特許拒絶査定不服審判
2018-007860
検便具
- 審判番号
- 2018-007860
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-052946
- 請求日
- 2018年06月06日
- 審決日
- 2020年03月09日
- 公報発行日
- 2020年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ドクター中松創研
- 審判長/審判官
- 審判長 伊藤 昌哉
- 審判官 渡戸 正義
- 審判官 信田 昌男
- 分類
- P18 .113-WZ (G01N) / P18 .121-WZ (G01N) / P18 .536-WZ (G01N) / P18 .537-WZ (G01N) / P18 .561-WZ (G01N) / P18 .575-WZ (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 52946号「検便具」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月29日出願公開、特開2016-173283号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月17日の出願であって、平成29年3月24日付けで拒絶理由が通知され、同年6月19日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月29日付けで最後の拒絶理由が通知されたが、指定した期間内に何ら応答がなかったため平成30年2月6日付けで拒絶査定(原査定)がされたところ、これに対して同年6月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。
その後の当審における主な手続の経緯は、以下のとおりである。
平成31年 3月27日付け:拒絶理由通知
令和 元年 6月 3日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 7月22日付け:拒絶理由通知(最後)
同年 9月11日 :意見書の提出
同年10月 9日付け:拒絶理由通知(最後)
同年12月16日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 令和元年12月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年12月16日にされた手続補正(以下「本件補正」ということがある。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を示す。)
「 【請求項1】
検便シート全体の材料をリパルパブルとし、前記検便シートの両端にリパルパブルな接着材を設けた検便シートをトイレの噴射にかからないように便器に貼付け、便の乗る、例えば50mm程度の幅の検便シートで、排便した便を検便シートがたわんで便を包み込む形状を有する事を特徴とする便座貼付用検便シート。
【請求項2】
検便シートの全体の材料をリパルパブルとし、前記検便シートの両端にリパルパブルな接着材を設けた検便シートで、便の乗る、例えば50mm程度の幅の検便シートで、排便した便を検便シートがたわんで便を包み込む形状を有し、リパルパブルであり、前記接着材は、第1の接着層と非接着層と第2の接着層の3層積層体を有する事を特徴とする便座貼付用検便シート。
【請求項3】
請求項1の検便シートを便座に貼り付け、検便シートの全体の材料をリパルパブルとし、前記検便シートの両端にリパルパブルな接着材を設けた検便シートで、便の乗る、例えば50mm程度の幅の検便シートで、リパルパブルな材料であり、前記接着材は第1の接着層と非接着層と第2の接着層の3層積層体を有し、便座の両端に便を検便するための水溶性のシートを便器に貼付りつけ、検便シートの上方にお尻を設置し排便を行い、排便すると検便シートがたわんで便を包み込む形状となり、検便後に便器に廃棄し得る事を特徴とする検便シート。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和元年6月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
検便シート全体の材料をリパルパブル(水溶性)とし、且つ前記検便シートの両端にリパルパブルな接着材を設けた検便シートであって、
自動噴射・自動排水方式のトイレで確実に検便を行う事が出来る(ウォッシュトイレの噴水がかからないなどの)構造、形状、取付る事を特徴とする便座貼付用テープ状検便シート
【請求項2】
検便シート全体の材料をリパルパブル(水溶性)とし、且つ前記検便シートの両端にリパルパブルな接着材を設けた検便シートであって、
トイレットペーパーで作成した事を特徴とする便座貼付用検便シート
【請求項3】
検便シート全体の材料をリパルパブル(水溶性)とし、且つ前記検便シートの両端にリパルパブルな接着材を設けた検便シートであって、
前記接着材は、第1の接着層と非接着層と第2の接着層の積層体を有する事を特徴とする便座貼付用の検便シート。
【請求項4】
請求項1の検便シートの使用方法であって、前記接着材を便座に貼り付け、検便後に便器に廃棄する事を特徴とする検便シートの使用方法。」
2 補正の適否
(1)本件補正により、検便シートについて、請求項1に「排便した便を検便シートがたわんで便を包み込む形状を有する事」、請求項2に「排便した便を検便シートがたわんで便を包み込む形状を有し」ていること、請求項3に「排便すると検便シートがたわんで便を包み込む形状とな」ることが追加された。
請求項1ないし3はいずれも便座貼付用検便シートであって、請求項1に「検便シートをトイレの噴射にかからないように便器に貼付け、便の乗る、例えば50mm程度の幅の検便シートで」、請求項2に「便の乗る、例えば50mm程度の幅の検便シートで」、請求項3に「便座の両端に便を検便するための水溶性のシートを便器に貼付りつけ、検便シートの上方にお尻を設置し排便を行い」との記載があることから、検便シートが「排便した便を検便シートがたわんで便を包み込む形状を有する」とは、検便シートの形状が、検便シートの両端を便座に貼り付けた状態で排便した便が検便シートに載せられた場合に、便座に貼り付けられている「検便シートがたわんで便を包み込む」状態となることができるような形状であることを特定するものと解される。
そこで、「検便シートの形状が、検便シートの両端を便座に貼り付けた状態で排便した便が検便シートに載せられた場合に、便座に貼り付けられている検便シートがたわんで便を包み込む状態となることができるような形状であること」が、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内であるか否かについて検討する。
ア 当初明細書等には、以下の記載がある(下線は当審で付加した。)。
(本-ア)特許請求の範囲
「【請求項1】
便器の便座間に、所定の幅を持ち、その両端に便を検便するための水溶性のシートを張り、その両端には便座間に該シートを貼り付けるための接着部を設けたことを特徴とする検便具。」
(本-イ)明細書
「【発明の名称】検便具
【技術分野】
【0001】
本発明は、検便時に便を確実に検便することができる検便具に関する。
【背景技術】
【0002】
検便をする時には、容器に便を少量検便して入れて、検査機関に提出する必要がある。昔は、マッチ箱に便をいれて提出したが、検便するのが大変であった。和式トイレ及び洋式トイレの場合、トイレの底面に直に或いはトイレットペーパーを拡げて、そこに便を落とし、検査棒で便をつついて少量検便し、これを専用の容器に入れるようになっている。残りの便は水で流していた。
【0003】
図1は検便方法の従来例を示す図である。1は便器、2は便である。通常は便器1の中に直に便を落とすか、或いは便器の上にトイレットペーパーを敷き、その上に便を乗せるようにする。2は便、3は便2をつついて検査用の少量の便を検便する検査棒である。検査棒3としては、例えば爪楊枝状のものが用いられる。
【0004】
便器には和式と洋式とがあり、和式はその上にしゃがんで用を足すものであり、洋式は便座(図示せず)を介して椅子に座る要領で座り、用を足すものである。図2は洋式トイレの使用状態を示す図である。(A)は便器に座った状態を示す。便器1に椅子に座る要領で座り、便2を出す。20はお尻、25は排水管である。用を足したら、レバーを操作するか押釦スイッチを押して水を出し水洗して便を流すようになっている。水を流すと、(B)に示すように、排水管25から便2が押し流される。
【0005】
ウォッシュトイレでは、用を足したら、お尻に噴射部を自動で位置決めし、自動で水又はお湯を噴射してお尻をきれいにするものである。この種のものは通常は水を流す時には、操作部(レバー又は押釦ボタン)を操作している。近年、この水洗工程も自動化し、便座から立ち上がると、自動で水が流れるものもある。
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の便器では、便を検便した後、水を流せばよい。
この便を検便する時、従来の方法では、先に説明したように、便器の内側に直に或いはトイレットペーパー等のシートを敷き、その上に便を乗せる。検便作業が終了したら、水を流せばよい。シートと便2は排水管の中に流し込まれる。
近年、前述したようにトイレの近代化がすすみ、お尻にお湯を噴射してお尻の汚れを自動的にとるウォッシュトイレが用いられるようになってきている。
【0008】
更には、トイレの自動化が進み、用足しが終わって便座から立ち上がると、そのことを検出して、自動的に水が流れるようになったものも使用されるようになってきた。この方式だと、まだ検便を終えていないのに水が流れてしまう。従って、便も流れてしまい、検便ができない。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、このような自動噴射・自動排水方式のトイレであっても確実に検便をおこなうことができる検便具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決する本発明は、便器の便座間に、所定幅であって、その両端に便を検便するための水溶性のシートを張り、その両端には便座間に該シートを貼り付けるための接着部を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
水溶性のシートを便座間に貼り付けておく。使用者が立ち上がっても、このシートは便座間に貼り付けられているので、自動的に噴射される水もシートの高さまでは届かない。従って、シートに便を落としておき、その状態で検便操作を行うことができる。検便作業が終了したら、シートをはがして便器内に落とし、その後強制的に水を流せばよい。シートはリパルパブル(水溶性)なので水に溶ける。このように、本発明によれば、自動噴射・自動排水方式のトイレであっても確実に検便をおこなうことができる検便具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】検便の様子を示す図
【図2】洋式トイレの使用説明図
【図3】本発明による検便時の使用状態を示す図
【図4】本発明の検便シートの構成例を示す図
【図5】本発明の検便シートの断面形状を示す図
【図6】便を排水処理する時の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。図3は本発明の検便時の使用状態を示す図である。図1,図2と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、1は便器、6は便座である。7は便器内の水、20はお尻である。10は本発明にかかる検便シートである。該検便シート10はリパルパブル(水溶性)な材料でできている。具体的には例えば、トイレットペーパーと同じ材質のものが用いられる。10A,10Bは検便シート10を便座6に貼り付ける接着部である。検便シート10と接着部10A,10Bの詳細については後述する。
【0013】
Lは排水時の水面、Hは便器1の底から水面Lまでの高さ、hは水面Lから便2までの高さである。排水時において、水面Lから便2まではhだけはなれているので、便2に水がかかることはない。従って、検便ができることになる。
この状態で検便作業を行う。便が検便できたら、シートを剥がして便器に落とし便器に付属の流しボタン(図示せず)を押して、便を流し排出させる。本発明によれば、自動噴射・自動排水方式のトイレであっても確実に検便を行うことができる検便具を提供することができる。
【0014】
図4は本発明の検便シートの構成例を示す図である。(C)は検便シート10の平面図である。そして、このシート10の幅Wは便2を安定に乗せられるように、十分な幅を持つ必要がある。この幅Wとしては、例えば50mm程度のものが用いられる。
【0015】
10A,10Bは検便シート10の両側に設けられた接着部である。この接着部10A,10Bを断面で示すと、(A),(B)に示すようなものとなる。この貼り付け部10A,10Bは(A)に示すようにライナー10aとリパルパブル接着層10bから構成されている。使用の実際に当たっては、図4の(B)に示すように、ライナー10aを剥がす。
すると、リパルパブル接着層10bが表れるので、この接着層10bを便座6に貼り付ける。この結果、図4の(C)に示すように、便座間に検便シート10が貼られることになる。後は、このシート10の上に便が乗るようにする。すると、便2の重みでシート10がたわみ、図3に示すようなものとなる。この便2が乗った状態でも、その便の底が水7の水面Lよりも高い状態にあれば、つまり、hが所定の距離あれば便2が水で濡れることはない。なお、検便シート10は、接着部10A,10Bとそれ以外の部分を含む概念である。
【0016】
次に、接着部10A,10Bの詳細をその断面形状で説明する。本発明で用いるリパルパブルシートは2種類ある。(A)は複層のものを、(B)は単層のものをそれぞれ示している。(A)において、30は接着力のないリパルパブルシート、31は該リパルパブルシート30の上部に設けられた第1の接着層、32は該第1の接着層31の上部に設けられた非接着層、33は非接着層32の上部に設けられた第2の接着層である。第1及び第2の接着層31,33で非接着層32を挟んだ格好になっている。構成部34と35はライナーであり、34は第2の接着層33の上部に設けられたリリースコート、35は該リリースコート34の上部に設けられたリリースライナーである。構成部30~33で図4の10bに対応し、構成部34,35で図4の10aに対応している。
【0017】
(B)において、(A)と同一のものは同一の符号を付して示す。(B)において、30はリパルパブルシート、36は該リパルパブルシート30の上に設けられた単層の接着層である。34は接着層36の上部に設けられたリリースコート、35は該リリースコート34の上部に設けられたリリースライナーである。構成部36は図4の10bに対応し、構成部34,35で図4の10aに対応している。これら接着部10A,10Bはいずれも水に溶けるリパルパブルな成分から構成されている。
【0018】
図5の(C)はライナーを剥がした状態を示している。ライナーを剥がすと、33と34とが分離する。接着層33が表れるので、この接着層33を便器の便座に貼り付けると、便座の間に検便シートが貼られることになる。この検便シートの上に便を落とす。本発明によれば、便座から検便のために立ち上がっても、洗浄水7は検便シート10までは届かない。この状態で検便し、検便が終了した検便シート10を剥がして便器の中に落として水で流す。
【0019】
図6は検便が終了した検便シートと便を落とす様子を示す図である。先ず検便が終了した検便シート10と便2を便器内に落とす。その後、レバー又はプッシュ釦を操作して水を流す。すると、渦巻状の水流が発生する。この水流に便2と検便シート10が流し込まれ、排水管25から外部に排出される。
なお、検便シート10の幅Wは、図5に示す接着部が複数設けられたもので決まる場合が多い。それだけ、検便シートの幅が広いということである。上述の実施例では、リパルパブルシート30とその両端の接着部10A,10Bを別々の部品で示したが、全面図5で示す接着層でリパルパブルシート30を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によれば、自動噴射・自動排水方式のトイレであっても、確実に検便作業をすることができるので、本願発明の検便シートが広く行きわたるものと思われる。
【符号の説明】
【0021】
1 便器
2 便
3 検査棒
6 便座
10 検便シート
10A 接着部
10B 接着部
10a ライナー
10b リパルパブル接着剤
20 お尻
25 排水管
30 リパルパブルシート
31 第1の接着層
32 非接着層
33 第2の接着層
34 リリースコート
35 リリースライナー」
(本-ウ)図面
「【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
」
イ 上記当初明細書等の記載から、検便シートの形状に関連する事項として以下の事項が理解できる。
(ア)検便シートの全体形状は、平面視略長方形状である(【0014】、【図4】)。
(イ)検便シートの長手方向両端には、接着部が設けられている(【0012】、【0014】、【図3】、【図4】)。
(ウ)検便シートの幅は、例えば50mm程度である(【0014】)。
(エ)検便シートは、便座間に貼ることができる長さを有している(【0012】、【0015】、【図3】)。
(オ)便座間に貼った状態の検便シート上に便が載ることにより、便の重みで検便シートがたわむ(【0015】、【図3】)
ウ 上記イ(ア)、(エ)及び(オ)から、「検便シートの形状が、検便シートの両端を便座に貼り付けた状態で排便した便が検便シートに載せられた場合に、便座に貼り付けられている検便シートがたわむことができるような形状であること」は、当初明細書等に記載された事項であるといえる。
しかしながら、「便を包み込む」点については、当初明細書等には明記されていない。「包み込む」とは、「包んで中にすっぽり入れる(株式会社岩波書店 広辞苑第六版 DVD-ROM版)」ことを意味するところ、【図3】に示された状態は、便の下面が検便シートに接していることは見て取れるものの、検便シートは便の側方から離れる方向に伸びており、検便シートが便を包み込んでいる状態を示しているとはいえない。
そして、検便シートがたわむことと検便シートが便を包み込むこととは異なる概念であり、便の重さでたわむことができる検便シートであれば便を包み込むことができる形状を有しているとはいえないことは、明らかである。
エ 請求人は、令和元年12月16日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)において、本件補正の根拠について説明していないが、「●理由5(進歩性)についての主張」の「3.」において、「便を包み込む形状」に関連して以下の説明をしている。
「本発明の請求項2~4に於ける「排便した便を検便シートがたわんで便を包み込む形状」に関して、下記の参考図2の様に、検便シートが
(1)クッション機能があり、
(2)便を包み込みます
引用文献2では、受け皿があり、便は採取用具の表面で跳ねあがってしまいます。
[参考図2]
」
上記意見書の記載によれば、請求人のいう「便を包み込む」とは、検便シートのクッション機能により、便が存在する部分の検便シートが、他の部分の検便シートに対して局部的に沈み込んだ状態となることを意味するものとも解される。
しかしながら、参考図2に示された検便シートの形状は、【図3】に示さされた検便シートの形状と明らかに異なるものであり、【図3】が検便シートのクッション機能により便を包み込んだ状態を示しているとは認められない。そして、当初明細書等全体の記載を見ても、検便シートがクッション機能を有していると理解できる記載は見当たらない。
オ したがって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。
よって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(2)加えて、本件補正が当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであるとして、以下、検討する。
ア 本件補正のうち、請求項1に係る補正は、「検便シート」の「構造、形状」について、「自動噴射・自動排水方式のトイレで確実に検便を行う事が出来る」「構造、形状」を、「便の乗る、例えば50mm程度の幅」で「排便した便を検便シートがたわんで便を包み込む形状」に特定して限定する補正を含むものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含んでいる。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
イ 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)の【請求項1】に記載したとおりのものである。
なお、「排便した便を検便シートがたわんで便を包み込む形状」は、「検便シートの両端を便座に貼り付けた状態で排便した便が検便シートに載せられた場合に、便が存在する部分の検便シートが、他の部分の検便シートに対して局部的に沈み込んだ状態となること」を示すと認める。
また、「トイレの噴射」は、「ウォッシュトイレ」でお尻を洗浄する洗浄水の噴射を示すと認める。
ウ 引用文献の記載事項
(ア)本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-270403号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審において付加した。引用文献の記載において以下同様。)。
(引1-ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一般家庭、病院のトイレにおける検便用の糞便の採取、ポータブルトイレ、オマル等の携帯用便器での老人、病人、幼児の糞便処理のために使用する採便用シートに関するものである。」
(引1-イ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の検査のための検便の採取手段は、和式便器での採便については特に問題点はないが、落とし込み型の便器での採便は、固便は別として軟便、下痢便の場合には、一次採取の段階において水分がペーパーに浸透して床面を汚したり、悪臭を残すために、採便後に床を清掃しなければならず、特に、節水型(糞便落下箇所に溜り水トラップのある洗い落とし式)の洋式便器Tでの糞便の一次採取においては、便器内の傾斜面へのペーパーの敷設が困難であるとともに、敷設できたとしても、糞便の重力又は落下慣性力の傾斜面に沿う分力によって、糞便はペーパー上に乗った状態で溜り水トラップ内へ滑落し、糞便の二次採取が非常に困難となる点に解決すべき課題があった。」
(引1-ウ)「【0013】
【実施例】図1は本発明の実施例1に係る採便用シートAの一部を破断して示した平面図、図2は本発明の実施例2に係る採便用シートAの一部を省略して示した一部破断状態の平面図、図3は図2の採便シートAの側面図、図4は図1の採便用シートを洋式の便器Tに装着した場合の平面図、図5は図4のB-B線における断面略図である。
【0014】実施例1に係る採便用シートAは、一枚の紙材からなる水解性のシート本体3と剥離テープ4で覆われた水解性の両面接着テープ5とから構成され、水解性のシート本体3は、両端縁部が便器Tの左右縁上に重なる長さL(35cm程度)と中間部の糞便受け部1の幅が狭くとも糞便を受けるに足りる幅W(25cm程度)に形成し、前記糞便受け部1の両側に伸長用切り目2を設けることを基本とする構成とし、糞便受け部1上へかかる尿及び糞便中の水分を処理するため、糞便受け部1に切り目又は多数の細孔からなる水分処理部分6を形成して、該水分処理部分6を通して便器T内へ水分を落下させるようにし、また、シート本体3の糞便受け部1の片方の縁に、尿が糞便受け部1にかからないように尿避用抉り部7を設ける。この場合、水分処理部分6と尿避用抉り部7のいずれか一方だけを設けてもよい。
【0015】なお上記実施例1においては、一枚の紙材からなる水解性のシート本体3の場合について図示説明したが、図1に二点鎖線で示すように、糞便受け部1にプラスチックフィルム8を重ねて二重としたり、図示省略したが、二枚の水解性の紙材又は二枚のプラスチックフィルムを重ね或は水解性の紙材とプラスチックフィルムを重ねて全体を二重構成としたり、さらにプラスチックフィルムの両面に紙材を重ねた三重構成としても良い。要するに、糞便の状態(下痢便、軟便、固便)にかかわらず、5~10分以上糞便が保持できる強度を有することが、糞便の二次採取が終了するまでの時間を確保するために必要であるから、その条件に合うものを選択する。
【0016】実施例2に係る採便用シートAは、水解性のシート本体3は、紙材10とプラスチックフィルム8からなる二重構成であって、両端縁部が便器Tの左右縁上に重なる長さL(35~40cm程度)と中間部の幅が狭くとも糞便を受けるに足りる幅W(15~20cm程度)に形成され、長さ方向に沿って二本のギャザー9が形成されており、糞便を支持した際にギャザー9が幅方向に伸びて中弛みを形成するようになっている。
【0017】上記実施例2においては、シート本体3を、紙材10とプラスチックフィルム8からなる二重構成としたものを図示説明したが、一枚の紙材又はプラスチックフィルムで形成しても良く、また、実施例1と同様、二枚の水解性の紙材又は二枚のプラスチックフィルムを重ねた二重構成としたり、さらにプラスチックフィルムの両面に紙材を重ねた三重構成としても良い。
【0018】実施例1及び実施例2における水解性のシート本体3の材料としては、トイレットペーパーや生理用ナプキン等に使用されている水解性の紙材、例えば、パルプ材100 %、40g/m2 を使用し、プラスチックフィルム8としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルム(東セロ製、ET20、20μ)を使用する。
【0019】紙材については、エンボス加工したものを使用すれば、紙材の引っ張り強度を高めることができるから選択範囲を広げることができる。
【0020】そして、剥離テープ4で覆われた水解性の両面接着テープ5は、シート本体3の両端縁部の片面に貼着する。」
(引1-エ)「【0022】そして、使用時に袋から採便用シートを取り出して広げ、図4に示すように、シート本体3の両端縁部に設けた両面接着テープ5を、剥離テープ4を剥して露呈させた後、便器Tの左右縁に接着することにより便器T上に張設し、携帯用或は洋式の便器Tの場合は便座を倒してから腰掛けて排便し、糞便を張設された採便用シートの糞便受け部1で受ける。
【0023】この場合は、図5に示すように、糞便の重量により伸長用切り目2部分又はギャザー9が伸長して、糞便保持状態を崩すことなく糞便受け部1が臀部の下方へ下がった状態で糞便が支持されるから、排泄行為を中断して採便用シートの糞便受け部1上の糞便を、検便のための糞便採取の場合は、従来と同様に便採取スティックに付着させたり、耳掻き形スプーンで掬ったりする方法で二次採取したのち、採便用シートを便器内へ捨てて水洗し、携帯用便器の場合は、糞便を採便用シートに包んで水洗トイレ等へ廃棄処理するのである。」
(引1-オ)【図1】
「
」
(引1-カ)【図2】
「
」
(引1-キ)【図4】
「
」
(引1-ク)【図5】
「
」
(イ)(引1-カ)の【図2】から、実施例2に係る採便用シートAの形状は、概略長方形状であることが見て取れる。
そうすると、上記(引1-ア)ないし(引1-ク)の記載から、引用文献1には、
「 水解性のシート本体3は、材料としてはトイレットペーパーに使用されている水解性の紙材を使用し、一枚の紙材で形成し、又は二枚の水解性の紙材を重ねた二重構成とし、両端縁部が便器Tの左右縁上に重なる長さL(35~40cm程度)と中間部の幅が狭くとも糞便を受けるに足りる幅W(15~20cm程度)に形成され、長さ方向に沿って二本のギャザー9が形成されており、糞便を支持した際にギャザー9が幅方向に伸びて中弛みを形成するようになっており、
剥離テープ4で覆われた水解性の両面接着テープ5が、シート本体3の両端縁部の片面に貼着してあり、
形状は概略長方形状であり、シート本体3の両端縁部に設けた両面接着テープ5を便器Tの左右縁に接着することにより便器T上に張設して使用する、採便用シートA。」
の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
エ 本件補正発明と引用発明1との対比
(ア)引用発明1の「シート本体3」及び「両面接着テープ5」は、それぞれ本件補正発明の「検便シート」及び「接着材」に相当する。
(イ)本件補正発明の「リパルパブル」について、請求人は、意見書の「●理由4(新規性)についての主張」の「1.」において、「リパルパブル、すなわちRe Pulp able(再び パルプに なり得る)の材料を使用する条件であります。
『リパルパブル』と『水解性』と全く異なります。水解性は水に溶けるだけでパルプに戻るものではありません。」と主張する。
しかし、一般に、パルプで構成されている紙は、再生紙として利用可能であるように、適切な処理(機械的、化学的処理など)を行うことによりパルプに再分解可能であることを考慮すると、上記請求人の主張は、紙一般として、当然のことをいうにすぎない。また、「リパルパブルな接着材」について、技術常識からみて、パルプのみから接着材を構成することは不可能である。そのため、本件補正発明の「リパルパブル」が意味する技術事項は、その記載のみからは必ずしも明確であるとはいえない。
そこで、本願の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、「リパルパブル」に関連する記載として、次の記載がある(下線は当審で付加した。)。
「【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決する本発明は、便器の便座間に、所定幅であって、その両端に便を検便するための水溶性のシートを張り、その両端には便座間に該シートを貼り付けるための接着部を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
水溶性のシートを便座間に貼り付けておく。使用者が立ち上がっても、このシートは便座間に貼り付けられているので、自動的に噴射される水もシートの高さまでは届かない。従って、シートに便を落としておき、その状態で検便操作を行うことができる。検便作業が終了したら、シートをはがして便器内に落とし、その後強制的に水を流せばよい。シートはリパルパブル(水溶性)なので水に溶ける。このように、本発明によれば、自動噴射・自動排水方式のトイレであっても確実に検便をおこなうことができる検便具を提供することができる。
・・・
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。図3は本発明の検便時の使用状態を示す図である。図1,図2と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、1は便器、6は便座である。7は便器内の水、20はお尻である。10は本発明にかかる検便シートである。該検便シート10はリパルパブル(水溶性)な材料でできている。具体的には例えば、トイレットペーパーと同じ材質のものが用いられる。10A,10Bは検便シート10を便座6に貼り付ける接着部である。検便シート10と接着部10A,10Bの詳細については後述する。
・・・
【0018】
図5の(C)はライナーを剥がした状態を示している。ライナーを剥がすと、33と34とが分離する。接着層33が表れるので、この接着層33を便器の便座に貼り付けると、便座の間に検便シートが貼られることになる。この検便シートの上に便を落とす。本発明によれば、便座から検便のために立ち上がっても、洗浄水7は検便シート10までは届かない。この状態で検便し、検便が終了した検便シート10を剥がして便器の中に落として水で流す。
【0019】
図6は検便が終了した検便シートと便を落とす様子を示す図である。先ず検便が終了した検便シート10と便2を便器内に落とす。その後、レバー又はプッシュ釦を操作して水を流す。すると、渦巻状の水流が発生する。この水流に便2と検便シート10が流し込まれ、排水管25から外部に排出される。」
発明の詳細な説明の上記記載によれば、本件補正発明の「リパルパブル」とは、「検便シート」及び「接着材」について、水洗トイレに廃棄して流した場合に、水によりトイレットペーパーと同程度に分離し、配管等を詰まらせることがない程度に分解できることを意味するものと解される。
そうすると、引用発明1の「水解性のシート本体3」及び「水解性の両面接着テープ5」は、それぞれ本件補正発明の「リパルパブルとし」た「検便シート」及び「リパルパブルな接着材」に相当する。
(ウ)上記(ア)及び(イ)の対比を踏まえると、引用発明1の「水解性のシート本体3は、材料としてはトイレットペーパーに使用されている水解性の紙材を使用し、一枚の紙材で形成し、又は二枚の水解性の紙材を重ねた二重構成とし」、「水解性の両面接着テープ5が、シート本体3の両端縁部の片面に貼着してあ」る「シート本体3」は、本件補正発明の「検便シート全体の材料をリパルパブルとし、前記検便シートの両端にリパルパブルな接着材を設けた検便シート」に相当する。
(エ)本件補正発明は「便座貼付用検便シート」であるから、本件補正発明の「検便シートをトイレの噴射にかからないように便器に貼付け」は、「検便シートをトイレの噴射にかからないように便座に貼付け」を意味するものと解される。
よって、引用発明1の「シート本体3の両端縁部に設けた両面接着テープ5を便器Tの左右縁に接着すること」と、本件補正発明の「検便シートをトイレの噴射にかからないように便器に貼付け」ることは、「検便シートをトイレに貼付け」ることで共通する。
そして、引用発明1の「シート本体3の両端縁部に設けた両面接着テープ5を便器Tの左右縁に接着することにより便器T上に張設して使用する、採便用シートA」と、本件補正発明の「便座貼付用検便シート」とは、「トイレ貼付用検便シート」で共通する。
(オ)引用発明1の「中間部の幅が狭くとも糞便を受けるに足りる幅W(15~20cm程度)」は、糞便を受けてから糞便採取まで、糞便を載置しておくことができる幅を示すと認められる(【0022】~【0023】参照)から、本件補正発明の「便の乗る、例えば50mm程度の幅」と、「便の乗る程度の幅」で共通する。
(カ)引用発明1において、「糞便を支持した際にギャザー9が幅方向に伸びて中弛みを形成する」と、「シート本体3」に対して「糞便」が沈み込んだ状態になることは明らかである。
また、上記イで認定したとおり、本件補正発明の「排便した便を検便シートがたわんで便を包み込む形状」は、「検便シートの両端を便座に貼り付けた状態で排便した便が検便シートに載せられた場合に、便が存在する部分の検便シートが、他の部分の検便シートに対して局部的に沈み込んだ状態となること」を示すものである。
そうすると、引用発明1の「シート本体3は」、「長さ方向に沿って二本のギャザー9が形成されており、糞便を支持した際にギャザー9が幅方向に伸びて中弛みを形成するようになって」いることは、本件補正発明の「検便シート」は、「排便した便を検便シートがたわんで便を包み込む形状を有する事」に相当する。
(キ)そうすると、本件補正発明と引用発明1とは、
「検便シート全体の材料をリパルパブルとし、前記検便シートの両端にリパルパブルな接着材を設けた検便シートをトイレに貼付け、便の乗る程度の幅の検便シートで、排便した便を検便シートがたわんで便を包み込む形状を有するトイレ貼付用検便シート。」
の発明である点で一致し、次の3点において一応相違する。
(相違点1)
検便シートをトイレに貼付けることについて、本件補正発明においては、「トイレの噴射にかからないように」貼付けることが特定されているのに対し、引用発明1においては、そのような特定がされていない点。
(相違点2)
便の乗る程度の幅について、本件補正発明は、「例えば50mm」であるのに対し、引用発明1は、「15~20cm程度」である点。
(相違点3)
トイレ貼付用検便シートについて、本件補正発明は、「便座貼付用」であって、「便座に貼付け」て使用するのに対し、引用発明1は、「便器Tの左右縁に接着することにより便器T上に張設して使用する」ものである点。
オ 判断
(ア)上記各相違点について検討する。
a 相違点1について
上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項である「トイレの噴射にかからないように」貼付けることは、検便シートの使い方に係る事項であり、かつ、検便シートの形状、構造又は特性を特定できる事項ではない。
そうすると、上記相違点1は、検便シートとしての形状・構造的な差異に係るものではなく、実質的な相違点ではない。
なお、引用発明1の使用時において、検便中にトイレの噴射を行う必要性がない(採便用シートAから糞便を採取し、採便用シートAを便器内へ捨てた後、トイレの水洗の前に噴射を行えばよい。【0023】参照)ことから、トイレの噴射がかからないように便の採取を行うことができることは明らかである。
b 相違点2について
上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項である「例えば50mm」は、幅の単なる例示であって、幅が「50mm」程度以外のものを除外するものではないし、本願の明細書において、「50mm」が、他の寸法に比べて特に優れていることを示す記載もない。
そうすると、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。
加えて、本件補正発明が、検便シートの幅が50mm程度であることを特定するものであるとしても、検便シートの幅は、検便シートの強度等を勘案して、便を載せることができる範囲で選択し得る設計的事項であり、そこに進歩性は認められない。
c 相違点3について
一般に、便器の左右縁の間隔と便座全体の左右の幅は、同程度の寸法であることから、引用発明1は、便座に張設して使用することも可能であると認められる。
そうすると、上記相違点3は、検便シートとしての形状・構造的な差異に係るものではなく、実質的な相違点ではない。
(イ)したがって、本件補正発明と引用発明1との間に相違点はないから、本件補正発明は引用発明1である。
また、本件補正発明と引用発明1との間に相違点があるとしても、本件補正発明は引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
カ 請求人の「リパルパブルな接着材」に関する主張について
(ア)請求人は、意見書の「●理由4(新規性)についての主張」の「1.」において、
「本発明は【0010】、【0012】、【0015】、【0016】、【0017】、【0021】に記載しています通り、リパルパブル、すなわちRe Pulp able(再び パルプに なり得る)の材料を使用する条件であります。
「リパルパブル」と「水解性」と全く異なります。水解性は水に溶けるだけでパルプに戻るものではありません。
即ち、本発明の「Re Pulp able」である請求項1~4は、いずれの引用文献にも、この、開示も示唆も全くありません。
さらに、
本発明の接着材も、リパルパブル「Re Pulp able」です。」
と主張するので、この点について検討する。
(イ)技術常識からみて、パルプのみから接着材を構成することは不可能であることから、「本発明の接着材も、リパルパブル『Re Pulp able』です」という請求人の主張は、「接着材」がパルプに分解可能な材料を含んでいることを主張するものと解する余地があるので、以下検討する。
水解性の紙材を基材とした水解性の両面テープは、例えば、特開2003-265362号公報、特開平6-322355号公報、特開2000-109774号公報及び特開2000-25780号公報に例を見るように、本願出願前において周知である。
ここで、基材とした水解性の紙材は、パルプに分解可能であるといえる。
引用発明1は、使用後にトイレに廃棄しても配管詰まり等の問題が生じないようにするために水解性の両面接着テープ5を採用しているものであるところ、引用発明1において、特開2003-265362号公報に記載されるような流水で廃棄できる便座シートに採用された両面テープ、すなわち、トイレの配管詰まり等を生じさせることがない水解性の紙材を基材とした水解性の両面テープを、水解性の両面接着テープ5として採用することに困難性はない。
3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定、又は、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年12月16日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、同年6月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 当審で通知した拒絶の理由
令和元年10月9日付け拒絶理由通知(最後)で当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
(1) (明確性)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2) (実施可能要件)本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(3) (サポート要件)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(4) (新規性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(5) (進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(明確性)について
・請求項 1
<以下略>
●理由2(実施可能要件)について
・請求項 1、4
<以下略>
●理由3(サポート要件)について
・請求項 1
<以下略>
●理由4(新規性)について
・請求項 1
・引用文献 1
<以下略>
●理由5(進歩性)について
・請求項 1
・引用文献 1、2
<以下略>
<引用文献等一覧>
引用文献1:特開平7-270403号公報
引用文献2:実願平3-105344号(実開平5-47858号)のCD-ROM
引用文献3:特開2000-109774号公報
引用文献4:特開平10-60389号公報
引用文献5:特開2000-25780号公報
3 引用文献の記載事項
(1)引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)ウに記載したとおりである。
(2)本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2には、以下の記載がある(下線は当審で付加した。)。
(引2-ア)「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は検便用の大便を採取するための用具に関するものである。」
(引2-イ)「【0007】
【実施例】
以下、本考案の実施例を図面を参照して説明する。
【0008】
図1及び図2は本考案の最も基本的な構造を例示するものである。図において1は、適宜の厚さを持ち、かつ、紙その他の水に溶解できる性質を持った素材を用いて帯状に形成した採取用具本体であり、洋式便器2に取付けた便座3の外径のうち少なくとも短径を横切り、かつ、便器内において適宜の弛みを形成できる長さに形成している。
【0009】
11は採取用具本体1の中央部に構成した大便採取部である、この大便採取部11は下痢その他の軟便等によっても濫りに溶解したり、或いは大量の排便によっても濫りに切断することなくその強度を維持させるために、必要に応じてこの部分だけをその他の部分より肉厚に形成することもできる。
【0010】
12…12は大便採取部11に形成した補強具を兼用する便の移動防止用の突条であり、採取用具本体1と同質材を用いて紙縒り(こより)状に形成した線状体を図2に例示するように大便採取部11の中央部及び両側部に一体的に接着することによって一体化させている。
【0011】
4は帯状に形成した採取用具本体1の両端部に形成した接着部であり、表面を剥離紙によって保護された両面テープ等の接着テープを一体的に貼付した構成としている。
【0012】
前記接着部4は、使用時に便座3と接する面に形成するものである。」
(引2-ウ)「【0014】
【考案の効果】
本考案は上記のように構成したので、洋式便器を使用して検便用の大便を採取する場合には、採取用具本体1の中央部に形成した大便採取部11を便器内に適宜の長さに弛ませながら両端部に形成した接着部4,4を便座3に貼着すれば、便器内に滞留している大量の洗浄水に影響されることなく簡単、かつ正確に採取することができる。
【0015】
また便を採取した後の採取用具は、便器内に廃棄すると洗浄水によって溶解されながら処分をすることが可能であり、正確かつ衛生的に処理を行うことができる利点がある。」
(引2-エ)【図1】
「
」
(引2-オ)【図2】
「
」
(引2-カ)【図4】
「
」
(3)上記(引2-ア)ないし(引2-カ)の記載から、引用文献2には、
「 適宜の厚さを持ち、かつ、紙その他の水に溶解できる性質を持った素材を用いて帯状に形成した採取用具本体1であって、
洋式便器2に取付けた便座3の外径のうち少なくとも短径を横切り、かつ、便器内において適宜の弛みを形成できる長さに形成してあり、
中央部に構成した大便採取部11と、大便採取部11に形成した補強具を兼用する便の移動防止用の突条12であり、採取用具本体1と同質材を用いてこより状に形成した線状体を大便採取部11の中央部及び両側部に一体的に接着することによって一体化させている突条12を有する、
採取用具本体1と、
帯状に形成した採取用具本体1の両端部に形成した接着部4であり、両面テープである接着テープを一体的に貼付した構成としている接着部4、
を備え、
洋式便器を使用して検便用の大便を採取する場合には、採取用具本体1の中央部に形成した大便採取部11を便器内に適宜の長さに弛ませながら両端部に形成した接着部4,4を便座3に貼着すれば、便器内に滞留している大量の洗浄水に影響されることなく簡単、かつ正確に採取することができる、検便用の大便を採取するための採取用具。」
の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
4 当審の判断
(1)理由1(明確性)について
ア 請求項1の「自動噴射・自動排水方式のトイレで確実に検便を行う事が出来る(ウォッシュトイレの噴水がかからないなどの)構造、形状、取付る事を特徴とする」という記載が、「検便シート」について、具体的にどのような構造及び形状を特定するのかが不明である。
また、通常のウォッシュトイレでは、お尻洗浄の洗浄水の噴射は、使用者のボタン操作により開始されるものであるところ、「自動噴射」の「自動」がどのような技術事項を示すのかが不明である。
イ 請求項1の「テープ状」という記載が、「検便シート」について、具体的にどのような構造及び形状を特定するのかが不明である。
ウ よって、本願発明は明確でない。
エ 請求人は、意見書において、「『テープ状』とは、明細書及び図面に明記してある通り、例えば50mm程度の幅Wであり、便が十分乗せられ、便座を十分に跨る長さです。」と主張する。
しかしながら、明細書の段落【0014】に「図4は本発明の検便シートの構成例を示す図である。(C)は検便シート10の平面図である。そして、このシート10の幅Wは便2を安定に乗せられるように、十分な幅を持つ必要がある。この幅Wとしては、例えば50mm程度のものが用いられる。」と記載されているものの、当初明細書等全体の記載を見ても「テープ状」を定義する記載はない。そして、「例えば50mm程度の幅Wであり」との記載が、幅が「50mm程度」であることに限定する記載であるのか否かも判然としない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(2)理由2(実施可能要件)について
ア 請求項1には、「自動噴射・自動排水方式のトイレで確実に検便を行う事が出来る(ウォッシュトイレの噴水がかからないなどの)構造、形状、取付る事を特徴とする」と記載されている。これに関連する記載として、発明の詳細な説明には次の記載がある(下線は当審で付加した)。
「【0004】
便器には和式と洋式とがあり、和式はその上にしゃがんで用を足すものであり、洋式は便座(図示せず)を介して椅子に座る要領で座り、用を足すものである。図2は洋式トイレの使用状態を示す図である。(A)は便器に座った状態を示す。便器1に椅子に座る要領で座り、便2を出す。20はお尻、25は排水管である。用を足したら、レバーを操作するか押釦スイッチを押して水を出し水洗して便を流すようになっている。水を流すと、(B)に示すように、排水管25から便2が押し流される。
【0005】
ウォッシュトイレでは、用を足したら、お尻に噴射部を自動で位置決めし、自動で水又はお湯を噴射してお尻をきれいにするものである。この種のものは通常は水を流す時には、操作部(レバー又は押釦ボタン)を操作している。近年、この水洗工程も自動化し、便座から立ち上がると、自動で水が流れるものもある。
・・・
【0007】
従来の便器では、便を検便した後、水を流せばよい。
この便を検便する時、従来の方法では、先に説明したように、便器の内側に直に或いはトイレットペーパー等のシートを敷き、その上に便を乗せる。検便作業が終了したら、水を流せばよい。シートと便2は排水管の中に流し込まれる。
近年、前述したようにトイレの近代化がすすみ、お尻にお湯を噴射してお尻の汚れを自動的にとるウォッシュトイレが用いられるようになってきている。
【0008】
更には、トイレの自動化が進み、用足しが終わって便座から立ち上がると、そのことを検出して、自動的に水が流れるようになったものも使用されるようになってきた。この方式だと、まだ検便を終えていないのに水が流れてしまう。従って、便も流れてしまい、検便ができない。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、このような自動噴射・自動排水方式のトイレであっても確実に検便をおこなうことができる検便具を提供することを目的としている。
・・・
【0010】
水溶性のシートを便座間に貼り付けておく。使用者が立ち上がっても、このシートは便座間に貼り付けられているので、自動的に噴射される水もシートの高さまでは届かない。従って、シートに便を落としておき、その状態で検便操作を行うことができる。検便作業が終了したら、シートをはがして便器内に落とし、その後強制的に水を流せばよい。シートはリパルパブル(水溶性)なので水に溶ける。このように、本発明によれば、自動噴射・自動排水方式のトイレであっても確実に検便をおこなうことができる検便具を提供することができる。
・・・
【0013】
Lは排水時の水面、Hは便器1の底から水面Lまでの高さ、hは水面Lから便2までの高さである。排水時において、水面Lから便2まではhだけはなれているので、便2に水がかかることはない。従って、検便ができることになる。
この状態で検便作業を行う。便が検便できたら、シートを剥がして便器に落とし便器に付属の流しボタン(図示せず)を押して、便を流し排出させる。本発明によれば、自動噴射・自動排水方式のトイレであっても確実に検便を行うことができる検便具を提供することができる。
・・・
【0015】
10A,10Bは検便シート10の両側に設けられた接着部である。この接着部10A,10Bを断面で示すと、(A),(B)に示すようなものとなる。この貼り付け部10A,10Bは(A)に示すようにライナー10aとリパルパブル接着層10bから構成されている。使用の実際に当たっては、図4の(B)に示すように、ライナー10aを剥がす。
すると、リパルパブル接着層10bが表れるので、この接着層10bを便座6に貼り付ける。この結果、図4の(C)に示すように、便座間に検便シート10が貼られることになる。後は、このシート10の上に便が乗るようにする。すると、便2の重みでシート10がたわみ、図3に示すようなものとなる。この便2が乗った状態でも、その便の底が水7の水面Lよりも高い状態にあれば、つまり、hが所定の距離あれば便2が水で濡れることはない。なお、検便シート10は、接着部10A,10Bとそれ以外の部分を含む概念である。
・・・
【0018】
図5の(C)はライナーを剥がした状態を示している。ライナーを剥がすと、33と34とが分離する。接着層33が表れるので、この接着層33を便器の便座に貼り付けると、便座の間に検便シートが貼られることになる。この検便シートの上に便を落とす。本発明によれば、便座から検便のために立ち上がっても、洗浄水7は検便シート10までは届かない。この状態で検便し、検便が終了した検便シート10を剥がして便器の中に落として水で流す。」
イ 以上の記載から、検便シートを、便器内の水面からの高さが所定の高さとなるように便座間に貼り付けることにより、便の重みで便座シートがたるんだとしても、便器内の貯水により便が濡れることはなく、自動排水が作動したとしても検便シート上の便が流されることはなく、検便作業を実行できることが理解できる。
ウ しかしながら、お尻の洗浄を行うウォッシュトイレが自動的に噴射を行った場合に検便シートに水がかからないようにするための、検便シートの構造等に関する記載は見当たらないし、自明なこととも認められない。
エ 段落【0010】の「使用者が立ち上がっても、このシートは便座間に貼り付けられているので、自動的に噴射される水もシートの高さまでは届かない。」という記載について、まず、「噴射される水」によるお尻の洗浄は、通常のウォッシュトイレでは、便座に着座したまま行うことであって、「使用者が立ち上がっても、」との記載は、ウォッシュトイレとは相容れない記載であって、該記載が示そうとする技術事項が理解できない。
次に、便座に着座したまま、「噴射される水」によりお尻を洗浄する際、通常のウォッシュトイレでは、噴射手段がお尻の下に配置されることを考慮すると、該噴射手段は、お尻の下に設置された「検便シート」とお尻の間に配置されるものと解される(噴射手段が「検便シート」の下に配置されると、「検便シート」に洗浄水が直接噴射されることとなる。)ところ、お尻を洗浄した後に洗浄水の少なくとも一部が、「検便シート」上に落下することは明らかであって、「検便シート」に洗浄水がかからないようにするために、どのような構造、形状とするのかが不明である。(なお、噴射手段が、お尻の下に設置された「検便シート」とお尻の間から水平方向にずれた位置に配置されたとしても、「検便シート」がお尻の下に設置されている以上、「検便シート」に水がかかることは自明である。)
さらに、「自動的に噴射される水もシートの高さまでは届かない。」という記載がどのような事項を記載しようとしているのかが、全く理解できない。
そのため、発明の詳細な説明は、ウォッシュトイレの自動噴射が行われても水がかからない検便シートを、当業者が作成することができる程度に明確かつ十分に記載したものとは認められない。
オ また、上記(1)アで指摘したとおり、「自動噴射」の「自動」が示す技術事項が不明ではあるが、「噴射」を「自動」で行うことを、具体的にどのように実現するのかが不明である。
カ よって、発明の詳細な説明は、本願発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでない。
キ 請求人は、意見書において、「噴射方式のウオッシュトイレのお尻を洗浄する噴射手段の噴射口と検便シートの位置関係は、横方向に離れております。なぜなら、本発明の検便シートは便が乗る50mm程度の幅であり噴射口の真上また真下にはなりえません。これは図2の便2や、お尻20の、便器との相対位置と図にて明白です。」と主張し、次の参考図1を提示する。
「[参考図1]
」
請求項1では検便シートの幅が50mm程度であることは特定されていないが、請求人が説明するように検便シートの幅が50mm程度であり、ウォッシュトイレの噴射口と検便シートの位置関係によって、噴射された水が検便シートにかからない状況を実現し得るとしても、上記参考図1の検便シートの貼付け位置から明らかなように、噴射された水によりお尻を洗浄することができる通常の着座位置とは異なる位置(参考図1の下方)に着座して排便するように検便シートを便座に貼付けることにより達成されるものと認められる。すなわち、噴射された水が検便シートにかからないことは、検便シートの構造及び形状によって達成されることではなく、検便シートの使い方(貼付け位置)によって達成されるものである。
また、参考図1で示される位置に検便シートを貼付けたとしても、噴射された水が検便シートにかかることを確実に防止できるとも認められない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(3)理由3(サポート要件)について
ア 上記(2)で指摘したとおり、発明の詳細な説明には、お尻の洗浄を行うウォッシュトイレが自動的に噴射を行った場合に検便シートに水がかからないようにするための、検便シートの構造等に関する記載は見当たらないし、自明なこととも認められない。
イ 発明の詳細な説明には、検便シートを「テープ状」とすることは記載されていない。
ウ よって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(4)理由4(新規性)について
本願発明の「自動噴射」「方式のトイレで確実に検便を行う事が出来る(ウォッシュトイレの噴水がかからないなどの)構造、形状、取付る事」は、上記(1)で指摘したとおり不明確であるところ、ここでは、「ウォッシュトイレで確実に検便を行う事が出来る構造、形状、取付る事」を示すと認定する(下記(5)においても同様。)。
また、本願発明の「テープ状」も、上記(1)で指摘したとおり不明確であるところ、ここでは、「便座間に張設可能な長さを有する長方形状」を示すと認定する(下記(5)においても同様。)。
ア 本願発明と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「シート本体3」及び「両面接着テープ5」は、それぞれ本願発明の「検便シート」及び「接着材」に相当する。
(イ)請求項1の「リパルパブル(水溶性)」との記載から、本願発明の「リパルパブル」は、「水溶性」を意味する用語であると認められる。
そして、上記第2[理由]2(2)エ(イ)で検討した本件補正発明の「リパルパブル」と同様に、本願発明の「リパルパブル」は、水洗トイレに廃棄して流した場合に、水によりトイレットペーパーと同程度に分離し、配管等を詰まらせることがない程度に分解できることを意味するものと解される。
そうすると、引用発明1の「水解性のシート本体3」及び「水解性の両面接着テープ5」は、それぞれ本願発明の「リパルパブル(水溶性)とし」た「検便シート」及び「リパルパブルな接着材」に相当する。
(ウ)上記(ア)及び(イ)の対比を踏まえると、引用発明1の「水解性のシート本体3は、材料としてはトイレットペーパーに使用されている水解性の紙材を使用し、一枚の紙材で形成し、又は二枚の水解性の紙材を重ねた二重構成とし」、「水解性の両面接着テープ5が、シート本体3の両端縁部の片面に貼着してあ」る「シート本体3」は、本願発明の「検便シート全体の材料をリパルパブルとし、前記検便シートの両端にリパルパブルな接着材を設けた検便シート」に相当する。
(エ)引用発明1の「シート本体3の両端縁部に設けた両面接着テープ5を便器Tの左右縁に接着することにより便器T上に張設して使用する」ものであることと、本願発明の「便座貼付用」とは、「トイレ貼付用」の点で共通する。
(オ)引用発明1は「シート本体3の両端縁部に設けた両面接着テープ5を便器Tの左右縁に接着することにより便器T上に張設して使用する」ものであるところ、一般に、便器の左右縁の間隔と便座全体の左右の幅は同程度の寸法であることから、引用発明1の「採便用シートA」は、便座間に張設可能な長さを有しているといえる。
そうすると、引用発明1の「便器T上に張設して使用する」「概略長方形状であ」る「形状」は、本願発明の「テープ状」に相当する。
(カ)上記(エ)及び(オ)の対比を踏まえると、引用発明1の「形状は概略長方形状であり、シート本体3の両端縁部に設けた両面接着テープ5を便器Tの左右縁に接着することにより便器T上に張設して使用する、採便用シートA」と、本願発明の「便座貼付用テープ状検便シート」とは、「トイレ貼付用テープ状検便シート」で共通する。
(キ)そうすると、本願発明と引用発明1とは、
「 検便シート全体の材料をリパルパブル(水溶性)とし、且つ前記検便シートの両端にリパルパブルな接着材を設けた検便シートである、
トイレ貼付用テープ状検便シート」
の発明である点で一致し、次の2点において一応相違する。
(相違点4)
本願発明においては、「自動噴射・自動排水方式のトイレで確実に検便を行う事が出来る(ウォッシュトイレの噴水がかからないなどの)構造、形状、取付る事を特徴とする」ことが特定されているのに対し、引用発明1においては、そのような特定がされていない点。
(相違点5)
トイレ貼付用テープ状検便シートについて、本願発明は、「便座貼付用」であって、「便座に貼付け」て使用するのに対し、引用発明1は、「便器Tの左右縁に接着することにより便器T上に張設して使用する」ものである点。
イ 上記各相違点について検討する。
(ア)相違点4について
(引1-イ)の「特に、節水型(糞便落下箇所に溜り水トラップのある洗い落とし式)の洋式便器Tでの糞便の一次採取においては、便器内の傾斜面へのペーパーの敷設が困難であるとともに、敷設できたとしても、糞便の重力又は落下慣性力の傾斜面に沿う分力によって、糞便はペーパー上に乗った状態で溜り水トラップ内へ滑落し、糞便の二次採取が非常に困難となる点に解決すべき課題があった。」という記載、及び、(引1-ク)の【図5】の記載から、採便用シートAを便器T上に張設した状態で採便用シートAの糞便受け部1と便器Tとの間には十分な空間が確保されていることが見て取れることから、引用発明1は、自動排水方式のトイレで使用した場合でも、溜り水トラップや水洗の影響を受けずに便の採取が可能であると認められる。
また、引用発明1をウォッシュトイレで使用した場合でも、洗浄水の噴射が行われる前に便を採取することは可能であると認められる(上記(1)アで指摘したとおり、通常のウォッシュトイレでは、お尻洗浄の洗浄水の噴射は、使用者のボタン操作により開始されるものであるから、洗浄水の噴射を任意のタイミングで行うことができ、便の採取後にお尻洗浄を行うように操作することができることは自明である。)。
そうすると、上記相違点4は、実施的な相違点であるとは認められない。
(イ)相違点5について
相違点5は上記相違点3と同じであり、上記第2[理由]2(2)オ(ア)cで検討したとおり、実質的な相違点ではない。
ウ そうすると、本願発明と引用発明1との間に相違点はない。
よって、本願発明は引用発明1である。
(5)理由5(進歩性)について
ア 引用発明1を主引用発明とする場合
(ア)上記(4)ア(オ)の対比では、引用発明1の「便器T上に張設して使用する」「概略長方形状であ」る「形状」は、本願発明の「テープ状」に相当するとしたが、本願発明の「テープ状」が、請求人が意見書で主張する「例えば50mm程度の幅Wであり、便が十分乗せられ、便座を十分に跨る長さ」であることを特定する記載である場合、本願発明と引用発明1とは、上記相違点2において相違する。
しかしながら、上記第2[理由]2(2)オ(ア)bで検討したとおり、上記相違点2は実質的な相違点ではないか、実質的な相違点であるとしても設計的事項である。
(イ)また、上記相違点5が実質的な相違点ではないといえないとしても、引用発明2の「便座3に貼着する」点を参考に、引用発明1を、シート本体3の両端縁部に設けた両面接着テープ5を便座に接着することにより便座に張設して使用するように構成することは、当業者が容易になし得ることである。
(ウ)そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用文献1及び2の記載から当業者が予測し得る程度のものである。
(エ)よって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 引用発明2を主引用発明とする場合
(ア)本願発明と引用発明2とを対比する。
a 引用発明2の「採取用具本体1」及び「両面テープである接着テープ」は、それぞれ本願発明の「検便シート」及び「接着材」に相当する。
b 上記(4)ア(イ)の対比における本願発明の「リパルパブル」についての検討を踏まえると、引用発明2の「紙その他の水に溶解できる性質を持った素材を用いて帯状に形成した採取用具本体1」は、本願発明の「リパルパブル(水溶性)とし」た「検便シート」に相当する。
c 上記a及びbの対比を踏まえると、引用発明2の「紙その他の水に溶解できる性質を持った素材を用いて帯状に形成した採取用具本体1であって」、「大便採取部11に形成した補強具を兼用する便の移動防止用の突条12であり、採取用具本体1と同質材を用いてこより状に形成した線状体を大便採取部11の中央部及び両側部に一体的に接着することによって一体化させている突条12を有」し、「両面テープである接着テープを一体的に貼付した構成としている接着部4」を「両端部に形成した」「採取用具本体1」と、本願発明の「検便シート全体の材料をリパルパブル(水溶性)とし、且つ前記検便シートの両端にリパルパブルな接着材を設けた検便シート」とは、「検便シート全体の材料をリパルパブル(水溶性)とし、且つ前記検便シートの両端に接着材を設けた検便シート」で共通する。
d 引用発明2の「洋式便器を使用して検便用の大便を採取する場合には、採取用具本体1の中央部に形成した大便採取部11を便器内に適宜の長さに弛ませながら両端部に形成した接着部4,4を便座3に貼着す」るものであることは、本願発明の「便座貼付用」に相当する。
e 引用発明2の「洋式便器2に取付けた便座3の外径のうち少なくとも短径を横切り、かつ、便器内において適宜の弛みを形成できる長さに形成してあ」る「帯状」は、本願発明1の「テープ状」に相当する。
f 上記d及びeの対比を踏まえると、引用発明2の「洋式便器2に取付けた便座3の外径のうち少なくとも短径を横切り、かつ、便器内において適宜の弛みを形成できる長さに形成してあり」、「帯状に形成した採取用具本体1」「を備え」、「洋式便器を使用して検便用の大便を採取する場合には、採取用具本体1の中央部に形成した大便採取部11を便器内に適宜の長さに弛ませながら両端部に形成した接着部4,4を便座3に貼着す」る「検便用の大便を採取するための採取用具」は、本願発明の「便座貼付用テープ状検便シート」に相当する。
(イ)そうすると、本願発明と引用発明2とは、
「 検便シートの材料をリパルパブル(水溶性)とし、且つ前記検便シートの両端に接着材を設けた検便シートである、
便座貼付用テープ状検便シート」
の発明である点で一致し、次の2点において相違する。
(相違点6)
「接着材」が、本願発明は、「リパルパブル」であるのに対し、引用発明2は、「採取用具本体1」は「水に溶解できる性質を持った素材を用いて」「形成し」てあるものの、「両面テープである接着テープ」が「水に溶解できる性質を持った素材を用いて」「形成し」てあることは特定されていない点。
(相違点7)
本願発明においては、「自動噴射・自動排水方式のトイレで確実に検便を行う事が出来る(ウォッシュトイレの噴水がかからないなどの)構造、形状、取付る事を特徴とする」ことが特定されているのに対し、引用発明2においては、「便器内に滞留している大量の洗浄水に影響されることなく簡単、かつ正確に採取することができる」ことが特定されている点。
(ウ)上記各相違点について検討する。
a 相違点6について
上記(4)ア(イ)の対比において検討したように、本願発明の「リパルパブル」とは、水洗トイレに廃棄して流した場合に、水によりトイレットペーパーと同程度に分離し、配管等を詰まらせることがない程度に分解できることを意味するものと解される。
(引2-ウ)の「また便を採取した後の採取用具は、便器内に廃棄すると洗浄水によって溶解されながら処分をすることが可能であり」(段落【0015】)との記載によれば、引用発明2は、使用後に便器内に廃棄することを想定したものであり、配管詰まりを防止するために「水に溶解できる性質を持った素材を用いて」いることは明らかである。
そして、配管詰まりを防止するためには、採取用具全体が水に溶解できる性質を持った素材を用いて形成されていることが好ましいことも明らかである。
そうすると、引用発明1の「水解性の両面接着テープ5」の点を参考に、引用発明2の「両面テープである接着テープ」を水洗トイレに廃棄して流せるような水解性のものとすることは、当業者が容易になし得ることである。
b 相違点7について
引用発明2は、「便器内に滞留している大量の洗浄水に影響されることなく簡単、かつ正確に採取することができる」ものであるところから、自動排水方式のトイレで使用した場合でも、水洗の影響を受けずに便の採取が可能であると認められる。
また、引用発明2をウォッシュトイレで使用した場合でも、洗浄水の噴射が行われる前に便を採取することは可能であると認められる(上記(1)アで指摘したとおり、通常のウォッシュトイレでは、お尻洗浄の洗浄水の噴射は、使用者のボタン操作により開始されるものであるから、洗浄水の噴射を任意のタイミングで行うことができ、便の採取後にお尻洗浄を行うように操作することができることは自明である。)。
そうすると、上記相違点7は、実施的な相違点であるとは認められない。
(エ)そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用文献1及び2の記載から当業者が予測し得る程度のものである。
(オ)よって、本願発明は、引用発明2及び引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第36条第6項第1号及び第2号並びに同条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、同法第29条第1項及び第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-007860