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特許拒絶査定不服審判

2024-002823

差圧センサデバイス

審判番号
2024-002823
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-203660
請求日
2024年02月19日
審決日
2025年03月28日
公報発行日
2025年09月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ティーイー コネクティビティ ソリューソンズ ゲーエムベーハー
  • 【請求人代理人】大場 充
  • 【請求人代理人】堀川 美夕紀
  • 【請求人代理人】山下 聖子
審判長/審判官
  • 審判長 濱野 隆
  • 審判官 道祖土 新吾
  • 審判官 貝沼 憲司
分類
P18 .121-Z (G01L) / P18 .575-Z (G01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-203660「差圧センサデバイス」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月 4日出願公開、特開2020- 85902〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和元年11月11日の外国語書面出願(パリ条約による優先権主張、2018年11月15日、欧州特許庁)であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。以下、2018年(平成30年)11月15日を「優先日」という。 令和元年11月19日 :翻訳文の提出 令和5年 7月24日付け:拒絶理由通知 同年10月30日 :意見書、手続補正書の提出 同年11月 7日付け:拒絶査定 (同月14日 :原査定の謄本の送達) 令和6年 2月19日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和6年2月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年2月19日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 補正の内容 令和6年2月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年10月30日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。 (1) 本件補正前 「 【請求項1】 差圧センサデバイス(100、200)であって、 前記差圧センサデバイス(100、200)は、 - 基板(110、210)と、 - 前記基板(110、210)の主面上に形成されている別層(104、204、405)と、 - 膜(M)によって互いに分離されている第1のキャビティ(C1)および第2のキャビティ(C2)とを備え、 前記第1のキャビティ(C1)は、通気孔(108、208、305、406)と流体連通しているチャネル(109、209、306、407)と流体連通しており、 前記チャネル(109、209、306、407)は、前記別層(104、204、405)または前記基板(110、210)における、前記基板(110、210)の前記主面と実質的に平行な平面内に延在するとともに、 前記通気孔(108、208、305、406)は、前記第1のキャビティ(C1)内に大気圧または規準圧力を蓄積できるように、前記差圧センサデバイス(100、200)の周囲環境と流体連通するように構成されており、 前記第2のキャビティ(C2)は前記膜(M)の上方に位置しており、前記第2のキャビティ(C2)は前記第1のキャビティ(C1)内に蓄積される前記大気圧または規準圧力と対比して圧力が測定されることになる試験媒体を収容するために設けられている、 ことを特徴とする、 差圧センサデバイス(100、200)。」 (2) 本件補正後 「 【請求項1】 差圧センサデバイス(100)であって、 前記差圧センサデバイス(100)は、 - 基板(110)と、 - 前記基板(110)の主面上に形成されている別層(104)と、 - 膜(M)によって互いに分離されている第1のキャビティ(C1)および第2のキャビティ(C2)とを備え、 前記第1のキャビティ(C1)は、通気孔(108、305)と流体連通しているチャネル(109、306)と流体連通しており、 前記チャネル(109、306)は、前記別層(104)における、前記基板(110)の前記主面と実質的に平行な平面内に延在するとともに、 前記通気孔(108、305)は、前記第1のキャビティ(C1)内に大気圧または規準圧力を蓄積できるように、前記差圧センサデバイス(100)の周囲環境と流体連通するように構成されており、 前記第2のキャビティ(C2)は前記膜(M)の上方に位置しており、前記第2のキャビティ(C2)は前記第1のキャビティ(C1)内に蓄積される前記大気圧または規準圧力と対比して圧力が測定されることになる試験媒体を収容するために設けられている、 ことを特徴とする、 差圧センサデバイス(100)。」 2 補正の目的 本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された「チャネル(109、209、306、407)」が「基板(110、210)の前記主面と実質的に平行な平面内に延在する」部分について、「別層(104、204、405)または前記基板(110、210)」から「別層(104)」のみに限定するものである。 また、本件補正前の請求項1に記載された事項に付された以下の符号を削除して、本願の明細書の段落【0028】~【0029】、【図3】に開示された「代替の実施形態」及び段落【0038】~【0042】、【図5】に開示された「代替の製造工程」が、本件補正後は含まれないように限定したものである。 「差圧センサデバイス」の符号:200 「基板」の符号 :210 「別層」の符号 :204、405 「通気孔」の符号 :208、406 「チャネル」の符号 :209、407 そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 3 独立特許要件の判断 本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 (1) 本件補正発明 ア 本件補正発明の認定と分説 本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成A1から構成B4までに分説する。 なお、「基板」に関連する構成については、Aを含む符号(A1~A3)を使用することにし、「キャビティ」に関連する構成については、Bを含む符号(B1~B4)を使用することにした。 また、参考図として、本願の【図2】を符号の説明とともに掲載する。 <本件補正発明の分説> X 差圧センサデバイス(100)であって、 前記差圧センサデバイス(100)は、 A1 基板(110)と、 A2 前記基板(110)の主面上に形成されている別層(104)と、 B1 膜(M)によって互いに分離されている第1のキャビティ(C1)および第2のキャビティ(C2)とを備え、 B2 前記第1のキャビティ(C1)は、通気孔(108、305)と流体連通しているチャネル(109、306)と流体連通しており、 A3 前記チャネル(109、306)は、前記別層(104)における、前記基板(110)の前記主面と実質的に平行な平面内に延在するとともに、 B3 前記通気孔(108、305)は、前記第1のキャビティ(C1)内に大気圧または規準圧力を蓄積できるように、前記差圧センサデバイス(100)の周囲環境と流体連通するように構成されており、 B4 前記第2のキャビティ(C2)は前記膜(M)の上方に位置しており、前記第2のキャビティ(C2)は前記第1のキャビティ(C1)内に蓄積される前記大気圧または規準圧力と対比して圧力が測定されることになる試験媒体を収容するために設けられている、 ことを特徴とする、 X 差圧センサデバイス(100)。 <参考図> 【図2】 [図:0001426434000001.jpg] 100:差圧センサデバイス 107:ゲル保護材 102:ハウジング 108:通気孔 103:コンタクトパッド 109:チャネル 104:別層 110:基板 105:MEMS 120:入口 106:ASIC R:抵抗器 イ 各構成に含まれる部材の配置について 本件補正発明の「膜(M)」、「第1のキャビティ(C1)」及び「第2のキャビティ(C2)」の配置については、上記図2には明示されていないところ、本願の明細書の記載からみて、以下に示すとおりの配置であると認める。 (ア) 「膜(M)」の配置について 段落【0005】の「感知膜は、MEMSの頂面上にまたはMEMSの頂面によって形成されている。」との記載からみて、本件補正発明の「膜(M)」は、【図2】における「MEMS105」のうち薄膜とされている部分(「抵抗器R」の近傍)にあることが理解できる。 (イ) 「第1のキャビティ(C1)」の配置について 段落【0014】の「別層の上に膜を形成することによって別層の上に第1のキャビティを形成することを含んでもよく、この場合、貫通通路は、通気孔(および少なくとも1つのチャネル)を通した規準圧力(例えば、大気圧)の蓄積を可能にする目的で、第1のキャビティに接続するように形成されている。」との記載からみて、「別層104」と「膜(M)」(すなわち、「MEMS105」における「R」の近傍)の間に「第1のキャビティ(C1)」があることが理解できる。 (ウ) 「第2のキャビティ(C2)」の配置について 段落【0018】の「実施形態によれば、別層の上にMEMSまたは別の感圧素子とASICと膜とが形成されており、膜の下方(別層への方向)に上述した第1のキャビティを、および膜の上方に第2のキャビティを、部分的に形成し得るハウジングが提供され、この場合、第2のキャビティは、第1のキャビティ内に蓄積した規準圧力と対比して圧力が測定されることになる試験媒体を収容するために設けられる。」との記載から、「膜(M)」(「MEMS105」における「R」の近傍)より上方に「第2のキャビティ(C2)」があることが理解できる。 ウ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である 「 【0001】 本発明は差圧センサデバイスに関し、詳細には、チャネルを備える基板および別層(another layer)を備える差圧センサデバイスに関し、本発明は更に、かかるデバイスを製造する方法に関する。 【背景技術】 【0002】 差圧センサは、2種の隔離された液体間または気体間の圧力の差を測定する。差圧センサ(またはトランスデューサ)は液体または気体の圧力の差を電気信号に変換するもので、この信号を測定して差圧値を決定することができる。一般に、ピエゾ抵抗式、圧電式、および容量式など、圧力を測定するために使用される3つの異なる変換機構がある。センサの圧力感知デバイスは、一般に、微小電気機械システム(MEMS:Micro-Electro-Mechanical System)の技法によって製造される。この技術を、エッチング技法および接着技法とともに民生用半導体を製造するために使用し、差圧を電気信号に変換する非常に小型の安価なデバイスを製作する。 【0003】 従来、容量式または抵抗式の差圧センサを製造するときには、シリコンなどの半導体材料から圧力感知ダイが形成される。ダイはシリコン構造が得られるようにシリコンウエハからダイシングなどの方法によって形成され、このシリコン構造を薄化することでキャビティが作り出され、関連するダイヤフラムが画定される。ピエゾ抵抗式の場合、素子はダイヤフラムの表面に形成または設置され、ダイヤフラムを形成する薄化された半導体材料にかかるひずみに比例した抵抗を呈するように構成される。ピエゾ抵抗素子に接続された電気回路(典型的にはホイートストンブリッジのネットワークを形成する)が、ピエゾ抵抗素子の抵抗値に一部基づいて、電気信号を生み出す。したがって、電気信号は、試験下の媒体の圧力を表している 【0004】 ゲージ型圧力センサとも呼ばれる特定の分類の差圧センサでは、ダイヤフラム(膜)の一方側に測定する必要がある加圧された液体または気体タイプの媒体が供給され、一方、膜の他方側は大気に開放されている。この場合、試験媒体の圧力は大気圧と対比して測定される。大気への接続部は一般に、通気(ventまたはventilation)孔と呼ばれる。センサが有する通気孔はセンサが大気圧を感知できるようにするためのものなので、この通気孔は常に塞がれていない状態に保たれなければならない。 【0005】 図1は、当技術分野で知られているような通気孔を有する差圧センサ10の例を示す。図1に示すように、センサ10は基板1とハウジング2とを有する。表面実装部品(SMD:Surface Mounted Device)であるコンタクトパッド3が、実装PCBに接触するように基板1の底部に設けられる。基板1上には、表面に導電性パターンを設けることのできる別層(例えば誘電層)4が形成されている。誘電層4の上に、微小電気機械システム5と、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)6と、が形成されている。感知膜は、MEMSの頂面上にまたはMEMSの頂面によって形成されている。ハウジング2内にはゲル保護材7が水平に配置されている。」 「【図1】 [図:0001426434000002.jpg] 」 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 上部から進入する流体(液体または気体)の圧力(下を指す幅広の矢印を参照)を、通気孔8を通る空気流(上を指す細い矢印を参照)によって蓄積された大気圧と対比させて測定することができ、この通気孔8は、基板1の底面を貫通して形成されており(かつコンタクトパッド3間に配置されており)、通気孔8から基板1および誘電層4を貫通して大気圧が蓄積されるキャビティまで延在するチャネルに接続されている。しかしながら、センサ10をプリント回路板(PCB)に装着して動作可能なデバイスの製造を完了するときに、通気孔が詰まるリスクがある。更に、PCBに、周囲環境およびセンサ10の通気孔と連通している対応する貫通孔を設ける必要がある。PCBに形成されるこの貫通孔は、例えばはんだまたは何らかの共形のコーティングによって、意図せず塞がれてしまう可能性もある。 【0007】 上記に鑑みて、大気圧を上記の技術と比較してより確実に蓄積および維持できる差圧センサデバイスを提供することが、本発明の目的である。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明は、基板(例えば、多層またはバルクセラミック基板)と、基板の主(頂)面上に形成されている別層と、膜によって互いに分離されている第1のキャビティおよび第2のキャビティと、を備える、差圧(例えばゲージ圧)センサデバイスを提供することによって、上述した問題に対処する。基板は例えば、何らかの半導体基板、または高温もしくは低温同時焼成セラミックとすることができる。また、この用語には一般にプリント回路板も包含されている。別層は誘電層とすることができ、また基板と同じ材料から形成された層とすることもできる。第1のキャビティは、通気孔と流体(液体または気体)連通している少なくとも1つのチャネルと流体連通しており、この通気孔を通して、センサデバイスの周囲環境から(何らかの規準圧力リザーバまたは大気圧の空気から)空気(または別の気体)が進入できる。 【0009】 少なくとも1つのチャネルは、別層または基板における、主面と実質的に平行な平面内に延在する。(以下省略) 【0010】 通気孔およびチャネルを提供することにより、例えば、第1のキャビティ内に大気圧を蓄積および維持することができる。このことにより、リザーバから別のチャネルを通して第2のキャビティ内へと供給される試験媒体の圧力を、大気圧と対比させて測定することが可能になる。ここでおよび以下の説明において、大気圧を制限する必要はないことに留意すべきである。実際には、大気圧を対応する規準圧力リザーバによって供給される任意の基準圧力で置き換えることができる。 【0011】 (省略) 【0012】 上記の技術とは対照的に、第1のキャビティを通気孔を介して(例えば大気圧にある)周囲環境と接続するチャネルが、主面と平行な平面に形成されるが、このことは、基板の(主(頂)面の反対側の)底面には通気孔が形成されていないことを暗に示す。このことにより、上記の技術と比較して通気孔が詰まるリスクが大きく減少する。(以下省略)」 (2) 引用文献1に記載された事項及び引用発明等の認定 ア 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開平11-248578号(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記ウの引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。 (ア) 特許請求の範囲(【請求項1】) 「【請求項1】 片面に固定電極が形成された絶縁基板と、ダイアフラムが設けられた半導体基板とが接合され、 前記絶縁基板の反対面に支持基板が接合されて一体化され、 前記絶縁基板に厚さ方向を貫通して圧力導入孔が形成され、 前記支持基板の前記絶縁基板との接合面に溝が設けられ、 前記溝は前記圧力導入孔の形成位置を含むように形成されたことを特徴とする静電容量型圧力センサ。」 (イ) 段落【0001】~【0014】、【図12】~【図14】 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、静電容量型圧力センサ及びそのパッケージ構造に関するものである。 【0002】 【従来の技術】図12に示すように従来の静電容量型圧力センサは、半導体基板1のほぼ中央を両面からエッチングを行い所定量だけ除去することにより肉薄のダイアフラム3を一体に形成する。この時、ダイアフラム3の接合側には底浅の凹部を形成している。そして、この半導体基板1と絶縁基板2が陽極接合によって一体化されている。これにより、ダイアフラム3と固定基板2との間には、上記凹部が絶縁基板2により閉塞されて圧力室6が形成される。そして、このダイアフラム3の圧力室6に面する部分が可動電極4となり、その可動電極4に対向する絶縁基板の表面に固定電極5が形成される。」 「【図12】 [図:0001426434000003.jpg] 」 「【0003】これにより、可動電極4と固定電極5の間には、距離に応じた静電容量が発生する。さらに絶縁基板2には、固定電極5の中央に開口する圧力導入孔7が形成されている。そしてこの圧力導入孔7を介して圧力測定媒体を圧力室6内に供給するようにしている。これにより、ダイアフラム3が膨らんで、電極間距離が変位し、電極間の静電容量も変化する。この静電容量の変化量は、可動電極4側は、シリコン基板1の表面から取り出すことができ、また、固定電極5は、その固定電極5と同時に形成した引出線8を介して取り出すようになっている。そしてこの引出線8は、絶縁基板2の接合側表面に形成され、その先端は、半導体基板1の外部まで延長形成されている。 【0004】一方、上記構成のセンサチップは、それ単体で取り扱うことも可能であるが、通常は各種回路基板上に実装することを考慮し、パッケージ化されている。一例を示すと、図13のようなものがある。同図に示す ように、上部開放した箱状のパッケージ12を用意し、そのパッケージ12内に圧力センサ10を装着して一体化することによりパッケージングを行う。ここでパッケージ12は、その底面中央に貫通孔12aが形成されており、パッケージ12の底面外側には、上記貫通孔12aにつながるようにして圧力導入管13が下方突出状態で一体に形成されている。そして、圧力センサ10を実装する場合には、その圧力センサ10の圧力導入孔7と、パッケージ12の貫通孔12aが対向するように位置合わせを行う。そして、係る状態でダイボンディング樹脂14を介して、圧力センサ10とパッケージ12とが接着一体化されている。」 「【図13】 [図:0001426434000004.jpg] 」 「【0005】この時、ダイボンディング樹脂14は、貫通孔12a(圧力センサ10の圧力導入孔7)の周囲を囲むようにして塗布されており、気密性が確保される。つまり、圧力導入管13を介して供給される圧力は、圧力センサ10とパッケージ12の底面との間でもれることなくそのまますべて圧力導入孔7を介して圧力室6に供給され、精度のよい測定が行われる。 【0006】さらに、各電極の取り出しは、パッケージ12の上方所定位置に配置したリード端子16aと、圧力センサ10に設けた引出線8に連続するパッド15aをボンディングワイヤ17で接続し、また、可動電極4と導通するパッド15bとリード端子16aとをボンディングワイヤ17を用いて接続することにより行っている。 【0007】上記の構成をとると、圧力導入管13にチューブなどを装着することになるので、さらに圧力導入管13の下方にチューブを引き回すための空間が必要となり、高さ方向に非常に大きな空間が必要となる。さらには、圧力導入孔7は直線状でしかも圧力室6に直接開口する構造となっているので、その圧力導入孔7を介して圧力室6内に外部のごみ等が侵入するおそれが高くなる。 【0008】そこで、圧力導入経路を実装基板と平行な方向にしたいという要求がある。ただし、絶縁基板2はガラス等の硬い材料が使用されているので、圧力導入孔7の形状を水平方向に延びるように加工するのは困難で ある。したがって、図14に示すように、パッケージ12の形状を工夫することにより、上記の要求を満たすことが考えられる。」 「【図14】 [図:0001426434000005.jpg] 」 「【0009】つまり、パッケージ12の底部内に縦断面が略L字状にした圧力導入経路18を設け、その圧力導入経路18を介してパッケージ12の底部に形成した開口12aと圧力導入管16とを連結するようにしている。この様に、縦断面形状を略L字型とすることで、圧力導入管13′をパッケージ12の側面に突出するように形成することができる。これにより、その圧力導入管13′に装着するチューブは実装基板の表面に沿うように引き回すことができるので、高さ方向を低く抑える(薄くする)ことができる。さらに、この様に圧力導入経路の全長を長くするとともに、その途中で経路を曲げているので、圧力室6内へごみ等が侵入する可能性が低減される。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】図14に示す構造のものでは、ごみ等が圧力室6内に侵入することを防げるものの、パッケージ12の底部に形成する圧力導入経路18を縦断面形状が略L字型のように途中で曲げた形状とするのは煩雑である。 【0011】また、図13,図14に示すいずれのパッケージング構造のものでも、固定電極5の電気信号及び可動電極4の電気信号を外部に取り出すために、ボンディングワイヤ17を用いていたため、係る作業が煩雑である。 【0012】本発明は、上記した背景に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、上記した問題点を解決し、センサ内部へのごみの侵入を防止しつつ、パッケージングを容易に行うことのできる静電容量型圧力センサ及びそのパッケージ構造を提供することにある。 【0013】 【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するため、本発明に係る静電容量型圧力センサでは、片面に固定電極が形成された絶縁基板と、ダイアフラムが設けられた半導体基板と、支持基板とを順次接合して一体化 され、前記絶縁基板に厚さ方向を貫通して圧力導入孔が形成され、前記支持基板の前記絶縁基板との接合面に溝が設けられ、前記溝は前記圧力導入孔の形成位置を含むように形成されるようにした(請求項1)。 【0014】請求項1に記載するように、支持基板の絶縁基板との接合面に凹部が設けられることにより、絶縁基板と支持基板とが接合した状態で、両基板の間に圧力測定対象媒体を圧力導入孔にまで導くための通路が形成される。係る通路は圧力導入孔に対して異なる方向に形成されるので、圧力導入孔と通路によって構成される圧力導入経路は、その途中で折れ曲がるため、ごみなどの侵入を阻止しやすい形状となる。また、支持基板には、接合面に溝を形成するだけでよいので、製造は容易に行える。そして、支持基板と絶縁基板を接続するのも簡単に行える。よって、ごみの侵入を阻止しやすい形状の圧力導入経路を簡単に構成できる。」 (ウ) 段落【0018】~【0022】、【図1】 「【0018】 【発明の実施の形態】本発明に係る静電容量型圧力センサの実施の形態を詳述する。図1は本発明に係る静電容量型圧力センサの第1の実施の形態を示している。圧力を検出し、その圧力に応じた信号を出力するといった圧力センサとしての基本的な機能・構造は、従来のものと同様である。すなわち、ダイアフラム3を備えた半導体基板1と絶縁基板2とを陽極接合することにより、ダイアフラム3と絶縁基板2との間に圧力室6を形成する。そして、その圧力室6を挟んで対向するダイアフラム3の表面が可動電極4となり、絶縁基板2の表面が固定電極5となる。また、その固定電極5に連続して引出線8が形成されその引出線8の先端は、絶縁基板2の露出表面に至る。さらに、絶縁基板2には、厚さ方向に貫通する圧力導入孔7が形成され、その圧力導入孔7の一端は圧力室6に開口している。また、引出線8と対向する半導体基板1の接合面には凹溝9が形成され、半導体基板14ひいては可動電極と引出線8が短絡するのを抑制している。もちろんこの凹溝9による空間には、ポリイミド樹脂等を充填することにより、絶縁性を図りつつ密封し、圧力室6内を密閉するようにしている。 【0019】なお、可動電極4の取出電極(パッド15b)として、従来の例では半導体基板1の上面に直接形成していたが、本形態では、絶縁基板2の露出表面に引出線23を別途形成し、その一端を半導体基板1に接続させている。この点では図示した従来例と相違するものの、係る構成のものも従来から存在している。」 「【図1】 [図:0001426434000006.jpg] 」 「【0020】ここで、本形態では、絶縁基板2の下面に半導体からなる支持基板20を陽極接合により一体化している。係る支持基板20は絶縁基板2と同一の平面形状に形成されている。そして、支持基板20の接合面には、溝22が形成されている。係る溝22の一端は支持基板20の端部に位置し、溝22の他端は接合状態で絶縁基板2に設けた圧力導入孔7と対向するようにしている。 【0021】このようにすると、支持基板20単体で見た場合には、溝22は上部開放した1本の帯状であるため簡単に形成することができ、絶縁基板2に接合した状態では、溝22の開放部分が絶縁基板2で閉塞されるため1本の管となる。そして、溝22の配置方向は、支持基板20の表面に沿っているため、絶縁基板2に形成した圧力導入孔7の配置方向と直交する方向となる。 【0022】従って、圧力室6は、圧力導入孔7から溝22を介して外部と連通することになるので、測定圧力媒体を溝22の開口22aから供給することにより圧力室6に導入させることができる。そして、図から明らかなように、溝22と圧力導入孔7からなる圧力導入経路が、その途中で進路を90度曲げているので、圧力室6内へのごみの侵入を抑止できる。」 (エ) 段落【0040】~【0041】、【図10】 「【0040】図10は、本発明に係る静電容量型圧力センサのパッケージ構造の第4の実施の形態を示している。本実施の形態は、上記した各実施の形態と相違して、実装する圧力センサの形態を異ならせている。つまり、固定電極5の外部取り出しを支持基板20側から行うようにした圧力センサの第2の実施の形態のものを適用している。すなわち、パッケージ50の底部に形成した凹部51内に圧力センサ10の絶縁基板2と支持基板20を挿入し、ボンディング樹脂53で接着一体化する。これにより、パッケージ50の底面外側に形成した圧力導入管52を介して供給される圧力測定対象媒体は、そのまま溝22から圧力導入孔7を介して圧力室6に供給される。」 「【図10】 [図:0001426434000007.jpg] 」 「【0041】そして、リード端子55a,55bは、それぞれパッケージ50の内壁面に実装され、リード端子55aは支持基板20の下面に導電性樹脂56を介して接着され、リード端子55bは半導体基板1の上面に導電性樹脂56を介して接着される。これにより、ボンディングワイヤを用いることなくリード端子と各電極とを導通させることができる。」 イ 引用文献1の記載から読み取れる事項の認定 (ア) 段落【0003】及び【0018】の記載から、静電容量型圧力センサは、圧力導入孔7を介して圧力測定媒体が圧力室6内に供給されると、ダイアフラム3が膨らんで、可動電極4と固定電極5の電極間距離が変位して、電極間の静電容量が変化することにより、圧力を検出し、その圧力に応じた信号を出力するものであると認められる。 (イ) 段落【0018】及び図1の記載から、「半導体基板1におけるダイアフラム3の圧力室6と反対側である上方に、キャビティ構造が形成されていること」が看て取れる。 ウ 引用発明の認定 前記イにおいて認定した事項及び前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、第1の実施の形態(【図1】)に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「静電容量型圧力センサであって、(【0018】) ダイアフラム3と絶縁基板2との間に圧力室6が形成され、絶縁基板2には、厚さ方向に貫通する圧力導入孔7が形成され、その圧力導入孔7の一端は圧力室6に開口し、(【0018】) 圧力導入孔7を介して圧力測定媒体が圧力室6内に供給されると、ダイアフラム3が膨らんで、可動電極4と固定電極5の電極間距離が変位して、電極間の静電容量が変化することにより、圧力を検出し、その圧力に応じた信号を出力するものであり、(認定事項(ア)) 絶縁基板2の下面に半導体からなる支持基板20が一体化され、支持基板20の接合面には、溝22が形成され、前記溝22の一端は支持基板20の端部に位置し、溝22の他端は接合状態で絶縁基板2に設けた圧力導入孔7と対向し、(【0020】) 圧力室6は、圧力導入孔7から溝22を介して外部と連通することで、測定圧力媒体を溝22の開口22aから供給することにより圧力室6に導入され、(【0022】) 半導体基板1におけるダイアフラム3の圧力室6と反対側である上方に、キャビティ構造が形成されている、(認定事項(イ)) 静電容量型圧力センサ(【0018】)」 (3) 引用文献2~5の記載事項及び周知技術、技術常識の認定 ア 引用文献2に記載された事項及び周知技術1の認定 (ア) 引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である米国特許出願公開第2010/0230766号明細書(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。また、摘記の後の括弧内に合議体が作成した日本語訳を示す。 a [0001]~[0003] 「[0001] This invention relates to an electronic device including a sensor and a method of manufacturing thereof.」 [0002] In the development of devices including sensors special requirements may be taken into account, in particular when designing the package of a sensor device. For example, certain sensors, such as pressure sensors, gas sensors or humidity sensors, may require an opening through which the fluid which is to be detected is applied to the sensor. [0003] For these and other reasons there is a need for the present invention.」 ([0001]本発明は、センサを含む電子デバイス及びその製造方法に関する。 [0002]センサを含むデバイスの開発において、特にセンサデバイスのパッケージを設計するときに、特別な要件が考慮され得る。例えば、圧力センサ、ガスセンサ又は湿度センサなどの特定のセンサは、検出される流体がセンサに適用される開口部を必要とする場合がある。 [0003]これらの理由及び他の理由から、本発明が必要とされている。) b [0028] 「[0028] The structure element may also be made of a non-porous material which does not allow fluid flow through this material. In this case one or more channels may be introduced into the structure element. The structure element may have at least one inlet at its outside surface and at least one outlet next to the sensing region of the semiconductor chip. The inlets and outlets may be in fluid connection by using the channels through the structure. The non-porous structure element may be made of glass, ceramics, plastics or any other appropriate material. ([0028]構造要素はまた、流体がこの材料を通って流れることを許容しない非多孔質材料から作製されてもよい。この場合、一つ以上のチャネルが構造要素に導入されてもよい。構造要素は、その外面に少なくとも一つの入口と、半導体チップの感知領域に隣接する少なくとも一つの出口とを有する。入口及び出口は、構造要素を通るチャネルを使用することによって流体接続され得る。非多孔質構造要素は、ガラス、セラミック、プラスチック、又は任意の他の適切な材料から作製され得る。) c [0030] [0030] The sensors, which may be integrated in semiconductor chips, as well as further semiconductor chips may be placed on carriers. The carriers may be of any shape, size or material. During the fabrication of the devices the carriers may be connected to each other. The carriers may be connected among each other by connection means with the purpose of separating the carriers in the course of the fabrication. The carriers may also be made from one piece. Separation of the carriers may be carried out by mechanical sawing, a laser beam, cutting, stamping, milling, etching or any other appropriate method. The carriers may be electrically conductive. They may be fabricated from metals or metal alloys, in particular copper, copper alloys, iron nickel, aluminum, aluminum alloys, or other appropriate materials. The carriers may be, for example, a leadframe or a part of a leadframe. Furthermore, the carriers may be plated with an electrically conductive material, for example copper, silver, iron nickel or nickel phosphorus. ([0030]センサは、半導体チップに集積され得るものであり、さらに半導体チップと同様にキャリア上に配置され得る。キャリアは、任意の形状、サイズ又は材料であり得る。デバイスの製造中、キャリアは互いに接続されてもよい。キャリアは、製造中にキャリアを分離する目的で、接続手段によって互いに接続されてもよい。キャリアは一体的に形成されていてもよい。キャリアの分離は、鋸盤、レーザビーム、切断、プレス加工、フライス加工、エッチング又は任意の他の適切な方法によって行われてもよい。キャリアは導電性であってもよい。それらは、金属又は金属合金、特に銅、銅合金、鉄ニッケル、アルミニウム、アルミニウム合金、又は他の適切な材料から製造することができる。キャリアは、例えば、リードフレーム又はリードフレームの一部であってもよい。さらに、キャリアは、導電性材料、例えば銅、銀、鉄ニッケル又はニッケルリンでめっきされてもよい。) d [0033]~[0034]、Fig.2 「[0033] FIG. 2 schematically illustrates a sensor device 200 in cross section. The sensor device 200 includes a first semiconductor chip 10 having a sensing region 11, a structure element 12 and a carrier 16. The structure element 12 may be stacked on the carrier 16, and the first semiconductor chip 10 may be stacked on the structure element 12. The structure element 12 may have an inlet 17 and an outlet 18. The outlet 18 may be in fluid connection with the inlet 17 and the sensing region 11 of the first semiconductor chip 10. This may allow the sensing region 11 of the first semiconductor chip 10 to be in fluid connection with the environment outside of the sensor device 200. [0034] The carrier 16 may, for example, be a second semiconductor chip or a leadframe or any other substrate.」 ([0033]図2は、センサデバイス200の断面を概略的に示す。センサデバイス200は、感知領域11を有する第1の半導体チップ10と、構造要素12と、キャリア16を含む。構造要素12はキャリア16上に積み重ねてもよく、第1の半導体チップ10は構造要素12上に積み重ねてもよい。構造要素12は、入口17及び出口18を有する。出口18は、入口17及び第1の半導体チップ10の感知領域11と流体接続する。これにより、第1の半導体チップ10の感知領域11がセンサデバイス200の外側の環境と流体接続される。 [0034]キャリア16は、例えば、第2の半導体チップ又はリードフレーム又は任意の他の基板でよい。) 「Fig.2 [図:0001426434000008.jpg] 」 (イ) 周知技術1の認定 前記(ア)に示した引用文献2の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術1」という。) <周知技術1> 「感知領域を有する半導体チップを含む圧力センサデバイスにおいて、感知領域がデバイスの外側の環境と流体接続されるための入口及び感知領域と流体接続された出口を有する構造要素を、半導体チップとキャリア基板の間に設けること。」 イ 引用文献3、4に記載された事項及び周知技術2の認定 (ア) 引用文献3に記載された事項及び記載から読み取れる事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開平8-201197号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。 a 記載事項 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、母基板上に表面実装する小型の半導体圧力センサに関するものである。」 「【0014】 【実施例】図1に基づいて本発明の半導体圧力センサの一実施例について説明する。図1は半導体圧力センサを母基板上に実装した状態を示す断面図である。但し、図4に示した構成と同等構成については同符号を付すこととする。図で、半導体圧力センサチップ1は、パイレックスガラス材料等で構成された台座2に陽極接合法等により接合され、台座2は樹脂モールドされたパッケージ本体3の底面に形成された凹部3aの底面に接着剤4等によってマウントされている。 【0015】パッケージ本体3の上部には、台座2に形成された貫通孔2aを通って半導体圧力センサチップ1に連通する圧力導入口3bが形成されている。また、凹部3aの開口は蓋5によって塞がれており、これにより、凹部3aの内部は密閉性が高められた圧力基準室3cとなっている。圧力基準室3cについては、その内部気圧を大気圧に設定する場合、真空に設定したりする場合等がある。 【0016】 半導体圧力センサチップ1は、シリコーン単結晶板に、片面に受圧面が形成された、圧力を応力に変換するダイヤフラム1a、及び、歪ゲージ(図示省略)を形成したもので、ピエゾ抵抗効果により圧力の変化を電気抵抗の変化に変換して出力するものである。」 「【図1】 [図:0001426434000009.jpg] 」 b 記載から読み取れる事項 「ダイアフラム1a」の下方に位置する「凹部3aの内部」は、密閉性が高められた「圧力基準室3c」となっており(【0015】、【図1】参照)、「圧力基準室3c」が基準の圧力を示すものであるから、「ダイアフラム1a」の上部の空間(キャビティ)には測定対象である媒体が導入されることは明らかである。 (イ) 引用文献4に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2005-91166号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。 「【0001】 本発明は半導体圧力センサに関し、特にフェースダウンボンディングを利用した半導体圧力センサに関するものである。 …(中略)… 【0020】 [第1の実施形態] 第1の実施形態に係る半導体圧力センサを図1に基づいて説明する。図1は、その中央付近を切断したときの断面斜視図である。」 「【図1】 [図:0001426434000010.jpg] 」 「【0021】 この半導体圧力センサは、圧力センサチップ200と、第1の台座1と、第2の台座2と、を主要構成要素としている。 【0022】 このうち、圧力センサチップ200は、背景技術のものと実質的に同一であるので、同一部材には同一の番号を付して説明を省略する。 【0023】 第1の台座1は、例えば耐熱ガラスにて形成しており、その大きさは圧力センサチップ200と略同等である。また、このものは、圧力センサチップ200のダイヤフラム210を形成した面に固着している。 【0024】 また、第1の台座1には圧力導入孔11を設けている。この圧力導入孔11は、被測定圧力をダイヤフラム210に導入するためのものであり、第1の台座1の他方の面(図1の上側)からダイヤフラム210に向かって台座の厚み方向に沿うように形成している。 【0025】 第2の台座2は、第1の台座1と同じく圧力センサチップ200と略同等の大きさに形成されており、例えば、耐熱ガラスにて形成している。また、その一方の面には凹部21を設けている。このものは、第2の台座2を圧力センサチップ200の第1の台座1を接合した面とは反対側の面に固着したときにダイヤフラム210の薄肉部212と相対する位置に形成しており、その平面視における大きさは、ダイヤフラム210の薄肉部212と略同等又はそれ以上の大きさであり、その深さは薄肉部212の撓み量と略同等又はそれ以上に設定している。また、本実施形態において、この凹部21は閉空間であって圧力測定の際には圧力基準室となる。また、凹部21の内圧は、接合の時点で任意の圧力に設定可能であり、例えば、減圧の状況下で接合して略真空の状態にしている。 【0026】 ここにおいて、凹部21及び前述の圧力導入孔11は、例えば、サンドブラスト加工、レーザー加工及びエッチング加工等のいずれかを用いて形成している。 【0027】 また、第2の台座2には圧力センサチップ200の電極パッド(図示せず)と電気的に接続する配線22を設けている。この配線22は、第2の台座2における圧力センサチップ200の電極パッドと当接する位置からその厚み方向に貫通孔22aを形成し、その内部に、例えば、アルミニウム(Al)からなる導電性材料を充填させることにより形成している。 【0028】 ここにおいて、圧力センサチップ200の電極パッドと配線22との接続は、第2の台座2を圧力センサチップ200に固着する際に行われる。その固着方法として、例えば、表面活性常温接合法、半田溶融接合法及び陽極接合法の周知技術を用いることが可能である。このうち、表面活性常温接合法及び半田溶融接合法を用いる場合は、凹部21の周縁部と圧力センサチップ200との間及び電極パッドと配線22との間に金属層(図示せず)を介在させており、表面活性常温接合法において金からなる金属層、半田溶融接合法においてはクロムからなる金属層を形成している。この金属層は圧力センサチップ200と第2の台座2との接合面を全てに形成しておくのが好ましい。ただし、この場合は金属膜と電極パッド及び配線22が電気的に絶縁された状態にしておく必要がある。 【0029】 一方、配線22の他端には、微小導電突起23を形成している。このものは、例えば、金又は半田により構成している。そして、この微小導電突起23を介して半導体圧力センサを回路基板(図示せず)の回路パターン(図示せず)に電気的及び物理的に接続している。 【0030】 以上説明した本実施形態の半導体圧力センサによれば、圧力センサチップ200と回路基板との線膨張係数の違いで発生する応力の伝達距離を第2の台座2を介在させて長くしているので、ダイヤフラム210が応力を受けることによる圧力検知特性の劣化を抑制して圧力感度を向上することができる。 【0031】 そして、第2の台座2の大きさを圧力センサチップ200と略同等の大きさとし、かつ圧力センサチップ200の電極パッドと相対する位置にアルミニウムを充填した貫通孔22aからなる配線22を形成し、その他端側に微小導電突起23を形成しているので、回路基板に形成された回路パターンにフェイスダウンボンディングすることが可能となり、かつ半導体圧力センサが回路基板を占有する面積は、圧力センサチップ200と略同等の面積となり、結果的に、低背化及び低面積化を実現した小型化の半導体圧力センサを提供することができる。 【0032】 なお、圧力導入孔11は、第1の台座1のみに形成されるものではなく、例えば、第2の台座2に形成し、凹部21を介してダイヤフラム210の薄肉部212と連通させてもよいし、第1の台座1及び第2の台座2の両方に形成してもよい。 【0033】 ここにおいて、圧力導入孔11を第2の台座2にのみ形成した場合は、ダイヤフラム210及び第1の台座1で形成された空間が圧力基準室となる。圧力導入孔11を第1の台座1及び第2の台座2の両方に形成した場合は、ダイヤフラム210の薄肉部212と第1の台座1及び第2の台座2で囲まれた2つの領域のどちらか一方が圧力基準室となり、そのそれぞれの領域に導入された圧力の差を検知することができる。」 (ウ) 周知技術2の認定 前記(ア)に示した引用文献3の摘記事項及び前記(イ)に示した引用文献4の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術2」という。) <周知技術2> 「ダイアフラムの上部に位置するキャビティに試験媒体を収容し、ダイヤフラムの下部と配線基板との間に位置するキャビティに基準となる媒体を収容すること。」 ウ 引用文献5に記載された事項及び技術常識1の認定 (ア) 引用文献5に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2003-4567号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、圧力センサ及び血圧計に関する。特に、導入された圧力による薄膜ダイアフラムの変形を検出することによって圧力を検出する圧力センサとその製造方法に関する。また、当該圧力センサを用いた血圧計に関するものである。」 「【0010】本発明の圧力センサにあっては、圧力導入部と圧力検出用空隙を結ぶ導圧通路に、導圧通路よりも断面積の大きな空間を設けているので、導圧通路を伝達する圧力(気体の流れ)は当該空間で遅延し、一時的ないし瞬間的な圧力変化が発生した場合には、その圧力変化は当該空間で吸収され、薄膜ダイアフラムに伝わるのを阻害される。従って、導圧通路に前記空間を形成することで導圧通路に圧力のローパスフィルタの機能を持たせることができる。そして、当該空間の断面積や容積を調整することにより圧力伝達の遅延の程度を制御することができ、圧力センサの応答周波数やカットオフ周波数を精度よく制御することができる。」 「【0022】 【発明の実施の形態】(第1の実施形態)図2(a)(b)は本発明の圧力センサ21の構造を示す平面図及び断面図、図3はその分解斜視図である。この圧力センサ21にあっては、本体側基板22の上面に円形の圧力検知室23と四角形のバッファ空間24が凹設され、圧力検知室23とバッファ空間24の間は直線状の導圧通路25によって結ばれている。ここで、圧力検知室23と導圧通路25は同じ深さとなっており、バッファ空間24は圧力検知室23及び導圧通路25よりも深くなっている。バッファ空間24の断面積は導圧通路25の断面積よりも大きくなっており、バッファ空間24の容積も導圧通路25の容積よりも大きくなっている。バッファ空間24は、導圧通路25よりも深くなっているので、導圧通路25の幅に比較してあまり大きな幅にすることなく、断面積や容積を大きくすることができ、圧力センサ21を小型化することができる。 【0023】また、本体側基板22の下面には、エッチングによって角錐台状をした圧力導入部26が設けられており、圧力導入部26の下面は本体側基板22の下面に開口し、圧力導入部26の上面はバッファ空間24内で開口している。よって、バッファ空間24は圧力導入部26に隣接して形成されており、圧力導入部26は、バッファ空間24及び導圧通路25を通じて圧力検知室23につながっている。そして、圧力導入部26は下面で開口面積が大きく、バッファ空間24に接する内側の上面で開口面積が小さくなっている。 【0024】圧力検知室23の底面には、固定電極27が形成されており、本体側基板22の上面に設けた電極パッド28と固定電極27は電極パターン29によって接続されている。 【0025】本体側基板22の上面には、カバー基板30を重ねて接合されている。本体側基板22の圧力検知室23、バッファ空間24及び導圧通路25はカバー基板30によって封止されており、カバー基板30のうち圧力検知室23と対向する位置には、円形の薄型ダイアフラム31が形成されている。薄型ダイアフラム31の内面には、金属薄膜等によって可動電極32が形成されており、可動電極32は本体側基板22の上面に設けられた電極パッド33と導通している。 【0026】しかして、この圧力センサ21にあっては、薄型ダイアフラム31の上面に圧力P1(例えば、基準圧力)が導入され、圧力導入部26から圧力検知室23内に圧力P2が導入されると、薄型ダイアフラム31はこれらの圧力の差圧P1-P2によって撓み、それによって固定電極27と可動電極32の間の静電容量が変化するので、この静電容量の変化を検出することで差圧P1-P2、あるいはP1を基準圧力として圧力P2が検出される。」 「【図2】 [図:0001426434000011.jpg] 」 「【0030】図4は上記圧力センサ21の製造工程を説明する図である。以下、図4に従って、この上記圧力センサ21の製造工程を説明する。まず、シリコン基板34(あるいは、ガラス基板を用いてもよい。)のうち、バッファ空間24を形成しようとする領域に所定深さで埋め込み酸化膜35を形成する(図4(a))。ついで、シリコン基板34とカバー基板30を絶縁するため、シリコン基板34の上面を絶縁膜36で覆い、圧力検知室23、導圧通路25及びバッファ空間24と対応する領域で絶縁膜36を除去する。この絶縁膜36は、例えばLPCVD法によりシリコン窒化膜などで形成する。この結果、圧力検知室23、導圧通路25及びバッファ空間24と対応する領域を除いてシリコン基板34の上面は、絶縁膜36で覆われる(図4(b))。この絶縁膜36とシリコン基板34によって本体側基板22が構成される。」 「【図4】 [図:0001426434000012.jpg] 」 「【0031】次に、絶縁膜36の上からシリコン基板34の上面にLTOなどの犠牲層37を形成し、犠牲層37をパターニングすることによって、絶縁膜36の開口内に犠牲層37を埋め込む(図4(c))。すなわち、圧力検知室23及び導圧通路25となる領域に37が埋め込まれると共に、埋め込み酸化膜35の上面が犠牲層37によって覆われる。 【0032】この後、シリコン基板34の下面に酸化膜やシリコン窒化膜(SiN)等からなるマスク38を形成し、マスク38をパターニングして圧力導入部26を形成しようとする位置でマスク38を開口する。また、 絶縁膜36及び犠牲層37の上面にポリシリコン膜39を形成し、さらにポリシリコン膜39の上面にLTO、SiN等からなる保護膜40を形成し、圧力検知室23となる領域と対向する領域でポリシリコン膜39が露出するように保護膜40をパターニングする(図4(d))。こうして保護膜40とポリシリコン膜39によってカバー基板30が構成され、保護膜40から露出した領域のポリシリコン膜39によって薄型ダイアフラム31が形成される。」 「【図4】 [図:0001426434000013.jpg] 」 「【0033】ついで、マスク38の開口を通してTMAH、KOH等のエッチャントでシリコン基板34の下面をエッチングし、シリコン基板34の下面に圧力導入部26を形成する(図4(e))。さらに、圧力導入部26を通して埋め込み酸化膜35及び犠牲層37をエッチング除去し、本体側基板22とカバー基板30の間に導圧通路25及び圧力検知室23を形成する(図4(f))。」 「【図4】 [図:0001426434000014.jpg] 」 (イ) 技術常識1の認定 前記(ア)に示した引用文献5の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」という。) <技術常識1> 「ダイアフラム式の圧力センサデバイスにおいて、基板上の絶縁層に犠牲層を用いて気体の通路を設けること。」 (4) 本件補正発明と引用発明の対比 ア 対比分析 本件補正発明と引用発明を対比する。 なお、事案に鑑み、構成X、構成B1~B4、構成A1~A3の順に検討する。 (ア) 構成Xの観点 引用発明の「静電容量型圧力センサ」は、「圧力導入孔7を介して圧力測定媒体が圧力室6内に供給されると、ダイアフラム3が膨らんで、可動電極4と固定電極5の電極間距離が変位して、電極間の静電容量が変化することにより、圧力を検出し、その圧力に応じた信号を出力するもの」であるところ、「ダイアフラム3が膨ら[む]」のは、圧力室6内の圧力と、「ダイアフラム3の圧力室6と反対側である上方に」「形成」された「キャビティ構造」の圧力に差が生じるためであるから、「静電容量型圧力センサ」は、圧力室6内の圧力と、ダイアフラム3の上方のキャビティ構造に導入された圧力との差圧を測るものであることは明らかである。 したがって、「差圧センサデバイス」の発明である本件補正発明と「静電容量型圧力センサ」の発明である引用発明は、「差圧センサデバイス」の発明である点で一致する。 (イ) 構成B1~B4の観点(キャビティ関連) a 構成B1について (a) 構成B1は、「膜(M)によって互いに分離されている第1のキャビティ(C1)および第2のキャビティ(C2)」を備えることである。 (b) 引用発明の「ダイアフラム3」は本件補正発明の「膜(M)」に相当する。そして、引用発明の「圧力室6」と「キャビティ構造」は、いずれも流体を収容できることは明らかであるから、いずれか一方が本件補正発明の「第1のキャビティ(C1)」に、他方が本件補正発明の「第2のキャビティ(C2)」に相当する。 (c) ここで、本件補正発明の構成B4の「前記第2のキャビティ(C2)は前記膜(M)の上方に位置して[いる]」ことを踏まえると、本件補正発明においては、膜(M)からみて下方に「第1のキャビティ(C1)」が位置しており、膜(M)からみて上方に「第2のキャビティ(C2)」が位置していることになる。 (d) 他方、引用発明の「圧力室6」は「ダイフラム3と絶縁基板2との間」に形成され、「キャビティ構造」は「ダイアフラム3の圧力室6と反対側である上方」に形成されるのであるから、「ダイアフラム3」からみて下方に「圧力室6」が位置しており、「ダイアフラム3」からみて上方に「キャビティ構造」が位置していることになる。 (e) そうすると、収容される流体が試験媒体であるか大気であるかという相違は措くとして、上下の配置に着目すれば、引用発明の「圧力室6」が本件補正発明の「第1のキャビティ(C1)」に相当し、引用発明の「キャビティ構造」が本件補正発明の「第2のキャビティ(C2)」に相当する。 (f) また、引用発明の「圧力室6」と「キャビティ構造」は「ダイアフラム3」によって互いに分離されているものと認められる。 (g) したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。 「膜によって互いに分離されている第1のキャビティおよび第2のキャビティ」を備える点。 b 構成B2について (a) 構成B2は、「前記第1のキャビティ(C1)は、通気孔(108、305)と流体連通しているチャネル(109、306)と流体連通」することである。 (b) 構成B2の「通気孔」に関して、本願の明細書の段落【0004】の「大気への接続部は一般に、通気(ventまたはventilation)孔と呼ばれる。」との記載を踏まえると、本件補正発明の「通気孔」とは、大気への接続部のことであると解するのが相当である。 (c) 引用発明の「開口22a」は、「測定圧力媒体」を「圧力室6に導入」するためのものであるから、大気への接続部である通気孔ではないものの、流体の入り口としての「孔」である点においては、本件補正発明の「通気孔(108、305)」と共通するといえる。 (d) 引用発明の「溝22」は本件補正発明の「チャネル(109、306)」に相当するものと認められる。そして、引用発明においては「圧力導入孔7から溝22を介して外部と連通することで、測定圧力媒体を溝22の開口22aから供給することにより圧力室6に導入され[る]」のであるから、本件補正発明の「第1のキャビティ(C1)」と本件補正発明の「圧力室6」は、「孔と流体連通しているチャネルと流体連通」する「第1のキャビティ」である点で一致する。 c 構成B3について (a) 構成B3は「前記通気孔(108、305)は、前記第1のキャビティ(C1)内に大気圧または規準圧力を蓄積できるように、前記差圧センサデバイス(100)の周囲環境と流体連通するように構成」されることである。 (b) 引用発明は「測定圧力媒体を溝22の開口22aから供給することにより圧力室6に導入」するものであるから、「圧力室6」に蓄積されるのは「大気圧または基準圧力」(を有する)ものではなく「測定圧力媒体」である。 (c) 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、構成B3の観点において次の点で相違する。 「チャネル」と「流体連通」している「孔」について、 本件補正発明は「前記第1のキャビティ(C1)内に大気圧または規準圧力を蓄積できるように、前記差圧センサデバイス(100)の周囲環境と流体連通するように構成」された「通気孔(108、305)」であるのに対し、 引用発明は「圧力室6」内に「測定圧力媒体」を蓄積できるように構成された「開口22a」である点。 d 構成B4について (a) 構成B4は、「前記第2のキャビティ(C2)は前記膜(M)の上方に位置しており、前記第2のキャビティ(C2)は前記第1のキャビティ(C1)内に蓄積される前記大気圧または規準圧力と対比して圧力が測定されることになる試験媒体を収容するために設けられている」ことである。 (b) 引用発明の「キャビティ構造」は「ダイアフラム3」の上方に位置しているから、本件補正発明の「第2のキャビティ(C2)」と引用発明の「キャビティ構造」は、「膜の上方に位置」している点で一致する。 (c) 引用発明においては、「圧力室6」(第1のキャビティ)に導入される媒体が「測定圧力媒体」(本件補正発明の「試験媒体」に相当)であることを踏まえると、「キャビティ構造」(第2のキャビティ)には、測定される圧力がゲージ圧である場合には、大気が収容されることになり、測定される圧力がゲージ圧に限られない場合には、「測定圧力媒体」の圧力と比較される基準圧力を有する媒体が収容されることになると考えられるが、いずれにせよ、何らかの媒体を収容するために「キャビティ構造」(第2のキャビティ)が設けられているものの、何を収容するのかは記載されていない。 (d) 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、構成B4の観点において次のiの点で一致し、次のiiの点で相違する。 i 一致点 「前記第2のキャビティは前記膜の上方に位置しており、」「前記第2のキャビティは媒体を収容するために設けられている」点。 ii 相違点 「第2のキャビティ」に「収容」される「媒体」が、 本件補正発明は「前記第1のキャビティ(C1)内に蓄積される前記大気圧または規準圧力と対比して圧力が測定されることになる試験媒体」であるのに対し、 引用発明は特定されていない点。 e 構成B1~B4のまとめ 以上a~dの検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、構成B1~B4の観点において次の(a)の点で一致し、次の(b)の点で相違する。 (a) 一致点 「膜によって互いに分離されている第1のキャビティおよび第2のキャビティとを備え、」 「前記第1のキャビティは、孔と流体連通しているチャネルと流体連通しており、」 「前記第2のキャビティは前記膜の上方に位置しており、前記第2のキャビティは媒体を収容するために設けられている」点 (b) 相違点 i 「チャネル」と「流体連通」している「孔」について、 本件補正発明は「前記第1のキャビティ(C1)内に大気圧または規準圧力を蓄積できるように、前記差圧センサデバイス(100)の周囲環境と流体連通するように構成」された「通気孔(108、305)」であるのに対し、 引用発明は「圧力室6」内に「測定圧力媒体」を蓄積できるように構成された「開口22a」である点。 ii 「第2のキャビティ」に「収容」される「媒体」が、 本件補正発明は「前記第1のキャビティ(C1)内に蓄積される前記大気圧または規準圧力と対比して圧力が測定されることになる試験媒体」であるのに対し、 引用発明は特定されていない点。 (ウ) 構成A1~A3の観点(基板関連) 構成A1~A3についてまとめて検討する。 a 構成A1~A3は、「基板(110)」を備え、「前記基板(110)の主面上に形成されている別層(104)」を備え、「前記チャネル(109、306)は、前記別層(104)における、前記基板(110)の前記主面と実質的に平行な平面内に延在する」ことである。 b 前記(イ)b(d)において検討したとおり、引用発明における「溝22」は、本件補正発明における「チャネル(109、306)」に相当するものと認められるところ、引用発明における「溝22」は「支持基板20」の「接合面」に形成されるのであるから、引用発明の「支持基板20」は、本件補正発明の「基板(110)」に相当する。 そして、引用発明の「溝22」は、「支持基板20」の「接合面」と実質的に平行な平面内に延在するものであると認められる。 そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「基板」を備え、「チャネル」が「前記基板の主面と実質的に平行な平面内に延在する」点で一致する。 一方、本件補正発明においては、「チャネル(109、306)」は「基板(110)の主面上に形成されている別層(104)」において設けられるものであるのに対して、 引用発明においては、「溝22」は「支持基板20」に設けられる点で相違する。 c 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、構成A1~A3の観点において次の(a)の点で一致し、次の(b)の点で相違する。 (a) 一致点 「基板」を備え、 「チャネル」が「前記基板の主面と実質的に平行な平面内に延在する」点。 (b) 相違点 「チャネル」が設けられる対象が、 本件補正発明では「基板(110)の主面上に形成されている別層(104)」であるのに対し、 引用発明では「支持基板20」である点。 イ 一致点及び相違点 前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。 (ア) 一致点 「差圧センサデバイスであって、 前記差圧センサデバイスは、 基板と、 膜によって互いに分離されている第1のキャビティおよび第2のキャビティとを備え、 前記第1のキャビティは、孔と流体連通しているチャネルと流体連通しており、 前記チャネルは、前記基板の主面と実質的に平行な平面内に延在するとともに、 前記第2のキャビティは前記膜の上方に位置しており、前記第2のキャビティは媒体を収容するために設けられている、 差圧センサデバイス。」である点。 (イ) 相違点 a 相違点1(キャビティに収容される媒体に係る相違点) (a) 相違点1-1(孔及び第1のキャビティ) 「チャネル」と「流体連通」している「孔」について、 本件補正発明は「前記第1のキャビティ(C1)内に大気圧または規準圧力を蓄積できるように、前記差圧センサデバイス(100)の周囲環境と流体連通するように構成」された「通気孔(108、305)」であるのに対し、 引用発明は「圧力室6」内に「測定圧力媒体」を蓄積できるように構成された「開口22a」である点。 (b) 相違点1-2(第2のキャビティ) 「第2のキャビティ」に「収容」される「媒体」が、 本件補正発明は「前記第1のキャビティ(C1)内に蓄積される前記大気圧または規準圧力と対比して圧力が測定されることになる試験媒体」であるのに対し、 引用発明は特定されていない点。 b 相違点2(チャネルが設けられる対象に係る相違点) 「チャネル」が設けられる対象が、 本件補正発明では「基板(110)の主面上に形成されている別層(104)」であるのに対し、 引用発明では「支持基板20」である点。 (5) 判断 ア 相違点1について (ア) 相違点1における根本的な相違は、膜によって互いに分離されている二つのキャビティのどちらに試験媒体を収容し、どちらに比較基準となるような圧力を有する媒体(大気等)を収容するか、ということである。 (イ) そして、本件補正発明は膜(M)の上方に位置するキャビティである「第2のキャビティ(C2)」に「試験媒体」を収容するものであるが、引用発明は「ダイアフラム3」の下方のキャビティである「圧力室6」に「測定対象媒体」を収容するものである。 (ウ) しかし、ダイアフラムを介して配置された二つのキャビティに収容される媒体の圧力差を測定する「差圧センサデバイス」においては、原理的にはどちらのキャビティに試験媒体を収容しても良いことは明らかであって、一方のキャビティに試験媒体を収容すると定めれば、他方のキャビティには比較基準となるような圧力を有する媒体(大気等)が収容されることが自ずと定まることになる。 実際、「ダイアフラムの上部に位置するキャビティに試験媒体を収容し、ダイヤフラムの下部と配線基板との間に位置するキャビティに基準となる媒体を収容すること」は当業者にとって周知技術である(前記周知技術2参照)。 (エ) 前記(ウ)を踏まえると、引用発明において、「ダイアフラム3」の上方に位置する「キャビティ構造」(第2のキャビティ)に測定対象媒体を収容するように構成することは、当業者にとって自明な設計変更にすぎない。 かかる自明な設計変更により、引用発明の「圧力室6」(第1のキャビティ)には当然に基準となるような圧力を有する媒体(大気等)が収容されることとなり、引用発明の「開口22a」は、大気への接続部である「通気孔」として機能することになる。 すなわち、引用発明において、前記相違点1-1に係る「チャネル」と「流体連通」している「孔」について、「前記第1のキャビティ内に大気圧または規準圧力を蓄積できるように、前記差圧センサデバイスの周囲環境と流体連通するように構成」された「通気孔」であることが導かれる。 また、引用発明において、前記相違点1-2に係る「第2のキャビティ」に「収容」される「媒体」について、「前記第1のキャビティ内に蓄積される前記大気圧または規準圧力と対比して圧力が測定されることになる試験媒体」であることが導かれる。 そして、引用発明は「センサ内部へのごみの侵入の防止」という課題を前提としているところ(引用文献1の段落【0012】を参照)、測定圧力媒体、大気のいずれであってもセンサ内部へごみを侵入させる可能性があることに変わりはないから、このような設計変更を行ったとしても、上記課題が変更を受けることはない。 (オ) してみれば、引用発明において周知技術2を適用し、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 イ 相違点2について (ア) 「感知領域を有する半導体チップを含む圧力センサデバイスにおいて、感知領域がデバイスの外側の環境と流体接続されるための入口及び感知領域と流体接続された出口を有する構造要素を、半導体チップとキャリア基板の間に設けること」は、当業者に周知の技術であると認められるところ(前記周知技術1参照)、引用発明の「静電容量型圧力センサ」において、「溝22」が「接合面」に「形成」された「支持基板20」が上記構造要素に当たるとみて、その下方にキャリア基板をさらに積み重ねた構造とすることにより、「支持基板20」が、「ダイアフラム3」付き「半導体基板1」とキャリア基板の間に配置されるようにすることは、当業者が容易に想到できたものと認められる。 そして、この場合には、新たに設けた「キャリア基板」(以下、便宜のため「追加基板」ということがある。)が本件補正発明の「基板(110)」に相当することとなるから、引用発明の「支持基板20」は「追加基板」の主面上に形成されている「別層(104)」に相当することとなり、「チャネル」が設けられる対象が「基板の主面上に形成されている別層」であることが導出される。 すなわち、引用発明に周知技術1を適用して、相違点2に係る本件補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到できたものと認められる。 (イ) 上記(ア)では引用発明の「支持基板20」を「別層(104)」に相当するものと認定したが、「支持基板20」はシリコン基板であるため(引用文献1の段落【0026】の記載を参照)、「層」という位置づけができないとの指摘も考えられる。 しかしながら、そもそも引用発明において「追加基板」を用いた場合には、「溝22」が形成される「支持基板20」としては上部構造を支持する「基板」としての役割は必要でなくなるから、その材料や厚み等の選択肢が広がることは自明のことであり、必ずしも「支持基板20」が厳格な意味における「基板」であることを維持しなければならないわけではなく、「層」としての形態をとることも許容されるというべきである。 そして、「ダイアフラム式の圧力センサデバイスにおいて、基板上の絶縁層に犠牲層を用いて気体の通路を設けること」が技術常識であることを踏まえると(前記技術常識1を参照)、追加基板上に絶縁層を「別層」として設けて、当該絶縁層において気体の通路(チャネル)を設けることは、当業者が適宜行い得たことといえる。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)において説示した相違点2の判断に係る理由に加えて、「支持基板20」自体に「溝22」を形成するのではなく、技術常識1を踏まえて、「支持基板20」上に形成された「絶縁層」に「犠牲層を用いて」形成された「気体の通路を設ける」ように設計変更を行うことにより、前記相違点2に係る本件補正発明のような構成とすることもまた、当業者が容易に想到できたものともいえる。 (エ) 前記(ア)~(ウ)のとおり、引用発明、周知技術1及び技術常識1に基づいて、又は、引用発明及び技術常識1に基づいて、前記相違点2に係る本件補正発明の構成に至ることは、当業者が容易に想到できたことである。 ウ 総合評価 前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、周知技術1、周知技術2及び技術常識1に基づいて、又は、引用発明、周知技術2及び技術常識1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本件補正発明は、当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 請求人の主張について (ア) 請求人の主張1について a 請求人の主張1の内容 請求人は、審判請求の理由において、概略、以下のように主張している。 引用発明の「支持基板20」、「絶縁基板2」及び「溝22」がそれぞれ本件補正発明の「基板(110)」、「別層(104)」及び「チャネル」に相当するところ、引用文献1には「絶縁基板2はガラス等の硬い材料が使用されているので、圧力導入孔7の形状を水平方向に延びるように加工するのは困難である。」と記載されているから、「支持基板20」上に位置する「絶縁基板2」に「チャネル」に相当する「溝22」を形成するための技術的思想及び具体的な手法を引用文献1は何ら開示していないため、本件補正発明に至ることができない。 b 請求人の主張1についての検討 請求人の主張1は、要するに前記相違点2に係るものであるところ、この点については、前記イで検討したとおり、気体の通路として「絶縁基板2」に「溝22」を設けるのではなく、「支持基板20」に設けられた「溝22」を用いること(前記イ(ア)及び(イ)を参照)、又は「支持基板20」上に形成された「絶縁層」に「空気の通路を設ける」こと(前記イ(ウ)を参照)は、いずれも当業者が容易に想到できたものである。 したがって、請求人の主張1を採用することができない。 (イ) 請求人の主張2について a 請求人の主張2の内容 請求人は、審判請求の理由において、概略、以下のように主張している。 引用発明においては、試験媒体はダイアフラム3の下方に存在する「圧力室6」に収容されるが、本件補正発明は、膜(M)の上方に位置する第2のキャビティ(C2)に圧力測定対象の試験媒体が収容される。引用文献1は、測定媒体と基準圧となる大気圧との導入を互いに入れ替え可能であることを何ら示唆していない。 本件補正発明のこのような構成によって、本件補正発明は、圧力測定対象の試験媒体を収容しやすく、気体のみならず液体も導入することが可能であるのに対して、引用発明では、圧力室6よりも下方に位置する溝22の開口22aから測定圧力媒体を供給するため、測定圧力媒体が液体の場合には圧力導入孔7から圧力室6まで液体を導入することが重力を考慮すると困難であり、測定圧力媒体の種類が限定される。膜(M)の上方から進入する流体の圧力を、流体が液体、気体の両方のケースにおいて第1のキャビティ(C1)内に蓄積される大気圧又は規準圧力と対比して圧力を測定することができるということは、引用文献1によっては得ることができない特有な効果である。 b 請求人の主張2についての検討 請求人の主張2は、要するに前記相違点1に係るものであるところ、この点については、前記アで検討したように、ダイアフラム3の上部に位置する「キャビティ」に試験媒体を収容することは、当業者が容易に想到できたことである。そして、そのことによって生じると主張する「圧力測定対象の試験媒体を収容しやすく、気体のみならず液体も導入することが可能」との効果については、本願明細書の発明の詳細な説明に記載がない。仮に、記載がなくともこのような効果の参酌が可能な程に当業者にとって自明な効果なものであれば、そもそも周知技術2が有する効果として、当業者にとって自明なものといわざるを得ない。 したがって、請求人の主張2を採用することができない。 オ 独立特許要件の判断のまとめ 以上検討のとおり、本件補正発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。 4 本件補正の却下の決定の理由のむすび 前記3(5)オのとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明について 本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の、本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 理由3(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 <主たる引用文献> 引用文献1.特開平11-248578号公報 <周知技術を示す文献> 引用文献2.米国特許出願公開第2010/0230766号明細書 3 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等 引用文献1~5に記載された事項は、それぞれ前記第2の3(2)ア、(3)ア(ア)、(3)イ(ア)、(3)イ(イ)及び(3)ウ(ア)において示したとおりである。 また、引用発明、周知技術1、周知技術2及び技術常識1は、それぞれ前記第2の3(2)ウ、(3)ア(イ)、(3)イ(ウ)及び(3)ウ(イ)において認定したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明の「チャネル(109、209、306、407)」が「基板(110、210)の前記主面と実質的に平行な平面内に延在する」部分について、「別層(104)」のみから「別層(104、204、405)または前記基板(110、210)」へと、その選択肢を拡張するものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(4)において説示したとおり、引用発明、周知技術1、周知技術2及び技術常識1に基づいて、又は、引用発明、周知技術2及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-002823

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