特許異議申立
2024-700157
データ収集機能を備えた決算開示書類作成システム及びプログラム
- 審判番号
- 2024-700157
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-178509
- 登録番号
- 7330347
- 請求日
- 2024年02月21日
- 審決日
- 2025年04月04日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】宝印刷株式会社
- 【権利者代理人】吉田 雅比呂
- 【異議申立人】小宮山 侑生
- 審判長/審判官
- 審判長 伏本 正典
- 審判官 松田 直也
- 審判官 緑川 隆
- 分類
- P1651.852-YAA(G06Q) / P1651.537-YAA(G06Q) / P1651.536-YAA(G06Q) / P1651.121-YAA(G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7330347号発明「データ収集機能を備えた決算開示書類作成システム及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7330347号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。
特許第7330347号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 経緯
特許第7330347号の請求項1~10に係る特許(以下、本件特許という。)についての出願は、令和4年11月8日に出願され、令和5年8月10日にその特許権の設定登録がされ、同年8月21日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和6年2月21日に特許異議申立人 小宮山 侑生(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年 5月 8日 取消理由通知書(起案日)
令和6年 7月12日 意見書の提出(特許権者)
令和6年 9月 3日 上申書の提出(申立人)
令和6年 9月 9日 審尋(起案日)
令和6年 9月27日 回答書の提出(特許権者)
令和6年10月18日 取消理由通知書(決定の予告)(起案日)
令和6年12月 5日 訂正請求書・意見書の提出(特許権者)
令和6年12月27日 手続補正書(方式)の提出(特許権者)
令和7年 1月20日 通知書(訂正請求があった旨の通知)(起案日)
令和7年 2月18日 意見書の提出(申立人)
第2 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
特許第7330347号の明細書を、本訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり、訂正することを求める。
なお、以下、本訂正請求書でする訂正を「本件訂正」という。
2 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
本件訂正前の明細書の【0039】に記載された「集計シートに転記された数値情報及び文字情報をリンクされた開示書類にそれぞれ転記し、開示書類を作成する開示書類作成手段46とを備えている。」を、「集計シートに転記された数値情報及び文字情報をリンクされた数値入力シートにそれぞれ転記し、開示書類を作成する開示書類作成手段46とを備えている。」に訂正する。
3 訂正についての当審の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
(ア)本件訂正前の明細書の【0039】には、「集計シートに転記された数値情報及び文字情報をリンクされた開示書類にそれぞれ転記し、開示書類を作成する」と記載されており、当該記載は、「集計シート」に含まれる「数値情報及び文字情報」を転記する先を、「開示書類」とするものである。
すなわち、本件訂正は、本件訂正前の明細書の【0039】の数値情報及び文字情報の転記する先を「開示書類」から、「数値入力シート」へと訂正するものである。
以下、当該訂正が、訂正要件である訂正の目的の要件を満たすものであるか検討する。
(イ)出願当初からある、「集計された数値情報及び文字情報をリンクされた数値入力シートにそれぞれ転記し、開示書類を作成するように構成されている。」(【0027】)との記載、さらに、「ステップS60で、入力シートの値を集計シートに自動的に集計、転記する。ここで、情報集計手段45により親会社端末101又は子会社端末102から入力された数値情報及び文字情報を集計するように処理する」(【0049】)、「ステップS100で、数値入力シートに基づいて、開示書類を作成する。」(【0053】)との記載及び【図4】を勘案すると、「開示書類」とは、集計シートに集計された数値情報及び文字情報をリンクされた開示書類作成のための「数値入力シート」に転記されることで作成されるものと解釈される。そのため、【0039】において、「開示書類作成手段46」が「開示書類」を作成するためには、集計シートに集計された数値情報及び文字情報を「数値入力シート」に転記されることを意図していると解釈すべきであって、文言どおりに、「開示書類」を作成するために集計シートに集計された数値情報及び文字情報を「開示書類」に転記されると解釈することは、技術的に適切でない。
(ウ)このように、【0039】の記載を「集計シートに転記された数値情報及び文字情報をリンクされた数値入力シートにそれぞれ転記し、開示書類を作成する開示書類作成手段46とを備えている。」であると解釈しても、【0049】~【0053】、【0061】~【0063】、【図14】、【図15】等との記載と技術的に整合する。
(エ)そうしてみると、訂正前の【0039】の「数値情報及び文字情報」を転記する先を「開示書類」とする記載は、「数値入力シート」の誤記であることが明らかであり、むしろ訂正前の「開示書類」を「数値入力シート」と訂正することで、【0039】の記載は、【0049】~【0053】、【0061】~【0063】、【図14】、【図15】等の記載と整合することは明らかである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
上記アのとおり、訂正事項1は、誤記を訂正したものであって、文言上も本件特許の請求項1とも整合するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求項の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
上記アのとおり、【0027】等には、「集計シート」に含まれる「数値情報及び文字情報」を転記する先を、「数値入力シート」とすることが記載されているから、当該記載と整合させる訂正事項1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 訂正に対する申立人の主張について
(ア)申立人の主張の概要
(主張1)
申立人は、『「数値入力シート」という用語からは、「数値」のみを扱う「入力シート」という技術概念を読み取ることができ、そのような「数値入力シート」に対して、「文字情報」を転記しようとすること自体、当業者は不自然であると考えることから、このような齟齬があったときに、当業者としては、本件特許明細書段落【0039】の「開示書類」が誤記と考えるのではなく、同段落【0027】の「数値入力シート」という用語を用いた説明が全体的に不自然であると考えることが自然であるものと思料する。』(令和7年2月18日提出の意見書5頁)と主張する。
(主張2)
申立人は、「数値入力シート」に「文字情報」を転記することは、本件特許明細書に記載されていないから、訂正事項1は誤記の訂正を目的とするものではない(同意見書5~9頁)と主張する。
(主張3)
申立人は、「文字情報」を転記する先が「数値入力シート」であることは、新規事項の追加に該当する(同意見書11頁)と主張する。
(イ)主張の検討
申立人の上記主張1~3は、【0039】に記載された事項の文言にのみ着目をするものであって、【0039】に記載された「開示書類作成手段46」及び【0038】に記載された「数値入力シート」の有する技術的意義を考慮しないものである。
この点、【0038】に記載された「数値入力シート」の有する技術的意義は、上記ア(イ)のとおり、「この数値入力シートは、図11に示す数値情報に関する集計シートの数値が対応する開示科目に転記されて形成されたものである」(【0062】)から、「開示書類作成手段46」は、集計シートに転記された数値情報及び文字情報をリンクされた「数値入力シート」にそれぞれ転記し、開示書類を作成するものであることは明らかである。
また、「集計シート」について、本件特許明細書には、「数値情報」に関する集計シート(【0058】、【図11】)、「文字情報」に関する入力シート(【0060】、【図13】)が開示されており、「文字情報」を数値入力シートに転記することが明記されてないとしても、当業者であれば試行錯誤するまでもなく、文字情報を数値入力シートへ転記することを実施できるものである。
以上のとおりであるから、申立人が主張する主張1~3に理由はなく、採用できない。
オ 独立特許要件について
本件においては、全ての請求項1~10について特許異議の申立てがなされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合し、同第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
したがって、本件特許明細書を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明10」といい、併せて「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
親会社と少なくとも1つの子会社とからなるグループ会社における決算開示書類作成システムであって、
前記親会社と前記少なくとも1つの子会社に設置された複数の端末のうちアクセスのあった端末に対して、予め作成されたテンプレートに基づいて当該端末に対応したデータ収集用の複数の入力シートを発行する入力シート発行手段と、
前記複数の端末より前記複数の入力シートに入力された連結財務諸表及び注記を含む書類の作成に必要な数値情報及び文字情報を予め作成した集計シートに集計する情報集計手段と、
前記集計シートに集計された数値情報及び文字情報をリンクされた開示書類作成のための数値入力シートにそれぞれ転記し、開示書類を作成する開示書類作成手段とを備え、
前記開示書類作成手段は、前記集計シートで数値調整の必要があるか否かを判断し、前記集計シートで数値調整の必要があると判断された場合、前記親会社の端末により集計シートで数値調整を行うように構成されていることを特徴とするデータ収集機能を備えた決算開示書類作成システム。
【請求項2】
前記開示書類作成手段は、前記複数の端末の全てから前記複数の入力シートへの入力が完了したと判断された場合、前記集計シートに集計された数値情報を、前記数値入力シートの数値入力セルに転記するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のデータ収集機能を備えた決算開示書類作成システム。
【請求項3】
前記子会社の端末に対して、それぞれ専用の入力シートのみにアクセスし、連結財務諸表及び注記の作成に必要な数値情報及び文字情報を入力するアクセス権を管理するアクセス権管理手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ収集機能を備えた決算開示書類作成システム。
【請求項4】
前記テンプレートに基づいて前記入力シートを追加する、又は前記テンプレートに基づかないで新たな入力シートを追加する入力シート追加手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ収集機能を備えた決算開示書類作成システム。
【請求項5】
前記入力シートに添付ファイルの有無を判断し、前記入力シートに添付された添付ファイルを受信する添付ファイル処理手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ収集機能を備えた決算開示書類作成システム。
【請求項6】
親会社と少なくとも1つの子会社とからなるグループ会社におけるデータ収集機能を備えた決算開示書類作成プログラムであって、
コンピュータを、
前記親会社と前記少なくとも1つの子会社に設置された複数の端末のうちアクセスのあった端末に対して、予め作成されたテンプレートに基づいて当該端末に対応したデータ収集用の入力シートを発行する入力シート発行手段と、
前記複数の端末より複数の入力シートに入力された連結財務諸表及び注記の作成に必要な数値情報及び文字情報を予め作成した集計シートに集計する情報集計手段と、
前記集計シートに集計された数値情報及び文字情報をリンクされた開示書類作成のための数値入力シートにそれぞれ転記し、開示書類を作成する開示書類作成手段として機能させ、
前記開示書類作成手段は、前記集計シートで数値調整の必要があるか否かを判断し、前記集計シートで数値調整の必要があると判断された場合、前記親会社の端末により集計シートで数値調整を行う処理を実行させるように構成したことを特徴とするデータ収集機能を備えた決算開示書類作成プログラム。
【請求項7】
前記開示書類作成手段を、前記複数の端末の全てから前記複数の入力シートへの入力が完了したと判断された場合、前記集計シートに集計された数値情報を、前記数値入力シートの数値入力セルに転記するように機能させることを特徴とする請求項6に記載のデータ収集機能を備えた決算開示書類作成プログラム。
【請求項8】
コンピュータを、
前記子会社の端末に対して、それぞれ専用の入力シートのみにアクセスし、連結財務諸表及び注記の作成に必要な数値情報及び文字情報を入力するアクセス権を管理するアクセス権管理手段としても機能させることを特徴とする請求項6又は7に記載のデータ収集機能を備えた決算開示書類作成プログラム。
【請求項9】
コンピュータを、
前記子会社の数が増える場合、前記テンプレートに基づいて前記入力シートを追加する、又は前記テンプレートに基づかないで前記入力シートを追加する入力シート追加手段としても機能させることを特徴とする請求項6又は7に記載のデータ収集機能を備えた決算開示書類作成プログラム。
【請求項10】
コンピュータを、
前記入力シートに添付ファイルの有無を判断し、前記入力シートに添付された添付ファイルを受信する添付ファイル処理手段としても機能させることを特徴とする請求項6又は7に記載のデータ収集機能を備えた決算開示書類作成プログラム。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審で通知した令和6年10月18日付けの取消理由通知(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
本件特許は、発明の詳細な説明の記載の不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 当審の判断
取消理由は、「文字情報」については、【0039】に、集計シートの「文字情報」を「開示書類にそれぞれ転記し、開示書類を作成する」と記載されているものの、「転記」の一般的な意味で解釈すると、「文字情報」を「数値入力シート」にどのように転記することで「開示書類」を作成するのか記載されておらず、当業者であっても理解できない。
また、【0027】には、集計シートに集計された「文字情報」を「数値入力シート」に転記し、開示書類を作成することが記載されている。しかしながら、【0027】の記載は、「文字情報」の転記先を「開示書類」とする【0039】の記載と転記先の対象が整合しておらず、どちらの記載が正しいのか理解できず、さらに、【0039】の記載が正しい場合、上述した「転記」の解釈の点で、どのように「開示書類」を作成するのか理解できないというものである。
しかし、訂正事項1による訂正により、訂正前の【0039】に記載された「開示書類」が「数値入力シート」に訂正されたから、「転記」を一般的な意味(「記載事項を他に書き写すこと。「控えから原簿に―する」」(インターネット辞書「goo」))で解釈することで、「文字情報」を「数値入力シート」に転記し、「開示書類」を作成することが理解でき、上記取消理由は解消した。
3 申立人の意見について
申立人は、令和7年2月18日提出の意見書(13頁4行~8行)において、「特許権者は『「数値入力シート」に転記された文字情報は、そのまま「開示書類」に転記される』と主張しているが、何故『「数値入力シート」に転記された文字情報が、そのまま「開示書類」に転記される』だけで、「開示書類」が作成できるのかについても、本件特許明細書及び図面には記載されていない。」と主張している。
しかしながら、上記第2・3(1)エ(イ)で指摘したとおりであるから、「文字情報」を「開示書類」の所定の箇所に、単に転記する処理は、当業者にとって、過度の試行錯誤を必要とするものとはいえず、当該主張は理由がない。
また、申立人は、同意見書(13頁10行~最終行)において、「数値情報」及び「文字情報」を、そのまま単に「開示書類」に転記することにより、何故、「同じ項目に関する情報であっても、提示の仕方や表現形態が異なる」「開示書類」を作成できるのかについて、本件特許明細書及び図面には記載されていない旨主張している。
しかしながら、本件特許の請求項1~10には、「同じ項目に関する情報であっても、提示の仕方や表現形態が異なる」「開示書類」を作成することは記載されておらず、当該主張は、本件特許の請求項1~10の記載に基づくものではないから、採用できない。
第5 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人の提出した証拠
申立人は、次の甲第1号証~甲第5号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲5」という。)を証拠として提出している。
甲第1号証:ディーバと宝印刷が連結会計データの自動連携機能「X-transfer」機能を拡張、[online]、2020年12月14日、株式会社PR TIMES、[検索日2024年2月5日]、インターネット<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000174.000016467.html>
甲第2号証:株式会社ナレッジパートナーズ編「連結パッケージマニュアル」、第2版、デザインエッグ株式会社、2017年10月30日、第7~9、40、41、139、140、144、145、153、154頁
甲第3号証:新明解国語辞典、第八版、株式会社三省堂、2020年10月30日、第701頁、第1654頁
甲第4号証:三省堂国語辞典、第八版、株式会社三省堂、2022年1月10日、第668頁
甲第5号証:連結財務諸表、[online]、フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」、[検索日2024年2月6日]、インターネット<https://jp.wikipedia.org/wiki/%E9%80%A3%E7%B5%90%E8%B2%A1%E5%8B%99%E8%AB%B8%E8%A1%A8>
2 申立理由の概要
申立人が特許異議申立書で主張する理由のうち、取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった理由は、概略、次のとおりである。
(1)理由1(明確性)
本件特許発明1~10は明確ではないから、本件特許に係る出願は特許法第36条第6項2号に規定する要件を満たしていない。
(2)理由2(サポート要件)
本件特許発明1~10は、本件特許明細書及び図面に記載されたものではないから、本件特許に係る出願は特許法第36条第6項1号に規定する要件を満たしていない。
(3)理由3(実施可能要件)
本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許発明1~10の属する技術分野における通常の知識を有する者が、その実施をすることができる程度に明確且つ十分に記載したものではないので、本件特許に係る出願は特許法第36条第4項1号に規定する要件を満たしていない。
(4)理由4(進歩性)
本件特許発明1~10は、甲1に記載された発明、甲2の記載事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本件特許発明1~10は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 理由1(明確性)について
(1)申立人の主張の概要
ア 特許異議申立書において、本件特許の請求項1には、「数値情報及び文字情報を予め集計シートに集計する」との記載があるが、通常「集計」という用語は数値を合計することに用いられる用語であって、「文字情報を・・・集計する」という表現が、具体的にどのような技術的概念を指しているのか、明細書及び図面の記載を勘案しても明確ではない。(申立書24頁)
イ 特許異議申立書において、本件特許発明は「決算開示書類」を作成するためのものであるから、その過程で「決算開示書類」に関する法令等に則って、各種の集計作業を繰り返す必要があるが、本件特許の請求項1の記載では、それら各種の集計作業のすべてを「情報集計手段」が担うのか、それとも、それら集計作業の一部を「情報集計手段」が担い、その残りを「開示書類作成手段」が担うのか、明らかではない。(申立書24頁)
ウ 特許異議申立書において、本件特許の請求項1には、「前記集計シートに集計された数値情報及び文字情報をリンクされた開示書類作成のための数値入力シートにそれぞれ転記し、開示書類を作成する開示書類作成手段とを備え」との記載があるが、「リンク」という用語は、「二つ(以上)の事柄を関連付ける(連動させる)こと」という意味を有しているにもかかわらず、本件特許の請求項1の記載では、関連付けられる一方は「開示書類作成のための数値入力シート」であることは明らかであるが、関連付けられる他方が何を指しているのか、明らかではない。(申立書24頁)
エ 特許異議申立書において、本件特許の請求項1の記載では、「開示書類作成のための数値入力シート」と、最終的に作成される「開示書類」との関係が明らかではない。(申立書24頁)
オ 特許異議申立書において、本件特許の請求項1の記載のみでは、本件特許発明1が具体的にどのようなアルゴリズムを用いて、「前記集計シートで数値調整の必要があるか否かを判断」しているのか明らかではない。(申立書24頁)
カ 特許異議申立書において、本件特許の請求項1には「数値調整」という用語が用いられているが、本件特許の請求項1の記載のみでは、この「数値調整」が、どの項目を対象とし、どのような目的で行われ、どのような調整なのか明らかでない旨を主張する。(申立書24頁)
キ 特許異議申立書において、本件特許の請求項1では「数値情報及び文字情報」を「転記」することになっているが、本件特許の請求項2では「数値情報」のみを「転記」することになっており、互いに矛盾している。(申立書25頁)
(2)当審の判断
ア (1)アの主張について
請求項1には「複数の入力シートに入力された」「文字情報」を「集計シートに集計する」と記載されており、文言上明確であって、その技術的意味は、本件特許明細書の【0060】、【0061】、【図13】、【図14】を参照すれば明確である。そして、請求項1の当該記載によって、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
よって、申立人の主張に理由はなく採用できない。
イ (1)イの主張について
請求項1の記載は、「情報処理手段」が、「複数の入力シートに入力された」「数値情報及び文字情報」を「集計シートに集計」し、「開示書類作成手段」が「前記集計シートに集計された数値情報及び文字情報」を「数値入力シートにそれぞれ転移し、開示書類を作成する」ことを特定しているのであって、「繰り返される各種の集計作業」について特定するもののではない。
よって、申立人の主張は、請求項1の記載の基づくものではないため、失当である。
ウ (1)ウの主張について
請求項1の記載は、関連付けられる一方が「開示書類作成のための数値入力シート」であることを特定するものであって、関連付けられる他方が特定されていないからといって、明確でないとはいえない。
よって、申立人の主張に理由はなく採用できない。
エ (1)エの主張について
請求項1の「数値入力シート」は、「開示書類作成のため」のものであるから、請求項1の記載において、「数値入力シート」は、「開示書類」を作成するために用いられるシートであることが、その記載自体から明確である。
よって、申立人の主張に理由はなく採用できない。
オ (1)オの主張について
請求項1の記載では、「開示書類作成手段」が、「集計シート」で「数値調整の必要があるか否かを判断」する機能を有することが特定されており、明確であって、そのような機能を有することを特定するのであれば、判断するためのアルゴリズムを具体的に特定することは、明確性の要件ではない。
よって、申立人の主張は失当である。
カ (1)カの主張について
請求項1の「前記集計シートで数値調整の必要があるか否かを判断し」との記載によれば、「数値調整」は、「集計シート」で行われればよいこと特定されており明確であって、調整する項目や調整する具体的内容ことは、明確性の要件ではない。
よって、申立人の主張は失当である。
キ (1)キの主張について
請求項2は、請求項1の「前記集計シートに集計された数値情報及び文字情報をリンクされた開示書類作成のための数値入力シートにそれぞれ転記し、開示書類を作成する開示書類作成手段」の「開示書類作成手段」が、「前記複数の端末の全てから前記複数の入力シートへの入力が完了したと判断された場合、前記集計シートに集計された数値情報を、前記数値入力シートの数値入力セルに転記する」との機能を有すること特定するにすぎないから、請求項1の記載と矛盾する点はなく、明確である。
よって、申立人の主張に理由はなく採用できない。
(3)小括
以上のとおり、本件特許発明1~10は明確である。
4 理由2(サポート要件)について
(1)申立人の主張の概要
ア 特許異議申立書において、本件特許の請求項1には、「前記集計シートに集計された数値情報及び文字情報をリンクされた開示書類作成のための数値入力シートにそれぞれ転記し、開示書類を作成する開示書類作成手段とを備え」との記載があるが、本件特許明細書及び図面には、「文字情報」が「転記」されることについては、何ら記載がない。(申立書25頁)
イ 特許異議申立書において、本件特許の請求項1の「数値調整」という用語が表現しようとしている技術概念が「連結調整」という技術概念を含むとしても、本件特許の請求項1の「数値調整」という用語が表現しようとしている技術概念の範囲内でありながら、「連結調整」とは異なる技術概念については、本件特許明細書及び図面に記載されているとはいえない。(申立書25~26頁)
ウ 特許異議申立書において、本件特許発明は「テンプレート」に基づいた「入力シート」を用いることが、発明の課題を解決するための手段であるが、本件特許発明4は「前記テンプレートに基づかないで新たな入力シートを追加する」ことができるものであるから、本件特許発明4は、発明の課題を解決するための手段を欠くものであって、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えたものである。(申立書26頁)
(2)当審の判断
ア (1)アの主張について
本件特許明細書の【0016】には、「集計シートに集計された数値情報をリンクされた開示書類作成のための数値入力シートにそれぞれ転記し、開示書類を作成する開示書類作成手段とを備えている。」と記載されており、【0027】には、「そして、集計された数値情報及び文字情報をリンクされた数値入力シートにそれぞれ転記し、開示書類を作成するように構成されている。」と記載されている。
よって、申立人の主張に理由はなく採用できない。
イ (1)イの主張について
本件特許明細書の【0027】には、「次いで、ステップS70で、集計シートで数値調整の必要があるか否かを判断する。ここで、集計シートで数値調整の必要があると判断された場合(Yesの場合)は、ステップS71で、親会社端末101により集計シートで数値調整を行う。一方、集計シートで数値調整の必要がない判断された場合(Noの場合)は、ステップS80へ進む。」と記載されており、「数値調整」の必要があるか否かを判断することが記載されている。
よって、申立人の主張に理由はなく採用できない。
ウ (1)ウの主張について
本件特許発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書の【0007】、【0014】の記載からみて、「連結財務諸表及び注記に必要な情報をグループ内の各社から集め、連結調整を行った上で、連結決算開示書類を作成することができるデータ収集機能を備えた決算開示書類作成システム及びプログラムを提供すること」にあるといえる。そして、その課題は、本件特許発明1において解決できるのであるから、本件特許発明1に、さらに、要件を付加してなる本件特許発明4においても、同様に当該課題を解決できるものである。
よって、申立人の主張に理由はなく採用できない。
(3)小括
以上のとおり、本件特許発明1~10は、発明の詳細な説明に記載したものである。
5 理由3(実施可能要件)について
(1)申立人の主張の概要
ア 特許異議申立書において、本件特許の請求項1には「前記複数の端末より前記複数の入力シートに入力された連結財務諸表及び注記を含む書類の作成に必要な数値情報及び文字情報を予め作成した集計シートに集計する情報集計手段と」との記載があるが、本件特許明細書及び図面には「文字情報を・・・集計する」に関して、どのような具体的な処理を行うかについて、何ら明示的な記載がない。(申立書27頁)
イ 特許異議申立書において、本件特許の請求項1には「前記開示書類作成手段は、前記集計シートで数値調整の必要があるか否かを判断し」と記載されているが、本件特許明細書及び図面には、「前記集計シートで数値調整の必要があるかを判断」を実際にどのようにして「開示書類作成手段」が行うかについて、何ら具体的な記載がない旨を主張する。(申立書27頁)
(2)当審の判断
ア (1)アの主張について
記3(2)アで検討したように、本件特許明細書及び図面(【0060】【0061】、【図13】、【図14】)を参酌すれば、「文字情報」については、「数値情報」と類似の手法で実施できることは、当業者であれば理解できる。
よって、申立人の主張に理由はなく採用できない。
イ (1)イの主張について
本件特許明細書【0042】~【0053】、【図4】には「連結決算開示書類作成」の処理が開示されている。その中で、【0050】で集計シートの調整に関する事項が開示されている。そして、本件特許明細書【0064】には、「即ち、連結財務諸表及び注記に必要な情報(非会計情報を含む)を各子会社等から集め、連結調整を行った上で、連結決算開示書類を作成することができる。」と記載されていることを勘案すると、「連結決算開示書類作成」のために必要な数値調整が行われるものであって、当該書類作成のルールに従って数値調整が必要であるかを判断すれば足りることは当業者であれば理解できるものであって、試行錯誤を要するものとはいえない。
そうすると、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許発明1について、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
よって、申立人の主張に理由はなく採用できない。
(3)小括
以上のとおり、発明の詳細な説明は、当業者が、本件特許発明1~10の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
6 理由4(進歩性)についての当審の判断
(1)甲1の記載及び甲1発明
ア 甲1に記載されている事項
本件特許の出願前である2020年12月14日に公開された甲1には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「
[図:0001424568000001.jpg]
」
上記によれば、甲1には、以下の事項が記載されているといえる。
(ア)「アバントグループで連結会計、グループ・ガバナンスのソリューションを提供する株式会社ディーバ(本社:東京都港区、代表取締役社長:森川 徹治、以下 ディーバ)と、TAKARA&COMPANYグループで、ディスクロージャー関連のシステムを提供する宝印刷株式会社(本社:東京都豊島区、代表取締役社長:堆 誠一郎、以下宝印刷)は、ディーバの連結会計システム「DivaSystem LCA」と宝印刷の開示書類自動作成システム「X-Smart.AdvanceおよびX-Smart.Basic」(以下「X-Smart.Advance/Basic」)にWeb経由でダイレクトに連携する機能「X-transfer」の機能拡張を行う」(下線は、当審にて付した。以下同様。)との記載、及び「■2. 「X-transfer」機能概要」の項の図面から、甲1には、ティーバ社の連結会計システム「DivaSystem LCA」と宝印刷社の開示書類自動作成システム「X-Smart.Advance/Basic」が連携用API「X-transfer」を介して連携するシステムであることが記載されているといえる。
(イ)「従来の有価証券報告書作成の基本情報となる連結貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書に加え、連結株主資本等変動計算書、包括利益計算書、セグメント情報、個別財務諸表、グループ会社の会社法計算書類の作成を目的としたグループ会社の財務諸表データまで連携範囲を拡張したバージョンを2020年12月24日にリリースします。」との記載から、甲1には、グループ会社の財務諸表データまで連携範囲を拡張したものであることが記載されているといえる。
(ウ)「近年の連結決算業務と開示書類作成業務のシームレス化に対するお客様のニーズは非常に高く、更なる効率化と内部統制強化の一歩として、2018年より「X-transfer」の提供を開始しております。継続的なサービス向上に向けた両社の意見交換の中で、同一メンバーでの兼務となることの多い連結決算および開示業務を、双方のシステム間のシームレスな連携をベースとして本質的に「一つの業務」と捉えられないかとの想いに至り、このたび「連結決算~開示決算の標準業務プロセス統合オートメーション」として整備することとなりました。」との記載から、甲1には、連結決算および開示業務を、双方のシステム間のシームレスな連携をするものであることが記載されているといえる。
(エ)「「DivaSystem LCA」で連結精算表、キャッシュ・フロー精算表、連結株主資本等変動計算書、包括利益計算書、親会社およびグループ会社の個別財務諸表データの連携データ作成処理が完了したのち、「X-transfer」を実行することで、HTTPS通信で「X-Smart.Advance/Basic」に処理データおよび勘定科目関連のマスタ情報が自動送信されます。
「X-Smart.Advance/Basic」ではデータの認証を行った後、データベースへの登録・集計処理が自動実行されることで、有価証券報告書、決算短信、会社法計算書類、社内報告用の連結・個別財務諸表や、親会社およびグループ会社の会社法計算書類が自動作成されます。」との記載から、甲1には、「DivaSystem LCA」で連結精算表、キャッシュ・フロー精算表、連結株主資本等変動計算書、包括利益計算書、親会社およびグループ会社の個別財務諸表データの連携データ作成処理が完了したのち、「X-transfer」を実行し、「X-Smart.Advance/Basic」ではデータベースへの登録・集計処理が自動実行されることで、有価証券報告書、決算短信、会社法計算書類、社内報告用の連結・個別財務諸表や、親会社およびグループ会社の会社法計算書類が自動作成されるものであることが記載されているといえる。
(オ)「なお「DivaSystem LCA」へのデータのインプットについては、ディーバの提供する業務標準テンプレートである「開示対応標準パッケージ」の指定する項目へ情報を入力することで、有価証券報告書の開示項目を網羅したデータ収集をグループ会社から実施可能です。」との記載から、甲1には、「DivaSystem LCA」へのデータのインプットについては、ディーバ社の提供する業務標準テンプレートである「開示対応標準パッケージ」の指定する項目へ情報を入力することで、行われるものであることが記載されているといえる。
(カ)「【DivaSystem LCAについて】
・・・
・グループ会社や監査法人ともクラウドでつながり、効率的にリモート決算やリモート監査が可能」との記載から、甲1には、グループ会社とクラウドでつながり、リモート決算が可能であるものであることが記載されているといえる。
(キ)「■2. 「X-transfer」機能概要」の項の図面から、「X-transfer」では、「FS」、「マスターデータ」、「子会社データ」は対応済みであり、「非財務情報」、「注記」は「今後拡張予定」であることが看取される。
イ 甲1に記載された発明
上記アから、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる(括弧内は、上記ア(ア)~(キ)の引用元を示す。)。
「ディーバ社の連結会計システム「DivaSystem LCA」と宝印刷社の開示書類自動作成システム「X-Smart.Advance/Basic」が連携するシステムであって、(ア)
グループ会社の財務諸表データまで連携範囲を拡張されており、(イ)
連結決算および開示業務を、双方のシステム間でシームレスに連携するものであり、(ウ)
「DivaSystem LCA」で連結精算表、キャッシュ・フロー精算表、連結株主資本等変動計算書、包括利益計算書、親会社およびグループ会社の個別財務諸表データの連携データ作成処理が完了したのち、「X-transfer」を実行し、「X-Smart.Advance/Basic」ではデータベースへの登録・集計処理が自動実行されることで、有価証券報告書、決算短信、会社法計算書類、社内報告用の連結・個別財務諸表や、親会社およびグループ会社の会社法計算書類が自動作成され、(エ)
「DivaSystem LCA」へのデータのインプットについては、ディーバ社の提供する業務標準テンプレートである「開示対応標準パッケージ」の指定する項目へ情報を入力することで、有価証券報告書の開示項目を網羅したデータ収集をグループ会社から実施可能であり、(オ)
グループ会社とクラウドでつながり、リモート決算が可能であり、(カ)
「FS」、「マスターデータ」、「子会社データ」は対応済みであり、「非財務情報」、「注記」は「今後拡張予定」である(キ)、
システム。」
(2)甲2の記載
本件特許の出願前である2017年10月30日に公開された甲2には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001424568000002.jpg]
」(1頁)
「
[図:0001424568000003.jpg]
」(2頁)
「
[図:0001424568000004.jpg]
」(2頁)
「
[図:0001424568000005.jpg]
」(7頁)
「
[図:0001424568000006.jpg]
」(8頁)
「
[図:0001424568000007.jpg]
」(40頁)
「
[図:0001424568000008.jpg]
」(41頁)
「
[図:0001424568000009.jpg]
」(139頁)
「
[図:0001424568000010.jpg]
」(140頁)
「
[図:0001424568000011.jpg]
」(144頁)
「
[図:0001424568000012.jpg]
」(145頁)
「
[図:0001424568000013.jpg]
」(153頁)
「
[図:0001424568000014.jpg]
」(154頁)
(3)本件特許発明1についての当審の判断
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)本件特許発明1の「親会社と少なくとも1つの子会社とからなるグループ会社における決算開示書類作成システムであって」について
甲1発明は、「連結会計システム「DivaSystem LCA」と開示書類自動作成システム「X-Smart.Advance/Basic」が連携するシステム」であって、「連結決算および開示業務を、双方のシステム間でシームレスに連携するものであり」、「有価証券報告書、決算短信、会社法計算書類、社内報告用の連結・個別財務諸表や、親会社およびグループ会社の会社法計算書類が自動作成され」るものであるから、甲1発明の当該システムは、後述する相違点は別にして、本件特許発明1の「連結決算」で用いられる「開示書類」を自動作成する「決算開示書類作成システム」に対応するといえる。また、甲1発明の「グループ会社」は、本件特許発明1の「少なくとも1つの子会社とからなるグループ会社」に相当する。そして、甲1発明の「システム」は、「有価証券報告書、決算短信、会社法計算書類、社内報告用の連結・個別財務諸表や、親会社およびグループ会社の会社法計算書類」を作成するものであって、これらの書類は「開示書類」であることは自明である。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、「親会社と少なくとも1つの子会社とからなるグループ会社における決算開示書類作成システム」という点で共通している。
(イ)本件特許発明1の「前記親会社と前記少なくとも1つの子会社に設置された複数の端末のうちアクセスのあった端末に対して、予め作成されたテンプレートに基づいて当該端末に対応したデータ収集用の複数の入力シートを発行する入力シート発行手段と」について
甲1発明は、「「DivaSystem LCA」へのデータのインプットについては、ディーバ社の提供する業務標準テンプレートである「開示対応標準パッケージ」の指定する項目へ情報を入力することで、有価証券報告書の開示項目を網羅したデータ収集をグループ会社から実施可能」である、すなわち、「DivaSystem LCA」へのデータのインプットについて、グループ会社からデータを収集するために、ディーバ社が発行した業務標準テンプレートである「開示対応標準パッケージ」の指定する項目へ情報を入力するものである。
そうすると、甲1発明の「業務標準テンプレートである「開示対応標準パッケージ」」は、本件特許発明1の「予め作成されたテンプレートに基づいて当該端末に対応したデータ収集用の複数の入力シート」に相当し、甲1発明では「グループ会社」からデータを収集するものであり、さらに、甲1発明では、「開示対応標準パッケージ」を「ティーバ社」が提供する点で、甲1発明と本件特許発明1とは、「前記少なくとも1つの子会社に設置された複数の端末に対して、予め作成されたテンプレートに基づいて当該端末に対応したデータ収集用の複数の入力シートを発行する入力シート発行手段」との点で共通する。
他方、本件特許発明1は、入力シートの発行について、「子会社に設置された」端末のみならず「親会社」の端末をも発行の対象とし、これらに端末のうち「アクセスのあった端末」に対して発行を行うのに対して、甲1発明は、そのような構成を有していない点で相違する。
(ウ)本件特許発明1の「前記複数の端末より前記複数の入力シートに入力された連結財務諸表及び注記を含む書類の作成に必要な数値情報及び文字情報を予め作成した集計シートに集計する情報集計手段と」について
甲1発明は、上記(イ)のとおり、「DivaSystem LCA」へのデータのインプットについて、グループ会社からデータを収集するために、ディーバ社が発行した業務標準テンプレートである「開示対応標準パッケージ」の指定する項目へ情報を入力するものであり、さらに、「「DivaSystem LCA」で連結精算表、キャッシュ・フロー精算表、連結株主資本等変動計算書、包括利益計算書、親会社およびグループ会社の個別財務諸表データの連携データ作成処理が完了」するものである。
そして、甲1発明の「連携データ」は、「開示対応標準パッケージ」の指定する項目へ入力されたデータを整理したものといえるから、甲1発明の「連携データ」を作成する手段と、本件特許発明1の「前記複数の端末より前記複数の入力シートに入力された連結財務諸表及び注記を含む書類の作成に必要な数値情報及び文字情報を予め作成した集計シートに集計する情報集計手段」とは、「前記複数の端末より前記複数の入力シートに入力された情報を集計する情報集計手段」の点で共通する。
他方、本件特許発明1は「連結財務諸表及び注記を含む書類の作成に必要な数値情報及び文字情報を予め作成した集計シート」に集計するのに対して、甲1発明は、「連結財務諸表及び注記を含む書類の作成に必要な数値情報及び文字情報を予め作成した集計シート」に集計しているのか不明である点で、相違する。
(エ)本件特許発明1の「前記集計シートに集計された数値情報及び文字情報をリンクされた開示書類作成のための数値入力シートにそれぞれ転記し、開示書類を作成する開示書類作成手段とを備え」について
甲1発明は、上記(ウ)の「連携データ作成処理が完了」したのち、「「X-transfer」を実行し、「X-Smart.Advance/Basic」ではデータベースへの登録・集計処理が自動実行されることで、有価証券報告書、決算短信、会社法計算書類、社内報告用の連結・個別財務諸表や、親会社およびグループ会社の会社法計算書類が自動作成され」るものである。
そうすると、甲1発明の「有価証券報告書、決算短信、会社法計算書類、社内報告用の連結・個別財務諸表や、親会社およびグループ会社の会社法計算書類」は、本件特許発明1の「開示書類」に相当し、甲1発明のこれらの書類を作成する手段と、本件特許発明1の「前記集計シートに集計された数値情報及び文字情報をリンクされた開示書類作成のための数値入力シートにそれぞれ転記し、開示書類を作成する開示書類作成手段」とは、「開示書類を作成する開示書類作成手段」との点で共通する。
他方、本件特許発明1は「前記集計シートに集計された数値情報及び文字情報をリンクされた開示書類作成のための数値入力シートにそれぞれ転記」することで、開示書類を生成するのに対して、甲1発明は、「有価証券報告書、決算短信、会社法計算書類、社内報告用の連結・個別財務諸表や、親会社およびグループ会社の会社法計算書類」を作成するために、「前記集計シートに集計された数値情報及び文字情報をリンクされた開示書類作成のための数値入力シートにそれぞれ転記」しているか不明である点で相違する。
(オ)本件特許発明1の「前記開示書類作成手段は、前記集計シートで数値調整の必要があるか否かを判断し、前記集計シートで数値調整の必要があると判断された場合、前記親会社の端末により集計シートで数値調整を行うように構成されている」について
甲1発明の「システム」は、「開示書類作成手段」が、このような数値調整を行う機能を有するか不明である点で、本件特許発明1と相違する。
(カ)本件特許発明1の「データ収集機能を備えた決算開示書類作成システム」について
甲1発明は、上記(ア)のとおりのシステムであって、当該システムは上記(イ)のとおりのデータ収集機能を有しており、さらに、上記(ウ)、(エ)の機能を実現する手段を有する点で、後述する相違点は別にして、本件特許発明1と甲1発明は、「データ収集機能を備えた決算開示書類作成システム」という点で共通している。
(キ)そうすると、本件特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「親会社と少なくとも1つの子会社とからなるグループ会社における決算開示書類作成システムであって、
前記少なくとも1つの子会社に設置された複数の端末に対して、予め作成されたテンプレートに基づいて当該端末に対応したデータ収集用の複数の入力シートを発行する入力シート発行手段と、
前記複数の端末より前記複数の入力シートに入力された情報を集計する情報集計手段と、
開示書類を作成する開示書類作成手段とを備えていることを特徴とするデータ収集機能を備えた決算開示書類作成システム。」
<相違点>
(相違点1)本件特許発明1は、入力シートの発行について、「子会社に設置された」端末のみならず「親会社」の端末をも発行の対象とし、これらに端末のうち「アクセスのあった端末」に対して発行を行うのに対して、甲1発明は、そのような構成を有していない点。
(相違点2)「情報集計手段」について、本件特許発明1は「連結財務諸表及び注記を含む書類の作成に必要な数値情報及び文字情報を予め作成した集計シート」に集計するのに対して、甲1発明は、「連結財務諸表及び注記を含む書類の作成に必要な数値情報及び文字情報を予め作成した集計シート」に集計しているのか不明である点。
(相違点3)「開示書類作成手段」について、本件特許発明1は、「前記集計シートに集計された数値情報及び文字情報をリンクされた開示書類作成のための数値入力シートにそれぞれ転記」することで開示書類を作成するのに対し、甲1発明は、「有価証券報告書、決算短信、会社法計算書類、社内報告用の連結・個別財務諸表や、親会社およびグループ会社の会社法計算書類」を作成するために、「前記集計シートに集計された数値情報及び文字情報をリンクされた開示書類作成のための数値入力シートにそれぞれ転記」しているか不明である点。
(相違点4)本件特許発明1の「前記開示書類作成手段は、前記集計シートで数値調整の必要があるか否かを判断し、前記集計シートで数値調整の必要があると判断された場合、前記親会社の端末により集計シートで数値調整を行うように構成されている」のに対し、甲1発明は、「数値調整」を行うように構成されているのか不明である点。
イ 相違点の判断
事案に鑑み、上記(相違点2)について検討する。
甲2には、上記(2)のとおりの事項が記載されている。しかしながら、「連結財務諸表及び注記を含む書類の作成に必要な数値情報及び文字情報を予め作成した集計シート」に集計することは記載されていないため、甲1発明に、甲2に記載されている事項を適用しても、相違点2の構成には至らない。
なお、甲1発明は、「注記」は「今後拡張予定」とするものである。しかしながら、この拡張予定の機能に基づいて、「連結財務諸表及び注記を含む書類の作成に必要な数値情報及び文字情報を予め作成した集計シート」に集計する機能とすることを当業者が容易になし得たとはいえない。
以上によれば、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 異議申立人の主張について
申立人は、甲1発明の「注記」について、甲1の図面には、「今後拡張予定」と記載されているものの、「注記」を取り扱うべきものであることが見て取れるから、最終的に完成されたシステムには、開示書類を作成するために連結会計システムから取り出した「注記」を取り扱うことを実現したものである(異議申立書 59頁2行~6行)と認定した上で、甲1に記載された発明は、「有価証券報告書、決算短信、会社法計算書類、社内報告用の連結・個別財務諸表や、親会社およびグループ会社の会社法計算書類が自動作成される」ものであって、「開示書類を作成するために連結会計システムから取り出した非財務情報と注記を開示書類自動作成システムで取り扱」うものであるから、入力される情報に、「連結財務諸表及び注記を含む書類の作成に必要な数値情報及び文字情報」が含まれることは明らかである旨、「甲第1発明は「データベースへの登録・集計処理が自動実行される」のであるから、甲第1発明が、本件特許発明1の「予め作成した集計シートに集計する情報集計手段」に相当する構成を有する」ことも明らかである旨主張している。(異議申立書 70頁35行~71頁9行)
しかしながら、上記イで示したように、甲1の図面の「今後拡張予定」との記載は、この拡張予定の機能に基づいて、「連結財務諸表及び注記を含む書類の作成に必要な数値情報及び文字情報を予め作成した集計シート」に集計する機能を説明するものではないため、甲1発明に「データベースへの登録・集計処理が自動実行される」機能が備わっているとしても、相違点2の構成には至らない。
よって、申立人の主張に理由はなく採用することができない。
(4)本件特許発明6についての当審の判断
本件特許発明6は、本件特許発明1の「決算開示書類作成システム」の発明を、「決算開示書類作成プログラム」の発明として特定したものである。
そうすると、本件特許発明6は、甲1から認定される「プログラム」の発明と対比すると、少なくとも、上記(3)ア(オ)の相違点1~相違点4と同様の相違点を有することになる。
したがって、上記(3)イと同様、本件特許発明6は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件特許発明2~5、7~10についての当審の判断
本件特許発明2~5は、本件特許発明1を限定した発明であり、本件特許発明7~10は、本件特許発明6を限定した発明であるから、上記(3)イ、上記(4)のとおり、本件特許発明1、本件特許発明6が、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、同様に、本件特許発明2~5、7~10も当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)小括
以上のとおり、本件特許発明1~10は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許発明1~10は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、当審において取消理由通知(審決の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~10に係る特許を取り消すことはできず、他に本件請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700157