特許異議申立
2023-701374
紙用耐油剤
- 審判番号
- 2023-701374
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-522830
- 登録番号
- 7299526
- 請求日
- 2023年12月26日
- 審決日
- 2024年12月19日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】川本 真由美
- 【権利者代理人】式見 真行
- 【権利者代理人】畠中 省伍
- 【異議申立人】門脇 俊雄
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 神山 茂樹
- 分類
- P1651.113-YAA(D21H) / P1651.121-YAA(D21H) / P1651.537-YAA(D21H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7299526号発明「紙用耐油剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7299526号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~19〕について訂正することを認める。
特許第7299526号の請求項2~19に係る特許を維持する。
特許第7299526号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7299526号(以下「本件特許」という。)の請求項1~19に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)5月27日(優先権主張 令和元年5月28日)を国際出願日とする出願であって、令和5年6月20日にその特許権の設定登録がされ、令和5年6月28日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年12月26日 :特許異議申立人門脇俊雄(以下「申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て
令和6年 3月 6日付け:取消理由通知書
令和6年 5月 9日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 6月20日 :申立人による意見書の提出
令和6年 8月 7日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和6年10月 8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和6年11月20日 :申立人による意見書の提出
令和6年5月9日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求
1 訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7299526号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~19について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項2に記載された、
「非フッ素重合体(1)が、アクリル系重合体である請求項1に記載の紙用耐油剤。」を独立形式に改め、
「(1)アクリル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリエーテル系重合体、シリコーン系重合体、およびウレタン系重合体から選択される非フッ素重合体、および
(2)無機粒子または有機粒子から選択された少なくとも1種の粒子、
を含んでなる、内添処理により紙の内部に添加される紙用耐油剤であって、
粒子(2)の量が、非フッ素重合体(1)と粒子(2)の合計重量に対して、50~99.9重量%であり、
非フッ素重合体は、R1mM(OR2)n-mで表されるオルガノアルコキシ金属1種以上(式中、Mは金属元素、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<lの整数、R1は炭素数1~10個の炭素主鎖1種以上で構成され、エポキシ基、或いはエポキシシクロヘキシル基を1個以上その構造中に含む。R2は炭素数1~3の低級アルキル基を示す。)と、R3mM(OR4)n-mで表されるオルガノアルコキシ金属1種以上(式中、Mは金属元素、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<lの整数、R3は炭素数1~10個の炭素主鎖1種以上よりなり、炭素主鎖間または末端のいずれか1方もしくは双方にエポキシ基と反応して加水分解縮合反応により開環重合させる基を1個以上その構造中に含む。R4は炭素数1~3の低級アルキル基を示す。)とで構成されたオルガノポリ酸化金属、を含まず、
非フッ素重合体が、長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、式:
CH2=C(-X1)-C(=O)-Y1(R1)k
[式中、R1は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X1は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y1は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基(但し、炭化水素基を除く)であり、
kは1~3である。]
で示される単量体であり、
下記の[1]~[3]の一以上を満たし、
非フッ素重合体(1)が、アクリル系重合体である紙用耐油剤。
[1]長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)において、長鎖炭化水素基の炭素数が18以上である。
[2]長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、
(a1)式:
CH2=C(-X4)-C(=O)-Y2-R2
[式中、R2は、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X4は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y2は、-O-または-NH-である。]
で示されるアクリル単量体、および/または
(a2)式:
CH2=C(-X5)-C(=O)-Y3-Z(-Y4-R3)n
[式中、R3は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X5は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y3は、-O-または-NH-であり、
Y4は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示されるアクリル単量体である。
[3]非フッ素重合体が、親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
親水性基を有するアクリル単量体(b)が、式:
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-X3 (b1)、
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-C(=O)CX2=CH2 (b2)、または
CH2=CX2C(=O)-NH-(RO)n-X3 (b3)
[式中、X2は、水素原子またはメチル基、
X3は、水素原子または炭素数1~22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、各々独立に炭素数2~6のアルキレン基、nは、1~90の整数である。]
で表わされる少なくとも1つのオキシアルキレン(メタ)アクリレートである。」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11~19も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項3に記載された、
「非フッ素重合体が、長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、式:
CH2=C(-X1)-C(=O)-Y1(R1)k
[式中、R1は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X1は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y1は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基(但し、炭化水素基を除く)であり、
kは1~3である。]
で示される単量体である請求項1または2に記載の紙用耐油剤。」のうち請求項1を引用するものを独立形式に改め、
「(1)アクリル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリエーテル系重合体、シリコーン系重合体、およびウレタン系重合体から選択される非フッ素重合体、および
(2)無機粒子または有機粒子から選択された少なくとも1種の粒子、
を含んでなる、内添処理により紙の内部に添加される紙用耐油剤であって、
粒子(2)の量が、非フッ素重合体(1)と粒子(2)の合計重量に対して、50~99.9重量%であり、
非フッ素重合体は、R1mM(OR2)n-mで表されるオルガノアルコキシ金属1種以上(式中、Mは金属元素、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<lの整数、R1は炭素数1~10個の炭素主鎖1種以上で構成され、エポキシ基、或いはエポキシシクロヘキシル基を1個以上その構造中に含む。R2は炭素数1~3の低級アルキル基を示す。)と、R3mM(OR4)n-mで表されるオルガノアルコキシ金属1種以上(式中、Mは金属元素、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<lの整数、R3は炭素数1~10個の炭素主鎖1種以上よりなり、炭素主鎖間または末端のいずれか1方もしくは双方にエポキシ基と反応して加水分解縮合反応により開環重合させる基を1個以上その構造中に含む。R4は炭素数1~3の低級アルキル基を示す。)とで構成されたオルガノポリ酸化金属、を含まず、
非フッ素重合体が、長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、式:
CH2=C(-X1)-C(=O)-Y1(R1)k
[式中、R1は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X1は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y1は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基(但し、炭化水素基を除く)であり、
kは1~3である。]
で示される単量体であり、
下記の[1]~[3]の一以上を満たす紙用耐油剤。
[1]長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)において、長鎖炭化水素基の炭素数が18以上である。
[2]長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、
(a1)式:
CH2=C(-X4)-C(=O)-Y2-R2
[式中、R2は、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X4は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y2は、-O-または-NH-である。]
で示されるアクリル単量体、および/または
(a2)式:
CH2=C(-X5)-C(=O)-Y3-Z(-Y4-R3)n
[式中、R3は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X5は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y3は、-O-または-NH-であり、
Y4は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示されるアクリル単量体である。
[3]非フッ素重合体が、親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
親水性基を有するアクリル単量体(b)が、式:
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-X3 (b1)、
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-C(=O)CX2=CH2 (b2)、または
CH2=CX2C(=O)-NH-(RO)n-X3 (b3)
[式中、X2は、水素原子またはメチル基、
X3は、水素原子または炭素数1~22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、各々独立に炭素数2~6のアルキレン基、nは、1~90の整数である。]
で表わされる少なくとも1つのオキシアルキレン(メタ)アクリレートである。」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~19も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項7の冒頭に、「非フッ素重合体が、親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、」を加える(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8~19も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項11に記載された「請求項1~10のいずれかに記載の紙用耐油剤」を、「請求項2~10のいずれかに記載の紙用耐油剤」に訂正する(請求項11の記載を直接的又は間接的に引用する請求項12~19も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項12に記載された「請求項1~11のいずれかに記載の紙用耐油剤」を、「請求項2~11のいずれかに記載の紙用耐油剤」に訂正する(請求項12の記載を直接的又は間接的に引用する請求項13~19も同様に訂正する)。
(7)訂正事項7
本件訂正前の請求項13に記載された「請求項1~12のいずれかに記載の紙用耐油剤」を、「請求項2~12のいずれかに記載の紙用耐油剤」に訂正する(請求項13の記載を直接的又は間接的に引用する請求項14~19も同様に訂正する)。
(8)訂正事項8
本件訂正前の請求項14に記載された「請求項1~13のいずれかに記載の紙用耐油剤」を、「請求項2~13のいずれかに記載の紙用耐油剤」に訂正する(請求項14の記載を直接的又は間接的に引用する請求項15~19も同様に訂正する)。
(9)訂正事項9
本件訂正前の請求項15に記載された「請求項1~14のいずれかに記載の紙用耐油剤」を、「請求項2~14のいずれかに記載の紙用耐油剤」に訂正する(請求項15の記載を直接的又は間接的に引用する請求項16~19も同様に訂正する)。
(10)訂正事項10
本件訂正前の請求項16に記載された「請求項1~15のいずれかに記載の紙用耐油剤」を、「請求項2~15のいずれかに記載の紙用耐油剤」に訂正する(請求項16の記載を直接的又は間接的に引用する請求項17~19も同様に訂正する)。
(11)訂正事項11
本件訂正前の請求項19に記載された「請求項1~15のいずれかに記載の耐油剤」を、「請求項2~15のいずれかに記載の耐油剤」に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~19は、請求項2~19が本件訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~19〕について請求されている。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否について
本件訂正前の請求項1を引用する請求項2について、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改め、本件訂正前の請求項2の「非フッ素重合体」及び「アクリル単量体(a)」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
イ 新規事項の有無について
訂正事項2において、「非フッ素重合体」について、「非フッ素重合体は、R1mM(OR2)n-mで表されるオルガノアルコキシ金属1種以上(式中、Mは金属元素、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<lの整数、R1は炭素数1~10個の炭素主鎖1種以上で構成され、エポキシ基、或いはエポキシシクロヘキシル基を1個以上その構造中に含む。R2は炭素数1~3の低級アルキル基を示す。)と、R3mM(OR4)n-mで表されるオルガノアルコキシ金属1種以上(式中、Mは金属元素、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<lの整数、R3は炭素数1~10個の炭素主鎖1種以上よりなり、炭素主鎖間または末端のいずれか1方もしくは双方にエポキシ基と反応して加水分解縮合反応により開環重合させる基を1個以上その構造中に含む。R4は炭素数1~3の低級アルキル基を示す。)とで構成されたオルガノポリ酸化金属、を含まず」とすることにより、本件訂正前の請求項2の非フッ素重合体について特定の態様のものを除外するものであるから新たな技術的事項を導入するものではなく、新規事項の追加に該当しない。
訂正事項2において、「非フッ素重合体」について、「非フッ素重合体が、長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、式:
CH2=C(-X1)-C(=O)-Y1(R1)k
[式中、R1は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X1は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y1は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基(但し、炭化水素基を除く)であり、
kは1~3である。]
で示される単量体であり、」とすることは、本件特許の特許請求の範囲の【請求項3】、明細書の【0006】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項2において、「[1]長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)において、長鎖炭化水素基の炭素数が18以上である。
[2]長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、
(a1)式:
CH2=C(-X4)-C(=O)-Y2-R2
[式中、R2は、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X4は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y2は、-O-または-NH-である。]
で示されるアクリル単量体、および/または
(a2)式:
CH2=C(-X5)-C(=O)-Y3-Z(-Y4-R3)n
[式中、R3は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X5は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y3は、-O-または-NH-であり、
Y4は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示されるアクリル単量体である。
[3]非フッ素重合体が、親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
親水性基を有するアクリル単量体(b)が、式:
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-X3 (b1)、
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-C(=O)CX2=CH2 (b2)、または
CH2=CX2C(=O)-NH-(RO)n-X3 (b3)
[式中、X2は、水素原子またはメチル基、
X3は、水素原子または炭素数1~22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、各々独立に炭素数2~6のアルキレン基、nは、1~90の整数である。]
で表わされる少なくとも1つのオキシアルキレン(メタ)アクリレートである。」の「[1]~[3]の一以上を満たし、」とすることは、本件特許の特許請求の範囲の【請求項5】~【請求項7】、明細書の【0007】、【0008】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否について
本件訂正前の請求項1または2を引用する請求項3のうち請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改め、本件訂正前の請求項3の「非フッ素重合体」及び「アクリル単量体(a)」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
イ 新規事項の有無について
訂正事項3において、「非フッ素重合体」について、「非フッ素重合体は、R1mM(OR2)n-mで表されるオルガノアルコキシ金属1種以上(式中、Mは金属元素、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<lの整数、R1は炭素数1~10個の炭素主鎖1種以上で構成され、エポキシ基、或いはエポキシシクロヘキシル基を1個以上その構造中に含む。R2は炭素数1~3の低級アルキル基を示す。)と、R3mM(OR4)n-mで表されるオルガノアルコキシ金属1種以上(式中、Mは金属元素、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<lの整数、R3は炭素数1~10個の炭素主鎖1種以上よりなり、炭素主鎖間または末端のいずれか1方もしくは双方にエポキシ基と反応して加水分解縮合反応により開環重合させる基を1個以上その構造中に含む。R4は炭素数1~3の低級アルキル基を示す。)とで構成されたオルガノポリ酸化金属、を含まず」とすることにより、新たな技術的事項を導入するものではなく、新規事項の追加に該当しない。
訂正事項3において、「[1]長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)において、長鎖炭化水素基の炭素数が18以上である。
[2]長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、
(a1)式:
CH2=C(-X4)-C(=O)-Y2-R2
[式中、R2は、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X4は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y2は、-O-または-NH-である。]
で示されるアクリル単量体、および/または
(a2)式:
CH2=C(-X5)-C(=O)-Y3-Z(-Y4-R3)n
[式中、R3は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X5は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y3は、-O-または-NH-であり、
Y4は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示されるアクリル単量体である。
[3]非フッ素重合体が、親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
親水性基を有するアクリル単量体(b)が、式:
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-X3 (b1)、
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-C(=O)CX2=CH2 (b2)、または
CH2=CX2C(=O)-NH-(RO)n-X3 (b3)
[式中、X2は、水素原子またはメチル基、
X3は、水素原子または炭素数1~22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、各々独立に炭素数2~6のアルキレン基、nは、1~90の整数である。]
で表わされる少なくとも1つのオキシアルキレン(メタ)アクリレートである。」の「[1]~[3]の一以上を満たし、」とすることは、本件特許の特許請求の範囲の【請求項5】~【請求項7】、明細書の【0007】、【0008】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項7の「非フッ素重合体」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項4は、本件特許の明細書の【0017】、【0052】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項7に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5~11について
訂正事項5~11は、本件訂正前の請求項11~16、19について、訂正事項1によって請求項1が削除されたことに伴い、引用する請求項の数を減少させ、また、訂正事項1によって削除された請求項1を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項5~11は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 本件訂正の適否のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~19〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正請求が認められたことから、本件特許の請求項2~19に係る発明(以下「本件発明2」等という。また、本件発明2~19を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2~19に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項2~19の記載は、次のとおりである。
【請求項2】
(1)アクリル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリエーテル系重合体、シリコーン系重合体、およびウレタン系重合体から選択される非フッ素重合体、および
(2)無機粒子または有機粒子から選択された少なくとも1種の粒子、
を含んでなる、内添処理により紙の内部に添加される紙用耐油剤であって、
粒子(2)の量が、非フッ素重合体(1)と粒子(2)の合計重量に対して、50~99.9重量%であり、
非フッ素重合体は、R1mM(OR2)n-mで表されるオルガノアルコキシ金属1種以上(式中、Mは金属元素、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<lの整数、R1は炭素数1~10個の炭素主鎖1種以上で構成され、エポキシ基、或いはエポキシシクロヘキシル基を1個以上その構造中に含む。R2は炭素数1~3の低級アルキル基を示す。)と、R3mM(OR4)n-mで表されるオルガノアルコキシ金属1種以上(式中、Mは金属元素、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<lの整数、R3は炭素数1~10個の炭素主鎖1種以上よりなり、炭素主鎖間または末端のいずれか1方もしくは双方にエポキシ基と反応して加水分解縮合反応により開環重合させる基を1個以上その構造中に含む。R4は炭素数1~3の低級アルキル基を示す。)とで構成されたオルガノポリ酸化金属、を含まず、
非フッ素重合体が、長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、式:
CH2=C(-X1)-C(=O)-Y1(R1)k
[式中、R1は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X1は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y1は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基(但し、炭化水素基を除く)であり、
kは1~3である。]
で示される単量体であり、
下記の[1]~[3]の一以上を満たし、
非フッ素重合体(1)が、アクリル系重合体である紙用耐油剤。
[1]長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)において、長鎖炭化水素基の炭素数が18以上である。
[2]長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、
(a1)式:
CH2=C(-X4)-C(=O)-Y2-R2
[式中、R2は、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X4は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y2は、-O-または-NH-である。]
で示されるアクリル単量体、および/または
(a2)式:
CH2=C(-X5)-C(=O)-Y3-Z(-Y4-R3)n
[式中、R3は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X5は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y3は、-O-または-NH-であり、
Y4は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示されるアクリル単量体である。
[3]非フッ素重合体が、親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
親水性基を有するアクリル単量体(b)が、式:
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-X3 (b1)、
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-C(=O)CX2=CH2 (b2)、または
CH2=CX2C(=O)-NH-(RO)n-X3 (b3)
[式中、X2は、水素原子またはメチル基、
X3は、水素原子または炭素数1~22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、各々独立に炭素数2~6のアルキレン基、nは、1~90の整数である。]
で表わされる少なくとも1つのオキシアルキレン(メタ)アクリレートである。
【請求項3】
(1)アクリル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリエーテル系重合体、シリコーン系重合体、およびウレタン系重合体から選択される非フッ素重合体、および
(2)無機粒子または有機粒子から選択された少なくとも1種の粒子、
を含んでなる、内添処理により紙の内部に添加される紙用耐油剤であって、
粒子(2)の量が、非フッ素重合体(1)と粒子(2)の合計重量に対して、50~99.9重量%であり、
非フッ素重合体は、R1mM(OR2)n-mで表されるオルガノアルコキシ金属1種以上(式中、Mは金属元素、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<lの整数、R1は炭素数1~10個の炭素主鎖1種以上で構成され、エポキシ基、或いはエポキシシクロヘキシル基を1個以上その構造中に含む。R2は炭素数1~3の低級アルキル基を示す。)と、R3mM(OR4)n-mで表されるオルガノアルコキシ金属1種以上(式中、Mは金属元素、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<lの整数、R3は炭素数1~10個の炭素主鎖1種以上よりなり、炭素主鎖間または末端のいずれか1方もしくは双方にエポキシ基と反応して加水分解縮合反応により開環重合させる基を1個以上その構造中に含む。R4は炭素数1~3の低級アルキル基を示す。)とで構成されたオルガノポリ酸化金属、を含まず、
非フッ素重合体が、長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、式:
CH2=C(-X1)-C(=O)-Y1(R1)k
[式中、R1は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X1は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y1は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基(但し、炭化水素基を除く)であり、
kは1~3である。]
で示される単量体であり、
下記の[1]~[3]の一以上を満たす紙用耐油剤。
[1]長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)において、長鎖炭化水素基の炭素数が18以上である。
[2]長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、
(a1)式:
CH2=C(-X4)-C(=O)-Y2-R2
[式中、R2は、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X4は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y2は、-O-または-NH-である。]
で示されるアクリル単量体、および/または
(a2)式:
CH2=C(-X5)-C(=O)-Y3-Z(-Y4-R3)n
[式中、R3は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X5は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y3は、-O-または-NH-であり、
Y4は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示されるアクリル単量体である。
[3]非フッ素重合体が、親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
親水性基を有するアクリル単量体(b)が、式:
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-X3 (b1)、
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-C(=O)CX2=CH2 (b2)、または
CH2=CX2C(=O)-NH-(RO)n-X3 (b3)
[式中、X2は、水素原子またはメチル基、
X3は、水素原子または炭素数1~22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、各々独立に炭素数2~6のアルキレン基、nは、1~90の整数である。]
で表わされる少なくとも1つのオキシアルキレン(メタ)アクリレートである。
【請求項4】
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)において、X1が水素原子またはメチル基である請求項3に記載の紙用耐油剤。
【請求項5】
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)において、長鎖炭化水素基の炭素数が18以上である請求項3または4のいずれかに記載の紙用耐油剤。
【請求項6】
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、
(a1)式:
CH2=C(-X4)-C(=O)-Y2-R2
[式中、R2は、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X4は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y2は、-O-または-NH-である。]
で示されるアクリル単量体、および/または
(a2)式:
CH2=C(-X5)-C(=O)-Y3-Z(-Y4-R3)n
[式中、R3は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X5は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y3は、-O-または-NH-であり、
Y4は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示されるアクリル単量体である請求項3に記載の紙用耐油剤。
【請求項7】
非フッ素重合体が、親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
親水性基を有するアクリル単量体(b)が、式:
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-X3 (b1)、
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-C(=O)CX2=CH2 (b2)、または
CH2=CX2C(=O)-NH-(RO)n-X3 (b3)
[式中、X2は、水素原子またはメチル基、
X3は、水素原子または炭素数1~22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、各々独立に炭素数2~6のアルキレン基、nは、1~90の整数である。]
で表わされる少なくとも1つのオキシアルキレン(メタ)アクリレートである、請求項3~6のいずれかに記載の紙用耐油剤。
【請求項8】
非フッ素重合体が
単量体(a)および(b)以外の、オレフィン性炭素-炭素二重結合、およびアニオン供与基またはカチオン供与基を有する単量体(c)から形成される繰り返し単位
をさらに含む請求項3~7のいずれかに記載の紙用耐油剤。
【請求項9】
アニオン供与基がカルボキシル基、またはカチオン供与基がアミノ基である請求項8に記載の紙用耐油剤。
【請求項10】
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)から形成される繰り返し単位の量が、共重合体に対して30~90重量%であり、親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成される繰り返し単位の量が、共重合体に対して5~70重量%である請求項3~9のいずれかに記載の紙用耐油剤。
【請求項11】
無機粒子が、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、マイカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、ベントナイト、ホワイトカーボンから選択された少なくとも1種以上からできており、
有機粒子が、多糖類、熱可塑性樹脂から選択された少なくとも1種からできている請求項2~10のいずれかに記載の紙用耐油剤。
【請求項12】
有機粒子が40℃で水に不溶性である請求項2~11のいずれかに記載の紙用耐油剤。
【請求項13】
無機粒子が炭酸カルシウムであり、有機粒子がスターチである請求項2~12のいずれかに記載の紙用耐油剤。
【請求項14】
粒子(2)が有機粒子を含んでなる請求項2~13のいずれかに記載の紙用耐油剤。
【請求項15】
紙用耐油剤が水または水と有機溶媒の混合物である液状媒体をさらに含んでなる請求項2~14のいずれかに記載の紙用耐油剤。
【請求項16】
請求項2~15のいずれかに記載の紙用耐油剤を紙の内部に含む耐油紙。
【請求項17】
パルプモールド製品である請求項16に記載の耐油紙。
【請求項18】
食品包装材または食品容器である請求項16または17に記載の耐油紙。
【請求項19】
パルプが水性媒体中に分散したスラリーに、請求項2~15のいずれかに記載の耐油剤を添加して調合パルプスラリーを調製し、耐油紙中間体を抄造し、脱水し、その後、乾燥させて耐油紙を得ることを含む耐油紙の製造方法。
第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~4、8~19に係る特許に対して、当審が通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由2(進歩性)
本件特許の請求項1、12、14~16、19に係る発明は、下記甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、12、14~16、19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)取消理由3(新規性、進歩性)
本件特許の請求項2、11~16に係る発明は、下記甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項2、11~16に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
本件特許の請求項1~4、8~16、18、19に係る発明は、下記甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4、8~16、18、19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)取消理由4(明確性)
請求項10の「親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成される繰り返し単位の量が、共重合体に対して5~70重量%である」の記載における「親水性基を有するアクリル単量体(b)」が請求項7~9に記載された「親水性基を有するアクリル単量体(b)」を指すのか、それ以外の「親水性基を有するアクリル単量体(b)」を指すのかが不明であるから、本件特許の請求項10~12、14~19に係る発明は明確でない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合しないため、請求項10~12、14~19に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
<引用文献等一覧>
甲2:特開2006-9197号公報(甲第2号証)
甲3:特開2009-242968号公報(甲第3号証)
2 取消理由2についての当審の判断
取消理由2は、本件訂正前の請求項1、12、14~16、19に係る発明を対象として通知したものであるところ、本件補正により、請求項1が削除され、請求項2~19が、取消理由2の対象としていない本件訂正前の請求項5~7のいずれかの発明特定事項を含むものとなった。
よって、取消理由2は解消した。
3 取消理由3についての当審の判断
取消理由3は、本件訂正前の請求項1~4、8~16、18、19に係る発明を対象として通知したものであるところ、本件補正により、請求項1が削除され、請求項2~19が、取消理由3の対象としていない本件訂正前の請求項5~7のいずれかの発明特定事項を含むものとなった。
よって、取消理由3は解消した。
4 取消理由4についての当審の判断
本件訂正後の独立請求項である請求項2、3、及び請求項3を直接又は間接的に引用する請求項7には、「非フッ素重合体が、親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であ」ると記載されており、請求項10に記載された「親水基を有するアクリル単量体(b)」が、請求項2、3、7に記載されたものであることは明らかであり、本件発明10~12、14~19は明確である。
よって、取消理由4は解消した。
第5 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
(1)申立理由1(新規性)
本件特許の請求項1、11、12、14~19に係る発明は、下記甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、11、12、14~19に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(新規性)
本件特許の請求項1、11、12、14~16、19に係る発明は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、11、12、14~16、19に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(3)申立理由3(新規性、進歩性)
本件特許の請求項1~4、6、8~16、19に係る発明は、甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4、6、8~16、19に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
本件特許の請求項1~19に係る発明は、甲3に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(4)申立理由4(進歩性)
本件特許の請求項1~9、11、14~19に係る発明は、下記甲4に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~9、11、14~19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(5)申立理由5(進歩性)
本件特許の請求項1に係る発明は、下記甲7に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(6)申立理由6(サポート要件)
本件特許の請求項1~19に係る発明は、次の点で発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しないため、請求項1~19に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 非フッ素重合体について
請求項1で特定される非フッ素重合体は、多種多様な非フッ素重合体を包含するものであるが、実施例に記載される合成例1及び2のアクリル系重合体以外のものを用いた場合に、耐油性や透気度等に優れた耐油紙を形成することができる紙用耐油剤を製造できることが明らかとはいえない。
イ 粒子(無機粒子、有機粒子)について
請求項1における「無機粒子または有機粒子から選択された少なくとも1種の粒子」について、実施例で使用されている炭酸カルシウムまたはカチオン化スターチ以外の粒子を用いて紙用耐油剤を調整した場合に、耐油性や透気度等に優れた耐油紙を形成することができる紙用耐油剤を製造できることが明らかとはいえない。
(7)申立理由7(明確性)
請求項1における「無機粒子または有機粒子から選択された少なくとも1種の粒子」の記載について、当該「粒子」がいかなる物質まで広がりを持つ概念であるのか判断することができないから、本件特許の請求項1~19に係る発明は明確でない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合しないため、請求項1~19に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
<引用文献等一覧>
甲1:特開2002-322313号公報(甲第1号証)
甲4:特開2004-25463号公報(甲第4号証)
甲5:特開2000-154493号公報(甲第5号証)
甲6:特開2004-19036号公報(甲第6号証)
甲7:特開昭51-23311号公報(甲第7号証)
甲8:特開平8-118554号公報(甲第8号証)
甲9:国際公開第2005/014930号(甲第9号証)
甲10:特開2018-188746号公報(甲第10号証)
2 申立理由1、申立理由2について
本件訂正により、本件発明2~19は、訂正前請求項5~7のいずれかの発明特定事項を有するものとなった。
申立理由1、申立理由2は、訂正前請求項5~7を対象としていないため、これら新規性についての理由は当たらないものとなった。
3 申立理由5について
本件訂正により、請求項1は削除された。
したがって、申立理由5が対象とする請求項は存在しないものとなった。
4 申立理由3について
(1)甲3に記載された発明等
ア 甲3の記載
甲3には、次の事項が記載されている。
「【背景技術】
・・・
【0004】
このような中性抄紙において、サイズ性(吸水抵抗性)を付与するために添加される内添サイズ剤は、通常、ロジンエステルや強化ロジンエステル等を用いた中性ロジンサイズ剤、ASA(アルケニルコハク酸無水物)、AKD(アルキルケテンダイマー)等が知られている。・・・」
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3~5のカチオン性サイズ剤は、填料として多量の炭酸カルシウムを使用した中性抄紙またはアルカリ抄紙においては、パルプ繊維への定着性や定着後の疎水化に改善の余地が大きく、充分に満足しうるサイズ効果が得られないのが現状であった。また、特許文献6のサイズ剤では、ロジン結合型カチオン性重合体の分子量が添加するロジン量の影響を受けやすいため、該重合体のパルプへの自己定着能、すなわちサイズ効果はロジン添加量によって左右されやすいという欠点があった。さらに、特許文献6のサイズ剤は、主鎖のポリマー中へのロジン導入量が少ない場合や未反応ロジンが残存した場合には、炭酸カルシウムと相互作用して疎水化に寄与するポリマー成分が少なくなり、サイズ効果の発現が不充分となる場合があった。また、特許文献3~6のサイズ剤を含め従来のカチオン性サイズ剤では、実際の抄造系内において存在する多種多様なアニオン性の物質、いわゆるアニオントラッシュとも相互作用する可能性があり、そのような場合、パルプ繊維への自己定着が阻害され、効果的にサイズ性を発現しにくくなるという問題も有している。特に、硫酸バンド添加量が少ない中性抄紙においては、アニオントラッシュ量が増加する傾向があるので、この問題がより顕著に現れることになる。
【0009】
また、界面活性剤系の嵩高剤を用いた場合は、嵩高剤は親水性が高いためか内添サイズ剤のサイズ効果を阻害する働きがある。また、嵩高剤と内添サイズ剤の組み合わせによって、そのサイズ性の立ち上がりが遅いため、抄紙直後のサイズ効果が劣るという欠点や、摩擦係数が低下するといった問題がある。さらに、嵩高剤の歩留が悪くなり十分な嵩が得られない場合もある。
そこで、本発明は、填料として炭酸カルシウムを使用し、硫酸バンドを使用しないか硫酸バンド使用量が少ない中性抄造においても、優れたサイズ性を付与できるとともに、サイズ性と嵩高性とを両立させた紙を提供することを目的とする。」
「【0016】
(単量体成分)
前記両イオン性共重合体は、疎水性モノマー(A)、カチオン性モノマー(B)、およびアニオン性モノマー(C)を必須とする単量体成分を重合して得られるものであることが好ましい。この両イオン性共重合体は、疎水性モノマー(A)に由来する疎水性基と、カチオン性モノマー(B)に由来するカチオン性基と、アニオン性モノマー(C)に由来するアニオン性基とを有するものである。
前記疎水性モノマー(A)としては、スチレン類、(メタ)アクリル酸のC1~C14アルキルエステル(炭素数1~14のアルキルのエステル)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、例えば(メタ)アクリロニトリル等も使用することができる。疎水性モノマー(A)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。なお、本明細書においては、「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸またはメタクリル酸の総称を意味するものである。同様に、「(メタ)アクリル」は「アクリル」または「メタクリル」を、「(メタ)アクリロ」は「アクリロ」または「メタクリロ」を、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」または「メタクリレート」を、「(メタ)アリル」は「アリル」または「メタリル」を、それぞれ意味する。
前記スチレン類としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルトルエン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
前記(メタ)アクリル酸のC1~C14アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの脂肪族炭化水素エステルのほか、脂環系や芳香族系の炭化水素基を含有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが好ましい。」
「【0019】
前記単量体成分においては、前記アニオン性モノマー(C)のアニオン当量が前記カチオン性モノマー(B)のカチオン当量の0.1~90%であることが好ましく、より好ましくは5~50%、さらに好ましくは5~20%であるのがよい。つまり、前記単量体成分を重合してなる前記両イオン性共重合体は、カチオン当量が多く、アニオン当量の少ない方がサイズ効果を発現し易いのである。カチオン当量がアニオン当量と近似した値もしくは同じ値であるか、カチオン当量がアニオン当量よりも小さい場合(具体的には、カチオン当量に対するアニオン当量の比率(百分率)が90%を超える場合)、共重合体のアニオン部位とカチオン部位とがイオン的に強く相互作用し過ぎることにより活性なイオン基が減少する。その結果、パルプ繊維へのカチオンの定着作用を低下させたり、疎水部位と親水部位の配向バランスが悪くなったりする等の要因から、効率良くサイズ性を発現しにくくなる傾向がある。
従って、前記単量体成分におけるカチオン当量に対するアニオン当量の比率と同様、単量体成分を重合してなる両イオン性共重合体におけるカチオン当量に対するアニオン当量の比率も、前記と同じ範囲であることが好ましい。例えば、単量体成分の重合がビニル結合によりなされるよう単量体成分を選択した場合など、重合にカチオン性基およびアニオン性基が関与しない場合には、両イオン性共重合体におけるカチオン当量に対するアニオン当量の比率は、単量体成分におけるカチオン当量に対するアニオン当量の比率と一致することとなる。
前記単量体成分における各必須モノマーの含有割合は、カチオン性モノマー(B)のカチオン当量に対するアニオン性モノマー(C)のアニオン当量の比率が前述した範囲になるように設定することが望ましく、それ以外の点では特に制限はない。例えば、単量体成分全量に対して、疎水性モノマー(A)は60~90重量%程度、カチオン性モノマー(B)は10~40重量%程度、アニオン性モノマー(C)は1~10重量%程度であることが好ましい。」
「【0029】
(填料)
前記パルプスラリーには填料を配合してもよい。填料としては、酸性抄紙あるいは中性抄紙において一般に使用されている填料であればよく、特に限定されるものではない。例えば、中性抄紙では、クレー、シリカ、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料が単独でまたは適宜2種類以上を組み合わせて使用される。また、製紙スラッジや脱墨フロス等を原料とした再生填料も使用することができる。本発明では、本発明における両イオン性共重合体が炭酸カルシウムへの作用に優れていること、炭酸カルシウムが安価であり且つ光学特性に優れていることから、炭酸カルシウムを使用することが好ましい。炭酸カルシウムとしては、炭酸カルシウム-シリカ複合物(特開2003-212539号公報あるいは特開2005-219945号公報等に記載の軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物)も使用可能である。また酸性抄紙では、前記中性抄紙で使用する填料から、酸溶解性のものを除いた填料が使用され、その単独または適宜2種類以上を組み合わせて使用される。填料の配合量としては、不透明度等の点から、パルプ重量に対して2~30重量%が好ましい。」
「【実施例】
【0035】
以下に、本発明の実施例を示す。供試した製紙用内添サイズ剤および嵩高剤の型を下記に示す。また、紙質測定方法は下記の通りである。なお、特にことわらない限り、部および%は重量部および重量%を示す。
<内添サイズ剤>
・合成例1、2:両イオン性共重合体系サイズ剤
・・・
<嵩高剤>
・嵩高剤A:高級アルコール系(ラウリル酸アルコールプロピレンオキサイド)
・・・
【0036】
<紙質の測定>
・密度:JIS P 8118に準拠して測定した。
・ステキヒトサイズ度:JIS P 8122に準拠して測定した。
【0037】
<内添サイズ剤の製造>
(1)合成例1
スチレン30重量部、ブチルアクリレート50重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート15重量部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド3重量部、メタクリル酸1重量部、イタコン酸1重量部からなる単量体成分と、連鎖移動剤としてt-ドデシルメルカプタン2重量部と、溶媒としてメチルイソブチルケトン50重量部とを4つ口フラスコに入れ、85℃まで加熱した後、開始剤としてベンゾイルパーオキサイド2.5重量部を加え、次いで90℃で3時間重合させた。次に、水300重量部および90%酢酸水7.7重量部を加えて水溶化した後、加熱蒸留してメチルイソブチルケトンを留去させた。その後、85℃で4級化剤としてエピクロルヒドリン8.5重量部を添加して同温度で3時間反応させた。このとき、反応後の反応液は完全に水溶化していた。次いで、冷却し、水で希釈して、疎水性基を有する両イオン性共重合体(重量平均分子量260,000)を含む固形分20重量%の水溶液を得た。
なお、共重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより下記の条件で測定した。(合成例2も同じ。)
カラム:昭和電工(株)製「AsahipakGF-7M HQ」、「Asahipak GF-310 HQ」
機器:昭和電工(株)製「GPC SYSTEM-21H」
・・・
【0039】
<紙の製造>
[実施例1]
LBKP(ろ水度CSF450ml)に対し、嵩高剤を対パルプ当たり1.0固形分重量%、カチオン化デンプンを対パルプ当たり0.5固形分重量%、硫酸バンドを対パルプ当たり1.0固形分重量%、重質炭酸カルシウムを12固形分重量%、サイズ剤(I)として上記の合成例1で得られた両イオン性共重合体系サイズ剤を対パルプ当たり0.6固形分重量%、嵩高剤Aを対パルプ当たり1.0固形分重量%、歩留剤を対パルプ当たり0.01固形分重量%となるように添加して紙料を調製しJISP 8209に準拠して紙を得た。その後、この紙の密度、ステキヒトサイズ度、接触角を測定した。紙質結果等を表1に示す。」
イ 甲3に記載された発明
上記アによると、甲3には、特に実施例1に着目すると、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
「スチレン30重量部、ブチルアクリレート50重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート15重量部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド3重量部、メタクリル酸1重量部、イタコン酸1重量部からなる単量体成分と、連鎖移動剤としてt-ドデシルメルカプタン2重量部と、溶媒としてメチルイソブチルケトン50重量部とを4つ口フラスコに入れ、85℃まで加熱した後、開始剤としてベンゾイルパーオキサイド2.5重量部を加え、次いで90℃で3時間重合させ、次に、水300重量部および90%酢酸水7.7重量部を加えて水溶化した後、加熱蒸留してメチルイソブチルケトンを留去させ、その後、85℃で4級化剤としてエピクロルヒドリン8.5重量部を添加して同温度で3時間反応させ、次いで、冷却し、水で希釈して、疎水性基を有する両イオン性重合体を得て、
LBKP(ろ水度CSF450ml)に対し、嵩高剤を対パルプ当たり1.0固形分重量%、カチオン化デンプンを対パルプ当たり0.5固形分重量%、硫酸バンドを対パルプ当たり1.0固形分重量%、重質炭酸カルシウムを12固形分重量%、サイズ剤(I)として上記両イオン性共重合体系サイズ剤を対パルプ当たり0.6固形分重量%、嵩高剤Aを対パルプ当たり1.0固形分重量%、歩留剤を対パルプ当たり0.01固形分重量%となるように添加した紙料。」
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「カチオン化デンプン」及び「重質炭酸カルシウム」は本件発明2の「無機粒子または有機粒子から選択された少なくとも1種の粒子」に相当する。
甲3発明の「スチレン30重量部、ブチルアクリレート50重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート15重量部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド3重量部、メタクリル酸1重量部、イタコン酸1重量部からなる単量体成分」を「重合させ」た「疎水性基を有する両イオン性重合体」は、本件発明2の「アクリル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリエーテル系重合体、シリコーン系重合体、およびウレタン系重合体から選択され」、「アクリル系重合体である」「非フッ素重合体」に相当する。
甲3発明における「カチオン化デンプン」と「重質炭酸カルシウム」と「両イオン性重合体」とは、「LBKP」に添加されるものであるから、これらを合わせたものと、本件発明2の「内添処理により紙の内部に添加される」「紙用耐油剤」とは、内添処理により紙の内部に添加される紙用剤の限りで一致する。
そうすると、本件発明2と甲3発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点3-1]
「(1)アクリル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリエーテル系重合体、シリコーン系重合体、およびウレタン系重合体から選択される非フッ素重合体、および
(2)無機粒子または有機粒子から選択された少なくとも1種の粒子、
を含んでなる、内添処理により紙の内部に添加される紙用剤であって、
非フッ素重合体(1)が、アクリル系重合体である紙用耐油剤。」
[相違点3-1]
内添処理により紙の内部に添加される紙用剤に関して、本件発明2は、「内添処理により紙の内部に添加される」「紙用耐油剤」であるのに対して、甲3発明は、「カチオン化デンプン」と「重質炭酸カルシウム」と「両イオン性重合体」とを合わせたものである点。
[相違点3-2]
本件発明2は「粒子(2)の量が、非フッ素重合体(1)と粒子(2)の合計重量に対して、50~99.9重量%である」のに対して、甲3発明は「カチオン化デンプンを対パルプ当たり0.5固形分重量%」、「重質炭酸カルシウムを12固形分重量%、サイズ剤(I)として上記両イオン性共重合体系サイズ剤を対パルプ当たり0.6固形分重量%」である点。
[相違点3-3]
非フッ素重合体について、本件発明2は、「非フッ素重合体は、R1mM(OR2)n-mで表されるオルガノアルコキシ金属1種以上(式中、Mは金属元素、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<lの整数、R1は炭素数1~10個の炭素主鎖1種以上で構成され、エポキシ基、或いはエポキシシクロヘキシル基を1個以上その構造中に含む。R2は炭素数1~3の低級アルキル基を示す。)と、R3mM(OR4)n-mで表されるオルガノアルコキシ金属1種以上(式中、Mは金属元素、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<lの整数、R3は炭素数1~10個の炭素主鎖1種以上よりなり、炭素主鎖間または末端のいずれか1方もしくは双方にエポキシ基と反応して加水分解縮合反応により開環重合させる基を1個以上その構造中に含む。R4は炭素数1~3の低級アルキル基を示す。)とで構成されたオルガノポリ酸化金属、を含ま」ないのに対して、甲3発明は、「スチレン30重量部、ブチルアクリレート50重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート15重量部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド3重量部、メタクリル酸1重量部、イタコン酸1重量部からなる単量体成分を反応させて」得た「疎水性基を有する両イオン性重合体」であって、そのようなものであるか不明である点。
[相違点3-4]
「非フッ素重合体」について、本件発明2は、「非フッ素重合体が、長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、式:
CH2=C(-X1)-C(=O)-Y1(R1)k
[式中、R1は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X1は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y1は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基(但し、炭化水素基を除く)であり、
kは1~3である。]
で示される単量体であり」、
「[1]長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)において、長鎖炭化水素基の炭素数が18以上である。
[2]長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、
(a1)式:
CH2=C(-X4)-C(=O)-Y2-R2
[式中、R2は、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X4は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y2は、-O-または-NH-である。]
で示されるアクリル単量体、および/または
(a2)式:
CH2=C(-X5)-C(=O)-Y3-Z(-Y4-R3)n
[式中、R3は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X5は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y3は、-O-または-NH-であり、
Y4は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示されるアクリル単量体である。
[3]非フッ素重合体が、親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
親水性基を有するアクリル単量体(b)が、式:
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-X3 (b1)、
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-C(=O)CX2=CH2 (b2)、または
CH2=CX2C(=O)-NH-(RO)n-X3 (b3)
[式中、X2は、水素原子またはメチル基、
X3は、水素原子または炭素数1~22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、各々独立に炭素数2~6のアルキレン基、nは、1~90の整数である。]
で表わされる少なくとも1つのオキシアルキレン(メタ)アクリレートである。」の「[1]~[3]の一以上を満た」すのに対して、
甲3発明は、「スチレン30重量部、ブチルアクリレート50重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート15重量部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド3重量部、メタクリル酸1重量部、イタコン酸1重量部からなる単量体成分」を「重合させ」た「疎水性基を有する両イオン性重合体」である点。
イ 判断
事案に鑑み、まず相違点3-4について検討する。
甲3発明における「スチレン」は化学式「CH2=C(-H)-C6H5」で表され、「ブチルアクリレート」は化学式「CH2=C(-H)-C(=O)-O-C4H9」で表され、「ジメチルアミノエチルメタクリレート」は化学式「CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(C2H4)-N(-CH3)2」で表され、「ジメチルアミノプロピルアクリルアミド」は化学式「CH2=C(-H)-C(=O)-N(-H)-(C3H6)-N(-CH3)2」で表され、「メタクリル酸」は化学式「CH2=C(-CH3)-C(=O)-OH」で表され、「イタコン酸」は化学式「CH2=C(-C(=O)-OH)(-CH2-C(=O)-OH)」で表されるものである。
そうすると、相違点3-4は実質的な相違点である。
また、甲3発明は、甲3において、「良好なサイズ性が得られるとともに紙の密度が低く、サイズ性と嵩高性を両立させた実施例1であるところ、甲3発明の「疎水性基を有する両イオン性重合体」を、相違点3-4に係る本件発明2の構成のものとする動機付けはない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和6年11月20日に提出された意見書において、甲3の【0016】~【0020】に記載された「両イオン性共重合体」は本件発明2の「非フッ素重合体のアクリル系重合体」に相当する旨を述べている。
しかしながら、本件発明2の「(a2)式」で示される「アクリル単量体」において、特定のX5、Y3、Y4、Z及びnとしたものが甲3の【0016】~【0020】に記載された「(メタ)アクリル酸のC1~C14アルキルエステル」に含まれるとしても、甲3の【0016】~【0020】の「(メタ)アクリル酸のC1~C14アルキルエステル」という記載によって、が本件発明2の「アクリル単量体(a)」や「(a2)式」で示される「アクリル単量体」の特定を導出するとはいえない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
エ 小括
よって、本件発明2は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明3について
本件発明3は、相違点3-4に係る本件発明2の構成と同様の発明特定事項を有しているから、上記(2)で説示したのと同様に、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明4~19について
本件発明4~19は本件発明2、3のいずれかの発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(2)、(3)と同様の理由により、本件発明4、6、8~16、19は、甲3に記載された発明ではなく、また、本件発明4~19は、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 申立理由4について
(1)甲4に記載された発明
甲4(【請求項1】、【請求項4】、【0024】)には、特に実施例2に着目すると、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。
「アクリル/スチレンの共重合体に炭酸カルシウムを充填剤として混合した、上質紙の全層に内添により均一に分散させる水性エマルジョン。」
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲4発明とを対比すると少なくとも次の点で相違する。
[相違点4]
「非フッ素重合体」について、本件発明2は、「非フッ素重合体が、長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、式:
CH2=C(-X1)-C(=O)-Y1(R1)k
[式中、R1は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X1は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y1は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基(但し、炭化水素基を除く)であり、
kは1~3である。]
で示される単量体であり」、
「[1]長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)において、長鎖炭化水素基の炭素数が18以上である。
[2]長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、
(a1)式:
CH2=C(-X4)-C(=O)-Y2-R2
[式中、R2は、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X4は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y2は、-O-または-NH-である。]
で示されるアクリル単量体、および/または
(a2)式:
CH2=C(-X5)-C(=O)-Y3-Z(-Y4-R3)n
[式中、R3は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X5は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y3は、-O-または-NH-であり、
Y4は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示されるアクリル単量体である。
[3]非フッ素重合体が、親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
親水性基を有するアクリル単量体(b)が、式:
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-X3 (b1)、
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-C(=O)CX2=CH2 (b2)、または
CH2=CX2C(=O)-NH-(RO)n-X3 (b3)
[式中、X2は、水素原子またはメチル基、
X3は、水素原子または炭素数1~22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、各々独立に炭素数2~6のアルキレン基、nは、1~90の整数である。]
で表わされる少なくとも1つのオキシアルキレン(メタ)アクリレートである。」の「[1]~[3]の一以上を満た」すのに対して、
甲4発明は、「アクリル/スチレンの共重合体」である点。
イ 判断
甲4発明における「アクリル/スチレンの共重合体」に関して、甲4には、「アクリル」について「耐油性付与の樹脂であるアクリル系樹脂を構成するアクリル系モノマーとしては、エチルメタアクリレートや、メチルメタアクリレートのようなモノマーが好ましく用いることができるが、特に制限はない。アクリル系モノマーは、成膜性が良好で、カルボキシル基が撥油性をもつため、本発明においては好ましく用いられる。」(【0015】)と記載されている。
すなわち、「アクリル系モノマー」について、「特に制限はない」としつつも、「エチルメタアクリレートや、メチルメタアクリレートのようなモノマーが好ましく用いることができる」とされており、耐油性の向上のために、本件発明2で特定される「長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)」を用いることは記載も示唆もされておらず、甲4発明における「アクリル/スチレンの共重合体」を、相違点4に係る本件発明2の構成のものとする動機付けはない。
エ 小括
よって、本件発明2は、甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明3について
本件発明3は、相違点4に係る本件発明2の構成と同様の発明特定事項を有しているから、上記(2)で説示したのと同様に、甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明4~19について
本件発明4~19は本件発明2、3のいずれかの発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(2)、(3)と同様の理由により、本件発明4~19は、甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6 申立理由6について
(1)本件発明が解決しようとする課題について
発明の詳細な説明によると、本件発明の解決しようとする課題は「紙に対して優れた耐油性を与えることができる耐油剤を提供すること」(【0005】。以下「本件課題」という。)である。
(2)本件課題を解決するための手段について
発明の詳細な説明の【0006】には、本件課題を解決するための手段として次の記載がある。
「本開示は、(1)非フッ素重合体、および(2)無機粒子および/または有機粒子から選択された粒子、を含んでなる耐油剤に関する。紙の処理において、耐油剤を外添または内添してよいが、耐油剤を内添することが好ましい。
本開示の好ましい態様は、次のとおりである。
[1]
(1)非フッ素重合体、および
(2)無機粒子または有機粒子から選択された少なくとも1種の粒子、
を含んでなる、紙の内部に添加される紙用耐油剤であって、
粒子(2)の量が、非フッ素重合体(1)と粒子(2)の合計重量に対して、1~99.9重量%である紙用耐油剤。」
そして、発明の詳細な説明の【0010】には、本件発明の効果として次の記載がある。
「耐油剤において、非フッ素重合体が水性媒体、特に水に良好に分散している。
耐油剤は、紙に、高い耐油性を付与する。・・・」
また、発明の詳細な説明の【0136】~【0156】には、「(1)非フッ素重合体、および(2)無機粒子または有機粒子から選択された少なくとも1種の粒子、を含んでなる、紙の内部に添加される紙用耐油剤であって、粒子(2)の量が、非フッ素重合体(1)と粒子(2)の合計重量に対して、1~99.9重量%である紙用耐油剤」を用いて製造したパルプモールド製品である実施例1~10が、そのような「紙用耐油剤」を用いて製造していないパルプモールド製品である比較例1、2と比べて高温耐油性に優れていることを確認している。
そうすると、「(1)非フッ素重合体、および(2)無機粒子または有機粒子から選択された少なくとも1種の粒子、を含んでなる、紙の内部に添加される紙用耐油剤であって、粒子(2)の量が、非フッ素重合体(1)と粒子(2)の合計重量に対して、1~99.9重量%である紙用耐油剤」は、本件課題を解決できると認識できる。
(3)判断
本件発明2~19は、本件課題を解決できると認識できる「(1)非フッ素重合体、および(2)無機粒子または有機粒子から選択された少なくとも1種の粒子、を含んでなる、紙の内部に添加される紙用耐油剤であって、粒子(2)の量が、非フッ素重合体(1)と粒子(2)の合計重量に対して、1~99.9重量%である紙用耐油剤」を更に限定したものである。
したがって、本件発明2~19は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
(4)申立人の主張について
本件発明を解決するための手段については、上記(2)、(3)で示したとおりであり、「非フッ素重合体」や「粒子」まで特定を要するものではない。
(5)小括
よって、本件特許の請求項2~19に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであり、申立人の主張は採用できない。
7 申立理由7について
一般に、「無機」は「無機化学または無機化合物の略。」を意味し、「無機化合物」は「有機化合物以外の化合物の総称。炭素の酸化物や炭酸塩は無機化合物に含める。」を意味し、「有機」は「有機化学または有機化合物の略。」を意味し、「有機化合物」は「炭素を含む化合物の総称。」を意味し、「粒子」は「物質を構成する微細な粒。」を意味する。
そうすると、「無機粒子」が、有機化合物以外の化合物からなる、物質を構成する微細な粒を意味し、「有機粒子」が、炭素を含む化合物からなる、物質を構成する微細な粒を意味することは明らかである。
したがって、本件発明2~19における「無機粒子または有機粒子から選択された少なくとも1種の粒子」の意味は明確である。
よって、申立人の主張は採用できない。
なお、申立人は、令和6年11月20日に提出した意見書において、「0<m<lの整数」を満たす「m」は存在し得ないため、本件発明2、3は不明確である旨主張している(18ページ下から3行~末行)。
しかしながら、請求項2~19において、l(エル)の取り得る数値を限定しているものではなく、そうすると「l(エル)>2」であれば「0<m<lの整数」を満たす「m」が存在することは明らかである。そして、このような規定により、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できないとはいえない。よって、申立人の前記主張を採用することはできない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項2~19に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできない。また、他に請求項2~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項1は、本件訂正により削除されたため、請求項1に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701374