特許異議申立
2024-700146
基板固定装置
- 審判番号
- 2024-700146
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-224483
- 登録番号
- 7329917
- 請求日
- 2024年02月19日
- 審決日
- 2024年04月24日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】新光電気工業株式会社
- 【権利者代理人】伊東 忠重
- 【権利者代理人】伊東 忠彦
- 【異議申立人】河原田 隆
- 審判長/審判官
- 審判長 瀧内 健夫
- 審判官 松永 稔
- 審判官 棚田 一也
- 分類
- P1651.113-Y (H01L) / P1651.121-Y (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7329917号発明「基板固定装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7329917号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7329917号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成30年11月30日に出願され、令和5年8月10日にその特許権の設定登録がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年2月19日に特許異議申立人 河原田 隆(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7329917号の請求項1~8の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1~8」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレート上に設けられた発熱部と、
前記発熱部上に設けられた静電チャックと、を有し、
前記発熱部は、発熱体と、前記発熱体よりも前記静電チャックに近い側に配置された金属層と、前記発熱体及び前記金属層を被覆する樹脂製の絶縁層と、を備え、
前記金属層の側面及び上下面は、全体が前記絶縁層により被覆され、
前記金属層は、電気的に独立しており、
前記金属層は、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い材料から形成されている基板固定装置。
【請求項2】
ベースプレートと、
前記ベースプレート上に設けられた発熱部と、
前記発熱部上に設けられた静電チャックと、を有し、
前記発熱部は、発熱体と、前記発熱体よりも前記静電チャックに近い側に配置された金属層と、前記発熱体及び前記金属層を被覆する樹脂製の絶縁層と、を備え、
前記金属層の側面及び上下面は前記絶縁層により被覆され、
前記金属層は、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い材料から形成され、
前記発熱体と前記金属層とが同一の材料により形成され、
前記材料は、コンスタンタンである基板固定装置。
【請求項3】
前記絶縁層は、ビスマレイミドトリアジン樹脂から形成されている請求項1又は2に記載の基板固定装置。
【請求項4】
前記絶縁層は、エポキシ樹脂から形成されている請求項1又は2に記載の基板固定装置。
【請求項5】
前記絶縁層は、アルミナ又は窒化アルミニウムのフィラーを含有し、
前記絶縁層の熱伝導率は、3W/mK以上である請求項1乃至4の何れか一項に記載の基板固定装置。
【請求項6】
前記金属層は、隙間を介して隣接する部分を有する所定形状のパターンである請求項1乃至5の何れか一項に記載の基板固定装置。
【請求項7】
前記所定形状のパターンは、同心円状又は渦巻き状のパターンである請求項6に記載の基板固定装置。
【請求項8】
前記発熱体は、同心円状のパターンである請求項7に記載の基板固定装置。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証~甲第4号証を提出し、以下の申立理由1、2により、本件の請求項1~8に係る特許を取り消すべきものである旨申し立てた。
[証拠]
甲第1号証:特開2016-136611号公報
甲第2号証:特開2017-216440号公報
甲第3号証:特開2007-194320号公報
甲第4号証:特開平6-302677号公報
1 申立理由1(新規性欠如)
本件発明1、6~8は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件の請求項1、6~8に係る特許は、同法第113条第2号により取消されるべきものである。
2 申立理由2(進歩性欠如)
本件発明1~8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~8に係る特許は、同法第113条第2号により取消されるべきものである。
第4 各甲号証の記載事項、及び引用発明
1 甲第1号証、及び引用発明
(1) 甲第1号証の記載事項
甲第1号証(特開2016-136611号公報)には、以下の記載がある(当審注:下線は引用箇所を示すために当審において付加した。)
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
エッチング、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング、イオン注入、アッシングなどを行うプラズマ処理チャンバ内では、半導体ウェーハやガラス基板などの処理対象物を吸着保持する手段として、静電チャックが用いられている。静電チャックは、内蔵する電極に静電吸着用電力を印加し、シリコンウェーハ等の基板を静電力によって吸着するものである。
【0003】
このような静電チャックを有する基板処理装置においては、歩留まりの向上および品質の向上のために、ウェーハの温度制御が求められている。ウェーハの温度制御には、2種類の性能が求められる。1つの性能は、ウェーハの面内の温度分布を均一にする温度均一性である。もう1つの性能は、ウェーハの面内の温度に意図的に差をつける温度制御性である。ウェーハの温度制御においては、静電チャックに内蔵されるヒータの性能が重要な要素の1つである。一般的に、温度均一性は、温度制御性とトレードオフの関係にある。
【0004】
基板処理装置においては、高スループット化がさらに求められている。基板処理装置の高スループット化を実現するためには、静電チャックに内蔵されるヒータの熱容量は、比較的小さいことが好ましい。
【0005】
ウェーハ加工のプロセスでは、RF(Radio Frequency)電圧(高周波電圧)が印加される。RF電圧が印加されると、一般的なヒータは、高周波の影響を受けて発熱する。すると、温度制御性が低下する。また、RF電圧が印加されると、漏れ電流が設備側に流れる。そのため、フィルタなどの機構が設備側に必要となる。
ヒータが静電チャックに内蔵される場合には、ヒータの内蔵方法(例えば接着方法)の信頼性が重要な要素の1つである。
【0006】
プラズマエッチング装置などにおけるプロセスでは、様々な強度および様々な分布のプラズマがウェーハに照射される。プラズマがウェーハに照射される場合には、ウェーハの温度をプロセスに適した温度に制御することが求められる。また、プラズマがウェーハに照射される場合には、温度均一性および温度制御性が求められる。さらに、生産性を向上させるためには、ウェーハの温度を所定の温度に比較的短い時間で到達させることが求められる。急激な温度変化や、熱の供給や、高周波電圧の印加がある場合でも、静電チャックおよびウェーハには高い信頼性が求められる。このような要求を同時に満足することは、困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 特開2010-40644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、温度均一性および温度制御性を満足することができる静電チャックを提供することを目的とする。
・・・(中略)・・・
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施形態にかかる静電チャックを表す模式的斜視図である。
図2は、本実施形態にかかる静電チャックを表す模式的断面図である。
図1では、説明の便宜上、静電チャックの一部において断面図を表している。図2(a)は、例えば図1に表した切断面A1-A1における模式的断面図である。図2(b)は、図2(a)に表した領域B1の模式的拡大図である。
【0056】
本実施形態にかかる静電チャック10は、セラミック誘電体基板100と、ヒータプレート200と、べースプレート300と、を備える。
セラミック誘電体基板100は、ベースプレート300と離れた位置に設けられている。ヒータプレート200は、ベースプレート300と、セラミック誘電体基板100と、の間に設けられている。
【0057】
ベースプレート300とヒータプレート200との間には、接着剤403が設けられている。ヒータプレート200とセラミック誘電体基板100との間には、接着剤403が設けられている。接着剤403の材料としては、比較的高い熱伝導性を有するシリコーン等の耐熱性樹脂が挙げられる。接着剤403の厚さは、例えば約0.1ミリメートル(mm)以上、1.0mm以下程度である。接着剤403の厚さは、ベースプレート300とヒータプレート200との間の距離、あるいはヒータプレート200とセラミック誘電体基板100との間の距離と同じである。
【0058】
セラミック誘電体基板100は、例えば多結晶セラミック焼結体による平板状の基材であり、半導体ウェーハ等の処理対象物Wを載置する第1主面101と、第1主面101とは反対側の第2主面102と、を有する。
【0059】
ここで、本実施形態の説明においては、第1主面101と第2主面102とを結ぶ方向をZ方向、Z方向と直交する方向の1つをX方向、Z方向及びX方向に直交する方向をY方向ということにする。
・・・(中略)・・・
【0061】
セラミック誘電体基板100の内部には、電極層111が設けられている。電極層111は、第1主面101と、第2主面102と、の間に介設されている。すなわち、電極層111は、セラミック誘電体基板100の中に挿入されるように形成されている。電極層111は、セラミック誘電体基板100に一体焼結されている。
【0062】
なお、電極層111は、第1主面101と、第2主面102と、の間に介設されていることに限定されず、第2主面102に付設されていてもよい。
【0063】
静電チャック10は、電極層111に吸着保持用電圧を印加することによって、電極層111の第1主面101側に電荷を発生させ、静電力によって処理対象物Wを吸着保持する。
【0064】
ヒータプレート200は、ヒータ用電流が流れることによって発熱し、ヒータプレート200が発熱しない場合と比較して処理対象物Wの温度を上げることができる。
・・・(中略)・・・
【0070】
ベースプレート300は、セラミック誘電体基板100の第2主面102側に設けられ、ヒータプレート200を介してセラミック誘電体基板100を支持する。ベースプレート300には、連通路301が設けられている。つまり、連通路301は、ベースプレート300の内部に設けられている。ベースプレート300の材料としては、例えばアルミニウムが挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0076】
図5に表したように、本実施形態のヒータプレート200は、第1の支持板210と、第1の樹脂層220と、ヒータエレメント(発熱層)230と、第2の樹脂層240と、バイパス層250と、第3の樹脂層260と、第2の支持板270と、給電端子280と、を有する。図3に表したように、第1の支持板210の面211(上面)は、ヒータプレート200の上面を形成する。図4に表したように、第2の支持板270の面271(下面)は、ヒータプレート200の下面を形成する。第1の支持板210及び第2の支持板270は、ヒータエレメント230などを支持する支持板である。この例において、第1支持板210及び第2支持板270は、第1の樹脂層220と、ヒータエレメント230と、第2の樹脂層240と、バイパス層250と、第3の樹脂層260と、を挟み、これらを支持する。
・・・(中略)・・・
【0079】
第1の支持板210は、比較的高い熱伝導率を有する。第1の支持板210の材料としては、例えばアルミニウム、銅、およびニッケルの少なくともいずれかを含む金属や、多層構造のグラファイトなどが挙げられる。第1の支持板210の厚さ(Z方向の長さ)は、例えば約0.1mm以上、3.0mm以下程度である。より好ましくは、第1の支持板210の厚さは、例えば0.3mm以上、1.0mm以下程度である。第1の支持板210は、ヒータプレート200の面内の温度分布の均一化を向上させる。第1の支持板210は、ヒータプレート200の反りを抑制する。第1の支持板210は、ヒータプレート200とセラミック誘電体基板100との間の接着の強度を向上させる。
【0080】
処理対象物Wの処理プロセスでは、RF(Radio Frequency)電圧(高周波電圧)が印加される。高周波電圧が印加されると、ヒータエレメント230は、高周波の影響を受けて発熱することがある。すると、ヒータエレメント230の温度制御性が低下する。
これに対して、本実施形態では、第1の支持板210は、ヒータエレメント230およびバイパス層250を高周波から遮断する。これにより、第1の支持板210は、ヒータエレメント230が異常温度に発熱することを抑制することができる。
【0081】
第2の支持板270の材料、厚さ、および機能は、第1の支持板210の材料、厚さ、および機能とそれぞれ同じである。第1の支持板210は、第2の支持板270と電気的に接合されている。ここで、本願明細書において「接合」という範囲には、接触が含まれる。第2の支持板270と、第1の支持板210と、の間の電気的な接合の詳細については、後述する。
【0082】
このように、第1の支持板210及び第2の支持板270は、比較的高い熱伝導率を有する。これにより、第1の支持板210及び第2の支持板270は、ヒータエレメント230から供給される熱の熱拡散性を向上させる。また、第1の支持体210及び第2の支持体270は、適度な厚さ及び剛性を有することにより、例えば、ヒータプレート200の反りを抑制する。さらに、第1の支持体210及び第2の支持体270は、例えば、ウェーハ処理装置の電極などに印加されるRF電圧に対するシールド性を向上させる。例えば、ヒータエレメント230に対するRF電圧の影響を抑制する。このように、第1の支持体210及び第2の支持体270は、熱拡散の機能と、反り抑制の機能と、RF電圧に対するシールドの機能と、を有する。
【0083】
第1の樹脂層220の材料としては、例えばポリイミドやポリアミドイミドなどが挙げられる。第1の樹脂層220の厚さ(Z方向の長さ)は、例えば約0.01mm以上、0.20mm以下程度である。第1の樹脂層220は、第1の支持板210とヒータエレメント230とを互いに接合する。第1の樹脂層220は、第1の支持板210とヒータエレメント230との間を電気的に絶縁する。このように、第1の樹脂層220は、電気絶縁の機能と、面接合の機能と、を有する。
【0084】
第2の樹脂層240の材料および厚さは、第1の樹脂層220の材料および厚さとそれぞれ同程度である。第3の樹脂層260の材料および厚さは、第1の樹脂層220の材料および厚さとそれぞれ同程度である。
・・・(中略)・・・
【0087】
ヒータエレメント230の材料としては、例えばステンレス、チタン、クロム、ニッケル、銅、およびアルミニウムの少なくともいずれかを含む金属などが挙げられる。ヒータエレメント230の厚さ(Z方向の長さ)は、例えば約0.01mm以上、0.20mm以下程度である。ヒータエレメント230は、バイパス層250と電気的に接合されている。一方で、ヒータエレメント230は、第1の支持板210および第2の支持板270とは電気的に絶縁されている。ヒータエレメント230と、バイパス層250と、の間の電気的な接合の詳細については、後述する。
【0088】
ヒータエレメント230は、電流が流れると発熱し、処理対象物Wの温度を制御する。例えば、ヒータエレメント230は、処理対象物Wを所定の温度に加熱する。例えば、ヒータエレメント230は、処理対象物Wの面内の温度分布を均一にする。例えば、ヒータエレメント230は、処理対象物Wの面内の温度に意図的に差をつける。
【0089】
バイパス層250は、第1の支持板210と略平行に配置され、第2の支持板270と略平行に配置されている。バイパス層250は、複数のバイパス部251を有する。バイパス層250は、例えば8つのバイパス部251を有する。バイパス部251の数は、「8」には限定されない。バイパス層250は、板状を呈する。これに対して、ヒータエレメント230は、帯状のヒータ電極239を有する。バイパス層250の面(バイパス部251の面251a)に対して垂直にみたときに、バイパス層250の面積は、ヒータエレメント230の面積(ヒータ電極239の面積)よりも広い。この詳細については、後述する。
【0090】
バイパス層250は、導電性を有する。バイパス層250は、第1の支持板210および第2の支持板270とは電気的に絶縁されている。バイパス層250の材料としては、例えばステンレスを含む金属などが挙げられる。バイパス層250の厚さ(Z方向の長さ)は、例えば約0.03mm以上、0.30mm以下程度である。バイパス層250の厚さは、第1の樹脂層220の厚さよりも厚い。バイパス層250の厚さは、第2の樹脂層240の厚さよりも厚い。バイパス層250の厚さは、第3の樹脂層260の厚さよりも厚い。
・・・(中略)・・・
【0109】
図9は、本実施形態にかかる静電チャックを表す模式的分解図である。
図10は、本実施形態にかかる静電チャックを表す電気回路図である。
図10(a)は、第1の支持板と第2の支持板とが電気的に接合された例を表す電気回路図である。図10(b)は、第1の支持板と第2の支持板とが電気的に接合されていない例を表す電気回路図である。
【0110】
図9および図10(a)に表したように、第1の支持板210は、第2の支持板270と電気的に接合されている。第1の支持板210と第2の支持板270との接合は、例えば、溶接、レーザ光を利用した接合、半田付け、あるいは接触などにより行われる。
【0111】
例えば、図10(b)に表したように、第1の支持板210が第2の支持板270と電気的に確実に接合されていないと、第1の支持板210が第2の支持板270と電気的に接合されたり、あるいは電気的に接合されなかったりすることがある。すると、プラズマを発生させたときのエッチングレートにばらつきが生ずることがある。また、第1の支持板210が第2の支持板270と電気的に接合されていなくとも、プラズマを発生させると電流がヒータエレメント230に流れ、ヒータエレメント230が発熱することがある。言い換えれば、第1の支持板210が第2の支持板270と電気的に確実に接合されていないと、ヒータエレメント230がヒータ用電流以外の電流により発熱することがある。
【0112】
これに対して、本実施形態にかかる静電チャック10では、図10(a)に表したように、第1の支持板210は、第2の支持板270と電気的に接合されている。これにより、電流が第1の支持板210から第2の支持板270へ流れ、あるいは電流が第2の支持板270から第1の支持板210へ流れ、プラズマを発生させたときのエッチングレートにばらつきが生ずることを抑えることができる。また、ヒータエレメント230がヒータ用電流以外の電流により発熱することを抑えることができる。
【0113】
さらに、ヒータエレメント230およびバイパス層250を高周波から遮断することができる。これにより、ヒータエレメント230が異常温度に発熱することを抑制することができる。また、ヒータプレート200のインピーダンスを抑えることができる。
・・・(中略)・・・
【0123】
ヒータエレメント230は、例えば帯状のヒータ電極239を有する。図12(a)に表した具体例では、ヒータ電極239は、略円を描くように配置されている。ヒータ電極239は、第1の領域231と、第2の領域232と、第3の領域233と、第4の領域234と、に配置されている。第1の領域231は、ヒータエレメント230の中央部に位置する。第2の領域232は、第1の領域231の外側に位置する。第3の領域233は、第2の領域232の外側に位置する。第4の領域234は、第3の領域233の外側に位置する。
・・・(中略)・・・
【0158】
図18(a)および図18(b)に表した変形例では、第1の支持板210aは、複数の支持部に分割されている。より具体的には、図18(a)に表した変形例では、第1の支持板210aは、同心円状に複数の支持部に分割され、第1の支持部216と、第2の支持部217と、第3の支持部218と、第4の支持部219と、を有する。図18(b)に表した変形例では、第1の支持板210bは、同心円状かつ放射状に複数の支持部に分割され、第1の支持部216aと、第2の支持部216bと、第3の支持部216cと、第4の支持部216dと、第5の支持部216eと、第6の支持部216fと、第7の支持部217aと、第8の支持部217bと、第9の支持部217cと、第10の支持部217dと、第11の支持部217eと、第12の支持部217fと、を有する。」
「【図2】(b)
[図:0001410266000001.jpg]
」
「【図5】
[図:0001410266000002.jpg]
」
「【図10】
[図:0001410266000003.jpg]
」
「【図12】(a)
[図:0001410266000004.jpg]
」
「【図18】(a)
[図:0001410266000005.jpg]
」
(2) 引用発明
ア 段落0008、0056の記載、及び図2(b)から、甲第1号証には、
「ベースプレート300と、
ベースプレート300上に設けられたヒータプレート200と、
ヒータプレート200上に設けられたセラミック誘電体基板100と、を備える、
温度均一性および温度制御性を満足することができる静電チャック10」が記載されているといえる。
イ 図2(b)からヒータプレート200の側面にも接着剤が設けられていることが見て取れることを踏まえると、段落0057の記載から、甲第1号証記載の静電チャック10において、
「ベースプレート300とヒータプレート200との間、ヒータプレート200とセラミック誘電体基板100との間、及びヒータプレート200の側面に、比較的高い熱伝導性を有するシリコーン等の耐熱性樹脂を材料とする接着剤403が設けられている」といえる。
ウ 段落0058~0063の記載によると、甲第1号証記載のセラミック誘電体基板100は、「半導体ウェーハ等の処理対象物Wを載置する第1主面101を有し、内部に設けられた電極層111に吸着保持用電圧を印加することによって、電極層111の第1主面101側に電荷を発生させ、静電力によって処理対象物Wを吸着保持する」ものといえる。
エ 段落0076、0079、0083、0087、0088の記載によると、甲第1号証記載のヒータプレート200は、
「比較的高い熱伝導率を有するアルミニウム、銅、およびニッケルの少なくともいずれかを含む金属を材料とし、その面211(上面)がヒータプレート200の上面を形成する第1の支持板210と、ポリイミドやポリアミドイミドなどを材料とし、第1の支持板210とヒータエレメント230とを互いに接合する第1の樹脂層220と、ステンレス、チタン、クロム、ニッケル、銅、およびアルミニウムの少なくともいずれかを含む金属などを材料とし、電流が流れると発熱し、処理対象物Wの温度を制御するヒータエレメント(発熱層)230と、第2の樹脂層240と、バイパス層250と、第3の樹脂層260と、第2の支持板270と、給電端子280と、を有」するものといえる。
オ 引用発明
以上によると、甲第1号証には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「ベースプレート300と、
ベースプレート300上に設けられたヒータプレート200と、
ヒータプレート200上に設けられたセラミック誘電体基板100と、を備える、
温度均一性および温度制御性を満足することができる静電チャック10であって(上記ア)、
ベースプレート300とヒータプレート200との間、ヒータプレート200とセラミック誘電体基板100との間、ヒータプレート200の側面に、比較的高い熱伝導性を有するシリコーン等の耐熱性樹脂を材料とする接着剤403が設けられ(上記イ)、
セラミック誘電体基板100は、半導体ウェーハ等の処理対象物Wを載置する第1主面101を有し、内部に設けられた電極層111に吸着保持用電圧を印加することによって、電極層111の第1主面101側に電荷を発生させ、静電力によって処理対象物Wを吸着保持するものであり(上記ウ)、
ヒータプレート200は、
比較的高い熱伝導率を有するアルミニウム、銅、およびニッケルの少なくともいずれかを含む金属を材料とし、その面211(上面)がヒータプレート200の上面を形成する第1の支持板210と、
ポリイミドやポリアミドイミドなどを材料とし、第1の支持板210とヒータエレメント230とを互いに接合する第1の樹脂層220と、
ステンレス、チタン、クロム、ニッケル、銅、およびアルミニウムの少なくともいずれかを含む金属などを材料とし、電流が流れると発熱し、処理対象物Wの温度を制御するヒータエレメント(発熱層)230と、
第2の樹脂層240と、
バイパス層250と、
第3の樹脂層260と、
第2の支持板270と、
給電端子280と、を有し、(上記エ)
第1の支持板210は、ヒータエレメント230およびバイパス層250を高周波から遮断することにより、ヒータエレメント230が異常温度に発熱することを抑制することができ(段落0080)、
第1の支持体210及び第2の支持体270は、熱拡散の機能と、反り抑制の機能と、RF電圧に対するシールドの機能と、を有し(段落0082)、
第1の支持板210は、第2の支持板270と電気的に接合されていることにより、電流が第1の支持板210から第2の支持板270へ流れ、あるいは電流が第2の支持板270から第1の支持板210へ流れ、プラズマを発生させたときのエッチングレートにばらつきが生ずることを抑えることができ、ヒータエレメント230がヒータ用電流以外の電流により発熱することを抑えることができる(段落0112)、
静電チャック10。」
2 甲第2号証の記載事項
甲第2号証(特開2017-216440号公報)には次の記載がある。
「【0042】
図3Aおよび図3Bに示すように、ESC400は、加熱素子トレース404を含む加熱層416と、セラミック層418と、バストレース408を含む別個の導体層420とを備える。加熱層416、セラミック層418、および、導体層420は、ベースプレート422上に形成される。簡単のため、ボンド層(例えば、ボンド層114に対応する)は、図3A、図3B、図4A、図4B、図5A、および、図5Bには図示されていない。逆に、図4Aおよび図4Bにおいて、ESC400は、加熱素子トレース404およびバストレース408の両方を含む複合加熱/導体層424を備える。換言すると、加熱素子トレース404およびバストレース408が同一平面上にある。したがって、図3Bに示すESC400は、導体層420を排除し、単一層424しか必要としない。単一層424のみを有する一部の例では、第1材料の加熱素子トレース404と第2材料のバストレース408とを含む単一の導体シートが提供されてもよい。単に例として、第1材料は、比較的高い電気抵抗を有する材料(例えば、コンスタンタン、ニッケル合金、鉄合金、タングステン合金など)を含んでよく、第2材料は、比較的低い電気抵抗を有する材料(例えば、銅、タングステン、銀、パラジウム、それらの合金など)を含んでよい。図5Aおよび図5Bにおいて、ESC400は、専用の加熱層416を備えない。代わりに、この例では、加熱素子トレース404、412などが、セラミック層418に設けられる。したがって、バストレース408は、セラミック層418を通してルーティングされる。」
3 甲第3号証の記載事項
甲第3号証(特開2007-194320号公報)には次の記載がある。
「【0003】
ところで、この静電チャック装置では、板状試料の温度を所望の一定の温度に維持するためには、板状試料と温度調整用ベース部材との間の熱交換効率を高める必要があり、接合層であるシリコーン系接着剤についても熱伝導性を向上させる必要がある。
そこで、シリコーン系接着剤に各種の高熱伝導性フィラー、例えば、アルミナ(Al2O3)、酸化珪素(SiO2)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス粉末や、アルミニウム(Al)等の金属粉末を混入することが行われている。
なかでも、窒化アルミニウム(AlN)粉末は、熱伝導性やハロゲン系腐食性ガス及びそのプラズマに対する耐久性に優れているので、高熱伝導性フィラーとして好適である(例えば特許文献1、2参照)。」
4 甲第4号証の記載事項
甲第4号証(特開平6-302677号公報)には次の記載がある。
「【0021】比較例1
比較のために、上記のチャック機能部とプレート部をメカニカルにクランプするためチャック機能部の外周をクランプ部材でボルト止めしようと試みたところ、 0.7mmのチャック機能部に亀裂が入り、固定することは出来なかった。また、これについては上記のチャック機能部とプレート部とを有機物の中でも熱伝導率の良いといわれるアルミナフィラー入りのシリコーンゴムで接着して静電チャックを作製し、その後、実施例と同様に冷却効果を測定するため、プレート部の下面を0℃に冷却しながらウェハーを吸着させてウェハーの温度を測定したところ、約10秒後にウェハーの中心部の温度は6℃となりそのまま一定の値を示していたし、中心部と外周部の温度差が1℃になるまで約30秒の時間を必要とし温度差がなくなることはなかったので、このような熱伝導率では実作業時間がほぼ1分以内である半導体プロセスには使用することができないことが判った。」
第5 申立理由の検討
1 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「ベースプレート300」、「ヒータプレート200」は、本件発明1の「ベースプレート」、「発熱部」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「セラミック誘電体基板100」は、その「内部に設けられた電極層111に吸着保持用電圧を印加することによって、電極層111の第1主面101側に電荷を発生させ、静電力によって処理対象物Wを吸着保持するもの」であるから、「静電チャック」といえ、「静電チャック10」の発明である引用発明は、全体として「基板固定装置」といえる。
そうすると、「ベースプレート300と、
ベースプレート300上に設けられたヒータプレート200と、
ヒータプレート200上に設けられたセラミック誘電体基板100と、を備える、
温度均一性および温度制御性を満足することができる静電チャック10」の発明である引用発明は、「ベースプレートと、
前記ベースプレート上に設けられた発熱部と、
前記発熱部上に設けられた静電チャックと、」を有する基板固定装置といえる点で、本件発明1と共通する。
イ 発熱部について
(ア) 発熱体について
引用発明のヒータプレート200が有する「電流が流れると発熱し、処理対象物Wの温度を制御するヒータエレメント(発熱層)230」は、本件発明1の発熱部が備える「発熱体」に相当する。
(イ) 金属層について
引用発明の「第1の支持板210」は、「アルミニウム、銅、およびニッケルの少なくともいずれかを含む金属を材料とし、その面211(上面)がヒータプレート200の上面を形成する」部材であり、ヒータエレメント(発熱層)230よりもセラミック誘電体基板100に近い側に配置されているといえるから、「前記発熱体よりも前記静電チャックに近い側に配置された金属層」といえる。
(ウ) 絶縁層について
引用発明のベースプレート300とヒータプレート200との間、及びヒータプレート200の側面には、「比較的高い熱伝導性を有し、シリコーン等の耐熱性樹脂を材料とする接着剤403」が設けられ、引用発明のヒータプレート200の上面及び側面は接着剤403で被覆されているといえるから、「その面211(上面)がヒータプレート200の上面を形成する第1の支持板210」についても、その上面及び側面は接着剤403により被覆されているといえる。
また、引用発明の「第1の支持板210」の下面、及び「ヒータエレメント(発熱層)230」は、「第1の支持板210とヒータエレメント230とを互いに接合する第1の樹脂層220」により被覆されているといえる。
そうすると、引用発明の「接着剤403」及び「第1の樹脂層220」は、「ヒータエレメント(発熱層)230」及び「第1の支持板210」を被覆する樹脂製の絶縁層といえ、また、「第1の支持板210」は、その側面及び上下面は全体が「接着剤403」及び「第1の樹脂層220」により被覆されているといえる。
(エ) 以上を踏まえると、引用発明のヒータプレート200は、「発熱体と、前記発熱体よりも前記静電チャックに近い側に配置された金属層と、前記発熱体及び前記金属層を被覆する樹脂製の絶縁層と、を備え」、「前記金属層の側面及び上下面は、全体が前記絶縁層により被覆され」る点で、本件発明1の「発熱部」と一致する。
ウ 引用発明の第1の支持板210の材料である「アルミニウム、銅、およびニッケルの少なくともいずれかを含む金属」は、接着剤403の材料である「シリコーン等の耐熱性樹脂」、第1の樹脂層220の材料である「ポリイミドやポリアミドイミドなど」より熱伝導率の高い材料といえる。
したがって、「接着剤403」、「アルミニウム、銅、およびニッケルの少なくともいずれかを含む金属を材料と」する「第1の支持板210」、及び「第1の樹脂層220」を有する引用発明は、「前記金属層は、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い材料から形成されている」といえる点で、本件発明1と一致する。
(2) 一致点・相違点
上記(1)を踏まえると、本件発明1と引用発明とは次の点で一致し、相違する。
ア 一致点
「ベースプレートと、
前記ベースプレート上に設けられた発熱部と、
前記発熱部上に設けられた静電チャックと、を有し、
前記発熱部は、発熱体と、前記発熱体よりも前記静電チャックに近い側に配置された金属層と、前記発熱体及び前記金属層を被覆する樹脂製の絶縁層と、を備え、
前記金属層の側面及び上下面は、全体が前記絶縁層により被覆され、
前記金属層は、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い材料から形成されている基板固定装置。」
イ 相違点1
本件発明1の「金属層」が、「電気的に独立して」いるのに対し、引用発明の「第1の支持板210」は、「第2の支持板270と電気的に接合されている」点。
ウ 以上のとおり、本件発明1と引用発明とは相違点1について相違するから、本件発明1は引用発明ではない。
(3) 相違点1についての判断
引用発明の「第1の支持板210」は、「電流が第1の支持板210から第2の支持板270へ流れ、あるいは電流が第2の支持板270から第1の支持板210へ流れ、プラズマを発生させたときのエッチングレートにばらつきが生ずることを抑え」、「ヒータエレメント230がヒータ用電流以外の電流により発熱することを抑える」ことによって、「温度均一性および温度制御性を満足する」との引用発明の技術的意義を得るために、「第2の支持板270と電気的に接合されている」ことを要する。
そして、引用発明において、第1の支持板210を第2の支持板から電気的に分離し、独立させることは、上記技術的意義を損なうことになるから、相違点1に係る本件発明の構成とすることには阻害要因が存在する。
したがって、本件発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(4) 申立人の主張について
申立人は本件発明1について、次の主張をした。
「(カ)構成要件Fについて
先に述べた通り、構成要件Fは以下のようなものである。
F.前記金属層は、電気的に独立しており、
甲第1号証の段落0087には、「ヒータエレメント230は、第1の支持板210および第2の支持板270とは電気的に絶縁されている。」との記載がある。また、甲第1号証の段落0090には、「バイパス層250は、第1の支持板210および第2の支持板270とは電気的に絶縁されている。」との記載がある。上記記載によれば、第1の支持板210(金属層)が、ヒータエレメント230や第2の支持板270、バイバス層250等とは電気的に接続されておらず、所謂「浮き導体」となっていることが理解される。また、甲第1号証の図10(b)に示される等価回路図を見ても、第1の支持板210が浮き導体となっており、他の構成要素とは電気的に独立していることが理解される。従って、甲第1号証には構成要件Fが記載されている。」(特許異議申立書15ページ1~14行)
しかしながら、甲第1号証の段落0111の記載によると、図10(b)は、「プラズマを発生させたときのエッチングレートにばらつきが生ずる」、「プラズマを発生させると電流がヒータエレメント230に流れ、ヒータエレメント230が発熱する」、「ヒータエレメント230がヒータ用電流以外の電流により発熱する」という、「温度均一性および温度制御性を満足する」との引用発明の技術的意義が得られない状態を示すものである。
そうすると、引用発明の第1の支持板210が、申立人が主張するとおり、ヒータエレメント230及びバイパス層250とは電気的に接合されていないとしても、段落0112、図10(a)に記載されたとおり、引用発明の第1の支持板210は、第2の支持板270とは電気的に接合され、電気的に独立とはいえないから、申立人の主張は採用できない。
また、上記(3)のとおり、引用発明の第1の支持板210を電気的に独立とすることには阻害要因が存在する。
(5) 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、引用発明ではなく、また、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2について
上記1(1)と同様に本件発明2と引用発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、相違する。
(1) 一致点
「ベースプレートと、
前記ベースプレート上に設けられた発熱部と、
前記発熱部上に設けられた静電チャックと、を有し、
前記発熱部は、発熱体と、前記発熱体よりも前記静電チャックに近い側に配置された金属層と、前記発熱体及び前記金属層を被覆する樹脂製の絶縁層と、を備え、
前記金属層の側面及び上下面は前記絶縁層により被覆され、
前記金属層は、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い材料から形成される基板固定装置。」
(2) 相違点2
本件発明2において、「前記発熱体と前記金属層とが同一の材料により形成され、
前記材料は、コンスタンタンである」のに対し、
引用発明においては、「ヒータエレメント(発熱層)230」が「ステンレス、チタン、クロム、ニッケル、銅、およびアルミニウムの少なくともいずれかを含む金属などを材料」とし、「第1の支持板210」が「比較的高い熱伝導率を有し、アルミニウム、銅、およびニッケルの少なくともいずれかを含む金属を材料」とするものであって、両者がいずれもコンスタンタンで形成されていない点。
(3) 相違点2についての判断
コンスタンタンは、甲第2号証に記載されているとおり、比較的高い電気抵抗を有する材料であるから、引用発明の「電流が流れると発熱し、処理対象物Wの温度を制御するヒータエレメント(発熱層)230」をコンスタンタンにより形成することは、当業者が容易に想到し得る。
しかしながら、引用発明の第1の支持板210は、「RF電圧に対するシールドの機能」を有し、「ヒータエレメント230およびバイパス層250を高周波から遮断することにより、ヒータエレメント230が異常温度に発熱することを抑制する」ための部材である。
ここで、引用発明の第1の支持板210を、ヒータエレメント230と同様に比較的高い電気抵抗を有する材料により形成した場合、シールドされていない場合のヒータエレメント230と同様に高周波(RF電圧)によって異常温度に発熱してしまうから、「温度均一性および温度制御性を満足する」との引用発明の技術的意義を得ることができなくなる。
そうすると、引用発明の第1の支持板210をコンスタンタンにより形成することには阻害要因があるから、相違点2に係る本件発明2の構成は、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
(4) 申立人の主張について
申立人は本件発明2について、次の主張をした。
「(キ)構成要件Nについて
先に述べた通り、構成要件Nは以下のようなものである。
N.前記発熱体と前記金属層とが同一の材料により形成され、
甲第1号証の段落0087には、「ヒータエレメント230の材料としては、例えばステンレス、チタン、クロム、 ニッケル、銅、およびアルミニウムの少なくともいずれかを含む金属などが挙げられる。」との記載がある。また、甲第1号証の段落0079には、「第1の支持板210 の材料としては、例えばアルミニウム、銅、およびニッケルの少なくともいずれかを含む金属や、多層構造のグラファイトなどが挙げられる。」との記載がある。
このように、甲第1号証においては、ヒータエレメント230(発熱体)の材料として、ステンレス、チタン、クロム、 ニッケル、銅、及びアルミニウムが挙げられており、これらを自由に選択し得ることが示されている。また、第1の支持板210(金属層)の材料と して、アルミニウム、銅、及びニッケルが挙げられており、これらを自由に選択し得ることが示されている。
アルミニウム、銅、及びニッケルは、ヒータエレメント230(発熱体)の材料、及び第1の支持板210(金属層)の材料、のいずれとしても用いることのできる共通の材料として挙げられている。つまり、甲第1号証には、ヒータエレメント230(発熱体)と第1の支持板210(金属層)とを同一の材料により形成し得ることが実質的に記載されているので、甲第1号証には構成要件Nが記載されている。
(ク)構成要件Oについて
先に述べた通り、構成要件Oは以下のようなものである。
O.前記材料は、 コンスタンタンである基板固定装置。
甲第1号証には、 ヒータエレメント230(発熱体)及び第1の支持板210(金属層)の材料として、コンスタンタンを用いることについては記載されていない。
ただし、甲第2号証(特開2017-216440号公報)の段落0042には、静電チャックを加熱するための加熱素子トレースの材料、である第1材料に関し、「第1材料は、比較的高い電気抵抗を有する材料(例えば、コンスタンタン、ニッケル合金、鉄合金、タングステン合金など)を含んでよく」との記載がある。このように、静電チャックを加熱するための発熱部(ヒーター)の金属材料として、コンスタンタンを用いることは、本件特許の出願時において公知の事項であった。
従って、甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証に記載された発明を適用し、ヒータエレメント230(発熱体)及び第1の支持板210(金属層)の材料としてコンスタンタンを採用することは、当業者が容易になし得たことである。尚、甲第1号証及び甲第2号証は、いずれも静電チャックに関するものであるから、それぞれに記載された構成を組み合わせることについての阻害要因は存在しない。」(特許異議申立書20ページ6行~21ページ13行)
しかしながら、上記(3)のとおり、引用発明の第1の支持板210をコンスタンタンにより形成することには阻害要因があるから、申立人の主張は採用できない。
3 本件発明3~8について
本件発明3~8は、いずれも本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を含むから、上記1、2のとおり、少なくとも相違点1又は相違点2について引用発明と相違し、かつ、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700146