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特許拒絶査定不服審判

2024-004025

レーザ加工方法及びレーザ加工装置

審判番号
2024-004025
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-212484外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年03月06日
審決日
2025年09月03日
公報発行日
2025年11月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (B23K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-212484「レーザ加工方法及びレーザ加工装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 3月 3日出願公開、特開2023- 29493〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 25項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成30年11月29日に出願された特願2018-224091の一部を、令和4年12月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、次のとおりである。

令和5年 8月 4日付け :拒絶の理由の通知
同年10月12日 :意見書及び手続補正書の提出

同年12月 5日付け :拒絶をすべき旨の査定(拒絶査定)

令和6年 3月 6日 :本件審判(拒絶査定不服審判)の請求
本件審判の請求と同時 :手続補正書の提出
令和7年 4月 9日付け :当審による拒絶の理由の通知

(以下「当審拒絶理由通知」という。)

同年 6月10日 :意見書及び手続補正書の提出

第2 本件発明の認定

本件出願の請求項1~6に係る発明は、令和7年6月10日提出の手続補正書により補正(以下「本件補正」という。)がされた特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
レーザ光源と空間光位相変調器と対物レンズと移動機構とプリズムミラーとを備えるレーザ加工装置を用いて対象物を加工するレーザ加工方法であって、
前記レーザ光源によって、レーザ光を出射する工程と、
前記プリズムミラーによって、前記レーザ光を反射して前記空間光位相変調器に向けて照射する工程と、
続きを表示(全13行)
前記空間光位相変調器によって、対象物の加工面上において複数のレーザスポットが形成されるように前記レーザ光の位相を変調する工程と、
前記プリズムミラーによって、位相が変調された前記レーザ光を反射して前記対物レンズに照射する工程と、
前記対物レンズによって、位相が変調された前記レーザ光を前記加工面上に集光する工程と、
前記移動機構によって、前記複数のレーザスポットが前記加工面上においてトレパニング軌道を描くように、前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる工程と、を含み、
前記相対移動させる工程は、前記トレパニング軌道の直径をDtとし、前記レーザスポットの直径をDIとしたときに、0.9<Dt/DI<100を満たすように前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させ、
前記レーザ光源は、波長が780[nm]又は800[nm]であり、パルス幅が250[fs]以下であり、
前記複数のレーザスポットは、千鳥配置で配置されており、
前記空間光位相変調器は、反射型の空間光位相変調器であり、
前記相対移動させる工程は、前記レーザスポットの中心点が5Hzのスピードで前記トレパニング軌道の直径の円周上を移動するように、前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる、レーザ加工方法。」

第3 当審拒絶理由通知

本件補正前の(すなわち、令和6年3月6日提出の手続補正書により補正がされた)特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正前発明」という。)に対し、当審拒絶理由通知にて示した拒絶の理由は、概略、次のとおりである。

(進歩性)補正前発明は、本件出願前(原出願前)に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項、例えば引用文献2~4に記載された周知の技術的事項1、例えば引用文献3~4に記載された周知の技術的事項2、及び、例えば引用文献5~6に記載された周知の技術的事項3に基づいて、本件出願前(原出願前)にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献]

引用文献1:特開2010-58128号公報
引用文献2:特開2011-110560号公報
引用文献3:特開2004-351513号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2007-294743号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2017-188501号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6:特開2015-170784号公報(周知技術を示す文献)

第4 各引用文献等に記載された発明又は技術的事項の認定

上記第3の当審拒絶理由通知にて引用した引用文献1~6、及び、本件補正により補正前発明を本件発明にする補正がされたために、新たに周知例として示す次の周知例文献A~Cには、それぞれ、以下の事項が記載され、また、当該事項から、以下の発明又は技術的事項が記載されているといえる。

[新たに周知例として示す文献]

周知例文献A:特表2005-533662号公報
周知例文献B:特表2008-502897号公報
周知例文献C:特表2010-517208号公報

1 引用文献1

(1)引用文献1に記載された事項

引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は、当審にて付した。以下同じ。)。

ア 発明の詳細な説明

「【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の内部の複数の集光位置にレーザ光を集光照射する装置および方法に関するものである。
【背景技術】
続きを表示(全13行)
【0002】
レーザ光源から出力されたレーザ光を集光光学系により集光して加工対象物に照射することにより該加工対象物を加工することができる。単にレンズを用いてレーザ光を集光するだけであれば、レーザ光の1つの集光位置を走査することで、加工対象物を所望の形状に加工することができる。しかし、この場合には加工に要する時間が長い。
【0003】
加工時間の短縮化を図るための最も簡便な手法は、複数の集光位置にレーザ光を同時に集光照射して多点同時加工を行うことである。例えば、複数のレーザ光源を用いて、各レーザ光源から出力されたレーザ光をレンズにより集光すれば、多点同時加工を行うことができる。しかし、この場合には、複数のレーザ光源を用いることから、コストが高く、設置領域や光学系が複雑なものとなる。
【0004】
このような問題を解消することを意図した発明が特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された発明では、位相変調型の空間光変調器にホログラムを呈示させて、1つのレーザ光源から出力されたレーザ光を空間光変調器により位相変調し、その位相変調されたレーザ光を集光光学系により複数の集光位置に同時に集光照射する。空間光変調器に呈示されるホログラムは、集光光学系により複数の集光位置にレーザ光が集光されるような位相変調分布を有する。
【0005】
なお、特許文献1に開示されているような対象物の内部の複数の集光位置にレーザ光を集光照射する技術は、例えば、ガラスなどの内部にレーザ光を照射し当該照射部の屈折率変化を起こして光集積回路を形成したり、ガラスなどの内部にレーザ光を照射し当該照射部にクラックを形成して切断したり、シリコンウェハなどの内部にレーザ光を照射して当該照射部に改質層を形成し切断したり、といった加工に用いられるだけでなく、レーザ顕微鏡や多光子吸収顕微鏡などにおいてレーザ光の集光位置を対象物内部で走査して撮像するといった用途にも用いられる。
【特許文献1】特開2006-68762号公報」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
続きを表示(全19行)
図1は、本実施形態に係るレーザ光照射装置1の構成図である。この図に示されるレーザ光照射装置1は、対象物9の内部の複数の集光位置にレーザ光を集光照射する装置であって、レーザ光源10、プリズム20、空間光変調器30、駆動部31、制御部32、レンズ41、レンズ42、ミラー50および対物レンズ(集光光学系)60を備える。
【0015】
レーザ光源10は、対象物9の内部の複数の集光位置に集光照射されるべきレーザ光を出力するものであり、好適にはフェムト秒レーザ光源やNd:YAGレーザ光源などのパルスレーザ光源である。
【0016】
空間光変調器30は、位相変調型のものであって、レーザ光源10から出力されプリズム20の第1反射面21で反射されたレーザ光を入力し、2次元配列された複数の画素それぞれにおいてレーザ光の位相を変調するホログラムを呈示して、その位相変調後のレーザ光を出力する。この空間光変調器30において呈示される位相ホログラムは、数値計算により求められたホログラム(CGH: Computer Generated Hologram)であるのが好ましい。
【0017】
この空間光変調器30は、反射型のものであってもよいし、透過型のものであってもよい。反射型の空間光変調器20(当審注:「空間光変調器20」の符号は「空間光変調器30」の誤記であると認める。)としては、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)型、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)型および光アドレス型の何れであってもよい。また、透過型の空間光変調器20としてはLCD(Liquid Crystal Display)等であってもよい。図1では、空間光変調器30として反射型のものが示されている。透過型の場合にはプリズム20は必要ない。
【0018】
駆動部31は、空間光変調器30の2次元配列された複数の画素それぞれにおける位相変調量を設定するものであり、その画素毎の位相変調量設定のための信号を空間光変調器30に与える。駆動部31は、空間光変調器30の2次元配列された複数の画素それぞれにおける位相変調量を設定することで、空間光変調器30にホログラムを呈示させる。
【0019】
レンズ41およびレンズ42は、4f光学系を構成していて、空間光変調器30と対物レンズ60とが互いに結像関係となるように配置されている。すなわち、レンズ41およびレンズ42からなる4f光学系は、空間光変調器30から出力されプリズム20の第2反射面22で反射されたレーザ光を入力して、空間光変調器30におけるレーザ光の像を対物レンズ60に結像させる。
【0020】
ミラー50は、レンズ41およびレンズ42からなる4f光学系から出力されたレーザ光を入力して、このレーザ光を対物レンズ60へ反射させる。集光光学系としての対物レンズ60は、ミラー50で反射されたレーザ光を入力して、このレーザ光を対象物9の内部の複数の集光位置に集光する。
【0021】
制御部32は、例えばコンピュータで構成され、駆動部31の動作を制御することで、駆動部31から空間光変調器30へホログラムを書き込ませる。このとき、制御部32は、空間光変調器30から出力されたレーザ光を集光光学系60により対象物9の内部の複数の集光位置に集光させるホログラムを空間光変調器30に呈示させる。」
「【0045】
なお、ガラスやシリコンウェハなどの対象物9を切断する場合に、その対象物9の内部にレーザ光を集光して改質層を形成すると、その改質層は、更に深い位置にレーザ光を集光して改質層を形成する際に影響を及ぼす。したがって、深い位置から順に改質層を形成するのが好適である。複数の集光位置にレーザ光を集光照射する場合においても同様である。よって、複数の集光位置にレーザ光を集光照射する場合には、集光位置を互いに近づけることにより、あたかも奥行き方向に伸びた1本の線として加工することが望ましい。
【0046】
レーザ光源10としてフェムト秒レーザ光源を用いる場合には、凸レンズで構成される4光学系(当審注:「4光学系」との記載は、段落【0019】~【0020】に記載の「4f光学系」の誤記であると認める。)を用いることができない。この場合には、空間光変調器30と対物レンズ60とは互いに結像関係にはなく、合成焦点距離fresultは下記(10)式で表される。ここで、Δは、空間光変調器30と対物レンズ60との間の光路長である。Mは、凹凸レンズで構成される縮小光学系を用いた場合の倍率である。実際の集光位置は下記(11)式で表される。これら(1)式および(11)式から補正用ホログラムが作成され、上記(8)式または(9)式に従って、空間光変調器30に呈示されるべきホログラムφresultが作成される。」
「【0059】
そして、上記(13)式に基づいて補正用ホログラムが作成され、さらに、上記(8)式または(9)式に従ってホログラムφresultが作成され、このホログラムφresultが空間光変調器30に呈示される。対象物9が対物レンズ60の方向に距離dだけ移動され、レーザ光源10からのレーザ光出力が開始されて、対象物9内部の所定の集光位置にレーザ光が集光照射される。所要の照射時間が終了するとレーザ光源10からのレーザ光出力が停止される。他の集光位置がある場合には、対象物9の内部における集光位置(表面からの距離(d+Δ))の設定から、同様の処理が繰り返し行われる。尚、集光点の移動は対象物と対物レンズの相対位置を変化させれば良いので、対物レンズを移動させても良いし、対象物と対物レンズの双方を移動させても良い。」

イ 図面

「【図1】
[図:0001428652000001.jpg]
」

(2)引用文献1の記載からわかること

上記(1)の引用文献1の記載から、引用文献1には次の事項が記載されているといえる。

ア 引用文献1の段落【0014】の記載、及び、図1の図示内容から、引用文献1には、レーザ光源10と空間光変調器30と対物レンズ60とプリズム20とを備えるレーザ光照射装置1が記載される。また、段落【0059】の「集光点の移動は対象物と対物レンズの相対位置を変化させれば良いので、対物レンズを移動させても良いし、対象物と対物レンズの双方を移動させても良い。」との記載から、レーザ光照射装置1は、対象物9と対物レンズ60との相対位置を変化させる機構を備えるといえる。さらに、段落【0002】~【0005】、【0014】の記載から、当該レーザ光照射装置1は、対象物9にレーザ光を照射して対象物9を加工するためのものといえるから、引用文献1には、レーザ光照射装置1、及び、レーザ光照射装置1を用いて対象物9を加工するレーザ加工方法に係る技術的事項が、それぞれ記載されているといえる。

イ 引用文献1の段落【0015】の記載から、上記アのレーザ加工方法は、レーザ光源10によって、レーザ光を出力する工程を含むことがわかる。また、レーザ光源10として、フェムト秒レーザ光源などのパルスレーザ光源が好適な例として示されている。

ウ 引用文献1の段落【0016】の記載、及び図1の図示内容から、上記アのレーザ加工方法は、プリズム20の第1反射面21によって、レーザ光を反射して、空間光変調器30に向けて照射する工程を含むことがわかる。

エ 引用文献1の段落【0016】~【0018】、【0021】の記載から、上記アのレーザ加工方法は、空間光変調器30によって、対象物9の内部において複数の集光位置が形成されるようにレーザ光の位相を変調する工程を含むことがわかる。また、段落【0017】の記載から、図1に示される空間光変調器30は、反射型の空間光変調器であることがわかる。

オ 引用文献1の段落【0019】~【0020】、【0046】の記載、及び図1の図示内容から、上記アのレーザ加工方法は、プリズム20の第2反射面22によって、空間光変調器30により位相が変調されたレーザ光を反射して、ミラー50を経て、対物レンズ60に照射する工程を含むことがわかる。

カ 引用文献1の段落【0020】の記載、及び図1の図示内容から、上記アのレーザ加工方法は、対物レンズ60によって、位相が変調されたレーザ光を対象物9の内部の複数の集光位置に集光する工程を含むことがわかる。

また、段落【0059】の記載から、上記アのレーザ加工方法は、上記アの対象物9と対物レンズ60との相対位置を変化させる機構によって、複数の集光位置が移動するように、対物レンズ60と対象物9との相対位置を変化させる工程を含むといえる。

キ 引用文献1の段落【0045】の記載から、上記アのレーザ加工方法による複数の集光位置は、集光位置を互いに近づけることにより、あたかも奥行き方向に伸びた1本の線として配置されることがわかる。

(3)引用発明1

上記(1)及び(2)から、引用文献1に記載された事項を本件出願の請求項1の記載(上記第2)に合わせて整理すると、引用文献1には、レーザ加工方法に関する次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

「レーザ光源10と、空間光変調器30と、対物レンズ60と、対象物9と対物レンズ60との相対位置を変化させる機構と、プリズム20とを備えるレーザ光照射装置1を用いて対象物9を加工するレーザ加工方法であって、
前記レーザ光源10によって、レーザ光を出力する工程と、
前記プリズム20によって、前記レーザ光を反射して前記空間光変調器30に向けて照射する工程と、
前記空間光変調器30によって、対象物9の内部において複数の集光位置が形成されるように前記レーザ光の位相を変調する工程と、
前記プリズム20によって、位相が変調された前記レーザ光を反射して前記対物レンズ60に照射する工程と、
前記対物レンズ60によって、位相が変調された前記レーザ光を前記対象物9の内部に集光する工程と、
対象物9と対物レンズ60との相対位置を変化させる前記機構によって、前記複数の集光位置が移動するように、前記対物レンズ60と前記対象物9との相対位置を変化させる工程と、を含み、
前記レーザ光源10は、フェムト秒レーザ光源であり、
前記複数の集光位置は、奥行き方向に伸びた1本の線として配置されており、
前記空間光変調器30は、反射型の空間光変調器である、レーザ加工方法。」

2 引用文献2

(1)引用文献2に記載された事項

引用文献2には、次の事項が記載されている。

ア 発明の詳細な説明

「【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置及びレーザー加工方法に係り、特に、レーザービームを照射し、被加工物に穴径や深度の異なる複数の穴を一括で形成するレーザー加工装置及びレーザー加工方法に関する。」
「【0033】
<実施例1>
本実施形態のレーザー加工装置10は、図1に示すように、レーザー装置と、集光手段としてのマイクロレンズアレイ30(マイクロレンズ31の集合体)と、被加工物Wの配置手段であるワーク調整手段40等を備えて構成されている。そして、ワーク調整手段40上に配置されたマイクロレンズアレイ30と、被加工物WからユニットUが構成される。
【0034】
本例のレーザー加工装置10は、レーザー装置として、レーザー光源11、アッテネータ12、スリット13、部分反射ミラー14、エネルギーモニタ15、シャッター(メカニカルシャッター)16、ビームエキスパンダ17、ミラー18、ビームプロファイラ20などを備えている。」
「【0070】
図9乃至図11は、実施例1の変形例を示す説明図であり、図9はマイクロレンズと被加工領域との関係を示す説明図、図10はワーク調整手段の説明図、図11は狭ピッチ加工の例を示す説明図である。
図10に示すワーク調整手段40は、被加工物Wとマイクロレンズアレイ30およびその保持機構(ワーク調整手段など)の相対位置を変更可能なステージを備える。すなわち、図10に示すように、XY方向に移動可能なステージ41の下に、さらにXYZ方向に移動可能なステージ43を備えている。
ステージ41は2軸のリニアステージなどで構成し、ステージ43は3軸のリニアステージなどで構成する。ステージ41、XYZステージ43をモーションコントローラにより制御を行い、動作パラメータの設定などは、PCによって行なう。XYZステージ43のコントローラは円弧補間機能をもつことが望ましい。モーションコントローラは、例えばDelta Tau Systems社製UMACJ-Turboなど、公知のコントローラを用いることができる。
図10に示すワーク調整手段40によれば、被加工領域加工後に前記相対位置を変更し、新たな被加工領域を加工することにより、多数の加工部分を任意の間隔で加工することが可能となる。
これにより、広範囲な被加工領域の加工や、被加工部分の狭い間隔の加工が可能となる。」
「【0073】
図10に示すワーク調整手段40により、被加工物Wとマイクロレンズアレイ30およびその保持機構を任意の相対移動をさせながら加工を行うことにより、多数の被加工部分を任意の形状に加工することが可能となる。
【0074】
図12乃至図16は、被加工物とマイクロレンズアレイとの相対移動加工を示すもので、図12は線状加工の例の説明図、図13及び図14は円形加工の例の説明図、図15はザグリ加工の例の説明図、図16はテーパ加工の例の説明図である。
【0075】
図12に示すように、被加工物Wとマイクロレンズアレイ30およびその保持機構(ワーク調整手段など)を一次元的に相対移動させながら加工を行うことにより、多数の線状の被加工部分の形成が可能である。
また、図13は、被加工物Wとマイクロレンズアレイ30およびその保持機構を相対的に円形に移動させながら加工を行う例(トレパニング加工)であり、図14は、そのときのビーム焦点と加工穴の図を示している。つまり、図14で示すように、被加工物Wとマイクロレンズアレイ30およびその保持機構(ワーク調整手段40)を相対移動させながら、ビーム焦点を円形(白抜き矢印のように)に移動させるものである。
このようにトレパニング加工を行うことにより、マイクロレンズの焦点径より大きい任意の加工幅を持つ円形加工が可能となり、焦点径が異なるマイクロレンズに交換をすることなしに、加工幅の異なるパターンの加工が可能となる。」
「【0085】
上記構成のように、レンズ径D、焦点径wを等しくして位相段差dの数Nをそれぞれ8及び4とし、エポキシ樹脂に対し、多点の一括加工を行った場合、下記の結果が得られた。なお、詳細な実験条件は以下に示す通りである。
【0086】
レーザーの種類:不安定共振器型KrFエキシマレーザー
続きを表示(全11行)
レーザー波長λ:248nm
焦点径w:φ35μm
トレパニング径:φ50μm-φ35μm-φ20μm
照射パルス数:1000パルス-1000パルス-1000パルス
焦点エネルギー密度(理想値):400mJ/cm2
材料:エポキシ樹脂
下地電極:外部電極 銅、内部電極 アルミ」

イ 図面

「【図1】
[図:0001428652000002.jpg]
」
「【図10】
[図:0001428652000003.jpg]
」
「【図13】
[図:0001428652000004.jpg]
【図14】
[図:0001428652000005.jpg]
」

(2)引用文献2記載の技術的事項

上記(1)から、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。

「レーザ加工装置10を用いて被加工物Wを加工するレーザ加工方法において、被加工物Wの加工面上に複数の穴を一括で加工するにあたり、複数のビーム焦点が加工面上において円形に移動するように、ワーク調整手段40によって、マイクロレンズアレイ30と被加工物Wとを相対移動させながらトレパニング加工を行うこと、及び、
トレパニング加工のトレパニング径がφ50μm、φ35μm又はφ20μmであり、ビーム焦点の焦点径wがφ35μmであって、トレパニング径がφ50μm又はφ35μmの場合、トレパニング径/焦点径wの比が、50/35又は35/35であるように、マイクロレンズアレイ30と対象物Wとを相対移動させること。」

3 引用文献3

(1)引用文献3に記載された事項

引用文献3には、次の事項が記載されている。

ア 発明の詳細な説明

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザーを用いて各種材料に対して孔を形成するレーザー加工技術に係わり、特に、フェムト秒レーザーを用いた超短パルスレーザーによる材料加工方法、この超短パルスレーザーによる材料加工方法を用いたプリント配線板の製造方法、及びこのプリント配線板の製造方法で製造されたプリント配線板に関する。
【0002】
続きを表示(全16行)
【従来の技術】
近年、電子回路の伝送信号の高周波化、部品の小型化の進展により、電子部品は、その大部分が表面実装され、高密度化が進んできた。一方、大規模集積回路は、大型化、多機能化が進められ、ICパッケージの入出力端子が膨大になり、大規模集積回路とこの大規模集積回路を実装する基板との間にインターポーザーを設けるようになってきた。
【0003】
これらの高密度の大規模集積回路が搭載されるプリント配線板においても電子回路が複数層に亘って形成されている。またインターポーザーにおいても両面に電子回路が形成されている。複数層に亘って形成されている電子回路相互間の配線を効率的に行うためには、複数層に亘って電子回路が形成されている回路基板に対して各電子回路を連通する多数の孔を形成し、この孔内に電子回路相互を接続する導体を配線する必要がある。この導体が配線された孔をビアホール(Via Hole)と称する。
【0004】
これらのビアホールの加工には、従来、高調波のYAGレーザーや炭酸ガスレーザーが利用されてきた。
【0005】
図9に、ビアホールを有するプリント配線板の従来の製造方法を示す。
【0006】
先ず、ガラスエポキシやポリイミドなど有機材料あるいは複合材料からなる0.05mmから数mm前後の厚さの基材1の両面に10μm程度の厚さの電子回路が形成された銅箔2a、2bが形成された回路基板3を作成する(図9(a))。
【0007】
この回路基板3の一方の銅箔2aの表面からYAGまたは炭酸ガスのレーザービーム4を加工すべき孔5の中心位置にパルス照射する。または、レーザービーム4を、加工すべき孔5の径よりも小さなビームスポットでレーザートレパニング手法を用いて円形にパルス照射する。そして、下層の銅箔2b表面まで直径40μmから200μm程度の円柱状の孔5を形成する(図9(b))。」
「【0049】
以下、本発明の具体的実施形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係わる超短パルスレーザーによる材料加工方法を用いたプリント配線板の製造方法を示す製造工程図である。図9に示したYAGレーザー又は炭酸ガスレーザーを用いた従来のプリント配線板の製造方法を示す製造工程図と同一部分には同一符号を付して、重複する部分の詳細説明は省略する。
【0050】
続きを表示(全17行)
先ず、ガラスエポキシやポリイミドなど有機材料あるいは複合材料からなる0.05mmから数mm前後の厚さの基材1の両面に10μm程度の厚さの電子回路が形成された銅箔2a、2bが形成された回路基板3を作成する(図1(a))。
【0051】
次に、発振波長780nm、ピークパワー800mW、パルスエネルギー800μJ/パルス、パルス幅150フェムト秒、パルス繰り返し周波数1kHz、ビームスポット12の径10μmの特性値を有するフェムト秒レーザー11を、回路基板3の一方の銅箔2aの表面から加工すべき孔5(仕上り孔径40μm)の領域に照射する(図1(b)(c)(d))。
【0052】
加工深さが回路基板3の一方の銅箔2aの厚みに達していないレーザー加工の初期段階では、銅箔2aの銅が非熱アブレーション加工される。レーザーエネルギー照射された銅は、短時間、且つ、高エネルギー密度の照射により、熱による銅の溶融を伴うことなく、銅は分子状になって周囲の雰囲気中に飛散する。結果として、加工された孔5の周囲にドロスと呼ばれる銅の溶融によるクレーター状の盛り上がりは発生しない。
【0053】
次に孔5の加工描画動作を図2、図3、図4を用いて説明する。
【0054】
図2、図3に示すように、加工すべき孔5の径40μmよりも小さなフェムト秒レーザー11の10μmのビームスポット12で孔5の円形領域の一部をパルス照射した後、フェムト秒レーザー11のビームスポット12の照射位置を孔5の円形領域内を順次移動させて孔5を形成する。さらに、図4に示すように、レーザー照射位置の移動に伴い、連続してレーザーパルス照射せず、各照射位置に一旦停止して、1乃至数回レーザーパルス照射した後、レーザーパルス照射しない状態で次の照射位置に移動することを繰り返して加工を行う。
【0055】
こうすることで、孔5の加工表面と孔5の底での加工円寸法比が1に近い立ち上がりの良い孔5が形成される。
【0056】
図3に示すパルス照射間の移動量は孔5の加工領域域全体の照射エネルギー量(レーザーフルエンス)が平均になるように設定されている。照射エネルギー量(レーザーフルエンス)は、加工面の銅箔2と基材1をアブレーション飛散させ、下層の銅箔2bの表面に達したところまで加工できるエネルギー量に設定されている。」

イ 図面

「【図1】
[図:0001428652000006.jpg]
【図2】
[図:0001428652000007.jpg]
【図3】
[図:0001428652000008.jpg]
【図4】
[図:0001428652000009.jpg]
」
「【図9】
[図:0001428652000010.jpg]
」

(2)引用文献3記載の技術的事項

上記(1)から、引用文献3には、次の技術的事項(以下「引用文献3記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。

「フェムト秒レーザー11を用いた超短パルスレーザーによる材料加工方法において、回路基板3の一方の銅箔2aの表面に多数の孔5をレーザー加工するために、ビームスポット12が銅箔2aの表面においてレーザートレパニング手法を用いて円形にパルス照射すること、及び、発振波長が780nmであり、パルス幅が150フェムト秒であるフェムト秒レーザー11を採用すること。」

4 引用文献4

(1)引用文献4に記載された事項

引用文献4には、次の事項が記載されている。

ア 発明の詳細な説明

「【0038】
さて、図1、図2、図4、図5に示すように、回路基板3には、基板裏面側から表面側にかけて径が大きくなるテーパ状の光通路穴14が複数個(図では4個のLDに対して4個の光通路穴14と、4個のPDに対して4個の光通路穴14との合計8個)形成される。」
「【0054】
次に、光モジュール1の製造方法を説明する。ここでは、光通路穴14以外は慣用の方法で製造できるため、光通路穴14の形成方法についてのみ説明する。
【0055】
図6に示すように、回路基板3の表面に、フェムト秒レーザあるいはUV(紫外線)-YAGレーザLを照射すると共に、螺旋状に走査しながら回路基板3を掘り進み(すなわち、トレパニングにより)、光通路穴14を形成する。」
「【0057】
ここで、フェムト秒レーザは、チタンサファイアに種光(緑レーザ)を当て、チタンサファイアの再生増幅により発射するものである。波長λ=780~800nm、パルス幅は50fs以上、出力は1~2W、周波数1kHz(連続チャージ時間)である。フェムト秒レーザは、パルス幅が150fs以下だとレーザ光が熱エネルギーに変換する前に加工が完了してしまう。これをアブレーションという。つまり、フェムト秒レーザを用いると、熱だれが発生しない、光通路穴14の周囲が盛り上がらないという利点がある。」

イ 図面

「【図1】
[図:0001428652000011.jpg]
」
「【図6】
[図:0001428652000012.jpg]
」

(2)引用文献4記載の技術的事項

上記(1)から、引用文献4には、次の技術的事項(以下「引用文献4記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。

「フェムト秒レーザを用いて回路基板3を加工するレーザ加工方法において、回路基板3の表面に複数個の光通路穴14を形成するために、フェムト秒レーザLをトレパニングにより螺旋状に走査しながら掘り進むこと、及び、波長λ=780~800nm、パルス幅は50fs以上150fs以下であるフェムト秒レーザを採用すること。」

5 引用文献5

(1)引用文献5に記載された事項

引用文献5には、次の事項が記載されている。

ア 発明の詳細な説明

「【0035】
(薄銅箔貫通フィルドビアホール24a)
次に、その剥離用積層基板10の外面を樹脂絶縁層21で覆う。次に、図1(a)の平面図と図1(b)の側断面図のように、易剥離金属箔付きシート13の外周部分の上に、複数の互いに隣接した薄銅箔貫通ビアホール穴22aを形成する。図1(a)の平面図では、剥離用積層基板10上の樹脂絶縁層21に、易剥離金属箔付きシート13に達する複数の薄銅箔貫通ビアホール穴22aを千鳥足状に配置して形成する。薄銅箔貫通ビアホール穴22aを千鳥足状に配置することで、1つの薄銅箔貫通ビアホール穴22aを、少なくとも4つの薄銅箔貫通ビアホール穴22aで隣接させることができる。
【0036】
図1(c)の様に、薄銅箔貫通ビアホール穴22aは、剥離用積層基板10にレーザ穴あけ加工装置で、易剥離金属箔付きシート13に達する穴をあけて薄銅箔貫通ビアホール穴22aを形成し、その穴底に露出している易剥離金属箔付きシート13の薄銅箔層13bをクイックエッチングで除去しキャリア銅箔層13aを露出させる。」
「【0063】
(工程3:薄銅箔貫通ビアホール穴22aの形成工程)
次に、図2(c)のように、剥離用積層基板10の端の位置の樹脂絶縁層21に、易剥離金属箔付きシート13の端部の薄銅箔層13bに達する薄銅箔貫通ビアホール穴22aを、穴あけ加工用レーザー光線によって形成する。この薄銅箔貫通ビアホール穴22aは外側の穴径を80μm程度で穴底の穴径を50μm程度に加工し、外側の穴径が穴底の径より大きい、円錐台を逆さにした形状に形成する。」
「【0074】
図1(a)の平面図のように剥離用積層基板10の端部の薄銅箔貫通ビアホール穴22aを易剥離金属箔付きシート13の端部に千鳥足状に配置することが望ましい。そうすることで薄銅箔貫通フィルドビアホール24aの密度が高くなるので、易剥離金属箔付きシート13の端部の固定効果が大きくなり、剥離用積層基板10に対する以降の製造工程のストレスによる易剥離金属箔付きシート13の薄銅箔層13bとキャリア銅箔層13aの境界面の剥離の防止効果を大きくでき、その界面の剥離による製造不良を防止できる。」

イ 図面

「【図1】(a)
[図:0001428652000013.jpg]
」

(2)引用文献5記載の技術的事項

上記(1)から、引用文献5には、次の技術的事項(以下「引用文献5記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。

「レーザ穴あけ加工装置を用いて剥離用積層基板10を穴あけ加工する方法において、穴あけ加工用レーザー光線によって剥離用積層基板10の端の位置の樹脂絶縁層21に複数の薄銅箔貫通ビアホール穴22aを形成するにあたり、複数の薄銅箔貫通ビアホール穴22aを千鳥足状に配置して形成すること。」

6 引用文献6

(1)引用文献6に記載された事項

引用文献6には、次の事項が記載されている。

ア 発明の詳細な説明

「【0034】
図3は、図1中に示したガラス基層11の別の例を示す平面図である。図3において、図1中に示したものと同一のものには同一符号を付してある。図3に示すように、このガラス基層11は、基層11を貫通してビア孔11aが千鳥配置状に同径で複数設けられている。このような基層11の構成によっても、図2に示した基層11の場合と同様の効果が得られる。
【0035】
なお、図2に示した格子点配置に比較して図3に示した千鳥配置は、ビア孔11aの配置密度を高められる利点がある。配置密度の違いを説明すると以下になる。図2に示した格子点配置では、ビア孔11aの縦方向、横方向の配置ピッチが一定のルールに従って設定される。直近の2×2(正方形の頂点を構成する配置)のビア孔11aで見たときにもこれが適用されている。
【0036】
一方、図3に示す千鳥配置では、横方向の配置ピッチが図2に示した配置の場合と同じであるとき、直近の正三角形の頂点に配置されたビア孔11aについて見ると、その正三角形の高さが図2における縦方向の配置ピッチより小さい。これは上記の正方形とこの正三角形とを比べれば容易に理解できる。これにより、図3に示す千鳥配置では、複数配置されたビア孔11aの行の数を図2に示す格子点配置の場合より多くできる。具体的に比較すると、図2に示す格子点配置では行の数が15であるところ、図3に示す千鳥配置では行の数が17になっている。ビア孔11aの数でみると、図2では225、図3では247になっており配置密度が高められている。」
「【0045】
次に、図1に示したインターポーザーを製造する手順について概略を図4ないし図6を参照して説明する。これらの図において、図1中に示したものと同一または同一相当のものには同一符号を付してある。まず、加工前のガラス基層11(想定される厚さは例えば50μm~1000μm。典型的には例えば500μm)を用意し、所定の個所にビア孔11aを例えばレーザ加工で形成する(図4(a)を参照)。ビア孔11aの径は例えば60μmである。レーザ加工に加えフッ酸で孔径の拡大化や孔内壁を平滑化する処理を行ってもよい。また、ガラス基層11として光反応性ガラスを利用すると孔開けの加工がより簡単になる。」

イ 図面

「【図3】
[図:0001428652000014.jpg]
」

(2)引用文献6記載の技術的事項

上記(1)から、引用文献6には、次の技術的事項(以下「引用文献6記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。

「レーザ加工にてガラス基層11を加工するレーザ加工方法において、ガラス基層11の加工面上に複数のビア孔11aを形成するにあたり、当該複数のビア孔11aを千鳥配置状に設けること。」

7 周知例文献A

(1)周知例文献Aに記載された事項

周知例文献Aには、次の事項が記載されている。

ア 発明の詳細な説明

「【0021】
ここで本実施形態における具体的な詳細に移る。図1は、図示のように配置されるレーザ105と、ビーム107と、第1のミラー108と、第2のミラー117と、第3のミラー121と、第4のミラー122と、シャッタ110と、減衰器115と、ビーム拡大器120と、回転式半波長板125と、走査ミラー130と、走査レンズ140と加工物155とを含むレーザ孔開け装置100の概略図を示す。一実施形態において、レーザ105はピコ秒レーザ装置である。」
「【0053】
さらに別の実施形態を示すと、図10および図11は2パストレパニング技術を用いてインクジェット式ノズルの出口孔を完成させる方法を示す。図10は、図11で説明する2パストレパニング技術を用いて作られ、レーザビーム経路1010とレーザビーム経路1020と外周線1030を有する出口孔1000を示す。
【0054】
図11は、2パストレパニング技術を用いてインクジェット式ノズルの出口孔を完成させる方法1100を示す。上記方法は次のステップを含む。
【0055】
出口孔外周線より短い周囲長でトレパニングするステップ1110において、レーザビーム107は、レーザビーム経路1010より内側の材料を分離させるのに十分な材料がアブレーションされるまで、0.1秒/回転ないし1秒/回転の速度でレーザビーム経路1010で繰り返し旋回される。
【0056】
出口孔外周線でトレパニングするステップ1120において、レーザビーム107は、レーザビーム経路1020内の材料を分離させるのに十分な材料がアブレーションされるまで0.1秒/回転ないし1秒/回転の速度で外周線1030で繰り返し旋回される。この結果、出口孔1000は所定の加工物形状に合う半径を有する。」
「【0059】
インクジェットヘッドのノズル板は、図12および図13でさらに詳説するように、本発明のレーザ孔開け装置を用いて形成されてもよい。」
「【0061】
ここで図13に移ると、インクジェットヘッド1241がさらに詳細に示されている。圧力生成器1304は、圧電性の装置、熱による装置および/または等価の装置であることが好ましい。本実施形態では、圧力生成器1304は、上部電極1301と圧電素子1302と下部電極1303とを備えた圧電性装置に相当している。ノズル板1314(加工物155の例)はノズル基板1312と撥水層1313を備えている。ノズル基板1312は、金属、樹脂および/または等価な材料でできている。撥水層は、フッ素樹脂またはシリコン樹脂でできている。本実施形態では、ノズル基板1312はステンレス鋼でできていて、50μmの厚みを有し、撥水層はフッ素樹脂でできていて、0.1μmの厚みを有する。インクジェットのインクが、インク供給路1309と圧力室1305とインク通路1311とノズル1310に充填されている。圧力生成器1304が圧力室部品1306を押圧すると、インク液滴1320がノズル1310から吐出される。」

イ 図面

「【図1】
[図:0001428652000015.jpg]
」
「【図10】
[図:0001428652000016.jpg]
【図11】
[図:0001428652000017.jpg]
」
「【図13】
[図:0001428652000018.jpg]
」

(2)周知例文献A記載の技術的事項

上記(1)から、周知例文献Aには、次の技術的事項(以下「周知例文献A記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。

「レーザ孔開け装置100によりノズル基板1312にノズル1310の出口孔を形成するために、レーザビーム107がトレパニングのためにレーザビーム経路1010とレーザビーム経路1020とで旋回する際に、レーザビーム107が0.1秒/回転ないし1秒/回転の速度で繰り返し旋回すること。」

ここで、0.1秒/回転ないし1秒/回転は、1回転/秒ないし10回転/秒であるから、「1Hzないし10Hz」のスピードに相当する。

8 周知例文献B

(1)周知例文献Bに記載された事項

周知例文献Bには、次の事項が記載されている。

ア 発明の詳細な説明

「【0028】
図1に示した態様においては、このように形成される積層体Lは通常、50~1000μm、好ましくは200~800μm、例えば300~600μmの深さ(すなわち、層Laの表面から層Lbの表面まで積層体の諸層を横切る距離および穴の作製される長さ)を有している。
【0029】
次に、穴またはウェルが、積層体Lに作製される。穴は、積層体を完全に貫通する。したがって、レセプタクルを形成するために、通常はさらなる基板を積層体に取り付ける必要がある。但し、図3を参照して後述する一部の態様においては、さらなる基板を別個に取り付けることを避けることができる。これに反し、ウェルは積層体を完全には貫通せず、積層体に凹みまたはウェルを作製するものであり、これは、別個の基板を追加することなくレセプタクルが積層体に直接形成されるようにするものである。どちらの場合にも、作用電極層の端が露出されるように穴またはウェルが作用電極層を完全に貫通することが望ましい。図1に示した態様においては、穴が積層体を貫通して作製されている。
【0030】
穴またはウェルの作製には、レーザー穴あけ加工工程が含まれる。レーザー穴あけ加工工程によって積層体に穴またはウェルが作製されるように、レーザー穴あけ加工を単独で用いてもよい。または、レーザー穴あけ加工と別の技術、例えば機械技術を組み合わせて用いてもよい。例えば、中央プラグを取り囲む実質的に環状の穴またはウェルを作製すべく、積層体においてリングのレーザ穴あけ加工することによって(すなわち、トレパニング法によって)、穴またはウェルのエッジを形成するために、レーザー穴あけ加工を用いてもよい。中央プラグは別個に取り除くことができる。機械的打ち抜き工程を用いて中央プラグを取り除いてもよい。この態様においては、レーザー穴あけ加工工程を用いて穴またはウェルのエッジ、すなわちレセプタクルまたは部分レセプタクルの壁を形成する部分が形成される。この態様の好ましい様相においては、レーザー穴あけ加工工程では、積層体の一部のみ貫通される(すなわち、環状のウェルが形成される)のであって、積層体の残りの部分を切り通すには機械打ち抜きが用いられる。レーザー穴あけ加工工程では、通常、少なくとも上方の絶縁層Lbおよび作用電極層を貫通して穴あけが行われる。」
「【0076】
次に、266nmの波長、2kHzのパルス繰り返し周波数(prf)、および450rpmのトレパニング速度で動作するNd:YVO4パルスレーザーを用いて、1mmの直径を有する4つの穴をレーザー穴あけ加工によってフィルムに形成した。次に、粘着テープを用いてPall社のバーサポア多孔質膜の基層にフィルムを接着させて、4つのウェルを形成した。Ag/AgCl擬似参照電極を用いた。」

イ 図面

「【図1】
[図:0001428652000019.jpg]
」

(2)周知例文献B記載の技術的事項

上記(1)から、周知例文献Bには、次の技術的事項(以下「周知例文献B記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。

「レーザー穴あけ加工により積層体Lに穴を作製するために、トレパニング法によって穴のエッジを形成する際に、レーザーが450rpmのトレパニング速度で動作すること。」

ここで、450rpmは、450/60=7.5rpsであるから、「7.5Hz」のスピードに相当する。

9 周知例文献C

(1)周知例文献Cに記載された事項

周知例文献Cには、次の事項が記載されている。

ア 発明の詳細な説明

「【0091】
例7
固体酸化物燃料電池デバイス(SOFCデバイス)150のレーザマイクロ加工を示すために、10セルおよび1セル双方のデバイス用の電解質シート100に、エッジおよびビアがマイクロ加工された。双方のタイプの燃料電池デバイスは、電解質の両側に形成された電極を相互接続するために多重ビア列を必要とした。4つの異なるデバイス製造シナリオが下記に示され、記載される。
【0092】
1.機械的に整形されたベア焼結電解質シートへのホール穿孔
機械的に切断され、焼結されたベア電解質シートが受け取られた(その電解質シートは、10セルデバイス用として必要な10cm寸法よりも大きい少なくとも1つの寸法を有していた)。ビアホールが穿孔されるにつれて、ビアホールに対するエッジの正確な位置合わせが必要とされた。このように、レーザトレパニング法を用いて、電解質シートに11列のビアホールがレーザマイクロ加工される一方(このようなホールの例を図23a,23bに示す)、これらの配置が、形成時の機械的に切断された電解質シートのエッジに対して正確に参照された。トレパニングのために、レーザビームは静止した状態に保たれ、焼結電解質シート100は、円形の経路に沿って移動された。ビアホール(円形)の形状は、図23a,23bに示すものと類似していた。切断速度は、レーザ光源の低い繰り返し率により制限された。図23a,23bから、ビアホールの品質が非常に良好なものであることが分かる。おそらくレーザアブレーション工程の間に発生する衝撃波により、ビアホール102の後側に、いくらかの環状クラック118が残った。約35mWのさらに高い平均パワーにより環状クラックを消去できる。0.5mm/sの切断速度により、30μJ/パルスのエネルギおよび17J/cm2のフルエンスレベルを有する典型的には2つのパスにおいて、直径60μmのビアホール102がレーザ切断された。その後、燃料極、空気極、電流コレクタ、ビアコンダクタ、およびバスバー構造の形成ステップを含んで、10セルデバイスの製造が完了した。
【0093】
図23a,23bに示された特定のサンプルは、fsレーザを用いてマイクロ加工されたが、7μJ/パルスのパルスエネルギおよび4J/cm2のフルエンスレベルであった。一方、上述した実際の10セルおよび1セルデバイス150は、同様のfsレーザを用いてレーザマイクロ加工されたビアホールを有していたが、30μJ/パルスのエネルギおよび17J/cm2のフルエンスレベルであった。これらのさらに高いパルスエネルギおよびフルエンスレベルは、環状クラックの形成を低下させ、同様の円形の形状を有するスルーホールを形成するために、わずか2つのパスが必要とされるのみであった。fsレーザフルエンスが4J/cm2であった場合は、微小クラックが観察されたが、フルエンスを4J/cm2より大きい状態にして与えられた、従来の可視近赤外線レーザマイクロ加工の例は、観察可能な微小クラックがなかった。」

イ 図面

「【図23a】
[図:0001428652000020.jpg]
【図23b】
[図:0001428652000021.jpg]
」

(2)周知例文献C記載の技術的事項

上記(1)から、周知例文献Cには、次の技術的事項(以下「周知例文献C記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。

「レーザマイクロ加工により電解質シート100にビアホールを形成するために、レーザトレパニング法を用いて、レーザビームは静止した状態で電解質シート100を円形の経路に沿って移動させる際に、0.5mm/sの切断速度により直径60μmのビアホール102がレーザ切断されること。」

ここで、直径60μmのビアホール102の周長は、60×π=188μmであるから、ビアホール1周の切断に要する時間は、0.188mm/0.5mm/s=0.376sである。したがって、その逆数である1秒あたりの周回数は、2.66であるから、当該技術的事項の「0.5mm/sの切断速度」は、「2.66Hz」のスピードに相当する。

第5 本件発明と引用発明1との対比

1 相当関係

本件発明と引用発明1とを対比すると、両者の発明特定事項には次の相当関係があるといえる。

(1)引用発明1における「レーザ光源10」は、その機能・作用からみて、本件発明における「レーザ光源」に相当し、以下同様に、「空間光変調器30」は位相を変調するものであるから「空間光位相変調器」に、「対物レンズ60」は「対物レンズ」に、「対象物9と対物レンズ60との相対位置を変化させる機構」は「移動機構」に、「プリズム20」は「プリズムミラー」に、「レーザ光照射装置1」は「レーザ加工装置」に、「対象物9」は「対象物」に、それぞれ相当する。

また、引用発明1における「レーザ光を出力する」ことは、その機能・作用からみて、本件発明における「レーザ光を出射する」ことに相当し、以下同様に、「複数の集光位置」は「レーザスポット」に相当し、「反射型の空間光変調器」は「反射型の空間光位相変調器」に相当する。

(2)引用発明1における「前記レーザ光源10によって、レーザ光を出力する工程」は、その機能・作用からみて、本件発明における「前記レーザ光源によって、レーザ光を出射する工程」に相当する。

同様に、引用発明1における「前記プリズム20によって、前記レーザ光を反射して前記空間光変調器30に向けて照射する工程」は、本件発明における「前記プリズムミラーによって、前記レーザ光を反射して前記空間光位相変調器に向けて照射する工程」に相当する。

また、引用発明1における「前記プリズム20によって、位相が変調された前記レーザ光を反射して前記対物レンズ60に照射する工程」は、その機能・作用からみて、本件発明における「前記プリズムミラーによって、位相が変調された前記レーザ光を反射して前記対物レンズに照射する工程」に相当する。

(3)引用発明1における「前記空間光変調器30によって、対象物9の内部において複数の集光位置が形成されるように前記レーザ光の位相を変調する工程」は、

「前記空間光位相変調器によって、対象物の加工位置において複数のレーザスポットが形成されるように前記レーザ光の位相を変調する工程」である限りにおいて、

本件発明の「前記空間光位相変調器によって、対象物の加工面上において複数のレーザスポットが形成されるように前記レーザ光の位相を変調する工程」と一致する。

同様に、引用発明1における「前記対物レンズ60によって、位相が変調された前記レーザ光を前記対象物9の内部に集光する工程」は、

「前記対物レンズによって、位相が変調された前記レーザ光を前記加工位置に集光する工程」である限りにおいて、

本件発明の「前記対物レンズによって、位相が変調された前記レーザ光を前記加工面上に集光する工程」と一致する。

また、引用発明1における「対象物9と対物レンズ60との相対位置を変化させる前記機構によって、前記複数の集光位置が移動するように、前記対物レンズ60と前記対象物9との相対位置を変化させる工程」は、

「前記移動機構によって、前記複数のレーザスポットが移動するように、前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる工程」である限りにおいて、

本件発明の「前記移動機構によって、前記複数のレーザスポットが前記加工面上においてトレパニング軌道を描くように、前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる工程」と一致する。

(4)引用発明1における「前記レーザ光源10は、フェムト秒レーザ光源」であることは、そのパルス幅からみて、

「前記レーザ光源は、フェムト秒レーザ光源」である限りにおいて、

本件発明における「前記レーザ光源は、波長が780[nm]又は800[nm]であり、パルス幅が20[fs]以下」であることに相当する。

また、引用発明における「前記複数の集光位置は、奥行き方向に伸びた1本の線として配置されて」いることは、

「前記複数のレーザスポットは、所定の位置関係で配置されて」いる限りにおいて、

本件発明における「前記複数のレーザスポットは、千鳥配置で配置されて」いることに相当する。

2 一致点

上記1から、本件発明と引用発明1とは、次の一致点で一致する。

[一致点]

「レーザ光源と空間光位相変調器と対物レンズと移動機構とプリズムミラーとを備えるレーザ加工装置を用いて対象物を加工するレーザ加工方法であって、
前記レーザ光源によって、レーザ光を出射する工程と、
前記プリズムミラーによって、前記レーザ光を反射して前記空間光位相変調器に向けて照射する工程と、
前記空間光位相変調器によって、対象物の加工位置において複数のレーザスポットが形成されるように前記レーザ光の位相を変調する工程と、
前記プリズムミラーによって、位相が変調された前記レーザ光を反射して前記対物レンズに照射する工程と、
前記対物レンズによって、位相が変調された前記レーザ光を前記加工位置に集光する工程と、
前記移動機構によって、前記複数のレーザスポットが移動するように、前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる工程と、を含み、
前記レーザ光源は、フェムト秒レーザ光源であり、
前記複数のレーザスポットは、所定の位置関係で配置されており、
前記空間光位相変調器は、反射型の空間光位相変調器である、レーザ加工方法。」

3 相違点

他方、本件発明と引用発明1とは、以下の相違点1~3で相違する。

(1)相違点1

複数のレーザスポットの形成に関し、

本件発明においては、対象物の「加工面上」にレーザ光を集光して形成されるものであって、対物レンズと対象物とを相対移動する工程は、複数のレーザスポットが加工面上においてトレパニング軌道を描くように、さらに、トレパニング軌道の直径をDtとし、レーザスポットの直径をDIとしたときに、0.9<Dt/DI<100を満たすように、かつ、レーザスポットの中心点が5Hzのスピードでトレパニング軌道の直径の円周上を移動するように、対物レンズと対象物とを相対移動させるのに対し、

引用発明1においては、対象物9の「内部」に複数の集光位置が形成されるものであって、対象物9と対物レンズ60との相対位置を変化させる工程は、対象物9の加工面上にトレパニング軌道を描くように、対物レンズ60と対象物9との相対位置を変化させるものでなく、そのため、トレパニング軌道の直径及びトレパニング軌道上を移動するスピードが設定されていない点。

(2)相違点2

レーザ光源に関し、

本件発明においては、レーザ光源は、波長が780[nm]又は800[nm]であり、パルス幅が250[fs]以下であるのに対し、

引用発明1においては、レーザ光源10は、フェムト秒レーザ光源であるものの、その波長及びパルス幅は不明である点。

(3)相違点3

複数のレーザスポットの配置に関し、

本件発明においては、千鳥配置で配置されるのに対し、

引用発明1においては、複数の集光位置は、奥行き方向に伸びた1本の線として配置される点。

第6 相違点についての判断

上記相違点について検討する。

1 相違点1について

(1)周知の技術的事項1

上記第4の2(2)、3(2)及び4(2)にて、引用文献2~4記載の技術的事項として示したように、次の事項は、本件出願前(原出願前)において周知であった(以下「周知の技術的事項1」という。)。

「レーザ加工装置を用いて対象物を加工するレーザ加工方法において、対象物の加工面上に複数の孔を加工するために、レーザスポットが加工面上においてトレパニング軌道を描くようにすること。」

(2)引用文献2記載の技術的事項に示されるトレパニング加工態様

また、上記第4の2(2)に示したレーザ加工方法に関する引用文献2記載の技術的事項には、次のトレパニング加工態様が示されているといえる。

「レーザ加工装置10を用いて被加工物Wの加工面上に複数の穴を一括で加工するレーザ加工方法において、
複数のレーザスポット(ビーム焦点)が被加工物Wの加工面上においてトレパニング軌道を描く(円形に移動する)ように、かつ、トレパニング軌跡の直径(トレパニング径)をDtとし、レーザスポットの直径(焦点径w)をDIとしたときに、Dt/DI=50/35又は35/35となる(0.9<Dt/DI<100を満たす)ように、マイクロレンズアレイ30と対象物Wとを相対移動させること。」

(3)周知の技術的事項4

さらに、上記第4の7(2)、8(2)及び9(2)にて、周知例文献A~C記載の技術的事項として示したように、次の事項は、本件出願前(原出願前)において周知であった(以下「周知の技術的事項4」という。)。

「レーザ加工により対象物の加工面上に孔を形成するために、レーザスポットが対象物の加工面上においてトレパニング軌道を描く際に、レーザスポットの中心点が1~10Hzのスピードでトレパニング軌道の直径の円周上を移動すること。」

(4)相違点1に係る本件発明の構成の容易想到性

ア 引用発明1は、対象物9の「内部」に複数の集光位置を形成するものではあるものの、引用文献1の段落【0002】~【0003】に背景技術として記載されるように、引用発明1によるレーザ加工方法は、対象物にレーザ光を照射して加工することを前提とするものであって、任意の集光位置を形成するレーザ加工にも適用し得ることは明らかである。してみると、引用発明1のレーザ加工方法において、上記(1)の周知の技術的事項1のように、レーザスポットがトレパニング軌道を描くことで対象物の加工面上に複数の孔を加工するように改変することは、当業者であれば適宜なし得たことである。

イ また、引用発明1と引用文献2記載の技術的事項は、いずれも複数のレーザスポットが形成されることで対象物を加工するレーザ加工方法である点で、技術分野が関連するとともに、機能・作用が共通し、さらに、引用発明1を対象物の加工面上に複数の孔を加工する用途とする場合に、所望の径の孔を加工したいとの課題が内在するといえる。

ウ 上記ア及びイを踏まえると、引用発明1のレーザ加工方法において、上記(2)の引用文献2記載の技術的事項に示されるトレパニング加工態様を適用し、複数のレーザスポットが対象物の加工面上においてトレパニング軌道を描くように、かつ、Dt/DI比がDt/DI=50/35又は35/35となるように、対物レンズと対象物とを相対移動させるようにすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

エ また、上記(3)にて周知の技術的事項4として示したように、レーザスポットが対象物の加工面上においてトレパニング軌道を描くことで、対象物の加工面上に孔を形成するにあたり、レーザスポットの中心点が1~10Hzのスピードでトレパニング軌道の直径の円周上を移動することは、本件出願前(原出願前)において、周知であったといえることから、引用発明1に引用文献2記載の技術的事項を適用した場合においても、当該周知の技術的事項4と同程度のスピードでレーザスポットの中心点を移動させることの困難性は見出せない。そして、本件発明において当該スピードを5Hzと限定されている点に関しても、本件明細書の段落【0038】には、

「移動機構14は、例えば、レーザスポットの中心点が5Hzのスピードで直径Dtの円周上を移動するように、対物レンズ13を移動させてよい。」

と記載されるのみで、当該5Hzのスピードに格別な作用・効果が存在するとはいえない。してみると、引用発明1に周知の技術的事項1及び引用文献2記載の技術的事項を適用した際に、周知の技術的事項4を踏まえて、レーザスポットの中心点を移動させるスピードを最適化させることにより、上記相違点1に係る本件発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

(5)数値範囲について

なお、本件発明においては、

0.9<Dt/DI<100

との数値範囲にて発明が特定されるところ、当該数値範囲は、

1.9DI<Dt+DI<101DI

と式変形が可能であって、レーザスポットの直径DIに対し、どの程度の直径(Dt+DI)の孔を対象物の加工面上に加工したいかに応じて、当業者が適宜決定可能な設計的事項であるといえ、また、その数値範囲の上限値及び下限値における臨界的意義も認められない。

また、レーザスポットの中心点が5Hzのスピードでトレパニング軌道の直径の円周上を移動することについては、上記(4)エのとおり、当該5Hzとの数値に格別な作用・効果が存在するともいえない。

2 相違点2について

(1)周知の技術的事項2

上記第4の3(2)及び4(2)にて、引用文献3~4記載の技術的事項として示したように、次の事項は、本件出願前(原出願前)において周知であった(以下「周知の技術的事項2」という。)。

「レーザ加工装置を用いて対象物を加工するレーザ加工方法において、対象物の加工面上に複数の孔を加工するために、波長が780[nm]~800[nm]であり、パルス幅が250[fs]以下であるフェムト秒レーザを採用すること。」

(2)相違点2に係る本件発明の構成の容易想到性

上記1(4)アのとおり、引用発明1のレーザ加工方法において、対象物の加工面上に集光位置を形成し複数の孔を加工するように改変することに何ら困難性はなく、また、引用発明1のレーザ光源10は、フェムト秒レーザ光源であることから、引用発明1におけるレーザ光源10として、上記周知の技術的事項2に示される波長及びパルス幅を適用し、上記相違点2に係る本件発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

(3)数値限定について

なお、本件発明においては、

波長が780[nm]又は800[nm]であり、パルス幅が250[fs]以下であり、

との数値限定にて発明が特定されるところ、波長については、引用文献3~4に示される数値範囲からみて、780[nm]又は800[nm]とすることに格別の創意は要せず、また、パルス幅についても、引用文献3~4に示される数値範囲と重複するものであって、250[fs]との上限値に臨界的意義も認められない。

3 相違点3について

(1)周知の技術的事項3

上記第4の5(2)及び6(2)にて、引用文献5~6記載の技術的事項として示したように、次の事項は、本件出願前(原出願前)において周知であった(以下「周知の技術的事項3」という。)。

「レーザ加工装置を用いて対象物を加工するレーザ加工方法において、対象物の加工面上に複数の孔を加工するにあたり、当該複数の孔を千鳥配置で配置すること。」

(2)相違点3に係る本件発明の構成の容易想到性

上記1(4)アのとおり、引用発明1のレーザ加工方法において、対象物の加工面上に集光位置を形成し複数の孔を加工するように改変することに何ら困難性はなく、また、その複数の孔の位置をどのように配置するかは、当業者が適宜決定可能な設計的事項であるといえるところ、引用発明1に上記周知の技術的事項3を適用し、空間光変調器30によって形成される複数の集光位置を、対象物9の加工面上に千鳥配置で配置することで、上記相違点3に係る本件発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

第7 請求人の意見書における主張について

1 請求人の主張

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請求人は、令和7年6月10日提出の意見書において、概略、次のように主張する。

(1)本件発明は、「前記相対移動させる工程は、前記レーザスポットの中心点が5Hzのスピードで前記トレパニング軌道の直径の円周上を移動するように、前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる」という技術的特徴を有することにより、本件発明は、レーザ加工を高速かつ高精度で行うことができる。

(2)引用文献2~4は、レーザスポットが加工面上においてトレパニング軌道を描くように、移動機構によって、光学系と対象物とを相対移動させることは開示するが、どのような速さでトレパニング軌道を描かせているかについては何ら開示していない。

(3)引用文献1~6のいずれも、本願発明の「前記相対移動させる工程は、前記レーザスポットの中心点が5Hzのスピードで前記トレパニング軌道の直径の円周上を移動するように、前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる」という技術的特徴を開示していないことから、たとえ当業者であっても、引用文献1~6に基づいて本件発明に容易に想到できるものではなく、本件発明の進歩性は、引用文献1~6によっては否定されない。

2 当審の判断

上記1の主張について検討する。

上記第6の1(3)及び(4)エにて説示したように、レーザスポットが対象物の加工面上においてトレパニング軌道を描くことで、対象物の加工面上に孔を形成するにあたり、レーザスポットの中心点が1~10Hzのスピードでトレパニング軌道の直径の円周上を移動することは、周知の技術的事項4として示したように、本件出願前(原出願前)において周知であったといえ、引用発明1に引用文献2記載の技術的事項を適用した場合においても、当該周知の技術的事項4と同程度のスピードでレーザスポットの中心点を移動させることに困難性は見出せない。

また、5Hzとのスピードに格別な作用・効果が存在するともいえないから、引用発明1に引用文献2記載の技術的事項を適用した際に、周知の技術的事項4を踏まえれば、上記1(1)にて主張する本件発明の技術的事項についても、当業者であれば容易に想到し得たものである。

第8 むすび

以上のとおり、本件発明は、引用発明1、引用文献2記載の技術的事項、及び周知の技術的事項1~4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2024-004025

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