特許拒絶査定不服審判
2024-009362
フレキシブルカバープレート及びフレキシブル表示装置
- 審判番号
- 2024-009362
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-514801
- 請求日
- 2024年06月05日
- 審決日
- 2025年08月15日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】武漢華星光電半導体顕示技術有限公司
- 【請求人代理人】松村 啓
- 審判長/審判官
- 審判長 道祖土 新吾
- 審判官 井海田 隆
- 審判官 南川 泰裕
- 分類
- P18 .121-WZF(G09F) / P18 .575-WZF(G09F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-514801「フレキシブルカバープレート及びフレキシブル表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 1月26日国際公開、WO2023/000445、令和 5年10月20日国内公表、特表2023-544069〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)9月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2021年7月22日、中国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 3月 4日 :翻訳文の提出
令和5年10月19日付け :拒絶理由通知書
令和6年 1月22日 :意見書、手続補正書の提出
同年 1月29日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 2月 5日 :原査定の謄本の送達)
同年 6月 5日 :審判請求書及び手続補正書の提出
第2 令和6年6月5日にされた補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年6月5日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和6年6月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年1月22日にされた手続き補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
フレキシブルカバープレートであって、屈曲領域と、非屈曲領域と、遷移領域とを含み、前記遷移領域は前記非屈曲領域と前記屈曲領域とを接続し、前記フレキシブルカバープレートは更に、
少なくとも1つの基材層と、
前記基材層上に形成される少なくとも1つの硬化層と、を含み、
前記屈曲領域内に位置する前記硬化層の厚さは、前記非屈曲領域内に位置する前記硬化層の厚さよりも小さく、前記屈曲領域内に位置する前記基材層の厚さは、前記非屈曲領域内に位置する前記基材層の厚さよりも大きく、
前記基材層は第1屈曲部と、第1非屈曲部と、第1遷移部とを含み、前記第1遷移部は前記第1非屈曲部と前記第1屈曲部とを接続し、
前記第1遷移部の厚さは、前記第1非屈曲部の厚さから前記第1屈曲部の厚さまで均一に増大し、
前記第1遷移部の最大厚さと最小厚さとの差分と、前記第1遷移部の幅との比率を前記第1遷移部の厚さ変化率として定義すると、前記第1遷移部の厚さ変化率は1/3以下である、フレキシブルカバープレート。」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
フレキシブルカバープレートであって、屈曲領域と、非屈曲領域と、遷移領域とを含み、前記遷移領域は前記非屈曲領域と前記屈曲領域とを接続し、前記フレキシブルカバープレートは更に、
少なくとも1つの基材層と、
前記基材層上に形成される少なくとも1つの硬化層と、を含み、
前記屈曲領域内に位置する前記硬化層の厚さは、前記非屈曲領域内に位置する前記硬化層の厚さよりも小さく、前記屈曲領域内に位置する前記基材層の厚さは、前記非屈曲領域内に位置する前記基材層の厚さよりも大きい、
前記基材層は第1屈曲部と、第1非屈曲部と、第1遷移部とを含み、前記第1遷移部は前記第1非屈曲部と前記第1屈曲部とを接続し、
前記第1遷移部の厚さは、前記第1非屈曲部の厚さから前記第1屈曲部の厚さまで均一に増大し、
前記第1遷移部の最大厚さと最小厚さとの差分と、前記第1遷移部の幅との比率を前記第1遷移部の厚さ変化率として定義すると、前記第1遷移部の厚さ変化率は0~1/3であり、
第2遷移部の厚さは、第2非屈曲部の厚さから第2屈曲部の厚さまで均一に低下し、
前記第2遷移部の最大厚さと最小厚さとの差分と、前記第2遷移部の幅との比率を前記第2遷移部の厚さ変化率として定義すると、前記第2遷移部の厚さ変化率は0~1/3であり、
前記屈曲領域、前記遷移領域、及び前記非屈曲領域内に位置する前記フレキシブルカバープレートの厚さは同じである、フレキシブルカバープレート。」
2 補正の目的について
(1) 本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項について、次のア~ウの限定をするものである。
ア 補正事項1
本件補正前の請求項1に記載された「第1遷移部の厚さ変化率」について、「1/3以下」という数値範囲を、「0~1/3」という数値範囲に限定すること。
イ 補正事項2
本件補正前の請求項1に記載された「フレキシブルカバープレート」について、「第2遷移部の厚さは、第2非屈曲部の厚さから第2屈曲部の厚さまで均一に低下し、前記第2遷移部の最大厚さと最小厚さとの差分と、前記第2遷移部の幅との比率を前記第2遷移部の厚さ変化率として定義すると、前記第2遷移部の厚さ変化率は0~1/3であ[る]」ものに限定すること。
ウ 補正事項3
本件補正前の請求項1に記載された「フレキシブルカバープレート」の厚さについて、「前記屈曲領域、前記遷移領域、及び前記非屈曲領域内に位置する前記フレキシブルカバープレートの厚さは同じである」と限定すること。
(2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3) したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。ただし、「第2屈曲部」、「第2非屈曲部」、「第2遷移部」については、明細書の段落[0049]の定義より、「前記硬化層は第2屈曲部と、第2非屈曲部と、第2遷移部とを含み、前記第2遷移部は前記第2非屈曲部と前記第2屈曲部とを接続する」という関係が成り立つことを前提とする。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を、改行を調整しつつ次のとおり構成X1~X4、構成A1~A3、構成B1~B4に分説する。また、参考図として、本願の【図1】に部材名を記入したものを掲載する。
<本件補正発明の分説>
「X1 フレキシブルカバープレートであって、屈曲領域と、非屈曲領域と、遷移領域とを含み、前記遷移領域は前記非屈曲領域と前記屈曲領域とを接続し、
X2 前記フレキシブルカバープレートは更に、少なくとも1つの基材層と、前記基材層上に形成される少なくとも1つの硬化層と、を含み、
A1 前記屈曲領域内に位置する前記硬化層の厚さは、前記非屈曲領域内に位置する前記硬化層の厚さよりも小さく、
A2 前記屈曲領域内に位置する前記基材層の厚さは、前記非屈曲領域内に位置する前記基材層の厚さよりも大きい、
X3 前記基材層は第1屈曲部と、第1非屈曲部と、第1遷移部とを含み、前記第1遷移部は前記第1非屈曲部と前記第1屈曲部とを接続し、
B1 前記第1遷移部の厚さは、前記第1非屈曲部の厚さから前記第1屈曲部の厚さまで均一に増大し、
B2 前記第1遷移部の最大厚さと最小厚さとの差分と、前記第1遷移部の幅との比率を前記第1遷移部の厚さ変化率として定義すると、前記第1遷移部の厚さ変化率は0~1/3であり、
B3 第2遷移部の厚さは、第2非屈曲部の厚さから第2屈曲部の厚さまで均一に低下し、
B4 前記第2遷移部の最大厚さと最小厚さとの差分と、前記第2遷移部の幅との比率を前記第2遷移部の厚さ変化率として定義すると、前記第2遷移部の厚さ変化率は0~1/3であり、
A3 前記屈曲領域、前記遷移領域、及び前記非屈曲領域内に位置する前記フレキシブルカバープレートの厚さは同じである、
X4 フレキシブルカバープレート。」
<参考図> 【図1】
[図:0001431711000001.jpg]
11:第1屈曲部 12:第1非屈曲部 13:第1遷移部
21:第2屈曲部 22:第2非屈曲部 23:第2遷移部
(2) 引用文献1に記載された事項及び技術事項の認定
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において文献1として引用された、本願の優先日前に発行された文献である中国実用新案第210955909号明細書(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(摘記の後の括弧内には、合議体が作成した日本語訳に、技術事項の認定に直接用いる記載に下線を付したものを示す。)。
(ア) 段落[0036]~[0038]
「
[図:0001431711000002.jpg]
[図:0001431711000003.jpg]
[図:0001431711000004.jpg]
[図:0001431711000005.jpg]
」
([0036]いくつかの代替的な実施形態では、ハードコート層20は、シリコーンポリマーまたはアクリル系ポリマーを使用することができる。ハードコート層20の材料は例えば酸化ケイ素SiOx、酸化アルミニウムAl2O3又は酸化ジルコニウムZrO2のうちの一種又は複数種を選択することができる。また、ハードコート層20の厚みは3μm~30μmであってもよく、例えば5μm、10μm、15μm、20μm、25μm等であってもよい。該厚さ範囲はカバープレート100が耐衝撃性要求を満たすことができ,且つカバープレート100全体の厚さに影響を与えることがない。
…(中略)…
[0038]いくつかの代替的な実施形態では、図5及び図6に示すように、図5は図1に示すカバープレートの他のA-A断面図である;図6は図3に示すカバープレートの他のB-B断面図である。本実施例のカバープレート100の非屈曲領域NAと屈曲領域BAは第一方向Xに交互に分布し、ハードコート層20は第一方向Xに沿って対向する第一エッジD1及び第二エッジD2を有し、ここで、第一エッジD1は屈曲領域BAに隣接して設置される。第一の方向Xに沿った予め設定された範囲内では、ハードコート層20の厚さは、第二エッジD2から第一エッジD1の方向に向かって減少する。図5及び図6に示すように、 ハードコート層20は屈曲領域BAから予め設定された範囲内の断面が斜面であり、非屈曲領域NAのある位置から屈曲領域BAの縁部に向かってハードコート層20の厚さが徐々に減少する。ハードコート層20の傾斜面が傾斜する方向に対して、本実用新案の実施例では制限されない。本実施例において、ハードコート層20は屈曲領域BAから5mm~10mmの距離において屈曲領域BAに向かって薄くなることができ、ハードコート層20の屈曲領域BAから予め設定された範囲外の領域は均一な厚さを維持することができる。ハードコート層20の厚さはカバープレート100の硬度と正の関係にあり、従って、屈曲領域BAから離れた非屈曲領域NA内において、ハードコート層20はできるだけ均一な厚さに維持され、屈曲領域BAに隣接して、ハードコート層20は徐々に薄くすることができて屈曲領域BAのフレキシブル基板100の屈曲特性を保証する。)
(イ) 図5
「図5
[図:0001431711000006.jpg]
」
イ 引用文献1技術事項の認定
前記アにおいて摘記した事項及び図面から、次の引用文献1技術事項が認定される。
<引用文献1技術事項>
「非屈曲領域NAと屈曲領域BAを有し、非屈曲領域NAのある位置から屈曲領域BAの縁部に向かってハードコート層20の厚さが徐々に減少することで屈曲領域BAの屈曲特性を保証するフレキシブル基板100において、ハードコート層の厚みは3μm~30μmで、ハードコート層20は屈曲領域BAから5mm~10mmの距離において屈曲領域BAに向かって薄くすること」
(3) 引用文献2に記載された事項及び引用発明の認定
ア 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由において文献2として引用された、本願の優先日前に発行された文献である中国特許出願公開第109671363号明細書(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。(摘記の後の括弧内には、合議体が作成した日本語訳に、技術事項の認定に直接用いる記載に下線を付したものを示す。)
(ア) 段落[0008]
「
[図:0001431711000007.jpg]
」
([0008]本発明の実施例はフレキシブル表示装置に用いられる保護カバーシートを提供し、前記フレキシブル表示装置は屈曲領域および非屈曲領域を含み、前記保護カバーシートは前記屈曲領域内に位置する屈曲部、及び前記非屈曲領域に位置する非屈曲部を含み、前記屈曲部のヤング率は前記非屈曲部のヤング率より小さい。)
(イ) 段落[0040]
「
[図:0001431711000008.jpg]
」
([0040]第一材料層S1は一般的に透明なポリイミド(CPI)を用い、第二材料層S2はより硬い耐擦傷性材料(HC,Hard Coating)を用いる。)
(ウ) 段落[0056]~[0058]、図5
「
[図:0001431711000009.jpg]
[図:0001431711000010.jpg]
[図:0001431711000011.jpg]
」
([0056]一実施形態では、図5に示すように、保護カバーシート1は第一材料層S1及び第二材料層S2を含み、前記第一材料層S1のヤング率は前記第二材料層S2のヤング率より小さい。前記屈曲部11の膜層厚H1、前記非屈曲部12の膜層厚H2及び移行部13の膜層厚H3は同じである。前記屈曲部11の第二材料層の厚さh21は前記移行部13の第二材料層の厚さh23より小さく、前記移行部13の第二材料層の厚さh23は前記非屈曲部13の第二材料層の厚さh22より小さい。
[0057]一実施形態では、図5に示すように、前記屈曲部11の第二材料層S2の厚さh21は均一で、前記非屈曲部12の第二材料層S2の厚さh22は均一である。前記移行部13の第二材料層S2の厚さh22は屈曲部11から非屈曲部12方向に向かって徐々に増加する。すなわち屈曲部11及び非屈曲部12内では、第二材料層S2が均一に配置されているので、配置が簡単である。
[0058]一実施形態では、図5に示すように、移行部13の第二材料層S2と第一材料層S1との間の接触面mの断面は直線である。)
「図5
[図:0001431711000012.jpg]
」
イ 図5から読み取れる事項の認定
図5から、保護カバーシート1の厚さは第一材料層S1の厚さと第二材料層S2の厚さを合わせたものと理解される。そして、段落[0056]の「前記屈曲部11の膜層厚H1、前記非屈曲部12の膜層厚H2及び移行部13の膜層厚H3は同じである。前記屈曲部11の第二材料層の厚さh21は前記移行部13の第二材料層の厚さh23(平均の厚み値)より小さく、前記移行部13の第二材料層の厚さh23は前記非屈曲部13の第二材料層の厚さh22より小さい。」という記載を合わせると、第一材料層S1の厚さについて次の関係が読み取れる。
<認定事項1>
「前記屈曲部の第一材料層の厚さ(H1-h21)は前記移行部の第一材料層の厚さ(H3-h23)より大きく、前記移行部の第一材料層の厚さは前記非屈曲部の第一材料層の厚さ(H2-h22)より大きい。」
さらに、段落[0057]の「前記移行部13の第二材料層S2の厚さh22は屈曲部11から非屈曲部12方向に向かって徐々に増加する。」という記載と、段落[0058]の「移行部13の第二材料層S2と第一材料層S1との間の接触面mの断面は直線である。」との記載を合わせると、第二材料層の厚さについて次の関係も読み取れる。
<認定事項2>
「前記移行部の第二材料層の厚さは屈曲部から非屈曲部方向に向かって一定の割合で徐々に増加する。」
また、前記認定事項1と前記認定事項2とを合わせると、移行部の第一材料層の厚さについて、次の事項も記載されていると読み取れる。
<認定事項3>
「前記移行部の第一材料層の厚さは屈曲部から非屈曲部方向に向かって一定の割合で徐々に減少する。」
ウ 引用発明の認定
前記ア~イの事項を総合すると、引用文献2には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「屈曲領域および非屈曲領域を含むフレキシブル表示装置に用いられる保護カバーシートであって、([0008])
保護カバーシートは第一材料層及び第二材料層を含み、前記第一材料層のヤング率は前記第二材料層のヤング率より小さく、([0056])
第一材料層は透明なポリイミドを用い、第二材料層S2はより硬い耐擦傷性材料を用い、([0040])
前記屈曲部の膜層厚H1、前記非屈曲部の膜層厚H2及び移行部の膜層厚H3は同じであり、([0056])
前記屈曲部の第二材料層の厚さh21は前記移行部の第二材料層の厚さh23より小さく、前記移行部の第二材料層の厚さh23は前記非屈曲部の第二材料層の厚さh22より小さく、([0056])
前記屈曲部の第一材料層の厚さh21は前記移行部の第一材料層の厚さh23より大きく、前記移行部の第一材料層の厚さh23は前記非屈曲部の第一材料層の厚さh22より大きく、(認定事項1)
前記屈曲部の第二材料層の厚さh21は均一で、前記非屈曲部の第二材料層の厚さh22は均一で、([0057])
前記移行部の第二材料層の厚さh22は屈曲部から非屈曲部方向に向かって一定の割合で徐々に増加し、([0057]、認定事項2)
前記移行部の第一材料層の厚さは屈曲部から非屈曲部方向に向かって一定の割合で徐々に減少する、(認定事項3)
保護カバーシート」
(4) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 構成X1~X4の観点(フレキシブルカバープレートの構成要素)
次の<引用発明>欄に記載の引用発明の構成は、それぞれ対応する<本件補正発明>の欄に記載の本件補正発明の構成に相当する。
<引用発明> <本件補正発明>
保護カバーシート フレキシブルカバープレート
第一材料層、第二材料層 基材層、硬化層
屈曲部、移行部、非屈曲部 屈曲領域、遷移領域、非屈曲領域
屈曲部の第一(二)材料層 第1(2)屈曲部
移行部の第一(二)材料層 第1(2)遷移部
非屈曲部の第一(二)材料層 第1(2)非屈曲部
したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点で一致する。
「屈曲領域と、非屈曲領域と、遷移領域とを含み、前記遷移領域は前記非屈曲領域と前記屈曲領域とを接続し、
前記フレキシブルカバープレートは更に、少なくとも1つの基材層と、前記基材層上に形成される少なくとも1つの硬化層と」を含み、
「前記基材層は第1屈曲部と、第1非屈曲部と、第1遷移部とを含み、前記第1遷移部は前記第1非屈曲部と前記第1屈曲部とを接続」する
「フレキシブルカバープレート」である点。
イ 構成A1~A3の観点(硬化層と基材層の厚さ)
引用発明の「屈曲部の第二材料層の厚さh21」は「非屈曲部の第二材料層の厚さh22」より小さい「移行部の第二材料層の厚さh23」よりも小さい。同様に、引用発明の「屈曲部の第一材料層の厚さ」は「非屈曲部の第一材料層の厚さ」より大きい「移行部の第一材料層の厚さ」よりも大きい。また、引用発明の「前記屈曲部の膜層厚H1、前記非屈曲部の膜層厚H2及び移行部の膜層厚H3は同じ」である。
したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点で一致する。
「前記屈曲領域内に位置する前記硬化層の厚さは、前記非屈曲領域内に位置する前記硬化層の厚さよりも小さく、
前記屈曲領域内に位置する前記基材層の厚さは、前記非屈曲領域内に位置する前記基材層の厚さよりも大き[く]、
前記屈曲領域、前記遷移領域、及び前記非屈曲領域内に位置する前記フレキシブルカバープレートの厚さは同じである」点。
ウ 構成B1~B5の観点(遷移部)
引用発明の第二材料層の移行部の厚さh22は屈曲部から非屈曲部方向に向かって一定の割合で徐々に増加するものであるから、非屈曲部から屈曲部方向に向かっては一定の割合で徐々に減少するものである。また、第一材料層の移行部の厚さh12は増加と減少が逆になり、非屈曲部から屈曲部方向に向かって一定の割合で徐々に増加するものである。
したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点で一致する。
「前記第1遷移部の厚さは、前記第1非屈曲部の厚さから前記第1屈曲部の厚さまで均一に増大し」、「前記第2遷移部の厚さは、第2非屈曲部の厚さから第2屈曲部の厚さまで均一に低下」する点。
一方で、両者は次の点で相違する。
本件補正発明では、第1遷移部と第2遷移部の「厚さ変化率は0~1/3」であるのに対し、引用発明の移行部の「厚さ変化率」は不明である点。
(5) 一致点及び相違点
前記(4)の対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「フレキシブルカバープレートであって、屈曲領域と、非屈曲領域と、遷移領域とを含み、前記遷移領域は前記非屈曲領域と前記屈曲領域とを接続し、
前記フレキシブルカバープレートは更に、少なくとも1つの基材層と、前記基材層上に形成される少なくとも1つの硬化層と、を含み、
前記屈曲領域内に位置する前記硬化層の厚さは、前記非屈曲領域内に位置する前記硬化層の厚さよりも小さく、
前記屈曲領域内に位置する前記基材層の厚さは、前記非屈曲領域内に位置する前記基材層の厚さよりも大きい、
前記基材層は第1屈曲部と、第1非屈曲部と、第1遷移部とを含み、前記第1遷移部は前記第1非屈曲部と前記第1屈曲部とを接続し、
前記第1遷移部の厚さは、前記第1非屈曲部の厚さから前記第1屈曲部の厚さまで均一に増大し、
第2遷移部の厚さは、第2非屈曲部の厚さから第2屈曲部の厚さまで均一に低下し、
前記屈曲領域、前記遷移領域、及び前記非屈曲領域内に位置する前記フレキシブルカバープレートの厚さは同じである、
フレキシブルカバープレート。」
イ 相違点1
本件補正発明の第1遷移部と第2遷移部の「厚さ変化率は0~1/3」であるのに対し、引用発明の移行部の「厚さ変化率」は不明である点。
(6) 当審の判断
相違点1について、引用発明の移行部の厚さの変化は、原文では「
[図:0001431711000013.jpg]
」と表現されるように、徐々に増加するものである。
加えて、引用文献1技術事項として認定したように、3~30μmの厚さのハードコート層を5~10mmの距離で変化させるカバープレートがあること(5mmの距離で30μm変化させたとすると、厚さ変化率は30μm/5mm=0.006)からも明らかなように、引用発明の厚さが徐々に増加する移行部の「厚さ変化率」として「0~1/3」を満たすようにすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項であるといえる。
また、本願の発明の詳細な説明の記載や、審判請求書等の主張を参酌しても、「第1遷移部の厚さ変化率」及び「第2遷移部の厚さ変化率」を「0~1/3」にすることに、当業者が予測できないほどに有利な顕著な効果があるとも、当該数値範囲に臨界的な意義があるとも認められない。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
(7) 請求人の主張について
ア 審判請求書における請求人の主張の内容
請求人は、審判請求書において、本件発明では屈曲領域、遷移領域、及び非屈曲領域内に位置するフレキシブルカバープレートの厚さが同じになることから、第1遷移部の厚さ変化率が第2遷移部の厚さ変化率と等しく隙間が発生せず、またフレキシブルカバープレートの平坦性が保証されるものであるのに対し、いずれの引用文献にも、そのような内容は開示されていないと主張している。
イ 請求人の主張についての検討
前記アの請求人の主張について検討すると、前記(3)ア(ウ)で摘記したとおり、引用文献2には屈曲部の膜層厚H1、非屈曲部の膜層厚H2及び移行部の膜層厚が同じになることが記載されているから、引用発明の保護カバーシートも平坦性が保証されるものと理解される。また引用文献2の図5から、引用発明の保護カバーシートの第一材料層と第二材料層の間にすき間がないことも明らかである。引用発明の例に限らず、光学用の積層フィルムにおいて、不要な反射を避けるために層間にすき間ができないように密着させることは、一般的な設計である。
したがって、請求人の主張は、上記(6)の結論を左右するものではなく、採用することができない。
(8) 独立特許要件についての判断のまとめ
前記(1)~(7)において検討したとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否についてのまとめ
前記3において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定における本願発明に対する拒絶の理由のうち、引用文献2を主引例とする理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献2.中国特許出願公開第109671363号明細書
3 引用文献2に記載された発明等
引用文献2の記載事項及び引用発明の認定は、前記第2の3(3)において示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明のうち、前記第2の2(1)ア~ウに示した補正事項1、2、3を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3において説示したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-009362