特許異議申立
2024-700120
凍結乾燥された飲料固化物
- 審判番号
- 2024-700120
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-066162
- 登録番号
- 7354178
- 請求日
- 2024年02月13日
- 審決日
- 2024年07月12日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ザ コカ・コーラ カンパニー
- 【権利者代理人】弁理士法人平和国際特許事務所
- 【異議申立人】金成 久美子
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 天野 宏樹
- 審判官 淺野 美奈
- 分類
- P1651.121-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第7354178号発明「凍結乾燥された飲料固化物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7354178号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7354178号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和3年4月8日の出願であって、令和5年9月22日にその特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、同年10月2日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、令和6年2月13日に特許異議申立人金成久美子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~9)がされ、同年3月1日付けで手続補正指令書(方式)が申立人に送付され、同年3月13日に手続補正書(方式)が提出されたものである。
第2 本件発明について
本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明9」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。
「[請求項1]
水又はお湯と混合して飲料を調製するための凍結乾燥された飲料固化物であって、
前記飲料固化物がデキストリンを含み、
前記デキストリンのデキストロース当量が6~30であり、
前記飲料固化物中の糖類の含有量が8.5質量%以下であり、
前記飲料固化物の体積が4~50cm3であり、
前記飲料固化物の密度が0.13g/cm3より大きく0.40g/cm3より小さい、前記飲料固化物(但し、飲料がコーヒーである飲料固化物を除く。)。
[請求項2]
前記飲料固化物が、所定の量の水又はお湯に対する一回用量分ごとに一体化されたものである、請求項1に記載の飲料固化物。
[請求項3]
前記飲料固化物中の前記デキストリンの含有量が0.5~40質量%である、請求項1又は2に記載の飲料固化物。
[請求項4]
前記飲料固化物が、耐湿性の包装材料により包装されたものである、請求項1~3のいずれかに記載の飲料固化物。
[請求項5]
前記飲料が、緑茶、紅茶、ウーロン茶、又は穀物茶である、請求項1~4のいずれかに記載の飲料固化物。
[請求項6]
前記穀物茶が麦茶である、請求項5に記載の飲料固化物。
[請求項7]
飲料固化物の製造方法であって、
飲料抽出液を準備し、
前記飲料抽出液中にデキストリンを混合し、
得られた混合液を凍結乾燥することを含み、
但し、製造方法全体を通して糖類を添加しない、前記製造方法であって、
前記デキストリンのデキストロース当量が6~30であり、
前記飲料固化物の体積が4~50cm3であり、
前記飲料固化物の密度が0.13g/cm3より大きく0.40g/cm3より小さく、
前記飲料固化物は、飲料がコーヒーである飲料固化物ではない、前記製造方法。
[請求項8]
前記飲料が、緑茶、紅茶、ウーロン茶、又は穀物茶である、請求項7に記載の飲料固化物の製造方法。
[請求項9]
前記穀物茶が麦茶である、請求項8に記載の飲料固化物の製造方法。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として下記2.に示す甲第1号証~甲第4号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲4」のようにいう。)を提出し、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。
1.特許異議申立理由(甲1に基づく進歩性欠如)
本件発明1~9は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2.証拠方法
甲1:特開昭59-21346号公報
甲2:京都新聞webページ,"キューブの「コロコロ抹茶」手軽に飲めて、そのまま食べられます",[online],2021年7月12日,株式会社京都新聞社,[2024年3月8日印刷],インターネット<URL:https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/595472>
甲3:特開昭61-152239号公報
甲4:特開平6-121638号公報
証拠の表記は概ね申立人が提出した証拠説明書の記載に従った。
第4 当審の判断
当審は、申立人が申し立てた特許異議申立理由によっては、本件発明1~9についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおりである。
1.甲1に記載された事項
甲1には以下の事項が記載されている。
(1-1)「2.特許請求の範囲
1. 紅茶を水浸漬し、遠心分離して得た抽出液を減圧濃縮後、デキストリンを添加し、次いで凍結乾燥することを特徴とする即席紅茶の製造方法。
・・・
6. 減圧濃縮した濃縮液にDE7~20のデキストリンを添加する特許請求の範囲第1項記載の方法。」(第1頁特許請求の範囲)
(1-2)「従来、紅茶に熱湯を注いで抽出し、該抽出液を噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥等によつて乾燥し、粉末化して即席紅茶を得ていた。しかし、該即席紅茶に湯を注いで復元しても香味の乏しい紅茶飲料にしかならなかつた。また、上記の如くして得た即席紅茶は見掛比重が非常に大きいため、スプーン一杯分を用いて紅茶飲料に復元すると、紅茶茶椀一杯分に相当した香味にはならず、スプーン半杯が凡そ紅茶茶椀一杯分に相当した香味になる。そのため、一般家庭においては正確に計量し難い。」(第1頁右下欄8~18行)
(1-3)「本発明者等は上記の如き諸欠陥を克服すべく鋭意研究の結果、紅茶を水浸漬し、遠心分離して得た抽出液を減圧濃縮後、デキストリンを添加し、次いで凍結乾燥してから3.5~30メツシユ(日本工業規格)に粗砕することにより得られる最終製品には保形性に優れ、かつスプーン一杯分を用いて湯または水で復元したときに香味が丁度紅茶茶椀一杯分に相当することを見出した。また、該復元した紅茶飲料は通常のテイーバツクより調製した紅茶飲料と比較し、色調、香味とも何ら遜色ないことが判つた。」(第2頁右上欄1~11行)
(1-4)「実施例 1
スリランカ産紅茶500gとケニア産紅茶500gを混合し、32℃の水5kgを加え、その温度に保ちながら12時間浸漬した。次に、直径610mmのバスケツト型遠心脱水機を1600r.p.m.で30分間遠心脱水して茶葉と分別し、4.5kgの抽出液を得た。この抽出液のBxを手持屈折計で測定したところ6であつた。上記で得た抽出液がBx12になるまで100トル、かつ50℃で減圧濃縮し、濃縮液2.25kgを得た。この濃縮液に日本資糧工業(株)のデキストリンであるDE8規格のN.S.D.238(商品名)を0.61kg添加し、Bx30の溶液を得た。該溶液を浅いトレーに5cm厚に流し込み、-40℃で予備凍結した。これを日本真空技術(株)製DF-05特型凍結乾燥機に搬入し、0.6~0.3トルで凍結乾燥を行ない、0.3トルを維持した状態で仕上げた。凍結乾燥後、乳鉢で粗砕し3.5~30メツシユ(日本工業規格の篩)の範囲内に篩い分けた。
得られた製品の見掛比重は0.21g/c.c.であり、これはスプーン一杯(2.3g)で紅茶茶椀一杯分(170c.c.)の紅茶飲料を調製することが出来、香味も下述する如く満足すべき評価であつた。」(第4頁右上欄5行~左下欄7行)
2.甲1に記載された発明
甲1の特許請求の範囲の第1項及び第6項(摘記1-1)には、「紅茶を水浸漬し、遠心分離して得た抽出液を減圧濃縮後、デキストリンを添加し、次いで凍結乾燥することを特徴とする即席紅茶の製造方法。」及び「減圧濃縮した濃縮液にDE7~20のデキストリンを添加する特許請求の範囲第1項記載の方法。」が記載されており、第4頁右上欄5行~左下欄7行(摘記1-4)には、実施例1として、「スリランカ産紅茶500gとケニア産紅茶500gを混合し、32℃の水5kgを加え、その温度に保ちながら12時間浸漬した。次に、直径610mmのバスケツト型遠心脱水機を1600r.p.m.で30分間遠心脱水して茶葉と分別し、4.5kgの抽出液を得た。この抽出液のBxを手持屈折計で測定したところ6であつた。上記で得た抽出液がBx12になるまで100トル、かつ50℃で減圧濃縮し、濃縮液2.25kgを得た。この濃縮液に日本資糧工業(株)のデキストリンであるDE8規格のN.S.D.238(商品名)を0.61kg添加し、Bx30の溶液を得た。該溶液を浅いトレーに5cm厚に流し込み、-40℃で予備凍結した。これを日本真空技術(株)製DF-05特型凍結乾燥機に搬入し、0.6~0.3トルで凍結乾燥を行ない、0.3トルを維持した状態で仕上げた。凍結乾燥後、乳鉢で粗砕し3.5~30メツシユ(日本工業規格の篩)の範囲内に篩い分けた。」こと、及び「得られた製品の見掛比重は0.21g/c.c.であり、スプーン一杯(2.3g)で紅茶茶椀一杯分(170c.c.)の紅茶飲料を調製することが出来」るものであったことが記載されている。
そうすると、甲1には以下の発明が記載されている。
「スリランカ産紅茶500gとケニア産紅茶500gを混合し、32℃の水5kgを加え、その温度に保ちながら12時間浸漬する工程、遠心脱水して茶葉と分別し、4.5kgの抽出液を得る工程、抽出液がBx12になるまで100トル、かつ50℃で減圧濃縮し、濃縮液2.25kgを得る工程、この濃縮液に日本資糧工業(株)のデキストリンであるDE8規格のN.S.D.238(商品名)を0.61kg添加し、Bx30の溶液を得る工程、該溶液を-40℃で予備凍結した後、凍結乾燥機に搬入し、0.6~0.3トルで凍結乾燥を行ない、0.3トルを維持した状態で仕上げる工程、及び凍結乾燥後、乳鉢で粗砕し3.5~30メツシユ(日本工業規格の篩)の範囲内に篩い分ける工程を有する製造方法によって製造された、見掛比重が0.21g/c.c.であり、スプーン一杯(2.3g)で紅茶茶椀一杯分(170c.c.)の紅茶飲料を調製することができる即席紅茶。」(以下、「甲1発明」という。)
「スリランカ産紅茶500gとケニア産紅茶500gを混合し、32℃の水5kgを加え、その温度に保ちながら12時間浸漬する工程、遠心脱水して茶葉と分別し、4.5kgの抽出液を得る工程、抽出液がBx12になるまで100トル、かつ50℃で減圧濃縮し、濃縮液2.25kgを得る工程、この濃縮液に日本資糧工業(株)のデキストリンであるDE8規格のN.S.D.238(商品名)を0.61kg添加し、Bx30の溶液を得る工程、該溶液を-40℃で予備凍結した後、凍結乾燥機に搬入し、0.6~0.3トルで凍結乾燥を行ない、0.3トルを維持した状態で仕上げる工程、及び凍結乾燥後、乳鉢で粗砕し3.5~30メツシユ(日本工業規格の篩)の範囲内に篩い分ける工程を有する、見掛比重が0.21g/c.c.であり、スプーン一杯(2.3g)で紅茶茶椀一杯分(170c.c.)の紅茶飲料を調製することができる即席紅茶の製造方法。」(以下、「甲1製法発明」という。)
3.本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「スプーン一杯(2.3g)で紅茶茶椀一杯分(170c.c.)の紅茶飲料を調製することができる」及び「該溶液を-40℃で予備凍結した後、凍結乾燥機に搬入し、0.6~0.3トルで凍結乾燥を行ない、0.3トルを維持した状態で仕上げる工程」は、それぞれ本件発明1における「水又はお湯と混合して飲料を調製するための」及び「凍結乾燥された」に相当し、甲1発明における「凍結乾燥後、乳鉢で粗砕し3.5~30メツシユ(日本工業規格の篩)の範囲内に篩い分ける工程を有する製造方法によって製造された」ものである「即席紅茶」は、本件発明1における「飲料固化物」と、「飲料の固体」という限りにおいて一致し、甲1発明における「日本資糧工業(株)のデキストリンであるDE8規格のN.S.D.238(商品名)」は、本件発明1における「デキストリン」に相当し、かつ、「前記デキストリンのデキストロース当量が6~30であり」を満たすものである。また、甲1発明における飲料はコーヒーではないから、甲1発明は本件発明1における「(但し、飲料がコーヒーである飲料固化物を除く。)」との発明特定事項を満たすものである。
そうすると、両者は、
「水又はお湯と混合して飲料を調製するための凍結乾燥された飲料の固体であって、
前記飲料の固体がデキストリンを含み、
前記デキストリンのデキストロース当量が6~30である、
前記飲料の固体(但し、飲料がコーヒーである飲料固化物を除く。)。」
の点で一致し、
相違点1:本件発明1は「前記飲料固化物中の糖類の含有量が8.5質量%以下であり、」と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点
相違点2:本件発明1は「前記飲料固化物の体積が4~50cm3であり、」と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点
相違点3:本件発明1は「前記飲料固化物の密度が0.13g/cm3より大きく0.40g/cm3より小さい、」と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。
(2)相違点2及び3について
事案に鑑み、相違点2及び3について検討する。
甲1の第1頁右下欄(摘記1-2)には、従来の即席紅茶には「スプーン一杯分を用いて紅茶飲料に復元すると、紅茶茶椀一杯分に相当した香味にはならず、スプーン半杯が凡そ紅茶茶椀一杯分に相当した香味になる。そのため、一般家庭においては正確に計量し難い」という課題があったことが記載され、甲1の第2頁右上欄(摘記1-3)には、甲1に記載された発明が「上記の如き諸欠陥を克服すべく鋭意研究の結果、・・・スプーン一杯分を用いて湯または水で復元したときに香味が丁度紅茶茶椀一杯分に相当する」ものとして完成されたことが記載されている。そうすると、「スプーン一杯(2.3g)で紅茶茶椀一杯分(170c.c.)の紅茶飲料を調製することができる」ように「乳鉢で粗砕し3.5~30メツシユ(日本工業規格の篩)の範囲内に篩い分け」がされたものである甲1発明において、即席紅茶をスプーンでの計量を前提としない「固化物」とする動機は生じないし、さらに紅茶茶碗一杯分という分量を前提としない「体積が4~50cm3」及び「密度が0.13g/cm3より大きく0.40g/cm3より小さい」固化物とする動機も生じない。
また、他の証拠にも、甲1発明において、「乳鉢で粗砕し3.5~30メツシユ(日本工業規格の篩)の範囲内に篩い分け」された即席紅茶を「固化物」にした上で、「体積が4~50cm3」及び「密度が0.13g/cm3より大きく0.40g/cm3より小さい」ものとする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点2及び3に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件発明1の奏する、「本発明の飲料固化物は、成型性にすぐれ、凍結乾燥により膨張や破裂することなく成型することができる。また、本発明の飲料固化物は、保形性と耐湿性にすぐれるため、保存適性にすぐれている。さらに、本発明の飲料固化物は、即溶性にすぐれるため、必要なときに所定量の水又はお湯と混合して分散又は溶解させることにより、無糖の飲料を簡便に調製することができる。特に外出先でマイボトルにおいて飲料を調製するのに適している。」(本件特許の発明の詳細な説明の[0013])という効果は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
(3)申立人の主張について
ア 相違点2について
申立人は申立書第14頁において、甲1の第4頁右上欄下から4行~左下欄1行を引用した上で、「甲1には、即席紅茶を製造するにあたり、濃縮液をトレーに流し入れて1~5cm厚さにして凍結乾燥品を製造することが記載されている。甲1には、この凍結乾燥品の体積に関する具体的な数値は記載されていないが、実施例1では、抽出液をトレーに5cm厚に流し込み凍結乾燥し、凍結乾燥品を製造することが記載され、この凍結乾燥品は所定の体積を有するものである。これからすると、即席紅茶を最終的に粗砕せず、体積を遁宜範囲にすることは当業者が容易に想到できることである。よって、構成要件1E「前記飲料固化物の体積が4~50cm3であり」は、甲1に記載事項から当業者が容易に想到できるものである。」と主張している。
しかし、上記(2)に記載したとおり、甲1発明は「スプーン一杯(2.3g)で紅茶茶椀一杯分(170c.c.)の紅茶飲料を調製することができる」ように、凍結乾燥品を「乳鉢で粗砕し3.5~30メツシユ(日本工業規格の篩)の範囲内に篩い分け」したものであるから、「スプーン一杯(2.3g)」という計量及び「紅茶茶椀一杯分(170c.c.)」という分量の前提を離れて、「トレーに5cm厚に流し込み凍結乾燥」した凍結乾燥品を粗砕しないものに変更することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。
イ 相違点3について
また、申立人は申立書第15頁において、「甲1には、粗砕された即席紅茶の見掛比重が記載されており、即席紅茶にデキストリンを添加することにより見掛比重を調製できることから、即席紅茶において比重(密度)を適宜調整することは当業者が当然に行うことであり、密度0.13g/cm3より大きく0.40g/cm3より小さくすることは当業者が容易に想到できることである。甲2には、フリーズドライの抹茶が密度約0.3g/cm3であることが示されていることからも、飲料固化物の密度を上記範囲にすることは当業者が通常行うことである。また、・・・本件特許明細書の表5(段落[0059])には、試験21及び試験22として、密度が0.36g/cm3又は0.38g/cm3の場合でも保形性の評価が「×」になることが示されており、密度の数値範囲に臨界的意義があるともいえない。よって、構成要件1F「前記飲料固化物の密度が0.13g/cm3より大きく0.40g/cm3より小さい」は、甲1に記載事項から当業者が容易に想到できるものである。」と主張している。
しかし、上記(2)に記載したとおり、甲1発明は「スプーン一杯(2.3g)で紅茶茶椀一杯分(170c.c.)の紅茶飲料を調製することができる」ように、凍結乾燥品を見掛比重が0.21g/c.c.となるように粗砕及び篩い分けしたものであるから、「スプーン一杯(2.3g)」という計量及び「紅茶茶椀一杯分(170c.c.)」という分量の前提を離れて、「トレーに5cm厚に流し込み凍結乾燥」した凍結乾燥品を粗砕しないものに変更した上で、その粗砕しないものの見掛け比重を「密度0.13g/cm3より大きく0.40g/cm3より小さく」調整することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
また、甲2に記載されたフリーズドライの抹茶は、「スプーン一杯(2.3g)で紅茶茶椀一杯分(170c.c.)の紅茶飲料を調製する」ことを前提としないものであるから、甲2に記載された事項を考慮しても、相違点2及び3に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
また、本件特許明細書の表5に記載された試験21及び試験22は、デキストリン含有率と保形性との関係を調べた例であるから、密度の数値範囲に臨界的意義がないことを示すものではない。
よって、申立人の主張はいずれも採用できない。
(4)本件発明1についてのまとめ
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4.本件発明2~6について
本件発明2~6は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に判断される。
5.本件発明7について
(1)本件発明7と甲1製法発明との対比
本件発明7と甲1製法発明とを対比すると、甲1製法発明における「スリランカ産紅茶500gとケニア産紅茶500gを混合し、32℃の水5kgを加え、その温度に保ちながら12時間浸漬する工程、遠心脱水して茶葉と分別し、4.5kgの抽出液を得る工程、抽出液がBx12になるまで100トル、かつ50℃で減圧濃縮し、濃縮液2.25kgを得る工程、」及び「該溶液を-40℃で予備凍結した後、凍結乾燥機に搬入し、0.6~0.3トルで凍結乾燥を行ない、0.3トルを維持した状態で仕上げる工程、」は、それぞれ本件発明7における「飲料抽出液を準備し、」及び「得られた混合液を凍結乾燥すること」に相当し、甲1製法発明における、「この濃縮液に日本資糧工業(株)のデキストリンであるDE8規格のN.S.D.238(商品名)を0.61kg添加し、Bx30の溶液を得る工程、」は、本件発明7における「前記飲料抽出液中にデキストリンを混合し、」に相当し、かつ、「前記デキストリンのデキストロース当量が6~30であり」を満たしている。また、甲1製法発明における「凍結乾燥後、乳鉢で粗砕し3.5~30メツシユ(日本工業規格の篩)の範囲内に篩い分ける工程」を有する「即席紅茶の製造方法」は、本件発明7における「飲料固化物の製造方法」と、「飲料の固体の製造方法」という限りにおいて一致する。さらに、甲1製法発明には糖類を添加する工程は含まれておらず、さらにまた、甲1製法発明における飲料はコーヒーではないから、甲1製法発明は本件発明7における「但し、製造方法全体を通して糖類を添加しない、」及び「前記飲料固化物は、飲料がコーヒーである飲料固化物ではない、」との発明特定事項を満たすものである。
そうすると、両者は、
「飲料の固体の製造方法であって、
飲料抽出液を準備し、
前記飲料抽出液中にデキストリンを混合し、
得られた混合液を凍結乾燥することを含み、
但し、製造方法全体を通して糖類を添加しない、前記製造方法であって、
前記デキストリンのデキストロース当量が6~30であり、
前記飲料固化物は、飲料がコーヒーである飲料固化物ではない、前記製造方法。」
の点で一致し、
相違点4:本件発明7は「前記飲料固化物の体積が4~50cm3であり、」と特定するのに対し、甲1製法発明はそのように特定されていない点
相違点5:本件発明7は「前記飲料固化物の密度が0.13g/cm3より大きく0.40g/cm3より小さく、」と特定するのに対し、甲1製法発明はそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、相違点4及び5について検討する。
(2)相違点4及び5について
相違点4及び5は、それぞれ上記3.(1)に記載した相違点2及び3と同じ内容の相違点であるから、上記3.(2)と同様に判断される。
よって、甲1製法発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点4及び5に係る本件発明7の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(3)本件発明7についてのまとめ
したがって、本件発明7は甲1製法発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6.本件発明8及び9について
本件発明8及び9は、いずれも請求項7を直接又は間接的に引用し、本件発明7の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明7と同様に判断される。
7.特許異議申立理由(甲1に基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1~9は、いずれも甲1に記載された発明及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
したがって、本件発明1~9についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しない。
よって、特許異議申立理由(甲1に基づく進歩性欠如)により本件発明1~9についての特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、本件発明1~9についての特許は、特許異議申立理由によって取り消すことはできない。また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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