特許拒絶査定不服審判
2024-005318
流量センサおよび流体流測定を調整するための方法
- 審判番号
- 2024-005318
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-522917
- 請求日
- 2024年03月29日
- 審決日
- 2025年09月24日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
- 【請求人代理人】弁理士法人谷・阿部特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 小島 寛史
- 審判官 井海田 隆
- 審判官 喜々津 徳胤
- 分類
- P18 .121-Z (G01F) / P18 .575-Z (G01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-522917「流量センサおよび流体流測定を調整するための方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月 9日国際公開、WO2020/009921、令和 3年11月25日国内公表、特表2021-532375〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)6月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年7月6日、米国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年 3月 8日 :翻訳文の提出
令和4年12月26日付け:拒絶理由通知書
令和5年 4月 7日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月20日付け:拒絶理由通知書
同年10月25日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 1月24日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月30日 :原査定の謄本の送達)
同年 3月29日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 6月28日付け:前置報告書
同年 9月 3日 :上申書の提出
以下、2018年(平成30年)7月6日を「優先日」という。
第2 令和6年3月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年3月29日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年3月29日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年10月25日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
流体流路、
前記流体流路内の流体の熱拡散率および前記流体流路内の前記流体の粘度のうちの少なくとも1つの第1の測定値を決定するように構成された第1のセンサ、
前記流体流路内の前記流体の流体流速および前記流体流路内の前記流体の体積流量のうちの少なくとも1つの第2の測定値を決定するように構成された第2のセンサ、および
前記第1の測定値に基づいて前記第2の測定値を調整するように構成された少なくとも1つのプロセッサ、
を含み、
前記第2のセンサは、前記流体流路の流体流方向において前記第1のセンサから離間され、前記第1のセンサは、前記流体流路に平行な方向に延在する第1の抵抗性温度検出器層と第2の抵抗性温度検出器層との間に前記流体流路に平行な方向に延在する抵抗性ヒータ層を含み、および前記第2のセンサは、前記流体流路に垂直な前記方向に延在する別の第1の抵抗性温度検出器層と別の第2の抵抗性温度検出器層との間に前記流体流路に垂直な方向に延在する別の抵抗性ヒータ層を含み、前記第1のセンサにおける前記抵抗性ヒータ層と前記第1の抵抗性温度検出器層と前記第2の抵抗性温度検出器層の間の間隔は、前記第2のセンサにおける前記別の抵抗性ヒータ層と前記別の第1の抵抗性温度検出器層と前記別の第2の抵抗性温度検出器層の間の間隔よりも小さいことを特徴とする流量センサ。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
流体流路、
前記流体流路内の流体の熱拡散率および前記流体流路内の前記流体の粘度のうちの少なくとも1つの第1の測定値を決定するように構成された第1のセンサ、
前記流体流路内の前記流体の流体流速および前記流体流路内の前記流体の体積流量のうちの少なくとも1つの第2の測定値を決定するように構成された第2のセンサ、および
前記第1の測定値に基づいて前記第2の測定値を調整するように構成された少なくとも1つのプロセッサ、
を含み、
前記第2のセンサは、前記流体流路の流体流方向において前記第1のセンサから離間され、前記第1のセンサは、前記流体流路に平行な方向に延在する第1の抵抗性温度検出器層と第2の抵抗性温度検出器層との間に前記流体流路に平行な方向に延在する抵抗性ヒータ層を含み、および前記第2のセンサは、前記流体流路に垂直な前記方向に延在する別の第1の抵抗性温度検出器層と別の第2の抵抗性温度検出器層との間に前記流体流路に垂直な方向に延在する別の抵抗性ヒータ層を含み、前記流体流路の上流に位置する前記第1のセンサにおける前記抵抗性ヒータ層と前記第1の抵抗性温度検出器層と前記第2の抵抗性温度検出器層の間の間隔は、前記流体流路の下流に位置する前記第2のセンサにおける前記別の抵抗性ヒータ層と前記別の第1の抵抗性温度検出器層と前記別の第2の抵抗性温度検出器層の間の間隔よりも小さいことを特徴とする流量センサ。」
2 補正の目的
本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された「第1のセンサ」について、「前記流体流路の上流に位置する」と限定するとともに、同じく本件補正前の請求項1に記載された「第2のセンサ」について、「前記流体流路の下流に位置する」と限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に示した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Dまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1B】に部材名を記入したものを掲載する。
<本件補正発明の分説>
A 流体流路、
B 前記流体流路内の流体の熱拡散率および前記流体流路内の前記流体の粘度のうちの少なくとも1つの第1の測定値を決定するように構成された第1のセンサ、
C 前記流体流路内の前記流体の流体流速および前記流体流路内の前記流体の体積流量のうちの少なくとも1つの第2の測定値を決定するように構成された第2のセンサ、
および
D 前記第1の測定値に基づいて前記第2の測定値を調整するように構成された少なくとも1つのプロセッサ、
を含み、
C2 前記第2のセンサは、前記流体流路の流体流方向において前記第1のセンサから離間され、
B1 前記第1のセンサは、前記流体流路に平行な方向に延在する第1の抵抗性温度検出器層と第2の抵抗性温度検出器層との間に前記流体流路に平行な方向に延在する抵抗性ヒータ層を含み、および
C1 前記第2のセンサは、前記流体流路に垂直な前記方向に延在する別の第1の抵抗性温度検出器層と別の第2の抵抗性温度検出器層との間に前記流体流路に垂直な方向に延在する別の抵抗性ヒータ層を含み、
BC 前記流体流路の上流に位置する前記第1のセンサにおける前記抵抗性ヒータ層と前記第1の抵抗性温度検出器層と前記第2の抵抗性温度検出器層の間の間隔は、前記流体流路の下流に位置する前記第2のセンサにおける前記別の抵抗性ヒータ層と前記別の第1の抵抗性温度検出器層と前記別の第2の抵抗性温度検出器層の間の間隔よりも小さい
ことを特徴とする
X 流量センサ。
<参考図>
[図:0001432510000001.jpg]
イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は当合議体による。
「【0002】
1. 技術分野
本開示は、概して、流量センサに関連し、および1つの特定の実施形態において、流量センサおよび流体流測定を調整するための方法に関連する。
【0003】
2. 技術的な考慮事項
流体(例えば、薬物流体(medication fluids)、静脈療法流体(IV therapy fluids)、血液など)の熱特性および粘度は大幅に変動する。熱特性および粘度の変動は、熱量測定(calorimetric)またはデュアルモード熱量測定/熱飛行時間流量センサの精度に影響を与える。例えば、熱量測定またはデュアルモード熱量測定/熱飛行時間流量センサは、典型的には、特定の流体を用いる測定のために較正され、およびそれのために流量センサが較正されていない異なる流体を用いる測定のための熱量測定またはデュアルモード熱量測定/熱飛行時間流量センサの使用は、流量センサによって測定される流体流速(fluid flow velocity)および/または体積流量(volumetric flow rate)の精度に影響を与える。
…(中略)…
【発明の概要】
【0006】
したがって、改善されたシステム、デバイス、製品、装置、および/または 流体流測定を調整するための方法が提供される。
…(中略)…
【0056】
このようにして、熱特性測定および/または粘度測定は、熱量測定および/または熱飛行時間流速測定(flow velocity measurements)を調整または修正するために使用され、これは、流量センサが較正されているものとは異なる熱拡散率および/または粘度を持つ流体の流速および/または体積流量を流量センサがより正確に決定することを可能にする。したがって、本発明の実施形態または態様は、流体の分配される量(例えば、患者への薬物流体の分配される体積など)のより正確なリアルタイム測定を可能にし得る。
【0057】
ここで図1Aを参照して、図1Aは、本明細書中に記載されるデバイス、システム、および/または方法が実施されてもよい例の環境100の図である。図1に示されるように、環境100は、流量センサ102、流体識別システム110、ネットワーク112、およびリモートシステム114を含む。流量センサ102、流体識別システム110、およびリモートシステム114は、有線接続、無線接続、または有線接続および無線接続の組み合わせを介して、相互接続(例えば、通信するための接続を確立するなど)してもよい。
【0058】
流量センサ102は、流体流路104、第1のセンサ106、および第2のセンサ108を含んでいてもよい。流体流路104は、流体のためのフローチャネルを画定する壁を含んでいてもよい。例えば、流体流路104は、半径Rを有する円筒形流路、正方形断面を持つ流路、長方形断面を持つ流路、および/または同様のものを含んでいてもよい。いくつかの非限定的な実施形態または態様において、第1のセンサ106および/または第2のセンサ108は、流体流路104内に位置する。例えば、第1のセンサ106および/または第2のセンサ108は、流体流路104のフローチャネルを画定する壁の内面に(例えば、フローチャネルの縁などで)接続され得る。第1のセンサ106および第2のセンサ108は、有線接続、無線接続、または有線接続および無線接続の組み合わせを介して相互接続(例えば、通信するための接続を確立するなど)することができる。
【0059】
いくつかの非限定的な実施形態または態様において、第2のセンサ108は、流体流路104の流体流方向において第1のセンサ106から離間される。例えば、図1Aに示されるような流体が流体流路104内を左から右に流れる流量センサ102の非限定的な実施形態または態様の実施において、第2のセンサ108は、第1のセンサ106の右に位置していてもよい。例として、流体流路104内の流体は、流体流路104内の流体が第2のセンサ108の上をまたは第2のセンサ108を通り越して流れる前に、第1のセンサ106の上をまたは第1のセンサ106を通り越して流れてもよい。
【0060】
第1のセンサ106は、ネットワーク112を介して第2のセンサ108、流体識別システム110、および/またはリモートシステム114から情報を受け取ることおよび/または第2のセンサ108、流体識別システム110、および/またはリモートシステム114に情報を通信することができる1つまたは複数のデバイスを含んでいてもよい。いくつかの非限定的な実施形態または態様において、第1のセンサ106は、流体流路104内の流体の熱拡散率および流体流路104内の流体の粘度のうちの少なくとも1つの第1の測定値を決定するように構成される。
【0061】
いくつかの非限定的な実施形態または態様において、第1のセンサ106は、流体流路104内の流体の熱拡散率を測定するように構成される熱拡散率測定センサまたはチップを含む。例えば、図1Bに示されるような流量センサ102の非限定的な実施形態または態様の実施において、第1のセンサ106は、流体流路104に平行な方向に延在する第1の抵抗性温度検出器(RTD)層またはサーモパイルと第2のRTD層またはサーモパイルとの間に流体流路104に平行な方向に延在する抵抗性ヒータ(resistive heater)(RH)層(例えば、第1のRTD層および第2のRTD層から等しく間隔が開けられたRH層など)を含んでいてもよい。例として、第1のセンサ106は、RH層をパルスし(pulse)、変調し(modulate)、または連続的に操作し、およびRTD層またはサーモパイルを用いて温度を感知し(sense)または測定して、流体流路104内の流体の熱拡散率を含む第1の測定値(例えば、熱拡散率を決定するように解釈される信号を提供するための、など)を決定し得る。そのような例において、第1のセンサ106は、第1のセンサ106(例えば、第1のセンサ106のRH層ならびに第1および第2のRTD層、など)が流体の流れに平行に配向されていることに起因する流体流路104内部の実質的に無流(no-flow)の環境に位置していてもよく、これは、流体流路104内の流体の流れが第1のセンサ106の第1および第2のRTD層またはサーモパイルを越えてまたは通り越して熱パルスを運ぶ前に、RH層からの熱パルス(heat pulse)が第1および第2のRTD層またはサーモパイル(thermophiles)に移動しおよび/または第1および第2のRTD層またはサーモパイル(thermophiles)によって検出されることを可能にする。
【0062】
いくつかの非限定的な実施形態または態様において、第1のセンサ106は、それぞれその全体が参照によって本明細書に組み込まれる非特許文献1、非特許文献2、および非特許文献3に記載されるような非定常熱線(transient hot wire)熱伝導率測定センサ、ブリッジベースのマイクロマシン化センサ、非定常ホットストリップセンサ、および/または同様のもののような流体流路104内の流体の熱拡散率を測定するように構成されるインサイチュ(in situ)流体熱特性測定装置を含む。
【0063】
いくつかの非限定的な実施形態または態様において、第1のセンサ106は、流体流路104内の流体の粘度を測定するように構成される粘度測定センサまたはチップを含む。例えば、第1のセンサ106は、その全内容が参照によって本明細書に組み込まれる非特許文献4に記載されるようなMEMS粘度測定センサまたはチップを含んでいてもよい。
【0064】
第2のセンサ108は、ネットワーク112を介して第1のセンサ106、流体識別システム110、および/またはリモートシステム114から情報を受信することおよび/または第1のセンサ106、流体識別システム110、および/またはリモートシステム114に情報を通信することができる1つまたは複数のデバイスを含んでいてもよい。いくつかの非限定的な実施形態または態様において、第2のセンサ108は、流体流路104内の流体の流体流速および流体流路104内の流体の体積流量のうちの少なくとも1つの第2の測定値を決定するように構成される。いくつかの非限定的な実施形態または態様において、第2のセンサ108は、流体の第1のタイプのための第2の測定値を決定するように較正され、および流体流路104内の流体は、流体の第1のタイプとは異なる流体の第2のタイプを含む。いくつかの非限定的な実施形態または態様において、第2のセンサ108は、第1のセンサ106からの第1の測定値を受信し、および第1の測定値に基づいて第2の測定値を調整するように構成される。いくつかの非限定的な実施形態または態様において、第1のセンサ106は、第2のセンサ108からの第2の測定値を受信し、および第1の測定値に基づいて第2の測定値を調整するように構成される。
【0065】
いくつかの非限定的な実施形態または態様において、第2のセンサ108は、熱量測定またはデュアルモード熱量測定/熱飛行時間センサまたはチップを含む。例えば、第2のセンサ108は、そのそれぞれの全内容が参照によって本明細書に組み込まれるHuangらの特許文献1に記載されるMEMS飛行時間熱質量流量計および/または非特許文献5に記載されるMEMSデバイスを含んでいてもよい。例として、再び図1Bを参照して、第2のセンサ108は、流体流路104に垂直な方向に延在する第1のRTD層またはサーモパイルと第2のRTD層またはサーモパイルとの間に流体流路104に垂直な方向に延在するRH層を含んでいてもよい。そのような例において、第2のセンサ108の較正によって、第2のセンサ108は、RH層をパルスし、変調し、または連続的に操作し、およびRTD層またはサーモパイルを用いて温度変化を感知しまたは測定して、流体流路104内の流体の流体流速および流体流路104内の流体の体積流量のうちの少なくとも1つの第2の測定値を決定することができる(例えば、流体流速および/または体積流量等を決定するように解釈される信号を提供するため)。
【0066】
いくつかの非限定的な実施形態または態様において、図1Bに示されるように、第1のセンサ106におけるRH層と第1のRTD層と第2のRTD層の間の間隔は、第2のセンサ108におけるRH層と第1のRTD層と第2のRTD層の間の間隔よりも小さい。例えば、熱量測定モード流量測定技術機能(flow measurement technology functions)のための本明細書に使用されるような熱量測定またはデュアルモード熱量測定/熱飛行時間センサまたはチップの使用は、これらの熱量測定センサまたはチップが本明細書に記載されるような実質的にゼロの流量において熱拡散率を測定するのに十分な感度を有することを示す。例として、熱拡散率測定チップとして(例えば、第1のセンサ106として)構成されまたは実装される熱量測定またはデュアルモード熱量測定/熱飛行時間センサまたはチップは、流速測定チップとして(例えば、第2のセンサ108として)構成されまたは実装される熱量測定またはデュアルモード熱量測定/熱飛行時間センサまたはチップよりも、RH層とRTD層またはサーモパイルとの間に大幅により小さい間隔を有していてもよい。
【0067】
流体識別システム110は、ネットワーク112を介して第1のセンサ106、第2のセンサ108、および/またはリモートシステム114から情報を受信することおよび/または第1のセンサ106、第2のセンサ108、および/またはリモートシステム114に情報を通信することができる1つまたは複数のデバイスを含んでいてもよい。いくつかの非限定的な実施形態または態様において、流体識別システム110は、流体流路104内の流体のタイプを識別しおよび流体流路104内の流体のタイプの識別を提供するように構成される流体識別センサを含む。いくつかの非限定的な実施形態または態様において、流体識別システム110は、流量センサ102内に組み込まれるかまたは実装される。例えば、流量センサ102は、流体流路104内の流体のタイプを識別しおよび流体流路104内の流体のタイプの識別を提供するように構成される流体識別センサを含んでいてもよい。
…(中略)…
【0082】
いくつかの非限定的な実施形態または態様において、第1のセンサ106は、熱量測定またはデュアルモード熱量測定/ 熱飛行時間センサまたはチップの較正のための関連パラメータである、流体流路104内の流体の熱拡散率を測定する。流体の熱拡散率は、以下の方程式(1)によって定義されてもよい。
α=k/ρ×Cp (1)
式中、k=熱伝導率(例えば、W/m K)、ρ=密度(例えば、kg/m3)、およびCp=比熱容量(例えば、J/kg K)である。例えば、熱流量センサの精度に与える熱拡散率の変動の影響のモデルは、その全内容が参照によって本明細書に組み込まれる非特許文献6(以降、「Bindels」)に記載される。」
(2) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開2001-355800号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(ウ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
(ア) 特許請求の範囲
「【請求項1】 ガス供給源と、該ガス供給源からのガスを分岐して供給するガス供給配管と、該ガス供給配管の末端からガスを供給される複数の末端バルブとからなるガス供給装置であって、
上記各末端バルブの上流または下流に、ガスの流量及び種類を検知可能なセンサを有する流量計をそれぞれ配置したことを特徴とするガス供給装置。
…(中略)…
【請求項5】 前記ガスの流量及び種類を検知可能なセンサは、
前記ガス供給配管を流れるガスを加熱するヒータと、上記ヒータに対してガスの上流側に配置され、ガスの温度を検出して第1温度検出信号を出力する上流側温度センサと、上記ヒータに対してガスの下流側に配置され、ガスの温度を検出して第2温度検出信号を出力する下流側温度センサと、上記ヒータ、上記上流側温度センサ及び上記下流側温度センサを支持する支持基板とからなる第1のフローセンサと、前記ガス供給配管を流れるガスを加熱するヒータと、上記ヒータの両側にガスの流れ方向と略直交方向に配置され、ガスの温度を検出して第3温度検出信号を出力する第1及び/または第2の温度センサと、上記ヒータ及び上記第1及び/または第2の温度センサを支持する支持基板とからなる第2のフローセンサと、を含む2チップタイプフローセンサからなることを特徴とする請求項1または2記載のガス供給装置。
【請求項6】 前記流量計は、前記2チップタイプフローセンサ内の前記上流側温度センサからの前記第1温度検出信号と前記下流側温度センサからの前記第2温度検出信号との差信号に基づき前記ガスの流量を算出する流量算出手段と、前記2チップタイプフローセンサ内の前記第1及び第2の温度センサからの前記第3温度検出信号に基づき前記ガスの物性値を算出する流体物性値算出手段と、前記流体物性値算出手段で算出された前記ガスの物性値に基づき前記流量算出手段で算出されたガスの流量を補正する流量補正手段と、を備えることを特徴とする請求項5記載のガス供給装置。」
(イ) 【0001】~【0015】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガス供給装置に関し、特に、病院、半導体工場、化学プラント等の施設での使用に適するガス供給装置に関する。
…(中略)…
【0014】そこで、本発明の目的は、上述の課題に鑑みて、ガス種別に、ガス置換を効率良く実行できかつガス消費量を把握できるガス供給装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記した目的に鑑みて、請求項1記載の発明のガス供給装置は、ガス供給源と、該ガス供給源からのガスを分岐して供給するガス供給配管と、該ガス供給配管の末端からガスを供給される複数の末端バルブとからなるガス供給装置であって、上記各末端バルブの上流または下流に、ガスの流量及び種類を検知可能なセンサを有する流量計をそれぞれ配置したことを特徴とする。」
(ウ) 【0056】
「【0056】このように、ガスの流れ方向に対して直交する方向に配置された右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13が、ガスの物性値を検出することにより、ガスの熱伝導性を計測することになる。ガスの流速が零であるときには、ガスにより熱の伝わる速度は、熱伝導率と熱拡散、比熱等によって決定される熱拡散定数(ガスの物性値の一つ)による。流速が零であるときには、右側サーモパイル11、左側サーモパイル13とマイクロヒータ4との温度差によって熱拡散定数が求められる。」
(エ) 【0074】~【0075】
「【0074】たとえば、上述の実施の形態では、ガス流量及び種類を検知可能なセンサとして1チップタイプのマイクロフローセンサ1を備えた流量計を用いているが、これに代えて、図9乃至図13に示すように、ガスの流量及び種類を検知可能な2チップタイプのセンサを有する流量計を用いても良い。
【0075】図9は、流量計に用いられるガスの流量及び種類を検知可能な2チップタイプのセンサとしてのマイクロフローセンサの概略構成を説明する略図である。2チップのマイクロフローセンサ101及び101′は、図9中断面で示すガス流路17の内壁に配設される。」
(オ) 【図9】
「【図9】
[図:0001432510000002.jpg]
」
(カ) 【0076】~【0078】
「【0076】一方のマイクロフローセンサ101は、Si基板102上に形成された、マイクロヒータ104と、マイクロヒータ104の下流側に形成された下流側サーモパイル105と、マイクロヒータ104の上流側に形成された上流側サーモパイル108とを備え、ガス流量の検知に役立つ。
【0077】他方のマイクロフローセンサ101′は、Si基板102′上に形成された、マイクロヒータ104′と、マイクロヒータ104′の両側にガスの流れ方向(X方向)と略直交方向に配置され、ガスの物性値を検出して温度検出信号を出力する第1及び第2のサーモパイル105′,108′とを備え、ガス種の検知に役立つ。
【0078】図10及び図11は、図9のマイクロフローセンサの構成図及び断面図である。マイクロフローセンサ101は、ガスの流れ方向(実線矢印Pから実線矢印Qへの方向)に対して配置され、Si基板102、ダイアフラム103、ダイアフラム103上に形成された白金等からなるマイクロヒータ104、マイクロヒータ104の下流側でダイアフラム103上に形成された下流側サーモパイル105、マイクロヒータ104に図示しない電源から駆動電流を供給する電源端子106A,6B、マイクロヒータ104の上端でダイアフラム103上に形成された上流側サーモパイル108、上流側サーモパイル108から出力される第1温度検出信号を出力する第1出力端子109A,109B、下流側サーモパイル105から出力される第2温度検出信号を出力する第2出力端子107A,107Bを備えている。下
流側サーモパイル5と上流側サーモパイル8は、温度センサを構成する。」
(キ) 【図10】及び【図11】
「【図10】
[図:0001432510000003.jpg]
【図11】
[図:0001432510000004.jpg]
」
(ク) 【0079】~【0088】
「【0079】上流側サーモパイル108及び下流側サーモパイル105は、熱電対から構成されている。この熱電対は、p++-Si及びAlにより構成され、冷接点と温接点とを有し、熱を検出し、冷接点と温接点との温度
差から熱起電力が発生することにより、温度検出信号を出力するようになっている。
【0080】また、図11に示すように、Si基板102には、ダイアフラム103が形成されており、このダイアフラム103には、マイクロヒータ104、上流側サーモパイル108及び下流側サーモパイル105のそれぞれの温接点が形成されている。
【0081】また、マイクロフローセンサ101′は、マイクロフローセンサ101と同一の構造を有しているが、図10及び図11では、各部の参照符号として、Si基板102′、ダイアフラム103′、マイクロヒータ104′、マイクロヒータ104の両側に形成された第1及び第2のサーモパイル105′及び108′のみを示している。マイクロフローセンサ101′は、図10において、ガスの流れ方向(点線矢印Pから点線矢印Qへの方向)に対して配置され、第1及び第2のサーモパイル105′及び108′は、温度センサを構成する。
【0082】このように構成されたマイクロフローセンサ101によれば、マイクロヒータ104が、外部からの駆動電流により加熱を開始すると、マイクロヒータ104から発生した熱は、ガスを媒体として、下流側サーモパイル105と上流側サーモパイル108のそれぞれの温接点に伝達される。それぞれのサーモパイルの冷接点は、Si基体(Si基板)上にあるので、基体温度になっており、それぞれの温接点は、ダイアフラム上にあるので、伝達された熱により加熱され、Si基体温度より温度が上昇する。そして、それぞれのサーモパイルは、温接点と冷接点の温度差より熱起電カ(当合議体注:「力」の誤り)を発生し、温度検出信号を出力する。
【0083】ガスを媒体として伝達される熱は、ガスの熱拡散効果とPからQに向かって流れるガスの流速との相乗効果によって、それぞれのサーモパイルに伝達される。すなわち、流速がない場合には、熱拡散によって上流側サーモパイル8と下流側サーモパイル105に均等に伝達され、上流側サーモパイル108からの第1温度検出信号と下流側サーモパイル105からの第2温度検出信号の差信号は、零になる。
【0084】一方、ガスに流速が発生すると、流速によって上流側サーモパイル108(当合議体注:「上流側サーモパイル108」は「下流側サーモパイル105」の誤記と認められる。)の温接点に伝達される熱量が多くなり、前記第2温度検出信号と前記第1温度検出信号との差信号は流速に応じた正値になる。
【0085】一方、マイクロフローセンサ101′によれば、マイクロヒータ104′が外部からの駆動電流により加熱を開始すると、マイクロヒータ104′から発生した熱は、ガスの流速の影響を受けずにガスの熱拡散効果のみによって、マイクロヒータ104′の両側にガスの流れ方向と略直交方向に配置された第1のサーモパイル105′及び108′に伝達される。このため、第1のサーモパイル105′の起電力により出力される第1の温度検出信号、及び/または第2のサーモパイル108′の起電力により出力される第2の温度検出信号に基づき、熱伝導と熱拡散、比熱等によって決定される熱拡散定数等のガスの物性値を算出することができるようになる。
【0086】次に、前述したマイクロフローセンサ101及び101′を用い、ガスの種類や組成が変化した場合であっても、これに関係なく常にガスの流量を精度良く計測することができる流量計について説明する。
【0087】図12は、図9、10及び11のマイクロフローセンサを用いた流量計の構成ブロック図である。この流量計は、マイクロフローセンサ101内の下流側サーモパイル105からの温度検出信号と、マイクロフローセンサ101内の上流側サーモパイル108からの温度検出信号との差信号を増幅する差動アンプ33と、マイクロフローセンサ101′内の第1のサーモパイル105′からの温度検出信号を増幅するアンプ35aと、マイクロフローセンサ101′内の第2のサーモパイル108′からの温度検出信号を増幅するアンプ35bと、マイクロコンピュータ40とを備えて構成される。
【0088】マイクロコンピュータ40は、アンプ35aからの温度検出信号とアンプ35bからの温度検出信号とを加算する加算部45と、差動アンプ33で得られた差信号を加算部45の出力する加算信号により除する除算部47と、この除算部47の出力する除算信号に基づきガスの流量を算出する流量算出部41と、加算部45の出力する加算信号に基づきガスの熱伝導率や比熱、粘性、密度等の物性値を算出する流体物性値算出部43とを備えて構成される。」
(ケ) 【図12】
「【図12】
[図:0001432510000005.jpg]
」
(コ) 【0089】~【0093】
「【0089】次に、図13に示すフローチャートを参照して、図12の流量計により実現される流量計測方法を説明する。
【0090】まず、外部からのパルス信号による駆動電流によりマイクロヒータ104及び104′を加熱すると(ステップS31)、下流側サーモパイル105及び上流側サーモパイル108から、それぞれ温度検出信号が出力される(ステップS33)。
【0091】次に、差動アンプ33は、下流側サーモパイル105からの温度検出信号と上流側サーモパイル108からの温度検出信号との差信号を増幅する(ステップS35)。
【0092】そして、加算部45は、アンプ35aで増幅された第1のサーモパイル105′からの温度検出信号とアンプ35bで増幅された第2のサーモパイル108′からの温度検出信号とを加算して加算信号を得る(ステップS37)。次に、除算部47は、ステップS35で得られた増幅後の差信号をステップS37で得られた加算信号で除して除算信号を得る(ステップS39)。
【0093】続いて、流量算出部41は、ステップS39で得られた除算信号に基づきガスの正確な流量を算出する(ステップS41)。さらに、流体物性値算出部43は、ステップS37で得られた加算信号とステップS41で算出したガスの正確な流量に基づき、ガスの熱伝導率や比熱、粘性、密度等のガスの物性値を算出する(ステップS43)。」
(サ) 【図13】
「【図13】
[図:0001432510000006.jpg]
」
(シ) 【0094】
「【0094】このように、図9乃至図12に示す流量計によれば、マイクロフローセンサ101により、ガスの流量を計測することができると共に、マイクロフローセンサ101′により、ガスの物性値を算出することができ、したがってガスの種類を特定することができる。」
イ 図面から読み取れる事項の認定
上記ア(オ)の【図9】からは、「マイクロフローセンサ101が、マイクロフローセンサ101′と、ガスの流れる方向と垂直な方向に離間して配置され、いずれのセンサもガス流路17のガスの流れ方向においては、ほぼ同じ位置に配置されていること」が見て取れる(以下「認定事項A」という。)。
ウ 引用発明の認定
前記イにおいて認定した事項及び前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、【図9】~【図13】に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所等を括弧内に示した。
<引用発明>
「ガス流路17、(【0075】)
マイクロヒータ104′が外部からの駆動電流により加熱を開始すると、マイクロヒータ104′から発生した熱は、ガスの流速の影響を受けずにガスの熱拡散効果のみによって、マイクロヒータ104′の両側にガスの流れ方向と略直交方向に配置された第1のサーモパイル105′及び108′に伝達され、第1のサーモパイル105′の起電力により出力される第1の温度検出信号、及び/または第2のサーモパイル108′の起電力により出力される第2の温度検出信号に基づき、熱伝導率と熱拡散、比熱等によって決定される熱拡散定数等のガスの物性値を算出するマイクロフローセンサ101′、(【0056】、【0085】)
マイクロヒータ104が、外部からの駆動電流により加熱を開始すると、マイクロヒータ104から発生した熱は、ガスを媒体として、下流側サーモパイル105と上流側サーモパイル108のそれぞれの温接点に伝達され、それぞれのサーモパイルの冷接点は、Si基体(Si基板)上にあるので、基体温度になっており、それぞれの温接点は、ダイアフラム上にあるので、伝達された熱により加熱され、Si基体温度より温度が上昇し、それぞれのサーモパイルは、温接点と冷接点の温度差より熱起電力を発生することによって、温度検出信号を出力し、ガスに流速が発生すると、流速によって下流側サーモパイル105の温接点に伝達される熱量が多くなり、下流側サーモパイル105からの前記第2温度検出信号と上流側サーモパイル108からの前記第1温度検出信号との差信号によって、流速に応じた正値を得るマイクロフローセンサ101、(【0082】~【0084】)
および
マイクロフローセンサ101内の下流側サーモパイル105からの温度検出信号と、マイクロフローセンサ101内の上流側サーモパイル108からの温度検出信号との差信号を差動アンプ33で増幅して差信号を得て、マイクロフローセンサ101′内の第1のサーモパイル105′からの温度検出信号と、マイクロフローセンサ101′内の第2のサーモパイル108′からの温度検出信号を、それぞれアンプ35a、35bで増幅し、加算部で加算して加算信号を得て、差信号を加算信号により除して得られた除算信号に基づきガスの流量を算出するマイクロコンピュータ40、(【0087】~【0088】)
を含み、
マイクロフローセンサ101が、マイクロフローセンサ101′と、ガスの流れる方向と垂直な方向に離間して配置され、いずれのセンサもガス流路17のガスの流れ方向においては、ほぼ同じ位置に配置され、(認定事項A)
マイクロフローセンサ101′は、Si基板102′上に形成された、マイクロヒータ104′と、マイクロヒータ104′の両側にガスの流れ方向(X方向)と略直交方向に配置され、ガスの物性値を検出して温度検出信号を出力する第1及び第2のサーモパイル105′,108′とを含み(【0077】)、
マイクロフローセンサ101は、Si基板102上に形成された、マイクロヒータ104と、マイクロヒータ104の下流側に形成された下流側サーモパイル105と、マイクロヒータ104の上流側に形成された上流側サーモパイル108とを備え(【0076】)、
マイクロフローセンサ101′は、マイクロフローセンサ101とは、同一の構造を有している(【0081】)、
2チップタイプのセンサを有する流量計。(【0074】)」
(3) 引用文献2、3、5及び6の記載事項、並びに、周知技術及び技術常識の認定
ア 引用文献3、5に記載された事項及び周知技術1の認定
(ア) 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開2017-129470号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
a 【0001】~【0020】
「【0001】
本発明は、流量測定装置、流量の測定方法及び流量測定プログラムに関する。
…(中略)…
【0020】
熱拡散率が異なる測定対象流体について、流量の測定の精度を向上させることができる。」
b 【0042】~【0047】
「【0042】
また、物性値検出部12は、特性値取得処理を実行する(S2)。特性値取得処理の詳細は、図10を用いて説明する。
【0043】
図10は、特性値取得処理の一例を示す処理フロー図である。制御部13の特性値算出部132は、物性値検出部12の物性値検出部内加熱部123に、第1の温度で加熱させる(図10:S11)。その後、物性値検出部12の物性値検出部内第1温度検出部121及び物性値検出部内第2温度検出部122は、第1の温度を検出する(S12)。本ステップは、例えば制御部13による制御に基づいて行うようにしてもよい。測定対象流体を伝わる熱の速度は、熱伝導率、熱拡散率、比熱などの物性値によって決定される。また、物性値検出部内加熱部123と、物性値検出部内第1温度検出部121および物性値検出部内第2温度検出部122との温度差を検出することによって、熱伝導率を求めることができる。例えば、物性値検出部内加熱部123と、物性値検出部内第1温度検出部121および物性値検出部内第2温度検出部122との温度差が大きいほど、熱伝導率は小さくなる。このような性質を利用して、本ステップでは、測定対象流体の流れ方向と直交する方向に配置された物性値検出部内第1温度検出部121および物性値検出部内第2温度検出部122によって測定対象流体の温度を検出する。
【0044】
次に、制御部13の特性値算出部132は、物性値検出部12の物性値検出部内加熱部123に、第2の温度で加熱させる(S13)。その後、物性値検出部12の物性値検出部内第1温度検出部121及び物性値検出部内第2温度検出部122は、第2の温度を検出する(S14)。本ステップも、例えば制御部13による制御に基づいて行うようにしてもよい。このようにして、物性値検出部内加熱部123の温度変化の前後において物性値検出部内第1温度検出部121及び物性値検出部内第2温度検出部122により検出された温度を示す値が取得される。
【0045】
また、特性値算出部132は、検出された温度を用いて特性値を算出する(S15)。本ステップでは、センサ感度比を求める。センサ感度比とは、基準となる気体を流した場合のセンサ出力値に対する、所定の気体を流した場合のセンサ出力値の比であり、熱拡散率を表す特性値である。センサ感度比αは、下記の式(1)で求められる。
α = β × ΔT ・・・(1)
βは所定の係数である。また、ΔTは、物性値検出部内加熱部123の温度変化の前後において物性値検出部内第1温度検出部121及び物性値検出部内第2温度検出部122により出力された検出値の差分である。
【0046】
その後、図9の処理に戻り、制御部13は、特性値を用いて、流量算出部が算出した測定対象流体の流量を補正する(図9:S3)。具体的には、制御部13は、下記の式(2)を用いて、補正後の流量を算出する。
補正後の出力 = 流量算出部の出力 × α ・・・(2)
【0047】
本実施形態では、ヒータの温度を変化させた際にヒートパイルで検出される温度の変化量(ΔT)を用いることで、測定対象流体の熱拡散率を検出することができるようになる。ここで、熱式のフローセンサが出力する流量は、熱拡散率と相関がある。したがって、本実施形態に係る流量の補正処理によれば、あらゆる気体について適切に補正できるようになる。すなわち、熱拡散率が異なる測定対象流体について、流量の測定の精度を向上させることができる。」
c 【0101】~【0103】
「【0101】
図21(a)は、本実施形態に係る流量測定装置1cを示す斜視図であり、図21(b)は、図21(a)に示される副流路部3cを示す斜視図であり、図21(c)は、図21(a)に示される副流路部3cを示す上面図である。
【0102】
図21(a)~図21(c)に示されるように、流量測定装置1cでは、副流路部3cは、流入用流路34と、物性値検出用流路32cと、流量検出用流路33cと、流出用流路35とから構成されている。
【0103】
副流路部3cでは、物性値検出用流路32cが、流量検出用流路33c内に形成されており、測定対象流体の流れ方向に対して上流側に流量検出部11が配置され、下流側に物性値検出部12が配置されている。」
d 【図21】
「
[図:0001432510000007.jpg]
」
(イ) 引用文献5に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2011-226927号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
a 【0001】
「【0001】
本発明はガス検査技術に係り、温度拡散率測定システム、カロリー成分濃度測定システム、及び流量測定システムに関する。」
b 【0099】
「【0099】
(第2の実施の形態)
図9に示すように、第2の実施の形態に係る温度拡散率測定システム21Aは、温度拡散率の逆数1/αの値が未知の計測対象混合ガスが充填されるチャンバ101と、図1及び図2に示す発熱素子61A、第1の測温素子62A及び第2の測温素子63Aを用いて、計測対象混合ガスの温度TIの値、及び計測対象混合ガスの複数の放熱係数MIの値を計測する図9に示す計測機構10と、を備える。さらに、温度拡散率測定システム21Aは、ガスの温度TI及び発熱素子61Aの複数の発熱温度に対するガスの放熱係数MIを独立変数とし、温度拡散率の逆数1/αを従属変数とする温度拡散率算出式を保存する温度拡散率算出式記憶装置402と、温度拡散率算出式のガスの温度TIの独立変数及び発熱素子61Aの複数の発熱温度に対するガスの放熱係数MIの独立変数に、計測対象混合ガスの温度TIの値及び発熱素子61Aの複数の発熱温度に対する計測対象混合ガスの放熱係数MIの値を代入し、計測対象混合ガスの温度拡散率の逆数1/αの値を算出する温度拡散率算出部305と、を備える。」
c 【0207】~【0218】
「【0207】
(第13の実施の形態)
第13の実施の形態に係る流量測定システムは、図33に示すように、温度拡散率測定システム21Aと、温度拡散率測定システム21Aで温度拡散率が測定された計測対象混合ガスの流量Qを計測する流量計41Aと、を備える。
【0208】
流量計41Aは、断面図である図34に示すように、計測対象混合ガスが流れる流路11が設けられた流路保持体15と、流路保持体15上に配置された制御ユニット30と、を備える。制御ユニット30は、CPU330を備える。なお、図34は断面図であるが、制御ユニット30の内部は模式的に描かれており、実際には、マイクロプロセッサ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、I/O回路等が制御ユニット30の内部に配置されている。
【0209】
流路保持体15には、注入口13及び排出口14が設けられており、流路11は、注入口13から排出口14に流路保持体15の内部を貫通している。注入口13には図33に示す流路103が挿入される。流路11の内壁には、マイクロチップ8Bが配置されている。
【0210】
マイクロチップ8Bは、斜視図である図35、及びXXXVI-XXXVI方向から見た断面図である図36に示すように、第1の実施の形態で説明したマイクロチップ8Aと同様の構造を有している。マイクロチップ8Bは、キャビティ66Bが設けられた基板60B、基板60B上にキャビティ66Bを覆うように配置された絶縁膜65B、及び絶縁膜65Bに設けられたヒータ61Bを備える。また、マイクロチップ8Bは、ヒータ61Bより図34に示す流路11の上流側に位置する図35及び図36に示す上流側測温抵抗素子62B、ヒータ61Bより下流側に位置する下流側測温抵抗素子63B、及び上流側測温抵抗素子62Bより上流側に設けられた周囲温度センサ64Bを備える。
…(中略)…
【0215】
CPU330の流量算出部331は、マイクロチップ8Bから、図35及び図36に示す下流側測温抵抗素子63Bの電気抵抗の値と、上流側測温抵抗素子62Bの電気抵抗の値を受信する。さらに、図34に示す流量算出部331は、図35及び図36に示す下流側測温抵抗素子63Bの電気抵抗の値と、上流側測温抵抗素子62Bの電気抵抗の値との差に基づいて、図34に示す流路11を流れる計測対象混合ガスの流量Qの値を算出する。
…(中略)…
【0218】
さらに、図34に示す補正部332は、下記(55)式に示すように、計測対象混合ガスの流量Qの検出値を、校正ガスの温度拡散率の逆数1/α0で割り、さらに計測対象混合ガスの温度拡散率の逆数1/αをかける。これにより、校正ガスの温度拡散率の逆数1/α0と、計測対象混合ガスの温度拡散率の逆数1/αと、の差に基づく誤差が補正された、計測対象混合ガスの正確な流量QCの値が算出される。」
d 【図1】
「【図1】
[図:0001432510000008.jpg]
」
e 【図9】
「【図9】
[図:0001432510000009.jpg]
」
f 【図33】~【図35】
「【図33】
[図:0001432510000010.jpg]
【図34】
[図:0001432510000011.jpg]
【図35】
[図:0001432510000012.jpg]
」
(ウ) 周知技術1の認定
前記(ア)に摘記した引用文献3の記載事項、及び、前記(イ)に摘記した引用文献5の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって周知の技術であったと認められる。(以下「周知技術1」という。)
<周知技術1>
「ガスの熱拡散率及び流量を測定するに際して、熱拡散率測定用のセンサと流量測定用のセンサをガスの流路方向に離間して配置すること。」
イ 引用文献2に記載された事項及び周知技術2の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である米国特許第5515714号明細書(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。摘記の後の括弧内に合議体が作成した日本語訳を示す。
「SUMMARY OF THE INVENTION
(発明の概要)
The present invention is directed to a single solid state thermal diffusion sensor capable of measuring both the composition and flow of gaseous vapors traveling through a duct. The invention operates on the principle that the propagation of heat waves in a gas flow duct varies with respect to the composition and flow of gas through the duct.
(本発明は、ダクトを通るガス状蒸気の組成と流量の両方を測定することが可能な単一の固体状態熱拡散センサに関するものである。本発明は、ガス流ダクト内の熱波の伝搬がダクトを通過するガスの組成及び流量に応じて変化するという原理に基づいて動作する。)
Structurally, the sensor of the present invention comprises an integrated circuit chip with two orthogonal sensing patterns, each consisting of a heating element positioned between two detecting thermistor elements. The heaters and thermistors are made from thin film platinum deposited on a thermally insulating polyimide layer having low thermal diffusivity. One of the sensing patterns responds to both the composition and flow of the gaseous vapor, while the other sensing pattern responds only to the composition of the gaseous vapor. Appropriate circuitry determines the gaseous vapor composition and flow based upon the responses of the two sensing patterns.
(構造的には、本発明のセンサは2つの直交する感知パターンを備えた集積回路チップで構成されており、それぞれの感知パターンは、加熱用素子が2つの検出用サーミスタ素子の間に配置されている。加熱用素子とサーミスタは、熱拡散率が低い熱絶縁性ポリイミドの層上に薄膜白金を積層することによって作製されたものである。感知パターンの一方は、ガス状蒸気の組成及び流量の両方に応答し、もう一方の感知パターンは、ガス状蒸気の組成のみに応答する。適切な回路によりこれら2つの感知パターンの応答に基づいて、ガス状蒸気の組成及び流量を決定する。)
…(中略)…
DETAILED DESCRIPTION OF THEPREFERRED EMBODIMENTS
(詳細な説明と好ましい実施形態)
…(中略)…
The sensor 10 comprises two orthogonal sensing patterns 12 and 14. A first sensing pattern 12 comprises a first heating element 16 in the form of a resistive strip extending across a portion of the sensor surface and positioned transversely to the vapor flow. The heating element 16 is also positioned equidistant between two thermoelectric temperature-detecting thermistor elements, one upstream 18 and one downstream 20 from the heating element 16. A second sensing pattern 14 similarly comprises a second heating element 22 positioned equidistant between two thermistor elements 24 and 26. However, the second sensing pattern 14 is positioned longitudinal to the vapor flow.
(センサ10は、直交する2つの感知パターン12、14を備えている。第1の感知パターン12は、抵抗性ストリップ形状の第1の加熱要素16を含み、当該加熱要素16はセンサ表面の一部を横切る形で延在し且つ蒸気流に対して横方向に配置されている。加熱要素16はまた、2つの熱電温度検出用サーミスタ素子の間、すなわち加熱要素16の上流にある1つのサーミスタ素子18と、下流にあるもう1つのサーミスタ素子20の間に等距離に配置されている。第2感知パターン14では、同様に、2つのサーミスタ素子24と26の間に等距離に配置された第2の加熱素子22を含んでいるが、第2感知パターン14では、蒸気の流れに対して縦方向に配置される。)
…(中略)…
Thermistors 18 and 20 are thermos electric temperature-sensitive resistors, each having a resistance which varies directly with varying temperature.
(サーミスタ18、20は、測温抵抗体であり、それぞれが温度変化に応じて直接的に変化する抵抗を有する。)
As with thermistors 18 and 20, thermistors 24 and 26 are temperature-sensitive resistors, each having a resistance which varies directly with varying temperature.
(サーミスタ18、20と同様に、サーミスタ24、26は測温抵抗体であり、それぞれが温度変化に応じて直接的に変化する抵抗を有する。)」
(イ) 周知技術2の認定
前記(ア)に摘記した引用文献2の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって周知の技術であったと認められる。(以下「周知技術2」という。)
<周知技術2>
「熱拡散に関するセンサや流量センサにおける温度検出器に、抵抗性の温度検出器層を用いること。」
ウ 引用文献6に記載された事項及び技術常識の認定
(ア) 引用文献6に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2003-121228号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流体が通流していないときの消費電力を抑えることのできる熱式流量計に関する。
【0002】
【関連する背景技術】熱式流量計を構成するマイクロフローセンサは、例えば図4に示すようにシリコン基台B上に設けた発熱抵抗体からなるヒータ素子Rhを間にして、流体の通流方向Fに測温抵抗体からなる一対の温度センサRu,Rdを設けた素子構造を有する。そして熱式流量計は、上記ヒータ素子Rhから発せられる熱の拡散度合い(温度分布)が前記流体の通流によって変化することを利用し、前記温度センサRu,Rdの熱による抵抗値変化から前記流体の流量Qを検出する如く構成される。
【0003】具体的にはヒータ素子Rhから発せられた熱が流体の流量Qに応じて下流側の温度センサRdに加わることで、該温度センサRdの熱による抵抗値の変化が上流側の温度センサRuよりも大きいこと利用して上記流量Qを計測するものとなっている。
…(中略)…
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明に係る熱式流量計について、家庭用ガスメータとして用いる場合を例に説明する。図1はこの実施形態に係る熱式流量計の要部概略構成を示している。この熱式流量計は、図4に示した素子構造を有してその計測流量域を異にする2種類のマイクロフローセンサ、即ち、高流量域計測用の高速流量センサ10と低流量域計測用の低速流量センサ20とを用いて構成される。
【0014】ちなみに高速流量センサ10および低速流量センサ20は、例えばヒータ素子Rhの発熱による熱拡散の度合いが流体の流量(流速)の違いによって異なることを利用し、ヒータ素子Rhと温度センサRu,Rdとの離間距離を異ならせることでその流量計測域を異ならせたものからなる。具体的には前記高速流量センサ10はヒータ素子Rhと温度センサRu,Rdとの離間距離L1を短く設定して実現され、また前記低速流量センサ20はヒータ素子Rhと温度センサRu,Rdとの離間距離L2を長く設定して実現される。これ故、高速流量センサ10の方が低速流量センサ20に比較してヒータ素子Rhと温度センサRu,Rdとの熱結合の度合いが強く、両流量センサ10,20において同じ検出感度を実現する場合におけるヒータ素子Rhの発熱温度、ひいてはその駆動電力が低く抑えられている。」
「【図1】
[図:0001432510000013.jpg]
」
「【図4】
[図:0001432510000014.jpg]
」
(イ) 技術常識の認定
前記(ア)に摘記した引用文献6の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識」という。)
<技術常識>
「ヒータ素子と温度測定素子からなる熱式流量センサにおいて、ヒータ素子と温度測定素子の間の離間距離は、測定の対象として想定される流体の流速などに応じて変更し得ること。」
(4) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点(流量センサ)
「流量センサ」の発明である本件補正発明と「流量計」の発明である引用発明は、「流量センサ」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aの観点(流体流路)
a 構成Aは、「流量センサ」が「流体流路」を「含[む]」ことである。
b 引用発明における「ガス流路17」は、「ガス」を流す流路であるため、本件補正発明にいうところの「流体流路」であるといえる。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「流量センサ」が「流体流路」を「含[む]」点
(ウ) 構成Bの観点(第1のセンサ)
a 構成Bは、「流量センサ」が「前記流体流路内の流体の熱拡散率および前記流体流路内の前記流体の粘度のうちの少なくとも1つの第1の測定値を決定するように構成された第1のセンサ」を「含[む]」ことである。
b 引用発明における「マイクロフローセンサ101′」は、「マイクロヒータ104′から発生した熱は、ガスの流速の影響を受けずにガスの熱拡散効果のみによって、マイクロヒータ104′の両側にガスの流れ方向と略直交方向に配置された第1のサーモパイル105′及び108′に伝達され、第1のサーモパイル105′の起電力により出力される第1の温度検出信号、及び/または第2のサーモパイル108′の起電力により出力される第2の温度検出信号に基づき、熱伝導率と熱拡散、比熱等によって決定される熱拡散定数等のガスの物性値を算出する」ものである。引用発明の「熱伝導率と熱拡散、比熱等によって決定される熱拡散定数等」と本件補正発明の「熱拡散率」は、(熱伝導率や比熱等によって決定される)流体の熱拡散に関する指標を示すものであるという点において共通する。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、次の(a)の点において一致し、(b)の点において相違する。
(a)「流量センサ」が「前記流体流路内の流体の」熱拡散に関する指標「および前記流体流路内の前記流体の粘度のうちの少なくとも1つの「第1の測定値を決定するように構成された第1のセンサ」を「含[む]」点。
(b)「第1の測定値」として決定される熱拡散に関する指標として、本件補正発明においては、「熱拡散率」を用いているのに対して、引用発明においては、「熱伝導率と熱拡散、比熱等によって決定される熱拡散定数等」を用いている点。
(エ) 構成Cの観点(第2のセンサ)
a 構成Cは、「流量センサ」が「前記流体流路内の前記流体の流体流速および前記流体流路内の前記流体の体積流量のうちの少なくとも1つの第2の測定値を決定するように構成された第2のセンサ」を「含[む]」ことである。
b 引用発明における「マイクロフローセンサ101」は、「マイクロヒータ104が、外部からの駆動電流により加熱を開始すると、マイクロヒータ104から発生した熱」が「ガスを媒体として、下流側サーモパイル105と上流側サーモパイル108のそれぞれの温接点に伝達され、」「それぞれのサーモパイルは」、「温度検出信号を出力し、ガスに流速が発生すると、流速によって下流側サーモパイル105の温接点に伝達される熱量が多くなり」、「下流側サーモパイル105からの前記第2温度検出信号と上流側サーモパイル108からの前記第1温度検出信号との差信号によって、流速に応じた正値を得る」ことができるものである。
ここで、引用発明は、「流量計」の発明であるから、流量を測定するものであることは自明であるところ、流速に流体流路の断面積(既知の値)を乗じることにより、体積流量が得られることは技術常識であるから、引用発明の「差信号」は、体積流量を決定するように解釈される信号(体積流量に対応する信号)ということができ、同「流速に応じた正値」は、体積流量に応じた正値ということもできる。
そうすると、引用発明の「マイクロフローセンサ101」は、本件補正発明の「前記流体流路内の前記流体の体積流量」である「第2の測定値を決定するように構成された第2のセンサ」に相当する。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「流量センサ」が「前記流体流路内の前記流体の流体流速および前記流体流路内の前記流体の体積流量のうちの少なくとも1つの第2の測定値を決定するように構成された第2のセンサ」を「含[む]」点。
(オ) 構成Dの観点(プロセッサ)
a 構成Dは、「流量センサ」が「前記第1の測定値に基づいて前記第2の測定値を調整するように構成された少なくとも1つのプロセッサ」を「[含む]」ことである。
b 引用発明における「マイクロコンピュータ」は、「マイクロフローセンサ101内の下流側サーモパイル105からの温度検出信号と、マイクロフローセンサ101内の上流側サーモパイル108からの温度検出信号との差信号を差動アンプ33で増幅して得られた差信号」(流体の体積流量に対応する信号)を、「マイクロフローセンサ101′内の第1のサーモパイル105′からの温度検出信号と、マイクロフローセンサ101′内の第2のサーモパイル108′からの温度検出信号を、それぞれアンプ35a、35bで増幅し、加算部で加算して得られた加算信号」(流体の熱拡散に関する指標に対応する信号)により除して得られた、除算信号「に基づきガスの流量を算出する」ものである。そして、前記(ウ)、(エ)において検討したとおり、引用発明における「熱拡散定数」は、熱拡散に関する指標であることから、本件補正発明の「第1の測定値」に対応し、また、引用発明における「ガスの流量」は、本件補正発明における「第2の測定値」に相当する。そうすると、引用発明は本件補正発明にいうところの「前記第1の測定値」に基づく「前記第2の測定値」の「調整」を行っているといえる。
c したがって、引用発明において「第1の測定値」が「熱拡散率」でない点(前記(ウ)c(b)に示した構成Bの観点における相違点と実質的に同じ点である。)を措くと、本件補正発明と引用発明は、構成Dの観点について次の点において一致する。
「流量センサ」が「前記第1の測定値に基づいて前記第2の測定値を調整するように構成された少なくとも1つのプロセッサ」を「含[む]」点。
(カ) 構成C2の観点(流体流方向における、第1のセンサと第2のセンサの離間について)
a 構成C2は、「前記第2のセンサは、前記流体流路の流体流方向において前記第1のセンサから離間され[ている]」ことである。
b 引用発明における、「マイクロフローセンサ101」と、「マイクロフローセンサ101′」は、認定事項Aにあるように「ガス流路17」の「ガスの流れる方向と垂直な方向において離間して配置され、いずれのセンサもガス流路17のガスの流れ方向においては、ほぼ同じ位置に配置され」ている。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において相違する。
本件補正発明においては、「第2のセンサは、流体流路の流体流方向において第1のセンサから離間され[ている]」のに対して、引用発明においては、マイクロフローセンサ101は、ガス流路17のガスの流れ方向と垂直な方向においてマイクロフローセンサ101′から離間され、いずれのセンサもガス流路17のガスの流れ方向においては、ほぼ同じ位置に配置されている」点。
(キ) 構成B1及びC1の観点(第1のセンサ、及び第2のセンサが含む層)
a 構成B1は、「前記第1のセンサは、前記流体流路に平行な方向に延在する第1の抵抗性温度検出器層と第2の抵抗性温度検出器層との間に前記流体流路に平行な方向に延在する抵抗性ヒータ層を含[む]」ということであり、構成C1は、「前記第2のセンサは、前記流体流路に垂直な前記方向に延在する別の第1の抵抗性温度検出器層と別の第2の抵抗性温度検出器層との間に前記流体流路に垂直な方向に延在する別の抵抗性ヒータ層を含[む]」ということである。
b 本件補正発明における、「抵抗性温度検出器層」のそれぞれ(第1の抵抗性温度検出器層、第2の抵抗性温度検出器層、別の第1の抵抗性温度検出器層及び別の第2の抵抗性温度検出器層)は、温度が変化することによって抵抗の抵抗値が変化することを利用して温度を検出するものであることは自明である。
c 一方で引用発明における、「サーモパイル」のそれぞれ(第1のサーモパイル105′、第2のサーモパイル108′、下流側サーモパイル105及び上流側サーモパイル108)は、p++-Si及びAlによる熱電対から構成され、冷接点と温接点との温度差から発生する熱起電力により、温度を検出するものである。
d そうすると、本件補正発明の「抵抗性温度検出器層」と引用発明の「サーモパイル」は、温度検出器層であるという点で共通する。
e また、本件補正発明の「抵抗性温度検出器層」と引用発明の「サーモパイル」のそれぞれは、延在する方向とヒータ層との位置関係については一致している(第1のサーモパイル105′、第2のサーモパイル108′は、ガスの流れ方向と略直交方向にマイクロヒータ104′の両側でガスの流れ方向に延在するように配置されているし、下流側サーモパイル105及び上流側サーモパイル108は、マイクロヒータ104の下流側と上流側に、ガスの流れ方向と垂直な方向に延在するように配置されている)。
f そして、引用発明における「白金等からなるマイクロヒータ104′」及び「白金等からなるマイクロヒータ104」は、本件補正発明における「抵抗性ヒータ層」及び「別の抵抗性ヒータ層」にそれぞれ相当する。
g 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明の構成B1の観点、及びC1の観点における一致点及び相違点は、次の(a)~(c)に示すとおりである。
(a) 構成B1の観点における一致点
「前記第1のセンサは、前記流体流路に平行な方向に延在する」第1の温度検出器層と第2の温度検出器層「との間に前記流体流路に平行な方向に延在する抵抗性ヒータ層を含[む]」点。
(b) 構成C1の観点における一致点
「前記第2のセンサは、前記流体流路に垂直な前記方向に延在する」別の第1の温度検出器層と別の第2の温度検出器層「との間に前記流体流路に垂直な方向に延在する別の抵抗性ヒータ層を含[む]」点。
(c) 構成B1及びC1の観点における相違点
本件補正発明においては、温度検出器層として「抵抗性温度検出器層」を用いているのに対して、引用発明においては、サーモパイルを用いている点。
(ク) 構成BCの観点(第1のセンサと第2のセンサの位置関係と、第1のセンサと第2のセンサの構造の条件について)
a 検討のための構成BCの整理
構成BCは、第1のセンサと第2のセンサに「前記流体流路の上流に位置する前記第1のセンサにおける前記抵抗性ヒータ層と前記第1の抵抗性温度検出器層と前記第2の抵抗性温度検出器層の間の間隔は、前記流体流路の下流に位置する前記第2のセンサにおける前記別の抵抗性ヒータ層と前記別の第1の抵抗性温度検出器層と前記別の第2の抵抗性温度検出器層の間の間隔よりも小さい」いう限定を加えるものであるが、説明のためこれを以下の2つの構成に分けて検討する。
(a)センサの位置関係
「前記第1のセンサ」が「前記流体流路の上流に位置[し]」、「前記第2のセンサ」が「前記流体流路の下流に位置する」という構成。
(b)センサの構造条件
「前記第1のセンサにおける前記抵抗性ヒータ層と前記第1の抵抗性温度検出器層と前記第2の抵抗性温度検出器層の間の間隔は、」「前記第2のセンサにおける前記別の抵抗性ヒータ層と前記別の第1の抵抗性温度検出器層と前記別の第2の抵抗性温度検出器層の間の間隔よりも小さい」、という構成。
b センサの位置関係の検討
上記a(a)について、引用発明では、マイクロフローセンサ101がマイクロフローセンサ101′と、ガスの流れる方向と垂直な方向に離間して配置され、いずれのセンサもガス流路17のガスの流れ方向においては、ほぼ同じ位置に配置されているため、上記a(a)のような構成を備えていない。
c センサの構造条件の検討
上記a(b)について、引用発明では、マイクロフローセンサ101′は、マイクロフローセンサ101とは、同一の構造を有しており、上記a(b)のような構成を備えていない。
d 一致点と相違点のまとめ
以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明の構成BCの観点において一致点は無く、構成BCの観点における相違点は、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 上記a(a)の観点における相違点
本件補正発明においては、「前記第1のセンサ」が「前記流体流路の上流に位置」し、「前記第2のセンサ」が「前記流体流路の下流に位置」するのに対し、引用発明においては、マイクロフローセンサ101がマイクロフローセンサ101′と、ガスの流れる方向と垂直な方向に離間して配置され、いずれのセンサもガス流路17のガスの流れ方向においては、ほぼ同じ位置に配置されている点。
(b) 上記a(b)の観点における相違点
本件補正発明においては、
「前記第1のセンサにおける前記抵抗性ヒータ層と前記第1の抵抗性温度検出器層と前記第2の抵抗性温度検出器層の間の間隔は、前記第2のセンサにおける前記別の抵抗性ヒータ層と前記別の第1の抵抗性温度検出器層と前記別の第2の抵抗性温度検出器層の間の間隔よりも小さい」のに対して、
引用発明においては、マイクロフローセンサ101′は、マイクロフローセンサ101とは、同一の構造を有している点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「流体流路、
前記流体流路内の流体の熱拡散に関する指標および前記流体流路内の前記流体の粘度のうちの少なくとも1つの第1の測定値を決定するように構成された第1のセンサ、
前記流体流路内の前記流体の流体流速および前記流体流路内の前記流体の体積流量のうちの少なくとも1つの第2の測定値を決定するように構成された第2のセンサ、
および
前記第1の測定値に基づいて前記第2の測定値を調整するように構成された少なくとも1つのプロセッサ、
を含み、
前記第1のセンサは、前記流体流路に平行な方向に延在する第1の温度検出器層と第2の温度検出器層との間に前記流体流路に平行な方向に延在する抵抗性ヒータ層を含み、および前記第2のセンサは、前記流体流路に垂直な前記方向に延在する別の第1の温度検出器層と別の第2の温度検出器層との間に前記流体流路に垂直な方向に延在する別の抵抗性ヒータ層を含む、
流量センサ。」である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
本件補正発明においては、「第2のセンサは、流体流路の流体流方向において第1のセンサから離間され」、「前記第1のセンサ」が「前記流体流路の上流に位置」し、「前記第2のセンサ」が「前記流体流路の下流に位置」するのに対して、引用発明においては、マイクロフローセンサ101は、ガス流路17のガスの流れ方向と垂直な方向においてマイクロフローセンサ101′から離間され、いずれのセンサもガス流路17のガスの流れ方向においては、ほぼ同じ位置に配置されている点。
b 相違点2
本件補正発明においては、温度検出器層として「抵抗性温度検出器層」を用いているのに対して、引用発明においては、サーモパイルを用いている点。
c 相違点3
本件補正発明においては、「前記第1のセンサにおける前記抵抗性ヒータ層と前記第1の抵抗性温度検出器層と前記第2の抵抗性温度検出器層の間の間隔は、前記第2のセンサにおける前記別の抵抗性ヒータ層と前記別の第1の抵抗性温度検出器層と前記別の第2の抵抗性温度検出器層の間の間隔よりも小さい」のに対して、引用発明においては、マイクロフローセンサ101′とマイクロフローセンサ101とが同一の構造を有している点。
d 相違点4
「第1の測定値」として決定される熱拡散に関する指標として、本件補正発明においては、「熱拡散率」を用いているのに対して、引用発明においては、「熱伝導率と熱拡散、比熱等によって決定される熱拡散定数等」を用いている点。
(5) 判断
ア 相違点4について
事案に応じて、まず相違点4から検討する。
熱拡散に関する指標として「熱拡散率」を用いることについて、引用発明における「熱拡散定数」も、少なくとも「熱伝導率と熱拡散、比熱等によって決定される」ものであるところ、同種の情報によって定まる「熱拡散に関する指標」として、例示するまでもなく周知の「熱拡散率」を用いるのは当業者にとって容易に想到し得たことである。
イ 相違点1について
「第2のセンサは、流体流路の流体流方向において第1のセンサから離間され」、「前記第1のセンサ」が「前記流体流路の上流に位置」し、「前記第2のセンサ」が「前記流体流路の下流に位置」することについて、
前記(3)ア(ウ)において周知技術1として認定したとおり、「ガスの熱拡散率及び流量を測定するに際して、熱拡散率測定用のセンサと流量測定用のセンサをガスの流路方向に離間して配置すること。」は、当業者にとって周知の技術であった。
また、本願明細書には、第1のセンサと第2のセンサを流体流路の流体流方向において離間させることや、第1のセンサを第2のセンサよりも上流側に配置することにより、格別な効果が奏されることについて何ら記載はなく、そのような効果が奏されることが技術常識であるともいえないから、引用発明において、マイクロフローセンサ101′(第1のセンサ)とマイクロフローセンサ101(第2のセンサ)を互いにどのように配置するかについては、当業者が適宜決定できる設計事項にすぎない。
したがって、引用発明に対して周知技術1を採用するとともに、どちらを流体流路の流体流方向において上流にしてもよい第1のセンサ、第2のセンサのうち、第1のセンサが上流にあるようにし、もって相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
ウ 相違点2について
温度検出に「抵抗性温度検出器層」を用いることについて、
前記(3)イ(イ)において周知技術2として認定したとおり、「熱拡散に関するセンサや流量センサにおける温度検出器に、抵抗性の温度検出器層を用いること」は、当業者にとって周知の技術であった。
また、本願明細書において、温度検出に「抵抗性温度検出器層」を用いることにより奏される効果について特に記載はなく、本願明細書の【0061】に「第1の抵抗性温度検出器(RTD)層またはサーモパイルと第2のRTD層またはサーモパイルとの間」と記載されるように、引用発明で用いられている「サーモパイル」もその代替としてあげられる程度のものであるから、当該周知技術2を引用発明に適用し、もって相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
エ 相違点3について
(ア) 前記(3)ウ(イ)において認定したとおり、「ヒータ素子と温度測定素子からなる熱式流量センサにおいて、ヒータ素子と温度測定素子の間の離間距離は、測定の対象として想定される流体の流速などに応じて変更し得ること。」は、当業者にとって技術常識である。
引用発明のマイクロフローセンサ101(第2のセンサ)は、「ヒータ素子と温度測定素子からなる熱式流量センサ」といえるから、前記技術常識にあるように、マイクロヒータ104(ヒータ素子)と下流側サーモパイル105や上流側サーモパイル108(温度測定素子)との間の離間距離は、測定の対象として想定される流体の流速などに応じて変更し得るものである。
(イ) これに対して、引用発明のマイクロフローセンサ101′(第1のセンサ)におけるマイクロヒータ104′と第1のサーモパイル105′や第2のサーモパイル108′との離間距離について検討すると、流体の熱拡散定数等の違いに応じて測定値に有意な差が生じるように一定以上の距離が求められるとともに、あまりに離間距離が長いと、マイクロヒータ104′からの熱が第1のサーモパイル105′や第2のサーモパイル108′に到達する前に下流側に流失してしまう恐れがあるから、離間距離に一定の上限があることも、当業者にとって自明といえる。
(ウ) そして、引用発明では、マイクロフローセンサ101とマイクロフローセンサ101′のヒータ素子と温度測定素子の間の距離は同じとなっているところ、これは両者を同一の構造を有するものとすることにより同じ部品として構成することを可能にし、もってコスト削減を図るためと考えられるが、測定に必要な精度や効率が得られない場合にまで両者の構造を同じものとしなければならない事情があるとはいえないというべきである。
そうすると、前記技術常識にあるように、設計するセンサ内の流速の変化にあわせて、マイクロフローセンサ101のヒータ素子と温度測定素子の間の距離を変えるのであれば、例えば想定される流体の流速が低速の場合などに、マイクロフローセンサ101のヒータ素子と温度測定素子の間の距離が、マイクロフローセンサ101′のヒータ素子と温度測定素子の間の距離よりも大きくなることもあるといえる。
(エ) また、熱拡散率センサにおけるヒータと第1及び第2の温度検出器との間の間隔を、第2のセンサ(流速センサ)におけるヒータと第1及び第2の温度検出器との間の間隔よりも小さくすること自体は、例えば米国特許出願公開第2016/0290849号明細書(原査定の拒絶の理由において引用された引用文献4)の[0133]-[0135],[図13]に開示されているから、引用発明において、そのようにすることが選択肢から排除される理由はないといえる。
(オ) そして、本願明細書において、「前記第1のセンサにおける前記抵抗性ヒータ層と前記第1の抵抗性温度検出器層と前記第2の抵抗性温度検出器層の間の間隔は、前記第2のセンサにおける前記別の抵抗性ヒータ層と前記別の第1の抵抗性温度検出器層と前記別の第2の抵抗性温度検出器層の間の間隔よりも小さい」ことによって生ずる効果について、特に記載はないため、効果に格別のものが有るともいえない。
(カ) そうすると、引用発明において、マイクロフローセンサ101のヒータ素子と温度測定素子の間の距離を、マイクロフローセンサ101′のヒータ素子と温度測定素子の間の距離よりも広げ、結果として相違点3に係る本件補正発明の構成となるようにすることは、当業者が適宜なし得た設計変更にすぎないというべきである。
オ 総合評価
前記ア~エにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、周知技術1~2及び技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1~4を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術1~2及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
カ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張内容
a 請求人は、審判請求書において、概略、以下のように主張している。
相違点1に関して、原査定は、「流体の流速を測定する第2のセンサを、流体流路の流体流方向において流体の熱拡散率を測定する第1のセンサから離間して配置することは、例えば引用文献3(特に、【図21】参照。)に見られるように周知の技術」と指摘しているが、引用発明に対して、引用文献3に見られる周知の技術を組み合わせると、第1のセンサと第2のセンサの、上流下流の関係が本件補正発明と逆になる。
また、相違点3に関し、引用文献4に記載された発明では、「測定に対する流れの影響をできるだけ少なくするために」センサエレメント43とヒーティングエレメント42とが近傍に配置されるのだから、第1のセンサと第2のセンサの、上流下流の関係が本件補正発明と逆になるのであれば、抵抗性ヒータ層と抵抗性温度検出器層の間隔の大小も逆になる。
よって、引用発明に対し、引用文献3に記載された発明と、引用文献4に記載された発明を適用しても、本件補正発明は容易に想到し得ない。
b また、請求人は、上申書において、概略、以下のように主張している。
前置報告書に記された「上流側に配置されたセンサと下流側に配置されたセンサとの間の距離が十分に離間し、上流側に配置されたセンサによって生ずる流体乱れの影響が、下流側に配置されたセンサにおいて無視できる場合に」という条件は引用文献4に記載されているわけでもなく、後知恵による条件付加である。そのため、第1のセンサと第2のセンサの、上流下流の関係を本件補正発明のようにすることは想到し得ない。
(イ) 請求人の主張についての検討
しかしながら、これらの主張については、以下のa~cのとおりであって、採用することはできない。
a 相違点1及び相違点3の容易想到性については、前記イ及び前記エにおいて、説示したとおりである。
b 請求人は、引用発明に対して引用文献3に記載された発明と、引用文献4に記載された発明を適用しても、本件補正発明は容易に想到し得ない旨主張するが、引用文献3や引用文献4は、周知技術や技術的背景を示す例として用いられたものであって、副引用例としてそのまま引用発明に適用するという論理で用いられているものではない。
c またそもそも、引用文献4には、測定に対する流れの影響をできるだけ小さくするために、温度センサ素子を流れ方向に対して垂直にかつ加熱素子の近くに非対称に配置することは記載されているものの、上流下流に離間して配置されたセンサにおいて、上流側のセンサによって生じた流れの乱れによって下流側のセンサが影響を受けないようにすることに関しては何ら記載されていない。したがって、引用文献4に関連する請求人の主張は、引用文献4に記載されていない事項に基づくものであって、採用できない。
キ 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本願補正発明は、引用発明、周知技術1~2及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記3(5)キのとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由のうち、引用文献1を主たる引用文献とする、令和4年12月26日付けの拒絶理由通知書に記載された理由3(進歩性の欠如)に対応する理由の概要は、次のとおりである。
理由3(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
<主たる引用文献>
引用文献1.特開2001-355800号公報
<その他の引用文献>
引用文献2.米国特許第5515714号明細書(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2017-129470号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.米国特許出願公開第2016/0290849号明細書
(周知技術を示す文献)
3 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等
引用文献1に記載された事項並びに引用発明、周知技術1~2及び技術常識は、前記第2の3(2)ア、並びに、第2の3(2)ウ、第2の3(3)ア(ウ)、第2の3(3)イ(イ)及び第2の3(3)ウ(イ)において示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明から「第1のセンサ」に対する「前記流体流路の上流に位置する」という限定、及び、「第2のセンサ」に対する「前記流体流路の下流に位置する」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(5)において説示したとおり、引用発明、周知技術1~2及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明、周知技術1~2及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-005318