特許異議申立
2023-700812
加熱装置、定着装置及び画像形成装置
- 審判番号
- 2023-700812
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-184400
- 登録番号
- 7219416
- 請求日
- 2023年08月07日
- 審決日
- 2025年02月14日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社リコー
- 【権利者代理人】城村 邦彦
- 【異議申立人】八木 俊和
- 審判長/審判官
- 審判長 殿川 雅也
- 審判官 門 良成
- 審判官 山本 一
- 分類
- P1652.16 -ZAB(G03G) / P1652.856-ZAB(G03G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第113条第2号、特許法第126条第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7219416号発明「加熱装置、定着装置及び画像形成装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
令和6年7月16日付け訂正請求において、特許第7219416号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3について訂正することを認める。
特許第7219416号の請求項2、3、6、13に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7219416号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、平成30年9月28日に出願され、令和5年1月31日にその特許権の設定登録がされ、同年2月8日に特許掲載公報が発行され、同年8月7日に特許異議申立人 八木 俊和(以下「申立人」という。)により請求項2、3、6、13に対して特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は、次のとおりである。
令和5年11月 8日付け:取消理由通知書
同年12月14日 :意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
令和6年 2月 7日 :意見書の提出(申立人)
同年 2月28日付け:訂正拒絶理由通知書
同年 5月10日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 7月16日 :意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年 8月13日付け:訂正拒絶理由通知書
同年 9月17日 :意見書の提出(特許権者)
同年12月23日 :意見書の提出(申立人)
第2 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
特許権者が令和6年7月16日にされた訂正請求(以下「本件訂正請求」という。なお、特許権者が令和5年12月14日にされた訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、同日に提出された訂正請求書の記載からみて、その請求の趣旨を「特許第7219416号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2~6、13について訂正することを求める。」とするものである。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は以下のとおりである(下線は当審で付した。以下同様。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に、
「加熱部材に接続される給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され、基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらを電気的に接続する給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
前記基材層に、前記発熱部が設けられた部分よりも断面積の小さい小断面部が形成され、
前記小断面部は、前記保持部材の突起との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部であり、
前記小断面部は、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられる」
と記載されているのを、
「加熱部材に接続される給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され、基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらを電気的に接続する給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
前記基材層に、前記発熱部が設けられた部分よりも断面積の小さい小断面部が形成され、
前記小断面部は、前記保持部材の突起との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部であり、
前記小断面部は、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられ、
前記基材層の前記発熱部、前記電極部及び前記給電線が設けられる面に沿って前記長手方向に対して交差する方向を前記加熱部材の短手方向とすると、
前記給電線は、前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側で前記短手方向の前記加熱部材の中央側に向かって伸びる第1の部分と、前記1の部分の前記中央側の端部から前記小断面部を通過するように前記長手方向へ伸びる第2の部分とを有する」
に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項4~6、13も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記小断面部は、前記基材層に前記位置決め部としての凹部が設けられた部分である請求項1又は2に記載の加熱部材」
と記載されているのを、
「加熱部材に接続される給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され、基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらをそれぞれ電気的に接続する複数の給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
前記基材層に、前記発熱部が設けられた部分よりも断面積の小さい小断面部が形成され、
前記小断面部は、前記保持部材の突起との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部であり、
前記小断面部は、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられ、
前記小断面部は、前記基材層に前記位置決め部としての凹部が設けられた部分であり、
前記基材層の前記発熱部、前記電極部及び前記給電線が設けられる面に沿って前記長手方向に対して交差する方向を前記加熱部材の短手方向とすると、
前記複数の給電線は、前記短手方向において隣り合うように配置され、
前記複数の給電線のうち、前記凹部に近い側の給電線は、前記凹部に遠い側の給電線に対して、前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側で前記短手方向の前記加熱部材の中央側に向かって伸びる第1の部分を有し、
前記凹部に近い側の給電線と前記凹部に遠い側の給電線との間の前記短手方向の間隔は、前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側よりも前記小断面部において小さいことを特徴とする加熟部材」
に訂正する。
以下、訂正前の請求項3の、
「請求項1又は2に記載の」との記載を削除して、訂正前の請求項2に記載の事項を追加する訂正を「訂正事項2-1」といい、
「訂正事項2-1」に加えて、「給電線」について「前記発熱部と前記電極部との間でこれらをそれぞれ電気的に接続する複数の給電線」(下線は、訂正事項2-1に追加する訂正事項)とする訂正を「訂正事項2-2」といい、
「前記基材層の前記発熱部、前記電極部及び前記給電線が設けられる面に沿って前記長手方向に対して交差する方向を前記加熱部材の短手方向とすると、 前記複数の給電線は、前記短手方向において隣り合うように配置され」(下線は、訂正事項2-1に追加する訂正事項。なお、スペースは改行を意味する。以下同様。)とする訂正を「訂正事項2-3」といい、
「前記複数の給電線のうち、前記凹部に近い側の給電線は、前記凹部に遠い側の給電線に対して、前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側で前記短手方向の前記加熱部材の中央側に向かって伸びる第1の部分を有し、 前記凹部に近い側の給電線と前記凹部に遠い側の給電線との間の前記短手方向の間隔は、前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側よりも前記小断面部において小さいことを特徴とする」(下線は、訂正事項2-1に追加する訂正事項。)とする訂正を「訂正事項2-4」という。
請求項3の記載を引用する請求項5、6、13も同様に訂正する。
(3)一群の請求項及び別の訂正単位とする求め
訂正前の請求項2~6、13について、請求項3~6、13はそれぞれ請求項2を直接的又は間接的に引用するものであって、請求項2の訂正に連動して請求項3~6、13が訂正される関係にあるから、訂正前の請求項2~6、13に対応する訂正後の請求項2~6、13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、特許権者は、訂正後の請求項3については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。
3 訂正の適否に関する当審の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項2の「加熱部材」に設けられた「給電線」のパターンについて、「前記基材層の前記発熱部、前記電極部及び前記給電線が設けられる面に沿って前記長手方向(当審注:加熱部材の長手方向)に対して交差する方向を前記加熱部材の短手方向とする」と定義したときの「前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側で前記短手方向の前記加熱部材の中央側に向かって伸びる第1の部分と、前記1の部分の前記中央側の端部から前記小断面部を通過するように前記長手方向へ伸びる第2の部分とを有する」パターンであると、給電線の形状に係り限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記アのとおり、請求項2に係る訂正事項1は、訂正前の請求項1の「加熱部材」が有することが自明であった「給電線」について減縮する訂正であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という 。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)明細書等には、以下の事項が記載されている。
「【0021】
・・・また、加熱装置19は、加熱部材としての面状のヒータ22と、ヒータ22を保持する保持部材としてのヒータホルダ23と、ヒータホルダ23を長手方向に渡って補強する補強部材としてのステー24等で構成されている。」
「【0040】
・・・各発熱部60の一端部(図7における右端部)同士は、給電線62を介して互いに電気的に接続され、各発熱部60の他端部(図7における左端部)は、それぞれ別の給電線62を介して電極部61に対して電気的に接続されている。」
「【0062】
また、図7に示すように、本実施形態では、位置決め孔22aが、ヒータ22の長手方向における給電線62の箇所に対応して設けられている。給電線62以外の箇所、例えば、発熱部60や電極部61の箇所に対して位置決め孔22aを設けることも可能であるが、その場合、ヒータ22(基材層50)が短手方向(図7における上下方向)に大きくなる可能性がある。」
「【0091】
[電極部への熱伝達抑制構造]
上述の説明では、ヒータ22の長手方向の位置決めを行うために、ヒータ22に位置決め孔22aを設けた構成ついて述べたが、このような位置決め孔22aを、発熱部60が設けられた部分と電極部61が設けられた部分との間に形成することで、発熱部60から電極部61への熱伝達を抑制する手段として利用することができる。すなわち、図7に示すように、位置決め孔22aが設けられている部分は、発熱部60が設けられた部分よりも断面積の小さい小断面部22zとなっているため、この小断面部22zにおいて発熱部60から電極部61への熱伝達を抑制することができる。」
「【図7】
[図:0001424545000001.jpg]
」
(イ)上記(ア)【図7】から、基材層50の発熱部60、電極部61及び給電線62が設けられる面に沿った長手方向(図7における左右方向)に対して交差する方向をヒータ22の短手方向(図7における上下方向)と定義すると、各発熱部60の他端部(図7における左端部)を、電極部61に対して電気的に接続している2本の給電線62のうち、下側の給電線62(図7における上記短手方向における中央よりも下側に位置する給電線62)は、上記長手方向における発熱部60と電極部61との間の発熱部60側で、上記短手方向のヒータ22の中央側に向かって伸びる部分と、伸びた先の当該中央側の端部から小断面部22zを通過するように上記長手方向に伸びる部分を有することが看取できる。
(ウ)したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 訂正後の請求項2を引用する請求項4~6、13についても、上記ア~ウの判断と同様である。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項2-1について
訂正事項2-1は、訂正前の請求項3が、請求項1又は2を引用していたところ、請求項1の引用を削除して請求項2のみを引用するものに減縮するとともに、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とし、かつ同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(イ)訂正事項2-2について
訂正事項2-2は、「給電線」について、その数が「複数」あることを限定し、さらに、当該複数の給電線が「それぞれ」複数の発熱部と複数の電極部との間を電気的に接続していると、給電線の接続態様に係り限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(ウ)訂正事項2-3について
訂正事項2-3は、訂正事項2-2により訂正された「複数の給電線」について、その配置が「前記基材層の前記発熱部、前記電極部及び前記給電線が設けられる面に沿って前記長手方向(当審注:加熱部材の長手方向)に対して交差する方向を前記加熱部材の短手方向とする」と定義した上で、当該「短手方向において隣り合うように配置され」ていることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(エ)訂正事項2-4について
訂正事項2-4は、訂正事項2-2、及び訂正事項2-3により訂正された「複数の給電線」について、そのパターンが「前記複数の給電線のうち、前記凹部(当審注:位置決め部としての凹部)に近い側の給電線は、前記凹部に遠い側の給電線に対して、前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側で前記短手方向の前記加熱部材の中央側に向かって伸びる第1の部分を有し、 前記凹部に近い側の給電線と前記凹部に遠い側の給電線との間の前記短手方向の間隔は、前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側よりも前記小断面部において小さいことを特徴とする」と、給電線の形状に係り限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記アのとおり、訂正事項2-1は、「特許請求の範囲の減縮」かつ「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、訂正事項2-2、訂正事項2-3、及び訂正事項2-4は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)訂正事項2-1について
訂正事項2-1は、「特許請求の範囲の減縮」かつ「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるから、願書に添付した明細書等に記載された範囲内のものといえる。
(イ) 訂正事項2-2について
明細書等の段落【0039】に「導体層52は、面状の抵抗発熱体で構成された一対の発熱部60と、各発熱部60の長手方向一端部側に設けられた一対の電極部61と、電極部61と発熱部60との間及び発熱部60同士を接続する複数の給電線62とで構成されている。」と記載されていることから、訂正事項2-2は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)訂正事項2-3について
a 明細書等には、上記(1)ウ(ア)に示した事項が記載されている。
b 上記(1)ウ(ア)の【図7】から、各発熱部60の他端部(図7における左端部)を一対の電極部61に対して電気的に接続する2本の給電線62は、上記(1)ウ(イ)で定義したヒータ22の短手方向(図7における上下方向)において隣り合うように配置されていることが看取できる。
c したがって、訂正事項2-3は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(エ)訂正事項2-4について
a 明細書等には、上記(1)ウ(ア)に示した事項が記載されている。
b 上記(1)ウ(ア)の【図7】から、位置決め孔22a(訂正事項2-4における「位置決め部としての凹部」に相当)に近い側の給電線62は、上記位置決め孔22aに遠い側の給電線に対して、上記(1)ウ(イ)で定義した長手方向における発熱部60と電極部61との間の発熱部60側で、上記短手方向のヒータの中央側に向かって伸びる部分を有することが看取できる。
c 上記(1)ウ(ア)の【図7】から、当該部分を有することにより、上記位置決め孔22aに近い側の給電線62と上記位置決め孔22aに遠い側の給電線との間の上記(1)ウ(イ)で定義した短手方向の間隔は、上記(1)ウ(イ)で定義した長手方向における発熱部60と電極部61との間の発熱部60側よりも、小断面部22zにおいて小さいことも看取できる。
d したがって、訂正事項2-4は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 小括
以上のとおり、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正後の請求項3を引用する請求項5、6、13についても、上記ア~ウの判断と同様である。
(3)特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件特許についての特許異議の申立て事件では、訂正前の請求項2、3、6、13について特許異議の申立ての対象とされているから、請求項2、3、6、13については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
他方、訂正前の請求項4、5は特許異議の申立ての対象とされていないところ、請求項2に係る訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的としているから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定により、訂正後の請求項2を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項4、5に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものでなければならない。
また、請求項3に係る訂正事項2-1、2-2、2-3、及び2-4も、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的としているから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定により、訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項5に係る発明も、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで、以下、訂正後の請求項4、5に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを検討する。
ア 本件訂正後の請求項4、5に係る発明
本件訂正後の請求項2~5は、以下のとおりである。
以下、本件訂正後の請求項2を引用する請求項4に係る発明を「本件訂正特許発明4」、本件訂正後の請求項2を引用する請求項5に係る発明を「本件訂正特許発明5-1」、本件訂正後の請求項3を引用する請求項5に係る発明を「本件訂正特許発明5-2」という。
「【請求項2】
加熱部材に接続される給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され、基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらを電気的に接続する給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
前記基材層に、前記発熱部が設けられた部分よりも断面積の小さい小断面部が形成され、
前記小断面部は、前記保持部材の突起との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部であり、
前記小断面部は、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられ、
前記基材層の前記発熱部、前記電極部及び前記給電線が設けられる面に沿って前記長手方向に対して交差する方向を前記加熱部材の短手方向とすると、
前記給電線は、前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側で前記短手方向の前記加熱部材の中央側に向かって伸びる第1の部分と、前記1の部分の前記中央側の端部から前記小断面部を通過するように前記長手方向へ伸びる第2の部分とを有することを特徴とする加熱部材。
【請求項3】
加熱部材に接続される給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され、基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらをそれぞれ電気的に接続する複数の給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
前記基材層に、前記発熱部が設けられた部分よりも断面積の小さい小断面部が形成され、
前記小断面部は、前記保持部材の突起との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部であり、
前記小断面部は、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられ、
前記小断面部は、前記基材層に前記位置決め部としての凹部が設けられた部分であり、
前記基材層の前記発熱部、前記電極部及び前記給電線が設けられる面に沿って前記長手方向に対して交差する方向を前記加熱部材の短手方向とすると、
前記複数の給電線は、前記短手方向において隣り合うように配置され前記複数の給電線のうち、前記凹部に近い側の給電線は、前記凹部に遠い側の給電線に対して、前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側で前記短手方向の前記加熱部材の中央側に向かって伸びる第1の部分を有し、
前記凹部に近い側の給電線と前記凹部に遠い側の給電線との間の前記短手方向の間隔は、前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側よりも前記小断面部において小さいことを特徴とする加熱部材。
【請求項4】
前記小断面部は、前記基材層に前記位置決め部としての貫通孔が設けられた部分である請求項1又は2に記載の加熱部材。
【請求項5】
前記発熱部は、PTC特性を有し、
前記発熱部の少なくとも一部において前記加熱部材の長手方向に電流が流れるように構成されている請求項1から4のいずれか1項に記載の加熱部材。」
イ 先願
先願(特願2018-123895号(甲第1号証:特開2020-3689号公報))は、本件特許の出願の日より前である平成30年6月29日に出願された特許出願であり、本件特許の出願後である令和2年1月9日に出願公開がされたものであって、本件特許の発明者が先願に係る発明の発明者と同一ではないから、先願は、特許法第29条の2本文における「他の特許出願」の形式的要件を満足する。
また、本件特許の出願の時に、本件特許の出願人と先願の出願人は同一ではなかったから、先願は、同条ただし書における「他の特許出願」の形式的要件も満足する。
ウ 甲1明細書等の記載事項
しかるに、先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「甲1明細書等」という。)には、次の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明はヒータユニット、定着装置および画像形成装置に関し、例えば電子写真式のプリンタに適用して好適なものである。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、かかる構成のヒータユニットでは、発熱により基板の温度が上昇して膨張するため、温度の変化に応じて、長手方向である主走査方向(すなわち左右方向)に関して、当該基板の長さが比較的大きく伸縮する。その一方でヒータユニットは、コネクタが接続されるホルダが金属や耐熱性を有する樹脂等、熱膨 張率の低い材料により構成されることが多い。すなわちヒータユニットのホルダは、温度変化が生じた場合であっても主走査方向への変位量が極めて少ない。
【0007】
そうするとヒータユニットでは、発熱をする度、及び冷却される度に、すなわち温度が変化する度に、基板の電極をコネクタの端子に対して摺動させることになる。特にヒータユニットでは、特許文献1の図3に示されているように、基板における主走査方向に関する両側にそれぞれ電極が配置され、それぞれにホルダが設けられてコネクタを接続させる構成である場合、少なくとも一方において、摺動する距離が十分に大きくなる。
【0008】
そうするとヒータユニットでは、温度が変化する度に、基板の電極とコネクタの端子との間で十分に大きな距離に渡って摺動が発生し、これにより端子及び電極の表面が摩耗して接触状態が悪化し、接触不良を生じて電流が十分に供給されなくなる恐れ、すなわち正常に発熱できなくなる恐れがある、という問題があった。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、温度変化に関わらず、コネクタから基板に電流を安定的に供給し得るヒータユニット、定着装置及び画像形成装置を提案しようとするものである。」
(ウ)「【0017】
[1.画像形成装置の構成]
図1に示すように、画像形成装置1は、電子写真式のプリンタであり、媒体としての用紙Pにカラーの画像を形成する(すなわち印刷する)ことができる。」
(エ)「【0025】
中搬送部7の上側であり、搬送路Uを挟んで該中搬送部7の反対側には、4個の画像形成ユニット11K、11Y、11M及び11Cが前側から後側へ向かって順に配置されている。画像形成ユニット11K、11Y、11M及び11C(以下これらをまとめて画像形成ユニット11とも呼ぶ)は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色にそれぞれ対応しているものの、色のみが相違しており、何れも同様に構成されている。
・・・
【0029】
画像形成ユニット11は、搬送ベルト10により搬送路Uに沿って用紙Pが搬送されていた場合、感光体ドラム15及び転写ローラ17との間に該搬送ベルト10及び該用紙Pを挟み込み、トナー画像を該感光体ドラム15の周側面から該用紙Pに転写させる。このようにして各画像形成ユニット11は、搬送路Uに沿って前方から搬送されて来る用紙Pに対し、それぞれの色によるトナー画像を順次転写して重ねながら、後方へ進行させていく。」
(オ)「【0030】
中搬送部7の後端近傍には、定着部18が設けられている。定着部18は、搬送路Uを挟んで対向するように配置された2個のローラによって用紙Pに熱及び圧力を加えて該用紙Pにトナー画像を定着させ(詳しくは後述する)、さらに後方へ引き渡す。
・・・
【0032】
[2.定着部の構成]
次に、定着部18の構成について説明する。図3に斜視図を示すと共に図4に模式的な断面図を示すように、定着装置としての定着部18は、大きく分けて、全体を囲むように形成された筐体21、搬送路Uの上側に配置された発熱ローラ部22及び該搬送路Uの下側に配置されたバックアップローラ23により構成されている。」
(カ)「【0043】
[2-2.発熱ローラ部及びバックアップローラの構成]
発熱ローラ部22は、図5に模式的な斜視図を示すと共に図6にその分解斜視図を示すように、大きく分けてヒータユニット41、該ヒータユニット41の左右両端近傍に取り付けられた発熱ローラホルダ42L及び42R、定着ベルト43、該定着ベルト43を支持するベルトガイド44L及び44Rにより構成されている。
【0044】
ヒータユニット41は、全体として左右方向に長い直方体状に形成されており、左端近傍における前後に上述したコネクタ37及び38(図3)がそれぞれ接続される。ヒータユニット41は、このコネクタに接続されたケーブルを介して電流が供給されると、下面を発熱させる(詳しくは後述する)。
・・・
【0047】
定着ベルト43は、可撓性を有すると共に耐熱性を有する材料により構成された無端ベルトであり、中心軸を左右方向に沿わせた円筒状に形成されている。」
(キ)「【0059】
ここで定着部18では、カム26の短径部26Bが前方を向いていた場合、図4(A)に示したように、ばね28の復元力により後方へ付勢されたカム付勢部53が該カム26に当接する前に、発熱ローラ部22のヒータユニット41が定着ベルト43を介してバックアップローラ23のローラ本体部23Aに押し付けられる。以下、このような状態をニップ状態又は押付状態と呼ぶ。
・・・
【0062】
このように定着部18では、カム26を回転させて長径部26A又は短径部26Bの何れかを前方に向けることにより、発熱ローラ部22(すなわち定着ベルト43及びヒータユニット41並びにバックアップローラ23のローラ本体部23A等)を、ニップ状態又は非ニップ状態に切り替えることができる。」
(ク)「【0063】
[3.ヒータユニットの構成]
ヒータユニット41は、図7に分解斜視図を示すと共に図8に断面図を示すように、大きく分けてヒータ支持部材61、ホルダヒータ62、サポート板63、ヒータ基板64、熱拡散部材65及びホルダコネクタ66により構成されている。またホルダコネクタ66には、コネクタ37及び38がそれぞれ挿入される。なお図7は、説明の都合上、図6に示したヒータユニット41を水平面内で半回転させ、すなわち上下方向に沿った仮想的な回転軸を中心として180度回転させた上で分解し、該ヒータユニット41を右後方向の斜め上側から見た様子を表している。」
(ケ)「【0082】
[3-3.サポート板及びヒータ基板の構成]
・・・
【0083】
ヒータ基板64は、全体として左右方向に長く、前後方向に短く、上下方向に薄い板状に形成されている。図10(A)に平面図を示すように、ヒータ基板64は、大きく分けて、ヒータが配置されるヒータ配置部91と、電極が配置される電極配置部92とにより構成されている。
【0084】
このヒータ基板64は、薄いステンレスの板状部材の下面に絶縁部材が塗布された上で所定の配線パターンや後述する発熱素子等が形成され、さらに表面が薄いガラス材料により被覆されている。
・・・
【0087】
ヒータ配置部91の下面には、左右両端の近傍を除いた発熱範囲91Aに、5個のヒータでなるヒータ94が左右方向に沿って配置されている。換言すれば、ヒータ配置部91には、発熱範囲91Aを主走査方向に沿って5つに分割した各領域(以下これを発熱領域とも呼ぶ)にそれぞれヒータ94が配置されている。
・・・
【0091】
さらに、ヒータ配置部91における後辺の左端近傍には、ヒータ94の左端よりも左側となる箇所に、すなわち発熱範囲91Aと電極配置部92との間における後辺に、後方に突出した位置決め突起95が設けられている。位置決め部としての位置決め突起95は、左右方向の長さが、ホルダヒータ62に設けられた係合部82Eの係合孔82EHにおける左右方向の長さよりも僅かに短くなっている。
【0092】
電極配置部92は、ヒータ配置部91と比較して、前後方向(すなわち副走査方向)の長さが2倍程度に拡大される一方、左右方向(すなわち主走査方向)の長さが十分に短くなっている。電極配置部92の下面には、4個の電極96が設けられている。具体的に電極配置部92には、後側の端辺近傍に2個の電極96A及び96Bが設けられ、前側の端辺近傍に2個の電極96C及び96Dが設けられている。各電極96(すなわち電極96A、96B、96C及び96D)は、ヒータ基板64の下面に形成された配線パターン(図示せず)により、それぞれヒータ94と適宜接続されている。」
(コ)「【0126】
次にヒータユニット41は、ヒータ支持部材61及びホルダヒータ62が上下反転された上で、該ホルダヒータ62にサポート板63及びヒータ基板64が載置される。
・・・
【0127】
このときヒータ基板64は、位置決め突起95をホルダヒータ62の係合部82Eの設けられた係合孔82EHに挿通される。これによりヒータ基板64は、ホルダヒータ62に対する上下方向及び左右方向の位置が規制される。因みにヒータ基板64は、電極配置部92がホルダヒータ62の左端よりも左側にはみ出した状態となる。
・・・
【0135】
この状態でヒータユニット41は、ホルダコネクタ66にコネクタ37及び38がそれぞれ挿入される。具体的にヒータユニット41は、コネクタ37がホルダコネクタ66の後側から前方へ近接されていき、やがて端子保持部162を下部空間113に挿入させると共に挟持部163を中部空間112に挿入させる。説明の都合上、以下では中部空間112及び下部空間113をコネクタ挿入箇所とも呼ぶ。
【0136】
このときコネクタ37における端子保持部162(図7)の端子165及び166は、適宜弾性変形しながら、ヒータ基板64の電極配置部92における下面に設けられた電極96A及び96B(図10(A))に当接することにより、該電極96A及び96Bとそれぞれ電気的に接続される。」
(サ)「【0159】
また別の観点から見れば、ヒータ基板64は、前後方向に関し、ヒータ配置部91ではヒータ94及び所定の配線パターンの配置に必要な最小限の長さとし、電極配置部92をコネクタ37及び38との接続に必要な、該ヒータ配置部91よりも長い形状とした(図10(A))。
【0160】
これによりヒータユニット41では、定着ベルト43(図4等)の内部に収容すべき部分、すなわちヒータ配置部91に相当する部分の前後長を最小限に抑え、該定着ベルト43の半径も最小限に抑えることができ、小型化に寄与できる。その一方でヒータユニット41では、電極配置部92に相当する部分において、2個のコネクタ37及び38を前後方向に対向させるように配置して左右方向の長さを抑えながら、両コネクタを互いに干渉させることなく前後方向に必要な長さを確保することができる。」
(シ)「【0164】
また上述した実施の形態においては、ヒータ基板64(図7)における発熱範囲91Aの後辺に、周囲よりも後方向へ突出した形状でなる位置決め突起95を設けると共に、ホルダヒータ62に係合孔82EHを有する係合部82Eを設けた。その上で、実施の形態では、位置決め突起95を係合孔82EHに挿通させることにより、ホルダヒータ62に対するヒータ基板64の左右方向に関する位置を定める場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばヒータ基板64に切り欠きを形成すると共にホルダヒータ62に突起を形成し、両者を係合させる等、周知の種々の形状や構造を利用しても良い。要は、ホルダヒータ62に対するヒータ基板64の左右方向に関する位置を規制することができれば良い。」
(ス)「【図1】
[図:0001424545000002.jpg]
」
(セ)「【図4】
[図:0001424545000003.jpg]
」
(ソ)「【図7】
[図:0001424545000004.jpg]
」
(タ)「【図10】
[図:0001424545000005.jpg]
」
エ 甲1明細書等の記載から把握できる事項
(ア)上記ウ(ス)【図1】より、画像形成装置1は、定着部18と、画像形成ユニット11K、11Y、11M及び11C(以下、これらをまとめて「画像形成ユニット11」という。)と、を備えることが看取でき、上記ウ(セ)【図4】より、定着部18は、ヒータユニット41を備えることが看取できる。
(イ)上記ウ(コ)、(ソ)【図7】、及び(タ)【図10】(A)より、コネクタ38もコネクタ37と同様に、コネクタ38の端子が、ヒータ基板64の電極配置部92における下面に設けられた電極96C及び96Dに当接することにより、該電極96C及び96Dとそれぞれ電気的に接続されると認める。
(ウ)上記ウ(シ)より、位置決め突起95に代えてヒータ基板64に切り欠きを形成すると共に、係合孔82EHに代えてホルダヒータ62に突起を形成し、両者を係合させることにより、ホルダヒータ62に対するヒータ基板64の左右方向に関する位置を規制する態様が記載されているものと認める。
(エ)上記ウ(タ)【図10】(A)より、電極配置部92は、ヒータ基板64の左側の端部に設けられ、ヒータ配置部91は、ヒータ基板64の右側の端部から中央を越えて左側にまで及ぶことが看取できる。
(オ)上記ウ(タ)【図10】(A)のコネクタ37及び38を示す点線から、コネクタ37及び38は、電極配置部92に対応する位置に挿入されることが看取でき、上記ウ(ソ)【図7】から、ホルダコネクタ66は、上下方向においてヒータ基板64の電極配置部92に対応する位置にあることが看取できる。
オ 甲1明細書等に記載の発明
上記ウ、エより、甲1明細書等には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認める。
「定着部18と、画像形成ユニット11を備える画像形成装置1であって、
画像形成ユニット11は、搬送路Uに沿って前方から搬送されて来る用紙Pに対し、それぞれの色によるトナー画像を順次転写して重ねながら、後方へ進行させていき、
定着部18は、大きく分けて、全体を囲むように形成された筐体21、搬送路Uの上側に配置された発熱ローラ部22及び該搬送路Uの下側に配置されたバックアップローラ23により構成され、
発熱ローラ部22は、大きく分けてヒータユニット41、該ヒータユニット41の左右両端近傍に取り付けられた発熱ローラホルダ42L及び42R、定着ベルト43、該定着ベルト43を支持するベルトガイド44L及び44Rにより構成され、
定着ベルト43は、無端ベルトであり、
定着部18では、発熱ローラ部22(すなわち定着ベルト43及びヒータユニット41並びにバックアップローラ23のローラ本体部23A等)を、ニップ状態又は非ニップ状態に切り替えることができ、ニップ状態では、発熱ローラ部22のヒータユニット41が定着ベルト43を介してバックアップローラ23のローラ本体部23Aに押し付けられ、
ヒータユニット41は、大きく分けてヒータ支持部材61、ホルダヒータ62、サポート板63、ヒータ基板64、熱拡散部材65及びホルダコネクタ66により構成され、
ホルダコネクタ66には、コネクタ37及び38がそれぞれ挿入され、ヒータユニット41は、コネクタに接続されたケーブルを介して電流が供給されると、下面を発熱させ、
ヒータ基板64は、全体として左右方向に長く、前後方向に短く、上下方向に薄い板状に形成され、大きく分けて、ヒータが配置されるヒータ配置部91と、電極が配置される電極配置部92とにより構成され、薄いステンレスの板状部材の下面に絶縁部材が塗布された上で所定の配線パターンや発熱素子等が形成され、
ヒータ配置部91の下面には、左右両端の近傍を除いた発熱範囲91Aに、5個のヒータでなるヒータ94が左右方向に沿って配置され、
ヒータ配置部91における後辺の左端近傍には、ヒータ94の左端よりも左側となる箇所に、すなわち発熱範囲91Aと電極配置部92との間における後辺に、後方に突出した位置決め突起95が設けられ、
電極配置部92は、ヒータ基板64の左側の端部に設けられ、ヒータ配置部91は、ヒータ基板64の右側の端部から中央を越えて左側にまで及び、
電極配置部92には、後側の端辺近傍に2個の電極96A及び96Bが設けられ、前側の端辺近傍に2個の電極96C及び96Dが設けられており、各電極96(すなわち電極96A、96B、96C及び96D)は、ヒータ基板64の下面に形成された配線パターンにより、それぞれヒータ94と適宜接続されており、
ホルダヒータ62にサポート板63及びヒータ基板64が載置され、
ヒータ基板64は、位置決め突起95をホルダヒータ62の係合部82Eの設けられた係合孔82EHに挿通されることにより、ホルダヒータ62に対する左右方向の位置が規制され、
コネクタ37における端子保持部162の端子165及び166は、ヒータ基板64の電極配置部92における下面に設けられた電極96A及び96Bに当接することにより、該電極96A及び96Bとそれぞれ電気的に接続され、
コネクタ38の端子は、ヒータ基板64の電極配置部92における下面に設けられた電極96C及び96Dに当接することにより、該電極96C及び96Dとそれぞれ電気的に接続され、
ホルダコネクタ66は上下方向においてヒータ基板64の電極配置部92に対応する位置にあり、
ヒータ基板64は、前後方向に関し、ヒータ配置部91ではヒータ94及び所定の配線パターンの配置に必要な最小限の長さとし、
位置決め突起95に代えてヒータ基板64に切り欠きを形成すると共に、係合孔82EHに代えてホルダヒータ62に突起を形成し、両者を係合させることにより、ホルダヒータ62に対するヒータ基板64の左右方向に関する位置を規制する、
画像形成装置1。」
カ 本件訂正特許発明4について
(ア)対比
本件訂正特許発明4と先願発明を対比する。
a 後者の「ヒータ基板64」、「ホルダヒータ62」、「薄いステンレスの板状部材」、「5個のヒータでなるヒータ94」、「各電極96(すなわち電極96A、96B、96C及び96D)」、「配線パターン」、「位置決め突起95」、及び「ヒータユニット41」は、それぞれ、前者の「加熱部材」、「保持部材」、「基材」、「発熱部」、「複数の電極部」、「給電線」、「位置決め部」、及び「加熱装置」に相当する。
b 後者の「ヒータユニット41」は、「コネクタに接続されたケーブルを介して電流が供給されると、下面を発熱させ」るものであり、「ヒータユニット41」を構成する「ヒータ基板64」を構成する「ヒータ配置部91」の下面には、左右両端の近傍を除いた発熱範囲91Aに、に「5個のヒータでなるヒータ94」が配置されているから、「コネクタ37及び38」は「5個のヒータでなるヒータ94」まで電流を供給する、即ち「5個のヒータでなるヒータ94」に電気的に接続して給電するために用いられるといえるので、後者の「コネクタ37及び38」は、前者の「給電用のコネクタ」に相当し、両者は「加熱部材に接続される」ものである点で一致する。
c 一般に「ホルダ」とは支えたり固定するものを意味するところ、後者の「ホルダヒータ62」には、サポート板63及びヒータ基板64が載置されるから、後者の「ヒータ基板64」は「ホルダヒータ62」によって保持されるものといえる。
また、後者の「ホルダヒータ62」と「ホルダコネクタ66」は、「ヒータユニット41」を構成する別体の要素であって、「コネクタ37及び38」は「ホルダコネクタ66」に挿入されるものであるから、「ホルダヒータ62」と「コネクタ37及び38」も別体であるといえる。
そして、上記a、bを踏まえると、前者の「加熱部材」と後者の「ヒータ基板64」とは、「給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され」るものである点で一致する。
d 後者の「電極96A、96B、96C及び96D」は、「ヒータ基板64の下面に形成された配線パターン」により、それぞれヒータ94と適宜接続されているから、前者の「給電線」と後者の「配線パターン」とは、「発熱部と電極部との間でこれらを電気的に接続する」ものである点で一致する。
e 後者の「ヒータ基板64」は、「全体として左右方向に長く、前後方向に短く、上下方向に薄い板状に形成され」ていることから面状の加熱部材といえるから、前者の「加熱部材」と後者の「ヒータ基板64」とは、「面状」のものである点で一致する。
また、後者の「ヒータ基板64」は、「ヒータ」が配置されるヒータ配置部91と、「電極」が配置される電極配置部92とにより構成され、「薄いステンレスの板状部材」の下面に絶縁部材が塗布された上で所定の「配線パターン」や発熱素子等が形成されているから、前者の「加熱部材」と後者の「ヒータ基板64」とは、「基材層」上に「発熱部」と、「複数の電極部」と、「給電線」と、が設けられている点でも一致する。
f 後者の「ヒータ基板64」は、「薄いステンレスの板状部材の下面に絶縁部材が塗布された上で所定の配線パターンや発熱素子等が形成され」、「ヒータ94の左端よりも左側となる箇所に、すなわち発熱範囲91Aと電極配置部92との間における後辺に」、「位置決め突起95が設けられ」るから、「位置決め突起95」は、「薄いステンレスの板状部材」の後辺に形成されるものであるといえる。
また、後者の「画像形成装置」は、「位置決め突起95に代えてヒータ基板64に切り欠きを形成する」ものであるところ、切り欠きを形成すると、その部分では切り欠き分の面積だけ、「薄いステンレスの板状部材」の断面積がヒータ94が配置される発熱範囲91Aよりも小さくなると認められる。
そうすると、後者の「切り欠きが形成された部分」は、前者の「小断面部」に相当し、前者の「基材層」と後者の「薄いステンレスの板状部材」とは、「発熱部が設けられた部分よりも断面積の小さい小断面部が形成され」るものである点で一致する。
g 後者の「画像形成装置」は、「位置決め突起95に代えてヒータ基板64に切り欠きを形成すると共に、係合孔82EHに代えてホルダヒータ62に突起を形成し、両者を係合させることにより、ホルダヒータ62に対するヒータ基板64の左右方向に関する位置を規制する」ものであるところ、「ヒータ基板64」は、「全体として左右方向に長」いものであるから、左右方向の位置を規制することは、ヒータ基板64の長手方向の位置決めを行うことと同義であるといえる。
そして、上記aのとおり、後者の「ホルダヒータ62」は、前者の「保持部材」に相当するから、後者の「ホルダヒータ62」に形成された「突起」は、前者の「保持部材の突起」に相当し、上記fも踏まえると、前者の「小断面部」と後者の「切り欠きが形成された部分」とは、「前記保持部材の突起との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部であ」る点で一致する。
h 後者の「電極配置部92」は、「ヒータ基板64の左側の端部に設けられ」、「後側の端辺近傍に2個の電極96A及び96Bが設けられ、前側の端辺近傍に2個の電極96C及び96Dが設けられてい」るから、「各電極96(すなわち電極96A、96B、96C及び96D)」は、「ヒータ基板64」の左側の端部で左右方向に2個ずつ並ぶものであるといえる。
そして、後者の「ヒータ基板64」は、「全体として左右方向に長」いものであるから、当該左右方向は長手方向といえる。
そうすると、前者の「複数の電極部」と後者の「各電極96(すなわち電極96A、96B、96C及び96D)」は、「前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ」ものである点で一致する。
i 後者の「切り欠きが形成された部分」は、「位置決め突起95」の位置に設けられるところ、「位置決め突起95」は、「ヒータ94の左端よりも左側となる箇所に、すなわち発熱範囲91Aと電極配置部92との間における後辺に」位置するから、「各電極96(すなわち電極96A、96B、96C及び96D)」のうち、最も(「発熱範囲91A」に配置されている)「ヒータ94」に近い「電極96」と「ヒータ94」との間に設けられるものである。
そうすると、前者の「小断面部」と後者の「切り欠きが形成された部分」とは、「前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられる」ものである点で一致する。
j 後者の「ヒータ基板64」は、「左右方向に長く、前後方向に短く、上下方向に薄い板状」に形成されるから、当該「左右方向」、及び「前後方向」は、前者の「加熱部材の長手方向」、及び「長手方向に対して交差する方向」である「加熱部材の短手方向」に相当する。
また、後者の「ヒータ基板64」は、「薄いステンレスの板状部材」の「下面」に「配線パターン」や「発熱素子」等が形成され、ヒータ基板64の電極配置部92における「下面」に「電極96A、96B、96C及び96D」が設けられるから、前者の「加熱部材の短手方向」と後者の「前後方向」は、「前記基材層の前記発熱部、前記電極部及び前記給電線が設けられる面に沿って前記長手方向に対して交差する方向」である点で一致する。
そうすると、本件訂正特許発明4と先願発明とは、以下の[一致点1]で一致し、以下の点で相違する。
[一致点1]
「加熱部材に接続される給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され、基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらを電気的に接続する給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
前記基材層に、前記発熱部が設けられた部分よりも断面積の小さい小断面部が形成され、
前記小断面部は、前記保持部材の突起との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部であり、
前記小断面部は、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられることを特徴とする加熱部材。」
[一応の相違点1]
本件訂正特許発明4の「給電線」は、前記基材層の前記発熱部、前記電極部及び前記給電線が設けられる面に沿って前記長手方向に対して交差する方向を前記加熱部材の短手方向とすると、「前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側で前記短手方向の前記加熱部材の中央側に向かって伸びる第1の部分と、前記1の部分の前記中央側の端部から前記小断面部を通過するように前記長手方向へ伸びる第2の部分とを有する」のに対して、先願発明の「配線パターン」はどのようなパターンであるか不明である点。
[相違点2]
本件訂正特許発明4の「前記小断面部」は、「前記基材層に前記位置決め部としての貫通孔が設けられた部分である」のに対して、先願発明は切り欠きである点。
(イ)判断
事案に鑑み、上記[相違点2]から判断する。
甲1明細書等に、「位置決め突起95に代えてヒータ基板64に切り欠きを形成する」ことが記載されるものの、「貫通孔」を形成することは記載も示唆もされていない。
本件訂正特許発明4は、上記[相違点2]の構成により、「ヒータ22の外形(側面部)を凹凸の無い矩形に形成することができる。これにより、ヒータ22の製造コストを低減できるようになる。」(段落【0067】参照。)という効果を奏するものである。
したがって、上記[相違点2]は、課題解決のための具体化手段における微差とはいえない。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、[一応の相違点1]について検討するまでもなく、本件訂正特許発明4は、先願発明と同一でなく、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)に適合する。
キ 本件訂正特許発明5-1について
(ア)対比
本件訂正特許発明5-1と先願発明を対比する。
本件訂正特許発明5-1は、本件訂正特許発明4に対して、請求項4に記載の「前記小断面部は、前記基材層に前記位置決め部としての貫通孔が設けられた部分である」との事項に代えて、請求項5に記載の「前記発熱部は、PTC特性を有し、 前記発熱部の少なくとも一部において前記加熱部材の長手方向に電流が流れるように構成されている」との事項を含むものである。
したがって、上記カ(ア)を参酌すると、本件訂正特許発明5-1と先願発明とは、上記[一致点1]で一致し、上記[一応の相違点1]、及び以下の[一応の相違点3]で一応相違する。
[一応の相違点3]
本件訂正特許発明5-1の「発熱部」は「PTC特性を有」するのに対して、先願発明の「ヒータ94」がPTC特性を有するのか不明である点。
(イ)判断
a 上記[一応の相違点1]について判断する。
先願発明において、「ヒータ配置部91」の後辺の左端近傍に「切り欠き」を形成した場合には、切り欠きの分だけ配線をパターニングできる領域は前後方向に小さくなることから、配線パターンに関し、
(a)「前後方向に関し、ヒータ配置部91ではヒータ94及び所定の配線パターンの配置に必要な最小限の長さと」するために、最も後辺側の配線は、左右方向におけるヒータ94と電極96との間のヒータ94側、つまりヒータ94の左端よりも左側の切り欠きが形成される箇所において、切り欠き部分を避けるように、前方側(最も後辺側の配線からみると、ヒータ基板64の中央側)に向かって伸びるパターンとし、その伸びた先の端部から切り欠きが形成された部分を超えて(通過するように)、左右方向に、ヒータ基材64の左側の端部に設けられた電極配置部92に配置された電極96まで伸びるパターンとすること(配線パターンを曲げる技術は、特開2015-191734号公報の【図4】等に開示されるように技術常識である。)、
(b)切り欠き部分を避けずとも、「ヒータ基板64」の「前後方向に関し、ヒータ配置部91ではヒータ94及び所定の配線パターンの配置に必要な最小限の長さと」することができる程度の切り欠きであれば、切り欠き部分を避けない(曲げない)配線パターンとすること
の2つの選択肢しかないところ、上記(a)のごとく配線することを選択することは、課題解決のための具体化手段における設計上の微差にすぎない。
また、「前後方向に関し、ヒータ配置部91ではヒータ94及び所定の配線パターンの配置に必要な最小限の長さと」することが先願明細書に開示されている以上、新たな効果を奏するものでもない。
そうすると、上記[一応の相違点1]は実質的な相違点とはいえない。
b 上記[一応の相違点3]について判断する。
本件特許の出願日前において、加熱部材がPTC特性を有するヒータを用いることは、周知・慣用の技術(例えば、特開2018-128618号公報の【0005】、特開2008-3148号公報の【0002】~【0004】等、参照。)である。
そして、本件訂正特許発明5-1において、「発熱部」が「PTC特性を有」することによる「低温では高出力によって高速で立ち上がり、高温では低出力により過昇温を抑制することができる」という効果(【0044】)は、温度上昇に伴いその電気抵抗が急激に上昇するPTC特性に付随するもので、本件特許の出願日前に当業者に知られた効果である(例えば、特開2008-3148号公報の【0004】等、参照。)から、新たな効果を奏するものではない。
そうすると、上記[一応の相違点3]は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術の付加であって、新たな効果を奏するものではないもの)にすぎない。
すると、上記[一応の相違点3]は実質的な相違点とはいえない。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件訂正特許発明5-1は、先願発明と同一であって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)を満たさない。
ク 本件訂正特許発明5-2について
(ア)対比
本件訂正特許発明5-2と先願発明を対比する。
a 本件訂正特許発明5-2は、本件訂正特許発明4に対して、
「給電線」を「前記発熱部と前記電極部との間でこれらをそれぞれ電気的に接続する複数の給電線」(下線は本件訂正特許発明4と異なる点を示す。)とする事項(上記訂正事項2-2)、
請求項4に記載の「前記小断面部は、前記基材層に前記位置決め部としての貫通孔が設けられた部分である」との事項に代えて、請求項3に記載の「前記小断面部は、前記基材層に前記位置決め部としての凹部が設けられた部分である」とする事項、
請求項2に記載の「前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側で前記短手方向の前記加熱部材の中央側に向かって伸びる第1の部分と、前記1の部分の前記中央側の端部から前記小断面部を通過するように前記長手方向へ伸びる第2の部分とを有することを特徴とする」に代えて、「前記複数の給電線は、前記短手方向において隣り合うように配置され、 前記複数の給電線のうち、前記凹部に近い側の給電線は、前記凹部に遠い側の給電線に対して、前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側で前記短手方向の前記加熱部材の中央側に向かって伸びる第1の部分を有し、 前記凹部に近い側の給電線と前記凹部に遠い側の給電線との間の前記短手方向の間隔は、前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側よりも前記小断面部において小さいことを特徴とする」とする事項(上記訂正事項2-3、2-4)、及び
請求項5に記載の「前記発熱部は、PTC特性を有し、 前記発熱部の少なくとも一部において前記加熱部材の長手方向に電流が流れるように構成されている」との事項、
を含むものである。
b 後者の「配線パターン」は、「5個のヒータでなるヒータ94」と「各電極96(すなわち電極96A、96B、96C及び96D)」、即ち複数のヒータ94と複数の電極96を接続するので、それぞれを電気的に接続する複数の配線で構成されるものであると認められる。
c 後者の「切り欠き」は、「凹部」ともいえるから、後者の「切り欠き」は前者の「凹部」に相当し、上記カ(ア)f、gを踏まえると、前者の「小断面部」と後者の「切り欠きが形成された部分」とは、「前記基材層に前記位置決め部としての凹部が設けられた部分である」点で一致する。
d 後者の「2個の電極96A及び96B」は、後側の端辺近傍に設けられ、後者の「2個の電極96C及び96D」は、前側の端辺近傍に設けられているから、「2個の電極96A及び96B」に電気的に接続する「配線パターン」と「2個の電極96C及び96D」に電気的に接続する「配線パターン」とが、前後方向に隣り合うパターンをとることは明らかであるといえる。
そうすると、前者の「複数の給電線」と後者の少なくとも2本の「配線パターン」とは、「短手方向において隣り合うように配置され」るものである点で一致する。
e 後者の「ヒータユニット41」は、コネクタに接続されたケーブルを介して「電流が供給されると」下面を発熱させていることから、下面を発熱させることでヒータ94が発熱していることいえ、また、「ヒータ基板64」の「ヒータ基板64」に配置される「5個のヒータでなるヒータ94」は左右方向に沿って配置されるものである。
そして、上記カ(ア)jのとおり、後者の「左右方向」は、前者の「長手方向」に相当し、上記カ(ア)aのとおり後者の「5個のヒータでなるヒータ94」、及び「ヒータ基板64」は、前者の「発熱部」、及び「加熱部材」に相当するから、前者の「発熱部」と後者の「5個のヒータでなるヒータ94」とは、「発熱部の少なくとも一部において前記加熱部材の長手方向に電流が流れるように構成されている」点で一致する。
そうすると、本件訂正特許発明5-2と先願発明とは、以下の[一致点2]で一致し、上記[一応の相違点3]、及び以下の[一応の相違点4]で相違する。
[一致点2]
「加熱部材に接続される給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され、基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらをそれぞれ電気的に接続する複数の給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
前記基材層に、前記発熱部が設けられた部分よりも断面積の小さい小断面部が形成され、
前記小断面部は、前記保持部材の突起との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部であり、
前記小断面部は、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられ、
前記小断面部は、前記基材層に前記位置決め部としての凹部が設けられた部分であり、
前記基材層の前記発熱部、前記電極部及び前記給電線が設けられる面に沿って前記長手方向に対して交差する方向を前記加熱部材の短手方向とすると、
前記複数の給電線は、前記短手方向において隣り合うように配置され、
前記発熱部の少なくとも一部において前記加熱部材の長手方向に電流が流れるように構成されている加熱部材。」
[一応の相違点4]
本件訂正特許発明5-2の「複数の給電線」は、「前記複数の給電線のうち、前記凹部に近い側の給電線は、前記凹部に遠い側の給電線に対して、前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側で前記短手方向の前記加熱部材の中央側に向かって伸びる第1の部分を有し、 前記凹部に近い側の給電線と前記凹部に遠い側の給電線との間の前記短手方向の間隔は、前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側よりも前記小断面部において小さいことを特徴とする」のに対して、先願発明の「配線パターン」はどのようなパターンであるか不明である点。
(イ)判断
a 上記[一応の相違点3]については、上記キ(イ)bのとおり、実質的な相違点とはいえない。
b 上記[一応の相違点4]について判断する。
先願発明の「配線パターン」は、左右方向に沿って配置された5個のヒータでなるヒータ94を、各電極96に接続する複数の配線からなるところ、上記(ア)eのとおり、後側の端辺近傍の「2個の電極96A及び96B」に電気的に接続する「配線パターン」と前側の端辺近傍の「2個の電極96C及び96D」に電気的に接続する「配線パターン」とが、前後方向に隣り合うパターンをとるから、各配線はヒータ94側において、ヒータ94を挟んで前方側にも後方側にもパターニングされること、即ちヒータ94の前後方向の幅より大きな間隔分、配線同士を離間させることは明らかである。
他方、先願発明において、「ヒータ配置部91」の後辺の左端近傍に「切り欠き」を形成した場合には、切り欠きの分だけ配線をパターニングできる領域は前後方向に小さくなることから、配線パターンに関し、
(a)「前後方向に関し、ヒータ配置部91ではヒータ94及び所定の配線パターンの配置に必要な最小限の長さと」するために、後側の端辺近傍の配線は、ヒータ94の左端よりも左側となる箇所において、切り欠き部分を避けるように、前方側(後側の端辺近傍の配線からみると、ヒータ基板64の中央側)に向かって伸びるパターン、つまり[一応の相違点4]における「第1の部分」を有するパターンとすること、
(b)切り欠き部分を避けずとも、「ヒータ基板64」の「前後方向に関し、ヒータ配置部91ではヒータ94及び所定の配線パターンの配置に必要な最小限の長さと」することができる程度の切り欠きであれば、切り欠き部分を避けない(曲げない)配線パターンとすること
の2つの選択肢しかないところ、上記(a)のごとく配線することを選択することは、課題解決のための具体化手段における設計上の微差にすぎず、必然的に、ヒータ94を挟んで前側の端辺近傍の配線と後側の端辺近傍の配線との間の前後方向の間隔は、左右方向におけるヒータ94と電極96との間のヒーター側よりも、切り欠き部分において小さくなる。
また、「前後方向に関し、ヒータ配置部91ではヒータ94及び所定の配線パターンの配置に必要な最小限の長さと」することが先願明細書に開示されている以上、新たな効果を奏するものでもない。
そうすると、上記[一応の相違点4]は実質的な相違点とはいえない。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件訂正特許発明5-2は、先願発明と同一であって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)を満たさない。
4 まとめ
以上のとおり、令和6年7月16日に特許権者が請求した本件訂正のうち、訂正事項1による請求項2の訂正、及び訂正事項2による請求項3の訂正に伴う、請求項2又は3を引用する請求項5に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条第7項の規定に適合するものではないから、本件訂正における請求項5に係る訂正は認められない。
したがって、本件訂正前の請求項5を含む一群の請求項である請求項2、4~6、13について訂正する本件訂正は認められない。
他方、訂正事項2による請求項3の訂正は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条第5項の規定に適合するものであり、かつ、特許権者は、訂正後の請求項3については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めていることから、本件訂正における請求項3に係る訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正請求のうち、請求項3についての訂正の請求は適法にされたものであるから、請求項2、3、6、13に係る特許についての各発明は、次の事項により特定されるとおりのものである(以下、それぞれ「本件特許発明2」、「本件訂正特許発明3」、「本件特許発明6」、「本件特許発明13」という。)。
「【請求項2】
加熱部材に接続される給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され、基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらを電気的に接続する給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
前記基材層に、前記発熱部が設けられた部分よりも断面積の小さい小断面部が形成され、
前記小断面部は、前記保持部材の突起との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部であり、
前記小断面部は、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられることを特徴とする加熱部材。
【請求項3】
加熱部材に接続される給電用のコネクタとは別体で構成される保持部材によって保持され、基材層上に発熱部と、複数の電極部と、前記発熱部と前記電極部との間でこれらをそれぞれ電気的に接続する複数の給電線と、が設けられた面状の加熱部材であって、
前記基材層に、前記発熱部が設けられた部分よりも断面積の小さい小断面部が形成され、
前記小断面部は、前記保持部材の突起との嵌合により前記保持部材に対する前記加熱部材の長手方向の両方向の位置決めを行う位置決め部であり、
前記小断面部は、前記加熱部材の長手方向における発熱部の一端側で前記長手方向に並ぶ前記複数の電極部のうち、最も前記発熱部に近い前記電極部と前記発熱部との間に設けられ、
前記小断面部は、前記基材層に前記位置決め部としての凹部が設けられた部分であり、
前記基材層の前記発熱部、前記電極部及び前記給電線が設けられる面に沿って前記長手方向に対して交差する方向を前記加熱部材の短手方向とすると、
前記複数の給電線は、前記短手方向において隣り合うように配置され、前記複数の給電線のうち、前記凹部に近い側の給電線は、前記凹部に遠い側の給電線に対して、前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側で前記短手方向の前記加熱部材の中央側に向かって伸びる第1の部分を有し、
前記凹部に近い側の給電線と前記凹部に遠い側の給電線との間の前記短手方向の間隔は、前記長手方向における前記発熱部と前記電極部との間の前記発熱部側よりも前記小断面部において小さいことを特徴とする加熱部材。
【請求項6】
前記基材層の前記給電線が設けられた箇所に、前記小断面部が設けられている請求項1から5のいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項13】
請求項1から6のいずれか1項に記載の加熱部材、請求項7から11のいずれか1項に記載の加熱装置、請求項12に記載の定着装置のいずれかと、
画像を形成する画像形成部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。」
第4 取消理由の概要
訂正前の請求項2、3、6、13に係る特許に対して、当審が令和6年5月10日に特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
[取消理由(拡大先願)]
本件特許発明2、3、6、13は、本件特許の出願日前の他の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開(甲第1号証:特開2020-3689号公報参照)がされた特願2018-123895号(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲、又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、当該他の特許出願に係る上記の発明をした者が本件特許の出願の発明者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、当該他の特許出願の出願人が本件特許の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件請求項2、3、6、13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
1 先願
先願、先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面の記載事項、先願発明は、それぞれ、上記第2 3(3)イ~オのとおりである。
2 本件特許発明2について
(1)対比・判断
本件特許発明2は、本件訂正特許発明4から、上記訂正事項1、及び訂正後の請求項4に記載された事項を削除したものである。
そして、本件特許発明2と先願発明とを対比すると、上記第2 3(3)カ(ア)のとおりであって、上記[一致点1]で一致し、本件特許発明2と先願発明との間で、発明特定事項に差異はない。
(2)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明2は、先願発明と同一である。
3 本件訂正特許発明3について
(1)対比
本件訂正特許発明3は、本件訂正特許発明5から、訂正後の請求項5に記載された事項を削除したものである。
そして、本件訂正特許発明3と先願発明とを対比すると、上記第2 3(3)ク(ア)のとおりであって、上記[一致点2]で一致し、上記[一応の相違点4]で相違する。
(2)判断
上記[一応の相違点4]について判断すると、上記第2 3(3)ク(イ)bのとおりであって、上記[一応の相違点4]は実質的な相違点とはいえない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正特許発明3は、先願発明と同一である。
4 本件特許発明6について
(1)対比
本件特許発明6と先願発明を対比する。
後者の「切り欠き」は、発熱範囲91Aと電極配置部92との間における後辺に設けられているから、「ヒータ配置部91」において切り欠きにより幅が狭くなった部分も同様に、発熱範囲91Aと電極配置部92との間、すなわち、基材層の給電線が設けられた箇所に設けられているといえる。
(2)判断 本件特許発明6は本件特許発明2、本件訂正特許発明3を引用するものであるところ、上記2、3を勘案すると、本件特許発明6と先願発明との間で、発明特定事項に差異はない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明6は、先願発明と同一である。
5 本件特許発明13について
(1)対比
本件特許発明13と先願発明を対比する。
後者の「画像形成装置1」は、定着部18と、画像形成ユニット11と、を備えるものであるから、前者の「画像形成装置」に相当する。
(2)判断
本件特許発明13は本件特許発明2、本件訂正特許発明3、本件特許発明6を引用するものであるところ、上記2、3、4を勘案すると、本件特許発明13と先願発明との間で、発明特定事項に差異はない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明13は、先願発明と同一である。
6 取消理由についてのまとめ
以上、2~5のとおりであるから、本件特許発明2、本件訂正特許発明3、本件特許発明6、本件特許発明13は、先願発明と同一であって、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものである。
よって、本件請求項2、3、6、13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許発明2、本件訂正特許発明3、本件特許発明6、本件特許発明13は、先願発明と同一であって、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件請求項2、3、6、13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700812