特許拒絶査定不服審判
2023-014667
ショベル
- 審判番号
- 2023-014667
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-196149外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年08月30日
- 審決日
- 2025年07月10日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】住友重機械工業株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 分類
- P18 .575-WZ (E02F) / P18 .121-WZ (E02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-196149「ショベル」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 5月 6日出願公開、特開2021- 70922〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
(1)原査定まで
本願は、令和元年10月29日の出願であって、令和5年2月14日付けで拒絶理由が通知され、同年4月24日付けで意見書及び手続補正書が提出されたのに対し、同年5月22日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされたものである(謄本送達日(オンライン)は同月30日。)。
(2)審判請求以降
原査定に対し、同年8月30日に審判請求がされるとともに手続補正書が提出された。
その後の経緯の概要は、以下のとおりである。
・令和6年 8月 9日付け: 拒絶理由通知
・ 同年10月15日付け: 意見書及び手続補正書の提出
・令和7年 2月28日付け: 拒絶理由通知(最後)
・ 同年 5月12日付け: 意見書及び手続補正書の提出
第2 令和7年5月12日付け手続補正書による補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年5月12日付け手続補正書による補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
令和7年5月12日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項2についてみれば、下記(1)に示す本件補正前(令和6年10月15日付け手続補正書による補正後)の請求項2を、下記(2)に示す本件補正後のとおり補正するものである(下線は補正箇所を示す。)
(1)本件補正前
「【請求項2】
ショベルの周囲の物体の位置及び形状に関する情報を取得する取得装置と、
前記取得装置により取得された最新の情報よりも過去の複数の時点の情報から、前記最新の情報における死角領域の前記物体の位置及び形状に関する情報を含む情報を抽出することにより、前記死角領域の前記物体の位置及び形状を推定する推定装置と、を備え、
前記推定装置は、前記取得装置が遮るものがないと仮定したときに情報を取得可能な範囲の外に相当する、前記最新の情報における前記死角領域の前記物体の位置及び形状を推定する、
ショベル。」
(2)本件補正後
「【請求項2】
ショベルの周囲の物体の位置及び形状に関する情報を取得する取得装置と、
ショベルの作業中において、前記取得装置により取得された最新の情報よりも過去の複数の時点の情報から、前記最新の情報における死角領域の前記物体の位置及び形状に関する情報を含む情報を抽出することにより、前記死角領域の前記物体の位置及び形状を推定する推定装置と、を備え、
前記推定装置は、ショベルの作業中において、前記取得装置が遮るものがないと仮定したときに情報を取得可能な範囲の外に相当する、前記最新の情報における前記死角領域の前記物体の位置及び形状を推定する、
ショベル。」
2 補正目的
本件補正は、本件補正前の請求項2に係る発明について、「ショベルの作業中において」という限定を加える補正であるから、特許法17条の2第5項2号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認める。
3 独立特許要件
本件補正後の請求項2に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができたか否かについて、以下に判断する。
(1)本願補正発明
本件補正後の請求項2に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記1(2)に示した本件補正後の特許請求の範囲の請求項2の記載により特定されるべきものである。
(2)引用文献の記載及び引用発明等について
ア 引用文献1
(ア)記載
本願出願前に公開され、令和7年2月28日付け拒絶理由通知(最後)で引用された、特開2018-35645号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載及び図示がある(下線は、当審において付した。以下、同様。)。
「【0029】
油圧ショベル1は、通信装置25と、作業機制御装置27と、姿勢検出装置32と、撮像装置19と、距離検出装置20と、アンテナ21,22と、位置演算装置23とを備える。作業機制御装置27は、作業機2を制御する。通信装置25は、アンテナ24に接続されており、施設50に備えられた通信装置54と通信する。作業機制御装置27は、作業機2及び上部旋回体3を制御する。姿勢検出装置32は、作業機2及び油圧ショベル1の少なくとも一方の姿勢を検出する。撮像装置19は、油圧ショベル1に取り付けられて、作業対象WAを撮像する。距離検出装置20は、油圧ショベル1の所定の位置から作業対象WAまでの距離の情報を求める。アンテナ21,22は、測位衛星200からの電波を受信する。位置演算装置23は、アンテナ21,22が受信した電波を用いて、アンテナ21,22のグローバル位置、すなわちグローバル座標系における位置を求める。
【0030】
<油圧ショベル1の全体構成>
油圧ショベル1は、本体部としての車両本体1Bと作業機2とを有する。車両本体1Bは、上部旋回体3と走行体である走行装置5とを有する。上部旋回体3は、運転室4を有する。走行装置5は、上部旋回体3を搭載する。走行装置5は履帯を有している。走行装置5は、履帯が回転することにより、油圧ショベル1を走行させる。作業機2は、上部旋回体3の運転室4の側方側に取り付けられている。
・・・・
【0032】
作業機2は、ブーム6とアーム7と作業具であるバケット8とブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とを有する。バケット8は、複数の刃8Bを有する。刃先8Tは、刃8Bの先端である。バケット8は、複数の刃8Bを有するものには限定されない。バケット8は、チルトバケットであってもよい。この他にも、作業機2は、バケット8の代わりに、法面バケット又は削岩用のチップを備えた削岩用のアタッチメント等を作業具として備えていてもよい。
・・・・
【0036】
撮像装置19は、図1に示される作業対象WAを撮像し、距離検出装置20は、自身(油圧ショベル1の所定の位置)から作業対象WAまでの距離を求めるので、できる限り広い作業対象WAからの情報を取得することが好ましい。このため、実施形態において、アンテナ24、撮像装置19及び距離検出装置20は、上部旋回体3の運転室4の上方に設置される。撮像装置19及び距離検出装置20が設置される場所は運転室4の上方に限定されるものではない。例えば、撮像装置19及び距離検出装置20は、運転室4の内部かつ上方に設置されてもよい。
・・・・
【0066】
図8は、占有領域SAを説明する図である。占有領域SAは、作業対象WAの形状の情報内において、作業機2が占める領域である。図8に示される例では、作業機2のバケット8が距離検出装置20の検出範囲MA内、かつ距離検出装置20と作業対象WAとの間に入っている。このため、占有領域SAの部分は、距離検出装置20によって、作業対象WAまでの距離ではなくバケット8までの距離が検出される。ステップS105において、処理装置51は、ステップS103で得られた作業対象WAの形状の情報から、占有領域SAの部分を除去する。
・・・・
【0082】
図14は、図1に示された基準画像65と第1画像IMCとを示す図である。案内画像60が生成されたら、ステップS107に進み、処理装置51は、基準画像65を生成する。基準画像65は、作業対象WAの表面WASに沿った線画像である。処理装置51は、作業対象WAの位置の情報、詳細には作業対象WAの表面WASにおける位置の情報を用いて、基準画像65を生成する。
・・・・
【0088】
図15は、作業用の画像69を示す図である。ステップS109において、処理装置51は、占有領域SAが除去された案内画像60と、基準画像65と、撮像装置19によって撮像された作業対象WAの第2画像68とを合成して、作業用の画像69を生成する。ステップS110において、処理装置51は、生成された作業用の画像69を表示装置52に表示させる。作業用の画像69は、作業対象WAの画像68と、基準画像65と、案内画像60とが合成された画像である。
・・・・
【0101】
<変形例に係る油圧ショベル1の制御系>
図18は、変形例に係る油圧ショベル1の制御系1Saを示す図である。前述した画像表示システム100及び遠隔操作システム101は、図1に示される施設50の操作装置53を用いて油圧ショベル1を遠隔操作した。本変形例は、図2に示される運転室4内に表示装置52aが設けられている。本変形例は、油圧ショベル1にオペレータの作業を補助させるために、作業用の画像69が表示装置52aに表示される。
【0102】
制御系1Saは、前述した制御系1Sの信号線35に、処理装置51及び操作装置53aが接続されている。処理装置51には、表示装置52aが接続されている。制御系1Saが備える処理装置51は、前述した画像表示システム100及び遠隔操作システム101において図1に示される施設50に備えられる処理装置51と同様の機能を有している。処理装置51及び表示装置52aによって、変形例に係る画像表示システム100aが構成される。
・・・・
【0107】
制御系1Saを備える油圧ショベル1は、画像表示システム100aによって、所定の位置、例えば運転席に着座したオペレータの視点に対応する位置から作業対象WAを見た場合に、第1画像IMCを少なくとも含む作業用の画像69が、フロントウィンドウFGに表示される。このような処理により、オペレータは、フロントウィンドウFGに画像に表示された第1画像IMCによって、バケット8と作業位置との位置関係を容易かつ確実に把握できる。その結果、画像表示システム100aは、作業効率の低下及び作業の精度の低下を抑制させることができる。バケット8が油圧ショベルの車両本体1Bから離れるほど、オペレータは遠近感を把握し難くなるため、このような場合において、画像表示システム100aは作業効率及び作業の精度の低下を抑制するができる。
・・・・
【0118】
前述の実施形態では、距離検出装置20により検出された油圧ショベル1の一部、例えば、前述のようにバケット8を除去し、作業対象WAの形状の情報(3次元地形データ)とした。しかし、過去、例えば数秒前に取得した3次元地形データを処理装置51の記憶部51Mに記憶しておき、処理装置51の処理部51Pが、現在の作業対象WAと、その記憶されている3次元地形データとが同じ位置であるのか判断し、同じ位置であるのであれば、過去の3次元地形データを用いて、基準画像65又は65aを表示させてもよい。つまり、処理装置51は、撮像装置19から見て、油圧ショベル1の一部によって隠れている地形があっても、過去の3次元地形データがあれば、基準画像65又は65aを表示させることができる。」
(イ)記載された発明
上記(ア)より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、各構成を認定する根拠とした段落番号を、括弧書きで付した。
<引用発明>
「撮像装置19と、距離検出装置20とを備え、距離検出装置20は、油圧ショベル1の所定の位置から作業対象WAまでの距離の情報を求める、油圧ショベル1において、(【0029】)
油圧ショベル1は、作業機2、上部旋回体3、走行装置5を有し、上部旋回体3は、運転室4を有し、(【0030】)
油圧ショベル1の作業機2は、ブーム6とアーム7と作業具であるバケット8とを備え、(【0032】)
距離検出装置20は、できる限り広い作業対象WAからの情報を取得することが好ましく、(【0036】)
作業機2のバケット8が距離検出装置20の検出範囲MA内、かつ距離検出装置20と作業対象WAとの間に入る場合、占有領域SAの部分は、距離検出装置20によって、作業対象WAまでの距離ではなくバケット8までの距離が検出されるところ、処理装置51は、得られた作業対象WAの形状の情報から、占有領域SAの部分を除去し、(【0066】)
処理装置51は、案内画像60を生成するとともに、作業対象WAの位置の情報、詳細には作業対象WAの表面WASにおける位置の情報を用いて、作業対象WAの表面WASに沿った線画像である基準画像65を生成し、(【0082】)
処理装置51は、作業対象WAの画像68と、基準画像65と、案内画像60とが合成された作業用の画像69を生成し、(【0088】)
処理装置51が接続された制御系ISaを備える油圧ショベル1は、運転室4内の表示装置52aに、オペレータの作業を補助させるために、作業用の画像69が表示され、(【0101】、【0102】、【0107】)
処理装置51は、距離検出装置20により検出されたバケット8を除去して作業対象WAの形状の情報(3次元地形データ)とした部分に関し、過去、例えば数秒前に取得した3次元地形データを処理装置51の記憶部51Mに記憶しておき、現在の作業対象WAと、その記憶されている3次元地形データとが同じ位置であるのか判断し、同じ位置であるのであれば、過去の3次元地形データを用いて、油圧ショベル1の一部によって隠れている地形があっても、基準画像65を表示させることができる(【0118】)、
油圧ショベル1(【0029】)。」
イ 引用文献2
本願出願前に公開され、令和7年2月28日付け拒絶理由通知(最後)で引用された、国際公開第2017/170651号(以下「引用文献2」という。なお、上記拒絶理由通知では引用文献5としていた。)には、次の記載がある。なお、段落番号の後に当審で改行を付した。
「[0052]
進捗領域特定部F4は、所定期間中に作業現場内でショベル100による作業が進捗した進捗領域を特定できる。本実施例では、前回の特定が行われた後の軌跡情報に基づいて前回の特定後にバケット6の爪先が通った領域を進捗領域として特定する。進捗領域は、例えば、複数の位置情報(緯度、経度、及び高度)を用いてその境界を導き出すことによって特定される。
・・・・
[0056]
地形データ生成部F6は、作業現場の3次元地形データを生成できる。本実施例では、地形データ生成部F6は、施工前の作業現場の3次元地形データと進捗領域の3次元地形データとに基づいて現在(施工中)の作業現場の3次元地形データを生成する。
[0057]
施工前の作業現場の3次元地形データは、例えば、トータルステーション測量、GNSS測量等によって生成される。飛行体200のカメラ205が撮像した作業現場の全域の画像に基づいて生成されてもよい。
[0058]
具体的には、地形データ生成部F6は、飛行体200のカメラ205が撮像した進捗領域の画像から進捗領域に関する3次元地形データを生成する。
[0059]
そして、地形データ生成部F6は、進捗領域に関する3次元地形データと、進捗領域以外の領域に関する3次元地形データとをつなぎ合わせて作業現場の現在の3次元地形データを生成する。進捗領域以外の領域に関する3次元地形データは、施工前の作業現場の3次元地形データ、又は、地形データ生成部F6が過去に生成した3次元地形データをそのまま用いればよい。進捗領域以外の領域の地形は変化していないと推定できるためである。」
ウ 引用文献3
本願出願前に公開され、令和7年2月28日付け拒絶理由通知(最後)で引用された、特開2008-248613号公報(以下「引用文献3」という。なお、上記拒絶理由通知では引用文献6としていた。)には、次の記載及び図示がある。
(ア)段落【0063】-【0065】
「【0063】
カメラ13が油圧ショベルの前方,後方,左側方,右側方の四方に設置してあれば、現在の作業現場の周囲全体が撮影される。一方、カメラ13が油圧ショベルの後方のみ1台であれば、前方シーン,左側方シーン,右側方シーンは、過去の映像を用いて作業現場の周囲全体が作成できる。したがって、作業機械周辺全体の監視が可能になる。
・・・・
【0065】
本実施例においては、運転員から死角にある右側方および後方にカメラ13a,13bを設置し、右側方および後方をカメラ13で監視し、右側方および後方の現在の撮影シーンを表示する。」
(イ)【0072】-【0079】
「【0072】
図12は、実施例1のパノラマ合成手段600における処理手順を示すフローチャートである。
【0073】
パノラマ合成手段600は、ステップ601で、カメラ13aの現在の右側方俯瞰画像を読込み、ステップ602で、カメラ13bの現在の後方俯瞰画像を読込んで、ステップ603で、読込んだ画像間で同一または類似パターンを探索し、その位置を算出する。ステップ604で、その位置の映像同士を重ねて現在のパノラマ画像を生成する。
【0074】
パノラマ合成手段600は、ステップ605で、カメラ13aの過去の右側方俯瞰画像を読込み、ステップ606で、カメラ13bの過去の後方俯瞰画像を読込んで、ステップ607で、読込んだ画像間で同一または類似パターンを探索し、その位置を算出する。ステップ608で、その位置の映像同士を重ねて過去のパノラマ画像を生成する。
【0075】
パノラマ合成手段600は、ステップ609で、ステップ604で生成した現在のパノラマ画像とステップ608で生成した過去のパノラマ画像間で、同一または類似パターンを探索し、その位置を算出する。ステップ610で、ステップ609で算出した位置情報から、現在のパノラマ画像と過去のパノラマ画像同士を重ねて表示用パノラマ画像を生成する。
【0076】
図13は、パノラマ合成手段600におけるパノラマ画像合成手順を説明する図である。
【0077】
カメラ13aの右側方俯瞰画像20とカメラ13bの後方俯瞰画像21において、画像20のパターン520と画像21のパターン521とは同一または類似のパターンなので、これらを重ね合わせると、現在のパノラマ画像530を生成できる。
【0078】
次に、過去の右側方俯瞰画像22と過去の後方俯瞰画像23において、画像22のパターン522と画像23のパターン523とは同一または類似のパターンなので、これらを重ね合わせると、過去のパノラマ画像531を生成できる。
【0079】
最後に、現在のパノラマ画像530と過去のパノラマ画像531において、パノラマ画像530のパターン524とパノラマ画像531のパターン525とは同一または類似のパターンなので、これらを重ね合わせると、表示用パノラマ画像532を生成できる。」
(ウ)【図12】
「
[図:0001427241000001.jpg]
」
(エ)【図13】
「
[図:0001427241000002.jpg]
」
(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明において、「油圧ショベル1の所定の位置から作業対象WAまでの距離の情報を求める」「距離検出装置20」は、本願補正発明において、「ショベルの周囲の物体の位置及び形状に関する情報を取得する取得装置」に相当する。
引用発明において、「油圧ショベル1」が備える「距離検出装置20」が検出する「油圧ショベル1の所定の位置から作業対象WAまでの距離の情報」のうち、「過去、例えば数秒前に取得した」ものである「過去」の情報と対比して、「過去」とされない最新の情報は、「距離検出装置20」が「油圧ショベル1」の作業中に、「オペレータの作業を補助させるために」距離の情報を検出することが明らかであることを踏まえると、本願補正発明において、「ショベルの作業中において、前記取得装置により取得された最新の情報」に相当する。
本願補正発明における「ショベルの作業中において、前記取得装置により取得された」「過去の複数の時点の情報」と、引用発明に、「距離検出装置20」が検出する「油圧ショベル1の所定の位置から作業対象WAまでの距離の情報」のうち「過去、例えば数秒前に取得した」情報とは、「距離検出装置20」が検出した「過去」の情報は、「油圧ショベル1」の作業中に「オペレータの作業を補助させるために」検出した情報のうちの「過去」の情報であることが明らかであることを踏まえると、「ショベルの作業中において、前記取得装置により取得された」「過去の時点の情報」という点で、共通する。
引用発明において、「距離検出装置20により検出されたバケット8を除去」した「部分」は、「作業機2のバケット8が距離検出装置20の検出範囲MA内、かつ距離検出装置20と作業対象WAとの間に入る場合、占有領域SAの部分は、距離検出装置20によって、作業対象WAまでの距離ではなくバケット8までの距離が検出される」ことで、現在の「作業対象WA」が「油圧ショベル1の一部によって隠れている」部分であるから、本願補正発明において、「ショベルの作業中において」「前記最新の情報における死角領域」に、相当する。
引用発明における「基準画像65」は、「作業対象WAの位置の情報、詳細には作業対象WAの表面WASにおける位置の情報を用いて、作業対象WAの表面WASに沿った線画像」として「生成」しているから、「基準画像65」を表示している箇所においては、「作業対象WAの表面WAS」の複数点の「位置の情報」からなる位置及び形状を用いていることが明らかであることを踏まえると、引用発明において「処理装置51」が、「オペレータの作業を補助させるため」に、「現在の作業対象WAと、その記憶されている3次元地形データとが同じ位置であるのか判断し、同じ位置であるのであれば、過去の3次元地形データを用いて、油圧ショベル1の一部によって隠れている地形があっても、基準画像65を表示させる」構成は、本願補正発明において、「ショベルの作業中において」「前記最新の情報における死角領域の前記物体の位置及び形状に関する情報を含む情報を抽出することにより、前記死角領域の前記物体の位置及び形状を推定する」構成に、相当する。
引用発明における「処理装置51」は、本願補正発明における「推定装置」に相当する。
引用発明における「油圧ショベル1」は、本願補正発明における「ショベル」に相当する。
以上を整理すると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
ショベルの周囲の物体の位置及び形状に関する情報を取得する取得装置と、
ショベルの作業中において、前記取得装置により取得された最新の情報よりも過去の時点の情報から、前記最新の情報における死角領域の前記物体の位置及び形状に関する情報を含む情報を抽出することにより、前記死角領域の前記物体の位置及び形状を推定する推定装置と、を備えた、
ショベル。
そして両者は、以下の点で相違する。
<相違点1>
「過去の時点の情報」に関し、
本願補正発明においては、「複数」の時点の情報と特定されているのに対し、
引用発明においては、そのように特定されていない点。
<相違点2>
「推定装置」による「最新の情報における」「死角領域」の「物体の位置及び形状」の「推定」に関し、
本願補正発明においては、「ショベルの作業中において、前記取得装置が遮るものがないと仮定したときに情報を取得可能な範囲の外に相当する」「死角領域」について行うことが特定されているのに対し、
引用発明においては、「油圧ショベル1の一部によって隠れている」箇所について行っている点。
(4)相違点についての判断
ア 相違点1について
上記相違点1について、判断する。
引用発明において、「距離検出装置20は、できる限り広い作業対象WAからの情報を取得することが好まし」いこと、及び、「油圧ショベル1の一部によって隠れている地形」について、過去の一時点の情報のみからでは、当該「隠れている地形」の情報が十分に得られない場合があることが、明らかであることからすれば、「過去の3次元地形データを用い」るうえで、過去の一時点の情報のみを記憶しておいて用いるのではなく、過去の複数の時点の情報を記憶しておいて用いることは、当業者にとって十分に動機付けがあり、かつ、当業者が適宜になし得た事項である。
なお、この点に関し、引用発明における「例えば数秒前に取得した3次元地形データ」は、「例えば」という記載から明らかなように、単なる例示であるから、過去の一時点の情報のみしか使用できないという技術的制約を課すものではない。また、過去の3次元地形データを用いるうえで、部分毎に更新されたデータを組み合わせて欠落のない3次元地形データとするために、過去の一時点の情報のみでなく、過去の複数の時点の情報を用いることは、例示するまでもない技術常識であるから、過去の一時点の情報のみしか使用できないという技術的制約があるわけではない引用発明において、上記技術常識を適用する動機付けもあるということができる。
そして、そうしたことにより、過去の一時点の情報のみに基づく場合に比較して、「油圧ショベル1の一部によって隠れている地形」をより適切に補うことができ、「できる限り広い作業対象WAからの情報を取得」できるという効果も、引用発明から事前に予測される範囲を超える格別のものではない。
したがって、引用発明において、「過去の3次元地形データを用い」るうえで、過去の複数の時点の情報を記憶しておいて用いることとし、もって上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が適宜になし得た設計事項程度である。
イ 相違点2について
上記相違点2について、判断する。
引用発明は、「オペレータの作業を補助させる」うえで、「現在の作業対象WA」として「距離検出装置20」によって直接形状が得られない箇所について、「過去の3次元地形データ」を用いているとともに、「距離検出装置20は、できる限り広い作業対象WAからの情報を取得することが好まし」いことも考慮している。
ここで、たとえば上記(2)イに摘記した引用文献2において、「地形データ生成部F6」が「ショベル」の「作業現場の3次元地形データを生成」するうえで、「進捗領域に関する3次元地形データ」と「進捗領域以外の領域に関する3次元地形データ」とをつなぎ合わせて、より広い「作業現場の3次元地形データ」とするうえで、「進捗領域以外の領域に関する3次元地形データ」として「地形データ生成部F6が過去に生成した3次元地形データ」を用いているように、また上記(2)ウに摘記した引用文献3において、「油圧ショベル」の「作業現場の周囲」を監視するうえで、「カメラ13a」及び「カメラ13b」の現在の画像から生成した「現在のパノラマ画像530」と、「カメラ13a」及び「カメラ13b」の過去の画像から生成した「過去のパノラマ画像531」とを重ねて、より広い「表示用パノラマ画像532」を生成しているように、ショベルの周辺の情報を広い範囲から得るうえで、障害物に遮られているというわけではないが現在は検知範囲外である領域について、過去の取得データを用いることは、周知技術である。
そうすると、引用発明1において、「できる限り広い作業対象WAからの情報を取得」する観点から、「オペレータの作業を補助させる」ショベルの作業中に、最新の情報で「油圧ショベル1の一部によって隠れている」わけではないが「距離検出装置20」による情報取得がなされていない領域について、「過去の3次元地形データ」を用いて「油圧ショベル1の一部によって隠れている地形」の情報を補っているのと同様に、「オペレータの作業を補助させる」ショベルの作業中に「過去の3次元地形データ」を用いて情報を補うこととし、もって上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば想到容易である。
またそうしたことにより、油圧ショベルの一部によって隠れているわけではない領域を含めて、広い領域の情報に基づいてオペレータの作業を補助できるという効果は、引用発明及び上記周知技術から事前に予測される範囲を超える格別のものではない。
(5)請求人の意見書における主張について
ア 請求人の主張
請求人は、令和7年5月12日付け意見書において、上記相違点2に関し、引用文献2では、作業が実施される前の状態の作業現場の異なるタイミングで撮像された複数の画像から、作業現場の3次元地形データを生成することが開示されているだけであるから、相違点2に係る本願補正発明の構成のように、作業中の作業現場の現在の画像と、現在の画像の範囲外の過去の画像とをつなぎ合わせることは、記載も示唆もされていない旨を主張している。
また請求人は、上記意見書において、引用文献3では、油圧ショベルに搭載される、互いに異なる周囲の方向を撮像する複数のカメラによって同じタイミングで取得される画像を合成することによって、パノラマ画像を生成することが開示されているだけであるから、相違点2に係る本願補正発明の構成のように、異なるタイミングのカメラの画像を使用して、カメラの撮像範囲外の位置及び形状を推定することは、記載も示唆もされていない旨を主張している。
そして請求人は、引用発明において、引用文献2及び引用文献3の記載を考慮しても、上記相違点2に係る本願補正発明の構成に至る必然性や動機付けは全く存在し得ない旨を主張している。
イ 上記主張についての検討
上記請求人の主張について、検討する。
引用発明において、距離の情報は、「油圧ショベル1」が備える「距離検出装置20」が取得しているから、最新の情報、及び利用する過去の情報のいずれについても、距離検出装置20が、ショベルの作業中において取得することは明らかである。
また、引用発明において、「処理装置51」は、オペレータの作業を補助させるために、過去の3次元地形データを用いて隠れている地形についても「基準画像65を表示」させるから、過去のデータを利用して地形を推定する処理は、ショベルの作業中に行うことが明らかである。
そして、引用発明において、「できる限り広い作業対象WAからの情報を取得」して利用する動機付けがあるところ、ショベルの周辺の情報を広い範囲から得るうえで、障害物に遮られているというわけではないが現在は検知範囲外である領域について、過去の取得データを用いることは、引用文献2及び引用文献3にも示されるように周知技術であるから、ショベルの作業中に「処理装置51」が過去の距離の情報を利用して「基準画像65」を生成する処理の対象を、「油圧ショベル1の一部によって隠れている」わけではない領域に広げることは、上記(4)イで判断したとおり、引用発明において動機付けがあり、かつ、引用文献2及び引用文献3に示される周知技術に基づいて想到容易である。
ここで、引用文献3について、同じタイミングで取得される画像を合成してパノラマ画像を生成することしか開示されていない旨をいう請求人の主張は、引用文献3において「カメラ13a」及び「カメラ13b」が得る現在及び過去の画像を利用し、「現在のパノラマ画像530」と「過去のパノラマ画像531」とを重ねてより広い「表示用パノラマ画像532」を得ていることを失念しており、失当である。
また、引用文献2について、「進捗領域に関する3次元地形データ」と、「進捗領域以外の領域に関する3次元地形データ」としての「地形データ生成部F6が過去に生成した3次元地形データ」とをつなぎ合わせて「作業現場の現在の3次元地形データを生成する」ことからすれば、「できる限り広い作業対象WAからの情報を取得」して利用する動機付けがある引用発明を出発点として、「過去の3次元地形データ」の利用を「油圧ショベル1の一部によって隠れている地形」以外の箇所に広げることを当業者に示唆するといえるから、引用文献2に関する請求人の主張を考慮しても、上記(4)イの判断を変更すべき事情はない。
そして、引用発明において「距離検出装置20」による最新の及び過去の「距離の情報」の取得、並びに、「処理装置51」によるオペレータの作業を補助させるための「基準画像65」の生成が、いずれもショベルの作業中に行われることが明らかであることからすれば、本件補正によって追加された「ショベルの作業中において」という構成に依拠して、本願補正発明の容易想到性の判断を変更すべき事情もない。
(6)進歩性のまとめ
上記(1)~(5)のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明、及び、引用文献2、3に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)独立特許要件のまとめ
以上より、本願補正発明は、特許法29条2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができたものではない。
4 補正却下の決定のまとめ
上記2及び3のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により、却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願について
1 本願発明
上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1~7に係る発明は、本件補正前の令和6年10月15日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の、請求項1~7の記載により特定されるべきものである。
本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)を特定する、特許請求の範囲の請求項2の記載は、上記第2の1(1)に摘記したとおりである。
2 令和7年2月28日付け拒絶理由通知の概要
令和7年2月28日付け拒絶理由通知で通知した拒絶理由のうち、本願発明についての拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
・進歩性欠如
本願発明は、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献5、6に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、引用文献1、5、6は、上記第2の3で本願補正発明の進歩性について検討した引用文献1、2、3と同じである。以下では、上記拒絶理由通知における引用文献5、6について、上記第2と表記を揃えて、引用文献2、3とする。
3 当審の判断
本願発明は、本願補正発明から一部の構成(「ショベルの作業中において、」という構成)を削除したものである。
上記第2の3で判断したとおり、本願補正発明は、引用発明、及び、引用文献2、3に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、及び、引用文献2、3に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項について判断するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
4 むすび
よって、結論のとおり審決する。
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2023-014667