2024-002525
とろみ状栄養組成物
- 審判番号
- 2024-002525
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-539932外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年02月14日
- 審決日
- 2024年05月02日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ニュートリー株式会社
- 【請求人代理人】間山 世津子
- 【請求人代理人】野村 健一
- 分類
- P18 .121-Z (A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 22項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
本願は、2023年(令和5年)3月27日(優先権主張 令和4年3月30日)を国際出願日とする出願であって、令和5年8月8日付けで拒絶理由が通知され、同年9月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年同月28日(書面上の提出日は同年同月27日になっている。)に手続補足書が提出され、同年11月17日付けで拒絶査定がされ、令和6年2月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。
第2 令和6年2月14日に提出された手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年2月14日に提出された手続補正書による手続補正を却下する。
[理由]
1 令和6年2月14日に提出された手続補正書による手続補正の内容
令和6年2月14日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正により補正される前の(すなわち、令和5年9月27日に提出された手続補正書により補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の記載とするものである。なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】たんぱく質、脂質、糖質を含む栄養素が配合されたとろみ状栄養組成物であって、前記とろみ状栄養組成物の濃度が0.9~1.1kcal/gであり、1本当たりの熱量が450~550kcal/本であって、一人1日あたり2~3本使用されるとろみ状栄養組成物。【請求項2】pHが3.0~4.5である請求項1に記載のとろみ状栄養組成物。続きを表示(全12行)【請求項3】遅消化性デキストリンを含み、その配合量が10.0~17.2g/100kcalである請求項1または2に記載のとろみ状栄養組成物。【請求項4】25℃での粘度が1,000~4,000mPa・sである請求項1から3のいずれかに記載のとろみ状栄養組成物。【請求項5】たんぱく質の配合量が2.7~5.5g/100kcalである請求項1から4のいずれかに記載のとろみ状栄養組成物。【請求項6】たんぱく質、脂質、糖質を含む栄養素が配合され、一人1日あたり2~3本使用される栄養組成物であって、少なくとも1本の前記栄養組成物の濃度が0.9~1.1kcal/gであり、1本当たりの熱量が450~550kcal/本であるとろみ状栄養組成物である栄養組成物。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】たんぱく質、脂質、糖質を含む栄養素が配合されたとろみ状栄養組成物であって、前記とろみ状栄養組成物の濃度が0.9~1.1kcal/gであり、1本当たりの熱量が450~550kcal/本であって、一人1日あたり2~3本使用されるとろみ状栄養組成物。【請求項2】pHが3.0~4.5である請求項1に記載のとろみ状栄養組成物。続きを表示(全14行)【請求項3】遅消化性デキストリンを含み、その配合量が10.0~17.2g/100kcalである請求項1または2に記載のとろみ状栄養組成物。【請求項4】25℃での粘度が1,000~4,000mPa・sである請求項1から3のいずれかに記載のとろみ状栄養組成物。【請求項5】たんぱく質の配合量が2.7~5.5g/100kcalである請求項1から4のいずれかに記載のとろみ状栄養組成物。【請求項6】たんぱく質、脂質、糖質を含む栄養素が配合され、一人1日あたり2~3本使用される栄養組成物であって、少なくとも1本の前記栄養組成物の濃度が0.9~1.1kcal/gであり、1本当たりの熱量が450~550kcal/本であるとろみ状栄養組成物である栄養組成物。【請求項7】1本当たりの容量及び/又は熱量が異なる他のとろみ状栄養組成物と組み合わせて使用することを特徴とする、請求項1記載のとろみ状栄養組成物の使用。」
2 本件補正の適否
上記1のとおり、本件補正は、特許請求の範囲について、単に請求項7を追加することによって請求項を増やすものであり、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正及び明りようでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。
なお、請求人は、審判請求書において、本件補正について、「本審判請求書と同時に提出した手続補正書における請求項7の下線部「1本当たりの容量及び/又は熱量が異なる他のとろみ状栄養組成物と組み合わせて使用することを特徴とする、請求項1記載のとろみ状栄養組成物の使用。」の補正事項は、本願の出願当初の明細書の段落[0057]~[0060](比較例1~3)等に記載された事項に基づくものである。」(第5ページ)旨主張するものの、本件補正が特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものであるかは明らかにしていない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明は、令和5年9月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)の【請求項1】に記載のとおりのものである。
第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基づいてその優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2015/146461号
2.特開2011-4702号公報
3.特表2005-534667号公報
4.特表2016-520050号公報
(以下、順に「引用文献1」のようにいう。また、主引用文献は引用文献1及び2それぞれである。)
第5 引用文献に記載された事項等
1 引用文献1に記載された事項等
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、「大豆たんぱく質含有とろみ状栄養組成物」に関して、おおむね次の記載がある。下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。
・「[0002] 経腸栄養法は、消化管を経由する生理的な栄養投与経路であり、高カロリー輸液法の問題点を解決できるため、咀嚼・嚥下機能の著しい低下や意識障害などによって、食物の経口摂取が困難な患者向けの重要な栄養投与法である。
[0003] 経管栄養法には、経鼻経管栄養法や胃瘻経管栄養投与法などがある。経鼻経管栄養法は鼻腔を経由して胃内に挿入した細くかつ長いチューブを介して経腸栄養組成物を投与するため、液状の経腸栄養組成物を用いる必要がある。そのため、結果として投与に数時間程度の長時間を要し、患者やその介護者への負担が大きい。経鼻経管栄養法により長期で経腸栄養を施行した場合では、液状栄養組成物の胃食道逆流に起因する誤嚥性肺炎などの合併症に悩まされる症例も少なくない。
[0004] 胃瘻経管栄養投与法とは、経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy、PEG)を施行して胃に接続したPEGカテーテルにより体外から直接、胃内部へ栄養を投与する栄養管理法である。従来行われてきた経鼻経管栄養法と比較し、管理が容易であること、患者の苦痛が少ないこと、摂食・嚥下リハビリテーションが容易であることから最近では有用な経管栄養法の一つとして注目されている。近年、とろみ状栄養組成物の入った容器を直接PEGカテーテルに接続して容器を吊り下げ、とろみ状栄養組成物の粘度と落差によって速度調製する投与方法が普及し始め、医療従事者や介護者の負担が低減されている。さらに、とろみ状栄養組成物を加圧バッグの圧力で経鼻胃管へ注入する方法も考案され、臨床的に実用的な時間内での注入が試みられている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
[0005] PEGにおいては、下記(1)~(3)の点から経腸栄養組成物に粘度や保形性を付与する手法が検討されている。(1)液体の経腸栄養組成物を胃に急速に投与することにより胃食道逆流が生じ、誤嚥性肺炎が発症することを防ぐ。(2)液体の経腸栄養組成物を胃に急速に投与することにより胃から腸に一気に経腸栄養組成物が落下し(ダンピング)、糖質が急速に吸収されて高血糖となったり、下痢の症状を引き起こしたりすることを防止する。(3)液状の経腸栄養組成物は(2)に記載の症状を防止するために、患者に同一体位で長時間投与する必要があったが、経腸栄養組成物に粘度や保形性を付与した場合、短時間で投与が可能になる。結果として、褥瘡を防止したりして、患者の負担を軽減し、患者のQOLの向上に貢献できる。
[0006] 栄養学的に、近年、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質をバランス良く摂取するという、健康を意識する消費者志向の増加により、大豆たんぱく質を含有する食品が増えてきている。
・・・(略)・・・
[0008] しかし、大豆たんぱく質を含め植物性たんぱく質は、乳由来のたんぱく質と比較して、栄養剤に多量に含まれるミネラル等の影響を受けやすく、長期保存下では凝集を生じることが懸念される。特に、とろみ剤を用いた自然落下法を施行した場合、大豆たんぱく質の凝集があると、PEGカテーテルの閉塞が起こり、確実な栄養補給がなされないばかりでなく、閉塞の除去に長い時間を要し、介護者等の作業効率性が低下するという問題点がある。
[0009] したがって、大豆たんぱく質を含め植物性たんぱく質の凝集を生じることなく、PEGカテーテルで自然落下法を施行した場合、確実な栄養補給が行なわれてPEGカテーテルの閉塞がなく、また、医療従事者や介護者等が栄養組成物を投与する際に負担の少ない半固形栄養組成物が求められていた。
[0010] 本発明の目的は、大豆たんぱく質を含有しながらも、凝集や粘度上昇などに品質問題がなく、自然落下法にて投与した場合にPEGカテーテルの閉塞が起こらない大豆たんぱく質配合とろみ状栄養組成物を提供することである。」
・「[0011] 本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、たんぱく質が全たんぱく質量に対する大豆たんぱく質の割合と寒天およびペクチンを併用することによって、上記課題を解決できることを見出して本発明を完成するに至った。
[0012] すなわち、本発明は以下の(1)~(3)に示したものである。
[0013] (1)たんぱく質、脂質、および糖質を含む栄養素と、寒天およびペクチンを含むとろみ状栄養組成物であって、たんぱく質が全たんぱく質量に対して大豆たんぱく質を25~65質量%含有するものであり、寒天を0.03~0.3質量%、ペクチンを0.15~0.75質量%を含有し、熱量が0.4~1.2kcal/gである大豆たんぱく質含有とろみ状栄養組成物。」
・「[0019] 本発明の大豆たんぱく質含有とろみ状栄養組成物に使用するたんぱく質は、従来より栄養組成物で利用されてきている公知の各種のもののいずれも使用できる。なお、ここで、たんぱく質とは、たんぱく質のみならず、アミノ酸やペプチドをも含む概念のものである。
・・・(略)・・・
[0023] これらのうち、牛乳(乳清)を原料とするホエイたんぱく質、牛乳に含まれるカゼインたんぱく質を用いることが好ましく、ホエイたんぱく質を用いることがより好ましい。・・・(略)・・・
[0025] 本発明の大豆たんぱく質含有とろみ状栄養組成物に使用する大豆たんぱく質は、従来より栄養組成物で利用されてきている公知の各種のもののいずれも使用できる。大豆由来の材料として、豆乳、濃縮大豆たんぱく、あるいは分離大豆たんぱく、脱脂大豆、大豆ホエーたんぱくなどが利用でき、その中でも分離大豆たんぱくが好ましく利用できる。これらの大豆由来の材料を、従来から食品加工に使用されている酵素処理方法を用いて得られるたんぱく質も使用できる。なお、市販品としては、プロリーナ(登録商標)900(不二製油株式会社)、ニューフジプロ(登録商標)3000(不二製油株式会社)、ニューフジプロ(登録商標)1700(不二製油株式会社)などがある。」
・「[0029] 本発明の大豆たんぱく質含有とろみ状栄養組成物に配合する脂質は、従来より栄養組成物で利用されてきている公知の各種のもののいずれも使用できる。アマニ油、エゴマ油、オリーブ油、ごま油、米ぬか油、サフラワー油、シソ油、大豆油、とうもろこし油、ナタネ油、胚芽油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、綿実油、やし油、落花生油等の植物性油脂、魚油、乳脂等の動物性油脂、中鎖脂肪酸、高度不飽和脂肪酸などが挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。また、その他にDHA、EPA、ジアシルグリセロールなどの加工製剤も添加することができる。」
・「[0031] 本発明の大豆たんぱく質含有とろみ状栄養組成物に使用する糖質は、従来より栄養組成物で利用されてきている公知の各種のもののいずれも使用できる。例えば、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトース等の単糖類、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)、イソマルトース、トレハロース等の二糖類、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、デキストリン等の多糖類や水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖など)、粉飴、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトールなど)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)などが挙げられる。その他、通常のマルトデキストリンと比較して摂取後の血糖値の上昇が低いデキストリンである遅消化性デキストリンなどを使用しても良い。具体的には、α-1,6結合からなる分岐構造の多い高分岐デキストリンが好ましい。市販品としては、HBD-20(松谷化学工業株式会社)などがある。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。」
・「[0079] 大豆たんぱく質含有とろみ状栄養組成物を充填する容器としては、特に限定されず、公知の容器が用いられうる。当該容器としては、テトラパック、カート缶、ガラス容器、金属缶、アルミパウチ、プラスチック容器等が挙げられる。これらのうち、プラスチック容器を用いることが好ましい。」
・「[0085] (実施例1)
以下に2,500g仕込み時の調合方法を記す。各原料の配合量は、表1に示す通りである。5Lのステンレスビーカーに調合水700gを計量し、湯浴にて80℃以上に加温した。次いで、寒天(ウルトラ寒天UX-30、伊那食品工業株式会社)、ペクチン(GENUペクチンJM-150-J、太陽化学株式会社)を加え、十分に溶解させた後に65℃まで冷却し、乳清たんぱく(アラセン392、Fonterra社)、大豆たんぱく(プロリーナ(登録商標)900、不二製油株式会社)、デキストリン(TK-16、松谷化学工業株式会社)を添加した。当該溶液に植物混合油、グリセリン脂肪酸エステルを70℃で混合した分散液を混合した。さらに、脂溶性ビタミンミックス(表2に示す。)、水溶性ビタミンミックス(表3に示す。)、ビタミンC、精製塩、リン酸二水素ナトリウム、グルコン酸カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸三カリウム、塩化カリウム、クエン酸鉄、グルコン酸亜鉛、グルコン酸銅、セレン酵母、モリブデン酵母、クロム酵母、マンガン酵母昆布抽出物、大豆食物繊維、乳酸ナトリウム、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、香料、甘味料を適宜添加して攪拌した。全量が2500gとなるまで水を添加し、均一な状態となるまで溶解分散させた。得られた溶液は、均質化し、1個当たり200gとなるように口栓付きのアルミパウチに充填後、90℃、10分間の殺菌処理を行った。前記殺菌処理の後、冷却することで、大豆たんぱく質含有とろみ状栄養組成物を製造した。
[0086]
[表1]
[図:0001412245000001.jpg]
・・・(略)・・・
[0089] 得られた大豆たんぱく質含有とろみ状栄養組成物について性状を観察し、各種物性を評価した。評価方法は以下の通りである。
・・・(略)・・・
[0094] 得られたとろみ状栄養組成物の熱量は1.0kcal/g、pHは3.81、粘度は2,100mPa・sであり、凝集物は見られなかった。」
(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。
<引用発明1>
「5Lのステンレスビーカーに調合水700gを計量し、湯浴にて80℃以上に加温し、次いで、寒天(ウルトラ寒天UX-30、伊那食品工業株式会社)、ペクチン(GENUペクチンJM-150-J、太陽化学株式会社)を加え(配合量は表1に示すとおりである。他の原料についても同様。)、十分に溶解させた後に65℃まで冷却し、乳清たんぱく(アラセン392、Fonterra社)、大豆たんぱく(プロリーナ(登録商標)900、不二製油株式会社)、デキストリン(TK-16、松谷化学工業株式会社)を添加し、当該溶液に植物混合油、グリセリン脂肪酸エステルを70℃で混合した分散液を混合し、さらに、脂溶性ビタミンミックス、水溶性ビタミンミックス、ビタミンC、精製塩、リン酸二水素ナトリウム、グルコン酸カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸三カリウム、塩化カリウム、クエン酸鉄、グルコン酸亜鉛、グルコン酸銅、セレン酵母、モリブデン酵母、クロム酵母、マンガン酵母昆布抽出物、大豆食物繊維、乳酸ナトリウム、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、香料、甘味料を適宜添加し攪拌し、全量が2500gとなるまで水を添加し、均一な状態となるまで溶解分散させ、得られた溶液は、均質化し、1個当たり200gとなるように口栓付きのアルミパウチに充填後、90℃、10分間の殺菌処理を行い、前記殺菌処理の後、冷却することで、製造した、熱量が1.0kcal/gである大豆たんぱく質含有とろみ状栄養組成物。」(当審注:「表1」については上記(1)参照。)
2 引用文献2に記載された事項等
(1)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、「食物繊維含有栄養組成物」に関して、おおむね次の記載がある。
・「【0006】
本発明が解決しようとする課題は、不溶性食物繊維が十分に配合され、従来の栄養組成物より高い粘度を持ちながら良好なチューブ流動性が確保され、下痢や便秘の抑制、摂取後の急激な血糖値上昇の抑制に対して有効な栄養組成物を提供することにある。」
・「【0019】
栄養組成物のエネルギー濃度としては、1mL当たり1~2kcalであることが好ましい。
該エネルギー濃度の栄養組成物とするためには、栄養成分として、タンパク質、脂質、及び炭水化物を含有することが好ましく、ミネラル及びビタミンを栄養成分としてさらに含むことが好ましい。
【0020】
栄養組成物に使用するタンパク質としては、一般に食用として利用されているものを使用することができる。
タンパク質としては、例えば、カゼイン、カゼイネート、乳清タンパク質、乳タンパク濃縮物などの乳タンパク質、畜産タンパク質、水産タンパク質などの動物性タンパク質;大豆タンパク質、小麦タンパク質、えんどうタンパク質、とうもろこしタンパク質などの植物性タンパク質:及びそれらの分解物などが挙げられ、栄養組成物は、上記記載のタンパク質からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。」
・「【0022】
栄養組成物に使用する脂質としては、一般に食用として利用されている脂質を使用することができる。
脂質としては、例えば、オリーブ油、ごま油、米ぬか油、サフラワー油、大豆油、ともろこし油、なたね油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、綿実油、やし油及び落花生油などの植物性油脂;魚油などの動物性油脂;中性脂肪酸、並びに高度不飽和脂肪酸などが挙げられ、栄養組成物は、上記記載の脂質からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。」
・「【0024】
栄養組成物に使用する炭水化物としては、一般に食用として利用されている炭水化物を使用することができる。
炭水化物としては、例えば、澱粉、デキストリン、オリゴ糖などの少糖類、ラクトース・スクロースなどの二糖類、グルコース・フルクトース・マルトースなどの単糖類、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、アルギン酸塩、ペクチン、グアーガム分解物、プルラン、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンド種子ガム、トラガントガム、ジェランガム、ポリデキストロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、難消化性デキストリン、又はグルコマンナン及びカードランなどの水溶性食物繊維などを種皮、アップルファイバー、コーンファイバー、ビートファイバー、大豆ファイバー、小麦ふすま、セルロース、及びヘミセルロースなどの不溶性食物繊維と混合したものが挙げられ、栄養組成物は、上記記載の炭水化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。」
・「【0032】
栄養組成物は、均質化処理した後、スパウト付きパウチ、ソフトバッグ、紙パック、レトルトパウチなどの保存容器に充填することが好ましく、本実施の形態においては、栄養組成物には、保存容器に充填されているものも含まれる。」
・「【0034】
栄養組成物は、経腸栄養組成物であることが好ましく、経管経腸栄養組成物であることが好ましい。
本実施の形態において、「経腸栄養組成物」とは、腸から吸収される栄養組成物であることを意味する。
本実施の形態の栄養組成物は、チューブを介して自然落下できる粘性を持つので、経管経腸栄養組成物として好適に用いることができる。
経管経腸栄養組成物は、食事を取れない患者の胃や腸、首の付け根、又は鼻から管を挿入し、栄養を送り込むために用いられる栄養組成物をいう。
【0035】
栄養組成物の投与方法としては、例えば、チューブの一端を口腔、鼻腔、増設した胃瘻、腸瘻、空腸瘻などより挿入し、先端を胃腸部に保留し、もう一端は栄養組成物を含む包材又は栄養カーテルに接続して、胃腸部に保留した一端よりも高い位置に吊り下げて自然落下させて投与する方法などが挙げられる。また、流動ポンプの使用や素手や治具により押し出して投与することも可能である。」
・「【0040】
〔実施例1〕
カゼインナトリウム275g、カゼインカルシウム300g、デキストリン1450g、オリゴ糖30g、結晶セルロース150g、難消化性デキストリン75g、コーン油200g、中鎖脂肪30g、乳化剤17.5g、クエン酸ナトリウム45g、クエン酸カリウム25g、塩化カリウム10g、リン酸カルシウム10g、塩化マグネシウム25g、クエン酸鉄アンモニウム0.9g、ミネラル酵母2.8g、ビタミンミックス6.4g、フレーバー10gを、加温した水(60℃)4000mLに加え、ホモミキサーで分散した。別容器にて寒天20gを水(80℃)1000mLで溶解した。
両方を混ぜ合わせ水で総量を10000gとした。次にホモミキサーで分散した後、水で総量を10000mLとした。得られた混合液をホモジナイザー50MPaの圧力で均質化し、レトルトパウチに200mL充填した後、レトルト殺菌(121℃、20分)を行い、栄養組成物を得た。
当該栄養組成物は、不溶性食物繊維含量1.5g/100kcal、エネルギー濃度1kcal/mL、タンパク質エネルギー20%、脂質エネルギー23%、炭水化物エネルギー57%、pH6.5、粘度575mPa・sであった。また、栄養組成物100mL当たり、不溶性食物繊維含量1.5g、タンパク質5g、脂質2.6g、炭水化物14.3gであった。
【0041】
〔実施例2〕
寒天を20gから36gに変更した以外は実施例1と同様にして、栄養組成物を得た。
当該栄養組成物は、不溶性食物繊維含量1.5g/100kcal、エネルギー濃度1kcal/mL、タンパク質エネルギー20%、脂質エネルギー23%、炭水化物エネルギー57%、pH6.5、粘度1900mPa・sであった。また、栄養組成物100mL当たり、不溶性食物繊維含量1.5g、タンパク質5g、脂質2.6g、炭水化物14.3gであった。」
・「【0049】
<チューブ試験>
経口用イルリガードルと各径の栄養カテーテルを接続し、経口用イルリガードルの容器下部と栄養カテーテルの末端の落差が100cmになるようにスタンドにセットした。次に室温(20~25度)の栄養組成物400kcal(実施例1、実施例2、比較例1は、400mL、実施例3は234mL)を容器に入れ、クランプを形成せずに自然落下させ全量を通過させた。60分経過後の栄養カテーテルから通過した内容物量をメスシリンダーで測定した。」
(2)引用文献2に記載された発明
引用文献2に記載された事項を、特に実施例2に関して整理すると、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。
<引用発明2>
「カゼインナトリウム275g、カゼインカルシウム300g、デキストリン1450g、オリゴ糖30g、結晶セルロース150g、難消化性デキストリン75g、コーン油200g、中鎖脂肪30g、乳化剤17.5g、クエン酸ナトリウム45g、クエン酸カリウム25g、塩化カリウム10g、リン酸カルシウム10g、塩化マグネシウム25g、クエン酸鉄アンモニウム0.9g、ミネラル酵母2.8g、ビタミンミックス6.4g、フレーバー10gを、加温した水(60℃)4000mLに加え、ホモミキサーで分散し、別容器にて寒天36gを水(80℃)1000mLで溶解し、両方を混ぜ合わせ水で総量を10000gとし、次にホモミキサーで分散した後、水で総量を10000mLとし、得られた混合液をホモジナイザー50MPaの圧力で均質化し、レトルトパウチに200mL充填した後、レトルト殺菌(121℃、20分)を行って得た、エネルギー濃度1kcal/mL、粘度1900mPa・sである栄養組成物。」
3 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、「粘稠性繊維と粘度低下性タンパク質とを含む組成物」に関して、おおむね次の記載がある。
・「【0065】
低カロリー食事代替品または他の栄養製品の形態で可溶性粘稠性繊維を提供することが望ましい場合がある。この場合、食事代替品または他の栄養製品は、好ましくは、低脂肪、すなわち、組成物の全カロリー含有量を基準にして、脂肪の寄与量が約10en%未満、または実質的に無脂肪、すなわち約2.5en%未満、たとえば脂肪約2en%である。好適には、1回分の低カロリー食事代替品が、約1000kcal未満、好ましくは約200kcalから約500kcalの間のカロリー値を有する。好適な低カロリー栄養製品としては、ソフトドリンク、たとえばジュース、スムージー、または大豆系飲料、あるいはあらゆる種類の食品中に分散させたもの、たとえば、棒状乳製品、スープ、朝食用シリアル、ミューズリー、キャンディー、タブ、クッキー、ビスケット、ライスクラッカーなどのクラッカー、ならびにミルクセーキ、ヨーグルト飲料などの乳製品を挙げることができる。」
・「【0070】
本発明の組成物の経腸投与、および好ましくは経口投与は、本発明に含まれる。
【0071】
投与すべき本発明の組成物の量および投与計画は、投与目的、個々の被験者の年齢、性別、および体重、ならびに被験者の症状の重篤度などの種々の関連する要因を考慮して決定される。」
・「【0075】
本発明の組成物は、たとえば、糖尿病または高血中コレステロールレベルに罹患した患者の血糖または血中コレステロールレベルを定期的に制御するために、毎日、週1回、または月1回投与することができるし、あるいは年1回またはさらに長期間間隔をあけて投与することができる。好適な1日の投与計画は、1日に1回または複数回の投与を含むことができる。最適には、本発明の組成物が、規則的に、食事前、すなわち食前、または食後、または食事中に、少なくとも1日1回摂取される。好ましくは、本発明の組成物を食事前に摂取することができる。」
4 引用文献4に記載された事項
引用文献4には、「老化筋肉再生の増強方法」に関して、おおむね次の記載がある。
・「【0064】
ある例示的実施形態では、栄養組成物は栄養液であり得る。栄養液の非限定例としては、軽食及び食事代替物組成物、温かいかまたは冷たい飲料、炭酸または非炭酸飲料、ジュースまたはその他の酸性化飲料、ミルクまたはダイズベースの飲料、シェイク、コーヒー、紅茶、経鼻胃栄養による投与のための組成物等が挙げられる。」
・「【0067】
本明細書中に開示される実施例による栄養組成物は、栄養の単独の、主要なまたは補足的供給源を提供するために有用であり、ならびに本明細書中に記載される利益のうちの1つ以上を提供する。したがって、ある例示的実施形態では、本明細書中に開示される栄養組成物は、1つ以上の主要栄養素を含み得る。例えば、ある実施形態では、栄養組成物は、脂肪の少なくとも1つの供給源、炭水化物の少なくとも1つの供給源、タンパク質の少なくとも1つの供給源またはその組合せを含む。ある他の例示的実施形態では、栄養組成物は、タンパク質の少なくとも1つの供給源、炭水化物の少なくとも1つの供給源を含むが、しかし脂肪の供給源を含まない。ある例示的実施形態では、栄養組成物は、1回分または用量当たり1000kcalまでのエネルギーを提供する。ある他の例示的実施形態では、栄養組成物は、1回分当たり20kcal~900kcalのエネルギーを提供する。ある他の例示的実施形態では、栄養組成物は、1回分当たり25kcal~700kcalのエネルギーを提供する。ある他の例示的実施形態では、栄養組成物は、1回分当たり50kcal~500kcalのエネルギーを提供する。ある他の例示的実施形態では、栄養組成物は、1回分当たり100kcal~450kcalのエネルギーを提供する。ある他の例示的実施形態では、栄養組成物は、1回分当たり150kcal~400kcalのエネルギーを提供する。」
第6 対比・判断
1 引用発明1との対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明1を対比する。
引用発明1における「乳清たんぱく(アラセン392、Fonterra社)、大豆たんぱく(プロリーナ(登録商標)900、不二製油株式会社)」は本願発明における「たんぱく質」に相当する。
引用発明1における「植物混合油」は本願発明における「脂質」に相当する。
引用発明1における「デキストリン(TK-16、松谷化学工業株式会社)」は本願発明における「糖質」に相当する。
引用発明1における「乳清たんぱく(アラセン392、Fonterra社)、大豆たんぱく(プロリーナ(登録商標)900、不二製油株式会社)」、「植物混合油」及び「デキストリン(TK-16、松谷化学工業株式会社)」は本願発明における「栄養素」に相当する。
引用発明1における「熱量」は本願発明における「濃度」に相当する。
引用発明1における「熱量」の「1.0kcal/g」は本願発明における「濃度」の「0.9~1.1kcal/g」に包含される。
引用発明1における「大豆たんぱく質含有とろみ状栄養組成物」は本願発明における「とろみ状栄養組成物」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「たんぱく質、脂質、糖質を含む栄養素が配合されたとろみ状栄養組成物であって、前記とろみ状栄養組成物の濃度が0.9~1.1kcal/gであるとろみ状栄養組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本願発明においては、「1本当たりの熱量が450~550kcal/本であって、一人1日あたり2~3本使用される」と特定されているのに対し、引用発明1においては、そのようには特定されていない点。
(2)判断
そこで、相違点1について、検討する。
引用文献1の「大豆たんぱく質含有とろみ状栄養組成物を充填する容器としては、特に限定されず、公知の容器が用いられうる。」([0079])という記載によると、引用発明1の「大豆たんぱく質含有とろみ状栄養組成物」を充填する「アルミパウチ」は、「200g」の容積の「アルミパウチ」に限定されないし、「200g」より大きい容積の容器とすることができないという事情も特にない。
また、引用文献3及び4に記載されているように、経腸投与又は経鼻胃栄養による投与を、1回当たり500kcal程度の熱量とすることは通常行われていることである。
さらに、引用発明1の「大豆たんぱく質含有とろみ状栄養組成物」は経腸栄養法に用いられるものであるところ、経腸栄養法による栄養投与の回数は、通常、一人1日あたり2~3回である(例えば、引用文献3の【0075】には、1日に複数回投与を行う旨記載されているし、請求人が令和5年9月28日に参考資料1として提出した「静脈経腸栄養組成物Vol.25 No.1 2010,p.489」の右上欄には、「入院1日目 入院時栄養:アイソカル(1200kcal/日)→朝・夕:アイソカル(1200kcal)日中のリハ時間確保目的で、昼:F2ショット(300kcal)(合計1500kcal/日)へ変更。入院10日目 本人より朝・夕もF2ショットの希望あり。」と朝、昼及び夕に投与を行う旨記載されている。)。
そうすると、引用発明1において、「1個当たり200gとなるように口栓付きのアルミパウチに充填」することに代えて、1回当たり500kcal程度の熱量となるような容量(500ml程度)の容器に充填し、一人1日あたり2~3本使用されるようにして、相違点1に係る本願発明の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、引用発明1において、「大豆たんぱく質含有とろみ状栄養組成物」を充填する容器の容量が大きくなれば、必要な熱量を提供するのに必要とされる手間や時間が削減されることは、当業者が予測することができることであるから、本願発明の奏する「栄養組成物の投与の手間や時間を削減することができる」(本願の発明の詳細な説明の[0006])という効果は、引用発明1並びに引用文献3及び4に記載された事項からみて、本願発明の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるとはいえない。
(3)まとめ
したがって、本願発明は引用発明1、すなわち引用文献1に記載された発明並びに引用文献3及び4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 引用発明2との対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明2を対比する。
「カゼインナトリウム」及び「カゼインカルシウム」は「タンパク質」として例示されている「カゼイネート」であるから、引用発明2における「カゼインナトリウム275g、カゼインカルシウム300g」は本願発明における「たんぱく質」に相当する。
引用発明2における「コーン油200g、中鎖脂肪30g」は本願発明における「脂質」に相当する。
引用発明2における「デキストリン1450g、オリゴ糖30g」は本願発明における「糖質」に相当する。
引用発明2における「カゼインナトリウム275g、カゼインカルシウム300g」、「コーン油200g、中鎖脂肪30g」及び「デキストリン1450g、オリゴ糖30g」は本願発明における「栄養素」に相当する。
引用発明2における「エネルギー濃度」は本願発明における「濃度」に相当する。
引用発明2における「エネルギー濃度」の「1kcal/mL 」は本願発明における「濃度」の「0.9~1.1kcal/g」に包含される。
本願の発明の詳細な説明の[0010]の「本発明のとろみ状栄養組成物に示される「とろみ状」とは、1,000~4,000mPa・sの粘度を有することである。」という記載によると、引用発明2における「粘度1900mPa・s」の「栄養組成物」は、本願発明における「とろみ状栄養組成物」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「たんぱく質、脂質、糖質を含む栄養素が配合されたとろみ状栄養組成物であって、前記とろみ状栄養組成物の濃度が0.9~1.1kcal/gであるとろみ状栄養組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2>
本願発明においては、「1本当たりの熱量が450~550kcal/本であって、一人1日あたり2~3本使用される」と特定されているのに対し、引用発明2においては、そのようには特定されていない点。
(2)判断
そこで、相違点2について、検討する。
引用文献2の「栄養組成物は、均質化処理した後、スパウト付きパウチ、ソフトバッグ、紙パック、レトルトパウチなどの保存容器に充填することが好ましく、本実施の形態においては、栄養組成物には、保存容器に充填されているものも含まれる。」(【0032】)という記載によると、引用発明2の「栄養組成物」を充填する「レトルトパウチ」は、「200mL」の容積の「レトルトパウチ」に限定されないし、500ml程度の単位で使用することは格別なことではなく、使用量に応じてパッケージの容量を適宜設定することは、当業者であれば容易になし得たことである。
また、引用文献3及び4に記載されているように、経腸投与又は経鼻胃栄養による投与を、1回当たり500kcal程度の熱量とすることは通常行われていることである。
さらに、引用発明2の「栄養組成物」は栄養カテーテルで投与するものであるところ、これらの投与の回数は、通常、一人1日あたり2~3回である(例えば、引用文献3の【0075】及び上記1(2)で示した「静脈経腸栄養組成物Vol.25 No.1 2010,p.489」の右上欄参照。)。
そうすると、引用発明2において、「レトルトパウチに200mL充填」することに代えて、1回当たり500kcal程度の熱量となるような容量(500ml程度)の容器に充填し、一人1日あたり2~3本使用されるようにして、相違点2に係る本願発明の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、引用発明2において、「栄養組成物」を充填する容器の容量が大きくなれば、必要な熱量を提供するのに必要とされる手間や時間が削減されることは、当業者が予測することができることであるから、本願発明の奏する「栄養組成物の投与の手間や時間を削減することができる」という効果は、引用発明2並びに引用文献3及び4に記載された事項からみて、本願発明の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるとはいえない。
(3)まとめ
したがって、本願発明は引用発明2、すなわち引用文献2に記載された発明並びに引用文献3及び4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 請求人の主張について
(1)請求人の主張の概要
折りたたみ中(クリックで表示)
請求人は、審判請求書第7及び8ページにおいて、おおむね次のとおり主張する。
「上記のとおり、文献1、2には、「1本当たりの熱量が450~550kcal/本」である栄養組成物は記載されていないし、栄養組成物が「一人1日あたり2~3本使用される」ことも記載されていない。また、文献3及び4には、栄養組成物が「一人1日あたり2~3本使用される」ことは記載されていない。本願明細書の「発明が解決しようとする課題」の欄(段落[0004])には、本願発明が解決しようとする課題について、以下のように記載されている。「従来の市販されているとろみ状栄養組成物は、1本当たりの熱量が200~400kcal/本のものが多い(特許文献1)。しかし、リハビリテーションを行っている患者の場合、その状態によっては、必要エネルギー量が通常よりも約1.2~1.5倍必要であるため1300~1700kcal/日となり、従来の市販品だけでは、朝、昼、夕の3本では必要エネルギーを充足することが出来ず、必要に応じて流動食を追加するケースがある。それにより、投与の手間や時間が増えることが課題とされている。また、長期的な治療を受けている患者の場合、通常900~1100kcal/日で栄養管理が行われるケースがある。その場合、近年では、1日朝、昼、夕の3本ではなく、1日朝、夕の2食は経管から栄養摂取し、昼の時間帯の看護師や介護士の時間が確保しやすい時に、経口に移行するための経口摂取訓練等を行うことがある。その際、従来の市販品(約200~400kcal/本)は朝または夕のどちらか1食に2本使用する必要があり、それにより、投与の手間や時間が増えることが課題とされている。」本願の発明者らは、たんぱく質、脂質、糖質を含む栄養素が配合されたとろみ状栄養組成物において、濃度を0.9~1.1kcal/gとし、1本当たりの熱量を450~550kcal/本とすることで、一人1日あたり2~3本の使用によりリハビリテーションや長期的な治療を受けている患者が必要とするエネルギー量を充足でき、その結果として、投与の手間や時間を削減できることを見出し、本願発明を完成させた。一人1日あたり2~3本のとろみ状栄養組成物の使用で患者が必要とするエネルギー量を充足するという課題は従来には無かった新規な課題であり、文献1、2から当業者が容易に思いつくものではなかった。審査官殿は、拒絶査定において、「1本あたりの熱量が高ければ回数を減らすことができるのは当然であり、目的とする1日の熱量と投与回数に応じて、1本あたりの熱量を調節することは、当業者が特段の困難なくなし得たことと認められる。」という見解を述べられているが、いずれの文献にも「一人1日あたり2~3本使用される」ことは記載されておらず、「一人1日あたり2~3本のとろみ状栄養組成物の使用で患者が必要とするエネルギー量を充足する」という本願発明の課題は認識されていないから、その課題を知らない当業者が、栄養組成物の濃度を0.9~1.1kcal/gとし、1本当たりの熱量を450~550kcal/本とすることは考えられない。よって、審査官殿の見解は失当である。また、本願発明は、3.本願発明が特許されるべき理由(a)本願発明の説明の項目に記載したとおりの優れた効果を奏する。」
(2)検討
そこで、請求人の上記主張について検討する。
仮に、引用文献1ないし4のいずれにも、「一人1日あたり2~3本のとろみ状栄養組成物の使用で患者が必要とするエネルギー量を充足するという課題」及び「一人1日あたり2~3本使用される」ことが直接的には記載されていないとしても、上記1(2)及び2(2)に示したとおり、引用文献1に記載された発明の「大豆たんぱく質含有とろみ状栄養組成物」又は引用文献2に記載された発明の「栄養組成物」を投与する回数は、通常、一人1日あたり2~3回であるし、それによって、必要とされる熱量を確保するものであるから、引用文献1又は2に記載された発明において、「1本当たりの熱量を450~550kcal/本」とし、「一人1日あたり2~3本使用される」ようにすることに格別困難性は認められない。
したがって、「当業者が、栄養組成物の濃度を0.9~1.1kcal/gとし、1本当たりの熱量を450~550kcal/本とすることは考えられない」とはいえない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。
4 むすび
したがって、本願発明は、引用文献1又は2に記載された発明並びに引用文献3及び4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
第7 結語
上記第6のとおり、本願発明、すなわち請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2024-002525