特許異議申立
2023-700811
加熱部材、ベルト加熱装置、定着装置及び画像形成装置
- 審判番号
- 2023-700811
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-184399
- 登録番号
- 7219415
- 請求日
- 2023年08月07日
- 審決日
- 2024年09月24日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社リコー
- 【権利者代理人】城村 邦彦
- 【異議申立人】八木 俊和
- 審判長/審判官
- 審判長 殿川 雅也
- 審判官 嵯峨根 多美
- 審判官 門 良成
- 分類
- P1652.161-ZB (G03G) / P1652.841-ZB (G03G) / P1652.856-ZB (G03G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 行政事件訴訟法46条特許法29条の2特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第1項、特許法第29条の2、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7219415号発明「加熱部材、ベルト加熱装置、定着装置及び画像形成装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7219415号の請求項2、4、5、8、9、11、12に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7219415号(以下「本件特許」という。)の請求項1乃至12に係る特許についての出願は、平成30年9月28日に出願され、令和5年1月31日にその特許権の設定登録がされ、同年2月8日に特許掲載公報が発行され、令和5年8月7日に特許異議申立人 八木 俊和(以下「特許異議申立人」という。)により請求項2、4、5、8、9、11、12に対して特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は、次のとおりである。
令和5年11月 8日付け:取消理由通知書
同年12月14日 :意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
令和6年 2月 7日 :意見書の提出(特許異議申立人)
同年 2月28日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 5月 1日 :意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年 5月24日付け:訂正拒絶理由通知書
同年 7月 1日 :意見書の提出(特許権者)
同年 8月28日 :意見書の提出(特許異議申立人)
第2 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
特許権者が令和6年5月1日に提出した訂正請求書(以下「本件訂正請求」という。なお、特許権者が令和5年12月14日に提出した訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、同日に提出された訂正請求書の記載からみて、その請求の趣旨を「特許第7219415号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、4~12について訂正することを求める。」とするものである。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は以下のとおりである(下線は当審で付した。以下同様。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2
「加熱部材に接続される給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され、基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらを電気的に接続する給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
相手部材である前記保持部材の位置決め形状との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部を有し、
前記位置決め部は、前記加熱部材の長手方向における前記給電線の箇所で、かつ、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられる」
と記載されているのを、
「加熱部材に接続される給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され、基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらをそれぞれ電気的に接続する複数の給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
相手部材である前記保持部材の位置決め形状との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部を有し、
前記位置決め部は、前記加熱部材の長手方向における前記給電線の箇所で、かつ、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられ、
前記長手方向における前記位置決め部の位置において、前記複数の給電線同士の間隔は、前記発熱部側における前記間隔に対して狭く、
前記複数の給電線のうち、前記給電線同士の間隔が狭くなるように他の給電線 に対して接近する方向へ変位する給電線は、前記電極部における前記接近する方向の端部に接続」
に訂正する。
以下、「これらを電気的に接続する給電線」を「これらをそれぞれ電気的に接続する複数の給電線」とする訂正事項を「訂正事項1-1」といい、「前記長手方向における前記位置決め部の位置において、前記複数の給電線同士の間隔は、前記発熱部側における前記間隔に対して狭く、 前記複数の給電線のうち、前記給電線同士の間隔が狭くなるように他の給電線に対して接近する方向へ変位する給電線は、前記電極部における前記接近する方向の端部に接続される」と追加する訂正を「訂正事項1-2」という(スペースは改行を意味する。以下同じ。)。
請求項2の記載を引用する訂正後の請求項4乃至7、9乃至12も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8に
「前記基材層は、金属材料で構成されている請求項1から7のいずれか1項に記載の加熱部材」
と記載されているのを、
「加熱部材に接続される給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され、基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらをそれぞれ電気的に接続する複数の給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
相手部材である前記保持部材の位置決め形状との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部を有し、
前記位置決め部は、前記加熱部材の長手方向における前記給電線の箇所で、かつ、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記 複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられ、
前記長手方向における前記位置決め部の位置において、前記複数の給電線同士の間隔は、前記発熱部側における前記間隔に対して狭く、
前記基材層は、金属材料で構成され、
前記位置決め部は、前記基材層が前記基材層の前記発熱部、前記電極部及び前 記給電線が設けられる面に沿った方向であって前記長手方向に対して交差する方向へ突出する突起であることを特徴とする加熱部材」
に訂正をする。
以下、「加熱部材に接続される給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され、基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらを電気的に接続する給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、 相手部材である前記保持部材の位置決め形状との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部を有し、 前記位置決め部は、前記加熱部材の長手方向における前記給電線の箇所で、かつ、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられ、 前記基材層は、金属材料で構成されていることを特徴とする」とする訂正事項を「訂正事項2-1」といい、「それぞれ電気的に接続する複数の給電線」とする訂正事項を「訂正事項2-2」といい、「前記長手方向における前記位置決め部の位置において、前記複数の給電線同士の間隔は、前記発熱部側における前記間隔に対して狭く、」とする訂正事項を「訂正事項2-3」といい、「前記位置決め部は、前記基材層が前記基材層の前記発熱部、前記電極部及び前記給電線が設けられる面に沿った方向であって前記長手方向に対して交差する方向へ突出する突起である」とする訂正事項を「訂正事項2-4」といいう。
請求項8の記載を引用する訂正後の請求項9乃至12も同様に訂正する。
(3)一群の請求項について
訂正前の請求項2、4乃至7、9乃至12について、請求項4乃至7、9乃至12はそれぞれ請求項2を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。
また、訂正前の請求項8乃至12について、請求項9乃至12はそれぞれ請求項8を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項8に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項2、4乃至12に対応する訂正後の請求項2、4乃至12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(4)別の請求単位とする求め
審判請求人は、訂正後の請求項8については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
3 訂正の適否について当審の判断
(1)請求項2、4乃至7、9乃至12に係る訂正事項1について
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項1-1について
請求項2の「加熱部材」における発明特定事項である「給電線」について、複数あること、及び、複数の給電線のそれぞれが発熱部と電極部とを電気的に接続することを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項4乃至7、9乃至12は、訂正後の請求項2を引用することにより、訂正後の請求項4乃至7、9乃至12の発明特定事項である「給電線」について、複数あること、及び複数の給電線のそれぞれが発熱部と電極部とを電気的に接続することを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)訂正事項1-2について
請求項2の「加熱部材」における発明特定事項である「給電線」について、長手方向における位置決め部の位置において、複数の給電線同士の間隔が、発熱部側における複数の給電線同士の間隔に対して狭いこと、及び給電線同士の間隔が狭くなるように他の給電線に対して接近する方向へ変位する給電線は、電極部における接近する方向の端部に接続されることを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項4乃至7、9乃至12は、訂正後の請求項2を引用することにより、訂正後の請求項4乃至7、9乃至12の発明特定事項である「給電線」について、長手方向における位置決め部の位置において、複数の給電線同士の間隔が、発熱部側における複数の給電線同士の間隔に対して狭いこと、及び給電線同士の間隔が狭くなるように他の給電線に対して接近する方向へ変位する給電線は、電極部における接近する方向の端部に接続されることを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記アのとおり、請求項2に係る訂正事項1-1及び訂正事項1-2は、「給電線」について減縮する訂正であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
訂正後の請求項4乃至7、9乃至12についても、訂正後の請求項2の記載を引用することにより、実質的に訂正するものであるが、前述と同様の理由により、「給電線」について減縮する訂正であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)訂正事項1-1について
明細書等の段落【0039】に「電極部61と発熱部60との間及び発熱部6 0同士を接続する複数の給電線62」と記載されていることから、訂正事項1-1は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
(イ)訂正事項1-2について
訂正事項2の特定では、複数の給電線のうち、給電線同士の間隔が狭くなるように他の給電線に対して接近する方向へ変位する給電線が、複数の給電線のうちのいずれの給電線かは特定されていない。
【図7】に示されているように、複数の給電線が、上側の給電線62と下側の給電線62とから構成される場合、「接近する方向へ変位する給電線」には、下側の給電線62のみならず上側の給電線62も包含される。
a 「接近する方向へ変位する給電線」が、下側の給電線62(発熱部60に近い側の電極部61(右端の電極部61)と接続する給電線62)の場合について検討する。
【図7】から、下側の給電線62が発熱部60に近い側の電極部61(右端の電極部61)における上側の端部に接続される構成が看取できる。
当該電極部61の上側の端部は、下側の給電線62が上側の給電線62に対して接近する方向の端部となる。
してみると、「前記給電線同士の間隔が狭くなるように他の給電線(上側)に対して接近する方向へ変位する給電線(下側)は、前記電極部における前記接近する方向の端部に接続される」ことは記載されているといえる。
b 「接近する方向へ変位する給電線」が、上側の給電線62(発熱部60から遠い側の電極部61(左端の電極部61)と接続する給電線62)の場合について検討する。
しかし、【図7】からは、上側の給電線62が下側の給電線62に対して接近する方向へ変位することは記載されておらず、仮に、上側の給電線62が下側の給電線62に対して接近する方向へ変位させたとすると、上側の給電線62が発熱部60から遠い側の電極部61(左端の電極部61)における上側の端部に接続されることになるが、この場合の当該電極部61における上側とは、上側の給電線62が下側の給電線62に対して接近する方向とは反対の方向となる。
c なお、特許権者は、令和6年7月1日に提出した意見書において、
「本件特許の【図7】に示されるヒータ22を、例えば【図7】の紙面に沿って180゜左右反転させれば、下記【参考図】に示されるように、【図7】では下側に配置されている給電線62が【参考図】では上側に配置され、【図7】では上側に配置されている給電線62が【参考図】では下側に配置される図となる。そして、【参考図】においては、上側の給電線62が下側の給電線62に接近し、さらに、上側の給電線62が左側の電極部61における接近する方向の端部(図の下側の端部)に接続される構成が示されることとなる。すなわち、【図7】に示されるヒータ22を紙面に沿って180゜回転させれば、上記認定事項において指摘されるような、「前記給電線同士の間隔が狭くなるように他の給電線(下側)に対して接近する方向へ変位する給電線(上側)は、前記電極部における前記接近する方向の端部に接続される」構成が示されることになる。
[図:0001417614000001.jpg]
」
として、訂正事項1-2が明細書等に記載した事項の範囲内である旨を、主張している。
d しかし、特許権者は、【図7】の紙面に沿って180゜反転させた【参考図】の下側の給電線62が上側に接近する場合については説示しておらず、上記aの場合について述べているにすぎない。
e 【図7】を上下反転させると、上記bの場合の上側の給電線62は、下側にくることとなるが、その場合、以下の【参考図2】に示すように、当該下側の給電線62(発熱部60から遠い側の電極部61(左端の電極部61)と接続する給電線62)は発熱部60から遠い側の電極部61(左端の電極部61)における下側の端部に接続されることになり、この場合の「下側」は下側の給電線62(発熱部60から遠い側の電極部61と接続する給電線62)が上側の給電線62(発熱部60に近い側の電極部61と接続する給電線62)に対して接近する方向とは反対の方向となるから、上記bの場合は、【図7】を回転させようとも「給電線同士の間隔が狭くなるように他の給電線に対して接近する方向へ変位する給電線は、前記電極部における前記接近する方向の端部に接続される」事項を満たさないという結論に変わりはない。
【参考図2】
[図:0001417614000002.jpg]
また、明細書等全体を見ても、複数の給電線のうちのいずれもが「前記給電線同士の間隔が狭くなるように他の給電線に対して接近する方向へ変位する給電線は、前記電極部における前記接近する方向の端部に接続される」ことは記載されていないから、上記cに示した特許権者の主張でもって、訂正事項1-2が明細書等に記載した事項の班内においてする訂正であると認めることはできない。
f したがって、明細書等には、「前記給電線同士の間隔が狭くなるように他の給電線に対して接近する方向へ変位する給電線は、前記電極部における前記接近する方向の端部に接続される」ことは記載されているとはいえない。
g よって、当該訂正事項1-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものとはいえないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものではない。
訂正後の請求項4乃至7、9乃至12についても同様の理由により、訂正事項1-2は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものではない。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件特許についての特許異議の申立て事件では、訂正前の請求項2、4、5、 9、11、12について特許異議の申立ての対象とされているから、本件訂正における訂正前の請求項2、4、5、9、11、12に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
他方、訂正前の請求項6、7、10は特許異議の申立ての対象とされていないところ、上記訂正事項1-2は、特許法第126条第5項の規定に適合するものではないが、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるから、念のため、同条第7項の規定に基づき、訂正後請求項6、7及び10に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるかについて検討する。
(ア)本件訂正後の請求項6、7、10に係る発明
本件訂正後の請求項6、7、10は、以下のとおりである。
以下、本件訂正後の請求項2を引用する請求項4を引用する請求項6、本件訂正後の請求項2を引用する請求項4を引用する請求項7、請求項8を引用する請求項9を引用する請求項10に係る発明を、それぞれ、本件訂正特許発明6、本件訂正特許発明7、本件訂正特許発明10という。
「【請求項1】
基材層上に発熱部と、電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらを電気的に接続する給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
前記加熱部材は、前記基材層の前記発熱部が設けられる面とは反対側の面に絶縁層を有し、
相手部材に対する前記加熱部材の長手方向の位置決めを行う位置決め部を有し、
前記位置決め部において、前記基材層は前記絶縁層より大きく形成され、
前記絶縁層の前記位置決め部における端が、前記基材層の前記発熱部が設けられる面とは反対側の面に対して垂直な面により構成されることを特徴とする加熱部材。
【請求項2】
加熱部材に接続される給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され、基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらをそれぞれ電気的に接続する複数の給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
相手部材である前記保持部材の位置決め形状との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部を有し、
前記位置決め部は、前記加熱部材の長手方向における前記給電線の箇所で、かつ、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられ、
前記長手方向における前記位置決め部の位置において、前記複数の給電線同士の間隔は、前記発熱部側における前記間隔に対して狭く、
前記複数の給電線のうち、前記給電線同士の間隔が狭くなるように他の給電線に対して接近する方向へ変位する給電線は、前記電極部における前記接近する方 向の端部に接続されることを特徴とする加熱部材。
【請求項3】
前記加熱部材の長手方向における前記給電線の箇所に、前記位置決め部が設けられている請求項1に記載の加熱部材。
【請求項4】
前記位置決め部は、位置決め孔である請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項6】
前記位置決め孔は、前記加熱部材の長手方向に対して交差する方向に貫通する貫通孔である請求項4に記載の加熱部材。
【請求項7】
前記位置決め孔は、前記相手部材に設けられた位置決め突起の根元部が挿入される開口部側の箇所で幅広に形成されている請求項4から6のいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項8】
加熱部材に接続される給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され、基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらをそれぞれ電気的に接続する複数の給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
相手部材である前記保持部材の位置決め形状との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部を有し、
前記位置決め部は、前記加熱部材の長手方向における前記給電線の箇所で、かつ、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられ、
前記長手方向における前記位置決め部の位置において、前記複数の給電線同士の間隔は、前記発熱部側における前記間隔に対して狭く、
前記基材層は、金属材料で構成され、
前記位置決め部は、前記基材層が前記基材層の前記発熱部、前記電極部及び前記給電線が設けられる面に沿った方向であって前記長手方向に対して交差する 方向へ突出する突起であることを特徴とする加熱部材。
【請求項9】
回転可能に設けられた無端状のベルト部材と、
前記ベルト部材に接触して前記ベルト部材を加熱する面状の加熱部材と、
前記加熱部材を保持する保持部材と、
を備えるベルト加熱装置であって、
前記加熱部材として、請求項1から8のいずれか1項に記載の加熱部材を備えることを特徴とするベルト加熱装置。
【請求項10】
前記加熱部材は、ベルト回転方向下流側の側面部が前記保持部材に対して接触することにより長手方向に交差する方向の位置決めがなされるように構成され、前記位置決め部は、ベルト回転方向下流側の側面部以外の部分に設けられている請求項9に記載のベルト加熱装置。」
(イ)本件訂正特許発明6について
明細書等には、以下のとおり記載されている。
「【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置において、用紙上のトナーを熱により定着させる定着装置や用紙上のインクを乾燥させる乾燥装置などに用いられる加熱部材として、面状の抵抗発熱体を有する面状ヒータが知られている。
【0003】
面状ヒータは、抵抗発熱体に電力が供給されることで発熱する。そのため、面状ヒータには、電源からの電力を供給するためのコネクタが電気的に接続される電極部が設けられている。
【0004】
ところで、このような面状ヒータにおいては、熱膨張によってその全長が変化するため、ヒータの電極部とコネクタとの相対的位置がずれ、接触不良が生じるといった課題がある。
【0005】
斯かる課題に対して、特許文献1(特許第6200363号公報)では、ヒータに突出部を設け、この突出部をコネクタに対して係止させることで、ヒータとコネクタとの相対的な位置ずれを防止する構成が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のようにヒータに突出部を設けると、ヒータの外形が大きくなるため、小型化に不利になるといった課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、基材層上に発熱部と、電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらを電気的に接続する給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、前記加熱部材は、前記基材層の前記発熱部が設けられる面とは反対側の面に絶縁層を有し、相手部材に対する前記加熱部材の長手方向の位置決めを行う位置決め部を有し、前記位置決め部において、前記基材層は前記絶縁層より大きく形成され、前記絶縁層の前記位置決め部における端が、前記基材層の前記発熱部が設けられる面とは反対側の面に対して垂直な面により構成されることを特徴とする。」
「【0039】
図7及び図8に示すように、ヒータ22は、板状の基材層50と、基材層50の表側に設けられた第1絶縁層51と、第1絶縁層51の表側に設けられた導体層52と、導体層52の表側を被覆する第2絶縁層53と、基材層50の裏側に設けられた第3絶縁層54との、複数の構成層が積層されて構成されている。導体層52は、面状の抵抗発熱体で構成された一対の発熱部60と、各発熱部60の長手方向一端部側に設けられた一対の電極部61と、電極部61と発熱部60との間及び発熱部60同士を接続する複数の給電線62とで構成されている。また、図7に示すように、各電極部61は、後述のコネクタとの接続を確保するため、少なくとも一部が第2絶縁層53に被覆されておらず露出した状態となっている。」
上記記載からすると、本件特許発明が解決しようとする課題は、「加熱部材において、ヒータの電極部とコネクタとの相対的位置がずれ、接触不良をふせぎつつ、小型化を図ること。」であると認められる。
そして、前記課題を解決する手段として、明細書等には、「相手部材である保持部材の位置決め形状との嵌合により前記保持部材に対する加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部を有し、前記長手方向における前記位置決め部の位置において、複数の給電線同士の間隔は、発熱部側における前記間隔に対して狭く、前記給電線同士の間隔が狭くなるように上側の給電線に対して接近する方向へ変位する下側の給電線は、前記電極部における前記接近する方向の端部に接続される」加熱部材、が記載されている。
上記(ア)のとおり、本件訂正特許発明6は、訂正後の請求項2を引用するものである。 そして、訂正後の請求項2においては、複数の給電線のうち、給電線同士の間隔が狭くなるように他の給電線に対して接近する方向へ変位する給電線が、複数の給電線のうちのいずれの給電線かは特定されていない。
【図7】に示されているように、複数の給電線が、上側の給電線62と下側の給電線62とから構成される場合、「接近する方向へ変位する給電線」には、下側の給電線62(発熱部60に近い側の電極部61(右端の電極部61)と接続する給電線62)のみならず上側の給電線62(発熱部60から遠い側の電極部61(左端の電極部61)と接続する給電線62)も包含される。
しかし、明細書等には、前記課題を解決する手段として、“接近する方向へ変位する給電線が、上側の給電線62(発熱部60から遠い側の電極部61(左端の電極部61)と接続する給電線62)の場合に、当該上側の給電線62が電極部における接近する方向の端部に接続される”加熱部材は、記載も示唆もされていない。
してみると、訂正後の請求項2を引用する本件訂正特許発明6は、本件特許の課題を解決するよう明細書等に記載されたものではないから、発明の詳細な説明に記載されたものということはできない。
(ウ)本件訂正特許発明7について
上記(ア)のとおり、本件訂正特許発明7は、訂正後の請求項2を引用するものである。
そうすると、上記(イ)と同様の理由により、訂正後の請求項2を引用する本件訂正特許発明7は、本件特許の課題を解決するよう明細書等に記載されたものではないから、発明の詳細な説明に記載されたものということはできない。
(エ)本件訂正特許発明10について
a 上記(イ)のとおり、本件特許発明が解決しようとする課題は、「加熱部材において、ヒータの電極部とコネクタとの相対的位置がずれ、接触不良をふせぎつつ、小型化を図ること。」であり、前記課題を解決する手段として、明細書等には、「相手部材である保持部材の位置決め形状との嵌合により前記保持部材に対する加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部を有し、前記長手方向における前記位置決め部の位置において、複数の給電線同士の間隔は、発熱部側における前記間隔に対して狭く、前記給電線同士の間隔が狭くなるように上側の給電線に対して接近する方向へ変位する下側の給電線は、前記電極部における前記接近する方向の端部に接続される」加熱部材、が記載されている。
そして、本件訂正特許発明10が引用する訂正後の請求項8は、「前記位置決め部は、前記基材層が前記基材層の前記発熱部、前記電極部及び前記給電線が設けられる面に沿った方向であって前記長手方向に対して交差する方向へ突出する突起である」と特定されている。
これに対し、明細書等には、「本実施形態では、位置決め部として、ヒータ22に位置決め孔22aを設け、ヒータホルダ23に位置決め突起23bを設けているが、これとは反対に、図17に示すように、ヒータ22に位置決め突起22bを設け、ヒータホルダ23に位置決め孔23dを設けることでも、ヒータ22とヒータホルダ23との長手方向の位置決めを行うことが可能である。
しかしながら、この場合は、ヒータ22に位置決め突起23bを設ける分、ヒータ22の外形が大きくなるため、小型化に不利となる。また、ヒータ22を金属板などの板状の部材から切り出す場合、ヒータ22に突起を設けると材料を余分に切り出さなければならず、歩留まりが悪くなるため、製造コストも高くなってしまう。従って、小型化や低コスト化の観点からすれば、ヒータ22の外形が大きくならないように、ヒータ22に設けられる位置決め部は位置決め孔22aであることが好ましい。」(段落【0066】参照。)と記載されている。
上記明細書等の記載からすると、訂正後の請求項8の前記特定では、突起を設ける分、ヒータ22の外形が大きくなるため、小型化に不利となり、また、ヒータ22を金属板などの板状の部材から切り出す場合、ヒータ22に突起を設けると材料を余分に切り出さなければならず、歩留まりが悪くなるため、製造コストも高くなってしまうという欠点は認識できるものの、本件特許発明が解決しようとする課題を解決し得るとは認識できない。
してみると、訂正後の請求項8を引用する本件訂正特許発明10は、本件特許の課題を解決するよう明細書等に記載されたものではないから、発明の詳細な説明に記載されたものということはできない。
b なお、特許権者は、令和6年7月1日に提出した意見書において、
「しかしながら、本件特許明細書の【発明が解決しようとする課題】(段落【0006】)で述べている課題は、同明細書の段落【0005】に記載の特許文献1(特許第6200363号公報)の構成に関する課題であり、当該明細書の記載は、その課題を解決する手段として、位置決め部が突起であることを完全に除外することまで意図するものではない。
具体的に、特許文献1には、ヒータとコネクタとの相対的な位置ずれを防止する位置決め部として、突起(特許文献1の【図4】の突出部29CZ,29DZ参照。)が設けられたヒータの構成が開示されており、特許文献1のように、位置決め部としての突起が電極64,65,66に対応する位置に設けられると(特許文献1の【図4】参照。)、ヒータの外形が大きくなって小型化が不利になる課題がある。
そして、このような課題を解決する手段としては、位置決め部を突起でなく孔部(凹部など)に変更する手段のほか、位置決め部を電極に対応する位置以外の箇所へ配置する手段が考えられるところ、本件特許の請求項10に係る発明においては、特許文献1に記載の構成に係る課題を解決する手段として、「位置決め部が、加熱部材の長手方向における給電線の箇所で、かつ、加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で長手方向に並ぶ複数の電極部のうち、最も発熱部に近い電極部と発熱部との間に設けられる」構成(請求項10が引用する請求項8に記載の構成)を備えている。このように、最も発熱部に近い電極部と発熱部との間に位置決め部を設けることにより、最も近い電極部と発熱部とを繋ぐ給電線の箇所を位置決め部の設置スペースとして利用できるようになるため、特許文献1のような電極に対応する位置に位置決め部が設けられる構成に比べて、加熱部材(ヒータ)が長くなるのを抑制し、長手方向における小型化を図れるようになる。」から当業者が把握し得る課題(「長手方向の大型化」の課題)を解決するための手段が反映されており、本件特許の請求項10に係る発明は、本件特許の課題を解決するよう明細書等に記載されたものである旨、主張している。
c しかし、位置決め部を電極に対応する位置に設けても、位置決め部を最も発熱部に近い電極部と発熱部との間に設けても、加熱部材の長手方向に位置決め部のサイズ分の長さが必要になることに変わりはなく、「位置決め部が、加熱部材の長手方向における給電線の箇所で、かつ、加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で長手方向に並ぶ複数の電極部のうち、最も発熱部に近い電極部と発熱部との間に設けられる」構成を備えているからといって、位置決め部が長手方向に対して交差する方向へ突出する突起である場合に、当該長手方向の小型化が図られるとは認められない。
よって、上記bに示した特許権者の主張は採用できない。
(オ)小括
以上のとおり、本件訂正特許発明6、7及び10は,特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであるから,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさず、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
オ 訂正事項1についてのまとめ
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第 5項及び第120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条第7号に適合するものではないから、請求項2、4乃至7、9乃至12に係る訂正事項1は認めることができない。
(2)請求項8、9乃至12に係る訂正事項2について
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項2-1について
訂正前の請求項8が、請求項1から7のいずれかを引用していたところ、請求項1、3から7を引用しないものとした上で、請求項2を引用するものについて引用関係を解消して、独立形式の請求項へ改めるための訂正であって、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項9乃至12は、引用する請求項8について、訂正前の請求項8が、請求項1から7のいずれかを引用していたところ、請求項1、3から7を引用しないものとした上で、請求項2を引用するものについて引用関係を解消して、独立形式の請求項へ改めるための訂正であって、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(イ)訂正事項2-2について
請求項8の「加熱部材」における発明特定事項である「給電線」について、複数あること、及び、複数の給電線のそれぞれが発熱部と電極部とを電気的に接続することを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項9乃至12は、訂正後の請求項8を引用することにより、訂正後の請求項9乃至12の発明特定事項である「給電線」について、複数あること、及び複数の給電線のそれぞれが発熱部と電極部とを電気的に接続することを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(ウ)訂正事項2-3について
請求項8の「加熱部材」における発明特定事項である「給電線」について、長手方向における位置決め部の位置において、複数の給電線同士の間隔が、発熱部側における間隔に対して狭くすることを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項9乃至12は、訂正後の請求項8を引用することにより、訂正後の請求項9乃至12の発明特定事項である「給電線」について、長手方向における位置決め部の位置において、複数の給電線同士の間隔が、発熱部側における間隔に対して狭くすることを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(エ)訂正事項2-4について
請求項8の「加熱部材」における発明特定事項である「位置決め部」について、基材層が基材層の発熱部、電極部及び給電線が設けられる面に沿った方向であって長手方向に対して交差する方向へ突出する突起であることを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項9乃至12は、訂正後の請求項8を引用することにより、訂正後の請求項9乃至12の発明特定事項である「位置決め部」について、基材層が基材層の発熱部、電極部及び給電線が設けられる面に沿った方向であって長手方向に対して交差する方向へ突出する突起であることを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記アのとおり、請求項8に係る訂正事項2-1は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、請求項8に係る訂正事項2-1乃至2-4は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
訂正後の請求項9乃至12についても、訂正後の請求項8の記載を引用することにより、実質的に訂正するものであるが、前述と同様の理由により、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)訂正事項2-1について
訂正事項2-1は、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるから、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものといえる。
(イ)訂正事項2-2について
明細書等の段落【0039】に「電極部61と発熱部60との間及び発熱部60同士を接続する複数の給電線62」と記載されていることから、訂正事項2-2は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)訂正事項2-3について
【図7】から、長手方向における位置決め部の位置において、複数の給電線同士の間隔が、発熱部側における複数の給電線同士の間隔に対して狭く構成されていることが看取できるから、訂正事項2-3は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
(エ)訂正事項2-4について
明細書等の段落【0066】に「図17に示すように、ヒータ22に位置決め突起22bを設け、ヒータホルダ23に位置決め孔23dを設けることでも、ヒータ22とヒータホルダ23との長手方向の位置決めを行うことが可能である」 と記載され、【図17】から、基材層50がその発熱部60、電極部61及び給電線62が設けられる面に沿った方向であってヒータ22の長手方向に対して交差する方向へ突出する位置決め突起22bが看取できるから、訂正事項2-4は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
(3)特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件特許についての特許異議の申立て事件では、訂正前の請求項8、9、11、12について特許異議の申立ての対象とされているから、本件訂正における訂正前の請求項8、9、11、12に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
他方、訂正前の請求項10は特許異議の申立ての対象とされていないところ、上記訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるから、同条第7項の規定に基づき、訂正後請求項10に係る発明が,特許出願の際に独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そして、上記(1)エ(エ)と同様の理由により、本件訂正特許発明10は、本件特許の課題を解決するよう明細書等に記載されたものではないから、発明の詳細な説明に記載されたものということはできない。
オ 訂正事項2についてのまとめ
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7号に適合するものではないから、請求項8、9乃至12に係る訂正事項2は認めることができない。
(3)訂正の適否についてのまとめ
令和6年5月1日に特許権者が行った本件訂正は、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の規定に適合するものではなく、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項に規定する要件に適合するものではないから、本件訂正における請求項2、4乃至12に係る訂正は認められない。
したがって、訂正事項1及び2からなる本件訂正は認められない。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められないので、本件特許の請求項1乃至12に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」乃至「本件発明12」といい、まとめて「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1乃至12に記載された事項により特定される、次のとおりのものである
「【請求項1】
基材層上に発熱部と、電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらを電気的に接続する給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
前記加熱部材は、前記基材層の前記発熱部が設けられる面とは反対側の面に絶縁層を有し、
相手部材に対する前記加熱部材の長手方向の位置決めを行う位置決め部を有し、
前記位置決め部において、前記基材層は前記絶縁層より大きく形成され、
前記絶縁層の前記位置決め部における端が、前記基材層の前記発熱部が設けられる面とは反対側の面に対して垂直な面により構成されることを特徴とする加熱部材。
【請求項2】
加熱部材に接続される給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され、基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらを電気的に接続する給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
相手部材である前記保持部材の位置決め形状との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部を有し、
前記位置決め部は、前記加熱部材の長手方向における前記給電線の箇所で、かつ、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられることを特徴とする加熱部材。
【請求項3】
前記加熱部材の長手方向における前記給電線の箇所に、前記位置決め部が設けられている請求項1に記載の加熱部材。
【請求項4】
前記位置決め部は、位置決め孔である請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項5】
前記位置決め孔は、前記加熱部材の長手方向に対して交差する方向に窪むように形成された凹部である請求項4に記載の加熱部材。
【請求項6】
前記位置決め孔は、前記加熱部材の長手方向に対して交差する方向に貫通する貫通孔である請求項4に記載の加熱部材。
【請求項7】
前記位置決め孔は、前記相手部材に設けられた位置決め突起の根元部が挿入される開口部側の箇所で幅広に形成されている請求項4から6のいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項8】
前記基材層は、金属材料で構成されている請求項1から7のいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項9】
回転可能に設けられた無端状のベルト部材と、
前記ベルト部材に接触して前記ベルト部材を加熱する面状の加熱部材と、
前記加熱部材を保持する保持部材と、
を備えるベルト加熱装置であって、
前記加熱部材として、請求項1から8のいずれか1項に記載の加熱部材を備えることを特徴とするベルト加熱装置。
【請求項10】
前記加熱部材は、ベルト回転方向下流側の側面部が前記保持部材に対して接触することにより長手方向に交差する方向の位置決めがなされるように構成され、
前記位置決め部は、ベルト回転方向下流側の側面部以外の部分に設けられている請求項9に記載のベルト加熱装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のベルト加熱装置を用いて、記録媒体上の画像を定着することを特徴とする定着装置。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか1項に記載の加熱部材、請求項9又は10に記載のベルト加熱装置、請求項11に記載の定着装置のいずれかと、
画像を形成する画像形成部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。」
第4 取消理由の概要
訂正前の請求項2、4、5、8、9、11、12に係る特許に対して、当審が令和5年11月8日に特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
本件発明2、4、5、8、9、11、12は、本件特許の出願日前の他の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開(甲第1号証:特開2020-36 89号公報参照)がされた特願2018-123895号(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲、又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、当該他の特許出願に係る上記の発明をした者が本件特許の出願の発明者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、当該他の特許出願の出願人が本件特許の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件請求項2、4、5、8、9、11、12に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
1 先願
先願(特願2018-123895号(甲第1号証:特開2020-3689号公報))は、本件特許の出願の日より前である平成30年6月29日に出願された特許出願であり、本件特許の出願後である令和2年1月9日に出願公開がされたものであって、本件特許の発明者が先願に係る発明の発明者と同一ではないから、先願は、特許法29条の2本文における「他の特許出願」の形式的要件を満足する。
また、本件特許の出願の時に、本件特許の出願人と先願の出願人は同一ではなかったから、先願は、同条ただし書における「他の特許出願」の形式的要件も満足する。
2 甲1明細書等の記載事項
しかるに、先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「甲1明細書等」という。)には、次の記載がある。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明はヒータユニット、定着装置および画像形成装置に関し、例えば電子写真式のプリンタに適用して好適なものである。」
(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、かかる構成のヒータユニットでは、発熱により基板の温度が上昇して膨張するため、温度の変化に応じて、長手方向である主走査方向(すなわち左右方向)に関して、当該基板の長さが比較的大きく伸縮する。その一方でヒータユニットは、コネクタが接続されるホルダが金属や耐熱性を有する樹脂等、熱膨張率の低い材料により構成されることが多い。すなわちヒータユニットのホルダは、温度変化が生じた場合であっても主走査方向への変位量が極めて少ない。
【0007】
そうするとヒータユニットでは、発熱をする度、及び冷却される度に、すなわち温度が変化する度に、基板の電極をコネクタの端子に対して摺動させることになる。特にヒータユニットでは、特許文献1の図3に示されているように、基板における主走査方向に関する両側にそれぞれ電極が配置され、それぞれにホルダが設けられてコネクタを接続させる構成である場合、少なくとも一方において、摺動する距離が十分に大きくなる。
【0008】
そうするとヒータユニットでは、温度が変化する度に、基板の電極とコネクタの端子との間で十分に大きな距離に渡って摺動が発生し、これにより端子及び電極の表面が摩耗して接触状態が悪化し、接触不良を生じて電流が十分に供給されなくなる恐れ、すなわち正常に発熱できなくなる恐れがある、という問題があった。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、温度変化に関わらず、コネクタから基板に電流を安定的に供給し得るヒータユニット、定着装置及び画像形成装置を提案しようとするものである。」
(3)「【0017】
[1.画像形成装置の構成]
図1に示すように、画像形成装置1は、電子写真式のプリンタであり、媒体としての用紙Pにカラーの画像を形成する(すなわち印刷する)ことができる。因みに画像形成装置1は、原稿を読み取るイメージスキャナ機能や電話回線を使用した通信機能等を有しておらず、プリンタ機能のみを有する単機能のSFP(Single Function Printer)となっている。
【0018】
画像形成装置1は、略箱型に形成されたプリンタ筐体2の内部に種々の部品が配置されている。因みに以下では、図1における右端部分を画像形成装置1の正面とし、この正面と対峙して見た場合の上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義した上で説明する。」
(4)「【0025】
中搬送部7の上側であり、搬送路Uを挟んで該中搬送部7の反対側には、4個の画像形成ユニット11K、11Y、11M及び11Cが前側から後側へ向かって順に配置されている。画像形成ユニット11K、11Y、11M及び11C(以下これらをまとめて画像形成ユニット11とも呼ぶ)は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色にそれぞれ対応しているものの、色のみが相違しており、何れも同様に構成されている。」
(5)「【0029】
画像形成ユニット11は、搬送ベルト10により搬送路Uに沿って用紙Pが搬送されていた場合、感光体ドラム15及び転写ローラ17との間に該搬送ベルト10及び該用紙Pを挟み込み、トナー画像を該感光体ドラム15の周側面から該用紙Pに転写させる。このようにして各画像形成ユニット11は、搬送路Uに沿って前方から搬送されて来る用紙Pに対し、それぞれの色によるトナー画像を順次転写して重ねながら、後方へ進行させていく。
【0030】
中搬送部7の後端近傍には、定着部18が設けられている。定着部18は、搬送路Uを挟んで対向するように配置された2個のローラによって用紙Pに熱及び圧力を加えて該用紙Pにトナー画像を定着させ(詳しくは後述する)、さらに後方へ引き渡す。
…
【0032】
[2.定着部の構成]
次に、定着部18の構成について説明する。図3に斜視図を示すと共に図4に模式的な断面図を示すように、定着装置としての定着部18は、大きく分けて、全体を囲むように形成された筐体21、搬送路Uの上側に配置された発熱ローラ部22及び該搬送路Uの下側に配置されたバックアップローラ23により構成されている。」
(6)「【0047】
定着ベルト43は、可撓性を有すると共に耐熱性を有する材料により構成された無端ベルトであり、中心軸を左右方向に沿わせた円筒状に形成されている。」
(7)「【0051】
次に発熱ローラ部22は、予め組み立てられたヒータユニット41(詳しくは後述する)に発熱ローラホルダ42L、定着ベルト43及び発熱ローラホルダ42Rが順次挿通される。このとき定着ベルト43は、その左端近傍がベルトガイド44Lのガイド部57に挿通されると共に、その右端近傍がベルトガイド44Rのガイド部57に挿通される。その上で発熱ローラ部22は、発熱ローラホルダ42L及び42Rが取付板55を介してヒータユニット41にそれぞれ固定される。これにより定着ベルト43は、例えば下端付近に後方向へ向かう外力が加えられると、ベルトガイド44L及び44Rのガイド部57に沿って周回すること、すなわちヒータユニット41の周囲を回転することができる。」
(8)「【0059】
ここで定着部18では、カム26の短径部26Bが前方を向いていた場合、図4(A)に示したように、ばね28の復元力により後方へ付勢されたカム付勢部53が該カム26に当接する前に、発熱ローラ部22のヒータユニット41が定着ベルト43を介してバックアップローラ23のローラ本体部23Aに押し付けられる。以下、このような状態をニップ状態又は押付状態と呼ぶ。」
(9)「【0063】
[3.ヒータユニットの構成]
ヒータユニット41は、図7に分解斜視図を示すと共に図8に断面図を示すように、大きく分けてヒータ支持部材61、ホルダヒータ62、サポート板63、ヒータ基板64、熱拡散部材65及びホルダコネクタ66により構成されている。またホルダコネクタ66には、コネクタ37及び38がそれぞれ挿入される。なお図7は、説明の都合上、図6に示したヒータユニット41を水平面内で半回転させ、すなわち上下方向に沿った仮想的な回転軸を中心として180度回転させた上で分解し、該ヒータユニット41を右後方向の斜め上側から見た様子を表している。」
(10)「【0082】
[3-3.サポート板及びヒータ基板の構成]
サポート板63(図7)は、全体として左右方向に長く、前後方向に短く、且つ上下方向に薄い板状に形成されている。サポート板63における前後方向の長さは、ホルダヒータ62の基板中央部81A(図8)における前後方向の長さと略同等となっている。一方、サポート板63における左右方向の長さは、ホルダヒータ62の基板中央部81Aにおける左右方向の長さよりもやや短くなっている。このサポート板63は、例えばステンレス(SUS:Steel Use Stainless)等の金属材料により構成されている。
【0083】
ヒータ基板64は、全体として左右方向に長く、前後方向に短く、上下方向に薄い板状に形成されている。図10(A)に平面図を示すように、ヒータ基板64は、大きく分けて、ヒータが配置されるヒータ配置部91と、電極が配置される電極配置部92とにより構成されている。
【0084】
このヒータ基板64は、薄いステンレスの板状部材の下面に絶縁部材が塗布された上で所定の配線パターンや後述する発熱素子等が形成され、さらに表面が薄いガラス材料により被覆されている。このためヒータ基板64は、十分な剛性を有しており、外力が加えられた場合であってもその形状を良好に維持し、撓みが生じる場合であってもその撓み量がごく僅かに抑えられる。」
(11)「【0087】
ヒータ配置部91の下面には、左右両端の近傍を除いた発熱範囲91Aに、5個のヒータでなるヒータ94が左右方向に沿って配置されている。換言すれば、ヒータ配置部91には、発熱範囲91Aを主走査方向に沿って5つに分割した各領域(以下これを発熱領域とも呼ぶ)にそれぞれヒータ94が配置されている。」
(12)「【0091】
さらに、ヒータ配置部91における後辺の左端近傍には、ヒータ94の左端よりも左側となる箇所に、すなわち発熱範囲91Aと電極配置部92との間における後辺に、後方に突出した位置決め突起95が設けられている。位置決め部としての位置決め突起95は、左右方向の長さが、ホルダヒータ62に設けられた係合部82Eの係合孔82EHにおける左右方向の長さよりも僅かに短くなっている。
【0092】
電極配置部92は、ヒータ配置部91と比較して、前後方向(すなわち副走査方向)の長さが2倍程度に拡大される一方、左右方向(すなわち主走査方向)の長さが十分に短くなっている。電極配置部92の下面には、4個の電極96が設けられている。具体的に電極配置部92には、後側の端辺近傍に2個の電極96A及び96Bが設けられ、前側の端辺近傍に2個の電極96C及び96Dが設けられている。各電極96(すなわち電極96A、96B、96C及び96D)は、ヒータ基板64の下面に形成された配線パターン(図示せず)により、それぞれヒータ94と適宜接続されている。」
(13)「【0127】
このときヒータ基板64は、位置決め突起95をホルダヒータ62の係合部82Eの設けられた係合孔82EHに挿通される。これによりヒータ基板64は、ホルダヒータ62に対する上下方向及び左右方向の位置が規制される。因みにヒータ基板64は、電極配置部92がホルダヒータ62の左端よりも左側にはみ出した状態となる。
【0128】
その次にヒータユニット41は、ホルダヒータ62に熱拡散部材65が取り付けられる。具体的に熱拡散部材65は、例えば左端近傍をホルダヒータ62の左端近傍に近接させるように傾斜させ、係合部65BP及び65CPをホルダヒータ62の係合突起82F及び83Fとそれぞれ係合させる。続いて熱拡散部材65は、左右方向の中央付近に対しホルダヒータ62から遠ざかる方向に外力が加えられ、撓んだ状態で右端近傍をホルダヒータ62の右端近傍に近接させていき、やがて後板部65B及び前板部65Cを後溝部81B及び前溝部81Cにそれぞれ入り込ませていく。さらに熱拡散部材65は、外力が解放されると、係合部65BQ及び65CQを該ホルダヒータ62の係合突起82G及び83Gとそれぞれ係合させる。
【0129】
これによりヒータユニット41は、ホルダヒータ62に熱拡散部材65が係合された状態となり、該熱拡散部材65により該ホルダヒータ62に対するサポート板63及びヒータ基板64の上下方向及び前後方向への変位を規制する。すなわちヒータユニット41は、ヒータ支持部材61に対するヒータ基板64の上下方向及び前後方向への変位を規制した状態となる。またヒータユニット41は、ヒータ支持部材61に対するヒータ基板64の左右方向への変位を、位置決め突起95及び係合部82Eにより規制している。」
(14)「【0135】
この状態でヒータユニット41は、ホルダコネクタ66にコネクタ37及び38がそれぞれ挿入される。具体的にヒータユニット41は、コネクタ37がホルダコネクタ66の後側から前方へ近接されていき、やがて端子保持部162を下部空間113に挿入させると共に挟持部163を中部空間112に挿入させる。説明の都合上、以下では中部空間112及び下部空間113をコネクタ挿入箇所とも呼ぶ。
【0136】
このときコネクタ37における端子保持部162(図7)の端子165及び166は、適宜弾性変形しながら、ヒータ基板64の電極配置部92における下面に設けられた電極96A及び96B(図10(A))に当接することにより、該電極96A及び96Bとそれぞれ電気的に接続される。」
(15)「【0164】
また上述した実施の形態においては、ヒータ基板64(図7)における発熱範囲91Aの後辺に、周囲よりも後方向へ突出した形状でなる位置決め突起95を設けると共に、ホルダヒータ62に係合孔82EHを有する係合部82Eを設けた。その上で、実施の形態では、位置決め突起95を係合孔82EHに挿通させることにより、ホルダヒータ62に対するヒータ基板64の左右方向に関する位置を定める場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばヒータ基板64に切り欠きを形成すると共にホルダヒータ62に突起を形成し、両者を係合させる等、周知の種々の形状や構造を利用しても良い。要は、ホルダヒータ62に対するヒータ基板64の左右方向に関する位置を規制することができれば良い。」
(16)「
[図:0001417614000003.jpg]
」
(17)図1より、定着部18と、画像形成ユニット11K、11Y、11M及び11C(以下、これらをまとめて「画像形成ユニット11」という。)と、を備える画像形成装置1が看取できる。
(18)上記(15)より、位置決め突起95に代えてヒータ基板64に切り欠きを形成すると共に、係合孔82EHに代えてホルダヒータ62に突起を形成し、両者を係合させることにより、ヒータ基板64を、ホルダヒータ62に対して、左右方向の位置を規制する態様が記載されているものと認める。
3 甲1明細書等に記載の発明
上記2(1)~(18)より、甲1明細書等には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「定着部18と、画像形成ユニット11と、を備える画像形成装置1であって、
薄い板状のヒータ基板64を備える発熱ローラ部22を用いて、記録媒体上の画像を定着する定着装置と、画像を形成する画像形成部と、を備える画像形成装置であって、
定着部18は、筐体21、搬送路Uの上側に配置された発熱ローラ部22及び該搬送路Uの下側に配置されたバックアップローラ23により構成され、
発熱ローラ部22は、ヒータユニット41に発熱ローラホルダ42L、定着ベルト43(無端ベルト)及び発熱ローラホルダ42Rが順次挿通され、
ヒータユニット41は、ヒータ支持部材61、ホルダヒータ62、サポート板63、ヒータ基板64、熱拡散部材65及びホルダコネクタ66により構成され、ホルダコネクタ66には、コネクタ37及び38がそれぞれ挿入され、
ヒータ基板64は、ヒータが配置されるヒータ配置部91と、電極が配置される電極配置部92とにより構成され、
ヒータ基板64は、薄いステンレスの板状部材の下面に絶縁部材が塗布された上で所定の配線パターンや後述する発熱素子等が形成され、
ヒータ配置部91の下面には、左右両端の近傍を除いた発熱範囲91Aに、5個のヒータでなるヒータ94が左右方向に沿って配置され、
ヒータ配置部91における後辺の左端近傍には、ヒータ94の左端よりも左側となる箇所に、すなわち発熱範囲91Aと電極配置部92との間における後辺に、後方に凹んだ切り欠きが設けられ、
電極配置部92には、後側の端辺近傍に2個の電極96A及び96Bが設けられ、前側の端辺近傍に2個の電極96C及び96Dが設けられ、各電極96(すなわち電極96A、96B、96C及び96D)は、ヒータ基板64の下面に形成された配線パターンにより、それぞれヒータ94と適宜接続され、
ヒータ基板64に切り欠きを形成すると共に、ホルダヒータ62に突起を形成し、両者を係合させることにより、ヒータ基板64を、ホルダヒータ62に対して、左右方向の位置を規制する、
画像形成装置1。」
4 本件発明2について
(1)対比
本件発明2と甲1発明を対比する。
ア 後者の「薄い板状のヒータ基板64」、「コネクタ37及び38」、「ホルダヒータ62」、「薄いステンレスの板状部材」、「ヒータ94」、「電極96A、96B、96C及び96D」、「配線パターン」、及び「切り欠き」は、それぞれ、前者の「面状の加熱部材」、「給電用のコネクタ」、「保持部材」、「基材層」、「発熱部」、「複数の電極部」、「給電線」、及び「位置決め部」に相当する。
イ 後者の「配線パターン」は、各電極96(すなわち電極96A、96B、96C及び96D)とヒータ94とを接続するものであるから、前者の「給電線」と後者の「配線パターン」とは、「基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらを電気的に接続する」ものとの概念で一致する。
ウ 後者の「切り欠き」は、ホルダヒータ62に形成した突起と係合することにより、ヒータ基板64を、ホルダヒータ62に対して、左右方向の位置を規制するものであるから、前者の「位置決め部」と後者の「切り欠き」とは、「相手部材である前記保持部材の位置決め形状との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う」ものとの概念で一致する。
エ 後者の「切り欠き」は、ヒータ配置部91における後辺の左端近傍であって、ヒータ94の左端よりも左側となる箇所に、すなわち発熱範囲91Aと電極配置部92との間における後辺に、すなわち、最もヒータ94に近い電極配置部92の電極96とヒータ94との間に設けられものであるから、前者の「位置決め部」と後者の「切り欠き」とは、「前記加熱部材の長手方向における前記給電線の箇所で、かつ、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられる」ものとの概念で一致する。
オ 後者のヒータ基板64は、ホルダヒータ62に対して、左右方向の位置が規制される、すなわち、ホルダヒータ62によって保持されることとなるのであるから、後者の「加熱部材」もホルダヒータ62によって保持されるといえる。
(2)判断
以上のとおり、本件発明2と甲1発明との間で、発明特定事項に差異はない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明2は、甲1発明と同一である。
5 本件発明4について
(1)対比
本件発明4と甲1発明を対比する。
後者の「切り欠き」は、前者の「位置決め孔」に相当する。
(2)判断
本件発明4は本件発明2を引用するものであるところ、上記4(1)を勘案すると、本件発明4と甲1発明との間で、発明特定事項に差異はない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明4は、甲1発明と同一である。
6 本件発明5について
(1)対比
本件発明5と甲1発明を対比する。
後者の「切り欠き」は、発熱範囲91Aと電極配置部92との間における後辺に、後方に凹んだものであるから、前者の「位置決め孔」と後者の「切り欠き」とは、「加熱部材の長手方向に対して交差する方向に窪むように形成された凹部」との概念で一致する。
(2)判断
本件発明5は本件発明4を引用するものであるところ、上記5(2)を勘案すると、本件発明5と甲1発明との間で、発明特定事項に差異はない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明5は、甲1発明と同一である。
7 本件発明8について
(1)対比
本件発明8と甲1発明を対比する。
後者の「薄いステンレスの板状部材」は、ステンレスにより構成されているから、前者の「基材層」と後者の「薄いステンレスの板状部材」とは、金属材料で構成されているものとの概念で一致する。
(2)判断
本件発明8は本件発明2、4、5を引用するものであるところ、上記4(1)、5(2)、6(2)を勘案すると、本件発明8と甲1発明との間で、発明特定事項に差異はない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明8は、甲1発明と同一である。
8 本件発明9について
(1)対比
本件発明9と甲1発明を対比する。
後者の「発熱ローラ部22」は、ヒータユニット41に発熱ローラホルダ42L、定着ベルト43(無端ベルト)及び発熱ローラホルダ42Rが順次挿通されて構成されるものであるから、後者の「発熱ローラ部22」は、前者の「ベルト加熱装置」に相当する。
(2)判断
本件発明9は本件発明2、4、5、8を引用するものであるところ、上記4(1)、5(2)、6(2)、7(2)を勘案すると、本件発明9と甲1発明との間で、発明特定事項に差異はない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明9は、甲1発明と同一である。
9 本件発明11について
(1)対比
本件発明11と甲1発明を対比する。
後者の「定着装置」は、定着ベルト43(無端ベルト)を備える発熱ローラ部22を用いて、記録媒体上の画像を定着するものであるから、前者の「ベルト加熱装置」に相当する。
(2)判断
本件発明11は本件発明9を引用するものであるところ、上記8(2)を勘案すると、本件発明11と甲1発明との間で、発明特定事項に差異はない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明11は、甲1発明と同一である。
10 本件発明12について
(1)対比
本件発明12と甲1発明を対比する。
後者の「画像形成装置1」は、定着部18と、画像形成ユニット11と、を備えるものであるから、前者の「画像形成装置」に相当する。
(2)判断
本件発明12は本件発明2、4、5、8、9、11のいずれかを引用するものであるところ、上記4(1)、5(2)、6(2)、7(2)、8(2)、9(2)を勘案すると、本件発明12と甲1発明との間で、発明特定事項に差異はない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明12は、甲1発明と同一である。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明2、4、5、8、9、11、12は、甲1発明と同一であって、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものである。
よって、本件請求項2、4、5、8、9、11、12に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700811