特許異議申立
2024-700101
真空包装機
- 審判番号
- 2024-700101
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-227846
- 登録番号
- 7321918
- 請求日
- 2024年02月07日
- 審決日
- 2024年09月25日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ホシザキ株式会社
- 【権利者代理人】永井 裕輔
- 【権利者代理人】澤田 高志
- 【権利者代理人】木村 群司
- 【異議申立人】河原 健太郎
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 田口 傑
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.121-Y (B65B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7321918号発明「真空包装機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7321918号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第7321918号(以下「本件特許」という。)の請求項1、2に係る特許についての出願は、令和元年12月18日に出願され、令和5年7月28日にその特許権の設定登録(特許掲載公報令和5年8月7日発行)がされ、その後、その特許について、令和6年2月7日に特許異議申立人河原健太郎(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
2 本件特許発明
本件特許の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
チャンバベースの上側をチャンバカバーにより開閉自在に塞ぐことで内部に包装袋を収容する密閉空間が形成されるチャンバと、
前記チャンバベースに上下動可能に設けた下側ブロック、前記チャンバカバーに設けた上側ブロック、及び、前記下側ブロックを昇降させる昇降機構を有し、前記昇降機構により前記下側ブロックを前記上側ブロックに押圧することによって前記包装袋の開口周縁部を挟持した状態で、前記包装袋の開口周縁部を封止して前記包装袋を密封する封止装置と、
前記チャンバ内の密閉空間を脱気して負圧化させる真空ポンプと、
前記チャンバ内の圧力を検出する真空センサと、
前記真空ポンプを作動させることによって前記チャンバカバーを前記チャンバベースに負圧吸引させた状態で前記チャンバ内を負圧化させ、前記チャンバ内が所定の設定圧力以下となる、または、前記チャンバ内の負圧化を開始後に所定の設定時間が経過すると、前記封止装置により前記包装袋の開口周縁部を封止するように制御して前記包装袋を真空包装するための包装プログラムを有した制御装置とを備えた真空包装機であって、
前記包装プログラムは、前記真空ポンプを作動開始後に、前記真空センサにより検出される検出圧力が、前記下側ブロックを前記上側ブロックに押圧した状態でも前記チャンバカバーが前記チャンバベースに負圧吸引されて、前記チャンバカバーが開放されずに前記包装袋の開口周縁部を前記封止装置により封止可能な圧力として設定された封止可能圧力以下となるのを判定する封止可能圧力判定手段と、
前記封止可能圧力判定手段により前記封止可能圧力以下となったと判定されると、前記チャンバ内が所定の設定圧力以下となる前、または、前記設定時間の経過前であっても、前記封止装置により前記包装袋の開口周縁部を封止不可な状態から封止可能な状態に遷移させる状態遷移手段とを含むことを特徴とする真空包装機。
【請求項2】
請求項1に記載の真空包装機において、
前記封止装置に前記包装袋の開口周縁部を封止させるための操作信号を出力する操作スイッチを有する操作パネルを備え、
前記制御装置は、前記状態遷移手段によって前記包装袋の開口周縁部を封止可能な状態に遷移させたときに、前記操作スイッチが操作可能な状態であることを前記操作パネルに表示するように制御したことを特徴とする真空包装機。」
3 申立理由の概要
申立人は、本件発明1は、甲第1号証に記載の発明、または甲第1号証に記載の発明と甲第2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない発明であり、本件発明2は、甲第1号証に記載の発明と甲第3号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない発明であり、請求項1、2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである旨主張する。
<証拠方法>
甲第1号証:特開平10-236427号公報
甲第2号証:特開2019-206383号公報
甲第3号証:特開2019-149026号公報
以下、甲第1号証を「甲1」といい、他も同様にいう。
4 当審の判断
(1)甲1の記載事項、甲1に記載された発明
ア 甲1の記載事項
甲1には、「熱接着性の袋状包装物の中に食品等の被包装物を入れ、脱気してヒートシールすることにより密封包装を行う真空包装装置」(【0001】)について、以下の事項が記載されている。
「真空包装装置5は、本体7と、その上面を開閉する開閉自在の蓋体9とを有」し、「真空ポンプ11」、「真空ゲージ18」が配設されている(【0018】)。
蓋体は、「閉成時に本体7上面との間に」「真空チャンバ21を画成」し、「蓋体9の上部内面には、密封接着用熱線受部39が下向きに突出して形成されている」(【0019】)。
「密封接着用熱線部材33はピストン35に取り付けられ」、この「熱線部材33は、蓋体9が閉じた際に、熱線受部39に対峙するように配置されており、」「熱線部材33の先端部には、シールヒータH1が添着されており、このシールヒータH1に通電されると発熱するようになっている」(【0021】)。
「ヒートシールすべき袋状包装物8を真空チャンバ21に入れて、蓋体9を閉鎖すると、」「真空ポンプ11が起動」し、「これと同時に、リレーX1が励磁されて、その常閉接点X12が開いて大気開放バルブ13が閉じると共に、常開接点X13が閉成して待機時に引き続き真空バルブ12の開成状態が保持され、真空引きが行われ、また、常閉接点X24を介して真空タイマTM1及び真空ランプLがオンとなる」(【0033】)。
「真空ポンプが作動すると、」「真空チャンバ21内の気体等が真空ポンプ11により吸引され」、「真空タイマTM1は、真空チャンバ21内が十分に脱気され、大気圧以下の所定圧力に減圧されるように真空引き時間が設定されて」おり、「真空チャンバ21内が負圧になると、蓋体9は、この負圧によって、伸長した弾性体27に打ち勝って閉じた状態に維持される」(【0034】)。
「真空チャンバ21内が所定圧力以下に減圧されるように設定された真空タイマTM1の設定時間(真空引き時間)がタイムアップすると、その常開タイマ接点TM11が閉成して、リレーX2及びX3が励磁され、リレーX2及びリレーX3の常開接点X23及び常開接点X31がオンすることにより、リレーX2及びX3はそれぞれ自己保持され、また、常閉接点X24、X32が開成して真空バルブ12がオフとなって閉じ、脱気工程を終了」し、「ピストン35がばね37の弾性力に抗して上方に移動すると共に、ピストン35と接続する熱線部材33も一緒に上方に移動」し、「熱線部材33の上に載っていた包装物8の開口部も、熱線部材33と一緒に上方に動かされ、熱線部材33と熱線受部39との間に挟み付けられ」、「リレーX2及びX3が励磁されるので、それぞれの常開接点X23及びX31が閉成され、この閉成によりシールタイマTM2の常閉タイマ接点TM21を介してリレーX4がオンとなり、その常開接点X41がオンとなって、熱線部材33に添着されたシールヒータH1が通電され」、「リレーX3の常開接点X31のオンによりシールタイマTM2自身もオンとなり作動」し、「シールタイマTM2がタイムアップするまでシールヒータH1の発熱が継続され」、「熱線部材33と熱線受部39とに挟み付けられた袋状包装物8の開口部は、ヒートシールされ」る(【0035】)。
「シールタイマTM2がタイムアップすると、」「シールヒータH1がオフとなり、ヒートシール工程が終了する」(【0036】)。「ピストン35がばね37の弾性力により下方に移動し、熱線部材33も一緒に下方に移動する」(【0041】)。
「真空タイマTM1のタイムアップ前に、ホールド・ジャンプスイッチS2を押圧し、この押圧を解除することにより、脱気工程(真空引き)を直ちに中断し、次のヒートシール工程に進めることができる」(【0043】)。
イ 甲1に記載された発明
上記記載事項をまとめると、甲1には、次の「甲1発明」が記載されているといえる。
「熱接着性の袋状包装物の中に食品等の被包装物を入れ、脱気してヒートシールすることにより密封包装を行う真空包装装置について、
真空包装装置には、本体と、その上面を開閉する開閉自在の蓋体とを有し、真空ポンプ、真空ゲージが配設されており、
蓋体は、閉成時に本体上面との間に真空チャンバを画成し、蓋体の上部内面には、熱線受部が下向きに突出して形成されており、
熱線部材はピストンに取り付けられ、この熱線部材は、蓋体が閉じた際に、前記熱線受部に対峙するように配置されており、熱線部材の先端部には、シールヒータが添着されており、このシールヒータに通電されると発熱するようになっており、
ヒートシールすべき袋状包装物を真空チャンバに入れて、蓋体を閉鎖すると、真空ポンプが起動し、真空引きが行われ、また、真空タイマ及び真空ランプがオンとなり、
真空ポンプが作動すると、真空チャンバ内の気体等が真空ポンプにより吸引され、真空タイマは、真空チャンバ内が十分に脱気され、大気圧以下の所定圧力に減圧されるように真空引き時間が設定されており、真空チャンバ内が負圧になると、蓋体は、この負圧によって、伸長した弾性体に打ち勝って閉じた状態に維持され、
真空チャンバ内が所定圧力以下に減圧されるように設定された真空タイマの設定時間(真空引き時間)がタイムアップすると、脱気工程を終了し、
ピストンがばねの弾性力に抗して上方に移動すると共に、ピストンと接続する熱線部材も一緒に上方に移動し、熱線部材の上に載っていた包装物の開口部も、熱線部材と一緒に上方に動かされ、熱線部材と熱線受部との間に挟み付けられ、熱線部材に添着されたシールヒータが通電され、シールタイマがタイムアップするまでシールヒータの発熱が継続され、熱線部材と熱線受部とに挟み付けられた袋状包装物の開口部は、ヒートシールされ、
シールタイマがタイムアップすると、シールヒータがオフとなり、ヒートシール工程が終了して、ピストンがばねの弾性力により下方に移動し、熱線部材も一緒に下方に移動し、
真空タイマのタイムアップ前に、ホールド・ジャンプスイッチを押圧し、この押圧を解除することにより、脱気工程(真空引き)を直ちに中断し、次のヒートシール工程に進めることができる、真空包装装置。」
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明の「本体」、「蓋体」、「真空チャンバ」、「真空包装装置」は、それぞれ、本件発明1の「チャンバベース」、「チャンバカバー」、「チャンバ」、「真空包装機」に相当する。
(イ)甲1発明の「蓋体の上部内面に」「下向きに突出して形成され」た「熱線受部」は、本件発明1の「チャンバカバーに設けた上側ブロック」に相当する。
甲1発明の「ばねの弾性力に抗して上方に移動」及び「ばねの弾性力により下方に移動」する「ピストンと接続する熱線部材」は、本件発明1の「チャンバベースに上下動可能に設けた下側ブロック」に相当し、甲1発明の「ピストン」は本件発明1の「下側ブロックを昇降させる昇降機構」に相当する。
そして、甲1発明において「ピストンがばねの弾性力に抗して上方に移動すると共に」「一緒に上方に移動」する「熱線部材と熱線受部との間に挟み付けられ、熱線部材に添着されたシールヒータが通電され」「熱線部材と熱線受部とに挟み付けられた袋状包装物の開口部は、ヒートシールされ」ることは、本件発明1において「前記昇降機構により前記下側ブロックを前記上側ブロックに押圧することによって前記包装袋の開口周縁部を挟持した状態で、前記包装袋の開口周縁部を封止」することに相当するから、甲1発明の「熱線受部」、「熱線部材」、「ピストン」を有する構成は、本件発明1の「包装袋を密封する封止装置」に相当する。
(ウ)甲1発明の「真空ポンプ」、「真空ゲージ」は、それぞれ、本件発明の「真空ポンプ」、「真空センサ」に相当する。
(エ)甲1発明の「真空ポンプが作動すると、真空チャンバ内の気体等が真空ポンプにより吸引され、」「真空チャンバ内が負圧になると、蓋体は、この負圧によって、伸長した弾性体に打ち勝って閉じた状態に維持され」ることは、本件発明1の「前記真空ポンプを作動させることによって前記チャンバカバーを前記チャンバベースに負圧吸引させた状態で前記チャンバ内を負圧化させ」ることに相当する。
甲1発明の「真空チャンバ内が所定圧力以下に減圧されるように設定された真空タイマの設定時間(真空引き時間)がタイムアップすると、」「脱気工程を終了し、」「シールタイマがタイムアップするまでシールヒータの発熱が継続され、熱線部材と熱線受部とに挟み付けられた袋状包装物の開口部は、ヒートシールされ」る制御は、本件発明1の「前記チャンバ内の負圧化を開始後に所定の設定時間が経過すると、前記封止装置により前記包装袋の開口周縁部を封止するように制御して前記包装袋を真空包装する」ことに相当する。
甲1発明の「真空ポンプが作動すると、真空チャンバ内の気体等が真空ポンプにより吸引され、真空タイマは、真空チャンバ内が十分に脱気され、大気圧以下の所定圧力に減圧されるように真空引き時間が設定されており、真空チャンバ内が負圧になると、蓋体は、この負圧によって、伸長した弾性体に打ち勝って閉じた状態に維持され、」「真空チャンバ内が所定圧力以下に減圧されるように設定された真空タイマの設定時間(真空引き時間)がタイムアップすると、脱気工程を終了し、」「ピストンがばねの弾性力に抗して上方に移動すると共に、ピストンと接続する熱線部材も一緒に上方に移動し、熱線部材の上に載っていた包装物の開口部も、熱線部材と一緒に上方に動かされ、熱線部材と熱線受部との間に挟み付けられ、熱線部材に添着されたシールヒータが通電され、シールタイマがタイムアップするまでシールヒータの発熱が継続され、熱線部材と熱線受部とに挟み付けられた袋状包装物の開口部は、ヒートシールされ」ることと、
本件発明1の「前記真空ポンプを作動させることによって前記チャンバカバーを前記チャンバベースに負圧吸引させた状態で前記チャンバ内を負圧化させ、前記チャンバ内が所定の設定圧力以下となる、または、前記チャンバ内の負圧化を開始後に所定の設定時間が経過すると、前記封止装置により前記包装袋の開口周縁部を封止するように制御して前記包装袋を真空包装する」こととは、
「前記真空ポンプを作動させることによって前記チャンバカバーを前記チャンバベースに負圧吸引させた状態で前記チャンバ内を負圧化させ、前記チャンバ内が所定の設定圧力以下となる、または、前記チャンバ内の負圧化を開始後に所定の設定時間が経過すると、前記封止装置により前記包装袋の開口周縁部を封止するように制御して前記包装袋を真空包装する」という限りで一致する。
イ そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「チャンバベースの上側をチャンバカバーにより開閉自在に塞ぐことで内部に包装袋を収容する密閉空間が形成されるチャンバと、
前記チャンバベースに上下動可能に設けた下側ブロック、前記チャンバカバーに設けた上側ブロック、及び、前記下側ブロックを昇降させる昇降機構を有し、前記昇降機構により前記下側ブロックを前記上側ブロックに押圧することによって前記包装袋の開口周縁部を挟持した状態で、前記包装袋の開口周縁部を封止して前記包装袋を密封する封止装置と、
前記チャンバ内の密閉空間を脱気して負圧化させる真空ポンプと、
前記チャンバ内の圧力を検出する真空センサと、
前記真空ポンプを作動させることによって前記チャンバカバーを前記チャンバベースに負圧吸引させた状態で前記チャンバ内を負圧化させ、前記チャンバ内が所定の設定圧力以下となる、または、前記チャンバ内の負圧化を開始後に所定の設定時間が経過すると、前記封止装置により前記包装袋の開口周縁部を封止するように制御して前記包装袋を真空包装する、真空包装機」で一致し、以下の相違点で相違する。
《相違点1》
本件発明1が、包装プログラムを有した制御装置により制御を実施するのに対し、甲1発明は、そのようにはなっていない点。
《相違点2》
本件発明1が、「前記真空ポンプを作動開始後に、前記真空センサにより検出される検出圧力が、前記下側ブロックを前記上側ブロックに押圧した状態でも前記チャンバカバーが前記チャンバベースに負圧吸引されて、前記チャンバカバーが開放されずに前記包装袋の開口周縁部を前記封止装置により封止可能な圧力として設定された封止可能圧力以下となるのを判定する封止可能圧力判定手段」と、「前記封止可能圧力判定手段により前記封止可能圧力以下となったと判定されると、前記チャンバ内が所定の設定圧力以下となる前、または、前記設定時間の経過前であっても、前記封止装置により前記包装袋の開口周縁部を封止不可な状態から封止可能な状態に遷移させる状態遷移手段」とを含むのに対し、甲1発明は、それらの手段を有さない点。
ウ 事案に鑑み、上記相違点2より検討する。
本件発明1が、「封止可能圧力判定手段」と「状態遷移手段」の両手段を備えるのは、「封止装置は、チャンバベースに上下動可能に設けた下側ブロックと、チャンバカバーに設けた上側ブロックと、下側ブロックを昇降させる昇降機構と、下側ブロックに設けられて包装袋を熱溶着させるヒータとを備え」(本件明細書【0002】)た真空包装機において、「仮に、設定した真空度となる前に包装袋の開口周縁部を封止できるようにしても、チャンバカバーがチャンバベースに十分に負圧吸引されていないタイミングで、封止装置の下側ブロックを上昇させて上側ブロックに押圧させると、十分に負圧吸引されていないチャンバカバーがチャンバベースから開放され、包装袋を封止できないおそれがあった」ことから、「チャンバカバーが上昇する下側ブロックによって開かないタイミングで、包装袋の開口周縁部を封止できるようにする」(同【0005】)ためである。
一方、甲1発明においては、上記(1)アのとおり「真空タイマのタイムアップ前に、ホールド・ジャンプスイッチを押圧し、この押圧を解除することにより、脱気工程(真空引き)を直ちに中断し、次のヒートシール工程に進めることができる」(【0043】)ものである。つまり、設定した真空度となる前にヒートシール工程に進むことを可能としたものであるが、十分に負圧吸引されていない蓋体が、ピストンの上昇と共に移動する熱線部材により本体上面から解放される事態を防ぐことについては想定していない。そもそも、蓋体が十分に負圧吸引されていない状態で熱線部材が上昇すると、蓋体が本体上面から解放されてしまう恐れがあることについて着目していないし、このことが、解決が図られてきた周知の課題であるとする証拠もない。
甲2(【0062】)には、真空引き工程中に、次の工程に移行したい場合、移行スイッチの操作により真空引き動作から次の工程に移行(ジャンプ)することができるが、チャンバー2内の真空レベルが所定値(例えば、40%)に到達していない場合は、次工程へのジャンプ動作は無効とする制御を行うことが記載されている。しかし、甲2の真空包装装置は、「平坦な天板を有するスライド式の真空包装装置」(【0007】)であることを前提とするものであり、本件発明1のように、チャンバカバーが上昇する下側ブロックによって開けられるという事象が生じ得ないことからみて、甲2がいう「真空レベルが所定値(例えば、40%)に到達していない場合」の所定値は、本件発明1における「前記下側ブロックを前記上側ブロックに押圧した状態でも前記チャンバカバーが前記チャンバベースに負圧吸引されて、前記チャンバカバーが開放されずに前記包装袋の開口周縁部を前記封止装置により封止可能な圧力として設定された封止可能圧力」とは異なるものといえる。
そして、上述のように、蓋体が十分に負圧吸引されていない状態で熱線部材(下側ブロック)が上昇すると、蓋体が本体上面から解放されてしまう恐れがあることは、解決が図られてきた周知の課題ではないから、甲2の「真空レベルが所定値(例えば、40%)に到達していない場合」に次工程へのジャンプ動作は無効とする制御を甲1発明に適用しても、本件発明1のように、次工程へのジャンプ動作を無効とする所定値を、「前記下側ブロックを前記上側ブロックに押圧した状態でも前記チャンバカバーが前記チャンバベースに負圧吸引されて、前記チャンバカバーが開放されずに前記包装袋の開口周縁部を前記封止装置により封止可能な圧力として設定された封止可能圧力」に設定することを想到し得るとはいえない。
他に提出された甲3においても、このことは記載も示唆もされていない。
よって、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
エ そうすると、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであり、上記(2)で述べたように、本件発明1は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2も、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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