特許異議申立
2023-701353
カテキン類含有組成物
- 審判番号
- 2023-701353
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-176631
- 登録番号
- 7298001
- 請求日
- 2023年12月21日
- 審決日
- 2024年12月19日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】花王株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人クオリオ
- 【権利者代理人】飯田 敏三
- 【権利者代理人】赤羽 修一
- 【異議申立人】三▲崎▼ 岳郎
- 審判長/審判官
- 審判長 植前 充司
- 審判官 磯貝 香苗
- 審判官 加藤 友也
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7298001号発明「カテキン類含有組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7298001号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕、〔4ないし6〕、〔7及び8〕、〔9及び10〕について訂正することを認める。
特許第7298001号の請求項1ないし3、7及び8に係る特許を維持する。
特許第7298001号の請求項4ないし6、9及び10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7298001号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、
令和 4年 3月18日を出願日とする特願2022-44084号(優先権主張 令和 3年 3月22日)の一部を、
令和 4年11月 2日に新たな特許出願(特願2022-176631号)としたものであって、
令和 5年 6月16日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、
令和 5年 6月26日に特許掲載公報が発行され、
その後、当該特許に対し、
令和 5年12月21日に特許異議申立人 三▲崎▼ 岳郎(当審注:「崎」のつくりは「竒」。以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、
令和 6年 4月11日付けで取消理由が通知され、
令和 6年 6月17日に特許権者 花王株式会社から訂正請求がされると共に意見書が提出され、
令和 6年 6月24日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされたが、特許異議申立人からは何ら応答がなかったものである。
第2 本件訂正について1 訂正の内容
令和 6年 6月17日にされた訂正請求における訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「カテキン類とアラビノキシランとを含有し、前記アラビノキシランの含有量が0.1~70質量%であり、前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比の値が、質量比で0.1~8.0である、カテキン類含有組成物。」
と記載されているのを、
「カテキン類とアラビノキシランとを含有し、前記アラビノキシランの含有量が0.1~70質量%であり、前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比の値が、質量比で0.8~8.0である、カテキン類含有組成物からなる飼料又は餌料。」に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び3も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記カテキン類含有組成物が、粉末状組成物、顆粒状組成物、錠状組成物、板状組成物、ブロック状組成物、又は液状組成物である、請求項1に記載のカテキン類含有組成物。」と記載されているのを、
「前記カテキン類含有組成物が、粉末状組成物、顆粒状組成物、錠状組成物、板状組成物、ブロック状組成物、又は液状組成物である、請求項1に記載の飼料又は餌料。」に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記カテキン類含有組成物中、前記カテキン類の含有量が0.1~70質量%である、請求項1又は2記載のカテキン類含有組成物。」と記載されているのを、
「前記カテキン類含有組成物中、前記カテキン類の含有量が0.1~70質量%である、請求項1又は2記載の飼料又は餌料。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に、
「カテキン類とアラビノキシランとを共存させることにより、前記アラビノキシランの含有量が0.1~70質量%、前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比の値が、質量比で0.1~8.0であるカテキン類含有組成物を得ることを含む、カテキン類含有組成物の製造方法。」と記載されているのを、
「カテキン類とアラビノキシランとを共存させることにより、前記アラビノキシランの含有量が0.1~70質量%、前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比の値が、質量比で0.8~8.0であるカテキン類含有組成物を得ることを含む、カテキン類含有組成物からなる飼料又は餌料の製造方法。」に訂正する。
請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(10)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし3について、請求項2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1ないし3に対応する訂正後の請求項1ないし3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正前の請求項4ないし6について、請求項5及び6は、請求項4を直接又は間接的に引用しているものである。したがって、訂正前の請求項4ないし6に対応する訂正後の請求項4ないし6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
さらに、訂正前の請求項8及び10は、それぞれ、請求項7及び9を引用しているものであって、訂正前の請求項7及び8に対応する訂正後の請求項7及び8と、訂正前の請求項9及び10に対応する訂正後の請求項9及び10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正に目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1に係る請求項1ないし3の訂正について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、訂正前の請求項1の「前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比の値」を「質量比で0.1~8.0」から「質量比で0.8~8.0」に特定し、かつ、訂正前の請求項1の「カテキン含有組成物」を、「カテキン含有組成物からなる飼料又は餌料」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許明細書【0032】及び【0042】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び3も同様である。
(2)訂正事項2に係る請求項2及び3の訂正について
訂正事項2に係る請求項2の訂正は、訂正前の請求項2の「カテキン含有組成物」を、「飼料又は餌料」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、本件特許明細書【0042】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項2の記載を引用する請求項3も同様である。
(3)訂正事項3に係る請求項3の訂正について
訂正事項3に係る請求項3の訂正は、訂正前の請求項3の「カテキン含有組成物」を、「飼料又は餌料」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3に係る請求項3の訂正は、本件特許明細書【0042】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項3に係る請求項3の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(4)訂正事項4ないし6に係る請求項4ないし6の訂正について
訂正事項4ないし6に係る請求項4ないし6の訂正は、請求項4ないし6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項4ないし6に係る請求項4ないし6の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(5)訂正事項7に係る請求項7及び8の訂正について
訂正事項7に係る請求項7の訂正は、訂正前の請求項7の「前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比の値」を「質量比で0.1~8.0」から「質量比で0.8~8.0」に特定し、かつ、訂正前の請求項7の「カテキン含有組成物」を、「カテキン含有組成物からなる飼料又は餌料」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項7に係る請求項7の訂正は、本件特許明細書【0032】及び【0042】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項7に係る請求項7の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項7の記載を引用する請求項8も同様である。
(6)訂正事項8及び9に係る請求項9及び10の訂正について
訂正事項8及び9に係る請求項9及び10の訂正は、請求項9及び10を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項8及び9に係る請求項9及び10の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(7)独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、訂正前の全請求項に対してされているから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正請求による特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項、第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕、〔4ないし6〕、〔7及び8〕、〔9及び10〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」といい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次の事項により特定されるとおりものである。
「【請求項1】
カテキン類とアラビノキシランとを含有し、前記アラビノキシランの含有量が0.1~70質量%であり、前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比の値が、質量比で0.8~8.0である、カテキン類含有組成物からなる飼料又は餌料。
【請求項2】
前記カテキン類含有組成物が、粉末状組成物、顆粒状組成物、錠状組成物、板状組成物、ブロック状組成物、又は液状組成物である、請求項1に記載の飼料又は餌料。
【請求項3】
前記カテキン類含有組成物中、前記カテキン類の含有量が0.1~70質量%である、請求項1又は2記載の飼料又は餌料。
【請求項4】 削除
【請求項5】 削除
【請求項6】 削除
【請求項7】
カテキン類とアラビノキシランとを共存させることにより、前記アラビノキシランの含有量が0.1~70質量%、前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比が、質量比で0.8~8.0であるカテキン類含有組成物を得ることを含む、カテキン類含有組成物からなる飼料又は餌料の製造方法。
【請求項8】
前記カテキン類含有組成物が、粉末状組成物、顆粒状組成物、錠状組成物、板状組成物、ブロック状組成物、又は液状組成物である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】 削除
【請求項10】 削除」
第4 特許異議申立書に記載した異議申立理由について
令和 5年12月21日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1-5(甲第5号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第5号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由1-6(甲第6号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第6号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由1-7(甲第7号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第7号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由1-8(甲第8号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第8号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第8号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由1-9(甲第9号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第9号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第9号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 申立理由1-10(甲第10号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第10号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第10号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
7 申立理由1-11(甲第11号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第11号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第11号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
8 申立理由1-12(甲第12号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第12号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第12号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
9 申立理由1-13(甲第13号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第13号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第13号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
10 申立理由2-16(甲第16号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第16号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第16号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
11 申立理由2-17(甲第17号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第17号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第17号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
12 申立理由2-18(甲第18号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第18号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第18号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
13 申立理由2-19(甲第19号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第19号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第19号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
14 申立理由2-20(甲第20号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第20号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第20号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
15 申立理由2-21(甲第21号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第21号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第21号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
16 申立理由2-22(甲第22号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第22号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第22号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
17 申立理由3(サポート要件)
本件特許発明1ないし10についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
具体的理由はおおむね次のとおりである。
・本件特許明細書の段落【0007】の記載から、本件特許発明の解決課題は、カテキン類由来の苦味及び渋味がマスキングされた飲食品の提供であると理解できる。
ここで、本件特許明細書の試験においては、小麦ブラン(小麦の外皮)等に由来するアラビノキシランを添加したカテキン含有食品と添加していないカテキン含有食品について、苦味及び渋味を評価している。表1~表4には、評価した食品の生地について、アラビノキシラン含有量、カテキン含有量、カテキン含有量に対するアラビノキシラン含有量の比の値が記載されている。そして、表1~表4にて示される数値を根拠として、アラビノキシラン含有量が0.1~70質量%であり、かつ、カテキン含有量に対するアラビノキシラン含有量の比の値が0.1~8.0である場合に、本件特許発明の効果を奏すると結論している。
しかしながら、表1~表4では、小麦粉(薄力粉又は強力粉)に由来するアラビノキシランを考慮していない。薄力粉には約1.7質量%のアラビノキシラン、強力粉には約2.0質量%のアラビノキシランが含まれる(甲第1号証参照)ため、生地に含まれる実際のアラビノキシランは表1~表4の数値よりも多くなる。
小麦粉(薄力粉又は強力粉)に含まれるアラビノキシランを考慮して、実際のアラビノキシラン含有量、カテキン含有量に対するアラビノキシラン含有量の比の値を計算すると、比較例1~3は構成要件を全て満たしており、本件特許発明1~10の範囲に含まれる。
そして、比較例1~3の評価(苦味・渋味のスコア)と段落【0103】、【0110】、【0116】の記載を見れば明らかなように、比較例1~3の食品では本件特許発明の課題を解決できていない。したがって、本件特許明細書の記載及び技術常識に基づけば、アラビノキシランであればその由来に関係なく課題を解決できるわけではなく、実施例にて効果を確認した特定の植物又は部位に由来するアラビノキシラン、具体的には、小麦外皮由来のアラビノキシラン(焙煎小麦ブラン、小麦全粒粉)又はトウモロコシ由来のアラビノキシラン(日食アラビノキシラン)を用いた場合にのみ、本件特許発明の課題を解決できるものと当業者は理解する。
そうすると、本件特許明細書及び技術常識を考慮しても、小麦外皮又はトウモロコシ以外に由来するアラビノキシランを用いた場合においてまで、本件特許発明の課題を解決できるとは当業者は理解できない。したがって、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張乃至一般化できるとはいえないため、本件特許発明1~10はサポート要件を満たさない。
18 申立理由4(明確性要件)
本件特許発明1ないし10についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
具体的理由はおおむね次のとおりである。
・本件特許明細書に記載される試験例1~3は、小麦外皮由来又はトウモロコシ由来のアラビノキシランを添加した食品と添加していない食品について、苦味及び渋味を評価している。そして、表1~4には、評価した各食品のアラビノキシラン含有量とカテキン含有量に対するアラビノキシラン含有量の比が示されている。
ここで、表1~4に示されるアラビノキシラン含有量は、「小麦外皮由来又はトウモロコシ由来のアラビノキシラン」の含有量を意味しており、小麦粉(薄力粉又は強力粉)に由来するアラビノキシランについては考慮されていない。そうすると、本件特許明細書を見た当業者は、請求項の「アラビノキシラン」は小麦外皮由来又はトウモロコシ由来のアラビノキシランのことを意味するものと理解する。
一方で、請求項に記載される文言のみを見ると、アラビノキシランの由来が特定されていないため、請求項の「アラビノキシラン」は、あらゆる植物又は部位に由来するアラビノキシランを包含するようにも見受けられる。
その結果、本件特許明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、請求項に記載された「アラビノキシラン」の用語が、小麦外皮由来又はトウモロコシ由来のアラビノキシランのことを意味するものか、あらゆる植物又は部位に由来するアラビノキシランを意味するものか、いずれを意味するのか当業者は理解できない。
したがって、請求項に係る発明の内容が不明確であるため、本件特許発明1~10は明確性の要件を満たさない。
19 申立理由5(実施可能要件)
本件特許発明1ないし10についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由はおおむね次のとおりである。
・本件特許の特許請求の範囲の記載を見ると、アラビノキシランの由来が限定されていない。したがって、本件特許発明を実施するためには、アラビノキシランの由来については考慮せず、組成物に含まれる全てのアラビノキシランの合計量を調整すれば良いように理解できる。
一方で、本件特許明細書の実施例(表1~4)にて示されるアラビノキシラン含有量は、「小麦外皮由来又はトウモロコシ由来のアラビノキシラン」の含有量を意味しており、他の植物や部位に由来するアラビノキシランについては考慮されていない。そうすると、本件特許明細書を見た当業者は、請求項の「アラビノキシラン」は小麦外皮由来又はトウモロコシ由来のアラビノキシランのことを意味するものと理解する。
そのため、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び技術常識を考慮しても、いずれの方法によってアラビノキシランの含有量を調整すれば良いのかを当業者は理解できない。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない。
20 証拠方法
甲第1号証:(独)農業技術研究機構 作物研究所、タイトル「小麦の製粉歩留と細胞壁多糖類の含量との関係」、2002年発行、https://agresearcher.maff.go.jp/seika/show/226468、2023年12月15日検索
甲第2号証:桜井食品株式会社、「小麦について」、アーカイブ2017年6月14日、https://web.archive.org/web/20170614214812/https://www.sakuraifoods.com/know/knowledge/wheat.html、2023年12月15日検索
甲第3号証:茶研報83、21~28頁、報文「市販緑茶の個別カテキン類とカフェインの分析」、1996年発行、https://www.jstage.jst.go.jp/article/cha1953/1996/83/1996_83_21/_pdf/-char/ja、2023年12月15日検索
甲第4号証:クックパッド株式会社、cookpad「卵は正味何グラム(全卵・卵黄・卵白)」、アーカイブ2020年11月21日、https://web.archive.org/web/20201121073715/https://cookpad.com/cooking_basics/20030、2023年12月18日検索
甲第5号証:クックパッド株式会社、「抹茶 ホロホロ アイスボックスクッキー」、更新日2020年5月26日、https://cookpad.com/recipe/6250332、2023年12月18日検索
甲第6号証:クックパッド株式会社、「抹茶のホワイトチョコサンドクッキー」、更新日2020年5月21日、https://cookpad.com/recipe/6245167、2023年12月18日検索
甲第7号証:クックパッド株式会社、「シンプルで美味しい 抹茶クッキー」、更新日2020年6月14日、https://cookpad.com/recipe/6215232、2023年12月18日検索
甲第8号証:クックパッド株式会社、「さくさく 抹茶クッキー」、更新日2020年6月23日、https://cookpad.com/recipe/6211778、2023年12月18日検索
甲第9号証:クックパッド株式会社、「抹茶のホロホロクッキー」、更新日2020年5月6日、https://cookpad.com/recipe/6198669、2023年12月18日検索
甲第10号証:クックパッド株式会社、「簡単!サクほろ抹茶クッキー」、更新日2020年5月2日、https://cookpad.com/recipe/1959093、2023年12月18日検索
甲第11号証:クックパッド株式会社、「抹茶のマーブルケーキ」、更新日2020年5月13日、https://cookpad.com/recipe/6219049、2023年12月18日検索
甲第12号証:クックパッド株式会社、「美味しい抹茶ケーキ 大納言入り」、更新日2020年5月12日、https://cookpad.com/recipe/6215668、2023年12月18日検索
甲第13号証:クックパッド株式会社、「抹茶のマシュマロカップケーキ」、更新日2020年5月5日、https://cookpad.com/recipe/6192760、2023年12月18日検索
甲第14号証:山本漢方製薬株式会社オンラインショップ、アーカイブ2015年3月15日、https://web.archive.org/web/20150315012842/https://www.kanpo-yamamoto.com/shop/omugi_wakaba02.php、2023年12月18日検索
甲第15号証:弘前大学教育学部紀要 第92号 79-87頁、2004年10月公開
甲第16号証:特開2006-335648号公報
甲第17号証:特開2018-102206号公報
甲第18号証:特開2013-249276号公報
甲第19号証:特開2016-47036号公報
甲第20号証:特開2020-72648号公報
甲第21号証:特開2010-178670号公報
甲第22号証:特開2006-34217号公報
証拠の表記は特許異議申立書の記載におおむね従った。
なお、記号の一部については表記を省略した。
以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
令和 6年 4月11日付けで通知された取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要はおおむね次のとおりである。
取消理由1(甲第5号証ないし甲第13号証に基づく新規性・進歩性、甲第5号証に基づくものから順に、「取消理由1-1」のようにいう。)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲5ないし13に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲5ないし甲13に記載された発明に基づいて本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
取消理由2(甲第16号証ないし甲第22号証に基づく新規性・進歩性、甲第16号証に基づくものから順に、「取消理由2-1」のようにいう。)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲16ないし22に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲16ないし22に記載された発明に基づいて本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号項に該当し取り消すべきものである。
取消理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由は次のとおりである。
本件特許の発明の詳細な説明の【0082】ないし【0116】に記載されている実施例1~16、比較例1~3のアラビノキシラン含有量は、次の製品、日食アラビノキシラン(アラビノキシラン含有量:82.1質量%、日本食品加工株式会社製)、焙煎小麦ブラン(商品名:国産小麦ブラン(焙煎タイプ)、星野物産者製)、全粒粉(商品名:小麦全粒粉、日本製粉者製)に含まれるアラビノキシランの量を計量分析し、原材料中におけるこれら製品の配合割合から、ビスケット、パン、ホットケーキのアラビノキシラン含有量を算出したものであるが、実施例1~16、比較例1~3のビスケット、パン、ホットケーキはいずれも小麦粉(薄力粉、強力粉)を原材料として含み、小麦粉(薄力粉、強力粉)自体にもアラビノキシランが含まれるため、本件特許の発明の詳細な説明に記載されている実施例1~16、比較例1~3のアラビノキシラン含有量は正確な数値ではない。
本件特許の発明の詳細な説明の比較例1~3はいずれもアラビノキシラン含有量が「0」となっているが、それぞれの小麦粉(薄力粉、強力粉)に含まれるアラビノキシランの量を甲1の数値を参酌して再計算すると、比較例1~3においてはいずれも、アラビノキシランの含有量が0.1~70.0質量%であり、カテキン類の含有量に対するアラビノキシランの含有量の比が質量比で0.1~8.0の数値範囲を満たしているのにもかかわらず、苦味スコアは10~8、渋味スコアは10~7であって、カテキン類の苦渋味をマスキングするという発明の課題を解決していない。
そうすると、当業者は、本件特許の発明の詳細な説明のこれらの記載事項から、カテキン類とアラビノキシランとを含有し、前記アラビノキシランの含有量が0.1~70質量%であり、前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比の値が、質量比で0.1~8.0である、カテキン類含有組成物が、発明の課題を解決できると認識することができない。
したがって、本件特許発明1ないし10は、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明ではなく、本件特許の発明の詳細な説明により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないから、本件特許発明1ないし10に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合しない。
第6 取消理由についての当審の判断
当審は、以下に述べるように、取消理由1ないし3は理由がない、と判断する。
1 取消理由1-1及び申立理由1-5(甲5に基づく新規性・進歩性)について
(1)主な証拠等の記載事項等
ア 甲1ないし甲2の記載事項(小麦粉のアラビノキシランについて)
(ア)甲1の記載事項
甲1には小麦の製粉歩留と細胞壁多糖類の含量との関係について次の事項が記載されている。
「
[図:0001422406000001.jpg]
」(第2/4頁)
「
[図:0001422406000002.jpg]
」(第3/4頁)
「
[図:0001422406000003.jpg]
」(第3/4頁)
(イ)甲2の記載事項
甲2には小麦について次の事項が記載されている。
「
[図:0001422406000004.jpg]
」(第1/3頁)
「
[図:0001422406000005.jpg]
」(第1/3頁)
「
[図:0001422406000006.jpg]
」(第1/3頁)
「
[図:0001422406000007.jpg]
」(第2/3頁)
「
[図:0001422406000008.jpg]
」(第2/3頁)
イ 甲3の記載事項(緑茶のカテキン類について)
甲3には市販緑茶の個別カテキン類とカフェインの分析について次の事項が記載されている。
「
[図:0001422406000009.jpg]
[図:0001422406000010.jpg]
」(第22頁左欄下から10行~右欄第5行)
「
[図:0001422406000011.jpg]
」(第23頁右欄第13~20行)
「
[図:0001422406000012.jpg]
」(第24頁)
ウ 甲5に記載された発明について
甲5には、次の発明(以下、「甲5発明」、「甲5製法発明」のようにいう。)が記載されている。
<甲5発明>
「薄力粉190g、三温糖70g、無塩バター(常温)100g、サラダ油大さじ1、卵黄1個分、緑茶抹茶パウダー20gを含有するクッキー。」
<甲5製法発明>
「甲5発明を製造する方法。」
(2) 検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲5発明とを対比する。
上記(1)アの甲1及び甲2の記載事項によると、甲5発明における「薄力粉」にはアラビノキシランが含まれ、上記(1)イの甲3の記載事項によると、甲5発明における「緑茶抹茶パウダー」にはカテキン類が含まれるから、甲5発明の「アイスボックスクッキー」は、本件特許発明1における「カテキン類とアラビノキシランとを含有」する「カテキン類含有組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲5発明の一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「カテキン類とアラビノキシランとを含有する、カテキン類含有組成物。」
<相違点5-1>
本件特許発明1は「前記アラビノキシランの含有量が0.1~70質量%であり、前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比の値が、質量比で0.8~8.0である」との特定を有するのに対し、甲5発明はそのような特定がない点。
<相違点5-2>
本件特許発明1は「からなる飼料又は餌料」との特定を有するのに対し、甲5発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点5-2について検討する。
甲5発明は、「アイスボックスクッキー」であるから、飼料又は餌料ではない。したがって、相違点5-2は実質的な相違点である。
そして、甲5及び他の全ての証拠を見ても、甲5発明において、飼料又は餌料とする動機となる記載はない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲5発明ではなく、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明2及び3は、甲5発明ではなく、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲5製法発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明7と甲5製法発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「カテキン類とアラビノキシランとを共存させることにより、カテキン類含有組成物を得ることを含む、カテキン類含有組成物の製造方法。」
<相違点5-3>
本件特許発明7は「前記アラビノキシランの含有量が0.1~70質量%、前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比の値が、質量比で0.8~8.0である」との特定を有するのに対し、甲5製法発明はそのような特定がない点。
<相違点5-4>
本件特許発明7は「からなる飼料又は餌料」との特定を有するのに対し、甲5製法発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点5-4について検討する。
相違点5-4は、上記相違点5-2と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明7は甲5製法発明ではなく、甲5製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
エ 本件特許発明8について
本件特許発明8は、請求項7を引用して特定するものであり、本件特許発明7の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明7と同様に判断される。
よって、本件特許発明7は、甲5製法発明ではなく、甲5製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)取消理由1-1及び申立理由1-5についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし3、7及び8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3、7及び8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、取消理由1-1及び申立理由1-5の理由によって本件特許を取り消すことはできない。
2 取消理由1-2ないし1-9及び申立理由1-6ないし1-13(甲6ないし13に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲6ないし13に記載された発明
ア 甲6に記載された発明
甲6には次の発明(以下、「甲6発明」、「甲6製法発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲6発明>
「バター(無塩)60g、和三盆25g、卵白15g、薄力粉65g、抹茶4g、ホワイトチョコ20gを含有するクッキー。」
<甲6製法発明>
「甲6発明を製造する方法。」
イ 甲7に記載された発明
甲7には次の発明(以下、「甲7発明」、「甲7製法発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲7発明>
「薄力粉50g、無塩バター25g、グラニュー糖25g、卵黄1個、抹茶パウダー3gを含有するクッキー。」
<甲7製法発明>
「甲7発明を製造する方法。」
ウ 甲8に記載された発明
甲8には次の発明(以下、「甲8発明」、「甲8製法発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲8発明>
「薄力粉210g、抹茶パウダー10g、砂糖30g、バター100g、塩 ふたつまみを含有するクッキー。」
<甲8製法発明>
「甲8発明を製造する方法。」
エ 甲9に記載された発明
甲9には次の発明(以下、「甲9発明」、「甲9製法発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲9発明>
「抹茶5g、薄力粉70g、きび砂糖25g、塩 ひとつまみ、太白ごま油25gを含有するクッキー。」
<甲9製法発明>
「甲9発明を製造する方法。」
オ 甲10に記載された発明
甲10には次の発明(以下、「甲10発明」、「甲10製法発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲10発明>
「薄力粉80g、砂糖25g、抹茶粉末5g、サラダ油 おおさじ2を含有するクッキー。」
<甲10製法発明>
「甲10発明を製造する方法。」
カ 甲11に記載された発明
甲11には次の発明(以下、「甲11発明」、「甲11製法発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲11発明>
「バター100g、砂糖40g、卵黄2個分、卵白2個分、砂糖30g、薄力粉100g、アーモンドプードル30g、ベーキングパウダー 小さじ1、牛乳 大さじ2、抹茶 大さじ1、お湯 大さじ1を含有するケーキ。」
<甲11製法発明>
「甲11発明を製造する方法。」
キ 甲12に記載された発明
甲12には次の発明(以下、「甲12発明」、「甲12製法発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲12発明>
「抹茶5g、砂糖10g、生クリーム25cc、小麦粉80g、ベーキングパウダー3g、無塩バター80g、砂糖60g、塩 ひとつまみ、卵2個、大納言甘納豆100gを含有するケーキ。」
<甲12製法発明>
「甲12発明を製造する方法。」
ク 甲13に記載された発明
甲13には次の発明(以下、「甲13発明」、「甲13製法発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲13発明>
「卵白 L2個分、卵黄 L2個分、グラニュー糖55g、薄力粉50g、抹茶7g、無塩バター30g、牛乳 大さじ1.5、はちみつ15gを含有するケーキ。」
<甲13製法発明>
「甲13発明を製造する方法。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲6発明ないし甲13発明とを対比する。
上記1(1)アの甲1及び甲2の記載事項によると、甲6発明ないし甲13発明における「薄力粉」または「小麦粉」にはアラビノキシランが含まれ、上記1(1)イの甲3の記載事項によると、甲6ないし甲13発明における「抹茶」「抹茶パウダー」「粉末抹茶」にはカテキン類が含まれるから、甲6発明ないし甲13発明は、本件特許発明1における「カテキン類とアラビノキシランとを含有」する「カテキン類含有組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲6発明ないし甲13発明との一致点、相違点はいずれも次のとおりである。
<一致点>
「カテキン類とアラビノキシランとを含有する、カテキン類含有組成物。」
<相違点6-1>
本件特許発明1は「前記アラビノキシランの含有量が0.1~70質量%であり、前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比の値が、質量比で0.8~8.0である」との特定を有するのに対し、甲6発明ないし甲13発明はそのような特定がない点。
<相違点6-2>
本件特許発明1は、「からなる飼料又は餌料」との特定を有するのに対し、甲6発明ないし甲13発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点6-2について検討する。
相違点6-2は上記1(2)の相違点5-2と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲6発明ないし甲13発明のいずれでもなく、甲6発明ないし甲13発明それぞれに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明2及び3は、甲6発明ないし甲13発明のいずれでもなく、甲6発明ないし甲13発明それぞれに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲6製法発明ないし甲13製法発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明7と甲6製法発明ないし甲13製法発明との一致点、相違点はいずれも次のとおりである。
<一致点>
「カテキン類とアラビノキシランとを共存させることにより、カテキン類含有組成物を得ることを含む、カテキン類含有組成物の製造方法。」
<相違点6-3>
本件特許発明7は「前記アラビノキシランの含有量が0.1~70質量%、前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比が、質量比で0.8~8.0である」との特定を有するのに対し、甲6製法発明ないし甲13製法発明にはそのような特定がない点。
<相違点6-4>
本件特許発明7は、「からなる飼料又は餌料」との特定を有するのに対し、甲6製法発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点6-4について検討する。
相違点6-4は、上記相違点6-2と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明7は甲6製法発明ないし甲13製法発明のいずれでもなく、甲6製法発明ないし甲13製法発明それぞれに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
エ 本件特許発明8について
本件特許発明8は、請求項7を引用して特定するものであり、本件特許発明7の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明7と同様に判断される。
よって、本件特許発明7は、甲6製法発明ないし甲13製法発明のいずれでもなく、甲6製法発明ないし甲13製法発明それぞれに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)取消理由1-2ないし1-9及び申立理由1-6ないし1-13についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし3、7及び8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3、7及び8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、取消理由1-2ないし1-9及び申立理由1-6ないし1-13の理由によって本件特許を取り消すことはできない。
3 取消理由2-1及び申立理由2-16(甲16に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲14及び甲15の記載事項(大麦若葉末のアラビノキシラン含有量について)
ア 甲14の記載事項
甲14には大麦若葉の栄養成分について次の事項が記載されている。
「
[図:0001422406000013.jpg]
」(第2/2頁)
イ 甲15の記載事項
甲15には大麦若葉からのarabinoxylanの分離と構造について次の事項が記載されている。
「
[図:0001422406000014.jpg]
」(第79頁)
(2)甲16に記載された発明について
ア 甲16に記載された発明
甲16の【0030】【表1】実施例2を中心に整理すると、甲16には次の発明(以下、「甲16発明」、「甲16製法発明」のようにいう。)が記載されていると認められる。
<甲16発明>
「キシロオリゴ糖4.5重量%、アシタバ末40.0重量%、大麦若葉末20.0重量%、抹茶10.0重量%、酵素処理ルチン0.5重量%、マルチトール25.0重量%を含有する顆粒剤。」
<甲16製法発明>
「甲16発明を製造する方法。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲16発明とを対比する。
上記(1)の甲14及び甲15の記載事項によると、甲16発明の「大麦若葉末」にはアラビノキシランが含まれ、上記1(1)イの甲3の記載事項によると、「抹茶」にはカテキン類が含まれるから、甲16発明の「顆粒剤」は、本件特許発明1における「カテキン類とアラビノキシランとを含有」する「カテキン類含有組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲16発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「カテキン類とアラビノキシランとを含有し、前記アラビノキシランの含有量が0.1~70質量%であり、前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比の値が、質量比で0.8~8.0である、カテキン類含有組成物。」
<相違点16-1>
本件特許発明1は「前記アラビノキシランの含有量が0.1~70質量%であり、前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比の値が、質量比で0.8~8.0である」との特定を有するのに対し、甲16発明はそのような特定がない点。
<相違点16-21>
本件特許発明1は、「からなる飼料又は餌料」との特定を有するのに対し、甲16発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点16-2について検討する。
甲16発明の「顆粒剤」は、飼料又は餌料ではない。したがって、相違点16-2は実質的な相違点である。
そして、甲16及び他の全ての証拠を見ても、甲16発明を飼料又は餌料とする動機となる記載はない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲16発明ではなく、甲16発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明2及び3は、甲16発明ではなく、甲16発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲16製法発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明7と甲16製法発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「カテキン類とアラビノキシランとを共存させることにより、カテキン類含有組成物を得ることを含む、カテキン類含有組成物の製造方法。」
<相違点16-3>
本件特許発明7は「前記アラビノキシランの含有量が0.1~70質量%、前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比の値が、質量比で0.8~8.0である」との特定を有するのに対し、甲165製法発明はそのような特定がない点。
<相違点16-4>
本件特許発明7は「からなる飼料又は餌料」との特定を有するのに対し、甲16製法発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点16-4について検討する。
相違点16-4は、上記相違点16-2と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明7は甲16製法発明ではなく、甲16製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
エ 本件特許発明8について
本件特許発明8は、請求項7を引用して特定するものであり、本件特許発明7の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明7と同様に判断される。
よって、本件特許発明7は、甲16製法発明ではなく、甲16製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)取消理由2-1及び申立理由2-16についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし3、7及び8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3、7及び8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、取消理由2-1及び申立理由2-16によって本件特許を取り消すことはできない。
4 取消理由2-2ないし2-7及び申立理由2-17ないし2-22(甲17ないし22に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲17ないし22に記載された発明について
ア 甲17に記載された発明
甲17の【0036】、【0037】【表1】実施例10、実施例2を中心に整理すると、甲17には次の発明(以下、「甲17-実施例10発明」、「甲17-実施例2発明」、「甲17-実施例10製法発明」、「甲17-実施例2製法発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲17-実施例10発明>
「カンゾウ油性エキス末0.3g、抹茶0.5g、大麦若葉の粉砕末0.5g、難消化性デキストリン0.5g、デキストリン3.7gを含有する飲食用組成物。」
<甲17-実施例2発明>
「カンゾウ油性エキス末0.3g、抹茶2g、大麦若葉の粉砕末3g、デキストリン0.2gを含有する飲食用組成物。」
<甲17-実施例10製法発明>
「甲17-実施例10発明を製造する方法。」
<甲17-実施例2製法発明>
「甲17-実施例2発明を製造する方法。」
イ 甲18に記載された発明
甲18の【0045】【表4】を中心に整理すると、甲18には次の発明(以下、「甲18発明」、「甲18製法発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲18発明>
「大麦若葉末20%、ほうじ茶末20%、アカシア樹皮抽出物20%、乳酸カルシウム2%、難消化性デキストリン30%、マルトデキストリン7%、二酸化珪素1%を含有する機能食品。」
<甲18製法発明>
「甲18発明を製造する方法。」
ウ 甲19に記載された発明
甲19の【0027】【表1】例4、例5を中心に整理すると、甲19には次の発明(以下、「甲19-例4発明」、「甲19-例5発明」、「甲19-例4製法発明」、「甲19-例5製法発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲19-例4発明>
「大麦若葉40部、アシタバ0.5部、クワ0.5部、モロヘイヤ0.5部、ヨモギ0.1部、煎茶粉末5部、加工黒糖5部、その他成分として糖類、デキストリン、ビタミンB群、ビタミンC、カルシウムから選択・配合される成分40部を含有する大麦若葉加工食品。」
<甲19-例5発明>
「大麦若葉20部、アシタバ0.5部、クワ0.5部、モロヘイヤ0.5部、ヨモギ0.1部、煎茶粉末5部、加工黒糖40部、その他成分として糖類、デキストリン、ビタミンB群、ビタミンC、カルシウムから選択・配合される成分40部を含有する大麦若葉加工食品。」
<甲19-例4製法発明>
「甲19-例4発明を製造する方法。」
<甲19-例5製法発明>
「甲19-例5発明を製造する方法。」
エ 甲20に記載された発明
甲20の【0137】、【0142】【表19】実施例43を中心に整理すると、甲20には次の発明(以下、「甲20発明」、「甲20製法発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲20発明>
「青汁粉末(山本漢方製薬株式会社 大麦若葉 粉末100% 非重合体カテキン類:0.54質量%、ルチン:N.D、アストラガリン:N.D 固形分量87.7質量%)90質量部、カテキン試薬I8.3質量部、ルチン試薬0.18質量部、アストラガリン試薬0.010質量部、及び賦形剤を全量100質量部となるように配合した青汁粉末。」
<甲20製法発明>
「甲20発明を製造する方法。」
オ 甲21に記載された発明
甲21の【0023】~【0025】【表1】実施例1~3、【0026】【表2】比較例2~5、7を中心に整理すると、甲21には次の発明(以下、順に「甲21―実施例1発明」、「甲21-実施例2発明」、「甲21-実施例1製法発明」、「甲21-実施例2製法発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲21-実施例1発明>
「大麦若葉粉末50重量%、煎茶48重量%、ワカメ灰分2重量%を含有する粉末飲料。」
<甲21-実施例2発明>
「大麦若葉粉末55重量%、煎茶42重量%、ワカメ灰分3重量%を含有する粉末飲料。」
<甲21-実施例3発明>
「大麦若葉粉末65重量%、玉露30重量%、ワカメ灰分5重量%を含有する粉末飲料。」
<甲21-比較例2発明>
「大麦若葉粉末55重量%、煎茶45重量%を含有する粉末飲料。」
<甲21-比較例3発明>
「大麦若葉粉末60重量%、煎茶40重量%を含有する粉末飲料。」
<甲21-比較例4発明>
「大麦若葉粉末35重量%、煎茶64重量%、デンプン1重量%を含有する粉末飲料。」
<甲21-比較例5発明>
「大麦若葉粉末40重量%、玉露57重量%、プルラン3重量%を含有する粉末飲料。」
<甲21-比較例7発明>
「大麦若葉粉末69重量%、玉露30重量%、デンプン1重量%を含有する粉末飲料。」
<甲21製法発明>
「甲21-実施例1発明ないし甲21-比較例7発明を製造する方法。」
カ 甲22に記載された発明
甲22の【0032】比較例2、【0029】実施例4を中心に整理すると、甲22には次の発明(以下、「甲22-比較例2発明」、「甲22-実施例4発明」、「甲22製法発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲22-比較例2発明>
「大麦若葉粉末(ニュージーランド産、有機JAS認定)60重量部、煎茶粉末40重量部を含有する麦若葉青汁粉末健康食品。」
<甲22-実施例4発明>
「大麦若葉粉末(ニュージーランド産、有機JAS認定)70重量部、玉露粉末30重量部を含有する麦若葉青汁粉末健康食品。」
<甲22製法発明>
「甲22―比較例2発明、又は、甲22-実施例4発明を製造する方法。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲17発明ないし甲22―実施例4発明とを対比する。
上記(1)の甲14及び甲15の記載事項によると、甲17発明ないし甲22-実施例4発明の「大麦若葉末」「大麦若葉粉末」にはアラビノキシランが含まれ、上記1(1)イの甲3の記載事項によると、「抹茶」「ほうじ茶末」「煎茶粉末」「青汁粉末」「煎茶」「玉露」にはカテキン類が含まれているから、これら甲176発明ないし甲22-実施例4発明は、本件特許発明1の「カテキン類とアラビノキシランとを含有」する「カテキン類含有組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲17発明ないし甲22-実施例4発明との一致点、相違点はいずれも次のとおりである。
<一致点>
「カテキン類とアラビノキシランとを含有する、カテキン類含有組成物。」
<相違点17-1>
本件特許発明1は「前記アラビノキシランの含有量が0.1~70質量%であり、前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比の値が、質量比で0.8~8.0である」との特定を有するのに対し、甲17発明ないし甲22-実施例4発明はそのような特定がない点。
<相違点17-2>
本件特許発明1は、「からなる飼料又は餌料」との特定を有するのに対し、甲17発明ないし甲22-実施例4発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点17-2について検討する。
相違点17-2は、上記3(2)アの相違点16-2と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲17発明ないし甲22-実施例4発明のいずれでもなく、甲17発明ないし甲22-実施例4発明それぞれに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明2及び3は、甲16発明ないし甲22-実施例4発明のいずれでもなく、甲17発明ないし甲22-実施例4発明それぞれに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲17製法発明ないし甲22製法発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明7と甲17製法発明ないし甲22製法発明との一致点、相違点はいずれも次のとおりである。
<一致点>
「カテキン類とアラビノキシランとを共存させることにより、カテキン類含有組成物を得ることを含む、カテキン類含有組成物の製造方法。」
<相違点17-3>
本件特許発明7は「前記アラビノキシランの含有量が0.1~70質量%、前記カテキン類の含有量に対する前記アラビノキシランの含有量の比の値が、質量比で0.8~8.0である」との特定を有するのに対し、甲17製法発明ないし甲22製法発明はそのような特定がない点。
<相違点17-4>
本件特許発明7は「からなる飼料又は餌料」との特定を有するのに対し、甲17製法発明ないし甲22製法発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点17-4について検討する。
相違点17-4は、上記相違点17-2と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明7は甲17製法発明ないし甲22製法発明のいずれでもなく、甲17製法発明ないし甲22製法発明それぞれに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
エ 本件特許発明8について
本件特許発明8は、請求項7を引用して特定するものであり、本件特許発明7の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明7と同様に判断される。
よって、本件特許発明7は、甲17製法発明ないし甲22製法発明のいずれでもなく、甲17製法発明ないし甲22製法発明それぞれに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)取消理由2-2ないし2-7及び申立理由2-17ないし2-22についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし3、7及び8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3、7及び8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、取消理由2-2ないし2-7及び申立理由2-17ないし2-26の理由によって本件特許を取り消すことはできない。
5 取消理由3(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0007】「本発明は、カテキン類由来の苦みや渋み(これらを合わせて苦渋味と称す。)が効果的にマスキングされたカテキン類含有組成物、カテキン類由来の苦渋味が効果的にマスキングされたカテキン類含有飲食品、カテキン類由来の苦渋味を効果的に抑制する方法及び剤、並びに、カテキン類由来の苦渋味が効果的に抑制された組成物及び飲食品の製造方法に関する。」との記載によると、本件特許発明1ないし10の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、カテキン類由来の苦渋味が効果的にマスキングされたカテキン類含有組成物、カテキン類含有飲食品、カテキン類由来の苦渋味を効果的に抑制する方法の提供である。
本件特許の発明の詳細な説明の【0008】には、当該発明の課題を解決するための手段として、カテキン類に対してアラビノキシランを共存させて食することによりカテキン類由来の苦渋味を効果的にマスキングできることを見出したことが記載されており、同【0015】には本発明ないし本明細書における「カテキン類」とは3-オキシフラバンのポリオキシ誘導体であり化学式C15H14O6で表される化合物と、そこから導かれるポリフェノール化合物を包含する意味であることが記載され、同【0016】にはカテキン類そのものを組成物に配合したり、カテキン類を含有する植物(カテキン類含有植物)の処理物(カテキン類含有植物の処理物)を組成物に配合したりすることにより、得られる組成物を、カテキン類を含有したものとすることができることが記載されている。
また、本件特許の発明の詳細な説明の【0024】には本明細書において「アラビノキシラン」とは、キシロース成分からなる主鎖にアラビノース成分からなる側鎖が結合して構成される、ヘミセルロースの1種であることが記載され、同【0025】にはアラビノキシランそのものを組成物に配合したり、アラビノキシランを含有する植物(アラビノキシラン含有植物)の処理物(アラビノキシラン含有植物の処理物)を配合したりすることにより、得られる組成物をアラビノキシランを含有したものとすることができこと、アラビノキシランは一般的に、針葉樹やイネ(Poaceae)科の植物に多く含まれ、特に穀物の外皮に多く含まれること、アラビノキシラン含有植物としては、例えば小麦、大麦、エン麦、ライ麦、米、ヒエ、アワ、トウモロコシ、タケ、オーツ麦等が挙げられることが記載されている。
さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0032】には、カテキン類の含有量に対するアラビノキシランの含有量の比の値(アラビノキシランの含有量/カテキン類の含有量、質量比)は、好ましくは0.1~8.0であり、0.8以上であることが好ましいことが記載され、同【0042】に、本発明の組成物として飼料、餌料等が挙げられることも記載されている。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0082】ないし【0116】には、ビスケット、パン、ホットケーキについて、カテキン類(質量%)及びアラビノキシラン含有量(質量%)、アラビノキシラン/カテキン類の数値の変化による、苦味スコア、渋味スコアの変動を確認した実施例1~16、比較例1~3が示されており、カテキン類の含有量に対するアラビノキシランの含有量の比が大きくなるにしたがい、苦味スコア、渋味スコアが改善されるという定性的な傾向が確認されている。
以上を踏まえると、当業者はこれらの記載事項から、カテキン類とアラビノキシランとを含有する組成物及びその製造方法は、苦味スコア、渋味スコアが改善され、発明の課題を解決することができると認識できる。
そして、本件特許発明1ないし3、7及び8は、上記発明の課題を解決できると認識できる組成物及びその製造方法を更に限定したものであるから、本件特許発明1ないし3、7及び8は、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明であって、本件特許の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし3、7及び8に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するといえる。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の第4 17の主張について検討する。
ア 比較例1ないし3におけるカテキン類の含有量に対するアラビノキシランの含有量の比の値について
上記(2)において検討したとおり、カテキン類とアラビノキシランとを含有する組成物及びその製造方法であることにより、発明の課題を解決することができる。ここで、本件特許の発明の詳細な説明の比較例1ないし3におけるカテキン類の含有量に対するアラビノキシランの含有量の比の値については判然としないが、その具体的な数値によらず、本件特許の発明の詳細な説明に記載の実施例及び比較例1ないし3から、カテキン類の含有量に対するアラビノキシランの含有量の比が大きくなると、苦味スコア、渋味スコアが改善されることが示されているものである。したがって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
イ 特定のアラビノキシランについて
特許異議申立人は、実施例にて効果を確認した特定の植物又は部位に由来するアラビノキシラン、具体的には、小麦外皮由来のアラビノキシラン(焙煎小麦ブラン、小麦全粒粉)又はトウモロコシ由来のアラビノキシラン(日食アラビノキシラン)を用いた場合にのみ、本件特許発明の課題を解決できると主張するが、特定のアラビノキシランでしかカテキン類由来の苦渋味をマスキングすることができないといった技術的根拠が示されているものでもなく、また、そのような技術常識も存在しない。よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
第7 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立理由について
取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立理由は、申立理由4(明確性要件)、申立理由5(実施可能要件)である。
以下、順に検討する。
1 申立理由4(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
(3)明確性要件の判断
本件特許の請求項1ないし3、7及び8の記載は、それ自体に不明瞭な記載はなく、願書に添付した明細書及び図面の記載とも整合する。
したがって、本件特許発明1ないし3、7及び8に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書及び図面の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 18の主張について検討する。
請求項1ないし3、7及び8における「アラビノキシラン」は、その由来が特定されているものでなく、あらゆる植物又は部位に由来するアラビノキシランを包含し、明確である。よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
2 申立理由5(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明1ないし3は物の発明であるところ、物の発明についての実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
また、上記第3のとおり、本件特許発明7及び8は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、その方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。
そこで検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の記載には、本件特許発明1ないし3、7及び8の各発明特定事項について具体的に記載され、実施例についてもその製造方法を含め具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし3の物を生産し、使用することができる程度の記載があり、本件特許発明7及び8の使用をし、本件特許発明7及び8により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1ないし3、7及び8に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第3 19の主張について検討する。
実施可能要件を充足するかどうかの判断は、上記(1)の判断基準により行うものであり、特許異議申立人の主張は、実施可能要件の充足性の判断とは関係がない。
よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
第8 結語
上記第6及び第7のとおり、本件特許の請求項1ないし3、7及び8に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし3、7及び8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項4ないし6、9及び10に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項4ないし6、9及び10に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701353