特許異議申立
2022-701188
蓄電装置用外装材の製造方法
- 審判番号
- 2022-701188
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-141855
- 登録番号
- 7078077
- 請求日
- 2022年11月30日
- 審決日
- 2023年06月14日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】凸版印刷株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】吉住 和之
- 【権利者代理人】鈴木 洋平
- 【異議申立人】田中 俊子
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 山田 正文
- 審判官 山本 章裕
- 分類
- P1652.113-Y (H01M) / P1652.121-Y (H01M) / P1652.536-Y (H01M) / P1652.537-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7078077号発明「蓄電装置用外装材の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7078077号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7078077号の請求項1ないし6に係る発明についての出願は、平成27年9月16日の出願である特願2015-182662号の一部を令和2年8月25日に新たな特許出願としたものであって、令和4年5月23日にその特許権が設定登録され、令和4年5月31日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年11月30日 :特許異議申立人田中俊子(以下、「申立人」という。)により全請求項に係る特許に対する特許異議の申立て
令和5年 1月12日 :申立人による請求項6に係る特許に対する特許異議申立ての取下げ
令和5年 2月22日付け:取消理由通知
令和5年 4月24日 :特許権者による意見書の提出
第2 本件発明
特許第7078077号の請求項1ないし6の特許に係る発明のうち、請求項1ないし5の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
基材層、接着層、金属箔層、 前記金属箔層の少なくとも一方の面に形成された腐食防止処理層、シーラント接着層及びシーラント層 からなり、各層がこの順になるように積層 された積層体を得る工程を備え、
前記基材層の厚さが6~40μmであり、前記金属箔層の厚さが9~200μmであり、 前記腐食防止処理層の厚さが10nm~5μmであり、前記シーラント層の厚さが10~100μmであり、
前記金属箔層が、軟質アルミニウム箔であり、
前記基材層は、下記式(1)で示されるΔAが12%以上であり、かつ200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上であるポリエステルフィルムからなる層である、蓄電装置用外装材の製造方法。
ΔA=(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度) ・・・(1)
[破断伸度及び50%伸長時応力値は、それぞれ基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対し引張試験(試験片形状:JIS K7127に規定される5号型ダンベル状、チャック間距離:75mm、標点間距離:25mm、試験速度:50mm/min)を行ったときの23℃における平均値である。]
【請求項2】
基材層、易接着処理層、接着層、金属箔層、前記金属箔層の少なくとも一方の面に形成された腐食防止処理層、シーラント接着層及びシーラント層からなり、各層がこの順になるように積層された積層体を得る工程を備え、
前記基材層の厚さが6~40μmであり、前記易接着処理層の厚さが0.02~0.5μmであり、前記金属箔層の厚さが9~200μmであり、前記腐食防止処理層の厚さが10nm~5μmであり、前記シーラント層の厚さが10~100μmであり、
前記金属箔層が、軟質アルミニウム箔であり、
前記基材層は、下記式(1)で示されるΔAが12%以上であり、かつ200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上であるポリエステルフィルムからなる層である、蓄電装置用外装材の製造方法。
ΔA=(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)・・・(1)
[破断伸度及び50%伸長時応力値は、それぞれ基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対し引張試験(試験片形状:JISK7127に規定される5号型ダンベル状、チャック間距離:75mm、標点間距離:25mm、試験速度:50mm/min)を行ったときの23℃における平均値である。]
【請求項3】
前記易接着処理層が、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びアクリルグラフトポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む層である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程において、前記金属箔層の両面に 前記腐食防止処理層 が形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記腐食防止処理層が、希土類元素酸化物、及び、リン酸又はリン酸塩を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。」
第3 取消理由の概要
当審において、請求項1ないし5に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1ないし5に係る発明は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
記
本件の請求項1及び2には、「基材層は、下記式(1)で示されるΔAが12%以上であり、かつ200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上であるポリエステルフィルムからなる層」
「ΔA=(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)・・・(1)
[破断伸度及び50%伸長時応力値は、それぞれ基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対し引張試験(試験片形状:JISK7127に規定される5号型ダンベル状、チャック間距離:75mm、標点間距離:25mm、試験速度:50mm/min)を行ったときの23℃における平均値である。]」
との構成が記載されているが、発明の詳細な説明には、上記構成のポリエステルフィルムをどのように入手又は製造するのか記載されておらず、また、実施例のポリエステルフィルムのポリエステル樹脂の種類や実施例のポリエステルフィルムはどのようにして入手又は製造されたものであるのかも記載されていない。
そうすると、請求項1及び2に記載された上記構成のポリエステルフィルムを選択するに当たり、過度の試行錯誤要するものと認められる。
なお、延伸倍率を調整すれば破断伸度が単純に変化するものではなく、また延伸温度を調整することで各温度での破断伸度の変化度合いが単純に変化するものでもないから、単に延伸倍率と延伸温度の調整によって過度の試行錯誤をすること無く請求項1及び2に記載された上記構成のポリエステルフィルムが得られるとは認められない。(伸長時応力や破断伸度の調整が過度の試行錯誤を要するものではないことを示すためには、伸長時応力や破断伸度の調整は技術常識であり、伸長倍率や伸長温度を調整することにより伸長時応力や破断伸度を調整し得ることを示す文献等の提示が必要である。)
したがって、請求項1及び2に記載されたポリエステルフィルムを選択するに当たり過度の試行錯誤を要するものと認められ、発明の詳細な説明の記載は、請求項1及び2に係る発明を当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されたものとはいえない。
請求項1又は2を引用する請求項3ないし5についても同様である。
第4 取消理由通知において採用しなかった申立理由の概要
取消理通通知において採用しなかった申立人の特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
1 申立理由1 特許法第29条第1項(甲第1号証に対する新規性)について
本件請求項1、5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一である。
よって、請求項1、5に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 申立理由2 特許法第29条第1項(甲第2号証に対する新規性)について
本件請求項1、5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と同一である。
よって、請求項1、5に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
3 申立理由3 特許法第29条第2項(甲第1号証、甲第2号証ないし甲第4号証に対する進歩性)について
本件請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
よって、請求項1ないし5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
4 申立理由4 特許法第29条第2項(甲第2号証、甲第3号証および甲第4号証に対する進歩性)について
本件請求項1ないし5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、及び甲第3号証および甲第4号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
よって、請求項1ないし5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
5 申立理由5 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
蓄電装置用外装材において、その深絞り成型性は、外装材を構成する一部の基材層の材料のみならず、外装材の各構成層の材料や厚さ、さらには外装材の全体の厚さに依存することは明らかである。
請求項1には「前記基材層の厚さが6~40μmであり、前記金属箔層の厚さが9~200μmであり、前記腐食防止処理層の厚さが10nm~5μmであり、前記シーラント層の厚さが10~100μmであり、前記金属箔層が、軟質アルミニウム箔であ」ることが記載されている。
しかしながら、請求項1では、(破断伸度及び50%伸長時応力値に関する)特殊パラメータを備えるポリエステルフィルムであることが規定されるにとどまり、いずれのポリエステルフィルムであっても、本件発明の課題が解決されるとは理解できず、実施例では具体的にどのようなポリエステル樹脂が使用されたのかについての開示すらない。また、請求項1では、接着層、シーラント接着層、シーラント層の材料及び厚みについても任意のものが包含されており、全体の厚みについても記載がなく、あらゆる材料及び厚みであっても本件発明の課題が解決されるとは考えられない。
従って、請求項1ないし5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超える発明を包含しており、発明の詳細な説明に記載したものではない。
よって、請求項1ないし5に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
[証拠]
甲第1号証:特開2013-196947号公報
甲第2号証:特開2015-95366号公報
甲第3号証:特開2013-6412号公報
甲第4号証:国際公開第2015/087901号
第5 甲各号証の記載
1 甲第1号証について
(1)記載事項
甲第1号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「【0008】
本発明は、湿度環境に関わらず優れた成型性が得られるリチウムイオン電池用外装材の提供を目的とする。」
「【0013】
以下、本発明のリチウムイオン電池用外装材の一例を図1に基づいて説明する。
本実施形態のリチウムイオン電池用外装材1(以下、「外装材1」という。)は、図1に示すように、基材層11の一方の面側に、第1接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、第2接着層15及びシーラント層16が順次積層された積層体である。外装材1は、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材1は、基材層11を電池の外部側、シーラント層16を電池の内部側にして使用される。
【0014】
[基材層11]
基材層11は、リチウムイオン電池を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制する役割を果たす。
基材層11は、JIS K 7209:2000で規定される吸水率が0.1%以上3%以下で、下記引張試験における10%延伸時の応力値がMD方向及びTD方向共に110MPa以下で、かつMD方向及びTD方向の少なくとも一方で70MPa以上である樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(A)」という。)からなる層である。基材層11が樹脂フィルム(A)からなることで、湿度環境に関わらず優れた成型性が得られ、また基材層11側の耐電解液性にも優れた外装材1となる。
【0015】
(引張試験)
23℃、40%RHの環境下で試料を24時間保管した後、23℃、40%RHの環境下、試料幅6mm、標点間距離35mm、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、10%延伸時(変位量3.5mm)の応力値を測定する。
・・・中略・・・
【0019】
樹脂フィルム(A)としては、突刺強度、衝撃強度に優れる点から、ナイロンフィルム又はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましく、吸水率が低く、湿度環境によるフィルム特性の変化がより小さく、耐電解液性に優れる点から、PETフィルムがより好ましい。また、樹脂フィルム(A)は、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、無延伸フィルムのいずれであってもよいが、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
樹脂フィルム(A)は、単層フィルムでも多層フィルムでもよいが、コスト面で有利な点から、単層フィルムが好ましい。樹脂フィルム(A)が多層フィルムの場合、多層フィルムとして、前記吸水率及び10%延伸時の応力値の条件を満たせばよい。なお、多層フィルムは、多層共押出し製法によって得られる単一基材を含む。
【0020】
樹脂フィルム(A)には、より優れた成型性が得られる点から、熱可塑性ポリエステルエラストマーが含有されることが好ましい。特に、熱可塑性ポリエステルエラストマーが含有されたPETフィルムが好ましい。
熱可塑性ポリエステルエラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントを有するポリエステルエラストマーである。
ハードセグメントとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の結晶性ポリエステルが挙げられる。なかでも、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
ソフトセグメントとしては、例えば、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類;ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペート等のポリエステル等が挙げられる。なかでも、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。
・・・中略・・・
【0023】
基材層11の厚さは、10~40μmが好ましく、20~35μmがより好ましい。基材層11の厚さが下限値以上であれば、成型性に優れる。基材層11の厚さが上限値以下であれば、成型加工により延伸された箇所の基材層11の収縮力がそれほど大きくならず、成型加工後の形状を維持できる。」
「【0025】
[金属箔層13]
金属箔層13としては、アルミニウム、ステンレス鋼等の各種金属箔を使用することができ、防湿性、延展性等の加工性、コストの面から、アルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔としては、一般の軟質アルミニウム箔を用いることができる。なかでも、耐ピンホール性、及び成型時の延展性に優れる点から、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。
鉄を含むアルミニウム箔(100質量%)中の鉄の含有量は、0.1~9.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が下限値以上であれば、外装材1は耐ピンホール性、延展性に優れる。鉄の含有量が9.0質量%以下であれば、外装材1は柔軟性に優れる。
金属箔層13の厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性の点から、9~200μmが好ましく、15~100μmがより好ましい。
【0026】
[腐食防止処理層14]
腐食防止処理層14は、電解液や、電解液と水分の反応により発生するフッ酸による金属箔層13の腐食を抑制する役割を果たす。また、金属箔層13と第2接着層15との密着力を高める役割を果たす。
腐食防止処理層14としては、塗布型、又は浸漬型の耐酸性の腐食防止処理剤によって形成された塗膜が好ましい。前記塗膜は、金属箔層13の酸に対する腐食防止効果に優れる。また、アンカー効果によって金属箔層13と第2接着層15の密着力をより強固にするので、電解液等の内容物に対して優れた耐性が得られる。
【0027】
前記塗膜としては、例えば、酸化セリウムとリン酸塩と各種熱硬化性樹脂からなる腐食防止処理剤によるセリアゾール処理によって形成される塗膜、クロム酸塩、リン酸塩、フッ化物と各種熱硬化性樹脂からなる腐食防止処理剤によるクロメート処理により形成される塗膜等が挙げられる。
なお、腐食防止処理層14は、金属箔層13の耐食性が充分に得られる塗膜であれば、前記塗膜には限定されない。例えば、リン酸塩処理、ベーマイト処理等によって形成した塗膜であってもよい。
【0028】
腐食防止処理層14は、単層であってもよく、複数層であってもよい。また、腐食防止処理層14には、シラン系カップリング剤等の添加剤が添加されてもよい。
腐食防止処理層14の厚さは、腐食防止機能、及びアンカーとしての機能の点から、10nm~5μmが好ましく、20nm~500nmがより好ましい。」
「【0035】
[シーラント層16]
シーラント層16は、外装材1においてヒートシールによる封止性を付与する層である。
シーラント層16としては、ポリオレフィン系樹脂、又はポリオレフィン系樹脂に無水マレイン酸等の酸をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。
前記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、又はランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、第2接着層15で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0036】
シーラント層16は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。例えば、防湿性を付与する点では、エチレン-環状オレフィン共重合体やポリメチルペンテン等の樹脂を介在させた多層フィルムが使用できる。
また、シーラント層16は、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤が配合されてもよい。
シーラント層16の厚さは、10~100μmが好ましく、20~60μmがより好ましい。」
「【0038】
[製造方法]
以下、外装材1の製造方法について説明する。ただし、外装材1の製造方法は以下の方法に限定されない。
外装材1の製造方法としては、例えば、下記工程(1)~(3)を有する方法が挙げられる。
(1)金属箔層13上に、腐食防止処理層14を形成する工程。
(2)金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に、第1接着層12を介して基材層11を貼り合わせる工程。
(3)金属箔層13の腐食防止処理層14側に、第2接着層15を介してシーラント層16を貼り合わせる工程。」
「【0044】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[使用材料]
本実施例で使用した材料を以下に示す。
(基材層11)
基材A-1:二軸延伸PETフィルム(熱可塑性ポリエステルエラストマー8質量%含有、厚み25μm)。
基材A-2:二軸延伸PETフィルム(熱可塑性ポリエステルエラストマー16質量%含有、厚み25μm)。
基材A-3:二軸延伸PETフィルム(熱可塑性ポリエステルエラストマー1質量%含有、厚み25μm)。
基材A-4:二軸延伸ナイロン6フィルム(厚み25μm)。
基材A-4について、試料幅15mm、標点間距離50mm、引張速度100mm/秒にてTD方向の伸びを測定したところ75%であった。
【0045】
(第1接着層12)
接着剤B-1:ウレタン系接着剤(商品名「A525/A50」、三井化学ポリウレタン社製)。
【0046】
(金属箔層13)
金属箔C-1:軟質アルミニウム箔8079材(東洋アルミニウム社製、厚さ40μm)。
【0047】
(腐食防止処理層14)
処理剤D-1:酸化セリウム、リン酸、アクリル系樹脂を主体とした塗布型セリアゾール処理用の処理剤。
【0048】
(第2接着層15)
接着樹脂E-1:無水マレイン酸でグラフト変性したポリプロピレン系樹脂(商品名「アドマー」、三井化学社製)。
【0049】
(シーラント層16)
フィルムF-1:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ40μm)の内面となる側の面をコロナ処理したフィルム。
【0050】
[外装材の作成]
金属箔層13となる金属箔C-1の一方の面に処理剤D-1を塗布、乾燥して腐食防止処理層14を形成した。次に、金属箔層13における腐食防止処理層14の反対面に、接着剤B-1を用いたドライラミネート法により、基材A-1~A-4のいずれかを貼り合せ、第1接着層12を介して基材層11を積層した。その後、60℃、6日間のエージングを行った。次に、得られた積層体の腐食防止処理層14側に押出し装置にて接着樹脂E-1を押出して第2接着層15を形成し、フィルムF-1を貼り合わせてサンドイッチラミネーションすることでシーラント層16を形成した。その後、得られた積層体に対し、160℃、4kg/cm2、2m/分の条件で加熱圧着することで外装材を作成した。」
「【0054】
[成型性の評価]
各例で得られた外装材を、150mm×190mmのブランク形状に切り取り、23℃、40%RHの環境下で24時間保管した後、23℃、40%RHの環境下で成型深さを変化させながら冷間成型し、成型性を評価した。また、保管環境(24時間)と成型加工環境を露点温度-35℃(温度23℃)とした以外は同様の条件の成型性も評価した。
パンチとしては、形状が100mm×150mm、パンチコーナーR(RCP)が1.5mm、パンチ肩R(RP)が0.75mm、ダイ肩R(RD)が0.75mmのものを使用した。評価は、以下の基準に従って行った。
「◎」:破断、クラックを生じさせずに、成型深さ7mm以上の深絞り成型が可能である。
「○」:破断、クラックを生じさせずに、成型深さ5mm以上7mm未満の深絞り成型が可能である。
「×」:成型深さ5mm未満の深絞り成型で破断、クラックが生じる。
【0055】
[実施例1、2及び比較例1、2]
前記作成方法により、表1に示す基材層構成の外装材を作成した。
耐電解液性及び成型性の評価結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
[図:0001399384000001.jpg]
」
図1
[図:0001399384000002.jpg]
(2)記載されている技術事項
上記(1)の摘記事項から、甲第1号証には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
ア 段落【0008】の「湿度環境に関わらず優れた成型性が得られるリチウムイオン電池用外装材」との記載、段落【0013】の「リチウムイオン電池用外装材1(以下、「外装材1」という。)」との記載、段落【0038】の「外装材1の製造方法」との記載より、甲第1号証には「湿度環境に関わらず優れた成型性が得られるリチウムイオン電池用外装材の製造方法」が記載されているといえる。
イ 段落【0038】の記載によれば、外装材1の製造方法は、(1)金属箔層13上に、腐食防止処理層14を形成する工程、(2)金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に、第1接着層12を介して基材層11を貼り合わせる工程、(3)金属箔層13の腐食防止処理層14側に、第2接着層15を介してシーラント層16を貼り合わせる工程を有する。
ウ 段落【0013】の記載によれば、リチウムイオン電池用外装材1は、基材層11の一方の面側に、第1接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、第2接着層15及びシーラント層16が順次積層された積層体である。
エ 段落【0014】の「基材層11は、リチウムイオン電池を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制する役割を果たす。・・・JIS K 7209:2000で規定される吸水率が0.1%以上3%以下で、下記引張試験における10%延伸時の応力値がMD方向及びTD方向共に110MPa以下で、かつMD方向及びTD方向の少なくとも一方で70MPa以上である樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(A)」という。)からなる層である。」、段落【0015】の「(引張試験)23℃、40%RHの環境下で試料を24時間保管した後、23℃、40%RHの環境下、試料幅6mm、標点間距離35mm、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、10%延伸時(変位量3.5mm)の応力値を測定する」、段落【0019】の「樹脂フィルム(A)としては、・・・ナイロンフィルム又はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましく」、段落【0020】の「樹脂フィルム(A)には、・・・熱可塑性ポリエステルエラストマーが含有されたPETフィルムが好ましい」との記載によれば、基材層11は、リチウムイオン電池を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制する役割を果たし、JISK 7209:2000で規定される吸水率が0.1%以上3%以下で、23℃、40%RHの環境下で試料を24時間保管した後、23℃、40%RHの環境下、試料幅6mm、標点間距離35mm、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、10%延伸時(変位量3.5mm)の応力値を測定する引張試験における10%延伸時の応力値がMD方向及びTD方向共に110MPa以下で、かつMD方向及びTD方向の少なくとも一方で70MPa以上である熱可塑性ポリエステルエラストマーが含有されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる層であるといえる。
オ 段落【0023】の記載によれば、基材層11の厚さは10~40μmである。
カ 段落【0025】の記載によれば、金属箔層13としては、軟質アルミニウム箔を用い、厚さは9~200μmである。
キ 段落【0028】の記載によれば、腐食防止処理層14の厚さは10nm~5μmである。
ク 段落【0036】の記載によれば、シーラント層16の厚さは10~100μmである。
(3)甲1発明
上記アないしクの技術事項を総合勘案すると、甲第1号証には、「リチウムイオン電池用外装材の製造方法」として次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「湿度環境に関わらず優れた成型性が得られるリチウムイオン電池用外装材の製造方法において、
外装材1の製造方法は、
(1)金属箔層13上に、腐食防止処理層14を形成する工程、
(2)金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に、第1接着層12を介して基材層11を貼り合わせる工程、
(3)金属箔層13の腐食防止処理層14側に、第2接着層15を介してシーラント層16を貼り合わせる工程を有するものであり、
リチウムイオン電池用外装材1は、基材層11の一方の面側に、第1接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、第2接着層15及びシーラント層16が順次積層された積層体であり、
基材層11は、リチウムイオン電池を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制する役割を果たし、JISK 7209:2000で規定される吸水率が0.1%以上3%以下で、23℃、40%RHの環境下で試料を24時間保管した後、23℃、40%RHの環境下、試料幅6mm、標点間距離35mm、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、10%延伸時(変位量3.5mm)の応力値を測定する引張試験における10%延伸時の応力値がMD方向及びTD方向共に110MPa以下で、かつMD方向及びTD方向の少なくとも一方で70MPa以上である熱可塑性ポリエステルエラストマーが含有されたリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる層で厚さは10~40μm、
金属箔層13としては、軟質アルミニウム箔を用い、厚さは9~200μm、
腐食防止処理層14の厚さは10nm~5μm、
シーラント層16の厚さは10~100μmである
リチウムイオン電池用外装材の製造方法。」
2 甲第2号証について
(1)記載事項
甲第2号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
「【0009】
上記事情を踏まえ、本発明は、優れた成型性を維持しつつ、成型加工後の反り量を低減することが可能なリチウムイオン電池用外装材を提供することを目的とする。」
「【0015】
本発明の一実施形態について、図1から図3を参照して説明する。図1は、本実施形態のリチウムイオン電池用外装材(以下、単に「外装材」と称する。)1を示す断面図である。
外装材1は、図1に示すように、シート状をなす基材層11の一方の面側に、同じくそれぞれシート状をなす第1接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、第2接着層15、及びシーラント層16が順次積層された積層体である。外装材1を用いてリチウムイオン電池を形成する際は、基材層11が最外層となり、シーラント層16が最内層となる。また、基材層11は多層フィルムであり、電池の外部側が第2基材層11bであり、第1接着層12に接する層が第1基材層11aである。
【0016】
[基材層11]
基材層11は、リチウムイオン電池を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制する役割を果たす。
基材層11は、第1基材層11aおよび第2基材層11bを有する多層構成である。第1接着層12に接する第1基材層11aは、ポリエステル樹脂またはポリアミド樹脂からなる。第1基材層11aの第1接着層12側と接する面と反対側の面に積層された第2基材層11bは、ポリエステルエラストマーを含有している。
【0017】
第1基材層11aは、薄肉で、シャープな形状の成型を行うために、強度が高く、伸びが大きく、かつ軟質であるポリアミド(ナイロン)またはポリエステルのフィルムを使用することが好ましい。さらに、突刺強度、衝撃強度に優れる点から二軸延伸ナイロン(ONy)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムがより好ましい。中でも、吸湿状態により物性値が変化しにくく、成型性能が安定する二軸延伸PETフィルムがさらに好ましい。
【0018】
第2基材層11bは、成型加工により延伸された基材層11の収縮率を緩和する層であり、弾性限界(降伏点)が小さくなるよう、ポリエステルエラストマーを含有する構成とされている。この構成には、ポリエステルエラストマーの添加量により容易に物性値を調整できるという利点もある。
【0019】
第2基材層11bに含有されるポリエステルエラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントからなり、ハードセグメントはポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの結晶性ポリエステルが挙げられ、特にポリブチレンテレフタレートが好ましい。ソフトセグメントはポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール類、または、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペートなどのポリエステルが挙げられ、特にポリテトラメチレングリコールが好ましい。
【0020】
第1基材層11aの厚さは、4μm~20μmが好ましく、10μm~15μmがより好ましい。
また、第2基材層11bの厚さは、2μm~15μmが好ましく、3μm~10μmがより好ましい。
基材層11の厚さとしては、6μm~25μmが好ましく、10μm~20μmがより好ましい。
第1基材層11aの厚さが4μm以上かつ第2基材層11bの厚さが15μm以下であれば成型性に優れる。第1基材層11aの厚さが20μm以下かつ第2基材層11bの厚さが2μm以上であれば、成型加工により延伸された箇所における基材層11の収縮率がそれほど大きくならず、成型加工後の形状を好適に維持できる。」
「【0023】
[金属箔層13]
金属箔層13としては、アルミニウム、ステンレス鋼等の各種金属箔を使用することができ、防湿性、延展性等の加工性、コストの面から、アルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔としては、一般の軟質アルミニウム箔を用いることができる。なかでも、耐ピンホール性、および成形時の延展性に優れる点から、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。
鉄を含むアルミニウム箔(100質量%)中の鉄の含有量は、0.1~9.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であれば、外装材1は耐ピンホール性、延展性に優れる。鉄の含有量が9.0質量%以下であれば外装材1は柔軟性に優れる。
【0024】
金属箔層13の厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性の点から、9~200μmが好ましく、15~100μmがより好ましい。
【0025】
[腐食防止処理層14]
腐食防止処理層14は、電解液や、電解液と水分の反応により発生するフッ酸による金属箔層13の腐食を抑制する役割を果たす。また、金属箔層13と第2接着層15との密着力を高める役割を果たす。
腐食防止処理層14としては、塗布型、又は浸漬型の耐酸性の腐食防止処理剤によって形成された塗膜が好ましい。このような塗膜は、金属箔層13の酸に対する腐食防止効果に優れる。また、アンカー効果によって金属箔層13と第2接着層15の密着力をより強固にするため、電解液等の内容物に対して優れた耐性が得られる。
【0026】
腐食防止処理層14を構成する塗膜としては、例えば、酸化セリウムとリン酸塩と各種熱硬化性樹脂からなる腐食防止処理剤によるセリアゾール処理によって形成される塗膜、クロム酸塩、リン酸塩、フッ化物と各種熱硬化性樹脂からなる腐食防止処理剤によるクロメート処理により形成される塗膜等が挙げられる。
腐食防止処理層14は、金属箔層13の耐食性が充分に得られる塗膜であれば、上述したものには限定されない。例えば、リン酸塩処理、ベーマイト処理等によって形成した塗膜であってもよい。
【0027】
腐食防止処理層14は、単層であってもよく、複数層であってもよい。また、腐食防止処理層14には、シラン系カップリング剤等の添加剤が添加されてもよい。
腐食防止処理層14の厚さは、腐食防止機能、及びアンカーとしての機能の点から、10nm~5μmが好ましく、20~500nmがより好ましい。
なお、腐食防止処理層14は、必要とされる機能に応じて第1接着層12と金属箔層13の間にさらに設けられてもよい。」
「【0034】
[シーラント層]
シーラント層16は、外装材1においてヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層16としては、ポリオレフィン系樹脂、又はポリオレフィン系樹脂に無水マレイン酸等の酸をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、又はランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、第2接着層15で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0035】
シーラント層16は、単層フィルムでも多層フィルムでもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。例えば、防湿性を付与する点では、エチレン-環状オレフィン共重合体やポリメチルペンテン等の樹脂を介在させた多層フィルムが使用できる。
また、シーラント層16は、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加材が配合されてもよい。
シーラント層16の厚さは、10~100μmが好ましく、20~60μmがより好ましい。」
「【0037】
[製造方法]
以下、外装材1の製造方法について説明する。ただし、下記内容は一例であり、外装材1の製造方法は下記の内容に限定されない。
外装材1の製造方法としては、例えば、下記工程(1)~(3)を有する方法が挙げられる。
工程(1):金属箔層13上に、腐食防止処理層14を形成する工程。
工程(2):金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に、第1接着層12を介して基材層11をはり合わせる工程。
工程(3):金属箔層13の腐食防止処理層14側に、第2接着層15を介してシーラント層16を貼り合わせる工程。」
「【0048】
本発明の外装材および二次電池について、実施例および比較例を用いてさらに説明するが、本発明は、実施例の具体的内容にもとづいて何ら限定されるものではない。
[使用材料]
まず、実施例および比較例において、各層の材料として使用したものを以下に示す。括弧内は層厚を示している。
(基材層)
基材A-1:多層構造の共押出しフィルム 第1基材層/第2基材層=PET(11μm)/エラストマー含有PET(5μm)
基材A-2:多層構造の共押出しフィルム 第1基材層/第2基材層=PET(3μm)/エラストマー含有PET(13μm)
基材A-3:多層構造の共押出しフィルム 第1基材層/第2基材層=PET(15μm)/エラストマー含有PET(1μm)
基材A-4:単層のPETフィルム(16μm)
【0049】
(第1接着層)
接着剤B-1:ポリエステルウレタン系接着剤
【0050】
(金属箔層)
金属箔C-1:軟質アルミニウム箔8079材(東洋アルミニウム社製、厚さ40μm)
【0051】
(腐食防止処理層)
処理剤D-1:酸化セリウム、リン酸、アクリル系樹脂を主体とした塗布型セリアゾール処理用の処理剤
【0052】
(第2接着層15)
接着樹脂E-1:無水マレイン酸でグラフト変性したポリプロピレン系樹脂(商品名「アドマー」、三井化学社製)
【0053】
(シーラント層16)
フィルムF-1:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ40μm)の内面となる側の面をコロナ処理したフィルム
【0054】
[外装材の作成]
金属箔層となる金属箔C-1の一方の面に処理剤D-1を塗布、乾燥して腐食防止処理層を形成した。次に、金属箔層の腐食防止処理層が形成された面と反対側の面に、接着剤B-1を用いたドライラミネート法により、基材A-1~A-4のいずれかを貼り合せた。その後、60℃、6日間のエージングを行った。次に、得られた積層体の腐食防止処理層側に押出し装置にて接着樹脂E-1を押出して第2接着層を形成し、フィルムF-1を貼り合わせてサンドイッチラミネーションすることでシーラント層を形成した。その後、得られた積層体に対し、190℃、4kg/cm2、2m/分の条件で加熱圧着することで外装材を作成した。
【0055】
[成型性の評価]
各例で得られた外装材を、150mm×190mmのブランク形状に切り取り、23℃、40%RH(相対湿度)の成形環境下で成形深さを変化させながら冷間成型し、成型性を評価した。
パンチとしては、形状が100mm×150mm、パンチコーナーR(RCP)が1.5mm、パンチ肩R(RP)が0.75mm、ダイ肩R(RD)が0.75mmのものを使用した。評価基準は、以下に従って行った。
◎(excellent):破断、クラックを生じさせずに、成型深さ6mm以上の深絞り成型が可能である。
○(fair):破断、クラックを生じさせずに、成型深さ4mm以上6mm未満の深絞り成型が可能である。
×(insufficient):成形深さ4mm未満の深絞り成型で破断、クラックが生じる。」
「【0057】
実施例1から3、および比較例の基材層の構成と、各例の成型性および成型加工後反り量の評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
[図:0001399384000003.jpg]
」
図1
[図:0001399384000004.jpg]
(2)記載されている技術事項
上記(1)の摘記事項から、甲第2号証には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
ア 段落【0009】の「優れた成型性を維持しつつ、成型加工後の反り量を低減することが可能なリチウムイオン電池用外装材」との記載、段落【0015】の「リチウムイオン電池用外装材(以下、単に「外装材」と称する。)1」との記載、段落【0037】の「外装材1の製造方法」との記載より、甲第2号証には「優れた成型性を維持しつつ、成型加工後の反り量を低減することが可能なリチウムイオン電池用外装材の製造方法」が記載されているといえる。
イ 段落【0037】の記載によれば、外装材1の製造方法は、工程(1):金属箔層13上に、腐食防止処理層14を形成する工程、工程(2):金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に、第1接着層12を介して基材層11をはり合わせる工程、工程(3):金属箔層13の腐食防止処理層14側に、第2接着層15を介してシーラント層16を貼り合わせる工程を有する。
ウ 段落【0015】の記載によれば、リチウムイオン電池用外装材1は、シート状をなす基材層11の一方の面側に、同じくそれぞれシート状をなす第1接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、第2接着層15、及びシーラント層16が順次積層された積層体である。
エ 段落【0016】の「基材層11は、リチウムイオン電池を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制する役割を果たす。基材層11は、第1基材層11aおよび第2基材層11bを有する多層構成である。・・・第1基材層11aは、ポリエステル樹脂・・・第2基材層11bは、ポリエステルエラストマーを含有している。」、段落【0017】の「第1基材層11aは、・・・二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムがより好ましい。」との記載によれば、基材層11は、リチウムイオン電池を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制する役割を果たし、第1基材層11aおよび第2基材層11bを有する多層構成であり、第1基材層11aは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであり、第2基材層11bは、ポリエステルエラストマーを含有している。
オ 段落【0020】の記載によれば、第1基材層11aの厚さは、4μm~20μm、第2基材層11bの厚さは、2μm~15μm、基材層11の厚さとしては、6μm~25μmである。
カ 段落【0023】の記載によれば、金属箔層13としては、軟質アルミニウム箔を用い、段落【0024】の記載によれば、金属箔層13の厚さは、9~200μmである。
キ 段落【0027】の記載によれば、腐食防止処理層14の厚さは、10nm~5μmである。
ク 段落【0035】の記載によれば、シーラント層16の厚さは、10~100μmである。
(3)甲2発明
上記アないしクの技術事項を総合勘案すると、甲第2号証には、「リチウムイオン電池用外装材の製造方法」として次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「優れた成型性を維持しつつ、成型加工後の反り量を低減することが可能なリチウムイオン電池用外装材の製造方法において、
外装材1の製造方法は、
工程(1):金属箔層13上に、腐食防止処理層14を形成する工程、
工程(2):金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に、第1接着層12を介して基材層11をはり合わせる工程、
工程(3):金属箔層13の腐食防止処理層14側に、第2接着層15を介してシーラント層16を貼り合わせる工程を有するものであり、
リチウムイオン電池用外装材1は、シート状をなす基材層11の一方の面側に、同じくそれぞれシート状をなす第1接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、第2接着層15、及びシーラント層16が順次積層された積層体であり、
基材層11は、リチウムイオン電池を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制する役割を果たし、第1基材層11aおよび第2基材層11bを有する多層構成であり、第1基材層11aは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであり、第2基材層11bは、ポリエステルエラストマーを含有し、第1基材層11aの厚さは、4μm~20μm、第2基材層11bの厚さは、2μm~15μm、基材層11の厚さとしては、6μm~25μm、
金属箔層13としては、軟質アルミニウム箔を用い、金属箔層13の厚さは、9~200μm、
腐食防止処理層14の厚さは、10nm~5μm、
シーラント層16の厚さは、10~100μmである
リチウムイオン電池用外装材の製造方法。」
3 甲第3号証について
(1)記載事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
金属層(A)の少なくとも片側に、ポリエステルフィルム(B)が設けられてなる積層体であって、
金属層(A)の厚みが10μm以上100μm以下であり、
金属層(A)とポリエステルフィルム(B)が接着層および/または樹脂層(C)により接着されており、
金属層(A)とポリエステルフィルム(B)との間の剥離強度が2N/15mm以上であり、
かつ少なくとも一方向の25℃における破断伸度が10%以上である積層体。」
「【請求項12】
電池外装用途に用いられる請求項1~11のいずれかに記載の積層体。」
「【0025】
また、ポリエステルフィルム(B)と金属層(A)との密着性を向上させる方法として、ポリエステルフィルム(B)の少なくとも片面に樹脂層(C)(易接着層と称することもある)を設ける方法も好ましく用いられる。該樹脂層(C)は、易接着機能を付与することを目的としており、接着性、経済性の観点から厚みは0.01~3μmであることが好ましい。樹脂層(C)を設ける方法は特に限定されないが、例えば樹脂をフィルム表面に被覆(複合溶融押出法、ホットメルトコート法、水以外の溶媒、水溶性および/または水分散性樹脂からのインライン、オフラインコート法など)する方法や、同様組成あるいはそのブレンド品の表面積層法などが挙げられる。樹脂層(C)の組成としては、特に限定されるものではないが、たとえば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂(ポリウレタン系樹脂)、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ビニル系樹脂、塩素系樹脂、スチレン系樹脂、各種グラフト系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂などを使用することができ、これらの樹脂の混合物を使用することもできる。密着性の観点からポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、またはウレタン系樹脂を用いるのが好ましい。つまり、本発明では、樹脂層(C)はポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびアクリル系樹脂から群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いてなる層であることが好ましい。」
(2)記載されている技術事項
上記(1)の摘記事項から、甲第3号証には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「金属層(A)の少なくとも片側に、ポリエステルフィルム(B)が設けられてなる積層体であって、
金属層(A)とポリエステルフィルム(B)が樹脂層(C)により接着されている電池外装用途に用いられる積層体において、
ポリエステルフィルム(B)と金属層(A)との密着性を向上させる方法として、ポリエステルフィルム(B)の少なくとも片面に樹脂層(C)(易接着層と称することもある)を設け、該樹脂層(C)は、厚みは0.01~3μmとする」技術。
4 甲第4号証について
(1)記載事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
「請求の範囲
[請求項1] 少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層体からなり、
前記金属層が、圧延方向に対して平行方向の引張試験を行った時の0.2%耐力が55~140N/mm2であるアルミニウム箔であり、
前記基材層と前記金属層との厚さの比(基材層の厚さ:金属層の厚さ)が1:1~1:3の範囲にある、電池用包装材料。」
「[0039] また、金属層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止等のために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、金属層の表面に耐酸性皮膜を形成する処理である。化成処理は、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロム等のクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸等のリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理等が挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。」
「[0045] また、金属層3に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズ等の金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、金属層3の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、前記耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層を形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノール等が挙げられる。これらのカチオン性ポリマーは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。」
(2)記載されている技術事項
上記(1)の摘記事項から、甲第4号証には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「基材層、接着層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層体からなる電池用包装材料において、
金属層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止等のために両面が化成処理されていおり、
金属層3に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズ等の金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行う」技術。
第6 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
取消理由通知では、「下記式(1)で示されるΔAが12%以上であり、かつ200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上であるポリエステルフィルムからなる層」
「ΔA=(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)・・・(1)
[破断伸度及び50%伸長時応力値は、それぞれ基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対し引張試験(試験片形状:JISK7127に規定される5号型ダンベル状、チャック間距離:75mm、標点間距離:25mm、試験速度:50mm/min)を行ったときの23℃における平均値である。]」
との構成(以下「構成A」という。)を充足するポリエステルフィルムをどのように入手又は製造するのか発明の詳細な説明には記載されておらず、構成Aを充足するポリエステルフィルムを選択するに当たり過度の試行錯誤を要するものと認められるとした。
しかしながら、構成Aにおける破断伸度及び50%伸長時効力値は熱処理温度や測定方法が特定されたものであること、ポリエステルフィルムの破断伸度及び伸長時応力値は材質、伸長温度、伸長倍率により調整し得ることは広く知られていること、発明の詳細な説明の段落【0024】ないし【0026】には好適に用いられるポリエステル樹脂が例示されていることを考慮すれば、ポリエステルフィルムの材質及び伸長温度等の製造条件を制御して構成Aを充足するポリエステルフィルムを得ることが、過度な試行錯誤を要するとまではいえない。
したがって、請求項1ないし5に係る発明は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由1及び申立理由3について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明の「基材層11」、「第1接着層12」、「金属箔層13」、「腐食防止処理層14」、「第2接着層15」及び「シーラント層16」はそれぞれ本件発明1の「基材層」、「接着層」、「金属箔層」、「前記金属箔層の少なくとも一方の面に形成された腐食防止処理層」、「シーラント接着層」及び「シーラント層」に相当する。そして、甲1発明の「基材層11の一方の面側に、第1接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、第2接着層15及びシーラント層16が順次積層された積層体」を形成する「(2)金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に、第1接着層12を介して基材層11を貼り合わせる工程、(3)金属箔層13の腐食防止処理層14側に、第2接着層15を介してシーラント層16を貼り合わせる工程」は、本件発明1の「基材層、接着層、金属箔層、前記金属箔層の少なくとも一方の面に形成された腐食防止処理層、シーラント接着層及びシーラント層からなり、各層がこの順になるように積層 された積層体を得る工程」に相当する。
b 甲1発明の「基材層11は」「厚さは10~40μm」であることは、本件発明1の「前記基材層の厚さが6~40μmであ」ることに含まれる。また、甲1発明の「金属箔層13としては、」「厚さは9~200μm、腐食防止処理層14の厚さは10nm~5μm、シーラント層16の厚さは10~100μmである」ことは、本件発明1の「前記金属箔層の厚さが9~200μmであり、 前記腐食防止処理層の厚さが10nm~5μmであり、前記シーラント層の厚さが10~100μm」であることに相当する。
c 甲1発明の「金属箔層13としては、軟質アルミニウム箔を用い」ることは、本件発明1の「前記金属箔層が、軟質アルミニウム箔」であることに相当する。
d 甲1発明の「基材層11は、」「熱可塑性ポリエステルエラストマーが含有されたリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる層」であることは、本件発明1と「前記基材層は、」「下ポリエステルフィルムからなる層」である点で共通する。
ただし、基材層が、本件発明1は「下記式(1)で示されるΔAが12%以上であり、かつ200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上」「ΔA=(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)・・・(1)[破断伸度及び50%伸長時応力値は、それぞれ基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対し引張試験(試験片形状:JIS K7127に規定される5号型ダンベル状、チャック間距離:75mm、標点間距離:25mm、試験速度:50mm/min)を行ったときの23℃における平均値である。]」であるのに対し、甲1発明ではそのような200℃での熱処理後の50%伸長時応力値、及び(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値が特定されたものではない点で相違する。
e リチウムイオン電池は蓄電装置であるから、甲1発明の「リチウムイオン電池用外装材の製造方法」は、本件発明1の「蓄電装置用外装材の製造方法」に相当する。
f 上記aないしeより、本件発明1と甲1発明とは以下の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
「基材層、接着層、金属箔層、前記金属箔層の少なくとも一方の面に形成された腐食防止処理層、シーラント接着層及びシーラント層からなり、各層がこの順になるように積層 された積層体を得る工程を備え、
前記基材層の厚さが6~40μmであり、前記金属箔層の厚さが9~200μmであり、前記腐食防止処理層の厚さが10nm~5μmであり、前記シーラント層の厚さが10~100μmであり、
前記金属箔層が、軟質アルミニウム箔であり、
前記基材層は、ポリエステルフィルムからなる層である、蓄電装置用外装材の製造方法。」
〈相違点1〉
基材層が、本件発明1は「下記式(1)で示されるΔAが12%以上であり、かつ200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上」「ΔA=(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)・・・(1)[破断伸度及び50%伸長時応力値は、それぞれ基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対し引張試験(試験片形状:JIS K7127に規定される5号型ダンベル状、チャック間距離:75mm、標点間距離:25mm、試験速度:50mm/min)を行ったときの23℃における平均値である。]」であるのに対し、甲1発明ではそのような200℃での熱処理後の50%伸長時応力値、及び(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値が特定されたものではない点。
(イ)判断
上記「(ア)f」のように、本件発明1と甲1発明とは相違するから、本件発明1は甲第1号証に記載された発明ではない。
この点について、申立人は申立書(第37頁)において、甲第1号証の実施例1、2では、本件明細書の実施例と同様の方法により外装材が製造され、成型性は、本件発明の実施例の外装材と、同等の成型性であるから、甲第1号証の実施例1、2の基材は、請求項1に規定された構成を充足する蓋然性が非常に高い旨主張している。
しかしながら、甲第1号証には、実施例1、2に用いられる基材層として、「基材A-1:二軸延伸PETフィルム(熱可塑性ポリエステルエラストマー8質量%含有、厚み25μm)、基材A-2:二軸延伸PETフィルム(熱可塑性ポリエステルエラストマー16質量%含有、厚み25μm)」と記載されるのみであり200℃での熱処理後の50%伸長時応力値、及び(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値は記載されていない。また、成型性が同等であれば同じ構成を有するとはいえないから、甲第1号証の実施例1、2の成型性が本件明細書の実施例と同等であることのみをもって、甲第1号証の実施例1、2で用いられた基材層が本件発明1の相違点1に係る構成を充足するとは認められない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
次に、上記相違点1に係る構成の進歩性について検討する。
甲第1号証(段落【0014】、【0015】)には基材層11について、「リチウムイオン電池を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制する役割を果たす」ものであり「基材層11は、JISK 7209:2000で規定される吸水率が0.1%以上3%以下で、」「23℃、40%RHの環境下で試料を24時間保管した後、23℃、40%RHの環境下、試料幅6mm、標点間距離35mm、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、10%延伸時(変位量3.5mm)の応力値を測定する」「引張試験における10%延伸時の応力値がMD方向及びTD方向共に110MPa以下で、かつMD方向及びTD方向の少なくとも一方で70MPa以上である樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(A)」という。)からなる層」であることで、「湿度環境に関わらず優れた成型性が得られ、また基材層11側の耐電解液性にも優れた外装材1となる」旨記載されているものの、200℃での熱処理後の50%伸長時応力値、及び(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値は記載も示唆もされていない。
また、甲第3号証には、上記「第5」の「3(2)」で検討したようにポリエステルフィルムと金属層の密着性を向上させる技術が記載され、甲第4号証には上記「第5」の「4(2)」で検討したように金属層に耐食性を付与する化成処理に関する技術が記載されているものの、甲第2ないし4号証のいずれにも、50%伸長時応力値、及び(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値は記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明及び甲第2ないし4号証に記載された技術事項に基づいて、本件発明1の相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
そして、本件発明1は、50%伸長時応力値、及び(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値を所定値以上とすることにより、熱処理の熱により基材層11がより小さい力で大きく伸ばされ易くなった場合でも破断しにくいため、熱処理後においても深絞り成型を可能とすることができ、外装材10に局所的な力が加わったときの力を分散することができ、深絞り成型をしたときの金属箔層14の破断を抑制することができるものである(本件明細書段落【0022】、【0023】)。
イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成に加え、「積層体を得る工程」が「基材層」と「接着層」の間に「易接着処理層」が積層された積層体を得る工程であり、「前記易接着処理層の厚さが0.02~0.5μm」であることを特定したものである。
してみると、本件発明2と甲1発明とは以下の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
「基材層、接着層、金属箔層、前記金属箔層の少なくとも一方の面に形成された腐食防止処理層、シーラント接着層及びシーラント層からなり、各層がこの順になるように積層 された積層体を得る工程を備え、
前記基材層の厚さが6~40μmであり、前記金属箔層の厚さが9~200μmであり、前記腐食防止処理層の厚さが10nm~5μmであり、前記シーラント層の厚さが10~100μmであり、
前記金属箔層が、軟質アルミニウム箔であり、
前記基材層は、ポリエステルフィルムからなる層である、蓄電装置用外装材の製造方法。」
〈相違点2〉
本件発明2は、「積層体を得る工程」が「基材層」と「接着層」の間に「易接着処理層」が積層された積層体を得る工程であり、「前記易接着処理層の厚さが0.02~0.5μm」であるのに対して、甲1発明は、「易接着処理層」が積層されるとは特定されていない点。
〈相違点3〉
基材層が、本件発明1は「下記式(1)で示されるΔAが12%以上であり、かつ200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上」「ΔA=(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)・・・(1)[破断伸度及び50%伸長時応力値は、それぞれ基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対し引張試験(試験片形状:JIS K7127に規定される5号型ダンベル状、チャック間距離:75mm、標点間距離:25mm、試験速度:50mm/min)を行ったときの23℃における平均値である。]」であるのに対し、甲1発明ではそのような200℃での熱処理後の50%伸長時応力値、及び(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値が特定されたものではない点。
したがって、本件発明2と甲1発明とは相違するから、本件発明1は甲第1号証に記載された発明ではない。
また、上記「ア」において相違点1について検討したのと同様の理由により、甲1発明及び甲第2ないし4号証に記載された技術事項に基づいて、本件発明2の相違点3に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ 本件発明3ないし5について
本件発明3ないし5は、本件発明1又は2を直接又は間接的に引用するものである。
したがって、本件発明3ないし5は、甲第1号証に記載された発明ではない。
また、甲1発明及び甲第2ないし4号証に記載された技術事項に基づいて、本件発明3ないし5に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
エ 小括
以上のことより、本件の請求項1、5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一とはいえず、請求項1、5に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
また、本件の請求項1ないし5に係る特許は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし4号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえず、請求項1ないし5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
(2)申立理由2及び申立理由4について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
a 甲2発明の「基材層11」、「第1接着層12」、「金属箔層13」、「腐食防止処理層14」、「第2接着層15」及び「シーラント層16」はそれぞれ本件発明1の「基材層」、「接着層」、「金属箔層」、「前記金属箔層の少なくとも一方の面に形成された腐食防止処理層」、「シーラント接着層」及び「シーラント層」に相当する。そして、甲2発明の「シート状をなす基材層11の一方の面側に、同じくそれぞれシート状をなす第1接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、第2接着層15、及びシーラント層16が順次積層された積層体」を形成する「工程(2):金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に、第1接着層12を介して基材層11をはり合わせる工程、工程(3):金属箔層13の腐食防止処理層14側に、第2接着層15を介してシーラント層16を貼り合わせる工程」は、本件発明1の「基材層、接着層、金属箔層、前記金属箔層の少なくとも一方の面に形成された腐食防止処理層、シーラント接着層及びシーラント層からなり、各層がこの順になるように積層された積層体を得る工程」に相当する。
b 甲2発明の「基材層11の厚さとしては、6μm~25μm」であることは、本件発明1の「前記基材層の厚さが6~40μm」であることに含まれる。また、甲2発明の「金属箔層13の厚さは、9~200μm、腐食防止処理層14の厚さは、10nm~5μm、シーラント層16の厚さは、10~100μmである」ことは、本件発明1の「前記金属箔層の厚さが9~200μmであり、前記腐食防止処理層の厚さが10nm~5μmであり、前記シーラント層の厚さが10~100μm」であることに相当する。
c 甲2発明の「金属箔層13としては、軟質アルミニウム箔を用い」ることは、本件発明1の「前記金属箔層が、軟質アルミニウム箔」であることに相当する。
d 甲2発明の「基材層11は、」「第1基材層11aおよび第2基材層11bを有する多層構成であり、第1基材層11aは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであり、第2基材層11bは、ポリエステルエラストマーを含有」することは、本件発明1と「前記基材層は、」「ポリエステルフィルムからなる層」である点で共通する。
ただし、基材層が、本件発明1は「下記式(1)で示されるΔAが12%以上であり、かつ200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上」「ΔA=(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)・・・(1)[破断伸度及び50%伸長時応力値は、それぞれ基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対し引張試験(試験片形状:JIS K7127に規定される5号型ダンベル状、チャック間距離:75mm、標点間距離:25mm、試験速度:50mm/min)を行ったときの23℃における平均値である。]」であるのに対し、甲2発明は200℃での熱処理後の50%伸長時応力値、及び(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値が特定されたものではない点で相違する。
e リチウムイオン電池は蓄電装置であるから、甲1発明の「リチウムイオン電池用外装材の製造方法」は、本件発明1の「蓄電装置用外装材の製造方法」に相当する。
f 上記aないしeより、本件発明1と甲1発明とは以下の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
「基材層、接着層、金属箔層、前記金属箔層の少なくとも一方の面に形成された腐食防止処理層、シーラント接着層及びシーラント層からなり、各層がこの順になるように積層 された積層体を得る工程を備え、
前記基材層の厚さが6~40μmであり、前記金属箔層の厚さが9~200μmであり、前記腐食防止処理層の厚さが10nm~5μmであり、前記シーラント層の厚さが10~100μmであり、
前記金属箔層が、軟質アルミニウム箔であり、
前記基材層は、ポリエステルフィルムからなる層である、蓄電装置用外装材の製造方法。」
〈相違点4〉
基材層が、本件発明1は「下記式(1)で示されるΔAが12%以上であり、かつ200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上」「ΔA=(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)・・・(1)[破断伸度及び50%伸長時応力値は、それぞれ基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対し引張試験(試験片形状:JIS K7127に規定される5号型ダンベル状、チャック間距離:75mm、標点間距離:25mm、試験速度:50mm/min)を行ったときの23℃における平均値である。]」であるのに対し、甲2発明は200℃での熱処理後の50%伸長時応力値、及び(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値が特定されたものではない点。
(イ)判断
上記「(ア)f」のように、本件発明1と甲2発明とは相違するから、本件発明1は甲第2号証に記載された発明ではない。
この点について、申立人は申立書(第39ないし40頁)において、甲第2号証の実施例1、3では、本件明細書の実施例の外装材と、同等の成型性であるから、甲第2号証の実施例1、3の基材は、請求項1に規定された構成を充足する蓋然性が非常に高い旨主張している。
しかしながら、甲第2号証には、実施例1、3に用いられる基材層として、「基材A-1:多層構造の共押出しフィルム第1基材層/第2基材層=PET(11μm)/エラストマー含有PET(5μm)」「基材A-3:多層構造の共押出しフィルム第1基材層/第2基材層=PET(15μm)/エラストマー含有PET(1μm)」と記載されるのみであり200℃での熱処理後の50%伸長時応力値、及び(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値は記載されていない。また、成型性が同等であれば同じ構成を有するとはいえないから、甲第2号証の実施例1、3の成型性が本件明細書の実施例と同等であることのみをもって、甲第2号証の実施例1、3で用いられた基材層が本件発明1の相違点4に係る構成を充足するとは認められない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
次に、上記相違点4に係る構成の進歩性について検討する。
甲第2号証(段落【0016】)には基材層11について、「基材層11は、リチウムイオン電池を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制する役割を果たす」旨記載されているのみであり、200℃での熱処理後の50%伸長時応力値、及び(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値は記載も示唆もされていない。また、上記「(1)ア(イ)」で検討したように、甲第3ないし4号証のいずれにも、50%伸長時応力値、及び(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値は記載も示唆もされていない。
したがって、甲2発明及び甲第3ないし4号証に記載された技術事項に基づいて、本件発明1の相違点4に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
そして、本件発明1は、50%伸長時応力値、及び(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値を所定値以上とすることにより、熱処理の熱により基材層11がより小さい力で大きく伸ばされ易くなった場合でも破断しにくいため、熱処理後においても深絞り成型を可能とすることができ、外装材10に局所的な力が加わったときの力を分散することができ、深絞り成型をしたときの金属箔層14の破断を抑制することができるものである(本件明細書段落【0022】、【0023】)。
イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成に加え、「積層体を得る工程」が「基材層」と「接着層」の間に「易接着処理層」が積層された積層体を得る工程であり、「前記易接着処理層の厚さが0.02~0.5μm」であることを特定したものである。
してみると、本件発明2と甲2発明とは以下の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
「基材層、接着層、金属箔層、前記金属箔層の少なくとも一方の面に形成された腐食防止処理層、シーラント接着層及びシーラント層からなり、各層がこの順になるように積層 された積層体を得る工程を備え、
前記基材層の厚さが6~40μmであり、前記金属箔層の厚さが9~200μmであり、前記腐食防止処理層の厚さが10nm~5μmであり、前記シーラント層の厚さが10~100μmであり、
前記金属箔層が、軟質アルミニウム箔であり、
前記基材層は、ポリエステルフィルムからなる層である、蓄電装置用外装材の製造方法。」
〈相違点5〉
本件発明2は、「積層体を得る工程」が「基材層」と「接着層」の間に「易接着処理層」が積層された積層体を得る工程であり、「前記易接着処理層の厚さが0.02~0.5μm」であるのに対して、甲2発明は、「易接着処理層」が積層されるとは特定されていない点。
〈相違点6〉
基材層が、本件発明2は「下記式(1)で示されるΔAが12%以上であり、かつ200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上」「ΔA=(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)・・・(1)[破断伸度及び50%伸長時応力値は、それぞれ基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対し引張試験(試験片形状:JIS K7127に規定される5号型ダンベル状、チャック間距離:75mm、標点間距離:25mm、試験速度:50mm/min)を行ったときの23℃における平均値である。]」であるのに対し、甲2発明は200℃での熱処理後の50%伸長時応力値、及び(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値が特定されたものではない点。
したがって、本件発明2と甲2発明とは相違するから、本件発明2は甲第2号証に記載された発明ではない。
また、上記「ア」において相違点4について検討したのと同様の理由により、甲2発明及び甲第3ないし4号証に記載された技術事項に基づいて、本件発明2の相違点6に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ 本件発明3ないし5について
本件発明3ないし5は、本件発明1又は2を直接又は間接的に引用するものである。
したがって、本件発明3ないし5は、甲第2号証に記載された発明ではない。
また、甲2発明及び甲第3ないし4号証に記載された技術事項に基づいて、本件発明3ないし5に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
エ 小括
以上のことより、本件の請求項1、5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と同一とはいえず、請求項1、5に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
また、本件の請求項1ないし5に係る特許は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3ないし4号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえず、請求項1ないし5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
(3)申立理由5について
本件の明細書段落【0022】に「外装材10において、上記のΔAが12%以上であることにより、熱処理の熱により基材層11がより小さい力で大きく伸ばされ易くなった場合でも破断しにくいため、熱処理後においても深絞り成型を可能とすることができる。・・・なお、ΔAの上限は特に限定されるものではないが、基材層11が伸ばされ易くなり50%伸長時応力値が小さくなりすぎると、金属箔層14を成型応力から保護する役割を果たしにくくなるという観点から、100%程度とすることができる。」、段落【0023】に「また、外装材10において、200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上であることにより、外装材10に局所的な力が加わったときの力を分散することができ、深絞り成型をしたときの金属箔層14の破断を抑制することができる。・・・なお、50%伸長時応力値の上限は特に限定されるものではないが、成型して使用されるという観点から、250MPa程度とすることができる。」、段落【0024】に「基材層11のポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂としては、上記の特性を満たし得るものであれば特に制限なく用いることができるが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル等が挙げられる。これらの中でも、深絞り成型性に優れるという観点から、共重合ポリエステルを好適に用いることができる。」と記載されており、当該記載によれば、熱処理の熱により基材層11がより小さい力で大きく伸ばされ易くなった場合でも破断しにくいため、熱処理後においても深絞り成型を可能とすることができ、外装材10に局所的な力が加わったときの力を分散することができ、深絞り成型をしたときの金属箔層14の破断を抑制するために、200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上であり、(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値が12%以上のポリエステルフィルムを用いることが解る。
してみると、本件の明細書段落【0006】に記載された深絞り成型性に優れる蓄電装置用外装材を提供するという本件発明の目的のためには、基材層として、200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上であり、(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値が12%以上のポリエステルフィルムを用いれば足ることが、本件明細書の記載から当業者には明らかである。
そして、外装材の深掘り成型性は、基材層の材料のみならず外装材の各構成層の材質や厚さに依存するとしても、基材層を200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上であり、(200℃での熱処理後の破断伸度)-(160℃での熱処理後の破断伸度)の値が12%以上のポリエステルフィルムとすることにより本件発明の課題は一定程度解決し得ると認めらる。
また、外装材の各構成層は、各層の機能を奏する、通常用いられる材料や厚みのものとすれば良いことは、当業者には明らかであることに加え、本件発明1は、金属箔層、腐食防止処理槽、シーラント層の厚さや金属箔層の材料も特定されている。
よって、出願時の技術常識を踏まえると、接着層、シーラント接着層、シーラント層の材料及び厚みについても任意のものが包含されているからといって、本件発明1は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえない。本件発明2ないし5についても、同様である。
よって、申立人の主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701188