特許拒絶査定不服審判
2024-006545
施工支援システム
- 審判番号
- 2024-006545
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-054763
- 請求日
- 2024年04月17日
- 審決日
- 2025年03月25日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】住友建機株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 審判長/審判官
- 審判長 殿川 雅也
- 審判官 門 良成
- 審判官 山本 一
- 分類
- P18 .561-Z (E02F) / P18 .55 -Z (E02F) / P18 .121-Z (E02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2020-54763「施工支援システム」拒絶査定不服審判事件〔令和3年10月7日出願公開、特開2021-155937〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年3月25日を出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 7月19日付け:拒絶理由通知書
同年 9月25日 :意見書、手続補正書の提出
同年10月10日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年12月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 1月16日付け:補正の却下の決定、拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 1月23日 :原査定の謄本の送達)
同年 4月17日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 5月27日付け:前置報告書
同年 7月 1日 :上申書の提出
第2 令和6年4月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年4月17日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和6年4月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであって、次の(1)に示す令和5年9月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1及び2の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
ショベルによって積み込まれる積載物を運搬する運搬車両の目標停止位置を算出する算出部と、
前記目標停止位置を前記運搬車両又は前記運搬車両内の携帯端末に向けて送信する通信装置と、
前記通信装置から受信する前記目標停止位置を表す図形を含み、前記ショベルと前記運搬車両との位置関係を示す画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部によって生成された画像を表示して前記ショベルの運転者に提示する表示装置と、を有する、
施工支援システム。
【請求項2】
前記目標停止位置は、前記ショベルのアタッチメントの姿勢に基づいて算出される、
請求項1に記載の施工支援システム。
【請求項3】
前記目標停止位置は、前記ショベルの放土可能範囲の内側境界線であり、前記ショベルから第1距離だけ離れた第1境界線と、前記放土可能範囲の外側境界線であり、前記ショベルから前記第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2境界線と、の間に設定される、
請求項2に記載の施工支援システム。
【請求項4】
前記アタッチメントは、前記ショベルの上部旋回体に回動可能に取り付けられたブームと、前記ブームの先端に回動可能に取り付けられたアームと、前記アームの先端に回動可能に取り付けられたエンドアタッチメントと、を有し、
前記内側境界線は、前記ブームを最も上昇させ、且つ、前記アームを最も閉じたときのアームトップピンの位置に基づいて導出され
前記外側境界線は、前記アームトップピンの高さが所定高さとなり、且つ、前記アームを最も開いたときの前記アームトップピンの位置に基づいて導出される、
請求項3に記載の施工支援システム。
【請求項5】
前記アームトップピンの高さが所定高さとなり、且つ、前記アームが鉛直方向下方を向くときの前記アームトップピンの位置に基づいて前記目標停止位置の目安線が導出され、
前記目標停止位置は、前記運搬車両の占有面積又は前記運搬車両の荷台の占有面積に対応する長方形の範囲であり、
前記算出部は、前記長方形の範囲の前記ショベルに近い側の短辺を、前記目安線よりも所定距離だけ前記ショベルに近い位置に設定される目標停止線又は前記目安線と一致する目標停止線に接するように位置付けることによって、前記目標停止位置を算出する、
請求項4に記載の施工支援システム。
【請求項6】
前記画像生成部は、前記ショベルの位置及び向きを表す図形、前記運搬車両を表す図形、前記運搬車両の前後軸を表す線分、前記ショベルの旋回軸に対応する画像上の点と前記運搬車両の中心点に対応する画像上の点とを繋ぐ線分、及び、前記目標停止位置を表す図形を含む前記画像を生成する、
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の施工支援システム。
【請求項7】
前記画像生成部は、前記ショベルの放土可能範囲の内側境界線を表す円、及び、前記放土可能範囲の外側境界線を表す円を含む前記画像を生成する、
請求項6に記載の施工支援システム。
【請求項8】
前記運搬車両の現在位置は、前記運搬車両に取り付けられた測位装置、又は、前記ショベルに取り付けられた空間認識装置によって取得される、
請求項1乃至7の何れかに記載の施工支援システム。
【請求項9】
前記ショベルと前記運搬車両との間の位置関係は、俯瞰図、前記運搬車両の後部に取り付けられた空間認識装置が撮像した画像、又は、前記ショベル及び前記運搬車両を上から撮像可能な空間認識装置が撮像した画像を用いて表される、
請求項1乃至8の何れかに記載の施工支援システム。
【請求項10】
前記ショベルのアタッチメントに基づいて設定される目標停止範囲に前記運搬車両が進入すると、前記運搬車両への積み下ろし動作を許可する、
請求項1乃至8の何れかに記載の施工支援システム。」
(2)本件補正後の請求項1及び2
「 【請求項1】
ショベルによって積み込まれる積載物を運搬する運搬車両の目標停止位置を前記ショベルのアタッチメントの姿勢に基づいて算出する算出部と、
前記目標停止位置を前記運搬車両又は前記運搬車両内の携帯端末に向けて送信する通信装置と、
前記通信装置から受信する前記目標停止位置を表す図形を含み、前記ショベルと前記運搬車両との位置関係を示す画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部によって生成された画像を表示して前記運搬車両の運転者に提示する表示装置と、を有し、
前記目標停止位置を表す図形は、前記ショベルの放土可能範囲の内側境界線を表す円であり、
前記ショベルと前記運搬車両との位置関係を示す画像は、前記運搬車両を表す図形と、前記ショベルの旋回軸に対応する画像上の点と前記運搬車両の中心点に対応する画像上の点とを繋ぐ線分と、を含む、
施工支援システム。
【請求項2】
前記内側境界線は、前記ショベルから第1距離だけ離れた第1境界線と、前記放土可能範囲の外側境界線であり、前記ショベルから前記第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2境界線と、の間に設定される、
請求項1に記載の施工支援システム。」
(3)請求項1についての補正内容
本件補正のうち請求項1についてする補正は、次のア~エに示す補正事項1から補正事項4までの補正事項からなる。
ア 補正事項1
補正前の「算出部」を、「前記ショベルのアタッチメントの姿勢に基づいて算出する」と限定すること。
イ 補正事項2
補正前の「ショベル」を「運搬車両」と補正することにより、「前記画像生成部によって生成された画像」を「表示」して「提示」する対象の「運転者」を、「運搬車両の運転者」とすること。
ウ 補正事項3
補正前の「目標停止位置を表す図形」が、「前記ショベルの放土可能範囲の内側境界線を表す円であ」ることの限定を行うこと。
エ 補正事項4
補正前の「前記通信装置から受信する前記目標停止位置を表す図形を含み、前記ショベルと前記運搬車両との位置関係を示す画像」について、「前記運搬車両を表す図形と、前記ショベルの旋回軸に対応する画像上の点と前記運搬車両の中心点に対応する画像上の点とを繋ぐ線分と、を含む」と限定すること。
(4)請求項2についての補正内容
本件補正のうち請求項2についてする補正は、次のアに示す補正事項5からなる。
ア 補正事項5
補正前の請求項3の「前記目標停止位置は、前記ショベルの放土可能範囲の内側境界線であり、前記ショベルから第1距離だけ離れた第1境界線と、前記放土可能範囲の外側境界線であり、前記ショベルから前記第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2境界線と、の間に設定される」の記載を請求項2に繰り上げ、「前記内側境界線は、前記ショベルから第1距離だけ離れた第1境界線と、前記放土可能範囲の外側境界線であり、前記ショベルから前記第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2境界線と、の間に設定される」と補正すること。
2 本件補正の適否についての合議体の判断
事案に鑑み、補正事項5について、検討する。
(1)新規事項の追加
ア 当初明細書等に記載された事項
本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを総称して「当初明細書等」という。)の補正事項5に関連する記載として、以下の記載がある(下線は合議体による。以下同様である。)。
「【0074】
次に、図3A~図3Cを参照し、目標停止位置について説明する。図3A~図3Cは、ショベル100及びダンプトラック200の右側面図である。図3Aは、放土可能範囲の内側境界線L11とショベル100の掘削アタッチメントの姿勢との関係の一例を示す。放土可能範囲は、ショベル100が土砂等を放土できる範囲(積み下ろしできる範囲)を意味する。ダンプトラック200の荷台が放土可能範囲内にあれば、ショベル100は、土砂等をダンプトラック200に積み込むことができる。内側境界線L11は、ショベル100に近い側の放土可能範囲の境界を表す仮想線である。図3Bは、目標停止位置の目安線L12とショベル100の掘削アタッチメントの姿勢との関係の一例を示す。目安線L12は、ダンプトラック200の運転者が目標停止位置にダンプトラック200を停止させる際の目安として利用される仮想線である。図3Cは、放土可能範囲の外側境界線L13とショベル100の掘削アタッチメントの姿勢との関係の一例を示す。外側境界線L13は、ショベル100から遠い側の放土可能範囲の境界を表す仮想線である。
【0075】
放土可能範囲の内側境界線L11は、図3Aに示すように、ブーム4を最も上昇させ、且つ、アーム5を最も閉じたときのアームトップピンPN1の位置を仮想平面SF1に投影することによって導き出される。具体的には、内側境界線L11は、上部旋回体3の旋回軸を表す仮想線L0と仮想平面SF1との交点Oを中心点とする半径D1の円の円周線である。半径D1は、仮想線L0と仮想線L1との間の距離である。仮想線L1は、アームトップピンPN1を通る、仮想線L0に平行な仮想線である。図3Aに示す例では、仮想平面SF1は、ショベル100が位置する地面GR1を表す仮想平面PL1に平行な仮想平面である。地面GR1は、典型的には、盛土によって形成された地面である。」
「【0079】
放土可能範囲の外側境界線L13は、図3Cに示すように、アームトップピンPN1の高さが所定高さH1となり、且つ、アーム5を最も開いたときのアームトップピンPN1の位置を仮想平面SF1に投影することによって導き出される。具体的には、外側境界線L13は、交点Oを中心点とする半径D3の円の円周線である。半径D3は、仮想線L0と仮想線L3との間の距離である。仮想線L3は、アームトップピンPN1を通る、仮想線L0に平行な仮想線である。」
「【0091】
図形G11は、内側境界線L11(図3A参照。)を表す円である。図形G12は、目標停止線を表す円である。図形G13は、外側境界線L13(図3C参照。)を表す円である。画像生成部210Aは、ショベル100から受信した目標停止位置に関する情報に基づいて図形G11~G13の表示位置を決定する。なお、図形G11及びG13は省略されてもよい。」
「【0111】
図形G5Aは、目標停止位置を表す図形である。図5に示す例では、図形G5Aは、単一の目標停止位置を提示するように生成されおり、図形G5AL及び図形G5ARを含む。図形G5ALは、目標停止位置の左側の境界線を表し、図形G5ARは、目標停止位置の右側の境界線を表す。」
「【0114】
図形G12Aは、目標停止線を表す仮想線分である。図5に示す例では、図形G12Aは、目標停止位置の後側の境界線を表す。また、図5に示す例では、図形G12Aは、目標停止線を地面GR2に投影することによって導き出される。」
「【0132】
目標停止位置は、望ましくは、ショベル100から第1距離だけ離れた第1境界線と、ショベル100から第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2境界線との間に設定される。図3A~図3Cに示す例では、目標停止位置は、ショベル100の旋回軸を中心点とする半径D1の円の円周線である放土可能範囲の内側境界線L11と、ショベル100の旋回軸を中心点とする、半径D1より大きい半径D3の円の円周線である放土可能範囲の外側境界線L13との間に設定される。内側境界線L11の半径D1は、ブーム4を最も上昇させ、且つ、アーム5を最も閉じたときのアームトップピンPN1と旋回軸との間の距離である。外側境界線L13の半径D3は、アームトップピンPN1の高さが所定高さH1となり、且つ、アーム5を最も開いたときのアームトップピンPN1と旋回軸との間の距離である。ショベル100は、内側境界線L11よりもショベル100に近いところにあるダンプトラック200の荷台部分、及び、外側境界線L13よりもショベル100から遠いところにあるダンプトラック200の荷台部分には土砂等を適切に放土できない。ショベル100は、バケット6内に土砂等が入った状態で、そのような荷台部分の真上まで土砂等を持っていくことができないためである。」
「【図3A】
[図:0001423217000001.jpg]
」
「【図3B】
[図:0001423217000002.jpg]
」
「【図3C】
[図:0001423217000003.jpg]
」
「【図4】
[図:0001423217000004.jpg]
」
「【図5】
[図:0001423217000005.jpg]
」
イ 補正事項5が新規事項を導入するものであることについて
(ア)補正事項5の「前記内側境界線は、前記ショベルから第1距離だけ離れた第1境界線と、前記放土可能範囲の外側境界線であり、前記ショベルから前記第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2境界線と、の間に設定される」との記載について、「間」とは一般的に二つのものに挟まれた部分や範囲のことを意味することから、上記記載は、「ショベルから第1距離だけ離れた第1境界線」と、「ショベルから前記第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2境界線」である「外側境界線」とに挟まれた範囲に、ショベルの放土可能範囲の「内側境界線」が設定されることを意味する、と認められる。
(イ)ここで、上記ア【0074】の「内側境界線L11は、ショベル100に近い側の放土可能範囲の境界を表す仮想線である。」との記載、【0075】の「放土可能範囲の内側境界線L11は、図3Aに示すように、ブーム4を最も上昇させ、且つ、アーム5を最も閉じたときのアームトップピンPN1の位置を仮想平面SF1に投影することによって導き出される。」との記載から、「放土可能範囲の内側境界線」が、放土可能範囲の最も内側に位置する境界線であることは、当初明細書等に記載されている。
(ウ)上記ア【0074】の「外側境界線L13は、ショベル100から遠い側の放土可能範囲の境界を表す仮想線である。」との記載、【0079】の「放土可能範囲の外側境界線L13は、図3Cに示すように、アームトップピンPN1の高さが所定高さH1となり、且つ、アーム5を最も開いたときのアームトップピンPN1の位置を仮想平面SF1に投影することによって導き出される。」との記載から、「放土可能範囲の外側境界線」が、放土可能範囲の最も外側に位置する境界線であることは、当初明細書等に記載されている。
(エ)上記ア【0132】の「目標停止位置は、望ましくは、ショベル100から第1距離だけ離れた第1境界線と、ショベル100から第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2境界線との間に設定される。図3A~図3Cに示す例では、目標停止位置は、ショベル100の旋回軸を中心点とする半径D1の円の円周線である放土可能範囲の内側境界線L11と、ショベル100の旋回軸を中心点とする、半径D1より大きい半径D3の円の円周線である放土可能範囲の外側境界線L13との間に設定される。」との記載から、「目標停止位置」が、ショベルから第1距離だけ離れた第1境界線と、ショベルから第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2境界線との間に設定されること、及び「目標停止位置」が、「放土可能範囲の内側境界線」と、「放土可能範囲の外側境界線」との間に設定されることは、当初明細書等に記載されている。
(オ)上記(イ)~(エ)をふまえると、「放土可能範囲の内側境界線」よりも内側には、何らの境界線は存在しないと認められる。
他の「境界線」について、上記ア【0111】に「図形G5ALは、目標停止位置の左側の境界線を表し、図形G5ARは、目標停止位置の右側の境界線を表す。」との記載、【0114】に「図形G12Aは、目標停止位置の後側の境界線を表す。」との記載があるものの、上記ア【図3A】、【図3B】、【図3C】、【図5】から、これらの境界線が「放土可能範囲の内側境界線」の外側に位置することは明らかである。
(カ)そうすると、「内側境界線」が、「前記ショベルから第1距離だけ離れた第1境界線」と、「前記放土可能範囲の外側境界線であり、前記ショベルから前記第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2境界線」と、の間に設定される事項は、当初明細書等の記載を総合しても、当業者が認識することはできず、当初明細書等の記載から自明であるといえるものではない。
(キ)以上検討のとおりであるから、請求項2について、「前記内側境界線は、前記ショベルから第1距離だけ離れた第1境界線と、前記放土可能範囲の外側境界線であり、前記ショベルから前記第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2境界線と、の間に設定される」と補正することを含む本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。
(ク)したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(2)請求人の主張について
ア 審判請求書の主張について
(ア)審判請求書の主張内容
請求人は、令和6年4月17日に提出された審判請求書の「(3-1)補正について」において、概略次のように主張している。
「この補正は・・・補正前の請求項3の記載「前記目標停止位置は、前記ショベルの放土可能範囲の内側境界線であり」・・・に基づいており、特許法第17条の2の規定に反するものではありません。」
「上記請求項1の補正に対応して、補正前の請求項2を削除し、請求項1に追加した補正前の請求項6及び7の発明特定事項を削除するとともに、補正前の請求項3-10の項番号を繰り上げて新しい請求項2-9としました。」
(イ)請求人の主張についての検討
補正前の請求項3の「前記目標停止位置は、前記ショベルの放土可能範囲の内側境界線であり、前記ショベルから第1距離だけ離れた第1境界線と、前記放土可能範囲の外側境界線であり、前記ショベルから前記第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2境界線と、の間に設定される」との記載は、上記(1)ア、イをふまえると、「目標停止位置」は、「前記ショベルの放土可能範囲の内側境界線であり、前記ショベルから第1距離だけ離れた第1境界線」と、「前記放土可能範囲の外側境界線であり、前記ショベルから前記第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2境界線」と、の間に設定されることを意味するものであって、「目標停止位置」が「前記ショベルの放土可能範囲の内側境界線」であることを意味するものではない。
したがって、請求項3の記載に基づくとの上記主張は採用できない。
また、上記(1)イのとおり、「前記内側境界線は、前記ショベルから第1距離だけ離れた第1境界線と、前記放土可能範囲の外側境界線であり、前記ショベルから前記第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2境界線と、の間に設定される」と補正することを含む本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものとはいえない。
イ 上申書における補正案について
(ア)補正案の内容
請求人は、令和6年7月1日に提出された上申書において、上記補正事項3に係る「目標停止位置を表す図形」を、「目標停止位置の目安線を表す図形」と補正し、この「目標停止位置の目安線を表す図形」が「前記ショベルの放土可能範囲の内側境界線と外側境界線との間に設定される前記目安線を表す円」であると補正する用意があることを主張している。
(イ)補正案についての検討
a 補正前の請求項1においては、「前記目標停止位置を表す図形は、前記ショベルの放土可能範囲の内側境界線を表す円」(=G11)であったところ、上記(ア)の補正案は、「前記目安線を表す図形は、前記ショベルの放土可能範囲の内側境界線と外側境界線との間に設定される前記目安線を表す円」(=G12)と、異なる対象に変更する補正である。
このような補正は、補正前の請求項における発明特定事項の一つ以上を、概念的に、より下位の発明特定事項とする補正とはいえないから、「請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの」とはいえない。
b さらに、上記補正案による請求項1についての補正が、「請求項の削除」、「誤記の訂正」及び「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」のいずれにも該当しないことは明らかである。
c そうすると、上記補正案による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法17条の2第5項の規定に違反するものである。
d したがって、上記補正案を受け入れたとしても、補正の却下の決定の結論に影響を及ぼすことはない。
(3)小括
以上検討のとおり、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、上記第2のとおり却下したので、本願の請求項1~10に係る発明は、令和5年9月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1(1)に摘記した本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由1(新規事項の追加)及び理由2(進歩性の欠如)のうち、本願発明に係るものの要旨は次のとおりである。
理由1(新規事項の追加)
令和5年9月25日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
理由2(進歩性の欠如)
本願発明は、その出願の日前に日本国内又は外国において発行された下記の引用文献3及び4に記載された発明に基いて、その出願の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献3 特開2019-60123号公報
引用文献4 国際公開第2014/119711号
3 新規事項の追加について
(1)請求項1についての補正内容
令和5年9月25日付け手続補正書でした補正のうち請求項1についてする補正は、次のアに示す補正事項6を含むものである。
ア 補正事項6
請求項1に係る発明が、「前記画像生成部によって生成された画像を表示して前記ショベルの運転者に提示する表示装置」を有するものとする補正
(2)令和5年9月25日付け手続補正書でした補正についての合議体の判断
補正事項6について、検討する。
ア 当初明細書等に記載された事項
当初明細書等の補正事項6に関連する記載として、以下の記載がある。
「【0030】
ショベル100の制御系は、吐出圧センサ28、操作圧センサ29、ショベルコントローラ30、比例弁31、表示装置40、入力装置42、音出力装置43、記憶装置47、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回状態センサS5、空間認識装置S6、測位装置P1、及び通信装置T1を含む。」
「【0039】
表示装置40は、画像を表示するように構成されている。図2に示す例では、表示装置40は、キャビン10内の操縦席に着座したオペレータから視認し易い位置に設けられ、ショベルコントローラ30による制御の下で各種画像を表示する。表示装置40は、CAN等の車載通信ネットワークを介してショベルコントローラ30に接続されていてもよく、一対一の専用線を介してショベルコントローラ30に接続されていてもよい。
【0040】
入力装置42は、制御装置に情報を入力するための装置である。図2に示す例では、入力装置42は、キャビン10内の操縦席に着座したオペレータから手が届く範囲に設けられ、オペレータによる入力を受け付け、その入力に応じた信号をショベルコントローラ30に出力する。入力装置42は、タッチパネル、操作レバーの先端に設けられるノブスイッチ、表示装置40の周囲に設置されるボタンスイッチ、レバー、トグル、又は回転ダイヤル等であってもよい。入力装置42は、入力に関する信号をショベルコントローラ30に向けて送信する。」
「【0051】
空間認識装置S6は、例えば、CCD又はCMOS等の撮像素子を有する、広角レンズが取り付けられた単眼カメラである。但し、空間認識装置S6は、ステレオカメラ又は距離画像カメラ等であってもよい。空間認識装置S6は、撮像した画像を表示装置40に向けて送信する。空間認識装置S6は、撮像した画像をショベルコントローラ30に向けて送信してもよい。
【0052】
空間認識装置S6は、物体検知装置として機能してもよい。この場合、空間認識装置S6は、ショベル100の周囲に存在する物体を検知してよい。検知対象の物体は、例えば、人、動物、車両、建設機械、建造物、又は穴等である。また、空間認識装置S6は、空間認識装置S6又はショベル100と検知された物体との間の距離を算出してもよい。空間認識装置S6は、ステレオカメラ、距離画像カメラ、又は赤外線カメラ等であってもよい。空間認識装置S6は、超音波センサ、ミリ波レーダ、レーザレーダ、LIDAR、又は赤外線センサ等であってもよい。この場合も、空間認識装置S6は、物体検知装置として機能してもよい。空間認識装置S6は、超音波センサ、ミリ波レーダ、レーザレーダ、LIDAR、又は赤外線センサ等である場合には、多数の信号(レーザ光等)を周囲に向けて発信し、その反射信号を受信することで、空間認識装置S6と物体との間の距離、及び、物体が存在する方向を検出してもよい。
【0053】
図2に示す例では、空間認識装置S6は、表示装置40に接続され、表示装置40を介してショベルコントローラ30に間接的に接続されている。但し、空間認識装置S6は、ショベルコントローラ30に直接的に接続されていてもよい。」
「【0057】
ダンプトラック200は、運搬車両の一例である。図1に示す例では、ダンプトラック200は、ショベル100によって積み込まれた積載物を運搬するための車両であり、主に、ダンプコントローラ210、表示装置220、通信装置230、測位装置240、及び空間認識装置250を有する。積載物は、例えば、土、砂利、砕石、アスファルト、又はコンクリート等(以下、「土砂等」とする。)である。
【0058】
ダンプコントローラ210は、CPU、揮発性記憶装置、不揮発性記憶装置、及び、各種入出力インターフェース等を含むコンピュータによって構成される。ダンプコントローラ210は、例えば、不揮発性記憶装置に格納される各種プログラムを実行することにより各種機能を実現する。ダンプコントローラ210は、表示装置220、通信装置230、測位装置240、及び空間認識装置250を制御するように構成されている。
【0059】
図2に示す例では、ダンプコントローラ210は、画像生成部210Aを有する。画像生成部210Aは、目標停止位置に関する画像を含む画像を生成するように構成されている。具体的には、画像生成部210Aは、通信装置230を介して、ショベルコントローラ30の算出部30Aが算出した目標停止位置に関する情報を受信する。そして、画像生成部210Aは、ダンプトラック200の運転者がダンプトラック200を目標停止位置に停止させることができるようにする画像を生成し、その画像を表示装置220に表示させる。画像生成部210Aによる画像の生成についてはその詳細が後述される。
【0060】
表示装置220は、画像を表示するように構成されている。図2に示す例では、表示装置220は、運転席に着座した運転者から視認し易い位置に設けられ、ダンプコントローラ210による制御の下で各種画像を表示する。表示装置220は、CAN等の車載通信ネットワークを介してダンプコントローラ210に接続されていてもよく、一対一の専用線を介してダンプコントローラ210に接続されていてもよい。」
「【0064】
管理装置300は、施工現場の外に設置される端末装置である。図2に示す例では、管理装置300は、施工現場の外にある管理センタ等に設置される据え置き型のコンピュータであり、主に、制御装置310、表示装置320、及び通信装置330を有する。但し、管理装置300は、ノートPC、タブレットPC、又はスマートフォン等の携帯端末であってもよい。
【0065】
制御装置310は、CPU、揮発性記憶装置、不揮発性記憶装置、及び、各種入出力インターフェース等を含むコンピュータによって構成される。制御装置310は、例えば、不揮発性記憶装置に格納される各種プログラムを実行することにより各種機能を実現する。制御装置310は、表示装置320及び通信装置330を制御するように構成されている。
【0066】
表示装置320は、画像を表示するように構成されている。図2に示す例では、表示装置320は、制御装置310による制御の下で各種画像を表示する。
【0067】
通信装置330は、移動体通信網、衛星通信網、近距離無線通信網、及びインターネット網等の少なくとも一つを含む通信ネットワークを通じて外部機器と通信するように構成されている。図2に示す例では、通信装置330は、LTE、4G、若しくは5G等の移動体通信規格に対応する移動体通信モジュール、Wi-Fi若しくはBluetooth等の近距離無線通信規格に対応する近距離無線通信モジュール、又は、衛星通信網に接続するための衛星通信モジュール等である。
【0068】
支援装置400は、携帯端末であり、例えば、施工現場にいる作業者等が携帯するノートPC、タブレットPC、又はスマートフォン等である。図2に示す例では、支援装置400は、ダンプトラック200の運転者が携帯するスマートフォンであり、主に、制御装置410、表示装置420、通信装置430、及び測位装置440を有する。制御装置410、表示装置420、及び通信装置430は、管理装置300における制御装置310、表示装置320、及び通信装置330と同様である。
【0069】
図2に示す例では、制御装置410は、ダンプコントローラ210と同様に、画像生成部410Aを有する。画像生成部410Aは、画像生成部210Aと同様に、目標停止位置に関する画像を含む画像を生成するように構成されている。具体的には、画像生成部410Aは、通信装置430を介して、ショベルコントローラ30の算出部30Aが算出した目標停止位置に関する情報を受信する。そして、画像生成部410Aは、ダンプトラック200の運転者がダンプトラック200を目標停止位置に停止させることができるようにする画像を生成し、その画像を表示装置420に表示させる。画像生成部410Aによる画像の生成についてはその詳細が後述される。」
「【0086】
目標停止位置に関する情報を受信したダンプコントローラ210の画像生成部210Aは、目標停止位置に関する画像を含む画像を生成する。そして、画像生成部210Aは、生成した画像を表示装置220に表示する。
【0087】
同様に、目標停止位置に関する情報を受信した制御装置410の画像生成部410Aは、目標停止位置に関する画像を含む画像を生成する。そして、画像生成部410Aは、生成した画像を表示装置420に表示する。」
イ 補正事項6が新規事項を導入するものであることについて
(ア)上記ア【0030】、【0039】、【0040】、【0051】~【0053】の記載から、ショベル100が表示装置40を備え、表示装置40は、空間認識装置Sが撮像した画像を表示することは、当初明細書等に記載されている。
(イ)上記ア【0057】~【0060】の記載から、ダンプトラック200が表示装置220を備え、表示装置220は、画像生成部210Aが生成した、ダンプトラック200の運転者がダンプトラック200を目標停止位置に停止させることができるようにする画像を表示することは、当初明細書等に記載されている。
(ウ)上記ア【0064】~【0067】の記載から、管理装置300が表示装置320を備え、表示装置320は、画像を表示することは、当初明細書等に記載されている。
(エ)上記ア【0068】、【0069】、【0086】、【0087】の記載から、ダンプトラック200の運転者が携帯するスマートフォンである支援装置400は、表示装置420を備え、表示装置420は、画像生成部410Aが生成した、ダンプトラック200の運転者がダンプトラック200を目標停止位置に停止させることができるようにする画像を表示することは、当初明細書等に記載されている。
(オ)上記(ア)~(エ)をふまえると、当初明細書等には、表示装置220、表示装置420が、ダンプトラック200の運転者がダンプトラック200を目標停止位置に停止させることができるようにする画像を表示することが記載されているものの、表示装置40、表示装置320が、ダンプトラック200の運転者がダンプトラック200を目標停止位置に停止させることができるようにする画像を表示することが記載されているとは認められない。
また、ダンプトラック200の運転者に画像が表示されているときに、当然にショベルの運転者にも同じ画像が表示されていることが、技術常識であるともいえない。
(カ)そうすると、「前記画像生成部によって生成された画像を表示して前記ショベルの運転者に提示する表示装置」は、当初明細書等の記載を総合しても、当業者が認識することはできず、当初明細書等の記載から自明であるといえるものではない。
(キ)以上検討のとおりであるから、請求項1について、「前記画像生成部によって生成された画像を表示して前記ショベルの運転者に提示する表示装置」を追加する補正をすることを含む令和5年9月25日付け手続補正書でした補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。
(ク)したがって、令和5年9月25日付け手続補正書でした補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(3)令和5年9月25日に提出された意見書の主張について
ア 請求人は、上記意見書において以下のように主張している。
「「表示装置」に関する記載は、段落[0059]-[0060]、[0066]、[0068]、図2の記載等に基づいており、特許法第17条の2の規定に反するものではありません。」
イ 請求人の主張についての検討
上記(2)のとおりであるから、上記アの主張はその判断を左右するものではなく、採用することはできない。
(4)小括
以上のとおり、令和5年9月25日付け手続補正書でした補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
4 進歩性の欠如について
(1)引用文献、引用発明等
ア 引用文献3
引用文献3には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、露天掘り鉱山などで行われる積込機による運搬機への掘削積込作業における運搬機の停車位置方向を案内するシステムに関する。」
(イ)「【0012】
(実施例)
本発明の一実施形態を、図1乃至図14を用いて説明する。なお、図1乃至図14においては、積込機として1台の油圧ショベルに適用し、運搬機として1台のダンプトラックに適用した場合を実施例として、以下に実施例に係る運搬機の停車位置方向案内システムを詳細に説明する。」
(ウ)「【0020】
図3において、管理センタ300は、油圧ショベル100とダンプトラック200の間の相対位置を演算する相対位置演算装置301、油圧ショベル100とダンプトラック200の間の相対姿勢を演算する相対姿勢演算装置302、掘削積込作業の生産性評価値を演算する生産性評価値演算装置303、鉱山内の油圧ショベル100やダンプトラック200を管理する運行管理部304、掘削積込作業の作業条件(例えば、油圧ショベル100の操作者のID、作業場所)を取得する作業条件取得装置305、前述の相対位置と相対姿勢と生産性評価値と作業条件を記録する記録装置306、ダンプトラック200の目標停車位置方向を決定する停車位置方向決定装置307および油圧ショベル100やダンプトラック200などの機械と情報を送受信するデータ転送装置501Cを備えている。」
(エ)「【0024】
<システム構成>
図3において、本実施例の運搬機の停車位置方向案内システムは、鉱山内の油圧ショベル100に搭載された作業量演算装置110および作業時間計測装置111と、鉱山内のダンプトラック200に搭載された出力装置としてのモニタ制御装置206およびモニタ207と、管理センタ300に設置された相対位置演算装置301、相対姿勢演算装置302、生産性評価値演算装置303、作業条件取得装置305、記録装置306および停車位置方向決定装置307を主に備えている。また、本実施例の運搬機の停車位置方向案内システムは、油圧ショベル100に搭載されたデータ転送装置501A、ダンプトラック200に搭載されたデータ転送装置501B、および管理センタ300に設置されたデータ転送装置501Cも備えている。すなわち、本実施例においては、データ転送装置501A、データ転送装置501B、およびデータ転送装置501Cから、油圧ショベル100、ダンプトラック200、および管理センタ300を互いにデータ通信可能に接続する通信部が構成されている。」
(オ)「【0033】
管理センタ300に設置された停車位置方向決定装置307で決定されたダンプトラック200の目標停車位置に関するデータおよび目標停車方向に関するデータは、データ転送装置501B,501Cを介してダンプトラック200のモニタ制御装置206に送られる。停車位置方向決定装置307の演算期間設定部308で設定された演算期間に関するデータおよび記録装置306に記録されたデータは、頻度演算部309に送られる。頻度演算部309の演算結果は優先度演算部310に送られる。優先度演算部310で演算された演算結果に基づき、停車位置方向決定装置307においてダンプトラック200の目標停車位置および目標停車方向が決定される。」
(カ)「【0060】
<停車位置方向決定装置>
図7は、本実施例における停車位置方向決定装置307で行われる処理の流れを表すフローチャートである。停車位置方向決定装置307は、所定の周期(例えば1~10秒程度)で図7に示した処理を実行する。すなわち、停車位置方向決定装置307は、ステップS407からステップS412の処理を行うことにより、ダンプトラック200の目標停車位置および目標停車方向を決定することができる。」
(キ)「【0066】
ステップS412では、データ構造311Dで表現されたステップS411の演算結果に基づき、ダンプトラック200の目標停車位置および目標停車方向を決定する。本実施例では、ステップS411で演算されたデータ構造311Dの中で優先度が最大となる相対位置および相対姿勢がダンプトラック200の目標停車位置および目標停車方向の演算に用いられる。すなわち、ステップS412では、ダンプトラック200の目標停車位置および目標停車方向は、油圧ショベル100の対地位置と前述の優先度が最大となる相対位置および相対姿勢から演算される。本実施例では、油圧ショベル100の対地位置を中心に所定の角度間隔(例えば45度程度)でダンプトラック200の目標停車位置および目標停車方向の候補を演算する。そして演算されたダンプトラック200の目標停車位置および目標停車方向の候補に関するデータは、データ転送装置501B,501Cを介してモニタ制御装置206へ送られる。
【0067】
<モニタ制御装置>
モニタ制御装置206は、停車位置方向決定装置307で決定されたダンプトラック200の目標停車位置および目標停車方向の候補とダンプトラック200の対地位置および対地姿勢に基づき、モニタ207に表示するための画像データを演算する。図14は、本実施例における運搬機のモニタに表示される表示画面の一例を示す図である。図14に示すように、モニタ207に表示する画像は、鉱山内の図面208の上において現在のダンプトラック200の状態209および停車位置方向決定装置307で決定された目標停車位置方向の候補210を配置したものとなる。
【0068】
モニタ制御装置206は、決められた時間間隔(例えば1秒から0.1秒程度)でダンプトラック200の対地位置および対地姿勢を取得する。また、同周期にて停車位置方向決定装置307の出力が監視され、目標停車位置および目標停車方向の出力があった場合は、受信した目標停車位置および目標停車方向が記録装置306に記録され、次に停車位置方向決定装置307から出力がされるまでこの受信した値(目標停車位置および目標停車方向)を保持する。そして、同周期にて画像データの更新が行われ、最新のダンプトラック200の状態209および生産性評価値に基づくダンプトラック200の目標停車位置方向の候補210が画像データに反映される。この画像データは、更新がなされる毎にモニタ207へ出力される。」
(ク)「【0070】
図14より、ダンプトラック200の操作者は、モニタ207に描画されたダンプトラック200の現在の状態209と目標停車位置および目標停車方向の複数の候補210を確認する。また、ダンプトラック200の操作者は、現在の現場の状況に適した生産性評価値の高い目標停車位置・目標停車方向を複数の候補210のなかから選択し、選択した目標停車位置・目標停車方向に合わせてダンプトラック200を停車することになる。」
(ケ)「【図14】
[図:0001423217000006.jpg]
」
(コ)引用文献3の記載から認定できる事項
a 上記(エ)【0024】の「図3において、本実施例の運搬機の停車位置方向案内システムは、・・・管理センタ300に設置された相対位置演算装置301、相対姿勢演算装置302、生産性評価値演算装置303、作業条件取得装置305、記録装置306および停車位置方向決定装置307を主に備えている。」との記載から、運搬機の停車位置方向案内システムが、管理センタ300を備えるものであるといえる。
b 上記(キ)【0066】の「本実施例では、油圧ショベル100の対地位置を中心に所定の角度間隔(例えば45度程度)でダンプトラック200の目標停車位置および目標停車方向の候補を演算する。」との記載、【0067】の「図14は、本実施例における運搬機のモニタに表示される表示画面の一例を示す図である。図14に示すように、モニタ207に表示する画像は、鉱山内の図面208の上において現在のダンプトラック200の状態209および停車位置方向決定装置307で決定された目標停車位置方向の候補210を配置したものとなる。」との記載から、ダンプトラック200の目標停車位置の複数の候補210は、油圧ショベル100の対地位置を中心とするものであるといえる。
c 上記(キ)【0068】の「最新のダンプトラック200の状態209および生産性評価値に基づくダンプトラック200の目標停車位置方向の候補210が画像データに反映される。この画像データは、更新がなされる毎にモニタ207へ出力される。」との記載をふまえると、上記(ケ)【図14】から、ダンプトラック200の目標停車位置の複数の候補210と、ダンプトラック200の現在位置とを表示する画像が看取できる。
また、【図14】の「現在位置」との記載から、「ダンプトラック200の現在位置」は、「ダンプトラック200の状態209」に対応するものであると認められる。
(サ)上記(ア)~(コ)から、引用文献3には下記の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「油圧ショベル100によるダンプトラック200への掘削積込作業におけるダンプトラック200の停車位置方向を案内する停車位置方向案内システムであって、
ダンプトラック200に搭載された出力装置としてのモニタ制御装置206およびモニタ207と、管理センタ300を備え、
管理センタ300に設置された停車位置方向決定装置307で決定されたダンプトラック200の目標停車位置に関するデータおよび目標停車方向に関するデータは、データ転送装置501Cを介してダンプトラック200のモニタ制御装置206に送られ、
モニタ制御装置206は、停車位置方向決定装置307で決定されたダンプトラック200の目標停車位置および目標停車方向の候補とダンプトラック200の対地位置および対地姿勢に基づき、モニタ207に表示するための画像データを演算し、
モニタ制御装置206により、最新のダンプトラック200の状態209および生産性評価値に基づくダンプトラック200の目標停車位置の候補210が画像データに反映され、この画像データは、更新がなされる毎にモニタ207へ出力され、
モニタ207に表示する画像は、図面208の上においてダンプトラック200の現在位置、及び停車位置方向決定装置307で決定された、ダンプトラック200の目標停車位置の複数の候補210を表示したものであり、
ダンプトラック200の目標停車位置の複数の候補210は、油圧ショベル100の対地位置を中心とするものである、
停車位置方向案内システム。」
イ 引用文献4
上記引用文献4には、次の事項が記載されている。
(ア)「[0001] 本発明は、積込機械と運搬機械との間の相対位置決めを最適な位置および方向となるようにガイドする支援を行う運搬機械の位置調整システムに関するものである。」
(イ)「[0015] 以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下において、積込機械としては油圧ショベルを適用し、運搬機械としてはダンプトラックを適用している。ただし、これらには限定されない。積込機械として油圧ショベル以外を使用してもよいし、運搬機械としてダンプトラック以外を使用してもよい。また、鉱山を作業現場として、作業現場から鉱石の採掘を行う例について説明するが、本実施形態は鉱山の採掘に限定されるものではない。」
(ウ)「[0024] 図3は、油圧ショベル1とダンプトラック2との相対位置を調整するためのシステム構成を示している。まず、油圧ショベル1について説明する。油圧ショベル1は、2つのGPSアンテナ21A、21BとGPS受信機22と映像処理部23と第1ディスプレイ24と第1無線通信機25と第1無線アンテナ26と操作部27とを備え、さらに前述したカメラ14を備えている。図中には、全地球測位衛星システムを構成する複数のGPS衛星28が含まれる。」
(エ)「[0027] 映像処理部23はカメラ14が撮影している映像をカメラ映像として入力される。映像処理部23は、このカメラ映像に対して停止目標位置の情報を重畳する。ここでは、停止目標位置の情報を矩形の点線により囲まれたガイドラインGとするが、矩形の点線以外の手法により停止目標位置の情報を重畳してもよい。例えば、停止目標位置を点滅させるようにしてもよい。ガイドラインGは、積込作業を行うときのダンプトラック2の最適な位置を示している。」
(オ)「[0029] 図3にも示すように、映像処理部23はカメラ14のカメラ映像に対してガイドラインGを重畳する画像処理を行い、ガイドラインGが重畳されたカメラ映像を第1ディスプレイ24に出力する。この第1ディスプレイ24に重畳映像が表示される。映像処理部23はガイドラインGが重畳されたカメラ映像である重畳映像を第1無線通信機25に出力する。第1無線通信機25は第1無線アンテナ26を用いて、重畳映像をダンプトラック2に無線通信する。」
(カ)「[0031] 次に、ダンプトラック2について説明する。ダンプトラック2は、第2無線アンテナ31と第2無線通信機32とコントロールユニット33と第2ディスプレイ34と入力装置35とを備えている。第2無線アンテナ31は第1無線アンテナ26と無線通信を行う。これにより、第1無線通信機25が通信した重畳映像は、第2無線アンテナ31から第2無線通信機32に入力される。第2無線通信機32は受信した重畳映像をコントロールユニット33に出力する。コントロールユニット33は第2ディスプレイ34に重畳映像を出力する。」
(キ)「[0041] 次に、図5を参照して、ダンプトラック2の位置調整について説明する。まず、図4に示した処理により、油圧ショベル1の映像処理部23は、ガイドラインGを重畳したカメラ映像である重畳映像を生成する(ステップS11)。油圧ショベル1からの移動要求に基づいて1台のダンプトラック2が油圧ショベル1に向けて移動する、すなわち停止目標位置に進入する。ダンプトラック2のオペレータは、停止目標位置にダンプトラック2を停止させるように操作を行う。」
(ク)「[0044] 第1無線アンテナ26から無線通信された重畳映像は、ダンプトラック2の第2無線アンテナ31で受信されて、第2無線通信機32に入力される(ステップS17)。そして、第2無線通信機32からコントロールユニット33に重畳映像が入力されると、コントロールユニット33は第2ディスプレイ34にこの重畳映像を出力する。これにより、第2ディスプレイ34に重畳映像が表示される(ステップS18)。
[0045] この重畳映像は油圧ショベル1の映像処理部23が画像処理を行った映像と同ーであり、油圧ショベル1の第1ディスプレイ24に表示される映像と同ーである。すなわち、ガイドラインGが含まれている重畳映像である。油圧ショベル1の旋回体11に設けたカメラ14は所定の撮像周期で視野範囲の映像を取得する。この撮像周期ごとにガイドラインGを含むカメラ映像を無線通信することで、第2ディスプレイ34に重畳映像を動画として表示することができる。」
(ケ)「[0047] そして、この映像にはガイドラインGが重畳されている。ダンプトラック2のオペレータはカメラ映像に重畳されているガイドラインGを指標として、ダンプトラック2を走行(後進)させて、ダンプトラック2が停止目標位置と一致するように操作を行う。このとき、ダンプトラック2がカメラ14の視野範囲内に入ると、ダンプトラック2の第2ディスプレイ34および油圧ショベル1の第1ディスプレイ24にダンプトラック2が表示される。」
(コ)「[図3]
[図:0001423217000007.jpg]
」
(サ)「[図6]
[図:0001423217000008.jpg]
」
(シ)引用文献4の記載から認定できる事項
上記(キ)[0041]の「油圧ショベル1の映像処理部23は、ガイドラインGを重畳したカメラ映像である重畳映像を生成する」との記載、上記(ケ)[0047]の「ダンプトラック2がカメラ14の視野範囲内に入ると、ダンプトラック2の第2ディスプレイ34および油圧ショベル1の第1ディスプレイ24にダンプトラック2が表示される。」との記載、及び上記(サ)[図6]から、ダンプトラック2の第2ディスプレイ34および油圧ショベル1の第1ディスプレイ24に、ガイドラインGが重畳されたカメラ画像であって、油圧ショベル1、ダンプトラック2、及びガイドラインGの画像が表示されると認められる。
(ス)上記(ア)~(シ)から、引用文献4には下記の技術事項(以下「引用文献4技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「油圧ショベル1とダンプトラック2との間の相対位置決めを最適な位置および方向となるようにガイドする支援を行う運搬機械の位置調整システムであって、
油圧ショベル1は、第1ディスプレイ24を備え、
ダンプトラック2は、第2ディスプレイ34を備え、
ダンプトラック2の第2ディスプレイ34および油圧ショベル1の第1ディスプレイ24に、停止目標位置の情報であるガイドラインGが重畳されたカメラ画像であって、油圧ショベル1、ダンプトラック2、及びガイドラインGの画像が表示される、
運搬機械の位置調整システム。」
(2)対比
ア 本願発明と引用発明3とを対比すると、後者の「油圧ショベル100」、「ダンプトラック200」、「目標停車位置」、「データ転送装置501C」、「モニタ制御装置206」、及び「モニタ207」は、それぞれ、前者の「ショベル」、「運搬車両」、「目標停止位置」、「通信装置」、「画像生成部」、及び「表示装置」に相当する。
イ 後者の「ダンプトラック200」は、「油圧ショベル100」による「掘削積込作業」が行われるものであり、また、積み込まれた積載物を運搬することは自明であるから、前者の「運搬車両」と、後者の「ダンプトラック200」とは、「ショベルによって積み込まれる積載物を運搬する」ものである点で一致する。
ウ 後者の「停車位置方向決定装置307」は、「ダンプトラック200の目標停車位置に関するデータ」を「決定」するのであるから、前者の「算出部」に相当する。
そして、前者の「算出部」と、後者の「停車位置方向決定装置307」とは、「運搬車両の目標停止位置を算出する」ものである点で一致する。
エ 後者の「データ転送装置501C」は、「ダンプトラック200の目標停車位置に関するデータ」を「ダンプトラック200のモニタ制御装置206」に送るものであるから、前者の「通信装置」と、後者の「データ転送装置501C」とは、「目標停止位置を前記運搬車両に向けて送信する」ものである点で一致する。
オ 後者の「モニタ207」に表示する「目標停車位置方向の候補210」は、「画像」であることから何らかの形状を有することは明らかである。
そうすると、後者の「目標停車位置方向の候補210」は、前者の「前記目標停止位置を表す図形」に相当する。
カ 後者の「モニタ207に表示するための画像データ」が、「ダンプトラック200の対地位置および対地姿勢」に基づき演算されること、及び後者の「モニタ制御装置206」により、「最新のダンプトラック200の状態209および生産性評価値に基づくダンプトラック200の目標停車位置の候補210が画像データに反映され、この画像データは、更新がなされる毎にモニタ207へ出力され」ることから、少なくとも「ダンプトラック200の対地位置」の変更に伴って「モニタ207に表示するための画像データ」が変更されるといえる。
そして、後者の「モニタ207に表示する画像」は、「ダンプトラック200の現在位置」、及び「ダンプトラック200の目標停車位置方向の複数の候補210」を表示したものであることからすると、「モニタ207」は、最新の「ダンプトラック200の現在位置」と「ダンプトラック200の目標停車位置方向の複数の候補210」との配置を表示するものといえる。
キ 後者の「ダンプトラック200の目標停車位置方向の複数の候補210」は、「油圧ショベル100の対地位置を中心とする」ものであることから、上記カをふまえると、後者の「モニタ207に表示する画像」は、最新の「ダンプトラック200の現在位置」と、「ダンプトラック200の目標停車位置方向の複数の候補210」の中心に位置する「油圧ショベル100の対地位置」との配置を表示するものともいえる。
ク 後者の「ダンプトラック200の目標停車位置に関するデータ」は、「データ転送装置501C」を介して「ダンプトラック200」の「モニタ制御装置206」に送られること、後者の「モニタ制御装置206」は、ダンプトラック200の目標停車位置および目標停車方向の候補とダンプトラック200の対地位置および対地姿勢に基づき、「モニタ207」に表示するための画像データを演算するものであること、及び上記オ、カ、キをふまえると、前者の「画像形成部」と、後者の「モニタ制御装置206」とは、「前記通信装置から受信する前記目標停止位置を表す図形を含み、前記ショベルと前記運搬車両との位置関係を示す画像を生成する」ものである点で一致する。
ケ 後者の「モニタ207」は、「モニタ制御装置206」で演算した「画像データ」による画像を表示するものであること、後者の「モニタ207に表示する画像」は、「モニタ207」を備える「ダンプトラック200」のドライバーにより確認されることは明らかであること、及び上記カをふまえると、前者の「表示装置」と、後者の「モニタ207」とは、「前記画像生成部によって生成された画像を表示して運転者に提示する」ものである点で一致する。
コ 後者の「停車位置方向案内システム」は、「油圧ショベル100によるダンプトラック200への掘削積込作業におけるダンプトラック200の停車位置方向を案内する」ものであるから、前者の「施工支援システム」に相当する。
サ 後者の「停車位置方向案内システム」は、「停車位置方向決定装置307」と「データ転送装置501C」が設置される「管理センタ300」、「モニタ制御装置206」、及び「モニタ207」を備えるものであることから、前者の「施工支援システム」と、後者の「停車位置方向案内システム」とは、「算出部」、「通信部」、「画像形成部」、及び「表示装置」とを有するものである点で一致する。
したがって、本願発明と引用発明3とは、
「ショベルによって積み込まれる積載物を運搬する運搬車両の目標停止位置を算出する算出部と、
前記目標停止位置を前記運搬車両に向けて送信する通信装置と、
前記通信装置から受信する前記目標停止位置を表す図形を含み、前記ショベルと前記運搬車両との位置関係を示す画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部によって生成された画像を表示して運転者に提示する表示装置と、を有する、
施工支援システム。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本願発明の「表示装置」が、「画像を表示して」「ショベルの運転者に提示する」ものであるのに対して、引用発明3は「ダンプトラック200」の「モニタ207」に画像を表示してダンプトラック200の運転者に画像を提示する点。
(3)当審の判断
ア 上記相違点1について検討する。
(ア)引用文献4技術事項の「ダンプトラック2の第2ディスプレイ34および油圧ショベル1の第1ディスプレイ24に」表示される「油圧ショベル1、ダンプトラック2、及びガイドラインGの画像」は、「停止目標位置の情報であるガイドラインGが重畳されたカメラ画像」であることから、「油圧ショベル1」と「ダンプトラック2」の配置を表現していることは明らかであるので、本願発明の「目標停止位置を表す図形を含み、前記ショベルと前記運搬車両との位置関係を示す画像」に相当する。
(イ)引用文献4技術事項の「油圧ショベル1、ダンプトラック2、及びガイドラインGの画像」は、「ダンプトラック2の第2ディスプレイ34および油圧ショベル1の第1ディスプレイ24に」表示されること、及び「ダンプトラック2」及び「油圧ショベル1」のドライバーにより確認されることは明らかであることから、引用文献4技術事項の「油圧ショベル1の第1ディスプレイ24」と、本願発明の「表示装置」とは、「画像を表示して前記ショベルの運転者に提示する」ものである点で一致する。
(ウ)上記(ア)及び(イ)より、引用文献4技術事項は、上記相違点1を充足するといえる。
そして、引用発明3と引用文献4技術事項は、運搬機械の位置調整に関する技術分野に属している点で一致している。
また、引用発明3と引用文献4技術事項は、共に油圧ショベル、ダンプトラック、及び停止目標位置の画像が表示されるものであって、運搬機械の位置調整を行うにあたり、積込機械のドライバーと運搬機械のドライバーの双方が位置調整の確認を行うことにより位置調整の精度を上げることができることは、例示するまでもなく周知の課題であるところ、引用発明3の「モニタ207に表示する画像」を「油圧ショベル100」でも確認するために、引用文献4技術事項を適用する動機付けはあるといえる。
そうすると、引用発明3の「モニタ207」に、引用文献4技術事項の「「ダンプトラック2の第2ディスプレイ34および油圧ショベル1の第1ディスプレイ24に」「画像が表示される」」技術を適用して、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
イ 本願発明の効果も、引用発明3、及び引用文献4技術事項から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
(4)令和6年4月17日に提出された審判請求書の主張について
ア 請求人は、審判請求書において以下のように主張している。
「引用文献1-4には、本願発明の前記構成(e)のように、前記目標停止位置を表す図形は、前記ショベルの放土可能範囲の内側境界線を表す円であること、及び、本願発明の前記構成(f)のように、前記ショベルと前記運搬車両との位置関係を示す画像は、前記運搬車両を表す図形と、前記ショベルの旋回軸に対応する画像上の点と前記運搬車両の中心点に対応する画像上の点とを繋ぐ線分と、を含むこと、に関する記載も示唆もありません。」
イ 請求人の主張についての検討
請求人の主張は、前記第2において却下した本件補正後の請求項1に係る発明に関するものであって、本願発明の有する構成に基づくものではない。
そうすると、上記アの主張は上記(3)の判断を左右するものではなく、採用することはできない。
(5)令和5年12月15日に提出された意見書の主張について
ア 請求人は、上記意見書において以下のように主張している。
「少なくとも本願発明1における上記構成(a),(e)は、引用文献1-4のいずれにも開示されておらず、引用文献1-4に開示された内容に基づいて当業者が容易に想到できたものではありません。」
イ 請求人の主張についての検討
請求人の主張は、令和6年1月16日付けで却下された請求項1に係る発明に関するものであって、本願発明の有する構成に基づくものではない。
そうすると、上記アの主張は上記(3)の判断を左右するものではなく、採用することはできない。
(6)小括
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明3及び引用文献4技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
第4 むすび
以上のとおり、令和5年9月25日付け手続補正書でした補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-006545