2024-400002
エアークッション付き靴
- 審判番号
- 2024-400002
- 法域
- 実用新案
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 実願2016-006227外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 3209346
- 請求日
- 2024年06月04日
- 審決日
- 2025年04月16日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 スター・トレーディング
- 【請求人代理人】名古屋国際弁理士法人
- 【請求人代理人】三木 浩太郎
- 【請求人代理人】早川 尚志
- 【請求人代理人】不破 佳介
- 【請求人代理人】飯田 明弘
- 【請求人代理人】早瀬 久雄
- 【被請求人】株式会社 Good One
- 【被請求人代理人】久野 能裕
- 【被請求人代理人】辻村 和彦
- 分類
- U1124.113-Y (A43B) / U1124.121-Y (A43B) / U1124.537-Y (A43B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 実用新案法第3条第2項、実用新案法第3条第1項第3号、実用新案法第5条第6項第1号、実用新案法第41条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
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本件は、請求人が、被請求人が実用新案登録権者である実用新案登録第3209346号(以下「本件実用新案登録」という。請求項の数は4である。)の実用新案登録請求の範囲の請求項1、2、4に係る実用新案登録を無効とすることを求める事案であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成28年12月28日 出願(実願2016-6227号)
平成29年 2月15日 設定登録
平成30年 5月16日 実用新案技術評価請求
平成30年 6月14日 実用新案技術評価書(作成日)
令和 6年 6月 4日 審判請求書の提出
令和 6年 6月28日 手続補正書(方式)の提出(請求人)
令和 6年 8月 1日 審判事件答弁書の提出
令和 6年 9月18日 上申書の提出(請求人)
令和 6年10月16日付け 審理事項通知
令和 6年10月16日 上申書の提出(被請求人)
令和 6年11月 8日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
令和 6年11月29日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
令和 6年12月13日付け 審理事項通知
令和 6年12月19日 口頭審理陳述要領書(2)の提出(請求人)
令和 6年12月20日 口頭審理
令和 7年 1月10日 上申書の提出(被請求人)
令和 7年 1月24日 上申書の提出(請求人)
上記の審判請求書は、令和6年6月28日提出の手続補正書(方式)により補正されている。よって、以下、審判請求書は、該手続補正書(方式)により補正された審判請求書をいう。
第2 本件考案
本件実用新案登録の請求項1、2、4に係る考案(以下、それぞれ、請求項の番号に従って「本件考案1」などといい、総称して「本件考案」という。)は、それぞれ、その実用新案登録請求の範囲の請求項1、2、4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】踵部にエアークッション材を装着したエアークッション付き靴であって、上記エアークッション材を一部が開口したコ字状や円弧状の形状として、この一部が開口した開口部を踵部の後端側に向けて踵部に装着し、踵部の後端部から上記エアークッション材の開口部に内装するようにして所要の弾力性の底部材を配設したことを特徴とするエアークッション付き靴。【請求項2】エアークッション材内に所定の間隔で円柱状や鼓状のサポート部を設けた請求項1に記載のエアークッション付き靴。【請求項4】靴裏面の踵部から土踏まず部にわたって所定の深さに凹ませて形成した請求項1ないし3のいずれかに記載のエアークッション付き靴。」
第3 当事者の主張
1 請求人の主張
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請求人は、実用新案登録第3209346号の実用新案登録請求の範囲の請求項1、2、4に係る考案についての実用新案登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、甲第1号証~甲第12号証(以下、各証拠について、証拠番号に従って「甲1」などという。)の証拠を提出し、以下の無効理由を主張する。(令和6年12月20日に行われた口頭審理において、以下のように整理された。)
(1)無効理由1(甲1に記載された考案を主引例とする本件考案1の新規性違反)
本件考案1は、甲1に記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し実用新案登録を受けることができないものであり、本件考案1に係る実用新案登録は、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)無効理由2(甲1に記載された考案を主引例とする本件考案1の進歩性違反)
本件考案1は、甲1に記載された考案及び甲3に記載された考案に基いて、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が実用新案登録出願前にきわめて容易に考案することができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件考案1に係る実用新案登録は、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(3)無効理由3(甲5に記載された考案を主引例とする本件考案1の進歩性違反)
本件考案1は、甲5に記載された考案及び甲3に記載された考案に基いて、当業者が実用新案登録出願前にきわめて容易に考案することができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件考案1に係る実用新案登録は、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(4)無効理由4(本件考案2、4の進歩性違反)
ア 本件考案2は、甲1に記載された考案及び甲6に記載された考案、又は、甲1若しくは甲5に記載された考案、甲3に記載された考案及び甲6に記載された考案、に基いて、当業者が実用新案登録出願前にきわめて容易に考案することができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件考案2に係る実用新案登録は、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
イ 本件考案4は、甲1に記載された考案及び甲7に記載された考案、又は、甲1若しくは甲5に記載された考案、甲3に記載された考案及び甲7に記載された考案、に基いて、当業者が実用新案登録出願前にきわめて容易に考案することができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件考案4に係る実用新案登録は、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(5)無効理由5(本件考案1、2、4のサポート要件違反)
本件考案1、2、4は、以下のア~ウの点で、実用新案法第5条第6項第1号の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件考案1、2、4に係る実用新案登録は、同法37条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
ア 本件考案の課題は、本件明細書の考案の詳細な説明の段落0006に記載されるとおり、「エアークッション材の踵部への底部材の装着性を高められ、また長時間にわたっても疲れにくく、楽に歩行できるようにすること」であるところ、本件の請求項1、2、4では、エアークッション材を踵部のどの位置に配置するかについて何ら特定されていないから、上記課題を解決できると認識できるものではない。
イ 本件の請求項1、2、4の記載からは、どの構成に基づき、どのような因果関係により、エアークッション材の踵部への底部材の装着性を高められるのか不明であるから、上記アで示した課題を解決できると認識できるものではない。
ウ 本件の請求項1、2、4の記載からは、エアークッション材を「踵部に装着」することが記載されているにとどまり、具体的に「踵部」のどこに配置するかについて特定されていないから、本件明細書の考案の詳細な説明の段落0032に記載される「エアークッション材4の踵部2への底部材の装着性を高められ、また体の重心を踵部3の中央部からやや前方部のエアークッション材4のコ字状部とそのコ字状部で囲まれた中央部の底部材で支持できて、ソフトに地面に着地でき、長時間でも、疲れにくくできて歩行することができる」といった作用効果を奏することができない構成が含まれ、本件の請求項1、2、4の記載は、その考案特定事項の全体にわたって考案の効果が得られるものではなく、考案の詳細な説明の範囲を超える「広範な」ものである。
<証拠方法>
甲2(甲2の1):関屋昇、「歩行開始の制御」、理学療法科学、理学療法科学学会、2001年8月20日、第16巻、第3号、p.139-143
2 被請求人の主張
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被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、乙第1号証~乙第4号証(以下、各証拠について、証拠番号に従って「乙1」などという。)の証拠を提出し、無効理由がない旨主張する。
<証拠方法>
第4 甲号証に記載された考案
1 甲1について
(1)甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与した。以下同様。)。
ア 「【0001】【産業上の利用分野】この発明は、靴底に衝撃緩衝手段を備えた衝撃緩衝型スポーツシューズに関する。」
イ 「【0005】【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来の衝撃緩衝型の運動靴は、いずれも衝撃吸収性を有するゲル物質または緩衝層を靴底の中央や周縁部に囲まれた領域内部に閉じ込め、外部に霞出させた部位を有しない。しかもゲル物質または緩衝層が隣接部材に接着されている。このため、緩衝部分の自由変形度が小さいものとなっており、十分な衝撃緩衝性を得ることができなかった。よって、これら従来の緩衝部材等を備えた運動靴は、衝撃緩衝性が低いものであるから、使用が激しい場合に惹起される足の障害を軽減し難いものであった。【0006】さらに、衝撃緩衝部材を外部から視認することができず、直接触れることもできないため、衝撃緩衝状態を把握し難く、劣化状態や変位の程度も掌握しえなかった。よって、緩衝性に優れた衝撃緩衝型スポーツシューズを製作するのは難しいものであった。【0007】この発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、衝撃緩衝状態や劣化程度を視覚的に把握し得るとともに、衝撃緩衝性に優れた衝撃緩衝型スポーツシューズを提供することを目的としている。」
ウ 「【0024】次に、上記緩衝部材の他の実施例について説明する。第2実施例は、図4及び図5に示しており、緩衝部材11は凸状部11bを有し、その本体部11aはヒール4の収容部4eに嵌挿される大きさに形成されている。また、この緩衝部材11を保持するカップソール12には、緩衝部材11の凸部11bが挿入される長孔12aが設けられている。この緩衝部材11は、収容部4eに本体部11aを挿入し、凸部11bにカップソール12の長孔12aを挿通してミッドソール3の側面および底面に接着する。これにより、緩衝部材11の凸部11bがカップソールの長孔12aから外方に露出した状態で、本体部11aが接着剤を用いずにミッドソール3内に保持される。よって、前記実施例と同様の作用効果を奏する。」
エ 「【0025】第3実施例は、図6に示しており、緩衝部材13の本体部13aが断面略円形状で、外周部から突起部13bを延設することにより、くびれ部13cを設けている。そして、ヒール4側には、緩衝部材13のほぼ全体を収容する収容部4fが形成されている。この収容部4fは、前記くびれ部13cの形状に対応して開口部側に幅狭の保持部4gを設けている。これにより、前記収容部4fに緩衝部材13の本体部13aを装着し、開口部から突起部13bの端部側を露出させると、係合部4gにくびれ部13cが挾まれて、ヒール4に緩衝部材13が保持される。よって、保持部4gにより緩衝部材13の抜け止めがなされる。【0026】第4実施例は、図7に示しており、緩衝部材14の本体部14aが断面略V字状で、外方に2個の14b、14cを露出させるようになっている。そして、ヒール4側には、緩衝部材14のほぼ全体を収容する収容部4hが形成され、ヒール4の側面に2箇所の開口部を生じさせている。これにより、前記収容部4hに緩衝部材14の本体部14aを装着し、開口部から各端部14b、14cを露出させると、略三角状の保持部4iにより抜け止めがなされ、ヒール4に緩衝部材14が接着剤なしで保持される。」
オ 「【0027】第5実施例は、図8および図9に示しており、緩衝部材15の本体部15aが環状で、この本体部15aの外周に延出部15bを設けている。そして、ヒール4側には、緩衝部材15の本体部15aおよび延出部15bに対応して収容部4jが形成されている。この収容部4jの中央には、円柱状の保持部4kを設けている。これにより、前記収容部4jに緩衝部材15の本体部15aを装着し、開口部から延出部15bの端部を露出させると、図9に示す如く保持部4kに環状の本体部15aが固定されて、ヒール4に緩衝部材15が接着剤なしで保持され、抜け止めがなされる。」
カ 「【0032】ところで、上記実施例の緩衝部材には、下記の各種材料が採用され、成形加工により装着される。まず、緩衝部材が、シリコンゴム、塩化ビニル樹脂、塩化ビニルエチレン共重合体樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂・1・2ポリブタジェン樹脂、ポリウレタンゴム(ポリウレタンエラストマー)からなる充実体であって、透明ゴム配合でJISK6301スプリング式試験A型による硬度が30°~60°程度の固形状単体。前記ポリウレタンゴム等からなる発泡体であって、フォーム密度が0.3~0.35、ショアC硬度が25°~30°程度の固形状単体。【0033】また、前記固形状単体を、それぞれスライスして複数枚を積層することにより積層体としたもの。さらに、前記各固形状単体を、それぞれ管状として各管状体を軟質ポリ塩化ビニル樹脂のフィルムにて被覆したもの。【0034】つぎに、緩衝部材が、JISK2530-1976-50g荷重による針入度が50~200程度のシリコンゲルからなるゲル状単体。塩化ビニルプラスチゾル等のプラスチゾルをゲル化したもので、架橋の度合いがJISK2530-1976-50g荷重による針入度が30~150程度のシリコンゲルからなるゲル状単体。【0035】また、前記各シリコンゲルからなる溶液を、不織布等に接着または噴霧したゲル状複合体。さらに、前記シリコンゲルからなる溶液を、不織布やフェルト等に含浸させたゲル状複合体等である。【0036】次に、このスポーツシューズの性能試験について説明する。この試験においては、前記スポーツシューズに用いられるミッドソールと緩衝部材とを従来例と比較する。この試料としては、図17に示す従来例および図16の本例ともに、ミッドソール20、21がEAV(エチレンビニールアセテート)硬度50°のものであり、緩衝部材22、22としては前述のシリコンゲル物質を用いる。そして、従来例は、ミッドソール21の中央に緩衝部材22を密封状に配置したものであり、本例ではミッドソール20の周縁部に収容部20aを設けて緩衝部材22を配置し、その一部22aを露出させたものである。」
キ 「【図4】 【図5】[図:0001423555000001.jpg]【図6】 【図7】[図:0001423555000002.jpg]【図8】 【図9】[図:0001423555000003.jpg]」
(2)そうすると、甲1には以下の考案が記載されていると認められる(以下「甲1考案」という。)。
(甲1考案)
「ヒール4に充実体又は発泡体からなる緩衝部材14を装着した衝撃緩衝型シューズであって、上記緩衝部材14を一部が開口した断面略V字状の形状として、ヒール4の後端側面から外方に2箇所の端部14b、14cが露出するようにヒール4に装着し、ヒール4には、緩衝部材14のほぼ全体を収容する収容部4hが形成され、収容部4hには緩衝部材14の本体部14aが装着され、略三角形形状の保持部4iにより抜け止めがなされ、ヒール4に緩衝部材14が接着剤なしで保持された衝撃緩衝型スポーツシューズ。」
2 甲3について
(1)甲3には、以下の事項が記載されている。
ア 「(イ)我が国では日常的に靴を履く習慣はまだ40年ほどしかなく、さらに日常的に家の中では「べた足亅であり外出するときだけ靴を履くというと欧米の歩行理論を想定していない履物文化を有しており、人々の足がまだ靴という「入れ物」にまだ完全に適応していない可能性が濃厚である。
従って欧米で考案された「三つのアーチ理論」をそのまま我が国に適応することは無理があるばかりか、足や腰のトラブルを増加させてしまうおそれすらある。
また「三つのアーチ理論」に基づいて製作されたドイツ式中敷きは、どれもが画一的であって、その目的は靴の中に強制的に「三つのアーチ」を構築することで一時的な「歩きやすさ」をもたらす程度の機能しかないと断言せざるをえない。
なぜなら「三つのアーチ理論」に基づいて製造された靴の中底や中敷きは、すべてつま先の中足骨部分が「すり鉢状」に窪んでおり、この窪みに母指球(第1指中足骨前方の関節部)と小指球(第5指中足骨前方の関節)を結ぶ前アーチが落ち込み、我が国のようにべた足で家の中を歩き回ってから靴に足入れると爪先が「逆アーチ」となってしまい、この時点ですでに「二つのアーチ理論」が破綻してしまうからである。(図4参照)実はこの現象こそが我が国における様々な足や腰のトラブルを助長しているのであり、この「逆アーチ」部分に魚の目やタコが発生する事例が多発している。
そこで本考案では我が国の実情を踏まえ、免震(免振)機能を有する靴中敷きの中足骨部分を一種の枕をはさみ込み、ここを常時持ち上げることで「三つのアーチ」を形成させ、この「三つのアーチ理論」が本来求めていた骨格形態を復元することで、足首からつま先までの範囲に柔軟性のある「三つのアーチ」を構築し、これにより安定した歩行を実現するのである。
なお本考案では便宜上これを以後「日本型4点支持アーチ理論」と定義する。
欧米系「三つのアーチ理論」(図1)と、本考案である「日本型4点支持アーチ理論」(図5)を対比されたい。
欧米系「三つのアーチ理論」(図1)における三つの基点は、▲1▼踵骨の最下点(図1ア)▲2▼足の親指(第1指)の付け根(けい骨側中足骨最下点:図1イ)▲3▼足の小指(第5指)の付け根(ひ骨側中足骨最下点図1ウ)である。この場合図1イと図1ウを結ぶ関節がアーチの中心に向かって配列していることに注目されたい。
これに対し「日本型4点支持アーチ理論」(図5)では、エの枕(中足骨パッド)が追加された形となりる。
なお図5におけるエの中心ないし基点を特定するための計測法は以下のとおりである。
まず免震構造(機能)を有する中敷の上面に裸足もしくは靴下を着用した足またはテープ等で足形を補正した足を直接載せ、▲1▼踵骨の最下点(図5ア)▲2▼足の親指(第1指)の付け根(けい骨側中足骨最下点図5イ)▲3▼足の小指(第5指)の付け根(ひ骨側中足骨最下点図5ウ)を指で触れて探し出すか、または目で確認するか、もしくは3Dスキャナー足型計測器により特定し、免震中敷き側面等に目印を付ける。
次に図5イと図5ウを直線で結び、その中間点と図5アを結ぶ直線上20mmないし30mmの範囲に中足骨アーチ(5図イ~ウ)を支える枕(中足骨パッドもしくはペロッティ)の頂点もしくは中心を固定する。
このパッドの形状はおおむね水滴形とするが、歩行特性に合わせてその形状・面積・位置
・厚さ・固さ等を個別に調整する。
」(7頁4~45行)
イ 「さらに図5アがすべての原点となるため、腫骨が前後左右に動かないようにするために固定し滑り止めをする必要があが、従来の技術では踵骨の固定方法としてU字型のパッドを踵の後方より爪先に向かって固定してきた(図6オの状態)が、本考案では同様の素材を用いて図7キのように爪先側から踵に向かって逆向きに接着剤等で固定する。こうすることで踵骨は靴の中で前後左右に滑らなくなり、踵から着地した場合の安定性を向上することが可能となる。またこの腫骨固定方法は、正座習慣や脚力低下等により腫骨および居骨が動きやすい場合や、ハイヒールのように靴の中で足が前方に滑りやすい場合に特に有効であり、さらに腫骨を固定する必要がある場合は内くるぶしの真下に同様の素材で成形された流線型のパッド(図7カ)を追加し固定することでより腫骨を固定でき、さらに足底動脈を適度に圧迫することで足の冷えやむくみ、しびれ等の改善も可能となる。ちなみにこれらのパーツの素材および中敷き本体の素材は高密度発泡樹脂および多孔質シリコンもしくはゴム等の弾力性に優れた素材を使用し、特に免震(免振)機能を持つ中敷きはその中敷きを装用する人の年齢・体重・骨格・脚力・歩行特性・靴の用途に合わせて選べるよう各種の特性を有する高密度発泡樹脂および多孔質シリコン等や、精密機械の各種防震ゴム素材等適時選択したり、これらを組み合わせることができるようにする必要がある。」(7頁46行~8頁12行)
ウ 「【図1】 【図5】[図:0001423555000004.jpg]【図6】 【図7】[図:0001423555000005.jpg]」(12~13頁)
(2)そうすると、甲3には以下の発明が記載されていると認められる(以下「甲3考案」という。)。
「中敷きの踵に、足の踵骨を固定し滑り止めするU字型のパッドを、爪先側から踵に向かって逆向きに接着剤等で固定した靴。」
3 甲5について
(1)甲5には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】【0001】本発明は、ソールに緩衝パーツを装着して成るスポーツシューズやサンダル等の履物に関するものであって、特に緩衝パーツによって優れた緩衝性(衝撃吸収性)を発揮し、またその緩衝特性をコントロールできるようにした新規な履物に係るものである。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】【0005】本発明は、このような開発の一環として成されたものであって、緩衝パーツのケーシングが完全潰れ状態になるまで緩衝性能が発揮でき、また、このような完全潰れ状態からでも圧縮荷重を除去した際には容易に元の状態に復元できる高い緩衝性能を有する新規な履物の開発を試みたものである。」
ウ 「【実施例】【0043】本発明の履物Sは、一例として図1(a)・(b)に示すように、独自の緩衝パーツ1を装着して成る履物Sであって、緩衝パーツ1は、履物Sを履いた人の足に加わる衝撃等を吸収・緩和する作用を担っている。なお、本発明の履物Sとしては、シューズ(スポーツシューズ)の他、図4に示すようなサンダル等も含むものである。【0044】続きを表示(全12行)以下、本発明に適用される緩衝パーツ1について説明しながら、併せて本発明の履物Sについて説明する。緩衝パーツ1は、一例として図5(a)に示すように、両端部が開口(開放)され全体的に自由に撓み得る筒状(チューブ状)のケーシング2と、この内部に収容され主に緩衝機能材としての作用を担う超変形吸振体3とを具えて成るものであり、履物Sに加えられる圧縮荷重(衝撃)等を吸収・緩和するとともに、圧縮荷重が除去された際には、初期付与形状(無負荷の状態)に復元するものである。なお、本発明に係る緩衝パーツ1は、図5(a)に示したようなストレート状態で履物Sに装着されることもあるし、上記図1(b)に示したように馬蹄形の湾曲状態で履物S(スポーツシューズ)に装着されることもある。【0045】また、緩衝パーツ1は、このものに加えられた圧縮荷重を、これとほぼ直交する方向への超変形吸振体3の膨らみ変形として逃がす変形許容部構造4を具えて成り、緩衝パーツ1に圧縮荷重が加わった際には、この変形許容部構造4における膨らみ変形、例えば超変形吸振体3をケーシング2の開口両端部から外部に膨出させる突出変形によって、圧縮荷重を吸収・緩和し得るものである(逃がし得るものである)。もちろん、どんな過少な圧縮荷重であっても、即、超変形吸振体3が膨らみ変形を起こすものではなく、ある一定以上の圧縮荷重が掛かった場合に、膨らみ変形が生じるものである(圧縮荷重の掛かり方や、緩衝パーツ1のどの部位に圧縮荷重が作用するか等によっても異なる)。【0046】なお、上記図5(a)では、圧縮荷重が掛かった際に、緩衝パーツ1の中央部が凹むように図示したが、これはパーツ中央部に圧縮荷重が集中的に作用したことを示すものではなく、あくまでも緩衝パーツ1に荷重が掛かったことを概略的に示したに過ぎず、そのため側面図では、荷重が掛かった方向から偏平に潰れる様子(長円形状)を図示している。因みに、通常、緩衝パーツ1に圧縮荷重が掛かる場合は、荷重が均一とは限らないものの、全体的に掛かるのが一般的である。言い換えれば、極力、緩衝パーツ1に均一に荷重が作用するように、緩衝パーツ1を設置するのが一般的である。また、ケーシング2と超変形吸振体3とは、少なくとも、その境界面の一部が固着されて成り、これにより圧縮荷重が除去された際に、超変形吸振体3が元の位置、より詳細には超変形吸振体3をケーシング2に対する初期位置に戻すものである。なお、超変形吸振体3については、具体的な物性値等を後に詳細に述べるが、これ自体が極めて柔らかく、且つ大きな伸び率を有しており、例えば二つ折り状態(いわば完全潰れ状態)に折り曲げても千切れずに復元するため「超」を付している。因みに、超変形吸振体3について、本明細書で記述した伸び率は、JIS K6251(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方)に準拠して測定した数値であり、測定にあたってはダンベル型の規定形状の試料(本願ではダンベル3号を使用)を引張試験機で引張り、元の長さに対してどのくらい伸びたかを求めたものである。」
エ 「【0066】また、緩衝パーツ1は、必ずしもケーシング2の内部に超変形吸振体3が全て充填されることを必須とするものではなく、例えば図10(a)に示すように、ケーシング2内を幾つかに区画形成し、そのうちの一区画に限定して超変形吸振体3を収容することも可能である。なお、本実施例では円形断面のケーシング2を二つ並列状に連設した、隔壁16を有する連続体の緩衝パーツ1Aを示しており、このうちの一方の空間(ケーシング2)内に超変形吸振体3を収容した実施例を示している。また、例えば図10(b)に示すように、円形断面のケーシング2の内部を左右に二等分するように仕切壁17を形成し、このうちの一方の空間(区画)のみに超変形吸振体3を収容することも可能である。なお、図10に示した実施例では、超変形吸振体3が収容されない空間は、その両端を開口したままでもよいし(非充填区画をエアが自由に出入りする状態)、両端を封止してエアクッションとして利用することも可能である。因みに、上記図9(e)も、ケーシング2内に超変形吸振体3を全充填しない実施例に該当するものである。また、このような実施例では、ケーシング2内に収容する超変形吸振体3を少量にしながらも、デザイン的には全充填と変わらない外観が獲得できる点、あるいは履物Sの軽量化が図れる点で効果を奏するものである(緩衝パーツ1を外観目視させる思想については後述する)。【0067】次に、このような緩衝パーツ1を、スポーツシューズ等の履物Sに取り付ける場合の設置態様(装着状況)について説明する。緩衝パーツ1をスポーツシューズ等の履物Sに装着する場合、ストレート状に製造した(押出成形した)緩衝パーツ1を、そのままの直線状態で装着することもあるが、圧縮荷重(衝撃)の大きさやその掛かり方等によっては、圧縮荷重が作用する方向(平面)から視て馬蹄形ないしはU字状(C字状)の湾曲状態で装着することも多い。特に、スポーツシューズの場合には、着地の際、履物Sを履いた人の足(踵部)に大きな荷重(衝撃)が掛かるため、例えば図2に示すように、踵部においては緩衝パーツ1を馬蹄形の湾曲状態で取り付け、圧縮荷重を極力広い面積で受けるようにすることが好ましい。なお、緩衝パーツ1を馬蹄形の湾曲状態に装着する場合には、上述したように、真っ直ぐに形成しておいた緩衝パーツ1を組み付け時に初めて曲げてもよいが、組み付け性等を考慮すると、押出成形時に(製造段階で)予め緩衝パーツ1に曲げ癖を付けておくことが好ましい。【0068】もちろん、緩衝パーツ1は、上記図1、2に示したように単独で装着されても構わないが、例えば図3に示すように、幾つかの緩衝パーツ1をストレート状や馬蹄形の湾曲状態で組み合わせて装着することも可能である。また、スポーツシューズ等にあっては、対象スポーツ等によって、踵部に掛かった衝撃をどの方向に逃がすのか設定したい場合がある。例えばランニングシューズの場合には、踵部に掛かる衝撃を吸収・緩和しながら、これをその後の蹴り出し動作につなげるように(シューズを履いた人がスムーズに次なる蹴り出し動作に移れるように)、踵部に掛かった荷重をトゥ側(つま先側)に逃がすことが考慮される。」
オ 「【0069】以下、このような緩衝パーツ1の種々の設置態様について具体的に説明する。まず図11(a)に示す実施例は、テーパ状の緩衝パーツ1をストレート状態でスポーツシューズ(履物S)に装着したものであり、シューズのイン側に緩衝パーツ1の大径部(開口端部の広い方)を向け、且つ緩衝パーツ1の小径部(開口端部の狭い方)をアウト側に向けるように装着した実施例である。本実施例では、圧縮荷重を受けた緩衝パーツ1がイン側に潰れ易いため、踵部に掛かった衝撃をイン側に大きく逃がす緩衝特性を意図したものである。また、本実施例では、例えば緩衝パーツ1の各両端の開口面積(比率)を設定しておくことにより、どちらの端部にどの程度の割合で衝撃を逃がすかも、概ね設定できるものである。また図11(b)に示す実施例は、テーパ状の緩衝パーツ1をストレート状態で二つ組み合わせて装着したものであり、図11(a)の状態に対し、別の緩衝パーツ1を、トゥ側(つま先側)に大径部、踵側に小径部を向けるように装着したものである。本実施例では、圧縮荷重を受けた各緩衝パーツ1がイン側とトゥ側とに潰れ易いため、踵部に掛かった衝撃をイン側とトゥ側とに逃がす緩衝特性を意図するものである。【0070】また図11(c)に示す実施例は、テーパ状の緩衝パーツ1をシューズの踵部外周に沿うように馬蹄形に湾曲設置したものである。すなわち、全体的には両方の開口端部をトゥ側に向けながら、イン側に広い端部側を位置させ、アウト側に狭い端部側を位置させた実施例である。本実施例では、イン側とアウト側とを比べるとイン側に潰れ易いため、図11(a)と同様に、踵部に掛かった圧縮荷重を主にイン側に逃がす緩衝特性となる。ただ、本実施例では、緩衝パーツ1の両方の開口端部をトゥ側に向けているため、衝撃はトゥ側にも幾分逃げるもの(逃げ易い)と考えられる。また図11(d)に示す実施例も、テーパ状の緩衝パーツ1を馬蹄形に湾曲設置したものであるが、全体的には両方の開口端部をイン側に向けながら、トゥ側に広い端部側を位置させ、踵側に狭い端部側を位置させた実施例である。本実施例では、トゥ側と踵側とを比べるとトゥ側に潰れ易いため、踵部に掛かった圧縮荷重を主にトゥ側に逃がす緩衝特性となる。ただ、本実施例では、緩衝パーツ1の両方の開口端部をイン側に向けているため、衝撃はイン側にも幾分逃げるもの(逃げ易い)と考えられる。【0071】また、上記図11(c)のように緩衝パーツ1を踵部外周に沿うように設置する場合、例えば図11(e)に示すように、緩衝パーツ1、特に開口両端部をシューズのソール30に埋め込むように設置しても構わないし、あるいは図11(f)に示すように、緩衝パーツ1を踵部外周に沿って露出させるように設置(接着)することも可能である。なお、図11(e)・(f)も、スポーツシューズ(履物S)の優れた緩衝性能をユーザに印象付けること(アピール)を意図して、緩衝パーツ1を外観目視させるようにしたものであるが、図11(f)では、更にユーザが超変形吸振体3の突出変形を明確に視認できるため(実感できるため)、ユーザに高い緩衝性能をより強くアピールすることができるものである。なお、図11(e)では、ソール30に埋め込まれた緩衝パーツ1の両端部(超変形吸振体3)が、自由に突出変形できるような設置形態を図示したが、これは意図する緩衝特性等によって一方のみでも構わない。」
カ 「【0074】また、緩衝パーツ1を履物S(ソール30)に取り付けるにあたり、馬蹄形の湾曲状態で装着する場合には、例えば図1(c)に示すように、馬蹄内周側のケーシング2の肉厚(図ではt1)を、馬蹄外周側の肉厚(図ではt2)よりも薄く形成することが可能であり、これは緩衝パーツ1に対し、その断面形状から装着時の曲げ癖を付与し易い点で効果を奏する。すなわち、緩衝パーツ1(ケーシング2)を製造する段階から、このような肉厚差を有した状態で製造する(押し出す)ことにより、製造段階から緩衝パーツ1(押出成形品)に曲げ癖を付与することができるものである。もちろん、肉厚差を設けた押出成形手法に加え、このような状態に成形した押出成形品を、肉厚の薄い方を内側にして巻き取るようにしたり(適宜冷却することも可能)、肉厚の薄い方を内側にするようなアールを予め金型(フォーミングダイ)に付与しておくこと等により、所望の曲げ癖を確実に緩衝パーツ1に付与することができるものである。更に、組み付け以前に緩衝パーツ1に曲げ癖を付けておく思想は、緩衝パーツ1の組み付け作業性や取り付け状態の持続性なども高めるものである。【0075】また、緩衝パーツ1を馬蹄形に設置する際には、例えば図1(d)に示すように、馬蹄内周側及び馬蹄外周側ともに蛇腹状に形成し、圧縮荷重を受けた際にケーシング2(緩衝パーツ1)が荷重方向にほぼ抗することなく潰れるようにすることが可能である。これは上述したように、超変形吸振体3そのものの高い緩衝性能をよりダイレクトに発揮させたい場合に好適である。一方、これに対し図1(e)は、緩衝パーツ1の馬蹄内周側のみを蛇腹状に形成した実施例であり、馬蹄外周側は円弧状に形成している。これは、馬蹄内周側においては圧縮荷重による潰れ易さ、つまり超変形吸振体3の高い緩衝性能を素早く発揮させる一方、馬蹄外周側においては装着時の外観目視の見栄え向上を考慮したものである。なお、図1(f)は、緩衝パーツ1の馬蹄外周側のみを蛇腹状に形成した実施例であり(馬蹄内周側は円弧状に形成)、馬蹄外周側において超変形吸振体3の高い緩衝性能を素早く発揮させるように意図したものである。【0076】また、緩衝パーツ1は、上述したように、装着状態で緩衝パーツ1の一部を敢えて見せることによって、商品価値すなわち履物Sの高い緩衝性能をユーザに視覚的にアピールすることができ、商品形態としても好ましいため、以下、このような外観目視を想定した取り付け状況(設置態様)について説明する。例えばスポーツシューズの場合、緩衝パーツ1が取り付けられるソール30は、一例として図1(a)、図2(a)に示すように、複数の部材が積層状態に接合されて成るものであり、これらを下方に位置するものから各々アウターソール31、ミッドソール32、インナーソール33とする。更に、上記ミッドソール32は、下方からアウターベース32a、ミッドベース32b、インナーベース32cが積層されて成り、緩衝パーツ1は、例えばこのアウターベース32aとミッドベース32bとの間に組み込まれる。より具体的には、アウターベース32aに溝状の受入空間36が形成され、ここに緩衝パーツ1を収めるように取り付ける。なお、アウターベース32aには、例えば図2(b)~(d)に示すように、切り欠き状の露見部37が部分的に形成され、装着後の緩衝パーツ1が少なくとも一部、外観目視できるように形成されるが、露見部37は必ずしも切り欠き状に形成される必要はなく、透明または半透明な素材つまり透過状(レンズ状)の充実部材で形成されても構わない。」
キ 「【図1】[図:0001423555000006.jpg]【図2】[図:0001423555000007.jpg]続きを表示(全11行)【図5】[図:0001423555000008.jpg]【図10】[図:0001423555000009.jpg]【図11】[図:0001423555000010.jpg]」
(2)そうすると、甲5には以下の考案が記載されていると認められる(以下「甲5考案」という。)。
(甲5考案)
「踵部に緩衝パーツ1を装着した履物Sであって、上記緩衝パーツ1を一部が開口した馬蹄形の湾曲状態として、広い端部をトゥ側に位置させ、開口部をイン側に向けて踵部に装着し、踵部では、緩衝パーツ1が、アウターベース32aに形成された溝状の受入空間36に取り付けられ、アウターベース32aとミッドベース32bとの間に組み込まれた履物S。」
第5 当審の判断
1 無効理由1及び2について
(1)対比
本件考案1と甲1考案とを対比すると、甲1考案の「充実体又は発泡体からなる緩衝部材14」は、「クッション材」であることは明らかであるから、本件考案1の「エアークッション材」と、「クッション材」の点で共通し、また、甲1考案の「衝撃緩衝型シューズ」及び「衝撃緩衝型スポーツシューズ」は、本件考案1の「エアークッション付き靴」と、「クッション付き靴」の点で共通する。
また、甲1考案の「ヒール4」は、本件考案1の「踵部」に相当する。そして、甲1考案の「一部が開口した断面略V字状の形状」の「緩衝部材14」の開口部は、「ヒール4の後端側面から外方に2箇所の端部14b、14cが露出するように」構成されるものであるところ、甲1の図7も参照すると、そのように構成された「緩衝部材14」の開口部が、ヒール4の後端側に向けて構成されることは明らかであるといえるから、甲1考案の「ヒール4の後端側面から外方に2箇所の端部14b、14cが露出するように」は、本件考案1の「この一部が開口した開口部を踵部の後端側に向けて」に相当する。
さらに、甲1考案の「略三角形形状の保持部4i」は、本件考案1の「所要の弾性力を有する底部材」に相当する。そして、甲1の図7も参照すると、甲1考案の「略三角形形状の保持部4i」は、ヒール4の後端部から「緩衝部材14」の開口部内に存在するように配置されたものであると理解されるから、甲1考案の「ヒール4には、緩衝部材14のほぼ全体を収容する収容部4hが形成され、収容部4hには緩衝部材14の本体部14aが装着され、略三角形形状の保持部4iにより抜け止めがなされ、ヒール4に緩衝部材14が接着剤なしで保持された」は、本件考案1の「踵部の後端部から上記クッション材の開口部に内装するようにして所要の弾力性の底部材を配設した」に相当する。
してみると、両者は、以下の「一致点1」で一致し、以下の「相違点1」、「相違点2」で相違している。
<一致点1>
「踵部にクッション材を装着したクッション付き靴であって、上記クッション材を一部が開口した形状として、この一部が開口した開口部を踵部の後端側に向けて踵部に装着し、踵部の後端部から上記クッション材の開口部に内装するようにして所要の弾力性の底部材を配設したクッション付き靴。」
<相違点1>
クッションについて、本件考案1は「エアークッション」であるのに対し、
甲1考案は、充実体又は発泡体からなる緩衝部材14であって、エアークッションではない点。
<相違点2>
一部が開口したクッション材の形状に関し、本件考案1は、「コ字状や円弧状」であるのに対し、
甲1考案は、断面略V字状である点。
(2)判断
事案に鑑み、まず、前記相違点2について検討する。
ア 甲1の段落0026に「図7に示しており、緩衝部材14の本体部14aが断面略V字状で、外方に2個の14b、14cを露出させるようになっている。」と記載され、また、図7には、該記載に示されたとおり、緩衝部材14の本体部14aが断面略V字状の図面が示されている。
そして、「断面略V字状」である、緩衝部材14の本体部14aの形状が、コ字状や円弧状の形状でないことは明らかであるところ、甲1の考案の詳細な説明や図面を参照するも、緩衝部材14の本体部の形状を、コ字状や円弧状の形状とすることについて、何ら開示されていない。
ところで、請求人は審判請求書において、甲1考案における緩衝部材14の断面略V字状の谷底が、甲1の図7から円弧であることが看取されるから、甲1には円弧状の形状のクッション材が示されている旨主張している(審判請求書の10頁1~4行を参照)ところ、断面略V字状の谷底が円弧である緩衝部材14を、一般的に、円弧状の形状の緩衝部材14とは言わないし、本件考案1の「エアークッション材を一部が開口したコ字状や円弧状の形状として」という事項から、「エアークッション材」全体の形状が「コ字状や円弧状の形状」であると理解できるから、断面略V字状の谷底が円弧である形状が、「コ字状や円弧状」の形状に含まれないことは明らかである。
そうすると、甲1に記載されている事項、又は、記載されているに等しい事項から、本件考案1の前記相違点2に係る構成について、何ら把握することができない。
したがって、前記相違点2は、実質的な相違点であるといえる。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件考案1は、甲1考案であるとはいえない。
イ 甲3には、前記「第4の2(2)」に示したように、「中敷きの踵に、足の踵骨を固定し滑り止めするU字型のパッドを、爪先側から踵に向かって逆向きに接着剤等で固定して設けた靴。」(甲3考案)が示されている。
しかし、甲1考案の断面略V字状の緩衝部材14は、ヒール4に装着される部材であるところ、一方、甲3考案のU字型のパッドは、足裏に直接触れる中敷きに固定した部材であり、それぞれ、設けられる箇所が異なるものである。したがって、甲3考案のU字型のパッドは甲1考案の断面略V字状の緩衝部材14に代わるものではない。
また、甲3考案のU字型のパッドは、足の踵骨が前後左右に動かないように固定し滑り止めするものであること(前記「第4の2(1)イ」参照。)に鑑みると、甲3考案において、中敷きへの固定から離れて、U字型のパッドの形状及び向きの構成のみを抽出する理由はそもそもないところ、そのような構成を、甲1考案の断面略V字状の緩衝部材14に代えて適用する動機はない。
そうすると、甲1考案に、甲3考案を適用し得たとしても、甲1考案において、更に、中敷きにU字型のパッドが追加された構成となるのみであり、本件考案1の相違点2に係る構成には至らない。
さらに、本件考案1において、エアークッション材の「一部が開口したコ字状や円弧状の形状」が、本件考案1の「踵部の後端部から上記エアークッション材の開口部に内装するようにして所要の弾力性の底部材を配設した」という事項と併せて、「体の重心を踵部の中央部からやや前方部のエアークッション材のコ字状や円弧状部とそのコ字状や円弧状部で囲まれた中央部の底部材で支持できて、エアークッション材を介してソフトに地面に着地して歩行でき、疲れにくくて長時間歩行することができる。」(本件明細書の段落0011を参照。)といった効果を奏するように特定されたものであることに鑑みると、エアークッション材の形状が単なる設計事項であるともいえない。
ウ したがって、甲1考案において、甲3考案を勘案しても、前記相違点2に係る本件考案1の構成とすることは、当業者であってもきわめて容易になし得たことではない。
なお、甲1考案において、甲2、4~12に記載の事項を勘案しても、前記相違点2に係る本件考案1の構成とすることは、当業者であってもきわめて容易になし得たことではない。
以上によれば、相違点1について検討するまでもなく、本件考案1は、当業者であっても、きわめて容易に考案をすることができたものではない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件考案1は、甲1考案ではなく、実用新案法第3条第1項第3号に規定する考案に該当しない。
また、本件考案1は、甲1考案及び甲3考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではなく、実用新案法3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものではない。
以上によれば、本件考案1についての実用新案登録は、無効理由1、2によって無効とすることはできない。
2 無効理由3について
(1)対比
本件考案1と甲5考案とを対比する。
甲5の段落0066(前記「第4の3(1)エ」を参照)や図10の記載を参照すると、甲5考案の「緩衝パーツ1」は、本件考案1の「エアークッション材」に相当する。
また、甲5考案の「履物S」は、本件考案1の「エアークッション付き靴」に相当する。
さらに、甲5の図2や図11(d)の記載を参照すると、甲5考案の「馬蹄形の湾曲状態」は本件考案1の「円弧状の形状」に相当する。
加えて、甲5考案の「アウターベース32a」及び「ミッドベース32b」は、本件考案1の「所要の弾性力の底部材」に相当する。そして、甲5の図2及び図11(d)の記載によれば、馬蹄形の湾曲状態の「緩衝パーツ1」の開口部の内部には、「アウターベース32a」又は「ミッドベース32b」が存在していると理解されるから、甲5考案の「踵部では、緩衝パーツ1が、アウターベース32aに形成された溝状の受入空間36に取り付けられ、アウターベース32aとミッドベース32bとの間に組み込まれた」と本件考案1の「踵部の後端部から上記エアークッション材の開口部に内装するようにして所要の弾力性の底部材を配設した」とは、「踵部に上記エアークッション材の開口部に内装するようにして所要の弾力性の底部材を配設した」点で共通する。
してみると、両者は、以下の「一致点2」で一致し、以下の「相違点3」、「相違点4」で相違している。
<一致点2>
「踵部にエアークッション材を装着したエアークッション付き靴であって、上記エアークッション材を一部が開口した円弧状の形状として、踵部に装着し、踵部に上記エアークッション材の開口部に内装するようにして所要の弾力性の底部材を配設したエアークッション付き靴。」
<相違点3>
エアークッション材の装着に関し、本件考案1は「この一部が開口した開口部を踵部の後端側に向けて踵部に装着」するのに対し、
甲5考案は、開口部をイン側に向けて踵部に装着するものであって踵部の後端側に向けたものではない点。
<相違点4>
底部材の配設に関し、本件考案1は、「踵部の後端部から上記エアークッション材の開口部に内装するようにして」配設したものであるのに対し、
甲5考案は、そのように配設したものではない点。
(2)判断
まず、前記相違点3について検討する。
ア 前記「第4の2(2)」に示したように、甲3には、「中敷きの踵に、足の踵骨を固定し滑り止めするU字型のパッドを、爪先側から踵に向かって逆向きに接着剤等で固定して設けた靴。」(甲3考案)が示されている。
しかし、甲5考案の緩衝パーツ1は、アウターベース32aとミッドベース32bとの間に組み込まれる部材であるところ、一方、甲3考案のU字型のパッドは、足裏に直接触れる中敷きに固定した部材であり、それぞれ、設けられる箇所が異なるものである。したがって、甲3考案のU字型のパッドは甲5考案の緩衝パーツ1に代わるものではない。
また、甲3考案のU字型のパッドは、足の踵骨が前後左右に動かないように固定し滑り止めするものであること(前記「第4の2(1)イ」参照。)に鑑みると、甲3考案において、中敷きへの固定から離れて、U字型のパッドの形状及び向きの構成のみを抽出する理由はそもそもないところ、そのような構成を、甲5考案の緩衝パーツ1に代えて適用する動機はない。
さらに、甲5考案の緩衝パーツ1は、踵部に掛かる衝撃を吸収・緩和しながら、これをその後の蹴り出し動作につなげるように、踵部に掛かった荷重をトゥ側(つま先側)に逃がすことを考慮され(前記「第4の3(1)エ」の段落0068、前記「第4の3(1)オ」の段落0070を参照)配置されたものであるところ、甲5考案の緩衝パーツ1について、そのような考慮を無視して配置を変更し開口の方向を変更する動機はなく、むしろ、緩衝パーツ1の配置の変更には阻害要因があるともいえる。
そうすると、甲5考案に、甲3考案を適用し得たとしても、甲5考案において、更に、中敷きであるインナーソール33にU字型のパッドが追加された構成となるのみであり、本件考案1の相違点3に係る構成には至らない。
加えて、本件考案1において、エアークッション材の「一部が開口した開口部を踵部の後端側に向け」ることが、「体の重心を踵部の中央部からやや前方部のエアークッション材のコ字状や円弧状部とそのコ字状や円弧状部で囲まれた中央部の底部材で支持できて、エアークッション材を介してソフトに地面に着地して歩行でき、疲れにくくて長時間歩行することができる。」(本件明細書の段落0011を参照。)といった効果を奏するように特定されたものであることに鑑みると、エアークッション材の開口の方向が単なる設計事項であるともいえない。
イ したがって、甲5考案において、甲3考案を勘案しても、前記相違点3に係る本件考案1の構成とすることは、当業者であってもきわめて容易になし得たことではない。
なお、甲5考案において、甲1~2、4、6~12に記載の事項を勘案しても、前記相違点3に係る本件考案1の構成とすることは、当業者であってもきわめて容易になし得たことではない。
以上によれば、相違点4について検討するまでもなく、本件考案1は、当業者であっても、きわめて容易に考案をすることができたものではない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件考案1は、甲5考案及び甲3考案に基いて、当業者がきわめて容易に発明をすることができたものではなく、実用新案法3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものではない。
以上によれば、本件考案1についての実用新案登録は、無効理由3によって無効とすることはできない。
3 無効理由4について
(1)本件考案2について
ア 甲1に記載された考案を主引例とした場合
(ア)対比・判断
本件考案2は本件考案1を引用するもの(本件考案1をすべて含むもの)であるから、本件考案2と甲1考案とをその有する機能に照らして対比すると、少なくとも、前記「1(1)」で示した一致点1で一致し、相違点1、2で相違する。
そして、前記相違点2は、前記「1(2)」で検討したとおりであるから、甲1考案において、前記相違点2に係る本件考案2の構成とすることは、当業者であっても、きわめて容易になし得たものではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件考案2は、当業者であっても、きわめて容易に考案をすることができたものではない。
(イ)以上のとおりであるから、本件考案2は、甲1考案、甲3考案及び甲6に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではなく、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものではない。
イ 甲5に記載された考案を主引例とした場合
(ア)対比・判断
本件考案2は本件考案1を引用するもの(本件考案1をすべて含むもの)であるから、本件考案2と甲5考案とをその有する機能に照らして対比すると、少なくとも、前記「2(1)」で示した一致点2で一致し、相違点3、4で相違する。
そして、前記相違点3は、前記「2(2)」で検討したとおりであるから、甲5考案において、前記相違点3に係る本件考案2の構成とすることは、当業者であっても、きわめて容易になし得たものではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件考案2は、当業者であっても、きわめて容易に考案をすることができたものではない。
(イ)以上のとおりであるから、本件考案2は、甲5考案、甲3考案及び甲6に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではなく、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものではない。
(2)本件考案4について
ア 甲1に記載された考案を主引例とした場合
(ア)対比・判断
本件考案4は本件考案1を引用するもの(本件考案1をすべて含むもの)であるから、本件考案4と甲1考案とをその有する機能に照らして対比すると、少なくとも、前記「1(1)」で示した一致点1で一致し、相違点1、2で相違する。
そして、前記相違点2は、前記「1(2)」で検討したとおりであるから、甲1考案において、前記相違点2に係る本件考案4の構成とすることは、当業者であっても、きわめて容易になし得たものではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件考案4は、当業者であっても、きわめて容易に考案をすることができたものではない。
(イ)以上のとおりであるから、本件考案4は、甲1考案、甲3考案及び甲7に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではなく、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものではない。
イ 甲5に記載された考案を主引例とした場合
(ア)対比・判断
本件考案4は本件考案1を引用するもの(本件考案1をすべて含むもの)であるから、本件考案4と甲5考案とをその有する機能に照らして対比すると、少なくとも、前記「2(1)」で示した一致点2で一致し、相違点3、4で相違する。
そして、前記相違点3は、前記「2(2)」で検討したとおりであるから、甲5考案において、前記相違点3に係る本件考案4の構成とすることは、当業者であっても、きわめて容易になし得たものではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件考案4は、当業者であっても、きわめて容易に考案をすることができたものではない。
(イ)以上のとおりであるから、本件考案4は、甲5考案、甲3考案及び甲7に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではなく、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものではない。
(3)まとめ
以上によれば、本件考案2、4についての実用新案登録は、無効理由4によって無効とすることはできない。
4 無効理由5について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かの判断基準に倣うと、実用新案登録請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かの判断基準は、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載とを対比し、実用新案登録請求の範囲に記載された考案が、考案の詳細な説明に記載された考案で、考案の詳細な説明の記載により当業者が当該考案の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該考案の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。
(2)本件の考案の詳細な説明の記載について
本件の考案の詳細な説明の段落0006によると、本件考案が解決しようとする課題は、「エアークッション材の踵部への底部材の装着性を高め」ることと、「長時間にわたっても疲れにくく、楽に歩行できるようにする」ことであると把握できる。
そして、「エアークッション材の踵部への底部材の装着性を高め」るといった課題を解決するために、考案の詳細な説明の段落0018に「上記エアークッション材4は、図1、図3(a)~(c)のように踵部3に合せたコ字状や円弧状、楕円弧状、C字状等の形状とし、その一部が開口した開口部5を図1、図2のように踵部3の後端側に向けて踵部3に凹設し、エアークッション材4の踵部3への装着性、底部材の装着性を高められるように形成している。」と、段落0023に「このような靴底2は、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体のEVA樹脂等の合成樹脂材やゴム材等の靴底材で金型成形することができ、ポリウレタンやポリエチレン等のポリマー材料の熱可塑性樹脂等で予め真空成型やブロー成型等で成形したエアークッション材4を上記靴底材の靴底2に装着したり、金型の所定位置に設置して靴底材を挿填したりして成形することができる。」と記載されている。
また、「長時間にわたっても疲れにくく、楽に歩行できるようにする」といった課題を解決するために、考案の詳細な説明の段落0027に「図1~図3は、本考案の一実施例を示すものである。エアークッション付き靴1は、図1、図2のように靴底2の踵部3に、踵部3に合せたコ字状の形状のエアークッション材4をその一部が開口した開口部5を踵部3の後端側に向けて踵部3に一体的に凹設し、踵部3の後端部から上記エアークッション材4の開口部5に内装するようにして所要の弾力性の底部材を配設して形成している。」と、段落0029に「このように踵部3のエアークッション材4の一端を開口した開口部5には、図1、図2のように踵部3の後端部から開口部5にわたって開口部5に内装して靴底材を装着し、エアークッション材4で囲まれた状態の踵中心部8を上面が滑らかな平面上に成形し、エアークッション材4の弾性力に比べてやや低い軟らかな弾性力の状態として足の踵部が地面にソフトに着地して快適に歩行できるようにしている。」と、段落0030に「エアークッション材4は、図1、図2のように靴底2の踵部3の内形状にそわすようにして形成していて、15mm幅で、50mm縦長、60mm横幅、20mm高さのものとし、エアークッション材4で囲む内側の踵中心部8を靴内側を幅広の30mm、後端側を幅狭の20mmとした台形形状とし、足の踵を安定性よく装着できるようにしている。」と、段落0036に「図4は、本考案の他の実施例で、クッション材4としてC字状に形成したものである。一部が開口した開口部5を図1、図2のように踵部3の後端側に向けて踵部3に一体的に凹設して成形できるもので、上記した効果と同様に奏することができ、コ字状やC字状等の本考察の趣旨にもとづいた形状のものを採択することができる。」と記載されている。
そして、考案の詳細な説明の段落0032に「このようにエアークッション付き靴1は、エアークッション材4の一部を開口した開口部5を踵部3の後端側に向けて踵部3に装着し、踵部2の後端部から上記開口部5にわたって底部材を一体的に所要の弾力性のものとして形成したので、エアークッション材4の踵部2への底部材の装着性を高められ、また体の重心を踵部3の中央部からやや前方部のエアークッション材4のコ字状部とそのコ字状部で囲まれた中央部の底部材で支持できて、ソフトに地面に着地でき、長時間でも、疲れにくくできて歩行することができる。」と示されている。
これらを総合すると、上記2つの課題を解決する手段として、エアークッション材4の一部を開口した開口部5を踵部3の後端側に向けて踵部3に装着し、踵部3の後端部から上記開口部5にわたって底部材を一体的に所要の弾力性のものとして形成したエアークッション付き靴1、が開示されているといえるところ、「エアークッション材の踵部への底部材の装着性を高め」るといった課題を解決する手段として、「エアークッション材4の一部を開口した開口部5を踵部3の後端側に向けて踵部3に装着した、エアークッション付き靴1」が、また、「長時間にわたっても疲れにくく、楽に歩行できるようにする」といった課題を解決する手段として、「エアークッション材4の一部を開口した開口部5を踵部3の後端側に向けて踵部3に装着し、踵部3の後端部から上記開口部5にわたって底部材を一体的に所要の弾力性のものとして形成した、エアークッション付き靴1」が開示されているといえる。
(3)本件考案について
ア 本件考案1は、エアークッション付き靴の考案であって、前記「第2」で特定されるとおりのものである。一方、本件の考案の詳細な説明には、前記「(2)」に示すとおり、「エアークッション付き靴1」が示されている。また、前記「(2)」に示したとおり、本件考案の課題は、「エアークッション材の踵部への底部材の装着性を高め」ることと、「長時間にわたっても疲れにくく、楽に歩行できるようにすること」と理解されるところ、これらいずれかの課題が解決されることが理解できれば、サポート要件を満たすといえる。
そして、靴において、エアークッション材を配設して金型にウレタン樹脂等を流し込んで靴底を成形する際に、ウレタン樹脂等を流し込むという作業があるためエアークッション材がずれやすいという問題があるが、本件考案1では、コ字状や円弧状のエアークッション材が、踵部の後端側に向けて開口しているため、靴底の外側と近接するエアークッション材の部分は、せいぜい両端しかない構成となるから、若干の位置ずれが生じても目立ちにくく多少の位置ずれを許容し得るものとなる。そうすると、エアークッション材の踵部への底部材の装着性が高まるのは明らかである。
以上によれば、本件考案1は、前記「エアークッション材の踵部への底部材の装着性を高め」るといった課題を解決するための「エアークッション材を一部が開口したコ字状や円弧状の形状として、この一部が開口した開口部を踵部の後端側に向けて踵部に装着し」た構成を有したものであるから、本件考案1は課題を解決するための手段が反映されているといえる。
また、靴において、踵部に設けたクッション材は、クッション材である以上、踵部における着地の衝撃を吸収するように配置されることは靴の技術常識から明らかであるところ、そのようなクッション材が普通に機能するサイズを考えると、踵部の後端側に向けて開口したコ字状や円弧状のクッション材の中央部分は、踵部の後端からある程度前方に位置することは明らかであり、「踵部3の後端部から上記開口部5にわたって底部材を一体的に所要の弾力性のものとして形成した」ものとなることも明らかである。そして、そのような構成により足の踵を支持することで、楽に歩行できるようになるといえる。
以上によれば、本件考案1は、前記「長時間にわたっても疲れにくく、楽に歩行できるようにする」といった課題を解決するための「エアークッション材を一部が開口したコ字状や円弧状の形状として、この一部が開口した開口部を踵部の後端側に向けて踵部に装着し、踵部3の後端部から上記開口部5にわたって底部材を一体的に所要の弾力性のものとして形成した」構成を有したものであるから、本件考案1は課題を解決するための手段が反映されているといえる。
以上から、本件考案1は、前記「(2)」に示した課題を解決するための手段が反映されているといえる。
したがって、本件考案1は、考案の詳細な説明に記載された考案であるといえる。
そうすると、本件考案1は、サポート要件に違反するものではない。
イ また、本件考案2、4は、本件考案1を引用するものであるところ、本件考案1は、前記「ア」で示したように、考案の詳細な説明に記載された考案であり、更に、本件考案2において付加された特定事項については、考案の詳細な説明の段落0033、図2、3に、また、本件考案4において付加された特定事項については、考案の詳細な説明の段落0035、図2に、それぞれ開示されているから、本件考案2、4は、考案の詳細な説明に記載された考案であるといえる。
そして、本件考案1は、前記「ア」に示したとおり、前記「(2)」に示した課題を解決するための手段が反映されているといえるから、本件考案2、4についても、前記「(2)」に示した課題を解決するための手段が反映されているといえる。
したがって、本件考案2、4は、考案の詳細な説明に記載された考案であるといえる。
そうすると、本件考案2、4は、サポート要件に違反するものではない。
(4)請求人の主張に対して
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ア 無効理由5の「ア」及び「ウ」について
前記「第3の1(5)」で示したように、請求人は、本件考案1、2、4は、エアークッション材を踵部のどの位置に配置するかについて何ら特定されていないから、上記「長時間にわたっても疲れにくく、楽に歩行できるようにする」といった課題を解決できると認識できるものではなく、また、その考案特定事項の全体にわたって考案の効果が得られるものではなく、考案の詳細な説明の範囲を超える「広範な」ものである旨主張する。
しかし、前記「(3)」で示したように、靴において、踵部に設けたクッション材を、踵部における着地の衝撃を吸収するように配置することは靴の技術常識から明らかであるところ、そのようなクッション材が普通に機能するサイズを考えると、踵部の後端側に向けて開口したコ字状や円弧状のクッション材の中央部分は、踵部の後端からある程度前方に位置することは明らかであることに鑑みると、本件考案1、2、4は、上記課題を解決できると認識できるものであるといえる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
イ 無効理由5の「イ」について
前記「第3の1(5)」で示したように、請求人は、本件考案1、2、4は、どの構成に基づき、どのような因果関係により、エアークッション材の踵部への底部材の装着性を高められるのか不明であるから、上記「エアークッション材の踵部への底部材の装着性を高め」るといった課題を解決できると認識できるものではない旨主張する。
しかし、当業者であれば、本件の考案の詳細な説明で示された従来技術(特開平10-295405号公報)に比べ、本件考案のエアークッション材は、前記「(3)ア」でも検討したように、エアークッション材の踵部への装着の際に多少の位置ずれがあっても目立たず、多少の位置ずれを許容し得るものとなるから、装着性が高まるのは明らかであるといえる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(5)以上のとおりであるから、無効理由5は理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によって、本件考案1、2、4についての実用新案登録を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定において準用する特許法第169条第2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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