特許異議申立
2024-700147
ポリイソシアヌレート発泡体
- 審判番号
- 2024-700147
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-122350
- 登録番号
- 7330782
- 請求日
- 2024年02月19日
- 審決日
- 2024年09月02日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社東北イノアック
- 【権利者代理人】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
- 【権利者代理人】伊藤 温
- 【異議申立人】渋谷 都
- 審判長/審判官
- 審判長 細井 龍史
- 審判官 小出 直也
- 審判官 藤井 勲
- 分類
- P1651.113-Y (C08G) / P1651.121-Y (C08G) / P1651.536-Y (C08G) / P1651.537-Y (C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7330782号発明「ポリイソシアヌレート発泡体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7330782号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7330782号(以下、「本件特許」という。)は、令和1年6月28日を出願日とする特許出願(特願2019-122350号)に係るものであって、令和5年8月14日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許に対し、令和6年2月19日に特許異議申立人 渋谷 都(以下、「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~5に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て以降の経緯は次のとおりである。
令和6年5月30日付け 取消理由通知
同年7月19日 意見書の提出(特許権者)
第2 本件発明
特許第7330782号の請求項1~5に係る発明は、設定登録時の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~5に記載された以下のとおりのものである(以下、請求項1~5に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明5」といい、まとめて「本件発明」ということもある。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
「【請求項1】
ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤及び三量化触媒を必須成分として混合反応させて得られるポリイソシアヌレート発泡体において、
下記算出法で算出された率が、30~40%であり、
独立気泡率が、75%以上であり、
前記ポリイソシアヌレート発泡体が、更に難燃剤を含有し、
前記ポリイソシアヌレート発泡体が、前記ポリイソシアヌレート発泡体の固形分質量を基準として、前記難燃剤を9~21質量%含有する
ことを特徴とするポリイソシアヌレート発泡体。
(算出法)
赤外線吸収スペクトル法に基づいて測定されたものをベースとして、下記式に従い、ヌレート環に基づく吸収ピーク面積を、ヌレート環、ウレタン・ウレアのN-H、ウレアのC=O、ウレタン・ヌレートのC=Oに基づく吸収ピーク面積との総和で割ることにより算出:
率(%)=[a/(a+b+c+d)]×100
a:ヌレート環に基づく吸収ピーク位置:1410cm-1、面積位置:1347.03~1464.67cm-1の面積
b:ウレタン・ウレアの[N-H]に基づく吸収ピーク位置:1510cm-1、面積位置:1460.81~1562.06cm-1の面積
c:ウレアの[C=O]に基づく吸収ピーク位置:1595cm-1、面積位置:1566.88~1638.23cm-1の面積
d:ウレタン・ヌレートの[C=O]に基づく吸収ピーク位置:1710cm-1、面積位置:1636.3~1768.4cm-1の面積
【請求項2】
ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤及び三量化触媒を必須成分として混合反応させて得られるポリイソシアヌレート発泡体において、
下記算出法で算出された率が、30~40%であり、
独立気泡率が、75%以上であり、
前記ポリオールの平均水酸基価が、400~600mgKOH/gである
ことを特徴とするポリイソシアヌレート発泡体。
(算出法)
赤外線吸収スペクトル法に基づいて測定されたものをベースとして、下記式に従い、ヌレート環に基づく吸収ピーク面積を、ヌレート環、ウレタン・ウレアのN-H、ウレアのC=O、ウレタン・ヌレートのC=Oに基づく吸収ピーク面積との総和で割ることにより算出:
率(%)=[a/(a+b+c+d)]×100
a:ヌレート環に基づく吸収ピーク位置:1410cm-1、面積位置:1347.03~1464.67cm-1の面積
b:ウレタン・ウレアの[N-H]に基づく吸収ピーク位置:1510cm-1、面積位置:1460.81~1562.06cm-1の面積
c:ウレアの[C=O]に基づく吸収ピーク位置:1595cm-1、面積位置:1566.88~1638.23cm-1の面積
d:ウレタン・ヌレートの[C=O]に基づく吸収ピーク位置:1710cm-1、面積位置:1636.3~1768.4cm-1の面積
【請求項3】
ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤及び三量化触媒を必須成分とする発泡原料組成物を混合反応させて得られるポリイソシアヌレート発泡体において、
下記算出法で算出された率が、30~40%であり、
独立気泡率が、75%以上87.3%以下であり、
前記発泡剤が、物理的発泡剤であり、
前記発泡原料組成物に配合される水の量は、前記発泡原料組成物100重量部を基準として、0.05重量部以下である
ことを特徴とするポリイソシアヌレート発泡体。
(算出法)
赤外線吸収スペクトル法に基づいて測定されたものをベースとして、下記式に従い、ヌレート環に基づく吸収ピーク面積を、ヌレート環、ウレタン・ウレアのN-H、ウレアのC=O、ウレタン・ヌレートのC=Oに基づく吸収ピーク面積との総和で割ることにより算出:
率(%)=[a/(a+b+c+d)]×100
a:ヌレート環に基づく吸収ピーク位置:1410cm-1、面積位置:1347.03~1464.67cm-1の面積
b:ウレタン・ウレアの[N-H]に基づく吸収ピーク位置:1510cm-1、面積位置:1460.81~1562.06cm-1の面積
c:ウレアの[C=O]に基づく吸収ピーク位置:1595cm-1、面積位置:1566.88~1638.23cm-1の面積
d:ウレタン・ヌレートの[C=O]に基づく吸収ピーク位置:1710cm-1、面積位置:1636.3~1768.4cm-1の面積
【請求項4】
前記ポリイソシアヌレート発泡体が、更に難燃剤を含有し、
前記ポリイソシアヌレート発泡体が、前記ポリイソシアヌレート発泡体の固形分質量を基準として、前記難燃剤を2~21質量%含有する、請求項2又は3記載のポリイソシアヌレート発泡体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリイソシアヌレート発泡体を備える発泡ボード。」
第3 特許異議申立理由の概要、取消理由通知の概要及び証拠方法
1 申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和6年2月19日に申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由1(甲第1号証による新規性欠如)
本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件発明1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2(甲第1号証による進歩性欠如)
本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第3号証、甲第4号証に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由3(甲第2号証による新規性欠如)
本件発明1~5は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件発明1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4)申立理由4(甲第2号証による進歩性欠如)
本件発明1~5は、甲第2号証に記載された発明、並びに甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証及び甲第6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(5)申立理由5(実施可能要件違反)
本件発明1~5に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(具体的な理由の概要)
本件発明1で特定される率を30~40%に調整する手段について、発明の詳細な説明に「イソシアネート指数は、150以上であることが好ましい。」との記載があるのみであり、どのようにすれば30~40%となるのかについて一切記載がなく、実施例、比較例においても、特定のポリオール及び特定のイソシアネート成分を用い、触媒や整泡剤も同じ物を同じ割合で加えており、上記率を変更するための具体的な機序の説明もなく、他の材料を用いた場合に、どのようにすれば上記率を30~40%とすることができるのか不明である。また、上記「率」は従来から知られているヌレート化率とも異なるものであるから、本件明細書の記載以外のヌレート化率に係る技術常識を参酌することもできないものである。
よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
(6)申立理由6(サポート要件違反)
本件発明1~5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(具体的な理由の概要)
発明の詳細な説明には、本件発明の各特定事項について、本件発明の課題解決との関係で、どのような作用を行っているのか等、課題解決との間に具体的に言及した記載がなく、実施例等においては、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、三量化触媒、難燃剤として特定のものを用い、ポリオールの平均水酸基価の範囲、イソシアネート指数、独立気泡率、水配合量を一定の範囲としたものしか開示されておらず、上記本件発明が特定する事項を満たせば、その他の平均水酸基価、独立気泡率、水の量等の数値とは関係なく、本件発明の課題が解決できると当業者が理解できるとは到底いえない。
2 取消理由通知の概要
当審が、令和6年5月30日付け取消理由通知書で通知した取消理由の概要は次のとおりである。
(1)取消理由1(甲第1号証による新規性欠如)
本件発明1、2、4、5は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件発明1、2、4、5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)取消理由2(甲第1号証による進歩性欠如)
本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第3号証、甲第4号証、引用文献1、引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)取消理由3(実施可能要件違反)
本件発明1~5に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(具体的な理由の概要)
発明の詳細な説明には、本件発明1で特定される率の値を増減するために、製造条件のどの部分をどのように変更すればよいのか具体的な記載がなく、また、その率が公知の指標であってその調節手段が既に知られているものであるとも認められない。
そして、上記率がイソシアネート指数の調節によって調節可能であるとしても、本件発明は「独立気泡率が75%以上」となる条件で上記率を30~40%とするものであるところ、本件明細書には独立気泡率の調節条件も記載されておらず、実施例において製造されているのは「前記ポリオールの平均水酸基価が、400~600mgKOHである」という要件、「独立気泡率が、75%以上87.3%以下であり、前記発泡剤が、物理的発泡剤であり」という要件を満たし、かつ、発泡原料組成物100重量部を基準とした発泡原料組成物に配合される水の量が、0.07重量部以下という要件を満たすものに限られているから、当業者は実施例と同じ発泡体を製造することはできるものの、上記要件を満たさずに、本件発明1に含まれる発泡体を製造するためには、当業者は期待しうる程度を越える試行錯誤や複雑高度な実験を行う必要がある。
3 証拠方法
(1)申立人が提出した証拠方法
甲第1号証:国際公開第2014/112394号
甲第2号証:特開2017ー43777号公報
甲第3号証:今井嘉夫著「ポリウレタンフォーム」、(株)高分子刊行会、第1版第1刷(1987年5月20日)、79~91頁、表紙、奥付
甲第4号証:岩田敬治編「ポリウレタン樹脂ハンドブック」、日刊工業新聞社、昭和62年9月25日(初版1刷発行)、223~282頁、表紙、奥付
甲第5号証:特表2023ー548998号公報
甲第6号証:特開2013ー73008号公報
(以下、順に「甲1」ないし「甲6」という。)
(2)特許権者が令和6年7月19日に提出した意見書に添付して提出した証拠方法
乙第1号証:特開2000ー86739号公報
乙第2号証:特開2008ー7701号公報
(以下、「乙1」、「乙2」という。)
(3)当審が職権調査により発見した証拠方法
引用文献1:国際公開第2018/181843号
引用文献2:特開2000ー53741号公報
引用文献3:特表2017ー529442号公報
(以下、「引1」~「引3」という。)
第4 当審の判断
当審は、以下に述べるとおり、取消理由1~3及び申立理由1~6によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
以下、詳述する。
1 取消理由1(甲1による新規性欠如)、取消理由2(甲1による進歩性欠如)、申立理由1(甲1による新規性欠如)、申立理由2(甲1による進歩性欠如)について
取消理由1、2及び申立理由1、2は、いずれも甲1を主引用文献とする新規性、進歩性欠如をいうものであるから、まとめて検討する。
(1)甲1に記載された発明
甲1には、
「ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み、
前記三量化触媒が、窒素含有芳香族化合物、カルボン酸アルカリ金属塩、3級アンモニウム塩および4級アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
前記添加剤が、赤リンを必須成分とし、前記赤リン以外にリン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを組み合わせてなることを特徴とする、難燃性ウレタン樹脂組成物。」が記載されており(請求項1)、その具体例として実施例47及び52が記載されている。
実施例で使用された成分は[0102]~[0105]に説明があり、実施例では、表に記載された成分の混合物を攪拌して発泡体が製造されている([0106])。
そうすると、実施例47及び52において、そこで製造された難燃性ウレタン樹脂組成物からなる発泡体に着目し、請求項1の記載にならって整理すると、甲1には次の発明が記載されている。
「ポリイソシアネート化合物(日本ウレタン工業社製、「ミリオネートMR-200」)を83.4重量部、ポリオール化合物(o-フタル酸ポリエステルポリオール、川崎化成工業社製:マキシモールRDK-142、水酸基価400mgKOH/g)を16.6重量部、三量化触媒(2-エチルヘキサン酸カリウム0.5重量部及び東ソー社製:TOYOCAT-TR20を0.7重量部)、発泡剤(水0.6重量部及びHFC-365mfcとHFC-245faの7:3混合物4.6重量部)、整泡剤(東レダウコーニング社製:SH-193)を1.7重量部、ウレタン化触媒(ペンタメチルジエチレントリアミン)を0.1重量部および添加剤を含み、
イソシアネートINDEXが400であり、
これらを攪拌して得られた難燃性ウレタン樹脂組成物からなる発泡体であって、
前記添加剤が、赤リンを6.0重量部、リン酸二水素アンモニウムを3.0重量部、トリス(β-クロロプロピルホスフェート(大八化学社製:TMCPP)を7.0重量部、ヘキサブロモベンゼン(マナック社製:HBB)を3.0重量部組み合わせてなる、難燃性ウレタン樹脂組成物からなる発泡体。」(実施例47に基づくもの。以下「甲1発明1」という。)
「ポリイソシアネート化合物(日本ウレタン工業社製、「ミリオネートMR-200」)を84.7重量部、ポリオール化合物(ポリエーテルポリオール、三井化学社製:アクトコールGR84T、水酸基価454mgKOH/g)を15.3重量部、三量化触媒(2-エチルヘキサン酸カリウム0.5重量部及び東ソー社製:TOYOCAT-TR20を0.7重量部)、発泡剤(水0.6重量部及びHFC-365mfcとHFC-245faの7:3混合物4.6重量部)、整泡剤(東レダウコーニング社製:SH-193)を1.7重量部、ウレタン化触媒(ペンタメチルジエチレントリアミン)を0.1重量部および添加剤を含み、
イソシアネートINDEXが400であり、
これらを攪拌して得られた難燃性ウレタン樹脂組成物からなる発泡体であって、
前記添加剤が、赤リンを6.0重量部、リン酸二水素アンモニウムを3.0重量部、トリス(β-クロロプロピルホスフェート(大八化学社製:TMCPP)を7.0重量部、ヘキサブロモベンゼン(マナック社製:HBB)を3.0重量部組み合わせてなる、難燃性ウレタン樹脂組成物からなる発泡体。」(実施例52に基づくもの。以下「甲1発明2」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「ポリイソシアネート化合物(日本ウレタン工業社製、「ミリオネートMR-200」)」、「ポリオール化合物(o-フタル酸ポリエステルポリオール、川崎化成工業社製:マキシモールRDK-142、水酸基価400mgKOH/g)」、「発泡剤(水0.6重量部及びHFC-365mfcとHFC-245faの7:3混合物4.6重量部)」、「三量化触媒(2-エチルヘキサン酸カリウム0.5重量部及び東ソー社製:TOYOCAT-TR20を0.7重量部)」は、それぞれ、本件発明1の「ポリイソシアネート」、「ポリオール」、「発泡剤」、「三量化触媒」に相当する。
また、甲1発明1の「赤リン」及び「トリス(β-クロロプロピルホスフェート(大八化学社製:TMCPP)」はいずれも本件明細書の【0012】に「難燃剤」として記載された「赤燐」及び「トリス(クロロプロピル)ホスフェート」に相当するものであるし、それらが難燃剤として働くことは甲1の[0058]や[0064]の記載からも理解することができるから、これらは本件発明1の「難燃剤」に相当し、甲1発明1の「リン酸二水素アンモニウム」、「ヘキサブロモベンゼン(マナック社製:HBB)」は、甲1の[0056]に記載された「リン酸塩含有難燃剤」、「臭素含有難燃剤」に相当するものであるから、これらも本件発明1の「難燃剤」に相当する。
甲1発明1の発泡体を構成する「難燃性ウレタン樹脂組成物」は、「三量化触媒」を含んでおり、その三量化触媒は甲1の[0049]に記載されるように「ポリウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する」ものであるから、その触媒を用いて製造された甲1発明1の「難燃性ポリウレタン樹脂組成物からなる発泡体」は、本件発明1の「ポリイソシアヌレート発泡体」に相当する。
そして、甲1発明1では、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤を含む混合物を攪拌して発泡体としているから、甲1発明1における、「ポリイソシアネート化合物(日本ウレタン工業社製、「ミリオネートMR-200」)を83.4重量部、ポリオール化合物(o-フタル酸ポリエステルポリオール、川崎化成工業社製:マキシモールRDK-142、水酸基価400mgKOH/g)を16.6重量部、三量化触媒(2-エチルヘキサン酸カリウム0.5重量部及び東ソー社製:TOYOCAT-TR20を0.7重量部)、発泡剤(水0.6重量部及びHFC-365mfcとHFC-245faの7:3混合物4.6重量部)、整泡剤(東レダウコーニング社製:SH-193)を1.7重量部、ウレタン化触媒(ペンタメチルジエチレントリアミン)を0.1重量部および添加剤を含み、これらを攪拌して得られた難燃性ウレタン樹脂組成物からなる発泡体」は、本件発明1の「ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤及び三量化触媒を必須成分として混合反応させて得られるポリイソシアヌレート発泡体」に相当する。
そうすると、両者は
「ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤及び三量化触媒を必須成分として混合反応させて得られるポリイソシアヌレート発泡体において、
前記ポリイソシアヌレート発泡体が、更に難燃剤を含有することを特徴とするポリイソシアヌレート発泡体。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1-1>
下記算出法で算出された率(以下、「率」という。)が、本件発明1は「30~40%」であるのに対し、甲1発明1では不明な点
(算出法)
赤外線吸収スペクトル法に基づいて測定されたものをベースとして、下記式に従い、ヌレート環に基づく吸収ピーク面積を、ヌレート環、ウレタン・ウレアのN-H、ウレアのC=O、ウレタン・ヌレートのC=Oに基づく吸収ピーク面積との総和で割ることにより算出:
率(%)=[a/(a+b+c+d)]×100
a:ヌレート環に基づく吸収ピーク位置:1410cm-1、面積位置:1347.03~1464.67cm-1の面積
b:ウレタン・ウレアの[N-H]に基づく吸収ピーク位置:1510cm-1、面積位置:1460.81~1562.06cm-1の面積
c:ウレアの[C=O]に基づく吸収ピーク位置:1595cm-1、面積位置:1566.88~1638.23cm-1の面積
d:ウレタン・ヌレートの[C=O]に基づく吸収ピーク位置:1710cm-1、面積位置:1636.3~1768.4cm-1の面積
<相違点1-1-2>
「独立気泡率」が、本件発明1は「75%以上」であるのに対し、甲1発明1では不明な点
<相違点1-1-3>
ポリイソシアヌレート発泡体の固形分質量を基準とした難燃剤の含有割合が、本件発明1では「9~21質量%」であるのに対し、甲1発明1では不明な点
イ 相違点についての判断
相違点1-1-1について検討する。
甲1には、甲1発明1の「率」の値が30~40%であることをうかがわせる記載はない。
また、本件明細書の【0011】には、「このヌレート化率を得るために、イソシアネート指数は、150以上であることが好ましい。」と記載され、【0023】には、「上記ポリオール側発泡原料液と上記ポリイソシアネート成分とを混合する際、当該混合物(発泡原料組成物)のイソシアネート指数が、好適には150~600、より好適には350~600、更に好適には370~550である。当該範囲にあると、難燃性を担保しつつ、より高い断熱性やより好適な圧縮強度・フライアビリティ・寸法安定性をバランス良く有するポリイソシアネート発泡体となる。」と記載されており、甲1発明1のイソシアネート指数(イソシアネートINDEX)は400であり、【0023】に記載された「150」~「600」という範囲内のものである。
しかし、イソシアネート指数は、【0023】に記載されるように「全原料配合である反応混合液のすべての活性水素のモル数と、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数の比(NCO/OHのモル比)」をいうものであって、本件発明1の「率」の定義である「赤外線吸収スペクトル法に基づいて測定されたものをベースとして、下記式に従い、ヌレート環に基づく吸収ピーク面積を、ヌレート環、ウレタン・ウレアのN-H、ウレアのC=O、ウレタン・ヌレートのC=Oに基づく吸収ピーク面積との総和で割ることにより算出」(当審注:式は省略)とは異なるものであるし、イソシアネート指数が大きければイソシアネート同士の三量化反応が進行しやすくなり、ヌレート環の生成量が大きくなる関係があるとしても、イソシアネート指数が150~600の間であれば、必ず「率」が30~40%になるとはいえない。
そして、本件明細書の実施例10(水を含まない)と実施例11(発泡原料組成物100重量部に対して発泡助剤である水を0.07重量部含む)を比較すると、両者はいずれもイソシアネート指数が「450」であるが、実施例10の「率」は35.4%であるのに対し、実施例11の「率」は30.6%となっている。
このことから、「率」の値は、イソシアネート指数だけでなく、水の含有量等も影響するものと認められるところ、甲1発明1では、イソシアネート指数が400と本件明細書の実施例11に近い値であって、発泡原料組成物(ポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物の合計)100重量部に対して、水を0.6重量部も含有するものであるから、甲1発明1の「率」は、水を0.07重量部しか含まない実施例11の「30.6%」よりも少ない値になることが推測される。
そうすると、甲1発明1は、「率」が「30~40%」を満たすとはいえない。
よって、相違点1-1-1は実質的な相違点であるといえるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。
そして、甲1には、甲1発明1において、「率」を「30~40%」にすることを動機付ける記載はないし、甲3(83頁2~4行)には、断熱性能が求められるポリウレタンフォームにおいてはフォームの独泡率は高い方がよく、90%前後のものが多いことが記載され、甲4(268頁、図6.64、229頁、表6.2)には、熱伝導率は独立気泡率と関係することが記載され、ポリウレタンフォームの代表的な製造方法で製造されたスラブストックフォームについて、独立気泡率は90~93%の値であることが記載され、引1([0026])には「水を発泡剤に使う場合、使用部数が多いと独立気泡率が低下してしまう」ことが記載され、引2(【0014】)にはポリウレタンフォームの独立気泡率に関して「フォームの独立気泡率が50%未満であると圧縮強度が低下する。」と記載されているにとどまるから、甲3、甲4、引1、引2の記載を参酌しても、甲1発明1において、「率」を30~40%にすることが当業者に容易であるとはいえない。
また、本件発明1は、「率」を「30~40%」とすることで、「難燃性を担保しつつ、高い断熱性や好適な圧縮強度・フライアビリティ・寸法安定性をバランス良く有するポリイソシアヌレート発泡体を提供できる」(本件明細書【0006】及び実施例1~12と比較例2、3の比較結果参照)という効果を奏するものであり、そのような効果は甲1、甲3、甲4、引1、引2の記載から当業者が予測できるものではない。
よって、相違点1-1-2、1-1-3について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明及び甲3、甲4、引1、引2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 甲1発明2を主引用発明とした場合の検討
甲1発明2を主引用発明とした場合も、上記アの相違点1-1-1~1-1-3において本件発明1と相違し、相違点1-1-1についての判断は上記イと同様のことがいえる。
エ 本件発明1についてのまとめ
よって、本件発明1は甲1に記載された発明であるとも、また甲1に記載された発明及び、甲3、甲4、引1、引2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、取消理由1、2及び申立理由1、2によっては、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。
(3)本件発明2について
ア 対比
甲1発明1におけるポリオールの水酸基価は400mgKOH/gであるから、上記(2)アで検討した点もふまえて本件発明2と甲1発明1を対比すると、両者は
「ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤及び三量化触媒を必須成分として混合反応させて得られるポリイソシアヌレート発泡体において、
前記ポリオールの平均水酸基価が、400~600mgKOH/gである
ことを特徴とするポリイソシアヌレート発泡体。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-2-1>
「率」が、本件発明2では「30~40%」であるのに対し、甲1発明1では不明な点
<相違点1-2-2>
「独立気泡率」が、本件発明2は「75%以上」であるのに対し、甲1発明1では不明な点
イ 相違点についての判断
相違点1-2-1は、上記(2)アで示した相違点1-1-1と同じであり、上記(2)イで示したのと同様の理由により、実質的な相違点であるから、本件発明2は甲1に記載された発明ではなく、また、相違点1-2-1の構成を本件発明2のようにすることは、甲1、甲3、甲4、引1及び引2の記載に基づいて当業者が容易に想到することではない。
また、甲1発明2を主引用発明とした場合も同様である。
ウ まとめ
よって、本件発明2は甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明、及び甲3、甲4、引1、引2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)本件発明3について
ア 対比
甲1発明1で用いられている発泡剤のうち、「HFC-365mfcとHFC-245faの7:3混合物」は、引3の【0056】にHFC-245fa及びHFC-365mfcが物理的発泡剤の例として挙げられていることからみて、本件発明3の「物理的発泡剤」に相当する。
また、甲1発明1における、発泡原料組成物100重量部中の水の含有量は100×0.6/(16.6+1.7+0.5+0.7+0.1+0.6+4.6+83.4+6.0+3.0+7.0+3.0)=約0.47重量部となる。
よって、上記(2)アで検討した点もふまえて本件発明3と甲1発明1を対比すると、両者は
「ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤及び三量化触媒を必須成分として混合反応させて得られるポリイソシアヌレート発泡体において、
前記発泡剤が物理的発泡剤である
ことを特徴とするポリイソシアヌレート発泡体。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-3-1>
「率」が、本件発明3は「30~40%」であるのに対し、甲1発明1では不明な点
<相違点1-3-2>
「独立気泡率」が、本件発明3は「75%以上87.3%以下」であるのに対し、甲1発明1では不明な点
<相違点1-3-3>
発泡原料組成物100重量部を基準とした、発泡原料組成物に配合される水の量が、本件発明3では「0.05重量部以下」であるのに対し、甲1発明1では「約0.47重量部」である点
イ 相違点についての判断
相違点1-3-1は上記(2)アで示した相違点1-1-1と同じであり、上記(2)イで示したのと同様の理由により、実質的な相違点であるから、本件発明3は甲1に記載された発明ではなく、また、相違点1-3-1の構成を本件発明3のようにすることは、甲1、甲3、甲4、引1及び引2の記載に基づいて当業者が容易に想到することではない。
また、甲1発明2を主引用発明とした場合も同様である。
ウ まとめ
よって、本件発明3は甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲3、甲4、引1、引2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(5)本件発明4、5について
本件発明4は、本件発明2又は3を引用するものであり、本件発明5は本件発明1~3を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1~3が甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明、及び甲3、甲4、引1、引2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明4及び5についても甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明、及び甲3、甲4、引1、引2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)申立人の主張について
申立人は、甲1の表1~10に記載の実施例及び比較例のほとんどが、イソシアネートINDEXが400であり、本件明細書の【0011】及び実施例、比較例の結果から、イソシアネート指数が250~600であれば、「率」は30~40%の範囲になる蓋然性が高い旨を主張するが、上記(2)イで示したように、イソシアネート指数が250~600であれば、それだけで「率」が30~40%の範囲になるとはいえないことから、申立人の主張は採用することができない。
(7)取消理由1、2及び申立理由1、2についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由1、2及び申立理由1、2によっては、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由3(実施可能要件)、申立理由5(実施可能要件)について
取消理由3、申立理由5は、いずれも実施可能要件に関するものであるから、併せて検討する。
(1)実施可能要件違反の判断基準
実施可能要件を定めた特許法第36条第4項第1号は、明細書の発明の詳細な説明の記載は、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定めるところ、物の発明について実施可能要件を満たすためには、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。
以下、この観点に沿って検討する。
(2)実施可能要件違反の検討
本件発明1~5は上記第2で示したとおりのものであり、本件発明1についてみると、ポリイソシアヌレート発泡体を構成する成分である「ポリオール」、「ポリイソシアネート」、「発泡剤」、「三量化触媒」、「難燃剤」については、本件明細書の【0012】、【0015】、【0016】、【0017】、【0018】、【0019】、【0021】に、どのようなものが使用できるのか記載があり、それらを用いて本件発明1~5の条件を満たすポリイソシアヌレート発泡体を製造した具体例が実施例1~12として12例記載されている。
そして、これらの実施例は全て発泡助剤としての水を用いないか、用いたとしてもその量がわずか(実施例11)であり、また、イソシアネート指数が250~600となるようにポリイソシアネート成分を添加したものであるところ、本件明細書には、比較例として、発泡助剤としての水を多く配合した結果、独立気泡率が本件発明1~5の「75%以上」を満たさない比較例1、イソシアネート指数が「200」又は「650」となるようにポリイソシアネート成分を添加した結果、「率」が「30~40%」の範囲外となる比較例2、3が記載されている。
加えて、独立気泡率を高くするためには、気泡の連通化を抑制すればよいことは当業者に自明なことであり、例えば連通化を促進させる水の配合量を減らす、整泡剤の配合量を増やして破泡を抑制する等の手段で独立気泡率を高められることは、当業者であれば容易に理解できることである。
また、「率」を高めるためには、分子の値を大きく(ヌレート環の生成量を大きく)し、分母の値を小さく(ウレタン、ウレア結合の生成量を少なく)すればよいことは当業者に自明なことであり、ヌレート環の原料となるポリイソシアネートの配合割合を増やす(イソシアネート指数を大きくする)、ヌレート環の生成を促進する三量化触媒の配合量を増やす、ウレタン結合やウレア結合に関与する原料(ポリオールや水)の配合割合を低下させる等によって、「率」を高められることは、当業者であれば容易に理解できることである。
そうすると、当業者であれば、実施例に倣って本件発明1~4のポリイソシアヌレート発泡体又は本件発明5の発泡ボードを製造することができることに加え、実施例以外のものについても、「ポリオール」、「ポリイソシアネート」、「発泡剤」、「三量化触媒」、「難燃剤」を本件明細書の記載を参考に、他の成分に置き換え、それらの「独立気泡率」及び「率」が本件発明の条件を満たさなければ、上記の手段によってその値を調節することで、本件発明1~4のポリイソシアヌレート発泡体及び本件発明5の発泡ボードを製造することができるものと認められる。
よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~5について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
(3)申立人の主張について
申立人は、概略、上記第3の1(5)のように主張する。
しかし、「率」の値を調節する手段を当業者が理解できることは上記(2)で述べたとおりであるから、申立人の主張を採用することはできない。
(4)申立理由5、取消理由3についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由5及び取消理由3によっては、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由3(甲2による新規性)、申立理由4(甲2による進歩性)について
申立理由3、4は、いずれも甲2を主引用文献とするものであるから、併せて検討する。
(1)甲2に記載された発明
甲2には、
「【請求項1】
ポリオールを芳香族ポリイソシアネートと反応させて得られる発泡性ポリウレタン組成物であって、前記発泡性ポリウレタン組成物は整泡剤、触媒、発泡剤、および難燃剤を含み、硬化させた前記発泡性ポリウレタン組成物の表層から5mm~10mmの位置のIR測定において、1900~2000cm-1の範囲の平均値をゼロ値に合わせた時の、1390~1430 cm-1の範囲の最大値が1500~1520 cm-1の範囲の最大値に対して1.5倍以上2.0倍以下であることを特徴とする発泡組成物。」
「【請求項3】
請求項1または2に記載の発泡性ポリウレタン組成物を硬化させたポリウレタン発泡体。」
が記載されており、その具体例として実施例1、2が記載されている。
実施例1、2に着目して、請求項1、3の記載にならって整理すると、甲2には次の発明が記載されているといえる。
「p-フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製:マキシモールRLK-087、水酸基価200mgKOH/g)26.7質量部を4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(万華科学ジャパン株式会社製:PM200)73.2質量部と反応させて得られる発泡性ポリウレタン組成物を硬化させたポリウレタン発泡体であって、前記発泡性ポリウレタン組成物は整泡剤(東レダウコーニング社製:SH-193)1.9質量部、3量化触媒(東ソー社製:TOYOCAT-TRXを1.4質量部、サンアプロ株式会社製:U-CAT 18Xを1.0質量部)、ウレタン化触媒(東ソー社製:TOYOCAT-TTを1.0質量部、サンアプロ株式会社性:U-CAT 202を0.9質量部、東ソー社製:TOYOCAT-DM70を1.5質量部)、発泡剤(水を0.8質量部及びHFC-365mfcを15.0質量部)、難燃剤(トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートを12.0質量部、赤リンを8.0質量部、ホウ酸亜鉛を3.0質量部)、無機充填剤(ウォラストナイト3.5質量部)を含み、ポリウレタン発泡体の表層から5mm~10mmの位置のIR測定において、1900~2000cm-1の範囲の平均値をゼロ値に合わせた時の、1390~1430cm-1の範囲の最大値が1500~1520cm-1の範囲の最大値に対して1.58倍である、ポリウレタン発泡体。」(実施例1に着目して認定。以下「甲2発明1」という。)
「p-フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製:マキシモールRLK-087、水酸基価200mgKOH/g)26.7質量部を4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(万華科学ジャパン株式会社製:PM200)73.2質量部と反応させて得られる発泡性ポリウレタン組成物を硬化させたポリウレタン発泡体であって、前記発泡性ポリウレタン組成物は整泡剤(東レダウコーニング社製:SH-193)1.9質量部、3量化触媒(東ソー社製:TOYOCAT-TRXを1.4質量部、サンアプロ株式会社製:U-CAT 18Xを1.0質量部)、ウレタン化触媒(東ソー社製:TOYOCAT-TTを1.0質量部、サンアプロ株式会社製:U-CAT 202を0.9質量部、東ソー社製:TOYOCAT-DM70を1.5質量部)、発泡剤(水を0.2質量部及びHFC-365mfcを15.0質量部)、難燃剤(トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートを12.0質量部、赤リンを8.0質量部、ホウ酸亜鉛を3.0質量部)、無機充填剤(ウォラストナイト3.5質量部)を含み、ポリウレタン発泡体の表層から5mm~10mmの位置のIR測定において、1900~2000cm-1の範囲の平均値をゼロ値に合わせた時の、1390~1430cm-1の範囲の最大値が1500~1520cm-1の範囲の最大値に対して1.72倍である、ポリウレタン発泡体。」(実施例2に着目して認定。以下「甲2発明2」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明1を対比する。
甲2発明1の「4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(万華科学ジャパン株式会社製:PM200)」、「p-フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製:マキシモールRLK-087、水酸基価200mgKOH/g)」、「発泡剤(水を0.2質量部及びHFC-365mfcを15.0質量部)」、「3量化触媒(東ソー社製:TOYOCAT-TRXを1.4質量部、サンアプロ株式会社製:U-CAT 18Xを1.0質量部)」、「難燃剤(トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートを12.0質量部、赤リンを8.0質量部、ホウ酸亜鉛を3.0質量部)」は、それぞれ、本件発明1の「ポリイソシアネート」、「ポリオール」、「発泡剤」、「三量化触媒」、「難燃剤」に相当する。
甲2発明1の発泡体の原料である発泡性ポリウレタン組成物は「3量化触媒」を含んでおり、その3量化触媒は甲2の[0042]に記載されるように「ポリウレタン樹脂の主剤である芳香族ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する」ものであるから、その触媒を用いて製造された甲2発明1の「ポリウレタン発泡体」は、本件発明1の「ポリイソシアヌレート発泡体」に相当する。
そして、甲2発明1の発泡体の原料である発泡性ポリウレタン組成物は、上記のとおり本件発明1の「ポリオール」、「ポリイソシアネート」、「発泡剤」、「三量化触媒」を含んだ状態で硬化させたものであるから、甲2発明1における、「p-フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製:マキシモールRLK-087、水酸基価200mgKOH/g)26.7質量部を4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(万華科学ジャパン株式会社製:PM200)73.2質量部と反応させて得られる発泡性ポリウレタン組成物を硬化させたポリウレタン発泡体であって、前記発泡性ポリウレタン組成物は・・・3量化触媒(東ソー社製:TOYOCAT-TRXを1.4質量部、サンアプロ株式会社製:U-CAT 18Xを1.0質量部)、・・・発泡剤(水を0.8質量部及びHFC-365mfcを15.0質量部)・・・を含み」は、本件発明1の「ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤及び三量化触媒を必須成分として混合反応させて得られるポリイソシアヌレート発泡体」に相当する。
そうすると、両者は
「ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤及び三量化触媒を必須成分として混合反応させて得られるポリイソシアヌレート発泡体において、
前記ポリイソシアヌレート発泡体が、更に難燃剤を含有することを特徴とするポリイソシアヌレート発泡体。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1-1>
「率」が、本件発明1は「30~40%」であるのに対し、甲2発明1では不明な点
<相違点2-1-2>
「独立気泡率」が、本件発明1は「75%以上」であるのに対し、甲2発明1では不明な点
<相違点2-1-3>
ポリイソシアヌレート発泡体の固形分質量を基準とした難燃剤の含有割合が、本件発明1では「9~21質量%」であるのに対し、甲2発明1では不明な点
イ 相違点についての判断
相違点2-1-1について検討する。
甲2には、甲2発明1の「率」の値が30~40%であることをうかがわせる記載はない。
ここで、甲2発明1のイソシアネートインデックスは、以下のように計算により求めることができる。
甲2発明1の「PM200」は甲5の段落【0047】に記載のとおり、NCO含有率が30.2~32重量%であり、イソシアネート中のNCO量(モル)は、NCOの分子量が42であるから、
((30.2/100)×73.2/42)~((32/100)×73.2/42)=約0.526~0.558
となる。
また、甲2発明1のポリオール及び水に含まれる総OH量(モル)は、ポリオールであるRLK-087の水酸基価が200mgKOH/g(甲2の【0115】)、発泡剤の水の水酸基価が6233mgKOH/g(甲6、表1中の「配合」の欄の「発泡剤(水、水酸基価6233)」の記載参照)であり、KOHの分子量は56.1であるから、以下のとおりである。
26.7×200/(56.1×1000)+0.8×6233/(56.1×1000)=約0.184
そうすると、甲2発明1のイソシアネートインデックスは、以下のとおりとなる。
0.526×100/0.184~0.558×100/0.184=約286~303
しかし、甲2発明1のイソシアネートインデックスが約286~303であり、本件明細書の実施例における250~600の範囲内であるとしても、それだけでは「率」が30~40%の範囲内になるとは限らないことは、上記1(2)イで述べたのと同様であるし、甲2発明1のイソシアネートインデックスは、本件明細書の実施例11の値(400)よりも小さい上に、水を発泡原料組成物100重量部を基準として0.8重量部も含むものであるから、上記1(2)イで述べたのと同様の理由により、「率」は本件明細書の実施例11の「30.6%」よりも小さくなるものと推測される。
そうすると、甲2発明1は、「率」が「30~40%」を満たすとはいえない。
よって、相違点2-1-1は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2に記載された発明ではない。
そして、甲2の請求項1には「ポリウレタン発泡体の表層から5mm~10mmの位置のIR測定において、1900~2000cm-1の範囲の平均値をゼロ値に合わせた時の、1390~1430cm-1の範囲の最大値が1500~1520cm-1の範囲の最大値に対して1.5倍以上2.0倍以下」とすることが記載されており、甲2の【0106】、【0107】によれば、1390~1430cm-1のピークの最大値はヌレートを表し、1500~1520cm-1のピークの最大値は芳香環を表し、1390~1430cm-1の範囲の最大値の1500~1520cm-1の範囲の最大値に対する比(イソシアヌレート比)は、発泡性ウレタン組成物の難燃性とフライアビリティの両立を評価するための指標であることが記載されているが、甲2のイソシアヌレート比は本件発明1の「率」とは定義が異なるものであるし、上記のとおり甲2発明1のポリウレタン発泡体は、甲2のイソシアヌレート比が「1.5倍以上2.0倍以下」の範囲内であるにもかかわらず、「率」は30%よりも小さくなると考えられるから、甲2の請求項1、【0106】、【0107】の記載を考慮しても、甲2発明1において、本件発明1の「率」を30~40%とすることが当業者に動機付けられるとはいえない。
また、上記1(2)イで述べたように、甲1、甲3、甲4には「率」を30~40%とすることを動機付けるような記載はないし、甲5(【0047】)はPM200のNCO含有率が30.2~32重量%であることが記載されているにとどまり、甲6(表1)には水の水酸基価が6233であることが記載されているにとどまるから、甲1、甲3~甲6の記載を参酌しても、甲2発明1において、「率」を30~40%にすることが当業者に容易であるとはいえない。
そして、本件発明1は、「率」を「30~40%」とすることで、「難燃性を担保しつつ、高い断熱性や好適な圧縮強度・フライアビリティ・寸法安定性をバランス良く有するポリイソシアヌレート発泡体を提供できる」(本件明細書【0006】及び実施例1~12と比較例2、3の比較結果参照)という効果を奏するものであり、そのような効果は甲1~甲6の記載から当業者が予測できるものではない。
よって、相違点2-1-2、2-1ー3について検討するまでもなく、本件発明1は甲2に記載された発明、及び甲1、甲3~甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 甲2発明2を主引用発明とした場合の検討
甲2発明2を主引用発明とした場合も、上記イと同様のことがいえる。
より具体的には、イソシアネート中のNCO量(モル)は、甲2発明1と同じ0.526~0.558となり、ポリオールと水における総OH量は、26.7×200/(56.1×1000)+0.2×6233/(56.1×1000)=0.117となるから、甲2発明2のイソシアネートインデックスは0.526×100/0.117~0.558×100/0.117=450~477となる。
しかし、イソシアネートインデックスが450~477であれば、「率」が30~40%になるとは限らないし、甲2発明2のイソシアネートインデックスは、本件明細書の実施例11の値(400)よりも若干大きい程度である上に、水を発泡原料組成物100重量部を基準として0.2重量部も含むものであるから、上記1(2)イで述べたのと同様の理由により、「率」は本件明細書の実施例11の「30.6%」よりも小さくなるものと推測される。
そうすると、甲2発明2は、「率」が「30~40%」を満たすとはいえない。
そして、甲2の請求項1、【0106】、【0107】の記載を考慮しても、甲2発明2において、「率」を30~40%とすることが当業者に動機付けられるとはいえない。
エ 本件発明1についてのまとめ
よって、本件発明1は甲2に記載された発明であるとも、また甲2に記載された発明、及び甲1、甲3~甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、申立理由3、4によっては、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。
(3)本件発明2について
ア 対比
甲2発明1におけるポリオールの水酸基価は200mgKOH/gであるから、上記(2)アで検討した点もふまえて本件発明2と甲2発明1を対比すると、両者は
「ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤及び三量化触媒を必須成分として混合反応させて得られるポリイソシアヌレート発泡体。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-2-1>
「率」が、本件発明2では「30~40%」であるのに対し、甲2発明1では不明な点
<相違点2-2-2>
「独立気泡率」が、本件発明2では「75%以上」であるのに対し、甲2発明1では不明な点
<相違点2-2-3>
「ポリオールの平均水酸基価」が、本件発明2では「400~600mgKOH/g」であるのに対し、甲2発明1では「200mgKOH/g」である点
イ 相違点についての判断
相違点2-2-1は、上記(2)アで示した相違点2-1-1と同じであり、上記(2)イで示したのと同様の理由により、実質的な相違点であるから、本件発明2は甲2に記載された発明ではなく、また、相違点2-2-1の構成を本件発明2のようにすることは、甲1~甲6の記載に基づいて当業者が容易に想到することではない。
また、甲2発明2を主引用発明とした場合も同様である。
ウ まとめ
よって、本件発明2は甲1に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明、及び甲1、甲3~甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)本件発明3について
ア 対比
甲2発明1で用いられている発泡剤のうち、「HFC-365mfc」は、引3の【0056】にびHFC-365mfcが物理的発泡剤の例として挙げられていることからみて、本件発明3の「物理的発泡剤」に相当する。
また、甲2発明1における、発泡原料組成物100重量部中の水の含有量は、約0.53重量部(計算式:0.8×100/(73.2+26.7+1.9+1.4+1.0+1.0+0.9+1.5+0.8+15.0+12.0+8.0+3.0+3.5))となる。
よって、上記(2)アで検討した点もふまえて本件発明3と甲2発明1を対比すると、両者は
「ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤及び三量化触媒を必須成分として混合反応させて得られるポリイソシアヌレート発泡体において、
前記発泡剤が物理的発泡剤である
ことを特徴とするポリイソシアヌレート発泡体。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-3-1>
「率」が、本件発明3では「30~40%」であるのに対し、甲2発明1では不明な点
<相違点2-3-2>
「独立気泡率」が、本件発明3では「75%以上87.3%以下」であるのに対し、甲2発明1では不明な点
<相違点2-3-3>
発泡原料組成物100重量部を基準とした、発泡原料組成物に配合される水の量が、本件発明3では「0.05重量部以下」であるのに対し、甲2発明1では「約0.53重量部」である点
イ 相違点についての判断
相違点2-3-1は上記(2)アで示した相違点2-1-1と同じであり、上記(2)イで示したのと同様の理由により、実質的な相違点であるから、本件発明3は甲2に記載された発明ではなく、また、相違点2-3-1の構成を本件発明3のようにすることは、甲1~甲6の記載に基づいて当業者が容易に想到することではない。
また、甲2発明2を主引用発明とした場合も同様である。
ウ まとめ
よって、本件発明3は甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明、及び甲1、甲3~甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(5)本件発明4、5について
本件発明4は、本件発明2又は3を引用するものであり、本件発明5は本件発明1~3を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1~3が甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明、及び甲1、甲3~甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明4及び5についても甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明、及び甲1、甲3~甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)申立人の主張について
申立人は、甲2発明1及び2のイソシアネートインデックスが250~700の範囲を満たすから、「率」は30~40%の範囲になる蓋然性が高いこと、そうでないとしても甲2はイソシアヌレート比によって優れた難燃性と燃焼後の小さいフライアビリティとを兼ね備えるのであるから、当業者であればヌレートの量を難燃性、フライアビリティ等を考慮し、特定することは容易になし得ることを主張する。
しかし、上記(2)イで示したように、イソシアネート指数が250~700であれば、それだけで「率」が30~40%の範囲になるとはいえず、また、甲2の請求項1、【0106】、【0107】の記載を考慮しても、甲2発明1又は2において、「率」を30~40%とすることが当業者に動機付けられるとはいえないことから、申立人の主張は採用することができない。
(7)申立理由3、4についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由3、4によっては、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由6(サポート要件違反)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁、平成17年(行ケ)10042号判決参照)。
(2)本件発明が解決しようとする課題
本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書の【0005】の記載からみて、「難燃性を担保しつつ、高い断熱性や好適な圧縮強度・フライアビリティ・寸法安定性をバランスよく有するポリイソシアヌレート発泡体を提供すること」であると認められる。
(3)サポート要件の判断
本件明細書の【0006】には、「本発明者らは、多角的に検証した結果、ヌレート化率と独立気泡率に着目し、更にこれらをそれぞれ所定の数値範囲とすることにより、難燃性を担保しつつ、高い断熱性や好適な圧縮強度・フライアビリティ・寸法安定性をバランス良く有するポリイソシアヌレート発泡体を提供できることを見出し、本発明を完成させた。」と記載されており、「率」について説明する【0011】や「独立気泡率」について説明する【0013】にも同様の記載がある。
そして、実施例において、「率」が30.4%(実施例1)~39.5%(実施例5)であり、「独立気泡率」が84.0%(実施例9)~87.3%(実施例6)の範囲にある実施例1~12のポリイソシアヌレート発泡体が、「酸素指数」、「熱伝導率」、「圧縮強度」、「フライアビリティ」、「寸法安定性」の評価において、全て「C」以上であり、かつ、これらの評価の値を数値化した「総合評価」の値が全て「19点」以上であることが示され、ここで、「酸素指数」というのは「燃焼を維持する最小酸素濃度」(【0040】)であって難燃性の評価に関するものであるから、実施例1~12のポリイソシアヌレート発泡体は本件発明の課題を解決できることが示されている。
一方、比較例において、「率」が本件発明の範囲内の「35.7%」であるものの、「独立気泡率」が「69.6%」である比較例1は「熱伝導率」の評価が「D」であり、「欠陥品」(【0051】)と評価され、「独立気泡率」が本件発明の範囲内の「85.3%」であるものの、「率」が「28.4%」である比較例2は、「総合評価」の値が「14」しかなく、「独立気泡率」が本件発明の範囲内の「84.2%」であるものの、「率」が「41.3%」である比較例3は、「熱伝導率」の評価が「D」であり、「欠陥品」と評価されており、比較例1~3は、いずれも本件発明の課題を解決できないことが示されている。
そして、実施例で製造されたものは、「率」が30.4%~39.5%、「独立気泡率」が84.0%~87.3%のものであるが、「率」については本件発明の範囲である30~40%をほぼ網羅している。また、独立気泡率は一部の範囲しか示されていないが、比較例1の結果からみて、独立気泡率が小さくなると特に「熱伝導率」の評価が悪くなるところ、甲3の83頁3~4行に硬質ポリウレタンフォームのセル構造に関して「通常断熱性能が求められるので、独泡率は高い方がよく、90%前後のものが多い。」と記載され、甲4の268頁3~4行に硬質ポリウレタンフォームの独立気泡率の影響に関して「通常気泡が多くなるとフロンガスが空気により置換され、熱伝導率は大きくなる。」と記載されるように、独立気泡率が高くなると熱伝導率が低くなる(評価が高くなる)ことは、本件特許の出願時における技術常識である。
これらのことを考慮すると、当業者であれば、本件発明の要件を満たすものであれば本件発明の課題を解決できることを理解できるものと認められる。
よって、本件発明1~5に係る特許が、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものということはできない。
(4)申立人の主張について
申立人は、概略、上記第3の1(6)のように主張する。
しかし、本件発明の要件を満たすものであれば本件発明の課題を解決できることが当業者に理解できることは上記(3)で述べたとおりであるし、申立人は、本件発明に含まれるポリイソシアヌレート発泡体のうち、具体的にどのようなものが本件発明の課題を解決できないと考えられるのか、何ら根拠を示した説明をしていないから、申立人の主張は採用することができない。
(5)申立理由6についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由6によっては、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由1~3及び申立理由1~6によっては、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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