特許異議申立
2024-700258
予測装置
- 審判番号
- 2024-700258
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-112232
- 登録番号
- 7351975
- 請求日
- 2024年03月21日
- 審決日
- 2024年11月01日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社電通
- 【権利者代理人】インフォート弁理士法人
- 【権利者代理人】青木 宏義
- 【権利者代理人】天田 昌行
- 【権利者代理人】木村 晋朗
- 【異議申立人】秋山 美菜子
- 審判長/審判官
- 審判長 山澤 宏
- 審判官 村松 貴士
- 審判官 富澤 哲生
- 分類
- P1652.113-YAA(G06Q) / P1652.121-YAA(G06Q) / P1652.536-YAA(G06Q) / P1652.537-YAA(G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7351975号発明「予測装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7351975号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2、4-5〕、3、6、7、8について訂正することを認める。
特許第7351975号の請求項4及び5に係る特許を維持する。
特許第7351975号の請求項1、7及び8に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7351975号(以下「本件特許」という。)の請求項1-8に係る特許についての出願は、令和4年7月13日に出願され、令和5年9月19日にその特許権の設定登録がされ、令和5年9月27日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての本件特許異議の申し立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年3月21日 :特許異議申立人 秋山 美菜子(以下、「申立人
」という。)による請求項1、4、5、7、8に
係る特許に対する特許異議申立書の提出
令和6年5月28日付け:取消理由通知書
令和6年7月12日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和6年7月12日にされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、特許第7351975号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-8について訂正することを求める、というものであり、訂正の内容は、以下の(1)-(13)からなる訂正事項のとおりである(なお、下線は訂正部分を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記抽出部は、前記リクエスト枠の前記特徴量として、前記リクエスト枠の放送分数と、平日の祝日フラグと、時跨りフラグと、日跨りフラグとを抽出する、ことを特徴とする請求項1に記載の予測装置。」と記載されているものを、独立形式に改め、「過去番組の視聴率の基準特徴量を記憶する記憶部と、対象番組の少なくとも1つにリクエスト枠を設定する設定部と、前記リクエスト枠の特徴量を抽出する抽出部と、前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部と、を有し、前記抽出部は、前記リクエスト枠の前記特徴量として、前記リクエスト枠の放送分数と、平日の祝日フラグと、時跨りフラグと、日跨りフラグとを抽出する、ことを特徴とする予測装置。」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項4、5も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記抽出部は、前記リクエスト枠の前記特徴量として、前記リクエスト枠の放送分数と、曜日と、時間帯と、放送局と、土日フラグと、祝日フラグと、平日の祝日フラグと、時跨りフラグと、日跨りフラグとを抽出する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の予測装置。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「過去番組の視聴率の基準特徴量を記憶する記憶部と、対象番組の少なくとも1つにリクエスト枠を設定する設定部と、前記リクエスト枠の特徴量を抽出する抽出部と、前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部と、を有し、前記抽出部は、前記リクエスト枠の前記特徴量として、前記リクエスト枠の放送分数と、曜日と、時間帯と、放送局と、土日フラグと、祝日フラグと、平日の祝日フラグと、時跨りフラグと、日跨りフラグとを抽出する、ことを特徴とする予測装置。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記設定部は、前記対象番組のうち、相対的に長い放送分数のメイン番組に隣接する、相対的に短い放送分数のサブ番組を前記リクエスト枠に設定する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の予測装置。」と記載されているうち、請求項2を引用するものについて、「前記設定部は、前記対象番組のうち、相対的に長い放送分数のメイン番組に隣接する、相対的に短い放送分数のサブ番組を前記リクエスト枠に設定する、ことを特徴とする請求項2に記載の予測装置。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記記憶部は、複数の過去番組に跨る所定期間の視聴率の特徴量を記憶するとともに、予測基準日と同じ曜日の時系列視聴率を前記基準特徴量として記憶する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の予測装置。」と記載されているうち、請求項2を引用するものについて、「前記記憶部は、複数の過去番組に跨る所定期間の視聴率の特徴量を記憶するとともに、予測基準日と同じ曜日の時系列視聴率を前記基準特徴量として記憶する、ことを特徴とする請求項2に記載の予測装置。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「前記記憶部は、複数の過去番組に跨る所定期間の視聴率の特徴量を記憶するとともに、予測基準日を含む当週視聴率と、前記予測基準日より前の所定期間における指数移動平均視聴率との差分を前記基準特徴量として記憶する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の予測装置。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「過去番組の視聴率の基準特徴量を記憶する記憶部と、対象番組の少なくとも1つにリクエスト枠を設定する設定部と、前記リクエスト枠の特徴量を抽出する抽出部と、前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部と、を有し、前記記憶部は、複数の過去番組に跨る所定期間の視聴率の特徴量を記憶するとともに、予測基準日を含む当週視聴率と、前記予測基準日より前の所定期間における指数移動平均視聴率との差分を前記基準特徴量として記憶する、ことを特徴とする予測装置。」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(9)訂正事項9
願書に添付した明細書の【発明の名称】に記載された「予測装置、予測方法及び予測プログラム」を「予測装置」に訂正する。
(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0001】に記載された「本開示は、予測装置、予測方法及び予測プログラムに関する。」を「本開示は、予測装置に関する。」に訂正する。
(11)訂正事項11
願書に添付した明細書の段落【0006】に記載された「そこで本開示は、視聴率の予測を高精度に行うことができる予測装置、予測方法及び予測プログラムを提供することを目的の1つとする。」を「そこで本開示は、視聴率の予測を高精度に行うことができる予測装置を提供することを目的の1つとする。」に訂正する。
(12)訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0007】に記載された「本開示の一態様に係る予測装置は、過去番組の視聴率の基準特徴量を記憶する記憶部と、対象番組の少なくとも1つにリクエスト枠を設定する設定部と、前記リクエスト枠の特徴量を抽出する抽出部と、前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部と、を有することを特徴とする。」を「本開示の一態様に係る予測装置は、過去番組の視聴率の基準特徴量を記憶する記憶部と、対象番組の少なくとも1つにリクエスト枠を設定する設定部と、前記リクエスト枠の特徴量を抽出する抽出部と、前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部と、を有し、前記抽出部は、前記リクエスト枠の前記特徴量として、前記リクエスト枠の放送分数と、平日の祝日フラグと、時跨りフラグと、日跨りフラグとを抽出する、ことを特徴とする。本開示の一態様に係る予測装置は、過去番組の視聴率の基準特徴量を記憶する記憶部と、対象番組の少なくとも1つにリクエスト枠を設定する設定部と、前記リクエスト枠の特徴量を抽出する抽出部と、前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部と、を有し、前記抽出部は、前記リクエスト枠の前記特徴量として、前記リクエスト枠の放送分数と、曜日と、時間帯と、放送局と、土日フラグと、祝日フラグと、平日の祝日フラグと、時跨りフラグと、日跨りフラグとを抽出する、ことを特徴とする。本開示の一態様に係る予測装置は、過去番組の視聴率の基準特徴量を記憶する記憶部と、対象番組の少なくとも1つにリクエスト枠を設定する設定部と、前記リクエスト枠の特徴量を抽出する抽出部と、前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部と、を有し、前記記憶部は、複数の過去番組に跨る所定期間の視聴率の特徴量を記憶するとともに、予測基準日を含む当週視聴率と、前記予測基準日より前の所定期間における指数移動平均視聴率との差分を前記基準特徴量として記憶する、ことを特徴とする。」に訂正する。
(13)訂正事項13
願書に添付した明細書の段落【0008】に記載された「本開示の一態様によれば、視聴率の予測を高精度に行うことができる予測装置、予測方法及び予測プログラムを提供することができる。」を「本開示の一態様によれば、視聴率の予測を高精度に行うことができる予測装置を提供することができる。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件
(1)訂正事項1
訂正事項1に係る訂正は、請求項の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1に係る訂正は、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
なお、請求項1は、特許異議の申立てがされている請求項である(上記第1参照。)から、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は、適用されない。
(2)訂正事項2
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる請求項間の引用関係の解消(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)を目的とするものである。
また、訂正事項2に係る訂正は、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3
訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項1及び2の記載を引用する記載であったものを、請求項2を引用する部分を削除して、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減を行うとともに、請求項1を引用する部分について、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる請求項間の引用関係の解消(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)を目的とするものである。
また、訂正事項3に係る訂正は、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
そして、訂正事項3は、上記のように、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許異議の申立てがされていない請求項3に対するものである(上記1参照。)から、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する必要がある。そこで、検討すると、本件特許異議の申立ての証拠として提出された後記する甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証をみても、訂正後の請求項3に係る発明は、これらの文献のいずれかに記載された発明とはいえず、また、これらの文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものともいえない。また、他に特許を受けることができないとする理由も見当たらない。そうすると、訂正後の請求項3に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
(4)訂正事項4
訂正事項4に係る訂正は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1及び2の記載を引用する記載であったものを、請求項1を引用する部分を削除して、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減を行うものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4に係る訂正は、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
なお、請求項4は、特許異議の申立てがされている請求項である(上記第1参照。)から、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は、適用されない。
(5)訂正事項5
訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項5の記載が訂正前の請求項1及び2の記載を引用する記載であったものを、請求項1を引用する部分を削除して、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減を行うものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5に係る訂正は、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
なお、請求項5は、特許異議の申立てがされている請求項である(上記第1参照。)から、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は、適用されない。
(6)訂正事項6
訂正事項6に係る訂正は、訂正前の請求項6の記載が訂正前の請求項1及び2の記載を引用する記載であったものを、請求項2を引用する部分を削除して、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減を行うとともに、請求項1を引用する部分について、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる請求項間の引用関係の解消(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)を目的とするものである。
また、訂正事項6に係る訂正は、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
そして、訂正事項6は、上記のように、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許異議の申立てがされていない請求項6に対するものである(上記1参照。)から、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する必要がある。そこで、検討すると、本件特許異議の申立ての証拠として提出された後記する甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証をみても、訂正後の請求項6に係る発明は、これらの文献のいずれかに記載された発明とはいえず、また、これらの文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものともいえない。また、他に特許を受けることができないとする理由も見当たらない。そうすると、訂正後の請求項6に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
(7)訂正事項7
訂正事項7に係る訂正は、請求項の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項7に係る訂正は、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
なお、請求項7は、特許異議の申立てがされている請求項である(上記第1参照。)から、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は、適用されない。
(8)訂正事項8
訂正事項8に係る訂正は、請求項の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項8に係る訂正は、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
なお、請求項8は、特許異議の申立てがされている請求項である(上記第1参照。)から、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は、適用されない。
(9)訂正事項9-13
訂正事項9-13に係る訂正は、上記訂正事項1-8の訂正に伴って、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項9-13に係る訂正は、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
3 一群の請求項について
訂正前の請求項1-6は、請求項2-6が請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項である。
よって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-6〕、請求項7、8について請求されたものである。
そして、特許権者から訂正後の請求項1-8については、当該請求項について訂正が認められた場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われる求めがあったが、請求項1-6についての訂正が認められた場合に、それらの請求項について、別の訂正単位として扱われることを求めているものと解されるところ、一群の請求項を構成していた訂正前の請求項[1-6]に対応する訂正後の請求項1-6のうち、請求項2、4、5は引用関係を有するものである。
4 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1-13に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項乃至第7項の規定に適合する。
よって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2、4-5〕、3、6、7、8について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1-8に係る発明(以下、請求項2-6に係る発明を、それぞれ「本件訂正発明2」-「本件訂正発明6」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
過去番組の視聴率の基準特徴量を記憶する記憶部と、
対象番組の少なくとも1つにリクエスト枠を設定する設定部と、
前記リクエスト枠の特徴量を抽出する抽出部と、
前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部と、
を有し、
前記抽出部は、前記リクエスト枠の前記特徴量として、前記リクエスト枠の放送分数と、平日の祝日フラグと、時跨りフラグと、日跨りフラグとを抽出する、
ことを特徴とする予測装置。
【請求項3】
過去番組の視聴率の基準特徴量を記憶する記憶部と、
対象番組の少なくとも1つにリクエスト枠を設定する設定部と、
前記リクエスト枠の特徴量を抽出する抽出部と、
前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部と、
を有し、
前記抽出部は、前記リクエスト枠の前記特徴量として、前記リクエスト枠の放送分数と、曜日と、時間帯と、放送局と、土日フラグと、祝日フラグと、平日の祝日フラグと、時跨りフラグと、日跨りフラグとを抽出する、
ことを特徴とする予測装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記対象番組のうち、相対的に長い放送分数のメイン番組に隣接する、相対的に短い放送分数のサブ番組を前記リクエスト枠に設定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の予測装置。
【請求項5】
前記記憶部は、複数の過去番組に跨る所定期間の視聴率の特徴量を記憶するとともに、予測基準日と同じ曜日の時系列視聴率を前記基準特徴量として記憶する、
ことを特徴とする請求項2に記載の予測装置。
【請求項6】
過去番組の視聴率の基準特徴量を記憶する記憶部と、
対象番組の少なくとも1つにリクエスト枠を設定する設定部と、
前記リクエスト枠の特徴量を抽出する抽出部と、
前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部と、
を有し、
前記記憶部は、複数の過去番組に跨る所定期間の視聴率の特徴量を記憶するとともに、予測基準日を含む当週視聴率と、前記予測基準日より前の所定期間における指数移動平均視聴率との差分を前記基準特徴量として記憶する、
ことを特徴とする予測装置。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)」
第4 申立理由の概要
1 申立理由
(1)申立理由1(新規性)
訂正前の請求項1、4-5、7-8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、訂正前の請求項1、7-8に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、訂正前の請求項1、5、7-8に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項1、4-5、7-8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(進歩性)
訂正前の請求項1、4-5、7-8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第3号証、甲第4号証の1及び甲第5号証の1に記載された周知技術に基いて、訂正前の請求項1、4-5、7-8に係る発明は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1、4-5、7-8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)申立理由3(明確性)
訂正前の請求項1、4-5、7-8に係る発明は、「視聴率の予測を高精度に行う」という本件特許の課題に対し、取得した予測特徴量をどのように用いて視聴率の予測を行うのかという課題解決の手段の記載が不足している結果不明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定に違反しているから、訂正前の請求項1、4-5、7-8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4)申立理由4(実施可能要件)
訂正前の請求項1、7-8における「前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する」との記載について、本件特許の明細書における発明の詳細な説明には、予測特徴量が「リクエスト枠の予測視聴率と関連する何らかのパラメータ」である場合に、如何にして、当該パラメータを用いて視聴率の予測を行うのかが、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の規定に違反しているから、訂正前の請求項1、4-5、7-8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものである。
(5)申立理由5(サポート要件)
訂正前の請求項1、4-5、7-8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された「ミニ番組枠の予測視聴率を低めに補正する」という発明の課題を解決する手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものであり、特許法第36条第6項第1号の規定に違反しているから、訂正前の請求項1、4-5、7-8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。
2 提出した証拠
甲第1号証:特開2021-72577号公報
甲第2号証:国際公開第2021/260755号
甲第3号証:特開2021-117818号公報
甲第4号証の1:Peter J. Danaher, Tracey S. Dagger, Michael S. Smith. "Forecasting television ratings." International Journal of Forecasting 27, 2011, pp.1215-1240
甲第4号証の2:「ScienceDirect」
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0169207011000033
(甲第4号証の1の公開日が2011年2月16日であることを示すWebページ)
甲第5号証の1:Denis Khryashchev, Alexandru Papiu, Jiamin Xuan, Olivia Dinica, Kyle Hubert, and Huy Vo. "Who Watches What: forecasting viewership for the top 100 TV networks." Computational Data and Social Networks, 2019, pp.163-174
甲第5号証の2:「NSF Public Access Repository (NSF-PAR)」
https://par.nsf.gov/biblio/10185777-who-watches-what-forecasting-viewership-top-tv-networks
(甲第5号証の1の公開日が2019年11月11日であること及び甲第5号証の1の掲載者がNational Science Foundation(NSF)であることを示すWebページ)
(以下、「甲第1号証」~「甲第5号証の2」を、それぞれ「甲1」~「甲5の2」という。)
第5 取消理由の概要
令和6年5月28日付けの取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
1 取消理由1(新規性)
請求項1、4-5、7-8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、請求項1、7-8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、請求項1、5、7-8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、4-5、7-8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2 取消理由2(進歩性)
請求項1、4-5、7-8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、請求項1、7-8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、請求項1、5、7-8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、請求項4-5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献2-3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、4-5、7-8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
1.特開2021-72577号公報(甲1)
2.国際公開第2021/260755号(甲2)
3.特開2021-117818号公報(甲3)
第6 各甲号証に記載された事項
1 甲1に記載された事項、甲1発明
(1)甲1に記載された事項
甲1には、図面とともに、下記の記載がある(下線は当審付与。以下同様。)。
「【0016】
情報処理装置10は、機能的には、図1に示すように、計算部12と、記憶制御部14と、変更部16と、作案部18とを含む。また、情報処理装置10の所定の記憶領域には、放送枠DB(Database)22と、過去視聴率DB24と、整形視聴率TB(Table)26とが記憶される。
【0017】
放送枠DB22には、テレビ等の放送媒体で放送される番組の時間割、その番組の内容等に基づいて決定されたCMの放送枠の情報が記憶される。図2に、放送枠DB22の一例を示す。図2の例では、各行(各レコード)が1つの放送枠の情報に相当する。各放送枠の情報は、「枠ID」、「日時情報」、「枠種別」、「在庫数」、「ランク」、「番組種別」等の情報を含む。
【0018】
「枠ID」は、各放送枠の識別情報である。「日時情報」は、CMが放送される日時及び曜日と、時間帯又は特定の時刻とを含む情報である。例えば、番組の放送中に相当する放送枠の日時情報は、その番組の開始から終了までの時間帯で規定され、番組と番組との間の放送枠の日時情報は、前の番組終了直後の時刻等の特定の時刻で規定される。「枠種別」は、該当の放送枠の日時情報が時間帯で規定されているか、特定の時刻で規定されているかを示す情報である。図2の例では、時間帯で規定されている場合を「T」、特定の時刻で規定されている場合を「S」としている。」
「【0020】
過去視聴率DB24には、過去にCMが放送された放送枠毎の視聴率の実績が記憶される。図3に、過去視聴率DB24の一例を示す。図3の例では、過去視聴率DB24には、「号数」、「日時情報」、「平均視聴率」、及び「終了時視聴率」の情報が記憶されている。「号数」は、1月1日を含む週を1号とし、以降、各週に振られる通し番号である。「日時情報」は、放送枠DB22の日時情報と同様である。「平均視聴率」は、該当の放送枠の時間帯における視聴率の平均である。「終了時視聴率」は、該当の放送枠の終了時における視聴率である。
【0021】
計算部12は、放送枠DB22から、作案対象の期間の放送枠の情報のうち、放送枠毎の視聴率を記憶するテーブルの作成に必要な情報を取得し、図4の1段目に示すように、放送枠TB70を作成する。図4の例では、放送枠TB70には、枠ID72、日時情報74、及び枠種別76の情報が含まれている。また、計算部12は、図4の2段目に示すように、過去視聴率DB24から、契約条件で指定された号数の情報を抽出した過去視聴率TB80を取得する。図4の例では、過去視聴率TB80には、指定された号数82、放送枠毎の日時情報84、及び過去視聴率86(平均視聴率、終了時視聴率)の情報が含まれている。
【0022】
計算部12は、過去視聴率TB80に含まれる、放送枠TB70の日時情報74に対応する日時情報84が示す放送枠の過去視聴率86に基づいて、放送枠TB70の各放送枠における視聴率の予測値を、CM毎の契約条件において指定された計算方法で計算する。」
「【0027】
記憶制御部14は、図4の3段目に示すように、計算部12から受け渡された予測値を、放送枠TB70に含まれる枠ID72及び日時情報74で示される放送枠に対応付けて記憶し、整形視聴率TB26とする。図4の例では、整形視聴率TB26には、放送枠TB70に含まれる情報に加え、契約の識別情報76、及び視聴率の予測値78が含まれる。なお、上述のように、期間比の禁止制約に基づいて契約を分割した場合、分割した契約毎に整形視聴率TB26が作成されることになる。」
図4
[図:0001419353000001.jpg]
(2)甲1発明
したがって、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「計算部12を含み、
所定の記憶領域には、放送枠DB22と、過去視聴率DB24と、整形視聴率TB26とが記憶され、
放送枠DB22には、テレビ等の放送媒体で放送される番組の時間割、その番組の内容等に基づいて決定されたCMの放送枠の情報が記憶され、
各放送枠の情報は、「枠ID」、「日時情報」の情報を含み、
「枠ID」は、各放送枠の識別情報であり、
「日時情報」は、CMが放送される日時及び曜日と、時間帯又は特定の時刻とを含む情報であり、番組の放送中に相当する放送枠の日時情報は、その番組の開始から終了までの時間帯で規定され、
過去視聴率DB24には、過去にCMが放送された放送枠毎の視聴率の実績が記憶され、
計算部12は、放送枠DB22から、作案対象の期間の放送枠の情報のうち、放送枠毎の視聴率を記憶するテーブルの作成に必要な情報を取得し、放送枠TB70を作成し、
放送枠TB70には、枠ID72、日時情報74の情報が含まれており、
計算部12は、過去視聴率DB24から、契約条件で指定された号数の情報を抽出した過去視聴率TB80を取得し、
過去視聴率TB80には、指定された号数82、放送枠毎の日時情報84、及び過去視聴率86(平均視聴率、終了時視聴率)の情報が含まれており、
計算部12は、過去視聴率TB80に含まれる、放送枠TB70の日時情報74に対応する日時情報84が示す放送枠の過去視聴率86に基づいて、放送枠TB70の各放送枠における視聴率の予測値を計算し、
記憶制御部14は、計算部12から受け渡された予測値を、放送枠TB70に含まれる枠ID72及び日時情報74で示される放送枠に対応付けて記憶し、整形視聴率TB26とする、
情報処理装置10。」
2 甲2に記載された事項、甲2発明
(1)甲2に記載された事項
甲2には、図面とともに、下記の記載がある。
「[0007] 本発明の目的は、将来放送される番組の視聴率の推定精度を向上することを可能にする、視聴率推定装置、視聴率推定方法および記録媒体を提供することにある。」
「[0031] 視聴率推定装置20は、受信部11と出力部12と表示制御部23とを含む。
[0032] 受信部11は、将来放送される所定の推定対象番組の番組構成データと、過去に放送された所定の比較対象番組の番組構成データと、比較対象番組の視聴率の実績値とを受信する。受信部11は、推定対象番組の番組構成データと、比較対象番組の番組構成データと、比較対象番組の視聴率の実績値とを、視聴率提供装置80または、営業放送システム70内の所定の装置から受信する。」
「[0034] 推定対象番組とする番組、および、比較対象番組とする番組は、あらかじめユーザによって設定されているとする。比較対象番組は、たとえば、推定対象番組の前の週の同じ時間帯に放送された番組などである。」
「[0037] たとえば、視聴率推定装置20は、推定対象番組の番組構成データと比較対象番組の番組構成データとの相違点が満たす条件に応じて、比較対象番組の視聴率の実績値に所定の加算値を加算することによって、推定対象番組の視聴率を推定する。なお、加算値はマイナスの値であってもよい。また、相違点が満たす条件がない場合には、加算値はゼロであるとする。」
「[0039] 番組構成データは、番組構成に関するデータである。番組構成データは、番組枠構成データ、ジャンルに関するデータ、番組内容に関するデータのいずれか一つ以上を含む。また、番組構成データは、前の番組枠や次の番組枠の番組の番組枠構成データ、ジャンルに関するデータ、番組内容に関するデータのいずれか一つ以上をさらに含んでいてもよい。なお、番組枠は、番組が放送される時間帯(放送開始時刻から放送終了時刻まで)である。
[0040] 番組枠構成データは、番組枠に関するデータである。番組枠構成データは、番組の枠切りに関するデータと、番組枠内で放送されるCMに関するデータとを含む。枠切りに関するデータは、番組の放送開始時刻と放送終了時刻に関するデータである。CMに関するデータは、たとえば、CMチャンス数、CMチャンス開始時刻、CMチャンス終了時刻、番組枠内のCMの総時間、CMの放送曜日、タイムランクのデータなどである。なお、CMチャンスとは、CMの放送枠のことである。また、タイムランクとは、曜日や時間帯によってあらかじめ設定されているCMの料金のランクである。」
「[0051] また、たとえば、比較対象番組の番組枠が平日深夜帯で、推定対象番組の番組枠が土日の19時から21時の時間帯に含まれるとする。この場合、比較対象番組を録画で視聴していた視聴者層が、推定対象番組をリアルタイムで視聴する可能性があると推測される。そのため、出力部12は、推定する視聴率がリアルタイム視聴率やインプレッション数であれば、比較対象番組の視聴率の実績値に所定の加算値を加算することによって、推定対象番組の視聴率を推定する。」
(2)甲2発明
したがって、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「将来放送される番組の視聴率の推定精度を向上することを可能にする視聴率推定装置であって、
受信部11と出力部12と表示制御部23とを含み、
受信部11は、推定対象番組の番組構成データと、比較対象番組の番組構成データと、比較対象番組の視聴率の実績値とを、所定の装置から受信し、
比較対象番組は、推定対象番組の前の週の同じ時間帯に放送された番組であり、
視聴率推定装置20は、推定対象番組の番組構成データと比較対象番組の番組構成データとの相違点が満たす条件に応じて、比較対象番組の視聴率の実績値に所定の加算値を加算することによって、推定対象番組の視聴率を推定し、
番組構成データは、番組枠構成データを含み、
番組枠構成データは、番組の枠切りに関するデータを含み、
枠切りに関するデータは、番組の放送開始時刻と放送終了時刻に関するデータであり、
比較対象番組の番組枠が平日深夜帯で、推定対象番組の番組枠が土日の19時から21時の時間帯に含まれる場合、出力部12は、比較対象番組の視聴率の実績値に所定の加算値を加算することによって、推定対象番組の視聴率を推定する、
視聴率推定装置20。」
3 甲3に記載された事項、甲3発明
(1)甲3に記載された事項
甲3には、図面とともに、下記の記載がある。
「【0008】
1つの側面において、本発明は、放送情報に関する条件に応じて放送接触情報を精度良く予測することを目的とする。」
「【0033】
要求装置502は、放送事業者の情報処理装置(コンピュータ)であってもよく、広告会社の情報処理装置であってもよく、広告主の情報処理装置であってもよい。予測装置501は、図1の予測装置101、図2の予測装置201、図3の予測装置301、及び図4の予測装置401に対応し、記憶部511、通信部512、学習部513、計算部514、推定部515、及び予測部516を含む。」
「【0035】
要求装置502は、放送媒体で放送される、放送予定の放送番組の予測視聴率を要求する処理要求を、予測装置501へ送信する。放送予定の放送番組は、予測対象日に放送される全番組であってもよい。放送媒体は、例えば、テレビ放送、ラジオ放送、インターネット放送等で用いられる伝送信号であり、テレビ放送は、地上波放送及び衛星放送を含む。放送媒体は、無線放送の伝送信号であってもよく、有線放送の伝送信号であってもよい。」
「【0039】
記憶部511は、さらに、予測モデル521、天気補正モデル522、カレンダー523、及び入力データ526を記憶する。予測モデル521は、学習処理により生成された学習済みモデルであり、入力データ526から予測視聴率527を生成する。予測視聴率527は、補正前接触情報又は予測接触情報の一例である。」
「【0047】
カレンダー523は、図2のカレンダー情報221及び図3のカレンダー情報321の一例であり、月曜日~日曜日の7つの曜日及び各種の祝日を識別する情報を含む。予測モデル521がリアルタイム視聴率の最近トレンド予測を行う場合、入力データ526は、例えば、番組情報、過去視聴率、及びインターネット情報を含み、予測視聴率527としては、例えば、全番組の番組平均視聴率及び終了時視聴率が用いられる。
【0048】
入力データ526に含まれる番組情報は、例えば、予測対象の番組の放送局情報、放送時間帯、放送時間長、番組カテゴリ、曜日情報、Aタイムフラグ、長尺フラグ、祝日フラグ、タレントパワー、及びワードパワーを含む。」
「【0054】
入力データ526に含まれる過去視聴率は、例えば、3~10週前の番組平均視聴率、3~10週前の終了時視聴率、前年同日の平均視聴率、及び前年同時間帯の平均視聴率を含む。過去視聴率は、さらに、直近移動平均視聴率、同曜日の移動平均視聴率、欠損フラグ1、同曜日かつ同時間帯の移動平均視聴率、及び欠損フラグ2を含む。直近移動平均視聴率、同曜日の移動平均視聴率、及び同曜日かつ同時間帯の移動平均視聴率は、放送接触情報の統計値の一例である。」
「【0057】
同曜日の移動平均視聴率は、予測対象日と同じ曜日に対応する前N回の移動平均視聴率を表す。欠損フラグ1は、予測対象日と同じ曜日に放送された番組の有無を示すフラグである。同曜日かつ同時間帯の移動平均視聴率は、予測対象日と同じ曜日かつ同時間帯に対応する前N回の移動平均視聴率を表す。欠損フラグ2は、予測対象日と同じ曜日かつ同時間帯に放送された番組の有無を示すフラグである。」
「【0079】
次に、予測部516は、予測モデル521を用いて、入力データ526から予測視聴率527を生成し、記憶部511に格納する。そして、予測部516は、補正係数を用いて予測視聴率527を補正することで、予測視聴率528を生成し、記憶部511に格納する。これにより、予測対象日の各時刻における降水量に応じて、予測視聴率528を調整することができる。」
「【0098】
新番組フラグは、番組のタイトルに「新」が含まれているか否かを示すフラグである。再放送フラグは、番組のタイトルに「再」が含まれているか否かを示すフラグである。最終回フラグは、番組のタイトルに「終」が含まれているか否かを示すフラグである。放送時間長カテゴリは、番組の放送時間長が属するカテゴリを表す。放送時間長のカテゴリは、例えば、5分以下、5分超過かつ10分以下、10分超過かつ30分以下、30分超過かつ60分以下、60分超過かつ90分以下、及び90分超過かつ110分以下である。」
(2)甲3発明
したがって、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「記憶部511、通信部512、学習部513、計算部514、推定部515、及び予測部516を含み、
放送予定の放送番組は、予測対象日に放送される全番組であり、
記憶部511は、入力データ526を記憶し、
予測モデル521は、入力データ526から予測視聴率527を生成し、
入力データ526は、番組情報、過去視聴率を含み、
入力データ526に含まれる番組情報は、予測対象の番組の放送局情報、放送時間帯、放送時間長、番組カテゴリ、曜日情報、Aタイムフラグ、長尺フラグ、 祝日フラグ、タレントパワー、及びワードパワーを含み、
入力データ526に含まれる過去視聴率は、3~10週前の番組平均視聴率、同曜日の移動平均視聴率を含み、
同曜日の移動平均視聴率は、予測対象日と同じ曜日に対応する前N回の移動平均視聴率を表し、
予測部516は、予測モデル521を用いて、入力データ526から予測視聴率527を生成する、
予測装置501。」
4 甲4の1に記載された事項
甲4の1には、次の記載がある。翻訳は、申立人が提出した抄訳を翻訳文として採用した。
「 The purpose of this study is therefore to compare previous television ratings forecasting models with new methods, including state-of-the-art Bayesian model-averaging forecasts. We compare 8 forecast models, employing recent data from 2004 to 2008, in a market with over 70 channels.」(第1216頁右欄第7-12行)
(翻訳文:そこで本研究の目的は、従来のテレビ視聴率予測モデルを、最先端のベイズモデル平均化予測を含む新しい手法と比較することである。2004年から2008年までの最新データを用い、70以上のチャンネルを持つ市場における8つの予測モデルを比較する。)
「 Fig. 2 shows the total audience for different days of the week for the month of July, 2004. Again, the variation by the time of the evening is evident, but, more importantly, there is also variation across days. The largest total audiences at 6 pm and 8 pm are generally on Sundays and Mondays, while viewing at 10 pm is highest on a Saturday. The observation of a strong variation in ratings by day, time and month is consistent with the findings of previous studies (e.g., Gensch & Shaman, 1980), and demonstrates the need to include these factors in any reasonable forecasting model.」(第1217頁右欄第3-5行、第1218頁左欄第1-9行)
(翻訳文:図2は、2004年7月の曜日別の総視聴者数を示したものである。ここでも夕方の時間帯によるばらつきが見られるが、さらに重要なのは曜日によるばらつきである。午後6時台と午後8時台の合計視聴率が最も高いのは、概して日曜日と月曜日であり、午後10時台の視聴率が最も高いのは土曜日である。曜日、時間帯、月によって視聴率に大きなばらつきがあることは、過去の研究結果(Gensch & Shaman, 1980など)と一致しており、合理的な予測モデルにはこれらの要素を含める必要があることを示している。)
「 The covariates used in some of the predictive models fall into two groups, the first being time-based, such as the day of the week, season, year and holidays, and the second being program-specific covariates like genre and duration.」(第1227頁右欄第12-16行)
(翻訳文:一部の予測モデルで使用される共変量は2つのグループに分類される。1つ目は曜日、季節、年、休日などの時間ベースの共変量で、2つ目はジャンルや期間などの番組固有の共変量である。)
図2
[図:0001419353000002.jpg]
5 甲5の1に記載された事項
甲5の1には、次の記載がある。翻訳は、申立人が提出した抄訳を翻訳文として採用した。
「In this paper we examine the properties of 100 largest TV networks in US in terms of aggregated hourly viewership (impressions), and evaluate the performance of several forecasting models against a simple seasonal averaging. Understanding of the behavior of such viewership time series is vital for accurate targeted advertising for even with the rise of digital media, TV advertising spending makes up more than a third of total ad spending.」(第1頁第2-7行)
(翻訳文:本稿では、1時間ごとの視聴者数(インプレッション)を集計して、米国の100大テレビネットワークの特性を検証し、単純な季節平均に対するいくつかの予測モデルの性能を評価する。このような視聴率の時系列の挙動を理解することは、正確なターゲット広告を行うために不可欠である。)
「Analyzing Fig. 2 and Fig. 3 we notice a very strong periodic pattern in viewing behavior: on a large scale network viewership has a strong autocorrelation at time lags of 24, 168, and about 1344 hours which correspond to a daily, weekly and bimonthly periodicity in the time series.」(第6頁第2-5行)
(翻訳文:図2と図3を分析すると、視聴行動には非常に強い周期的パターンがあることに気づく。大規模なネットワーク視聴率では、24時間、168時間、約1344時間のタイムラグで強い自己相関があり、これは時系列における日、週、隔月の周期性に対応する。)
「Finally, the model's forecast is performed as
[図:0001419353000003.jpg]
- Lagged viewership at time periods that represent the same Weekday and Hour for different number of weeks in the past based on the seasonality of the series calculated with Fourier Transform;」(第8頁第10-16行)
(翻訳文:最後に、モデルの予測は次のように行われる。
[図:0001419353000004.jpg]
我々が使用した特徴量は以下の通りである:
- フーリエ変換によって算出されたシリーズの季節性に基づき、過去の異なる週数の同じ平日と同じ時間帯の視聴率の遅れ;)
図2
[図:0001419353000005.jpg]
図3
[図:0001419353000006.jpg]
第7 取消理由に対する当審の判断
1 甲1に基づく、取消理由1(新規性)、取消理由2(進歩性)について
(1)本件訂正発明4、5について
ア 対比
本件訂正発明4、5は、取消理由を通知していない訂正前の請求項2に対応する本件訂正発明2を減縮したものに該当するから、まず、本件訂正発明2と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明における「過去視聴率86」は、「記憶領域」に「記憶され」る「DB24」から「取得」される「TB80」に含まれるものであり、本件訂正発明2における「過去番組の視聴率の基準特徴量」に相当する。したがって、甲1発明における「過去視聴率86」の「記憶領域」は、本件訂正発明2における「過去番組の視聴率の基準特徴量を記憶する記憶部」に相当する。
(イ)甲1発明における「テレビ等の放送媒体で放送される番組」、「放送枠」は、本件訂正発明2における「対象番組」、「リクエスト枠」に相当する。そして、甲1発明においては「番組の時間割、その番組の内容等に基づいて決定されたCMの放送枠の情報が記憶され」ているから、甲1発明は、「放送枠」を「番組の時間割、その番組の内容等に基づいて決定」するための設定部を当然に有するものである。
(ウ)上記(イ)を踏まえると、甲1発明における「各放送枠の情報」が「含」む「日時情報」は、本件訂正発明2における「リクエスト枠の特徴量」に相当する。したがって、甲1発明における「「日時情報」の情報を含」む「CMの放送枠の情報が記憶され」た「放送枠DB22から、作案対象の期間の放送枠の情報のうち、放送枠毎の視聴率を記憶するテーブルの作成に必要な情報を取得し」、「日時情報74」「の情報が含まれ」る「放送枠TB70を作成」する構成は、本件訂正発明2における「リクエスト枠の特徴量を抽出する抽出部」に相当する。
(エ)上記(イ)を踏まえると、甲1発明における「各放送枠における視聴率の予測値」は、本件訂正発明2における「リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量」に相当する。したがって、上記(ア)、(イ)及び(ウ)を踏まえると、甲1発明における「放送枠TB70の日時情報74に対応する日時情報84が示す放送枠の過去視聴率86に基づいて、放送枠TB70の各放送枠における視聴率の予測値を計算」する構成は、本件訂正発明2における「基準特徴量と、リクエスト枠の特徴量とに基づいて、リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部」に相当する。
(オ)甲1発明における「視聴率の予測値を計算」する構成を含む「情報処理装置10」は、本件訂正発明2における「予測装置」に相当する。
したがって、本件訂正発明2と甲1発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「過去番組の視聴率の基準特徴量を記憶する記憶部と、
対象番組の少なくとも1つにリクエスト枠を設定する設定部と、
前記リクエスト枠の特徴量を抽出する抽出部と、
前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部と、
を有することを特徴とする予測装置。」
(相違点)
本件訂正発明2では「前記抽出部は、前記リクエスト枠の前記特徴量として、前記リクエスト枠の放送分数と、平日の祝日フラグと、時跨りフラグと、日跨りフラグとを抽出する」のに対し、甲1発明はそのように特定されるものではない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
上記相違点は実質的な相違点であるから、本件訂正発明2は甲1発明に対して新規性を有している。
また、上記相違点に係る本件訂正発明2の「前記抽出部は、前記リクエスト枠の前記特徴量として、前記リクエスト枠の放送分数と、平日の祝日フラグと、時跨りフラグと、日跨りフラグとを抽出する」構成は、甲2~甲5の1のいずれにも記載されておらず、本願の出願日前において周知技術であるともいえない。
したがって、本件訂正発明2は、当業者であっても甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、本件訂正発明4、5は、本件訂正発明2と同一の構成を備えるものであるから、本件訂正発明2と同じ理由により、甲1発明に対して新規性を有しており、また、当業者であっても、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 甲2に基づく、取消理由2(進歩性)について
(1)本件訂正発明4、5について
ア 対比
本件訂正発明4、5は、取消理由を通知していない訂正前の請求項2に対応する本件訂正発明2を減縮したものに該当するから、まず、本件訂正発明2と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明における「推定対象番組の前の週の同じ時間帯に放送された番組であ」る「比較対象番組の視聴率の実績値」は、本件訂正発明2における「過去番組の視聴率の基準特徴量」に相当する。甲2発明の「視聴率推定装置20」は、「所定の加算値を加算する」演算のために「比較対象番組の視聴率の実績値」を保持する必要があるから、「所定の装置から受信」した「比較対象番組の視聴率の実績値」を記憶する記憶部を当然に有するものである。
(イ)将来の放送のために複数の番組が予定されることは自明であるから、甲2発明は、「推定対象番組」の候補となる複数の対象番組を当然に有するものである。そして、甲2発明における「推定対象番組」は、複数の対象番組から設定された1つの番組であるから、本件訂正発明2における「リクエスト枠」に相当する。また、甲2発明における「視聴率推定装置20」は「推定対象番組の番組構成データ」を用いて推定を行うものであるから、複数の対象番組から「推定対象番組」を設定する設定部を当然に有するものである。
(ウ)甲2発明における「番組の放送開始時刻と放送終了時刻に関するデータ」である「番組の枠切りに関するデータ」は、「推定対象番組の番組構成データ」に含まれるデータであるから、上記(イ)を踏まえると、本件訂正発明2における「リクエスト枠の特徴量」に相当する。甲2発明における「視聴率推定装置20」は、「推定対象番組の番組枠が土日の19時から21時の時間帯に含まれる」ことを「推定対象番組」の「番組の枠切りに関するデータ」を用いて検出することは自明であるから、「推定対象番組の番組構成データ」から「番組の枠切りに関するデータ」を抽出する抽出部を当然に有するものである。
(エ)上記(イ)を踏まえると、甲2発明における「推定対象番組の視聴率」は、本件訂正発明2における「リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量」に相当する。したがって、上記(ア)、(イ)及び(ウ)を踏まえると、甲2発明における、「比較対象番組の番組枠が平日深夜帯で、推定対象番組の番組枠が土日の19時から21時の時間帯に含まれる場合」「比較対象番組の視聴率の実績値に所定の加算値を加算することによって、推定対象番組の視聴率を推定する」「出力部12」は、本件訂正発明2における「基準特徴量と、リクエスト枠の特徴量とに基づいて、リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部」に相当する。
(オ)甲2発明における「視聴率推定装置20」は、本件訂正発明2における「予測装置」に相当する。
したがって、本件訂正発明2と甲2発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「過去番組の視聴率の基準特徴量を記憶する記憶部と、
対象番組の少なくとも1つにリクエスト枠を設定する設定部と、
前記リクエスト枠の特徴量を抽出する抽出部と、
前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部と、
を有することを特徴とする予測装置。」
(相違点)
本件訂正発明2では「前記抽出部は、前記リクエスト枠の前記特徴量として、前記リクエスト枠の放送分数と、平日の祝日フラグと、時跨りフラグと、日跨りフラグとを抽出する」のに対し、甲2発明はそのように特定されるものではない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
上記相違点は実質的な相違点であるから、本件訂正発明2は甲2発明に対して新規性を有している。
また、上記相違点に係る本件訂正発明2の「前記抽出部は、前記リクエスト枠の前記特徴量として、前記リクエスト枠の放送分数と、平日の祝日フラグと、時跨りフラグと、日跨りフラグとを抽出する」構成は、甲3には記載されておらず、本願の出願日前において周知技術であるともいえない。
したがって、本件訂正発明2は、当業者であっても甲2発明及び甲3に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、本件訂正発明4、5は、本件訂正発明2と同一の構成を備えるものであるから、本件訂正発明2と同じ理由により、当業者であっても、甲2発明及び甲3に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 甲3に基づく、取消理由1(新規性)、取消理由2(進歩性)について
(1)本件訂正発明4、5について
ア 対比
本件訂正発明4、5は、取消理由を通知していない訂正前の請求項2に対応する本件訂正発明2を減縮したものに該当するから、まず、本件訂正発明2と甲3発明とを対比する。
(ア)甲3発明における「過去視聴率」は、本件訂正発明2における「過去番組の視聴率の基準特徴量」に相当する。したがって、甲3発明における「過去視聴率を含」む「入力データ526を記憶」する「記憶部511」は、本件訂正発明2における「過去番組の視聴率の基準特徴量を記憶する記憶部」に相当する。
(イ)甲3発明における「予測対象日に放送される全番組であ」る「放送予定の放送番組」、「予測対象の番組」は、本件訂正発明2における「対象番組」、「リクエスト枠」に相当する。甲3発明においては「予測対象の番組」を特定する必要があるから、甲3発明は「放送予定の放送番組」の全体のうち少なくとも1つに「予測対象の番組」を設定する設定部を当然に有するものである。
(ウ)上記(イ)を踏まえると、甲3発明における「予測対象の番組の」「放送時間帯、放送時間長」は、本件訂正発明2における「リクエスト枠の特徴量」に相当する。そして、甲3発明においては、「放送時間帯、放送時間長」「を含」む「番組情報」「を含」む「入力データ526」が「予測モデル521」に入力されている。予測モデルに複数の変数が入力される際には、変数としてそれぞれ適切なデータが予め抽出されていることは技術常識であるから、甲3発明は、「放送時間帯、放送時間長」を「予測モデル521」に入力する際に「入力データ526」から「放送時間帯、放送時間長」を抽出する抽出部を当然に有するものである。
(エ)上記(イ)を踏まえると、甲3発明における「予測視聴率527」は、本件訂正発明2における「リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量」に相当する。そして、上記(ア)、(イ)及び(ウ)を踏まえると、甲3発明における「番組情報、過去視聴率を含」む「入力データ526から」「予測モデル521を用いて」「予測視聴率527を生成する」「予測部516」は、本件訂正発明2における「基準特徴量と、リクエスト枠の特徴量とに基づいて、リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部」に相当する。
(オ)甲3発明における「予測装置501」は、本件訂正発明2における「予測装置」に相当する。
したがって、本件訂正発明2と甲3発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「過去番組の視聴率の基準特徴量を記憶する記憶部と、
対象番組の少なくとも1つにリクエスト枠を設定する設定部と、
前記リクエスト枠の特徴量を抽出する抽出部と、
前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部と、
を有することを特徴とする予測装置。」
(相違点)
本件訂正発明2では「前記抽出部は、前記リクエスト枠の前記特徴量として、前記リクエスト枠の放送分数と、平日の祝日フラグと、時跨りフラグと、日跨りフラグとを抽出する」のに対し、甲3発明はそのように特定されるものではない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
上記相違点は実質的な相違点であるから、本件訂正発明2は甲3発明に対して新規性を有している。
また、上記相違点に係る本件訂正発明2の「前記抽出部は、前記リクエスト枠の前記特徴量として、前記リクエスト枠の放送分数と、平日の祝日フラグと、時跨りフラグと、日跨りフラグとを抽出する」構成は、甲2には記載されておらず、本願の出願日前において周知技術であるともいえない。
したがって、本件訂正発明2は、当業者であっても甲3発明及び甲2に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、本件訂正発明4、5は、本件訂正発明2と同一の構成を備えるものであるから、本件訂正発明2と同じ理由により、甲3発明に対して新規性を有しており、また、当業者であっても、甲3発明及び甲2に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第8 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由に対する当審の判断
1 申立理由3(明確性)について
(1)明確性要件違反の判断の枠組み
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(2)不明確であるとされた特許請求の範囲の記載
訂正後の請求項4、5が引用する訂正後の請求項2は、申立人が不明確であると主張した、訂正前の請求項1の「前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する」との記載を含むものである。
(3)判断
上記(1)の判断枠組みに基づいて検討する。
当業者であれば、上記(2)で示した記載を含む、訂正前の請求項1の「過去番組の視聴率の基準特徴量を記憶する記憶部と、対象番組の少なくとも1つにリクエスト枠を設定する設定部と、前記リクエスト枠の特徴量を抽出する抽出部と、前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する取得部」との記載は、「過去番組の視聴率の基準特徴量」というパラメータと、「リクエスト枠の特徴量」というパラメータから、「予測特徴量」というパラメータを求めることが特定されていることが理解できるから、訂正後の請求項4、5に係る発明は、特許請求の範囲の記載が第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(4)申立人の主張について
申立人は、「視聴率の予測を高精度に行う」という本件特許の課題に対し、取得した予測特徴量をどのように用いて視聴率の予測を行うのかという課題解決の手段の記載が不足している結果不明確である旨(特許異議申立書第49頁第23行~第51頁第4行参照。)主張するが、特許請求の範囲の記載が明確であるか否かは上記(1)の判断枠組みに基づいて検討すべきであるから、上記主張は採用できない。
2 申立理由4(実施可能要件)について
(1)申立人が主張する実施可能要件違反に係る特許請求の範囲の記載
申立人は、訂正前の請求項1の「前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する」との記載に関して発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に違反すると主張しているところ、当該記載は訂正後の請求項4、5が引用する訂正後の請求項2にも記載されている。
(2)本件訂正明細書の記載
本件訂正明細書には以下の記載がある(下線は当審付与。以下同様。)。
ア 「【0022】
図3に示すように、ある放送局(●放送)の月曜日の5:00-5:10、5:10-5:20、5:20-5:30といった10分刻みの時間帯において、予測基準日(予測対象日)の20週前~1週前までの実測値(実測視聴率、実測特徴量)を記憶する。また、ある放送局(●放送)の火曜日の5:00-5:10、5:10-5:20、5:20-5:30といった10分刻みの時間帯において、予測基準日の20週前~1週前までの実測値(実測視聴率、実測特徴量)を記憶する。同様にして、ある放送局(●放送)の水曜日~日曜日についても、10分刻みの時間帯において、予測基準日の20週前~1週前までの実測値(実測視聴率、実測特徴量)を記憶する。予測基準日は月曜日~日曜日のいずれかの曜日に当てはまるので、複数の過去番組に跨る所定期間の視聴率の特徴量を記憶するとともに、予測基準日と同じ曜日の時系列視聴率を基準特徴量として記憶することになる。つまり、基準特徴量の記憶に際して、曜日毎の時系列変化をより学習し易い構造に変更している。また、詳しくは後述するが、基準特徴量に、対象番組の少なくとも1つに設定したリクエスト枠の特徴量に基づいた補正を掛けることで、当該リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得することができる。この予測特徴量は、リクエスト枠の予測視聴率そのものであってもよいし、リクエスト枠の予測視聴率と関連する何らかのパラメータであってもよい。なお、図3において、2週目以降は、予測特徴量をパラメータ補正のための特徴量に追加して再帰予測(予測視聴率の更新)を実行してもよい。」
イ 「【0056】
取得部34は、基準特徴量と、リクエスト枠の特徴量とに基づいて、リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する。取得部34は、基準特徴量を、リクエスト枠の特徴量に基づいて補正することで、リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する。」
(3)判断
上記(2)アの特に「リクエスト枠の予測視聴率と関連する何らかのパラメータ」との記載は、予測視聴率の指標となり得る何らかのパラメータを意味すると理解できる。そして、訂正後の請求項2の「前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する」との記載は、上記(2)の各段落の記載に基づくものである。よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件訂正発明4、5を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
(4)申立人の主張について
申立人は、予測特徴量が「リクエスト枠の予測視聴率と関連する何らかのパラメータ」である場合に、如何にして、当該パラメータを用いて視聴率の予測を行うのかが、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない旨(特許異議申立書第51頁第5~20行参照。)主張するが、上記(2)アの「リクエスト枠の予測視聴率と関連する何らかのパラメータ」は上記(3)のとおりに理解できるから、上記主張は採用できない。
3 申立理由5(サポート要件)について
(1)サポート要件違反の判断の枠組み
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)サポート要件違反とされた特許請求の範囲の記載
訂正後の請求項4、5が引用する訂正後の請求項2は、申立人がサポート要件違反であると主張した、訂正前の請求項1の「前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する」との記載を含むものである。
(3)本件訂正明細書の記載
本件訂正明細書には以下の記載がある。
ア 「【0006】
そこで本開示は、視聴率の予測を高精度に行うことができる予測装置を提供することを目的の1つとする。」
イ 「【0033】
<抽出処理(抽出ステップ)>
設定したリクエスト枠、例えばミニ番組枠の特徴量を抽出する。リクエスト枠の特徴量の一例として、以下の(1)~(9)が挙げられる。
(1)リクエスト枠の放送分数
(2)リクエスト枠の曜日(開始時曜日、終了時曜日)
(3)リクエスト枠の時間帯(開始時hour、終了時hour、開始時minute、終了時minute)
(4)リクエスト枠の放送局
(5)リクエスト枠の土日フラグ(開始時、終了時)
(6)リクエスト枠の祝日フラグ(開始時、終了時)
(7)リクエスト枠の平日の祝日フラグ(開始時、終了時)
(8)リクエスト枠の時跨りフラグ(開始時hour-終了時hourが同一かどうか)
(9)リクエスト枠の日跨りフラグ(29時跨りかどうか)」
(4)判断
上記(1)の判断枠組みに基づいて検討する。
本件訂正発明4、5の解決すべき課題は、上記(3)アに示されるとおりのものであると解され、当該課題に対し、本件訂正発明4、5の「前記基準特徴量と、前記リクエスト枠の前記特徴量とに基づいて、前記リクエスト枠の視聴率の予測に関する予測特徴量を取得する」という構成により、上記(3)イに例示されたものを含む「リクエスト枠の特徴量」というパラメータを用いることによって、「リクエスト枠の特徴量」を用いない場合と比べて精度の高い予測が可能であることを、当業者ならば理解できる。また、上記2(3)によれば、当該構成は発明の詳細な説明に記載されたものである。したがって、本件訂正発明4、5は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるといえる。
(5)申立人の主張について
申立人は、発明の詳細な説明に記載された「ミニ番組枠の予測視聴率を低めに補正する」という発明の課題を解決する手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものである旨(特許異議申立書第51頁第21行~第53頁第15行参照。)主張するが、本件訂正発明2-6の解決すべき課題をそのように限定して解釈すべき理由はないから、上記主張は採用できない。
第9 むすび
以上のとおり、本件訂正発明4、5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件訂正発明4、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1、7及び8は、上記のとおり、訂正請求により削除された。申立人による特許異議の申立てにおいて、請求項1、7及び8に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700258