特許拒絶査定不服審判
2024-003546
残量管理システム、測距ユニット、及び残量管理方法
- 審判番号
- 2024-003546
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-085751
- 請求日
- 2024年02月29日
- 審決日
- 2025年10月02日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】松村物産株式会社
- 【請求人代理人】横井 敏弘
- 審判長/審判官
- 審判長 小島 寛史
- 審判官 柳 重幸
- 審判官 井海田 隆
- 分類
- P18 .121-Z (G01F) / P18 .575-Z (G01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 85751「残量管理システム、測距ユニット、及び残量管理方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年11月 5日出願公開、特開2020-180939〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年 4月26日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 1月26日付け:拒絶理由通知書
同年 3月30日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月28日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年 8月28日 :意見書、手続補正書の提出
同年11月30日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年12月 5日 :原査定の謄本の送達)
令和6年 2月29日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年2月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年2月29日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年2月29日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年3月30日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項3の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項3の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項3】
タンクのフロート式液面計に設置された測距センサと、
前記測距センサによる測距結果を送信する送信装置と、
前記送信装置により送信された測距結果を受信する管理装置と、
複数の前記タンクに対して補給を行う補給車と
を備えた残量管理システムにおいて、
前記測距センサが、タンクのフロート式液面計に関して、フロート又はこれに連動する残量表示板までの距離を測定するステップと、
前記送信装置が、前記測距センサによる測距結果を管理装置に送信するステップと、
前記管理装置が、前記送信装置から測距結果を受信するステップと、
前記管理装置が、受信した測距結果に基づいて、前記タンクに対する補給の要否を判定するステップと、
前記管理装置が、前記補給車の配送地域に設置された少なくとも一つのタンクに関する測距結果に基づいて、この補給車に必要な必要残量を算出するステップと、
前記管理装置が、算出された必要残量と、前記補給車内の残量とに基づいて、前記補給車への積み込みの要否を判定するステップと
を有する残量管理方法。」
(2) 本件補正後
「【請求項3】
タンクのフロート式液面計に設置された測距センサと、
前記測距センサによる測距結果を送信する送信装置と、
前記送信装置により送信された測距結果を受信する管理装置と、
複数の前記タンクに対して補給を行う補給車と
を備えた残量管理システムにおいて、
前記測距センサが、タンクのフロート式液面計に関して、フロート又はこれに連動する残量表示板までの距離を測定するステップと、
前記送信装置が、前記測距センサによる測距結果を管理装置に送信するステップと、
前記管理装置が、前記送信装置から測距結果を受信するステップと、
前記管理装置が、受信した測距結果に基づいて、前記タンクに対する補給の要否を判定するステップと、
前記管理装置が、前記補給車の配送地域に設置された少なくとも一つのタンクに関する測距結果に基づいて、各タンクに関する補給量を算出し、算出された補給量を配送地域毎に合算して、この補給車に必要な必要残量を算出するステップと、
前記管理装置が、算出された必要残量と、前記補給車内の残量とに基づいて、前記補給車への積み込みの要否を判定するステップと
を有する残量管理方法。」
2 補正の目的
本件補正のうち請求項3についてする補正は、本件補正前の請求項3に記載された「補給車に必要な必要残量を算出」することについて、「各タンクに関する補給量を算出し、算出された補給量を配送地域毎に合算して」算出することに限定するものである。
そして、本件補正前の請求項3に記載された発明と本件補正後の請求項3に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正により請求項3についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項3に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に示した本件補正後の請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Eまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1】、【図8】を掲載する。
<本件補正発明の分説>
A タンクのフロート式液面計に設置された測距センサと、
B 前記測距センサによる測距結果を送信する送信装置と、
C 前記送信装置により送信された測距結果を受信する管理装置と、
D 複数の前記タンクに対して補給を行う補給車とを備えた
E 残量管理システムにおいて、
A1 前記測距センサが、タンクのフロート式液面計に関して、フロート又はこれに連動する残量表示板までの距離を測定するステップと、
B1 前記送信装置が、前記測距センサによる測距結果を管理装置に送信するステップと、
C1 前記管理装置が、前記送信装置から測距結果を受信するステップと、
C2 前記管理装置が、受信した測距結果に基づいて、前記タンクに対する補給の要否を判定するステップと、
C3 前記管理装置が、前記補給車の配送地域に設置された少なくとも一つのタンクに関する測距結果に基づいて、各タンクに関する補給量を算出し、算出された補給量を配送地域毎に合算して、この補給車に必要な必要残量を算出するステップと、
C4 前記管理装置が、算出された必要残量と、前記補給車内の残量とに基づいて、前記補給車への積み込みの要否を判定するステップとを有する
X 残量管理方法。
<参考図>
【図1】
[図:0001429490000001.jpg]
【図8】
[図:0001429490000002.jpg]
イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、当合議体により下線を付した。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、残量管理システム、測距ユニット、及び残量管理方法に関する。
…(中略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タンク内の残量管理又は補給を効率的に行うことができる残量管理システムを提供することを目的とする。
…(中略)…
【発明の効果】
【0014】
タンク内の残量管理又は補給を効率的に行うことができる。
…(中略)…
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、残量管理システム1の全体構成を例示する図である。
図1に例示するように、残量管理システム1は、タンクの残量を管理する管理サーバ2と、タンクに設置された測距ユニット3と、タンクへの補給を行う補給車4と、補給車4で配送を行う配送者の携帯端末60と、タンクの内容物を消費する消費者の携帯端末62とを含む。タンクは、例えば、各家庭に設置された灯油タンクであり、タンクには、灯油の残量を示す残量計90(フロート式液面計)が設けられている。
本例では、複数の家庭それぞれに灯油タンクが設置されており、これらのタンクそれぞれに測距ユニット3が設置されている。また、灯油の配送地域が設定されており、補給車4は、配送地域内のタンクのうち、灯油の残量が基準値よりも少なくなったタンクに、灯油を補給する。」
「【図1】(再掲)
[図:0001429490000003.jpg]
」
「【0017】
管理サーバ2は、本発明に係る管理装置の一例であり、配送管理プログラム22がインストールされたコンピュータ端末である。本例の管理サーバ2は、測距ユニット3による測距結果に基づいて、タンク内の灯油の残量を推定し、推定された残量に基づいて、補給車4による灯油の配送計画を作成する。
【0018】
測距ユニット3は、残量計90のフロート又はこれに連動する残量表示板までの距離を測定し、測定結果を管理サーバ2に送信する。
補給車4は、灯油を積載する積載タンクを備え、積載タンク内の灯油を、各家庭のタンクに補給する。
…(中略)…
【0020】
図2は、測距ユニット3のハードウェア構成を説明する模式図である。
図2に例示するように、測距ユニット3は、管理サーバ2と通信を行う無線装置30と、残量計90に設置される測距センサ32と、接続ケーブル34とを有する。
測距センサ32は、図3に示すように、残量計90の天面に設置され、下方のレベルゲージ900(残量表示板)までの距離を測定する。例えば、測距センサ32は、赤外線又はレーザー光をレベルゲージ900の方向に照射して、その反射光によってレベルゲージ900までの距離を測定する。ここで、残量計90のレベルゲージ900は、タンク内のフロートに連動して上下動し、タンク内の液面の高さをタンク内の灯油の残量として示す。残量90の外壁面は、透明な樹脂等で構成されており、配送者や消費者は、レベルゲージ900の位置を横から視認して、灯油残量を確認する。本例の測距センサ32は、残量計90の上方に設置されるため、配送者や消費者によるレベルゲージ900の視認を妨げない。」
「【図2】
[図:0001429490000004.jpg]
」
「【0021】
無線装置30は、無線通信機能と、測距センサ32による測距結果を処理する情報処理機能と、測距センサ32の動作を制御するセンサ制御機能とを有するコンピュータである。例えば、無線装置30の筐体の一部が磁石となっており、タンクの表面に固定される。
本例の無線装置30は、接続ケーブル34を介して、測距センサ32の動作を制御し、測距センサ32による測距結果を補正し、補正された測距結果に基づいて、灯油残量を推定し、推定された灯油残量を測距結果として管理サーバ2に送信する。
…(中略)…
【0023】
図5は、管理サーバ2の機能構成を例示する図である。
図5に例示するように、管理サーバ2には、配送管理プログラム22がインストールされると共に、実績データベース260(実績DB260)が構成される。
配送管理プログラム22は、受信部220、実績取得部222、警告部224、補給要否判定部226、配送計画作成部228、必要量算出部230、積載要否判定部232、補給結果判定部234、残量情報提供部236、及びパラメータ提供部238を有する。
なお、配送管理プログラム22の一部又は全部は、ASICなどのハードウェアにより実現されてもよく、また、OS(Operating System)の機能を一部借用して実現されてもよい。」
「【図5】
[図:0001429490000005.jpg]
」
「【0024】
配送管理プログラム22において、受信部220は、無線装置30から測距結果を受信する。本例の受信部220は、無線装置30から灯油残量を測距結果として受信する。
【0025】
実績取得部222は、実績DB260にアクセスして、各タンクに関する過去の実績値を取得する。本例の実績取得部222は、実績DB260にアクセスして、前年の同時期における、各タンクの灯油の消費量を実績値として取得する。
【0026】
警告部224は、測距センサ32により定期的に測定された距離に基づいて、タンク内の残量の変化速度を推定し、推定された変化速度に応じて、タンクからの漏洩又は盗難に関する警告を出力する。本例の警告部224は、受信部220により受信した灯油残量に基づいて、各タンクにおける灯油の減少速度(単位時間当たりの減少量)を算出し、算出された減少速度が既定の範囲外である場合に、灯油の漏洩又は盗難の可能性を示す警告情報を、消費者の携帯端末62に送信する。
【0027】
補給要否判定部226は、受信部220により受信した測距結果に基づいて、タンクに対する補給の要否を判定する。本例の補給要否判定部226は、受信部220により受信した測距結果と、実績取得部222により取得されたこのタンクの実績値とに基づいて、このタンクに対する補給の要否を判定する。
また、補給要否判定部226は、受信部220により受信した測距結果と、タンクが設置されている地域とに基づいて、タンクに対する補給の要否を判定してもよい。配送地域によって、定期配送の頻度が異なるからである。
【0028】
配送計画作成部228は、補給要否判定部226による判定結果に基づいて、配送地域毎の配送計画を作成する。例えば、配送計画作成部228は、補給要否判定部226により補給が必要であると判定されたタンクの所在地に基づいて、配送順序及び配送ルートを決定し、決定された配送順序及び配送ルートを地図上に表示した配送計画情報を、配送者の携帯端末60に送信する。
【0029】
必要量算出部230は、補給車4の配送地域に設置された少なくとも一つのタンクに関する測距結果に基づいて、この補給車4に必要な必要残量を算出する。本例の必要量算出部230は、補給要否判定部226により補給が必要であると判定されたタンクに関して、受信部220により受信した残量に対応する補給量を算出し、算出された補給量を、配送地域毎に合算して、各配送地域の必要残量を算出する。
【0030】
積載要否判定部232は、必要量算出部230により算出された必要残量と、補給車4内の残量とに基づいて、補給車4への積み込みの要否を判定する。補給車4内の残量は、例えば、配送者が携帯端末60を介して入力したものである。本例の積載要否判定部232は、必要量算出部230により算出された必要残量と、補給車4内の残量とを比較し、補給車4内の残量が必要残量よりも既定値以上多い場合に、補給車4への灯油の追加積み込みを不要であると判定し、これ以外の場合に、補給車4への灯油の追加積み込みを必要であると判定し、判定結果を配送者の携帯端末60に送信する。
…(中略)…
【0048】
図8は、残量管理システム1における補給処理(S20)を説明するフローチャートである。なお、本フローチャートは、図7を参照して説明したように、各家庭のタンクに設置された測距ユニット3が定期的に灯油残量を測定し、測定結果を管理サーバ2に集約していることを前提とする。
図8に例示するように、ステップ200(S200)において、配送者が携帯端末60を操作して、配送地域を指定すると、管理サーバ2の補給要否判定部226は、指定された配送地域に設置されたタンクの灯油残量と、過去の実績値とを収集する。過去の実績値は、実績取得部222が実績DB260から取得する。」
「【図8】(再掲)
[図:0001429490000006.jpg]
」
「【0049】
ステップ205(S205)において、補給要否判定部226は、収集した灯油残量及び実績値に基づいて、配送地域内の各戸のタンクに関して、補給の要否を判定する。
ステップ210(S210)において、配送管理プログラム22は、補給要否判定部226が少なくとも一つのタンクについて補給が必要であると判定した場合に、S215の処理に移行し、補給要否判定部226が配送地域内のいずれのタンクも補給が不要であると判定した場合に、その旨を携帯端末60に通知して、補給処理(S20)を終了する。
【0050】
ステップ215(S215)において、配送計画作成部228は、補給要否判定部226による判定結果に基づいて、灯油の配送順序及び配送ルートを決定し、決定した配送順序及び配送ルートが表示された地図情報を作成する。
ステップ220(S220)において、配送計画作成部228は、作成された地図情報に、配送地域内の灯油残量を追記して携帯端末60に送信し、配送先の追加又は削除を受け付ける。配送者が配送先を追加又は削除すると、配送計画作成部228は、これに応じて、配送計画を更新する。
【0051】
ステップ225(S225)において、必要量算出部230は、確定した配送計画に従って、収集した灯油残量に対応する補給量を算出し、算出された補給量を合算して、この配送地域の必要残量を算出する。
【0052】
ステップ230(S230)において、積載要否判定部232は、必要量算出部230により算出された必要残量と、補給車4内の残量とを比較し、補給車4内の残量が必要残量よりも多い場合に、補給車4への灯油の追加積み込みを不要であると判定してS240の処理に移行し、算出された必要残量が、補給車4内の残量以下である場合に、補給車4への灯油の追加積み込みを必要であると判定し、S235の処理に移行する。
ステップ235(S235)において、積載要否判定部232は、補給車4への灯油の追加積み込み量を、配送者の携帯端末60に送信する。
【0053】
ステップ240(S240)において、補給結果判定部234は、受信部220から受信した測距結果に基づいてタンク内の灯油残量の増加が検知された場合に、配送者の携帯端末60に対して、補給したタンクの識別情報と、補給した灯油の量の入力を要求し、入力されたタンクの識別情報及び灯油の補給量が、受信したタンク内の増加量に対応する場合に、補給作業が完了したものと判定し、入力された灯油の補給量と、受信したタンク内の増加量とが既定の対応関係に無い場合に、異常を通知する。
【0054】
ステップ245(S245)において、補給結果判定部234は、配送計画に含まれる全タンクへの補給作業を完了したと判定した場合に、補給処理(S20)を終了し、配送計画に含まれる全タンクへの補給作業を完了していないと判定した場合に、S240の処理に戻る。
【0055】
このように、残量管理システム1では、各タンクの実残量に基づいて、配送計画の作成を支援する。さらに、残量管理システム1では、配送計画で必要になる必要残量と、補給車4内の残量とを比較して、補給車4への追加の積み込みを指示する。また、残量管理システム1では、測距ユニット3が残量増加を検知したことを条件として、各タンクへの補給作業の完了を判定する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の測距ユニット3によれば、配送者や消費者がレベルゲージ900を視認することを妨げることなく、自動的にタンク内の残量を測定し、管理サーバ2に送信することができる。また、測距結果から急激に灯油残量が減少した場合には、測距ユニット3が直ちに通知を行い、灯油の漏洩又は盗難を即座に知ることができる。
また、本実施形態の残量管理システム1によれば、灯油残量の実測値に基づいて配送計画を作成できるため、配送回数や配送ルートの最適化が期待できる。さらに、配送先の残量を確認して、補給車4への積み込みの要否を判断でき、余剰な積み込み時間を抑制できる。」
(2) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2001-99696号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、当合議体により、後記ウの引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。
(ア) 【0001】~【0004】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、通信回線を用いて貯油タンクの残油量および給油量を遠隔管理するシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】貯油タンクへの給油は、残油量がわからないため、余裕を持って頻繁に巡回配送していた。給油量の課金データは、給油車に設置された給油メータにより給油者がオフラインで管理していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】貯油タンク内の液体は一般的に引火性であり、タンク内の残油量の計測時あるいは給油時に電線を用いると安全性において問題がある。
【0004】本発明は、上記安全性の課題を解決し、安全性の高い残油量データ・給油量データの集中管理と、それによる効率的な配送スケジュールを実現する貯油タンク遠隔管理システムを提供することを目的とする。」
(イ) 【0012】~【0021】、【図1】~【図8】
「【0012】
【発明の実施の形態】
【実施例1】以下、本発明における実施例を、図面を用いて説明する。図1は、本発明の第一の実施例における基本構成を示している。図1に示すように、貯油タンク1には、残油量を計測するセンサ2と、信号処理部3と、通信装置4とが設置される。さらに、コントロールセンタ5には、残油量および給油量等貯油タンクのデータを管理するソフトウェアを有するワークステーション6が設置される。」
「【図1】
[図:0001429490000007.jpg]
」
「【0013】図2は、残油量を計測するセンサシステムの原理図を示す。本実施例におけるセンサシステムは図1のセンサ2と信号処理部3から構成される。センサ2は、発光素子(レーザダイオード)13、およびその駆動回路14、受光素子(フォトダイオード)15、投光レンズ16、受光レンズ17及び反射板18から構成され、信号処理部3は受光素子15の信号処理回路19、及び駆動回路14と信号処理回路19を制御する制御回路20から構成される。」
「【図2】
[図:0001429490000008.jpg]
」
「【0014】レーザダイオード13から投光されたレーザ光21を駆動回路14によりパルス駆動して、投光レンズ16を通して貯油タンク1内のオイルの液面22上に浮かべられた反射板18に照射し、反射してきたレーザ光23を受光レンズ17で集光し、フォトダイオード15で検出する。レーザ光21の投光時の信号とフォトダイオード15の受光時の出力信号との時間差から、液面22までの距離を算定する。信号処理回路19では時間差を残油量データ(電気信号)に変換処理する。これにより、残油量を計測することができる。また、光信号(レーザ光21,23)を透過する透明な窓を有する貯油タンク1を使用することで、タンク1内に危険な電気信号線は一切不要となる。
【0015】信号処理部3は、センサ出力(受光素子15からの出力)の変換回路と、このアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、パラレル信号をシリアル信号に変換するシリアルインタフェース(以上が信号処理回路19に含まれる。)と、センサシステムのコントロール回路(制御回路)20を必要とする。図3に貯油タンク1及びコントロールセンタ5における信号処理及び通信のフローを示す。貯油タンク1側では、センサ2により貯油タンク1の残油量を計測し、計測値を変換回路により時間差(光信号)から残油量データ(電気信号)に変換し、さらにA/Dコンバータによりアナログ信号からデジタル信号に変換し、前回の残油量データと比較することによりデータを確認し、残油量データが異常な場合は残油量計測に戻り、妥当な残油量データの場合はシリアルインタフェースによりパラレル信号からシリアル信号に変換し、通信装置4によりコントロールセンタ5にデータ送信する。コントロールセンタ5側では、まず貯油タンク1側に定期センシング指令を出し、貯油タンク1から送信されたデータを受信し、パリティチェック等の方法により受信データを確認し、エラーの場合は再度定期センシング指令を出し、正常な場合はシリアルインタフェースによりシリアル信号からパラレル信号に変換し、変換後のデータを保存する。光信号の時間差データを残油量データに変換する必要があるが、このデータ変換は上記説明のように貯油タンクの信号処理部3において行うこともできるし、コントロールセンタ5に送信後、シリアル-パラレル変換後でデータ保存前に変換しても良い。」
「【図3】
[図:0001429490000009.jpg]
」
「【0016】通信装置4は、モデムを用いて構成するか、NCU(ネットワークコントロールユニット)あるいはPOS(ポイントオブセールス)等を利用することもできる。図4に、残油量データに関する貯油タンク1とコントロールセンタ5間のデータ通信の制御フローを示す。貯油タンク1はコントロールセンタ5から定期センシング指令を受信し、その受信のタイミングで信号処理部3の出力データ(残油量データ(或は時間差データ))をコントロールセンタ5へ送信する。或いは、信号処理部3にタイマを有することによりコントロールセンタ5からの呼び出し(センシング指令)なしに、残油量データ(或は時間差データ)を送信する方法もあり、モデムを用いる場合にはリンギングがなく都合が良い。また、給油時のフローも図4に示している。給油前に残油量を計測し、そのデータを貯油タンク1からコントロールセンタ5へ送信する。コントロールセンタ5で適切なデータを受信できれば、給油開始を許可する信号(給油OK信号)を貯油タンク1に送信する。コントロールセンタ5で適切なデータを受信できなければ、データの再送信要求をする。貯油タンク1は給油開始を許可する信号を確認したら給油を行い、給油後の残油量データをコントロールセンタ5送信する。コントロールセンタ5では適切な残油量データを受信できれば、給油前後の残油量データから給油データを算出することができる。適切な残油量データを受信できなければ、残油量データの再送信要求をする。」
「【図4】
[図:0001429490000010.jpg]
」
「【0017】
【実施例2】図5は、本発明の第二の実施例における基本構成を示している。本実施例においては、第一の実施例のセンサシステムの構成に加えて、給油車7に搭載された計量器8で計測された給油量データを光信号に変換する光変換器9と当該光信号を転送する光送受信装置10とが給油車7の送油口近傍に設置される。光送受信装置10は、給油ホースに沿って引かれた光信号線11の一端に接続され、この光信号線11の他端には第一の光コネクタが取付けられており、他方、貯油タンク1の給油口近傍に設置された光接続装置12に搭載された第二の光コネクタと給油時に接続される。計量器8で給油車7内の給油量データ(残油量)を測定し、計量器8で得られた給油量データを光変換器9により光信号に変換し、貯油タンク1に設けた信号処理部3に光リンクにより送信し、さらに信号処理部3で処理した信号をコントロールセンタ5に転送することによって、給油量データをオンラインで処理することが可能となる。このように、データ転送を光リンクで行うようにすれば、電気接点が不要で、より安全なシステムとすることができる。なお、計量器8のメータデータ(給油車7からの給油量データ)にデジタル表示されたものを用いれば光パルス信号への変換が比較的容易であり、これにシリアルインタフェースと発光素子を使用すれば光パルス信号に変換できる。」
「【図5】
[図:0001429490000011.jpg]
」
「【0018】図6は、残油量を計測するセンサシステムの原理図を示す。センサ2は、発光素子(発光ダイオード)24およびその駆動回路25、受光素子(位置検出素子:数mmの長さにわたり受光領域を有する素子)26、投光レンズ16、受光レンズ17及び反射板18から構成され、信号処理部3は受光素子26の信号処理回路27、及び駆動回路14と信号処理回路27を制御する制御回路28から構成される。発光ダイオード24から駆動回路25により投光された赤外線あるいは可視光29は、投光レンズ16により液面22上に浮かべられた反射板18に照射され、反射板18からの赤外線あるいは可視光29の反射光30を、受光レンズ17で位置検出素子26上に集光させ、位置検出素子26の位置情報から三角測量の原理により反射板18までの距離を算定する。信号処理回路27では位置情報を光信号から電気信号に変換して処理する。これにより、残油量を計測することができる。本実施例では、計量器8の給油量データを転送できるようにしたため、位置計測の精度は比較的低くてもよく、本センサのように安価な方式を用いることができる。その他センサとしては、超音波式や油圧測量式等が考えられるが、安全性を考慮すると、本実施例のように電線を貯油タンク1の中に必要としない方式が望ましい。」
「【図6】
[図:0001429490000012.jpg]
」
「【0019】図7は、給油車7と貯油タンク1間の給油量データ転送の制御フローを示す。給油車7の給油口に接続された給油ホースの先端の給油ノズルが貯油タンク1の給油口に給油可能なところまで差し込まれると、光信号線11先端の第一の光コネクタと光接続装置12に搭載された第二の光コネクタが接続され、固定され、光リンクが成立する。光リンクの成立が確認されると、光信号線11を通して貯油タンク1から給油車7に光接続確認信号が送られ、給油車7からの光信号によりセンサシステムを給油モードにする。それと同時に、第一の光コネクタと第二の光コネクタが接続されることにより、給油ノズルのレバーのロックが解け給油が開始される。送油口と給油口が給油ホースで接続されたときにのみ第一の光コネクタ及び第二の光コネクタが光学的に接続され、その後給油が開始されるので、給油開始時から確実にオイルを貯油タンクに給油でき、かつ給油量データを信号処理部3に送信できる。給油中は液面センサ2により貯油タンク1内の残油量を計測しており、満タン近くになると貯油タンク1は光信号線11を通して給油停止の信号(満タン信号)を給油車7へ送信する。これにより、給油車7は給油を終了し、給油中のオーバーフロー事故を防止することができる。なお、満タン近くになる迄は給油量データの再信送要求を続ける。給油終了後、計量器8の給油量データが貯油タンク1の信号処理部3に転送される。給油量データの受信が確認されると、貯油タンク1はランプあるいはブザー等の信号を出力し、給油車7に接続解除の許可を知らせ、光リンクが解除される。給油前後に貯油タンク1側で残油量の計測を行うようにしておけば給油量データの妥当性をチェックすることも可能であり、より信頼性の高いシステムとすることもできる。この場合に、妥当な給油量データを受信すれば、給油モードを終了するようにできる。」
「【図7】
[図:0001429490000013.jpg]
」
「【0020】図8は、貯油タンク1における信号処理及び通信のフローを示す。実施例1のフローに次のフローが追加される。図7で説明したように給油車7からの光信号によりセンサシステムは給油モードになり、給油が行われる。貯油タンク1が満タン近くになると光信号線11を通して給油停止の信号(満タン信号)を給油車7へ送信する。給油後には給油車7から給油量データを貯油タンク1へ送信する。さらにシリアルインタフェースによりシリアル信号からパラレル信号に変換し、給油前後の残油量データとの比較によりデータを確認し、矛盾が生じた場合は給油量データ受信状態に戻り、給油量データが妥当な場合はシリアルインタフェースによりパラレル信号からシリアル信号に変換し、変換後のデータを貯油タンク1からコントロールセンタ5にデータ送信する。計量器8の計量データおよび位置検出素子26の位置データは、給油量および残油量データに変換する必要があるが、本実施例のように(図では「データ変換」と示す。)貯油タンク1の信号処理部3において行うこともできるし、コントロールセンタ5に送信後変換しても良い。コントロールセンタ5において変換する方が、貯油タンク1における信号処理部3を簡略化できるが、温度等の補正を行う場合には送信するデータが多くなる。以上のようにして、コントロールセンタ5において各貯油タンク1の残油量および課金情報を集中管理する。」
「【図8】
[図:0001429490000014.jpg]
」
「【0021】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の貯油タンク遠隔管理システムを用いることによって、残油量、給油量および課金情報をセンタでデータベースとして集中管理することができるため、管理コストを削減することができる。過去の使用統計から使用量を予測することも可能となるため、適正な在庫管理が行え、かつ、給油車を無駄なく効率的に巡回させる等、より効率的な給油スケジュールを立てることができるため、配送にかかる費用を削減することができる。また、ユーザは給油依頼の連絡をする手間をかけなくて済む。」
イ 引用文献1の記載から読み取れる事項の認定
(ア) 引用文献1に記載の第二の実施例(【0017】~【0020】、【図5】~【図8】)について、引用文献1の【0017】では、「本実施例においては、第一の実施例のセンサシステムの構成に加えて、給油車7に搭載された計量器8で計測された給油量データを光信号に変換する光変換器9と当該光信号を転送する光送受信装置10とが給油車7の送油口近傍に設置される。」と記載されるから、第二の実施例が、第一の実施例と同様、以下a~cを有することは明らかである。
a 「センサ2と信号処理部3から構成される」「センサシステム」(【0013】)
b 「残油量を計測するセンサ2と、信号処理部3と、通信装置4とが設置される」「貯油タンク1」(【0012】)
c 「残油量および給油量等貯油タンクのデータを管理するソフトウェアを有するワークステーション6が設置される」「コントロールセンタ5」(【0012】)
(イ) また、第二の実施例が、第一の実施例と同様、「通信装置4によりコントロールセンタ5にデータ送信」(【0015】)し、「コントロールセンタ5側では」、「貯油タンク1から送信されたデータを受信し」、「データを保存する」(【0015】)ことは、明らかである。
(ウ) 前記(ア)、(イ)から、引用文献1には、第二の実施例の構成として、以下の事項が開示されていると認められる(以下「第二の実施例認定事項」という。)。
<第二の実施例認定事項>
「センサ2と信号処理部3から構成されるセンサシステムと、
残油量を計測するセンサ2と、信号処理部3と、通信装置4とが設置される貯油タンク1と、
残油量および給油量等貯油タンクのデータを管理するソフトウェアを有するワークステーション6が設置されるコントロールセンタ5を備え、
通信装置4によりコントロールセンタ5にデータ送信し、
コントロールセンタ5側では、貯油タンク1から送信されたデータを受信し、データを保存するものであること。」
ウ 引用発明の認定
前記イにおいて認定した事項及び前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、第二の実施例(【0017】~【0020】、【図5】~【図8】)に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所等を括弧内に示した。
<引用発明>
「通信回線を用いて貯油タンクの残油量および給油量を遠隔管理するシステムにおける方法であって、(【0001】)
前記遠隔管理するシステムは、
センサ2と信号処理部3から構成されるセンサシステムと、
残油量を計測するセンサ2と、信号処理部3と、通信装置4とが設置される貯油タンク1と、
残油量および給油量等貯油タンクのデータを管理するソフトウェアを有するワークステーション6が設置されるコントロールセンタ5を備え、(第二の実施例認定事項)
センサ2は、発光素子(発光ダイオード)24およびその駆動回路25、受光素子(位置検出素子:数mmの長さにわたり受光領域を有する素子)26、投光レンズ16、受光レンズ17及び反射板18から構成され、(【0018】)
信号処理部3は受光素子26の信号処理回路27、及び駆動回路14と信号処理回路27を制御する制御回路28から構成され、(【0018】)
発光ダイオード24から駆動回路25により投光された赤外線あるいは可視光29は、投光レンズ16により液面22上に浮かべられた反射板18に照射され、反射板18からの赤外線あるいは可視光29の反射光30を、受光レンズ17で位置検出素子26上に集光させ、位置検出素子26の位置情報から三角測量の原理により反射板18までの距離を算定し、(【0018】)
信号処理回路27では位置情報を光信号から電気信号に変換して処理し、これにより、残油量を計測することができ、(【0018】)
通信装置4によりコントロールセンタ5にデータ送信し、
コントロールセンタ5側では、貯油タンク1から送信されたデータを受信し、データを保存し、(第二の実施例認定事項)
給油車7に搭載された計量器8で計測された給油量データを光信号に変換する光変換器9と当該光信号を転送する光送受信装置10とが給油車7の送油口近傍に設置され、(【0017】)
計量器8で給油車7内の給油量データ(残油量)を測定し、計量器8で得られた給油量データを光変換器9により光信号に変換し、貯油タンク1に設けた信号処理部3に光リンクにより送信し、さらに信号処理部3で処理した信号をコントロールセンタ5に転送することによって、給油量データをオンラインで処理することが可能であり、(【0017】)
コントロールセンタ5において各貯油タンク1の残油量および課金情報を集中管理するものであり、(【0020】)
適正な在庫管理が行え、かつ、給油車を無駄なく効率的に巡回させる等、より効率的な給油スケジュールを立てることができ、(【0021】)
ユーザは給油依頼の連絡をする手間をかけなくて済む、(【0021】)
方法。」
(3) 引用文献7の記載事項及び技術常識1の認定
ア 引用文献7に記載された事項
令和5年11月30日付けの補正の却下の決定において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2001-106300号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。
「【0001】本発明は、ガソリンスタンド、工場、病院等の施設に設置されたタンク内の液体等のデータを遠隔地の事務所等に伝送するための装置に関する。
…(中略)…
【0014】液体を配送先に運ぶタンクローリー車に積載する液量と、配送先のタンクへ実際に荷卸し可能な液量に食い違いが生じ、荷卸し可能な液量より多く積載した場合は、その余った液体を持ち帰ることになり、無駄が生じてしまう。また、逆に積載量が少ない場合は再度配送する無駄が生じる。」
イ 技術常識1の認定
前記アに摘記した引用文献7の記載事項に例示されるように、以下技術事項は当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」という。)
<技術常識1>
「液体を配送先に運ぶ車両において、配送先のタンクに必要な液量をできるだけ過不足なく積載することが望ましいこと。」
(4) 引用文献8の記載事項及び技術常識2の認定
ア 引用文献8に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2016-120941号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は運搬車両および運搬システムに関し、特に、予定した量の液体を貯留タンクに効率よく供給できる運搬車両および運搬システムに関するものである。
…(中略)…
【0016】
バルクローリ1は車載タンク2を有し、その車載タンク2には、供給基地(ガス製造工場など)において、不図示の充填系統を介してLPGが充填される。
…(中略)…
【0039】
機能選択画面100は、各種の機能を作業者が選択するための画面である。機能選択画面100には、図4(a)に示す通り、業務準備ボタン101と供給作業ボタン102と集計表示ボタン103と各種設定ボタン104とが表示され、CPU71は、いずれのボタンがタッチ操作されたかを判断する(S12)。」
「【図4(a)】
[図:0001429490000015.jpg]
」
「【0045】
CPU71は、S12の判断において集計ボタン103がタッチ操作されたと判断した場合(S12:集計ボタン103)、タッチパネルディスプレイ61に図4(c)に示す集計画面500を表示する(S15)。集計画面500は、種々の集計を行った結果が表示される画面である。図4(c)に示す通り、集計画面500には、合計量欄501と必要量欄502と積載量欄503と過不足量欄504とが表示される。なお、S15で集計画面500が表示された時点では、合計量欄501と必要量欄502と積載量欄503と過不足量欄504とは空欄である。」
「【図4(c)】
[図:0001429490000016.jpg]
」
「【0046】
CPU71は、集計画面500を表示した後(S15)、その集計画面500の各欄に表示する値を計算すべく、図9を参照して後述する集計処理(S700)を実行する。これにより、合計量欄501には、選択ルートテーブル74bSの予定供給量74bc3の合計、即ち、現在の運搬ルート全体に亘り供給が予定されるLPGの総量が表示される。また、必要量欄502には、選択ルートテーブル74bSのレコード74brのうち、供給済みフラグ74bc4が1でないレコード74brの予定供給量74bc3の合計、即ち、現在の運搬ルートにおいて以後供給が予定されるLPGの総量が表示される。積載量欄503には、車載タンク2内のLPGの量が表示される。過不足量欄504には、積載量欄503に表示された量から必要量欄502に表示された量を減じた量、即ち、現在の運搬ルートにおけるLPGの過不足量が表示される。作業者は、合計量欄501又は必要量欄502の表示によって必要なLPGの量を容易に把握でき、過不足量欄504の表示によって車載タンク2内のLPGの過不足を容易に把握できる。
…(中略)…
【0072】
CPU71は変数iに1を加算し(S707)、その結果、変数iが選択ルートテーブル74bSのレコード74brの数以下であれば(S708:Yes)、処理をS703へと戻す。即ち、CPU71は、S708の判断において変数iが選択ルートテーブル74bSのレコード74brの数より大きいと判断されるまで(S708:No)、S703からS708の処理を繰り返す。CPU71が変数iを1ずつ変化させながらS703からS708の処理を繰り返すことによって、変数Xは選択ルートテーブル74bSの全てのレコード74brの予定供給量74bc3の合計、即ち、現在の運搬ルート上の全ての顧客に対して供給するLPGの量の合計とされる。一方、変数Yは選択ルートテーブル74bSのレコード74brのうち、供給済みフラグ74bc4が1でないレコード74brの予定供給量74bc3の合計、即ち、現在の運搬ルートにおいて供給前のLPGの予定供給量の合計とされる。
…(中略)…
【0074】
次にCPU71は、変数Yを集計画面500の必要量欄502に表示する(S710)。変数Yは、前述した通り、供給前の予定供給量の合計であるので、作業者は必要量欄502の表示を確認すれば、以後の供給に必要なLPGの総量を容易に把握できる。
【0075】
次にCPU71は、フロートセンサ65から車載タンク2内のLPGの積載量を取得し(S711)、取得した積載量を集計画面500の積載量欄503に表示する(S712)。CPU71は、S713の処理で取得した積載量から変数Yを減算して「過不足量」を算出し(S713)、算出した過不足量を集計画面500の過不足量欄504に表示する(S714)。過不足量は、積載量から必要量欄502に表示した変数Yを減算した値であり、以後の供給に必要なLPGの総量に対する車載タンク2内のLPGの過不足を示すものである。
…(中略)…
【0077】
CPU71は過不足量を集計画面500に表示した後(S714)、過不足量が0未満であるかを判断する(S715)。CPU71は過不足量が0より大きいと判断した場合(S715:No)、集計処理(S700)を終了する。一方、CPU71は過不足量が0未満であると判断した場合には(S715:Yes)、タッチパネルディスプレイ61に積載量が不足している旨の警告メッセージを表示する(S716)。これにより、作業者は残りの運搬業務において必要なLPGに対して車載タンク2内のLPGが不足することを容易に認知できるので、供給基地への帰還の要否をより適切に判断できる。その後、CPU71は集計処理(S700)を終了する。
…(中略)…
【0090】
例えば上記各実施形態では、LPGを積載する車載タンク2を備えるバルクローリ1に本発明を適用することを説明したが、LPGやガソリン等の液体燃料の他、飲料や薬品等の種々の液体を車載タンクに積載して運搬する運搬車両に本発明を適用することは当然可能である。また、上記実施形態では、顧客が所有する貯留タンク90にLPGを供給することを説明したが、液体の供給先は必ずしも固定的に設置されたタンクでなくてもよく、例えばドラム缶への灯油の供給であってもよい。液体の種類や供給先の態様に依らず、予め定められた量の液体を供給する制御は本発明と同様に可能だからである。」
イ 技術常識2の認定
前記アに摘記した引用文献8の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識2」という。)
<技術常識2>
「液体を供給する運搬車両において、供給に必要な量の合計値と車載タンクの積載残量に基づいて、車載タンクへの充填の要否を判断すること。」
(5) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点(残量管理方法)
「残量管理方法」の発明である本件補正発明と「通信回線を用いて貯油タンクの残油量および給油量を遠隔管理するシステムにおける方法」の発明である引用発明は、「残量管理方法」の発明である点において一致する。
(イ) 構成A~構成Eの観点(残量管理システムの構成)
a 構成A~構成Eは、「タンクのフロート式液面計に設置された測距センサと、前記測距センサによる測距結果を送信する送信装置と、前記送信装置により送信された測距結果を受信する管理装置と、複数の前記タンクに対して補給を行う補給車とを備えた残量管理システム」における「残量管理方法」であることである。
b(a) 構成Aの「測距センサ」について検討する。
(b) 引用発明において、「貯油タンク1」は「残油量を計測するセンサ2と、信号処理部3と」「が設置される」ものであるところ、「発光素子(発光ダイオード)24およびその駆動回路25、受光素子(位置検出素子:数mmの長さにわたり受光領域を有する素子)26、投光レンズ16、受光レンズ17及び反射板18から構成され」る「センサ2」と、「受光素子26の信号処理回路27、及び駆動回路14と信号処理回路27を制御する制御回路28から構成され」る「信号処理部3」から構成される「センサシステム」は、「発光ダイオード24から駆動回路25により投光された赤外線あるいは可視光29は、投光レンズ16により液面22上に浮かべられた反射板18に照射され、反射板18からの赤外線あるいは可視光29の反射光30を、受光レンズ17で位置検出素子26上に集光させ、位置検出素子26の位置情報から三角測量の原理により反射板18までの距離を算定」するものであるから、引用発明の「センサシステム」は本件補正発明の「タンク」「に設置された測距センサ」に相当する。
(c) 引用発明の「反射板18」は「液面22上に浮かべられ」ているから、本件補正発明の「フロート」に相当するものの、引用発明の当該「反射板18」がフロート式液面計を構成しているといえるか明らかでない。
c(a) 構成Bの「送信装置」について検討する。
(b) 引用発明では、「センサシステム」が、「反射板18までの距離を算定」することで、「残油量を計測」し、「通信装置4」が「コントロールセンタ5にデータ送信」するものであり、ここで、前記b(b)で検討したとおり、「センサシステム」は本件補正発明の「測距センサ」に相当する。
(c) また、本願明細書において「測距結果に基づいて、灯油残量を推定し、推定された灯油残量を測距結果として管理サーバ2に送信する。」(【0021】)と記載されていることから、本件補正発明の「測距結果」には、測距した結果に基づいて推定された油の「残量」も含まれると解されるところ、引用発明の、「センサシステム」が「反射板18までの距離を算定」することで「計測」した「残油量」は、本件補正発明の「測距結果」に相当する。
(d) 前記(b)、(c)から、引用発明の「センサシステム」が「計測」した「残油量」を「データ送信」する「通信装置4」は、本件補正発明の「前記測距センサによる測距結果を送信する送信装置」に相当する。
d(a) 構成Cの「管理装置」について検討する。
(b) 引用発明では、「コントロールセンタ5側では、貯油タンク1から送信されたデータを受信」する。
(c) ここで、「データ」には、「残油量」が含まれ、前記c(c)で検討したとおり、「残油量」は、本件補正発明の「測距結果」に相当する。
(d) また、「貯油タンク1から送信」とは、「貯油タンク1」が有する「通信装置4」から「送信」することを意味し、ここで、前記c(d)で検討したとおり、「通信装置4」は、本件補正発明の「送信装置」に相当する。
(e) 前記(b)~(d)の検討から、引用発明の「貯油タンク1から送信されたデータを受信」する「コントロールセンタ5」は、本件補正発明の「前記送信装置により送信された測距結果を受信する」「管理装置」に相当する。
e(a) 構成Dの「補給車」について検討する。
(b) 引用発明の「給油車7」は「巡回」するものであり、「巡回」である以上、給油の対象(貯油タンク1)が複数あることが前提になるから、「給油車7」の「巡回」は、複数の「貯油タンク1」に給油を行っていくものである。
(c) ここで、引用発明の「貯油タンク1」は本件補正発明の「タンク」に相当し、引用発明の「給油車7」は本件補正発明の「補給車」に相当するところ、引用発明の「巡回」する「給油車7」は、本件補正発明の「複数の前記タンクに対して補給を行う補給車」に相当する。
f(a) 構成Eの「残量管理システム」について検討する。
(b) 引用発明の、「センサシステム」、「通信装置4」、「コントロールセンタ5」、「給油車7」を備えた「通信回線を用いて貯油タンクの残油量および給油量を遠隔管理するシステム」は、本件補正発明の「測距センサと、」「送信装置と、」「管理装置と、」「補給車とを備えた残量管理システム」に相当する。
g 前記(ア)で検討したとおり、本件補正発明と引用発明は「残量管理方法」の発明である点において一致することを踏まえると、前記b~fの検討から、本件補正発明と引用発明の構成A~構成Eの観点における一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 構成A~構成Eの観点における一致点
「タンクに設置された測距センサと、前記測距センサによる測距結果を送信する送信装置と、前記送信装置により送信された測距結果を受信する管理装置と、複数の前記タンクに対して補給を行う補給車とを備えた残量管理システム」における「残量管理方法」である点。
(b) 構成A~構成Eの観点における相違点
本件補正発明では、「測距センサ」が「タンクのフロート式液面計に設置された」ものであるのに対して、
引用発明の「センサシステム」の「反射板18」は、フロート式液面計を構成しているといえるか明らかでない点。
(ウ) 構成A1の観点(距離測定ステップ)
a 構成A1は、「前記測距センサが、タンクのフロート式液面計に関して、フロート又はこれに連動する残量表示板までの距離を測定するステップ」を有することである。
b 引用発明では、「センサシステム」により、「反射板18までの距離を算定」しており、ここで、前記(イ)b(b)、(c)で検討したとおり、引用発明の「センサシステム」、「反射板18」は、本件補正発明の「測距センサ」、「フロート」にそれぞれ相当する。
c 前記bから、引用発明の「センサシステム」が「反射板18までの距離を算定」することは、本件補正発明の「前記測距センサが」、「フロート」「までの距離を測定する」ことに相当する。
d その一方で、前記(イ)b(c)で検討したとおり、引用発明の「反射板18」はフロート式液面計を構成しているか不明であるから、引用発明では「タンクのフロート式液面計に関して」、「反射板18」までの距離を測定しているか不明である。
e 前記b~dから、本件補正発明と引用発明の構成A1の観点における一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 構成A1の観点における一致点
「前記測距センサが、フロート又はこれに連動する残量表示板までの距離を測定するステップ」を有する点。
(b) 構成A1の観点における相違点
本件補正発明が「タンクのフロート式液面計に関して、フロート又はこれに連動する残量表示板までの距離を測定」しているのに対して、
引用発明においては、「タンクのフロート式液面計に関して」、「反射板18」までの距離を測定しているか不明である点。
(エ) 構成B1の観点(送信ステップ)
a 構成B1は「前記送信装置が、前記測距センサによる測距結果を管理装置に送信するステップ」を有することである。
b 引用発明では、「通信装置4」が、「センサシステム」が「計測」した「残油量」を「コントロールセンタ5」に「データ送信」し、ここで、前記(イ)b(b)、(イ)c(c)、(イ)c(d)、(イ)d(e)にて検討したとおり、「通信装置4」、「センサシステム」、「残油量」、「コントロールセンタ5」は、本件補正発明の「送信装置」、「測距センサ」、「測距結果」、「管理装置」にそれぞれ相当するところ、本件補正発明と引用発明は、構成B1の観点において、次の点で一致する。
「前記送信装置が、前記測距センサによる測距結果を管理装置に送信するステップ」を有する点。
(オ) 構成C1の観点(受信ステップ)
a 構成C1は「前記管理装置が、前記送信装置から測距結果を受信するステップ」を有することである。
b 引用発明では、「コントロールセンタ5側」が、「通信装置4」が設置される「貯油タンク1」から「残油量」を含む「データ」を「受信」しており、ここで、前記(イ)c(c)、(イ)c(d)、(イ)d(e)にて検討したとおり、「コントロールセンタ5」、「通信装置4」、「残油量」は、本件補正発明の「管理装置」、「送信装置」、「測距結果」にそれぞれ相当するところ、本件補正発明と引用発明は、構成C1の観点において、次の点で一致する。
「前記管理装置が、前記送信装置から測距結果を受信するステップ」を有する点。
(カ) 構成C2の観点(補給の要否を判定するステップ)
a 構成C2は「前記管理装置が、受信した測距結果に基づいて、前記タンクに対する補給の要否を判定するステップ」を有することである。
b 引用発明では、「貯油タンク1」から「残油量」を含む「データ」を「受信」する「コントロールセンタ5において各貯油タンク1の残油量」「を集中管理」しており、それにより「ユーザは給油依頼の連絡をする手間をかけなくて済む」ものであるから、「コントロールセンタ5」側において、「貯油タンク1」への給油の必要性を判定していることは明らかである。
c 前記判定について、「コントロールセンタ5」が「各貯油タンク1の残油量」を「集中管理」しているのであれば、当該判定は「集中管理」している「残油量」に少なくとも基づいていること、また、当該「残油量」が「貯油タンク1」から「受信」した「残油量」に基づいていることも自明である。
d 前記b、cから、引用発明では、「コントロールセンタ5」において、「受信」した「残油量」に基づいて「貯油タンク1」への給油の必要性を判定しており、ここで、前記(イ)c(c)、(イ)d(e)、(イ)e(c)で検討したとおり、「コントロールセンタ5」、「残油量」、「貯油タンク1」は本件補正発明の「管理装置」、「測距結果」、「タンク」にそれぞれ相当するところ、本件補正発明と引用発明は、構成C2の観点において、次の点で一致する。
「前記管理装置が、受信した測距結果に基づいて、前記タンクに対する補給の要否を判定するステップ」を有する点。
(キ) 構成C3の観点(必要残量を算出するステップ)
a 構成C3は「前記管理装置が、前記補給車の配送地域に設置された少なくとも一つのタンクに関する測距結果に基づいて、各タンクに関する補給量を算出し、算出された補給量を配送地域毎に合算して、この補給車に必要な必要残量を算出するステップ」を有することである。
b 引用発明において、「給油車7」が「巡回」する複数の「貯油タンク1」が設置された地域は、「給油車7」の配送地域ということができ、ここで、前記(イ)e(c)で検討したとおり、「給油車7」、「貯油タンク1」は、本件補正発明の「補給車」、「タンク」にそれぞれ相当するところ、引用発明の「給油車7」が「巡回」する複数の「貯油タンク1」は、本件補正発明の「補給車の配送地域に設置された少なくとも一つのタンク」に相当する。
c また、引用発明の、「コントロールセンタ5」が「残油量」を「集中管理」する「各貯油タンク1」には、「給油車7」が「巡回」する複数の「貯油タンク1」が含まれるから、「コントロールセンタ5」は、「給油車7」が「巡回」する複数の「貯油タンク1」の「残油量」を取得している。
d ここで、前記(イ)c(c) 、(イ)d(e)、(キ)bで検討したとおり、引用発明の「コントロールセンタ5」、「給油車7」が「巡回」する複数の「貯油タンク1」、「残油量」は、本件補正発明の「管理装置」、「補給車の配送地域に設置された少なくとも一つのタンク」、「測距結果」にそれぞれ相当するから、本件補正発明と引用発明は「前記管理装置が、前記補給車の配送地域に設置された少なくとも一つのタンクに関する測距結果」を取得する点で一致する。
e その一方で、引用発明では、「給油車7」の「巡回」に関する具体的な構成が不明であり、本件補正発明の構成C3に相当するステップを備えているか明らかでない。
f 前記b~eの検討から、本件補正発明と引用発明の構成C3の観点における一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 構成C3の観点における一致点
「前記管理装置が、前記補給車の配送地域に設置された少なくとも一つのタンクに関する測距結果を取得」している点。
(b) 構成C3の観点における相違点
本件補正発明が「前記管理装置が、前記補給車の配送地域に設置された少なくとも一つのタンクに関する測距結果に基づいて、各タンクに関する補給量を算出し、算出された補給量を配送地域毎に合算して、この補給車に必要な必要残量を算出するステップ」を有するのに対して、
引用発明はそのようなステップを有するか明らかでない点。
(ク) 構成C4の観点(積み込みの要否を判定するステップ)
a 構成C4は「前記管理装置が、算出された必要残量と、前記補給車内の残量とに基づいて、前記補給車への積み込みの要否を判定するステップ」を有することである。
b 引用発明では、「給油車7」の「巡回」に関する具体的な構成が不明であり、本件補正発明の構成C4に相当するステップを備えているか明らかでないから、本件補正発明と引用発明は、次の点において相違する。
本件補正発明が「前記管理装置が、算出された必要残量と、前記補給車内の残量とに基づいて、前記補給車への積み込みの要否を判定するステップ」を有するのに対して、
引用発明はそのようなステップを有するか明らかでない点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「タンクに設置された測距センサと、
前記測距センサによる測距結果を送信する送信装置と、
前記送信装置により送信された測距結果を受信する管理装置と、
複数の前記タンクに対して補給を行う補給車と
を備えた残量管理システムにおいて、
前記測距センサが、フロート又はこれに連動する残量表示板までの距離を測定するステップと、
前記送信装置が、前記測距センサによる測距結果を管理装置に送信するステップと、
前記管理装置が、前記送信装置から測距結果を受信するステップと、
前記管理装置が、受信した測距結果に基づいて、前記タンクに対する補給の要否を判定するステップと、を有し、
前記管理装置が、前記補給車の配送地域に設置された少なくとも一つのタンクに関する測距結果を取得する、
残量管理方法。」
である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
本件補正発明においては、「測距センサ」が「タンクのフロート式液面計に設置された」ものであり、「タンクのフロート式液面計に関して、フロート又はこれに連動する残量表示板までの距離を測定」しているのに対して、
引用発明の「センサシステム」の「反射板18」は、フロート式液面計を構成しているといえるか明らかでない点。
b 相違点2
本件補正発明が「前記管理装置が、前記補給車の配送地域に設置された少なくとも一つのタンクに関する測距結果に基づいて、各タンクに関する補給量を算出し、算出された補給量を配送地域毎に合算して、この補給車に必要な必要残量を算出するステップ」と、「前記管理装置が、算出された必要残量と、前記補給車内の残量とに基づいて、前記補給車への積み込みの要否を判定するステップ」を有するのに対して、
引用発明はこれらのステップを有するか明らかでない点。
(6) 判断
ア 相違点1について
(ア)a 引用発明では、「液面22上に浮かべられた反射板18」「までの距離を算定し、」「残油量を計測」しており、ここで、「反射板18」は「液面22上に浮かべられ」ているからフロートといえ、かつ、液面22に係る液面計を構成するから、「反射板18」はフロート式液面計を構成するものといえるところ、前記相違点1は実質的な相違点を構成しない。
b 仮に、フロート式液面計が、フロートによりタンクの残油量を視認できるものを示しているとしても、引用発明において、「貯油タンク1」の所有者等が必要に応じて残油量を確認可能とすることは、当業者が当然に配慮すべき事項であり、液体を貯蔵するタンクにおいて、タンク外から目視可能なフロートにより残油量を確認するフロート式液面計を備える構成は文献を例示するまでもない周知技術であるところ、引用発明の「液面22上に浮かべられた反射板18」を「貯油タンク1」外から目視可能なものとして、所有者等が残油量を確認可能なフロート式液面計を構成することは、当然の配慮に基づいた設計事項にすぎない。
(イ) ここで、引用発明において、「反射板18」がフロート式液面計を構成すると、「センサシステム」により、「液面22上に浮かべられた反射板18」「までの距離を算定」することは、「貯油タンク1」のフロート式液面計に関して、「反射板18」までの距離を測定することとなる。
(ウ) 前記(ア)、(イ)から、引用発明において、前記相違点1は実質的な相違点を構成せず、仮に相違点であるとしても、相違点1に係る本件補正発明の構成を備えることは、設計事項にすぎない。
イ 相違点2について
(ア) 必要残量の算出について
a 引用発明は、「給油車を無駄なく効率的に巡回させる等、より効率的な給油スケジュールを立てることができ[る]」ものであるところ、前記(5)ア(イ)e(b)及び同(キ)bにおいて検討したとおり、「巡回」である以上、給油の対象(貯油タンク1)が複数あることが前提になるとともに、「給油車7」が「巡回」する複数の「貯油タンク1」が設置された地域は、「給油車7」の配送地域ということができる。
b そして、「液体を配送先に運ぶ車両において、配送先のタンクに必要な液量をできるだけ過不足なく積載することが望ましいこと。」は技術常識であるところ(前記(3)イの「技術常識1」を参照。)、配送先のタンクに必要な液量をできるだけ過不足なく積載するためには、配送先のタンクに必要な液量を把握する必要があることは、自明の事項である。
c ここで、引用発明の「コントロールセンタ5」は、「給油車7」が「巡回」する複数の「貯油タンク1」の「残油量」を取得しているから、配送先のタンクに必要な液量は、コントロールセンタ5が各貯油タンク1の残油量データを用いて求めることが可能なことは明らかである。
d そうすると、引用発明において、配送先のタンクに必要な液量をできるだけ過不足なく積載すべく、コントロールセンタ5(管理装置)において、貯油タンク1の残油量(測距結果)からその貯油タンク1に必要な液量を算出してから、巡回する複数の貯油タンク1それぞれに必要な液量を合算することにより、配送先のタンクに必要な液量(補給車に必要な必要残量)を求めることは、当業者にとって容易である。
e また、配送先が多数になったり配送先が広範囲に及んだりする場合に、配送地域を分担して複数の車両で配送することは、一般的な商慣行であるから、そのような場合に、前記「必要な液量」の「合算」が配送地域毎に行われることも、自明なことにすぎない。
(イ) 補給車への積み込みの要否の判定について
a 引用発明は、「給油車を無駄なく効率的に巡回させる等、より効率的な給油スケジュールを立てることができ[る]」ものであるところ、無駄なく効率的な巡回をすべく効率的な給油スケジュールを立てる際に、給油車への給油の必要性は当業者が通常考慮することである。
b ここで、「液体を供給する運搬車両において、供給に必要な量の合計値と車載タンクの積載残量に基づいて、車載タンクへの充填の要否を判断すること。」は技術常識であるから(前記(4)イの「技術常識2」を参照。)、前記(ア)dにおいて検討したとおり、引用発明のコントロールセンタ5において、配送先のタンクに必要な液量(補給車に必要な必要残量)を算出するのであれば、コントロールセンタ5が、算出された必要な液量(必要残量)と車載タンクの積載残量(補給車内の残量)とに基づいて、車載タンクへの充填(補給車への積み込み)の要否を判断するように構成することは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
(ウ) 相違点2についての判断のまとめ
前記(ア)及び(イ)において検討したとおり、引用発明において、技術常識1及び技術常識2を考慮して、前記相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 総合評価
前記ア~イにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点1~2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、技術常識1及び技術常識2に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1~2を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、技術常識1及び技術常識2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張内容
請求人は審判請求書において、本件補正後の請求項1に係る発明について、いずれの引用文献にも、配送地域毎に補給量を合算して、この補給車に必要な必要残量を算出し、算出された必要残量と、補給車内の残量とに基づいて、補給車への積み込みの要否を判定するものは開示されていない旨主張したうえで、本件補正発明(本件補正後の請求項3に係る発明)について、「補正後の請求項3に係る発明は、上記請求項1と実質的に同様の特徴を有する残量管理方法であり、同様に進歩性を有します。」と主張する。
(イ) 請求人の主張についての検討
請求人の主張は、要するに、前記相違点2に係る本件補正発明の構成は、いずれの引用文献にも開示されていないというものであるが、相違点2についての当合議体の判断は、前記イにおいて説示したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。
オ 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明、技術常識1及び技術常識2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正のうち請求項3についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記3(6)オのとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項3(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定における本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由1(進歩性の欠如) 本願発明は、出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2001-099696号公報(主たる引用文献)
引用文献2.特開2019-016006号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開平09-026347号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.特開2007-033136号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5.特開平01-100000号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6.特開2004-278674号公報(周知技術を示す文献)
3 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等
引用文献1に記載された事項並びに引用発明及び技術常識1、2は、前記第2の3(2)ア、ウ並びに(3)イ及び(4)イにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明から、「補給車に必要な必要残量を算出」することについて、「各タンクに関する補給量を算出し、算出された補給量を配送地域毎に合算」する限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、その構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(6)において説示したとおり、引用発明、技術常識1及び技術常識2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明、技術常識1及び技術常識2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-003546