特許拒絶査定不服審判
2024-000818
圧力検出素子
- 審判番号
- 2024-000818
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-166695
- 請求日
- 2024年01月17日
- 審決日
- 2025年02月19日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】長野計器株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人樹之下知的財産事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 濱野 隆
- 審判官 貝沼 憲司
- 分類
- P18 .575-Z (G01L) / P18 .121-Z (G01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-166695号「圧力検出素子」拒絶査定不服審判事件〔令和4年4月13日出願公開、特開2022-59145〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年10月1日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 5月18日付け:拒絶理由通知書
同年 7月 7日 :意見書、手続補正書の提出
同年10月16日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月24日 :原査定の謄本の送達)
令和6年 1月17日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年1月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年1月17日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和6年1月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
板状に形成されたダイアフラム部と、前記ダイアフラム部の一方の面に配置される第1ダイアフラム電極部と、前記ダイアフラム部の他方の面に配置される第2ダイアフラム電極部と、前記ダイアフラム部の周縁部に設けられる接合部と、を有する感応部と、
板状に形成され前記感応部の前記接合部の一方の面に接合される第1基板本体部と、前記第1基板本体部の前記第1ダイアフラム電極部と対向する面に配置される第1基板電極と、を有する第1基板と、
板状に形成され前記感応部の前記接合部の他方の面に接合される第2基板本体部と、前記第2基板本体部の前記第2ダイアフラム電極部と対向する面に配置される第2基板電極と、を有する第2基板と、を備え、
前記第1基板本体部には、前記第1基板本体部を貫通する第1圧力導入孔と、前記第1ダイアフラム電極部と対向する面に設けられ前記第1圧力導入孔と連通する第1溝部と、が形成され、
前記第2基板本体部には、前記第2基板本体部を貫通する第2圧力導入孔と、前記第2ダイアフラム電極部と対向する面に設けられ前記第2圧力導入孔と連通する第2溝部と、が形成され、
前記第1溝部は、前記第1基板電極に覆われており、
前記第2溝部は、前記第2基板電極に覆われている
ことを特徴とする圧力検出素子。」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
板状に形成されたダイアフラム部と、前記ダイアフラム部の一方の面に配置される第1ダイアフラム電極部と、前記ダイアフラム部の他方の面に配置される第2ダイアフラム電極部と、前記ダイアフラム部の周縁部に設けられる接合部と、を有する感応部と、
板状に形成され前記感応部の前記接合部の一方の面に接合される第1基板本体部と、前記第1基板本体部の前記第1ダイアフラム電極部と対向する面に配置される第1基板電極と、を有する第1基板と、
板状に形成され前記感応部の前記接合部の他方の面に接合される第2基板本体部と、前記第2基板本体部の前記第2ダイアフラム電極部と対向する面に配置される第2基板電極と、を有する第2基板と、を備え、
前記第1基板本体部には、前記第1基板本体部を貫通する第1圧力導入孔と、前記第1ダイアフラム電極部と対向する面に設けられ前記第1圧力導入孔と連通する第1溝部と、が形成され、
前記第2基板本体部には、前記第2基板本体部を貫通する第2圧力導入孔と、前記第2ダイアフラム電極部と対向する面に設けられ前記第2圧力導入孔と連通する第2溝部と、が形成され、
前記第1溝部は、前記第1基板電極に覆われており、
前記第2溝部は、前記第2基板電極に覆われており、
前記第1基板電極における前記第1溝部を覆う箇所は、有効な電極面積として機能し、
前記第2基板電極における前記第2溝部を覆う箇所は、有効な電極面積として機能する
ことを特徴とする圧力検出素子。」
2 本件補正の目的
本件補正のうち請求項1についての補正は、「第1基板電極」及び「第2基板電極」について、それぞれ「前記第1基板電極における前記第1溝部を覆う箇所は、有効な電極面積として機能[すること]」及び「前記第2基板電極における前記第2溝部を覆う箇所は、有効な電極面積として機能する[こと]」を限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件についての当審の判断
本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討を行う。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成E2までに分説する。また、参考図1、2として、本願の【図1】及び【図3】を符号の説明とともに示す。
<本件補正発明の分説>
(構成A) 板状に形成されたダイアフラム部と、前記ダイアフラム部の一方の面に配置される第1ダイアフラム電極部と、前記ダイアフラム部の他方の面に配置される第2ダイアフラム電極部と、前記ダイアフラム部の周縁部に設けられる接合部と、を有する感応部と、
(構成B1) 板状に形成され前記感応部の前記接合部の一方の面に接合される第1基板本体部と、前記第1基板本体部の前記第1ダイアフラム電極部と対向する面に配置される第1基板電極と、を有する第1基板と、
(構成B2) 板状に形成され前記感応部の前記接合部の他方の面に接合される第2基板本体部と、前記第2基板本体部の前記第2ダイアフラム電極部と対向する面に配置される第2基板電極と、を有する第2基板と、を備え、
(構成C1) 前記第1基板本体部には、前記第1基板本体部を貫通する第1圧力導入孔と、前記第1ダイアフラム電極部と対向する面に設けられ前記第1圧力導入孔と連通する第1溝部と、が形成され、
(構成C2) 前記第2基板本体部には、前記第2基板本体部を貫通する第2圧力導入孔と、前記第2ダイアフラム電極部と対向する面に設けられ前記第2圧力導入孔と連通する第2溝部と、が形成され、
(構成D1) 前記第1溝部は、前記第1基板電極に覆われており、
(構成D2) 前記第2溝部は、前記第2基板電極に覆われており、
(構成E1) 前記第1基板電極における前記第1溝部を覆う箇所は、有効な電極面積として機能し、
(構成E2) 前記第2基板電極における前記第2溝部を覆う箇所は、有効な電極面積として機能する
(構成X) ことを特徴とする圧力検出素子。
<参考図1(【図1】)>
[図:0001422092000001.jpg]
<参考図2(【図3】)>
[図:0001422092000002.jpg]
1 圧力検出素子
2 第1基板 3 第2基板
21 第1基板本体部 31 第2基板本体部
22 第1基板電極 32 第2基板電極
23 第1圧力導入孔 33 第2圧力導入孔
24 第1溝部 34 第2溝部
4 感応部
41 ダイアフラム部
42 第1ダイアフラム電極部
43 第2ダイアフラム電極部
44 接合部
イ 本件補正発明の課題、作用効果に関する発明の詳細な説明の記載
本件補正発明の課題、作用効果に関する本願明細書の発明の詳細な説明の記載等を抜粋すると、次の記載がある。
(ア) 技術分野、背景技術、発明が解決しようとする課題について
「【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出素子に関する。
【背景技術】
…(中略)…
【0005】
…(中略)…
特許文献1の圧力検出素子では、2つの基板のそれぞれに複数の圧力導入孔を設けているので、ダイアフラムと電極とが接触しても、密閉空間が形成されず、圧力差が生じないため、これらが密着してしまうことを抑制でき、応答性が悪化することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-356563号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の圧力検出素子では、基板に複数の圧力導入孔を設ける必要があることから、電極の有効面積が減少してしまい、検出感度を最大限に得られていないといった問題があった。
【0008】
本発明の目的は、応答性が悪化することを抑制でき、かつ、検出感度の低下を抑制できる圧力検出素子を提供することにある。」
(イ) 発明の効果について
「【0026】
[実施形態の効果]
以上のような本実施形態では、次の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、第1基板本体部21において、第1ダイアフラム電極部42と対向する面に、第1圧力導入孔23と連通する第1溝部24が形成される。これにより、第1圧力導入孔23または第2圧力導入孔33を介して、過大な圧力や負圧がダイアフラム部41に作用して、ダイアフラム部41の第1ダイアフラム電極部42と、第1基板2の第1基板電極22とが接触したとしても、第1ダイアフラム電極部42と第1基板電極22が配置された第1基板本体部21との間に密閉空間が形成されてしまうことを防止できる。そのため、第1ダイアフラム電極部42と第1基板電極22とがすぐに剥離せずに応答性が悪くなってしまうことを抑制できる。
同様に、本実施形態では、第2基板本体部31において、第2ダイアフラム電極部43と対向する面に、第2圧力導入孔33と連通する第2溝部34が形成されるので、第2ダイアフラム電極部43と第2基板電極32が配置された第2基板本体部31との間に密閉空間が形成されてしまうことを防止できる。そのため、第2ダイアフラム電極部43と第2基板電極32とがすぐに剥離せずに応答性が悪くなってしまうことを抑制できる。」
「【0028】
(2)本実施形態では、第1基板2および第2基板3において、第1溝部24および第2溝部34も電極に覆われているので、第1溝部24および第2溝部34に相当する箇所も有効に活用することができる。そのため、第1溝部24および第2溝部34によって有効な電極面積が減少してしまうことを抑制できる。」
(2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献であって、本願の出願前に発行された文献である特開平3-205527号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は審判合議体が付したもので、後記(イ)において引用発明の認定に直接用いる記載を示す。
a 1頁左下欄下から9行~同頁右下欄5行
「【産業上の利用分野】
この発明は、差圧に応じて変位するダイヤフラムとその各側に近接対向して設けられる受面とを備え、ダイヤフラムの変位に関連して生じる物理量変化、たとえばダイヤフラムとその各側の固定電極との間の静電容量変化、またはダイヤフラム表面に形成された半導体抵抗層の抵抗変化に基づいて差圧が求められる検出器であって、とくに過大な差圧が急速に除去されたとき、これにダイヤフラム変位が迅速に追従するような差圧検出器に関する。
なお、この差圧検出器は、導入圧力の一方が大気圧または真空であることによって、ゲージ圧用または絶対圧用検出器になる。」
b 1頁右下欄6行~2頁左上欄7行、第8図
「【従来の技術】
一従来例について、その断面図である第8図を参照しながら説明する。この一従来例は静電容量式、つまりダイヤフラム変位を静電容量に変換する方式の検出器である。
第8図において、可動電極としてのダイヤフラム5lの各側に各固定電極52,53がその周縁部で各接合部54,55によって固着される。各固定電極52,53には、ダイヤフラム51に対向する側に浅い凹部が設けられ、またその中心部を貫通して各導圧孔58,59が設けられる。前記の各凹部は、ダイヤフラム51と各固定電極52,53との間の各空隙56,57を構威する。
いま、各導圧孔58,59からそれぞれ各圧力P1,P2(P1>P2)が導入されると、その差圧に応じてダイヤフラム51は、図の一点鎖線表示のように上方に凸に湾曲し、各固定電極52,53との間の静電容量を変化させる。この静電容量の変化は差動的であるから、周知の電子回路によって差圧に比例する電流に変換することができ、言いかえれば、この電流に基づいて差圧を検出することができるわけである。」
「第8図
[図:0001422092000003.jpg]
」
c 3頁右下欄5行~同欄最終行、第1図
「【実施例】
本発明に係る差圧検出器の第1の実施例について以下に図面を参照しながら説明する。第1図は第1実施例の断面図、第2図は同じくその内部の正面図である。
第1実施例が第8図に示した一従来例と異なる点は、固定電極のダイヤフラムに対向する表面に導圧孔と交差して溝を設けたことである。すなわち、第1図において、可動電極としてのダイヤフラム1の各側に各固定電極2,3が各円環状接合部4,5によって固着される。各固定電極2,3には、ダイヤフラム1に対向する側に浅い凹部が設けられるとともに、その中心部を貫通して各導圧孔8,9が設けられる。前記の各凹部は、ダイヤフラム1と各固定電極2,3との間の各空隙6,7を構成する。」
「第1図
[図:0001422092000004.jpg]
」
d 4頁左上欄1行~同頁右上欄7行、第2図、第7図
「第2図は各固定電極2,3のダイヤフラム1に対向する側の共通な正面図である。第1図における各固定電極2,3の凹部の底面(発明における受面に相当する)に、それぞれ溝各2A,3Aが、第2図に示されるように、各導圧孔8,9と一文字に交差する形で設けられる。
この実施例の作用は次のとおりである。ダイヤフラム1の一方の表面の中心部が、過大な差圧によって対向する各固定電極2,3の受面のいずれかに強く押圧されても、同時にこの受面側の導入圧が、各導圧孔8,9とそれぞれ交差して設けられた各溝2A,3Aを通して対向するダイヤフラム1表面の一部に常に作用している。
このダイヤフラム1表面の一部に常に作用している導入圧が、過大差圧が急速に除去されたときのダイヤフラム変位の復帰追従性、つまり応答性を良くするために機能する。この第1実施例のダイヤフラム変位の応答性は、前記の第7図において実線表示されるように、破線表示の一従来例に比べて著しく良くなる。
ところで、ダイヤフラム変位の応答性を良くするには、各溝2A,3Aの幅はなるべく広い方が有利である。しかし、他方では幅が広いと各固定電極2,3の表面積をその分だけ減少させ、ダイヤフラム1との間の静電容量を減少させるため、ダイヤフラム変位の応答性と静電容量との折衷が設計上で図られることになる。」
「第2図
[図:0001422092000005.jpg]
」
「第7図
[図:0001422092000006.jpg]
」
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「差圧に応じて変位するダイヤフラムとその各側に近接対向して設けられる受面とを備え、ダイヤフラムの変位に関連して生じる、ダイヤフラムとその各側の固定電極との間の静電容量変化に基づいて差圧が求められる検出器であって、
この差圧検出器は、導入圧力の一方が大気圧または真空であることによって、ゲージ圧用または絶対圧用検出器になるものであり、(摘記事項a)
可動電極としてのダイヤフラム1の各側に各固定電極2,3が各円環状接合部4,5によって固着され、
各固定電極2,3には、ダイヤフラム1に対向する側に浅い凹部が設けられるとともに、その中心部を貫通して各導圧孔8,9が設けられており、
前記の各凹部は、ダイヤフラム1と各固定電極2,3との間の各空隙6,7を構成し、(摘記事項c)
各固定電極2,3の凹部の底面に、それぞれ溝各2A,3Aが、各導圧孔8,9と一文字に交差する形で設けられており、
ダイヤフラム1の一方の表面の中心部が、過大な差圧によって対向する各固定電極2,3の受面のいずれかに強く押圧されても、同時にこの受面側の導入圧が、各導圧孔8,9とそれぞれ交差して設けられた各溝2A,3Aを通して対向するダイヤフラム1表面の一部に常に作用しており、
このダイヤプラム1表面の一部に常に作用している導入圧が、過大差圧が急速に除去されたときのダイヤフラム変位の復帰追従性、つまり応答性を良くするために機能する、(摘記事項d)
検出器。」
イ 特許文献1に記載された事項と周知技術の認定
(ア) 特許文献1に記載された事項
請求人が本願の明細書の発明の詳細な説明において特許文献1として引用する本願の出願前に発行された文献であって当審において新たに引用する特開2000-356563号公報(以下「特許文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
a 段落【0004】~【0005】、【図5】
「【0004】流路に置かれた渦発生体の近傍に発生する交番差圧を検出する具体的な差圧検出素子としては、従来からある静電容量型圧力検出素子が知られている。これは、図5に示すように、シリコン製のダイアフラム1と、このダイアフラム1を挟んで接合されかつダイアフラム1との間に空隙2,3を有するガラス製の2枚の絶縁部材4,5とを備える。各絶縁部材4,5には、前記ダイアフラム1と対向する面に電極6,7がそれぞれ形成されているとともに、ダイアフラム1の中央部分と対向する位置に前記空隙2,3に連通する圧力導入口8,9が貫通形成されている。
【0005】差圧検出素子の両面に差圧が生じると、圧力は圧力導入口8,9を経てダイアフラム1と絶縁部材4,5とで形成される空隙2,3に伝播していき、ダイアフラム両面の差圧とダイアフラム剛性がつり合う位置にダイアフラム1が変位される。このとき、ダイアフラム1とその両側の電極6,7との間の静電容量が変化する。この静電容量変化が、差圧検出素子とは別に設けられた電気回路によって電気信号に変換され、交番差圧として検出される。」
「【図5】
[図:0001422092000007.jpg]
[図:0001422092000008.jpg]
」
b 段落【0013】
「【0013】ここで、ダイアフラムにおいて、感応部に電極部を有するとは、ダイアフラムが絶縁体で構成される場合には、たとえば、半導体プロセスなどの技術により電極部を形成すればよく、また、ダイアフラム自体が半導体または導体で構成される場合には、このダイアフラム自体が電極部を構成する。また、複数の圧力導入口の配置については、ダイアフラムの感応部に対して偏って配置するよりは、均等に分散して配置されているのが好ましい。」
(イ) 周知技術の認定
前記(ア)に摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であると認められる(以下「周知技術A」という)。
<周知技術A>
「上面及び下面に電極部を形成したダイアフラムと、
前記ダイアフラムと対向する面に電極をそれぞれ形成した上下二枚の平板状の絶縁基板と、からなる
静電容量型圧力検出素子」
(3) 対比・判断
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点
引用発明の「ダイヤフラムとその各側の固定電極との間の静電容量変化に基づいて差圧が求められる検出器」は、本件補正発明の「圧力検出素子」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「圧力検出素子」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aの観点
a 構成Aは、「板状に形成されたダイアフラム部と、前記ダイアフラム部の一方の面に配置される第1ダイアフラム電極部と、前記ダイアフラム部の他方の面に配置される第2ダイアフラム電極部と、前記ダイアフラム部の周縁部に設けられる接合部と、を有する感応部と」を備えることである。
b(a) 引用発明においては、「ダイヤフラムとその各側の固定電極との間の静電容量変化に基づいて差圧が求められる」ことを踏まえると、「可動電極としてのダイヤフラム」と「固定電極」は、いわゆる平行平板コンデンサーの電極として機能しているといえるから、引用発明の「ダイヤフラム」のうち、少なくとも「固定電極」とコンデンサーを形成する部分は、板状に形成されたものであるといえる。
そうすると、引用発明の「ダイヤフラム」は、本件補正発明の「板状に形成されたダイアフラム部」に相当する。
(b) 引用発明の「ダイヤフラム1」において、「可動電極としてのダイヤフラム1の各側に各固定電極2,3」を「固着」する「各円環状接合部4,5」が設けられる部分は、本件補正発明の「前記ダイアフラム部の周縁部に設けられる接合部」に相当する。
(c) 引用発明においては、「ダイヤフラム」が「差圧に応じて変位」し、「各円環状接合部4,5」により「固着」された「各固定電極2,3」との間の「静電容量変化に基づいて差圧が求められる」から、「可動電極としてのダイヤフラム1」は、本件補正発明にいうところの「感応部」を構成しているといえる。
c 前記bを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、構成Aの観点について、次の(a)に示す点において一致し、(b)に示す点において相違する。
(a) 構成Aの観点における一致点
「板状に形成されたダイアフラム部と、前記ダイアフラム部の周縁部に設けられる接合部と、を有する感応部」を備える点。
(b) 構成Aの観点における相違点
感応部における電極として作用する部分が、
本件補正発明においては、「前記ダイアフラム部の一方の面に配置される第1ダイアフラム電極部と、前記ダイアフラム部の他方の面に配置される第2ダイアフラム電極部」であるのに対して、
引用発明においては、「可動電極としてのダイヤフラム1」(すなわち、本件補正発明における「ダイアフラム部」自体)である点。
(ウ) 構成B1及びB2の観点
a 構成B1及び構成B2は、それぞれ、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) (構成B1) 「板状に形成され前記感応部の前記接合部の一方の面に接合される第1基板本体部と、前記第1基板本体部の前記第1ダイアフラム電極部と対向する面に配置される第1基板電極と、を有する第1基板と」を備えること。
(b) (構成B2) 「板状に形成され前記感応部の前記接合部の他方の面に接合される第2基板本体部と、前記第2基板本体部の前記第2ダイアフラム電極部と対向する面に配置される第2基板電極と、を有する第2基板と」を備えること。
b 構成B1について
(a) 前記(イ)b(a)の検討を踏まえると、平行平板コンデンサーの電極として機能している、引用発明の「固定電極2」は、本件補正発明における「前記第1基板本体部の前記第1ダイアフラム電極部と対向する面に配置される第1基板電極」と、ダイヤフラム部に対向する固定電極として機能する部分である点において共通する。
(b) 前記(イ)b(b)、(c)の検討を踏まえると、引用発明の「固定電極2」のうち、「固定電極2」は、本件補正発明における「板状に形成され前記感応部の前記接合部の一方の面に接合される第1基板本体部」を有する「第1基板」と、感応部の接合部の一方の面に接合される第1部材である点において共通する。
(c) 前記(a)及び(b)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、構成B1の観点について、次のiに示す点において一致し、iiに示す点において相違する。
i 構成B1の観点における一致点
「ダイヤフラム部に対向する固定電極として機能する部分を備え、前記感応部の前記接合部の一方の面に接合される第1部材」を備える点。
ii 構成B1の観点における相違点
「ダイヤフラム部に対向する固定電極として機能する部分を備え、前記感応部の前記接合部の一方の面に接合される第1部材」が、
本件補正発明においては、「板状に形成された第1基板本体部」と、「前記第1基板本体部」の前記ダイアフラム部と対向する面に配置される「第1基板電極」と、を有する「第1基板」であるのに対して、
引用発明においては、ダイヤフラム1に対向する側に浅い凹部が設けられた固定電極2である点。
c 前記bの構成B1についての検討と同様にして、本件補正発明と引用発明は、構成B2の観点について、次のiに示す点において一致し、iiに示す点において相違する。
i 構成B2の観点における一致点
「ダイヤフラム部に対向する固定電極として機能する部分を備え、前記感応部の前記接合部の他方の面に接合される第2部材」を備える点。
ii 構成B2の観点における相違点
「ダイヤフラム部に対向する固定電極として機能する部分を備え、前記感応部の前記接合部の他方の面に接合される第2部材」が、
本件補正発明においては、「板状に形成された第2基板本体部」と、「前記第2基板本体部」の前記ダイアフラム部と対向する面に配置される「第2基板電極」と、を有する「第2基板」であるのに対して、
引用発明においては、ダイヤフラム1に対向する側に浅い凹部が設けられた固定電極3である点。
(エ) 構成C1及びC2の観点
a 構成C1及び構成C2は、それぞれ、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) (構成C1) 「前記第1基板本体部には、前記第1基板本体部を貫通する第1圧力導入孔と、前記第1ダイアフラム電極部と対向する面に設けられ前記第1圧力導入孔と連通する第1溝部と、が形成され[ている]」こと。
(b) (構成C2) 「前記第2基板本体部には、前記第2基板本体部を貫通する第2圧力導入孔と、前記第2ダイアフラム電極部と対向する面に設けられ前記第2圧力導入孔と連通する第2溝部と、が形成され[ている]」こと。
b(a) 引用発明において、「各固定電極2,3には、ダイヤフラム1に対向する側に浅い凹部が設けられるとともに、その中心部を貫通して各導圧孔8,9が設けられて」いるところ、前記(ウ)の検討を踏まえると、引用発明の「導圧孔8,9」のうち、「導圧孔8」は第1部材を貫通する第1圧力導入孔であり、「導圧孔9」は第2部材を貫通する第2圧力導入孔であるといえる。
(b) 引用発明においては、「各固定電極2,3の凹部の底面に、それぞれ溝各2A,3Aが、各導圧孔8,9と一文字に交差する形で設けられており」、「受面側の導入圧が、各導圧孔8,9とそれぞれ交差して設けられた各溝2A,3Aを通して対向するダイヤフラム1表面の一部に常に作用して」いるから、引用発明の「溝2A」は「導圧孔8」と連通しており、「溝3A」は「導圧孔9」と連通しているといえる。
(c) そうすると、引用発明の「導圧孔8」と連通する「溝2A」は、前記(ウ)の検討を踏まえると、ダイアフラム部の一方の面と対向する面に設けられ第1圧力導入孔と連通する第1溝部であり、引用発明の「導圧孔9」と連通する「溝3A」は、同様に、ダイアフラム部の他方の面と対向する面に設けられ第2圧力導入孔と連通する第2溝部であるといえる。
c 前記bの検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、構成C1及びC2の観点について、次の点において共通する。なお、構成C1及びC2の観点についての相違点は、構成B1及び構成B2の観点についての相違点に含まれるので記載を省略する。
<構成C1及びC2の観点についての共通点>
「前記第1部材には、前記第1部材を貫通する第1圧力導入孔と、前記ダイアフラム部の一方の面と対向する面に設けられ前記第1圧力導入孔と連通する第1溝部と、が形成され」、
「前記第2部材には、前記第2部材を貫通する第2圧力導入孔と、前記ダイアフラム部の他方の面と対向する面に設けられ前記第2圧力導入孔と連通する第2溝部と、が形成される」点。
(オ) 構成D1及びD2の観点
a 構成D1及び構成D2は、それぞれ、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) (構成D1) 「前記第1溝部は、前記第1基板電極に覆われ[ている]」こと。
(b) (構成D2) 「前記第2溝部は、前記第2基板電極に覆われ[ている]」こと。
b(a) 引用発明においては、「各固定電極2,3の凹部の底面に、それぞれ溝各2A,3Aが、各導圧孔8,9と一文字に交差する形で設けられて[いる]」のであるから、各溝の表面は、固定電極2,3となる。
(b) そうすると、構成D1及びD2の観点について、本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。なお、構成D1及び構成D2の観点における相違点は、構成B1及び構成B2の観点についての相違点に含まれるので記載を省略する。
<構成D1及びD2の観点についての共通点>
「第1部材及び第2部材のダイヤフラム部に対向する部分のうち、第1溝部及び第2溝部の箇所は、電極の機能を有している」点。
(カ) 構成E1及びE2の観点
a 構成E1及び構成E2は、それぞれ、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) (構成E1) 「前記第1基板電極における前記第1溝部を覆う箇所は、有効な電極面積として機能[する]」こと。
(b) (構成E2) 「前記第2基板電極における前記第2溝部を覆う箇所は、有効な電極面積として機能する」こと。
b(a) 「有効な電極面積として機能すること」の意味について検討する。
(b) 当該文言は、本件補正により加えられたものであるところ、請求人は、審判請求書において、その根拠を明細書の段落【0028】の次の記載にある旨説明している。
「【0028】
(2)本実施形態では、第1基板2および第2基板3において、第1溝部24および第2溝部34も電極に覆われているので、第1溝部24および第2溝部34に相当する箇所も有効に活用することができる。そのため、第1溝部24および第2溝部34によって有効な電極面積が減少してしまうことを抑制できる。」
(c) 前記(b)に摘記した発明の詳細な説明の記載も参酌しつつ、i)溝部の面積は溝が形成されていない部分に対して桁違いに非常に小さいと考えるのが常識的であること、ii)溝部が電極に覆われていても静電容量が減少してしまうことは自明であることを併せ考慮すると、「有効な電極面積として機能すること」とは、「単位面積当たりの静電容量に有意な効果を奏するものとして機能する」と解釈するのが相当である。
(d) ここで、引用発明について検討すると、浅い凹部の深さに比較して、溝部の深さが桁違いに大きいことは常識的には考えにくく、静電容量は電極間の距離に反比例することを考慮すると、引用発明においても、溝部は、「単位面積当たりの静電容量に有意な効果を奏するものとして機能する」と考えるのが常識的である。
(e) そうすると、前記(ウ)の検討結果も踏まえると、構成E1及びE2の観点について、本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。なお、構成E1及び構成E2の観点における相違点は、構成B1及び構成B2の観点についての相違点に含まれるので記載を省略する。
<構成E1及びE2の観点についての共通点>
「第1部材及び第2部材のダイヤフラム部に対向する固定電極として機能する部分のうち、第1溝部及び第2溝部の箇所は、有効な電極面積として機能する」点。
イ 一致点及び相違点の認定
前記アの対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、後記の相違点において相違する。
(ア) 一致点
「板状に形成されたダイアフラム部と、前記ダイアフラム部の周縁部に設けられる接合部と、を有する感応部と、
ダイヤフラム部に対向する固定電極として機能する部分を備え、前記感応部の前記接合部の一方の面に接合される第1部材と、
ダイヤフラム部に対向する固定電極として機能する部分を備え、前記感応部の前記接合部の他方の面に接合される第2部材と、を備え、
前記第1部材には、前記第1部材を貫通する第1圧力導入孔と、前記ダイアフラム部の一方の面と対向する面に設けられ前記第1圧力導入孔と連通する第1溝部と、が形成され、
前記第2部材には、前記第2部材を貫通する第2圧力導入孔と、前記ダイアフラム部の他方の面と対向する面に設けられ前記第2圧力導入孔と連通する第2溝部と、が形成され、
第1部材及び第2部材のダイヤフラム部に対向する部分のうち、第1溝部及び第2溝部の箇所は、電極の機能を有しており、
第1部材及び第2部材のダイヤフラム部に対向する固定電極として機能する部分のうち、第1溝部及び第2溝部の箇所は、有効な電極面積として機能する
圧力検出素子」である点。
(イ) 相違点
本件補正発明においては、
A 感応部における電極として作用する部分が、
「前記ダイアフラム部の一方の面に配置される第1ダイアフラム電極部と、前記ダイアフラム部の他方の面に配置される第2ダイアフラム電極部」であり、
B1 「ダイヤフラム部に対向する固定電極として機能する部分を備え、前記感応部の前記接合部の一方の面に接合される第1部材」が、
「板状に形成された第1基板本体部」と、「前記第1基板本体部」の前記ダイアフラム部と対向する面に配置される「第1基板電極」と、を有する「第1基板」であり、
B2 「ダイヤフラム部に対向する固定電極として機能する部分を備え、前記感応部の前記接合部の他方の面に接合される第2部材」が、
「板状に形成された第2基板本体部」と、「前記第2基板本体部」の前記ダイアフラム部と対向する面に配置される「第2基板電極」と、を有する「第2基板」であるのに対して、
引用発明においては、
a 感応部における電極として作用する部分が、
「可動電極としてのダイヤフラム1」(すなわち、本件補正発明における「ダイアフラム部」自体)であり、
b1 「ダイヤフラム部に対向する固定電極として機能する部分を備え、前記感応部の前記接合部の一方の面に接合される第1部材」が、
ダイヤフラム1に対向する側に浅い凹部が設けられた固定電極2であり、
b2 「ダイヤフラム部に対向する固定電極として機能する部分を備え、前記感応部の前記接合部の他方の面に接合される第2部材」が、
ダイヤフラム1に対向する側に浅い凹部が設けられた固定電極3である点。
ウ 判断
「上面及び下面に電極部を形成したダイアフラムと、前記ダイアフラムと対向する面に電極をそれぞれ形成した上下二枚の平板状の絶縁基板と、からなる静電容量型圧力検出素子」は、当業者にとって周知のものである(前記周知技術Aを参照)。
そうすると、「ダイヤフラムの変位に関連して生じる、ダイヤフラムとその各側の固定電極との間の静電容量変化に基づいて差圧が求められる検出器」において、「静電容量型圧力検出素子」として当業者に周知の構造である周知技術Aを選択して、本件補正発明の前記相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者にとっては、設計変更にすぎず、容易に想到し得たことである。
(4) 請求人の主張について
ア 審判請求書の主張の概要
引用文献1には、「ところで、ダイヤフラム変位の応答性を良くするには、各溝2A,3Aの幅はなるべく広い方が有利である。しかし、他方では幅が広いと各固定電極2,3の表面積をその分だけ減少させ、ダイヤフラム1との間の静電容量を減少させるため、ダイヤフラム変位の応答性と静電容量との折衷が設計上で図られることになる。」と記載されており(4頁右上欄参照)、仮に溝2A,3Aの内面が導電性材料で構成されていたとしても、各溝2A,3Aの箇所は電極2,3の表面積をその分だけ減少させるため、有効な電極面積として機能していないのは明らかであるから、本件補正発明は、引用文献1の構成とは異なる。
引用文献1では、各溝2A,3Aの箇所に応じて固定電極2,3の表面積が減少することから、ダイヤフラム1との間の静電容量が減少してしまうのに対し、本件補正発明では、第1溝部が第1基板電極に覆われており、第2溝部が第2基板電極に覆われており、第1基板電極における第1溝部を覆う箇所は、有効な電極面積として機能し、第2基板電極における第2溝部を覆う箇所は、有効な電極面積として機能するので、静電容量が減少してしまうことを抑制することができ、引用文献1の記載からは得られない優れた効果があり、引用文献1に記載の発明に対する格別な差異を有するため、本件補正発明は、引用文献1に基づいて容易に想到できたとはいえない。
イ 審判請求書の主張に対する当審の判断
(ア) 請求人の主張は、要するに、本件補正発明は構成E1及び構成E2の点において引用発明と相違するとの主張であるが、前記(3)ア(オ)において検討したとおり、引用発明においては、「各固定電極2,3の凹部の底面に、それぞれ溝各2A,3Aが、各導圧孔8,9と一文字に交差する形で設けられて[いる]」のであるから、各溝の表面は、固定電極2,3となり、前記(3)ア(カ)において説示したとおり、本件補正発明と引用発明は、「第1部材及び第2部材のダイヤフラム部に対向する固定電極として機能する部分のうち、第1溝部及び第2溝部の箇所は、有効な電極面積として機能する点」において共通するのであるから、請求人の主張は採用できない。
なお、前記周知技術Aの採用に当たって、基板に電極を形成してから溝部を形成すると、電極に対するエッチングと基板に対するエッチングが必要となるのに対して、電極を形成する前に基板をエッチングするとエッチングが1回になるから、電極を形成する前に基板に溝を形成し、その後電極を形成することを当業者はまず考え、この場合、溝部に電極が形成されることとなる。
(イ) 引用文献1の「ところで、ダイヤフラム変位の応答性を良くするには、各溝2A,3Aの幅はなるべく広い方が有利である。しかし、他方では幅が広いと各固定電極2,3の表面積をその分だけ減少させ、ダイヤフラム1との間の静電容量を減少させるため、ダイヤフラム変位の応答性と静電容量との折衷が設計上で図られることになる。」との記載における「(各溝2A,3Aの)幅が広いと各固定電極2,3の表面積をその分だけ減少させ、ダイヤフラム1との間の静電容量を減少させる」との記載は、より正確には、「(各溝2A,3Aの)幅が広いと各固定電極2,3の溝が形成されていない部分の表面積をその分だけ減少させ、ダイヤフラム1との間の静電容量を減少させる」と読むべきことは当業者には自明であり、当該記載は、前記(3)ア(カ)において検討した、溝部が「単位面積当たりの静電容量に有意な効果を奏するものとして機能する」ことと矛盾することではない。
引用文献1の前記記載を根拠とする請求人の主張は、引用文献1の記載の意味を正解しない主張であり、採用することはできない。
(5) 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~3に係る発明は、令和5年7月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるとおりである。
2 拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由2の要旨は、次のとおりである。
理由2 (進歩性の欠如)
本願発明は、下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開平3-205527号公報
3 引用文献に記載された事項及び周知技術
前記引用文献1には、前記第2の3(2)ア(イ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
また、前記周知技術Aは、前記第2の3(2)イ(イ)において認定したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「第1基板電極」及び「第2基板電極」について、それぞれ「前記第1基板電極における前記第1溝部を覆う箇所は、有効な電極面積として機能」すること、及び、「前記第2基板電極における前記第2溝部を覆う箇所は、有効な電極面積として機能する」ことの限定を省いたものである(前記第2の2参照)。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、当該構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3において検討したとおり、引用発明及び周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-000818