特許拒絶査定不服審判
2024-009807
非一時的記憶媒体
- 審判番号
- 2024-009807
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-004561外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年06月12日
- 審決日
- 2025年08月18日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
- 【請求人代理人】新居 広守
- 【請求人代理人】寺谷 英作
- 【請求人代理人】道坂 伸一
- 分類
- P18 .1 -WZ (H04N) / P18 .537-WZ (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第2条第1項、特許法第2条第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 4561「非一時的記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 3月 3日出願公開、特開2023- 29657〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)3月4日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2018年3月5日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2020-505025号の一部を令和2年12月11日に新たな特許出願とした特願2020-205800号の一部を令和5年1月16日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年 1月16日 :上申書の提出
令和5年10月10日付け:拒絶理由通知書
令和6年 1月 9日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 2月13日付け:拒絶査定
令和6年 6月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和6年 7月11日付け:前置報告書
令和6年 9月10日 :上申書の提出
令和7年 4月11日付け:拒絶理由通知書(当審)
令和7年 6月18日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和7年6月18日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。なお、各構成の符号A~Jは、説明のために当審において付したものであり、以下、構成A~構成Jと称する。
(本願発明)
A ビットストリームを保存する、復号装置が読み取り可能な非一時的記憶媒体であって、
B 前記ビットストリームは、動画像の符号化処理対象ブロックと前記符号化処理対象ブロックの予測ブロックとの差分および前記符号化処理対象ブロックの予測ブロックの生成に関する予測パラメータに対して符号化され圧縮された符号化信号を含み、
C 前記ビットストリームを入力した前記復号装置が備える制御部に、
D 符号化ピクチャに含まれる復号対象ブロックを第1サブブロック、第2サブブロック及び第3サブブロックへ第1方向に分割させ、前記第2サブブロックは、前記第1サブブロック及び前記第3サブブロックの間に位置し、
E 前記第2サブブロックが複数のパーティションへ分割される場合に、
F 前記第2サブブロックの分割方向を示す第1パラメータを前記ビットストリームから読み解かせ、
G 前記第1パラメータが前記第1方向を示す場合に、分割モードパラメータの前記ビットストリームからの読み解きをスキップさせ、前記第2サブブロックを2つのパーティションへ前記第1方向に分割することを禁止させ、
H 前記第1パラメータが前記第1方向と異なる第2方向を示す場合に、前記分割モードパラメータを前記ビットストリームから読み解かせ、前記第2サブブロックを前記分割モードパラメータに従って2つまたは3つのパーティションへ前記第2方向に分割させ、
I 前記差分および前記予測パラメータを復号させ、前記予測パラメータにより規定された処理に基づき前記復号対象ブロックの予測ブロックを生成させ、前記復号対象ブロックの予測ブロックと前記差分とを加算して前記復号対象ブロックの再構成画像を生成させ、復号させる、
J 前記復号装置が読み取り可能な、
A 非一時的記憶媒体。
第3 原査定及び当審における拒絶の理由
1 令和6年2月13日付け拒絶査定における拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
(発明該当性)この出願の下記の請求項に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
記
請求項1-2のビットストリームを保存する、コンピュータ読み取り可能な非一時的記憶媒体は、ビットストリームが含むデータ要素の内容を定義したものにすぎず、人為的な取決めに止まるから、自然法則を利用した技術的思想の創作ではなく、「発明」に該当しない。
したがって、本願の請求項1-2に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」に該当せず、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
2 令和7年4月11日付けで当審が通知した拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
「ビットストリームを保存する、復号装置が読み取り可能な非一時的記憶媒体」が、「前記ビットストリームを入力した前記復号装置が備える制御部」に、構成D~構成Iの事項をさせる、ということは、発明の詳細な説明には記載されていない。
第4 当審の判断
1 サポート要件について
(1)本願発明について
本願発明は、上記第2に記載したとおりのものである。
ここで、構成Jの「前記復号装置が読み取り可能な」という記載は、構成Aの「非一時的記憶媒体」に係るものと解される。
また、請求項1において、「前記ビットストリームを入力した前記復号装置が備える制御部」(構成C)に、構成D~構成Iの処理をさせる、という記載は、構成Bの「動画像の符号化処理対象ブロックと前記符号化処理対象ブロックの予測ブロックとの差分および前記符号化処理対象ブロックの予測ブロックの生成に関する予測パラメータに対して符号化され圧縮された符号化信号を含み」という記載と並列的に、構成Aの「非一時的記憶媒体」に係るものと解される。
よって、本願発明において、「前記ビットストリームを入力した前記復号装置が備える制御部」(構成C)に、構成D~構成Iの処理をさせる主体は、「ビットストリームを保存する、復号装置が読み取り可能な非一時的記憶媒体」であると解される。
(2)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明の発明を実施するための形態の欄には、以下の記載がある(下線は当審で付加した)。
【0122】
[復号装置の概要]
次に、上記の符号化装置100から出力された符号化信号(符号化ビットストリーム)を復号可能な復号装置の概要について説明する。図10は、実施の形態1に係る復号装置200の機能構成を示すブロック図である。復号装置200は、動画像/画像をブロック単位で復号する動画像/画像復号装置である。
【0123】
図10に示すように、復号装置200は、エントロピー復号部202と、逆量子化部204と、逆変換部206と、加算部208と、ブロックメモリ210と、ループフィルタ部212と、フレームメモリ214と、イントラ予測部216と、インター予測部218と、予測制御部220と、を備える。
【0124】
復号装置200は、例えば、汎用プロセッサ及びメモリにより実現される。この場合、メモリに格納されたソフトウェアプログラムがプロセッサにより実行されたときに、プロセッサは、エントロピー復号部202、逆量子化部204、逆変換部206、加算部208、ループフィルタ部212、イントラ予測部216、インター予測部218及び予測制御部220として機能する。また、復号装置200は、エントロピー復号部202、逆量子化部204、逆変換部206、加算部208、ループフィルタ部212、イントラ予測部216、インター予測部218及び予測制御部220に対応する専用の1以上の電子回路として実現されてもよい。
【0125】
以下に、復号装置200に含まれる各構成要素について説明する。
【0126】
[エントロピー復号部]
エントロピー復号部202は、符号化ビットストリームをエントロピー復号する。具体的には、エントロピー復号部202は、例えば、符号化ビットストリームから二値信号に算術復号する。そして、エントロピー復号部202は、二値信号を多値化(debinarize)する。これにより、エントロピー復号部202は、ブロック単位で量子化係数を逆量子化部204に出力する。
(3)サポート要件についての判断
段落0122の記載によれば、発明の詳細な説明には、符号化装置100から出力された符号化信号(符号化ビットストリーム)を復号可能な復号装置が記載されているといえる。
また、段落0124の記載によれば、発明の詳細な説明には、復号装置200が、例えば、汎用プロセッサ及びメモリにより実現され、この場合、メモリに格納されたソフトウェアプログラムがプロセッサにより実行されたときに、プロセッサは、エントロピー復号部202、逆量子化部204、逆変換部206、加算部208、ループフィルタ部212、イントラ予測部216、インター予測部218及び予測制御部220として機能する、ということが記載されているといえる。
また、段落0126によれば、発明の詳細な説明には、エントロピー復号部202が、符号化ビットストリームをエントロピー復号することが記載されているといえる。
しかしながら、「ビットストリームを保存する、復号装置が読み取り可能な非一時的記憶媒体」が、「前記ビットストリームを入力した前記復号装置が備える制御部」に、構成D~構成Iの処理をさせる、ということは、発明の詳細な説明には記載されていない。
なお、補正後の発明の詳細な説明の段落0006には、請求項1に記載の事項と同様の事項が形式的に記載されており、表現上は、請求項1に係る発明と発明の詳細な説明の記載は整合しているものの、上述のとおり、請求項1に記載の事項は、発明を実施するための形態の欄には記載されておらず、請求項1に係る発明が発明の詳細な説明に、実質的に記載されているとはいえない。
(4)まとめ
以上によれば、本願発明において、「前記ビットストリームを入力した前記復号装置が備える制御部」(構成C)に、構成D~構成Iの処理をさせる主体は、「ビットストリームを保存する、復号装置が読み取り可能な非一時的記憶媒体」であると解されるところ、「ビットストリームを保存する、復号装置が読み取り可能な非一時的記憶媒体」が、「前記ビットストリームを入力した前記復号装置が備える制御部」に、構成D~構成Iの処理をさせる、ということは、発明の詳細な説明には記載されていない。
よって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(5)請求人の主張について
請求人は、令和7年6月18日提出の意見書において、以下の主張を行っている。
「これに対して、上記拒絶理由を解消するために、本意見書と同時に提出する手続補正書により、特許請求の範囲等を補正しました。主な補正の内容は、以下の通りです。
請求項1において、「・・・復号させる、非一時的記憶媒体。」を「・・・復号させる、前記復号装置が読み取り可能な、非一時的記憶媒体。」に補正しました。
この補正は、請求項1の文末構成において、処理の主体が非一時的記憶媒体であるかのような誤解を避けるために、「前記復号装置が読み取り可能な」と明示するものであり、請求項の技術的趣旨を明確化するための表現上の補正です。なお、本補正は、請求項の表現を変更した程度の補正であり、発明の実質的内容に変更はなく、新規事項の追加には該当しないと考えます。」
しかしながら、上記(1)のとおり、請求項1の記載によれば、「前記ビットストリームを入力した前記復号装置が備える制御部」(構成C)に、構成D~構成Iの処理をさせる主体は、「ビットストリームを保存する、復号装置が読み取り可能な非一時的記憶媒体」であると解されるから、請求人の主張は採用することができない。
2 発明該当性について
(1)本願の請求項1に記載されたもの
本願の請求項1に記載されたものは、上記第2で「本願発明」として記載したものである。
(2)本願の請求項1に記載された「非一時的記憶媒体」の特定事項について
ア 「非一時的記憶媒体」に保存される情報の構成
本願の請求項1に記載された「非一時的記憶媒体」は、「ビットストリーム」を保存するものである(構成A)。
また、「前記ビットストリーム」は、「動画像の符号化処理対象ブロックと前記符号化処理対象ブロックの予測ブロックとの差分および前記符号化処理対象ブロックの予測ブロックの生成に関する予測パラメータに対して符号化され圧縮された符号化信号」を含んでいる(構成B)。
また、構成C、Fによれば、前記ビットストリームを入力した前記復号装置が備える制御部に、前記第2サブブロックの分割方向を示す第1パラメータを前記ビットストリームから読み解かせるのであるから、「前記ビットストリーム」は、「前記第2サブブロックの分割方向を示す第1パラメータ」を含むものといえる。
また、構成C、G、Hによれば、前記ビットストリームを入力した前記復号装置が備える制御部に、前記第1パラメータが前記第1方向を示す場合に、分割モードパラメータの前記ビットストリームからの読み解きをスキップさせ、前記第1パラメータが前記第1方向と異なる第2方向を示す場合に、前記分割モードパラメータを前記ビットストリームから読み解かせるのであるから、「前記ビットストリーム」は、「分割モードパラメータ」を含むものといえる。
以上によれば、本願の請求項1に記載された「非一時的記憶媒体」に保存される情報は、「動画像の符号化処理対象ブロックと前記符号化処理対象ブロックの予測ブロックとの差分および前記符号化処理対象ブロックの予測ブロックの生成に関する予測パラメータに対して符号化され圧縮された符号化信号」、「前記第2サブブロックの分割方向を示す第1パラメータ」、「分割モードパラメータ」を含む「ビットストリーム」であるといえる。
イ 「非一時的記憶媒体」に関連する情報処理
本願の請求項1に記載された「非一時的記憶媒体」に関連する情報処理は、構成D~Iの「符号化ピクチャに含まれる復号対象ブロックを第1サブブロック、第2サブブロック及び第3サブブロックへ第1方向に分割させ、前記第2サブブロックは、前記第1サブブロック及び前記第3サブブロックの間に位置し、
前記第2サブブロックが複数のパーティションへ分割される場合に、
前記第2サブブロックの分割方向を示す第1パラメータを前記ビットストリームから読み解かせ、
前記第1パラメータが前記第1方向を示す場合に、分割モードパラメータの前記ビットストリームからの読み解きをスキップさせ、前記第2サブブロックを2つのパーティションへ前記第1方向に分割することを禁止させ、
前記第1パラメータが前記第1方向と異なる第2方向を示す場合に、前記分割モードパラメータを前記ビットストリームから読み解かせ、前記第2サブブロックを前記分割モードパラメータに従って2つまたは3つのパーティションへ前記第2方向に分割させ、
前記差分および前記予測パラメータを復号させ、前記予測パラメータにより規定された処理に基づき前記復号対象ブロックの予測ブロックを生成させ、前記復号対象ブロックの予測ブロックと前記差分とを加算して前記復号対象ブロックの再構成画像を生成させ、復号させる」という処理である。
(3)発明該当性についての判断
特許法において、「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものをいう。」(第2条第1項)とされている。
また、同法において、「物の発明」における「物」は、「プログラム等を含む。」(第2条第3項第1号)とされ、当該「プログラム等」とは、「プログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項において同じ。)その他電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものをいう。」(第2条第4項)とされている。
そこで、本願の請求項1に記載されたものが、特許法でいう「発明」に該当するか否かについて、以下検討する。
ア 「非一時的記憶媒体」に保存される情報について
(ア)「非一時的記憶媒体」に保存される情報が「自然法則を利用した技術的思想」であるかどうかについて
本願の請求項1に記載された「非一時的記憶媒体」に保存される情報である上記(2)アの「動画像の符号化処理対象ブロックと前記符号化処理対象ブロックの予測ブロックとの差分および前記符号化処理対象ブロックの予測ブロックの生成に関する予測パラメータに対して符号化され圧縮された符号化信号」、「前記第2サブブロックの分割方向を示す第1パラメータ」、「分割モードパラメータ」を含む「ビットストリーム」は、「0」と「1」からなるビット列の羅列(ストリーム)のデータであって、上記(2)イの情報処理に用いられる被処理データとして、復号装置が備える制御部に供されるものにすぎず、何ら情報処理の内容や手順を規定するものではない。
そうすると、本願の請求項1に記載された「非一時的記憶媒体」に保存された情報は、供される情報の内容にのみ特徴を有するものであって、情報の単なる提示にとどまるものであるから、それ自体が技術的思想を有するということはできない。
したがって、本願の請求項1に記載された「非一時的記憶媒体」に保存される情報は、特許法第2条第1項に規定された「自然法則を利用した技術的思想」に該当するものではない。
(イ)「非一時的記憶媒体」に保存される情報が「プログラム」であるかどうかについて
本願の請求項1に記載された「非一時的記憶媒体」に保存される情報である上記(2)アの「動画像の符号化処理対象ブロックと前記符号化処理対象ブロックの予測ブロックとの差分および前記符号化処理対象ブロックの予測ブロックの生成に関する予測パラメータに対して符号化され圧縮された符号化信号」、「前記第2サブブロックの分割方向を示す第1パラメータ」、「分割モードパラメータ」を含む「ビットストリーム」は、「0」と「1」からなるビット列の羅列(ストリーム)のデータであって、上記(2)イの情報処理に用いられる被処理データとして、復号装置が備える制御部に供されるものにすぎず、一の結果を得ることが出来るように組み合わされたものとして、コンピュータが果たす複数の機能を手順ないし機能実現手段として特定したコンピュータに対する指令ではないから、特許法第2条第4項における「プログラム」ではない。
(ウ)「非一時的記憶媒体」に保存される情報が「プログラムに準ずるもの」であるかどうかについて
まず、本願の請求項1に記載された「非一時的記憶媒体」に保存される情報の構成について検討すると、本願の請求項1に記載された「非一時的記憶媒体」に保存される情報は、上記(2)アのとおり、「動画像の符号化処理対象ブロックと前記符号化処理対象ブロックの予測ブロックとの差分および前記符号化処理対象ブロックの予測ブロックの生成に関する予測パラメータに対して符号化され圧縮された符号化信号」、「前記第2サブブロックの分割方向を示す第1パラメータ」、「分割モードパラメータ」を含む「ビットストリーム」であり、請求項1には、これらの情報の具体的なデータ構造は何ら特定されていない。
次に、本願の請求項1に記載された「非一時的記憶媒体」に関連する情報処理について検討すると、上述のとおり、請求項1には情報の具体的なデータ構造は何ら特定されていないのであるから、上記(2)イの情報処理は、データの構造に基づくものとはいえない。
よって、本願の請求項1に記載された「非一時的記憶媒体」に保存される情報は、データの有する構造がコンピュータの処理を規定するものではないから、プログラムに類似する性質を有するものではなく、「プログラムに準ずるもの」ということはできない。
イ 「非一時的記憶媒体」について
次に、これらの情報が保存される「非一時的記憶媒体」について検討する。
上記アで説明したように、本願の請求項1に記載された「非一時的記憶媒体」に保存される情報は、特許法第2条第4項に規定する「プログラム」または「プログラムに準ずるもの」ではなく、情報の単なる提示にとどまるものであるから、本願の請求項1に記載された「非一時的記憶媒体」自体も、情報の単なる提示を目的としたものであり、それ自体が技術的思想を有するということはできない。
(4)まとめ
以上によれば、本願の請求項1に記載されたものは、「情報の単なる提示」を行うものであって、特許法第2条第1項における「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではないから、特許法第29条第1項柱書に規定する「発明」に該当しない。
(5)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「補正後の請求項1の復号装置が読み取り可能な記憶媒体に記憶するように構成されたビットストリームは、コンピュータ(復号装置)による情報処理を可能にするものであり、当該ビットストリームがコンピュータまたはハードウェア資源(復号装置、復号装置が備える制御部)による所定の情報処理を規定していることは明らかである。」と主張している。
また、請求人は、令和6年9月10日付け上申書において、「すなわち、本発明に係るビットストリームは、単なるデータの集合ではなく、「動画像の符号化処理対象ブロックと前記符号化処理対象ブロックの予測ブロックとの差分および前記符号化処理対象ブロックの予測ブロックの生成に関する予測パラメータに対して符号化され圧縮された符号化信号」を含み、復号装置が備える制御部に対して具体的な操作の指示「符号化ピクチャに含まれる復号対象ブロックを第1サブブロック、第2サブブロック及び第3サブブロックへ第1方向に分割させ、前記第2サブブロックは、前記第1サブブロック及び前記第3サブブロックの間に位置し、前記第2サブブロックが複数のパーティションへ分割される場合に、前記第2サブブロックの分割方向を示す第1パラメータを前記ビットストリームから読み解かせ、前記第1パラメータが前記第1方向を示す場合に、分割モードパラメータの前記ビットストリームからの読み解きをスキップさせ、前記第2サブブロックを2つのパーティションへ前記第1方向に分割することを禁止させ、前記第1パラメータが前記第1方向と異なる第2方向を示す場合に、前記分割モードパラメータを前記ビットストリームから読み解かせ、前記第2サブブロックを前記分割モードパラメータに従って2つまたは3つのパーティションへ前記第2方向に分割させ、前記差分および前記予測パラメータを復号させ、前記予測パラメータにより規定された処理に基づき前記復号対象ブロックの予測ブロックを生成させ、前記復号対象ブロックの予測ブロックと前記差分とを加算して前記復号対象ブロックの再構成画像を生成させ、復号させ」を与えています。上記の指示により、復号装置は適切な復号処理を行います。したがって、本発明に係るビットストリームは特定の情報処理を規定しており、「所定の情報処理を規定しているのはビットストリームである」と言えます。」と主張している。
しかしながら、上述のとおり、本願の請求項1に記載された「非一時的記憶媒体」に保存される情報は、何らコンピュータによる処理を規定するものではないから、請求人の主張は採用することができない。
第5 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本願の請求項1に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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