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特許拒絶査定不服審判

2020-009131

ショベル

審判番号
2020-009131
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-191260
請求日
2020年06月30日
審決日
2022年05月09日
公報発行日
2023年04月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】住友建機株式会社
  • 【請求人代理人】伊東 忠重
  • 【請求人代理人】伊東 忠彦
審判長/審判官
  • 審判長 長井 真一
  • 審判官 土屋 真理子
  • 審判官 住田 秀弘
分類
P18 .57 -WZ (E02F) / P18 .575-WZ (E02F) / P18 .55 -WZ (E02F) / P18 .537-WZ (E02F) / P18 .121-WZ (E02F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法17条の2第3項特許法29条2項特許法36条6項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-191260「ショベル」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月17日出願公開、特開2019- 7348〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成25年3月6日に出願された特願2013-44534号の出願の一部を、平成29年8月3日に特願2017-150739号として出願し、さらにその一部を平成30年10月9日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 1年 8月 2日付け :拒絶理由通知書 同年10月11日 :期間延長請求書(2ヶ月)の提出 同年12月12日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年 3月26日付け :拒絶査定 同年 6月30日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 3年 4月 5日付け :拒絶理由通知書 同年 6月 7日 :意見書、手続補正書の提出 同年 9月17日付け :拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 同年11月22日付け :通知書(指定期間延長(30日)) 同年12月20日 :意見書、手続補正書の提出 第2 令和3年12月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定 〔補正の却下の決定の結論〕 令和3年12月20日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 〔理由〕 1 本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、令和3年6月7日提出の手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、「前記所定範囲内に人が検知された後において、操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止されるとともに、 前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う、」とあったのを、 「前記所定範囲内に人が検知された後において、操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止され、 前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段が人を検知している場合にオペレーターに対して警報を行う、」とする補正を含むものである(なお、下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。 2 補正の適否 (1)本件補正の目的 ア 本件補正は、「前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合」との記載を削除し、「前記検知手段が人を検知している場合」との記載を追加する補正を含むもので、本件補正前に「前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合」に「警報を行う」ことが特定されていたのが、本件補正により、「前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合」であっても「警報を行」わないことが含まれることとなるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものでないことは明らかである。 また、「前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合」との記載に代えて「前記検知手段が人を検知している場合」とすることで、本件補正前に記載の「前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合」の意味内容が明りょうになるというものでもなく、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものとも認められないし、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除や同第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものにも該当しないことは明らかである。 イ したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないことは明らかであるから、本件補正は認められない。 (2)新規事項の追加について 上記(1)に示したとおり、本件補正は、認められないところ、仮に本件補正が特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれかの事項を目的とするものに該当するとして、本件補正が新規事項を追加するものでないか付加的に検討しておく。 ア 補正の内容 本件補正後の請求項1に係る上記1の補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記コントローラ」が「前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中」に行う「警報」に関し、「前記検知手段が人を検知している場合にオペレーターに対して警報を行う」ものとすることを含むものである。 イ 審判請求人の主張する補正の根拠 審判請求人は、令和3年12月20日付け意見書において、「前記検知手段が人を検知している場合にオペレーターに対して警報を行う」ことは、単に、人を検知しているときにオペレーターに対して警報を行う点を記載するものであり、背景技術を説明する段落[0002]の記載「機械と周囲の作業員等の障害物との接触を防止するため、障害物との距離や建設機械の切削や旋回などの動作に対応させて危険である場合に警報を行う」の記載、及び、特開2004-251024号公報、特開2010-198519号公報等から自明である事項であるため、新たな技術的事項を導入するものではないという主張をしている(同意見書「[2]補正について」の第5段落)。 ウ 検討 しかしながら、本願の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」といい、特許請求の範囲及び図面と併せて「当初明細書等」という。)の段落【0002】には、「警報を行う」点について記載されているが、「ショベル等の建設機械として例えば特許文献1に記載のものがあ」りと、従来技術について説明するもので、本発明が有する課題解決手段及びその実施形態(段落【0006】以下)について記載するものではないし、本件補正における「前記検知手段が人を検知している場合に」警報を行うこと及び「オペレーターに対して」警報を行うことについて何ら記載ないし示唆するものではない。 また、審判請求人が、意見書中で挙げる「特開2010-198519号公報」は、当初明細書の【0002】で従来技術として示される上記「特許文献1」のことであるし、「特開2004-251024号公報」は、当初明細書等に記載されたものではなく、同公報に本件補正に係る事項が示されているとしても、本件補正に係る事項が当初明細書等に記載された事項から自明であることを示すことにはならない。 そして、当初明細書の段落【0002】は、従来技術についての説明にとどまり、当初明細書には、本発明と従来技術との関係を示す記載は一切なく、本発明の「前記所定範囲内に人が検知された後において、操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止され」るのと同じ「検知手段」により「人を検知している場合」に警報を行うという技術的事項や本発明の「前記コントローラ」と同じ「コントローラ」が「前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段が人を検知している場合」に「オペレーターに対して」「警報を行う」という技術的事項を記載ないし示唆するものではない。 してみると、本件補正における「前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段が人を検知している場合にオペレーターに対して警報を行う」との事項を追加する補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるので、当初明細書等に記載した事項の範囲内でなされたものではない。 エ 小括 以上のとおり、本件補正は、当初明細書等の記載に基づくものではなく、新たな技術的事項を導入するものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 (3)独立特許要件について 上記(1)、(2)に示したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、新規事項を追加するものであるから、本件補正は認められないが、仮に本件補正が特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について付加的に検討しておく。 ア 本願補正発明 本願補正発明は、令和3年12月20日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7のうち、請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントを含んで構成されるショベルであって、 前記上部旋回体に備えられ、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する検知手段と、 油圧ロックレバーにより動作され、油圧回路の油圧ロック状態と油圧ロック解除状態とを切り替えるシャット弁と、 前記シャット弁を用いて油圧回路を遮断した全ての油圧アクチュエータが動作していない油圧ロック状態で前記検知手段により前記所定範囲内に人を検知したか否かを判定するコントローラと、を有し、 前記所定範囲内に人が検知された後において、操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止され、 前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段が人を検知している場合にオペレーターに対して警報を行う、 ショベル。」 イ 引用文献に記載された事項及び引用発明 (ア)引用文献1 a 記載事項 本願出願遡及日前に頒布された刊行物であり、令和3年9月17日付けの最後の拒絶理由に引用した実願昭63-51427号(実開平1-156256号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下、同様。)。 (a)「2.実用新案登録請求の範囲 下部走行体と上部旋回体とからなり、その上部旋回体左右側部にそれぞれ障害物センサを配置し、上部旋回体の周囲に障害物が存在するか否かを監視し、その検出信号をコントローラ部に出力させることにより警報装置を作動可能にした建設機械の旋回範囲内立入警報装置において、上部旋回体の外周部および運転室内にそれぞれ警報器を設け、またエンジンのキースイッチを投入したときに上記警報装置の電気回路を通電可能とするとともに、上記障害物センサの検出信号範囲内に障害物が存在するとき上部旋回体外周部および運転室内の、すべての警報器より警報を発生可能に設定して構成したことを特徴とする建設機械の安全装置。 3.考案の詳細な説明 産業上の利用分野 この考案は、障害物センサおよび警報器をそなえた建設機械の安全装置に関する。 従来の技術 第3図は、建設機械のうち、油圧ショベルの側面図である。図において、1は下部走行体、2は上部旋回体、3は上部旋回体2の運転室、4は運転室3内に設けられた警報器である。第4図は、従来技術警報装置をそなえた油圧ショベルの平面視図である。図において、5,6は上部旋回体2の左右側部に取付けられた障害物センサ、Oは旋回中心である。 従来技術の警報装置(図示なし)では、上部旋回体左右側部にそれぞれ障害物センサを取付け、油圧ショベルの旋回作業時に上記障害物センサによる検出信号を制御装置に出力して、運転室3内の警報器(ブザーなど)4より警報を発生するようにしている。 この考案の解決すべき問題点 従来技術の警報装置では、油圧ショベルが旋回作業を行っているときに障害物センサが人,動物などの障害物を検知すると、運転室内に設けた警報を発生する。そのために、油圧ショベルが旋回作業以外の作業を行っているときに他の人や動物などが作業範囲内に立入りしてきた。また、上記立入りしてきた他の人や動物に対して、積極的に警報を確認させることができないので危険であった。 この考案は上記の課題を解決し、建設機械用エンジンにキースイッチを投入している間には信号範囲内立入警報装置の作動を可能とし、その状態のときに信号範囲内に立入った人,動物に対して警報を発する安全装置を提供することを目的とする。 課題を解決するための手段 前記課題を解決するために講じたこの考案の手段は、 イ.上部旋回体の外周部および運転室内にそれぞれ警報器を設け、 ロ.また、エンジンのキースイッチを投入したときに警報装置の電気回路を通電可能とするとともに、 ハ.障害物センサの検出信号範囲内に障害物が存在するとき上部旋回体および運転室内の、すべての警報器より警報を発生可能に設定して、構成した。 作用 イ.エンジンのキースイッチを投入したときに警報装置の電気回路を通電可能としたので、建設機械が旋回作業を行っているときだけでなく、キースイッチを投入している間には警報装置の作動が可能である。 ロ.上部旋回体の外周部および運転室内にそれぞれ警報器を設けたので、上記イ項の状態のときに人,動物などが信号範囲内に立入ると、運転者に対しては運転室内の警報器が、また立入った人,動物などに対しては上部旋回体外周部に設けた警報器がそれぞれ警報器を発生する。 ハ.上記ロ項により、運転者は障害物の信号範囲内立入を認知し、また立入った人,動物などは信号範囲内からの立退きを促がされる。 実施例 以下、この考案にかかる安全装置を図面に基いて詳細に説明する。第1図は、この考案にかかる安全装置7を装備した油圧ショベルの平面視図である。図において、8は上部旋回体、9,10は上部旋回体8の左側部に取付けたそれぞれ障害物センサ、11,12は右側部に取付けた障害物センサ、14は運転室13内に設けた警報器、15,16は上部旋回体8外周部に設けたそれぞれ警報器、17はエンジン、イ,ロ,ハ,ニは障害物センサ9,10,11,12のそれぞれ信号範囲(検出信号範囲のこと)、Rは上部旋回体8の後端旋回半径である。第2図は、この考案にかかる安全装置7の警報装置18用電気回路図である。図において、19はキースイッチ、20は電源、21はコントローラ部である。 次に、この考案にかかる安全装置7の構成を第1図および第2図について述べる。上部旋回体8の外周部および運転室13内にそれぞれ警報器15,16および14を設けた。また、エンジン17のキースイッチ19を投入したときに警報装置18の電気回路を通電可能とするとともに、障害物センサ9,10,11,12の検出信号範囲イ,ロ,ハ,ニ内に障害物が存在するとき上部旋回体8および運転室13内の、すべて警報器15,16,14より警報を発生可能に設定して、構成した。 次に、この考案にかかる安全装置7の作動機能について述べる。エンジン17のキースイッチ19を投入したときに警報装置18の電気回路を通電可能としたので、油圧ショベルが旋回作業を行っているときでなく、キースイッチ19を投入している間には警報装置18の作動が可能である。キースイッチ19を投入した状態のときに、障害物センサ9,~,12の信号範囲イ,~,ニ内に人,動物などの障害物が立入ると、障害物センサ9,~,12のうちいずれかがその障害物を検知する。検知した障害物センサからの検出信号がコントローラ部21に出力する。そこで上記検出信号に基づき、コントローラ部21に接続されている警報器14,15,16はすべて警報を発生する。それにより、運転室13内の運転者は警報器14の警報により障害物の信号範囲内立入を認知し、また立入った人,動物などは警報器15,16の警報により信号範囲内からの立退きを促がされる。 考案の効果 従来技術の警報装置では、油圧ショベルが旋回作業を行っているときに障害物センサが人,動物などの障害物を検知すると、運転室内に設けた警報を発生する。そのために、油圧ショベルが旋回作業以外の作業を行っているときに他の人や動物などが作業範囲内に立入りしてきた。また、上記立入りしてきた他の人や動物に対して、積極的に警報を確認させることができないので危険であった。 しかし、この考案にかかる安全装置では、上部旋回体の外周部および運転室内にそれぞれ警報器を設け、またエンジンのキースイッチを投入したときに上記警報装置の電気回路を通電可能とするとともに、上記障害物センサの検出信号範囲内に障害物が存在するとき上部旋回体外周部および運転室内の、すべての警報器より警報を発生するように構成した。 したがって、この考案にかかる安全装置では、エンジンのキースイッチを投入状態にしておくと、障害物が障害物センサの信号範囲内に立入ったときに、運転者は運転室内の警報器の警報により障害物立入を認知し、また立入った人,動物などは上部旋回体外周部に設けた警報器の警報により退出を促がされる。上記のようにして、建設機械の安全機能が向上する。 4.図面の簡単な説明 第1図はこの考案にかかる安全装置を装備した油圧ショベルの平面視図、第2図はこの考案にかかる安全装置の警報装置用電気回路図、第3図は建設機械のうち油圧ショベルの側面図、第4図は従来技術警報装置をそなえた油圧ショベルの平面視図である。」(明細書第1頁第4行~第8頁第18行) (b)第1図及び第3図には、それぞれ次の図示がある。 [図:0001395542000001.jpg] [図:0001395542000002.jpg] 第1図より、平面視で運転室13の上に途中まで示されている部材は、第3図の側面視で見た油圧ショベルのブーム状部材であると理解でき、ブーム状部材は油圧ショベルの上部旋回体8の前方中央部に設けられている様子が看て取れる。 また、第3図より、ブーム状部材の先端にアーム状部材が備えられ、アーム状部材の先端にバケット状部材が備えられている様子が、看て取れる。 b 引用発明1 上記aによれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明1) 「下部走行体1、上部旋回体8、上部旋回体8の前方中央部に設けられているブーム状部材、ブーム状部材の先端に備えられたアーム状部材、アーム状部材の先端に備えられたバケット状部材を有する油圧ショベルであって、 上部旋回体8の左側部及び右側部に取付けられ、それぞれの検出信号範囲に人,動物などの障害物が立入ると検知信号をコントローラ部21に出力する、障害物センサ9,10,11,12と、 運転室13内に設けた警報器14、上部旋回体8外周部に設けた警報器15,16と、 障害物センサ9,10,11,12からの検出信号に基づき、コントローラ部21に接続された警報器14,15,16より警報を発生可能なコントローラ部21とを有し、 エンジン17のキースイッチ19を投入したときに警報装置18の電気回路を通電可能とし、油圧ショベルが旋回作業を行っているときだけでなく、キースイッチ19を投入している間には警報装置18の作動が可能であり、障害物センサ9,10,11,12の信号範囲内に人,動物などの障害物が立入ると、コントローラ部21に接続されている警報器14,15,16はすべて警報を発生し、 運転室13内の運転者は警報器14の警報により障害物の信号範囲内立入を認知し、また立入った人,動物などは警報器15,16の警報により信号範囲内からの立退きを促がされる、 油圧ショベル。」 (イ)引用文献2 a 記載事項 本願出願遡及日前に頒布された刊行物であり、令和3年9月17日付けの最後の拒絶理由に引用した特開2005-307491号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (a)「【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 次に、発明の実施の形態を説明する。 図1は発明の作業車用誤操作防止装置を有する旋回作業車を示す側面図、図2は運転操作部の平面図、図3は作業車用誤操作防止装置の油圧回路図と電気回路図、図4は同じくエンジン始動時の油圧回路図と電気回路図、図5は作業途中でロックレバーを「作動不可」とした場合の油圧回路図と電気回路図、図6はロックレバーが「作動不可」位置で所定時間が経過した場合の油圧回路図と電気回路図、図7はキースイッチの側面断面図、図8はキースイッチの背面図である。 【0014】 まず、本発明の油圧操作装置を有する作業車としてバックホーを実施例として説明する。図1において、バックホーは、本機の前部に作業機7を装着しており、本機はクローラ式走行装置1の上部中央に旋回台軸受17を介して旋回フレーム2を左右旋回可能に支持しており、該クローラ式走行装置1の前後一側には、ブレード3を上下回動自在に配設している。旋回フレーム2の上部にはエンジン13等を被覆するボンネット14が配設され、該ボンネット14上に運転席16を配置し、該運転席16の近傍に油圧操作レバー21・22やロックレバー23・24等を配置し、運転席16前方に走行レバー25やペダル等を配置して運転操作部15を構成している。該運転操作部15の上方にはキャノピー8が配設されている。 【0015】 また、旋回フレーム2の前端部にはブームブラケット12が左右回動自在に取り付けられ、該ブームブラケット12にはブーム6の下端部が上下回動自在に支持されている。ブーム6は途中部で前方に屈曲して略「く」字状に形成されており、該ブーム6の上端部にはアーム5が回動自在に支持され、該アーム5の先端部には作業用アタッチメントであるバケット4が回動自在に支持されている。これらのブーム6、アーム5、及びバケット4等により作業機7が構成されている。 【0016】 そして、前記ブーム6はブームシリンダ11により回動動作され、アーム5はアームシリンダ10により回動動作され、バケット4はバケットシリンダ9により回動動作される。またクローラ式走行装置1は前後一側に駆動スプロケット41が配置され、他側に従動スプロケット42が配置され、該駆動スプロケット41と従動スプロケット42の間に履帯43が巻回されている。そして、該駆動スプロケット41は油圧モータによって駆動される。また、前記旋回フレーム2と旋回台軸受17の間には旋回モータが配置され、該旋回モータにより旋回フレーム2を旋回可能としている。 【0017】 前記ブームシリンダ11、アームシリンダ10、及びバケットシリンダ9は油圧シリンダにより構成され、各シリンダ9・10・11および旋回モータ45および走行油圧モータ44等の油圧機器を油圧アクチュエーターと称している。図2に示すように、運転操作部15に配設される油圧操作レバー21・22や走行レバー25やペダル等の回動操作によりパイロットバルブが切り換えられて、該パイロットバルブから主バルブ(方向制御バルブ)を切り換えて、旋回台2のボンネット14内に配設される油圧ポンプから油圧ホースを通じて圧油が供給されることにより伸縮駆動や回転駆動される。 【0018】 前記運転席16の左右両側には、作業機7を操作するパイロット操作装置となる油圧操作レバー21・22がそれぞれ配設され、該油圧操作レバー21・22はレバースタンド28・29に一体的に取り付けられ、該レバースタンド28・29からは、油圧操作レバー21・22による作業機7の操作を入・切(作動・非作動)するためのロックレバー23・24が前方へ延出されている。 【0019】 該ロックレバー23・24は上下回動可能に構成されており、該ロックレバー23・24を下方回動操作すると油圧操作レバー21・22の操作による作業機7の作動が可能となる状態となり、ロックレバー23・24を上方回動操作すると油圧操作レバー21・22を操作しても作業機7が作動しなくなるロック状態(作動不可)にロックされるように構成されている。このように、左右のロックレバー23・24を上下回動操作することで、油圧操作レバー21・22による作業機7の作動をロックするロック機構を構成しているのである。 【0020】 さらに、ロックレバー23・24が下方回動されて油圧操作レバー22により作業機7が作動可能となっている場合には、該ロックレバー23・24が前方へ傾倒した姿勢となって左右の乗降口19・19を塞ぎ、作業者の乗降ができないようになっており、該ロックレバー23・24を上方回動すると乗降口19・19のスペースが広がり乗降可能に構成されている。但し、左右一側のみ乗降口を設ける構成とすることも可能であり、この場合ロックレバーは乗降口を設ける側のみ配置される。 【0021】 次に、本発明のエンジンの始動・停止及び操作レバーの操作によるロック機構について図3より説明する。エンジン13の出力軸上に油圧源となる油圧ポンプ30・33が連設されて駆動され、該油圧ポンプ30から吐出された圧油が方向切換バルブを介して油圧アクチュエーター(油圧シリンダ9・10・11、油圧モータ)に送油可能にそれぞれ接続されている。油圧シリンダ9・10・11、油圧モータはそれぞれ方向制御バルブ(切換バルブ)と接続され、油圧操作レバーの操作でパイロットバルブを切り換えて前記各方向制御バルブを制御する構成となっており、これら各方向制御バルブと油圧アクチュエーターの作動は略同様の作用となるので、ブームシリンダ11と該ブームシリンダ11を伸縮制御する方向制御バルブや開閉弁の作動について説明する。 【0022】 ブームシリンダ11のボトム側とロッド側にそれぞれ油圧配管を介して方向制御バルブ31と接続され、該方向制御バルブ31はパイロット操作式の切換バルブで構成され、それぞれのパイロット油路は油圧操作レバー21の基部に設けたパイロットバルブ(リモコンバルブ)32と接続されている。該パイロットバルブ32は油圧操作レバー21の操作により切り換えられ、前記エンジン13に連設された油圧ポンプ33からの圧油が開閉弁34を介してパイロットバルブ32に送油され、該パイロットバルブ32の切り換えによりパイロット油を方向制御バルブ31のパイロット操作部に送油可能としている。該方向制御バルブ31の切り換えによりブームシリンダ11を伸縮できるようにしている。但し、方向制御バルブ31は電磁バルブで構成して、操作レバーにスイッチ等を設けて電磁バルブのソレノイドを作動させて切り換えるように構成することもできる。この場合、開閉弁34は方向制御バルブ31と油圧ポンプ30の間に介装される。 【0023】 前記開閉弁34は2位置切換の電磁バルブで構成され、該開閉弁34のソレノイド34aは後述するロックレバー23の操作を検知する手段となるスイッチ35と接続されている。該ソレノイド34aの作動により油圧ポンプ33からの圧油をパイロットバルブ32への送油と、パイロットバルブ32の圧油をドレンする方向に切り換えことにより、該開閉弁34がアクチュエーターとなるブームシリンダ11の「作動可能」と「作動不可」を切り換える切換手段となっている。 【0024】 こうして、ロックレバー23が「作動可能」位置にある時は、ソレノイド34aが作動されて開閉弁34が切り換えられて、油圧ポンプ30からの圧油がパイロットバルブ32を操作したときに方向制御バルブ31のパイロット操作部に送油されて、切り換えられるのである。そして、油圧ポンプ30からの圧油が方向制御バルブ31を介してアクチュエーター(ブームシリンダ11)に送油されて作動することができる。逆に、ロックレバー23を「作動不可」位置に回動すると、ソレノイド34aは作動されず、開閉弁34は油圧ポンプ33からの圧油をパイロットバルブ32に送油することができず、油圧操作レバー21(22)を操作しても方向制御バルブ31を切り換えることができず、アクチュエーターを作動することができないのである。 ・・・ 【0027】 該ロックレバー23と接点35dと端子35bが始動制限手段となっており、ロックレバー23の回動により端子35bを開くことでキースイッチ36をスタート位置としてもスタート(始動)できないようにしている。また、該ロックレバー23と接点35dと端子35aが前記切換手段(開閉弁34)の操作部(ソレノイド34a)への電力の供給のON/OFF手段となっており、ロックレバー23が「作動可能」位置では、接点35aがロックレバー23の回動により閉じられ(ONし)て、電力を開閉弁34に供給して作動させ、圧油を送油可能とする。「作動不可」位置では接点35aが開き(OFF)、ソレノイド34aに電力が供給されず、開閉弁34は作動させることがなく圧油をパイロットバルブ32に送油させることがない。 ・・・ 【0030】 前記端子35bの二次側にはタイマ38の第二入力端子38bと、エンジン始動回路(セルモータ作動回路や点火回路等も含む)となるリレー39のソレノイド39aに接続されている。該リレー39はソレノイド39aと接点39bを有し、該接点39bはバッテリー37とセルモータ44の間に接続されている。該セルモータ44の出力軸にはピニオン45が固設され、該ピニオン45はエンジン13のフライホイルに固設した始動ギヤ46と噛合させている。そして、前記接点39bは常時「開」とされ、ソレノイド39aが作動されると「閉」となるようにしている。つまり、ロックレバー23が「作動不可」位置でキースイッチ36をSTART位置に回動するとソレノイド39aに電流が流れて、接点39bを閉じてセルモータ44を駆動し、フライホイルを回転させてエンジン13を始動させるのである。 ・・・ 【0034】 以上のような構成において作用を説明する。 まず、オペレーターが作業車に乗り着座した状態では、ロックレバー23・24の両方が、「作動不可」位置に回動されている。つまり、ロックレバー23・23は後方へ回動して乗降口19から通行できるように回動されている。この状態では、図4に示すように、スイッチ35の端子35bが閉じており、キースイッチ36をSTART端子36c位置に回動すると、始動電源となるバッテリー37と接続されて、タイマ38の第二入力端子38bに停止解除信号が出力され、エンジン停止手段40の停止が解除されてエンジン13は作動可能状態なる。そして同時に、リレー39のソレノイド39aが作動されて、接点39bが閉じ、セルモータ44に電力が供給されてフライホイルを回動し始動することができるのである。 【0035】 なお、このとき、ロックレバー23・24のいずれか一方または両方が、「作動可能」位置に回動されていると、リレー39が作動せず、接点39bは開かれてセルモータ44を駆動できず、エンジン13を始動させることはできない。よって、エンジン13を始動するときに、油圧操作レバー21・22に誤って触れた場合であっても、開閉弁34がブロック状態であるため、方向制御弁31が作動されることがなく、アクチュエーターが作動することもなく安全である。 【0036】 エンジン13が始動すると、キースイッチ36はON位置に回動され、セルモータ44は停止され、OFF信号が第二入力端子38bに入力されてタイマ38が作動する。そして、図3に示すように、作業を行う場合には、ロックレバー23・24を前方へ回動して「作動可能」位置とする。 但し、エンジン始動後からロックレバーを「作動不可」位置から「作動可能」位置に回動するまでの時間が、第二設定時間以内に操作されないと、タイマ38から停止信号が出力されてエンジン13を停止し、キースイッチ36もOFF位置まで回動される。こうして無駄なエンジン13の駆動を防止し、燃料の消費を抑え、バッテリーの放電も防止されるようにしている。 【0037】 そして、ロックレバー23・24の「作動可能」位置への回動により、スイッチ35の端子35aが閉となり、タイマ38の第一入力端子38aにON信号が入力されてタイマ(第二遅延時間)はリセットされる。同時に、開閉弁34のソレノイド34aに電力が供給されてONとなり、油圧操作レバー21・22のパイロットバルブ32に圧油が送油され、油圧操作レバー21・22の操作により方向制御バルブ31のパイロット操作部に送油して、方向制御バルブ31を切り換え可能となる。こうして、油圧操作レバー21・22の操作によりアクチュエーターを駆動して作業機7を作動させることができる。 【0038】 そして、作業途中で、運転操作部15から一時的に離れて点検や確認等を行う場合、ロックレバー23または24を持ち上げて「作動不可」位置に回動すると、図5に示すように、スイッチ35は端子35aが開となり、開閉弁34はブロック位置に切り換えられ、油圧操作レバー21・22を操作しても方向制御バルブ31は切り換えられないようになる。つまり、誤って油圧操作レバー21・22に触れてもアクチュエーターは作動しない。そして、タイマ38の第一入力端子38aにOFF信号が入力されることにより、タイマ38が作動し第一遅延時間のカウントを開始する。このときエンジン13は作動したままとなっている。」 (b)図4には、「エンジン始動時の油圧回路図と電気回路図。」(段落【0041】)として、以下の図が示されている。 [図:0001395542000003.jpg] 上記(a)の段落【0030】の記載を踏まえて図4をみると、エンジン始動回路がリレー39のソレノイド39aを含むことが看取される。 また、上記(a)の段落【0030】に加え、段落【0027】の記載を踏まえて図4をみると、ロックレバー23(24)が「作動可能位置」に回動されていると、端子35bが開かれてエンジン始動回路は作動しないことが看取される。 b 引用発明2 上記aによれば、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明2) 「ブーム6、アーム5及びバケット4をそれぞれ回動動作するブームシリンダ11、アームシリンダ10及びバケットシリンダ9および旋回モータ45および走行油圧モータ44等の油圧アクチュエーターを備えるバックホーであって、 エンジン13の出力軸上に油圧源となる油圧ポンプ30・33が連設され、油圧ポンプ30から吐出された圧油が方向切換バルブ31を介して油圧アクチュエーターである油圧シリンダ9・10・11、油圧モータに送油可能にそれぞれ接続され、油圧操作レバーの操作でパイロットバルブを切り換えて前記各方向制御バルブ(切換バルブ)を制御する構成となっており、これら各方向制御バルブと油圧アクチュエーターの作動は略同様の作用となり、 ブームシリンダ11を伸縮制御する方向制御バルブや開閉弁の作動は、 開閉弁34は、油圧ポンプ33からの圧油のパイロットバルブ32への送油と、パイロットバルブ32の圧油をドレンする方向への切り換えにより、アクチュエーターとなるブームシリンダ11の「作動可能」と「作動不可」を切り換える切換手段となっており、 ロックレバー23が「作動可能」位置にある時は、開閉弁34が切り換えられて、油圧ポンプ30からの圧油が方向制御バルブ31を介してアクチュエーター(ブームシリンダ11)に送油されて作動することができ、ロックレバー23を「作動不可」位置に回動すると、開閉弁34は油圧ポンプ33からの圧油をパイロットバルブ32に送油することができず、油圧操作レバー21(22)を操作しても方向制御バルブ31を切り換えることができず、アクチュエーターを作動することができないものであり、 オペレーターが作業車に乗り着座した状態では、ロックレバー23・24の両方が「作動不可」位置に回動されており、エンジン13は作動可能状態となり、 ロックレバー23・24が、「作動可能」位置に回動されていると、エンジン始動回路が作動せず、エンジン13を始動させることはできないものであり、 このため、エンジン13を始動するときに、油圧操作レバー21・22に誤って触れた場合であってもアクチュエーターが作動することもなく安全である、 バックホー。」 (ウ)対比 本願補正発明と引用発明1とを対比する。 a 引用発明1の「下部走行体1」は、本願補正発明の「下部走行体」に相当する。 b ショベルの技術分野において、上部旋回体が下部走行体に旋回自在に搭載されるのは技術常識であるから、引用発明1の「上部旋回体8」は、本願補正発明の「下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体」に相当する。 c 引用発明1の「上部旋回体8の前方中央部に設けられているブーム状部材、ブーム状部材の先端に備えられたアーム状部材、アーム状部材の先端に備えられたバケット状部材」は、本願補正発明の「上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメント」に相当する。 d 引用発明1の「油圧ショベル」は、本願補正発明の「ショベル」に相当する。 e 引用発明1の「障害物センサ9,10,11,12」は、「上部旋回体8」に取付けられ、「それぞれの検出信号範囲に人,動物などの障害物が立ち入ると検知信号をコントローラ部21に出力する」ものであるから、本願補正発明の「前記上部旋回体に備えられ、前記ショベル周辺の所定範囲内の人を検知する検知手段」に相当する。 f 引用発明1は、「障害物センサ9,10,11,12からの検知信号に基づき」「コントローラ部21」が「警報を発生」するものであるから、その前提として「コントローラ部21」が「前記検知手段(障害物センサ)により前記所定範囲内に人等の障害物を検知したか否かを判定」していることは自明である。 そうすると、引用発明1の「コントローラ部21」と本願補正発明の「前記シャット弁を用いて油圧回路を遮断した全ての油圧アクチュエータが動作していない油圧ロック状態で前記検知手段により前記所定範囲内に人を検知したか否かを判定するコントローラ」とは、「前記検知手段により前記所定範囲内に人等の障害物を検知したか否かを判定するコントローラ」の点で共通する。 g 本願補正発明は、動作に「旋回動作」を含むものであるから、引用発明1の「旋回作業を行っているとき」は、本願補正発明のショベルの「動作中」であるといえ、また、引用発明1の「警報器14」は「運転室13内に設けた」ものであり、「運転室13内の運転者は警報器14の警報により障害物の信号範囲内立入を認知」するから、引用発明1の「警報器14」は、「運転者」に対して警報を行うものである。 そうすると、上記fの対比も踏まえると、引用発明1の、「油圧ショベルが旋回作業を行っているとき」に、「障害物センサ9,10,11,12」の「それぞれの検出信号範囲に人,動物などの障害物が立ち入ると検知信号をコントローラ部21に出力」し、「コントローラ部21に接続されている警報器14」が「警報を発生」し、「運転室13内の運転者は警報器14の警報により障害物の信号範囲内立入を認知」するものであることと、本願補正発明の「前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段が人を検知している場合にオペレーターに対して警報を行う」こととは、「前記コントローラは、動作中に、前記検知手段が人等の障害物を検知している場合にオペレーターに対して警報を行う」ことで共通する。 h 上記aないしgから、本願補正発明と引用発明1とは、以下の一致点、相違点を有する。 (一致点) 下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントを含んで構成されるショベルであって、 前記上部旋回体に備えられ、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する検知手段と、 前記検知手段により前記所定範囲内に人等の障害物を検知したか否かを判定するコントローラと、を有し、 前記コントローラは、動作中に、前記検知手段が人等の障害物を検知している場合にオペレーターに対して警報を行う、 ショベル。 (相違点1) 警報を行うにあたってコントローラが判定するのが、本願補正発明は、検知手段が「人」を検知したか否かであるのに対し、引用発明1は、検知手段が「人,動物などの障害物」を検知したか否かである点。 (相違点2) 本願補正発明は、「油圧ロックレバーにより動作され、油圧回路の油圧ロック状態と油圧ロック解除状態とを切り替えるシャット弁」を有し、「操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止され」(以下「油圧ロック状態動作禁止構成」という。)、 コントローラが人を検知したか否かを判定するのが、「前記シャット弁を用いて油圧回路を遮断した全ての油圧アクチュエータが動作していない油圧ロック状態」においてであり、 「操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止され」るのが、「前記所定範囲内に人が検知された後において」であり、 コントローラがオペレーターに対して警報を行うのが、「前記シャット弁が油圧ロック解除状態における」動作中に、検知手段が人を検知している場合なのに対し、引用発明1では、上記のように特定されていない点。 (エ)判断 上記相違点について検討する。 a 相違点1について 引用発明1は、コントローラによって「人,動物などの障害物」を検知したか否かを判定するものであるところ、引用発明1における油圧ショベルの周囲に立ち入ることが想定される検知対象や、その安全確保の必要性に応じて、「人」を検知したか否かを判定するものとすることは、当業者が適宜になし得る設計的事項である。 b 相違点2について (a)本願明細書の段落【0014】に「掘削アタッチメントE(ブーム、アーム、バケット)」と記載されていることを勘案すると、引用発明2の「ブーム6、アーム5及びバケット4」は、本願補正発明の「掘削アタッチメント」に相当する。また、引用発明2の「バックホー」は、本願補正発明における「ショベル」に相当する。 (b)引用発明2における「ブームシリンダ11、アームシリンダ10及びバケットシリンダ9および旋回モータ45および走行油圧モータ44等の油圧アクチュエーター」のそれぞれは、本願補正発明における「油圧アクチュエータ」に相当する。 (c)引用発明2において、「ロックレバー23」が「作動不可」位置に「回動」されると、「開閉弁34」が「油圧ポンプ33からの圧油をパイロットバルブ32に送油することができず、油圧操作レバー21(22)を操作しても方向制御バルブ31を切り換えることができず、アクチュエーターを作動することができな」くなる状態は、「ブームシリンダ11」に加え、それと「略同様」に「作動」する「アームシリンダ10、バケットシリンダ9および旋回モータ45および走行油圧モータ44等の油圧アクチュエーター」が全て「作動することができない」状態となるから、本願補正発明における「シャット弁を用いて油圧回路を遮断した全ての油圧アクチュエータが動作していない油圧ロック状態」に相当する。 (d)上記(c)の対比を踏まえると、引用発明2において、「ロックレバー23」が「作動不可」位置に「回動」されると、「開閉弁34」が「油圧ポンプ33からの圧油をパイロットバルブ32に送油することができず、油圧操作レバー21(22)を操作しても方向制御バルブ31を切り換えることができず、アクチュエーターを作動することができな」くなる状態は、本願補正発明の「操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止される」に相当する。 (e)そうすると、引用発明2のバックホー(ショベル)は、相違点2に係る本願補正発明の「油圧ロック状態動作禁止構成」に相当する構成を備えるものであるといえる。 (f)引用発明1と引用発明2とは、油圧で駆動するショベルという共通の技術分野に属している。そして、当該技術分野において、安全の確保は一般的な課題であって、オペレータの操作レバーの誤操作による油圧アクチュエータの意図しない動作の抑制は、引用発明1にも内在する課題であるから、引用発明1において、引用発明2における「油圧ロック状態動作禁止構成」を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 (g)そして、相違点2におけるコントローラが人を検知したか否かを判定するのが「前記シャット弁を用いて油圧回路を遮断した全ての油圧アクチュエータが動作していない油圧ロック状態」であるとの構成は、「油圧ロック状態」であっても、コントローラが「前記検知手段により前記所定範囲内に人を検知したか否かを判定する」ことを意味するところ(令和3年6月7日提出の意見書も参照)、引用発明1は、「エンジン17のキースイッチ19を投入した状態のとき」に人などの障害物などの検知を行うものであり、また、引用発明2は、「オペレーターが作業車に乗り着座した状態では、ロックレバー23・24の両方が、「作動不可」位置に回動されており、エンジン13は作動可能状態とな」るものであるから、上記(c)の対比を踏まえると、引用発明1において引用発明2における「油圧ロック状態動作禁止構成」を採用して、エンジンスタート時の障害物検知を行う場合には、コントローラは、「前記シャット弁を用いて油圧回路を遮断した全ての油圧アクチュエータが動作していない油圧ロック状態」で検知手段により前記所定範囲内に人などの障害物を検知したか否かを判定することとなる。 また、引用発明1において引用発明2における「油圧ロック状態動作禁止構成」を採用して、エンジンスタート時の障害物検知を「油圧ロック状態」で行う場合、当然、障害物を検知したとコントローラが判定する場合があり得る。一方、引用発明2の「油圧ロック状態」は、上記(d)で検討したように、「操作レバーが動かされても」「旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止される」状態であるから、引用発明1において引用発明2における「油圧ロック状態動作禁止構成」を採用して「油圧ロック状態」で障害物の検知がなされた場合には、本願補正発明の、「前記所定範囲内に人が検知された後において」、操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止されるに相当するものとなることは自明である。 さらに、引用発明2の「開閉弁34」によって「油圧ポンプ33からの圧油のパイロットバルブ32への送油」がされ、「油圧ポンプ30からの圧油が方向制御バルブ31を介してアクチュエーター(ブームシリンダ11)に送油されて作動することができ」る状態は、本願補正発明の「油圧ロック解除状態」に相当する。そして、引用発明1において引用発明2における「油圧ロック状態動作禁止構成」を採用し、ショベルが「油圧ロック状態」と「油圧ロック解除状態」とに切り換えられるものとすれば、「動作中」が、「シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中」であることは自明である。 (h)以上、検討したように、相違点2に係る構成は、引用発明1において、オペレータの操作レバーの誤操作による油圧アクチュエータの意図しない動作の抑制による安全の確保が行われるように、引用発明2における「油圧ロック状態動作禁止構成」を採用することとした際に当業者が当然に採用する構成であるといえる。 よって、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に想到し得たことである。 (オ)審判請求人の主張について a 審判請求人の主張の概要 審判請求人は、令和3年12月20日付けの意見書にて、「ロックレバー23・24の状態」、「キースイッチ36の位置」、及び、それらの間に配置された「スイッチ35」の関連性のみが、引用文献2から抽出し得る具体的な技術的思想に過ぎず、副引用発明を主引用発明に適用すると、ロックレバー23(24)が「作動不可」位置に切り換えられたときに、スイッチ端子35aが「開」となり(段落[0038]及び図5参照)、キースイッチ36がON位置であっても、開閉弁34等の電気機器に対する電力の供給が遮断される構成であるから、主引用発明における警報装置18の電気回路に対する電力の供給が遮断される構成が導き出され、「人、動物などの障害物などの検知」を行うことができなくなるため、引用文献2に開示された発明は、「主引用発明に適用されると、主引用発明がその目的に反するものとなるような副引用発明」であり、副引用発明を主引用発明に適用することはできない旨、主張する。 b 主張の検討 上記主張について検討する。 (a)審判請求人の主張に示される引用文献2の図5は、図3の「作業車用誤操作防止装置の油圧回路図と電気回路図」と同じ、「作業車用誤操作防止装置」の油圧回路図と電気回路図において、作業途中でロックレバーを「作動不可」とした場合について示したものである(引用文献2段落【0013】、上記(イ)a(a))。 (b)そして、上記図5の電気回路は、「該ロックレバー23と接点35dと端子35bが始動制限手段となっており、・・・また、該ロックレバー23と接点35dと端子35aが前記切換手段(開閉弁34)の操作部(ソレノイド34a)への電力の供給のON/OFF手段となっており、・・・「作動不可」位置では接点35aが開き(OFF)、ソレノイド34aに電力が供給されず、開閉弁34は作動させることがなく圧油をパイロットバルブ32に送油させることがない」(同段落【0027】、上記(イ)a(a))ように構成されたものであって、特に誤操作防止装置の電気回路について説明がされているものである。 (c)一方、引用発明1は、「エンジン17のキースイッチ19を投入した状態のときに警報装置18の電気回路を通電可能とし、油圧ショベルが旋回作業を行っているときだけでなく、キースイッチ19を投入している間には警報装置18の作動が可能であ」るように設定されたものである。そうすると、当業者であれば、この警報装置の電気回路は、当然、エンジンのキースイッチが投入された後、旋回作業を行っている間も通電されるように設定されるべきであることを理解することができる。 (d)ショベルの技術分野において、エンジンの作動中には、制御装置等、各種電気機器へ通電を要するものであること、引用発明2においても、電気機器が接続される電気回路は、開閉弁34が配置された電気回路のみではないことは当業者に自明であり、引用発明1と引用発明2を組み合わせるにあたり、当業者であれば、引用文献1の警報装置18の電気回路を、ロックレバー23(24)が「作動不可」位置に切り換えられたときであっても電力の供給が遮断されない構成のままとすることを当然に想定することができる。 (e)よって、審判請求人が主張するように、引用発明1に引用発明2を組み合わせると、ロックレバー23(24)が「作動不可」位置に切り換えられたときに、電力の供給が遮断される電気回路に取付けられるために、警報装置18の電気回路に対する電力の供給が遮断される構成が導き出されるものしか想定できないものではない。 よって、審判請求人の上記主張は採用できない。 (カ)独立特許要件についてのまとめ 以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 補正の却下の決定のむすび 本件補正は、上記2(1)のとおり、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの目的にも該当しないものであるから、特許法第17条の2第5項の規定に違反し、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 また、本件補正は、上記2(2)のとおり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 仮に本件補正が特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、本願補正発明は、上記2(3)のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年6月7日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントを含んで構成されるショベルであって、 前記上部旋回体に備えられ、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する検知手段と、 油圧ロックレバーにより動作され、油圧回路の油圧ロック状態と油圧ロック解除状態とを切り替えるシャット弁と、 前記シャット弁を用いて油圧回路を遮断した全ての油圧アクチュエータが動作していない油圧ロック状態で前記検知手段により前記所定範囲内に人を検知したか否かを判定するコントローラと、を有し、 前記所定範囲内に人が検知された後において、操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止されるとともに、 前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う、 ショベル。」 第4 当審拒絶理由の概要 当審より令和3年9月17日付けで通知した最後の拒絶の理由は、概略、次のとおりである。 理由1.(新規事項)令和3年6月7日付けでした手続補正は、その手続補正前の請求項1が、「ショベル」について、「(油圧ロック状態で前記検知手段により)前記所定範囲内に人が検知された後において、操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止される」と特定していたところ、その後に、 「とともに、 前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う」という発明特定事項(以下「油圧ロック解除状態警報構成」ということがある。)を新たに導入する内容を含むものであるので、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 理由2.(明確性)この出願は、請求項1の「前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う」との記載が不明確であるから、請求項1及びこれを引用する請求項2~7は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 理由3.(サポート要件)この出願の請求項1に記載された「前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う」は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、請求項1及びこれを引用する請求項2ないし7に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由4.(進歩性)この出願の請求項1ないし7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第5 当審の判断 1 「理由1.(新規事項)」について (1)本件却下前補正の内容 令和3年6月7日付けでした手続補正による補正(以下、「本件却下前補正」という。)は、「ショベル」について、その手続補正前の請求項1の「(油圧ロック状態で前記検知手段により)前記所定範囲内に人が検知された後において、操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止される」の後に、 「とともに、 前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う」という発明特定事項(「油圧ロック解除状態警報構成」)を新たに導入する内容を含むものである。 したがって、その手続補正後の本願発明は、ショベルが、油圧ロック状態で検知手段により所定範囲内に人が検知された後において、操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止されるとともに、コントローラは、シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段の出力と記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行うものとなる。 かかる補正が、当業者によって本願当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであると認められるかを、以下検討する。 (2)本願当初明細書の記載 本願当初明細書には、以下の記載がある。 ア 技術分野 「【0001】 本発明は、安全性を確保するショベルに関する。」 イ 背景技術及び発明が解決しようとする課題 「【背景技術】 【0002】 ショベル等の建設機械として例えば特許文献1に記載のものがある。この技術においては、機械と周囲の作業員等の障害物との接触を防止するため、障害物との距離や建設機械の切削や旋回などの動作に対応させて危険である場合に警報を行うことが提案されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開2010-198519号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 ところが、上述した特許文献1に記載の従来技術においては、建設機械の周辺の作業員の安全を確保する技術については開示されていない。 【0005】 本発明においては、より確実に周辺の作業員の安全を確保することができるショベルを提供することを目的とする。」 ウ 課題を解決するための手段 「【0006】 本発明の実施形態に係るショベルは、下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントを含んで構成されるショベルであって、前記上部旋回体に備えられ、前記ショベルの周辺の所定範囲内の障害物を検知する検知手段と、油圧アクチュエータが動かされる前に、前記検知手段が障害物を検知したか否かを所定の制御周期毎に判定し、障害物が検知されると、旋回動作、走行動作、掘削動作の何れかを禁止するコントローラと、を有する。」 エ 発明の効果 「【0007】 上述の手段により、より確実に周辺の作業員の安全を確保することができるショベルを提供することができる。」 オ 発明を実施するための形態 (ア)実施例1 「【実施例1】 【0010】 本実施例1のショベルは、始動許可装置1を有し、図1に示すように、カメラ2と、エンジン3をキースイッチ4の選択位置(スタート、オン、オフ)に基づいて制御するコントローラ5とを含んで構成される。 【0011】 コントローラ5は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)及びこれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェース等を備えたコンピュータである。 【0012】 本実施例1のコントローラ5は、例えば、本発明の始動許可方法を実行するプログラムをROMやNVRAMに記憶している。コントローラ5は、一時記憶領域としてRAMを利用しながら対応する処理をCPUに実行させることで、人検知手段5a、始動手段5b、判定手段5c、許可手段5dを構成する。 【0013】 本実施例1のショベルの始動許可装置1は、図2に示すように、ショベル60(建設機械)に適用される。ショベル60は、クローラ式の下部走行体61の上に、旋回機構62を介して、上部旋回体63を旋回軸PVの周りで旋回自在に搭載している。 【0014】 また、上部旋回体63は、その前方左側部にキャビン(運転室)64を備え、その前方中央部に掘削アタッチメントE(ブーム、アーム、バケット)を備えている。さらに、上部旋回体63は、その左側面、右側面及び後面にそれぞれ対応する上述したカメラ2(カメラ2L、カメラ2R、カメラ2B)を備えている。 【0015】 図1に示したエンジン3は、上部旋回体63内部のいずれかの箇所に設置される。また、キースイッチ4は、キャビン64内のオペレーター(操作者)の操作可能な位置に設置される。キースイッチ4の選択位置はスタート、オン、オフの三つであり、選択位置がスタートである場合に、周知の始動回路に基づいて、コントローラ5に始動信号が出力される。 【0016】 なお、キースイッチ4の選択位置がオフの場合は、エンジン3を停止する停止指令をコントローラ5がエンジン3に出力するとともに、ショベル60内の電源をオフとする。また、キースイッチ4の選択位置がオンの場合は、スタートを経由している場合は、エンジン3の駆動が継続され、オフを経由している場合は、エンジン3は停止したままショベル60内の電源はオンとされる。なお、本実施例1のキースイッチ4は一例であり、上述した三つの選択位置の他に選択位置(例えば、エンジン3のグロープラグ予熱位置やアクセサリ電源位置等)を備えるものであってもよい。 【0017】 本実施例1のショベルの始動許可装置1においては、上述したキースイッチ4の選択位置がスタートとされ、かつ、以下に述べる実施例1の許可条件が成立した場合に、始動手段5bがエンジン3に対して始動指令を出力する。エンジン3はこの始動指令に基づいて始動されて、エンジン3の駆動軸に連結された図示しない油圧ポンプが駆動される。 【0018】 この図示しない油圧ポンプは、ショベル60が含む周知の油圧回路においてパイロット圧を生成している。キャビン64内の運転室に備えられる複数の操作レバー(操作部)がオペレーターにより操作されると、対応する複数の切削用、旋回用、前後進用の油圧アクチュエータのそれぞれにパイロット圧が送り込まれて動作される。つまり、ショベル60における掘削、旋回、前後進の動作が適宜、オペレーターにより選択される。 【0019】 カメラ2は、図1に示したように、ショベル60の周囲を映し出す入力画像を取得するための装置である。ここで、カメラ2は単眼タイプであり、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を備える。実施例1におけるカメラ2は、図3に示すオペレーターの死角となりやすい所定範囲CL、CR、CBをそれぞれ撮像する。 【0020】 カメラ2Lは左側面の一点鎖線で示す扇形状の所定範囲CLを撮像し、カメラ2Rは右側面の一点鎖線で示す扇形状の所定範囲CRを撮像し、カメラ2Bは後面の一点鎖線で示す扇形状の所定範囲CBを撮像する。なお、カメラ2の設置箇所は上述した三箇所に限られるものではなく、オペレーターの死角となる範囲をカバーできるものであればよい。例えばカメラ2は、上部旋回体63の右側面及び後面のみ、又は前面と右側面、後面と左側面の全てに取り付けられていてもよい。カメラ2は、撮像により取得した入力画像をコントローラ5に対して出力する。 【0021】 コントローラ5の人検知手段5aは、三つのカメラ2からの入力画像について、周知の画像処理により例えばオプティカルフローを求めて、ショベル60周辺の所定範囲CL、CR、CB内の人を検知する。コントローラ5の始動手段5bは、キースイッチ4の選択位置がスタートであって、本実施例1の判定手段5cによる許可条件を満たす場合に、エンジン3を始動する始動信号をエンジン3に対して出力する。 【0022】 本実施例1の許可条件は以下の通りである。つまり、コントローラ5の判定手段5cは、キースイッチ4の選択位置がスタートである場合に、人検知手段5aが人を検知するか否かを判定し、この判定手段5cが否定と判定する場合にエンジン3の始動手段5bによる始動を許可する。 【0023】 以下に本実施例1のショベルの始動許可装置1の制御内容について図4に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。ステップS1に示すように、コントローラ5の判定手段5cは、キースイッチ4の選択位置がスタートであるか否かを判定し、肯定であればステップS2にすすみ、否定であればENDにすすむ。 【0024】 ステップS2において、コントローラ5の人検知手段5aは、三つのカメラ2からの入力画像を上述した所定の画像処理を行って、所定範囲CL、CR、CBのいずれかに位置する人を検出する。つづいて、ステップS3において、コントローラ5の判定手段5cは、人検知手段5aにより人が検出されて「人有り?」の状態であるか否かを判定する。 【0025】 ステップS3において、判定手段5cにより否定と判定される場合、つまり、所定範囲CL、CR、CBに人がいない場合には、ステップS4にすすむ。ステップS4において、コントローラ5の許可手段5dはエンジン3の始動を許可する。この許可に基づいて、 コントローラ5の始動手段5bは、エンジン3に対して始動信号を出力し、エンジン3が始動される。 【0026】 ステップS3において、判定手段5cにより肯定と判定される場合、すなわち、所定範囲CL、CR、CBに人がいる場合には、ステップS5にすすんで、コントローラ5の許可手段5dは、エンジン3の始動を不許可とする。この不許可に基づいて、コントローラ5の始動手段5bは、ステップS1において、キースイッチ4の選択位置がオペレーターによりスタートとされた条件でも、始動信号をエンジン3に対して出力しない。図4に示したフローチャートはコントローラ5の制御周期毎に繰り返し実行されて、本発明のショベルの始動許可方法が実行される。 【0027】 上述した本実施例1に示したショベルの始動許可装置1は、ショベル60の周辺の所定範囲CL、CR、CBにおいて人が存在する場合には、キースイッチ4の選択位置がオペレーターによりスタートとされた条件でも、エンジン3の始動を不許可とすることができる。 【0028】 つまり本実施例1は、キースイッチ4の選択位置がスタートであって人がショベル60の周辺に存在する条件を、エンジン3の始動の不許可条件とすることができる。これとともに本実施例1は、キースイッチ4の選択位置がスタートであって人がショベル60の周辺に存在しない条件を、エンジン3の始動の許可条件とすることができる。 【0029】 本実施例1は、この不許可条件と許可条件の切り分けにより、ショベル60に人が存在する場合にはエンジン3の始動を禁止して、人特に作業者の安全を確保することができる。特にオペレーターがキャビン64に乗り込む前の周囲の目視確認と乗り込んだ後の警笛による警報を失念した場合でも、本実施例1によれば安全を確保できる。これとともに、本実施例1は、ショベル60の周辺に人が存在しない場合には、キースイッチ4の選択位置がスタートであることに基づいて速やかにエンジン3の始動を行うことができる。 (イ)実施例2 「【実施例2】 【0030】 上述した実施例1の許可条件については、オペレーターの実際の操作手順に併せて適宜変更することが可能である。以下それについての本実施例2のショベルの始動許可装置11について述べる。既述した実施例1で示したショベルの始動許可装置1と共通する構成については同一の符号を付し、以下、相違点を主に説明する。 【0031】 通常、ショベル60等の建設機械のエンジン3の始動の前には、オペレーターはキャビン64に乗り込む前に周囲を目視確認し、キャビン64に乗り込んだ後、警笛を鳴らして周囲に人がいる場合には退避を促してからエンジン3を始動させる。 【0032】 ここで図5に示すように、キャビン64内の座席Sの左方には通常、油圧ロックレバー6が設置されている。この油圧ロックレバー6を手前側に引き図5中「L」で示す位置まで移動させると「油圧ロック状態」が選択される。「油圧ロック状態」においては、ショベル60内の油圧回路内に設けられたシャット弁が、キャビン64内の操作レバーと油圧アクチュエータとの間の油圧回路を遮断する。つまり、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する油圧アクチュエータが動作しない。 【0033】 油圧ロックレバー6を前方側に倒して図5中「U」で示す位置まで移動させると「油圧ロック解除状態」が選択される。「油圧ロック解除状態」においては、シャット弁はキャビン64内の操作レバーと油圧アクチュエータとの間の油圧回路を連通させる。つまり、操作レバーをオペレーターが操作した場合に対応する油圧アクチュエータは動作される。 【0034】 ここでオペレーターがキャビン64に乗り込むときには、図5に示す油圧ロックレバー6は位置「L」に位置している。オペレーター自身がキャビン64に乗り込み、座席Sに座ったときに、油圧ロックレバー6を位置「L」そのままとして「油圧ロック状態」を保持した後、キースイッチ4の選択位置を操作して、適宜エンジン3の始動を行う。始動を行った後は、油圧ロックレバー6を位置「U」とし「油圧ロック解除状態」として、操作レバーによる油圧アクチュエータの動作を可能とする。 【0035】 そこで本実施例2のショベルの始動許可装置11では、図5に示すように、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」か「油圧ロック解除状態」のいずれであるかを、例えばポテンショメータなどの位置検出スイッチを用いてコントローラ5に入力する構成とする。 【0036】 コントローラ5の許可手段5dは、実施例1で述べたものと同様の所定範囲CL、CR、CBに人がおらず、キースイッチ4の選択位置がスタートとされ、かつ、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」である許可条件にて、エンジン3の始動を許可する。 【0037】 つまり本実施例2のショベルの始動許可装置11が含むコントローラ5の制御内容は、図7に示すように、図4に示したフローチャートに比べて、ステップS6が追加される。ステップS3にて、判定手段5cにより所定範囲CL、CR、CBに人がいないと判定され、かつ、ステップS6において、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」である場合に、ステップS4にすすんで、許可手段5dにより、エンジン3の始動が許可される。 【0038】 ステップS3において、判定手段5cにより、所定範囲CL、CR、CBに人がいないと判定され、ステップS6にて、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」でないと判定される場合には、ステップS5にすすむ。ステップS5において、許可手段5dが、エンジン3の始動を不許可とする。 【0039】 なお、本実施例2においても、ステップS3において、所定範囲CL、CR、CBに人がいると判定手段5cにより判定される場合には、ステップS5にすすんで、許可手段5dにより、エンジン3の始動は不許可とされる。図7に示したフローチャートもコントローラ5の制御周期毎に繰り返し実行され、本発明のショベルの始動許可方法が実行される。 【0040】 上述した本実施例2に示したショベルの始動許可装置11においても、建設機械であるショベル60の周辺の所定範囲CL、CR、CBにおいて、人が存在する場合には、キースイッチ4の選択位置がオペレーターによりスタートとされた条件でも、エンジン3の始動を不許可とすることができる。 【0041】 さらに本実施例2は、キースイッチ4の選択位置がスタートであって人がショベル60の周辺に存在する場合、又は、人がショベル60に存在せずかつ油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」でない場合の双方を、エンジン3の始動の不許可条件とする。また、本実施例2は、キースイッチ4の選択位置がスタートであって人がショベル60の周辺に存在せず、かつ、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」である場合を、エンジン3の始動の許可条件とする。 【0042】 本実施例2は、この不許可条件と許可条件の切り分けにより、ショベル60の周辺に人が存在する場合にはエンジン3の始動を禁止して、人特に作業者の安全を確保することができる。これとともに、本実施例2は、ショベル60の周辺に人が存在しない場合には、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」であることを追加条件として、キースイッチ4の選択位置がスタートであることに基づいて速やかにエンジン3の始動を行うことができる。 【0043】 本実施例2では特に、万一オペレーターが操作レバーに触れた状態で、キースイッチ4の選択位置をスタートとした場合でも、意図しないショベル60の掘削、旋回、前後進の動作を禁止できる。加えて、本実施例2ではエンジン3の始動直後の、ショベル60の掘削、旋回、前後進の急激な動作を禁止できる。これにより本実施例2では、周囲の人の安全を確保できる。」 (3)本願の当初明細書等に記載された技術的事項 ア 上記(2)で摘記した本願の当初明細書の記載によれば、本願の当初明細書等に記載された発明は、安全性を確保するショベルの発明に関し(段落【0001】)、より確実に周辺の作業員の安全を確保することができるショベルを提供することを目的とするものであり(段落【0005】)、下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントを含んで構成されるショベルであって、前記上部旋回体に備えられ、前記ショベルの周辺の所定範囲内の障害物を検知する検知手段と、油圧アクチュエータが動かされる前に、前記検知手段が障害物を検知したか否かを所定の制御周期毎に判定し、障害物が検知されると、旋回動作、走行動作、掘削動作の何れかを禁止するコントローラと、を有するものである(段落【0006】)。 そして、実施例1は、ショベル60に適用される始動許可装置1は、キースイッチ4の選択位置がスタート、オン、オフの三つのうちのスタートとされ、かつ、以下の許可条件が成立した場合に、始動手段がエンジン3に対して始動指令を出力し、許可条件は、コントローラ5の人検知手段5aが前記上部旋回体63のカメラ2により取得された入力画像から画像処理を行って所定範囲内の人を検出し、判定手段5cが、人が検出されて「人有り?」の状態であることを否定と判定することであり(段落【0013】~【0026】)、また、実施例1の効果として、ショベル60に人が存在する場合にはエンジン3の始動を禁止して、人特に作業者の安全を確保することができること(段落【0029】)が記載されている。 また、実施例2は、実施例1の許可条件にさらに、ショベル60内の油圧回路内に設けられたシャット弁が、キャビン64内の操作レバーと油圧アクチュエータとの間の油圧回路を遮断する「油圧ロック状態」であるか否かを追加して、所定範囲CL、CR、CBに人がおらず、キースイッチ4の選択位置がスタートとされ、かつ、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」である許可条件にて、エンジン3の始動を許可するというものであり(段落【0030】~【0036】)、実施例2の効果として、万一オペレーターが操作レバーに触れた状態で、キースイッチ4の選択位置をスタートとした場合でも、意図しないショベル60の掘削、旋回、前後進の動作を禁止でき、加えて、エンジン3の始動直後の、ショベル60の掘削、旋回、前後進の急激な動作を禁止でき、これにより本実施例2では、周囲の人の安全を確保できること(段落【0043】)が記載されている。 そうすると、本願の当初明細書等に記載された発明は、より確実に周辺の作業員の安全を確保するために、油圧アクチュエータが動かされる前に、ショベルの周辺の所定範囲内に障害物を検知したか否かを判定し、障害物が検知されると、旋回動作、走行動作、掘削動作の何れかを禁止するという構成を有するものであるといえる。 イ 他方、本件却下前補正により追加された、 「とともに、 前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う」の一部である「動作に対応させて危険である場合に警報を行う」との構成については、本願当初明細書に、「従来技術」として記載されている。しかし、当該記載は、「ショベル等の建設機械として例えば特許文献1に記載のもの」があり、特許文献1において「機械と周囲の作業員等の障害物との接触を防止するため、障害物との距離や建設機械の切削や旋回などの動作に対応させて危険である場合に警報を行うことが提案されている」(段落【0002】)ことを述べているに過ぎず、本願の当初明細書等に記載された発明が「動作に対応させて危険である場合に警報を行う」ことを記載するものではない。 さらに、上記記載は従来技術として記載するに過ぎないから、「動作に対応させて危険である場合に警報を行う」ことが「前記所定範囲内に人が検知された後において、操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止される」ことと「ともに」行われることについて記載も示唆も無く、「警報を行う」ための各構成についても、「前記検知手段により前記所定範囲内に」に、すなわち、「前記所定範囲内に人が検知された後において、操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止される」のと同じ「検知手段」により同じ「所定範囲」内において「動作に対応させて危険である場合に警報を行う」ことについても、また、「前記コントローラ」、すなわち「油圧アクチュエータが動かされる前に、前記検知手段が障害物を検知したか否かを判定し、障害物が検知されると、旋回動作、走行動作、掘削動作の何れかを禁止するコントローラ」が「前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて」行うものであることについても記載も示唆も無い。 そして、本願の当初明細書等に記載された発明において、「油圧ロック解除状態警報構成」を有することとする契機となり得る記載が存在しないから、本願の当初明細書等に記載された発明が「油圧ロック解除状態警報構成」を有することを直ちには導くことはできないし、「油圧ロック解除状態警報構成」と本願の当初明細書等に記載された発明とが関連し合う構成について導くことはできないというべきである。 「油圧ロック解除状態警報構成」を有する契機となり得る記載に関し、本願当初明細書の段落【0044】には、「以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。」、段落【0045】には、「例えば上述した実施例では、所定範囲の入力画像から人検知手段5aが人を検知するにあたり画像処理を用いることを例示したが人を検知する手法はこれに限られない。つまり、パターンマッチングによる手法や、ステレオカメラを用いた立体物検出の手法を用いることも可能である。また、アクティブ型の赤外線センサやパッシブ型の赤外線センサ(例えば焦電型赤外線センサ)を用いてもよく、レーザレーダや超音波センサを用いてもよい。」との記載もあるが、本願の当初明細書等に記載された発明が「油圧ロック解除状態警報構成」を有することを示唆するものではなく、上記認定を左右しない。 ウ 以上のとおりであるから、本件却下前補正における請求項1に、 「とともに、 前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う」との構成を追加する補正は、当業者によって本願当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的意義を導入するものであるから、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内でなされたものということはできない。 2 「理由2.(明確性要件)」について (1)一般に、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断される。 (2)以下、本願発明の「前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う」との構成が、明確であるかについて、上記(1)の観点から、検討する。 (3)本願発明の「前記コントローラ」は、「前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う」ことに関し、「対応させ」てとの記載は、これが「検知手段の出力」及び「油圧アクチュエータの動作」と「危険である場合に警報を行う」の関係をどのように規定しているのか、特許請求の範囲からは理解できず不明であり、「検知手段」の出力がどのようなものであり、その出力をどのように用いているのかも、同様に不明であり、これらの点に関連して、「コントローラ」が「危険である場合」をどのように判断しているのかも、同様に不明である。 そうすると、「コントローラ」がどのような構成であれば本願発明となるのか当業者といえども理解できず、第三者に不測の不利益を与えるものとなる。 (4)そして、本願発明の上記(2)に示した構成について、本願の当初明細書には、課題を解決するための手段として段落【0006】に請求項1の上記構成と同じ記載があるものの、その他の段落は本願当初明細書と同様であり、上記1で検討したように、「前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う」ことについて記載されていないから、上記(3)の点は、本願の明細書及び図面を考慮しても不明である。 さらに、遡及された出願当時における当業者の技術的常識を考慮しても、上記(3)の点は、明確でない。 (5)以上のとおりであるから、本願発明の特許請求の範囲の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であると言わざるを得ない。 3 「理由3.(サポート要件)」について (1)一般に、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるかを検討して判断される。 (2)以下、本願発明の「前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う」との構成を含む本願発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であるか否か、上記(1)の観点から検討する。 (3)本願発明の上記記載について、本願明細書には、課題を解決するための手段として段落【0006】に請求項1の上記構成と同じ記載があるものの、その他の段落は本願当初明細書と同様であり、上記1で検討したように、「前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う」ことについて記載されていない。 また、本願明細書全体を総合して参酌しても、本願発明の上記記載における「前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である」と判断する手段について、記載も示唆もされていない。 さらに、遡及された出願当時の当業者の技術常識に照らしても、本願発明が、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。 (4)よって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 4 「理由4.(進歩性)」について (1)本願発明 本願発明は、上記第3に記載されたとおりである。 (2)引用文献一覧 当審が通知した令和3年9月17日付けの最後の拒絶理由において、進歩性について引用した引用文献1ないし3は次のものである。 引用文献1 実願昭63-51427号(実開平1-156256号) のマイクロフィルム 引用文献2 特開2005-307491号公報 引用文献3 特開2010-198519号公報 (3)引用文献の記載 ア 引用文献1及び引用文献2 引用文献1及び引用文献2の記載事項及びそれらに記載された発明は、上記第2の2(3)イ(ア)及び(イ)に記載したとおりである。 イ 引用文献3 本願出願遡及日前に頒布された刊行物であり、令和3年9月17日付けの最後の拒絶理由に引用した引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 作業機械周囲の障害物を監視する周囲監視装置において、 前記障害物の画像データを検出する画像センサと、 前記障害物の位置データを検出する電磁波センサと、前記画像センサ、又は電磁波センサにより作業機械周囲の作業者又は物体等の障害物の存在を検出する障害物検出手段と、 該検出した障害物と前記作業機械の位置関係を算出する障害物と作業機械の位置関係算出手段と、 検出した障害物と前記作業機械の位置関係が所定値の距離以内の場合は、前記画像データ中の人物頭部特徴の有無により前記障害物が人物に該当するか否かを判定する特徴算出手段と、 前記算出した位置関係から作業機械の旋回や移動の姿勢変更の機械状態取り込み手段と、該機械の動作状態取り込み手段が機械の旋回や移動状態を取り込んだ場合、前記障害物が人物、又は人物以外の物体に応じた接触危険度レベルを算出する接触危険度算出手段と、 該接触危険度算出手段の危険度に適した警報レベルを決定する警報レベル決定手段と、 該決定した警報レベルから警報内容を出力装置に出力する警報出力手段を具備していることを特徴とする作業機械用の周辺監視装置。」 (イ)「【実施例1】 【0021】 作業機械の一例である油圧ショベルの概観を図1に示す。油圧ショベルは、垂直方向にそれぞれ回動するブーム1a,アーム1b及びバケット1cからなる多関節型のフロント作業機1Aと、上部旋回体1d及び下部走行体1eからなる車体1Bとで構成される。上部旋回体1dには、運転室1fが備えられている。フロント作業機1Aのブーム1aの基端は上部旋回体1dの前部に支持されている。ブーム1a,アーム1b,バケット1c,上部旋回体1d及び下部走行体1eはそれぞれブームシリンダ3a,アームシリンダ3b,バケットシリンダ3c,旋回モータ3d(図1には図示しない)及び左右の走行モータ3e,3f(図示しない)の各アクチュエータによりそれぞれ駆動される。また、ブーム1a,アーム1b,バケット1c,上部旋回体1dは、それぞれの回動角を検出する角度検出器8a,8b,8c,8dを備える。更に、機械の後方にカメラ13aを設置して後方シーンを撮影し、ミリ波レーダ(距離センサ)14aを設置して機械後方から障害物までの距離を計測する。また、機械の右側方にカメラ13bを設置して右側方シーンを撮影し、距離センサ14b(図示しない)を設置して機械右側方から障害物までの距離を計測する。 ・・・ 【0028】 画像処理装置90における処理は、カメラ13aが機械の後方シーンを撮影すると、障害物検出手段600がカメラ13aの撮影シーンを用いて画像処理を行い、作業機械周囲の作業者や物体等の障害物の存在有無を検出する。障害物検出手段600で障害物が存在した場合、障害物と機械の位置関係算出手段1100は、機械本体から障害物と機械までの距離や方向の位置関係を算出し、接触危険度算出手段1200が、障害物と機械の位置関係算出手段1100が算出した位置関係と機械状態取り込み手段700が取り込んだ作業機械の掘削や旋回や移動等の姿勢変更等の動作から障害物の接触危険度レベルを算出する。その後、警報レベル決定手段1300は、接触危険度算出手段1200が算出した障害物の接触危険度レベルから警報レベルを決定して警報出力手段1400に出力すると、警報出力手段1400はレベルに応じた警報内容をモニタや音声等の出力装置1500へ出力する。運転員は、出力装置1500の結果を目視や音声で把握して機械の操作を判断する。」 (ウ)引用発明3 上記(ア)及び(イ)によれば、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明3) 「障害物の画像データを検出する画像センサと、 作業機械周囲の作業者又は物体等の障害物の存在を検出する障害物検出手段と、 該検出した障害物と前記作業機械の位置関係を算出する障害物と作業機械の位置関係算出手段と、 検出した障害物と前記作業機械の位置関係が所定値の距離以内の場合は、前記画像データ中の人物頭部特徴の有無により前記障害物が人物に該当するか否かを判定する特徴算出手段と、 前記算出した位置関係から作業機械の旋回や移動の姿勢変更の機械状態取り込み手段と、該機械の動作状態取り込み手段が機械の旋回や移動状態を取り込んだ場合、前記障害物が人物、又は人物以外の物体に応じた接触危険度レベルを算出する接触危険度算出手段と、 該接触危険度算出手段の危険度に適した警報レベルを決定する警報レベル決定手段と、 該決定した警報レベルから警報内容を出力装置に出力する警報出力手段を具備している作業機械用の周辺監視装置であって、 作業機械として油圧ショベルが挙げられ、 警報レベル決定手段1300は、接触危険度算出手段1200が算出した障害物の接触危険度レベルから警報レベルを決定して警報出力手段1400に出力すると、警報出力手段1400はレベルに応じた警報内容をモニタや音声等の出力装置1500へ出力する、作業機械用の周辺監視装置。」 (4)対比・判断 ア 対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 (ア)上記第2の2(3)イ(ウ)aないしfにおける本願補正発明と引用発明1との対比は、本願発明と引用発明1との対比でも同様である。 (イ)引用発明1の「油圧ショベルが旋回作業を行っているとき」に「障害物センサ9,10,11,12の検出信号範囲内に人,動物などの障害物が立入ると」、「障害物センサ9,10,11,12」は「検出信号をコントローラ部21に出力」し、「障害物センサ9,10,11,12からの検出信号に基づき、コントローラ部21に接続された警報器14,15,16より警報を発生」する点と、本願発明の「前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う」点とは、「コントローラは、動作中に、警報を行う」点で共通する。 (ウ)上記(ア)及び(イ)から、本願発明と引用発明1とは、以下の一致点、相違点を有する。 (一致点) 下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントを含んで構成されるショベルであって、 前記上部旋回体に備えられ、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する検知手段と、 前記検知手段により前記所定範囲内に人等の障害物を検知したか否かを判定するコントローラと、を有し、 前記コントローラは、動作中に、警報を行う、 ショベル。 (相違点A) 警報を行うにあたってコントローラが判定するのが、本願発明は、検知手段が「人」を検知したか否かであるのに対し、引用発明1は、検知手段が「人,動物などの障害物」を検知したか否かである点。 (相違点B) 本願発明は、「油圧ロックレバーにより動作され、油圧回路の油圧ロック状態と油圧ロック解除状態とを切り替えるシャット弁」を有し、「操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止され」(「油圧ロック状態動作禁止構成」)、 コントローラが人を検知したか否かを判定するのが、「前記シャット弁を用いて油圧回路を遮断した全ての油圧アクチュエータが動作していない油圧ロック状態」においてであり、 「操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止され」るのが、「前記所定範囲内に人が検知された後において」であるのに対し、引用発明1では、上記のように特定されていない点。 (相違点C) 本願発明は、コントローラがオペレーターに対して警報を行うのが、「前記シャット弁が油圧ロック解除状態における」動作中に、「前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合」であるのに対し、引用発明1は、そのように特定されていない点。 イ 判断 上記相違点について検討する。 (ア)相違点Aについて 相違点Aは相違点1と同様の点であり、上記第2の2(3)イ(エ)aで相違点1について検討したとおり、引用発明1においてコントローラが、「人」を検知したか否かを判定するものとすることは、当業者が適宜になし得る設計的事項である。 (イ)相違点Bについて 上記第2の2(3)イ(エ)b(a)ないし(d)における本願補正発明と引用発明2との対比は、本願発明と引用発明2との対比においても同様である。 そうすると、引用発明2のバックホー(ショベル)は、本願発明の「油圧ロック状態動作禁止構成」に相当する構成を備えるものであるといえる。 また、引用発明1において引用発明2における「油圧ロック状態動作禁止構成」を採用して、コントローラが人を検知したか否かを判定するのが、「前記シャット弁を用いて油圧回路を遮断した全ての油圧アクチュエータが動作していない油圧ロック状態」においてであり、「操作レバーが動かされても前記油圧ロック状態により旋回動作、走行動作、及び掘削動作は禁止され」るのが、「前記所定範囲内に人が検知された後において」であるものとすることが、当業者が容易になし得たことであることについては、上記第2の2(3)イ(エ)b(f)及び(g)で検討したとおりである。 (ウ)相違点Cについて a 引用発明1において引用発明2における「油圧ロック状態動作禁止構成」を採用した場合、「動作中」が、「前記シャット弁が油圧ロック解除状態における」動作中であるのが自明であることについては、上記第2の2(3)イ(エ)b(g)で検討したとおりである。 b 本願発明と引用発明3とを対比する。 (a)引用発明3の「作業機械」として挙げられる「油圧ショベル」は、本願発明1の「ショベル」に相当し、引用発明3の「作業機械の旋回や移動」は、本願発明の「動作」に相当する。 (b)引用発明3は、「作業機械周囲の作業者又は物体等の障害物の存在を検出する障害物検出手段」の出力に対して「前記作業機械の位置関係が所定値の距離以内の場合に、前記画像データ中の人物頭部特徴の有無により前記障害物が人物に該当するか否か」によって人を検知した否かを判定するものであるから、引用発明3の「障害物検出手段」は本願発明の「検知手段」に相当し、引用発明3の「該機械の動作状態取り込み手段が機械の旋回や移動状態を取り込んだ場合、前記障害物が人物、又は人物以外の物体に応じた接触危険度レベルを算出」し、「危険度に適した警報レベルを決定」し、「レベルに応じた警報内容をモニタや音声等の出力装置1500へ出力する」ことは、本願発明の「検知手段の出力と油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う」ことに相当する。 (c)そうすると、引用発明3は、本願発明の「動作中」に、「検知手段の出力と油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う」に相当する構成を備えたショベルであるといえる。 c 引用発明1と引用発明3とは、油圧ショベルという共通の技術分野に属し、警報を行うという共通の機能を有している。 そして、警報を行うにあたり、検知手段の出力のみならず旋回や移動状態などの油圧アクチュエータの動作にも対応させて危険である場合を判断する方が、より適切な警報を行うことができるから、引用発明1において警報を行うにあたり、引用発明3の「検知手段の出力と油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う」構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 d したがって、引用発明1において引用発明2とともに引用発明3を適用し、「前記コントローラは、前記シャット弁が油圧ロック解除状態における動作中に、前記検知手段の出力と前記油圧アクチュエータの動作とに対応させて危険である場合に警報を行う」ものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 小括 以上のとおり、本願発明は、引用発明1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 上記のとおり、令和3年6月7日付け手続補正による補正は、本願の当初明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 本願発明は、明確でなく、同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。また、本願発明は、発明の詳細な説明に記載されておらず、同第1号に規定する要件を満たしていない。 本願発明は、引用発明1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-009131

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    共通の審決分類: 121・E02F、537・E02F、55・E02F
  • 2024-003537拒絶査定不服審判 / 2025-09-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)作業現場の判別システム、及び、作業現場の画像処理システム
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