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特許異議申立

2026-700177

消臭性繊維構造物の製造方法

審判番号
2026-700177
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-049659
登録番号
7732754
請求日
2026年02月27日
審決日
2026年07月13日
公報発行日
2026年08月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】東レ・ライクラ株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人池内アンドパートナーズ
  • 【異議申立人】徳本 浩一
審判長/審判官
  • 審判長 梶尾 誠哉
  • 審判官 棚田 一也
  • 審判官 河本 充雄
分類
P1651.113-Y (D01F) / P1651.121-Y (D01F) / P1651.537-Y (D01F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第2号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7732754号発明「消臭性繊維構造物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7732754号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7732754号の請求項1~8に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和3年3月24日(優先権主張 令和2年5月19日(以下、「本件優先日」という。))の出願であって、令和7年8月25日にその特許権の設定登録がされ、同年9月2日に特許掲載公報が発行された。 その後、本件特許に対し、令和8年2月27日に特許異議申立人 徳本 浩一(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、その後、同年5月7日に申立人により特許異議申立書に対する手続補正書(方式)が提出された。(以下、手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書のことを「異議申立書」という。) 第2 本件発明 本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明8」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ポリマーに無機層状消臭剤を混合した消臭繊維を含む消臭性繊維構造物の製造方法であって、 前記無機層状消臭剤はα-リン酸ジルコニウムであり、 (1)繊維構造物を、アルカリ性物質を含む水溶液でアルカリ処理する工程と、 (2)その後、カルボキシル基を含む炭素数2~6の有機酸を含む水溶液で浸漬加熱処理工程を含むことにより、 前記α-リン酸ジルコニウムの層間距離が0.1nm以上0.9nm以下、かつ結晶子サイズが1nm以上30nm以下であり、 家庭洗濯0回と10回後のアンモニアガス減少率がいずれも70%以上である消臭性繊維構造物を製造することを特徴とする消臭性繊維構造物の製造方法。 【請求項2】 前記有機酸はクエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酢酸及びコハク酸からなる群選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の消臭性繊維構造物の製造方法。 【請求項3】 前記消臭繊維は、合成繊維及び再生繊維から選ばれる少なくとも一つである請求項1又は2に記載の消臭性繊維構造物の製造方法。 【請求項4】 前記繊維構造物は、前記消臭繊維100質量%又は前記消臭繊維と他の繊維を含み、他の繊維を含む場合は前記繊維構造物を母数としたとき、前記消臭繊維は1~99質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の消臭性繊維構造物の製造方法。 【請求項5】 前記他の繊維は、天然繊維、合成繊維及び再生繊維から選ばれる少なくとも一つである請求項4に記載の消臭性繊維構造物の製造方法。 【請求項6】 前記繊維構造物は、編み物、織物又はこれらから縫製された衣類である請求項1~5のいずれか1項に記載の消臭性繊維構造物の製造方法。 【請求項7】 前記アルカリ処理工程は、漂白処理及びアルカリ減量処理から選ばれる少なくとも一つである請求項1~6のいずれか1項に記載の消臭性繊維構造物の製造方法。 【請求項8】 前記有機酸処理は、染色の前又は後にする請求項1~7のいずれか1項に記載の消臭性繊維構造物の製造方法。」 第3 特許異議の申立ての理由の概要 申立人は、証拠として甲第1号証~甲第12号証(以下、「甲1」~「甲12」という。)を提出し、以下の申立理由1~5により、本件特許を取り消すべきものである旨主張している。 1 申立理由1(進歩性) 本件発明1~8は、甲1の実施例4に記載された発明及び甲2、3、7及び9に記載された周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 申立理由2(進歩性) 本件発明1~8は、甲1の実施例1に記載された発明及び甲2、3及び9に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 3 申立理由3(進歩性) 本件発明1~8は、甲4に記載された発明及び甲5、6、10及び11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 4 申立理由4(新規性) 本件発明1~8は、甲1~4、7及び8によれば、その出願前に公然実施をされた発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 5 申立理由5(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 <証拠方法> 甲1:特開2006-28453号公報 甲2:文部省、“染色1”、実教出版株式会社、昭和41年2月25日、第126~127頁 甲3:テキスタイルケミカル総合カタログ、日華化学株式会社、2008年10月、第1頁~第62頁 甲4:特開2017-119925号公報 甲5:特許第6243544号公報 甲6:特許第6145217号公報 甲7:浦畑俊博、“繊維製品の黄変および変色について”、繊維製品消費科学、第231頁~第237頁、33巻、5号、1992年5月25日 甲8:特開平5-125618号公報 甲9:特許第3456306号公報 甲10:特開平5-213609号公報 甲11:Adly A.Hanna et al.,“Synthesis and characterization of expanded layer-spacing zirconium phosphate by ion-exchange and intercalation process”,Phosphorous Research Bulletin,pp.83-89,Vol.23(2009) 甲12:特開2018-178313号公報 第4 当審の判断 1 甲1(特開2006-28453号公報)の記載、甲1に記載された発明 (1)甲1には、以下の記載がある。(下線は、合議体が付した。以下、同じ。) 「【請求項1】 下記Aの抗菌剤、及び下記BとCの消臭剤とを含有するポリウレタン弾性体。 A.銀、銅、亜鉛、及び錫からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属イオンを多孔性構造物質に担持させた抗菌剤 B.リン酸ジルコニウムからなる消臭剤 C.Zn、Si、Cu、Ni、Fe、Al、及びMgから選ばれた元素を含む、金属酸化物又は複合金属酸化物からなる消臭剤 ・・・(中略)・・・ 【請求項3】 請求項1又は2に記載のポリウレタン弾性体からなるポリウレタン弾性繊維。 【請求項4】 請求項3に記載のポリウレタン弾性繊維を用いた織編物。」 「【0009】 本発明は、このような状況下なされたものであり、抗菌性及び消臭性に優れ、かつ耐変色に優れたポリウレタン弾性体を提供すること、及び該ポリウレタン弾性体からなるポリウレタン弾性繊維を提供することを課題とす。」 「【0043】 次に、本発明に用いられるBの消臭剤(以下、消臭剤Bともいう)のリン酸ジルコニウムは、ジルコニウムの酸化物、水和物、またはイットリウム・スカンジウム・稀土類元素との添加物における、非晶質または結晶質の中から選択される微粒子である。消臭剤Bは、体臭のアンモニア・トリメチルアミン等の塩基性ガスを消臭する能力が高い。 【0044】 消臭剤Bとしては、東亜合成(株)製の「ケスモンNS-10」などが挙げられる。 【0045】 また、Cの消臭剤(以下、消臭剤Cともいう)は、Zn、Si、Cu、Ni、Fe、Al及びMgから選ばれた少なくとも1種の元素を含む金属酸化物及び/又は複合金属酸化物からなるものが挙げられる。尚、複合金属酸化物とは、Zn、Si、Cu、Ni、Fe、Al及びMgから選ばれる金属を2種以上含む酸化物であってもよいし、又はZn、Si、Cu、Ni、Fe、Al及びMgから選ばれる金属を少なくとも1種含み、さらに別の金属を含む酸化物であってもよい。 ・・・(中略)・・・ 【0054】 上記抗菌剤A及び消臭剤BとCとを組み合わせることにより、3つの成分が良好に作用し合い相乗効果が発揮される理由については、その詳細は不明であるが、1)消臭剤Bと消臭剤Cは、いずれもアンモニアを吸着する性質があることからアンモニア消臭性を持ち、抗菌剤Aは消臭剤B及びCが捕集したアンモニアと錯体を形成し、該錯体は元の状態と同等の抗菌活性を持つだけでなく、例えば酸素との反応が抑制される結果黄変しにくい構造をとることができ耐黄変効果にも優れると考えられる。」 「<消臭性の評価方法> 【0076】 消臭試験は、消臭加工繊維製品認証基準(制定者は社団法人繊維評価技術協議会 製品認証部が制定日は平成14年9月1日)に準拠し、官能試験及び機器試験より臭気成分の消臭性評価を行なった。 ・・・(中略)・・・ 【0078】 B.機器評価(検知管法) 1.サンプル(10cm×10cm)をテドラーバッグに入れる。 2.下記表2に示す所定量の試験ガスを注入し、2時間後の残存ガス濃度を成分対応検知管(ガステック社製)で測定する。尚ガス充填量は3L、希釈ガスは乾燥空気または窒素 ガスとする。 3.サンプルを用いずに同様の評価を行い、空試験とする。 4.評価は下記の式に従って、残存ガス濃度の減少率を算出し、消臭率として表記した。5.該機器分析試験について、社団法人繊維評価技術協議会では、臭気成分の減少率が70%以上の時消臭効果有りと認めるレベルである。 ・・・(中略)・・・ 【0080】 【表2】 [図:0001438309000001.jpg] ・・・(中略)・・・ 【0088】 また、洗濯は、社団法人繊維評価技術協議会が指定したJIS L 0217(繊維製品の取扱いに関する表示方法及びその表示方法)の103号の試験方法に従い、JAFET洗剤を使用することにより行った。 ・・・(中略)・・・ 【0090】 以下の実施例で使用した抗菌剤及び消臭剤を下記表4に記載する。 【0091】 【表4】 [図:0001438309000002.jpg] <実施例1> ・・・(中略)・・・ <抗菌剤と消臭剤の分散液の製法> 【0095】 上記ポリウレタン重合体溶液の固形分に対し、表4に示した抗菌剤A-1を1.0質量%、消臭剤B-1を0.5質量%、消臭剤C-1を1.0質量%用意し、DMACを添加し、ホモミキサーで充分分散させ、固形分濃度27質量%の抗菌剤と消臭剤の分散液を作製した。 <ポリウレタン系弾性繊維の乾式紡糸法> 【0096】 上記ポリウレタン重合体溶液に対し、添加剤溶液及び抗菌剤と消臭剤の分散液を加え充分に混合し、固形分濃度27質量%の原液を調整した後、2ホールノズルより220℃の不活性ガス中に押出し、仮撚装置により合着させた後給油し、巻取り速度600m/分で巻取22デシテックスのポリウレタン弾性繊維を得た。 【0097】 巻き取った該22デシテックスポリウレタン弾性繊維チーズを検査工程を通し、繊度ムラ変動係数が2.5%以内のチーズを特定して、下記の通りタイツ編地を作製した。 <タイツ編地の作製> 【0098】 該ポリウレタン弾性繊維を3.3倍に延伸させ、これに鞘糸としてポリアミド加工糸(商標キュープ、東レ(株)製、33デシテックス26フィラメント)を撚り数800T/mでカバーリングしてS撚りとZ撚りのシングルカバリング糸(SCY)を作製した。 【0099】 さらに、パンスト編機(ロナティ社製、針数400本)の給糸口1、3口に上記S撚りSCYを、2、4口に上記Z撚りSCYを編み込み張力1.0gで給糸し編地を編成した。編地中のポリウレタン弾性繊維の含有率は17%であった。次いで、編地の染色加工を以下の通り実施し、タイツ編地を得た。 【0100】 1)プリセット:(真空乾燥機使用、80℃×10分) 2)染色:チバスペシャルティ・ケミカルズ(株)製の染料Lanaset Black Bを2.0 owf%使用して95℃で50分間処理し黒色に染めた。染色時のpH調整は酢酸と硫安で実施した。 3)タンニン酸(ハイフィックスGM、大日本製薬(株))でフィックス処理した。フィックス時のpHは3、pH調整剤として酢酸を用いた。 4)最後に柔軟処理を行い、セット工程(パンストセット機使用、セット:110℃×10秒程度、乾燥:120℃×30秒)を通して仕上げた。 ・・・(中略)・・・ 【0114】 【表9】 [図:0001438309000003.jpg] ・・・(中略)・・・ <実施例4> 【0119】 ポリウレタン固形分に対して、抗菌剤A-2を2.0質量%、消臭剤B-1を1.5質量%、消臭剤C-3を1.0質量%使用した以外は実施例1と同様にして22デシテックスポリウレタン系弾性繊維を得た。 【0120】 次いで丸編機(福原精機社製、釜径38インチ、28ゲージ、針数3,336本、給糸口数100口)の給糸口の全口に60番手綿糸と当該ポリウレタン系弾性繊維を給糸し、プレーティング編でベア天竺編地を編成した。編み込み倍率は3.0倍に設定した。 ついで編地を下記の方法で染色、仕上げ加工を行ないベア天竺編地を得た。仕上がった編地の目付けは160g/m2で、編地中に占めるポリウレタン弾性繊維の含有率は8.0%であった。 【0121】 1)プリセット:乾熱190℃で60秒間 2)精練:精練剤を2mL/L、苛性ソーダを2.2g/L使用して90℃で30分間処理 3)漂白:30%過酸化水素15mL/、珪酸ナトリウム5mL/L、苛性ソーダ1.1g/L使用して90℃で60分間 4)染色:反応染料30owf%、無水芒哨90g/L、ソーダ灰16g/L使用して60℃で60分間 5)フィックス:フィックス剤3.0owf%使用して50℃で20分間 6)ソーピング:ソーピング剤1mL/L使用して90℃で10分間を5回 7)ファイナルセット:乾熱165℃で60秒間 ・・・(中略)・・・ <結果> 【0145】 実施例2~9と比較例6、7の織編物あるいはフィルムの抗菌性の結果を表12に、消臭性の結果を表13に示した。 ・・・(中略)・・・ 【0147】 【表13】 [図:0001438309000004.jpg] 」 (2)甲1発明 上記(1)によれば、以下のことがいえる。 ア 甲1には「実施例1」について、段落0095に「上記ポリウレタン重合体溶液の固形分に対し」「抗菌剤A-1を1.0質量%、消臭剤B-1を0.5質量%、消臭剤C-1を1.0質量%用意し、DMACを添加し、ホモミキサーで充分分散させ、固形分濃度27質量%の抗菌剤と消臭剤の分散液を作製した。」と記載され、段落0096に「上記ポリウレタン重合体溶液に対し、添加剤溶液及び抗菌剤と消臭剤の分散液を加え充分に混合し、固形分濃度27質量%の原液を調整した後、2ホールノズルより220℃の不活性ガス中に押出し、仮撚装置により合着させた後給油し、巻取り速度600m/分で巻取22デシテックスのポリウレタン弾性繊維を得た。」と記載されている。 よって、甲1には、実施例1について、ポリウレタン重合体溶液の固形分に対し、抗菌剤A-1を1.0質量%、消臭剤B-1を0.5質量%、消臭剤C-1を1.0質量%用意し、DMACを添加し、ホモミキサーで充分分散させ、固形分濃度27質量%の抗菌剤と消臭剤の分散液を作製し、ポリウレタン重合体溶液に対し、添加剤溶液及び抗菌剤と消臭剤の分散液を加え充分に混合し、固形分濃度27質量%の原液を調整した後、2ホールノズルより220℃の不活性ガス中に押出し、仮撚装置により合着させた後給油し、巻取り速度600m/分で巻取22デシテックスのポリウレタン弾性繊維を得ることが記載されている。 イ 甲1には「実施例4」について、段落0119に「ポリウレタン固形分に対して、抗菌剤A-2を2.0質量%、消臭剤B-1を1.5質量%、消臭剤C-3を1.0質量%使用した以外は実施例1と同様にして22デシテックスポリウレタン系弾性繊維を得た。」と記載され、段落0120に「丸編機」「の給糸口の全口に60番手綿糸と当該ポリウレタン系弾性繊維を給糸し、プレーティング編でベア天竺編地を編成した。」「ついで編地を下記の方法で染色、仕上げ加工を行ないベア天竺編地を得た。」と記載され、段落0121に「1)プリセット:乾熱190℃で60秒間 2)精練:精練剤を2mL/L、苛性ソーダを2.2g/L使用して90℃で30分間処理 3)漂白:30%過酸化水素15mL/、珪酸ナトリウム5mL/L、苛性ソーダ1.1g/L使用して90℃で60分間 4)染色:反応染料30owf%、無水芒哨90g/L、ソーダ灰16g/L使用して60℃で60分間 5)フィックス:フィックス剤3.0owf%使用して50℃で20分間 6)ソーピング:ソーピング剤1mL/L使用して90℃で10分間を5回 7)ファイナルセット:乾熱165℃で60秒間」と記載されている。 また、甲1の段落0091の表4には、「抗菌剤A」として「A-2:リン酸ジルコニウム-銀系抗菌剤;「ノバロンAGT330」、(東亜合成(株)製)」と記載され、「消臭剤B」として「B-1:リン酸ジルコニウム」と記載され、「消臭剤C」として「C-3:超微粒子酸化亜鉛;「FINEX-25LP」(堺化学(株)製)」と記載されている。 よって、上記アを参酌すると、甲1には、実施例4について、ポリウレタン固形分に対して、抗菌剤としてのリン酸ジルコニウム-銀系抗菌剤である「ノバロンAGT330」(東亜合成(株)製)を2.0質量%、消臭剤としてのリン酸ジルコニウムを1.5質量%、消臭剤としての超微粒子酸化亜鉛である「FINEX-25LP」(堺化学(株)製)を1.0質量%用意し、DMACを添加し、ホモミキサーで充分分散させ、固形分濃度27質量%の抗菌剤と消臭剤の分散液を作製し、ポリウレタン重合体溶液に対し、添加剤溶液及び抗菌剤と消臭剤の分散液を加え充分に混合し、固形分濃度27質量%の原液を調整した後、2ホールノズルより220℃の不活性ガス中に押出し、仮撚装置により合着させた後給油し、巻取り速度600m/分で巻取22デシテックスポリウレタン弾性繊維を得て、丸編機の給糸口の全口に60番手綿糸と22デシテックスポリウレタン弾性繊維を給糸し、プレーティング編でベア天竺編地を編成し、ついで編地を、1)プリセット:乾熱190℃で60秒間 2)精練:精練剤を2mL/L、苛性ソーダを2.2g/L使用して90℃で30分間処理 3)漂白:30%過酸化水素15mL/、珪酸ナトリウム5mL/L、苛性ソーダ1.1g/L使用して90℃で60分間 4)染色:反応染料30owf%、無水芒哨90g/L、ソーダ灰16g/L使用して60℃で60分間 5)フィックス:フィックス剤3.0owf%使用して50℃で20分間 6)ソーピング:ソーピング剤1mL/L使用して90℃で10分間を5回 7)ファイナルセット:乾熱165℃で60秒間 の1)~7)の方法で染色、仕上げ加工を行い、ベア天竺編地を得る方法、が記載されているといえる。 ウ 甲1の段落0145には、「実施例2~9」「の織編物」「の」「消臭性の結果を表13に示した。」と記載され、段落0147の表13には、実施例4の織編物の「消臭試験の機器分析試験結果」について、「洗濯回数」が「無し」の「アンモニア減少率(%)」が「80」、「洗濯回数」が「10回後」の「アンモニア減少率(%)」が「72」であることが記載されている。 よって、甲1には、実施例4の織編物の「消臭試験の機器分析試験結果」が、洗濯回数が無しのアンモニア減少率が80%、洗濯回数が10回後のアンモニア減少率が72%であることが記載されているといえる。 エ 上記イ及びウによれば、甲1には、実施例4について、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。(括弧内は引用元の上記項番を示す。) <甲1発明> 「ポリウレタン固形分に対して、 抗菌剤としてのリン酸ジルコニウム-銀系抗菌剤である「ノバロンAGT330」(東亜合成(株)製)を2.0質量%、消臭剤としてのリン酸ジルコニウムを1.5質量%、消臭剤としての超微粒子酸化亜鉛である「FINEX-25LP」(堺化学(株)製)を1.0質量%、用意し、 DMACを添加し、 ホモミキサーで充分分散させ、固形分濃度27質量%の抗菌剤と消臭剤の分散液を作製し、 ポリウレタン重合体溶液に対し、添加剤溶液及び抗菌剤と消臭剤の分散液を加え充分に混合し、 固形分濃度27質量%の原液を調整した後、2ホールノズルより220℃の不活性ガス中に押出し、 仮撚装置により合着させた後給油し、 巻取り速度600m/分で巻取22デシテックスポリウレタン弾性繊維を得て、 丸編機に60番手綿糸と22デシテックスポリウレタン弾性繊維を給糸し、プレーティング編でベア天竺編地を編成し、 ついで編地を、 1)プリセット:乾熱190℃で60秒間 2)精練:精練剤を2mL/L、苛性ソーダを2.2g/L使用して90℃で30分間処理 3)漂白:30%過酸化水素15mL/、珪酸ナトリウム5mL/L、苛性ソーダ1.1g/L使用して90℃で60分間 4)染色:反応染料30owf%、無水芒哨90g/L、ソーダ灰16g/L使用して60℃で60分間 5)フィックス:フィックス剤3.0owf%使用して50℃で20分間 6)ソーピング:ソーピング剤1mL/L使用して90℃で10分間を5回 7)ファイナルセット:乾熱165℃で60秒間 の1)~7)の方法で染色、仕上げ加工を行い、 ベア天竺編地を得る方法であって、(上記イ) ベア天竺編地は、消臭試験の機器分析試験結果が、洗濯回数が無しのアンモニア減少率が80%、洗濯回数が10回後のアンモニア減少率が72%である、(上記ウ) ベア天竺編地を得る方法。」 2 申立理由1(進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)a 本件優先日における技術常識によれば、リン酸ジルコニウムは無機材料であるといえるから、甲1発明の「消臭剤としてのリン酸ジルコニウム」は、無機消臭剤であるといえる。そうすると、甲1発明の「抗菌剤と消臭剤の分散液」は、「消臭剤としてのリン酸ジルコニウムを」「分散させ」る工程を経て作製したものであるから、無機消臭剤を含むものであるといえる。 b また、本件優先日における技術常識によれば、甲1発明の「ポリウレタン重合体」は、ポリマーであるといえる。したがって、上記aを踏まえると、甲1発明の「22デシテックスポリウレタン弾性繊維」は、「ポリウレタン重合体溶液に対し」「抗菌剤と消臭剤の分散液」「を加え充分に混合」する工程を経て得た繊維であるから、ポリマーに無機消臭剤を混合した繊維である点で、消臭繊維であるといえる。 c よって、本件発明1の「ポリマーに無機層状消臭剤を混合した消臭繊維」と、甲1発明の「22デシテックスポリウレタン弾性繊維」とは、ポリマーに無機消臭剤を混合した消臭繊維である点で共通する。 d また、上記aを踏まえると、本件発明1の「無機層状消臭剤はα-リン酸ジルコニウムであ」ることと、甲1発明の「消臭剤」は「リン酸ジルコニウム」であることとは、無機消臭剤はリン酸ジルコニウムである点で共通する。 (イ)a 本件特許明細書の段落0024には、「前記繊維構造物は、編み物、織物又はこれらから縫製された衣類であるのが好ましい。」と記載されているから、編み物は、繊維構造物であるといえる。そうすると、甲1発明の「ベア天竺編地」は、編み物であるから、繊維構造物であるといえる。 b また、甲1発明において、「ベア天竺編地」は、「消臭試験の機器分析試験結果が、洗濯回数が無しのアンモニア減少率が80%、洗濯回数が10回後のアンモニア減少率が72%である」ものであるところ、甲1の段落0078には、「臭気成分の減少率が70%以上の時消臭効果有りと認めるレベルである」と記載されているから、甲1発明の「ベア天竺編地」は、消臭効果有りと認められるレベルであり、消臭性を有するといえる。 c 上記a及びbによれば、甲1発明の「ベア天竺編地」は、消臭性を有する繊維構造物であるから、本件発明1の「消臭性繊維構造物」に相当する。 d そして、甲1発明は、「22デシテックスポリウレタン弾性繊維を給糸し、プレーティング編でベア天竺編地を編成し」、「ベア天竺編地を得る方法」であるから、22デシテックスポリウレタン弾性繊維を含むベア天竺編地の製造方法であるといえる。 したがって、上記(ア)c及び上記cを踏まえると、本件発明1の「ポリマーに無機層状消臭剤を混合した消臭繊維を含む消臭性繊維構造物の製造方法」と、甲1発明の「22デシテックスポリウレタン弾性繊維を給糸し、プレーティング編でベア天竺編地を編成し」、「ベア天竺編地を得る方法」とは、ポリマーに無機消臭剤を混合した消臭繊維を含む消臭性繊維構造物の製造方法である点で、共通する。 (ウ)a 甲1発明は、「編地を」「2)精練:精練剤を2mL/L、苛性ソーダを2.2g/L使用して90℃で30分間処理 3)漂白:30%過酸化水素15mL/、珪酸ナトリウム5mL/L、苛性ソーダ1.1g/L使用して90℃で60分間 4)染色:反応染料30owf%、無水芒哨90g/L、ソーダ灰16g/L使用して60℃で60分間」の方法を含む「染色、仕上げ加工を行」うものであるところ、苛性ソーダ、珪酸ナトリウム及びソーダ灰が強いアルカリ性を示すアルカリ性物質であること、及び、精練、漂白及び染色が処理であることは、本件優先日における技術常識であるから、甲1発明の「2)精練」、「3)漂白」及び「4)染色」は、アルカリ性物質を含む物質でアルカリ処理する工程であるといえる。 よって、本件発明1の「(1)繊維構造物を、アルカリ性物質を含む水溶液でアルカリ処理する工程」と、甲1発明の「2)精練」、「3)漂白」及び「4)染色」とは、繊維構造物を、アルカリ性物質を含む物質でアルカリ処理する工程である点で共通する。 b(a)甲1発明は、「ベア天竺編地の消臭試験の機器分析試験結果は、洗濯回数が無しのアンモニア減少率が80%、洗濯回数が10回後のアンモニア減少率が72%である」ものである。 (b)ここで、甲1の段落0078には、「1.サンプル」「をテドラーバッグに入れる。2.下記表2に示す所定量の試験ガスを注入し、2時間後の残存ガス濃度を」「測定する。」「4.評価は」「残存ガス濃度の減少率を算出し、消臭率として表記した。」と記載され、段落0080の表2には、「試験ガス種類」として「アンモニア」が記載されている。そうすると、甲1発明の「アンモニア」は、アンモニアガスであるといえる。 (c)また、甲1の段落0088には、「洗濯は」「JIS L 0217」「の103号の試験方法に従い」「行った。」と記載されている。よって、甲1発明の「洗濯」は、JIS L 0217の103号の試験方法に従うものである。 一方、本件特許明細書の段落0040には、「洗濯方法」において、「JIS L 0217:1995.「繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法」に記載の洗い方103に規定される家庭電気洗濯機を使用し」たことが記載されている。よって、JIS L 0217:1995.に記載の洗い方103は、家庭電気洗濯機を使用するものである。 したがって、甲1発明の「洗濯」は、家庭電気洗濯機を使用する点で、家庭洗濯であるといえる。 (d)上記(イ)c、上記(a)~(c)によれば、甲1発明の「ベア天竺編地の消臭試験の機器分析試験結果は、洗濯回数が無しのアンモニア減少率が80%、洗濯回数が10回後のアンモニア減少率が72%である」ことは、本件発明1の「消臭性繊維構造物」が、「家庭洗濯0回と10回後のアンモニアガス減少率がいずれも70%以上である」ことに相当する。 (エ)本件発明1は、「(1)繊維構造物を、アルカリ性物質を含む水溶液でアルカリ処理する工程」(以下、「工程(1)」という。)と、「(2)その後、カルボキシル基を含む炭素数2~6の有機酸を含む水溶液で浸漬加熱処理工程」(以下、「工程(2)」という。)を含むことにより、「前記α-リン酸ジルコニウムの層間距離が0.1nm以上0.9nm以下、かつ結晶子サイズが1nm以上30nm以下であり、家庭洗濯0回と10回後のアンモニアガス減少率がいずれも70%以上である消臭性繊維構造物」(以下、「消臭性繊維構造物A」という。)を製造するものである。 一方、甲1発明は、繊維構造物を、アルカリ性物質を含む物質でアルカリ処理する工程を含み、家庭洗濯0回と10回後のアンモニアガス減少率がいずれも70%以上である消臭性繊維構造物を製造するものであるものの、工程(1)と、工程(2)を含むことにより消臭性繊維構造物Aを製造するものではない。 (オ)上記(ア)~(エ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。 <一致点> 「ポリマーに無機消臭剤を混合した消臭繊維を含む消臭性繊維構造物の製造方法であって、 前記無機消臭剤はリン酸ジルコニウムであり、 繊維構造物を、アルカリ性物質を含む物質でアルカリ処理する工程を含み、 家庭洗濯0回と10回後のアンモニアガス減少率がいずれも70%以上である消臭性繊維構造物を製造することを特徴とする消臭性繊維構造物の製造方法。」 <相違点1> 「無機消臭剤」について、本件発明1は、「層状」であるとともに、「α-リン酸ジルコニウム」であるのに対し、甲1発明は、リン酸ジルコニウムであるものの、層状であること、及び、α-リン酸ジルコニウムであることが特定されていない点。 <相違点2> 「アルカリ性物質を含む物質」について、本件発明1が「水溶液」であるのに対し、甲1発明は、水溶液であることが特定されていない点。 <相違点3> 本件発明1は、工程(1)と、工程(2)とを含むことにより消臭性繊維構造物Aを製造するのに対し、甲1発明は、「繊維構造物を、アルカリ性物質を含む物質でアルカリ処理する工程を含み、家庭洗濯0回と10回後のアンモニアガス減少率がいずれも70%以上である消臭性繊維構造物を製造する」ものの、工程(1)と、工程(2)を含むことにより消臭性繊維構造物Aを製造するものではない点。 イ 相違点についての検討 事案に鑑み、相違点3から検討する。 甲2~12のいずれにも、工程(1)と、工程(2)とを含むことにより消臭性繊維構造物Aを製造することは記載も示唆もされていない。 よって、甲2~12の記載を参酌しても、甲1発明を相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 申立人の主張について (ア)申立人の主張 申立人は、異議申立書の第40頁第4行~第41頁下から8行において、本件発明1の「前記α-リン酸ジルコニウムの層間距離が0.1nm以上0.9nm以下、かつ結晶子サイズが1nm以上30nm以下であ」ること(異議申立書の第6頁に記載されたA5の構成要件)は、本件発明1の「ポリマーに無機層状消臭剤を混合した消臭繊維を含む消臭性繊維構造物の製造方法」であること(異議申立書の第6頁に記載されたA1の構成要件)、「前記無機層状消臭剤はα-リン酸ジルコニウムであ」ること(異議申立書の第6頁に記載されたA2の構成要件)、工程(1)を含むこと(異議申立書の第6頁に記載されたA3の構成要件)、工程(2)を含むこと(異議申立書の第6頁に記載されたA4の構成要件)、及び、「家庭洗濯0回と10回後のアンモニアガス減少率がいずれも70%以上である消臭性繊維構造物を製造する」こと(異議申立書の第6頁に記載されたA6の構成要件)が満たされれば、必然的に生じる特性であるから、A1~A4、A6の構成要件からなる発明について新規性、進歩性が否定される場合、A5を付加した構成要件からなる発明の新規性、進歩性が肯定されるべきではない旨主張している。 (イ)申立人の主張についての検討 本件特許明細書の段落0008には、「無機層状消臭剤を混合した消臭繊維を含む消臭性繊維構造物はアルカリ処理すると層間距離が0.9nmを越え消臭機能が著しく低下するが、有機酸処理により前記消臭剤の層間距離が0.9nm以下となり、消臭機能が復活する。」と記載され、段落0010には、「α-リン酸ジルコニウムなどの無機層状消臭剤を含有する弾性繊維は、当初は消臭機能があるものの、アルカリ処理すると消臭機能が失活してしまう問題に行き当たり、その原因を調べた。」と記載されているから、「有機酸処理」は、α-リン酸ジルコニウムの層間距離を0.9nm以下とするものであるといえる。 そして、本件発明1は、工程(2)を含むことにより、「前記α-リン酸ジルコニウムの層間距離が」「0.9nm以下」「である消臭性繊維構造物を製造する」ものであり、工程(2)は、「有機酸を含む水溶液で」「処理」する工程であるから、工程(2)は、α-リン酸ジルコニウムの層間距離を0.9nm以下とする有機酸処理であるといえる。 一方、甲1、2、3、7、9のいずれにも、有機酸処理を行うことにより、α-リン酸ジルコニウムの層間距離を0.9nm以下とすることは記載されておらず、また、有機酸処理を行うと、α-リン酸ジルコニウムの層間距離が0.9nm以下となることが、本件優先日において技術常識であったともいえない。 そうすると、甲1発明に甲2、3、7、9に記載された構成を適用しても、α-リン酸ジルコニウムの層間距離を0.9nm以下とする有機酸処理、すなわち工程(2)を備えたものとはならず、A4の構成要件は満たされないから、A4の構成要件が満たされることを前提とする申立人の主張は前提を欠いており、採用できない。 エ 本件発明1についてのまとめ 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2~12の記載を参酌しても、甲1発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~8について 請求項2~8の記載は請求項1の記載を引用するものであるところ、本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(1)イ~エにおける判断と同様の理由により、本件発明2~8は、甲2~12の記載を参酌しても、甲1発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)小括 以上のとおりであるから、申立理由1(進歩性)は理由がない。 3 申立理由2(進歩性)及び申立理由3(進歩性)について 甲1に記載された実施例1には、上記1(2)アで検討した事項は記載されているが、上記2(1)アにおいて挙げた相違点3は記載されていない。 そして、上記2(1)イで検討したように、甲4にも相違点3に係る構成は記載されていない。 そうすると、甲1に記載された実施例1に係る発明又は甲4に記載された事項に係る発明を主引用発明とした場合も、上記2(1)アにおいて挙げた相違点3と同様の点で本件発明1と相違し、その点について、当業者が容易になし得たことではないことは、上記2(1)イにおいて検討したとおりである。 また、本件発明2~8については、上記2(2)において検討したとおりであるから、本件発明1~8は、甲1~甲12の記載を参酌しても、甲1に記載された実施例1に係る発明又は甲4に記載された事項に係る発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、申立理由2(進歩性)及び申立理由3(進歩性)は理由がない。 4 申立理由4(新規性)について 甲1~4、7及び8のいずれにも、本件発明1~8が公然実施されたことを示す記載はない。 よって、本件発明1~8は、本件優先日前に公然実施をされた発明であるとはいえず、申立理由4(新規性)は理由がない。 5 申立理由5(サポート要件)について (1)申立人の主張 申立人は、異議申立書において、以下の主張1~3を主張している。 ア 主張1(異議申立書の第55頁第2行~第56頁第15行) 本件特許明細書に記載された比較例2は、最終仕上げ工程において「90%酢酸0.25g/L水を加え、40℃に昇温して5分間混合」し、なる工程が、本件発明1~8の工程(2)に相当するにも関わらず、消臭機能が復活しないものであるため、本件発明1~8はサポート要件を満たさない。 イ 主張2(異議申立書の第56頁下から3行~第58頁第14行) 本件発明1~8において「α-リン酸ジルコニウムの結晶子サイズが1nm以上30nm以下であ」るところ、本件特許明細書に記載された比較例1は、結晶子サイズが54~55nmでも消臭性能が高く、また、本件発明1~8の「結晶子サイズ」は実施例の結晶子サイズである12.4~14.3nmに比較して範囲が広いため、本件発明1~8はサポート要件を満たさない。 ウ 主張3(異議申立書の第58頁第15行~第59頁下から3行) 本件発明8の「有機酸処理は、染色処理の前」「にする」構成は、有機酸処理の後に染色処理するものであるが、染色処理がアルカリ条件での処理である場合は、有機酸処理の後に染色処理することにより、「家庭洗濯0回と10回後のアンモニアガス減少率がいずれも70%以上である」の要件を満たさず、本件課題を解決できないから、本件発明1~8はサポート要件を満たさない。 (2)申立人の主張についての判断 ア 主張1について 本件発明は、工程(1)と、工程(2)を含むことにより、「家庭洗濯0回と10回後のアンモニアガス減少率がいずれも70%以上である消臭性繊維構造物を製造する」ものである。 一方、本件特許明細書に記載された比較例2は、段落0048及び段落0055の記載によれば、90%酢酸0.25g/L水を加え、40℃に昇温して5分間混合し、湯洗し、脱水乾燥した後のアンモニアガス減少率(%)が洗濯前で75%、洗濯10回で69%であるものである。 そうすると、比較例2の「90%酢酸0.25g/L水を加え、40℃に昇温して5分間混合」することは、「家庭洗濯0回と10回後のアンモニアガス減少率がいずれも70%以上である消臭性繊維構造物を製造する」ものではないから、本件発明の工程(2)に該当しない。したがって、主張1は前提において誤っている。 よって、主張1を採用することはできない。 イ 主張2について 本件特許明細書の段落0011の「前記α-リン酸ジルコニウムの層間距離は、アンモニア分子サイズ以下の物質を取り込むことができ、取り込まれたガスは、α-リン酸ジルコニウム結晶の官能基とイオン結合することにより中和し消臭されると推定される。ところが、繊維構造物がアルカリ処理のような強アルカリ条件下に置かれると、アルカリ金属などとのイオン交換により前記層間距離0.9nmを超える距離に広がってしまい、アンモニア以外の物質も取り込まれ、活性官能基が減少し、消臭機能が失活してしまうことが分かった。そこで消臭機能を復活させるため様々な検討をしたところ、アルカリ処理した後に有機酸処理すると前記無機層状消臭剤の層間距離を元の状態に戻せることがわかり、消臭機能も復活することが分かった。」との記載によれば、α-リン酸ジルコニウムの層間距離が0.9nmを超えると消臭機能が失活するが、層間距離が元に戻れば消臭機能が復活するものであるから、層間距離が特定の範囲であれば本件課題を解決できることを理解でき、結晶子サイズは本件課題の解決に寄与しないといえる。 そうすると、比較例1において結晶子サイズが54~55nmでも消臭性能が高く、また、本件発明の「結晶子サイズ」が実施例の結晶子サイズに比較して範囲が広いとしても、本件発明が本件課題を解決することを理解することができる。 よって、主張2を採用することはできない。 ウ 主張3について 請求項8の記載は、請求項1の記載を引用するものであり、本件発明8は、請求項1に記載された「家庭洗濯0回と10回後のアンモニアガス減少率がいずれも70%以上である消臭性繊維構造物を製造する」構成を有するものであるから、主張3のように、「染色処理がアルカリ条件での処理である場合」に「家庭洗濯0回と10回後のアンモニアガス減少率がいずれも70%以上である」との要件を満たさなければ、その場合は、本件発明8に該当せず、本件発明8が本件課題を解決することと矛盾しない。 よって、主張3を採用することはできない。 (3)小括 以上のとおりであるから、申立理由5(サポート要件)は理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2026-700177

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