特許異議申立
2023-701390
薬液、基板の処理方法
- 審判番号
- 2023-701390
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-541089
- 登録番号
- 7301055
- 請求日
- 2023年12月27日
- 審決日
- 2024年03月27日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】富士フイルム株式会社
- 【権利者代理人】伊東 秀明
- 【権利者代理人】三橋 史生
- 【異議申立人】山▲崎▼ 浩一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 瀧内 健夫
- 審判官 恩田 春香
- 審判官 棚田 一也
- 分類
- P1651.113-Y (H01L) / P1651.121-Y (H01L) / P1651.536-Y (H01L) / P1651.537-Y (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7301055号発明「薬液、基板の処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7301055号の請求項1~21に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7301055号の請求項1~21に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)8月9日(優先権主張 平成30年9月6日、令和1年7月24日)を国際出願日として、出願され、令和5年6月22日にその特許権の設定登録がされ、同年6月30日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年12月27日に特許異議申立人山▲崎▼浩一郎は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7301055号の請求項1~21の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~21に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
基板上のRu含有物を除去するために用いられる薬液であって、
次亜塩素酸及びその塩からなる群から選択される1種以上の次亜塩素酸類と、
ClO3-、及び、Cl-の両者と、を含有し、
ClO3-の含有量、及び、Cl-の含有量が、それぞれ、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb~1質量%である、薬液。
【請求項2】
基板上のRu含有物をエッチングするエッチング液として用いられる薬液であって、
次亜塩素酸及びその塩からなる群から選択される1種以上の次亜塩素酸類と、
ClO3-、及び、Cl-からなる群から選択される1種以上の特定アニオンと、を含有し、
前記薬液が1種の特定アニオンを含有する場合、前記1種の特定アニオンの含有量が、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb~1質量%であり、
前記薬液が2種の特定アニオンを含有する場合、前記2種の特定アニオンの含有量が、それぞれ、前記薬液の全質量に対して、1質量%以下であり、前記2種の特定アニオンのうちの少なくとも1種の含有量が、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb以上である、薬液。
【請求項3】
前記次亜塩素酸類の含有量が、前記薬液の全質量に対して、30質量%以下である、請求項1又は2に記載の薬液。
【請求項4】
前記次亜塩素酸類の含有量が、前記薬液の全質量に対して、0.5~20.0質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項5】
前記次亜塩素酸類の含有量が、前記薬液の全質量に対して5.0質量%以上である、請求項2に記載の薬液。
【請求項6】
前記薬液が、第4級アンモニウムカチオン、及び、第4級ホスホニウムカチオンからなる群から選択される1種以上の特定カチオンを更に含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項7】
前記薬液が、下記式(1)で表される第4級アンモニウムカチオン、及び、下記式(2)で表される第4級ホスホニウムカチオンからなる群から選択される1種以上の特定カチオンを更に含有する、請求項2に記載の薬液。
【化1】
[図:0001409190000001.jpg]
式(1)中、R4A~R4Dは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、又は、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表す。
R1R2R3R4P+ 式(2)
式(2)中、R1、R2、R3、及び、R4は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、又は、フェニル基を表す。
【請求項8】
前記薬液が、ClO3-、及び、Cl-の両者を含有し、
ClO3-の含有量、及び、Cl-の含有量が、それぞれ、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb~1質量%である、請求項2、5及び7のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項9】
前記薬液が1種の特定アニオンを含有する場合、前記1種の特定アニオンの含有量に対する前記次亜塩素酸類の含有量の比が、5×10-1~1×107であり、
前記薬液が2種の特定アニオンを含有する場合、前記2種の特定アニオンの合計含有量に対する前記次亜塩素酸類の含有量の比が、5×10-1~1×107である、請求項2、5及び7のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項10】
前記薬液が1種の特定アニオンを含有する場合、前記1種の特定アニオンの含有量が、前記薬液の全質量に対して、1質量ppm~0.1質量%であり、
前記薬液が2種の特定アニオンを含有する場合、前記2種の特定アニオンの含有量が、それぞれ、前記薬液の全質量に対して、1質量ppm~0.1質量%である、
請求項2、5、7及び9のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項11】
前記次亜塩素酸類が、次亜塩素酸ナトリウムを含有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項12】
pHが10.0以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項13】
pHが7.0超9.0未満である、請求項1~12のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項14】
請求項1、5及び7のいずれか1項に記載の薬液を用いて、基板上のRu含有物を除去する工程Aを含有する、基板の処理方法。
【請求項15】
前記工程Aが、前記薬液を用いて基板上に配置されたRu含有配線をリセスエッチング処理する工程A1、前記薬液を用いてRu含有膜が配置された基板の外縁部の前記Ru含有膜を除去する工程A2、前記薬液を用いてRu含有膜が配置された基板の裏面に付着する、Ru含有物を除去する工程A3、前記薬液を用いてドライエッチング後の基板上の、Ru含有物を除去する工程A4、又は、前記薬液を用いて化学的機械的研磨処理後の基板上の、Ru含有物を除去する工程A5である、請求項14に記載の基板の処理方法。
【請求項16】
前記工程Aが、前記工程A1であり、
前記工程A1の前又は前記工程A1の後に、更に、フッ酸と過酸化水素水との混合液、硫酸と過酸化水素水との混合液、アンモニア水と過酸化水素水との混合液、及び、塩酸と過酸化水素水との混合液からなる群から選択される溶液を用いて、前記工程A1で得られた前記基板を処理する工程Bを含有する、請求項15に記載の基板の処理方法。
【請求項17】
薬液を用いて、基板上に配置されたRu含有配線をリセスエッチング処理する工程A1を含有する、基板の処理方法であって、
前記工程A1の前又は前記工程A1の後に、更に、フッ酸と過酸化水素水との混合液、硫酸と過酸化水素水との混合液、アンモニア水と過酸化水素水との混合液、及び、塩酸と過酸化水素水との混合液からなる群から選択される溶液を用いて、前記工程A1で得られた前記基板を処理する工程Bを含有し、
前記薬液が、次亜塩素酸及びその塩からなる群から選択される1種以上の次亜塩素酸類と、ClO3-、及び、Cl-からなる群から選択される1種以上の特定アニオンと、を含有し、
前記薬液が1種の特定アニオンを含有する場合、前記1種の特定アニオンの含有量が、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb~1質量%であり、
前記薬液が2種の特定アニオンを含有する場合、前記2種の特定アニオンの含有量が、それぞれ、前記薬液の全質量に対して、1質量%以下であり、前記2種の特定アニオンのうちの少なくとも1種の含有量が、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb以上である、基板の処理方法。
【請求項18】
前記工程A1と前記工程Bとを交互に繰り返し行う、請求項16又は17に記載の基板の処理方法。
【請求項19】
前記工程Aの後、更に、リンス液を用いて、前記工程Aで得られた前記基板に対してリンス処理を行う工程Cを含有する、請求項14~16のいずれか1項に記載の基板の処理方法。
【請求項20】
前記リンス液が、フッ酸、塩酸、過酸化水素水、フッ酸と過酸化水素水との混合液、硫酸と過酸化水素水との混合液、アンモニア水と過酸化水素水との混合液、塩酸と過酸化水素水との混合液、二酸化炭素水、オゾン水、水素水、クエン酸水溶液、硫酸、アンモニア水、イソプロピルアルコール、次亜塩素酸水溶液、王水、超純水、硝酸、過塩素酸、シュウ酸水溶液、及び、オルト過ヨウ素酸水溶液からなる群から選択される溶液である、請求項19に記載の基板の処理方法。
【請求項21】
前記薬液の温度が20~75℃である、請求項14~20のいずれか1項に記載の基板の処理方法。」
第3 申立理由の概要
特許異議申立人山▲崎▼浩一郎(以下「申立人」という。)は、以下の甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証を提出し、請求項1~12、及び14、15に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~12、及び14、15に係る特許を取り消すべきものである旨、主たる証拠として以下の甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証、及び、従たる証拠として以下の甲第3号証、甲第5号証~甲第8号証を提出し、請求項1~21に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~21に係る特許を取り消すべきものである旨、並びに、請求項1~21に係る特許は、明細書の発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号、同条第6項1号、及び同条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1~21に係る特許を取り消すべきものである旨を主張する。
<証拠一覧>
1 主たる証拠
(1)国際公開第2014/175397号(以下「甲第1号証」という。)
(2)特開2002-161381号公報(以下「甲第2号証」という。)
(3)国際公開第2011/074601号(以下「甲第4号証」という。)
2 従たる証拠
(1)国際公開第2014/178326号(以下「甲第3号証」という。)、
(2)渕上知弘、宮田雅典、「貯蔵時における次亜塩素酸ナトリウムの品質管理」、水道協会雑誌、第75巻、第9号、平成18年9月、10~24ページ(以下「甲第5号証」という。)
(3)“ニッケイジアソー<R>5水塩 NaClO・5H2O”、[online]、2017年、日本軽金属株式会社、インターネット、<URL:https://www.nikkeikin.co.jp/SHC5/>(以下「甲第6号証」という。合議体注:<R>は○囲みRを示す。)
(4)Google検索結果、検索式、“ニッケイジアソー5水塩+次亜塩素酸ナトリウム5水塩(5水和物)NaOCl+|+日本軽金属株式会社”、[online]、[令和5年12月12日検索]、インターネット(以下「甲第7号証」という。)
(5)特開2006-80559号公報(以下「甲第8号証」という。)
第4 甲号証の記載
1 甲第1号証の記載と甲第1号証に記載された発明
(1)甲第1号証の記載
甲第1号証(以下「甲1」という。また、甲第2号証~甲第8号証をそれぞれ「甲2」~「甲8」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は合議体が付加した。以下同じ。)
「[0001] 本発明は、ルテニウム系金属を研磨するためのCMP用研磨液、及び、これを用いた研磨方法に関する。」
「[0012] 本発明は、従来のCMP用研磨液を用いた場合と比較してルテニウム系金属の研磨速度を向上させることができるCMP用研磨液、及び、これを用いた研磨方法を提供する。」
「[0032] 本発明に係る研磨方法は、前記CMP用研磨液を用いて、ルテニウム系金属を有する基体を研磨して、前記ルテニウム系金属の少なくとも一部を除去する工程を備える。このような研磨方法によれば、従来のCMP用研磨液を用いた場合と比較してルテニウム系金属の研磨速度を向上させることができる。例えば、本発明に係る研磨方法によれば、PVD法以外の方法(例えばCVD法又はALD法)で形成したルテニウム系金属の研磨速度を従来のCMP用研磨液を用いた場合と比較して向上させることができる。また、本発明に係る研磨方法によれば、PVD法で形成したルテニウム系金属を優れた研磨速度で研磨することもできる。」
「発明の効果
[0035] 本発明によれば、従来のCMP用研磨液を用いた場合と比較して、少なくともルテニウム系金属の研磨速度を向上させることができる。・・・」
「[0039] <CMP用研磨液>
第一実施形態に係るCMP用研磨液は、ルテニウム系金属を研磨するためのCMP用研磨液である。第一実施形態に係るCMP用研磨液は、(a)CMP用研磨液中において負のゼータ電位を有する研磨粒子(砥粒)と、(b)無機酸、モノカルボン酸、複数のカルボキシル基を有し且つ水酸基を有さないカルボン酸、及び、これらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む酸成分と、(c)酸化剤と、(d)水と、を含有し、CMP用研磨液のpHが7.0未満であることを特徴とする。
[0040] 第二実施形態に係るCMP用研磨液は、ルテニウム系金属及び配線金属を有する基体を研磨するためのCMP用研磨液である。第二実施形態に係るCMP用研磨液は、(a)CMP用研磨液中において負のゼータ電位を有する研磨粒子(砥粒)と、(b)無機酸、モノカルボン酸、複数のカルボキシル基を有し且つ水酸基を有さないカルボン酸、及び、これらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む酸成分と、(c)酸化剤と、(d)水と、を含有する。第二実施形態に係るCMP用研磨液中においてルテニウム系金属の腐食電位Aと配線金属との腐食電位Bとの差A-Bは-500~0mVである。第二実施形態に係るCMP用研磨液のpHは7.0未満である。」
「[0052](酸成分)
本実施形態に係るCMP用研磨液は、ルテニウム系金属の研磨速度を向上させる目的で、無機酸成分(無機酸、無機酸塩等)及び有機酸成分(有機酸、有機酸塩等)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む酸成分を含有し、具体的には、無機酸、モノカルボン酸(一つのカルボキシル基を有するカルボン酸)、複数のカルボキシル基を有し且つ水酸基を有さないカルボン酸、及び、これらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む酸成分を含有する。前記特定の酸成分がルテニウム系金属と反応し錯体を形成することで、ルテニウム系金属に対する高い研磨速度が得られると考えられる。研磨対象の基体がルテニウム系金属以外のバリア金属及び配線金属等を有する場合、前記特定の酸成分は、これらの金属の研磨速度を高めることもできる。
[0053] 無機酸成分としては、硝酸、リン酸、塩酸、硫酸、クロム酸及びこれらの塩が挙げられる。無機酸成分としては、実用的な研磨速度を維持しやすい観点から、硝酸、リン酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、硝酸、リン酸及びリン酸塩がより好ましく、硝酸及びリン酸が更に好ましく、リン酸が特に好ましい。無機酸塩としては、アンモニウム塩等が挙げられる。アンモニウム塩としては、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等が挙げられる。」
「[0061](酸化剤)
本実施形態に係るCMP用研磨液は、金属の酸化剤(以下、単に「酸化剤」という)を含有する。酸化剤としては、前記酸成分に該当する化合物を除く。
[0062] 酸化剤としては、特に制限はないが、過酸化水素、次亜塩素酸、オゾン水、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、過硫酸塩、硝酸セリウム塩等が挙げられる。酸性溶液中において、ルテニウム系金属のルテニウム部分が三価に酸化することにより、ルテニウム系金属の研磨速度が更に向上する観点から、酸化剤としては、過酸化水素が好ましい。過酸化水素は過酸化水素水として用いてもよい。過ヨウ素酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、過硫酸塩、硝酸セリウム塩等の塩としては、アンモニウム塩等が挙げられる。酸化剤は、一種類単独で使用してもよく、二種類以上を併用してもよい。
[0063] 酸化剤の含有量は、ルテニウム系金属の研磨速度が更に向上する観点から、CMP用研磨液の全質量基準で、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.02質量%以上が特に好ましく、0.03質量%以上が極めて好ましい。酸化剤の含有量は、研磨後の表面に荒れが生じにくい観点から、CMP用研磨液の全質量基準で、50.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.1質量%以下が極めて好ましい。なお、過酸化水素水のように、一般に水溶液として入手できる酸化剤は、当該水溶液中に含まれる酸化剤の含有量がCMP用研磨液において前記範囲になるように調整できる。」
「[0077](第四級ホスホニウム塩)
第二実施形態に係るCMP用研磨液は、ルテニウム系金属の研磨速度を向上させやすくなる観点から、第四級ホスホニウム塩を更に含有することが好ましい。第四級ホスホニウム塩は、ルテニウム系金属の研磨速度を更に向上させやすくなる観点から、トリアリールホスホニウム塩及びテトラアリールホスホニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、テトラアリールホスホニウム塩がより好ましい。
・・・
[0082] 第四級ホスホニウム塩の第四級ホスホニウムカチオンの対アニオン(陰イオン)としては、特に限定はないが、ハロゲンイオン(例えば、F-、Cl-、Br-、I-)、水酸化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、炭酸イオン等が挙げられる。」
「[0086] 前記第四級ホスホニウム塩は、下記一般式(II)で表される化合物であることが好ましい。
[化5]
[図:0001409190000002.jpg]
[式(II)中、各ベンゼン環は置換基を有していてもよく、R2は、置換基を有していてもよいアルキル基又はアリール基を示し、X-は陰イオンを示す。]」
「[0089] 第四級ホスホニウム塩の具体例としては、メチルトリフェニルホスホニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウム塩、トリフェニルプロピルホスホニウム塩、イソプロピルトリフェニルホスホニウム塩、ブチルトリフェニルホスホニウム塩、ペンチルトリフェニルホスホニウム塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウム塩、n-ヘプチルトリフェニルホスホニウム塩、トリフェニル(テトラデシル)ホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、(2-ヒドロキシベンジル)トリフェニルホスホニウム塩、(2-クロロベンジル)トリフェニルホスホニウム塩、(4-クロロベンジル)トリフェニルホスホニウム塩、(2,4-ジクロロベンジル)フェニルホスホニウム塩、(4-ニトロベンジル)トリフェニルホスホニウム塩、4-エトキシベンジルトリフェニルホスホニウム塩、(1-ナフチルメチル)トリフェニルホスホニウム塩、(シアノメチル)トリフェニルホスホニウム塩、(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウム塩、(ホルミルメチル)トリフェニルホスホニウム塩、アセトニルトリフェニルホスホニウム塩、フェナシルトリフェニルホスホニウム塩、メトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム塩、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム塩、(3-カルボキシプロピル)トリフェニルホスホニウム塩、(4-カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウム塩、2-ジメチルアミノエチルトリフェニルホスホニウム塩、トリフェニルビニルホスホニウム塩、アリルトリフェニルホスホニウム塩、トリフェニルプロパルギルホスホニウム塩等を挙げることができる。第四級ホスホニウム塩は、一種類単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。
[0090] これらの中では、配線金属との親和力に優れる観点から、ブチルトリフェニルホスホニウム塩、ペンチルトリフェニルホスホニウム塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウム塩、n-ヘプチルトリフェニルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩が好ましい。これらの塩としては、ブロモニウム塩、クロライド塩が好ましい。
[0091] 第四級ホスホニウム塩の含有量は、ルテニウムの研磨速度の向上効果が効果的に得られる観点から、CMP用研磨液の全質量基準で、0.0001質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.005質量%以上が更に好ましい。第四級ホスホニウム塩の含有量は、ルテニウムの研磨速度が更に向上される観点、及び、CMP用研磨液の保存安定性に優れる観点から、CMP用研磨液の全質量基準で、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が更に好ましい。」
(2)甲1発明
上記(1)から、甲1には、第二実施形態に係るCMP用研磨液について、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「ルテニウム系金属及び配線金属を有する基体を研磨するためのCMP用研磨液であって、
(a)CMP用研磨液中において負のゼータ電位を有する研磨粒子(砥粒)と、
(b)無機酸、モノカルボン酸、複数のカルボキシル基を有し且つ水酸基を有さないカルボン酸、及び、これらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む酸成分と、
(c)酸化剤と、
(d)水と、を含有し、
pHは7.0未満であり([0040])、
無機酸成分としては、硝酸、リン酸、塩酸、硫酸、クロム酸及びこれらの塩が挙げられ([0053])、
酸化剤としては、特に制限はないが、過酸化水素、次亜塩素酸、オゾン水、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、過硫酸塩、硝酸セリウム塩等が挙げられ([0062])、
第四級ホスホニウム塩を更に含有し([0077])、
第四級ホスホニウム塩の第四級ホスホニウムカチオンの対アニオン(陰イオン)としては、特に限定はないが、ハロゲンイオン(例えば、F-、Cl-、Br-、I-)、水酸化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、炭酸イオン等が挙げられ([0082])、
第四級ホスホニウム塩の具体例としては、メチルトリフェニルホスホニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウム塩、トリフェニルプロピルホスホニウム塩、イソプロピルトリフェニルホスホニウム塩、ブチルトリフェニルホスホニウム塩、ペンチルトリフェニルホスホニウム塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウム塩、n-ヘプチルトリフェニルホスホニウム塩、トリフェニル(テトラデシル)ホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、(2-ヒドロキシベンジル)トリフェニルホスホニウム塩、(2-クロロベンジル)トリフェニルホスホニウム塩、(4-クロロベンジル)トリフェニルホスホニウム塩、(2,4-ジクロロベンジル)フェニルホスホニウム塩、(4-ニトロベンジル)トリフェニルホスホニウム塩、4-エトキシベンジルトリフェニルホスホニウム塩、(1-ナフチルメチル)トリフェニルホスホニウム塩、(シアノメチル)トリフェニルホスホニウム塩、(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウム塩、(ホルミルメチル)トリフェニルホスホニウム塩、アセトニルトリフェニルホスホニウム塩、フェナシルトリフェニルホスホニウム塩、メトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム塩、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム塩、(3-カルボキシプロピル)トリフェニルホスホニウム塩、(4-カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウム塩、2-ジメチルアミノエチルトリフェニルホスホニウム塩、トリフェニルビニルホスホニウム塩、アリルトリフェニルホスホニウム塩、トリフェニルプロパルギルホスホニウム塩等を挙げることができ([0089])、
第四級ホスホニウム塩は、一種類単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい([0089])、CMP用研磨液。」
2 甲2の記載と甲2に記載された発明
(1)甲2の記載
甲2には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 基板に形成されたルテニウム膜を、pH12以上かつ酸化還元電位300mVvsSHE 以上の薬液でエッチングすることを特徴とするルテニウム膜のエッチング方法。
【請求項2】 前記薬液として、強アルカリ性の酸化剤溶液、またはアルカリ溶液と酸化剤溶液の混合溶液を使用し、この強アルカリ性の酸化剤溶液または混合溶液を基板に形成されたルテニウム膜の所定の位置に供給することを特徴とする請求項1記載のルテニウム膜のエッチング方法。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ルテニウム膜のエッチング方法に係り、特に半導体ウエハ等の基板の周縁部や裏面、その他の部分に成膜ないし付着した不要なルテニウム膜をエッチング除去するのに使用されるルテニウム膜のエッチング方法に関する。」
「【0006】本発明は上記に鑑みてなされたもので、特に回路形成部以外の基板周縁部および裏面、その他の部分に成膜ないし付着したルテニウムを確実にエッチング除去できるようにしたルテニウム膜のエッチング方法を提供することを目的とする。」
「【0017】この薬液としては、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩または臭素酸塩のようなハロゲンの酸素酸塩溶液からなる強アルカリ性の酸化剤溶液が挙げられるが、アンモニアや、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドまたはトリメチルアミンのような有機アルカリ等のアルカリ剤と、臭素、ヨウ素、二酸化塩素またはオゾンのような酸化剤の混合溶液を用いることもできる。
・・・
【0019】ここで、溶液は、例えばアンモニア、有機アルカリ剤または水酸化アルカリ剤を用いてpHが12以上になるように、例えばハロゲン化合物の酸化剤を添加することで酸化還元電位が300mVvsSHE 以上になるように調整される。その際、実用的なエッチング速度を確保するためには、溶液のpHが13以上で、酸化還元電位が500mVvsSHE 以上であることが好ましい。また、pHが13以下であると不溶性の二酸化ルテニウムが析出してパーティクル汚染の原因となるので、pHが14以上であればなお好ましい。」
「【0039】
【実施例】(実施例1)図1に示すエッチング装置に、窒化チタンバリア膜上にルテニウムをCVDで30nm成膜した基板を取付けた。溶液(アルカリ性酸化剤)として有効塩素濃度1%の次亜塩素酸アンモニウムを用い、回転速度を500rpm として、基板表面の中央部に超純水を100cc/min、周縁部に次亜塩素酸アンモニウムを100cc/min、裏面に次亜塩素酸アンモニウムを100cc/minで供給した。4分間の処理で周縁部のルテニウムは完全に除去され、裏面も1010atms/cm2以下になった。
・・・
【0041】(実施例3)図3に示すエッチング装置に、実施例1と同様の基板を取付けた。溶液(アルカリ性酸化剤溶液)として有効塩素濃度1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用し、回転速度を20rpmとして、次亜塩素酸ナトリウム溶液を10cc/minで基板周縁部に押当てたスポンジロールに供給した。5分間の処理により周縁部のルテニウムは完全に除去された。」
(2)甲2発明
上記(1)から、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「基板上に形成されたルテニウム膜をエッチングするための薬液であって、
pH12以上かつ酸化還元電位300mVvsSHE 以上であり(【請求項1】)、
強アルカリ性の酸化剤溶液、またはアルカリ溶液と酸化剤溶液の混合溶液を使用し(【請求項2】)、
強アルカリ性の酸化剤溶液として、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩または臭素酸塩のようなハロゲンの酸素酸塩溶液が挙げられ(【0017】)、
実施例1では、溶液(アルカリ性酸化剤)として有効塩素濃度1%の次亜塩素酸アンモニウムを用い(【0039】)、
実施例3では、溶液(アルカリ性酸化剤溶液)として有効塩素濃度1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用する(【0041】)、薬液。」
3 甲4の記載と甲4に記載された発明
(1)甲4の記載
甲4には、以下の事項が記載されている。
「[0001] 本発明は、ルテニウム系金属のエッチング用組成物およびその調製方法に関する。本発明は、特に、金属ルテニウムおよびルテニウムを主成分として含むルテニウム合金のエッチング用途に好適な組成物およびその調製方法に関する。」
「[0012] 本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は金属ルテニウムおよびタンタル等のその他の金属を一定割合で含むルテニウムを主成分とするルテニウム合金(本発明ではこれらを総称してルテニウム系金属ということがある)の膜に対して効率的なエッチングが可能となるエッチング用組成物及びその調製方法を提供することにある。」
「[0015] 本発明のエッチング用組成物によれば、ルテニウム膜および/またはルテニウム合金膜を半導体ウェハー等の基板材料に対して選択的にエッチングをすることが可能であるため、ルテニウム膜および/またはルテニウム合金膜を用いた半導体ウェハー等の基板の裏面およびエッジ洗浄に有効である。また、半導体ウェハー等の基板に構成される半導体素子、磁性体素子、配線、バリアメタル、ライナーメタル、電極の製造工程や、ルテニウム系金属中に含まれる元素の分析を行うための前処理に使用する溶解液等の、ルテニウム系金属を溶解する用途に広く用いることができる。」
「発明を実施するための形態
[0017] 以下に本発明を詳細に説明する。
[0018] 本発明のエッチング用組成物は、少なくとも臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物および水が混合されてなる組成物であり、pHが10以上の塩基性条件において使用するものである。本発明者は、臭素含有化合物を酸性条件にて酸化剤により酸化することで得られる酸化物を含む塩基性の水溶液がルテニウム系金属のエッチング能を有する成分(化学種)を含むことを見出した。
[0019] 本発明のエッチング用組成物に用いられる臭素含有化合物としては、臭化水素、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラメチルアンモニウムからなる群より選ばれる
・・・
[0021] 本発明のエッチング用組成物に用いられる酸化剤は、臭素含有化合物を酸化しルテニウム金属のエッチングに有効な化学種を生成させる機能を持った化合物であり、具体例としては、過酸化水素、硝酸、硝酸塩、硫酸、硫酸塩、過硫酸、過硫酸塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸塩、フッ素、塩素、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、亜塩素酸、亜塩素酸塩、塩素酸、塩素酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、臭素、次亜臭素酸、次亜臭素酸塩、亜臭素酸、亜臭素酸塩、臭素酸、臭素酸塩、過臭素酸、過臭素酸塩、ヨウ素、次亜ヨウ素酸、次亜ヨウ素酸塩、亜ヨウ素、亜ヨウ素酸塩、ヨウ素酸、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、四酸化ルテニウム、過マンガン酸塩、オゾン、セリウム塩が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、組み合わせてもよい。添加に際しては、水溶液もしくは固体として添加することができる。酸化剤の酸化力を増すために、臭素含有化合物と混合する際に沸騰しない温度範囲で加熱してもよい。これらの酸化剤のうちより好ましくは過酸化水素、硝酸である。臭素含有化合物として臭化水素酸を用いる場合、過酸化水素は金属イオンを含まず、安価に高純度品が入手可能であり、臭化水素酸を効果的に酸化できる点で望ましく、取り扱いが容易な点で過酸化水素水溶液を用いることが好ましい。
[0022] 酸化剤の添加濃度は、その種類により適切な濃度は異なるが、一般には、エッチング組成物の0.1~12質量%となるように添加され、過酸化水素の場合では好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは2.5~10質量%となるように添加され(表1)、硝酸の場合では好ましくは4~10質量%、より好ましくは4~5質量%となるように添加される(表2)のがよい。酸化剤の添加濃度が0.1質量%より低いと、臭素含有化合物を十分に酸化することができないため、エッチングレートが極めて小さく、実用に供さない。また、酸化剤の添加濃度が12質量%より多いと、ルテニウム系金属のエッチングに寄与する成分を適切に発生することができず、エッチングレートが低下する。」
「[0031] また、液寿命を安定化させるために、塩酸、塩化物を添加することができる。塩化物としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。」
「[請求項1] 少なくとも臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物および水が添加、混合されてなり、合計質量に対して前記臭素含有化合物の添加量が臭素元素量として2~25質量%、酸化剤の添加量が0.1~12質量%であり、かつpHが10以上12未満であることを特徴とするルテニウム系金属のエッチング用組成物。」
(2)甲4発明A
上記(1)から、甲4には、以下の発明(以下「甲4発明A」という。)が記載されていると認められる。
「金属ルテニウムおよびルテニウムを主成分として含むルテニウム合金(これらを総称して、以下「ルテニウム系金属」という。)のエッチング用組成物であって([0012]、[請求項1])
ルテニウム膜および/またはルテニウム合金膜を半導体ウェハー等の基板材料に対して選択的にエッチングをすることが可能であり、また、半導体ウェハー等の基板に構成される配線の製造工程に使用する溶解液等の、ルテニウム系金属を溶解する用途に広く用いることができ([0015])、
少なくとも臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物および水が混合されてなる組成物であり、pHが10以上の塩基性条件において使用するものであり([0018]、[請求項1])、
酸化剤は、臭素含有化合物を酸化しルテニウム金属のエッチングに有効な化学種を生成させる機能を持った化合物であり、具体例としては、過酸化水素、硝酸、硝酸塩、硫酸、硫酸塩、過硫酸、過硫酸塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸塩、フッ素、塩素、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、亜塩素酸、亜塩素酸塩、塩素酸、塩素酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、臭素、次亜臭素酸、次亜臭素酸塩、亜臭素酸、亜臭素酸塩、臭素酸、臭素酸塩、過臭素酸、過臭素酸塩、ヨウ素、次亜ヨウ素酸、次亜ヨウ素酸塩、亜ヨウ素、亜ヨウ素酸塩、ヨウ素酸、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、四酸化ルテニウム、過マンガン酸塩、オゾン、セリウム塩が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、組み合わせてもよく([0021])、
液寿命を安定化させるために、塩酸、塩化物を添加することができ、塩化物としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウムが挙げられる([0031])、ルテニウム系金属のエッチング用組成物。」
(3)甲4発明B
上記(1)から、甲4には、以下の発明(以下「甲4発明B」という。)が記載されていると認められる。
「エッチング用組成物を使用して、半導体ウェハー等の基板に構成される配線の製造方法であって([0015])、
エッチング用組成物は、
金属ルテニウムおよびルテニウムを主成分として含むルテニウム合金(これらを総称して、以下「ルテニウム系金属」という。)のエッチング用であり([0012]、[請求項1])、
半導体ウェハー等の基板に構成される配線の製造工程に使用する溶解液等の、ルテニウム系金属を溶解する用途に広く用いることができ([0015])、
少なくとも臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物および水が混合されてなる組成物であり、pHが10以上の塩基性条件において使用するものであり([0018]、[請求項1])、
酸化剤は、臭素含有化合物を酸化しルテニウム金属のエッチングに有効な化学種を生成させる機能を持った化合物であり、具体例としては、過酸化水素、硝酸、硝酸塩、硫酸、硫酸塩、過硫酸、過硫酸塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸塩、フッ素、塩素、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、亜塩素酸、亜塩素酸塩、塩素酸、塩素酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、臭素、次亜臭素酸、次亜臭素酸塩、亜臭素酸、亜臭素酸塩、臭素酸、臭素酸塩、過臭素酸、過臭素酸塩、ヨウ素、次亜ヨウ素酸、次亜ヨウ素酸塩、亜ヨウ素、亜ヨウ素酸塩、ヨウ素酸、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、四酸化ルテニウム、過マンガン酸塩、オゾン、セリウム塩が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、組み合わせてもよく([0021])、
液寿命を安定化させるために、塩酸、塩化物を添加することができ、塩化物としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウムが挙げられる([0031])、基板に構成される配線の製造方法。」
4 甲3の記載と甲3に記載された技術的事項
(1)甲3の記載
甲3には、以下の事項が記載されている。
「技術分野
[0001] 本発明はエッチング液に関する。さらに詳しくは、本発明は珪素系材料ならびにAl、W、Ti、TiNおよびTaNを侵すことなくニッケル白金合金系金属を選択的に除去することができるエッチング液に関する。」
「[0015] 以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。
[0016] 本発明のエッチング液は、特定の水溶性有機溶剤と、臭素源、塩素源またはそれらの組み合わせと、水とを含み、珪素系材料ならびにAl、W、Ti、TiNおよびTaNに対してニッケル白金合金系金属を選択的に除去することができることを特徴とする。
[0017] いかなる理論に拘束されるものではないが、本発明のエッチング液によるニッケル白金合金のエッチングの作用メカニズムは以下のように推定される。すなわち、エッチング液中に臭素源が存在する場合は、エッチング液中の臭素(Br2)、次亜臭素酸、臭素酸等により、エッチング液中に塩素源が存在する場合は、塩素(Cl2)、次亜塩素酸、塩素酸等により、ニッケル白金合金中のニッケルおよび白金は酸化され、白金酸化物と臭素原子(臭化物イオン)または塩素原子(塩化物イオン)とがさらに錯体を形成することでエッチング液中に溶解しやすい化合物が形成される。・・・
・・・
[0020] 塩素源としては、塩素(Cl2)、次亜塩素酸、および塩素酸から選ばれる少なくとも1種がエッチング液中に含まれることが望ましい。次亜塩素酸、および塩素酸は経時的に分解するため、安全面、品質面を考慮すると実用的には塩素(Cl2)を用いるか、あるいは塩素化合物と酸化剤を混合してエッチング液中に塩素源を生成させることが好ましい。塩素化合物としては水との共存下で塩素イオンを生成するものが好ましく、一例を挙げると塩酸、塩化アンモニウム等の無機化合物、および1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、N-クロロスクシミド、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム等の有機化合物を使用することが可能である。なお、酸化剤と混合することにより塩素源を生成するアンモニウム化合物は、水溶性有機溶剤の中で例えば塩酸とアンモニア水を反応させることにより生成させてもよい。塩素(Cl2)、次亜塩素酸、および塩素酸は水共存化で酸化剤なしでもNiPtを酸化する能力を有しているが、塩酸、塩化アンモニウム等の分子内に酸素原子を含まない無機塩素化合物、および1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、N-クロロスクシミド、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム等の有機塩素化合物は酸化剤と併用しないとNiPtを酸化する能力をもたない。酸化剤としては過酸化水素、過硫酸アンモニウム、硝酸、硫酸、過マンガン酸カリウム、重クロム酸カリウム等が挙げられる。半導体のような金属不純物を嫌う用途では、塩素(Cl2)単独、あるいは塩素化合物、例えば塩酸と、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、および硝酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化剤とを組み合わせたものを塩素源として用いることが好ましい。これらの塩素源は単独でも複数組み合わせて用いてもよい。
[0021] エッチング液中の、臭素源、塩素源またはそれらの組み合わせの濃度は、臭素原子および塩素原子の合計を基準としたハロゲン原子濃度として1~200mmol/kgであり、好ましくは5~100mmol/kg、より好ましくは8~70mmol/kgである。1mmol/kgより低いとNiPtを溶解する活性種の濃度が薄く、NiPtのエッチングレートが小さくなる。一方、200mmol/kgを超えるとAlや他の金属へのダメージが大きくなる。酸化剤の濃度は0.01~10質量%、より好ましくは0.1~7質量%、さらに好ましくは0.5~5質量%であることが好ましい。酸化剤の量が0.01質量%より少なくなるとNiPtのエッチングレートが過度に低下することがあり、場合によってはエッチングができないこともある。一方、酸化剤が10質量%より多くてもNiPtのエッチングレートは向上しない。」
「[0026] 本明細書において「ニッケル白金合金系金属」とは、ニッケルおよび白金を主成分として含む合金であり、代表的なものとしてニッケルを80~99.5原子%、および白金を0.5~20原子%含有する合金を指す。後述するとおり、ニッケル白金シリサイドはシリコン上に形成したニッケル白金合金系金属膜を熱処理することにより両者を反応させて形成させるので、ニッケル白金合金系金属自体は珪素を実質的に含まない、又は含まない。さらに、合金の白金含有量の一部として白金以外の金属、例えば、金、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、ロジウム等の貴金属、タンタル、ハフニウム等の耐食性金属、ゲルマニウム、その他一般的な金属、さらにそれらの金属の窒化物や酸化物、金属の加工、精錬、製膜等の際に混入を防ぐことが不可避な不純物成分、例えばカーボン等を上記の範囲で含むものも本発明のエッチング液で処理できる金属の範囲に含まれる。」
(2)甲3に記載された技術的事項
「次亜塩素酸及び塩素酸は経時的に分解すること。」
5 甲5の記載と甲5に記載された技術的事項
(1)甲5の記載
甲5には、以下の事項が記載されている。
「1.はじめに
水道水の消毒に使用される次亜塩素酸ナトリウム溶液(以下、次亜塩と表記)は、「水道施設の技術的基準を定める省令」・・・しかし、有効塩素の分解により塩素酸が生成することが知られており、市販の次亜塩を購入して使用する場合、納入時点で塩素酸の評価基準を満たしている製品であっても、貯蔵中に有効塩素濃度が低下するとともに塩素酸の含有量が増加して評価基準を逸脱する可能性がある。また、含有する臭素酸の量についても貯蔵中に増加する場合があることが報告されており1)」(10ページ左欄1~16行)
「3. 結果と考察
3-1 有効塩素の分解速度式と見かけの分解速度係数の測定
次亜塩中の有効塩素(ClO-)は、式(3)により貯蔵中に自己分解して塩素酸を生成する。
3ClO-→ClO3-+2Cl-…………(3)」(13ページ左欄2~7行)
「また、式(8)より初期有効塩素濃度がC0(%)の次亜塩をt日間貯蔵した後の有効塩素濃度C(%)は、
C=C0/(1+k’tC0)(%)…………(9)
と表すことができるから、t日間に分解する有効塩素の量ΔC(%)は次式で計算することができる。
ΔC=C0-C=C0-C0/(1+k’tC0)
=k’tC02/(1+k’tC0)…………(10)」(13ページ右欄15行~14ページ左欄2行)
「表-4 各貯蔵温度における有効塩素の見かけの分解速度係数(C0=13.25%)
貯蔵温度T(℃) 見かけの分解速度係数k’×105(/%・day)
5 1.21
20 19.59
28 57.51
36 176.69
43 537.46
50 1121.57
58 2847.54
」(合議体注:表の罫線は略した。)
(2)甲5に記載された技術的事項
上記(1)から、甲5には、以下の技術的事項が記載されている。
「次亜塩素酸ナトリウム溶液中の有効塩素(ClO-)は、貯蔵中に自己分解して塩素酸イオン(ClO3-)を生成すること。」
第5 当審の判断
1 特許法第29条第1項第3号、同条第2項について(甲1発明を主引例とする)
(1)請求項1に係る発明について
ア 対比
請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。また、請求項2~21に係る発明をそれぞれ順に「本件発明2」~「本件発明21」という。)と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明の「ルテニウム系金属」、「基体」、「研磨する」、「CMP用研磨液」は、それぞれ本件発明1の「Ru含有物」、「基板」、「除去する」、「薬液」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「基板上のRu含有物を除去するために用いられる薬液」である点で一致する。
(イ)そうすると、本件発明1と甲1発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「基板上のRu含有物を除去するために用いられる薬液。」
<相違点1A>
本件発明1は、「次亜塩素酸及びその塩からなる群から選択される1種以上の次亜塩素酸類と、ClO3-、及び、Cl-の両者と、を含有」するのに対し、甲1発明は、「(c)酸化剤」を「含有し」、「酸化剤としては、特に制限はないが、過酸化水素、次亜塩素酸、オゾン水、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、過硫酸塩、硝酸セリウム塩等が挙げられ」、「第四級ホスホニウム塩を更に含有し」、「第四級ホスホニウム塩の第四級ホスホニウムカチオンの対アニオン(陰イオン)としては、特に限定はないが、ハロゲンイオン(例えば、F-、Cl-、Br-、I-)、水酸化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、炭酸イオン等が挙げられ」、「第四級ホスホニウム塩は、一種類単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい」ものの、本件発明1のような特定はなされていない点。
<相違点1B>
本件発明1は、「ClO3-の含有量、及び、Cl-の含有量が、それぞれ、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb~1質量%である」のに対し、甲1発明では、その点について特定されていない点。
イ 判断
(ア)相違点1Aについて
甲1発明のCMP用研磨液は、「酸化剤として」、「次亜塩素酸」が挙げられ、「第四級ホスホニウム塩を更に含有し」、「第四級ホスホニウム塩の第四級ホスホニウムカチオンの対アニオン(陰イオン)」として、「Cl-」、「次亜塩素酸イオン」(ClO-)、「塩素酸イオン」(ClO3-)が挙げられ、「第四級ホスホニウム塩」は、「二種類以上を併用してもよい」ものである。
しかしながら、甲1発明のCMP用研磨液において、「一種類単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい」「第四級ホスホニウム塩」を、「三種類」を「併用」するものとするとともに、「第四級ホスホニウム塩の第四級ホスホニウムカチオンの対アニオン(陰イオン)」として、「ハロゲンイオン(例えば、F-、Cl-、Br-、I-)、水酸化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸イオン、チオ酸イオン、炭酸イオン」と多数列記された中から、「Cl-」、「次亜塩素酸イオン」(ClO-)及び「塩素酸イオン」(ClO3-)の三種類のアニオンを選択して採用する動機付けは当業者にはない。
あるいは、甲1発明のCMP用研磨液において、「特に制限はない」「酸化剤」として、「過酸化水素、次亜塩素酸、オゾン水、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、過硫酸塩、硝酸セリウム塩」の多数の酸化剤の選択肢の中から、「次亜塩素酸」を選択し、かつ、「一種類単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい」「第四級ホスホニウム塩」を、「二種類」を「併用」するものとするとともに、「第四級ホスホニウム塩の第四級ホスホニウムカチオンの対アニオン(陰イオン)」として、「ハロゲンイオン(例えば、F-、Cl-、Br-、I-)、水酸化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸イオン、チオ酸イオン、炭酸イオン」と多数列記された中から、「Cl-」及び「塩素酸イオン」(ClO3-)の二種類のアニオンを選択して採用する動機付けは当業者にはない。
したがって、相違点1Aは、実質的な相違点であり、また、甲1発明において、相違点1Aに係る本件発明1の構成を採用することは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到することができたものではない。
(イ)判断についてのまとめ
よって、本件発明1は、甲1発明であるということはできない。
また、甲2~8にも、相違点1Aに係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていないから、相違点1Bについて判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~8に記載された発明又は技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、「3 申立ての理由」の「(4)イ(ア)」において、甲1には、以下の発明が記載されているに等しいと主張する。(特許異議申立書14ページを参照。)
「ルテニウム系金属を有する基体を研磨して、前記ルテニウム系金属の少なくとも一部を除去するCMP用研磨液であって、
第四級ホスホニウム塩を含み、前記第四級ホスホニウムカチオンの対アニオンとして、Cl-、次亜塩素酸イオン、及び塩素酸イオンを含み、
酸化剤として、次亜塩素酸を含み、
前記第四級ホスホニウム塩の含有量が・・・であり、
前記酸化剤の含有量が・・・である、CMP用研磨液。」
しかしながら、上記(ア)で検討したとおり、甲1には、「前記第四級ホスホニウムカチオンの対アニオンとして、Cl-、次亜塩素酸イオン、及び塩素酸イオンを含み、酸化剤として、次亜塩素酸を含」むという特定の組み合わせのCMP用研磨液は記載されていないから、申立人のかかる主張を採用することはできない。
(2)本件発明3、4、6について
本件発明3、4、6は、それぞれ、本件発明1に対して、さらに発明特定事項を追加したものを含む発明である。
よって、上記(1)イで示した理由と同様の理由により、本件発明3、4、6は、甲1発明であるということはできず、また、本件発明3、4、6は、甲1発明及び甲2~8に記載された発明又は技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 特許法第29条第1項第3号、同条第2項について(甲2発明を主引例とする)
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「ルテニウム膜」、「基板」、「エッチングする」は、それぞれ本件発明1の「Ru含有物」、「基板」、「除去する」に相当する。
したがって、本件発明1と甲2発明とは、「基板上のRu含有物を除去するために用いられる薬液」である点で一致する。
(イ)甲2発明の「次亜塩素酸塩」、実施例1で用いる「有効塩素濃度1%の次亜塩素酸アンモニウム」、及び実施例3で用いる「有効塩素濃度1%の次亜塩素酸ナトリウム」は、本件発明1の「次亜塩素酸及びその塩からなる群から選択される1種以上の次亜塩素酸類」に相当する。
(ウ)したがって、本件発明1と甲2発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「基板上のRu含有物を除去するために用いられる薬液であって、
次亜塩素酸及びその塩からなる群から選択される1種以上の次亜塩素酸類、を含有する、薬液。」
<相違点2A>
本件発明1は、「ClO3-、及び、Cl-の両者」を含有するのに対し、甲2発明では、その点について特定されていない点。
<相違点2B>
本件発明1は、「ClO3-の含有量、及び、Cl-の含有量が、それぞれ、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb~1質量%である」のに対し、甲2発明では、その点について特定されていない点。
イ 判断
(ア)相違点2A、2Bについて
相違点2A、2Bについて、まとめて検討する。
a 上記第4の4(2)、5(2)のとおり、甲3には、「次亜塩素酸及び塩素酸は経時的に分解すること」が記載されており、甲5には、「次亜塩素酸ナトリウム溶液中の有効塩素(ClO-)は、貯蔵中に自己分解して塩素酸イオン(ClO3-)を生成すること」が記載されているから、甲2発明において、実施例3で用いる「次亜塩素酸ナトリウム溶液」は、経時的に分解して、塩素酸イオン(ClO3-)、及び、Cl-を生成するといえる。
b 次に、甲2発明の薬液における、塩素酸イオン(ClO3-)、及び、Cl-それぞれの含有量について検討する。
(a)甲5には、初期有効塩素濃度がC0(%)の次亜塩(次亜塩素酸ナトリウム溶液)をt日間貯蔵した後の有効塩素濃度C(%)は式(9)で表すことができ、t日間に分解する有効塩素(ClO-)の量ΔC(%)=C0-Cは次(10)で計算することができる旨が記載されている。式(10)における有効塩素の見かけの分解速度係数k’は、表-4から、貯蔵温度Tが20℃では19.59×10-5(/%・day)である。
(b)甲2発明において、「実施例3では、溶液(アルカリ性酸化剤溶液)として有効塩素濃度1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用する」ものであるところ、「有効塩素濃度1%」は、甲5における「初期有効塩素濃度C0」が「1%」に相当することは明らかである。
次に、初期有効塩素濃度C0が1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液の製造直後から、10分後の場合は、甲5の記載から、上記の式(10)におけるt=10/(60×24)の場合であるので、式(10)より、10分間に分解する有効塩素(ClO-)の量ΔC(%)は、約1.36×10-6(%)と計算される。
さらに、ClO-、ClO3-及びCl-の式量はそれぞれ51.5、83.5、35.5であるから、式(3)によると、初期有効塩素濃度C0が1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液の製造直後から、10分後の、塩素酸イオン(ClO3-)、及び、Cl-の含有量は、それぞれ、7.35×10-7%=7.35ppb程度と6.25×10-7%=6.25ppb程度と計算される。これらの含有量は、いずれも上記相違点2Bに係る数値範囲に含まれる。
しかしながら、本件発明1において、「ClO3-の含有量、及び、Cl-の含有量」は、「基板上のRu含有物を除去するために用いられる薬液」が含有する「ClO3-、及び、Cl-」の濃度であるから、Ru含有物を除去する際の薬液の濃度であると考えるのが当然であり、そうすると、上記式(9)、(10)におけるtとして、薬液の製造直後から10分の場合を想定することは妥当ではない。
次に、tを1日とした場合について、同様に計算すると、1日に分解する有効塩素(ClO-)の量ΔC(%)は、約1.96×10-4(%)と計算される。したがって、塩素酸イオン(ClO3-)、及び、Cl-の含有量は、それぞれ、1.06×10-4%=1.06ppm程度と0.90×10-4%=0.90ppm程度と計算される。これらの含有量は、いずれも上記相違点2Bに係る数値範囲には含まれない。
式(10)から、tが大きくなると、ΔCはC0に近づくので、tが1日より大きい場合も、塩素酸イオン(ClO3-)、及び、Cl-の含有量は、いずれも上記相違点2Bに係る数値範囲には含まれないことは明らかである。
c したがって、甲2発明において、甲3、5に記載された技術的事項及び甲5に記載された事項に基づき、相違点2A、2Bに係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易に想到することができたとはいえない。
(イ)判断についてのまとめ
よって、本件発明1は、甲2発明であるということはできない。
また、甲1、3~8にも、相違点2A、2Bに係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていないから、本件発明1は、甲2発明及び甲1、3~8に記載された発明又は技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、「3 申立ての理由」の「(4)ウ(イ)」において、「すなわち、有効塩素濃度1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を調製してから約10分後には自然分解によりClO3-及びCl-が5質量ppb以上生じるから、エッチングに用いる際に、それぞれのイオンの含有量が本件特許発明1の数値範囲を充足する蓋然性は極めて高く、上記相違点1-2及び1-3は実質的な相違点とは言えない。仮にそうでなかったとしても、・・・甲2発明に基づき、甲第1号証の記載を参酌することで当業者が容易に想到することができたものである。」と主張する。(特許異議申立書28ページを参照。)
しかしながら、上記(ア)で検討したとおりであるから、申立人のかかる主張を採用することはできない。
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「ルテニウム膜」、「基板」は、それぞれ本件発明2の「Ru含有物」、「基板」に相当する。
したがって、本件発明2と甲2発明とは、「基板上のRu含有物をエッチングするエッチング液として用いられる薬液」である点で一致する。
(イ)甲2発明の「次亜塩素酸塩」、実施例1で用いる「有効塩素濃度1%の次亜塩素酸アンモニウム」、及び実施例3で用いる「有効塩素濃度1%の次亜塩素酸ナトリウム」は、本件発明2の「次亜塩素酸及びその塩からなる群から選択される1種以上の次亜塩素酸類」に相当する。
(ウ)したがって、本件発明2と甲2発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「基板上のRu含有物をエッチングするエッチング液として用いられる薬液であって、
次亜塩素酸及びその塩からなる群から選択される1種以上の次亜塩素酸類、を含有する、薬液。」
<相違点2C>
本件発明2は、「ClO3-、及び、Cl-からなる群から選択される1種以上の特定アニオン」を含有するのに対し、甲2発明では、その点について特定されていない点。
<相違点2D>
本件発明2は、「前記薬液が1種の特定アニオンを含有する場合、前記1種の特定アニオンの含有量が、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb~1質量%であり、前記薬液が2種の特定アニオンを含有する場合、前記2種の特定アニオンの含有量が、それぞれ、前記薬液の全質量に対して、1質量%以下であり、前記2種の特定アニオンのうちの少なくとも1種の含有量が、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb以上である」のに対し、甲2発明では、その点について特定されていない点。
イ 判断
(ア)相違点2C、2Dについて
相違点2C、2Dについて、まとめて検討する。
a 上記第4の4(2)、5(2)のとおり、甲3には、「次亜塩素酸及び塩素酸は経時的に分解すること」が記載されており、甲5には、「次亜塩素酸ナトリウム溶液中の有効塩素(ClO-)は、貯蔵中に自己分解して塩素酸イオン(ClO3-)を生成すること」が記載されているから、甲2発明において、実施例3で用いる「次亜塩素酸ナトリウム溶液」は、経時的に分解して、塩素酸イオン(ClO3-)、及び、Cl-からなる群から選択される1種以上の特定アニオンを生成するといえる。
b 次に、甲2発明の薬液における、塩素酸イオン(ClO3-)、及び、Cl-からなる群から選択される1種以上の特定アニオンそれぞれの含有量について検討する。
上記(1)イ(ア)bで相違点2A、2Bについて検討したのと同様な理由で、本件発明2において、「前記薬液が1種の特定アニオンを含有する場合」の「前記1種の特定アニオンの含有量」は、「基板上のRu含有物を除去するために用いられる薬液」が含有する「塩素酸イオン(ClO3-)、及び、Cl-からなる群から選択される1種以上の特定アニオン」の濃度であり、「前記薬液が2種の特定アニオンを含有する場合」の「前記2種の特定アニオンの含有量」と「前記2種の特定アニオンのうちの少なくとも1種の含有量」も、「基板上のRu含有物を除去するために用いられる薬液」が含有する「塩素酸イオン(ClO3-)、及び、Cl-からなる群から選択される1種以上の特定アニオン」の濃度であるから、Ru含有物をエッチングする際の薬液の濃度であると考えるのが当然であり、そうすると、上記式(9)、(10)におけるtとして、薬液の製造直後から10分の場合を想定することは妥当ではない。
次に、tを1日とした場合について、同様に計算すると、1日に分解する有効塩素(ClO-)の量ΔC(%)は、約1.96×10-4(%)と計算される。したがって、塩素酸イオン(ClO3-)、及び、Cl-の含有量は、それぞれ、1.06ppm程度と0.90ppm程度と計算される。これらの含有量は、いずれも上記相違点2Dに係る数値範囲には含まれない。
式(10)から、tが大きくなると、ΔCはC0に近づくので、tが1日より大きい場合も、塩素酸イオン(ClO3-)、及び、Cl-の含有量は、いずれも上記相違点2Dに係る数値範囲には含まれないことは明らかである。
c したがって、甲2発明において、甲3、5に記載された技術的事項及び甲5に記載された事項に基づき、相違点2C、2Dに係る本件発明2の構成とすることは当業者が容易に想到することができたとはいえない。
(イ)判断についてのまとめ
よって、本件発明2は、甲2発明であるということはできない。
また、甲1、3~8にも、相違点2C、2Dに係る本件発明2の構成は記載も示唆もされていないから、本件発明2は、甲2発明及び甲1、3~8に記載された発明又は技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、「3 申立ての理由」の「(4)ウ(エ)」において、「しかしながら、上記相違点2-1~2-4について、・・・実質的な相違点とは言えない。仮にそうでなかったとしても、・・・甲2発明に基づき、甲4号証の記載を参酌することで当業者が容易に想到することができたものである。また、特定アニオンの含有量を本件特許発明2の数値範囲内とすることにより得られる効果も、・・・予測できない顕著なものであったということはできない。」と主張する。(特許異議申立書31~32ページ)
しかしながら、上記(ア)で検討したとおりであるから、申立人のかかる主張を採用することはできない。
(3)本件発明3~5、8~11について
本件発明3~5、8~11は、それぞれ、本件発明1又は2に対して、さらに発明特定事項を追加したものを含む発明である。
よって、上記(1)イ、(2)イで示した理由と同様の理由により、本件発明3~5、8~11は、甲2発明であるということはできず、また、甲2発明及び甲1、3~8に記載された発明又は技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 特許法第29条第1項第3号、同条第2項について(甲4発明A、甲4発明Bを主引例とする)
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4発明Aとを対比する。
(ア)甲4発明Aの「ルテニウム系金属」、「半導体ウェハー等の基板」、「エッチングする」、「エッチング用組成物」は、それぞれ本件発明1の「Ru含有物」、「基板」、「除去する」、「薬液」に相当する。
したがって、本件発明1と甲4発明Aとは、「基板上のRu含有物を除去するために用いられる薬液」である点で一致する。
(イ)そうすると、本件発明1と甲4発明Aとの間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「基板上のRu含有物を除去するために用いられる薬液。」
<相違点4A>
本件発明1は、「次亜塩素酸及びその塩からなる群から選択される1種以上の次亜塩素酸類と、ClO3-、及び、Cl-の両者と、を含有」するのに対し、甲4発明Aは、混合されてなる酸化剤について、「酸化剤は、臭素含有化合物を酸化しルテニウム金属のエッチングに有効な化学種を生成させる機能を持った化合物であり、具体例としては、過酸化水素、硝酸、硝酸塩、硫酸、硫酸塩、過硫酸、過硫酸塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸塩、フッ素、塩素、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、亜塩素酸、亜塩素酸塩、塩素酸、塩素酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、臭素、次亜臭素酸、次亜臭素酸塩、亜臭素酸、亜臭素酸塩、臭素酸、臭素酸塩、過臭素酸、過臭素酸塩、ヨウ素、次亜ヨウ素酸、次亜ヨウ素酸塩、亜ヨウ素、亜ヨウ素酸塩、ヨウ素酸、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、四酸化ルテニウム、過マンガン酸塩、オゾン、セリウム塩が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、組み合わせてもよ」いものの、本件発明1のような特定はなされていない点。
<相違点4B>
本件発明1は、「ClO3-の含有量、及び、Cl-の含有量が、それぞれ、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb~1質量%である」のに対し、甲4発明Aでは、その点について特定されていない点。
イ 判断
(ア)相違点4Aについて
甲4発明Aのエッチング用組成物は、「酸化剤」として、「塩素」、「次亜塩素酸」(ClO-)、「次亜塩素酸塩」、「塩素酸」(ClO3-)、「塩素酸塩」が挙げられており、「組み合わせてもよく」、「塩酸、塩化物を添加することができ、塩化物としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウムが挙げられる」ものである。
しかしながら、甲4発明Aのエッチング用組成物における「酸化剤」として、多数列記されている中から、「塩素」、及び「次亜塩素酸」又は「次亜塩素酸塩」、並びに「塩素酸」又は「塩素酸塩」を選択する動機付けは当業者にはない。
あるいは、甲4発明Aのエッチング用組成物における「酸化剤」として、多数列記されている中から、「次亜塩素酸」又は「次亜塩素酸塩」、及び「塩素酸」又は「塩素酸塩」を選択するとともに、「塩酸」又は「塩化物」(Cl-を生成し得ることは明らか。)を添加する動機付けは当業者にはない。
仮に、甲3、5に記載された技術的事項に基づき、次亜塩素酸及び塩素酸並びに次亜塩素酸塩は、経時的に分解するとしても、甲4発明Aのエッチング用組成物における「酸化剤」として、「塩素」、及び「次亜塩素酸」又は「次亜塩素酸塩」を選択するか、あるいは、「酸化剤」として、「次亜塩素酸」又は「次亜塩素酸塩」を選択するとともに、「塩酸」又は「塩化物」(Cl-を生成することは明らか。)を添加する動機付けは当業者にはない。
したがって、甲4発明Aにおいて、相違点4Aに係る本件発明1の構成とすること、または、甲4発明Aにおいて、甲3、5に記載された技術的事項に基づき、相違点4Aに係る本件発明1の構成とすることは、いずれも当業者が容易に想到することができたとはいえない。
(イ)相違点4Bについて
念のため、相違点4Bについても検討する。
甲4の[0021]には、「酸化剤は、臭素含有化合物を酸化しルテニウム金属のエッチングに有効な化学種を生成させる機能を持った化合物であり」と記載されており、[0022]には、「酸化剤の添加濃度は、その種類により適切な濃度は異なるが、一般には、エッチング組成物の0.1~12質量%となるように添加され」と記載されている。
そうすると、甲4発明Aのエッチング用組成物における酸化剤の組合せを上記(ア)のように選択したとしても、臭素含有化合物を酸化し、ルテニウム金属のエッチングに有効な化学種を生成させる機能を持たせるよう考慮して、選択した酸化剤の添加濃度を、それぞれ、5質量ppb~1質量%の数値範囲とすることが当業者が適宜なし得たということはできない。
したがって、甲4発明Aにおいて、相違点4Bに係る本件発明1の構成とすることは当業者であれば容易になし得たとはいえない。
(ウ)判断についてのまとめ
よって、本件発明1は、甲4発明Aであるということはできない。
また、甲1~3、5~8にも、相違点4A、4Bに係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていないから、本件発明1は、甲4発明Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)申立人の主張について
申立人は、「3 申立ての理由」の「(4)イ(エ)」において、甲4には、以下の発明が記載されているに等しいと主張する。(特許異議申立書18ページを参照。)
「金属ルテニウムおよびルテニウムを主成分として含むルテニウム合金のエッチング用途に好適な組成物であって、酸化剤として、塩素、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、塩素酸、塩素酸塩を含み、酸化剤の添加濃度は、エッチング組成物の0.1~12質量%であり、塩酸、塩化テトラメチルアンモニウムを含む、ルテニウム系金属のエッチング用組成物。」
また、「3 申立ての理由」の「(4)ウ(ウ)」において、「甲4発明におけるそれぞれのイオンの含有量が本件特許発明1の数値範囲を充足する蓋然性は極めて高く、相違点1-4は実質的な相違点とは言えない。仮にそうでなかったとしても、・・・当業者が容易に想到できたものである。」と主張する。(特許異議申立書29~30ページを参照。)
しかしながら、上記(ア)、(イ)で検討したとおりであるから、申立人のかかる主張を採用することはできない。
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲4発明Aとを対比する。
(ア)甲4発明Aの「ルテニウム系金属」、「半導体ウェハー等の基板」、「エッチング用組成物」は、それぞれ本件発明2の「Ru含有物」、「基板」、「薬液」に相当する。
したがって、本件発明2と甲4発明Aとは、「基板上のRu含有物をエッチングするエッチング液として用いられる薬液」である点で一致する。
(イ)そうすると、本件発明2と甲4発明Aとの間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「基板上のRu含有物をエッチングするエッチング液として用いられる薬液。」
<相違点4C>
本件発明2は、「次亜塩素酸及びその塩からなる群から選択される1種以上の次亜塩素酸類と、ClO3-、及び、Cl-からなる群から選択される1種以上の特定アニオンと、を含有」するのに対し、甲4発明Aは、混合されてなる酸化剤について、「酸化剤は、臭素含有化合物を酸化しルテニウム金属のエッチングに有効な化学種を生成させる機能を持った化合物であり、具体例としては、過酸化水素、硝酸、硝酸塩、硫酸、硫酸塩、過硫酸、過硫酸塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸塩、フッ素、塩素、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、亜塩素酸、亜塩素酸塩、塩素酸、塩素酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、臭素、次亜臭素酸、次亜臭素酸塩、亜臭素酸、亜臭素酸塩、臭素酸、臭素酸塩、過臭素酸、過臭素酸塩、ヨウ素、次亜ヨウ素酸、次亜ヨウ素酸塩、亜ヨウ素、亜ヨウ素酸塩、ヨウ素酸、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、四酸化ルテニウム、過マンガン酸塩、オゾン、セリウム塩が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、組み合わせてもよ」いものの、本件発明2のような特定はなされていない点。
<相違点4D>
本件発明2は、「前記薬液が1種の特定アニオンを含有する場合、前記1種の特定アニオンの含有量が、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb~1質量%であり、前記薬液が2種の特定アニオンを含有する場合、前記2種の特定アニオンの含有量が、それぞれ、前記薬液の全質量に対して、1質量%以下であり、前記2種の特定アニオンのうちの少なくとも1種の含有量が、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb以上である」のに対し、甲4発明Aでは、その点について特定されていない点。
イ 判断
(ア)相違点4Cについて
甲4発明Aのエッチング用組成物は、「酸化剤」として、「塩素」、「次亜塩素酸」(ClO-)、「次亜塩素酸塩」、「塩素酸」(ClO3-)、「塩素酸塩」が挙げられており、「組み合わせてもよく」、「塩酸、塩化物を添加することができ、塩化物としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウムが挙げられる」ものである。
しかしながら、甲4発明Aのエッチング用組成物における「酸化剤」として、多数列記されている中から、「次亜塩素酸」又は「次亜塩素酸塩」、並びに、「塩素」、及び、「塩素酸」又は「塩素酸塩」からなる群から選択される1種以上の特定アニオンを選択する動機付けは当業者にはない。
あるいは、甲4発明Aのエッチング用組成物における「酸化剤」として、多数列記されている中から、「次亜塩素酸」又は「次亜塩素酸塩」、並びに、「塩素酸」又は「塩素酸塩」、及び、「塩酸」又は「塩化物」からなる群から選択される1種以上の特定アニオン選択する動機付けは当業者にはない。
仮に、甲3、5に記載された技術的事項に基づき、次亜塩素酸及び塩素酸並びに次亜塩素酸塩は、経時的に分解するとしても、甲4発明Aのエッチング用組成物における「酸化剤」として、「次亜塩素酸」又は「次亜塩素酸塩」、並びに、「塩素」又は「塩酸」若しくは「塩化物」、及び、「次亜塩素酸」又は「次亜塩素酸塩」からなる群から選択される1種以上の特定アニオンを選択する動機付けは当業者にはない。
したがって、甲4発明Aにおいて、相違点4Cに係る本件発明2の構成とすること、又は、甲4発明Aにおいて、甲3、5に記載された技術的事項に基づき、相違点4Cに係る本件発明2の構成とすることは、いずれも当業者が容易に想到することができたとはいえない。
(イ)相違点4Dについて
念のため、相違点4Dについても検討する。
上記(1)イ(イ)で相違点4Bについて検討したのと同様な理由で、甲4発明Aのエッチング用組成物における酸化剤の組合せを上記(ア)のように選択したとしても、臭素含有化合物を酸化し、ルテニウム金属のエッチングに有効な化学種を生成させる機能を持たせるよう考慮して、選択した酸化剤の添加濃度を、それぞれ、5質量ppb~1質量%の数値範囲とすることが当業者が適宜なし得たということはできない。
したがって、甲4発明Aにおいて、相違点4Dに係る本件発明2の構成とすることは当業者であれば容易になし得たとはいえない。
(ウ)判断についてのまとめ
よって、本件発明2は、甲4発明Aであるということはできない。
また、甲1~3、5~8にも、相違点4C、4Dに係る本件発明2の構成は記載も示唆もされていないから、本件発明2は、甲4発明Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)申立人の主張について
申立人は、「3 申立ての理由」の「(4)イ(エ)」において、甲4には、以下の発明が記載されているに等しいと主張する。(特許異議申立書18ページを参照。)
「金属ルテニウムおよびルテニウムを主成分として含むルテニウム合金のエッチング用途に好適な組成物であって、酸化剤として、塩素、次亜鉛素酸、次亜塩素酸塩、塩素酸、塩素酸塩を含み、酸化剤の添加濃度は、エッチング組成物の0.1~12質量%であり、塩酸、塩化テトラメチルアンモニウムを含む、ルテニウム系金属のエッチング用組成物。」
また、「3 申立ての理由」の「(4)ウ(オ)」において、「甲4発明におけるそれぞれのイオンの含有量が本件特許発明2の数値範囲を充足する蓋然性は極めて高く、相違点2-5~2-7は実質的な相違点とは言えない。仮にそうでなかったとしても、・・・当業者が容易に想到できたものである。また、特定アニオンの含有量を本件特許発明2の数値範囲内にすることにより得られる効果も、・・・顕著かつ予測できない効果であったとは認められない。」と主張する。(特許異議申立書33ページを参照。)
しかしながら、上記(ア)、(イ)で検討したとおりであるから、申立人のかかる主張を採用することはできない。
(3)本件発明3~10、12、13について
本件発明3~10、12、13は、それぞれ、本件発明1又は2に対して、さらに発明特定事項を追加したものを含む発明である。
よって、上記(1)イ、(2)イで示した理由と同様の理由により、本件発明3~10、12は、甲4発明Aであるということはできず、また、本件発明3~10、12、13は、甲4発明A及び甲1~3、5~8に記載された発明又は技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明14~16について(甲4発明Bを主引例とする)
本件発明14~16は、それぞれ、本件発明1又は2に対して、さらに発明特定事項を追加したものを含む、基板の処理方法に係る発明である。
ア 対比
本件発明14と甲4発明Bを対比すると、両者は少なくとも上記<相違点4A>及び<相違点4B>、又は<相違点4C>及び<相違点4D>で相違する。
イ 判断
したがって、上記(1)イ、(2)イで示した理由と同様の理由により、本件発明14~16は、甲4発明Bであるということはできず、また、本件発明14~16は、甲4発明B及び甲1~3、5~8に記載された発明又は技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明17について(甲4発明Bを主引例とする)
ア 対比
本件発明17と甲4発明Bを対比する。
(ア)甲4発明Bの「エッチング用組成物」、「半導体ウェハー等の基板」は、それぞれ本件発明17の「薬液」、「基板」に相当する。
また、甲4発明Bにおいて、「エッチング組成物は、金属ルテニウムおよびルテニウムを主成分として含むルテニウム合金(これらを総称して、以下「ルテニウム系金属」という。)のエッチング用であり、半導体ウェハー等の基板に構成される配線の製造工程に使用する溶解液等の、ルテニウム系金属を溶解する用途に広く用いることができ」るものであるから、甲4発明Bの「基板に構成される配線の製造方法」は、本件発明17の「基板上に配置されたRu含有配線」を「エッチング処理する工程」を「含有する、基板の処理方法」に相当する。
したがって、本件発明17と甲4発明Bとは、「薬液を用いて、基板上に配置されるRu含有配線をエッチングする工程を含有する、基板の処理方法」である点で共通する。
(イ)そうすると、本件発明17と甲4発明Aは、「薬液を用いて、基板上に配置されるRu含有配線をエッチングする工程を含有する、基板の処理方法」である点で一致し、少なくとも、下記の<相違点4E>及び<相違点4F>で相違する。
<相違点4E>
本件発明17は、「前記薬液が、次亜塩素酸及びその塩からなる群から選択される1種以上の次亜塩素酸類と、ClO3-、及び、Cl-からなる群から選択される1種以上の特定アニオンと、を含有」するのに対し、甲4発明Bは、混合されてなる酸化剤について、「酸化剤は、臭素含有化合物を酸化しルテニウム金属のエッチングに有効な化学種を生成させる機能を持った化合物であり、具体例としては、過酸化水素、硝酸、硝酸塩、硫酸、硫酸塩、過硫酸、過硫酸塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸塩、フッ素、塩素、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、亜塩素酸、亜塩素酸塩、塩素酸、塩素酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、臭素、次亜臭素酸、次亜臭素酸塩、亜臭素酸、亜臭素酸塩、臭素酸、臭素酸塩、過臭素酸、過臭素酸塩、ヨウ素、次亜ヨウ素酸、次亜ヨウ素酸塩、亜ヨウ素、亜ヨウ素酸塩、ヨウ素酸、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、四酸化ルテニウム、過マンガン酸塩、オゾン、セリウム塩が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、組み合わせてもよ」いものの、本件発明17のような特定はなされていない点。
<相違点4F>
本件発明17は、「前記薬液が1種の特定アニオンを含有する場合、前記1種の特定アニオンの含有量が、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb~1質量%であり、前記薬液が2種の特定アニオンを含有する場合、前記2種の特定アニオンの含有量が、それぞれ、前記薬液の全質量に対して、1質量%以下であり、前記2種の特定アニオンのうちの少なくとも1種の含有量が、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb以上である」のに対し、甲4発明Bでは、その点について特定されていない点。
イ 判断
上記<相違点4E>、<相違点4F>は、それぞれ、<相違点4C>、<相違点4D>と同様な相違点であるから、上記(2)イで示した理由と同様の理由により、本件発明17は、甲4発明B及び甲1~3、5~8に記載された発明又は技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)本件発明18~21について(甲4発明Bを主引例とする)
本件発明18~21は、それぞれ、本件発明14~17に対して、さらに発明特定事項を追加したものを含む発明である。
よって、上記(4)イ、(5)イで示した理由と同様の理由により、本件発明18~21は、甲4発明B及び甲1~3、5~8に記載された発明又は技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 特許法第36条第4項第1号、同条第6項第1号、第2号について
(1)特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について
ア 申立人は、「3 申立ての理由」の「(4)エ(ア)」において、「(本件特許明細書の)段落0101の記載からは、原料中にClO3-、Cl-が含まれないと仮定してClO3-、Cl-を表1に記載された含有量になるように仕込み量を調整したのか、実際に液中の濃度をイオンクロマトグラフ法で分析して表に記載された含有量になるように調製したのか明らかでない。」と主張する。(特許異議申立書40~41ページを参照。)
イ しかしながら、本件の特許請求の範囲の請求項1には、「ClO3-の含有量、及び、Cl-の含有量が、それぞれ、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb~1質量%である、薬液」と記載されており、請求項2及び請求項17には、「ClO3-、及び、Cl-からなる群から選択される1種以上の特定アニオンと、を含有し、前記薬液が1種の特定アニオンを含有する場合、前記1種の特定アニオンの含有量が、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb~1質量%であり、前記薬液が2種の特定アニオンを含有する場合、前記2種の特定アニオンの含有量が、それぞれ、前記薬液の全質量に対して、1質量%以下であり、前記2種の特定アニオンのうちの少なくとも1種の含有量が、前記薬液の全質量に対して、5質量ppb以上である、薬液」と記載されているから、請求項1、2、17の「ClO3-の含有量」、「Cl-の含有量」、「前記1種の特定アニオンの含有量」、「前記2種の特定アニオンの含有量」は、いずれも「薬液」が含有する「含有量」であることは明確であり、本件特許明細書の【0097】に、「更に、特定アニオンの供給源、及び、pH調整剤を添加して、下記表1に示す配合の薬液を調製した。」と記載されているとおり、表1に示されたような、「薬液の組成」が、「特定アニオン」、「ClO3-」、「Cl-」の「含有量(質量%)」であることは明確である。
よって、本件発明1、2、17及び請求項1、2、17の記載を引用する本件発明3~16、18~21は明確であり、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に掲げる要件に適合するものである。
(2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
ア 申立人は、「3 申立ての理由」の「(4)エ(イ)」において、「上記(ア)について、仮に、「原料中に・・・」と解釈した場合について検討する。・・・当業者が認識できるように記載された範囲ではない。」と主張する。(特許異議申立書41ページを参照。)
イ しかしながら、本件特許明細書の表1には、実施例12として、特定アニオンとしてのClO3-の含有量が0.0000005質量%(=5ppb)の薬液が、実施例29として、特定アニオンとしてのCl-の含有量が5ppbの薬液が、実施例40として、ClO3-の含有量及びClO-の含有量がいずれも5ppbの薬液が、実施例1、5、13、17、30、34として、ClO3-及び/またはCl-の含有量が1.0質量%の薬液が示されており、課題を解決できる実施例が複数記載されている。
したがって、本件発明1、2、17及び請求項1、2、17の記載を引用する本件発明3~16、18~21は、発明の詳細な説明に記載したものであり、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に掲げる要件に適合するものである。
(3)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について
ア 申立人は、「3 申立ての理由」の「(4)エ(ウ)」において、「一方、上記(ア)について、仮に、「実際に・・・」場合について検討する。・・・どのように薬液を調製し、調整後いずれの時点で分析を行えばこれらの薬液を得られるのか、当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明が記載されていない。」と主張する。(特許異議申立書42ページを参照。)
イ(ア)しかしながら、本件特許明細書の【0024】には、「薬液中の特定アニオン及び後述する特定カチオンの含有量は、イオンクロマトグラフ法で求められる。具体的な装置としては、例えば、サーモフィッシャー社のDionex ICS-2100が挙げられる。また、原料の組成が既知である場合、特定アニオンの含有量を計算して求めてもよい。」と記載されている。
また、同【0097】には、「[薬液の調製]次亜塩素酸類を所定の濃度で含有する水溶液(混合液)を調製した後、更に、特定アニオンの供給源、及び、pH調整剤を添加して、下記表1に示す配合の薬液を調製した。以下に、薬液の調製に用いた次亜塩素酸類、特定アニオン及び/又は特定カチオンの供給源として使用された化合物、並びに、pH調整剤を示す。薬液の調製に用いた原料はいずれも、半導体グレードの高純度原料であった。」と記載されている。
また、同【0101】、【0107】から、【0108】には、特定アニオンの供給源の含有量及び特定アニオンの含有量等を示す表1が示されている。
(イ)一方、上記2(1)イ(ア)bで、相違点2A、2Bについて検討したように、「本件発明1において、「ClO3-の含有量、及び、Cl-の含有量」は、「基板上のRu含有物を除去するために用いられる薬液」が含有する「ClO3-、及び、Cl-」の濃度であるから、Ru含有物を除去する際の薬液の濃度であると考えるのが当然であり」、また、上記2(2)イ(ア)bで、相違点2C、2Dについて検討したように、「本件発明2において、「前記薬液が1種の特定アニオンを含有する場合」の「前記1種の特定アニオンの含有量」は、「基板上のRu含有物を除去するために用いられる薬液」が含有する「塩素酸イオン(ClO3-)、及び、Cl-からなる群から選択される1種以上の特定アニオン」の濃度であり、「前記薬液が2種の特定アニオンを含有する場合」の「前記2種の特定アニオンの含有量」と「前記2種の特定アニオンのうちの少なくとも1種の含有量」も、「基板上のRu含有物を除去するために用いられる薬液」が含有する「塩素酸イオン(ClO3-)、及び、Cl-からなる群から選択される1種以上の特定アニオン」の濃度であるから、Ru含有物をエッチングする際の薬液の濃度であると考えるのが当然であ」る。
したがって、薬液を上記【0097】の記載のように調製し、薬液を用いて、Ru含有物を除去する際ないしエッチングする際に、上記【0024】に記載された装置を使用することにより、「薬液中の特定アニオン及び後述する特定カチオンの含有量」を求めることができるから、発明の詳細な説明の記載は、どのように薬液を調製し、調整後いずれの時点で分析を行えばこれらの薬液を得られるのか、当業者がその実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
よって、本件の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に掲げる要件に適合するものである。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~21に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701390