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特許異議申立

2024-700070

注入支援システム及び方法、並びにプログラム

審判番号
2024-700070
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-039899
登録番号
7317437
請求日
2024年01月30日
審決日
2024年11月20日
公報発行日
2025年02月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】フジモリ産業株式会社
  • 【権利者代理人】渡辺 昇
  • 【権利者代理人】原田 三十義
  • 【権利者】株式会社演算工房
  • 【権利者代理人】渡辺 昇
  • 【権利者代理人】原田 三十義
  • 【異議申立人】八木 俊和
審判長/審判官
  • 審判長 古屋野 浩志
  • 審判官 小林 俊久
  • 審判官 ▲高▼橋 祐介
分類
P1651.121-YAA(E21D) / P1651.851-YAA(E21D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7317437号発明「注入支援システム及び方法、並びにプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7317437号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9、11、12〕、10について訂正することを認める。 特許第7317437号の請求項1-12に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7317437号(以下「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成31年3月5日の出願であって、令和5年7月11日付けで特許査定がなされるとともに同月21日に特許権の設定登録がなされ、同月31日に特許掲載公報が発行された。 本件特許の特許異議の申立ての経緯は次のとおりである。 令和6年 1月30日 特許異議申立人八木俊和(以下、単に「特許 異議申立人」という。)による本件特許に対 する特許異議の申立て 4月18日付け 取消理由通知書 6月17日 特許権者による特許異議意見書及び訂正請求 書の提出 9月 2日 特許異議申立人による意見書の提出 第2 本件訂正請求について 1 訂正の内容 令和6年6月17日になされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)による訂正の内容は以下のとおりである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「その図形が表す注入孔の」と記載されているのを、「その図形が表す実際の注入孔の、」(下線は当審合議体が付した。以下同じ。)と訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~9、11及び12も同様に訂正する)。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項10に「その図形が表す注入孔の」と記載されているのを、「その図形が表す実際の注入孔の、」と訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項11に「その図形が表す注入孔の」と記載されているのを、「その図形が表す実際の注入孔の、」と訂正する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項12に「その図形が表す注入孔の」と記載されているのを、「その図形が表す実際の注入孔の、」と訂正する。 2 本件特許の明細書及び図面の記載 本件訂正請求において、訂正事項1~4の訂正の根拠とされた、本件特許の明細書及び図面の記載は以下のとおりである。 「【0039】 アーチ画像40は、大径の半円部41と、複数の小径の円部42とを含む。半円部41は、トンネル1のアーチ部1aを模したものである。半円部41の外周側に小径の円部42が配置されている。これら円部42は、実際の注入孔21を模したものであり、注入孔21と一対一に対応し、かつ実際の注入孔21の並びにしたがって並べられている。各円部42には、対応する注入孔21の孔番号が付されている。」 「【図7】 [図:0001419346000001.jpg] 」 3 訂正の適否 訂正事項1~4は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1、10、11及び12に、それぞれ、「その図形が表す注入孔の」と記載されているのを、「その図形が表す実際の注入孔の、」とする訂正事項1~4の訂正は、その図形が単に模式的に注入孔を表しているのではなく、「実際の」注入孔に対応したものであることを限定したものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1~4の訂正については、本件特許の明細書の【0039】及び図面の【図7】の記載に基づくものであるから、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、また実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 4 一群の請求項について 訂正事項1に係る訂正前の請求項1~9、11及び12について、その請求項2~9、11及び12は直接的又は間接的に請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~9、11及び12に対応する訂正後の請求項1~9、11及び12は、特許法120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 5 小括 以上のとおりであるから、訂正事項1~4に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 また、訂正事項1~4の訂正については、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであるが、訂正事項1~4は、特許異議の申立てがされている請求項1~12に係る訂正であり、訂正事項1~4による特許請求の範囲の限定的減縮が行われていても、訂正後の請求項1~12に係る発明について、同条9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。 したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項〔1~9、11、12〕及び10を、本件訂正請求の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項〔1~9、11、12〕及び10のとおり訂正することを認める。 第3 本件発明 前記第2のとおり、訂正後の特許請求の範囲について本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~12に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、記号1A等は、分説するため当審合議体が付した。以下、1A等を付した事項を「特定事項1A」等という。 「【請求項1】 1A 施工中のトンネル内に設置された注入機からの注入材を、周辺の地山に形成した複数の注入孔から前記地山に注入する注入工法における注入支援システムであって、 1B 前記複数の注入孔が、前記トンネルの周方向に間隔を置いて並んで配置されており、 1C 各注入孔における注入データを取得する取得部と、 1D 前記注入データに基づいて、各注入孔における注入状況を視覚的に識別可能に表す表示データを作成する作成部と、 1E 前記表示データを画像表示する画像表示部と を備え、 1F 前記作成部は、前記トンネルを模した図形に沿って、前記各注入孔を模した、前記図形より小さな複数の図形が、実際の注入孔の並び順の通りに間隔を置いて配置され、かつ前記小さな複数の図形の各々における内側部分の色が、その図形が表す実際の注入孔の、外部かつ周辺の地山へ広がる前記注入材の注入度合を表す表示画面の表示データを作成することを特徴とする 1G トンネル施工における注入支援システム。 【請求項2】 2A 前記作成部が、前記トンネルを模した図形として前記トンネルのアーチ部を模した大径の半円部に沿って、各注入孔を模した前記小さな図形として複数の小径の円部を並べた表示データを作成し、かつ前記各円部の視覚的態様によって対応する注入孔の注入状況を表すことを特徴とする 2B 請求項1に記載の注入支援システム。 【請求項3】 3A 前記作成部が、前記各円部の縁部分の色が、対応する注入孔について未注入か注入中か注入完了かを表し、前記各円部の前記縁部分より内側部分の色が、対応する注入孔が注入中であるとき、前記外部かつ周辺の地山へのリアルタイムの注入度合を表す表示データを作成することを特徴とする 3B 請求項2に記載の注入支援システム。 【請求項4】 4A 前記作成部が、縦軸を各注入孔における注入度合とし、横軸を前記実際の注入孔の並びとしたグラフの表示データをさらに作成することを特徴とする 4B 請求項1~3の何れか1項に記載の注入支援システム。 【請求項5】 5A 前記注入度合が、注入量又は注入圧を含むことを特徴とする 5B 請求項1~4の何れか1項に記載の注入支援システム。 【請求項6】 6A 各注入孔が、直線状に延び、かつ延び方向に複数の注入領域に区分けされており、 前記注入機が、前記注入領域ごとに注入材を注入し、 前記取得部が、前記注入領域ごとに注入データを取得し、 前記作成部が、各注入孔における注入状況を注入領域ごとに視覚的態様によって区別した表示データを作成することを特徴とする 6B 請求項1~5の何れか1項に記載の注入支援システム。 【請求項7】 7A 前記取得部が取得した注入データを送信する通信部と、 前記送信された注入データを受信する遠隔無線端末と、を更に備え、 前記遠隔無線端末が、前記作成部と、前記表示データを画像表示する画像表示部とを含むことを特徴とする 7B 請求項1~6の何れか1項に記載の注入支援システム。 【請求項8】 8A 前記遠隔無線端末が、前記注入機に対する操作入力部を前記画像表示部に表示させる操作表示部と、前記操作入力部の操作情報を前記注入機へ送信する操作送信部とを更に含み、 前記注入機が、受信した前記操作情報にしたがって運転されることを特徴とする 8B 請求項7に記載の注入支援システム。 【請求項9】 9A 前記取得部と接続され、前記取得部からの注入データを蓄積する記憶端末を更に備え、 前記遠隔無線端末が、前記注入データを蓄積する記憶部を含み、かつ前記記憶端末に蓄積された注入データを定期的又は不定期的に受信して、前記記憶部の注入データを更新することを特徴とする 9B 請求項7又は8に記載の注入支援システム。 【請求項10】 10A 施工中のトンネル内に設置された注入機からの注入材を、周辺の地山に形成した複数の注入孔から前記地山に注入する注入工法における注入支援方法であって、 10B 前記複数の注入孔が、前記トンネルの周方向に間隔を置いて並んで配置されており、 10C 各注入孔における注入データを取得する工程と、 10D 前記注入データに基づいて、各注入孔における注入状況を視覚的に識別可能に表す表示データを作成する工程と、 10E 前記表示データを画像表示する工程と を備え、 10F 前記作成する工程では、前記トンネルを模した図形に沿って、前記各注入孔を模した、前記図形より小さな複数の図形が、実際の注入孔の並び順の通りに間隔を置いて配置され、かつ前記小さな複数の図形の各々における内側部分の色が、その図形が表す実際の注入孔の、外部かつ周辺の地山へ広がる前記注入材の注入度合を表す表示画面の表示データを作成することを特徴とする 10G 注入支援方法。 【請求項11】 11A 請求項1~9の何れか1項に記載の注入支援システムにおける作成部を構成するコンピュータに、 各注入孔における注入データを受け取る処理と、 受け取った注入データに基づいて、各注入孔における注入状況を視覚的に識別可能に表す表示データを作成する処理と、 を実行させ、前記作成する処理では、前記トンネルを模した図形に沿って、前記各注入孔を模した、前記図形より小さな複数の図形が、実際の注入孔の並び順の通りに間隔を置いて配置され、かつ前記小さな複数の図形の各々における内側部分の色が、その図形が表す実際の注入孔の、外部かつ周辺の地山へ広がる前記注入材の注入度合を表す表示画面の表示データを作成する処理を実行させることを特徴とする 11B プログラム。 【請求項12】 12A 請求項8に記載の注入支援システムにおける遠隔無線端末を構成するコンピュータに、 各注入孔における注入データを受け取る処理と、 受け取った注入データに基づいて、各注入孔における注入状況を視覚的に識別可能に表す表示データを作成する処理と、 前記注入機に対する操作入力部の表示指令を受け付ける処理と、 前記表示指令を受けたとき、前記操作入力部を前記画像表示部に表示させる処理と、 前記操作入力部の操作を受け付ける処理と、 前記操作入力部の操作情報を前記注入機へ送信する処理と、 を実行させ、前記作成する処理では、前記トンネルを模した図形に沿って、前記各注入孔を模した、前記図形より小さな複数の図形が、実際の注入孔の並び順の通りに間隔を置いて配置され、かつ前記小さな複数の図形の各々における内側部分の色が、その図形が表す実際の注入孔の、外部かつ周辺の地山へ広がる前記注入材の注入度合を表す表示画面の表示データを作成する処理を実行させることを特徴とする 12B プログラム。」 第4 特許異議の申立て及び取消理由通知について 1 特許異議の申立ての理由の概要 特許異議申立人は、以下の甲第1号証~甲第7号証を提出した。 甲第1号証:特開2011-27471号公報 (以下「甲1」という。) 甲第2号証:特開2009-275442号公報 (以下「甲2」という。) 甲第3号証:特開2016-89623号公報 (以下「甲3」という。) 甲第4号証:特開2016-166529号公報 (以下「甲4」という。) 甲第5号証:特開2002-296076号公報 (以下「甲5」という。) 甲第6号証:特開2011-106133号公報 (以下「甲6」という。) 甲第7号証:特開平6-257381号公報(以下「甲7」という。) そして、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載された取消の理由(以下「異議申立理由」という。)の概要は以下のとおりである。 (理由) 1 本件発明1~12は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証又は甲第3号証に記載された事項を適用した発明、さらに甲第4号証から甲第7号証に記載された事項を組み合わせた発明に基づいて、容易想到であるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。よって、本件発明は、同法113条2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 2 令和6年4月18日付け取消理由通知書における取消の理由の概要 本件訂正前の請求項1~2、4~5及び7~12に係る特許に対して、当審合議体が令和6年4月18日付けで特許権者に通知した取消理由通知書に記載された取消の理由(以下「取消理由」という。)の概要は以下のとおりである。 (取消理由) 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~2、4~5及び7~12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~2、4~5及び7~12に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 ・甲1 ・甲2 ・甲4 ・甲5 ・甲7 (本件特許発明1及び5は、甲1-1発明及び甲2記載技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明2、7及び9は、甲1-1発明、甲2記載技術及び甲4記載技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明4は、甲1-1発明、甲2記載技術及び甲5記載技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明8は、甲1-1発明、甲2記載技術、甲4記載技術及び甲7記載技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明10は、甲1-2発明及び甲2記載技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、本件特許発明11は、甲1-3発明及び甲2記載技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、本件特許発明12は、甲1-3発明、甲2記載技術、甲4記載技術及び甲7記載技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。) 第5 当審合議体の判断 1 取消理由について 1-1 取消理由に挙げた各甲号証の記載事項 (1) 甲1 本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審合議体が付した。以下同様。)。 ア 記載事項 (ア) 「【0002】 一般に、トンネル工事において掘削精度の測定にレーザーを用いることが知られており、このようなレーザーを用いた測定はトンネルの径が大きければ人力によって行うことができるが、トンネルの径が小さくなったり、小径の掘削孔の測定には適用できないものであった。 【0003】 特に、山岳トンネルのAGF工法においては、掘削機により切羽に小径の掘削孔を掘削し、そこに鋼管等を挿入して注入材を注入することでトンネルの安定を図るようにしているが、この際の掘削孔に曲がりが生じていると、均一な注入材の注入では有効な注入効果が得られないことがあるが、このような小径の掘削孔の曲がり度を測定するものが存在しないのが現状である。 (中略) 【0007】 本発明の目的は、口径が比較的小径で、曲がりがあるために見通しができない形状の掘削孔の曲がり度を、掘削孔の内部環境による影響を受けることなく、しかも、手間を要することなく、簡便に正確な測定ができる掘削孔の曲がり度測定装置及びそれを用いた掘削孔の曲がり度測定方法を提供することにある。」 (イ) 「【0028】 この掘削孔曲がり度測定装置10は、例えば、図3に示すように、山岳トンネルのAGF工法において、トンネル12の切羽14に注入材を注入するための掘削孔16を掘削した際に、その掘削孔16の曲がり度を測定して、その曲がり度に応じて注入材の注入量を制御することで、注入効果を高めようとするもので、複数の測定ユニット18を有している。 【0029】 各測定ユニット18は、図1に示すように、筒体20と、レーザー発光部22と、スクリーン24と、撮像手段26と、伝送手段28とを有し、この伝送手段28が外部の制御装置30と接続されるようになっている。 (中略) 【0046】 制御装置30は、その撮像データに基づいて最初の測定ユニット18の先端の位置ずれ0を算出する。 (中略) 【0048】 このように、複数の測定ユニット18の位置ずれをそれぞれ測定することで、掘削孔16の全体の曲がり度を測定するようになっている。 【0049】 また、この制御装置30は、予め測定ユニット18の長さを記憶しており、それに基づいて図3に示すように、制御装置30に接続されたモニタ34に、図4(A)に示すような各測定ユニット18の撮像画面36掘削孔16のトンネル12縦断面方向の画面38及び横断面方向の画面40を表示して、三次元的に認識できるようにしている。 (中略) 【0051】 また、制御装置30は、注入材の注入圧、注入量、土質による注入材の広がり具合を計算上算出して注入管理を行うようになっており、注入エリアが重ならないとき注入不足となるので、図4(B)のトンネル横断面方向及び同図(C)のトンネル縦断面方向における注入材42の注入結果シミュレーション画面44、46を表示し、各注入パイプごとの注入圧、注入量、パイプ延長、角度、パイプ挿入口座標などの履歴管理を行うようにしている。 (中略) 【0070】 また、制御装置30は、モニタ34に図4(A)に示すような各測定ユニット18の撮像画面36及びトンネル縦断面方向の画面38、横断面方向の画面40を表示して、掘削孔16の曲がり度を三次元的に把握できるようにする。 【0071】 さらに、モニタ34には、図4(B)、(C)に示すような横断方向及び縦断面方向での注入結果シミュレーション画面を表示して、各掘削孔16の注入材の注入量を把握できるようにしている。」 (ウ) 【図3】「 [図:0001419346000002.jpg] 」 (エ) 【図4】「 [図:0001419346000003.jpg] 」 イ 認定事項 上記アに摘記した記載事項に基づいて、甲1には、以下の事項が記載されているものと認められる。 (ア) 認定事項1 甲1における「制御装置30は、注入材の注入圧、注入量、土質による注入材の広がり具合を計算して注入管理を行うようになっており、注入エリアが重ならないとき注入不足となるので、図4(B)のトンネル横断面方向・・・における注入材42の注入結果シミュレーション画面44・・・を表示し」(【0051】)及び「モニタ34には、図4(B)・・・に示すような横断方向・・・での注入結果シミュレーション画面を表示して、各掘削孔16の注入材の注入量を把握できるようにしている。」(【0071】)とされた記載を踏まえて、上記ア(エ)に示した【図4】の(B)から、「モニタ34には、トンネル横断面方向のアーチ部を模した大径の半円部の図形に沿って、各掘削孔16を模した、前記半円部の図形より小さな複数の、5本の細長い棒形状の図形が、実際の掘削孔16の並び順のとおりに周方向に間隔を置いて並んで配置され、注入材の広がり具合を計算上算出して、各掘削孔16の注入材42の注入量を把握できる注入結果シミュレーション画面44を表示するようにした」(認定事項1)点が見て取れる。 (イ) 認定事項2~3 甲1における「制御装置30は、注入材の注入圧、注入量、土質による注入材の広がり具合を計算上算出して注入管理を行うようになっており、・・・注入材42の注入結果シミュレーション画面44、46を表示し、各注入パイプごとの注入圧、注入量・・・などの履歴管理を行うようにしている。」(【0051】)とされた記載から、「注入管理」、「シミュレーション画面44、46」の「表示」、「履歴管理」等を行う「制御装置30」は、「注入支援システム」(認定事項2)を用いた「注入支援方法」(認定事項3)を構成すると認められる。 ウ 甲1-1発明、甲1-2発明 上記アに摘記した記載事項及び上記イで認定した認定事項から、甲1には次の発明が開示されていると認められる(以下「甲1-1発明」等という。)。 (甲1-1発明) 「掘削機により切羽に小径の掘削孔を掘削し、そこに鋼管等を挿入して注入材を注入する山岳トンネルのAGF工法において(【0003】)、トンネル12の切羽14に注入材を注入するための掘削孔16を掘削し(【0028】)、制御装置30が、注入材の注入圧、注入量、土質による注入材の広がり具合を計算上算出して注入管理を行い、各掘削孔16の各注入パイプごとの注入圧、注入量などの履歴管理を行い(【0051】、【0071】)、モニタ34には、トンネル横断面方向のアーチ部を模した大径の半円部の図形に沿って、各掘削孔16を模した、前記半円部の図形より小さな複数の、細長い棒形状の図形が、実際の掘削孔16の並び順のとおりに周方向に間隔を置いて並んで配置され、注入材の広がり具合を計算上算出して、各掘削孔16の注入材42の注入量を把握できる注入結果シミュレーション画面44を表示するようにした(認定事項1)注入支援システム(認定事項2)。」 (甲1-2発明) 「掘削機により切羽に小径の掘削孔を掘削し、そこに鋼管等を挿入して注入材を注入する山岳トンネルのAGF工法において(【0003】)、トンネル12の切羽14に注入材を注入するための掘削孔16を掘削し(【0028】)、制御装置30が、注入材の注入圧、注入量、土質による注入材の広がり具合を計算上算出して注入管理を行い、各掘削孔16の各注入パイプごとの注入圧、注入量などの履歴管理を行い(【0051】、【0071】)、モニタ34には、トンネル横断面方向のアーチ部を模した大径の半円部の図形に沿って、各掘削孔16を模した、前記半円部の図形より小さな複数の、細長い棒形状の図形が、実際の掘削孔16の並び順のとおりに周方向に間隔を置いて並んで配置され、注入材の広がり具合を計算上算出して、実際の各掘削孔16の注入材42の注入量を把握できる注入結果シミュレーション画面44を表示するようにした(認定事項1)注入支援方法(認定事項3)。」 (2) 甲2 本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲2には、次の事項が記載されている。 ア 記載事項 (ア) 「【0001】 本発明は、地盤改良機のフロントに取付けた注入攪拌装置の撹拌軸の下端部に撹拌翼を設け、撹拌軸の下端部より固化材を地中に注入すると同時に撹拌翼により注入領域を撹拌して地盤改良を行う地盤改良工事における施工品質管理システムに関する。」 (イ) 「【0014】 図1は本発明による地盤改良作業を行う地盤改良機の一実施の形態を示す側面図である。この地盤改良機1の構成は次の通りである。下部走行体2上に旋回装置3を介して上部旋回体4を設置し、この上部旋回体4上に油圧パワーユニット5と運転室6を設置する。上部旋回体4にフロントとしての多関節アーム7にピン13を介して地盤改良のための固化材の注入撹拌装置8を回動可能に取付ける。 (中略) 【0016】 注入撹拌装置8は、アーム12にピン13により取付けられるブラケット17と、このブラケット17に回転可能に取付けられた撹拌軸18と、ブラケット17に取付けられ、撹拌軸18を回転させる油圧モータでなる駆動モータ19と、撹拌軸18の下端に取付けられた掘削機能を有する撹拌翼20とを有する。撹拌軸18の下端部には、撹拌軸18を通して送られる固化材を地中に注入する注入口を有する。 (中略) 【0018】 27は運転室6に装備したモニタであり、このモニタ27は、施工状況を監視するため、図2に示すように、図1に示した各センサ21~26からの検出信号に基づいて、注入撹拌装置8の位置や深さ、並びに固化材の注入量や撹拌回数等を演算する演算装置29と、その演算結果等を記憶する記憶装置30と、記憶された値などの表示装置31を含むものである。 【0019】 図3は地盤改良機1と施工範囲32との関係を説明する図である。地盤改良機1を固定したままで地盤改良工事を施工する範囲32は長方形または正方形に設定される。 (中略) 【0021】 図5は表示単位34を地盤改良機1の左右方向、前後方向、深さ方向について区分けする領域設定を説明する図である。33は所定の深さ(H0,H1,H2…)毎に区分けされた水平断面表示ブロックである。この水平断面表示ブロック33の広さは、1つの施工範囲32に対応している。 【0022】 この実施の形態においては、図6に示すように、行Y0~Ym毎に分離された垂直断面表示ブロック35も準備する。この垂直断面表示ブロック35は地盤改良の全深さについて、行Y0、Y1…Ym毎に表示単位34を垂直方向にまとめて1つの表示ブロック35として表示するものである。 【0023】 図7は表示装置31にて表示される表示画面を示す。この実施の形態の表示画面は、タッチパネルで構成されており、図4に示した水平断面表示ブロック33の水平断面表示画面33Aと垂直断面表示ブロック35を表示する垂直断面表示画面35Aとを有する。また、異なる高さについて水平断面表示ブロック33を切換え表示するため、スクロールバー(第2のスクロールバー)36や上移動用指示マーク37および下移動用指示マーク38を表示する。これらのスクロールバー36やマーク37,38は垂直断面表示画面35Aの側部に高さ方向に添えて設けられる。 【0024】 また、異なる行について垂直断面表示ブロック35を切換え表示するため、スクロールバー(第1のスクロールバー)40や行変更用指示マーク41,42を表示する。これらのスクロールバー40やマーク41,42は水平断面表示画面33Aの側部に添えて、すなわち列方向に設けられる。図示例は、スクロールバー36の位置から分かるように水平断面表示画面33Aについては表面の水平断面表示ブロック33が表示されている。また、スクロールバー40の位置から分かるように、垂直断面表示画面35Aには2行目の垂直断面表示ブロック35が表示されている。 【0025】 さらに、表示画面には、各表示単位34における目標攪拌回数を表示する欄43と、固化材の目標注入量を表示する欄44と、前後方向(Y軸方向)の作業範囲(m)を表示する欄45と、左右方向(X軸方向)の作業範囲(m)を表示する欄46と、撹拌翼20の現在の深さ(m)を表示する欄47と、撹拌翼20の現在の左右方向の位置(例えば作業範囲の左端からの距離(m))を表示する欄49と、撹拌翼20の現在の前後方向の位置(例えば作業範囲32の地盤改良機1側に近い端部からの距離(m))を表示する欄54と、その作業現場の下部走行体2を固定した状態での作業における固化材の積算流量(L)を表示する欄55と、水平断面表示画面33Aと垂直断面表示画面35Aとについて、固化材の注入量と撹拌回数のいずれを表示するかを選択する表示切換え手段54とを備える。この表示切換え手段54は、現在は固化材の注入量と撹拌回数のいずれを表示しているかを表す表示欄を兼用している。 (中略) 【0027】 固化材の注入、撹拌作業は、不図示の固化材供給装置から多関節アーム7に沿って添設される固化材注入用配管を通して撹拌軸18内に送られ、撹拌軸18の下端の注入口から地中に流出させると同時に、撹拌翼20により掘削しながら撹拌し、撹拌軸18を次第に深くしてゆき、圧力センサ25により検出される油圧Pが予め設定された油圧より高くなる(すなわち予め決められた基準の硬度以上に達する)と撹拌軸18を引上げる。この引上げの際にも撹拌軸18から固化材を注入してもよい。このような固化材の注入、撹拌作業を例えば(x0,y0)、(x1,y0)、(x2,y0)…(xn,y0)とY0行について行い、次に(x0,y1)、(x1,y1)、(xn,y1)…とY1行について行い、という風にYm行まで行う。 (中略) 【0031】 表示単位34における固化材注入量は、撹拌軸18の注入口が1つの表示単位34内にある間における固化材流量センサ24により検出される流量Vを演算装置29で積算することにより求められる。また、1つの表示単位34における撹拌回数は、撹拌軸18の注入口が1つの表示単位34内にある間における回転センサ26により検出される撹拌軸18の回転数Nを演算装置29で積算することにより求められる。 【0032】 このような各表示単位34における固化材注入量と撹拌回数は、記憶装置30に記憶され、オペレータが表示装置31を操作することにより、表示画面に表示される。この実施の形態においては、固化材注入量と撹拌回数が一度に表示されるのではなく、切換え表示される例について示している。 【0033】 図7に示すように、表示装置31においては、1つの水平断面表示ブロック33の各表示単位34毎に固化材注入量または撹拌回数が設定値に達しているか否かが水平断面表示画面33Aにて表示されると共に、1つの行の垂直断面表示画面35Aの各表示単位34について固化材注入量または撹拌回数が表示される。水平断面表示画面33Aでどの深さの水平断面表示ブロック33の固化材注入量または撹拌回数を表示するかは、オペレータがスクロールバー36や上移動用指示マーク37または下移動用指示マーク38にタッチしてスクロールバー36を移動させ、垂直断面表示画面35A上に表示された深さを選択し、スクロールバー36に連動して、水平断面表示画面33Aに、垂直断面表示画面35A上の行に相当する水平断面表示ブロック33を表示する。 【0034】 また、オペレータがスクロールバー40や行変更用指示マーク41,42をタッチすることにより、スクロールバー40を移動させ、この移動に連動して、水平断面表示画面33A上の行に相当する垂直断面表示ブロック35を垂直断面表示画面35A上にて選択表示する。また、固化材注入量を表示するか撹拌回数を表示するかは、表示切換え手段となる欄56にタッチすることで交互に選択されると同時に、現在の表示内容が文字により表示される。 【0035】 ここで、固化材注入量または撹拌回数が設定値に達しているかどうかは、演算装置29において演算され、合否が判別されており、判別結果を、各表示単位34毎に、目視により識別可能な手段で表示する。この合否の表示は、色分けにより行なうかまたは模様を変える等のように、一目で分かる表示により行う。図7において、34aは固化材注入量または撹拌回数が設定値に達していない表示内容を示している。表示画面においては、前記した各欄43~51において、それぞれ前記した表示がなされる。」 (ウ) 【図4】「 [図:0001419346000004.jpg] 」 (エ) 【図5】「 [図:0001419346000005.jpg] 」 (オ) 【図6】「 [図:0001419346000006.jpg] 」 (カ) 【図7】「 [図:0001419346000007.jpg] 」 (3) 甲4 本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲4には、次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は、地盤改良のための薬液注入工法における施工管理システムおよび方法に関する。」 (中略) 【0020】 図1のように、薬液注入工法における施工管理システムは、改良対象地盤Gを削孔して溶液型の恒久薬液を注入することで地盤G内に固化体Cを形成し地盤を固化する薬液注入工法を施工する際の管理システムであり、各種のデータ・情報を受信し情報処理サービスを提供するクラウドサーバ1と、認証情報を受信し保 存する認証サーバ2と、現場事務所に設置されインターネット接続のための通信機5を有するパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」とよぶ。)3と、管理事務所に設置されインターネット接続のための通信機5を有するパソコン4と、がインターネット10を介して接続可能に構成されている。 【0021】 図1において、薬液注入工法の施工現場における地盤削孔のための削孔機11には削孔位置を検出し計測する削孔用計測器が設けられ、その削孔位置情報が、データ収集機能と通信機能とを有するIoTモジュールを組み込んだ処理端末12からインターネット10を経由してクラウドサーバ1にデータ送信される。また、地盤内に溶液型の恒久薬液を注入する注入機21には、薬液注入速度・薬液注入量・薬液注入圧力等の薬液注入情報を計測する薬液注入用計測器が設けられ、その薬液注入情報がデータ収集機能と通信機能とを有するIoTモジュールを組み込んだ処理端末25からインターネット10を経由してクラウドサーバ1にデータ送信される。 【0022】 図1の管理システムによれば、通信機能を有する処理端末12,25により、削孔機11と注入機21の各計測器から出力される計測データをリアルタイムにインターネット10上のクラウドサーバ1に集約することで、パソコン3,4が設置された離れた場所の管理事務所等においても、リアルタイムに施工状況(削孔位置、薬液注入位置、薬液注入速度、薬液注入量、薬液注入圧力等)を確認することができる。 【0023】 図1の管理システムにおける機器構成について図2を参照して説明する。図2は、図1の各機器の構成例を示すブロック図である。 (中略) 【0026】 パソコン3,4は、コンピュータ機能を有し、インターネット10を介して通信を行う通信機5と、情報処理を行う処理部6と、各種データや情報を表示する液晶等からなる表示器7と、を有する。 (中略) 【0028】 また、複数の注入機21,22,23が設置され、薬液注入用計測器として各注入機21~23に設けられた流量圧力計43(図5)により施工中の薬液の流量・圧力のデータを取得し、これらの計測データを信号受信機21a、22a、23aが受信し、信号受信機21a~23aからRS-232Cやイーサネット等の通信規格による通信により、パソコンやコントローラ(図5)等から構成される集中管理装置24に集約し、かかる集約された計測データおよび時刻情報がRS-232Cやイーサネット等の通信規格による通信で処理端末25に送信される。これらの計測データは処理端末25からLTEや3G等の通信規格によるモバイル通信によってインターネット経由でクラウドサーバ1に送信される。また、液晶等からなる表示器26に処理端末25からの各計測データを表示し、施工場所で薬液注入に関するデータ確認を行うことができるようになっている。 (中略) 【0040】 本実施形態における曲がり削孔による薬液注入工法の施工工程について図6,図7を参照して説明する。図6は、本実施形態における曲がり削孔による薬液注入工法の施工状況を概略的に示す図(a)~(h)である。図7は、本実施形態における薬液注入工法の施工工程S01~S14を説明するためのフローチャートである。本実施形態における薬液注入工法は、削孔工程S02~S06と、注入工程S07~S14とに大別される。 (中略) 【0046】 次に、薬液注入のために図5の注入機21を設置する(S07)。具体的には、図6(e)のように、削孔機11により削孔ロッド32を逆回転させて先端のロストビット33を外してロストする。次に、図6(f)のように、注入外管46を削孔ロッド32内に挿入する。次に、図6(g)のように、削孔ロッド32を引き抜き、注入外管46を地盤G内に残置する。 【0047】 次に、注入時の薬液の逸走防止のため注入外管46にダブルパッカー式の注入装置を挿入し、セメントベントナイト等によるスリーブパッカー注入を行う(S08)。このときの注入速度と注入量を計測器(図示省略)により測定し確認する(S09)。所定の注入量を注入したか否かを判断し(S10)、満たない場合は注入を続け、満たした場合は注入を終了する。 【0048】 次に、図5のように、ミキサ41で攪拌混合された溶液型の恒久薬液がインジェクションポンプ42によりホース44,45を通して注入外管46に送られ、注入外管46に設けられた注入口から地盤G内に注入される(S11)。かかる薬液注入により、図6(h)のように、地盤G内に薬液が浸透し、固化体Cが形成される。 (中略) 【0050】 薬液注入における注入速度と注入量を図5の流量圧力計43で測定し図2の表示器26や図5の流量圧力測定装置49により確認する(S12)。所定の注入量を注入したか否かを判断し(S13)、満たない場合は注入を続け、満たした場合は注入を終了する。次に、注入機を搬出する(S14)。 【0051】 上述のようにして、曲がり削孔による薬液注入工法を実施できるが、鉛直削孔による薬液注入工法も同様にして実行できる。すなわち、図5のように、鉛直方向に削孔し、注入外管46を鉛直方向に建て込んでから、同様の工程を経ることで薬液注入を実施できる。なお、本薬液注入工法は、浸透固化処理工法として実施可能であり、図7の施工工程S01~S14については非特許文献1に詳述されている。 (中略) 【0065】 クラウドサーバ1は受信した計測データのうち座標値に基づいて掘削管路およびビット先端33aの位置情報を3次元モデル化し、その3次元モデル情報をインターネット10を介して送信し現場事務所や管理事務所の情報処理端末3,4の表示器7に表示することで、最新の施工状況をいつでもリアルタイムに確認できる。なお、3次元モデル化のための情報処理は、情報処理端末3,4で行ってもよい。 (中略) 【0073】 次に、図7の本実施形態による薬液注入工法の薬液注入工程S07~S14におけるデータ処理について図14~図16を参照して説明する。図14は、本実施形態による薬液注入工法の薬液注入工程におけるデータ処理の流れを説明するためのフローチャートである。図15は、図14の薬液注入工程における計画データの例を示す図である。図16は、図14の薬液注入工程における三次元モデル表示例を概略的に示す図である。 【0074】 図14のように、まず、図5の注入機21の入力表示部48aから図15のような計画の流量、注入量および圧力をコントローラ48に入力する(S51)。 【0075】 次に、注入機21を作動させ、地盤内への薬液注入作業を開始する(S52)。施工中の薬液の流量、注入量および圧力の計測データを流量圧力計43(図5)が取得し(S53)、信号受信機21aから集中管理装置24にて集約する。また、図8~図11と同様にして、工程S51~S53の間に、たとえば、流量圧力計43,集中管理装置24,処理端末25の機器間で機器間認証が行われる。 【0076】 集約された計測データは、機器間認証がなされているので、集中管理装置24,処理端末25からインターネット10を介してクラウドサーバ1へ送信され(S54)、施工情報データベース1aに保存される。 【0077】 クラウドサーバ1は、受信した計測データに基づいて、薬液注入位置の3次元モデル表示情報、および、データベース1aから抽出した現在の流量、注入量および圧力の帳票データ情報を生成し、これらの情報をインターネット10を介して送信し現場事務所や管理事務所の情報処理端末3,4の表示器7に表示することで、最新の施工状況をいつでもリアルタイムに確認できる。薬液注入位置の3次元モデル表示は、たとえば、図16のようになされ、地盤内における注入完了位置、未注入位置、現在注入位置が視覚的に把握できるように色別に表示される。なお、3次元モデル表示のための情報処理は、情報処理端末3,4で行ってもよい。 【0078】 注入機21による薬液注入が図15の計画注入量に達したと判断される(S55)まで工程S52~S55が繰り返される。 【0079】 薬液注入工程の施工結果は、クラウドサーバ1がグラフでの時系列表示および計画との差異を自動計算した表を帳票データとして作成し、データベース1aへ保管される。また、帳票データはインターネット10を介して送信され現場事務所や管理事務所の情報処理端末3,4の表示器7に表示される。」 イ 【図1】「 [図:0001419346000008.jpg] 」 ウ 【図5】「 [図:0001419346000009.jpg] 」 エ 【図16】「 [図:0001419346000010.jpg] 」 (4) 甲5 本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲5には、次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、施工管理記録の電子化に対応することができる注入計測データの管理方法に関するものである。」 イ 「【0013】上記注入装置は、従来公知の注入装置であり、ウレタン薬液注入時におけるウレタン薬液の注入量,注入流速,注入圧力等を計測する計測部と、この計測部で計測したウレタン薬液の注入量,注入流速,注入圧力等の注入計測データをアナログ信号で出力する出力部とを有している。より詳しく説明すると、上記出力部には、ウレタン薬液の注入量をアナログ信号で出力する出力端子,ウレタン薬液の注入流速をアナログ信号で出力する出力端子,ウレタン薬液の注入圧力をアナログ信号で出力する出力端子等が設けられている。 【0014】上記デジタルチャート記録計1の入力部2は、上記注入装置の各出力端子に対応する各入力端子(これら各入力端子は、デジタルチャート記録計1の裏面に設けられているため、隠れて見えない)を有しており、それぞれ対応する注入装置の各出力端子とデジタルチャート記録計1の各入力端子同士が配線コード(図示せず)で電気的に接続されている。これにより、注入装置の計測部で計測されたウレタン薬液の注入量,注入流速,注入圧力等の注入計測データが出力部の各出力端子からアナログ信号でデジタルチャート記録計1の入力部2の各入力端子に入力される。 【0015】上記入力部2にアナログ信号で入力された注入計測データは、上記入力部2に設けたA/D変換器(図示せず)でデジタル信号に変換される。また、上記演算部は、演算式を設定して演算結果を求め、その結果を、後述するトレンド表示,デジタル表示,バーグラフ表示等として、後述する表示部3の液晶画面に表示できる。」 ウ 【図2】「 [図:0001419346000011.jpg] 」 (5) 甲7 本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲7には、次の事項が記載されている。 「【0023】また、この総合管理システム4には、監視用表示手段と操作用表示手段とからなる2種類の表示手段が設けられている。監視用表示手段は、図3に符号X、A~Fで示すように、シールドマシン5、泥水輸送装置6、泥水処理装置7、裏込材供給装置8等の各装置の状態をグラフィック表示し、かつ各装置のスイッチや計器の状態を、オペレータが即座に認識できるように表示してる。操作用表示手段は、オペレータが操作するために参照される画面(図示略)であって、シールドマシン5、泥水輸送装置6、泥水処理装置7、裏込材供給装置8等の各装置の状態を把握し易くするために、必要最小限のスイッチや計器類を集めて表示している。また、この操作用表示手段には、タッチパネル式の操作手段が具備されており、この操作手段により、これら装置のスイッチが操作されるようになっている。また、この操作手段により、後述する自動操作機能25、手動操作機能24等も選択されるようになっている。 (中略) 【0028】(二)操作機能51について、 操作機能51として、手動操作機能24と自動操作機能25とがある。手動操作機能24は、従来、シールドマシン5、泥水輸送装置6、泥水処理装置7、裏込材供給装置8等の各装置毎で行っていたオペレータによる操作を、装置毎に個別に行わせるために、総合管理システム4の操作手段において操作環境を構築するものである。すなわち、この手動操作機能24は、各装置で行う動作を、総合管理システム4の操作手段にて集中的に行わせるためのものである。なお、この総合管理システム4の操作手段での操作は、各装置の状態を監視用表示手段で監視しながら、オペレータにより行わせるものである。」 1-2 その他の各甲号証の記載事項 特許異議申立人が提出した甲号証のうち、令和6年4月18日付け取消理由通知書の取消理由に挙げた甲号証以外の各甲号証の記載事項は以下のとおりである。 (1) 甲3 本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲3には、次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は、地面を掘削加工して地盤と改良材とを混合、撹拌する地盤改良機械に用いる地盤改良システム及び地盤改良工法に関する。 (中略) 【0032】 <表示例1> 図4は、表示画面6での表示例1を示す図である。表示例1では、表示画面6に、地盤Gの平面図が表示され、その周囲に各種情報のリアルタイム値が表示される。地盤Gの平面図内には、掘削設定位置12と回転ヘッド5の現在位置13とが表示されている。掘削設定位置12は、予め設定された掘削位置であり、本実施形態では、複数の掘削設定位置12が坑番号A-1-1,A-1-2,A-1-3・・・のように番号付けされて表示されている。 【0033】 掘削設定位置12の情報は、例えば予め記録部8に記録されており、制御部7を介して表示画面6へと送信される。又は、他の記録媒体から有線通信又は無線通信により制御部7へと送信され、その後表示画面6へと送信される。回転ヘッド5の現在位置13は、位置検出手段9aによる検出結果に基づき、表示画面6上に表示される。掘削設定位置12と回転ヘッド5の現在位置13とが地盤Gの平面図上に重畳表示されるので、地盤改良機械1の操作者は、回転ヘッド5の位置と掘削すべき坑の位置との位置ずれを把握することができる。 【0034】 この表示例1では、地盤改良が完了した坑番号A-1-1,A-1-2に対応する掘削設定位置12と地盤改良が未完了の坑番号A-1-3に対応する掘削設定位置12とを区別して表示している。すなわち、坑番号A-1-1,A-1-2と坑番号A-1-3とを色分け表示している。それにより、地盤改良が完了した坑番号に対応する掘削設定位置12がどれであるかを簡単に判別することができる。なお、ある坑番号に対応する掘削設定位置12での回転ヘッド5による掘削及び撹拌作業が完了し、その掘削設定位置12に対応する仮想区画Xのすべてにおいて、羽根切り回数が予め設定された規定値以上となった場合に、制御部7は、その坑番号に対応する掘削設定位置12において「地盤改良が完了した」と判定する。規定値は、記録部8に記録されていてもよい。 【0035】 なお、もちろん、色分け等による区別表示は、上述のように、「地盤改良が完了したか否か」に基づいて行われる場合に限られない。記録部8に複数の規定値が記録されており、羽根切り回数が各規定値以上となるごとに異る色分け表示によって区別表示されるものであってもよい。また、ここでいう「羽根切り(撹拌)」は、一般的には、改良材注入手段による地盤改良材の坑への注入後に行われる。もちろん、それに限られず、地盤改良材の注入なく地盤Gを撹拌することを「羽根切り」と概念することも可能である。」 イ 【図4】「 [図:0001419346000012.jpg] 」 ウ 甲3記載技術 上記アに摘記した記載事項から、甲3には次の事項が記載されていると認められる(以下「甲3記載技術」という。)。 (甲3記載技術) 「地面を掘削加工して地盤と改良材とを混合、撹拌する地盤改良機械に用いる地盤改良システム及び地盤改良工法において(【0001】)、表示画面6に、地盤Gの平面図が表示され、地盤Gの平面図内には、予め設定された掘削位置である掘削設定位置12と回転ヘッド5の現在位置13とが表示され、複数の掘削設定位置12が坑番号A-1-1,A-1-2,A-1-3・・・のように番号付けされて表示されており(【0032】)、地盤改良が完了した坑番号A-1-1,A-1-2に対応する掘削設定位置12と地盤改良が未完了の坑番号A-1-3に対応する掘削設定位置12とを区別して色分け表示し、地盤改良が完了した坑番号に対応する掘削設定位置12がどれであるかを簡単に判別することができるようにした(【0034】)技術。」 (2) 甲6 本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲6には、次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は固結材注入方法及び固結材注入装置に係り、特に、地山に打設された補強管の全長周辺部を複数のゾーンに分け、それぞれのゾーンに対応する位置に開口を備える複数の注入管を該補強管に挿入し、各注入管を通してポンプより固結材を補強管内に注入し、該補強管に形成した吐出孔より補強管周辺部の各ゾーンに固結材を噴出させて固結領域を形成する固結材注入方法及び固結材注入装置に関する。 (中略) 【0013】 補強鋼管26は、3m程の鋼管をカプラで継ぎ足しながら12m以上のものを打設すること標準であり、かかる長尺の補強管周辺部に全長に亘って均一に固結領域27を形成する必要がある。このため、本発明では、従来技術と同様に、補強管26の全長を所定距離毎の複数の領域(図では3個の領域)Z1~Z3に分け、それぞれのゾーンにおいて開口するような長さの異なる3本の注入管31-1,31-2,31-3(図2参照)を打設後の補強鋼管26内に差し込み、各注入管より固結材を該補強鋼管26に注入し、補強鋼管26の適所に等ピッチで形成した吐出孔より補強鋼管周辺部の領域1、領域2、領域3に該固結材を噴出させることにより固結領域27を各補強鋼管周辺部に全長に亘って形成する。 注入管31-1,31-2,31-3は図2に示すようにスペーサ32により一体に支持されて補強鋼管26へ挿入され、挿入後、該補強鋼管の口元部は管内コーキング33される。スペーサ32は図3の補強鋼管断面図に示す断面形状を備え、注入管31-1,31-2,31-3を円周方向に1200間隔で支持する。補強鋼管26の軸方向には所定ピッチで、かつ900間隔で固結材を噴出する吐出孔26aが形成されている。」 イ 【図2】「 [図:0001419346000013.jpg] 」 1-3 対比・判断 (1) 本件発明1について ア 対比 (ア) 特定事項1Aについて 甲1-1発明の、「注入材を注入する」「掘削孔」、「掘削機により切羽に小径の掘削孔を掘削し、そこに鋼管等を挿入して注入材を注入する山岳トンネルのAGF工法」は、それぞれ、本件発明1の特定事項1Aの、「注入孔」、「施工中のトンネル内に設置された注入機からの注入材を、周辺の地山に形成した複数の注入孔から地山に注入する注入工法」に相当する。 そうすると、甲1-1発明は、本件発明1の特定事項1A(「施工中のトンネル内に設置された注入機からの注入材を、周辺の地山に形成した複数の注入孔から前記地山に注入する注入工法における注入支援システムであって、」)を備えている。 (イ) 特定事項1Bについて 甲1-1発明は、モニタ34に表示する注入結果シミュレーション画面で、「トンネル横断面方向のアーチ部を模した大径の半円部の図形に沿って、各掘削孔16を模した、前記半円部の図形より小さな複数の、細長い棒形状の図形が、実際の掘削孔16の並び順のとおりに周方向に間隔を置いて並んで配置され」たものであるところ、甲1-1発明はAGF工法に係るものであるから、上記した注入結果シミュレーション画面における、各掘削孔16を模した複数の棒形状の図形と同様に、実際の「掘削孔16」(注入孔)についても、「トンネル」の「周方向に間隔を置いて並んで配置され」ることは明らかである。 そうすると、甲1-1発明は、本件発明1の特定事項1B(「前記複数の注入孔が、前記トンネルの周方向に間隔を置いて並んで配置されており、」)を備えている。 (ウ) 特定事項1C、1D及び1Eについて 甲1-1発明において、「制御装置30」が行う「注入管理」及び「履歴管理」で取り扱う、「各パイプごと」の「注入材」の「注入量」及び「注入圧」は、本件発明1の特定事項1Cの「各注入孔における注入データ」に相当する。そして、甲1-1発明において、上記「注入量」及び「注入圧」(注入データ)の「管理」を行う「制御装置30」が、本件発明1の特定事項1Cの「注入データを取得する取得部」に相当する機能を備えることは明らかである。 続いて、甲1-1発明は、「各掘削孔16の各注入パイプごとの注入圧、注入量などの履歴管理を行」い、「制御装置30」の「モニタ34」に、「実際の各掘削孔16の注入材42の注入量」(注入データ)を「把握できる注入結果シミュレーション画面44を表示する」ものであるところ、上記「注入結果シミュレーション画面44」には、その時点における「実際の各掘削孔16の注入材42の注入量」を「把握できる」ようにするための、「(掘削孔16に注入する)注入材の注入圧、注入量、土質」に基づく「注入結果」の「シミュレーション」を表示するのであるから、当該「注入結果」の「シミュレーション」は、本件発明1の特定事項1Dの「注入データに基づい」た「各注入孔における注入状況を視覚的に識別可能に表す表示データ」に相当する。また、当該「注入結果」の「シミュレーション」(表示データ)を表示するために、甲1-1発明の上記「制御装置30」が、本件発明1の特定事項1Dの「表示データを作成する作成部」に相当する機能を備えることも明らかである。 さらに、上で述べた点を踏まえると、甲1-1発明の上記「モニタ34」は、本件発明1の特定事項1Dの「表示データを画像表示する画像表示部」に相当する。 そうすると、甲1-1発明は、本件発明1の特定事項1C、1D及び1E(「各注入孔における注入データを取得する取得部と、」「前記注入データに基づいて、各注入孔における注入状況を視覚的に識別可能に表す表示データを作成する作成部と、」「前記表示データを画像表示する画像表示部とを備え、」)を備えている。 (エ) 特定事項1Fについて 甲1-1発明の、「トンネル横断面方向のアーチ部を模した大径の半円部の図形」、「注入結果シミュレーション画面44」は、それぞれ、本件発明1の特定事項1Fの、「トンネルを模した図形」、「表示画面」に相当し、また、甲1-1発明において、「注入結果シミュレーション画面44」の表示にあたり「注入材の広がり具合を計算上算出」する、「実際の各掘削孔16の注入材42の注入量」は、上記(ア)における検討(注入孔、地山)も踏まえると、本件発明1の特定事項1Fの「実際の注入孔の、外部かつ周辺の地山へ広がる注入材の注入度合」に相当する。 そして、甲1-1発明は、「各掘削孔16」(注入孔)を「模した」、「前記半円部の図形」(トンネルを模した図形)「より小さな複数の、細長い棒形状の図形」(より小さな複数の図形)が、「実際の掘削孔16」(注入孔)の「並び順のとおりに周方向に間隔を置いて並んで配置され」た点を備えている。 さらに、上記(ウ)において検討した点(作成部、表示データ)も踏まえると、甲1-1発明は、本件発明1の特定事項1Fと「作成部は、トンネルを模した図形に沿って、各注入孔を模した、前記図形より小さな複数の図形が、実際の注入孔の並び順の通りに間隔を置いて配置され」、「注入孔の外部かつ周辺の地山へ広がる注入材の注入度合を表す表示画面の表示データを作成する」点で共通するといえる。 (オ) 特定事項1Gについて 甲1-1発明の「注入支援システム」は、「山岳トンネルのAGF工法」に係るものであるから、「トンネル施工」に用いられることは明らかである。 そうすると、甲1-1発明は、本件発明1の特定事項1G(「トンネル施工における注入支援システム。」)を備えている。 イ 一致点と相違点 上記アからみて、本件発明1と甲1-1発明とは、 「1A 施工中のトンネル内に設置された注入機からの注入材を、周辺の地山に形成した複数の注入孔から前記地山に注入する注入工法における注入支援システムであって、 1B 前記複数の注入孔が、前記トンネルの周方向に間隔を置いて並んで配置されており、 1C 各注入孔における注入データを取得する取得部と、 1D 前記注入データに基づいて、各注入孔における注入状況を視覚的に識別可能に表す表示データを作成する作成部と、 1E 前記表示データを画像表示する画像表示部と を備え、 1F’ 前記作成部は、前記トンネルを模した図形に沿って、前記各注入孔を模した、前記図形より小さな複数の図形が、実際の注入孔の並び順の通りに間隔を置いて配置され、注入孔の外部かつ周辺の地山へ広がる前記注入材の注入度合を表す表示画面の表示データを作成する 1G トンネル施工における注入支援システム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1](特定事項1F) 本件発明1は、「表示画面」における「各注入孔を模した」「複数の図形」が、「その図形が表す実際の注入孔の、外部かつ周辺の地山へ広がる注入材の注入度合」を、「各々における内側部分の色」により表すものであるのに対し、甲1-1発明では、「注入材の広がり具合を計算上算出し」て「表示する」「注入結果シミュレーション画面44」における「各掘削孔16を模した」「複数の」「細長い棒形状の図形」が、「各掘削孔16の注入材42の注入量」を、「各々における内側部分の色」により表すものであるのかが明らかではない点。 ウ 当審合議体の判断 上記1-2(2)イで述べた甲2記載技術における「固化材」は、本件発明1における「注入材」に相当し、甲2記載技術の「固化材を地中に注入する」「地盤改良工事における施工品質管理システム」と、本件発明1の「トンネル施工における注入支援システム」は、「土木施工における注入支援システム」である点で共通する。 そして、甲2記載技術における、「左右方向、前後方向、深さ方向について区分けして」「領域設定し」た「表示画面」における「表示単位34」は、「表示単位34における固化材注入量」を「注入口が1つの表示単位34内にある間に・・・求め」たものを表示していることから、本件発明1の、「実際の注入孔の並び順の通りに」「配置され」た「表示画面」の「図形」に相当し、また、甲2記載技術において、「固化材注入量が設定値に達しているかどうか」を「判別」した「判別結果」を「各表示単位34毎に一目で分かるように色分け表示する」ことは、本件発明1において、「注入材の注入度合」を「図形の各々における内側部分の色」により「表す」ことに一応相当する。 しかし、甲2記載技術において、「表示単位34」は、上記したように、地盤を左右方向、前後方向、深さ方向について区分けして領域設定したものであることから、「表示単位34における固化材注入量」が、本件発明1において表示画面に表示する、「その図形が表す実際の注入孔の、外部かつ周辺の地山へ広がる注入材の注入度合」に相当するとはいえず、甲2記載技術において、上記したように、地盤を左右方向、前後方向、深さ方向について区分けして領域設定したものに過ぎない「表示単位34」における「固化材注入量」について、注入量に応じて「色分け表示」する点を、甲1-1発明における「注入結果シミュレーション画面44」の、「各掘削孔16を模した」「複数の棒形状の図形」部分に適用することを動機付ける根拠が甲1-1発明及び甲2記載技術のいずれにも見当たらず、また周知の技術課題から導かれる事項であるともいえないから、甲2記載技術における、地盤を区分けして領域設定した「表示単位34」毎に「固化材注入量」を「色分け表示」する点を、甲1-1発明に適用して、相違点1に係る本件発明1の構成とすることが当業者にとって想到容易であるとはいえない。 そして、本件発明1は、上記相違点1に係る構成を備えることにより、「各注入孔21への注入材の注入状況が可視化され」、「注入の状況をリアルタイムで直観的に把握することができる」という効果を奏するものである。 なお、甲1及び甲2以外の証拠方法として特許異議申立人が申立書において提出した甲3~甲7について、上記1-1の(3)~(5)及び上記1-2の(1)~(2)で示した記載事項を含めて検討しても、上記相違点1に係る本件発明1の構成について記載又は示唆する箇所は見当たらない。 特許異議申立人は、令和6年9月2日提出の意見書で、甲2の記載を引用しつつ、「穿孔時に攪拌翼の径以上の地山が緩む(空隙が生じる)ため、固化剤は穿孔径内の地山に留まることはなく、穿孔径の地山の「外部かつ周辺へ広がる」ことが看取できます。・・・1つの表示単位34を対応する領域ごとに注入された固化材を連結することで地盤改良を行うものであり、1つの表示単位34と対応する領域に注入された固化材が当該領域内に留まることなく「外部かつ周辺へ広がる」ことが看取できます。したがって、表示単位34毎の色分け表示(段落0035)は、「その図形が表す実際の注入孔の、外部かつ周辺の地山へ広がる前記注入材の注入度合を表す」ことが明らかです。」(4ページ下から8行~5ページ5行)として、本件発明1(構成1F)の容易想到性を主張する。 しかしながら、甲2記載技術の「表示単位34における固化材注入量」が、本件発明1における「その図形が表す実際の注入孔の、外部かつ周辺の地山へ広がる注入材の注入度合」に相当しないことを前提とすると、甲2記載技術の、固化材注入量を色分け表示する点を、甲1-1発明の「注入結果シミュレーション画面44」における「各掘削孔16を模した」「複数の棒形状の図形」部分に適用することが、当業者であっても想到容易でないことは上で述べたとおりであり、特許異議申立人の主張を採用することはできない。 エ 小括 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術並びに甲3~甲7に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 本件発明2~9、11及び12について 本件発明2~9、11及び12は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに減縮した発明であるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術並びに甲3~甲7に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 本件発明10について ア 対比 上記(1)アにおける本件発明1についての検討を踏まえると、本件発明10と甲1-2発明とは、以下の一致点、相違点を有するといえる。 (一致点) 「10A 施工中のトンネル内に設置された注入機からの注入材を、周辺の地山に形成した複数の注入孔から前記地山に注入する注入工法における注入支援方法であって、 10B 前記複数の注入孔が、前記トンネルの周方向に間隔を置いて並んで配置されており、 10C 各注入孔における注入データを取得する工程と、 10D 前記注入データに基づいて、各注入孔における注入状況を視覚的に識別可能に表す表示データを作成する工程と、 10E 前記表示データを画像表示する工程と を備え、 10F’ 前記作成する工程では、前記トンネルを模した図形に沿って、前記各注入孔を模した、前記図形より小さな複数の図形が、実際の注入孔の並び順の通りに間隔を置いて配置され、注入孔の外部かつ周辺の地山へ広がる前記注入材の注入度合を表す表示画面の表示データを作成する 10G 注入支援方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点2](構成10F) 本件発明10は、「表示画面」における「各注入孔を模した」「複数の図形」が、「その図形が表す実際の注入孔の、外部かつ周辺の地山へ広がる注入材の注入度合」を、「各々における内側部分の色」により表すものであるのに対し、甲1-2発明では、「注入材の広がり具合を計算上算出し」て「表示する」「注入結果シミュレーション画面44」における「各掘削孔16を模した」「複数の」「細長い棒形状の図形」が、「各掘削孔16の注入材42の注入量」を、「各々における内側部分の色」により表すものであるのかが明らかではない点。 イ 当審合議体の判断 上記相違点2についての判断は、上記(1)ウにおいて相違点1について検討したとおりである。 ウ 小括 したがって、本件発明10は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術並びに甲3~甲7に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 1-4 まとめ 上で述べたとおりであるから、本件発明1~12は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術並びに甲3~甲7に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 したがって、本件発明1~12に係る特許は特許法29条2項の規定に違反したものではない。 2 取消理由において採用しなかった特許異議の申立ての理由について 前記第4の1で示した異議申立理由のうち、「本件発明1~12は、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証に記載された事項を適用した発明、さらに甲第4号証から甲第7号証に記載された事項を組み合わせた発明に基づいて、容易想到である」という理由は、上記取消理由に含まれていないため、改めて以下で検討する。 (1) 本件発明1について まず、甲1-1発明は、上記1の1-1(1)ウに示したとおりのものであり、本件発明1と甲1-1発明を対比すると、両者は、上記1の1-3(1)イにおいて「一致点」として挙げた点で一致し、同イにおいて「相違点1」として挙げた点で相違する。 そして、甲3記載技術は、上記1の1-2(1)ウに示したとおりの、「地面を掘削加工して地盤と改良材とを混合、撹拌する地盤改良機械に用いる地盤改良システム及び地盤改良工法において、表示画面6に、地盤Gの平面図が表示され、地盤Gの平面図内には、予め設定された掘削位置である掘削設定位置12と回転ヘッド5の現在位置13とが表示され、複数の掘削設定位置12が坑番号A-1-1,A-1-2,A-1-3・・・のように番号付けされて表示されており、地盤改良が完了した坑番号A-1-1,A-1-2に対応する掘削設定位置12と地盤改良が未完了の坑番号A-1-3に対応する掘削設定位置12とを区別して色分け表示し、地盤改良が完了した坑番号に対応する掘削設定位置12がどれであるかを簡単に判別することができるようにした」技術である。 相違点1について検討するに、上記1の1-3(1)ウにおける甲2記載技術についての検討と同様に、甲3記載技術は、本件発明1における「その図形が表す実際の注入孔の、外部かつ周辺の地山へ広がる注入材の注入度合」を「色分け表示」することに相当する構成を備えておらず、甲1-1発明における「注入結果シミュレーション画面44」の「各掘削孔16を模した」「複数の棒形状の図形」部分を「色分け表示」することを動機付ける根拠が甲1-1発明及び甲2記載技術、あるいは周知の技術課題から導くことができないから、甲3記載技術を甲1-1発明に適用して、相違点1に係る本件発明1の構成とすることが当業者にとって想到容易であるとはいえない。 そして、本件発明1は、上記相違点1に係る構成を備えることにより、「各注入孔21への注入材の注入状況が可視化され」、「注入の状況をリアルタイムで直観的に把握することができる」という効果を奏するものであることも、上記1の1-3(1)ウにおける甲2記載技術についての検討で述べたとおりである。 なお、甲1及び甲3以外の証拠方法として特許異議申立人が申立書において提出した甲2及び甲4~甲7について、上記1-1の(2)~(5)及び上記1-2(2)で示した記載事項を含めて検討しても、上記相違点1に係る本件発明1の構成について記載又は示唆する箇所は見当たらない。 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された技術並びに甲2及び甲4~甲7に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 本件発明2~9、11及び12について 本件発明2~9、11及び12は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに減縮した発明であるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲3に記載された技術並びに甲2及び甲4~甲7に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 本件発明10について まず、甲1-2発明は、上記1の1-1(1)ウに示したとおりのものであり、本件発明10と甲1-2発明を対比すると、上記1の1-3(3)アで「一致点」として挙げた点で一致し、同アで「相違点2」として挙げた点で相違する。 そして、上記相違点2についての判断は、上記(1)において相違点1について検討したとおりである。 したがって、本件発明10は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された技術並びに甲2及び甲4~甲7に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4) まとめ 上で述べたとおりであるから、本件発明1~12は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された技術並びに甲2及び甲4~甲7に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 したがって、本件発明1~12に係る特許は特許法29条2項の規定に違反したものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700070

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