない。
以下、上記主張について検討する。
a 主張1について
上記(イ)で検討したとおり、アセチレンジオール系界面活性剤とアルカンジオール系界面活性剤が、必ずしも、同等の物性を有するとは限らず、甲4発明のアルカンジオール系界面活性剤を、アセチレングリコール系界面活性剤に置き換えた場合に、良好な保存安定性が得られるとは必ずしもいえない。
そうすると、本件発明1により奏される効果は、当業者が出願当時に本件発明1の構成が奏するであろうと予測できた効果と比較して、顕著で予測できないものであるから、アルカンジオール系界面活性剤を、アセチレングリコール系界面活性剤に置き換えることは、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
よって、上記主張1は採用できない。
b 主張2について
本件明細書の段落【0095】~【0097】の表1~表3には、アセチレングリコール系界面活性剤を含む一方で、アルカンジオール系界面活性剤を含まない実施例1~16、18~35のインク組成物について、いずれも、保存安定性は、「○:粘度変化率が5%未満のもの」又は「△:粘度変化率が5%以上、10%未満のもの」であることが示されているから、本件発明1のインク組成物が、保存安定性に優れるという効果を奏しないということはできない。
また、令和6年8月15日に特許権者により提出された意見書において、特許権者は、樹脂エマルションの極性と、界面活性剤の水溶解性が、インク組成物の保存安定性に影響を与えることについて述べているが、それが出願当時の技術常識だったという具体的な証拠に基づいて主張しているわけではないので、その主張を根拠に、本件発明1の効果を否定することはできない。
仮に、樹脂エマルションの極性と、界面活性剤の水溶解性が、インク組成物の保存安定性に影響を与えることが出願当時の技術常識だったとしても、特許権者が、アルカンジオール系界面活性剤を用いたものが、保存安定性が劣るという具体的な証拠を提示しているのに対して、申立人は、アセチレングリコール系界面活性剤を用いた場合に、保存安定性に劣ることについて具体的な証拠を提示していない以上、アセチレングリコール系界面活性剤を必須成分として含む本件発明1が、保存安定性について、アルカンジオール系界面活性剤を用いたものと同程度の効果しか奏しないとまではいえない。
よって、上記主張2はその前提に誤りがあって採用できない。
イ 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1を実質的に包含し、さらに特定事項を追加したものであるから、上記アで検討したのと同様の理由により、甲4に記載された発明及び甲2~甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1~4は、甲4に記載された発明及び甲2~甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。
2 前記第4の3の取消理由通知に記載した取消理由2(サポート要件違反)について
(1)前提
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する、いわゆるサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)発明の課題
本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書の【0007】の記載から、「樹脂エマルションを含有する、インクジェット印刷用の水性インク組成物において、その吐出安定性(特に、連続印刷したときの吐出安定性)を安定化させて画質を高めること」であると認められる。
(3)判断
本件発明1は、「界面活性剤(D)のインク組成物に対する合計含有量は0.5質量%以上」であり、界面活性剤の合計含有量の下限が特定されているところ、インクの吐出安定性と界面活性剤の含有量との関係について、本件明細書の段落【0049】には、「本発明のインク組成物に含まれる界面活性剤(D)の含有量(界面活性剤(D-1)、(D-2)及び(D-3)、並びに他の界面活性剤の合計含有量)は・・・0.5質量%以上であることが好ましく・・・また、界面活性剤(D-1)、(D-2)及び(D-3)の合計含有量は、インク組成物に対して・・・0.5質量%以上であることが好ましく・・・界面活性剤(D)の合計含有量が少ないと、インク組成物の表面張力が高くなるため、印刷基材(特に、濡れ性の低い印刷基材)にインク組成物が濡れ広がりにくくなり印刷物の画質が低下しやすくなる。また、インク組成物の印刷における吐出安定性も低下しやすい。」との一般的な記載がある。
また、本件明細書の段落【0095】~【0097】の表1~表3には、実施例1~16、18~35として、界面活性剤の合計含有量が、本件発明1の範囲内である、0.7質量%~1.9質量%のインク組成物が記載されており、それぞれ、吐出安定性の評価が「○:印字の乱れがなく、安定して吐出できるもの」又は「△:多少印字の乱れがあるものの、吐出できるもの」であり、連続吐出安定性の評価が「○:画質が良好で、安定して吐出できるもの」又は「△:多少スジ等画質の劣化が見られるものの、吐出できるもの」であることが具体的に示されている。
また、本件発明1の界面活性剤の合計含有量の下限値は0.5質量%であるところ、その下限値付近のものが、吐出安定性や連続吐出安定性が劣るという合理的な疑いもない。
してみれば、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~4についても、同様の理由により、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
よって、本件出願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものとはいえない。
(4)申立人の主張
申立人は、令和6年9月18日提出の意見書において、以下のとおり主張する。
本件訂正発明1のインク組成物の保存安定性は界面活性剤の水溶解性に大きく影響を受けるのであれば、エチレンオキシドが付加されていないアセチレングリコール系界面活性剤をアセチレングリコール系界面活性剤(D-1)として含む本件訂正発明1のインク組成物は、当業者が本件訂正発明1の効果であると主張する、優れた保存安定性を奏することはないと推認される。
また、本件訂正発明1では、樹脂エマルション(C)の極性も、アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)の水溶解性も、何ら規定されておらず、同一種のモノマーから製造される樹脂エマルションであっても、モノマーの組成により様々な極性の樹脂エマルションが存在することは自明であり、アセチレングリコール系界面活性剤は、その構造により水溶解性が変化することは、乙第1号証及び乙第2号証に記載されているから、本件訂正発明1の樹脂エマルション(C)とアセチレングリコール系界面活性剤(D-1)の組み合わせのすべてにおいて、本件訂正発明1が解決しようとする課題を解決できるものではないと推認される。
以下、上記主張について検討すると、本件発明の解決しようとする課題は、保存安定性の向上ではなく、上記(2)に記載のとおり、「樹脂エマルションを含有する、インクジェット印刷用の水性インク組成物において、その吐出安定性(特に、連続印刷したときの吐出安定性)を安定化させて画質を高めること」であり、本件発明1が当該発明の課題を解決できることは、上記(3)で検討したとおりである。
また、本件明細書の段落【0095】~【0097】の表1~表3には、アセチレングリコール系界面活性剤を含む一方で、アルカンジオール系界面活性剤を含まない実施例1~16、18~35のインク組成物について、いずれも、保存安定性は、「○:粘度変化率が5%未満のもの」又は「△:粘度変化率が5%以上、10%未満のもの」であることが示されているから、本件発明1のインク組成物が、保存安定性に優れるという効果を奏しないということはできない。
よって、上記主張は採用できない。
(5)小括
以上で検討したとおり、本件発明1~4は、発明の詳細な説明及び技術常識に基づいて、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
3 取消理由通知に採用しなかった申立理由1の1(甲1に基づく進歩性欠如)について
(1)甲1に記載された発明
甲1の段落【0158】、【0163】、【0165】~【0167】、【表1】に記載された実験例の白色系インク組成物W6及びその製造についての記載に着目して整理すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(甲1発明)
「30%アンモニア水溶液(中和剤)1質量部を溶解させたイオン交換水75質量部に、樹脂分散剤としてアクリル酸-アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:180)4質量部を加えて溶解させ、そこに、白色系顔料である酸化チタン(C.I.ピグメント白色系6)を20質量部加えてジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散処理を行い、その後、遠心分離機による遠心濾過を行って粗大粒子やゴミ等の不純物を除去し、白色系顔料濃度が20質量%となるように調整した白色系顔料分散液を50質量%と、タケラックW-6061(商品名、三井化学株式会社製、ポリウレタン樹脂エマルジョン、Tg:25℃、30%分散液)を13.33質量%と、AQUACER515(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエチレンワックスエマルジョン、融点135℃、35%分散液)を2.86質量%と、1,2-ヘキサンジオール(水溶性有機溶剤、沸点:224℃)を2質量%と、続きを表示(全13行)プロピレングリコール(水溶性有機溶剤、沸点:189℃)を15質量%と、BYK-348(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、シリコーン系界面活性剤)を0.5質量%と、サーフィノール DF-110D(商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製、アセチレングリコール系界面活性剤)を0.3質量%と、エマルゲン 430(商品名、花王株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤)を0.5質量%と、トリエタノールアミン(pH調整剤)を0.1質量%と、エチレンジアミン四酢酸(キレート化剤)を0.05質量%と、ベンゾトリアゾール(防錆剤)を0.02質量%と、残量がイオン交換水である、白色系インク組成物。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「白色系顔料である酸化チタン(C.I.ピグメント白色系6)」は、本件発明1の「顔料(A)」に相当する。
また、甲1発明の「プロピレングリコール(水溶性有機溶剤、沸点:189℃)」は、本件明細書の段落【0024】に、プロピレングリコールのSP値(25℃)は12.6(cal/cm3)1/2であることが記載されているから、本件発明1の「その分子内に2以上の水酸基を有し、かつ12.0(cal/cm3)1/2以上の、式:「{(ΔH-RT)÷(M÷D)}1/2」(式において、ΔHは蒸発潜熱(cal/mol)、Rは気体定数(1.99(cal/K・mol))、Tは温度(K)、Mは分子量(g/mol)、Dは密度(g/cm3)を示す)で算出される25℃(298K)でのSP値を有」する「水溶性有機溶媒(B)」に相当する。
さらに、甲1発明の「タケラックW-6061(商品名、三井化学株式会社製、ポリウレタン樹脂エマルジョン、Tg:25℃、30%分散液)」及び「AQUACER515(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエチレンワックスエマルジョン、融点135℃、35%分散液)」は、本件発明1の「樹脂エマルション(C)」に相当する。
加えて、甲1発明の「サーフィノール DF-110D(商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製、アセチレングリコール系界面活性剤)」、「BYK-348(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、シリコーン系界面活性剤)」、「エマルゲン 430(商品名、花王株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤)」はそれぞれ、本件発明1の「アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)」、「シリコーン系界面活性剤(D-2)」、「アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)」に相当し、いずれも本件発明1の「界面活性剤(D)」に相当する。
そして、甲1発明の「イオン交換水」は、本件発明1の「水(E)」に相当し、甲1発明の「白色系インク組成物」は、甲1の段落【0010】によると、インクジェット記録方法に用いられるものであるから、本件発明1の「インクジェット印刷用インク組成物」に相当する。
また、甲1発明は、水溶性溶媒であるプロピレングリコールを15質量%含むから、本件発明1の「前記水溶性有機溶媒(B)のインク組成物に対する含有量は15.0~50.0質量%であり」という発明特定事項を充足する。
さらに、甲1発明の「タケラックW-6061」のエマルションに含まれる「ポリウレタン樹脂」は、インク全量に対して、4(=13.33×0.3)質量%であり、「AQUACER515」のエマルションに含まれるポリエチレンワックスは、インク全量に対して、1(=2.86×0.35)質量%であるから、甲1発明は、エマルションのインク全量に対する固形分含有量が、5(=4+1)質量%であり、本件発明1の「前記樹脂エマルション(C)のインク組成物に対する固形分含有量は0.1~10質量%であり」という発明特定事項を充足する。
加えて、甲1発明の界面活性剤(「サーフィノール DF-110D」と「BYK-348」、「エマルゲン 430」)の合計含有量は、1.3(=0.3+0.5+0.5)質量%であり、アルコールエトキシレート系界面活性剤である「エマルゲン 430」の含有量は、0.5質量%であるから、本件発明1の「前記界面活性剤(D)のインク組成物に対する合計含有量は0.5質量%以上かつ2.0質量%以下であり」、「前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)のインク組成物に対する含有量は、0.1~1.0質量%であり」という発明特定事項を充足する。
そして、甲1発明のアセチレングリコール系界面活性剤である「サーフィノール DF-110D」とアルコールエトキシレート系界面活性剤である「エマルゲン 430」との質量含有比は0.6(=0.3/0.5)であり、シリコーン系界面活性剤である「BYK-348」とアルコールエトキシレート系界面活性剤である「エマルゲン 430」との質量含有比は1.0(=0.5/0.5)であるから、本件発明1の「前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)との質量含有比率[(D-1)/(D-3)]が、0.1~10.0であり」、「前記シリコーン系界面活性剤(D-2)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)との質量含有比率[(D-2)/(D-3)]が、0.1~2.0であり」という発明特定事項を充足する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「顔料(A)、水溶性有機溶媒(B)、樹脂エマルション(C)、界面活性剤(D)、および水(E)を含有する、インクジェット印刷用インク組成物であって:前記水溶性有機溶媒(B)は、その分子内に2以上の水酸基を有し、かつ12.0(cal/cm3)1/2以上の、式:「{(ΔH-RT)÷(M÷D)}1/2」(式において、ΔHは蒸発潜熱(cal/mol)、Rは気体定数(1.99(cal/K・mol))、Tは温度(K)、Mは分子量(g/mol)、Dは密度(g/cm3)を示す)で算出される25℃(298K)でのSP値を有し;前記水溶性有機溶媒(B)のインク組成物に対する含有量は15.0~50.0質量%であり;前記樹脂エマルション(C)のインク組成物に対する固形分含有量は0.1~10質量%であり;前記界面活性剤(D)が、アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と、シリコーン系界面活性剤(D-2)と、アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)と、を含み;前記界面活性剤(D)のインク組成物に対する合計含有量は0.5質量%以上かつ2.0質量%以下であり;前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)のインク組成物に対する含有量は、0.1~1.0質量%であり;前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)との質量含有比率[(D-1)/(D-3)]が、0.1~10.0であり、かつ前記シリコーン系界面活性剤(D-2)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)との質量含有比率[(D-2)/(D-3)]が、0.1~2.0である、インクジェット印刷用インク組成物。」
<相違点1-1>
本件発明1は、アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)とシリコーン系界面活性剤(D-2)との質量含有比率[(D-1)/(D-2)]が、1.0~10.0であるのに対して、甲1発明は、その質量含有比率が0.6(=0.3/0.5)である点。
<相違点1-2>
本件発明1は、インクジェット印刷用インク組成物が、1分あたり30枚以上のA4縦サイズの被印刷物を印刷可能なインク吐出周波数での印刷に用いるためのものであることが特定されているのに対して、甲1発明では、そのような特定がされていない点。
(イ)判断
まず、相違点1-1について検討する。
甲1の段落【0108】には、「アセチレングリコール系界面活性剤を用いる場合には、その含有量は、白色系インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。」と記載されており、同段落【0106】には、「シリコーン系界面活性剤を用いる場合には、その含有量は、白色系インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。」と記載されている。
しかしながら、甲1には、アセチレングリコール系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤の質量含有比率(アセチレングリコール系界面活性剤/シリコーン系界面活性剤)を所定の値に調整することについては記載も示唆もされていない。
また、甲2、甲3にも、上記質量含有比率を所定の値に調整することについては記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1~甲3の記載を参酌した当業者が、甲1発明において、アセチレングリコール系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が取り得る含有量の中から特定の組合せを選択して、その質量含有比率を特定の値に調整することを動機付けられるとはいえない。
したがって、相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、及び、甲1~甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
(ウ)申立人の主張
申立人は、異議申立書において、以下のとおり主張する。
甲第1号証には、アセチレングリコール系界面活性剤を含有するインク組成物は、表面張力及びヘッドノズル面等のインク組成物と接触するプリンター部材との界面張力を適正に保つことができるため、これをインクジェット記録方式に適用した場合、吐出安定性を高めることができることが記載されている。
従って、甲第1号証の記載に基づき、アセチレングリコール系界面活性剤の含有量を調整し、アセチレングリコール系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤との質量含有比率[アセチレングリコール系界面活性剤/シリコーン系界面活性剤]を調整することは、当業者が適宜なし得ることである。
上記主張について検討すると、上記(イ)で検討したとおり、甲1~甲3には、アセチレングリコール系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤の質量含有比率を特定の値に調整する動機付けはないから、その質量含有率を本件発明1の数値範囲に調整することは、当業者が適宜なし得ることであるとはいえない。
よって、上記申立人の主張は採用できない。
(エ)まとめ
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1~甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
イ 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1を実質的に包含し、さらに特定事項を追加したものであるから、上記アで検討したのと同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲1~甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1~4は、甲1に記載された発明及び甲1~甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。
4 取消理由通知に採用しなかった申立理由2(明確性要件違反)について
申立人は、申立理由2として、訂正前の請求項1は、界面活性剤(D)のインク組成物に対する合計含有量の下限の値と、アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)のインク組成物に対する含有量の下限の値が同じであり、これらの下限値の整合性がとれていないから、訂正前の請求項1に係る発明は不明確である旨主張する。
しかしながら、訂正後の請求項1は、界面活性剤(D)のインク組成物に対する合計含有量の下限値は0.5質量であり、アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-3)のインク組成物に対する含有量の下限値である0.1質量%と同じではなく、これらの下限値の記載は整合している。
よって、本件発明1~4は明確であるから、本件特許に係る出願は、本件発明1~4についての特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、申立人による特許異議申立書の理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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