特許拒絶査定不服審判
2023-021176
ショベル
- 審判番号
- 2023-021176
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-180419
- 請求日
- 2023年12月12日
- 審決日
- 2026年02月12日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】住友重機械工業株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 岡崎 彦哉
- 審判官 立澤 正樹
- 分類
- P18 .55 -WZ (E02F) / P18 .121-WZ (E02F) / P18 .575-WZ (E02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-180419「ショベル」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月 8日出願公開、特開2021- 55433〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年9月30日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和 5年 3月16日付け:拒絶理由通知
同年 5月29日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月15日付け:拒絶理由通知(最後)
同年 8月16日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月 8日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
同年 9月12日 :原査定の謄本の送達
同年12月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 6年 4月 8日 :上申書の提出
同年 9月13日付け:拒絶理由通知
同年11月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和 7年 1月17日付け:拒絶理由通知(最後)
同年 3月19日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月31日付け:審尋の通知
同年 8月20日 :回答書の提出
第2 令和7年3年19日付けの手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和7年3月19日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正1」という。)を却下する。
〔理由〕
1 本件補正1について
(1) 本件補正1後の特許請求の範囲
本件補正1により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(なお、下線は、補正箇所である。)。
また、当審にて、本願の補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明1」という。)の発明特定事項を分説してA~Fとし、以下、それぞれ「構成A」等という。
「A 個別の可動部位として、上部旋回体、ブーム、アーム、及びエンドアタッチメントを備え、
B 前記個別の可動部位が実行可能な個別動作は、前記上部旋回体に対応する前記個別動作、前記ブームに対応する前記個別動作、前記アームに対応する前記個別動作、及び前記エンドアタッチメントに対応する前記個別動作の全体として、複数の種類あり、
C ショベルの掘削作業には、掘削動作に対応する動作区間、ブーム上げ旋回動作に対応する動作区間、排土動作に対応する動作区間、及びブーム下げ旋回動作に対応する動作区間により構成される、一連の複数の動作区間があり、
D 前記複数の動作区間では、前記上部旋回体、前記ブーム、前記アーム、及び前記エンドアタッチメントのうちの少なくとも2つを動作させることにより実現される、互いに異なる複合動作を行い、
E 前記複数の動作区間ごとに、複数の種類の前記個別動作のうちの対象の動作区間に不要な前記個別動作のみが制限され、且つ、複数の種類の前記個別動作のうちの対象の動作区間に不要な前記個別動作の全てが制限される、
F ショベル。」
(2) 本件補正1前の特許請求の範囲
本件補正1前の令和6年11月15日付け手続補正書でされた請求の範囲の請求項1の記載は次のとおり。
「個別の可動部位として、上部旋回体、ブーム、アーム、及びエンドアタッチメントを備え、
前記個別の可動部位が実行可能な個別動作は、複数の種類あり、
掘削動作に対応する動作区間、ブーム上げ旋回動作に対応する動作区間、排土動作に対応する動作区間、及びブーム下げ旋回動作に対応する動作区間により構成される、ショベルの掘削作業における一連の複数の動作区間ごとに、複数の種類の前記個別動作のうちの対象の動作区間に不要な前記個別動作のみが制限される、
ショベル。」
(3) 審尋について
ア 審尋事項について
本件補正1により補正された特許請求の範囲の記載に関して、請求人に対して、令和7年7月31日付けで概ね次の事項についての審尋を行った。
(ア) 審尋事項1
請求項1における構成Bについて、どのような技術内容を表し、「全体として、」が「構成B」の何を。「全体」とし、「全体」としたものが「構成C」~「構成E」のどのような構成要素を特定するものか。
(イ) 審尋事項2
「構成C」に補正することにより、補正前後の構成要素の解釈に変化を及ぼすものか不明であるか否か。
(ウ) 審尋事項3
構成Dにおける「複合動作」という構成について、当初明細書等には、直接的にその意味を示す記載がなく、「互いに異なる複合動作を行い」という構成が何れの意味内容で理解するとよいのか。
(エ) 審尋事項4
構成Eにおける「前記複数の動作区分ごとに、複数の種類の前記個別動作のうちの動作区間に不要な前記個別動作のみが制限され」、「複数の種類の前記個別動作のうちの動作区間に不要な前記個別動作の全てが制限される」という記載(以下、それぞれ「制限1」、「制限2」という。)において、「制限1」と「制限2」は、実質的に同じ意味を表すと考えているが、そのような理解でよいか。
イ 請求人による回答
請求人は、令和7年8月20日に提出した回答書において、上記アの各審尋事項について、概ね次の回答を行った。
(ア) 審尋事項1に対する回答
「個別の可動部位の個別動作」は、「旋回」の動作、「ブーム上げ」の動作、「ブーム下げ」の動作、「アーム開き」の動作、「アーム閉じ」の動作、「バケット開き」の動作、「バケット閉じ」の動作を全体として見たとき、7種類の動作あることが示されている(段落【0153】及び【図7】)ので、「前記個別の可動部位」ごとに「実行可能な個別動作」を見たときの種類の数ではなく」、「前記上部旋回体に対応する前記個別動作、前記ブームに対応する前記個別動作、前記アームに対応する前記個別動作、及び前記エンドアタッチメントに対応する前記個別動作の全体として」合わせ見たときに「前記個別の可動部位が実行可能な個別動作」が「複数の種類」あるとの解釈を特定している。
補正により追加した「全体として」を含む構成Bは、「構成E」の「制限される」について、「複数の種類の中から不要な個別動作」の中から不要な個別動作が制限されるとの技術事項を特定している。
(イ) 審尋事項2に対する回答
単に、補正前の動作区間に関する内容を別の文章として仕立て直す過程において、文章の解釈を変更させる意図はなく、記載位置が変わっているに過ぎない。
(ウ) 審尋事項3に対する回答
構成Dの「複合動作」は、「前記上部旋回体、前記ブーム、前記アーム、及び前記エンドアタッチメントのうち少なくとも2つを」同時に連動して「動作させる」ことを意味する。「複合動作」の文言が上記の意味であることは、技術常識であり、当業者にとって自明である。また、本願明細書には、「掘削動作」、「ブーム上げ旋回動作」、「排土動作」、「ブーム下げ旋回動作」が、ブーム4、アーム5、バケット6及び上部旋回体3の動作により実行されること(段落【0143】、【0145】、【0147】、【0149】)が記載されており、それぞれの動作区間で行われる「掘削動作」、「ブーム上げ旋回動作」、「排土動作」及び「ブーム下げ旋回動作」が「複合動作」に該当する。
(エ) 審尋事項4に対する回答
「制限1」と「制限2」は同じ意味を意図しているが、「制限1」では、「複数の種類の前記個別動作」の中に含まれる2以上の不要な動作の中の1つの不要な動作だけを制限するときでも、必要な動作と不要な動作との対比関係で「対象の動作区間に不要な前記個別動作のみが制限され」るとの解釈が可能であるので、対象の動作区間に必要な動作が全て制限される点を明確にする意図で、「制限2」を特定している。
ウ 審尋により理解できる事項
上記イの各回答を参酌すると、本件補正1により補正された特許請求の範囲の記載事項は次のとおり理解できる。
(ア) 審尋事項1に関する理解事項
審尋事項1の回答及び明細書の記載事項(【0153】、【図7】)からみて、構成Bの「個別の可動部位が実行可能な個別動作」が、「全体として」、「複数の種類」あり、「複数の種類」として「前記上部旋回体に対応する前記個別動作、前記ブームに対応する前記個別動作、前記アームに対応する前記個別動作、及び前記エンドアタッチメントに対応する前記個別動作」が列挙されていると理解できる。
(イ) 審尋事項2に関する理解事項
審尋事項2の回答及び明細書全体からみて、構成Cは、補正前の記載の語順を変更したものであり、同内容を意味すると理解できる。
(ウ) 審尋事項3に関する理解事項
審尋事項3の回答及び明細書の記載事項(【0143】、【0145】、【0147】、【0149】)及び技術常識等からみて、構成Dの「複数動作」は、「前記上部旋回体、前記ブーム、前記アーム、及び前記エンドアタッチメントのうちの少なくとも2つを動作させることにより実現される」動作を表しており、「複合動作」は、「前記複数の動作区間」のそれぞれで、「互いに異なる」ことを意味すると理解できる。
(エ) 審尋事項4に関する理解事項
審尋事項4の回答及び審尋事項1の回答からみて、構成Eが表す内容・意味は、実質的に「制限2」の「不要な前記個別動作の全てを制限する」と理解できる。
2 補正の適否
(1) 本件補正1の補正事項
ア 補正事項1
補正事項1により、請求項1は、
「個別の可動部位として、上部旋回体、ブーム、アーム、及びエンドアタッチメントを備え、
前記個別の可動部位が実行可能な個別動作は、前記上部旋回体に対応する前記個別動作、前記ブームに対応する前記個別動作、前記アームに対応する前記個別動作、及び前記エンドアタッチメントに対応する前記個別動作の全体として、複数の種類があり、」との構成を含むものに補正された。
イ 補正事項2
補正事項2により、請求項1は、
「ショベルの掘削作業には、掘削動作に対応する動作区間、ブーム上げ旋回動作に対応する動作区間、排土動作に対応する動作区間、及びブーム下げ旋回動作に対応する動作区間により構成される、一連の複数の動作区間があり、」との構成を含むものに補正された。
ウ 補正事項3
補正事項3により、請求項1は、
「前記複数の動作区間では、前記上部旋回体、前記ブーム、前記アーム及び前記エンドアタッチメントのうち少なくとも2つを動作させることにより実現される、互いに異なる複合動作を行い、」との構成を含むものに補正された。
エ 補正事項4
補正事項4により、請求項1は、
「前記複数の動作区間ごとに、複数の種類の前記個別動作のうち対象の動作区間に不要な前記個別動作のみが制限され、且つ、複数の種類の前記動作のうち対象となる動作区間に不要な前記個別動作の全てが制限される」との構成を含むものに補正された。
(2) 補正の目的及び新たな技術的事項を導入するものであるか否かについての検討・判断
ア 補正事項1
補正事項1による、「前記個別の可動部位が実行可能な個別動作は、前記上部旋回体に対応する前記個別動作、前記ブームに対応する前記個別動作、前記アームに対応する前記個別動作、及び前記エンドアタッチメントに対応する前記個別動作の全体として、複数の種類があり」との構成について、【0153】、図7等の記載、及び審尋事項1の理解事項(上記ウ(ア))から、当該補正事項1は、「個別の可動部位が実行可能な個別動作」が、全体として7種類の動作があることを特定したと認める。
イ 補正事項2
補正事項2は、審尋事項2の理解事項(上記ウ(イ))から、記載内容を実質的に変更することなく記載を単に整理したと認める。
ウ 補正事項3
補正事項3は、審尋事項3の理解事項(上記ウ(ウ))からみて、それぞれの「動作区間」において、可動部位について、「異なる複合動作」を行うことに限定するものと認める。
エ 補正事項4
補正事項4は、審尋事項4の理解事項(上記ウ(エ))から、「制限2」を付加して特定したと認める。
オ 補正の目的について
上記ア~エより、本件補正1は、本件補正1前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「個別の可動部位が実行可能な個別動作」が、全体として7種類の動作があることを限定し、それぞれの「動作区間」において、可動部位について、「異なる複合動作」を行うことを限定し、かつ、「複数の種類の前記個別動作のうち、対象の動作区間に不要な前記個別動作の全てが制限される」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
カ 新たな技術的事項を導入するものであるか否かについて
本件補正1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の【0143】、【0145】、【0147】、【0149】、【0153】、【0158】-【0159】、【0161】-【0162】等の記載、図7に示される事項に基づくものであり、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
3 独立特許要件について
上記2(2)オに示したとおり、本件補正1は、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正1後の請求項1に記載される発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項に適合するものか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものか)について、以下に検討する。
(1) 本願補正発明1
本願補正発明1は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2) 引用文献に記載された事項及び引用発明
ア 引用文献1
(ア) 記載事項
本願の出願日前に頒布された刊行物であり、当審の拒絶通知で引用した特開2011-94453号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で附した。以下、同様。)。
a 「【技術分野】
【0001】
本発明はオペレータが建設機械を操作しながら行なう作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建設機械はオペレータが操縦することにより各種の作業を行なうように設計されている。建設機械を用いて行なう作業には、同じ動作を繰り返し行なう作業が多い。例えば、建設機械の一例としてショベルが行なう掘削・積込み動作は、バケットにより土を掘削して運搬車に積み込むという一連の動作の繰り返しである。そのようなショベルが行なう掘削・積込み動作は、オペレータがショベル運転室のレバーを操作して、バケット、アーム、ブーム、及びキャビンの旋回を操作することで行なわれる。
【0003】
建設機械は内燃機械の動力や油圧等を用いて大きな力でアーム等を動かす作業が多く、オペレータが操縦を誤って意図しない動きを指令してしまった場合に、移動する部分が作業範囲内の物体と干渉して物体を損傷してしまうおそれがある。そこで、ショベルのバケット先端が干渉防止領域に侵入したときに、アームの移動を制限して干渉防止領域からバケットが退避する動作のみを行なうことができるようにした作業機の干渉防止装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この干渉防止装置は、ショベルの先端の軌跡を座標系で規定してショベルの先端が干渉防止領域に侵入したことを判断することにより、ショベルの先端の移動を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】【特許文献1】特開2004-27835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように干渉防止領域を設定することで、例えば熟練していないオペレータが建設機械を操縦した場合でも、操縦を誤って他の物体に作業部分を干渉させることを防止することができる。しかし、例えば、ショベル等のそれ自体が移動する建設機械では、移動することにより周囲の状況が変化するため、移動するたびに干渉防止領域を設定することが難しい。
【0006】
また、上述の干渉の問題とは別に、熟練していないオペレータが建設機械を操縦した場合、作業部分を目標の位置まで移動させることができないこともあり得る。例えば、上述のショベルが行なう掘削・積込み動作では、掘削の都度バケットを目標の掘削深さまで移動させる必要があるが、熟練していないオペレータが操縦した場合にはバケットが目標の掘削深さまで移動する前に次の動作に移行してしまうことがあり、作業効率が低下してしまうといった問題が生じることがある。
【課題を解決するための手段】
・・・(中略)・・・
【0009】
本発明の他の実施態様によれば、作業要素と該作業要素の動作を制御する制御装置とを有する建設機械であって、前記制御装置は、一連の作業を複数の動作区間に分け、動作区間毎に、実行すべき動作に対する動作目標値を設定し、各動作区間において該動作目標値を達成したら次の動作区間への移行を許可することを特徴とする建設機械が提供される。上述の建設機械は、各関節に角度センサを備え、前記制御装置は、該角度センサで検出された角度を用いて現在の動作状態を表す現在値を算出することとしてもよい。」
b 「【0013】
まず、本発明による作業方法を行なう建設機械の一例として油圧ショベルについて説明する。なお、本発明による作業方法が適用される建設機械は、油圧ショベルに限定されるものではない。
【0014】
図1は油圧ショベルの側面図である。油圧ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3からブーム4が延在し、ブーム4の先端にアーム5が接続される。さらに、アーム5の先端にバケット6が接続される。ブーム4、アーム5及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
また、上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10及び動力源としてのエンジン(図示せず)が搭載される。また、上部旋回体3には油圧ショベルの各部の動作を制御する制御部として制御装置20が搭載される。制御装置20はマイクロコンピュータ及びメモリ等で構成される装置である。
・・・(中略)・・・
【0016】
アーム5はブーム4の先端に旋回可能に支持されており、旋回支持部(関節)にアーム角度センサ(図示せず)が取り付けられている。アーム角度センサは周知の角度検出器であればどのようなものでもかまわないが、安価なロータリエンコーダを用いることが好ましい。アーム角度センサにより後述のアーム角θ2を検出することができる。アーム角θ2は水平方向からのアーム5の傾き角度である。なお、なお、アーム角θ2は、図2における反時計方向(アームが開く方向)を正とする。
【0017】
バケット6はアーム5の先端に旋回可能に支持されており、旋回支持部(関節)にバケット角度センサ(図示せず)が取り付けられている。バケット角度センサは周知の角度検出器であればどのようなものでもかまわないが、安価なロータリエンコーダを用いることが好ましい。バケット角度センサにより後述のバケット角θ3を検出することができる。バケット角θ3はアーム5に対するバケット6の傾き角度である。なお、バケット角θ3は、図2における反半時計方向(バケットが開く方向)を正とする。」
c 「【0022】
次に、油圧ショベルを用いて行なう作業の一例について説明する。油圧ショベルを用いて行なう動作の代表的なものとして、掘削・積込み動作がある。掘削・積込み動作は、掘削動作と積込み動作を含む一連の動作であり、バケットで土を掘ってすくい上げ、ダンプカーの荷台等の所定の場所に排土する作業である。掘削・積込み動作については、社団法人日本建設機械化協会規格(JCMAS)において詳細に規定されている。
【0023】
掘削・積込み動作について、図3を参照しながらさらに詳しく説明する。まず、図3(a)に示すように、上部旋回体3を旋回してバケット6が掘削位置の上方に位置している状態で、且つ、アーム5が開きバケット6も開いた状態で、オペレータはブーム4を下げ、バケット6の先端が目標の掘削深さDとなるようにバケット6を下降させる。通常、旋回及びブーム下げは、オペレータが操作し、目視でバケット6の位置を確認する。また、上部旋回体3の旋回と、ブーム4の下げは同時に行なうことが一般的である。以上の動作をブーム下げ旋回動作と称し、この動作区間をブーム下げ旋回動作区間と称する。
【0024】
オペレータがバケット6の先端が目標の掘削深さDに到達したと判断したら、次に、図3(b)に示すように水平引き動作に移る。水平引き動作では、バケット6の先端がほぼ水平に移動するように、アーム5が地面に対して垂直になるまでアーム5を閉じる。この水平引き動作により、所定の深さの土が掘削されバケット6でかき寄せられる。水平引き動作が完了したら、次に、図3(c)に示すように、アーム5に対して90度になるまでバケット6を閉じる。すなわち、バケット6の上縁が水平となるまでバケット6を閉じ、かき集めた土をバケット6内に収容する。以上の動作を掘削動作と称し、この動作区間を掘削動作区間と称する。
【0025】
オペレータは、バケット6が90度になるまで閉じたと判断したら、次に、図3(d)に示すように、バケット6を閉じたままバケット6の底部が所定の高さHとなるまでブーム4を上げる。これに続いて、あるいは同時に、上部旋回体3を旋回して排土する位置までバケット6を旋回移動する。以上の動作をブーム上げ旋回動作と称し、この動作区間をブーム上げ旋回動作区間と称する。【0026】
なお、バケット6の底部が所定の高さHとなるまでブーム4を上げるのは、例えば、ダンプカーの荷台に排土する際にはバケット6を荷台の高さより高く持ち上げないとバケット6が荷台にぶつかってしまうためである。例えば熟練していないオペレータが操縦していた場合、バケット6を所定の高さHまで持ち上げないまま旋回するおそれがある。そのような場合には、バケット6をダンプカーの荷台にぶつけてしまうおそれがある。【0027】
オペレータは、ブーム上げ旋回動作が完了したと判断したら、次に、図3(e)に示すようにアーム5及びバケット6を開いて、バケット6内の土を排出する。この動作をダンプ動作と称し、この動作区間をダンプ動作区間と称する。ダンプ動作では、バケット6のみを開いて排土してもよい。【0028】 オペレータは、ダンプ動作が完了したと判断したら、次に、図3(f)に示すように、上部旋回体3を旋回してバケット6を掘削位置の真上に移動させる。このとき、旋回と同時にブーム4を下げてバケット6を掘削開始位置まで下降させる。この動作は図3(a)にて説明したブーム下げ旋回動作の一部である。オペレータは、図3(a)に示すようにバケット6を掘削開始位置から目標の掘削深さDまで下降させ、再び図3(b)に示す掘削動作を行なう。
【0029】
以上の「ブーム下げ旋回動作」、「掘削動作」、「ブーム上げ旋回動作」、「ダンプ動作」、「ブーム下げ旋回動作」を一サイクルとしてこのサイクルを繰り返し行いながら、掘削・積込みを進めていく。各動作が完了したか否か、すなわち各動作区間においてなすべき動作が終了したか否かはオペレータの判断によるものであり、オペレータが判断を誤った場合などは、一つの動作区間が完了しないのに、次の動作区間に移行してしまうおそれがある。そのような場合は、完了しなかった動作区間をやり直すことで作業効率が低下するばかりでなく、例えば、バケット6をダンプカーの荷台にぶつけて損傷するといった問題を引き起こす可能性がある。
【0030】
そこで、本発明の一実施形態による作業方法では、上述の各動作区間において動作目標値を定め、動作目標値をクリアしなければ次の動作区間に進めないようにしている。例えば、図3(a)に示すブーム下げ旋回動作区間では、掘削深さの目標値を設定し、バケット6の位置が目標値に達しないと次の掘削動作区間に進むことができないように動作を制限する。
【0031】
ここで、本発明の一実施形態による作業方法について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。図4は本発明の一実施形態による建設機械で行なう作業方法のフローチャートである。図4に示す作業方法は、建設機械として上述の油圧ショベルを用い、上述の掘削・積込み動作を行なうものである。
【0032】
掘削・積込み動作を開始するには、オペレータは、まず、行なうべき作業動作(この場合、掘削・積込み動作)を選択する。本実施形態による作業方法を実行する油圧ショベルには、油圧ショベルで行なう作業動作の基本動作が設定されており、各動作区間での動作目標値が設定できるようになっている。そこで、オペレータは各動作区間での動作目標値を油圧ショベルの制御装置20に入力する。動作目標値は、各動作区間で予め決定される設定値であり、本実施形態において、ブーム下げ旋回動作区間では、動作目標値はこれから掘削しようとする掘削深さDである。また、掘削動作区間での動作目標値はアーム角θ2の値(例えば-90度)及びバケット角θ3の値(例えば-90度)である。ブーム上げ旋回動作区間での動作目標値は地面からバケット6までの高さHBである。ダンプ動作区間での動作目標値は、バケット角θ3の値(例えば0度)である。以上の各動作区間における動作目標値は、その動作区間で達成しなければならない動作が完了したか否かを判断するための設定値であり、上述の設定値に限定されるものではない。」
d 「【0041】
掘削動作区間に入ると、ステップS21において、油圧ショベルの制御装置20は現在のバケット6による掘削深さを演算により求める。そして、ステップS22において、制御装置20はアーム角θ2が-90度なったか否かを判定する。アーム角θ2が-90度になるということは、アーム5が地面に対して垂直になることである。バケット6の水平引き動作はアーム5が垂直になった時点で終了すると規定する。
【0042】
ステップS22において、アーム角θ2が-90度になっていないと判定されると、水平引き動作が完了していないと判定され、処理はステップS23に進む。ステップS23では、制御装置20はバケット掘削を許可しない処理を行なう。バケット掘削とは、バケット6をアーム5に対して-90度になるように閉じて土をバケット6ですくい上げることである。ステップS23の処理の後、処理はステップS22に戻り、制御装置20は再び水平引き動作が完了したか否かを判定する。
【0043】
一方、ステップS22において、アーム角θ2が-90度になったと判定されると、水平引き動作が完了したと判定され、処理はステップS25(当審注:【図6】から「S24」の誤記であることは明らか)に進む。ステップS25(当審注:【図6】から「S24」の誤記であることは明らか)では、制御装置20はバケット掘削を許可する。これにより、オペレータは、操縦レバーを操作してバケット6を閉じることができる。
【0044】
バケット6を閉じる動作が行なわれると、ステップS25において、制御装置20はバケット角θ3が-90度になったか否かを判定する。バケット角θ3が-90度になることは、バケット6の上縁が水平になるまでバケット6が閉じられたことであり、バケット6土をすくい上げた状態となったことである。したがって、この時点でバケット掘削が終了したと判定することができる。
【0045】
ステップS25において、バケット角θ3が-90度になっておらずバケット掘削が完了していないと判定されると、処理はステップS26に進む。ステップS26では、制御装置20はブーム上げ旋回動作を許可しない処理を行なう。すなわち、ステップS26では、ブーム4を上げる動作と、上部旋回体3を旋回する動作を行なうことができないように制御処理が行なわれる。この制御処理が行なわれると、オペレータが操作レバーを操作してブーム4を上げようとしても、ブーム4は動作しない。また、オペレータが操作レバーを操作して上部旋回体3を旋回させようとしても、上部旋回体は旋回しない。これにより、オペレータは未だバケット掘削が完了していないことを認識し、引き続きバケット6を閉じるように操作する。ステップS26の処理の後、処理はステップS25に戻り、制御装置20は再びバケット掘削が完了したか否かを判定する。
【0046】
一方、ステップS25において、バケット角θ3が-90度になってバケット掘削が完了したと判定されると、処理はステップS27に進む。ステップS27では、制御装置20はブーム上げ旋回動作を許可する処理を行なう。これにより、オペレータは操作レバーを操作してブーム4を上げて上部旋回体3を旋回させることができる。すなわち、ブーム上げ旋回動作区間へ移行することができる。
【0047】
以上の処理が図4のステップS2~S4までの処理(掘削動作区間での処理)に相当する。ステップS4において、ブーム上げ旋回動作が許可されると、続いて、ステップS5において、油圧ショベルの制御装置20はブーム上げ旋回動作区間が終了したか否かを判定する。この判定は上述の動作目標値に基づいて行なわれる。すなわち、ブーム上げ旋回動作区間では、油圧ショベルの制御装置20はバケット6の高さHBと動作目標値とを比較しており、バケット6の高さHBが動作目標値に到達したか否かを判定する。
【0048】
ステップS5においてバケット6の高さHBが動作目標値に到達していないと判定されると、ブーム上げ旋回動作区間は未だ終了していないと判定し、処理はステップS6に進む。ステップS6では、制御装置20はダンプ動作区間に移行することを許可しない制御処理を行なう。ステップS6では、制御装置20はダンプ動作区間に移行することを許可しない制御処理を行なう。すなわち、ステップS6において、制御装置20は、バケット6及びアーム5を開く動作の実行を禁止する。したがって、オペレータがバケット6を開くように操縦レバーを操作してもバケット6は開かなく、また、アーム5を開くように操作レバーを操作しても、アーム5は開かない。これにより、オペレータは未だブーム上げ旋回動作区間が終了していないことを認識し、ブーム上げ旋回動作を続けて行なう。
【0049】
一方、ステップS5においてバケット6の高さHBが動作目標値に到達したと判定されると、ブーム上げ旋回動作区間が終了したと判定し、処理はステップS7に進む。ステップS7では、制御装置20はダンプ動作区間に移行することを許可する制御処理を行なう。したがって、オペレータがバケット6を開くように操縦レバーを操作すればバケット6は開くようになり、また、アーム5を開くように操作レバーを操作すれば、アーム5は開くことになる。これにより、これにより、オペレータは操作レバーを操作してブーム上げ旋回動作を行なうことができる。
【0050】
以上のステップS5~S7までの処理がブーム上げ旋回動作区間での動作終了判定処理である。このブーム上げ旋回動作区間での動作終了判定処理について、図7を参照しながらさらに詳細に説明する。図7はブーム上げ旋回動作区間での動作終了判定処理のフローチャートである。
【0051】
ブーム上げ旋回動作区間に入ると、ステップS31において、油圧ショベルの制御装置20は現在のバケット6の高さHBを検出する。そして、ステップS32において、制御装置20はバケット6の高さHBが動作目標値として設定された高さとなったか否かを判定する。すなわち、バケット6が目標の高さまで上げられたか否かが判定される。この判定処理は、例えば、バケット6の最下部がダンプカーの荷台よりも上まで持ち上げられたか否かを判定する処理である。ダンプ動作は、バケット6の高さHBが動作目標値として設定された高さとなった時点で終了すると規定する。
【0052】
ステップS32において、バケット6の高さHBが動作目標値として設定された高さとなっていないと判定されると、ダンプ動作が完了していないと判定され、処理はステップS33に進む。ステップS33では、制御装置20はダンプ動作を許可しない処理を行なう。このステップS33の処理は図4におけるステップS6の処理に相当する。ステップS33の処理の後、処理はステップS32に戻り、制御装置20は再びバケット6の高さHBが動作目標値として設定された高さとなったか否かを判定する。
【0053】
一方、ステップS32において、バケット6の高さHBが動作目標値として設定された高さとなったと判定されると、ブーム上げ旋回動作が完了したと判定され、処理はステップS34に進む。ステップS34では、制御装置20はダンプ動作を許可する。
・・・(中略)・・・
【0058】
ダンプ動作区間に入ると、ステップS41において、油圧ショベルの制御装置20は現在のバケット角θ3の値を検出する。そして、ステップS42において、制御装置20はバケット角θ3が動作目標値である0度なったか否かを判定する。
・・・(中略)・・・
【0060】
一方、ステップS42において、バケット角θ3が0度になったと判定されると、ダンプ動作が完了したと判定され、処理はステップS44に進む。ステップS44では、制御装置20はブーム下げ旋回動作を許可する。このステップS44の処理は図4のステップS10の処理に相当する。これにより、オペレータは、操縦レバーを操作してブーム4を下げ、且つ上部旋回体3を旋回させることができる。」
e 【図3】
「
[図:0001433450000001.jpg]
」
(イ) 引用文献1の記載から把握できる事項
【0023】、【0024】、【0025】、【0027】及び【図3】から、「ブーム下げ旋回動作、掘削動作、ブーム上げ旋回動作、ダンプ動作からなる複数の動作区間として、ブーム下げ旋回動作区間、掘削動作区間、ブーム上げ旋回動作区間、ダンプ動作区間があること」(以下、「把握事項」という。)を把握することができる。
(ウ) 引用文献1に記載の発明
上記(ア)及び上記(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明1>
「油圧ショベルの下部走行体1には、上部旋回体3が搭載され、上部旋回体3からブーム4が延在し、ブーム4の先端にアーム5が接続され、さらに、アーム5の先端にバケット6が接続されていて、ブーム4、アーム5及びバケット6は、それぞれ油圧駆動され、上部旋回体3には動力源としてのエンジンが搭載され、(【0014】)
掘削・積込み動作について、上部旋回体3を旋回し、且つ、アーム5が開きバケット6も開いた状態で、オペレータはブーム4を下げ、バケット6の先端が目標の掘削深さDとなるようにバケット6を下降させ、(【0023】)
オペレータがバケット6の先端が目標の掘削深さDに到達したと判断したら、水平引き動作に移り、バケット6の先端がほぼ水平に移動するようアーム5を閉じ、次に、アーム5に対して90度になるまでバケット6を閉じ、(【0024】)
次に、バケット6を閉じたままバケット6の底部が所定の高さHとなるまでブーム4を上げ、これに続いて、上部旋回体3を旋回して排土する位置までバケット6を旋回移動し、(【0025】)
次に、アーム5及びバケット6を開いて、バケット6内の土を排出し、(【0027】)
次に、上部旋回体3を旋回し、同時にブーム4を下げてバケット6を掘削開始位置まで下降させ、再び掘削動作を行ない、(【0028】)
ブーム下げ旋回動作、掘削動作、ブーム上げ旋回動作、ダンプ動作、ブーム下げ旋回動作を一サイクルとしてこのサイクルを繰り返し行いながら、掘削・積込みを進めていき、(【0029】)
ブーム下げ旋回動作、掘削動作、ブーム上げ旋回動作、ダンプ動作からなる複数の動作区間として、ブーム下げ旋回動作区間、掘削動作区間、ブーム上げ旋回動作区間、ダンプ動作区間があり、(把握事項)、
掘削・積込み動作について、上部旋回体3を旋回して且つ、アーム5が開きバケット6も開いた状態で、オペレータはブーム4を下げ、バケット6の先端が目標の掘削深さDとなるようにバケット6を下降させる動作区間であるブーム下げ旋回動作区間、(【0023】)
オペレータがバケット6の先端が目標の掘削深さDに到達したと判断したら、水平引き動作に移り、バケット6の先端がほぼ水平に移動するようアーム5を閉じ、次に、アーム5に対して90度になるまでバケット6を閉じる動作を、掘削動作と称し、この動作区間を掘削動作区間、(【0024】)
次に、バケット6を閉じたままバケット6の底部が所定の高さHとなるまでブーム4を上げ、これに続いて、あるいは同時に、上部旋回体3を旋回して排土する位置までバケット6を旋回移動する動作をブーム上げ旋回動作と称し、この動作区間をブーム上げ旋回動作区間、(【0025】)
次に、アーム5及びバケット6を開いて、バケット6内の土を排出する動作をダンプ動作と称し、この動作区間をダンプ動作区間、(【0027】)
次に、上部旋回体3を旋回し、同時にブーム4を下げてバケット6を掘削開始位置まで下降させる動作はブーム下げ旋回動作の一部であり、バケット6を掘削開始位置から目標の掘削深さDまで下降させ、再び、掘削動作を行い、(【0028】)
水平方向からのアーム5の傾き角度であってアームが開く方向を正としたアーム角をθ2、及び、アーム5に対するバケット6の傾き角度であってバケットが開く方向を正としたバケット角をθ3とした場合、(【0016】、【0017】)、掘削動作区間での動作目標値はアーム角θ2の値(例えば-90度)及びバケット角θ3の値(例えば-90度)であって、ブーム上げ旋回動作区間での動作目標値は地面からバケット6までの高さHBであり、ダンプ動作区間での動作目標値は、バケット角θ3の値(例えば0度)であり、(【0032】)
掘削動作区間に入り、バケット角θ3が-90度になってバケット掘削が完了したと判定されると、制御装置20はブーム上げ旋回動作を許可する処理を行ない(【0041】~【0046】)
ブーム上げ旋回動作が許可され、続くステップS5においてバケット6の高さHBが動作目標値に到達していないと判定されると、ブーム上げ旋回動作区間は未だ終了していないと判定し、ブーム上げ旋回動作を続けて行ない、一方、ステップS5においてバケット6の高さHBが動作目標値に到達したと判定されると、ブーム上げ旋回動作区間が終了したと判定し、制御装置20はダンプ動作区間に移行することを許可する制御処理を行ない、(【0047】~【0049】)
ブーム上げ旋回動作区間に入ると、油圧ショベルの制御装置20は現在のバケット6の高さHBを検出し、制御装置20はバケット6の高さHBが動作目標値として設定された高さとなったか否かを判定し、(【0051】)
ダンプ動作区間に入ると、油圧ショベルの制御装置20は現在のバケット角θ3の値を検出し、バケット角θ3が0度になったと判定されると、ダンプ動作が完了したと判定され、制御装置20はブーム下げ旋回動作を許可する(【0058】~【0060】)
油圧ショベル。」
イ 引用文献2
(ア) 引用文献2に記載された事項
本願の出願日前である平成10年3月24日に頒布された特開平10-77659号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
a 「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、例えば土木工事、建築工事等においてその直径に比べ、深さが極めて深い穴を堀取る場合に用いる深掘り掘削機に関し、特に、テレスコピック状に組み合わされて伸縮する複数段の伸縮アーム体の破損を防止することができる深掘り掘削機の運転規制機構に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より土木工事、建設工事等においては、直径に比べ深さが極めて深い穴を堀取らなければならない場合がよくあった。例えば、鉄塔を支えるアンカー用の穴、浄化槽の埋め込み用の穴、建築物の基礎工事、井戸堀り工事等の作業があげられる。このような深掘りの作業においては、穴の直径が5メートル程度であるのに対し、深さが15メートルないし20メートルといった極めて深い穴を掘らざるを得ないものであった。
【0003】このような深掘りの作業では、従来においては複数段のアームをテレスコピック状に組み立て、その長さ方向に伸縮することができる伸縮アーム体を用いた深掘り掘削機(アーム掘削機とも呼ばれる)が盛んに利用されていた。この深掘り掘削機は、伸縮アーム体の上段のアームを掘削機のブームに連結し、最下段のアームの下端にクラムシェルバケットを連結した構造であり、テレスコピック状に組み合わされた複数段の伸縮アーム体を伸縮させることによりクラムシェルバケットを深い穴の底まで吊り下げることができるのが特徴である。
【0004】このような深掘り掘削機では、バケットを上下動させて土砂を掘取る一般的な掘削機(バックホーともよばれる)に比べ、クラムシェルバケットをより深い位置にまで吊り下げることができるため、縦方向に深い穴を掘取ることができるものであった。しかしながら、この深掘り掘削機では、クラムシェルバケットを吊り下げる伸縮アーム体は筒状のアームを組み合わせた構造のため、その側面方向からの衝撃や応力に対して極めて弱いものであった。このため、掘り下げた穴の中で伸縮アーム体を前後に揺動させたり、掘削機を旋回させると、伸縮アーム体の先端や側面と穴の内壁面とが接触し、伸縮アーム体が変形して故障の原因となるものであった。この伸縮アーム体では、その長さ方向に内部中空のアームを組み合わせて相互に摺動できるようにした構造のため、各段のアームが変形したり、曲げられると伸縮アーム体自体が長さ方向に伸縮できなくなるものであった。このように、深掘り掘削機を用いて深い穴を掘る際に、伸縮アーム体やブームを前後に揺動させたり、旋回台を旋回させると、伸縮アーム体と深い穴の壁面が接触して作業を続けることができなくなり、操作には注意が必要であった。このため、深い穴に伸縮アーム体を挿入したならば、伸縮アーム体を掘取った深い穴の長さ方向に伸縮させる操作のみを行うことが好ましいものであった。
【0005】しかし、従来の深掘り掘削機では、伸縮アーム体とブームを揺動させる機構や、旋回台を旋回させる機構はそれぞれ独立しており、伸縮アーム体を伸長させて深い穴に挿入した状態であっても、伸縮アーム体やブームを揺動させたり、旋回台を旋回させる操作は可能であった。このため、運転者の不注意により、伸縮アーム体を深い穴に挿入したままで、伸縮アーム体やブームを揺動させたり、旋回台を旋回させると、伸縮アーム体が変形させられることになり、直ちに故障の原因となるものであった。このような誤操作は未然に防止しなければならないものであるが、従来においては操作者の技量とカンにより操作されており、誤操作は操作者の経験により左右されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように、伸縮アーム体が掘り取った深い穴の内壁面に衝突して、変形したり曲げられたりすると、伸縮アーム体を構成する各段のアームが摺動できなくなり、修理が必要となる。しかしながら、各段のアームは摺動できるようにそれぞれ直線状に構成してあり、曲げや変形を調整する修理は困難なものであった。このため、伸縮アーム体を用いた深掘り掘削機を操作する際には、特定の状態ではその運転を自動的に規制し、運転手の不注意による誤操作を防止することが望ましいものであった。本願の発明はこの点に鑑み、伸縮アーム体を深い穴に挿入した状態であって、かつ、伸縮アーム体を伸長させたならば、自動的に伸縮アーム体やブームの前後の揺動を規制し、同時に、旋回台の旋回を規制でき、伸縮アーム体の故障の発生を未然に防止することができる深掘り掘削機の運動規制機構を提供するものである。また、クラムシェルバケットの一方の側面が掘り取った深い穴の内壁面と接触したならば、反対方向への揺動は許容しても、接触した方向には揺動できないように自動的に制限することができる深掘り掘削機の運動規制機構を提供するものである。」
b 「【0008】また、本発明は、移動できる車体と、この車体の上面で水平方向に回転自在となるように載置された旋回台と、旋回台の上面に上下に揺動自在となるよう連結されたブームと、ブームの先端に上下に揺動自在となるように連結され、その内部に複数のアームを収納して長さを伸縮させることができる伸縮アーム体と、伸縮アーム体の最下段のアームの先端に連結され、土砂を掴み取るバケットとから成る深掘り掘削機において、伸縮アーム体に取り付けられて伸縮状況を検知する伸びセンサーと、伸縮アーム体に取り付けられてその傾斜角度を検知する角度センサーと、旋回台とブームの間に介在されてブームを上下に揺動させる油圧シリンダーと、ブームと伸縮アーム体の間に介在されて伸縮アーム体を上下に揺動させる油圧シリンダーと、伸縮アーム体の内部に設けられて伸縮アーム体を伸縮させる油圧シリンダーと、各油圧シリンダーに駆動油を圧送する駆動油供給機構と、各油圧シリンダーと駆動油供給機構の間に介在されて供給する駆動油を制御する油量制御機構と、伸びセンサーと角度センサーからの検知信号を入力し、伸縮アーム体が伸長し、かつ、伸縮アーム体が垂直に対して一定以上の角度に傾斜しているときには、油量制御機構に制御信号を出力して伸縮アーム体を垂直の方向にのみ揺動するように規制し、さらに、伸縮アーム体を縮小させる方向にのみ許容するように規制する操作規制機構とから構成されたことを特徴とする深掘り掘削機の運動規制機構を提供するものである(請求項2記載の発明)。」
c 「【0016】前述した先アーム21の先端には連結ユニット30が固着してあり、この連結ユニット30の先端にはピン32によって連結ユニット31の上端が連結してある。このため、連結ユニット31は連結ユニット30の下部で自由に揺動できるように吊り下げられている。この連結ユニット31の下部には吊り軸33の上端が連結してあり、直線状をした吊り軸33の下端の左右に一対のシェルバケット36、37が連結してある。この吊り軸33の上部側面とシェルバケット36の背面との間には、このシェルバケット36を作動させるための油圧駆動機構としての油圧シリンダー34を介在してある。また、吊り軸33の上部側面とシェルバケット37の背面との間には、このシェルバケット37を作動させるための油圧駆動機構としての油圧シリンダー35を介在してある。これらの吊り軸33、シェルバケット36、37、油圧シリンダー34、35はピン32をその回動中心としてその自重で常に垂直方向を向くように維持している。そして、油圧シリンダー34、35を同時に伸縮させることで、左右のシェルバケット36、37は下方に向いたその開口を開閉することができ、このシェルバケット36、37によって深い穴の底から土砂を掘取ることができる。このシェルバケット36、37による土砂の掘取りの作業は従来から知られているクラムシェルバケットの機能と同一である。
・・・(中略)・・・
【0022】前述した旋回台13の内部には、車体11に対して旋回台13を水平方向に旋回させるための油圧モーター41が収納してある。」
d 「【0067】<伸縮アーム体22が伸長したとき>
【0068】前述のようにパイロット弁82を操作してパイロット信号Gー2を出力すると、油圧シリンダー44の圧力室側に駆動油を供給し、シリンダーロッド45を油圧シリンダー44より押し出すことができる。この油圧シリンダー44の伸長に従って、中アーム20及び先アーム21は元アーム16より押し出され、伸縮アーム体22の全長が長くなる。このように伸縮アーム体22の全長が長くなると、伸縮アーム体22は側面からの衝撃に対し弱い状態となる。このため、伸縮アーム体22が伸長したならばその状態を検知し、図4における状況判別ユニット66は他のセンサーからの信号とから総合的に判断して深掘り掘削機の動作を規制することになる。この規制により、衝撃に弱い伸縮アーム体22の損傷や曲げを防止することになる。状況判別ユニット66による動作の規制は、深掘り掘削機のおかれた状況によって相違するため、以下において、それぞれの設定状況によりどのような規制が行われるかを個別に説明する。
・・・(中略)・・・
【0071】〔〔伸縮アーム体22が20度以下であるとき〕〕
・・・(中略)・・・
【0073】このように規制信号Q、R、S、V、Xが継続して伝えられているため、各電磁切換弁111、112、113、116、130は開放しており、『伸縮アーム体22が伸長している』状態で、かつ、『伸縮アーム体22が20度以下の角度である』(この角度20度はこの実施の形態での設定角度であり、この角度に限定されるものではない。この角度は一つの例示である。)状態では、パイロット弁77~80からのパイロット信号はそのまま比例制御弁96、97に伝達され、ブーム14と伸縮アーム体22の揺動の操作は自由に行うことができる。これは、伸縮アーム体22が垂直軸線に対して20度以下の角度であれば、図2で示すように、伸縮アーム体22は深い穴Wに垂直に挿入されていることとなり、深い穴Wの内径の範囲で伸縮アーム体22を揺動させる余裕の空間が残っているからである。伸縮アーム体22が伸長すると衝撃に弱い状態となるが、深い穴Wの内部空間に垂直に位置していれば、深い穴Wの内壁に衝突することも少ないからである。
【0074】しかしながら、規制信号T、Uの出力が停止され、電磁切換弁114、115が閉鎖されると旋回台13が左右に回転する動作に付いては規制される。これは、伸縮アーム体22が深い穴Wの内部に垂直に挿入されていれば、ブーム14と伸縮アーム体22を揺動するだけの余裕はあるが、旋回台13を左右に回転させると、伸縮アーム体22の側面に深い穴Wの内壁が衝突することになり、伸縮アーム体22を損傷させる原因となるからである。このため、パイロット弁83、84を操作しても前述のように旋回台13は通常の回転速度では回転せず、ゆっくりとした低速の回転で左右に旋回する。このように低速で回転すると、キャビンに搭乗した作業員GA縮(当審注:「が伸縮」の誤記であることは明らか)アーム体22を旋回させる操作において危険状態であることを知得し、注意深く操作をすることになる。また、パイロット弁83、84を誤って操作しても、旋回台13は低速で回転するため、深い穴Wの内壁に伸縮アーム体22の側面を衝突させることがなくなるためである。以下において、パイロット弁83、84の操作による旋回台13の回転が規制され、低速で回転させられる手順を説明する。
・・・(中略)・・・
【0079】〔〔伸縮アーム体22が20度以上であるとき〕〕
【0080】次に、油圧シリンダー15、18を作動させることにより、ブーム14と伸縮アーム体22が揺動され、伸縮アーム体22が垂直軸線に対して20度以上の角度に傾斜することもある。このように、伸縮アーム体22の傾斜角度が大きくなると中央制御回路139は操作の規制を行うことになる。すなわち、図2で示すように、深い穴Wの内部で伸縮アーム体22が大きく傾斜していると、この伸縮アーム体22の先端が深い穴Wの内壁に衝突し易くなる。このように、伸縮アーム体22の角度が垂直軸線より大きく傾斜したならば、衝突による損傷を防止するために伸縮アーム体22を垂直方向に復帰させる操作と縮小の操作のみを許可し、他の操作を全て規制することになる。
・・・(中略)・・・
【0082】このように『伸縮アーム体22が伸長している』状態で、かつ、『伸縮アーム体22が20度以上の角度である』(この20度の角度はこの実施の形態での設定角度であり、この角度に限定されるものではない。この角度は一つの例示である。)状態では、パイロット弁78からのパイロット信号Eー2のみがそのまま比例制御弁96に伝達することができる。
・・・(中略)・・・
【0084】また、規制信号Q、S、V、Xがそれぞれ電磁切換弁111、113、116に供給されていないので、各電磁切換弁111、112、116は閉鎖している。このため、パイロット信号Eー1、Fー1、Fー2はそれぞれパイロット信号J、L、Pとして出力されず、比例制御弁96、97の動作は規制される。従って、パイロット弁77、79、80を作業者が操作しても油圧シリンダー15の圧力室側と排出室側、油圧シリンダー18の排出室側には駆動油が供給されず、油圧シリンダー15によるブーム14の揺動は規制され、同時に、油圧シリンダー18による伸縮アーム体22の図3における時計方向への揺動は規制される。こうして、設定してある角度の20度以上に伸縮アーム体22が傾斜したならば、油圧シリンダー15、18の動作は規制され、油圧シリンダー18によって伸縮アーム体22が垂直方向に揺動される動作のみが許容される。この規制により、伸縮していて危険角度以上に傾斜した伸縮アーム体22は、垂直方向にのみ揺動して深い穴Wの内壁と衝突するのを防止している。
・・・(中略)・・・
【0086】・・・(中略)・・・こうして、電磁切換弁130の閉鎖によりパイロット弁82を操作してもシリンダーロッド45の伸長が規制され、結果として伸縮アーム体22はそれ以上に伸長することができず、伸縮アーム体22が深い穴Wの内壁と衝突するのを防止できる。」
e 【図2】
「
[図:0001433450000002.jpg]
」
(イ) 引用文献2の記載から把握できる事項
【0079】以降の記載は、「伸縮アーム体22が20度以上であるとき」であって、図2を基礎とした記載であることから、【0079】~【0084】は、「『伸縮アーム体22が伸長している』状態で、かつ、『伸縮アーム体22が20度以上の角度である』(この20度の角度はこの実施の形態での設定角度であり、この角度に限定されるものではない。この角度は一つの例示である。)状態」に関する記載であると解される。
(ウ) 引用文献2に記載の発明
上記ア及び上記イから、引用文献2には、従来の技術では、「運転者の不注意により、伸縮アーム体を深い穴に挿入したままで、伸縮アーム体やブームを揺動させたり、旋回台を旋回させると、伸縮アーム体が変形させられることになり、直ちに故障の原因となる」(【0005】)から、「伸縮アーム体を用いた深掘り掘削機を操作する際には、特定の状態ではその運転を自動的に規制し、運転手の不注意による誤操作を防止することが望ましいものであった。本願の発明はこの点に鑑み、伸縮アーム体を深い穴に挿入した状態であって、かつ、伸縮アーム体を伸長させたならば、自動的に伸縮アーム体やブームの前後の揺動を規制し、同時に、旋回台の旋回を規制でき、伸縮アーム体の故障の発生を未然に防止することができる深掘り掘削機の運動規制機構を提供するものである。」(【0006】)という課題が提示され、当該課題に対して、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献2記載事項>
「移動できる車体と、この車体の上面で水平方向に回転自在となるように載置された旋回台と、旋回台の上面に上下に揺動自在となるよう連結されたブームと、ブームの先端に上下に揺動自在となるように連結され、その内部に複数のアームを収納して長さを伸縮させることができる伸縮アーム体と、伸縮アーム体の最下段のアームの先端に連結され、土砂を掴み取るバケットとから成る深掘り掘削機において、ブームを上下に揺動させる油圧シリンダーと、伸縮アーム体を上下に揺動させる油圧シリンダーと、伸縮アーム体を伸縮させる油圧シリンダーと、シェルバケット36、37を作動させるための油圧シリンダー34、35と、旋回台13を水平方向に旋回させるための油圧モーター41を有し、(【0008】、【0016】、【0022】)、
『伸縮アーム体22が伸長している』状態で、かつ、『伸縮アーム体22が20度以下の角度である』(この角度20度はこの実施の形態での設定角度であり、この角度に限定されるものではない。この角度は一つの例示である。)状態では、ブーム14と伸縮アーム体22の揺動の操作は自由に行うことができるが、旋回台13を左右に回転させると、伸縮アーム体22の側面に深い穴Wの内壁が衝突することになり、伸縮アーム体22を損傷させる原因となるため、旋回台13が左右に回転する動作に付いては規制されて、通常の回転速度では回転せず、ゆっくりとした低速の回転で左右に旋回し、(【0073】、【0074】)
『伸縮アーム体22が伸長している』状態で、かつ、『伸縮アーム体22が20度以上の角度である』(この20度の角度はこの実施の形態での設定角度であり、この角度に限定されるものではない。この角度は一つの例示である。)状態では、衝突による損傷を防止するために伸縮アーム体22を垂直方向に復帰させる操作と縮小の操作のみを許可し、他の操作を全て規制し、ブーム14の揺動は規制される(【0079】~【0084】)
深掘り掘削機。」
(3) 本願補正発明1に係る進歩性についての対比・判断
ア 対比
本願補正発明1と引用発明1と対比する。
(ア) 引用発明1における「上部旋回体3」、「ブーム4」、及び「アーム5」のそれぞれは、本願補正発明1における「上部旋回体」、「ブーム」、及び「アーム」に相当する。
また、本願明細書の発明の詳細な説明の【0016】、【0122】に、「エンドアタッチメントとしてのバケット6」と記載されているように「エンドアタッチメント」に「バケット」が含まれるのは明らかであるから、引用発明1における「バケット6」は、本願補正発明1における「エンドアタッチメント」に相当する。
そして、引用発明1の「ブーム4、アーム5、及びバケット6」は、「それぞれ油圧駆動され」、「上部旋回体3」は「動力源としてのエンジン」により動かされ、これらは、個別に動く部位であることは明らかであるから、引用発明1が「上部旋回体3」及び「ブーム4、アーム5、及びバケット6」を備えることは、本願補正発明1の「個別の可動部位として、上部旋回体、ブーム、アーム、及びエンドアタッチメントを備え」ることに相当する。
(イ) 引用発明1の「ブーム4、アーム5、及びバケット6」が、油圧駆動され、「上部旋回体3」が、エンジンにより動かされることで、「上部旋回体3」の「旋回」、「ブーム4」の「上げ」と「下げ」、「アーム5」の「開き」と「閉じ」、及び、「バケット6」の「開き」と「閉じ」という全体として7種類(複数の種類)の動作が行われるものである。
そして、第2の1(3)ウ(ア)を踏まえると、引用発明1の「上部旋回体3」及び「ブーム4、アーム5、及びバケット6」による動作は、本願補正発明1の「上部旋回体に対応する前記個別動作、前記ブームに対応する前記個別動作、前記アームに対応する前記個別動作、及び前記エンドアタッチメントに対応する前記個別動作の全体として、複数の種類」を有することに相当する。
(ウ) 引用発明1における「ダンプ動作」は、「バケット6内の土を排出」する動作であるから、本願補正発明1の「排土動作」に相当し、また、引用発明1の「掘削動作区間」、「ブーム上げ旋回動作区間」、「ダンプ動作区間」、及び「ブーム下げ旋回動作区間」のそれぞれは、本願補正発明1の「掘削動作に対応する動作区間」、「ブーム上げ旋回動作に対応する動作区間」、「排土動作に対応する動作区間」、及び「ブーム下げ旋回動作に対応する動作区間」に相当する。
さらに、引用発明1の「複数の動作区間」は、「掘削動作区間」、「ブーム上げ旋回動作区間」、「ダンプ動作区間」、及び「ブーム下げ旋回動作区間」があり、「ブーム下げ旋回動作、掘削動作、ブーム上げ旋回動作、ダンプ動作、ブーム下げ旋回動作を一サイクルとしてこのサイクルを繰り返し行いながら、掘削・積込みを進めてい」くから、本願補正発明1の「掘削動作に対応する動作区間、ブーム上げ旋回動作に対応する動作区間、排土動作に対応する動作区間、及びブーム下げ旋回動作に対応する動作区間により構成される、ショベルの掘削作業における一連の動作区間」に相当する。
(エ) 引用発明1の掘削・積込み動作における、上部旋回体3を旋回して且つ、アーム5が開きバケット6も開いた状態で、オペレータはブーム4を下げ、バケット6の先端が目標の掘削深さDとなるようにバケット6を下降させる動作区間であるブーム下げ旋回動作区間、オペレータがバケット6の先端が目標の掘削深さDに到達したと判断したら、水平引き動作に移り、バケット6の先端がほぼ水平に移動するようアーム5を閉じ、次に、アーム5に対して90度になるまでバケット6を閉じる動作を、掘削動作と称し、この動作区間を掘削動作区間、次に、バケット6を閉じたままバケット6の底部が所定の高さHとなるまでブーム4を上げ、これに続いて、あるいは同時に、上部旋回体3を旋回して排土する位置までバケット6を旋回移動する動作をブーム上げ旋回動作と称し、この動作区間をブーム上げ旋回動作区間、次に、アーム5及びバケット6を開いて、バケット6内の土を排出する動作をダンプ動作と称し、この動作区間をダンプ動作区間の個別の可動部位の動作は、第2の1(3)ウ(ウ)を踏まえると、本願補正発明1における「複数の動作区間では、前記上部旋回体、前記ブーム、前記アーム、及び前記エンドアタッチメントのうち「少なくとも2つを動作させることにより実現される、互いに異なる複合動作を行」うことに相当する。
(オ) 引用発明1における「油圧ショベル」は、本願補正発明1における「ショベル」に相当する。
イ 一致点・相違点
したがって、本願補正発明1と引用発明1とは、
<一致点>
「個別の可動部位として、上部旋回体、ブーム、アーム、及びエンドアタッチメントを備え、
前記個別の可動部位が実行可能な個別動作は、前記上部旋回体に対応する前記個別動作、前記ブームに対応する前記個別動作、前記アームに対応する前記個別動作、及び前記エンドアタッチメントに対応する前記個別動作の全体として、複数の種類あり、
ショベルの掘削作業には、掘削動作に対応する動作区間、ブーム上げ旋回動作に対応する動作区間、排土動作に対応する動作区間、及びブーム下げ旋回動作に対応する動作区間により構成される、一連の複数の動作区間があり、
前記複数の動作区間では、前記上部旋回体、前記ブーム、前記アーム、及び前記エンドアタッチメントのうちの少なくとも2つを動作させることにより実現される、互いに異なる複合動作を行う、
ショベル。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
本願補正発明1の「ショベル」は、「前記複数の動作区間ごとに、複数の種類の前記個別動作のうちの対象の動作区間に不要な前記個別動作のみが制限され、且つ、複数の種類の前記個別動作のうちの対象の動作区間に不要な前記個別動作の全てが制限される」のに対して、引用発明1の「油圧ショベル」は、前記複数の動作区間ごとに、複数の種類の前記個別動作のうちの対象の動作区間に不要な前記個別動作のみが制限され、且つ、複数の種類の前記個別動作のうちの対象の動作区間に不要な前記個別動作の全てが制限される旨の特定がされていない点。
ウ 検討・判断
相違点について検討する。
(ア) 引用文献2記載事項における「旋回台」、「ブーム」、「伸縮アーム体」、「バケット」、及び「深掘り掘削機」は、それぞれ、本願補正発明1における「旋回体」、「ブーム」、「アーム」、「エンドアタッチメント」、及び「ショベル」に相当する。
引用文献2記載事項における「旋回台」は、油圧モーターにより動かされ、また「ブーム、伸縮アーム体、及びバケット」は、それぞれ個別の油圧シリンダーにより、動かされるから、引用文献2記載事項の「旋回台、ブーム、伸縮アーム体、及びバケット」は、本願補正発明1の「個別の可動部位」に相当する。また、引用文献2記載事項の「旋回台、ブーム、伸縮アーム体、及びバケット」が個別に実行可能な動作を含むことは明らかである。
(イ) 引用文献2記載事項の「深掘り掘削機」は、『伸縮アーム体22が伸長している』状態で、かつ、『伸縮アーム体22が20度以下の角度である』状態も、『伸縮アーム体22が伸長している』状態で、かつ、『伸縮アーム体22が20度以上の角度である』状態もとることができるから、各状態をとっている間は、本願補正発明1における「動作区間」に相当する。
また、引用文献2記載事項の「深掘り掘削機」は、『伸縮アーム体22が伸長している』状態で、かつ、『伸縮アーム体22が20度以下の角度である』状態においては、旋回台13の回転は規制して通常の回転速度では回転しないようになっているところ、これは「旋回台13を左右に回転させると、伸縮アーム体22の側面に深い穴Wの内壁が衝突することになり、伸縮アーム体22を損傷させる原因となる」ために、通常の回転速度での回転は不要であることによるものといえる。
そして、引用文献2記載事項の「規制」は、動作を制限することであるから、本願補正発明1の「ショベル」と引用文献2記載事項の「深掘り掘削機」は、「複数の動作区間ごとに、複数の種類の個別動作のうちの対象の動作区間に不要な前記個別動作のみが制限され、且つ、複数の複数の種類の個別動作のうちの対象の動作区間に不要な前記個別動作の全てが制限され」る制御を行う点において共通する。
(ウ) 引用発明1と引用文献2記載事項は、いずれも「旋回体、ブーム、アーム、及びバケット」を有するショベル(掘削機)という技術分野に属する。そして、引用文献1の【0003】には、「建設機械は内燃機械の動力や油圧等を用いて大きな力でアーム等を動かす作業が多く、オペレータが操縦を誤って意図しない動きを指令してしまった場合に、移動する部分が作業範囲内の物体と干渉して物体を損傷してしまうおそれがある。」と記載されるとともに、【0029】には「各動作が完了したか否か、すなわち各動作区間においてなすべき動作が終了したか否かはオペレータの判断によるものであり、オペレータが判断を誤った場合などは、一つの動作区間が完了しないのに、次の動作区間に移行してしまうおそれがある。そのような場合は、完了しなかった動作区間をやり直すことで作業効率が低下するばかりでなく、例えば、バケット6をダンプカーの荷台にぶつけて損傷するといった問題を引き起こす可能性がある。」と記載されていることから、当業者であれば、引用発明1が、オペレータが操縦を誤って、移動する部分が損傷するという安全上の問題を有することが把握できる。そして、引用文献2記載事項もまた、「運転手の不注意による誤操作を防止する」「故障の発生を未然に防止する」(【0006】)という課題を有するものである。
してみると、引用発明1において、オペレータの誤操作による個別の可動部位の損傷を防止するために、引用文献2記載事項の動作区間に不要な動作の全てを制限する制御技術を採用することは、当業者が容易になし得ることであり、その際に、ショベルを構成する個別部位の損傷を防止するという当該技術分野において広く知られた設計思想に鑑み、掘削動作に対応する動作区間、ブーム上げ旋回動作に対応する動作区間、排土動作に対応する動作区間、及び、ブーム下げ旋回動作に対応する動作区間により構成される複数の動作区間ごとに、対象の動作区間に不要な個別動作の全てを制限するよう具体的な設計をすることは、当業者の通常の創作活動の範囲でなし得る程度のことである。
そして、本願補正発明1の奏する作用効果は、引用発明1及び引用文献2記載事項が奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張の概要
請求人は、令和7年3月19日付けの意見書において次の主張を行っている。
「補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」)は、「ショベル」について、「個別の可動部位として、上部旋回体、ブーム、アーム、及びエンドアタッチメントを備え」る点、「前記個別の可動部位が実行可能な個別動作は、前記上部旋回体に対応する前記個別動作、前記ブームに対応する前記個別動作、前記アームに対応する前記個別動作、及び前記エンドアタッチメントに対応する前記個別動作の全体として、複数の種類あ」る点、及び「ショベルの掘削作業には、掘削動作に対応する動作区間、ブーム上げ旋回動作に対応する動作区間、排土動作に対応する動作区間、及びブーム下げ旋回動作に対応する動作区間により構成される、一連の複数の動作区間があ」る点を前提として、「前記複数の動作区間では、前記上部旋回体、前記ブーム、前記アーム、及び前記エンドアタッチメントのうちの少なくとも2つを動作させることにより実現される、互いに異なる複合動作を行」う点、及び「前記複数の動作区間ごとに、複数の種類の前記個別動作のうちの対象の動作区間に不要な前記個別動作のみが制限され、且つ、複数の種類の前記個別動作のうちの対象の動作区間に不要な前記個別動作の全てが制限される」点を特徴とします。
本願発明の上記特徴は、引用文献1,2に全く記載されておりませんし示唆もされておりません。
ここで、審判長殿は、旧請求項1について、以下のように述べられました。
"引用発明2の「深掘り掘削機」は、『伸縮アーム体22が伸長している』状態で、かつ、『伸縮アーム体22が20度以下の角度である』状態も、『伸縮アーム体22が伸長している』状態で、かつ、『伸縮アーム体22が20度以上の角度である』状態もとることができるから、各状態をとっている間は、本願発明における「複数の動作区間」に相当する。"
しかしながら、審判長殿が「動作区間」と認定される、各状態は、伸縮アーム体22が20度以下の角度であるか、20度以上の角度であるかの違いしかなく、単に、アタッチメント(伸縮アーム体22)の姿勢状態の複数の区分を表しているに過ぎないことは明らかです。つまり、引用文献2には、伸縮アーム体22の姿勢状態の複数の区分ごとの動作制限の違いを開示しているに過ぎず、引用文献1に対して、引用文献2の技術を適用しても、アタッチメントの姿勢状態に応じて、動作制限の態様を変化させる構成にしかなり得ません。
また、引用文献2に開示される、同じ動作(アタッチメントの動作)が実行されることを前提とするアタッチメント(伸縮アーム体20)の姿勢状態の複数の区分と、引用文献1に開示される、互いに異なる複合動作が実行されることを前提とする複数の動作区間(『掘削動作区間』、『ブーム上げ旋回動作区間』、『ダンプ動作区間』、及び『ブーム下げ旋回動作区間』)とでは、その概念が全く異なっており、同じ動作を前提とするアタッチメントの姿勢状態の区分ごとの動作制限の違いの考え方を、互いに異なる複合動作が実行されることを前提とする複数の動作区間ごとの動作制限に適用する必然性や動機付けが全く存在し得ません。
また、引用文献1には、『オペレータが操縦を誤って意図しない動きを指令してしまった場合に、移動する部分が作業範囲内の物体と干渉して物体を損傷してしまうおそれがある。』(段落0003参照)と記載されてはいるものの、具体的には、『例えば、バケット6をダンプカーの荷台にぶつけて損傷するといった問題を引き起こす可能性がある。』(段落0029参照)との記載があるのみです。そのため、仮に、引用文献1の互いに異なる複合動作が実行されることを前提とする複数の動作区間に対して、引用文献2のアタッチメント(伸縮アーム体20)の姿勢状態の複数の区分ごとの動作制限の方法を適用する必然性や動機付けがあるとしても、引用文献1の『掘削動作区間』、『ブーム上げ旋回動作区間』、『ダンプ動作区間』、及び『ブーム下げ旋回動作区間』ごとに、不要な動作のみを制限しようとする際に、ダンプカーの荷台にぶつけないようにするためにどの個別動作を制限すべきなのかは、引用文献1,2の記載からは全く判然としません。特に、『掘削動作』の際に、ダンプカーの荷台にぶつける可能性は比較的低く、ダンプカーの荷台との干渉を防ぐための動作制限を採用することができないことは明らかです。仮に、作業範囲のダンプカー以外の他の物体との干渉を回避する構成を採用するにしても、その物体がどの場所にいるかによって、制限すべき個別動作は変わってくることは、出願時の技術常識から明らかであり、引用文献1,2の記載のみに依拠しても、複数の動作区間ごとに、不要な個別動作のみを制限する態様を採用することは、出願時の技術常識を考慮しても不可能です。
また、仮に、引用文献1,2の記載に依拠して、旧請求項1のように、「複数の動作区間ごとに、複数の種類の前記個別動作のうちの対象の動作区間に不要な前記個別動作のみが制限される」態様を実現することが可能であるとしても、引用文献2では、伸縮アーム体22が伸長している状態で、かつ、伸縮アーム体22が20度以上の角度である状態の場合、旋回台13の動作を制限することが記載されているだけであり、この状態において、どのような個別動作が必要とされているかについて全く言及されていません。つまり、引用文献2では、この状態において、どのような動作が必要な動作であり、どのような動作が不要な動作かについて明確に定義されておらず、本願発明のように「前記複数の動作区間ごとに、・・・複数の種類の前記個別動作のうちの対象の動作区間に不要な前記個別動作の全てが制限される」態様は全く記載されておりませんし示唆もされておりません。そのため、引用文献1,2に依拠しても、当業者は、本願発明に全く到達し得ません。」
(イ) 請求人の主張に対する見解
しかしながら、上記ウ(イ)に示したように、引用文献2記載事項は、「複数の動作区間ごとに、複数の種類の個別動作のうちの対象の動作区間に不要な前記個別動作の全てが制限され」る制御を行うものである。
そして、引用発明1と引用文献2記載事項は、いずれも「旋回体、ブーム、アーム、及びバケット」を有するショベル(掘削機)という技術分野に属し、上記ウ(ウ)に示したように、当業者であれば、引用発明1が、オペレータが操縦を誤って、移動する部分が損傷するという安全上の問題を有することを把握することができ、引用文献2記載事項もまた、「運転手の不注意による誤操作を防止する」「故障の発生を未然に防止する」(【0006】)という課題を有するものであるから、上記ウに示した判断を左右するものではなく、請求人の主張を採用できない。
オ 小括
以上のとおりであるから、本願補正発明1は、引用発明1及び引用文献2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 本件補正1についてのむすび
よって、本件補正1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法第156条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正1は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1~6に係る発明は、令和6年11月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 当審による拒絶理由の概要
令和7年1月9日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
(1) 理由1
(新規事項)令和6年11月15日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(2) 理由2
(進歩性)本件出願の請求項1~6に係る発明は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2011-94453号公報
引用文献2.特開平10-77659号公報
3 当審の判断
(1) 理由1について
ア 本願発明の補正の内容
本願発明1は、令和6年11月15日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正2」という。)は、特許請求の範囲について、令和5年12月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載を、本件補正1前に相当する本件補正2後の特許請求の範囲の記載へと補正するものである。以下に、それぞれの特許請求の範囲の請求項1の記載を示す(下線は当審にて付した補正箇所を示す。)。
<本件補正2前>
「【請求項1】
予め規定される一連の複数の動作区間ごとに、複数の個別の可動部位のそれぞれにより実行可能な個別動作のうちの対象の動作区間に不要な個別動作のみが制限され、
前記複数の個別の可動部位には、上部旋回体、ブーム、アーム、及びエンドアタッチメントが含まれ、
前記複数の個別の可動部位のそれぞれにより実行可能な個別動作は、前記上部旋回体、前記ブーム、前記アーム、及び前記エンドアタッチメントのそれぞれが個別に実行可能な動作を含む、
ショベル。」
<本件補正2後(本件補正1前)>
「【請求項1】
個別の可動部位として、上部旋回体、ブーム、アーム、及びエンドアタッチメントを備え、
前記個別の可動部位が実行可能な個別動作は、複数の種類あり、
掘削動作に対応する動作区間、ブーム上げ旋回動作に対応する動作区間、排土動作に対応する動作区間、及びブーム下げ旋回動作に対応する動作区間により構成される、ショベルの掘削作業における一連の複数の動作区間ごとに、複数の種類の前記個別動作のうちの対象の動作区間に不要な前記個別動作のみが制限される、
ショベル。」
イ 補正事項について
本件補正2により、請求項1は、
「個別の可動部位として、上部旋回体、ブーム、アーム、及びエンドアタッチメントを備え、
前記個別の可動部位が実行可能な個別動作は、複数の種類あり」との構成を含むものに補正された。
ウ 新たな技術的事項を追加したか否かについての検討・判断
(ア) 本件補正2後の請求項1の「個別の可動部位として、上部旋回体、ブーム、アーム、及びエンドアタッチメントを備え、前記個別の可動部位が実行可能な個別動作は、複数の種類あり」との構成について、直接的にその意味を示す記載は、当初明細書等に見出すことができない(下線部は、当審合議体が付した。以下同様。)。
ここで、図7等を参酌すると、「個別の可動部位」は、「上部旋回体」等、複数示されており、上記下線部の構成は、「前記個別の可動部位」のそれぞれが「実行可能な個別動作は、複数の種類あり」と解するのが自然である。
(イ) 請求人は、令和6年11月15日付け意見書において、発明の詳細な説明の【0153】、【0159】、【0160】、【0162】、【0164】、【0166】、及び図面の図7を補正の根拠として示している。
しかしながら、明細書の発明の詳細な説明には、「ブーム」、「アーム」、「エンドアタッチメント」について、複数の種類の「個別動作」が記載されているものの、「上部旋回体」については、1つの「個別動作」しか示されておらず、他の「個別動作」が示唆されているともいえない。
(ウ) そうすると、本件補正2後の「個別の可動部位として、上部旋回体、ブーム、アーム、及びエンドアタッチメントを備え、前記個別の可動部位が実行可能な個別動作は、複数の種類あり」との発明特定事項は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
エ したがって、本件補正2は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反しているものである。
(2) 理由2について
ア 本願発明
本願発明1は、上記(1)で示したとおり、本件補正2は特許法第17条の2第3項の規定に違反しているものであるが、仮に、本願の請求項1~6に係る発明が、本件補正2によって補正されたとおりのものであった場合について検討すると、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、上記第2の[理由]1(2)に示した本願発明1である。
イ 引用文献の記載、引用発明等
当審の拒絶の理由で引用された引用文献1及び引用発明、引用文献2及び引用文献2記載の技術的事項は、それぞれ上記第2の[理由]2(2)のとおりである。
ウ 対比・判断
本願発明1は、上記第2の[理由]2(2)のとおり、本願補正発明1の「複数の動作区間では、前記上部旋回体、前記ブーム、前記アーム、及び前記田土アタッチメントのうち、少なくとも2つを動作させることにより実現される、互いに異なる複合動作を行」うこと、及び「複数の種類の前記個別動作のうち対象の動作区間に不要な前記個別動作の全てが制限される」ことを追加することにより限定しているものである。
そうしてみると、本願発明1の発明特定事項を全て含み、上記限定した事項を含む本願補正発明1が、上記第2の[理由]3(1)に記載したとおり、引用発明1及び引用文献2記載事項に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、本願発明1も、引用発明1及び引用文献2記載事項に基づいて、当業者が容易になし得たものである。
第4 むすび
上記のとおり、特許法第17条の2第3項の規定を満たしていない補正をした特許出願に対してされたことに該当するから、本願は拒絶されるべきものである。
また、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり結審する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-021176