特許拒絶査定不服審判
2024-009413
ショベル用のプログラム
- 審判番号
- 2024-009413
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-195248外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年06月05日
- 審決日
- 2025年06月24日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .57 -Z (E02F) / P18 .575-Z (E02F) / P18 .121-Z (E02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第17条の2第6項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-195248「ショベル用のプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和5年2月2日出願公開、特開2023-16952〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)7月9日(優先権主張 2012年(平成24年)7月19日。以下「優先日」という。)を国際出願日とする日本語特許出願である特願2014-525793号の一部を、平成29年2月2日に新たな特許出願とした特願2017-17986号の一部を、令和2年5月11日に新たな特許出願とした特願2020-83499号の一部を、令和4年12月6日に新たに出願したものであって、令和5年5月29日付けで拒絶理由が通知され、同年7月26日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月28日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年12月11日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和6年2月29日付け(送達日:同年3月5日)で補正の却下の決定及び拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされた。
これに対し、同年6月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和6年6月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年6月5日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和5年7月26日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1ないし8を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし8へと補正するものである(本項における下線は、補正箇所を示すために当審において付した。)。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
多機能型携帯情報端末上で動作するプログラムであって、
ショベルの設定状態を示す情報、及び、ショベルの設定状態に関連する図形を前記多機能型携帯情報端末の表示部に同時に表示させるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムであり、
ショベルの設定状態を示す情報は、現在の作業モードを表す記号であり、
ショベルの設定状態に関連する図形は、現在選択されている走行モードを表す図形、又は、現在装着されているアタッチメントを表す図形である、プログラム。
【請求項2】
前記作業モードは、作業量を優先したい場合に選択される第1モードと、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される第2モードと、燃費を優先させながら低騒音でショベルを稼働させたい場合に選択される第3モードとを含み、
前記第1モード、前記第2モード、及び前記第3モードのそれぞれは、対応する記号で表される、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記走行モードは、可変容量ポンプを用いた走行油圧モータの設定状態を表し、低速モード及び高速モードを有する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
ショベルの設定状態を示す情報は、現在装着されているアタッチメントの出力の大きさを示す数字である、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
ショベルの設定状態を示す情報が表示される第1領域、ショベルの設定状態に関連する図形が表示される第2領域、及び、ショベルの設定状態を示す情報とショベルの設定状態に関連する図形との組み合わせが表示される第3領域に加え、更に、ショベルに取り付けられたセンサで検出した情報が表示される第4領域を同時に含む画面を前記表示部に表示させるステップを前記コンピュータに実行させ、
前記センサで検出した情報は、排ガスフィルタの状態、エンジン作動時間、平均燃費、冷却水温、燃料残量、又は作動油温である、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記多機能型携帯情報端末を通じて入力された情報に応じてショベルの設定状態を切り換えるステップを前記コンピュータに実行させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
ショベルの設定状態を示す情報が表示される第1領域、ショベルの設定状態に関連する図形が表示される第2領域、及び、ショベルの設定状態を示す情報とショベルの設定状態に関連する図形との組み合わせが表示される第3領域を同時に含む画面を前記表示部に表示させるステップを前記コンピュータに実行させる、
請求項4に記載のプログラム。
【請求項8】
前記多機能型携帯情報端末の音声入力機能を利用して、ショベルに取り付けられたカメラが撮影した画像を表示させるステップを前記コンピュータに実行させる、
請求項1に記載のプログラム。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
音声入力機能、撮像機能、振動計測機能、方位判定機能、GPS機能、及び地図表示機能を有する多機能型携帯情報端末上で動作する、ネットワークを通じて前記多機能型携帯情報端末にダウンロードされるプログラムであって、
前記多機能型携帯情報端末は、運転席の近傍に設けられた保持部に配置され、ショベルの電源部から電力の供給を受け、前記運転席の近傍において、前記多機能型携帯情報端末とは別に、運転者が操縦レバーから手を離さずに操作できるように前記操縦レバーに設けられたスイッチが操作されたときに特定の機能が使用できるように構成され、
前記多機能型携帯情報端末が前記保持部に配置されたときに、ショベルの設定状態を示す情報、及び、ショベルの設定状態に関連する図形を同時に含む画面を、切り替え可能に表示される複数の画面の一つとして、前記多機能型携帯情報端末の表示部に表示させるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムであり、
前記複数の画面は、前記スイッチが操作されて前記特定の機能が使用されたときに表示される画面と、前記GPS機能及び前記地図表示機能に関する画面とを含み、
ショベルの設定状態を示す情報は、現在の作業モードを表す記号であり、
ショベルの設定状態に関連する図形は、現在選択されている走行モードを表す図形、又は、現在装着されているアタッチメントを表す図形である、プログラム。
【請求項2】
前記作業モードは、作業量を優先したい場合に選択される第1モードと、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される第2モードと、燃費を優先させながら低騒音でショベルを稼働させたい場合に選択される第3モードとを含み、
前記第1モード、前記第2モード、及び前記第3モードのそれぞれは、対応する記号で表される、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記走行モードは、可変容量ポンプを用いた走行油圧モータの設定状態を表し、低速モード及び高速モードを有する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
ショベルの設定状態を示す情報は、現在装着されているアタッチメントの出力の大きさを示す数字である、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
ショベルの設定状態を示す情報が表示される第1領域、ショベルの設定状態に関連する図形が表示される第2領域、及び、ショベルの設定状態を示す情報とショベルの設定状態に関連する図形との組み合わせが表示される第3領域に加え、更に、ショベルに取り付けられたセンサで検出した情報が表示される第4領域を同時に含む画面を前記表示部に表示させるステップを前記コンピュータに実行させ、
前記センサで検出した情報は、排ガスフィルタの状態、エンジン作動時間、平均燃費、冷却水温、燃料残量、又は作動油温である、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記多機能型携帯情報端末を通じて入力された情報に応じてショベルの設定状態を切り換えるステップを前記コンピュータに実行させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
ショベルの設定状態を示す情報が表示される第1領域、ショベルの設定状態に関連する図形が表示される第2領域、及び、ショベルの設定状態を示す情報とショベルの設定状態に関連する図形との組み合わせが表示される第3領域を同時に含む画面を前記表示部に表示させるステップを前記コンピュータに実行させる、
請求項4に記載のプログラム。
【請求項8】
前記多機能型携帯情報端末の音声入力機能を利用して、ショベルに取り付けられたカメラが撮影した画像を表示させるステップを前記コンピュータに実行させる、
請求項1に記載のプログラム。」
(3)補正事項
上記(1)及び(2)によれば、本件補正は、
ア 本件補正前の請求項1の「プログラム」の発明特定事項である「多機能型携帯情報端末」について、「音声入力機能、撮像機能、振動計測機能、方位判定機能、GPS機能、及び地図表示機能を有」して、「ショベルの電源部から電力の供給を受け」るものに限定する補正(以下「補正事項1」という。)、
イ 本件補正前の請求項1の「プログラム」を「ネットワークを通じて前記多機能型携帯情報端末にダウンロードされる」ものに限定する補正(以下「補正事項2」という。)、
ウ 本件補正前の請求項1に、「運転席の近傍に設けられた保持部」を追加して、「多機能型携帯情報端末」が当該「保持部に配置され」るものとする補正(以下「補正事項3」という。)
エ 本件補正前の請求項1に、「前記多機能型携帯情報端末とは別に」、「操縦レバー」及び「運転者が操縦レバーから手を離さずに操作できるように前記操縦レバーに設けられたスイッチ」を追加して、当該「スイッチが操作されたときに」「多機能型携帯情報端末」の「特定の機能が使用できるように構成され」るものとする補正(以下「補正事項4」という。)、
オ 本件補正前の請求項1の「プログラム」の発明特定事項である「多機能型携帯情報端末の表示部の表示部に表示させるステップ」において、「ショベルの設定状態を示す情報、及び、ショベルの設定状態に関連する図形」の表示形態を、「同時に含む画面を、切り替え可能に表示される複数の画面の一つとして」表示させ、「前記複数の画面は、前記スイッチが操作されて前記特定の機能が使用されたときに表示される画面と、前記GPS機能及び前記地図表示機能に関する画面とを含」むものに限定する補正(以下「補正事項5」という。)、
カ 本件補正前の請求項1の「プログラム」の発明特定事項である「多機能型携帯情報端末の表示部の表示部に表示させるステップ」において、「ショベルの設定状態を示す情報、及び、ショベルの設定状態に関連する図形」を「前記多機能型携帯情報端末の表示部」に表示するタイミングを「前記多機能型携帯情報端末が前記保持部に配置されたとき」に限定する補正(以下「補正事項6」という。)、
を含むものである。
2 補正の適否
(1)補正の目的
ア 特許法第17条の2第5項の規定によれば、拒絶査定不服審判の請求と同時にする特許請求の範囲の補正は、請求項の削除(第1号)、特許請求の範囲の減縮(第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)(第2号)、誤記の訂正(第3号)、明りょうでない記載の釈明(第4号)のいずれかを目的とするものに限るとされている。
イ 事案に鑑みて、補正事項1ないし補正事項6のうち、補正事項3及び補正事項4について検討する。
ウ 上記1(3)ウの補正事項3に係る「運転席の近傍に設けられた保持部」は、本件補正前請求項1の「プログラム」発明の発明特定事項である、「多機能型携帯情報端末」、「多機能型携帯情報端末の表示部」、「コンピュータ」、並びに表示部に表示される「ショベルの設定状態を示す情報」及び各「図形」とは別に付加された事項であって、補正前の請求項1のいずれかの発明特定事項を、概念的により下位の発明特定事項とする補正ではない。
エ 上記1(3)エの補正事項4に係る「運転者が操縦レバーから手を離さずに操作できるように前記操縦レバーに設けられたスイッチ」は、本件補正前請求項1の「プログラム」発明の発明特定事項である、「多機能型携帯情報端末」、「多機能型携帯情報端末の表示部」、「コンピュータ」、並びに表示部に表示される「ショベルの設定状態を示す情報」及び各「図形」とは別に付加された事項であって、補正前の請求項1のいずれかの発明特定事項を、概念的により下位の発明特定事項とする補正ではない。
オ さらに、補正事項3及び補正事項4は、プログラムの機能と何ら関連がない、プログラムとは別の構成を付加する補正であって、本件補正前の請求項1の「プログラム」発明を何ら限定するものではない。
カ 上記ウないしオより、補正事項3及び補正事項4は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当しない。
さらに、補正事項3及び補正事項4は、請求項の削除(第1号)、誤記の訂正(第3号)、明りょうでない記載の釈明(第4号)のいずれを目的とする補正にも該当しない。
したがって、請求項1に係る本件補正は、全体として特許法第17条の2第5項第1号ないし第4号のいずれを目的とする補正にも該当しない。
(2)独立特許要件
ア 上記(1)のとおり、請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第5項に規定するいずれの目的にも該当しない補正を含むが、念のため、本件補正が同条同項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)に該当するものとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
イ 上記1(2)のとおり、本件補正後の請求項1に係る「プログラム」発明は、次の発明特定事項を含んで特定されている(下線は当審において付した。以下同じ。)。
「・・・多機能型携帯情報端末上で動作する・・・プログラムであって、・・・前記多機能型携帯情報端末は、運転席の近傍に設けられた保持部に配置され、ショベルの電源部から電力の供給を受け、前記運転席の近傍において、前記多機能型携帯情報端末とは別に、運転者が操縦レバーから手を離さずに操作できるように前記操縦レバーに設けられたスイッチが操作されたときに特定の機能が使用できるように構成され」ること。
ウ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には、上記イの発明特定事項に関連して次の記載がある。
「【0024】
ここで、多機能型携帯情報端末の表示装置を使用していると、例えば2~3時間程度の使用で電池が無くなってしまう。ショベルでの作業時間がこの電池消費時間より長いと、作業の途中で多機能型携帯情報端末が使用できなくなってしまう。そこで、本実施形態では、多機能型携帯情報端末を取り付け部に取り付けた状態で、ショベルの電源部から多機能型携帯情報端末に電力を供給できるようにしている。
【0025】
具体的には、例えば上述のようにマイクロUSBコネクタを用いてデータ通信を行なう場合には、このマイクロUSBコネクタを介して電源供給を行なうことができる。多機能型携帯情報端末が電源供給専用のコネクタを有している場合は、そのようなコネクタに接続できるコネクタを取り付け部に設けておけばよい。
【0026】
以上のように、ショベルのキャビン10内の運転席の近傍に多機能型携帯情報端末の取り付部を設けておくことで、多機能型携帯情報端末を取り付け部に取り付けるだけで、多機能型携帯情報端末をショベルの入力表示装置として使用することができる。」
「【0060】
本実施形態では、運転者が多機能型携帯情報端末40の音声入力機能を使用したいときに操作するスイッチ42が、例えば、操作レバー26Aに設けられる。スイッチ42を運転者が操作すると、信号がコントローラ30に送られる。コントローラ30はこの信号に基づいて多機能型携帯情報端末40に制御信号を送り、多機能型携帯情報端末40の音声入力機能をONとする。
【0061】
このように、運転者は操縦レバーから手を離さずにスイッチ42を容易に操作することができ、多機能型携帯情報端末40の音声入力機能を利用して、指令をショベルの制御装置に入力することができる。」
エ 当初明細書等には、上記ウのとおり、「マイクロUSBコネクタを介して電源供給を行なう」こと、「運転席の近傍に多機能型携帯情報端末の取り付部を設けておくこと」、「スイッチ42を運転者が操作すると、信号がコントローラ30に送られる。コントローラ30はこの信号に基づいて多機能型携帯情報端末40に制御信号を送り、多機能型携帯情報端末40の音声入力機能をONとする」ことが記載されているが、これらの事項と「プログラム」の機能との技術的関連についてなんら記載がないし、技術常識を参酌しても当該事項と請求項1の「プログラム」の機能との間に技術的関連が認められない。
オ すると、当初明細書等の記載を参酌しても、上記イに挙げた本件補正後の請求項1の発明特定事項の「前記多機能型携帯情報端末は、運転席の近傍に設けられた保持部に配置され」、「ショベルの電源部から電力の供給を受け」及び「前記多機能型携帯情報端末とは別に、運転者が操縦レバーから手を離さずに操作できるように前記操縦レバーに設けられたスイッチが操作されたときに特定の機能が使用できるように構成され」る、との事項によって、本件補正後の請求項1の「プログラム」がどのように特定されているのかを明確に把握できない結果、発明が不明確である。
したがって、本件補正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。仮に、請求項1に係る補正が限定的減縮にあたるとしても、同法第36条第2項の規定に違反する。したがって、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和6年6月5日にされた手続補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年7月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含む。
1.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1及び引用文献3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開2003-85267号公報
引用文献3:特開2005-138751号公報
3 引用文献1
(1)引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に発行された特開2003-85267号公報(平成15年3月20日出願公開。)には、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報携帯端末を備えた作業機械の機体管理システムに関する。」
「【0018】図1は、油圧ショベルなどの作業機械の機体11に設けられた油圧回路および電気回路の一部を示し、これらの回路は、機体コントローラ12により制御される。この機体コントローラ12は、中央処理装置(すなわちCPU)、メモリなどを備えている。」
「【0020】機体コントローラ12は通信可能であり、この機体コントローラ12に対向させて、この機体コントローラ12と通信可能のコンパクトな情報携帯端末(すなわちパーソナル・ディジタル・アシスタンツ、以下この情報携帯端末を「PDA」という)14が設置される。
【0021】このPDA14は、識別コード照合手段、運行管理データ入手手段、機体稼働情報モニタリング表示装置として、オペレータの胸ポケットなどに入れたまま作業機械の運転室としてのキャブ内に持ち込まれる形態で設置され、あるいはキャブ内でオペレータの視界を妨げない位置に装着される。」
「【0023】このPDA14は、機体コントローラ12と通信することにより、識別コードの照合による盗難防止機能、運行管理データを入手する運行管理機能、機体状態をモニタリング表示する機体モニタリング表示機能を備えている。
【0024】また、このPDA14は、作業機械にアタッチメントとして脱着されるツール16を識別するツール識別機能も備えている。」
「【0032】図2に示されるように、PDA14は、本体ケース41内に、演算処理をする中央処理装置(いわゆるCPU)、制御プログラムおよびデータを記憶する各種メモリ、通信用インタフェース、電源部、外部機器とのインタフェースなどが内蔵され、また、本体ケース41の正面に、表示部42および操作パネル部43が設けられている。
【0033】このPDA14の表示部42は、液晶画面を使用し、ドット方式ディスプレイにより文字、絵記号などで様々な情報を表示することができ、この表示部42および操作パネル部43の各種ボタンを操作して、運行管理情報、機体モニタリング情報などの種々の情報を適切に表示できる。
【0034】例えば、フィルタおよびオイルの使用時間、あるいはフィルタやオイルの交換時期警告画面が表示され、また、エンジン回転速度、ポンプ圧などの変動状況がリアルタイムで表示されるとともに、エンジン31、ポンプ32,35および走行モータなどの油圧アクチュエータ39の稼働時間が表示され、また、エンジンオイル、油圧回路用作動油、冷却水量が規定値以下の場合は、その機体状況が警告表示され、また、油水レベルチェック後の、時刻、選択された油圧設定および走行速度などが表示される。」
「【0035】図3に示されるように、作業機械としての油圧ショベルの機体11は、下部走行体51に対し上部旋回体52が旋回自在に設けられ、この上部旋回52にフロント作業機53とともに運転室としてのキャブ54が設置されており、このキャブ54の内部において、PDA14は、必ずしも機体11に固定する必要はなく、例えば、オペレータ55の作業服のポケットの中に入れたままでも良く、このようにすると、PDA14を着脱する手間がかからないとともに、PDA14の表示を見たいときは、ポケットから取出して、手元で容易に見ることができる。
【0036】なお、PDA14は、キャブ54内でオペレータ55の視界を妨げない場所に着脱自在に設置しても良い。」
「【0044】また、ツール16の識別手段(バーコード)17を読取り記憶したPDA14を、オペレータ55の作業服のポケットに入れたままキャブ54内に持ち込み、あるいは運転席の近傍の所定位置に装着することで、このPDA14に記憶されているツール情報を、非接触型の通信媒体15で機体コントローラ12に入力すると、機体コントローラ12のツール識別機能により、ツール種類を識別して機体コントローラ12に予め設定されたツール毎の対応制御モードの中から最適なものを選択し、フロント作業機53に装着されたツール16に適合するツール制御に切替わり、例えば油圧回路のポンプ流量などをツール16の種類に応じた最適なものに制御する。」
「【0063】例えば、ツール16の交換時は、PDA14からのツール情報により、機体コントローラ12は、予め設定された複数種類のツール16に対応する複数のポンプ制御特性などの中から最適なものを1つを選択し、この選択されたポンプ制御特性に基づき油圧回路の流量特性などを制御する。」
「【0077】以上のように、インテリジェントなPDA14を用いることで、盗難防止機能、ツール識別機能、運行管理機能、機体モニタリング表示機能の全ての機能を統合してできるので、その設置に要する手間や費用を軽減できるとともに、取扱も分散することなく1台のPDA14にて容易にできる。」
「【図1】
[図:0001426550000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001426550000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001426550000003.jpg]
」
(2)引用文献1から把握できる事項
ア 上記(1)【0032】に記載されているとおり、「PDA14」は、本体ケース41内に演算処理をする中央処理装置、「制御プログラム」およびデータを記憶する「各種メモリ」が内蔵され、本体ケース41の正面に「表示部42」が設けられている。そして、メモリに記憶されたプログラムがPDA等のコンピュータが備える装置を制御することが技術常識であることを踏まえると、引用文献1の記載から「PDAが内蔵する各種メモリに記憶されて表示部を制御する制御プログラム」を把握できる。
イ 上記(1)【0044】より、PDAからのツール情報を機体コントローラに入力すると、機体コントローラのツール識別機能により、機体コントローラに予め設定されたツール毎の対応制御モードの中から最適なものを選択して、装着されたツールに適合するツール制御に切り替わるものである。
また、上記(1)【0063】より、ツールが交換されると、PDAからのツール情報により機体コントローラは予め設定された複数種類のツールに対応する複数のポンプ制御特性の中から最適なものを1つ選択して、この選択されたポンプ制御特性に基づき油圧回路の流量特性を制御するが、上記(1)【0044】の記載を踏まえると、ツールに適合に適合した、ツール毎の対応制御モードの選択及びツール制御並びに油圧回路の流量特性の制御をしていることが認められる。
すると、上記(1)【0044】及び【0063】より「機体コントローラは、PDAからのツール情報により、予め設定されたツール毎の対応制御モードの中から最適なものを選択し、装着されたツールに適合するツール制御に切り替わり、複数のポンプ制御特性などの中からツールの種類に応じた最適なものを選択し、この選択されたポンプ制御特性に基づき油圧回路の流量特性などを制御」するものであることを把握できる。
(3)引用発明
上記(1)及び(2)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
油圧ショベルなどの作業機械の機体管理システムにおいて((1)【0001】、【0018】)、
作業機械の運転室としてのキャブ内に、機体稼働情報モニタリング表示装置としてPDAが装着されており((1)【0020】~【0021】)、
PDAは、作業機械にアタッチメントとして脱着されるツールを識別するツール識別機能を備えており((1)【0024】)、
PDAの表示部は、フィルタおよびオイルの使用時間、あるいはフィルタやオイルの交換時期警告画面、エンジン回転速度、ポンプ圧などの変動状況をリアルタイムで表示するとともに、エンジン31、ポンプ32,35および走行モータなどの油圧アクチュエータ39の稼働時間を表示し、また、エンジンオイル、油圧回路用作動油、冷却水量が規定値以下の場合は、その機体状況を警告表示し、また、油水レベルチェック後の、時刻、選択された油圧設定および走行速度などを表示し((1)【0033】~【0034】)、
機体コントローラは、PDAからのツール情報により、予め設定されたツール毎の対応制御モードの中から最適なものを選択し、装着されたツールに適合するツール制御に切り替わり、複数のポンプ制御特性などの中からツールの種類に応じた最適なものを選択し、この選択されたポンプ制御特性に基づき油圧回路の流量特性などを制御する((2)イ)、
機体管理システム、並びに、機体管理システムに設置されるPDA、及びPDAが内蔵する各種メモリに記憶されて表示部を制御する制御プログラム((1)【0001】、【0020】、(2)ア)。
4 引用文献3
(1)引用文献3記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に発行された特開2005-138751号公報(平成17年6月2日出願公開。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械の運転室に設置されて、オペレータに各種の情報を認識させるための建設機械の表示装置に関するものである。」
「【0023】
まず、図3に示した表示態様は、車両状況情報として表示される車両状況表示画像が例示されている。図中に具体的に示されている表示情報としては、アイコン表示として、図面の左側から順に、盗難防止機構が作動しているか否かの表示A1,フロント作業機3を構成するアーム3bの先端にバケット3cが装着されているか、若しくは他のフロントアタッチメントが装着されているかの表示A2、作動負荷の状態表示A3、走行速度表示A4,オートアイドルか否かの表示A5、照明灯の点灯の有無に関する表示A6、ワイパの作動の有無表示A7があり、またこれらと並んで稼働時間表示部Bがあり、稼働時間が数値で表示される。さらに、その下段、つまりモニタ13の中央部分の大きな領域には、エンジン冷却水温表示C1、作動油温表示C2及び燃料残量表示C3が並べてキャラクタ表示がなされる。さらに、最下段にはバッテリ残量と、エンジンオイル油圧との表示部D1,D2があるが、バッテリの充電量及びエンジンオイルの油圧が一定レベルを保っているときと、バッテリの充電量及びエンジンオイルの油圧が所定レベルより低下すると、濃淡の変化、色調の変化等、表示状態が変化する。」
「【0034】
基本的には、建設機械としての油圧ショベルの作動状態が、作業モードで作動しているときに優先的に表示される画像と、アイドリングモードとなっているときに優先的に表示される画像とが優先画像設定部32に設定される。ここで、作業モードは、油圧ショベルを構成する各部を作動させる状態、つまりフロント作業機3 が駆動されたり、下部走行体1 が走行したり、上部旋回体2 が旋回する等といった動作が行われている状態であり、またアイドリング状態は休憩、待機等のために各部の作動を停止している状態である。この2つの状態は、エンジンの回転数や、ゲートロックレバーの位置等により検出できる。即ち、エンジンの回転数が一定レベル以下となされているか、ゲートロックレバーが上げられてロック状態となっていると、油圧ショベルはアイドリングモードである。反対に、エンジンが高回転状態となっているか、またはゲートロックレバーが下げられて、アンロック状態となっていると、油圧ショベルは作業モードである。従って、エンジンの回転数またはゲートロックレバーの位置、さらにはこれら以外により検出される作業モードとアイドリングモードとにおいて、それぞれ優先的に表示される画像を優先画像設定部32に設定できるようになっている。」
「【0046】
以上のように、作業の状況に応じて、最も望ましい表示内容が単一のモニタ13に表示されることになるので、機械を安全に、しかも効率的に作動させることができる。そして、オペレータがマニュアル操作で行わなければならない画像の切り換えの頻度を著しく減少させることができるので、この意味からも効率的で安全な作業が確保され、オペレータにとって負担が増大することはない。」
「【図3】
[図:0001426550000004.jpg]
」
(2)引用文献3技術事項
上記(1)から、引用文献3には、次の技術事項(以下「引用文献3技術事項」という。)が記載されていると認められる。
車両状況情報として表示される車両状況表示画像の表示情報として、左から順に、フロント作業機3を構成するアーム3bの先端にバケット3cが装着されているか、若しくは他のフロントアタッチメントが装着されているかの表示A2、作動負荷の状態表示A3、走行速度表示A4、オートアイドルか否かの表示A5がアイコン表示されており((1)【0023】)、
油圧ショベル等の建設機械の運転室に設置されて、オペレータに各種の情報を認識させるための建設機械の表示装置((1)【0001】)。
5 対比
(1)本願発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「PDA」、「油圧ショベル」、「表示部」及び「アタッチメントとして脱着されるツール」は、本願発明の「多機能型携帯情報端末」、「ショベル」、「表示部」及び「アタッチメント」に相当する。
イ 本願発明の「コンビュータ」は、「表示部に・・・表示させるステップを」実行するものである。この点に関連して、本願明細書の発明の詳細な説明に、
「【0057】
その後、多機能型携帯情報端末40は、メイン画面41を表示し、コントローラ30から受信した各種データに基づいて、走行モード表示部41b、アタッチメント表示部41c等の表示部における表示内容を更新する(ステップS4)。」
と記載されていることからすると、本願発明の「コンビュータ」は、「多機能型携帯情報端末40」を意味すると解釈し得る。
よって、上記アを踏まえると、引用発明の「PDA」は、本願発明の「コンピュータ」にも相当する。
ウ 引用発明の「制御プログラム」はPDAの表示部を制御するプログラムであるから、PDA上で動作するプログラムであることは明らかである。よって、本願発明の「プログラム」と引用発明の「制御ブログラム」は、ともに「多機能型携帯情報端末上で動作する」プログラムである点で共通する。
エ 引用発明の「『表示部』で表示される『選択された油圧設定』」は、複数のポンプ制御特性の中からツールの種類に応じた最適なものが選択されて、この選択されたポンプ特性に基づき油圧回路の流量特性を制御された「選択された油圧設定」が表示されたものであり、この「選択された油圧設定」は、本願発明の「ショベルの設定状態」といえるものである。なよって、引用発明の「『表示部』で表示される『選択された油圧設定』」は、本願発明の「ショベルの設定状態を示す情報」に相当する。。
オ 引用発明の「制御プログラム」は、PDAの「表示部」に「エンジン回転速度」、「ポンプ圧」、「走行速度」、「選択された油圧設定」などの機体稼働情報を表示させるステップを実行させるプログラムである。
また、引用発明は、「エンジン回転速度」、「ポンプ圧」又は「走行速度」などは、設定された油圧に影響を受けるパラメータであることは技術常識であるので、上記エを踏まえれば、油圧ショベルの設定状態に関連する情報といえるから、本願発明の「プログラム」と引用発明の「制御プログラム」は、「ショベルの設定状態に関連する情報」を表示するプログラムである点で共通する。
したがって、上記ウ及びエを踏まえると、引用発明の「選択された油圧設定」は、本願発明の「ショベルの設定状態を示す情報」に、引用発明の「エンジンの回転速度」、「ポンプ圧」、「走行速度」は、本願発明の「ショベルの設定状態に関連する情報」に相当するから、本願発明の「プログラム」と引用発明の「制御プログラム」は、「ショベルの設定状態を示す情報、及び、ショベルの設定状態に関連する情報を前記多機能型携帯情報端末の表示部に表示させるステップをコンピュータに実行させるため」のプログラムである点で共通する。
(2)すると、本願発明と引用発明とは、
[一致点]
「多機能型携帯情報端末上で動作するプログラムであって、
ショベルの設定状態を示す情報、及び、ショベルの設定状態に関連する情報を前記多機能型携帯情報端末の表示部に表示させるステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本願発明の「プログラム」が、「ショベルの設定状態を示す情報、及び、ショベルの設定状態に関連する」情報を「同時に表示させるステップ」を実行するものであるのに対し、引用発明の「制御プログラム」がこれらの情報を「同時に」表示部に表示させているか不明である点。
[相違点2]
本願発明の「プログラム」が表示部に表示させる情報について、ショベルの設定状態に関連する情報が「現在選択されている走行モードを表す図形、又は、現在装着されているアタッチメントを表す図形」であるのに対して、引用発明の「制御プログラム」が表示部に表示させる情報が「図形」であるか不明である点。
[相違点3]
本願発明の「プログラム」が表示部に表示させる「ショベルの設定状態を示す情報は、現在の作業モードを表す記号」であるが、引用発明の「制御プログラム」が表示部に表示させる情報が現在の作業モードを表す記号を含むか不明である点。
6 判断
(1)相違点1及び相違点2について
ア 事案に鑑みて、相違点1及び相違点2を同時に検討する。
イ 引用文献3技術事項の「油圧ショベル等の建設機械」は、本願発明の「ショベル」に相当する。
ウ 引用文献3技術事項では、油圧ショベルの車両状況表示画像を表示装置に表示するので、本願発明の「表示部」と引用文献3技術事項の「表示装置」は、ともにショベルの状態を表示する表示部の概念で共通する。
エ 引用文献3技術事項の「表示装置」は、「左から順に、フロント作業機3を構成するアーム3bの先端にバケット3cが装着されているか、若しくは他のフロントアタッチメントが装着されているかの表示A2、作動負荷の状態表示A3、走行速度表示A4,オートアイドルか否かの表示A5がアイコン表示されて」いるものであり、ここで「フロント作業機3を構成するアーム3bの先端にバケット3cが装着されているか、若しくは他のフロントアタッチメントが装着されているかの表示A2」及び「走行速度表示A4」に対応する表示がなされたアイコンは、本願発明の「ショベルの設定状態に関連する図形」に対応し、「走行速度表示A4」を示すアイコンはそのアイコンに対応した走行モードを示すことから、各々「現在装着されているアタッチメントを表す図形」及び「現在選択されている走行モードを表す図形」に相当する。
オ 引用発明と引用文献3技術事項は、ともにショベルの状態表示の技術に関し技術分野が共通する。さらに、表示部に表示する際にわかりやすい表示をすることは当然に考慮すべき課題であるから、引用発明に対して、同様にわかりやすい表示として状態をアイコン表示する技術である引用文献3技術事項を採用する動機がある。
カ したがって、引用発明において、選択された油圧設定(ショベルの設定状態を示す情報)を表示すると同時に、引用発明の「エンジン回転速度」、「ポンプ圧」又は「走行速度」などの情報に代えて、又は加えて、引用文献3技術事項の「フロント作業機3を構成するアーム3bの先端にバケット3cが装着されているか、若しくは他のフロントアタッチメントが装着されているかの表示A2」及び「走行速度表示A4」に対応する表示されたアイコンを表示する技術を採用して、相違点1及び相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得るものである。
(2)相違点3について
引用文献3技術事項の「表示装置」が表示する「作動負荷の状態表示A3」は、作動に伴う負荷の状態をアイコン表示したものであって、特定の負荷の状態は、その負荷を必要とする作業、すなわち作業モードに対応する状態とみることができるから、この作動負荷の状態を示すアイコン表示は、本願発明の「現在の作業モードを表す記号」に相当する。
すると、引用発明の「選択された油圧設定(ショベルの設定状態を示す情報)」を、引用文献3技術事項のように「作動負荷の状態表示A3」を「アイコン表示」としたものにすることにより、相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
(3)そして、相違点1ないし相違点3を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献3技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
7 令和5年7月26日に提出された意見書における主張について
(1)審判請求人は、令和5年7月26日に提出された意見書「[3]理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について」において、概略以下のとおり主張している。
ア 「引用文献1-4は何れも、現在の作業モード、現在選択されている走行モード、又は、現在装着されているアタッチメントの種類といったショベルの設定状態に関する情報又は図形を多機能型携帯情報端末の表示部に表示する構成を開示していません。」
イ 「上述のように(当審注:引用文献1記載の発明における)、作業モード及び走行モードは何れも、時々刻々と変化するものではなく、一定の期間にわたって維持されるものであるため、「リアルタイムの機器のモニタリング情報」として選択されるようなものではありません。」
(2)ア 上記(1)アの主張について
「現在の作業モード、現在選択されている走行モード、又は、現在装着されているアタッチメントの種類といったショベルの設定状態に関する情報又は図形」を、「多機能型携帯情報端末の表示部に表示する構成」が、引用発明に開示された事項、又は、引用発明1及び引用文献3技術事項から当業者が容易に想到し得る事項であることは、上記5(1)オ、上記6(1)及び(2)に検討したとおりである。
イ 上記(1)イの主張について
引用発明の「選択された油圧設定」は、ツールの種類に応じて選択される設定情報であるからツールがアタッチメントとして装着されている間は設定の表示が維持されることは明らかである(上記5(1)エ)。また、引用文献3技術事項のアイコンにより示される「フロント作業機3を構成するアーム3bの先端にバケット3cが装着されているか、若しくは他のフロントアタッチメントが装着されているかの表示A2、作動負荷の状態表示A3、走行速度表示A4,オートアイドルか否かの表示A5」は、いずれもアイコン表示として状態を維持して表示していることは明らかである(上記6(1)及び(2))。したがって、上記(1)イの主張の点は、引用発明に開示された事項、又は、引用発明1及び引用文献3技術事項から当業者が容易に想到し得る事項である。
ウ したがって、審判請求人の意見書における上記主張は採用できない。
8 審判請求人の主張について
(1)審判請求人は、審判請求書の[請求の理由](3-2)において、概略次のとおり主張している。
「本願の請求項1に係る発明は、『前記多機能型携帯情報端末は、運転席の近傍に設けられた保持部に配置され、ショベルの電源部から電力の供給を受け、前記運転席の近傍において、前記多機能型携帯情報端末とは別に、運転者が操縦レバーから手を離さずに操作できるように前記操縦レバーに設けられたスイッチが操作されたときに特定の機能が使用できるように構成され、』を特徴としています。
この特徴により、本願の請求項1に係る発明は、運転者が操縦レバーから手を離さずに多機能型携帯情報端末の特定の機能を使用できるようになるという効果をもたらします。」
(2)しかしながら、審判請求人の上記(1)の主張は、上記第2のとおり補正の却下の決定がなされた請求項に基づく主張であるから採用できない。
さらに、本願発明は「プログラム」発明であって、上記(1)の発明特定事項は、プログラムに含まれない構成(多機能型携帯情報端末の保持部、電源部からの電力供給、操縦レバー、スイッチ等のプログラムとの関連がない構成)であるから、上記(1)により得られる効果は、「プログラム」発明である本願発明が奏する効果とはいえない。
したがって、審判請求人の審判請求書における主張は採用できない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-009413