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特許異議申立

2024-700164

光学フィルム、光学バリアフィルム、及びバックライトユニット

審判番号
2024-700164
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-505117
登録番号
7331830
請求日
2024年02月22日
審決日
2024年08月23日
公報発行日
2024年09月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】黒木 義樹
  • 【権利者代理人】和田 雄二
  • 【権利者代理人】鈴木 洋平
  • 【異議申立人】居石 美奈
審判長/審判官
  • 審判長 神谷 健一
  • 審判官 関根 洋之
  • 審判官 井口 猶二
分類
P1651.121-Y (G02B) / P1651.536-Y (G02B) / P1651.537-Y (G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条
データ出所
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特許第7331830号発明「光学フィルム、光学バリアフィルム、及びバックライトユニット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7331830号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続等の経緯 特許第7331830号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願(特願2020-505117号)は、2019年(平成31年)3月7日(優先権主張 平成30年3月7日)を国際出願日とする出願であって、令和5年8月15日にその特許権の設定登録がされ、令和5年8月23日に特許掲載公報が発行された。 本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和6年2月22日に特許異議申立人 居石 美奈(以下「特許異議申立人」という。)から請求項1~4に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和6年 4月 2日 :手続補正書(特許異議申立人)の提出 同年 5月27日付け:取消理由通知書 同年 7月29日 :意見書(特許権者)の提出 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、請求項に付す番号を使って、それぞれ、「本件特許発明1」などという。)は、特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 第一フィルム基材と、 前記第一フィルム基材上に形成された光拡散層と、 を備え、 前記光拡散層は、バインダー樹脂と光拡散粒子とを含み、 前記光拡散粒子の個数の10%以上が、その一部を前記光拡散粒子が存在しない周囲近傍よりも突出させることで前記光拡散層の表面に凹凸構造を形成し、かつ、 一部を突出させている前記光拡散粒子の個数の90%以上が、その突出部分を前記バインダー樹脂で被覆されており、 前記光拡散粒子の突出部分を被覆するバインダー樹脂の厚さのうち、前記第一フィルム基材と前記光拡散層との界面により定まる平面から垂直方向にもっとも高い部分を被覆するバインダー樹脂の厚さの平均値が50nm以上1μm以下であり、 前記凹凸構造のある前記光拡散層の平均膜厚により定まる平面からの前記光拡散粒子の突出部分の高さの平均値が、前記光拡散層内の前記光拡散粒子の平均粒子径の10%以上50%未満であり、 前記光拡散層内の前記光拡散粒子の平均粒子径が0.5μm以上10μm以下である、光学フィルム。 【請求項2】 前記光拡散層の表面抵抗率が、1.0×1013Ω/□以下である、請求項1に記載の光学フィルム。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の光学フィルムが備える前記第一フィルム基材の、前記光拡散層が形成された面と反対側の面に、無機酸化物層を備えた第二フィルム基材を貼り合せてなる、光学バリアフィルム。 【請求項4】 請求項3に記載の光学バリアフィルムを備える、バックライトユニット。」 第3 取消しの理由の概要 令和6年5月27日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由は、概略、次のとおりのものである。 理由1(実施可能要件):本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本件特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。 第4 当合議体の判断 令和6年5月27日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由1(実施可能要件)について検討する。 1 特許権者が提出した証拠方法 乙第1号証:特開2017-102389号公報 乙第2号証:国際公開第2016/158192号 乙第3号証:特開2017-177668号公報 乙第4号証:“ワイヤーバー”,[online],三井電気精機株式会社,[令和6年7月24日検索],インターネット <URL:https://www.mitsuiec.co.jp/Wirebar> 以下、乙号証に付された番号を使って、それぞれ、「乙1」などという。 2 光拡散層組成物の使用成分・組成について 本件優先権主張の日前に公開された乙1~乙3に記載された、マット層(光拡散層)組成物の使用成分・組成に関する記載事項を考慮すれば、当業者は、過度な試行錯誤を要することなく、本件特許発明に実施例に係る光拡散層組成物の使用成分・組成(クリア剤、微粒子濃度等)を特定できると認められる。 3 ワイヤーバーの番手・光拡散層組成物の粘度・光拡散層の厚さについて (1)本件特許発明の光拡散粒子の平均粒子径(0.5μm以上10μm以下)及び特許権者が提出した乙1~乙3に記載された光拡散層の厚さ(3μm)を考慮すれば、当業者は、過度な試行錯誤を要することなく、光拡散層の厚さを特定できると認められる。 (2)光拡散層の厚さが特定できれば、当業者は使用するワイヤーバーの番手を特定できると認められる。また、本件特許明細書の【0046】及び【0048】【表1】の記載に基づけば、当業者は光拡散層組成物の粘度を特定できると認められる。 4 まとめ 以上のとおりであるから、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明1~4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 進歩性欠如について (1)特許異議申立人が提出した証拠方法 甲第1号証:特開2017-102389号公報 甲第2号証:国際公開第2016/076322号 甲第3号証:特開2014-130234号公報 甲第4号証:“製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式(JIS B 0601:2013 抜粋を含む)”,[online],株式会社ミスミグループ本社,[令和6年2月7日検索],インターネット <URL:https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td01/g0103.html#notes_01> 以下、甲号証に付された番号を使って、それぞれ、「甲1」などという。 (2)甲1を主引用例とする場合 ア 甲1に記載された発明 甲1には、実施例2に係る以下の光学フィルムの発明(【0062】~【0064】及び【0071】~【0075】【表1】を参照のこと。以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「第一フィルム基材(帝人デュポンフィルム社製のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm)上に、下記のマット層組成物を塗布し、ワイヤーバーコーターによって塗膜を形成し、続いて、この塗膜を80℃30秒間加熱して、塗膜を乾燥させ、この乾燥した塗膜に対して、60℃2日間エージングを行って作製された光学フィルムであって、 マット層が含有する微粒子のロックウェルM硬さスケールにおける硬さ(HRM)が48、マット層が含有する微粒子のロックウェルR硬さスケールにおける硬さ(HRR)が100、マット層の表面抵抗率が8.3×1010Ω/□であり、マット層の厚さは3μmである、光学フィルム。 <マット層組成物> 熱硬化性樹脂100質量部、微粒子10質量部、イソシアネート硬化剤8.5質量部、導電性材料2.0質量部、及び、溶剤70質量部を混合した、マット層組成物。前記熱硬化性樹脂はDIC社製のアクリル樹脂(商品名:アクリディックA-814)であり、前記微粒子はウレタン系微粒子(平均粒子径2μm)であり、前記イソシアネー硬化剤はDIC社製のポリイソシアネート(商品名:バーノックDN-980)であり、前記導電性材料は共栄社化学製の四級アンモニウム塩材料(商品名:ライトエステルDQ100)であり、前記溶剤は酢酸エチルである。」 イ 本件特許発明1について (ア)対比、一致点・相違点 本件特許発明1と甲1発明を対比すると、両者は、下記aの点において一致し、また、下記bの点で相違する。 a 一致点 「第一フィルム基材と、 前記第一フィルム基材上に形成された光拡散層と、 を備え、 前記光拡散層は、バインダー樹脂と光拡散粒子とを含み、 前記光拡散層内の前記光拡散粒子の平均粒子径が0.5μm以上10μm以下である、光学フィルム。」 b 相違点 (相違点1) 本件特許発明1は、「前記光拡散粒子の個数の10%以上が、その一部を前記光拡散粒子が存在しない周囲近傍よりも突出させることで前記光拡散層の表面に凹凸構造を形成」するのに対し、甲1発明は、そのような構成であるのかが明らかでない点。 (相違点2) 本件特許発明1は、「一部を突出させている前記光拡散粒子の個数の90%以上が、その突出部分を前記バインダー樹脂で被覆」されているのに対し、甲1発明は、そのような構成であるのかが明らかでない点。 (相違点3) 本件特許発明1は、「前記光拡散粒子の突出部分を被覆するバインダー樹脂の厚さのうち、前記第一フィルム基材と前記光拡散層との界面により定まる平面から垂直方向にもっとも高い部分を被覆するバインダー樹脂の厚さの平均値が50nm以上1μm以下」であるのに対し、甲1発明は、そのような構成であるのかが明らかでない点。 (相違点4) 本件特許発明1は、「前記凹凸構造のある前記光拡散層の平均膜厚により定まる平面からの前記光拡散粒子の突出部分の高さの平均値が、前記光拡散層内の前記光拡散粒子の平均粒子径の10%以上50%未満」であるのに対し、甲1発明は、そのような構成であるのかが明らかでない点。 (イ)判断 事案に鑑み、相違点2及び3についてまとめて検討する。 相違点2及び3に係る本件特許発明1の構成は、特許異議申立人が提出した甲1~甲4のいずれにも記載も示唆もされていない。また、相違点2及び3に係る構成を具備することが公知の技術、周知慣用技術又は技術常識であることを示す他の証拠を発見することもできない。さらに、甲1発明において、相違点2及び3に係る本件特許発明1の構成を具備する動機付けもないというべきである。 特許異議申立人は、特許異議申立書30~31頁において、甲1発明に甲3に記載された事項を適用し、相違点2及び3に係る構成をなすことは、当業者が容易になし得ることであると主張している。甲3には、光拡散シート1のスティッキング防止層6のビーズ8の裏面側頂部におけるバインダー7の平均被膜厚(D)が0.5μm以上2.0μmであることがさらに好ましい旨記載されている(【0061】)が、スティッキング防止層6は、表面に光拡散層3が積層された基材層2の裏面に積層されるものであって、光拡散層でないから、甲3に記載されたスティッキング防止層6に係る技術的事項を、甲1発明のマット層(光拡散層)に適用することはできないというべきである。 したがって、甲1発明において、相違点2及び3に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件特許発明2~4について 本件特許の特許請求の範囲の請求項2~4は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明2~4は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。そうすると、上記イのとおり、本件特許発明1が、甲1に記載された発明及び甲2~甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明2~4も、甲1に記載された発明及び甲2~甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)甲2を主引用例とする場合 甲2には、特許異議申立書48~49頁に記載された「甲2発明」が記載されていると認められる。 本件特許発明1と甲2発明を対比すると、両者は、少なくとも上記(2)イ(ア)bの相違点2及び3で相違する。 そして、上記相違点2及び3についての判断は、上記(2)イ(イ)のとおりである。 したがって、本件特許発明1は、甲2に記載された発明並びに甲1、甲3及び甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、本件特許発明2~4も、甲2に記載された発明並びに甲1、甲3及び甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 委任省令要件違反について 特許法36条4項1号で委任する経済産業省令(特許法施行規則24条の2)には、「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」を、明細書の発明の詳細な説明に記載すること(委任省令要件)が規定されているところ、委任省令要件で記載することが求められる事項は、「発明の属する技術分野」及び「発明が解決しようとする課題及びその解決手段」である。 本件特許の明細書の発明の詳細な説明についてみると、【技術分野】【0001】には発明の属する技術分野に係る記載がある。 また、同【0005】~【0013】には発明が解決しようとする課題及びその解決手段に係る記載がある。 そうすると、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、特許法施行規則24条の2に定めるところにより記載したものであるといえる。 特許異議申立人は、特許異議申立書62~63頁において、発明の詳細な説明にヘイズ値を38%にする技術上の意義が記載されていないため、委任省令要件を満たしていない旨主張するが、上記のとおりであって、発明の詳細な説明にヘイズ値を38%にする技術上の意義が記載されていなくても委任省令要件を満たしているというべきである。 したがって、本件特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものではない。 3 サポート要件違反について 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 本件特許発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書の【0006】等の記載から、「光拡散層が他の部材と接触するときにそれらを傷付けるリスクや、光拡散粒子が剥落するリスクが低減される光学フィルム、並びにその光学フィルムを備える光学バリアフィルム及びバックライトユニットを提供すること」であると認められる。 そして、本件特許明細書の記載、特に【0045】~【0064】の実施例に関する記載によると、特許請求の範囲に記載された本件特許発明は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。 そうすると、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。 特許異議申立人は、特許異議申立書63~65頁において、本件特許発明の課題には「ヘイズの値が目標値(38%)を達成すること」が含まれる旨主張するが、上記のとおりであって、本件特許発明が解決しようとする課題に「ヘイズの値が目標値(38%)を達成すること」は含まれていないというべきである。 したがって、本件特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものではない。 第6 むすび 請求項1~4に係る特許は、いずれも、取消理由通知書によって通知した取消しの理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700164

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