2024-006742
レーザ加工システム、学習装置および学習装置の学習方法
- 審判番号
- 2024-006742
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-094611外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年04月19日
- 審決日
- 2026年03月30日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人鷲田国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (B23K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
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この出願(以下「本願」という。)は、令和元年5月20日に出願されたものであって、出願後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
1 令和4年11月29日付け
拒絶の理由を通知。
2 令和5年 3月 6日
意見書及び手続補正書の提出。
3 令和5年 7月 3日付け
最後の拒絶の理由を通知。
4 令和5年11月 8日
意見書及び手続補正書の提出。
5 令和6年 2月14日付け
補正の却下の決定及び拒絶をすべき旨の査定。
6 令和6年 4月19日
審判請求書及び手続補正書の提出。
7 令和7年 7月16日付け
拒絶の理由を通知(以下、この通知を「当審拒絶理由通知」という。)。
8 令和7年 9月18日
意見書及び手続補正書の提出。
第2 本願発明1
本願の請求項1~9に係る発明は、令和7年9月18日提出の手続補正書により補正をした特許請求の範囲の請求項1~9に記載した事項により特定されるとおりのものであって、このうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)を特定する請求項1に記載した事項(下線は補正箇所に付した。)は以下のとおりである。
「 【請求項1】レーザ光を被加工物の表面上に集光させることで、前記被加工物を溶接するレーザ加工装置と、前記レーザ加工装置に対する学習を実行する学習装置と、から構成され、レーザ溶接によって製造されたワークの評価に使用されるレーザ加工システムであって、前記学習装置は、レーザ加工に関する少なくとも一つのレーザ条件と、前記レーザ溶接加工毎に実測により求められる物理量に基づく変数、である状態変数が入力される入力処理部と、前記状態変数に基づいて、前記レーザ加工の評価を導出する評価モデルを更新する学習を実行する学習部と、前記物理量に基づいて、前記被加工物の表面の異常状態を評価モデルに基づいて推測してワークの評価を行う推測部と、を備える、レーザ加工システム。」
第3 当審拒絶理由通知
1 理由の概要
当審拒絶理由通知における拒絶理由のうち、本願発明1に対する進歩性欠如についての理由(理由A)の概要は、以下のとおりである。
(進歩性)本願発明1は、引用文献1~2(下記2参照)に記載された発明に基いて、出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 引用文献等一覧
(1)引用文献1:特開2017-164801号公報(出願公開:平成29年9月21日)
(2)引用文献2:特開2019-32649号公報(出願公開:平成31年2月28日)
第4 引用文献
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項(下線は当審で付与。以下同じ。)
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ア 発明の詳細な説明
「【0001】本発明は、レーザ発振器に供給される駆動電力データを含むレーザ加工条件データを学習する機械学習装置、レーザ加工システムおよび機械学習方法に関する。・・・【0002】続きを表示(全70行)被加工物に対して、切断や溶接等の加工を行うためのレーザ加工システムにおいては、加工精度や加工品質が高い加工結果が高速で得られるように、最適なレーザ加工条件で加工するのが望ましい。・・・【0015】従って、本発明の目的は、以上のような状況を鑑み、多数のレーザ加工条件パラメータ、ならびにレーザ加工結果に影響を与える可能性のあるレーザ加工システムの多数の状態量が存在する場合であっても、レーザ加工システムの状態がレーザ加工の結果に及ぼす影響も考慮して高速で高品質かつ高精度な加工結果を得るために最適あるいは略最適な加工結果が得られるレーザ加工条件データを決定することができる機械学習装置、この機械学習装置を備えたレーザ加工システムおよび機械学習装置の機械学習方法を提供することにある。・・・【0016】前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、少なくとも一つのレーザ発振器を備えた少なくとも一つのレーザ装置と、前記レーザ装置からのレーザ光を被加工物に出射する少なくとも一つ以上の加工ヘッドと、該加工ヘッドから出射されるレーザ光の光量を検出する少なくとも一つ以上の出力光検出部と、前記加工ヘッドから出射されて前記被加工物の表面あるいは表面近傍で反射して前記加工ヘッド内の光学系を経由して前記レーザ装置に向かって戻ってくる反射光を検出する少なくとも一つ以上の反射光検出部と、レーザ加工の途中およびレーザ加工後のうちの少なくとも一方における前記被加工物の加工状態および加工結果のうちの少なくとも一方を観測する少なくとも一つ以上の加工結果観測部と、前記加工ヘッドと前記被加工物の相対的位置関係を変更する少なくとも一つ以上の駆動装置と、を備えたレーザ加工システムのレーザ加工条件データを学習する機械学習装置であって、該機械学習装置は、前記レーザ加工システムの状態量を観測する状態量観測部と、前記レーザ加工システムによる加工結果を取得する動作結果取得部と、前記状態量観測部からの出力および前記動作結果取得部からの出力を受け取り、前記レーザ加工条件データを、前記レーザ加工システムの前記状態量および前記加工結果に関連付けて学習する学習部と、前記学習部が学習した前記レーザ加工条件データを参照して、レーザ加工条件データを出力する意思決定部と、を備える、ことを特徴とする機械学習装置が提供される。・・・3番目の発明によれば、1番目または2番目の発明において、前記状態量観測部が観測する状態量には、前記レーザ装置のための光出力指令と前記レーザ装置から実際に出射される光出力との関係を示す前記レーザ装置の光出力特性、前記レーザ装置から出射される光出力、前記レーザ装置からの光出力に対する前記加工ヘッドから出射される光出力の比率、前記レーザ発振器に熱的に接続している部分の温度、前記レーザ装置内のレーザ発振に伴って温度が変化する部品を含む各部の温度、前記加工ヘッドの温度、レーザ光を前記レーザ装置から前記加工ヘッドに伝搬する光学系の温度、前記駆動装置の温度、前記加工ヘッドや前記駆動装置を支持している構造部品の温度、前記レーザ発振に伴って温度が上昇する部品を冷却するための流体の種類、温度および流量、前記レーザ装置内の空気の温度および湿度、前記レーザ装置周辺の環境温度および湿度、前記駆動装置の駆動用電動機の実電流、前記駆動装置の位置検出部からの出力、ならびに前記被加工物の厚さを含むサイズ、材質、比熱、密度、熱伝導率、温度および表面状態の内の少なくとも一つ以上が含まれている。4番目の発明によれば、1番目から3番目のいずれかの発明において、前記意志決定部(当審注:引用文献1には「意思決定部」と「意志決定部」とが混在しているが、これらは同じものと解される。)が出力するレーザ加工条件データには、各前記レーザ装置から出射するレーザ光の光出力、光出力波形、ビームモード、レーザ波長、レーザ光を出射する光学系の焦点距離、F値、透過率、前記被加工物に出射されるレーザ光の焦点と前記被加工物の加工面との時間変化を含む相対的位置関係、前記被加工物に出射されるレーザ光の前記被加工物の加工面におけるスポットサイズ、パワー密度、パワー密度分布、前記加工ヘッドと前記被加工物との時間変化を含む相対的位置関係、レーザ光の光軸と前記被加工物の加工面との成す角度、加工速度、アシストガスの種類と流量あるいは供給圧力の内の少なくとも一つ以上が含まれている。5番目の発明によれば、2番目の発明において、前記学習部は、レーザ加工の内容に応じて異なるレーザ加工条件データを学習する学習モデルを備え、前記動作結果取得部が取得した加工速度あるいは所定の加工に要する時間を含むレーザ加工結果とそれぞれのレーザ加工の内容毎に設定されている加工速度あるいは所定の加工に要する時間を含む略理想的な加工結果あるいは目標とする加工結果との間の誤差を計算する誤差計算部と、前記誤差に応じて前記学習モデルを更新する学習モデル更新部とを備える。・・・9番目の発明によれば、1番目から8番目のいずれかの機械学習装置を備えたレーザ加工システムであって、前記レーザ装置と、前記加工ヘッドと、前記出力光検出部と、前記反射光検出部と、前記加工結果観測部と、前記駆動装置とをそれぞれ少なくとも一つ以上備えると共に、前記レーザ装置と、前記加工ヘッドと、前記出力光検出部と、前記反射光検出部と、前記加工結果観測部と、前記駆動装置とを制御する制御装置を少なくとも一つ以上備えることを特徴とするレーザ加工システムが提供される。・・・12番目の発明によれば、9番目から11番目のいずれかの発明において、前記加工結果観測部の少なくとも一つが、デジタル二次元撮像装置、CCD測定顕微鏡、接触式表面粗さ・形状測定装置、白色干渉計、レーザ顕微鏡、非接触三次元測定装置のいずれか一つであり、レーザによる切断面の平滑度あるいは面粗度、切断部近傍表裏面の数珠状付着物の単位切断長さ当たりの体積、裏面の単位面積当たりのスパッタ付着量、切断面の酸化物色濃度、切断寸法・形状精度、切断面の垂直度の観測結果データの内、少なくとも一つ以上のデータが、前記レーザ加工条件データの結果として、前記加工結果観測部から前記動作結果取得部に出力される。13番目の発明によれば、9番目から11番目のいずれかの発明において、前記加工結果観測部の少なくとも一つが、デジタル二次元撮像装置、 CCD測定顕微鏡、レーザ顕微鏡、光源と赤外線カメラから構成される光励起非破壊検査装置、超音波探傷試験装置、誘導加熱式非破壊検査装置、放射線透過撮像装置、アコースティックエミッション試験装置のいずれか一つであり、レーザによる溶接部のクラック、ブローホール、ピンホール、溶け込み不良、融合不良、アンダーカット・オーバーラップ、ハンピングの観測結果データの内、少なくとも一つ以上のデータが、前記レーザ加工条件データの結果として、前記加工結果観測部から前記動作結果取得部に出力される。・・・16番目の発明によれば、レーザ加工システムの制御装置に出力するレーザ加工条件データを学習する機械学習方法であって、少なくとも一つ以上のレーザ装置からの出力データと、少なくとも一つ以上の加工ヘッドからの出力データと、加工ヘッドと被加工物の相対的位置関係を変えるための少なくとも一つ以上の駆動装置からの出力データとを含むレーザ加工システムの状態量を観測し、レーザ装置に戻ってくる反射光を検出する少なくとも一つ以上の反射光検出部からの出力データと、レーザ加工の途中およびレーザ加工後のうちの少なくとも一方における前記被加工物の加工状態および加工結果のうちの少なくとも一方を観測する少なくとも一つ以上の加工結果観測部からの出力データとをレーザ加工条件データの結果として受取り、前記レーザ加工条件データを前記レーザ加工システムの前記状態量および前記レーザ加工条件データの結果に関連付けて学習することを特徴とする機械学習方法が提供される。・・・【0017】1番目の発明においては、レーザ加工条件データを、レーザ加工システムの状態量と加工結果観測部から出力される加工結果に関連付けて機械学習させる。これにより、人間の介在無しに、あるいは最小限の人間の介在だけで、レーザ加工システムの状態に関わらず、常に略最適なレーザ加工条件で加工を行うことが可能になる。このため、安定的に高品質な加工結果を得ることができる。なお、レーザ加工システムの状態量は、レーザ光の出射によってレーザ加工中に変化する状態量も含む。・・・3番目の発明においては、レーザ加工システムの状態を表す多くの状態量を観測することでレーザ加工システムの状態の差によって生じうる加工結果の差を看過することなく学習できる。また、レーザ加工中に発熱等によってレーザ加工システムの状態が変化した場合であっても、その変化も取り入れて略最適なレーザ加工条件データを出力することができる。このため、加工精度や加工品質の低下を防ぐことができる。4番目の発明においては、多くの加工条件パラメータを制御することによって、略理想的な加工結果あるいは目標とする加工結果に近い加工結果を得ることができる。略理想的な加工結果あるいは目標とする加工結果に近い加工結果を得るために、レーザ加工条件データに、波長やビームモードの異なる複数のレーザ装置や加工ヘッドの中から最適なレーザ装置や加工ヘッドを選択する指令を含めてもよい。5番目の発明においては、機械学習の結果、レーザ加工の内容に関わらず、それぞれのレーザ加工の内容で、加工速度を含めてほぼ最適なレーザ加工条件データを出力できるようになる。レーザ加工の内容は切断、溶接、マーキング、表面改質、光造形等でありうる。・・・9番目の発明においては、機械学習装置を備えたレーザ加工システムにより、レーザ装置や加工ヘッドやレーザ光学系等の損傷を回避しながら、最適なレーザ加工条件でレーザ加工を行うことができるようになる。・・・12番目の発明においては、レーザ加工条件データの結果として、切断面の加工精度や加工品質等の評価結果が、人間を介さずに取得でき、機械学習装置が、人間を介さずにレーザ加工条件データを学習できる。13番目の発明においては、レーザ加工条件データの結果として、溶接部の加工精度や加工品質等の評価結果が人間を介さずに取得でき、機械学習装置が、人間を介さずにレーザ加工条件データを学習できる。・・・16番目の発明においては、レーザ加工条件データを、レーザ光の出射によってレーザ加工中に変化するレーザ加工システムの状態量も含めたレーザ加工システムの状態量と加工結果観測部から出力される加工結果に関連付けて機械学習する。このため、人間の介在無しに、あるいは最小限の人間の介在だけで、レーザ加工システムの状態に関わらず、常に略最適なレーザ加工条件で加工を行うことが可能になり、安定的に高品質な加工結果を得ることができるようになる。・・・【0021】図1は、本発明の一実施形態のレーザ加工システム1の概念的な構成を示すブロック図である。本実施形態のレーザ加工システム1は、少なくとも一つのレーザ発振器を備えた少なくとも一つのレーザ装置2と、レーザ装置2からのレーザ光19を被加工物に出射するための少なくとも一つ以上の加工ヘッド3と、出力されるレーザ光19の光量を検出する少なくとも一つ以上の出力光検出部4と、加工ヘッド3から出射されて被加工物7の表面あるいは表面近傍で反射して加工ヘッド3内の光学系を経由してレーザ装置2に向かって戻ってくる反射光を検出する少なくとも一つ以上の反射光検出部5と、レーザ加工中および/またはレーザ加工後の被加工物7の加工状態および/または加工結果を観測する少なくとも一つ以上の加工結果観測部6と、加工ヘッド3と被加工物7の相対的位置関係を変えるための少なくとも一つ以上の駆動装置8と、機械学習装置10とを備える。ここで、機械学習装置10は、状態量観測部11と、動作結果取得部12と、学習部13と、意思決定部14とを備える。【0022】機械学習装置10の学習部13は、レーザ加工システム1の状態量を観測する状態量観測部11からの出力およびレーザ加工システム1による加工結果を取得する動作結果取得部12からの出力を受け取り、レーザ加工条件データを、レーザ加工システム1の状態量および加工結果に関連付けて学習する。そして、意思決定部14が、学習部13が学習したレーザ加工条件データを参照して、レーザ加工条件データを決定して制御装置9に出力する。・・・【0030】図1において、破線の矢印はレーザ光19の光線を模擬的に表しているが、空間を伝搬する光線に限定されず、例えば、光ファイバ内を伝搬する光線等も含めて模擬的に示している。加工ヘッド3は、加工ヘッド3から出射されたレーザ光19が被加工物7の略表面に焦点を結ぶように構成された光学系を備えていることが好ましい。・・・【0033】また、図2は反射光光量によってレーザ加工条件データが切替わり、光出力波形が変化する状態を模式的に例示したタイムチャートである。図2に例示したように、学習部13は、或るレーザ加工条件データ1に基づいて被加工物7を加工中に、動作結果取得部12からの出力の一つとして受け取った反射光検出部5で検出された反射光光量が、反射光により、加工ヘッド3、レーザ装置2、加工ヘッド3とレーザ装置2間のレーザ光伝搬用光学部品の内、少なくともいずれか一つが損傷を受ける可能性のある警報レベルより低く設定された第1所定レベルより更に低く設定された第2所定レベルを越えると、学習部13が学習したレーザ加工条件データを参照して、他のレーザ加工条件データ2に変える。【0034】他のレーザ加工条件データ2は、反射光検出部5で検出される反射光光量が第2所定レベルを越えずに、前述した或るレーザ加工条件データ1による加工結果に可能な範囲で近い加工結果が得られると予測されるレーザ加工条件データであるのが好ましい。【0035】図2に示される例では、CW光からCW光にパルス光が重畳したような出力波形に切替わっている。ただし、レーザ加工条件データの切替え前後におけるレーザ光19の出力波形は、図2の場合に限定されない。また、レーザ加工条件データとしての出力波形を変更する代わりに、被加工物7の表面からレーザ光19の焦点位置を離間させても良いし、レーザの出力波形とレーザ光19の焦点位置の両方を変更しても良い。制御可能なレーザ加工条件のいずれを変更しても良い。【0036】被加工物7の表面からの反射光のレベルが警報レベルに達する前に、学習部13の学習結果を参照して、反射光が減少し、かつ略同等の加工結果が得られると予測されるレーザ加工条件に切替えているので、レーザ装置2や加工ヘッド3等の損傷を回避しながら、加工を継続することができる。・・・【0049】学習部13は、切断、溶接、マーキング、表面改質、光造形(Additive Manufacturing)等のレーザ加工の内容によって、異なるレーザ加工条件データを学習する学習モデルを備えている。そして、学習部13は、動作結果取得部12が取得した加工速度あるいは所定の加工に要する時間を含むレーザ加工結果とそれぞれのレーザ加工内容毎に設定されている加工速度あるいは所定の加工に要する時間を含む略理想的な加工結果あるいは目標とする加工結果との間の誤差を計算する誤差計算部15と、誤差に応じて学習モデルを更新する学習モデル更新部16を備えている。【0050】或るレーザ加工条件データに基づいて被加工物7を加工中に、動作結果取得部12からの出力の一つとして受け取った反射光検出部5で検出された反射光光量が、第2所定レベルを越えると、誤差計算部15は、レーザ加工条件データの加工結果に所定の誤差が生じたとする計算結果を出力する。そして、学習モデル更新部16は該計算結果に応じて学習モデルを更新する。【0051】他の加工結果が同等である場合には、加工速度が大きいか、あるいは所定の加工工程の完遂に要した加工時間が短い方が望ましい。このため、加工速度あるいは所定の加工に要する時間を含むレーザ加工結果とそれぞれのレーザ加工内容毎に設定されている略理想的な加工結果あるいは目標とする加工結果との間の誤差を計算して、誤差が小さくなるように、学習モデルを更新する。これにより、レーザ加工内容に関わらず、それぞれのレーザ加工内容について、加工速度あるいは所定の加工に要する時間を含めて最適あるいは略最適なレーザ加工条件データを教師あり学習で学習することができる。本発明では、入力(レーザ加工条件データとレーザ加工システム1の状態量)と出力(レーザ加工による加工結果)をペアで与えることができるので、教師あり学習が適している。ただし、本発明では、学習方法を教師あり学習に限定するものではない。具体的な他の学習方法については後述する。・・・【0055】図3Aおよび図3Bに示されるように、図1に示す機械学習装置10において、学習動作(学習処理)が開始すると、まず、レーザ加工システム1へのレーザ加工指令がある否かを判定し(ステップS101)、レーザ加工指令がある場合は、機械学習装置10は、加工内容が切断か溶接か等、加工内容を確認する(ステップS102)。次いで、レーザ加工内容毎に設定された略理想的な加工結果あるいは目標とする加工結果を読出し(ステップS103)、状態量観測部11から受取ったレーザ加工システム1の最新の状態量とレーザ加工内容に合った学習モデルを参照して、レーザ加工条件データを決定して出力する(ステップS104)。そして、レーザ加工条件データに基づいて、制御装置9は、レーザ装置2への光出力指令を含むレーザ加工システム1の各部への制御信号を出力し、レーザ装置2からレーザ光19が出射されてレーザ加工が実行される(ステップS105)。【0056】レーザ加工中においては、リアルタイムでフィードバックされてくる加工結果として、反射光検出部5で反射光光量を観察し、検出された反射光光量が第2所定レベルを越えないかを監視している(ステップS106)。機械学習部13が出力したレーザ加工条件データの実行が終了したか否かを判断して(ステップS107)、レーザ加工条件データの実行が終了するまではステップS105に戻ってレーザ光19を出射し続けてレーザ加工を継続する。【0057】これに対し、レーザ加工条件データの実行が終了と判断された場合は、加工結果観測部6から出力されたレーザ加工の加工結果を受取る(ステップS108)。次いで、誤差計算部15で、加工結果観測部6から取得した加工速度あるいは所定の加工に要する時間を含む加工結果と加工速度あるいは所定の加工に要する時間を含む略理想的な加工結果あるいは目標とする加工結果との間の誤差を計算する(ステップS109)。続いて、誤差の計算結果に応じて学習モデルを更新して(ステップS110)、ステップS101に戻り、再度、ステップ101以降のフローを実行する。・・・【0059】以上のステップS101~S112を繰返すことにより、学習部13は、学習モデルの更新を継続して、レーザ加工条件データを学習する。・・・」
イ 図面
「【図1】[図:0001435582000001.jpg]・・・【図3A】[図:0001435582000002.jpg]【図3B】[図:0001435582000003.jpg]」
(2)引用文献1の記載事項の整理
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ア 段落0015~0017、0021、0030、0035、0059、及び図1の記載からみて、引用文献1には、被加工物7(当審注:図1では「被加工対象物」)の略表面に焦点を結ぶようにレーザ光19が出射され、レーザ加工の内容は溶接でありうるレーザ装置2及び加工ヘッド3と、レーザ装置2及び加工ヘッド3等を対象に含むレーザ加工条件を学習する学習モデルを更新する機械学習装置10と、を含むレーザ加工システム1について記載されている。そして、このレーザ加工システム1は、上記溶接でありうるレーザ加工の最適あるいは略最適なレーザ加工条件を決定することができる。
イ 段落0015~0017、0022、0051、及び図1の記載からみて、上記アの機械学習装置10には、「入力(レーザ加工条件データとレーザ加工システム1の状態量)と出力(レーザ加工による加工結果)をペアで与えることができ」(段落0051)、その学習部13は、「レーザ加工システム1の状態量を観測する状態量観測部11からの出力およびレーザ加工システム1による加工結果を取得する動作結果取得部12からの出力」を受け取る(段落0022)ものである。そして、状態量観測部11には、意思決定部14が出力するレーザ加工条件(図1の状態量観測部11のブロックの左側に接続される「→」で入力を表示。)及び状態量観測部11が観測する状態量(図1の状態量観測部11のブロックの右側に接続される「←」で入力を表示。)であるデータが入力され、動作結果取得部12には、加工結果観測部6が観測してレーザ加工条件の結果として出力するレーザ加工の加工結果(図1の動作結果取得部12のブロックの右側に接続される「←」で入力を表示。)であるデータが入力される。
ウ 段落0049~0051、及び図1、図3Aの記載からみて、上記イの学習部13は、学習モデル更新部16により、上記イのレーザ加工条件、状態量及び加工結果に基づいて、最適あるいは略最適なレーザ加工条件を決定する学習モデルを更新する。
エ 段落0022、0055、及び図3Aの記載からみて、上記アの機械学習装置10は、略理想的な加工結果あるいは目標とする加工結果を読出し、状態量観測部11から受け取ったレーザ加工システム1の最新の状態量とレーザ加工内容に合った学習モデルを参照して、レーザ加工条件データを決定して出力する意思決定部14を備える。
(3)引用文献1に記載された発明
上記(1)~(2)より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「レーザ光を被加工物7の略表面に焦点を結ぶように出射させることで、前記被加工物7を溶接するレーザ装置2及び加工ヘッド3と、前記レーザ装置2及び加工ヘッド3等を対象に含むレーザ加工条件を学習する学習モデルを更新する機械学習装置10を含む最適あるいは略最適なレーザ加工条件を決定することができるレーザ加工システム1であって、前記機械学習装置10は、意思決定部14が出力するレーザ加工条件と、前記被加工物7を溶接するレーザ加工中に状態量観測部11が観測する状態量と、レーザ加工の加工結果、であるデータが入力される前記状態量観測部11及び動作結果取得部12と、前記データに基づいて、最適あるいは略最適なレーザ加工条件を決定する学習モデルを更新する学習部13と、レーザ加工内容毎に設定された略理想的な加工結果あるいは目標とする加工結果を読出し、前記状態量と前記学習モデルを参照して、最適あるいは略最適なレーザ加工条件を決定して出力する前記意思決定部14と、を備える、レーザ加工システム1。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
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ア 発明の詳細な説明
「【0001】
本発明は制御装置及び機械学習装置に関し、特に機械学習により状態量の変化が加工結果に及ぼす影響を予測することができる制御装置及び機械学習装置に関する。
・・・
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであって、機械学習により状態量の変化が加工結果に及ぼす影響を予測することができる制御装置及び機械学習装置を提供することを目的とする。
・・・
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
本発明の実施の形態にかかる制御装置100は情報処理装置であり、ワークの加工中の状態量の変化と、加工結果とを収集し、両者の関係を機械学習によりモデル化する処理を行う(学習過程)。また、学習過程で作成したモデルを使用して、ワークの加工中の状態量の変化を観測して加工結果を予測する処理を行う(予測過程)。制御装置100は、加工機械(例えば切削加工機等の工作機械、射出成形機、仕上げ加工を行うロボット等、ワークを加工するためのあらゆる機械を含む)を制御する装置(数値制御装置、ロボット制御装置等)であって良い。あるいは、加工機械の制御装置とは独立の情報処理装置であっても良い。
【0013】
図1は制御装置100の要部を示す概略的なハードウェア構成図である。・・・
【0015】
状態量測定装置60は、加工中の各種状態量を所定の時間間隔で計測、出力する。状態量とは、加工状態を示す情報であって、加工機械の周辺環境の情報と加工機械の状態とを含む。状態量は、例えば加工中の周辺温度、加工機械の温度、オーバライド量、モータ電流値、モータの負荷、入力電源の電圧又は電流、加工時に発生する音、光、振動等の測定値である。状態量測定装置60は、例えば温度センサやサーモグラフィ、マイク、光センサや撮像装置、加速度センサ等により周辺温度、音、光、振動の測定値を取得できる。また状態量測定装置60は、加工機械の制御装置からモータ電流値、モータの負荷、入力電源の電圧又は電流等を示す値を取得できる。状態量測定装置60は、複数種類の状態量S1,S2,S3・・・を同時に取得できる。制御装置100は、インタフェース18を介して状態量測定装置60から状態量を受信し、CPU11に渡す。
【0016】
加工結果入力装置70は、加工済みワークの加工結果の評価値を生成する。加工結果入力装置70は例えば検査装置であって、加工済みワークの各所の寸法を計測し、要求された寸法と比較し、合否判定の結果を加工結果として出力する。あるいは、加工結果入力装置70は入力装置であり、熟練の検査者等が加工済みワークを検査して得られた合否判定結果の入力を直接又はファイル等を介して受け付け、加工結果として出力するものであっても良い。制御装置100は、インタフェース19を介して加工結果入力装置70から加工結果を受信し、CPU11に渡す。
・・・
【0019】
図2に機能ブロックで示すように、制御装置100が備える機械学習装置300は、状態量の時系列データを環境の現在状態を表す状態変数Sとして観測する状態観測部306と、加工結果を判定データDとして取得する判定データ取得部308と、状態変数Sと判定データDとを用いて、状態量の変化と加工結果とを関連付けて学習する学習部310とを備える。
・・・
【0022】
学習部310は、例えばプロセッサ301の一機能として構成できる。或いは学習部310は、例えばプロセッサ301を機能させるためのROM302に記憶されたソフトウェアとして構成できる。学習部310は、機械学習と総称される任意の学習アルゴリズムに従い、状態量の変化と加工結果との相関関係を学習する。学習部310は、前述した状態変数Sと判定データDとを含むデータ集合に基づく学習を反復実行することができる。
【0023】
このような学習サイクルを繰り返すことにより、学習部310は状態量の変化と加工結果との相関性を暗示する特徴を自動的に識別することができる。・・・
【0024】
上記したように、制御装置100が備える機械学習装置300は、状態観測部306が観測した状態変数Sと判定データ取得部308が取得した判定データDとを用いて、学習部310が機械学習アルゴリズムに従い、加工結果を学習するものである。・・・
・・・
【0036】
上記した制御装置100及び機械学習装置300の構成は、CPU11又はプロセッサ301が実行する機械学習方法(或いはソフトウェア)として記述できる。この機械学習方法は、状態量の変化に対応する加工結果を学習する機械学習方法であって、CPU11又はプロセッサ301が、状態量の変化を環境の現在状態を表す状態変数Sとして観測するステップと、加工結果を判定データDとして取得するステップと、状態変数Sと判定データDとを用いて、状態量の変化と加工結果とを関連付けて学習するステップとを有する。
【0037】
本実施形態によれば、機械学習装置300が、状態量の変化と加工結果との相関性を示すモデルを生成する。これにより、一度学習モデルを作成してしまえば、加工途中であっても、その時点までに取得できた状態量の変化に基づいて、加工結果を予測することが可能となる。
【0038】
図5は、第2の実施の形態による制御装置100を示す。制御装置100は、機械学習装置300と、データ取得部330とを備える。データ取得部230(当審注:「データ取得部330」の誤記と認める。)は、状態量測定装置60や加工結果入力装置70から、状態量の時系列データと加工結果とを取得する。
【0039】
制御装置100が有する機械学習装置300は、第1の実施形態の機械学習装置300が備える構成に加えて、学習部310が状態量の変化に基づいて推定した加工結果を、文字や画像、音又は音声等、又は任意の形式のデータとして出力する判定出力部320を含む。
【0040】
判定出力部320は、例えばプロセッサ301の一機能として構成できる。或いは判定出力部320は、例えばプロセッサ301を機能させるためのソフトウェアとして構成できる。判定出力部320は、学習部310が状態量の変化に基づいて推定した加工結果を文字や画像、音又は音声等、又は任意の形式のデータとして外部に対して出力する。例えば判定出力部320は、加工結果が不合格と推定される場合、ユーザに対し加工の中断を促す通知を出力する。あるいは、単に不合格が予測される旨の通知を行っても良い。
【0041】
上記構成を有する制御装置100が備える機械学習装置300は、前述した機械学習装置300と同等の効果を奏する。特に第2の実施形態における機械学習装置300は、判定出力部320の出力によって環境の状態を変化させることができる。他方、第1の実施形態の機械学習装置300では、学習部110(当審注:「学習部310」の誤記と認める。)の学習結果を環境に反映させるための判定出力部320に相当する機能を、外部装置に求めることができる。
・・・
【0045】
<実施例1>
実施例1として、制御装置100が状態量の変化と加工結果との相関関係の学習モデルを生成し(学習過程)、当該学習モデルを用いて加工途中において加工結果を予測する(予測過程)処理について説明する。
【0046】
図7のフローチャートを用いて、制御装置100の学習過程における動作について説明する。
制御装置100は、所望の精度の学習モデルを得るのに十分な数の状態変数Sと判定データDとが得られるまで、ステップS1乃至S3までの処理を繰り返す。なおこの学習過程においては、1個のワークを加工する毎に1回の学習サイクル(ステップS1乃至S3の処理)が実施されることになる。
【0047】
続いて、図8のフローチャートを用いて、制御装置100の予測過程における動作について説明する。
・・・
【0049】
<実施例2>
実施例2として、制御装置100が、加工結果が不合格であることを予測した場合に、加工中断を促すことに加えて又は代えて、加工不良を回避するために適切な対応策を提示する構成を示す。説明の簡略化のため、実施例1との相違点のみ言及する。
・・・
【0054】
ステップS14及びステップS15において、制御装置100は、全ての推定用データセットについて予測結果が不合格であった場合、加工中断をユーザに促す。他方、ある推定用データセットでは予測結果が不合格であるが、他の推定用データセットでは予測結果が合格である場合、制御装置100は、予測結果が合格であった推定用データセットにおける状態量の動きをユーザに提示する。
イ 図面
「【図1】[図:0001435582000004.jpg]【図2】[図:0001435582000005.jpg]【図7】[図:0001435582000006.jpg]【図8】[図:0001435582000007.jpg]」
(2)引用文献2の記載事項の整理
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ア 段落0001、0008~0009、0012~0013、及び図1の記載からみて、引用文献2には、加工機械によるワークの加工中の状態量の変化と加工結果とを収集し両者の関係を機械学習によりモデル化する学習過程と、学習過程で作成したモデルを使用してワークの加工中の状態量の変化を観測してワークの加工結果を予測する予測過程と、を含む制御装置100について、記載されている。
イ 段落0015~0016、0019、0036、0046、及び図1~2、7の記載からみて、引用文献2には、上記アの制御装置100の学習過程に関して、加工機械の状態(段落0015記載の状態量測定装置60が加工機械の制御装置から取得できるモータ電流値、モータの負荷、入力電源の電圧又は電流等を示す値)及び周辺環境の状態を含む前記状態量(段落0015記載の状態量測定装置60が温度センサやサーモグラフィ、マイク、光センサや撮像装置、加速度センサ等により取得できる周辺温度、音、光、振動の測定値)を含む時系列データを、環境の現在状態を表す状態変数Sとして観測し、加工結果を示す判定データDを取得し、前記状態変数Sと前記判定データDとを用いて、加工状態を示す状態量の変化と、加工結果とを関連付けて学習することについて、記載されている。
ウ 段落0037、0040、0047、0054、及び図8の記載からみて、引用文献2には、上記アの制御装置100の予測過程に関して、あらかじめ設定されたタイミングで、所定の時間にわたって、状態量を取得し記憶し、取得した状態量の時系列データを状態変数Sとして機械学習装置300に入力し、機械学習装置300は、入力された状態変数Sに対応して学習済みモデルが出力した加工結果を示す予測値である判定データDにより、加工結果の予測結果を合格あるいは不合格とすることについて、記載されている。
(3)引用文献2に記載された技術的事項
上記(1)~(2)より、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されている。
「加工機械によるワークの加工結果を予測する制御装置100が、加工機械の状態及び周辺環境の状態を含む前記状態量の時系列データを、環境の現在状態を表す状態変数Sとして観測し、加工結果を示す判定データDを取得し、前記状態変数Sと前記判定データDとを用いて、加工状態を示す状態量の変化と、加工結果とを関連付けて学習する学習過程と、あらかじめ設定されたタイミングで、所定の時間にわたって、状態量を取得し記憶し、取得した状態量の時系列データを状態変数Sとして機械学習装置300に入力し、機械学習装置300は、入力された状態変数Sに対応して学習済みモデルが出力した加工結果を示す予測値である判定データDにより、加工結果の予測結果を合格あるいは不合格とする予測過程と、を含むこと。」
第5 当審の判断
1 本願発明1と引用発明1との対比
(1)引用発明1の「被加工物7」は本願発明1の「被加工物」に相当し、以下同様に「略表面に焦点を結ぶように出射させる」は「表面上に集光させる」に、「レーザ装置2及び加工ヘッド3」は「レーザ加工装置」に、「前記レーザ装置2及び加工ヘッド3等を対象に含むレーザ加工条件を学習する学習モデルを更新する機械学習装置10」は「前記レーザ加工装置に対する学習を実行する学習装置」に、「レーザ加工システム1」は「レーザ加工システム」に、それぞれ相当する。
(2)引用発明1の「意思決定部14が出力するレーザ加工条件」は本願発明1の「レーザ加工に関する少なくとも一つのレーザ条件」に相当する。そして、引用文献1の段落0016に例示された当該状態量(3番目の発明に関する記載を参照。)及び加工結果(12番目の発明に関する記載を参照。)が物理量であることが認識できる内容、及び本願発明1に関する本願明細書の段落0023の「評価モデル11の学習に用いるデータセット群14は、入力データと出力データとの2つのデータをセットにして蓄積したものである。詳しくは、データセット群14は、入力データとして、1回のレーザ溶接加工において測定された物理量15に基づく状態変数12を、出力データとして、その状態変数12を測定した際のレーザ加工結果16(図2参照)を、セットにしてレーザ溶接加工毎に蓄積したものである。」の記載からみて、引用発明1の「前記被加工物7を溶接するレーザ加工中に状態量観測部11が観測する状態量と、レーザ加工の加工結果」は、本願発明1の「レーザ溶接加工毎に実測により求められる物理量に基づく変数」に相当し、以下同様に、「データ」は「状態変数」に、「前記状態量観測部11及び動作結果取得部12」は「入力処理部」に、それぞれ相当する。
(3)そして、引用発明1の「前記データに基づいて、最適あるいは略最適なレーザ加工条件を決定する学習モデルを更新する学習部13」と、本願発明1の「前記状態変数に基づいて、前記レーザ加工の評価を導出する評価モデルを更新する学習を実行する学習部」とを対比すると、両者は「前記状態変数に基づいて、学習モデルを更新する学習を実行する学習部」という点に限り一致する。
(4)引用発明1の「前記状態量」は、上記(3)のとおり本願発明1の「前記物理量」の一部であって、これに相当する。そして、引用発明1の「レーザ加工内容毎に設定された略理想的な加工結果あるいは目標とする加工結果を読出し、前記状態量と前記学習モデルを参照して、最適あるいは略最適なレーザ加工条件を決定して出力する意思決定部14」と本願発明1の「前記物理量に基づいて、前記被加工物の表面の異常状態を評価モデルに基づいて推測してワークの評価を行う推測部」を対比すると、両者は、「前記物理量に基づいて、学習モデルを適用して所定のパラメータを出力する出力部」という点に限り一致する。
2 本願発明と引用発明1の一致点及び相違点
(1)一致点
上記1より、本願発明1と引用発明1は次の点で一致する。
「 レーザ光を被加工物の表面上に集光させることで、前記被加工物を溶接するレーザ加工装置と、前記レーザ加工装置に対する学習を実行する学習装置と、から構成されるレーザ加工システムであって、前記学習装置は、レーザ加工に関する少なくとも一つのレーザ条件と、レーザ溶接加工毎に実測により求められる物理量に基づく変数、である状態変数が入力される入力処理部と、前記状態変数に基づいて、学習モデルを更新する学習を実行する学習部と、前記物理量に基づいて、学習モデルを適用して所定のパラメータを出力する出力部と、を備える、レーザ加工システム。」
(2)相違点
本願発明1と引用発明1は、次のア~ウの相違点1~3で相違する。
ア 相違点1
レーザ加工システムの用途に関し、本願発明1が、レーザ溶接によって製造されたワークの評価に使用されるのに対して、引用発明1は、被加工物7を溶接するレーザ加工、すなわちレーザ溶接の最適あるいは略最適な加工結果が得られるレーザ加工条件データを決定するものである点。
イ 相違点2
学習部において状態変数に基づいて学習を実行することにより更新される学習モデルが、本願発明1では、レーザ加工の評価を導出する評価モデルであるのに対して、引用発明1では、最適あるいは略最適なレーザ加工条件データを決定する学習モデルである点。
ウ 相違点3
物理量に基づいて、学習モデルを適用して所定のパラメータを出力する出力部が、本願発明1では、被加工物の表面の異常状態を評価モデルに基づいて推測してワークの評価を行う推測部であるのに対して、引用発明1では、略理想的な加工結果あるいは目標とする加工結果を読出し、状態量とモデルを参照して、最適あるいは略最適なレーザ加工条件を決定して出力する意思決定部14である点。
3 相違点の検討
(1)引用発明1及び引用文献2記載の技術的事項の機能及び作用と技術分野の共通性について
引用発明1と引用文献2記載の技術的事項とは、レーザ加工条件(引用文献2における加工機械の状態)、加工状態(引用文献2における周辺環境の状態)、及び加工結果による機械学習を行う点で機能及び作用が共通し、また、引用文献2記載の技術的事項における加工機械は、段落0012記載のとおり、ワークを加工するためのあらゆる機械を含み、レーザ加工システムにも適用可能なものであるから、レーザ加工装置と学習装置とから構成されるレーザ加工システムに関する技術である点で、技術分野が共通する。
(2)引用発明1における加工結果を推測することに対する動機について
そして、引用発明1における高品質かつ高精度な加工結果を得るために最適あるいは略最適な加工条件を検討する過程においては、例えば引用文献2に記載されている加工条件が同じであっても加工条件以外の状態量の変化によって、加工されるワークの形状は変化する(段落0002)という事象に対応するために、実際の加工環境に応じて状態量を変更し、あるいは実際の条件や制約に応じてレーザ加工条件自体を調整して、加工結果を再確認する必要性があるから、引用発明1におけるレーザ加工条件、加工状態、及び加工結果による機械学習について、状態量と加工結果に基づいて、レーザ加工条件を出力することに代えて、レーザ加工条件と状態量に基づいて、加工結果を推測する学習結果を得ることへの動機が内在するといえる。
(3)引用発明1への引用文献2記載の技術的事項の適用について
上記(1)~(2)から、引用発明1に引用文献2記載の技術的事項を適用する十分な動機が存在するといえるところ、引用発明1に引用文献2記載の技術的事項を適用することで、上記相違点1~3に係る本願発明1のように構成すること、具体的には、
ア 引用発明1のレーザ加工システムの用途を、引用文献2記載の技術的事項のように、ワークの加工結果を予測(評価)するためのものとすることで、上記相違点1に係る本願発明1のようにすること、
イ 引用発明1の学習モデルを、引用文献2記載の技術的事項のように、加工結果を示す予測値である判定データD(レーザ加工の評価)を出力するように学習することで、上記相違点2に係る本願発明1のようにすること、及び、
ウ 引用発明1における出力部を、引用文献2記載の技術的事項のように、状態変数Sに基づいてワークの加工結果を学習済みモデルに基づいて予測して、ワークの不合格あるいは合格を推定することで、上記相違点3に係る本願発明1のようにすること、
でレーザ加工の評価を導出する評価モデルを学習し、当該学習した評価モデルに基づいてワークの評価を行う、本願発明1のレーザ加工システムのようにすることは、当業者であれば、容易に想到し得たことである。
4 請求人の意見書における主張
当審拒絶理由通知における拒絶理由に対して、請求人が令和7年9月18に提出した意見書(以下、単に「意見書」という。)における理由A(進歩性)に関する主張について検討する。
(1)請求人の主張の概要
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ア 「周辺環境の状態」の学習についての主張
引用文献2は、加工の途中状態から結果を推測する点で本願と似ているが、段落0002の「加工条件が同一であっても、加工条件以外(=環境)の状態量(周辺温度、モータ電流値、モータの負荷、音、光等)の変化によって、加工されるワークの形状は変化する」という状況に鑑み、加工条件以外の環境の状態量を学習することで、より正確なワークの形状を予測するものである。
引用文献2は、引用文献1よりも後の同一の出願人による出願に係る公報であって、引用文献2の「加工条件以外の状態量」とは、引用文献1の「レーザ加工条件」とは異なる条件であって、さらに考慮することが必要な条件を意味しており、引用文献1においては、引用文献2が学習している「加工条件以外の状態量」である「周辺環境の状態」は学習していないと理解されるから、合議体の引用文献1と引用文献2が、加工機械の状態と、周辺環境の状態、加工結果による機械学習を行う点で同じであるという認定は、上記段落0002の記載に反している。
つまり、引用文献1に引用文献2を適用することは、引用文献1について「加工条件以外の状態量」も学習するように変更した上で、引用文献2を適用することになるから、いわゆる「容易の容易」となる。
イ 本願発明1の「前記レーザ溶接加工毎に実測により求められる物理量に基づく変数」についての主張
(上記意見書と同日の)補正により、学習する対象が「前記レーザ溶接加工毎に実測により求められる物理量に基づく変数」になった本願発明1は、「加工条件以外の状態量」も考慮を必須(上記アの段落0002)として結果を推測する引用文献2とは、結果を推測するために考慮する状態変数の内容が異なるものとなっている。本願発明1の「物理量」に基づいて推測してワークの評価を行うことは、引用文献1及び引用文献2のいずれにも記載されていない。
(2)主張の検討
ア 上記(1)アの主張について
上記(1)アで請求人の主張する引用文献1に引用文献2を適用すること、すなわち引用発明1に引用文献2記載の技術的事項を適用することがいわゆる「容易の容易」であるとの主張は、引用文献1においては、引用文献2が学習している「加工条件以外の状態量」である「周辺環境の状態」は学習していないと理解されることを根拠としていることが把握される。
しかしながら、引用文献1の段落0016(16番目の発明に関する記載を参照。)、及び段落0017(16番目の発明に関する記載を参照。)には、レーザ加工条件データを、レーザ光の出射によってレーザ加工中に変化するレーザ加工システムの状態量も含めたレーザ加工システムの状態量と加工結果観測部から出力される加工結果に関連付けて機械学習することが記載されている。そうすると、上記第4の1(3)で認定した引用発明1の「レーザ加工中に状態量観測部11が観測する状態量」のデータが状態量観測部11に入力され、学習部13において、最適あるいは略最適なレーザ加工条件を決定する学習モデルを更新するのであるから、引用発明1においても、「周辺環境の状態」を学習していることが明らかであり、引用文献2が、引用文献1よりも後の同一の出願人による出願に係る公報であることにより否定されるものでもない。
そして、他に(1)アの主張を裏付ける事情も存在せず、当該主張は、その根拠を見いだすことができない。
イ 上記(1)イの主張について
上記1(2)において認定したとおり、引用発明1の「レーザ加工中に状態量観測部11が観測する状態量と、レーザ加工の加工結果」は本願発明1の「レーザ溶接加工毎に実測により求められる物理量に基づく変数」に相当するものであり、引用発明1の「レーザ加工中に状態量観測部11が観測する状態量」は、本願発明1の「レーザ溶接加工毎に実測により求められる物理量に基づく変数」であるといえる。したがって、引用発明1と引用文献2記載の技術的事項で、「結果を推測するために考慮する状態変数の内容が異なるものとなっている」ことはないから、請求人の主張は妥当ではなく、また、他に(1)イの主張を正当化する要因も認められない。
(3)請求人の主張に対する検討のまとめ
上記(2)のとおりであるから、上記(1)ア~イの請求人の主張はいずれも採用することはできない。
5 小括
上記1~4より、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明(本願発明1)は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、すなわち当審拒絶理由通知の理由A(進歩性)により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明、及び他の理由(理由B(明確性))について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-006742