特許異議申立
2024-700107
キシリレンジイソシアネート組成物、重合性組成物、樹脂、成形体、光学素子およびレンズ
- 審判番号
- 2024-700107
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-511683
- 登録番号
- 7324385
- 請求日
- 2024年02月07日
- 審決日
- 2024年10月24日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三井化学株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人いくみ特許事務所
- 【異議申立人】山▲崎▼ 浩一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 細井 龍史
- 審判官 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 松本 直子
- 分類
- P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7324385号発明「キシリレンジイソシアネート組成物、重合性組成物、樹脂、成形体、光学素子およびレンズ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7324385号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
特許第7324385号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7324385号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、令和4年4月7日を国際出願日(優先権主張 2021(令和3年)9月9日)とする特願2023-511683号であって、令和5年8月1日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年同月9日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許に対し、令和6年2月7日に特許異議申立人 山崎 浩一郎(当審注:「崎」は「たつさき」である。以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし8)がされ、同年同月29日付けで特許異議申立書に対する手続補正指令書が通知され、同年3月22日に特許異議申立書に対する手続補正書が提出されたものである。
特許異議の申立てにおける手続の経緯は、次のとおりである。
令和6年 6月13日付け:取消理由通知書
同年 7月22日 :意見書及び訂正請求書(特許権者)
同年 8月 5日付け:通知書(申立人宛て)
同年 9月 6日 :意見書(申立人)
第2 訂正の適否
1 請求の趣旨
令和6年7月22日に提出された訂正請求書による訂正の請求における請求の趣旨は、「特許第7324385号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」というものである。
2 令和6年7月22日に提出された訂正請求書の訂正の内容
令和6年7月22日に提出された訂正請求書に記載された訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「キシリレンジイソシアネート組成物であって、キシリレンジイソシアネートと、4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートとを含有し、前記キシリレンジイソシアネート組成物中の4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートの割合は、質量基準で、1ppm以上、15000ppm以下である、光学用キシリレンジイソシアネート組成物。」
とあるのを、
「キシリレンジイソシアネート組成物であって、キシリレンジイソシアネートと、4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートとを含有し、前記キシリレンジイソシアネート組成物中の4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートの割合は、質量基準で、1ppm以上、500ppm未満である、光学用キシリレンジイソシアネート組成物。」に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし8についても同様に訂正する。
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし8について、請求項2ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1ないし8に対応する訂正後の請求項1ないし8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による請求項1の訂正は、訂正前の請求項1に記載された「キシリレンジイソシアネート組成物中の4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートの割合」の上限を「500ppm未満」とし、その範囲を狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正は、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の段落【0029】の「XDI組成物中のPTSIの割合は、質量基準で、・・・より好ましくは、500ppm以下、」との記載を根拠とし、端点の「500ppm」を除くものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし8についても同様である。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいい、総称して「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
キシリレンジイソシアネート組成物であって、
キシリレンジイソシアネートと、
4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートと
を含有し、
前記キシリレンジイソシアネート組成物中の4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートの割合は、質量基準で、1ppm以上、500ppm未満である、光学用キシリレンジイソシアネート組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の光学用キシリレンジイソシアネート組成物と、
活性水素基含有成分と
を含有する、重合性組成物。
【請求項3】
前記活性水素基含有成分は、ポリチオールを含有する、請求項2に記載の重合性組成物。
【請求項4】
前記ポリチオールは、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、および、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の重合性組成物。
【請求項5】
請求項2に記載の重合性組成物の硬化物である、樹脂。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂からなる、成形体。
【請求項7】
請求項6に記載の成形体である、光学素子。
【請求項8】
請求項7に記載の光学素子である、レンズ。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要及び証拠方法
特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
1 証拠方法
・甲第1号証:中国特許出願公開第108003072号明細書及びその和訳文
・甲第2号証:特開2018-177811号公報
以下、「甲第1号証」及び「甲第2号証」を、「甲1」及び「甲2」という。
2 申立理由1(甲1を主引例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第5 取消理由の概要
本件特許に対して、当審が令和6年6月13日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。
取消理由1(甲1を主引例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第6 当審の判断
当審で通知した取消理由通知の取消理由及び申立書に記載した申立理由によっては、本件発明1ないし8に係る特許は取り消すことはできない。
上記申立理由1及び取消理由1は、いずれも甲1を主引例とする新規性・進歩性についてのものであるから、まとめて検討する。
1 甲1に記載された発明等
(1)甲1に記載された事項
甲1には、「イソシアネート安定剤及びその調製方法」(当審注:発明の名称について当審で訳した。)に関して、次の事項が記載されている。なお、甲1の記載事項は中国語であるが、ここでは当審の訳文で示す。
「1.一般式(I)で示される構造を有することを特徴とする、イソシアネート安定剤:
[図:0001418238000001.jpg]
」
ここで、R3はアシル基であり、構造は以下から選択される。
[図:0001418238000002.jpg]
R1、R2は、それぞれ異なって、C1-C12アルキル、C3-C12シクロアルキル、置換C3-C12シクロアルキル、フェニル、酸素、硫黄および窒素原子から選択される少なくとも1つの5員または6員の複素環式芳香族基を含む置換フェニルから選択され、R1は、好ましくは、フェニル基、または酸素、硫黄および窒素ヘテロ原子から選択される5員または6員の複素環式芳香族基を含む5員または6員の複素環式芳香族基であり、R2は、好ましくは、C1-C6アルキル、C5-C6シクロアルキル基である;
置換C3-C12シクロアルキル上または置換フェニル上の前記置換基は、それぞれ、C1-C12アルキル、C1-C12アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、エステル基、シアノ基の少なくとも1つであり、好ましくは、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシの少なくとも1つである。
2.イソシアネートの質量に対する前記安定剤の添加量が、10~5000ppm、好ましくは100~2000ppmであることを特徴とする、請求項1に記載のイソシアネート安定剤。
・・・」(特許請求の範囲)
「[0008]
本発明の目的は、イソシアネートの貯蔵中や下流での使用中に水分や酸素に曝されることにより発生する黄変や濁りを抑制するイソシアネート安定剤を提供することにある。本発明の安定剤が添加されたイソシアネート化合物は、特にプラスチックレンズ等の光学用ポリウレタン樹脂の原料として使用することができる。」
「[0011]
本発明は、イソシアネート安定剤を提供し、前記安定剤の構造は、アジドイミド構造を含み、前記アシル基は、カルボニル基、スルフィニル基又はスルホニル基を含み、一般式(I)で示される構造を有する:」
「[0024]
本発明において、前記イソシアネートは、最も好ましくはキシリレンジイソシアネート(XDI)(当審注:申立人は、甲1の和訳文において、「
[図:0001418238000003.jpg]
」を「イソフタルイミドジイソシアネート(XDI)」と訳しているが、「キシリレンジイソシアネート(XDI)」のことを指すものと認められる。)である。」
「[0045]
3.本発明の安定剤を添加したイソシアネートは、光照射による黄変に対する耐性が向上するため、プラスチックレンズ用光学用ポリウレタン樹脂等の原料として使用できる。」
「[0049]
本発明は、GB/T3143-1982の方法に従って、イソシアネート色数を決定する。
[0050]
本発明は、GB/13200-1991の方法に従って、イソシアネートの濁度を決定する。」
「[0061]
実施例4~10及び比較例1~5
・・・
[0064]
XDI(純度99.8%、塩素加水分解物50ppm)を表1に示すように安定剤の含有量を変えて添加し、窒素で保護した500mLガラス瓶に入れ、20℃で保存した。1週間おきに色数と濁度を測定し、結果を表1に示し、色数が20hazen以上、または濁度が20NTU以上になった時点で試験を中止した。
[0065]
表1 XDI安定性データ
[0066]
[図:0001418238000004.jpg]
[0067]
・・・注目すべきは、フェノールの安定性が高く、劣化する前にXDIの貯蔵時間が12週間であり、p-トルエンスルホニルイソシアネートもより良い安定化効果を有し、XDIの貯蔵時間は20週間である。」
「[0068]
実施例11及び比較例6~8
[0069]
表2に従ってXDIに安定剤を添加し、貯蔵安定性実験を行ったが、上記の実施例とは異なり、1週間ごとにキャップを開け、XDIを5分間空気にさらし、その後窒素で保護して安定性を試験した。結果を表2に示す。
[0070]
表2 XDI安定性データ
[0071]
[図:0001418238000005.jpg]
[0072]
表2からわかるように、本発明の安定剤は空気暴露下で良好な結果を示し、フェノール及びp-トルエンスルホニルイソシアネートがはるかに短い期間しか保存できなかったのに対し、XDIは空気暴露下で24週間以上保存することができた。」
(2)甲1に記載された発明
甲1には、比較例5に着目すると、以下の発明が記載されている。
「p-トルエンスルホニルイソシアネートの添加量が500ppmであるキシリレンジイソシアネートであって、色数が20hazen以上又は濁度が20NTU以上になるまでの貯蔵時間が20週間である、キシリレンジイソシアネート。」(以下、「甲1発明1」という。)
さらに、甲1には、比較例8に着目すると、以下の発明が記載されている。
「p-トルエンスルホニルイソシアネートの添加量が500ppmであるキシリレンジイソシアネートであって、色数が20hazen以上又は濁度が20NTU以上になるまでの貯蔵時間が10週間である、キシリレンジイソシアネート。」(以下、「甲1発明2」という。)
2 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明1との対比・判断
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「p-トルエンスルホニルイソシアネート」は、本件明細書の【0028】の記載から「4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネート」であることは明らかであるから、本件発明1の「4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネート」に相当する。
また、甲1発明1の「キシリレンジイソシアネート」は、本件発明1の「キシリレンジイソシアネート」に相当し、さらに、「p-トルエンスルホニルイソシアネートの添加量が500ppm」であり、キシリレンジイソシアネートを含む組成物であることは明らかであるから、本件発明1の「キシリレンジイソシアネート組成物」にも相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
「キシリレンジイソシアネート組成物であって、
キシリレンジイソシアネートと、
4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートと
を含有する、キシリレンジイソシアネート組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
・相違点1
キシリレンジイソシアネート組成物中の4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートの質量基準での割合に関して、本件発明1は「1ppm以上、500ppm未満」であるのに対し、甲1発明1は「500ppm」である点
・相違点2
本件発明1は「光学用」であるのに対し、甲1発明1はそのような特定がない点
上記相違点1について検討すると、両者は数値が異なることから相違点1は実質的な相違点である。
また、甲1は、「イソシアネートの貯蔵中や下流での使用中に水分や酸素に曝されることにより発生する黄変や濁りを抑制するイソシアネート安定剤を提供すること」([0008])を発明が解決しようとする課題とするものであり、上記課題を解決するために、一般式(I)で示される構造(当審注:構造式は省略。以下同様。)を有するイソシアネート安定剤を提供するものである(特許請求の範囲、[0011])。
一方、甲1発明1である比較例5は、一般式(I)で示される構造を有するイソシアネート安定剤の代わりにp-トルエンスルホニルイソシアネートを用いたものであるが、甲1には、比較例5が一般式(I)で示される構造を有するイソシアネート安定剤を500ppm用いた実施例6,9に比べて、色数が20hazen以上又は濁度が20NTU以上になるまでの貯蔵時間が短い、すなわち黄変や濁りを抑制する性能が劣ることが記載されている([0065]及び[0066])。
そうすると、甲1には、甲1発明1が上記課題を解決しないことが、具体的な実験データの裏付けをもって記載されていることから、甲1発明1において、甲1の記載からキシリレンジイソシアネート組成物中の4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートの質量基準での割合を「500ppm」から「1ppm以上、500ppm未満」に調整する動機付けを見出すことはできない。
さらに、甲2の記載からみても、キシリレンジイソシアネート組成物中の4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートの質量基準での割合を調整することが動機付けられているともいえない。
したがって、甲1発明1において、相違点1に係る特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件明細書【0144】の【表1】に記載されている実施例1の結果から見て、本件発明1は、相違点1に係る特定事項を有することにより、「キシリレンジイソシアネート組成物から製造される樹脂は、色相および透明性に優れる」(【0017】)という効果を奏する。
なお、相違点1に関して、申立人は、令和6年9月6日提出の意見書において、「甲1号証の実施例、比較例には上記特定化合物又はPTSI等の成分含有の有無によって XDI樹脂の色調、濁度等の光学的特性が異なる様々な実施例及び比較例が開示されているため、これにより、当業者であれば、甲1号証の比較例5、8に開示されたXDI樹脂内PTSIの含量を調節して光学的特性を調節できる動機が開示されているのです。」(4ページ6~10行及び5ページ5~9行)と主張している。
しかしながら、甲1には、一般式(I)で示される構造を有するイソシアネート安定剤の添加量が「10~5000ppm、好ましくは100~2000ppmであること」(特許請求の範囲)が記載され、実施例4及び5には一般式(I)で示される構造を有するイソシアネート安定剤を1ppm及び10ppm添加した態様([0066])が記載されているが、いずれも一般式(I)で示される構造を有するイソシアネート安定剤の添加量についての記載にとどまるものであり、p-トルエンスルホニルイソシアネートの添加量についての記載ではない。
そうすると、甲1発明1において、一般式(I)で示される構造を有するイソシアネート安定剤の添加量に関する甲1の上記記載が、一般式(I)で示される構造を有するイソシアネート安定剤よりも黄変や濁りを抑制する性能が劣るp-トルエンスルホニルイソシアネートの添加量を調整する動機付けになるとはいえないことから、申立人の当該主張は採用しない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明1ではないし、甲1発明1並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)本件発明1と甲1発明2との対比・判断
本件発明1と甲1発明2とを対比すると、上記(1)と同様の相当関係が成り立つ。
そうすると、両者は上記(1)の相違点1及び相違点2の点で相違し、当該相違点1については上記(1)と同様に判断される。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明2ではないし、甲1発明2並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3 本件発明2ないし8について
本件発明2ないし4は重合性組成物に関するものであり、本件発明5は樹脂に関するものであり、本件発明6は成形体に関するものであり、本件発明7は光学素子に関するものであり、本件発明8はレンズに関するものであるが、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記2(1)及び(2)で検討したとおり、本件発明1は、甲1発明1又は甲1発明2並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の発明特定事項を全て含む本件発明2ないし8は、甲1発明1又は甲1発明2並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 申立理由1及び取消理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1及び取消理由1はその理由がない。
第7 結語
上記第6のとおり、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700107