審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2024-004723

投与システム、投与装置、および医療機器の状態を知らせるための通知装置

審判番号
2024-004723
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-184811外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年03月19日
審決日
2026年04月15日
公報発行日
2026年09月25日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A61M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-184811「投与システム、投与装置、および医療機器の状態を知らせるための通知装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 1月14日出願公開、特開2022- 10267〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2018年(平成30年) 7月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年 7月18日 (US)アメリカ合衆国、2017年 9月15日 (US)アメリカ合衆国、2018年 2月 6日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2020-502465号の一部を令和 3年11月12日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和 4年10月28日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 2月 8日提出:手続補正書、意見書
令和 5年 4月28日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 8月 7日提出:手続補正書、意見書
令和 5年11月17日付け:拒絶査定
令和 6年 3月19日提出:審判請求書、手続補正書
令和 6年 7月26日提出:上申書
令和 7年 5月27日付け:拒絶理由通知書
令和 7年 9月 2日提出:手続補正書、意見書

第2 本願発明

本願の請求項1~16に係る発明は、令和 7年 9月 2日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
患者への医薬組成物の投与のための投与システムであって、
投与装置と通知装置とを備え、
前記投与装置は、一回分の服用量の前記医薬組成物を前記患者に投与するように構成され、
続きを表示(全19行)
前記投与装置は、前記投与装置のハウジングの外部に突き出ない引退位置と前記ハウジングの外部に突き出る伸長位置との間で動くことが可能な注射針を備え、
前記投与装置は、前記引退位置と前記伸長位置との間で前記注射針を動かすように構成され、
前記投与装置は、一回分の服用量の前記医薬組成物を前記患者に投与した後に、前記注射針を前記引退位置に引退させ、
前記通知装置は、前記投与装置と情報をやりとりし、前記投与装置の少なくとも一つの特性の状態に関する情報を伝えるように構成され、
前記少なくとも1つの特性は、前記投与装置の投与状態、前記投与装置の最大容量、投与装置が一つ以上の他の電子装置とペアリングされたか否か、および前記患者に投与されている医薬組成物の種類を含み、
前記通知装置は、前記投与装置と双方向で情報をやりとりし、
前記通知装置は、前記通知装置と前記投与装置のペアリングが確立されていることを示し、
前記投与装置の前記少なくとも一つの特性の状態に関する情報を受け取り、
その受け取った情報に基づいて、前記投与装置の前記少なくとも一つの特性の指示を与えるように構成され、
前記投与装置の前記少なくとも一つの特性の指示を与える際に、前記通知装置は、
前記投与装置の一連の動作ステップを介して前記患者への前記医薬組成物の投与サイクルを示すように構成され、前記投与サイクルは前記医薬組成物の一連の投与ステップを含み、前記通知装置は、
投与が開始される前に、前記投与装置からの前記投与の開始が保留されている第1の表示を与え、
前記投与装置が前記医薬組成物を前記患者に投与している時は、第2の表示を行い、
前記患者への前記医薬組成物の前記投与が中断された時は、第3の表示を行い、および、
前記患者への前記医薬組成物の前記投与が完了された時は、第4の表示を行うように構成された投与システム。」

第3 当審において通知した拒絶理由の概要

当審において令和 7年 5月27日付けで通知した拒絶理由は以下の理由を含むものである。

(進歩性)この出願の下記の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.米国特許出願公開第2009/0209938号明細書

2.特開2015-211878号公報

3.特表2009-529930号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載

(1)引用文献1には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。また、付記した訳文は、当審が作成した。)。

ア 「[0004] With the aid of a portable insulin pump insulin is dosed under the skin of the patient by leading the insulin from the pump through a catheter to a cannula placed under the skin. The catheter and the cannula are typically changed every three days. The use of an insulin pump removes the need for repeated injections. The insulin pump doses the insulin in a continuing flow called a basic dose, which is adapted to suit the basic needs of the patient. Additional doses, or additional boluses, can also be given according to need. The patient programs the pump to feed the appropriate basic dose and desired additional boluses with the aid of the keyboard and screen of the pump. The advantage of the insulin pump is that it imitates the insulin level achieved by a healthy pancreas more closely than injection treatment. Compared to injection treatment, the insulin dosing with a pump is effective, continuous and even.」

([0004] 携帯型インスリンポンプを用いると、ポンプからカテーテルを経て皮膚下に挿入されたカニューレへインスリンを導き、患者の皮下に投与される。カテーテルとカニューレは通常3日ごとに交換される。インスリンポンプの使用により、繰り返しの注射が不要となる。インスリンポンプは、患者の基礎的な必要量に合わせて調整された「基礎量」と呼ばれる持続的な流量でインスリンを投与する。必要に応じて追加投与(追加ボーラス)も行える。患者はポンプのキーボードと画面を用いて、適切な基礎投与量と希望する追加ボーラスをプログラムする。インスリンポンプの利点は、注射治療よりも健康な膵臓が達成するインスリンレベルに近似できることある。注射治療と比較して、ポンプによるインスリン投与は効果的で持続的かつ均一である。)

イ 「[0087] In an embodiment of the invention, there are third data transmission means, for example suitable interfaces for connecting the computer of the apparatus according to the invention to a second computer. In that case the computer program typically comprises also forth data transmission means to perform data transmission between the computer and the second computer. For example a device according to the invention, such as a wrist device could be connected via a USB cable to the computer or the data transmission can be realized wirelessly for example with the aid of BluetoothTM technology.」

([0087]本発明の実施形態において、第三のデータ伝送手段、例えば、本発明による装置のコンピュータを第二のコンピュータに接続するための適切なインターフェースが設けられる。この場合、コンピュータプログラムは通常、コンピュータと第二のコンピュータとの間でデータ伝送を実行するための第四のデータ伝送手段もさらに含む。例えば、本発明による装置(例えば手首装着型装置)は、USBケーブルを介してコンピュータに接続されるか、またはBluetoothTMなどを用いて無線でデータ伝送を実現することができる。

ウ 「[0113] FIG. 1 shows one apparatus for dosing insulin according to the invention, intended to be carried by a user. An apparatus as the one shown would be suitable also for the dosing of many other drugs.」

([0113] 図1は、本発明によるインスリン投与装置の一例を示しており、使用者が携帯することを意図している。図示のような装置は、他の多くの薬剤の投与にも適している。)

エ 「[0114] The apparatus has two independent parts, which in this text will be referred to as a pump section 1 and a wrist device 9. The pump section 1 is meant to be attached to the hip of the user. The pump section has its own power supply, e.g. a battery 2. A wireless transmitter and receiver are marked with number 3 and an LCD monitor with number 5. From an insulin container 4 the pump (not shown) doses insulin into a catheter 8. There is also an activity meter 12 in the pump section. Part 12 can also comprise for example a pulse meter. Reference number 21 is used to mark possible sensors of the pulse meter. The functions of the pump section can be controlled with function keys 20.」

([0114] 本装置は二つの独立した部分を有し、本明細書ではポンプ部1及び手首装着部9と呼称する。ポンプ部1は使用者の腰部に取り付けることを意図している。ポンプ部は独自の電源、例えば電池2を備える。無線送信機及び受信機は3番、液晶モニターは5番で示される。インスリン容器4から、ポンプ(図示せず)がインスリンをカテーテル8に投与する。ポンプ部には活動量計12も備わる。この12には例えば脈拍計も含まれ得る。脈拍計のセンサーは参照番号21で示される。ポンプ部の機能は機能キー20で制御可能である。)

オ 「[0115] The wrist device 9 is attached to the arm of the user with a wristband 7. The wrist device as well as the pump can be controlled with function keys 10. A monitor 11 shows the user the variables related to the function of the pump. The wireless transmission between the pump section 1 and the wrist device 9 is shown schematically with symbols 6. The pump section can be attached to the user by for example a particular belt, in the same way as prior art pulse meters. The pump can also be placed in a belt case or other clothing accessory worn by the user.」

([0115] 手首装置9は、リストバンド7を用いて使用者の腕に取り付けられる。手首装置及びポンプは、機能キー10で操作可能である。モニター11は、ポンプの機能に関連する変数を使用者へ表示する。ポンプ部1と手首装置9間の無線伝送は記号6で概略的に示されている。ポンプ部は、例えば特定のベルトによって、先行技術の脈拍計と同様の方法でユーザーに装着可能である。ポンプは、ユーザーが着用するベルトケースやその他の衣類用アクセサリー内に配置することもできる。)

カ 「[0116] FIG. 2 shows in more detail the monitor 11 of the wrist device. On the left is shown with a column display 18 the amount of insulin still available in the container 4. A numerical display 17 shows a time estimate of the adequacy of insulin. This estimation is obtained by dividing the amount of insulin in the container with the consumption of insulin from a period at a certain point in the past. On the right edge of the screen is shown with a column display the charge level of the batteries. The numerical display 17 shows a time estimate of the adequacy of the batteries. A numerical display 13 tells of the current size of insulin dosing. A numerical display 19 shows the time.」

([0116] 図2は、手首装着型装置のモニター11をより詳細に示す。左側には、容器4内に残存するインスリン量を柱状表示18で示す。数値表示17は、インスリンの適正な残存時間の見積もりを示す。この見積もりは、容器内のインスリン量を、過去のある時点における一定期間のインスリン消費量で除算することで得られる。画面右端には、電池の充電レベルがカラム表示で示される。数値表示部17は電池の残量持続時間の推定値を示す。数値表示部13は現在のインスリン投与量を表示する。数値表示部19は時刻を表示する。)

キ 「[0117] Insulin pumps sometimes fail, e.g. they can block up. An even and continuous dosing of insulin is often of primary importance to the user. Often users need to check the function of the device on a regular basis. In the pump section 1 there is a sensor (not shown), which monitors the function of the pump. Between the numbers 13 and 19, approximately in the centre of the monitor 11 is a symbol 15. The sensor monitoring the pump gives the computer information about whether the pump is functioning. The computer has program code elements, which control the symbol 15 shown on the monitor 11 according to the information received from the sensor. The symbol 15 is arranged to be mobile, e.g. rotating, when the pump is working and pumping insulin in a normal manner. In this way the user notices with a glance that the pump is working.」

([0117]インスリンポンプは時に故障することがある。例えば詰まることがある。インスリンの均一かつ継続的な投与は、使用者にとって極めて重要であることが多い。使用者は定期的に装置の機能を確認する必要がある。ポンプ部1には、ポンプの機能を監視するセンサー(図示せず)が設けられている。モニター11の中央付近、番号13と19の間に記号15が表示される。ポンプを監視するセンサーは、ポンプが正常に機能しているか否かの情報をコンピューターに提供する。コンピューターにはプログラムコード要素があり、センサーから受信した情報に基づいてモニター11に表示されるシンボル15を制御する。シンボル15は、ポンプが正常に作動しインスリンを注入している際に、例えば回転するなど可動式に設計されている。これによりユーザーは一目でポンプが作動中であることを確認できる。)

ク 「[0118]The wrist device 11 can be used as a normal wrist watch. For this purpose, basic functions of a watch such as time, alarm and calendar with alarm are programmed into it. In addition the wrist device 11 can have a complete calorie table with selectable courses from a computer database and calorie calculation. From a calorie table the user can easily choose the courses he has eaten. The computer program according to the invention can be arranged to take into consideration the chosen foods immediately when estimating the need for insulin with the aid of the algorithm according to the invention.」

([0118]手首装置11は、通常の腕時計として使用することができる。この目的のために、時刻、アラーム、アラーム付きカレンダーといった時計の基本機能がプログラムされている。さらに、手首装置11は、コンピュータデータベースから選択可能な食事メニューとカロリー計算機能を備えた完全なカロリー表を搭載することができる。ユーザーは、このカロリー表から、自分が食べた食事を簡単に選択することができる。本発明によるコンピュータプログラムは、本発明によるアルゴリズムを用いてインスリンの必要量を推定する際、選択された食品を直ちに考慮に入れるように構成することができる。)

ケ 図1~2「

[図:0001438658000001.jpg]

」

(2)上記(1)ケの記載から引用文献1には次の事項が記載されている。

ア 手首装着部9は、機能キー10、モニター11、数値表示部13を有する。

2 引用発明

上記(1)及び(2)の記載を総合すると、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「インスリン投与装置であって、ポンプからカテーテル8を経て患者の皮下に投与するものであって、
インスリン投与装置は、ポンプ部1及び手首装着部9と呼称する二つの独立した部分を有し、
手首装着部9は機能キー10、モニター11、数値表示部13を有し、モニター11は、ポンプの機能に関連する変数を使用者へ表示するものであり、ポンプ部1と手首装着部9間はBluetoothを用いて無線伝送されており、
ポンプ部1には、ポンプの機能を監視するセンサーが設けられており、ポンプを監視するセンサーは、ポンプが正常に機能しているか否かの情報をコンピューターに提供し、センサーから受信した情報に基づいてモニター11に表示されるシンボル15を制御し、シンボル15は、ポンプが正常に作動しインスリンを注入している際に、例えば回転するなど可動式に設計されており、残存するインスリン量を柱状表示18で示し、数値表示部13に現在のインスリン投与量を表示し、
手首装着部9及びポンプ1は、機能キー10で操作可能である、
インスリン投与装置。」

第5 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「インスリン投与装置」は、「ポンプからカテーテル8を経て患者の皮下に投与するもの」であるから、本願発明の「患者への医薬組成物の投与のための投与システム」に相当する。

(2)引用発明の「ポンプ部1」及び「手首装着部9」はその機能及び構成から、本願発明の「投与装置」及び「通知装置」にそれぞれ相当するから、「インスリン投与装置は、ポンプ部1及び手首装着部9と呼称する二つの独立した部分を有」する構成は「投与装置と通知装置とを備え」る構成に相当する。

(3)引用発明がインスリン投与装置であることを考慮すれば、一回分のインスリンを患者に投与するように構成することは技術常識であるから、引用発明の「インスリン投与装置」は本願発明の「一回分の服用量の前記医薬組成物を前記患者に投与するように構成され」るものに相当する。

(4)引用発明は「ポンプ部1と手首装着部9間はBluetoothを用いて無線伝送されており」、「ポンプ部1」に設けられた「ポンプの機能を監視するセンサー」が「ポンプが正常に機能しているか否かの情報をコンピューターに提供し」、当該情報に基づいて「手首装着部9」の「モニター11」に「シンボル15」を「表示」するとともに「数値表示部13に現在のインスリン投与量を表示」するものであり、「ポンプが正常に機能しているか否かの情報」及び「現在のインスリン投与量」が、その機能からみて本願発明の「少なくとも1つの特性の状態に関する情報」及び「投与装置の投与状態」に関する情報に相当するから、引用発明の「ポンプ部1と手首装着部9間はBluetoothを用いて無線伝送されており、ポンプ部1には、ポンプの機能を監視するセンサーが設けられており、ポンプを監視するセンサーは、ポンプが正常に機能しているか否かの情報をコンピューターに提供し、センサーから受信した情報に基づいてモニター11に表示されるシンボル15を制御し、」「数値表示部13に現在のインスリン投与量を表示」する構成は、本願発明の「前記通知装置は、前記投与装置と情報をやりとりし、前記投与装置の少なくとも一つの特性の状態に関する情報を伝えるように構成され」る構成に相当する。

また、引用発明は、ポンプ部1と手首装着部9とが情報伝達にBluetoothを用いており、例えば引用文献3の段落[0054]~[0058]記載されているように、Bluetoothを用いた伝送にペアリングが必要であることを加味すれば、引用発明は、「投与装置が一つ以上の他の電子装置とペアリングされたか否か」の情報も含んでいることは明らかである。

したがって、引用発明は、「前記少なくとも1つの特性」として「前記投与装置の投与状態、投与装置が一つ以上の他の電子装置とペアリングされたか否か」「を含」むことに相当する。

また、Bluetoothを用いて情報伝達する機器において、ペアリングが確立されていることを示すことは技術常識であるから、引用発明は、「前記通知装置は、前記通知装置と前記投与装置のペアリングが確立されていることを示」すものである。

(5)引用発明の「手首装着部9及びポンプ1は、機能キー10で操作可能であ」り、「ポンプが正常に機能しているか否かの情報をコンピューターに提供」する点は、「手首装着部9」の「機能キー10」で「ポンプ部1」を「操作可能」であり、「ポンプ部1」は「ポンプが正常に機能しているか否かの情報」を「手首装着部9」へ提供するから、本願発明の「前記通知装置は、前記投与装置と双方向で情報をやりとり」する点に相当する。

(6)引用発明の「ポンプ部1には、ポンプの機能を監視するセンサーが設けられており、ポンプを監視するセンサーは、ポンプが正常に機能しているか否かの情報をコンピューターに提供し、センサーから受信した情報に基づいてモニター11に表示」することは、「ポンプ部1」及び「手首装着部9」は、それぞれ「投与装置」及び「通知装置」に相当し、「モニター11」は「手首装着部9」の一部であるとともに、「センサーから受信した情報」は「少なくとも一つの特性」に相当するから、本願発明の「前記投与装置の前記少なくとも一つの特性の状態に関する情報を受け取り、その受け取った情報に基づいて、前記投与装置の前記少なくとも一つの特性の指示を与えるように構成され」ていることに相当し、「前記投与装置の前記少なくとも一つの特性の指示を与える際に、前記通知装置は、前記投与装置の一連の動作ステップを介して前記患者への前記医薬組成物の投与サイクルを示すように構成され、前記投与サイクルは前記医薬組成物の一連の投与ステップを含」むことは、機能上明らかである。

してみると、両者は、

「患者への医薬組成物の投与のための投与システムであって、
投与装置と通知装置とを備え、
前記投与装置は、一回分の服用量の前記医薬組成物を前記患者に投与するように構成され、
前記通知装置は、前記投与装置と情報をやりとりし、前記投与装置の少なくとも一つの特性の状態に関する情報を伝えるように構成され、
続きを表示(全12行)
前記少なくとも1つの特性は、前記投与装置の投与状態、投与装置が一つ以上の他の電子装置とペアリングされたか否かを含み、
前記通知装置は、前記投与装置と双方向で情報をやりとりし、
前記通知装置は、前記通知装置と前記投与装置のペアリングが確立されていることを示し、
前記投与装置の前記少なくとも一つの特性の状態に関する情報を受け取り、
その受け取った情報に基づいて、前記投与装置の前記少なくとも一つの特性の指示を与えるように構成され、
前記投与装置の前記少なくとも一つの特性の指示を与える際に、前記通知装置は、
前記投与装置の一連の動作ステップを介して前記患者への前記医薬組成物の投与サイクルを示すように構成され、前記投与サイクルは前記医薬組成物の一連の投与ステップを含む、
投与システム。」

の点で一致し、下記の点で相違する。

<相違点1>

本願発明は、「前記投与装置は、前記投与装置のハウジングの外部に突き出ない引退位置と前記ハウジングの外部に突き出る伸長位置との間で動くことが可能な注射針を備え、前記投与装置は、前記引退位置と前記伸長位置との間で前記注射針を動かすように構成され、前記投与装置は、一回分の服用量の前記医薬組成物を前記患者に投与した後に、前記注射針を前記引退位置に引退させ」るのに対し、引用発明はそのような構成でない点。

<相違点2>

本願発明は、「前記少なくとも1つの特性は、」「前記投与装置の最大容量」、「前記患者に投与されている医薬組成物の種類を含」むのに対し、引用発明はそのような構成を有しない点。

<相違点3>

本願発明は、「前記通知装置は、投与が開始される前に、前記投与装置からの前記投与の開始が保留されている第1の表示を与え、前記投与装置が前記医薬組成物を前記患者に投与している時は、第2の表示を行い、前記患者への前記医薬組成物の前記投与が中断された時は、第3の表示を行い、および、前記患者への前記医薬組成物の前記投与が完了された時は、第4の表示を行うように構成され」ているのに対し、引用発明は「モニター11に表示されるシンボル15を制御し、シンボル15は、ポンプが正常に作動しインスリンを注入している際に、例えば回転するなど可動式に設計されている残存するインスリン量を柱状表示18で示し、数値表示部13に現在のインスリン投与量を表示」する点。

第6 判断

1 相違点について

(1)相違点1について

引用発明は、ポンプ部1からカテーテル8を介してインスリンを人体に投与するものであり、インスリンの人体への投与装置として、投与装置のハウジングの外部に突き出ない引退位置と前記ハウジングの外部に突き出る伸長位置との間で動くことが可能な注射針を備え、前記投与装置は、前記引退位置と前記伸長位置との間で前記注射針を動かすことは、例えば引用文献2の段落【0221】~【0224】、【0232】~【0236】及び図10、12~15等に記載されるとおり周知技術であり、引用発明における投与装置に対して当該周知技術を採用することに格別な困難性はない。

そして、その際上記「第5 対比(3)」を加味すれば、「前記投与装置は、一回分の服用量の前記医薬組成物を前記患者に投与した後に、前記注射針を前記引退位置に引退させ」る構成については自明である。

(2)相違点2について

引用発明において、どのような特性を情報として使用するかは必要に応じて当業者が適宜決定する設計的事項であり、投与装置において、投与装置の最大容量や、投与されている医薬組成物の種類の情報を使用することは文献を示すまでもない周知技術であり、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について

モニター11に表示されるシンボル15の具体的な表示内容として、引用発明のインスリン投与装置は、モニター11にシンボル15の表示、残存するインスリン量の柱状表示18をするものであるから、患者に投与している、第2の表示(シンボル15が回転している状態)、投与が中断された、第3の表示(シンボル15が回転していない状態)、投与が完了された、第4の表示(シンボル15が回転しておらず、残存するインスリン量の柱状表示18がない状態)を行うものであるから、実質的に本願発明の第2~第4の表示を備えている。さらに、注射準備完了状態526(投与の開始が保留されている第1の表示に相当。)、注射進行状態532(患者に投与している、第2の表示に相当。)、プランジャが動かない状態534及び皮膚から離れすぎ状態536(投与が中断された、第3の表示に相当。)、注射完了状態540(投与が完了された、第4の表示に相当。)、という4つの状態を示す表示を行うことは、例えば、特開2017-23813号公報の段落[0077]~[0079]、図9A、9Bに記載されるとおり周知技術である。

してみれば、引用発明のインスリン投与装置において、インスリン投与の開始が保留されている状態があることは自明であるから、第2~4の表示に加え、当該周知技術を適用して、投与の開始が保留されている第1の表示を表示するようにすることは、表示態様として当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

2 小括

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-004723

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決224件(ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー)
  • 2024-015240拒絶査定不服審判 / 2026-07-09 / 原査定取消(特許/登録すべき)流体透過性構造および関連デバイスを有する血管アクセス機器
    同じ当事者: ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
  • 2024-012671拒絶査定不服審判 / 2026-06-23 / 原査定取消(特許/登録すべき)流路チャネルおよび吸着剤
    同じ当事者: ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
  • 2024-001055拒絶査定不服審判 / 2026-06-09 / 原査定取消(特許/登録すべき)コンビナトリアルバーコーディングのための方法および組成物
    同じ当事者: ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
  • 2024-011925拒絶査定不服審判 / 2026-06-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)流体コネクタとのユーザ相互作用をガイドするための触覚特徴部
    同じ当事者: ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
  • 2024-013100拒絶査定不服審判 / 2026-06-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)注射器アセンブリの検出システム
    同じ当事者: ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
検索でもっと見る →
同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2025-009821拒絶査定不服審判 / 2026-03-25 / 請求不成立呼吸補助装置
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2025-007828拒絶査定不服審判 / 2026-03-23 / 請求不成立患者用インターフェースおよびその態様
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-006089拒絶査定不服審判 / 2026-03-19 / 請求不成立送達された投与量を測定するためのシステムおよび方法
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-008046拒絶査定不服審判 / 2026-03-03 / 請求不成立制御可能な薬物送達システム及び使用方法
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2025-006034拒絶査定不服審判 / 2026-02-02 / 請求不成立アウトレット装置
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,372件(121・A61M)
  • 2024-011711拒絶査定不服審判 / 2026-09-01 / 原査定取消(特許/登録すべき)伸縮自在のプランジャーアセンブリ
    共通の審決分類: 121・A61M
  • 2024-019058拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)鼻マスクシステム
    共通の審決分類: 121・A61M
  • 2025-003125拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)ハイブリッド外層を備えた複合材料医療用バルーン、および関連する生産方法
    共通の審決分類: 121・A61M
  • 2024-002734拒絶査定不服審判 / 2026-08-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)累加柔軟性カテーテル支持フレーム
    共通の審決分類: 121・A61M
  • 2024-019025拒絶査定不服審判 / 2026-08-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)カテーテルおよびその製造方法
    共通の審決分類: 121・A61M

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存