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特許異議申立

2024-700121

分割型複合繊維

審判番号
2024-700121
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-088346
登録番号
7325088
請求日
2024年02月13日
審決日
2025年06月26日
公報発行日
2025年10月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日本エステル株式会社
  • 【異議申立人】柏木 里実
審判長/審判官
  • 審判長 金丸 治之
  • 審判官 神山 茂樹
  • 審判官 武市 匡紘
分類
P1651.121-YAA(D01F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

結論

結 論 特許第7325088号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 特許第7325088号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7325088号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和元年5月8日の出願であって、令和5年8月3日にその特許権の設定登録がされ、令和5年8月14日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和6年 2月13日 :特許異議申立人柏木里実(以下「申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て 令和6年 7月30日付け:取消理由通知書 令和6年 9月27日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 令和6年12月17日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出 令和7年 4月 8日 :申立人による意見書の提出 第2 訂正の請求について 1 訂正の内容 令和6年12月17日の手続補正書(方式)により補正された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7325088号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1乃至6について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は当審において訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「ポリ乳酸と結晶性のポリアルキレンサクシネートとからなり、繊維横断面が、前記した2成分のうち、一方の成分が他方の成分によって複数個に分割されている分割型複合形態であり、」とあるのを、「ポリ乳酸と結晶性のポリアルキレンサクシネートとからなり、前記ポリアルキレンサクシネートは、アルキレンジオールとコハク酸のみを共重合したものであり、繊維横断面が、前記したポリ乳酸とポリアルキレンサクシネートのうち、一方の成分が他方の成分によって複数個に分割されている分割型複合形態であり、」に訂正する。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~6も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 明細書の【0010】に「本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸とポリアルキレンサクシネートからなる分割型複合繊維において、特定の繊度及び分割数、融点、熱収縮率とすることにより、操業性、繊維および不織布の品位が良好であり、物理的な衝撃により分極細繊維を生成できる分割型複合繊維を得られることを見出し、本発明に到達した。」とあるのを、「本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸とポリアルキレンサクシネートからなる分割型複合繊維において、特定の繊度及び分割数、融点、熱収縮率とすることにより、操業性、繊維および不織布の品位が良好であり、物理的な衝撃により極細繊維を生成できる分割型複合繊維を得られることを見出し、本発明に到達した。」に訂正する。 (3)訂正事項3 明細書の【0011】に「すなわち、本発明は、ポリ乳酸と結晶性のポリアルキレンサクシネートとからなり、繊維横断面が、前記した2成分のうち、一方の成分が他方の成分によって複数個に分割されている分割型複合形態であり、」とあるのを、「すなわち、本発明は、ポリ乳酸と結晶性のポリアルキレンサクシネートとからなり、前記ポリアルキレンサクシネートは、アルキレンジオールとコハク酸のみを共重合したものであり、繊維横断面が、前記したポリ乳酸とポリアルキレンサクシネートのうち、一方の成分が他方の成分によって複数個に分割されている分割型複合形態であり、」に訂正する。 (4)訂正事項4 明細書の【0018】に「ポリアルキレンサクシネートとは、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート等の、エチレングリコール、ブタンジオール等のアルキレンジオールとコハク酸とを共重合したものである。なかでも、結晶性や融点の観点から、ポリブチレンサクシネートを用いることが好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリアルキレンサクシネートに、乳酸、ε-カプロラクトン等の環状ラクトン類、α-ヒドロキシ酪酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、α-ヒドロキシ吉草酸等のα-オキシ酸類、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール等のグリコール類、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、リンゴ酸等のジカルボン酸類を共重合させてもよい。共重合量は5mol%以下が好ましく、3mol%以下がより好ましい。共重合量が多いと、結晶性が下がり、操業性や繊維、不織布の品位が悪化するため好ましくない。」とあるのを、「ポリアルキレンサクシネートとは、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート等の、エチレングリコール、ブタンジオール等のアルキレンジオールとコハク酸とを共重合したものである。なかでも、結晶性や融点の観点から、ポリブチレンサクシネートを用いることが好ましい。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、ポリアルキレンサクシネートを、アルキレンジオールとコハク酸のみを共重合したものであると限定し、さらに、分割型複合形態を構成する2成分を、「2成分」という表記に換えて、すでに前記されている「ポリ乳酸とポリアルキレンサクシネート」という表記とし、表記方法を変更したものであることから、訂正事項1は全体として、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、明細書の【0018】の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、「分極細繊維」と記載していた誤記を「極細繊維」に訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (3)訂正事項3、4 訂正事項3、4は、明細書の記載を、訂正特許請求の範囲に対応する内容に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項1と同様に、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (4)一群の請求項について 訂正前の請求項2~6は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1~6〕について請求されたものである。 (5)明細書の訂正に関係する請求項 訂正事項2~4に係る訂正は、本件訂正前の請求項1に対応する明細書の【0010】、【0011】及び【0018】を訂正するものであり、また、本件訂正前の請求項2~6は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正事項2~4と関係する請求項は、本件訂正前の請求項1~6である。 そうすると、明細書に対する訂正事項2~4は、一群の請求項の訂正に対応するものであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。 したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ポリ乳酸と結晶性のポリアルキレンサクシネートとからなり、前記ポリアルキレンサクシネートは、アルキレンジオールとコハク酸のみを共重合したものであり、 繊維横断面が、前記したポリ乳酸とポリアルキレンサクシネートのうち、一方の成分が他方の成分によって複数個に分割されている分割型複合形態であり、 分割型複合形態の横断面形状は、断面中心部から放射状に複数の花びら状部を有する花弁部と、花弁部の個々の花びら状部に分断されてなる分割部により構成される形状であり、 かつ複合繊維の繊度が1~6dtex、全分割数が10~30個、かつ、分割されてなる個々の成分が構成する分割繊度が、少なくとも0.20dtex以下のものを含む分割型複合形態であり、 ポリ乳酸の融点が155℃以上、ポリアルキレンサクシネートの融点が105~125℃、ポリ乳酸とポリアルキレンサクシネートとの融点の差が30~60℃であり、 85℃にて15分間、熱処理したときの収縮率が15%以下であることを特徴とする生分解性を有する分割型複合繊維。 【請求項2】 結晶性のポリアルキレンサクシネートがポリブチレンサクシネートであることを特徴とする請求項1記載の分割型複合繊維。 【請求項3】 ポリ乳酸の固有粘度が1.25以上、ポリアルキレンサクシネートの固有粘度が1.35~1.55であり、かつ、ポリ乳酸とポリアルキレンサクシネートとの固有粘度の差が0.15以下であることを特徴とする請求項1または2項記載の分割型複合繊維。 【請求項4】 ポリ乳酸が、190℃でのメルトフローレートが5~20g/10分、ポリアルキレンサクシネートが、190℃でのメルトフローレートが15~30g/10分であり、かつ、ポリ乳酸とポリアルキレンサクシネートとのメルトフローレートの差が15g/10分以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の分割型複合繊維。 【請求項5】 DSCより求めた降温結晶化を示すピークのb/aが0.20mW/(mg・℃)以上のポリアルキレンサクシネートからなることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の分割型複合繊維。 【請求項6】 請求項1~5のいずれかに記載の分割型複合繊維を含み、構成繊維同士が、ポリアルキレンサクシネートが溶融固着してなる熱接着成分によって熱接着していることを特徴とする不織布。」 第4 取消理由通知の概要 本件発明1~6対して、当審において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (進歩性) 請求項1~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 <引用文献等一覧> 甲第1号証:特開2006-132023号公報 甲第5号証:特開2007-126780号公報 甲第3号証:特開2007-119928号公報 甲第4号証:特開2014-37656号公報 (以下、甲第1号証を「甲1」という。他の甲各号証についても、同様である。) 第5 当審の判断 1 引用文献の記載、引用発明 (1)甲1について ア 甲1の記載 甲1には以下の記載がある。なお、下線は当審において付したものであり、「・・・」は記載の省略を示す。以下同様。 「【請求項1】 乳酸が1~30モル%共重合したポリアルキレンサクシネートとポリ乳酸とからなる複合繊維であり、前記複合繊維の横断面が、ポリ乳酸成分がポリアルキレンサクシネート成分によって複数個に分割されているか、または、ポリアルキレンサクシネート成分がポリ乳酸成分によって複数個に分割された分割型複合形態であることを特徴とする分割型複合繊維。」 「【0001】 本発明は、生分解性を有する分割型複合繊維およびこれを用いた不織布に関するものである。」 「【0023】 本発明の繊維の横断面は、ポリ乳酸成分がポリアルキレンサクシネート成分によって複数個に分割されているか、または、ポリアルキレンサクシネート成分がポリ乳酸成分によって複数個に分割された分割型複合形態であり、その横断面の一例を図1~3に示す。図1~3において、1はポリ乳酸成分(あるいは乳酸を共重合したポリアルキレンサクシネート成分)、2はポリアルキレンサクシネート成分(あるいはポリ乳酸成分)を示しており、図1は3葉断面、図2は4葉断面、図3は花弁型断面の分割型複合繊維である。なお、本発明の繊維の横断面は、これらに限定されるものではなく、扁平断面、中空断面等、周知の形状のいずれであってもよい。」 「【0025】 また、繊維の単糸繊度、繊維長等の繊維物性は、繊維に要求される特性に応じて適宜決定すればよく、分割数、分割後の単糸繊度にもよるが、生産性、操業安定性等の点から単糸繊度の範囲は概ね1~6dtexが好ましい。 【0026】 単糸繊度が1dtex未満では、目的とする横断面形態が得られ難い場合があり、また、溶融紡糸する際の紡糸口金の単孔当たりの吐出量が低下し、生産量が低下する傾向を示す。一方、生産量を向上させるために、紡糸口金の孔数を増加させると、紡糸工程が不安定になりやすい。また、単糸繊度が6dtexを超えると、分割後の繊度が太くなり、分割後に細繊度の単糸を得ようとすると分割数が多くなり、煩雑な紡糸装置が必要となるため、好ましくない。一方、分割数が多ければ分割後の繊度が小さくなるという利点はあるが、逆に分割後の個々の形態が均一になり難いという問題もあり、実際には両成分の合計で分割数を4~30とすることが好ましい。」 「【0038】 実施例1 MFR=21g/10分であり、L-乳酸/D-乳酸(共重合モル比)が98.7/1.3のL-乳酸を主体とするポリDL-乳酸と、L-乳酸を5.0モル%共重合した、MFR=32g/10分であるポリブチレンサクシネートとを用いて、孔数1014孔、繊維の横断面が図2となる分割数が5個(両成分の合計)となるように配した4葉断面複合紡糸口金を用い、ポリDL-乳酸を葉部に配し、ポリブチレンサクシネートを芯部に配して、複合比を溶融容積比として50/50、紡糸温度230℃、紡糸速度1100m/分で溶融紡糸し、分割型複合繊維の未延伸糸を得た。 【0039】 次いで、得られた未延伸糸を延伸温度60℃、延伸倍率3.50倍で延伸した後、押し込み式クリンパーにて機械捲縮を付与し、仕上げ油剤を付与後に切断し、繊度2.2dtex、繊維長51mmの分割型複合短繊維を得た。」 「【0041】 次いで、この不織布を連熱処理機によって、110℃で10分間の熱処理を行い、熱処理によりポリアルキレンサクシネート成分を溶融させて、不織布を得た。 【0042】 実施例2~4、比較例1~3 ポリブチレンサクシネートに共重合する乳酸の共重合量を表1に示すように変化させたこと以外は、実施例1と同様にして不織布を得た。」 「【0044】 実施例6 孔数850、繊維の横断面形状が図3となるような分割数20個(両成分の合計)の花弁型断面複合紡糸口金を用いたこと以外は、実施例1と同様にして不織布を得た。」 「【0047】 【表1】 [図:0001427919000001.jpg] 」 「【図2】 [図:0001427919000002.jpg] 」 「【図3】 [図:0001427919000003.jpg] 」 イ 甲1の記載から認定できる事項 ・甲1の【0023】に「図3は花弁型断面の分割型複合繊維の横断面である。」と記載されているところ、図3からは「分割型複合形態の横断面形状は、断面中心部から放射状に複数の花びら状部を有する花弁部と、花弁部の個々の花びら状部に分断されてなる分割部により構成される形状であ」る態様が看取できる。 ウ 甲1に記載された発明 上記ア及びイを総合し、特に実施例1の繊維及び不織布取得方法を含む実施例6について着目すると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲1発明] 「MFR=21g/10分であり、L-乳酸/D-乳酸(共重合モル比)が98.7/1.3のL-乳酸を主体とするポリDL-乳酸と、L-乳酸を5.0モル%共重合した、MFR=32g/10分であるポリブチレンサクシネートとを用いて、孔数850、分割型複合形態の横断面形状は、断面中心部から放射状に複数の花びら状部を有する花弁部と、花弁部の個々の花びら状部に分断されてなる分割部により構成される形状となるような分割数20個(両成分の合計)の花弁型断面複合紡糸口金を用い、ポリDL-乳酸を葉部に配し、ポリブチレンサクシネートを芯部に配して、複合比を溶融容積比として50/50、紡糸温度230℃、紡糸速度1100m/分で溶融紡糸し、分割型複合繊維の未延伸糸を得て、次いで、得られた未延伸糸を延伸温度60℃、延伸倍率3.50倍で延伸した後、押し込み式クリンパーにて機械捲縮を付与し、仕上げ油剤を付与後に切断して得た、繊度2.2dtex、繊維長51mmの分割型複合短繊維。」 2 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 ・甲1発明の「L-乳酸を5.0モル%共重合した、MFR=32g/10分であるポリブチレンサクシネート」について、本件明細書の【0008】に記載の「【特許文献6】特許第4624075号」の公開公報が甲1であって、本件明細書の【0007】において、特許文献6について、「また、乳酸を共重合したポリアルキレンサクシネネートを用いているが、樹脂の結晶性が低いため、操業性よく分割型複合繊維を生産し、かつ、品位に優れる繊維および不織布を得るには至っていない。」と記載されていることから、甲1発明の「L-乳酸を5.0モル%共重合した、MFR=32g/10分であるポリブチレンサクシネート」は「結晶性」を有していると認められる。そうすると、甲1発明の「L-乳酸を5.0モル%共重合した、MFR=32g/10分であるポリブチレンサクシネート」と本件発明1の「ポリアルキレンサクシネートは、アルキレンジオールとコハク酸のみを共重合した」「結晶性のポリアルキレンサクシネート」とは、「結晶性のポリアルキレンサクシネート」との限りで一致する。 ・甲1発明の「MFR=21g/10分であり、L-乳酸/D-乳酸(共重合モル比)が98.7/1.3のL-乳酸を主体とするポリDL-乳酸」は、本件発明1の「ポリ乳酸」に相当する。 ・甲1発明の「ポリDL-乳酸を葉部に配し、ポリブチレンサクシネートを芯部に配し」た「分割型複合形態の横断面形状は、断面中心部から放射状に複数の花びら状部を有する花弁部と、花弁部の個々の花びら状部に分断されてなる分割部により構成される形状」は、本件発明1の「繊維横断面が、前記したポリ乳酸とポリアルキレンサクシネートのうち、一方の成分が他方の成分によって複数個に分割されている分割型複合形態であり、分割型複合形態の横断面形状は、断面中心部から放射状に複数の花びら状部を有する花弁部と、花弁部の個々の花びら状部に分断されてなる分割部により構成される形状」に相当する。 ・甲1発明の「分割型複合短繊維」は、本件発明1の「複合繊維」及び「分割型複合繊維」に相当する。 ・甲1発明の分割型複合単繊維の「繊度2.2dtex」、「分割数20個(両成分の合計)」は、本件発明1の複合繊維の「繊度が1~6dtex、全分割数が10~30個」を満たし、甲1発明の分割されてなる個々の成分が構成する分割繊度の平均は0.11dtex(=2.2dtex/20個)となるところ、「少なくとも0.20dtex以下のものを含む」といえるので、本件発明1の「分割されてなる個々の成分が構成する分割繊度が、少なくとも0.20dtex以下のものを含む分割型複合形態あ」ることを満たす。 ・甲1の【0001】に「本発明は、生分解性を有する分割型複合繊維およびこれを用いた不織布に関するものである。」と記載されていることから、甲1発明の「分割型複合短繊維」は、生分解性を有するので、本件発明1の「生分解性を有する分割型複合繊維」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明との間の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「ポリ乳酸と結晶性のポリアルキレンサクシネートとからなり、 繊維横断面が、前記したポリ乳酸と結晶性のポリアルキレンサクシネートのうち、一方の成分が他方の成分によって複数個に分割されている分割型複合形態であり、 分割型複合形態の横断面形状は、断面中心部から放射状に複数の花びら状部を有する花弁部と、花弁部の個々の花びら状部に分断されてなる分割部により構成される形状であり、 かつ複合繊維の繊度が1~6dtex、全分割数が10~30個、かつ、分割されてなる個々の成分が構成する分割繊度が、少なくとも 0.20dtex以下のものを含む分割型複合形態である生分解性を有する分割型複合繊維。」 <相違点1> ポリアルキレンサクシネートに関し、本件発明1は、「アルキレンジオールとコハク酸のみを共重合したもの」であるのに対し、甲1発明は、「乳酸が1~30モル%共重合したポリブチレンサクシネート」である点。 <相違点2> 本件発明1は、「ポリ乳酸の融点が155℃以上、ポリアルキレンサクシネートの融点が105~125℃、ポリ乳酸とポリアルキレンサクシネートとの融点の差が30~60℃であ」るのに対して、甲1発明は、そのような構成を有するか不明な点。 <相違点3> 本件発明1は、分割型複合繊維を「85℃にて15分間、熱処理したときの収縮率が15%以下である」のに対して、甲1発明は、そのような構成を有するか不明な点。 (2)相違点についての判断 <相違点1について> 甲1発明は、「不織布の強度を上げるために、分割後に熱処理を行い、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステルをバインダー成分として溶融接着させることは考えられるが、ポリ乳酸とポリブチレンサクシネートとは、相溶性が悪いために接着性が悪く、十分な強度をもつ不織布を得ることはできない。」(甲1【0007】)ことから、「本発明において、ポリアルキレンサクシネートには、乳酸が1~30モル%共重合していることが必要である。乳酸が共重合していることによって、ポリアルキレンサクシネートと、他方の成分であるポリ乳酸との相溶性が飛躍的に良化し、分割後に熱処理を行った際に、熱接着成分となるポリアルキレンサクシネート成分と、ポリ乳酸成分との接着性が向上するため、耐久性および強度の高い繊維構造体(糸条、織編物、不織布等)を得ることができる。」(甲1【0016】)ようにしたものである。 すなわち、甲1発明において、ポリアルキレンサクシネートは、乳酸が1~30モル%共重合していることが必須である。 よって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (3)申立人の主張について 申立人は、意見書において概略以下の主張をしている。 ア 甲1及び甲5に基づく進歩性欠如 甲1に開示された「乳酸を1モル%共重合」した「ポリブチレンサクシネート」と本件発明1の「ポリアルキレンサクシネートは、アルキレンジオールとコハク酸のみを共重合したもの」とは物性及びそれらをポリ乳酸と組み合わせて製造される分割型複合繊維の物性は大きく相違しないことが推認され、また、甲1で得られる分割型複合繊維の熱収縮は本件発明1と同程度に小さいことがわかる。 また、甲5の【0005】、【0055】に記載されるポリアルキレンサクシネートは、ブタンジオールとコハク酸のみを共重合したものである。 したがって、本件発明1は、甲1及び甲5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 甲1の比較例1を引用発明とした進歩性欠如 甲1の比較例1は、ポリ乳酸とポリ乳酸を含まないポリブチレンサクシネートを組み合わせた分割型複合繊維であるが、その繊維横断面は本件発明1の「断面中心部から放射状に複数の花びら状部を有する花弁部と、花弁部の個々の花びら状部に分断されてなる分割部により構成される形状」(本件図1)とは異なる。 しかしながら、甲1は、上記本件発明1の繊維横断面と同様の形状の分割型複合繊維を実施例6(図3)で開示しているところ、実施例6は、他の実施例と比較して、易分割性(最も低い通気度)、易熱接着性(最も高い不織布強力)に優れているものである。 そうすると、比較例1の分割型複合繊維の分割性を高め、得られる熱接着性不織布の強度を高めるために、比較例1の繊維横断面を実施例6(図3)の形状に変更することは当業者であれば容易に想到することができる。 ウ 上記アについて 甲5のポリアルキレンサクシネートは、本件発明1と同様に、ブタンジオールとコハク酸のみを共重合したものであるとしても、甲1発明において、ポリアルキレンサクシネートには、乳酸が1~30モル%共重合していることが必須であることは、上記(2)で説示したとおりであるから、甲1発明に甲5に記載の技術事項を適用する動機付けは存在せず、本件発明1は、甲1発明及び甲5に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。 したがって、申立人の上記主張は採用することはできない。 エ 上記イについて 甲1には、「比較例1は、乳酸を共重合していないポリブチレンサクシネートを使用したため、ポリ乳酸とポリブチレンサクシネートとの相溶性が低く、熱処理による溶融接着性が弱く、このため、得られた不織布の強度は低いものであった。」(【0048】)との記載があり、比較例1の採用を否定していることから、たとえ、図3の繊維横断面を有する実施例6が、易分割性(最も低い通気度)、易熱接着性(最も高い不織布強力)に優れているものであったとしても、そもそも甲1に接した当業者が比較例1を採用することは想到し得ない。 したがって、申立人の上記主張は採用することはできない。 (4)小括 以上によれば、相違点2~3を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び申立人により提出された他の証拠に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 本件発明2~6について 本件発明2~6は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加するものであるから、上記2(2)で説示したのと同様の理由により、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1~6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由によって取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700121

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決54件(日本エステル株式会社、柏木 里実)
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    同じ当事者: 柏木 里実
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    同じ当事者: 柏木 里実
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    同じ当事者: 柏木 里実
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    同じ当事者: 柏木 里実
  • 2025-700322異議申立 / 2025-07-29 / 維持熱伝導性シリコーン組成物
    同じ当事者: 柏木 里実
同じ論点・分野の審決(審決分類)70件(121・D01F)
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    共通の審決分類: 121・D01F
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    共通の審決分類: 121・D01F
  • 2025-700190異議申立 / 2025-07-11 / 請求成立(取消)導電性複合繊維、およびその製造方法
    共通の審決分類: 121・D01F
  • 2024-700777異議申立 / 2025-03-04 / 維持延伸複合繊維、不織布及び延伸複合繊維の製造方法
    共通の審決分類: 121・D01F
  • 2023-701279異議申立 / 2024-11-29 / 訂正認容改変フィブロイン繊維及びその製造方法
    共通の審決分類: 121・D01F

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